【艦これ】夕立「とにかく西に進むっぽい」 (55)

艦これの安価です。地の文ありです。ゆっくり進めていくつもりなんで、若干不定期です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1583326209


夕立はとてもひまでした。朝に起きてご飯を食べ、ふらふらと散歩をしては、またご飯を食べて昼寝をする。そんな毎日がずっと続いています。

夕立は昼寝から起きました。そして大きなあくびをして起き上がると、何をしようと考えました。

机の上には鉛筆がありました。何を思ったのか夕立はペン先で鉛筆を立たせ、勝手に倒れるのを待ちました。

鉛筆はころころと転がり止まりました。その方向を見て夕立は決めました。

夕立「とりあえず、こっちに行ってみるっぽい」

夕立は歩き始めました。しかし誰にも会いません。少し遠回りをして外をふらふらと歩いていると、ぼーと立ってる>>3がいました。

リベッチオ


夕立は思いました。なんで三月でもあんなに日焼けしているのだろうと。

たぶん日焼けサロンにでも行っているのだろう。夕立はそう考えました。

珍しく静かにしているリベッチオに、夕立は話しかけました。

夕立「リベ?何してるの?」

リベッチオは夕立の方を見ないで、ぼーとしたまま答えます。

リベッチオ「あーうん。>>5を見てるのよ...」


山城


そう言われて夕立は、自分より少し背の小さいリベッチオから覗いて山城を見ました。

遠くで山城は何かをしていました。しかし遠すぎたので、まるで見えません。少しだけ見えるのは何か忙しなく動き回っている姿です。

夕立「きになるっぽい」

リベッチオ「きになるよね」

二人は目を合わせて、うなずき合いました。そう、山城に近づくことにしたのです。

木の影に隠れながら二人は進みます。山城に気がつかれないよう、ゆっくりと。

そろーり、そろーり。山城はまだ気がつきません。

そろーり、そろーり。山城の近くまで来ました。

どうやら山城は>>7をしているみたいでした。

提督の三歩後ろを歩いている


夕立「.....ストーカー?」

リベッチオ「違うんじゃない?」

山城は物陰に隠れながら、散歩をしている提督を追いかけていたのです。

提督が背筋を伸ばして体を捻る、のを予感していたのでしょう。寸前に体を捻る方向とは逆の位置に移動。また体を捻ろうとしたところで反対に。

どうにもおかしな動きをしている山城に、夕立はこう考えました。

夕立「あー、だるまさんが転んだをしてるっぽいね」

リベッチオ「あ!Japanese culture!」

提督は歩き始めました。それに合わせて山城も歩き始めます。しかし一向に距離は縮まりません。

夕立は山城の年齢でもそんなことをするんだなと思いました。

リベッチオを見ると、なぜだかそわそわしています。夕立は気になって聞くことにしました。

夕立「リベ?どうしたの?」

リベッチオは答えました。

リベッチオ「なんではやくタッチしないの?」

どうやら焦ったいようです。それもそのはず山城はずっと三歩手前を維持していて、遊びを終える様子が見られないからです。

そう考えると夕立も焦ったくなってきました。なんとか終わらせよう。

夕立はリベッチオと一緒に>>9をすることを決めました。




草花で冠つくり


季節は三月。ちょうどたんぽぽの花が咲き始めた頃です。地面にはあちらこちらにたんぽぽが自生していました。

夕立は思いつきました。このたんぽぽを使って、あの二人を驚かせることができれば、このだるまさんが転んだを終わらせられると。

夕立はリベッチオにこっそりと作戦を伝えました。それを聞くとリベッチオは少し意地悪な顔をして言いました。

リベッチオ「楽しいそう!」

そして二人は急いで取り掛かります。夕立は草冠の作り方は知っいます。なぜならひまの潰し方をネットで調べていたからです。

でもリベッチオはそうとは限りません。生まれてからそんなに時間が経っていないからです。

まずは、たんぽぽを集めないと始まりません。

夕立「リベ、とりあえず長めにたんぽぽを摘んできて!」

リベッチオ「了解!」

夕立とリベッチオは握り拳をぶつけ合うと同時に散らばります。

さぁ時間との戦いです。いつ提督が山城に気がつくのか。山城が提督にタッチできるのか。二つの時間が同時に進みます。


夕立はたんぽぽの群生地にスライディングしたと同時にむしりとり始めました。

