島村卯月「赤点スマイル」 (32)
アイドルマスターシンデレラガールズの二次創作SSです
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凛「ぐすん……」
未央「しぶりんが泣いている。どうかしたの?」
凛「卯月の様子が変なんだ」
未央「どういうこと?」
凛「とにかく、テレビの録画を見てよ」
ピッ
卯月『こんにちは。島村卯月です!』
未央「いつも通り可愛い笑顔のしまむーだよ?」
凛「この後だよ……」
卯月『これからも応援お願いします♪』
卯月『ぎゃはははは!』
未央「!?」
凛「卯月の笑い方が下品になってしまったんだ」
未央「これは尋常じゃない事態だね……」
凛「こんなの卯月じゃない!」
未央「こんなのしまむーじゃない!」
ギャーギャー
奈緒「あいつらは何を騒いでるんだ?」
加蓮「さぁ……」
島村卯月の異変は素早く知れ渡った。
奈緒「どこもかしこも卯月の噂ばかりだ」
加蓮「私に言わせりゃ問題なのはむしろ凛の方だよ」
凛『レッスンの後は卯月の張り込みするから今日も先に帰るね』
スタスタ
加蓮「普段の凛は好きだけど、卯月のことになるとキャラが豹変する凛は正直嫌いだよ」
奈緒「まぁ、気持ちはわかるぞ」
奈緒「しかし凛があの状態だと今後のトライアドの活動にも支障が出てくるな」
加蓮「どうにかしなきゃね」
奈緒「いっそのこと、私たちも卯月に接触して、あの下品な笑顔の秘密を探すっていうのはどうだ?」
加蓮「嫌だよ面倒くさい」
奈緒「面倒くさいとはなんだ。卯月は大切な友達だろ」
加蓮「そうだけど……単に笑い方が変わっただけじゃん。アホらし。私はもう帰るよ」
スタスタ
卯月「こんにちは」
加蓮「ん? あ、卯月」
卯月「今帰るところなんですか?」
加蓮「まあね。卯月は?」
卯月「次の撮影に向かう前に、少し外の空気を吸おうと思って」
加蓮「そっか。……髪の長いストーカーに気をつけてね」
卯月「?」
卯月「そうだ加蓮ちゃん。良かったらお昼一緒にどうですか。時間にはまだ余裕があるので」
加蓮「おっ、いいね~。私もちょうど腹ペコだったんだ」
卯月「ぎゃはは。オススメのハンバーガー屋さんがあるのでそこにしましょう」
加蓮「うん。ありがとう」
ゴユックリドウゾー
加蓮「でさ。そのときねー」
卯月「ぎゃははは!」
──
加蓮「ふー。お腹いっぱい」
卯月「あれれ、ポテト残しちゃうんですか?」
加蓮「うん。最近食べ過ぎたのかな、飽きてきちゃって。しばらくは頼むのやめようっと」
卯月「この際ヘルシーアイドルに転向するとかどうです?」
加蓮「あはは。良いかもそれ」
アリガトウゴザイマシター
卯月「いっぱいおしゃべりしちゃいました。もうこんな時間なんですね」
加蓮「早く撮影に行った方がいいよ。みんな卯月を待ってる」
卯月「うん! 今日はありがとう。またねー」
タタタッ
加蓮「……笑い方が変わったくらいでみんな騒ぎすぎだよ」
加蓮「やっぱり卯月は卯月じゃん」クスッ
──翌日・事務所──
奈緒「昨日のあの後、凛と少し話をしたよ」
加蓮「凛は何て?」
奈緒「近々ある団体を設立する予定らしい」
加蓮「団体?」
奈緒「"卯月のお下品スマイルを絶対に許さない。満点スマイルを私たちは取り戻す会"だ」
加蓮「長いよ」
奈緒「メンバーは凛、未央、美穂、響子、あたしで構成されている」
加蓮「しかも入ったのかよ」
奈緒「あたしは押しに弱くてな……」
加蓮「しっかりしてよね。ミイラ取りがミイラになってどうするの」
