初投稿です。俺ガイルSSのみをずーーと読専でしたが、ふとネタを思いついてしまい、書き込みしてしまいました。
駄文で読みにくいところも多々ありますが、批評いただければ幸いです。
宜しくお願いいたします。
まだ終わりがぜんぜん見えておらず、手探りでの更新となりそうです。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1376157749
八幡「あれっ?」
戸部「へっ?」
結衣「ぶっ?」
雪乃「!?」
八幡(い、いや答えが違う・・・そこは断るべきでないと)
姫菜「私、比企谷くんとならうまく付き合えるかも」
八幡「・・・じょ、冗談なら止めてほしい。へ、返事間違ってないか?勘違いしてしまうぞ」
姫菜「勘違いしていいよ。」
八幡「うぐっ、・・・・・・な、何故だ?」
姫菜「私ね自分のことが嫌いなの、誰も私のこと理解できないし、理解されたくもない。
だから誰ともうまく付き合っていけないの、ヒキタニくんはそういうのわかるでしょ?」
八幡「そんなことは」
姫菜「あるよ。・・・でも比企谷君ならそんな私を変えてくれると思ったの。」
八幡「・・・・・・」
姫菜「話終わりなら私、もう行くね。・・・これから宜しく・・・・ひ・・八幡」
八幡「ごふっ」
海老名さんは最後に破壊力抜群のセリフを笑顔と共に置いて立ち去って行った。
海老名さんが立ち去った後、戸部は口をあんぐりと開け、動くことができないでいた。
今も言葉を失ったままだ。ただ首だけがぎりぎりとこちらに向く。
戸部「ヒキタニくん・・・。それはないでしょうー。」ピキピキ
その後の戸部の襲いかからんばかりの追求に対しては、葉山が必死に止めてくれた。
ただ戸部も振られたことと、自分ではどのみちダメそうな雰囲気を理解したようで、肩を落として帰っていった。
しかしそんな修羅場が些細なものに思える程、俺の背後にはには恐ろしい気配が立ち込めていた。
気温がぐっと下がったように感じる。
八幡(なにこれコンビニの冷蔵庫の中?今すぐ逃げ出さないと特定されて俺の個人情報が暴かれちゃう)
しかしながら逃げ出した後のことを考えると、どっちにしろ登校拒否しか選択肢がない現実を予感し覚悟を決め、
これから起きることに戦慄を抱きながら二人の方へ歩いて行く。
雪ノ下は直立不動で立ち尽くし、俺を睨みつけていた。
由比ヶ浜は困ったように下を向いている
雪ノ下の冷たく糾弾するような視線に、足が鈍る。
雪乃・結衣「・・・どういうこと?」ゴゴゴ、ウルウル
八幡「い、いや・・・想定と違うというか、本来であればこうはならなかったというか・・・」(ヤバイよー)
雪乃「つまり戸部くんの告白を阻止するのが目的だったということなのね?」
八幡「あ、あぁ」(お、イケルか?)
結衣「姫菜のことが、ほ、本当に好きで告白した訳じゃないよね?姫菜の返事が間違っていただけなのよね?」
八幡「お、おぅ」(な、なにか違和感が)
雪乃「じゃあ早速海老名さんにさっきのは嘘だったと告げなければならないわよね?」
八幡「さ、早速?い、いや、それはあまりにも・・・」
雪乃「嫌?いま嫌といったの?つまり海老名さんとお付き合いをするということなの?」
「その辺の馬鹿なバカップルと同様、ひと目もはばからず私の前でイチャイチャチュッチュするということ?」
八幡「い、いやなんでお前の前なんだよ?あとイチャイチャチュッチュとかお前の類語辞典に入ってないだろ
ってゆーか冷静に考えてみろ、俺と海老名さんだぞ、ほっといたらそのうち終わるだろ」
雪乃「どういう意味かしら?」
八幡「修学旅行の高揚感で海老名さんも少し間違えただけだ、そのうち普通に別れるさ」
結衣「でもさ、なんかそういうのいい気持ちしないし」
「・・・付き合っているの、やだし」ボソボソ
難聴主人公(なにか最後のほうはよく聞こえなかったな)
結衣「そ、そのっ!なんか好きでもないのに付き合っているとかモヤモヤするじゃない?」
・・・まぁなんだまっすぐな奴なんだ、こいつは。けど俺は曲がりくねっているのである。
八幡「俺は付き合っているカップルを見て、実は好きでもないくせにとか想像して楽しむけどな」
結衣「正確悪っ!」
雪乃「とにかく、海老名さんの動向、二人の内情をもうちょっと知ってから適切な処理を取りましょう。
私が海老名さんに直接言ってもいいのだけれど、それだと修羅場になるだけでしょうし・・・」
八幡「いや、これ俺が海老名さんと付き合ったところで、そのうち自然消滅するからなんもやんなくていいと思うんだけど。
誰にも実害ないし」
(修羅場はスルーしておこう)
八幡(海老名さんが受けいれたのはきっと一過性のものだ、戸部からのアプローチをごまかそう、風よけのための相手、
そんな相手として選ばれただけに過ぎない。黙っていればすぐに別れることになるだろう)
だが雪ノ下は納得行かないようで、俺から視線を外し、夕日のせいで頬を赤く染めて
雪乃「・・・実害なら、あるわ」
結衣「う、うんやっぱり付き合うとか困るしね!」
由比ヶ浜も夕日で頬を染めて、前のめりに賛同する。
鈍感主人公(なんだかこれは突っ込むと、不味そうなことが起きそうな予感がする。多数決の結果だと諦めその決定に従おう)
八幡「・・・・。まぁいいけどよ」
俺が不承不承に言うと、満足気に雪ノ下が頷く。
雪乃「では、まず海老名さんの様子を見て、解決の糸口を探りましょう」
そう言われても既に夜も遅く、海老名さんもホテルに帰っているだろう。
八幡「んじゃ、とりあえず今日のところはもうできることはないな」
雪乃「そうね。・・・そろそろいい時間だし、早速お別れの旨を伝えるメールを送りましょう」
結衣「だね。今すぐ送ろう!」
八幡「いやいやいや、俺もうできることないっていったよね。おまえもそうねって返したよね?
ついでにいうと様子を見てとも言ったよね?まだなんの付き合っている様子もなかったじゃん」
雪乃「・・・八幡って呼ばれてた・・・」ボソボソ
難聴男「え、なんだって?」
雪乃「なにを言っているの引き伸ばしくん、明日から頑張るとか、本件は持ち帰り検討しますとか、
後日折を見て回答します。とか社会では最も忌み嫌われる行為よ」
「某予備校教師もさかんに叫んでいるでしょう、いつ殺るの?と」
八幡「たしかに言っていることは全くもって正論なのだが、最後のフレーズは何故か違和感を感じたぞ」
「それに答えると俺の存在が消えてしまうよう気がしたぞ!あと俺の名前は引き伸ばしじゃねぇ」
いまでしょ。嫌な言葉だ。毎日上司から言われそうなくらいに嫌な言葉。
あ~早くブーム終わらねーかな~
雪乃「あら、いつも大事なことを引き伸ばしている鈍感主人公にはピッタリの名前だと思うけれど」
八幡(なにを言っているのかよくわからんが、突っ込むのはまたの機会にしよう)
八幡「いや、告白したすぐ後に嘘でしたとか、どんだけヒドイ行為だよ」
「それをされた人がどれだけ傷つくか知っているのか?俺の知り合いの知り合いの話なんだがそういうことをされてしまって
どんどん目が腐ってしまって、人間不信になってカリスマぼっちを極めるくらいになるんだぞ」ナミダメ
結衣「ごめんねヒッキー!、辛いトラウマを思い出しちゃったね」ナミダメ
八幡「イヤオレノシリアイノシリアイのハナシダシー」
結衣「でもそうなるとある程度は付き合ってそのうち別れるようにするということ?」
雪乃「こうなると仕方ないわね、なるべく早く別れるように作戦を練る必要があるわね」
八幡「ってか、俺と海老名さんが別れる前提は変わらないのか?もしかしたらお互いが惹かれ合って付き合うとかは?」
雪乃「なに?あなた海老名さんのことを好きになるの?」ゴゴゴ
八幡「い、いや仮だ、仮の仮定の憶測での可能性の話だ」アセアセ
結衣「姫菜って腐ってるよ?あっ!腐っているという共通点が必要なの?私も腐ればいいの?どうやったら目が腐るの?」
八幡「いや腐っているのは困るってか、無理だから、腐らないから、あと友達のこと腐ってるとかいっちゃダメだからな」
八幡(どうやら俺と海老名さんが付き合うという未来日記は書けないようだ)
とりあえずここまでです。
書き方とか変な点は指摘願います。
乙
とりあえず気になったのは地の文を書くなら八幡の()も地の文にした方がいいと思う
それか逆に全部台本形式にするか
あとは誤字に気をつけて期待してる
感想ありがとうございます。
>>12
助言助かります。
たしかに八幡の気持ち()にしなくてもいけますね。
誤字って他の読んでて気づかないのかなとか思っていたけど、気づかないんですね orz
>>6 正確 →性格
あと7に夕日がとか書いていたけど夜じゃん。恥ずかしい・・・
ライトアップに変換・・・は無理があるか。
本日夜につづきを投稿します。
ところで昨日初めてコミケに行って来ました。
とうぜんぼっちで!
