モバP「言いたいことが!あるんだよ!」森久保「ひぃっ!?」【デレマスSS】 (29)

アイマスの森久保乃々ちゃんに関する説を持ってきたので初SSです



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1574332872

エラーって出たけど、どうやら立ってますね

--月曜日、12時--
佐久間まゆ「まゆですよぁ」ツクエノシタカラコンニチハ

P「おうまゆ、今日もそこにいたか。机の下ぜってえくさいだろ」

まゆ「そんなことないですよぉ、今日もお弁当作ってきました♡」

P「サンキュー。わあ、今日は二段弁当。下は梅干しご飯で上がおかずか」

まゆ「Pさぁん、おいしいですかぁ?」

モバP(以下P)「さんきゅーなまゆ。いつも通りうまいよ」

まゆ「あらぁ?今日のPさん顔色が悪いですね、夜ふかしさんですか?」

P「昨晩ちょっとした考え事をしていてね...」

P「乃々はどうしたんだ?今日は朝から見ていないが」

まゆ「今日はお仕事もありませんからね。来る前にに一緒に事務所に行こうとお部屋を覗いたんですけれどそのときにはすでにいませんでしたよ。どこかお出かけに行っちゃったみたいです」

P「ここ最近、学校が休みの日は朝から事務所にいることが多かったからいると思ったんだが...いないのならば仕方がない」

P (まあ、いまは夏休み期間中だからほぼ毎日机の下にいるがな。しかし少し聞きたいことがあったのだが...)

まゆ「乃々ちゃんに用事でもあったんですか?でもぉ、いまはまゆとまゆのお弁当のことだけを考えてほしいかな...って。きゃっ///言っちゃった///」

机の下から出てきたまゆはスカートのホコリを払い、ちょうど出払らっているちひろさんの分のお弁当をちひろデスクに置くと、ちひろチェアーに座ってきぃきぃと事務椅子を鳴らし始めた。

まゆ「~♪」

P「こうしていると女の子らしくてとてもかわいいんだけどなー」

(コレって淡々と書き込んでいっていいの?)

--土曜日--
P「夏休みの宿題はちゃんと進んでるか!森久保ォ!」

森久保乃々「ひゃい!?」

P「乃々はかわいいなあ、ほーれうりうりー」ワシャワシャ

乃々「宿題は毎日やってますけどーあれー」

P「スカートにホコリついてんじゃねえかよ」パンパン

乃々「デリカシーないですね...」ボソッ

P「なんか言ったか?」

乃々「なにも言ってないですけど...」

P「乃々もいうこと言うようになったなぁ!」ワシャワシャ

乃々「聞こえてるじゃないですかぁ!」


...
P「ところでだ」

P「そのいかにも魔法唱えるときに片手に持っていそうな分厚い本はじめて見るけど、どうしたんだ?」

乃々「これですか...?これは...その...」

P「何の本なの?」

乃々「...ポエム帳なんです...」

P「なにそれみたい」

乃々「え、嫌です」サガリ

P「そーいわずに、ね。ね?」

乃々「うーん...」

乃々「それじゃあ...」

乃々「明日手紙を書いてきます。それを読むことが出来たらPさんがこれを読むことができる...というのはどうでしょう...?」

P(乃々がそんな提案してくるなんて意外だな)

P「急だな。読むことが出来たら?ってどういうことだ?」

乃々「暗号みたいなやつ...です...Pさん、ミステリー小説好きらしいですし...」

P(ついこの前、ありすと連載ミステリー小説の暗号を解読しようと一緒にメモ翌用紙を撒き散らしていたのを見られたか?)