奈緒「でも、凛の言い分もわかる気がするんだ。笑顔は卯月の何よりのトレードマークだったわけだし」
奈緒「それを取り戻したいって気持ちは汲んでやるべきだと思う。暴走するのは間違っているけど」
加蓮「……」
奈緒「加蓮も入ったらどうだ?」
加蓮「謹んで辞退する」
バイバーイ
加蓮「……トレードマークねぇ」
楓「こんばんは」
加蓮「あ、楓さん。こんばんは」
楓「浮かない顔をしていますね。何かあったんですか?」
加蓮「例の卯月の件ですよ。凛も奈緒も無駄に大騒ぎしちゃって。あーやだやだ」
楓「……それはつまり、加蓮ちゃんは『さほど問題ではない』という考えているという事でしょうか」
加蓮「えっ。そうですけど」
楓「私はこの問題を重く捉えていますよ」
加蓮「……まさか楓さんも"あっち側"なの?」
楓「アイドルとして自身のトレードマークを、個性を守れないのは、アイドル失格とさえ言えると思っています」
加蓮「……楓さんまでそんな事を言うなんて。ただ笑い方が変わっただけですよ。大袈裟過ぎませんか」
楓「卯月ちゃんが一般の方でしたら私もこう厳しくは言っていないでしょう」
加蓮「何ですって?」
楓「卯月ちゃんはアイドルです。アイドルとは、自身のトレードマークを、個性を好きになってもらうお仕事です」
楓「ファンはいつだってアイドルの個性を見ているのです」
楓「笑顔が可愛い卯月ちゃんの笑い方が変わってしまったら、それはもはやアイドル島村卯月では無いのですよ」
加蓮「……!」
楓「事実、ファンの皆さんは卯月ちゃんの変化に困惑しているでしょう?」
楓「アイドルはファンを悲しませてはいけないのです。それはアイドルとしての大鉄則。甘えたことは言えません、私たちはプロなんですから」
加蓮「……」
──
テレビ『ここで緊急速報です』
テレビ『アイドルの島村卯月さんが、髪を金色に染めたとの情報が入ってきました!』
──集会所──
凛「……いよいよだね」
未央「うん。しまむーの蛮行は留まることを知らない」
奈緒「世間からのバッシングが強まる前に、私たちの手で卯月を目覚めさせてやろう」
凛「美穂と響子は事務所で待ち伏せてもらってる。私たちは……」
未央「しまむーの部屋に特攻だね」
奈緒「みんな武器は持ったな。ではこれより作戦を開始す──」
ガチャッ
加蓮「待って!」
凛「加蓮……! 悪いけど、私たち説得されるつもりはないよ」
加蓮「そうじゃなくて。私、私……」
凛「?」
加蓮「……大勢で押しかける前に、まず私1人で行かせてくれないかな?」
未央「そ、そうはいかないよ。こっちには必ずや元のしまむーを取り戻すという使命があるんだから!」
奈緒「待ってくれ未央。……感情的になっているあたしらよりも、加蓮の方が上手く卯月と話が出来るかも知れん」
加蓮「奈緒……」
奈緒「頼んだぞ加蓮。あたしたちの卯月を」
──卯月の部屋──
卯月「ぎゃはは。新しい髪色いい感じです♪」
ガチャッ
加蓮「お邪魔します」
卯月「あ、どうぞー。いきなりメール貰ってビックリしましたよ~」
加蓮「……」
卯月「それで、お話って何ですか?」
加蓮「……まずさ、理由について聞きたいんだけど。卯月はどうして笑い方を変えたの?」
卯月「笑い方?」
加蓮「気付いてるよね。前までは"ふふふ"って感じが、今は"ぎゃはは"になってるって」
卯月「あー……はい」
加蓮「どうして笑い方を変えたの?」
卯月「大した理由じゃないんです。少し前に風邪を引いてしまって声が出辛くなって、その時の笑い方が癖になってしまったというだけで……」