混んでいるのがやなので遅めに行ったら3時に着きました、ほぼ終わってるんですね。
俺ガイルの2次創作とかあるのかと思ったら椅子がほとんど挙げられて撤収モードでした。org
エロではなく、2次小説とかもあるんですかね?2日目なのかな?
企業ブースで売っていた、サイン本と迷言Tシャツは欲しかった。
やっぱり相当並ばないと買えないもんなんですかね?
俺ガイル好きなんでそんな雑談もしていただけば嬉しく思います。
作者が雑談ばかりしていて叩かれているスレも見てきたので、不快にならない程度に注意しますm(_ _)m
投下します。
修学旅行最終日
悲劇を生む乗り物新幹線だが、帰りの便ではどのようにポジショニングをするべきか。
俺と戸塚、そこが固まればあとはどうでもいい。
昨夜の話を無理矢理考えないようにし、なんとか戸塚の隣に座ろうと俺は画策する。
作戦はこうだ、戸塚の後ろにステルスし、戸塚が席に座ったとたん椅子取りゲームさながらのスピードで隣に鎮座。
作戦もクソもねーなこれ。
さてそんなステルスヒッキーとして虎視眈々と戸塚に付いて行ってると、少し前であーしさんがキョロキョロ誰かを探している。
何事かと興味なく戸塚に目を戻したその時、不意に左手を引っ張られた。
バランスを崩し、通路側の席に倒れこむ。すると窓際の席に俺の左腕を抱き込んだ海老名さんが笑顔で座っていた。
姫菜「うーん・・・八幡は京都と東京どっちが受けだと思う?」
八幡「は?」
理解不能の質問に固まる俺と口元から涎がでかかっている海老名さん
そんなやり取りを近くにいた戸部は怒りの形相で、あーしさんはキョトンとした表情で、由比ヶ浜は引きつった笑みで見ていた。
俺の考えがまとまらないうちに、海老名さんがさらにぐいっと左手を引いた。
姫菜「はいはい八幡はそこ、私がここ」
結衣「ちょ、姫菜」
文句を言いかけた由比ヶ浜の言葉をスルーし海老名さんは俺の手を握ると自分の隣へといざなう。
姫菜「八幡、隣座ってね」
八幡「いや俺は戸塚のところに・・・」
いきなりの展開に俺はいやいやと首を振ったが、海老名さんが俺の手を引っ張ると
それには逆らえず座ってしまう。
押しに弱いんだな俺、だってしかたないじゃん左腕ホールドされて手握られてるんだもん。
これで断れる男子高校生がいたらそいつはきっと海老名さんの腐界ワールドの住人だろ。
俺は仕方なく座ることにしたが、肘掛けに頬杖ついて居眠り体制に入った。
すると海老名さんは目をキラリと光らせ俺の耳元で布教活動を始めた。
姫菜「私が思うに、京都と東京って受けでもあり攻めでもあると思うんだよね
ほら東京と京都と文字を入れ替えるとほぼ同じ読み方じゃない?
つまり東京×京都でありつつ京都×東京だと思うのよ。
数字で例えると6と9の関係、キチンと言うならシックスナ」
八幡「すまん俺が悪かった。眠気も冷めた、ぜひ東京と京都の文化の違いにおける話をしようじゃないか」
姫菜「京都といえば新撰組よね。ねぇ知ってる?新撰組って最大の時には男の人が200人以上もいたんだって、
200人以上も男がいれば、それはそれは絶対にぐ腐腐腐な展開があったと」
八幡「すまん話題の選択を間違えた。男同士の恋愛の話ではなくもっと他の話をしようじゃないか」
そういや新撰組グッズをみてはぁはぁ言っていたな。
相変わらずの腐界ワールドへの墜落を、必死で回避をするその努力を嘲笑うかのように、その先の質問は・・・
姫菜「えーー、男同士がダメなら・・・男女の恋愛の話とか?」
八幡「うぐっ・・・」
姫菜「ねぇ・・?八幡、私達付き合ってるんだよね?」ウワメヅカイ
肩までの黒髪に赤いフレームのメガネ、薄いガラスの奥にある目は少し潤んでいる。
八幡「ぐはっ」
なんて破壊力だ、清楚系メガネ美人の上目遣い・・・
これ惹かれる可能性という段階とかではなく、ってかもう既に・・・
とりあえずここまで
もう少しあとでまた投下します。
マジぱねぇわー…半沢直樹マジぱねぇわー…
レスが4つか・・・
倍返しだ!!
ということで投下します。
姫菜「昨夜の告白は私の願望が見せた夢だったのかなぁ?」ナミダメ
八幡「い、いや、昨日のアレは・・・」
姫菜「・・・ア・レ・は?嘘じゃないよね?」ズイー
八幡「嘘じゃ・・・ない・・です」
姫菜「嘘つき・・・」
八幡「・・ハイ?」
海老名さんは眼鏡をすっとあげた。レンズが反射し、その眼差しがわからなくなる。
けどやっぱり、と付け足すように言ってから海老名さんは顔を上げた。頬をわずかに染めて、いつもの明るい笑顔だ。
姫菜「昨日も言ったけど、私、ヒキタニくんとならうまく付き合えると思ったの」
ん?・・・あえてヒキタニくんと言い戻していることに気づき、違和感を覚える。
それに海老名さんのもつ雰囲気も少し変化した。やはりなにか真意は別にあるのか?
昨夜の二人からの追求で想定した仮定を思い出してみる。
八幡「・・・相談はまだ終わっていないということか?」
海老名さんのチラリと見えたその眼差しには称賛と安堵が含まれ、そして小さな顔に仄暗い笑みを浮かべた。
周囲をさりげなく一瞥し、ささやくような声で話を続ける。
姫菜「やはりヒキタニくんに相談して正解だったね。・・・最近ね、戸部くんのような人が増えてきているの。
例えるなら私のATフィールドが効かないというより乗り越えてくるパターンかな」
わぁ的確ぅ
某超人気アニメの絶対防御を例えにした海老名さんは何故かぐ腐腐と付け加えた。
きっとカオルくんの顔を思い出したのだろう。
ちなみに俺も某アニメには非常に共感している。なんなら俺パイロットの適正ありすぎだと、
ATフィールド強度で俺に勝てる奴いるのというレベルまである。
話を戻そう
たしかに三浦も危ないと心配していたな。器用さでこれまでなんとかなっていたがそれも限界にきたってことか。
高校2年の時期だしクラスのトップカーストに入っている容姿は十分にATフィールドを超えるモチベーションになりうる
戸部のように特攻する奴が他にいたっておかしくない。
姫菜「あのときヒキタニくんの告白を断ったとしても、きっと戸部くんは諦めてくれないでしょう」
たしかにあいつは諦めらんないっしょとか言ってたな
最後の最後まで頑張れとかいってた奴もいた気がする。無責任な奴だ、誰だっけ?