P「挑戦状ってやつ?」

乃々「そういうわけじゃないですけど...いや...まあそうなんですけど...」

P「よしそうか!かまってほしいのか?かわいいやつめ!」

P「受けて立とうかその挑戦」

P (その次の日にその「手紙」とやらを渡された。所詮は14歳の作るものだし言葉遊びかなぞなぞのたぐいだろうかと思っていたが、パット見では何もわからず)

P (夜中までこの暗号に似たミステリー小説でもないかと漁っていたのだが、結局は何も見つからなかった)

P (自分で考えようにもすぐに行き詰まり、モヤモヤとした気分のまま睡眠についた。かくしてまゆにも指摘されたように寝不足なのであった)

まゆ「ところでPさん」

P「ん?どうした?弁当はうまいぞ。ほうれん草の胡麻和えが特にいいな。俺好きって言ってたっけ?」

まゆ「うふ、そこは乙女の感です♡」

まゆ「でもぉ、いま聞きたいのはそこじゃなくて...」

まゆ「朝、事務所に来る前に女の人と腕を組んで歩いているように見えたんですけど...」

まゆ「あれ...」

まゆ「誰ですか?」

P「ひえっ」

P「ち、ちげえよ。なんか、目が不自由な人がいたからさ、ここの近くに喫茶マンハッタンってあるだろ?あそこに行くまでを手伝ってたんだよ」

P「手はつないでないし、肩に手を置かれてただけだよ」

P「ほんとだよ」

まゆ「ふーん...まあいいでしょう。Pさんのそういうひとに優しいところは加点ポイントですし。それにまゆのラブラブセンサーに反応はありませんでしたし」

P「なにそれ」

まゆ「ラブラブ度の大きな上昇を感じると反応するセンサーです」

まゆ「ラブラブセンサーが標準装備&常時稼働なのでまゆは遊園地とか夜景がきれいな場所に近づけないんです...」

まゆ「まゆもディ○ニーとか行きたいなぁ...イルミネーションがきれいな場所とかいかにもカップルが多い場所に行くとセンサーが反応しちゃって落ち着かないんです...」

P「そいつは残念だな。それにしても、今朝の喫茶店と女子寮は事務所を挟んで逆側にあるはずなんだけど...?」

まゆ「うーん?なんのことですかぁ?」

--月曜日、15時--

P「おいっす~。ありす、ティータイム中にでも少しいいか?」

橘ありす「こんにちは、Pさん。お仕事の話ですか?」

P「いや、違うんだが。有栖先生向けの話があってね」

ありす「わたし向け?」

P「違うけどそうかな?暗号文だよ。ひとりじゃチンプンカンプンなんだ」


...
P「かくかくしかじか」

ありす「なるほど...乃々さんからの暗号、挑戦状。すこしワクワクしますね」

P「まずはありす先生の意見を聞きたいとおもってな」

P「なんか暗号得意そうな名前の響きしてるし」

ありす「だれが有栖川有栖ですか」

ありす「有栖川先生は考える側の人であって、作中じゃ謎解きを火村先生にぶん投げてるじゃないですか...」

「さてと」とふたりで暗号に向かう

https://imgur.com/EPTRZZ8

ありす「参に魚編の漢字がいっぱい並んでて、それに、これはゼロなのかオーなのかよくわからないですね...」

ありす「でも、まず気になるのは魚編の漢字ですよね」

P「まあそうだな、これがメインだろう」

ありす「これ、ワニ、アユ、コイ、シャケ、クジラはよめるんですけど、ほかは読めないですね」

P「いや、充分、よく読めるな」

ありす「タブレットで調べましょうか?」

P「いや、それくらいは調べてある」

P「ちなみに漢字の意味や読みはこうだ」

===========================================
字:音読み/訓読み/意味
䰲:アツ/ー/アツ(魚の名前)
魯:ロ/おろ(か)/おろか
鰐:ガク/わに/わに
魞:ー/えり/えり(魚をとるための仕掛け)
䰵:シ/ー/ボラ(魚の名前)
鮎:デン、ネン/あゆ/アユ(魚の名前)
鯉:リ/こい/魚の名前(コイ)
鮭:ケイ、カイ/さけ(しゃけ)、さかな/サケ、シャケ(魚の名前)
鯨:ゲイ/くじら/くじら 
===========================================