たんぽぼを長めに摘むことは、花を編む時にしっかりと縛れるためです。夕立はどんどん摘みます。

十五本くらい摘み終え、夕立は急いでリベッチオと約束した場所に向かいます。

急いで戻っている途中、山城と提督の姿が見えました。

どうやら提督は木陰に下に置かれた休憩所でくつろいでいるようです。その後ろに幽霊のように、三歩手前を維持した山城が立っています。

これはいけない。そう思った夕立は汗を拭いながら急ぎます。

約束した場所に着くと、リベッチオもちょうど戻ってきていました。

お互いにたんぽぽを見せ合います。数も長さもばっちりです。

さっそく夕立とリベッチオは花冠を作り始めます。

夕立「リベ、まずはたんぽぽを二本持って、それをもう一個のたんぽぽで結んで」

夕立はぐるりと、簡単に結びます。そしてそれをリベッチオを見せました。

リベッチオもやってみます。しかしぐるりと回したところで、ぶちっ。千切れてしまいました。

リベッチオ「あー!ごめん!!」

夕立「いいよ、ゆっくりやるっぽい」


リベッチオは焦っていると夕立は思いました。そんな焦っている時にこそ、丁寧にやるべきだと夕立は知っています。

おぼつかない手捌きで、リベッチオはたんぽぽを結びました。

リベッチオ「夕立!できたよ!」

リベッチオは笑顔で結んだたんぽぽを見せました。解けないよう、硬く結ばれていました。

ここまできたら後は簡単です。同じ作業の繰り返しをします。

リベッチオと夕立はもくもくと始めました。

一回結んでは、きつく締め。もう一回結んでは、しっかりと。さらに結んでは、解けないよう。

何度も繰り返しているうちに、ちょうど良い大きさになりました。山城の頭は小さいため、そこまで大きくしなくても大丈夫なのです。提督はというと、山城に比べると頭は大きいです。

リベッチオは楽しくなったのでしょう。とても大きな花冠に。夕立は見た目を綺麗にしようとして、小さめな花冠に。

夕立「すごく大きい花冠!」

リベッチオ「夕立のは小さくて綺麗だね!」

お互いにできた花冠を見せ合いました。


さぁ花冠はできました。夕立とリベッチオはだるまさんが転んだをまだ続けている二人の元に向かいます。

そろーり、そろーり。ゆっくりと。

そろーり、そろーり。低くなり。

そろーり、そろーり。そろーり、そろーり。

二人は山城の後ろまでやってきました。提督は寝ていて、その顔をじっと山城は見つめています。今にも起こしてしまいそうなのに、なぜだか提督は目覚めないし、山城は何もしません。

夕立とリベッチオは顔を見合わせました。この二人はほんとうにだるまさんが転んだをしているのか、そう思っている様子です。

とりあえず二人は気にしないで作戦を進めることにしました。

リベッチオは、静かに近くの木に登り始めました。リベッチオは木登りが得意です。なぜならひまな時に何度も練習したからです。でも夕立もそうとは限りません。高いところが苦手だからです。

ゆっくりと夕立は木の上に登ります。足をしっかりと木に押し当てて、少しずつ、少しずつ。

半分くらい登ったところで、突然夕立は足を踏み外しました。いけない、夕立はそう思いました。

しかしリベッチオが急いで夕立の手を掴みました。宙ぶらりんとした夕立は、山城の方を見ました。どうやら提督に集中しているようで、気がついていません。

リベッチオは夕立をぐいっと持ち上げました。

夕立「ごめん、ありがとう...」

リベッチオ「いいよ気にしないで....」

夕立は緊張しているとリベッチオは思いました。そんな緊張している時にこそ、助け合うことをリベッチオは知っています。



二人はゆっくりと、山城と提督の真上に来ました。

夕立は片目を瞑ってしっかりと山城を狙います。

リベッチオは両手で花冠を掴んで集中しています。

その時を待ちます。おそらく二人のタイミングは一緒のはずです。さわさわとなびく、木々の声達が消えたその時を待ちます。

じーと待ち続け、風がぴたりと止まりました。

すっと、二人は手を離しました。真っ直ぐに花冠は二人の頭めがけて落ちていきます。

そして、綺麗に頭にすっぽりと収まりました。

山城「え!!!何!!!??」

山城は突然のことに驚いて大きな声で驚きました。それと同時に後ろに尻餅をついてしまいます。

そんな大きな音を出してしまったので、提督も驚いて飛び起きます。そして後ろを振り返り、山城をやっと見つけました。夕立はなんで今まで気がつかなかっただろうと思いました。