問題を先延ばしにするだけでは同じ問題は再発してしまう。
キャラクターで通用しないなら、他の手を講じるしかない。
そういや俺も付き合っているカップルを見る度に想像していたことがあったな。
まさか自分の身にそれが起きるとは、やはり俺の考えは正しい、そうか俺が神だったのか。
初めて付き合った彼女がまさか自分を好きでないとか、そんな悲しい現実であることは無理矢理考えないようにした・・・
俺は一連の流れにようやく得心し、今後の展開にいろいろ想いを巡らす。
ふむ・・・俺にとってもこの展開で得するものがあるか・・・
八幡「つまり俺は君にうっかり惚れたということでいいんだな?」
海老名さんは意味深な笑みを浮かべ答える
姫菜「そうやってどうでもいいと思っている人間には正直になるところ嫌いじゃないよ」
八幡「奇遇だな。俺も自分のそういうところが嫌いじゃない」
姫菜「私だってこういう心にもないことをスパっといえちゃう自分が嫌いじゃない」
そう言った後、海老名さんの視線は遥か遠く、窓の外へと向けられた。
そして一言
姫菜「だから、私は自分が嫌い」
変わる世界の中で、変わらずにはいられない関係は多分あるのだろう。
取り返しがつかないほどに壊れてしまうものもきっとある。
だから誰もが嘘をつく。
であれば一番の大嘘つきは俺であるべきだと思う。
本日はここまでです。
海老名さんの回答が違っても、行き着くところを同じにするために、多少のムリが生じていることはわかっています。
てゆーか原文パクリすぎて、既に創作ではないな。
お待たせしました。
もうすぐ投下します。
雑談はOKと言った手前、強くはいえません。言えませんが・・・
代わりに大ババ様に言ってもらいましょう。
大ババ様「腐海に手を出してはならぬ」
腐海が生まれてより○年いくたびも人は腐海を除こうと試みて来た
が、そのたびに腐の群れが怒りに狂い地を埋めつくす大波となって押し寄せて来た
スレを滅ぼし コミケを飲み込み自らのカバンが薄い本で埋まるまで腐は走り続けた
やがてSSのむくろを苗床にして腐子が少年少女に根を張り
広大な土地が腐海に没したのじゃ
腐海に手を出してはならん
やはり俺のヒロイン設定は間違っていた。
やはりまだ顔が熱い・・・
晩秋の冷たい風が熱を持った身体に心地よく感じる。
青白い竹林と男色系の光を放つ灯籠が織りなす荘厳な道を、彼の視界から一刻も早く逃れたいと自然と早足で歩く。
・・・失礼・・暖色だったね
まさかあのような方法で戸部くんの告白を回避するとは思わなかった。
不意打ちのような告白に対し、我ながら最善の回答ができたこと、そしてその成果に対し満足の笑みがこぼれる。
彼は他の人とは違う。・・・実をいうと一緒のクラスになった時から気にはなっていた。
ほとんどオートマティックに人を避ける能力に共感と興味を抱いた。・・・存在感を消すそのスキルに同種の親近感を感じ、
いつか彼と話をしてみたいと考えていた。
今のクラスになった当初、私としては、彼同様クラスにひっそりと影を潜めるつもりでいたのだが、優美子と仲良くなった時点で方向転換を余儀なくされた。
決して優美子や結衣と仲良くすることが嫌ではなく、むしろ今ではその交流を大事に、壊したくないと思うようにまでになった。
昔の私を知る人にとっては驚くほどの変化だと自分でも思う。
でもそんな私でもいまでは友達と腐通に過ごすことができている。
・・・失礼、普通じゃなかったね・・・
誰にも理解できないし、理解されたいとも思わない。だから人ともうまく付き合っていけない、ずっとそう思っていた。
でも彼女らは私と仲良くなってくれた。 ・・・偽物の私を・・・
今では罪悪感もなく自然と擬態することで、やっていけるがそれでもやはり本当の自分でないため、多少の歪みがでてしまう。
一度、優美子がしつこく男を勧めてきた時には、やっぱりムリだ、もうやめてもいいやと半ば諦めた。
あの時の優美子の必死の謝罪がなければ、もうとっくに友達をやめていただろう。
優美子は良い子だ。性格が悪いと思われがちだが、人のことを思いやれて面倒見がよく、行動も自分に正直なだけだ。
自分が悪いと思ったらちゃんと謝れる所は素直に尊敬できる。偽りの自分を演じ悪びれもせずのうのうとしている人とは大違いだ。
うすうす本当の私を感じているだろうけれど、ちゃんとそういう私には距離を置いていてくれている。
結衣も純真でまっすぐで、こんなにかわいい子がよく自分と友だちになってくれたと、その繋がりを手放したくないと切に思う。
彼女の胸に秘めた気持ちを知っているくせに、それを踏みにじろうとする女とは根本から人としての成り立ちが違うのだろう。
やはりそのような人間が本当の自分を隠して彼女らと友達面をしていることに、心底嫌気がさす。
そんな自己嫌悪に満ちた日々を送っているうちに、私と似た特徴を持つであろう彼であれば分かってくれるのではないか?
いや理解してほしいということではない、人に理解してもらっても救われる形のものではないのだから・・・
・・・では共感してほしいのか?・・・わかるよと言ってもらえれば気が楽になる?
答えの見えない問いに対し、ささやかな期待を胸に彼に近づこうとした。
・・・それまで私は彼のことを知っているつもりでいた。いや知っているのは私だけだと思い込んでいた。
しかし彼は私の妄想異常、・・・失礼、想像以上だった。
彼に最初に近づこうとした林間学校のボランティアでは、一人の少女を救ってみせた。
文化祭では、相模さんが救われている。どちらも臆病者の私にはとても考えつかないやり方でだ。
さまよえる孤高の魂は拠り所を必要としない。
そんな恥ずかしいセリフも彼の行動を鑑みるとあながち間違っていないのではないか。
私は彼に救いを求めていたのではなかった。彼の内面に自分でも気づかないうちにただ惹かれていただけだったと・・・
姫菜「ずっと前から好きでした。」口に出して呟いてみる。
・・・・先ほどの彼の告白を思い出す。自分が抱いていた気持ちを反芻し、冷めてきた顔がまた熱くなるのがわかった。
彼が私のことを好きでもなく、むしろどうでもいいと思っていることはわかっている。
彼が私のことを気にかけているといった期待は、彼を知っている私には元々ない。
しかし私はどうでもいいと思われているポジションから彼女というステータスを得ることができた。
それも彼からの告白という最高の形でだ。・・・・大丈夫、私はうまくやっていける。
・・・なぜなら私だけが彼を知っているから。
変わる世界の中で、変わらずにはいられない関係は多分あるのだろう。
取り返しがつかないほどに壊れてしまうものもきっとある。
だから誰もが嘘をつく。
私は彼が一番の大嘘つきだということを知っている。
冷たい夜風が京都の街を抜ける。
しかしまだ全身の熱はしばらくの間、収まりそうにない。
観光地の街明かりが、窓に映る自分の顔がまだ帰れない状態だと教えてくれる。
まずは明日の動向を考えないとね。結衣への対応もあるしね。
姫菜「少し遠回りして帰らなきゃね」
本日はここまでです。
連日の投稿はムリだと現在時刻が教えてくれました。
次回投稿はもう少し間があくと思います。
雑談はOKですが、もう少し俺ガイルについて話してくださいm(_ _)mオナシャス
「7.5巻のあーしさんマジかわいい」
とか
「6.5巻の小町、陽乃さんに見えた」
腐海については大ババ様の助言に従いましょう!
お待たせしました。
投下前に言いたかったセリフがあります。
藍染「一体いつから・・海老名姫菜がヒロインだと錯覚していた?」
投下致します。
やはり顔が熱い・・・
青白い竹林のトンネルは凍えそうなほど冴え冴えとしている。
その中を吹き抜ける冷たい秋の夜風でもこの熱は冷めそうにない
この感情のが何なのか…怒りであることは間違いないと思う。
しかしこれまで体験してきたどの怒りの記憶を思い起こしても、今の心境とは結びつかない。
彼を問い詰めた時はあまりに冷静でいられなかった。
少し気持ちが落ち着いた後、彼のやり方に嫌悪を抱いている旨を告げ、その理由を説明する段階で言葉を失った。
・・・驚いた
自分の考えが論理的に説明できないなんて初めてのことだった・・・
もどかしさばかりが胸を占め、結局何も言えず先に戻るとだけ告げ、逃げ帰るように宿に向かっている。
彼はいつも私の思想の外を行動する。
その方角は前でも後ろでもない、完全に視覚外、認知できないところを歩いている。
一応、丸く収める方法はある
その言葉を聞いた時、嫌な予感がした。きっとまた見るものが不快な方法で解決を試みるのだろう。
決して周りの人間の気持ちを全く考えないやり方でだ。
文化祭での彼を思い出し、チクリと胸に痛みが走る・・・
それを分かっていながら私は彼に任せた。何故か・・・
多分私は見たかったのだ
彼のやり方を・・・思考を・・・彼自身を・・・
それを見ることで私はまた彼を嫌いになれる・・・
ダークヒーローという言葉がある
悪役なのにヒーローという矛盾を抱えた存在だ
私はこの間違った世の中を変えたいと、人を救いたいと奉仕部を立ち上げた。
しかし実際に救っているのは彼だ、本当に誰でも救ってしまう。
決してほめられたやり方ではない、きれいなやり方ではない、正しいやり方ではない。
しかし結果はその矛盾を抱えた存在が問題を解決している。
やはり私は人を救えないのだろうか?間違っているのではないのか?