【画像開けない人用】

○参

䰲 魯 鰐 魞 䰵 鮎 魚 鮎 魚 鯉 䰲 䰲 魚 鰐 魚 、
0 0 鮭 魯 魯 䰵 魞 魚 鯉 鮎 魯 䰵 魞 鯨 鯨 䰵


ありす「魚類以外でも哺乳類に爬虫類もいますね」

ありす「魚に日の字...おろか?なんて初めて見ました」

P「無茶苦茶に作られた難解漢字がいっぱいあるからな」

ありす「この9文字に魚と参を加えた11字ですか」

ありす「動物やら道具やらに共通点、それから共通して異なる点...」

ありす「なんでしょう、歯の数、足の数、産む卵の数とか、それこそさっき言ったように魚類、哺乳類、爬虫類で分けるですとか。すみかや使用場所で分けるというのも考えられます。その場合シャケは海になるんでしょうか、川になるんでしょうか」

P「もしかしたらそのへんが謎の回収ポイントになるやもしれんぞ、ありすくん」

ありす「なんか無性にイラつきますね」

ありす「ヒントなんかは乃々さんからもらってないんですか?」

P「ヒントは教えてはくれたんが...」



--回想、日曜日--
乃々「昨日伝えたように、読めないように手紙を書いてきたんですけど...」ペラ

P「えっ」

P「これヒントとか無いの?」

乃々「そうですね...さすがに着地点すらわからないままじゃ手もつけられないかも...ですし」

乃々「こたえは、もりくぼの座右の銘...というか好きな言葉みたいな?」

P「好きな言葉...ね、日本語だよな。他に特別なルールは特に無し?」

乃々「そうですね日本語です...。特別に変なルールもないと思います。期限は水曜日まで...でだいじょうぶですか?」

P (今日入れて5日もあればなんとかなるか...?)

--回想終了--

P「というわけで」

ありす「好きな言葉...ですか...」

P「そうだ。一般的なミステリーのように容疑者が数名用意されていて更にダイイングメッセージというパターンならば、ひとりひとりに絞って暗号を当てはめていくという手も出来るだろうけど」

ありす「今回はそうともいきませんね...」

ありす「わたしの考えですが」

P「おっ」

ありす「動物だけでなく道具や形容詞も入っているのを見ると、もしかしたら漢字の意味は考えなくてもいいのかもしれませんね」

P「ほう」

ありす「そして、魚編の位置ですが」

ありす「左に魚編がある字が8つ。上にあるものがひとつですね」

ありす「ひとつだけ仲間はずれとも思えないですし、『魚』も『魯』と同様に考えるのでしょうね。もっと言えばすべて統一のルールが適応されているとするのが自然でしょう」

P「おー」パチパチ

ありす「それ以上なにもわかりません!」ドヤァ

...
P「ありすじゃ、あそこまでか~」

P「もっとミステリーに詳しそうなヒトはいないかなーっと」

鷺沢文香「呼ばれている気がしたのですが...呼びましたか?」

P「うん、ちょうど探してた。実はねカクカクシカジカ」

文香「暗号...ですか」

P「ありすにも見てもらったんだけど、ほらあの娘ミステリ好きだろ?文香にも意見でももらえたらと思ってね」

文香「それで、どこまでわかっているのですか?」

P「いや、俺は文香の知識にでもあずかろうかと...」

文香「あなたのことですから、全く考えてないということはないのでしょう?」

P「手厳しいね、子供ができたら意外と容赦なく育てそうだ」

文香「大丈夫ですよ、Pさんにも育児に参加してもらいますから...」

P「あれ?なんかおかしくない?」

文香「かまって欲しさにこんな謎まで用意するなんて乃々ちゃんも悪い子ですね」

P「そうか?かわいらしいとおもうが」

文香「最近は友人も増えて、心の穴が埋まったところでこっちの欲も高まってきたんですね...」ボソボソ

P「文香さん?」

文香「それじゃあ、Pさんの今の所の回答を聞かせていただいてもいいですか?」

P「そうさな。魚編の漢字だが、魚の場所に関わらず統一の規則にしたがっているというところまではありすと同じ考えだ」

P「そして、同じ字を繰り返し使っていることから、文字を置換するタイプの暗号だろう」

P「使っている字は参を除けばちょうど10個、これは多分だが部首内画数なんだと思う」

P「普通の総画数に置き換えて、その数字がアルファベットの順番でとかも考えたが...まあこれが一番自然だろう」

P「つまり、魚編以外の画数の数字で置き換える。だから魚に日なんていうわかりにくい字を使う必要があったんだ」

P「ちょうど、魚から始まって鰐までで0~9までぴったり10個の数字が揃う」

P「魚の0からはじまって、1,2,3...が䰲、魞、䰵…っていうふうにね」

P「すると、魚編パートはこう変換できる」

======================================
1 4 9 2 3 5 0 5 0 7 1 1 0 9 0 、
0 0 6 4 4 3 2 0 7 5 4 3 2 8 8 3
======================================


