【ARIA×モバマス】浜口あやめ「ARIAカンパニーの新人を」桃井あずき「監視大作戦!」 (10)

ARIAとモバマスのクロスオーバーです。

高森藍子「目指せ!水先案内人!」
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【ARIA×モバマス】高森藍子「そのあたたかな手に」
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これらの続きです。よろしくお願いします。

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前略

いかがお過ごしですか?火星はまだ八月で春真っ盛りです。

そして、そんなハルの暖かな陽気が素敵な出来事を運んでくれました。


「うんしょ……っと……」

自分の身体を支える筋肉に目を覚ましてもらうために軽くストレッチをする。鳴れない筋肉も使うので、ときおり痛すぎて小さく悲鳴を上げる。それに耐えながら、穏やかな波に揺れるゴンドラに合わせて身体に弾みをつける。

「……5、6、7、8!」

ゴンドラに乗り始めてから数日が経って、ようやくまっすぐ進めるようになった。バックもできるようになった。と言っても、まだまだのろのろなスピードではあるのだけれど。でも、アイさんも「上手になってるね」と言ってくれるので、へこたれない。

「よし!さあ、アリア社長、今日も練習ですよ!」

「ぶいにゅ」

ストレッチを終え、オールを手にしながら私はアリア社長にそう声をかける。アリア社長は私の言葉に返事をすると、練習用のゴンドラに乗りこんだ。私はアリア社長が乗り込んだことを確認すると、バリーナの紐をほどいて少し蹴る。ゴンドラの頭の向く方へ進む。そのままオールをゆっくりと水につける。一日として同じ水の感触はない。ネオ・ヴェネツィアの海は、いつだって私に新しい発見をくれる。

「何だか今日の水は少しだけもたっとしてますね、アリア社長」

「にゅ?」

「抵抗感はあんまりないんですけど、少しだけ重たい感じがするんです」

私がそう言うと、アリア社長がゴンドラの縁から身を乗り出して水を触ろうとする。

「わわっ!?落っこちないようにしてくださいね、アリア社長」

「ぶいにゅ!」

アリア社長は「もちろん!」といったように開いている手の方をこちらに振ってきた。そしてもう片方の手で海面を撫でている。私はもともとそんなに早く無いゴンドラのスピードをさらに緩め、アリア社長が落ちないようにする。今はそんなに朝の早い時間というわけではないが、この街特有のゆったりした時間が海に流れている。こんな時間の流れは、マンホームでは味わったことがなかったが、こっちの方が性に合っている気がした。

今日の風は今日の水とは違って、さらりとしていた。そよ風が髪を撫でる感覚が楽しくて、自然と笑顔になる。

「気持ちいですね、アリア社長」

「ちゃい!」

いつの間にか海面を触る遊びを止めていたアリア社長が、先ほどまで水を触っていた方の手を振りながらそう答えた。

藍子が気持ちよくゴンドラを漕いでいる中、そんな藍子を眺める瞳が四つ。

「むむむむむ……」

「あれが件の新人さんですね、あずき殿」

「そうだと思うよ。先輩たちが言ってた、あのなんとも言えない雰囲気?が、まんまARIAカンパニーって感じだし。というか、そもそもARIAカンパニーの制服着てるしね」

「確かに」

二人は会話をしながらも、目線の先に藍子を入れたままである。二人はウンディーネの制服に身を包んでいる。一人は赤いラインの入った制服で、もう片方は黄色いラインが入った制服。