彼を肯定することは、そのまま自身が否定されてしまうという恐怖に苛まれる。
安直だったと後悔する。
ただ恐怖に対し嫌悪という感情で逃避していることに・・・
すいません。
少し休憩します。
再投下は1時間以内を目標としますね。
戸部くんの告白ではやはり彼らしい方法で依頼に応じた・・・
告白した瞬間こそあっけに取られたが、すぐに彼の意図も読み取れた。
彼の思惑通りにことが進めば、その結果得られるであろう結果にも十分に納得がいく。
その最低な思考回路に嫌悪を抱くこともできた。
先ほどの光景を思い浮かべ、彼が告げた相手の顔を思い出す。
時によくわからない言葉を使うことと、どこかとらえどころのない性格をしている印象だった
今回の依頼を受け、初めて彼女を注意深く観察して気付いたことがある。
彼女は何かを隠している。いえ擬態という言葉が適切だと思う。
秘匿したその正体は分からない。
先ほどの彼女は、明らかに彼の意図を理解していた。本来であれば正しい答えを選択することもできていたハズだ。
しかし彼女はあえてそうしなかった。なんの根拠もなく、否定されても仕方ない考えだけれど何故かそれだけは確信できた。
海老名姫菜
比企谷くんの彼女
・・・胸に痛みが走る。最近感じる痛みだが、いつもよりずっと強い・・・
私にはこの痛みがなんなのかわからない・・・
彼が私と友達になりたいという意志を告げようとした時に、私は無理だと否定した。
私の防衛本能が働いた・・・というのが正しいかもしれない。
彼と近づきたい私と、距離をとりたい私がせめぎ合っている。
彼の内面に気づかないうちに惹かれている自分
彼を受け入れることで自身が否定される恐怖に怯える自分
熱かった頭が冴えてくる。気持ちを整理することで進むべき道が見えてくる。
雪乃「ありがとう・・・」 感謝の言葉を呟く。
彼女のおかげで私は決断することができた。
・・・今はあなたを知っている
文化祭の後の彼に告げた言葉を反芻する。
雪乃「でも今はあなたをもっと知りたい・・・」
おわーーたーー!
2時半だよ~やばいよやばいよ~
明日も仕事だよ~(涙)
さて皆様ここまで自分でいうのもなんですが頑張りました。
このようなハイペースで初心者の私が書き込めたのはある意味奇跡です。
このような駄文スレにお付き合い頂き皆様には感謝の言葉もありません。
さてとりえずここまで頑張ったのには理由があります。
それは
明日会社がおわったら夏休みだーーー!
会社が終わったらその足で大阪まで行くまである。しかも自動車運転して。
家は隼人と優美子の間くらいに住んでいます。
やばいよやばいよ絶対寝不足で運転に支障がでるレベル。
なんとかここまで進めてから休みたかったので、頑張った次第です。
いまから旅行の用意をします。
さてお気づきの方もおられると思いますが、旅行中は更新出来ません。
書いてみて気づきました。
①まず俺ガイルの本が手元にないとかけません。
②家のPCでないとかけません。(ケータイとかどうやんだよ)
③家族が周りにいるとかけません。(嫁子供は先に帰省中で独身を謳歌しておりました)
上記の理由から更新が滞ることをお許し下さい。
旅行中は雑談程度や次回の構成等をケータイ投稿に調整してみます。
雑談には温かい目でコメントしてくださると嬉しいです。
それでは!!
134さん お答えします。
私がここに投稿したのにはもう一つ理由があります。
私の親戚の話をしましょう。
従兄弟の父の妹の息子の話です。
彼は俺ガイルぼっちでした。
俺ガイルが好きなのにそれを語り合う友達がいません。
彼はVIPSSで書き込みました。・・・叩かれました。
彼は思いつきました。
自分でスレたてりゃ、少しくらい話題を振っても許されるのではないかと。
しかし自スレでも叩かれる作者もたくさん見て来ました。
慎重にことを進めないと・・・
しかし彼はやらかしてしまった。夜中の変なテンションでつい素を出してしまった。
言い訳をしても後の祭り、誤解はもう解けない。だって解はすでにでているのだから。
みなさまおはようございます。130~133の痛い作者はなりすましです。
忘れましょう。
テスト
テスト
すいません、携帯から
姫菜「どうして・・・ここに?・・・そうか結衣からの呼び出しだったし、雪ノ下さんもさっきの場所に立ち会っていた・・・という認識でいいのかな?」
雪乃「えぇ、失礼な行為だけれど、ある事情から様子を見ていたわ・・・貴女は既にその事情を察していたようだけど・・・
でも、ここで貴女と出会ったのは偶然よ」
姫菜「そう・・・私、雪ノ下さんに前から聞きたいことがあったんだ・・・、でも先に私に聞きたいことがある・・・んだよね?」
雪乃「・・・ええ、先ほどの貴女の行為について・・・一体どういうつもりなのか出来れば説明してほしいのだけれど・・・」
姫菜「それは彼の告白を受けたことについて?」
雪乃「そうよ・・・貴女は比企谷くんの意図に気づいていたのでしょう?何故、彼の告白を断らなかったのかしら」
姫菜「告白ね・・・・・・ねぇ少し話が逸れるけれど、雪ノ下さんはこの修学旅行で誰かから告白された?」
雪乃「・・・初日に3人からされたわ、・・・少し厳し目にお断りしたせいか、それ以来パッタリこなくなったけれど」
姫菜「私も他に一人告白されたの、もちろんその時は今はそんな気がないとお断りしたのだけれど」
雪乃「だったら何故、彼の告白は・・・? まさか」
姫菜「彼氏がいれば男子は近づいてこない・・・雪ノ下さんならこの気持ち解ってくれるんじゃないかな?彼ならばその辺の事情も理解して協力してくれると見込んでのことよ」
雪乃「・・・そういうこと・・・ならば話が早いわ、そんな不純な動機では付き合うことを認められないわ」
姫菜「何故?・・・雪ノ下さんに私と彼のことについてそこまで言う権利はないように思うのだけれど・・・
それとも彼のことが好きなの?」
雪乃「?! じょ、冗談でもそういうことは言わないで頂戴、クラスメイトと同じ事を言うのね。私が彼をす、好きだとかありえないわ
比企谷くんは私と同じ部活に所属しているというだけの関係でそれ以上でもないけれど、それ以下ならあるわ」
姫菜「それ以下はあるんだね・・・・・であれば、なおさら私と彼のことについては関係がないと思うのだけれど」
雪乃「わ、私は人道的な話をしているの、間違っている行為については正すのは人として当然のことよ」
姫菜「・・・・・・・・」
雪乃「・・・・・・・・」
とりあえずここまでです。
セブンイレブンのwi-fi環境は投稿できないんですね。
携帯投稿は思ったより大変なので、次回はやはりPCからにしたいと思います。
投下します
比企谷くんのことが好き?・・・ この質問が最近、私を冷静でいられなくするようだ
・・・、少し落ち着かなくては
先ほどの彼女の回答は、なるほどたしかに筋が通っていたように聞こえる
考えたこともないけれど、あの煩わしい男子からの告白を回避できるなら非常に魅力的な案だとも思う
確かに比企谷くんならそのへんの事情も斟酌して適切に行動してくれるだろう。人選的な意味でも納得できる
しかし先ほど思考の中にいた彼女・・・・、その正体不明の擬態の結果がそれなのだろうか?
だがその程度の賢しい内容で私がこれほど警戒するだろうか?