P「ここまでが暫定での回答だな」

P「この数字が何なのかが全くわからん、なにかの本のページにでも対応しているコード型の暗号なのか、なんらかのルールがあってこれを日本語に置き換えるのか」

P「文香せんせいはどう思います?」

文香「ふむふむ...」

文香「ひとつだけ、わたしからも教えて差し上げますと」

文香「○の中の参は追加のヒント、だそうですよ」

P「へ?」

文香「実は乃々ちゃんにはPさんがいまどこまで解けているのかスパイしてほしいと頼まれていましたので...」

P「はニャ!?」

文香「乃々ちゃんにイッポン取られたPさんのお顔、いただきました」

P「まさか、乃々に手回しされるとは...」

文香「乃々ちゃんも複雑な年頃ですね」

P「そういえば、文香の中学生期ってどうだったの?」

文香「太陽の季節とか眠れる美女とかO嬢の物語とか...そういう本ばかりを読んでいました」

P「それ絶対外で言うなよ?」

一旦休憩

--火曜日--

撮影スタジオ

??「いやあ!Pさん、久しぶりですね!ののちゃんがいつもお世話になっているようで、どうだい?最近あの子の様子は」

P「乃々ちゃんの叔父さん。お久しぶりですね」

P「乃々ちゃんは最近友達もできたんでね、そのままユニットにしてデビューさせたりましたよ」

叔父「あの最近テレビに出てたちっこいの3人組か?眼帯の娘とシャウトしてる娘」

P「それっすね」

叔父「なかなかやるね、君」

P「それほどでも...」

P「そうだ。今、ちょっと時間大丈夫ですか?」

叔父「ん?」

叔父「なるほど、あの子が暗号文を。これは苦労させてるね、フフッ」

P「わたしも楽しんでるので何も気にすることはないのですが」

P「叔父さん、嬉しそうですね。なにか心当たりでも?」

叔父「ん?いやあ、昔の話なんだけどね。森久保さん。あの子のお父さんもたまに暗号チックな事をやっていたよ」

P「お父さんが?」

叔父「会ったことはあるよね」

P「ええ、契約の際と、保護者面談のときに...。たしかにおちゃめな人だった...かも?」

P(本当に乃々の父親かよと思ってしまうほどには明るい人だった記憶があるが...)

叔父「わざわざ相手に読めないもので書くということはね。伝えたい、けれど伝わってしまうのはこっ恥ずかしい。そういった矛盾する感情をのせているんだろうね」

叔父「きっと、ののちゃんもPさんに特別に伝えたい何かがあるんだよ」

叔父「発想が似ているのか、それとも話を聞いたのか。こうやって暗号を書いてきたってわけだ」

P「似たもの親子っていうわけですか」

叔父「そうだろうね。それに、ののちゃんが持っていたポエム帳ってあれだろ?分厚いカバーの、装飾がついているやつ。妹が昔から大切にしていたんだ。あれにポエムを書いては字をなぞって自分の世界に浸っていたよ」