加蓮「戻そうとは思わなかったの?」
卯月「ええ、まあ。声は元通りになりましたし、笑い方まで無理して戻そうとは」ギャハハ…
加蓮「……」
卯月「えっと……戻すべきでしょうか。それを言いに来てくれたんですかね?」
加蓮「……別に。私はどっちでもいいと思うよ。笑い方が上品だろうと下品だろうと、満点だろうと赤点だろうと、卯月が卯月なことに変わりはないから」
卯月「そうですか。じゃあ──」
加蓮「でもそれは、私と卯月が友達だから」
卯月「……!」
加蓮「ファンから見た卯月は確かに変わってしまったんだ。その様子だと直接言われたことはないみたいだけど」
加蓮「自分が思っている以上に、笑顔は卯月の魅力なんだよって」
加蓮「今日はそれを言いに来たんだ」
卯月「……」
加蓮「言いたいことは以上だよ。じゃあ私、帰るから」
卯月「……ありがとうございます」
加蓮「お礼を言われるようなことじゃない。単に私がモヤモヤして気持ち悪かっただけ」
卯月「そうじゃなくて……。友達って言ってくれて」
加蓮「……!」
卯月「ふふふ」ニコ
この日を境に卯月の笑い方は元に戻った。
そう。"笑い方"は……。
──後日・事務所──
凛「重ねてお礼を言うよ加蓮。卯月を元に戻してくれてありがとう」
未央「きっと私たちじゃ上手くいかなかった。振り返ってみると、私たちかなり暴走しちゃってたから。本当にありがとう!」
加蓮「別に……ユニットが別な分フラットに話せたってだけだよ」
加蓮「それに、完全には元には戻らなかったんだし」
凛「えっ?」
加蓮「ほら、テレビを見て」
ピッ
卯月『そうなんですね。ふふふっ♪』
凛「元通りじゃん」
未央「いつも通り可愛い笑顔のしまむーだよ?」
加蓮「そうじゃなくて……ほら、金髪! 前の卯月は茶髪だったでしょ」
凛「あー」
未央「んー」
シーン…
加蓮「……え? 何その反応は」
凛「髪色ね」
未央「髪色髪色」
加蓮「……いつもと違うでしょ?」
凛「違うっちゃ違うね」
未央「その通りだけどね」
加蓮「……何、どうしたの。私変なこと言ってる?」
未央「別に変なことは言ってないよ」
凛「だけどさー」
凛「別に髪色は卯月の個性じゃないじゃん」
加蓮「……は?」
凛「美嘉とか周子が黒髪に染めたとかなら分かるよ? ほら、髪色が特徴の1つだからね。でも卯月は……」
未央「そこで売ってるわけじゃないもんね。別に、お好きにどうぞっていうか」
加蓮「……」ポカーン
ガチャッ
奈緒「加蓮。お昼ご飯食べに行こう」
加蓮「あ、うん。今行く」
──ハンバーガー屋──
奈緒「ここはあたしのオススメの店なんだ」
加蓮「うん。この間卯月とも来たよ」
奈緒「ありゃそうだったか。だけどお前好きだろ、ポテト」
加蓮「あー。実はさ、私ポテトはもう──」
楓『ファンはいつだってアイドルの個性を見ているのです』
加蓮「……」
奈緒「どうした加蓮」
奈緒「まさか、ポテトを頼まないのか?」
イタダキマース
奈緒「ったく。お前ホントそれ好きだよなー」
加蓮「ま、まあね」
奈緒「ポテトはもはや加蓮のトレードマークだよ」
加蓮「……うん」
奈緒「美味しいか加蓮?」
加蓮「うん。私、ポテト大好き……」
おわり
お疲れさまでした
見てくださった方、ありがとうございました
よかったら過去作も見てください
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