海老名姫菜・・・彼女は危険だ・・・・・私の中にある全神経が先ほどの回答が彼女の本音でないと告げる。
雪乃「海老名さん・・・貴女が比企谷くんと付き合った理由は、それだけではないのでしょう?」
姫菜「へぇ・・・・どうしてそう思うのかな?」
雪乃「理由はないわ。・・・強いて挙げるなら、こういう言葉を使うのは
全くもって遺憾なのだけれど、女の直感というのがそれにあてはまるのかしら?」
姫菜「ふーん・・・結衣は貴女のこと女子力が低いって言ってたんだけど、意外とそうでもないみたいね」
雪乃「・・・そう、由比ヶ浜さんがそう言ってたの?彼女には少しお灸を据える必要がありそうね」ゴゴゴ
姫菜「あははっ、お手柔らかにね、そこが可愛いって言ってたし」
雪乃「・・・で、どうなのかしら?」
姫菜「・・・・・雪ノ下さん、わたしね今でこそ優美子達と仲がいいけれど、最初はかなり無理していたの。
今のキャラクターに落ち着くまでは、それなりに試行錯誤だったのよね。
といっても逆に今は本当の私を出せない分余計に、作ったキャラクターを抑えきれていない感もあるけれど・・・」
雪乃「・・・・・」
姫菜「まぁ、簡単にまとめると本当の私は人格的にいろいろ問題があって、学校ではそれを隠していると・・・
そんな私が男の人と付き合えるわけないと思っていたところに颯爽と現れ、初めて惹かれた人が比企谷八幡くんってわけ」
雪乃「・・・・・そういうこと、貴女に感じていた違和感の正体がやっとつかめたわ」
姫菜「・・・・次は私のターンかな?私さっき雪ノ下さんに聞きたいことがあるって言ったよね?」
雪ノ下「・・・・えぇ」
姫菜「単刀直入に聞くね?雪ノ下さん、貴女は比企谷くんのことどう想っているの?」
雪乃「さっきも言ったと思うけれど、同じ部活に所属していr」
姫菜「雪ノ下さん」
姫菜「さっき私は貴女の質問について、私なりに誠意を持って応えたつもりなんだ・・・
できれば貴女にもはぐらかさないでちゃんと応えてくれると嬉しいんだけど・・・」
雪乃「・・・・・そうね」
すいません、雪乃の気持ちが書ききれず今夜はここまでになります。
今後の展開にも影響するのでもう少し考えさせて下さい
続きは2日以内を目処にがんばります。
なんとかできました。
何回見なおしても修正が入るので直すことを諦めます。
あと体力も限界なので投下します。
毎日投稿している作者さんは異常ですね。
周囲を包んでいた月の淡い光が、薄い雲によって遮られ、闇の密度が僅かに濃くなる
雪乃「・ ・ ・ ・私が比企谷くんのことをどう思っているか?・・・よね」
雪乃「 ・ ・ ・ まず奉仕部の部長という立場として私は彼を認めているわ、
奉仕部に来た依頼は直接的にしろ間接的にしろ実質ほとんど彼が解決している ・ ・ ・
敵味方関係なくどんな人であれ困っている人に救いの手を差し伸べる姿勢も、奉仕部の活動理念に沿っているわ
ただ・ ・ ・彼のもたらす結果に対しては納得はしている、だけどその解決手段については納得していない・ ・ ・
いえ、納得できないというのが正しいのかしら ・ ・ ・ ・
勝手に自分を傷つけて、損な役回りを引き受け、そのうえ言い訳もしないし、させてもくれない
誰かを救うために誰かが犠牲になる・・・私はそのやり方に嫌悪を抱いているのだけれど・ ・ ・
でも、私には他の解決方法を見いだせない以上、ただの負け惜しみと思われても仕方ないわね」
姫菜「敵味方関係なく救ってしまうか・ ・ ・ ・そうね彼はおそらく人の弱い部分を肯定できるんだね
人の痛みを誰よりも知っているからこそ、苦しんでいる人を理解し、優しくすることができるんじゃないかな・ ・ ・」
そう、きっと彼ならつい私のことも救ってくれるのじゃないかと期待してしまうほどに・ ・ ・
姫菜「・ ・ ・今のは同じ部活仲間として・ ・ ・だよね? 雪ノ下さん個人としてはどうなのかな?」
まだ・ ・ ・ もう少し踏み込める・ ・ ・
雪乃「・ ・ ・私個人から見た彼の人物評について言及すると・ ・ ・
そうね、まず彼の人としてのあり方における考え方については、少なからず共感出来る部分があるわね。
お互いずっと一人でいた私と彼だからこその収斂進化の結果でしょうけれど・ ・ ・
以前彼は趣味に人間観察を挙げたこともあったのだけれど、言うだけあって彼の観察眼には一目置く価値があると思うわ
こと他人の、特に負の感情や人間性に対してそれを洞察する能力は卓越しているわ、彼には人の悩みやコンプレックスが透けて見えるのかしらね」
(そう、私が抱いている「それ」にもきっと彼は気づいているのだろう・・・・)
雪乃「・ ・ ・ と、ここまでが彼を知っている一個人としての私の彼への認識よ」
彼女が言い終わるか否かの間際、薄い雲に隠れていた月がその姿を現す
その月の淡い光によって晒された彼女の表情を見てハッと息を呑む・ ・ ・
姫菜「さ、流石に一緒にいるだけあって彼のことよく理解っているのね・ ・ ・ ・ ・ 」
眼鏡に触れる手が少し震える・ ・ ・ 成果としては十分だ、これ以上はもう・ ・ ・でも
葛藤から生じる逡巡を振り払うように・ ・ ・
姫菜「で、でも、まだ肝心の部分が語られてない・ ・ ・ ・」
雪乃「・ ・ ・ ・えぇ・ ・ ・ でも・ ・ ・ ・やっぱり分からない・ ・ ・ ・ ・」
姫菜「・ ・ ・ ・ ・」
雪乃「・ ・ ・ ・ 貴女の満足のいく応えでなく非常に申し訳ないのだけれど、彼に対して抱いているこの感情についてうまく説明できない」
彼女は切なげな表情で視線を外す
雪乃「正直、私が身内以外の他人に対してここまで興味を持った人は初めてよ・ ・ ・
良し悪しの感情の差はあるものの・ ・ ・彼の行動、言動に私は時折り新鮮な驚きを感じているわ
さっきも言ったけど彼の考え方に共感できる部分もあれば、全くもって受け入れられない時もある
そんな正負の入り混じったこの気持ちが何なのか・ ・ ・ ・」
ここが最終ラインだ・ ・ ・これ以上は・ ・ ・ しかし
姫菜「・ ・ ・ ・ ・雪ノ下さん、冗談ではなく、本当に分からないの?」
つい語尾が強くなり、口調に棘が滲み出てしまう
雪乃「!?・ ・ ・ えぇ」
僅かに変化した雰囲気を読み取ったのか少しばかりその目が見開く
姫菜「よくもそんな表情をして、彼のことをどう思っているのか理解らないなんて言えたものね」
ついには声量すら抑えきれず、静寂な境内に声が響く・ ・ ・
雪乃「・ ・ ・どういうことかしら?貴女には理解るとでもいうの?」
明らかに変化した雰囲気を察知し、彼女の口調も真剣なものへと色を変える
驚きから、敵対へとシフトした彼女の鋭利な視線を見つめ返すことで、逆に冷静になれた
ここまできたら伝えるべきであろう・ ・ ・
この選択が私を後悔させる判断になるかもしれない恐怖に抗いながら、むしろこの選択ができた自分を少し好きになる・ ・ ・
姫菜「ええ理解るわ・ ・ ・雪ノ下さんが今、比企谷くんに抱いている気持ちは紛れも無く恋よ!」
本日は以上になります。
おやすみなさい。
彼女が何を言うだろうか、多少の推察と予感はしていた。
好きとか恋愛とか、クラスメイトや告白してきた人達も同じようなことを聞いてきた……
そして案の定……
確かに私は彼に惹かれている。彼をもっとよく知りたいと自覚もした。
しかしそれは彼の思考や行動への驚きや感嘆から生じた 興味や好奇心といった類のもので、恋愛感情といった類のものではない
………と思う……
その証拠に彼の思考に激しい嫌悪を抱くこともあるし、彼の捻くれた考え方は私のもつ理念とは大きく乖離する。
そんな彼を好きになるなんてことはやはりありえない
……………ハズ…、いまいち自信が持てないのは…………
急に湧きでた不安を無理矢理振り払うように首を振り、思考に蓋をする
やはり私の持つこの気持ちは彼女の言う恋といった恋愛感情ではない!
自分の気持ちを半ば強引に決めつけるよう断定し、彼女の言葉を否定しようと彼女に向き直る。
姫菜「もし彼の思考に嫌悪を抱くことがあるとか、理念が異なるといった理由で気持ちを認められないならそれは違うからね」
雪乃「え?……………う、嘘……何故……?」
彼女は私が唯一拠り所にしていた、根拠をあっさりと見抜き即座に否定した
私の狼狽える反応を見た彼女は怪訝そうな表情で
姫菜「ねぇ、間違っていたら申し訳ないんだけれど…………雪ノ下さん、あなたもしかして今まで恋をしたことがないの?」
私の不安材料を探り当てピンポイントで切り込む!