提督「.....山城?」

山城「.....提督」

二人はお互いを見合ってぴたりと止まってしまいました。そして提督は山城の頭を指差して言います。

提督「山城、頭に冠がついてるぞ」

山城は急いで確認しました。どうやら気がついていなかったようです。恥ずかしいからか、顔を赤くしてしまいます。山城はちらりと提督の方を見ると。

山城「提督.....あたまに」

そう言われて提督は自分の頭にも花冠があることに気がつきました。頭から外し、苦笑いをすると呟きました。

提督「誰が作ったんだろうな」

山城「さぁ.....」

提督と山城は知るはずもありません。木の上で夕立とリベッチオが親指を立て喜んでいることを。


提督「そういえば、山城は何をしてたんだ?」

提督は山城に尋ねました。すると山城はさらに顔を赤くしてしまいます。

リベッチオ「Japanese culture is だるまさんが転んだ。でしょ?」

夕立「しー....静かにするっぽい!!

山城「いや、えっとその......」

山城は提督に伝えたいことがあるのです。それも二人っきりで。そのため、恥ずかしくて答えられないのです。

提督はそんなことは知りません。

提督「なんだ用事があったのか?」

山城は花冠をぎゅっと握りしめます。何かを決意したようです。

山城「はい!あの、提督に伝えたいことがあって....」

山城は立ち上がろうとしました。提督が手を差し伸べたのでそれを掴みます。

山城「えっと、ありがとうございます」

提督「それで、何を伝えたいんだ?」

木の上にいる二人は顔を見合わせました。どうやら自分達はここにいてはいけないと思ったのでしょう。静かに去ることにしました。


だいぶ離れたところで、二人は約束しました。今日あったことは内緒で、誰にも話さないでおこうと。

夕立はまさかキューピットになるとは思ってもいませんでした。

そして夕立はリベッチオと分かれました。どうやら今日、はいつもより楽しそうなことが起こりそうだと思ったようです。

スキップをして、鉛筆が示した方へまた歩き始めました。

どんどん歩いていくと、今度は>>18がいました。夕立は気になって話しかけます。

鳳翔

とりあえず次の艦娘さんを決めて寝ます。こんな感じで絵本みたいにしたいと思います。たぶんつぎはたぶん次は朝に更新すると思います。がんばります。


夕立は覗きこみました。しかし鳳翔は何かに没頭していて、夕立のことに気がつきません。

夕立は、みんな集中すると周りが見えなくなるのか、そう思いました。

どうやら鳳翔は>>23をしているようです。


編み物


鳳翔はどうやらベンチに腰掛けて、マフラーを作っているようでした。少し季節外れだと夕立は思いました。

しかし来年の冬に合わせて作っているのだろうと、勝手に納得したのです。

鳳翔はマフラーの他にも、手袋、ニット帽、中には熊の人形を作っていました。夕立と同じように、ひまを持て余しているようです。

鳳翔は編み物は手慣れています。かぎ針を使い縫う速さはリズム良く、夕立はじっとそれを見つめています。

カチッ、カチッ。かぎ針がぶつかる音がします。

シュッ、シュッ。糸が擦れる音がします。

夕立は目で追いかけていると、あることに気がつきました。

そろそろ鳳翔の編む糸が途切れてしまうのです。でも気がついていないのか、編む速さは変わりません。

夕立「鳳翔さーん?」


夕立は話しかけましたが、鳳翔は反応しません。夕立は顔を覗きこみました。どうやら気持ちよさそうに、うとうとしているのです。

寝ててもできるのか、夕立はそう思いました。

夕立は鳳翔を起こそうと思いましたが、どうやら楽しそうな夢でも見ているのでしょう。鳳翔はよだれを少し垂らしながら、にやにやしています。

夕立はとりあえず鳳翔のよだれをハンカチで拭き取りました。どうやら夕立は今の鳳翔を起こすのは悪いなと思ったようです。

少しの間放っておこう。そう考え夕立はどんな毛糸があるのか見てみることにしました。裁縫セットの中を開けてみると、なんと毛糸玉は一つもありません。

そんなに作ってどうするんだろうと夕立は思いましたが、無いより有ったほうがよっぽどいいことを夕立は知っています。

まだまだ午後は始まったばかりですし、鳳翔の楽しみを終わらせてはいけないと思った夕立は、近くにある鳳翔の部屋へと行き毛糸玉を取ってこようと考えました。

なんとなく鳳翔の頭を撫でてから、夕立は走りました。

さぁ時間との戦いです。毛糸が途切れてしまうのか。鳳翔が目覚めてしまうのか。二つの時間が同時に進みます。

夕立は鳳翔の部屋に着くと、まずはタンスを開けることにしました。開けると中には>>26がありました。


冬着の第六駆逐隊が待ち受け画像のスマフォ

爆睡してました、すみません。ちょっと今から漁に出てくるんで、更新夜になりそうです。今日はおそらく爆釣です。


夕立はスマホがあったのでそれを退かそうとしました。

設定で画面を傾けると電源がつくようになっていたので、夕立はうっかり待ち受け画面を見てしまいました。

鳳翔はマメな性格なので、扱えないスマホでも充電は忘れないようです。スマホはカメラの機能だけを理解していて、実質カメラになっています。

待ち受け画面には第六駆逐隊が映っていました。どうやら最近撮ったようで、河津桜を背景に写真を撮ったようです。

夕立は親心を持っているわけではないのですが、みんなが笑顔の写真を見て自分もほっこりしました。

どうやらこのタンスの段には毛糸玉は入ってはいないようです。夕立はもう一つの段を開けることにしました。中を開けると>>31がありました。

舞扇子


鳳翔はたまに舞を踊る時があります。いつもは恥ずかしがって踊ることがないのですか、お酒の席になり盛り上がってくると、踊るのです。

夕立は一度鳳翔の舞扇子を触ろうとしたことがありました。しかし普段は怒らない鳳翔が触ろうとした手を強く握りしめてきたことを、夕立は思い出しました。

夕立は今なら触れると思い、たくさんある舞扇子の一つを取り出しました。

開いてみると燃え上がる夕焼けを背に、富士山が描かれた扇子でした。

夕立は時代劇で扇子を使ってハエを叩くシーンを思い出し、扇子を閉じてハエをはたき落とす仕草をして遊びました。

そして立ち上がり、鳳翔が踊っていた舞を踊ってみます。しかし夕立は自分がやるより、人のを見ていた方が楽しいと思ったので、すぐに飽きて元の場所にしまってしまいました。

