【シャニマスSS】冬優子「vsあさひ、その後で」 (46)


「それでは結果発表です!
 奇しくも同ユニットでの対戦となった〈Rivals〉Cブロック第4次予選!
 勝ち抜いたのは、芹沢あさひと黛冬優子のどちらなのか……!!」



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 司会者がそう言い終えると同時に束の間ステージの照明が全て落とされ、スポットライトがふゆとあさひの2人だけを照らし出した。

 お馴染みのドラムロールが冗長すぎるくらいに鳴り続けている。

 会心のステージだった。
 今のふゆの持つ力は全部出し切った。


「発表します!
勝者……………芹沢あさひ!!!」

 盛大なファンファーレと共にふゆを包んでいたスポットライトが消え、あさひだけが光と賞賛を一身に受ける。

 届かなかった、か……

□□□□□□□


【半年前】

 雑誌の取材を終えたふゆはプロデューサーの運転する営業車に乗って事務所に戻ろうとしていた。

「冬優子、〈Rivals〉ってオーディション番組知ってるか?」

「ライバルズ?聞いたこと無いけど」

「数年前からネットで配信されてるんだけどな。
 トーナメント形式でアイドルが1vs1でオーディションバトルをして、実力派アイドルの頂点を決めようってコンセプトの番組なんだ。
 去年なんかは新人から中堅アイドルまで80組近くがエントリーしてて、かなり盛り上がったみたいだぞ」


「ふーん、面白そうじゃない。で、その番組がどうしたの?」

「実は283プロに出演のオファーが来てるんだ」

「え、でも……」

「あぁ、さっきも言った通り〈Rivals〉は1vs1のオーディションバトルが売りだ。
 283プロはソロで活動してるアイドルがいないから、もし出演するならその時だけ限定的にソロの扱いになる」


「この話、事務所の他の子にもしてるの?」

「したよ。冬優子が最後だ。
 出演してみたいって言ったのは1人だけだったけど」

「あさひでしょ」

「よくわかったな」

「いかにもアイツが好きそうな企画じゃない……」


「他の子はユニットの活動を優先したいって理由で不参加だ。うちのアイドルは団結力が強いからな」

「あさひには団結力が無いって言いたいわけね」

「はは、そういう訳じゃないよ。
 あさひはただ……目の前に楽しそうな事があれば確かめずにはいられないだけだ」


「物は言いようね……」

 頬杖をついて窓の外を流れる景色をボンヤリと見ながら続く台詞を口にする。

「ねぇ、それってエントリーの枠は1人だけじゃないんでしょ?」

「そうだな、先方には期限までにエントリー人数を伝えればいい事になってる」

「それなら……ーー」

 その先の言葉が一瞬喉元で引っかかった。
 それ以上躊躇えばもう言えなくなる気がして、無理矢理口に出す。

「ーーふゆも出る」


「……そうか」

「何よ、文句ある?」

「いや、もちろん無いよ。
 283プロからのエントリーは冬優子とあさひだと先方に伝えておく。
 そうなると、これから忙しくなるな。ダンスの振り付けにもソロ用にアレンジを加えてーー」


 アイツが何か話し続けていたけど、ふゆの耳には遠くから流れてくるラジオ放送みたいに朧げにしか聞こえていなかった。

 トーナメントで勝ち続ければ、いずれあさひとも戦うことになる……
 こんな時でさえ思い出されるのはアイツの無邪気に笑う顔で、それが無性にムカついた。

□□□□□□□


【〈Rivals〉オーディション終了後・控え室】

 控え室に戻ると同時に忘れていた疲労が押し寄せてきて、思わず深いため息を吐いてしまう。

 バタン!!!

 息を吐き切るのと同時に背後の扉が勢いよく開いた。
 こんな騒がしい音を立てて部屋に入ろうとするヤツなんて1人しかいない。仕方なく振り向く。


「冬優子ちゃん!さっきのオーディションっすけどーー」

「あさひ」と、若干語気を強めて最後まで言わせないように言葉を遮る。

「あんた勝利者インタビューまだでしょ?ふゆと話すより先にそっちを済ませなさいよ」

「あ、そういえばそうっすね。じゃ、また後で来るっす!」

 嵐のように来たかと思えば嵐のように去っていく。パタパタと駆ける足音が遠ざかっていった後、ふゆは心の底からのため息を吐いた。

「ふぅーー……」

 あいつはいつまでも変わらない。
 特に、空気の読めないところが。


 あさひのオーディションバトルの感想なんて聞きたくない。ましてやそれがふゆを慰めたりするものなら尚更。
 まぁ、あいつの性格上慰めや励ましなんて有り得ないけど。

 なんで、あいつ絡みだと感情のコントロールが上手く出来なくなるんだろう。
 他のアイドルに負けたってこうはならない。
『ふゆも頑張ったんですけど負けちゃいましたぁ』なんて、あざとい振る舞いも当然できる自信がある。