雪乃「きゅ、急に、なにを言い出すの?そ、そんな…恋なんてしたこと…あるわけないでしょう」
慌てた彼女の朱に染まった表情からそれが虚言でないことが理解り、
冷たく大人びた空気を纏う彼女の雰囲気が幼いものへと変わる
そういうこと……これまで違和感を感じていた彼女の言動や行動一つ一つに辻褄が合い理解が広がる
姫菜「………いや、ふつうはあるんじゃないかな?……腐っている私でも流石に小学生の頃好きな男の子がいたよ……気になる男の子の一人や二人くらいこれまでできなかったの…?」
雪乃「嫌なことを思い出させないで頂戴、小学校の同級生なんて、意味もない幼稚な嫌がらせや、冗談という名を借りた暴言を浴びせて来るなど、もう嫌悪の対象以外のなにものでもなかったわ
しかも学年が上がるにつれて、今度は手のひらを返したように優しくして気を惹こうとするし、厚顔無恥とは彼達のためにあるような言葉ね」
姫菜「そう……ということは今の抱いているものは初恋になるのね…それなら自分の気持ちが理解らないっていうのも、まぁなんとか理解できなくもないかな。特に彼のようなタイプの人だと、貴女ならなおさらその気持ちに気付き難いのかもね」
雪乃「…だからその不愉快な前提で話を進めないでくれるかしら?た、確かに私はこれまで恋をしたことがないわ。でもだからといって比企谷くんのことを、その、す、好きだとか、それはあなたの主観でしかないじゃない、貴女の主張についてもっと論理的に説明してくれないかしら?そうすればそのふざけた推論の根拠を尽く論破してみせるわ!」
姫菜「うーん、…恋なんてものを論理的に説明するのは難しいんだけれどね……」
ついさっきの会話からヒントを紡ぎだし、彼女に問いかける
姫菜「じゃあ、さっき小学生の時に男子が嫌がらせをかけてきたと言ってたけれど、彼らは何故そんなことをしたのか動機はわかってる?」
雪乃「えぇ、好きな異性の気を惹くための行為だということみたいね、好きな相手に嫌な感情を発生させて何が得られるのかしら?私に言わせれば、幼稚で低俗な行為だわ、自覚がない分余計たちがわr」
姫菜「ストップ!それ以上は言わない方が貴女のためよ!」
雪乃「……どういうことかしら?」
私の態度が気に食わなかったからか、興を削がられたからなのか、言葉と同時に細められた冷ややかな視線を受ける。
姫菜「えーーとね。……雪ノ下さんが普段彼に発している言動を少し振り返ってみてみようか?」
努めて明るく返す。
雪乃「…何を言っている………の? え?…い、いや…あれはち、違っ…」
姫菜「自覚がない分たちが悪いよね?」ニコッ
雪乃「ち、ちがう、ちがうのよあれはそう違うから、ちょ、ちょっとまってちょうだい」
羞恥、怒り、疑問、葛藤、不安、全てがない交ぜになった表情で狼狽えている……ふふ、可愛い
雪乃「えー…えっと、そ、それは違うのよ、えぇ全然違う、全くもって勘違いよ。
そ、その証拠に ほ、ほらっ、私、初めて彼と出会ったなんとも思っていない時から、ずーーとその態度だったわ、そ、そうよ。私は一貫して彼への態度を変えていないわ、最初は彼のことを好きとかありえないのだから、その行為から恋だと決め付けるのは十分条件ではあっても必要条件にはならないわ」
生じた葛藤を無理矢理、自分自身に言い訳できたことで、安堵し強がる彼女
姫菜「えぇきっと[最初]はそうだったんだと思うよ。でも[最近]や[今]はどうなのかな?
彼を非難している時の貴女はいったいどういう気持ちなのかしら?
今でも嫌悪の延長としてその発言を言い続けているのかな?
会話を楽しんでいる自分は?彼の返答を期待している自分はいない?
……今のは答えなくてもいいよ。ただ自分の中でもう少し自問自答してみようか」
雪乃「………………」
傍目には気丈そうに振舞っているけれど、視線の先が定まっていない
心のなかに僅かばかりの嗜虐心が芽生えてくる
今回投下分は以上です
かなり間を開けてしまい申し訳ありません。
説得を試みる相手があのゆきのんなもので難易度が高い…
気づけば今回投下分以上のボツ文章が生じてしまってます…orz
あともう少し説得を試みます。
早く八幡とのカラミが見たい(トオイメ)
奇特な読者様方
大変おまたせしております。
ユキノンロンパ、なんとか達成できる目処が着きました。
もうすぐ投下致します。
この連休中に少し頑張りたいと思います。
姫菜「じゃあ次のテーマに行こうか?…雪ノ下さん嫉妬という感情についてどう認識している?」
声音は優しいそれだが、僅かに挑発の意図が見て取れる
雪乃「嫉妬ね…劣っている者が優れているものに対して抱く羨みや妬みのこと…と私の中では認識されているわ」
間違ってはいない、その言葉の持つもう一つの認識についてはあえて触れない…
姫菜「まぁそれも一つの回答よね?」
私の浅慮を嘲るように含み笑いを湛え応える
姫菜「雪ノ下さんならこれまで多くの羨望と、同じくらいの嫉妬にさらされてきたんでしょ?」
嫌な記憶が呼び起こされる。周囲の羨望から嫉妬への変化、そしてそこから生じる嫌悪…その繰り返し
雪乃「そうね…でも仕方ないと思うわ、人はみな完璧でないから、
弱くて、心が醜くて、すぐに嫉妬し蹴落とそうとする。優れた人間ほど生きづらいのよ。
そんなの許されないでしょう。だから人ごと変えたいと思った、
それが奉仕部を立ち上げたきっかけ……この話をするのは貴女が二人目よ」
それでも彼だけはずっと変わらない…
変わったのは私……?
いや、今考えるのはそこではない…
雪乃「…で、それが何だというの?
まさか私が比企谷くんに嫉妬しているなんて言うのではないでしょうね?
私が彼より劣っている点があるという事かしら?
そうであるならば私に対する相応の侮辱と見なさなければならないけれど…」
比企谷くんを羨むこと…うん、ないわ、大丈夫
…猫を飼っているのは正直羨ましいわね…
姫菜「奉仕部って確か依頼を受けてそれを解決する、
又は解決の手助けをすることが活動内容であってるよね?
最近の依頼事項は大体彼が解決しているってさっき言っていたけど、
それは彼のほうが優れているって話にならないかな?
その点はどう思っているの?彼の能力に嫉妬することはない?」
相変わらず、触れて欲しくない嫌な部分を削ってくる…
雪乃「それは違うわ!確かに彼の実績には一目置いている、しかし彼のやり方には納得していないと伝えた筈よ!
私が認める方法で解決を導いたのならば嫉妬もすれど、嫌悪すら抱かせるあんな方法での解決能力に嫉妬することなんてあり得ないわ!」
先程のやり取りで生じた鬱憤からか、若干強い口調になる
しばしの間瞑目し、冷静さを取り戻す
姫菜「まぁ確かに彼の手法に嫉妬という感情は普通湧かないよね、真似できないし、したくないもの、
雪ノ下さんの言い分は、うん、納得できるわ。
でも私の言う嫉妬というのは、雪ノ下さんも本当は理解っている通り、恋愛感情から来るそれだよ」
雪乃「…確かにそれと思しき感情を向けられたことは多々あるわ」
それも技能や能力に対する嫉妬なんか比べるまでもない程の強い拒絶、排他だった。
そういった行為でしか自身の存在を確かめられない哀れな人たちだったのでしょうけれど
何故そこまでの激情に至れるのか?その理由に関しては今でも理解できない…
彼女との話で、少しでもそれが理解る?
姫菜「嫉妬という感情は私の持つ文献ではかなり重宝されているの、具体的な例を挙げると…」
そう言うや彼女は淡々と語りだす
姫菜語り…その1
いつも一緒にいた友人(男)が今日は用事があるそうだ
そんなアイツを街でたまたま見かける
声を掛けようと近づくと、隣に俺の嫌いな男がいることに気付く…
何楽しそうにしゃべってんだよあんな奴と、
おいっ距離が近いぃ…くそっなんでアイツが俺以外の奴なんかと…
あ、あれ?なんでこんなに俺ムカついてるんだ?