「むむむむむ……」

「う~む……」

「むむむむむ……」

「……それで、どうするのです?」

「え?どうするって?」

「彼女、どんどん進んでいってしまいますよ?このままだと監視大作戦が失敗してしまうのでは?」

「……確かに~!早く言ってよあやめちゃん!」

「いえ、まだ焦らなくとも大丈夫です、あずき殿。彼女のゴンドラはまだ日が浅いせいかゆっくりです。私たちでも十分追いつけます!」

「じゃあ、今すぐ私たちもゴンドラに乗りこもう!」

「はい!」

「さあ、あやめちゃん!漕いで漕いで~!」

「わ、わたくしが漕ぐのですか!?」

「そうだよ~!名付けて忍法・めちゃめちゃ静かに素早い操舵の術大作戦!」

「そんなむちゃな!?」

彼女たちはわちゃわちゃしながらも、軽い身のこなしでゴンドラに乗る。オールを手に取ったのは、オレンジのラインが入った制服を着た方。

「では、行きますよ!ニンッ!」

先ほどまでは慌てていたそぶりを見せた彼女だが、オールを持つと、しっかりとした姿でゴンドラを漕ぎ始めた。

「ゴーゴー!」

「ちょ、あずき殿。あんまり大きな声を出すとバレてしまいます!」

「まだ距離はあるから大丈夫だよ。それより、あやめちゃんめちゃめちゃ静かに漕いでるね。その割にスピードも出てるし」

「先ほどあずき殿が出した作戦通りにやってるだけですよ。とても大変ですけど。でも、このくらい、忍者水先案内人のわたくしにかかれば……わっとと……」

「はわ!大丈夫?あやめちゃん」

「ええ、何とか」

「さっきの作戦は忘れていいから。今度は慎重にでも追いつけるように大作戦にしよう」

「了解です!」

こうして、藍子の後ろに二人の影が重なった。

「……ん?」

私がゴンドラを漕いでいると、後ろから女の子の声が聞こえてきた。後ろの方を振りむこうとしたのだが、バランスを崩すのが怖くてできなかった。どんどんその音源が近づいてくる。そして、もう一隻のゴンドラが私のゴンドラのすぐ隣にやって来た。

「よ~よ~彼女~お茶でもしない?」

「へ?」

いきなり話しかけてきた彼女はゴンドラの客席部分に座っていて、私と同じ水先案内人の制服を着ていた女の子だった。赤いラインが入っていて、たまに見かけるものだった。そして、船を漕いでいる女の子は、これまた水先案内人の制服を着ているが黄色いラインが入っている。

「あ、あずき殿!?その声のかけ方は悪手では?」

「で、でも、どんなふうに声かけたらいいかわかんなかったし、女の子に声をかける行為って、マンガだとナンパしかなかったから……」

「ナンパはダメですよ!」

「????」

いきなり多くの情報量が私の頭の中に入ってきてフリーズしそうになる。だけど、私の腕はしっかりとオールを漕ぐ。

しばらくの間、私の船と隣の船の間には、水を押す音だけが響いた。

「……と、とりあえず、お茶しませんかって言うのは本気なんですよね?あずき殿?」

無言の空気に耐えられなかったのか、ゴンドラを漕いでいる方の髪の毛の長い女の子が口を開いた。

「そ、そうだね。それはその通りだよ!お茶しませんか大作戦だよ!」

「ということで、お茶しませんか?高森藍子さん?」

「あれ、私の名前……」

「ささっ!あずき殿、この辺りにいいお店を知っているんでしたよね!?」

「そ、そうだね!じゃあそこに行こうか、藍子ちゃん!」

「ええ……???」

いつの間にか私は見ず知らずの水先案内人に連れられて、カフェに行くことになりました。

「なるほど、そういうことだったんですね……」

連れられたカフェでカフェラテをすする。昼間は寒いということを感じない季節ではあるが、温かいカフェラテはそれだけで幸せをおすそわけしててくれる感じがする。

「ごめんなさい!私たち、どうしたらいいかわからなくって……」

二人が勢い良く頭を下げる。私はそれに驚きながら、彼女たちに話しかける。

「いいえ、謝らないで大丈夫ですよ。むしろうれしいんです」

「嬉しい?」

私の言葉に二人が反応して、こちらを見てくる。

「はい。火星に来て、アイさん以外の人とお話したのがこれで初めてだったから」

「そうなのですか……そう言っていただいてこちらとしてもありがたいです」

「だから、むしろ話しかけてきてくれてありがとうって、そう思ってます」

そして一息つくためにまたカフェラテを飲む。ここのカフェはサン・ザッカリーア・ピエタを少し過ぎたところにあって、まだ細かな水路にチャレンジすることができない私でも比較的簡単にたどり着くことができる場所にある運河沿いの店だ。この前アイさんに連れて行ってもらったお店もとても素敵なところだったけれど、このカフェはどちらかというとテイクアウトを主としているところらしい。しかし、外にいくつかテーブルと椅子が置いてあるのは、やはりネオ・ヴェネツィア特有かもしれない。

「それで、ええっと……お二人を何とお呼びすれば良いんでしょうか……」

私がそう話を始めると、赤いラインの制服の方の女の子が、思い出したように声を上げた。

「あっ~!そうだよ!あずきたち、まだ自己紹介してない!」

「そういえば、そうでした。うっかり失念していました」

「ということで……」

二人はいきなり立ち上がると、自己紹介をし始めた。

「わたくしは、あやめ・N・浜口って言います。オレンジぷらねっとに所属していて、忍者水先案内人を目指しています!気軽にあやめと呼んでください!ニンッ!」

「に、にん……?」

「私は桃井あずき。姫屋支店に所属してる水先案内人です!セクシーな水先案内人を目指してます!あずきって呼んでね!」

「せ、せくしー……?」

一通り紹介が終わったのか、あやめちゃんとあずきちゃんは椅子に座った。

「あ、じゃあ次は私が……」

私がそう言って立ち上がろうとした瞬間、二人が一口をそろえて言った。

「高森藍子ちゃん、だよね!」「高森藍子殿、ですよね!」

「う、うん……」

二人の勢いに押されて、持ち上げた腰が再び座版に落ちる。

「……さっきも思ったんですけど、どうして私の名前を?」

私は気になって二人に尋ねてみた。

「ああ、それは、私たちの先輩が教えてくれたからだよ」

あずきちゃんがそう言った。

「そうなんです。私たちの先輩は、藍子殿の先輩のアイさんと仲が良いらしくて……それで先輩から『ARIAカンパニーに新しい子が来たみたいだから、顔を見に行ってこい』って言われて」