 でも、今は無理。
 あさひにいつもの態度で接する自信がない。
 勝者からの言葉を素直に聞く余裕なんて、ない。


 コンコン、とドアがノックされる。

「はい」と、告げるとプロデューサーが入ってきた。

「なんだ、あんただったの」

「冬優子、おつかれ」

「あさひの側にいなくていいわけ?あいつを一人にしちゃ何するかわかんないわよ」

 今はこいつにも側にいてほしくなかった。


「あさひは一人でも大丈夫だ。
 それより冬優子、今日のパフォーマンスは良かったよ」

「負けたのに?」

 心がささくれ立ってるせいでつい意地の悪い言い方をしてしまう。

「それでも、だ。
 冬優子の成長が感じられる良いステージだった」

「何、あんたもしかしてふゆを慰めに来たの?
 わぁ、プロデューサーさんってとーっても優しいんですねぇ。ふゆ、感動しちゃいましたぁ」

「慰めとかじゃなくてさ……
 ただ、冬優子の側にいた方がいいと思ったんだ」


「……別に、落ち込んだりなんかしちゃいないわよ。
 ステージ上でのパフォーマンスなんてアイドルの実力の一要素に過ぎないでしょ。
 雑誌取材やグラビア……TV番組での対応力とか、アイドルに求められるものは沢山ある。
 “アイドル”ってステージの上ならふゆはあさひに負けてるなんてこれっぽっちも思ってないんだから……」


 言葉がふゆの中で空回りしてる感覚。
 喋れば喋るほど訳の分からない感情が満ちてきて、口から溢れ出てくる。

「それなのに、なんで……」

 流れ落ちてくるもので頬が濡れるのを感じる。
 認めたくないけど、それは涙らしい。

 なんでふゆは泣いてんのよ。

 続く言葉を口に出せない。
 わずかな声の震えでさえ決壊しそうな感情を抑えるのに必死だった。


「冬優子が誇り高いアイドルだからだよ。
 冬優子は俺の誇りだ」

 あ、ダメだ。

 空気が読めないのはあさひだけで十分だってのに……
 ふゆが泣きたくないのくらいわかるでしょ。なんでそういうこと言うのよ。

 ホント、どいつもこいつも……

 張り詰めた心の輪郭が緩んで、あとからあとから中身が溢れ出てくる。

 泣き顔を見られたくなくて、プロデューサーの胸を借りた。


「勝ち……たかった……!」

 言葉を発してから初めて自分の気持ちに気付く。

 あさひにどうしても勝ちたかった。
 あの日の言葉をずっと後悔していたから。


?『……きっとバケモノって、あんな子のことを言うんでしょ。?
 普通じゃなくて、特別で、手の届かないような女の子?』?

 ?ふゆは?あの時、諦めていた。
 あさひを理解することを、そして自分の夢を。
 それはあさひと過去の自分を侮辱したも同然だ。

 あさひがステージ上で動けなくなってから間違いに気付いたって遅すぎる。
 一度口に出した言葉は取り消せない。
 あさひ本人は知らなくたって、ふゆの記憶には刻み付けられてしまっている。

 あさひを違う世界の人間だと区別して、分別を弁えた大人みたいに潔く諦めてしまった自分自身を、ふゆは許せない。

 だからふゆは勝たなきゃいけなかった。
 あさひに“一人じゃない”と伝えるために。
 そして何よりも、自分自身の夢を叶えるために。


理由がよくわからない“?”が散見されるんでもう一回投稿し直してみます。


『……きっとバケモノって、あんな子のことを言うんでしょ。
 普通じゃなくて、特別で、手の届かないような女の子』

 ふゆはあの時、諦めていた。
 あさひを理解することを、そして自分の夢を。
 それはあさひと過去の自分を侮辱したも同然だ。


 あさひがステージ上で動けなくなってから間違いに気付いたって遅すぎる。
 一度口に出した言葉は取り消せない。
 あさひ本人は知らなくたって、ふゆの記憶には刻み付けられてしまっている。