この胸の痛みは何だよ?うそっ、も、もしかして俺…
姫菜「ぐ腐っ、と、とまぁ簡単な例だけど私の世界ではこんな風に気付くパターンが王道なんだ…けど…」
雪乃「…………ごめんなさい、私少し引いているわ」
ダメね、やはり理解不能だったわ
姫菜「あ…、ゴメンね、少し暴走しちゃったかな。
まぁ本題は雪ノ下さんがその主人公のような気持ちを抱いた状況を紐解いていこうと、そういう趣旨なんだ」
雪乃 「…………」
嫉妬なんてされたことはあっても、したことなんてない…
でも、さっきの時のように自覚していないだけだとしたら…
姫菜「あら?警戒してるの?そうよね、これまで恥ずかしい感情の一挙大放出だもんね?」
雪乃「~~~っ、前置きはもういいから早く続きを言ったらどう?」
ダメ、主導権が握れない
姫菜「あなたのお姉さん、陽乃さんだっけ?あの人が文実の会議の時に比企谷くんと話ししている時のこと思い出せる?」
意外だった、彼女と姉との接点は全くといってない筈だし、
そもそも文化祭実行員のやり取りなど見てる筈もない、確かあの時私は姉さんに…
雪乃「質問に答える前に、そもそも貴女、姉さんと面識なんてあったかしら?」
姫菜「うん面識は殆ど無いわ、その文実の内情については私のネットワーク上の成果よ、日頃の腐教活動の賜物ね…
それに文実での活動ははやはちの宝庫だったようね、話を聞けば聞くほどそこにいなかったことを悔やんだわ…
どう雪ノ下さんも?今なら腐海の杜、ちょうど会員No30番目に入れるわよ」
雪乃「…………ごめんなさい、私かなり引いているわ」
というか30人近くも居るの?あ、あの男の人同士が、そ、その~~
む、むり、考えるのは止しましょう、え、えーと姉さんと比企谷くんの話だったわね
雪乃「た、確かに実行委員の業務の際に、姉さんと比企谷くんが話していた事があったわね、確かスローガンを決めた後だったかしら。
そう思い出したわ、仕事をしていない彼と邪魔ばかりしている姉に苛立ちを感じた事はあったわ。
まさかその苛立ちを嫉妬だなんて言うわけ?すこし論理展開に無理があるように感じるのだけれど…」
姉と比企谷くん…チリっと胸に違和感が走る
姫菜「まぁ雪ノ下さんの中ではきっとそう区分されていると思ってたよ。
でもね私も伊達に膨大な量の文献を読み腐けっているわけじゃないんだよね。
そんな貴方、いえ貴女の頑なな心の内側を見透かす効果覿面な方法があるの?試してみない?」
雪乃「ありえない勘違いに対し、そんな事をする必要性を全く感じないわ」
ダメ、嫌な予感がする、直感で拒否と判断…
姫菜「さしもの雪ノ下雪乃さんといえど恐れるものがあるのね……。そんなに見透かされるのが怖い?」
雪乃「~~~~っ、その安い挑発に乗るのは少し癪だけど、いいでしょう、やってご覧なさい」
もしかして私って負けず嫌いなのかしら?
姫菜「じゃあ雪ノ下さんにはとある妄想をしてもらうわね。目を閉じてくれるかな?」
じゃあいくね、そういうと海老名さんは意を決したように語り始める
ピッ
姫菜語り…その2
とある休日、貴女は今駅前で人と待ち合わせをしている。うーん相手は結衣でいいかな。
待ち合わせの間、駅前のベンチで本を読んでいる。
すると比企谷くんと陽乃さんが、駅から二人で出てくる。
貴女はそれを二人からは気付かない少し離れた所から見ている。
よく見ると彼の右手には陽乃さんの左手が握られている。
それは指が交互に絡まる通称恋人繋ぎというもので…
雪乃(~~~~~~~~っ)
笑みを浮かべた陽乃さんは楽しそうに比企谷くんに身を寄せ彼の耳元で何かを囁きます
雪乃(-----------------っ)
彼は迷惑そうな顔で、仰け反るように距離をとる。
雪乃(ホッ、…そ、そうよ、それでこそ…)
それを受けすこし膨れた陽乃さんは彼の正面に周り込み、人目も憚らず比企谷くんを抱きしめる
雪乃(えっ?い、嫌っ)
お姉さんは上目遣いで彼を見上げそして目を瞑る…
最初躊躇していた比企谷くんも、ついには観念し、ひ、引き寄せられるように、その唇に…」
雪乃「やっ、やめなさい!!」
姫菜「(ホッ)あれっ?、どうしたの?まだまだこれからが本番になっていくんだけど…
本当はもう少し描写を凝っても良かったんだけど、あまりリアルにするとわたs、
雪ノ下さんには耐えられないと思ったのでこのレベルにしたわ、でも十分効果があったようね」
勝ち誇った…何故か安堵も含む表情の彼女に対し、負けず嫌いな性根が承服を拒否する
雪乃「ち、違うのよ、これはその、実の姉が比企谷くんに穢されるのが耐えられなかっただけで…」
胸が熱い、焼けるような…、妬ける?これが…?
姫菜「…雪ノ下さん往生際が悪いんじゃない?もう貴女にも理解っているのでしょう?」
雪乃「………」
姫菜「そうどうしても認めたくないようね、念の為に撮っておいて良かったわ」
海老名さんは右手に握られたスマホを私の眼前に晒す、
手慣れた操作で先ほどのやり取りがリフレインする。
画面には私の剥き出しの表情が…残酷なまでに自分の感情の起伏について客観視を強要される
姫菜「この表情を見ても否定するの?もう貴女のライフはほぼゼロに見えるけれど」
雪乃「……」
彼女を睨めつける、もう残ったのは僅かな意地だけだ…
姫菜「じゃあ次が最後よ。雪ノ下さん耐えられる?」
雪乃「…」
ま、まだあるの?
今日はここまでになります。
雪乃を論破するのに恐ろしく時間がかかりました。
お付き合い頂いている読者様には感謝しております。
原作での数少ない描写を拾うのが難しかったです。
まだ全然雪ノ下は八幡のこと好きじゃない…?
ここからは少しペースが上がるのではと期待しております。
8巻楽しみデスね
7巻読み終わって読みにきたけど問題なく追い付けた
もうちょっと
今回は短いです。
内容も今ひとつ…
結衣から聞いたお姉さんの印象から、雪ノ下さんとの間に少なからず確執があると踏んではいた。
兄弟間コンプレックス、いい響きだわ…捗りそう、いや姉妹間になるのか、ダメね、捗らないわ…
それに加え会員No4の文実での報告書を考察した結果、雪ノ下さんの行動理由に当たりを付けた。
報告書には葉山君と比企谷くんのやり取りが大半を占めていたが、周囲の雰囲気も克明に記載されていた。
スローガン事件前のヤリトリなんてティッシュなしでは読めなかったわ。
木を見て森を見ずという過ちを新人はよく犯すのだが、リアリティある周囲の描写こそが、妄想を捗らせる甘美なスパイスだと言うことを良く分かっている。
さすがオフィサーエージェント、まだ1年なのに将来有望ね、今度とっておきの薄い本を貸してあげよう。
…でも彼女とのカプ嗜好、合わないのよね、はちはやとかホントありえない。
でもあの雪ノ下さんが歳の離れた姉に嫉妬するとか、たしかにお姉さんに気に入られているみたいだけれど…
比企谷くんどこまで手を広げているんだろう…
まぁ彼は意図していないどころか迷惑だと思っていそうだけれど…
これからは彼女としてしっかり監視する必要があるようね…彼女として
大事なことなので二回言いました
さて話を戻そう、彼女と私のガールズトーク(修羅場編)もいよいよクライマックス…
後悔はしない… 見据える未来は未だわからないのだから…
姫菜「貴女が納得出来なくても、今貴女が感じている胸の痛みは嫉妬よ。痛い?それとも苦しい?切ない?」
目の焦点が未だハッキリと定まっていない雪ノ下さんを見据え、
姫菜「…でも雪ノ下さん、同種の痛みで今以上のそれを感じたことがある…そうよね?」
雪乃「………っ」
ビクッと肩が震える様相がより儚げに映る
姫菜「それもついさっきの出来事…忘れたなんて言えないくらいすぐ前よ」
姫菜「青白い竹林と暖色系の光を放つ灯籠、晩秋の冷たい風が吹き抜けるその中を駆け寄る彼の姿、そして放った彼の言葉…」
彼女の表情から血の気が引いていく…
姫菜「ずっと好きでした……俺と…」
終わりの言葉を言い終える前に
雪乃「…めて」
この静寂の中でさえ聞こえ難い掠れた声音と共に、掻き毟るように胸を抑える彼女、
顔は俯きその表情は見えないが拒絶の意思は伝わった…
雪ノ下さんが伏せていた顔を上げる…
焦点の合っていなかった眼差しは、弱々しいながらも慈愛を満ちたものに変わる…
彼女の中で、自身への気持ちが肯定へと遷移することがその表情から見て取れた。
姫菜「もういいんだよね?……貴女は比企谷くんのこと好き、彼に恋している…」
最後の方は絞りだすような声になってしまった。
言葉を言い終わるや否や、激しい哀しみが自身の中を駆け抜ける…
理解っている、哀しみの原因は…
彼女に気持ちを気付かせてしまったという事実……
この先訪れるであろう、取り返しがつかない程、壊れていく世界がこれで確定した…
そんな自分の気持ちを決して悟られないよう気を張りながら彼女の回答を待つ。
雪乃「………えぇ、認めるわ、どうやら私はくんのことす、好、好意を持っているようね//」カア
もどかしい…しかし頬を朱に染め、照れるその仕草は形容し難い愛らしさを備えている。
姫菜「ハァ、もうそこは愛してるまで言ってもいいんじゃないかな?」
雪乃「なっ、なんで…あ、愛し…む、無理よ」カアア
染めた頬が更に紅くなる…くそう、可愛すぎて悔しい、少し意地悪したくなる
姫菜「ふふっ、でも風の噂によると彼、『愛している』って二人くらいに言ったことがあるみたいよ」
照れた顔が一転、冷たい眼光を湛える醒めた表情へと変化する。
雪乃「……そう、それは非常に興味深い話ね」ゴゴゴ
サキサキも彼のこと好きなんだろぅなぁ、修旅中の態度、どうみてもあからさまだったしねぇ。
あれっ何?比企谷くんモテモテじゃない、まるでラノベの主人公みたい…
でもその言った相手、もう一人は誰なんだろう?