P「そのへんはお母さん似なんですね」

叔父「あのポエム帳も中身ほとんど暗号みたいなもので私にも何が書いてあるかわからないんだけどね」

P「暗号だらけじゃないですか...」

叔父「まあ、ポエム帳なんてあっちこっちに見せたいようなものじゃないだろうしね」

叔父「それと残念だけど、その魚どもにも数字列にも参にも心当たりはないね。力になれなくて申し訳ない」

叔父「でも、ぜひ君がそいつを読んであげて欲しいんだ。よろしくたのんだよ」

--火曜日--

しきにゃんラボ

P「志希ー、いるかー?」

一ノ瀬志希「ここにいるよー」ニュッ

P「後ろから抱きついてくるな」

志希「首裏の匂いハスハスしようと思っても正面からだと怒るじゃん、きみぃ」

P「当然だろうが。きょうは聞きたいことがあるんだが」

志希「にゃふふ、例の暗号の事でしょ?」

P「話が早い、心当たりはあるか?」

志希「あるよー。でも!タダでは教えてあげない!」

P「うっそだろおまえ。金欠なんだ、払えるお金なんかないよ」

志希「のんのん、現金じゃなくて...実験を手伝ってくれたら教えてあげる」

p「まあ、どうせそんなこったろうと思ったよ。で、何をすればいいんだ?」

志希「下脱いで陰茎出して」

P「うっそだろおまえ」

志希「それ、君の口癖だよね」ニャハハ

志希「で、出すの?出さないの?」

P「言い方がなんかいやらしいよ...」

P「うう...もうお婿に行けない...」

志希「引く手数多だから大丈夫だと思うにゃあ」

志希「一夫多妻いけるまであるよ」

P「いけるの?」

志希「このさっきトイレで出してもらったコレ、売ったらかなりの高値つくと思うよ?」

P「やめて...知らない間にパパになりたくはない...」

志希「これは冷凍庫に入れてと」

志希「さて、本題だよね。十進法の長い数字まで行ってるって聞いてるけどそれでおーけー?」

P「めっちゃ情報共有されてるじゃん。その通りだよ」

志希「そいで、答えは日本語で出てくるんだよね?」

P「そうらしいな」

志希「うーんうんうん。そーんなキミに大ヒント!たかだか日本語の50音を表すのに10進法でそうとしても複雑すぎるんだよ」

P「50音を表すのに10個の数字じゃ複雑なのか...」

志希「いやまあ、ポケベルみたいに行と列の順番であらあわすことも出来るけどね」

志希「逆に考えるんだよ、文字を単純な記号で表している例でなにか思いつくものはない?」

P「記号?暗号っぽいのだと、モールス信号とか...?」

志希「そうそう、そういうの」

P「モールスなら3つ区切り!つまりこれってことか?」

志希「のんのんのん。ん?きみその『参』を3だと思ってるの?」

P「へ?」

志希「この暗号のルールは何かにゃ?部首内画数でしょ?」

志希「参の部首は『ム』だよ」

--水曜日、12時--
喫茶マンハッタン店内

P「向かい側、いいですか?」

婦人「あら?その声、あなたは月曜の?」

P「ええ、今日もおひとりですか?前回はどなたかと待ち合わせ、とのことでしたけれど」

婦人「目が見えて無くてもね、一度行った場所ならば案外もう一度行けるものよ。それでも東京みたいに人が多いところは揉まれて大変だけれどね」

P「...」

婦人「いま、時計を見たでしょ?わかるものなのよ」

P「さすがですね」

婦人「視覚が無いとね、聴覚が鋭くなるのもあれけれど空気の流れみたいなのまで感じるようになるのよ。だから娘にはフリフリの服を着せて、髪もできるだけボリュームをもたせるのよ。生地の擦れる音や髪の作る雰囲気で娘を感じることが出来るようにね」

P「それが乃々さんのあの服と髪型の理由ですか?」

婦人「あら、わたしのことは乃々から聞いたの?」

P「いえ、半分は当てずっぽうでした」

なぜ乃々の叔父さんが乃々の面倒をよく見るのか、それは全盲の妹の娘だからではないか
なぜ彼女が会話をするときでさえ目を合わせることに抵抗があるのか、それは家で目を合わせて喋ることがないから。そして目を見て喋れと指摘することが家では出来ないからではないか

P「...先日、乃々さんから手紙をもらいました」

そんな勘。そして、それが確証に変わったのがこの手紙

婦人「乃々からこのポエム帳は預かっているわ。答え、もう出てるんでしょ?」

そう。答えはすでに出ている
数字から日本語への変換で考えられるとしたらポケベルの2タッチ入力、和文モールスそして点字
あの数字を二進法へ変換し、参の部首内画数である6で区切ると
一行目が
100001 111011 101001 111110 001011 111000 100000 110010 、
二行目を同様に変換後、もとよりあった00をつけて区切ると
001110 101001 100111 000010 111101 111110 001110 110011