 あさひを違う世界の人間だと区別して、分別を弁えた大人みたいに潔く諦めてしまった自分自身を、ふゆは許せない。

 だからふゆは勝たなきゃいけなかった。
 あさひに“一人じゃない”と伝えるために。
 そして何よりも、自分自身の夢を叶えるために。


 しばらくしてようやく気分が落ち着いてきて、ゆっくりと顔を上げる。

「……悪かったわね、スーツ濡らしちゃって」

「そんな事は気にしなくていい。
 少しは気分が落ち着いたか?」

 軽く頷く。

「それなら良かったよ」

「ねぇ……あんたはどっちがーー」

 良いと思った?
 なんて、バカな事を言いかけてやめた。
 まだ本調子に戻ってない。


「……もし、冬優子が望むならの話なんだけどな」

「何?」

「オーディションバトルで3回以上勝ち上がったアイドルは翌年の〈Rivals〉でシードが与えられるんだ。
 冬優子にはその権利がある。
 来年はどうしたい?」

「来年も、出る。絶対に」

 あさひが来年も出るかどうかなんてわからない。
 けど、その覚悟がなきゃあいつと対等でなんていられない。

 絶対に諦めない。
 ふゆがふゆであるために。

□□□□□□□


キリがいいので今日はここで一旦終わります。
明日で最後まで投稿するので、読んでくれている方がいればよろしくお願いします。

おつ

おつ
冬優子主人公だとあさひのラスボス感すきだ


【後日・283プロ 事務所】

「たっだいまー。あ、冬優子ちゃんじゃん!」

 レッスンを終えて事務所に戻ってくると、まもなく愛依が姿を現した。

「おつかれ」

「〈Rivals〉のあさひちゃんとの対戦見たよー。
 冬優子ちゃん、めっちゃカッコよかった!」

「可愛かった、の間違いでしょ」

「カワイイのはもちろんなんだけど……うーん、なんて言えばいいんだろ。
 気迫?真剣さ?みたいなのが伝わってきたっつーか……とにかくスゴかった!」


「……ふゆ、そんなに変な雰囲気だった?」

「いや、変とかじゃなくて!
 ……たぶんうちにしかわからない、と……思う」

「どういう意味よ?」

「んー……冬優子ちゃん、プロデューサーから〈Rivals〉の話されたっしょ?あれ、うちは冬優子ちゃんの前に言われたんだよね。
 あさひちゃんが出るって聞いて、『それならうちもーー』って言いかけたけど、最後まで言えなかったんだ……」

 あぁ……愛依も同じ苦しみを抱えていたんだ……


「あさひちゃんってやっぱスゴいからさ。
 うち、アイドルになったばっかの頃からそう思ってたけど、練習すればするほどどうスゴいのか分かってきて……
 そんなあさひちゃんと敵として戦うかもって思ったら怖くて言えなかったんだよね、『うちも出る』って」

「……」

「でも、冬優子ちゃんが戦ってるの見たらめっちゃ後悔してさ……勝てるかどうかなんてわからないけど、うちも出ればよかったって思ったんだ。
 だから……冬優子ちゃんってやっぱカッコいいわ!」

