俺「……くそがきめ。そんな糞みたいなお題で、SS書けるわけねえだろ。うんこだけに」
クソガキ「それは、本心から言っているの?」
俺「!?」
俺「て、てめえ、どこから!?」
クソガキ「そんなことは、どうでもいいよ。それより、お兄ちゃん、本当に『うんこ』なんかじゃ面白いSSは書けないって思ってるの?」
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俺「あ、あたりまえだろ! こっちは、それなりに長い年月をSSに費やしてきたんだ!」
俺「そんな俺が、いまさら『うんこ』なんてお題でSSを書くわけねえだろ!」
クソガキ「そうか、おにいちゃんは忘れてしまったんだね……」
俺「?」
俺「いったい、俺が何を忘れているって言うんだ?」
クソガキ「お兄ちゃんにもあったはずだよ……」
クソガキ「たった『うんこ』の一言で大笑いしていた時期が」
俺「!」
クソガキ「思い出してごらん、目に入る何物にも好奇の眼差しを傾けた、あのセピア色の少年時代を」
クソガキ「そう! お小遣いを握りしめて、近所の駄菓子屋にコロコロを買いに行ったあの頃の思い出を!」
俺「!!!」
~~~回想~~~
少年時代俺「うおおおおお!!! ドラゴンキッドくんすげええ!!! うんこで上級生倒しちまった!!!」
少年時代俺「『ドラゴントルネードうんこ21』なんて糞みたいな技で! 面白いだけでなくかっこいいなんて最高やないか!」
少年時代俺「俺もいつかこんな漫画を書いてみてえなぁ!」
~~~
俺「」ホロリ
俺「そうや……思い出した。俺もかつては、たかが『うんこ』で感動を覚える一人の少年やったんや」
俺「それが、いつのまにかこんな気取った嫌な大人になっていたなんて……」
クソガキ「ようやく、思い出してくれたようだね」
俺「ああ! そうさ、俺もかつてはうんこ一つで腹がよじれるほど笑い転げた身!」
俺「匿名掲示板にSSを投下する最底辺の物書きの癖に、変に気取って高尚なものを書こうとしていたなんて恥ずかしい思いだ!」
クソガキ「あぁ、今の君の目はかつての輝きを取り戻した! さあ、学級王ヤマザキやゴーゴーゴジラ松井君を読んでいたころの自分をもっと呼び起こすんだ!」
~~~回想~~~
少年時代俺「父ちゃんが買ってきてくれた、このゲームなんや? なんかポケモンによう似とるなぁ。ロボットぽんこっつ……?」
少年時代俺「そういえば、おんなじ名前の漫画があったなぁ! ようわからんから流し読みしとったけど、もっとしっかり読んでみよ!」
少年時代俺「な、なんやこのおっぱい……こんなん気持ち悪いで!」ドキドキ
~~~
クソガキ「いいぞ! さあ! もっとだ! もっとかつての記憶を呼び起こすんだ!」
~~~
少年時代俺「母ちゃん! この雑誌、俺が頼んだ奴じゃねえよ! なんで間違えたんだよ!」
少年時代俺「もう! こんどからは絶対に自分で買いに行くからな!」
少年時代俺「たくっ……これだから母ちゃんはあてになら……なんやこれ……」
少年時代俺「ななななんやこれ! こここれがポケモンなんか!? 電撃ピカチュウ?/// 」
~~~
俺「……いま。俺は完全に思い出したよ」
俺「そう、あの頃の俺は低俗だとか高尚だとか、そういう糞くだらねえ価値観をいっさい有しない。純粋な、ただただ純粋な月刊コロコロコミックを愛する一人の男の子だった」
俺「それが、いまの俺ときたら……」
クソガキ「完全に思い出したようだね」
俺「ああ! 今の俺はどうしようもなく『うんこ』をお題にSSを書きたい気持ちだ!」
クソガキ「ふふふ、それじゃあ僕の役目も終わりだね……」
俺「誰かは知らねえが感謝するぜ! さあ、さっそくSSにとりかかろるとするか!」
そうして、男はひとつのSSを書き下ろした。
それは作中作を使った、まるでコロコロコミックに出てくるうんこの様に妙にひねったものであったが、かつての少年の心を取り戻した男の渾身の一作であった。
果たして、そのSSにどのような評価がなされるものか……。そんなこととは、裏腹にSSを書き上げた男の表情はいつになくスッキリとしたものであった。
そう、うんこだけに。
~~fin ×
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