6点式点字では左上から1の点、2の点、3の点。右上に行って4の点、5の点、6の点となる
実際にこれに合わせて1と0を入れ、1が点のある場所、0がない場所とすると

●○ ●○ ●○ ●● ○○ ●○ ●○ ●○
○○ ●● ○○ ●● ○● ●○ ○○ ●●
○● ●● ●● ●○ ●● ●○ ○○ ○○ 、

○● ●○ ●● ○○ ●● ●● ○● ●○
○● ○○ ○● ○● ●○ ●● ○● ●●
●○ ●● ○● ○○ ●● ●○ ●○ ○●

P「『神は天にあり、世はすべてよし』」

P「村岡花子訳の赤毛のアン、本編の最後のセリフですね」

婦人「正解ね」

P「アニメ版じゃないんですね」

婦人「そのへんも含めて、すこしお話しましょうか」

婦人「アニメってね、視覚情報が無いとなにもわからないのよ。だからアニメも映画も実はほとんど見ないの

だけどね、点字の本ってほとんど無いのよ。それこそ昔の聖書やら辞書のようにひとが手で打っていくしか無いのね。だから赤毛のアンの点字本は子供の頃からの宝物だったわ。

問題とも言えるほどに妄想の激しい女の子、わたしもまさにその通りでね。今ではすこしはひとりで出歩けるけれど昔は家から一歩も出ることが出来なかったのよ。だからそのくらいの妄想力が必要だった

でもね、両親はわたしを普通の学校に通わせたのよ。そりゃもう保健室登校なんてレベルじゃなく完璧に不登校だったわね

アンのように、自分の中に架空の友達を作ったわ。毎日毎日、書いたポエムをその友だちに見てもらうの

わたしの代わりに外の世界を見て来てもらって、草原、お花畑、木々に囲まれた小道、そこがどれだけに素晴らしい場所であったかを教えてくれるのよ。まあ、わたしがあの子くらいの年だったときはそのくらいの痛々しさがあったということね

そんなあるときね、中学の学級委員だとかいう男の子がうちに来たわ。プリントを置いていくだけかと思ったら顔を見せろとか、会って直接話がしたいとか言うのよ

最初は追い返したわ、でも毎日来るし毎回しつこいしで会ってしまったのよ。押しに弱いのよねわたしって、あの子も弱いでしょ?似ちゃったのよね

その男の子ね、妄想の友だちの代わりに外のいろいろな事を教えてくれたの。点字も覚えてきてねポエムも見てくれるようになったわ。高校生になっても彼はわたしとお話してくれたわ。気がついたら妄想の友達なんかいなくなっちゃって、わたしの世界のすべてを彼が作ってくれていたの

そして、彼に手を引かれてわたしは外に出かけるようにもなった

学校にも連れて行かれたわ。『いつか、君がこのノートを一緒に見てくれる友だちが他にできればいい』って、そんな事を言ってね

わたしの王子様っていうやつよね。あなたたちもアイドルをシンデレラって呼ぶでしょ?

ふふ、あなたが誰かの王子様ということもあるわよ?