あまり動かしすぎると鳳翔が気がついてしまうと思い、夕立は舞扇子の段をしまうと次の段を開けました。

するとせんべいが入っているアルミの箱があったので、夕立はそれを開けます。

中には赤や黄色、青などの毛糸玉が入っていました。夕立は持てる分だけを取り出して急いで鳳翔の元へ向かいました。


ベンチでは鳳翔は、どうやら眠っているようです。こくこくと揺れ動いています。

夕立はこっそりと鳳翔の後ろに立ち、手元を覗きました。鳳翔は縫い終えていても、手は動いています。

夕立は眠っていたらノートの字はぐちゃぐちゃになるのに、この人は変わっているなと思いました。

夕立は鳳翔の手元に赤色の毛糸玉を起きました。そして鳳翔を起こそうと思い、肩を一度叩くと、急いでベンチの背に小さくなって隠れました。びくっとして鳳翔は起きました。

鳳翔「あぁ、私寝てたのね....」

鳳翔は大きなあくびをして、背筋を伸ばしました。夕立のことにはまだ気がついていないようです。

鳳翔「あら、もう縫い終えてたのね。糸を取り行かないと....あら!」

鳳翔はどうやら夕立が持ってきた毛糸玉に気がついたようで、驚きました。夕立はなぜだか得意げになりました。

鳳翔「.....どこかの妖精さんが持ってきたのかしら」

そう呟くと鳳翔はくすくすと笑いました。




鳳翔「さ、妖精さんに感謝して始めるとしましょう」

鳳翔はかぎ針に赤色の毛糸を通して、手袋を縫うことにしました。

楽しそうに鼻歌を歌いながら手際よく縫います。夕立はこっそり膝立ちになり、鳳翔の手元を観察します。

カチッ、カチッ。かぎ針がぶつかる音がします。

シュッ、シュッ。糸が擦れる音がします。

夕立はじーと見つめていると、鳳翔の動きが止まりました。そしてわざとらしく言いました。

鳳翔「次は白色の毛糸が欲しいですねー。あー眠たい、眠たい...」

そう言い終わると、こくこくと頭がふらふらとし始めました。夕立は鳳翔の顔を覗き込むと、どうやらうそ寝をしているようですが、夕立は気がつきませんでした。

赤色の毛糸玉と白色の毛糸を入れ替えます。そして夕立は鳳翔の肩をとんとんと叩きます。


鳳翔「あーよく寝ましたー。あら、白色の毛糸....。とっても働き者の妖精さん、ありがとうございますね」

カチッ、カチッ。かぎ針がぶつかる音がします。

シュッ、シュッ。糸が擦れる音がします。

夕立はまた鳳翔の手元をじーと見ます。相変わらず鳳翔は楽しそうに鼻歌を歌っています。

鳳翔「あともう少しなのだけど、最後に黒色の毛糸が欲しいですねー。あぁどうしよう。急に眠たくなってきました....」

すると鳳翔はまたうとうとし始めてしまいました。夕立はため息をつきました。あの夕立にうるさい鳳翔がうたた寝している姿を見て、けっこうダメなことろもあるんだな、と夕立は思いました。