 こういう時でも笑えるのがこいつの強さだ。


「ふゆは別に……そんなに深く考えてエントリーした訳じゃないけどね。
 ま、そう思うなら来年はあんたも出たらいいんじゃない?」

「うん!絶対出る!」

「ちょっとは成長してるんだから自信持ちなさいよ」

「お、もしかして励ましてくれてんの?」

「違うわよ。本当のこと言ってるだけ。
ふゆにはまだまだ追いつかないけど」


「アハハ……ありがと。
 ……あっ!冬優子ちゃんごめん、弟と妹の世話しなきゃなんないから今日は早めに帰るわ。またねー!」

 別れの挨拶を終えると愛依は足早に事務所を後にした。

 ……愛依がエントリーするならあさひとはまた別の対策が必要になる。
 なんでうちのユニットには普段ちゃらんぽらんな癖にステージだと光り輝くやつばっかなんだか……

□□□□□□□


 明日のスケジュール確認と準備を終えて帰り支度をしていると、今度はあさひが姿を現した。

「冬優子ちゃん、おつかれっす!」
「おつかれ」

 あさひと直接会うのは〈Rivals〉での対戦以降初めてだ。結局あの時はあさひともう一度会う前に先に帰ったから話はしていなかった。

「この前の〈Rivals〉、楽しかったっすねー……」と、あさひは思い出に耽るように呟いた。


「そりゃあんたは勝ったから楽しいでしょうね」

「オーディションバトルの最中の話っすよ。
 バトルって面白いっすよね。同じユニットでレッスンしてる時より、敵としてどう戦うか考えてる時の方がたくさんの事に気付けるっすから」

「相手の強みと弱みをハッキリと意識出来る面は確かにあるかもしれないわね」

 “面白い”って感覚はわからないけど。


「冬優子ちゃん、ダンスの振り付けをビジュアルアピール寄りにアレンジしてたじゃないっすか。
 わたし、それ見て振り付けをいくつか変えたんすよ。そのままじゃアピールが弱い気がして。
 その場で振り付け変えられるのもソロバトルの面白さっすよね」

「土壇場でダンス変えるのなんてあんたくらいよ……」

 思わず苦笑してしまう。

 こいつの決断力と実行力は認めざるを得ない。
 失敗を恐れないのはこいつの最大の強みであり、弱点でもある。


 あさひと自分を比べてコンプレックスを抱いていた時期もあった。
 だけど、ふゆはあさひにはなれない。なる必要もない。

それに……ーー

?『ステージの上、立ってたら……なんか、寒くなって……?
 なんでわたし、ここにいるんだろって…………』

 もう間違えたりはしない、絶対に。


「なーに、あんたもしかしてソロでやりたくなったわけ?」と軽口を飛ばすと、
「それは無いっすね」と、あっさりと否定された。

「ストレイライトでしか、本当のトップアイドルにはなれない気がしてるっすから」

 何も特別な事なんて言ってないかのようにあさひは笑った。
 空気が読めないところは腹立つくらい変わらなくても、こいつも少しずつ変わっていってる。


「あっそ。ま、ふゆがいるんだから当然だけど」

 不意に違和感を覚えて、あさひの目をジッと見る。

「どうしたんすか?」

「……あんた、背伸びた?」

 あさひを見下ろす角度が初めて出会った頃と違う気がしたのだ。


「そうなんすよ、この前身体測定で測ったら去年より2センチ伸びてたっす!」

 あさひは誇らしげにVサインを作る。

 普段から見てるとちょっとずつ伸びているのに気付かないけど、そういえばこいつはまだ中学生だ。
 まだまだ伸び代が残されている。
 身体が成人に近づくにつれてパフォーマンスも鋭さを増していくだろう。


「へぇ、良いじゃない。あんたが大きくなればユニットの身長バランスが良くなるわ」と、あさひの頭をポンポンと軽めに叩く。

「あはは、もっと大きくなるっすよー」

 そうね、もっと大きく、強くなればいい。

 成長したあんたを乗り越えてふゆはもっと高いステージに駆け上がる。
 神様はそのためにふゆ達を同世代に生まれさせたのだから。

 最近は、そんな風に思うようになってきた。


 あさひのいる世界といない世界、どちらがふゆにとって良かったのか。
 認めたくないけど、答えは分かっている。

 本当に、認めたくないけどね。

(了)


最後まで読んでくれた方、ありがとうございます。

冬優子の一人称視点を書いてみたくて筋書きを用意せずに書きました。書きたい事は大体書けたので唐突ですがこれで終わりです。

冬優子はあさひとは全く違うステージで輝くアイドルだけれども、その性格故に挑み続けるんだろうと思っている。


ストレイライトのSSは他に2作書いてるのでよければ読んでみてください。

【シャニマスSS】芹沢あさひの恋愛観
【シャニマスSS】芹沢あさひの恋愛観 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1574073877/)

【シャニマスSS】あさひ「遥かなる世界へ」
【シャニマスSS】あさひ「遥かなる世界へ」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1575787254/)


乙乙


ベジータとカカロットみたいに見えてそうでないこの二人。やっぱいいですね

おつおつ
はーてぇてぇ

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