長く話してしまったわね。さて、正解者の特権よ。はい、このポエム帳を持っていきなさい」

喫茶マンハッタン出口

P「どっちを待ってたんだ?」

乃々「Pさんをです」

乃々「あの手紙を読めても、お母さんに気づくことはないと思っていました」

P「おいおい、舐めてもらっちゃ困るぜ。親御さんに次いでって言えるくらいには乃々の事を見てきてるんだ」

P「これ、本当は読まれたくないのか?俺はまだ開いてもいないから、いまならまだ間に合うぞ」

乃々「いえ、いいんです。それはPさんがしばらく預かってください」

P「今からお母さんは神奈川に帰るんだな?」

乃々「はい、今日を期限にしたのはそういうことです」

P「駅まで送ってあげなくていいのか?」

乃々「...そうすることにしますね」

P「ん、気をつけて。お母さんにもお父さんにもよろしく言っておいてな」

乃々「はい、それでは...」スタスタ

乃々「Pさん!」

P「ん?」

乃々「あ、ありがとうございまし...た...」

P「おうよ」

--後日--

事務所

ありす「それで、結局あの暗号は何だったんですか?そのハードカバーを見る限りですとどうやら解けたようですが」

P「ふふ、ワトスンくんには解けなかったってことさね」

ありす「文香さんと志希さんにヒントもらいまくったくせによく言いますね」

P「け、バレてたか」

P「結局だが、一般人じゃ火村先生みたいに華麗に解くことは出来ないよ」

ありす「それはそうでしょう。あれは新本格ミステリー作家、有栖川有栖先生が暗号から回答方法まで、ストーリー通りに回答にたどり着くまでの筋書きを考えてるんですから」

P「志希はノーヒントで答えにたどり着いたらしいぞ」

ありす「さすがは志希さんですね...。それで、そこには何が書かれてるんですか?」ヒョイ

P「こらこら、勝手に取るな」

ありす「うわ、全部点字だ」

P「全部読もうと思ったら一週間はかかりそうだな」

ありす「解読して得られたモノで更に解読ですか...」

ありす「あれ?ここだけペンで何か書いてありますね」

P「あー、そいつは赤毛のアンの引用だ、正確には赤毛のアンの続編だが」

ありす「赤毛のアンなら知っていますよ『神は天にいまし、すべて世は事もなし』ですね」

P「ほう、アニメ見てたのか」

ありす「見ましたよ。ギルバートがアヴォンリー小学校の先生をアンに譲る最終回は好きでした」

ありす「ギルバートはアンのことが好きなんですよね。あのあと、その恋は実るのでしょうか」

P「ふふ、どうだかね。気になるなら村岡花子訳版を活字で読んでみるんだな」

すべてのページで字が点で書かれているその本をパラパラとめくるとあるページが嫌でも目に留まる。
真っ白な本にそこだけ黒いペンで書かれているのだから当然だろう。

P「このポエム帳を一緒に読んでくれる友だち...ね」

読めない字にひとりでたどり着けず、誘導されてたどり着いたのはわたしだけでは無いということだ
しかし、わたしは「ギルバート」の恋の行方を知っている

ペンで書かれた文字を読む
『僕はある家庭を夢見ているのです。
 炉には火が燃え、猫や犬がおり、友だちの足音が聞こえ…そして君のいる 
   -森久保』

終わりです。
まあ、暗号はよくわかんねえです。ミステリー読みまくってるわけでもないので

これ以上思いつかなかったと言うか...

ぶっちゃけ、こういうミステリーって暗号を読者に解かせないものなんですよね。読み手からして「これはわからんやろ」っていうレベルでも許されるというか
この暗号を考えるのに有栖川有栖の「動物園の暗号」を参考にしたんですけれども、それは東北から北陸、信州までの特急駅の止まる場所全部知っていないと解けないっていうレベルのものだったので。もう開き直ってこの難易度のものにしました

森久保家家庭事情不仲説みたいなものを見ていたときに、この「乃々の母親盲目説」を思いつきました
思いついたの2年くらい前なんですけどね...

いろいろどうやって表現するか考えてたんですけれども、「ただただ日常会話をしていて最後だけ重くする」というのも不自然だし...
ということで、ハリウッド式シナリオ学みたいな本を読んで勉強した結果「主人公の悩み」が必要とのこと

「んなものプロデューサーの統一意識であるモバPにあるかよ!」というところで、単純に悩んでいただき、それを解決するために行動していただき、そして皆さんの意識をそらす、いわばミスリードのために暗号という手を使いました

最後の森久保パパが宛てたメッセージは「アンの愛情」より、アンにプロポーズするギルバートのセリフです

以上、なんか書き終えてスッキリしました。ところでこれまとめてもらうためにはどうすればいいのですかね?

(あと、感想もらえると嬉しいです。今後のモチベになります)

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