そして白色の毛糸玉と黒色の毛糸玉を入れ替えます。そして夕立は鳳翔の肩をとんとんと叩きます。

鳳翔「うーん....あぁまた寝てたのねー。あら黒いの毛糸が....。本当に働き者の妖精さんだこと。ありがとうございますね」

カチッ、カチッ。かぎ針がぶつかる音がします。

シュッ、シュッ。糸が擦れる音がします。

きゅっ、と。糸を引き寄せ縫い終える音がしました。

鳳翔「はい、できあがり」



どうやら完成したようなので、夕立はまたベンチの背に隠れました。

すると鳳翔は荷物をまとめ立ち上がると、思いっきり背筋を伸ばしてうなり声をあげました。

鳳翔「さて、ストレス発散もおしまいにして帰りましょう」

わざとらしく大きな声で言いました。

鳳翔「この手袋は、働き者の妖精さんに。見えないですけど、どうぞもらっていってくださいね」

鳳翔は後ろをちらっと見ると、くすくすと笑い帰ってしまいました。

鳳翔が遠くへ行ったのを見ると、夕立は立ち上がり、ベンチに置かれた赤色の手袋を手にとります。夕立はその手袋をはめると、なんだか嬉しい気持ちになりました。

そして夕立はまた鉛筆が示した方へ歩き始めました。ふらふら歩いていくと海沿いに出ました。すると遠くの方で>>37が見えるのです。

羽黒


夕立は思いました。海沿いで何をしているのだろうと。でも夕立も鉛筆が示した方へなんとなく歩き続けているのだから、やってることはそんなに変わらないのです。

話しかけようと思い、羽黒の近くまで行くと、なにやら集中しているようなので話しかけるか夕立は迷ってしまいました。

羽黒は>>39をしているようです。

海を見て黄昏ている


夕立は思いました。きっと恋に悩んでいて、浜辺で海を眺めているんだろうと。しかし困ったことに夕立は、他の人のキューピットをしてしまっているのです。

夕立は羽黒に気が付かれないように、そーと離れようとしました。

さく、さく。砂浜を歩く音。

抜き足、差し足。羽黒に気が付かれないように。

ばき。貝殻を踏んだ音がしました。

するとその音に気がついて、羽黒は後ろをこっそりと歩いていた夕立の方へ振り向きます。

羽黒「....夕立?」

夕立「羽黒さん....」

夕立は観念して、羽黒の隣に行きました。すると羽黒は深いため息をついて、体育座りをした膝に顔を埋めました。

夕立は思いました。きっと恋だな。困った顔を少しして、夕立は羽黒に尋ねました。

夕立「....羽黒さん?どうしたんですか?」

羽黒「.....>>46なんですよ」

演習でうまくいかなかった


それを聞いて夕立は安心しました。もし羽黒と山城の問題に挟まったら大変だからです。

でも夕立には羽黒の悩みがわかりませんでした。

夕立「演習で失敗したから凹んでるっぽい?」

羽黒「そうなのよね.....」

羽黒はそう言い終わると、膝小僧に額を当て地面を覗き込みました。

夕立は鳳翔からもらった手袋を外してポケットにしまいます。

羽黒の隣に座るとあぐらをかいて、そろそろ太陽が西に沈み始め、赤が溶け出した海を眺めます。

夕立「そんな気にすることじゃないですよ」

夕立がそう答えると、羽黒は頭を振って、声では答えませんでした。

夕立「夕立には、羽黒さんが悩んでることがわからないっぽい」

羽黒「.....なんでわからないの?」


演習での失敗は、本番での死につながります。一度の失敗は、成功への足かせになりずるずると負けにつながります。

失敗は相手にとってはチャンスであり、勝ちへの成功につながるのです。