「それで知ってたんだ~!」

あずきちゃんとあやめちゃんはそう話しながら、私の顔を見る。

「そうだったんですね……アイさんのお友達が、あやめちゃんとあずきちゃんの先輩……」

私も二人の顔を見つめ返した。それと同時に、アイさんとそのお友達にも思いをはせる。なんだか、遥か昔から友だちだったみたいな感覚が私を包む。

「……もしかして、運命なのかもしれませんね」

私がそうぽつりとつぶやくと、あずきちゃんとあやめちゃんは目を合わせた。そして、お互いに頷き合っている。

「ど、どうしたんです?」

私がそう尋ねると、あずきちゃんが口を開いた。

「いや~、やっぱり、ARIAカンパニーの水先案内人なんだなぁって」

「そうですね。やはり、先輩の言っていたことは正しかったですね」

「な、なんです……?」

何かやってしまったのかと思い、私は急に不安になって二人に聞く。すると、あずきちゃんが答えてくれた。

「先輩たちがね。『ARIAカンパニーの人はみんな、「ステキ―」って感じのオーラがあるからすぐにわかる。新人の子も絶対そうだから大丈夫』って、言ってたんだけどね」

「まさにその通りだと、先ほどの藍子殿の言葉を受けて思ったのです」

あやめちゃんがあずきちゃんの言葉を引き継ぎそう言う。

「そ、そうなんだ……」

二人の言葉に驚きながらも、まだここに来てから数日しかたっていないにもかかわらず、ARIAカンパニーの雰囲気が出ていると言われて、なんだか少しうれしかった。

「あ、いっけない!」

しばらく談笑を続けていた私たちに出来た、ほんの隙間。あずきちゃんが腕時計をふと見てからそう叫んだ。

「どうしたのです、あずき殿?」

「もうこんな時間だよ!いつの間にこんなに時間がたってたんだろう?」

あずきちゃんが時計を見せる。短針が12の文字を少し越していた。

「なんと!もうそんな時間だったのですか」

あやめちゃんが時計を見て驚く。

「わたし、今日午後からあずささんのコーチングがあるんだった」

「わたくしも、この後アーニャさんに教わるんでした!」

二人とも慌てたような様子を見せる。そんな中、あずきちゃんは急にぴたりと動きを止めて、身体を私の方に向けた。そして、手をずいと差し出してきた。

「藍子ちゃん!」

「は、はい」

私は差し出された手を握り返した。すると、あずきちゃんはぶんぶんと腕を振った。

「あずきたち、今日から友達、だね!」

あずきちゃんはそう言って、ニカッっと笑った。

「……はい!」

私もつられて笑顔になる。

「あ、わたくしとも握手ですよ!藍子殿」

「うん。もちろん」

あやめちゃんとも握手を交わす。

「じゃあ、また明日!」

そう言って、あずきちゃんとあやめちゃんは漕いできたゴンドラに乗り込み、さっき通った道を漕いでいってしまった。

私は、そんな二人の背中を見つめながら、「また明日」という言葉をかみしめた。

「また明日、かぁ……」

その言葉は、私の心の中に広がっていって、なんだかとてもやさしいあたたかさに変わっていった。

「あ、私も練習しないと」

しばらく二人の余韻を感じていたけれど、ふと我に返って思い出した。机の下でお昼寝をしていたアリア社長を起こす。

「お待たせしました、アリア社長。ARIAカンパニーに帰りますよ」

「……にゅ?」

寝惚けまなこをこすりながら、返事をするアリア社長。私はアリア社長が起きるのを待ってから、ゴンドラに乗り込んだ。



その夜。私は今日あった出来事をアイさんに話した。

「……それで、また明日って言って、別れたんです」

「……あずさとアーニャ、そんな話してたんだ」

私が話し終わると、アイさんは私に聞こえないくらいの声で何かをつぶやいた。

「アイさん?」

「ん?ああ、何でもないよ。私の友達の後輩が、藍子ちゃんの新しい友達になったなんて、ミラクルかもしれないね」

アイさんはそう言って私に微笑んだ。

「はい!まさにミラクルです!」

「明日から合同練習?」

「はい、そうです」

「良いねぇ。私たちが合同練習してた時は……」

「ふむふむ……」

こうして。火星での新しいお友達が、同時に二人もできました。アイさんとそのお友達も、アイさんの先輩も、お友達と一緒に練習をしていたらしいので、これから毎日一緒にあずきちゃんたちと練習できると思うと、ワクワクが止まりません!

今回はこれで終わりです。来週も更新するのでよろしくお願いしいます。ありがとうございました。

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