だから、羽黒は自分を責めています。演習が実戦だったら、羽黒やその仲間たちは、どうなっていたかわからないからです。

夕立「だって演習だからですよ?」

羽黒「なにそれ」 

羽黒はすこし苛立ちます。夕立が、演習だから、と言ったことに羽黒のプライドが傷つき。夕立に対して責任感のなさに、苛立ちます。

羽黒「練習でできないことが、本番でできないのと同然なのに、なんでそんなことが言えるの?夕立?」

羽黒は顔をあげて夕立を見ます。夕立はというと羽黒の顔を見て、きょとんとしました。

夕立「えーだって、本番でできるように、練習があるんですよ?だから練習で失敗したっていいじゃないですか?」

羽黒は、はっとしました。


夕立「だってどんなに失敗したって、けっきょく練習なんですよ?死ぬわけじゃないし、怒られるだけっぽい。夕立なんか失敗してばっかで怒られてばっかっぽい」

そう言うと、夕立はため息をつきました。

羽黒「夕立は、失敗は気にしてないの?

羽黒は夕立に尋ねました。夕立は大きく首を振って答えます。

夕立「全然気にしてるっぽい!!

羽黒はそれを聞いて笑ってしまいました。すると夕立は怒りはじめました。

夕立「羽黒さんなんて全然怒られてないっぽい!!羨ましい!」

羽黒「えー....。でも、怒られることは悪ことじゃないんですよ?」

夕立「どうして?」

羽黒「だって、怒られるってことは次に.....」

次に直すことだからです。羽黒は思い出しました。失敗は、直すことだからです。

夕立「次に?」

羽黒「.....次に直して、成功させるため、だったわね.....」


夕立は羽黒の答えを理解できていませんでした。夕立は練習の大切さを知っていても、怒られる意味をまだ知っていないからです。

羽黒「夕立、ありがとうね」

夕立「へ?」

羽黒は立ち上がると、両手で顔をぱちっと叩きました。顔には手の跡がしっかりと残っています。夕立にはさっぱり理解できません。

羽黒「夕立、怒られることは、失敗することは、すごく大切なことなんだよ。それを思い出したわ。だから夕立も、ちゃんと怒られたことを忘れないようにするのよ。ありがとうね」

夕立「はぁ....」

羽黒は、よし、と呟くと手のひらを振ってどこかに行ってしまいました。夕立は一人浜辺に取り残されました。

夕立は立ち上がり、手袋をはめ直しました。西に沈んだ太陽は、いつのまにか居なくなっていました。

夕立「あ、いなくなったっぽい」

太陽を最後まで沈んでいく姿を、夕立は最後まで見たことがありません。それは他の艦娘達もそうで、気がついたら居なくなっています。

夜は勝手やってきて、朝は勝手に訪れます。そうやって、一日はぐるぐると続きます。

こうして今日は、夜になりました。

夕立は、暇な一日が終わるのを見届けて、家に帰って行きましたとさ。

おしまい。

おしまいです。絵本みたいにしたいと思ってたんですけど、絵本は絵があって字を読まれるから絵本なんで、文章を絵本にするのは難しいなと思いました。


過去作さんです。コロナで暇で読んでもらえると嬉しいです。

地の文あり

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次は地の文なしの長編書いてみようと思っています。地の文ありだと終わらなさそうなストーリーが山ほどあるので。またがんばります。

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