報告では電話の相手、男みたいだったんだけど、何故か私の食指が働かないのよね…
本日はここまでになります。
読み直すと流れがぎこちない気がします。
申し訳ありません、ご容赦下さい。
それでは皆様、おやすみなさい。
ハーレム以外に選択肢はないな
すいません、今回はほぼ寝オチ寸前で投下したので少し酷いですね。
展開もツギハギ感がヒドイ…
初めて雪乃が気持ちを認めたセリフに脱字とか orz
脳内補正お願い致します。
次回分は8割方できていますが、ここからが時間がかかるので来週末までには…
あと2回くらいでキリの良い所まで行きたいと考えております。
コメントは好きなだけ書き込んで下さい。(アゲないでくださいね)
個人的には『腐海の杜』の会員募集しています(笑)
>>336 7.5巻も読んでおいて下さい(イミシン)
>>353 ハーレムエンドとか憧れます
………!不意に思考の一フレーズが引っかかった、『認めたくない』?
そもそも私は何故、こうも頑なに彼を好きだという気持ちを認めたくなかったのだろうか?
彼を貶める言葉が、実は好きの裏返しだったという憫然たる事実を認めたくないから?
周囲に彼のことを好きでないと言い張って来た、否定の文言が全て嘘となるから?
……確かにその気持ちがないとは言えない。
未だ彼への気持ちの整理がつかず、頭の中は混乱止みならぬ状態ではある。
しかし、心の深い部分にまだ何かが引っかかる。
彼と出会ってからこれまでの軌跡を思い起こす。
初めて彼と出会ったのは、奉仕部の部室だった。
彼の捻くれた性格の矯正が、私の奉仕部での最初の依頼、第一印象は真っ先に嫌悪、そして忌避の感情を抱いた。
恐らく本能的なものであろうから、初対面の人は少なからず同じような印象を抱くのだろう。
しかし、私はこれまで奉仕部の依頼を通し、様々な過程を経て彼の中身を知ることとなった。
部室内の彼は寡黙で存在感も希薄であるにもかかわらず、そこに居るだけで得も知れぬ安心感を感じていたことが今になって気付かされる。
逆に彼が部室に来るまでの間、幾ばくかの寂寥感と待ち遠しさを感じていたことも…
そして次に由比ヶ浜さんが奉仕部に来る、彼女は静寂を良しとする空気を掻き乱し、部室の雰囲気を賑やかにそして和やかにしてくれる。
暑苦しいと思いながらも、まんざらではなかった距離の近い彼女とのふれ合い…
そんな奉仕部の空間…比企谷くんとの他愛ないやり取り、由比ヶ浜さんの創る喧騒、そして三人でいることの安心感、絆…
キーワードが有機的に結びつく…
……そう、私にとって奉仕部のもつ雰囲気は既に何物にも代え難い程、居心地よく、安らかな気持ちで居られる唯一の空間であったと、そして私はその居場所を大切にしたいと願っている…
そこまで理解れば、自然と答えは出る…
私は比企谷くんへの想いに気付いてしまうことで、その大切な空間が壊れる事を心の奥底で察知していた…
かつて由比ヶ浜さんが私達が付き合っているという勘違いをして奉仕部から疎遠になったことがあった…
誤解が解け、もう一度奉仕部に戻ってきてくれたけれど、あの時の喪失感は繰り返したくない…
きっと私の彼への気持ちはあの時のように奉仕部の成り立ちを崩壊させることになる…
しかし私は自分の気持ちに気付いてしまった、もう戻れない、知らなかったことには出来ない。
自分の気持ちに嘘をついて誤魔化し、やり過ごす…?
いえ、それは私の主義に反する、それをしてしまえば、それはもう私ではなくなってしまう。
でも…今の由比ヶ浜さんとなら、ちゃんと話せば分かってくれるかも…
もう以前の時とは違う、よりお互い分かり合えている、そう、と、友達に近い状態だと思う。
だからもし私の気持ちを知ったとしても今までどおり仲良く、もしかしたら暖かく応援してくれるかもしれない…
………?、ふと正面に対峙する人をみる
海老名さんの奉仕部訪問の際に言われたキーワード、『今までどおり仲良くやりたい』
今ではその旨が今のコミュニティを壊したくないという彼への依頼であったことが理解る、であれば…?
雪乃「ねぇ海老名さん、少し腑に落ちないことがあるんだけれど、いいかしら……」
姫菜「ここから先は…そうね、私に応えられる範囲であれば後ろ向きに検討するよ」
雪乃「後ろ向き、ね…そう、貴女は何故苦労して手に入れたコミュニティが壊れるリスクを払ってまでも、彼の告白を受けたのかしら?
貴女の最初の依頼の意図はその繋がりの瓦解を防ぐためだったのでしょう?」
姫菜「……そうね、確かに私、今の対人環境は気に入っているわ、優美子や結衣のこと、とても好きよ。
普段の他愛ない会話や喧騒も嫌じゃない……
でもね結局そこにいる私は擬態した私でしか無いの…、あそこにいるのは私だけど私じゃない…
私はきっと何処かで本当の自分を出したかったのだと思う…
比企谷くんの事を見てて少し憧れたのよね、あれ程孤高に、独りで居られるのは何故なのか?
結局周囲に流されている私に、もしかしたらこの人なら答えを示してくれるかもしれない…そう思ったのね。
私は比企谷くんのこと好きよ、それに彼の事を理解している自負もあるわ。
彼を理解しているからこそ彼と付き合う難しさは理解っている。
普通に彼に告白したところで、どうなるかは予想できる。
ほぼ間違いなく彼の捻くれた回答でお茶を濁されるに決まっているわ。
むしろ告白自体をさせてもらえないかもしれないわね。
だからこそさっきの告白は私にとって千載一遇のチャンスだったのよ。
これまで築いてきたコミュニティのある程度の瓦解も含め、その犠牲を出す程の価値があると判断した…
まぁ何だかんだと言い訳してるけれど結局、友達と好きな人を天秤に掛けて好きな人を取った、ただそれだけ…
そんな質問をした雪ノ下さんも分かっているのよね?貴女の気持ちが今の奉仕部の関係を瓦解させるということを…」
雪乃「えぇ、そうかも知れない…いえ、でも由比ヶ浜さんなら正直に気持ちを伝えれば理解ってくれるんじゃないかと思う…」
姫菜「そう……そうよね、自分の気持ちも理解らない人が結衣の気持ち…理解るわけないよね」
雪乃「………どういうこと?由比ヶ浜さん?彼女の気持ちって…ま、まさか!?」
姫菜「……そう、結衣も比企谷くんの事を好きなのよ…」
雪乃「う、うそ……な、何を根拠にそんなこと言うの?」
姫菜「まず彼女は入学式当日に飼い犬を彼に助けてもらっていること。
それと奉仕部に入る際の依頼って好きな人にお菓子を作ってあげたいんだったよね、その後彼女に彼氏が出来たとか落ち込んだとかそんな素振りあった?
あと知っているとは思うけれど彼と二人で花火大会に行ってるよね、まぁどれも根拠としては乏しいのだけれど…
結局、結衣の彼への態度を見てれば、普通気付くと思うよ、『友達』ならね」
雪乃「で、でもっ貴女、由比ヶ浜さんと『友達』なんでしょう?そんな、じゃあ貴女それを知ってさっきの告白を受けたってこと?」
姫菜「そうよ…でも今の貴女なら理解るんじゃないかしら、じゃああえて聞くね?
由比ヶ浜さんの気持ちを知った今、雪ノ下さんは比企谷くんを諦めることなんて出来るの?」
雪乃「……っ!」
姫菜「……そういうことよ、なるべく考えないようにしていたのだけれど流石に心の負荷が大きいわね、
人を好きになる気持ちっていうのはそれまでの世界を全て壊していくってことなのよ。とても哀しいことだけどね…
雪ノ下さん…もう遅いしそろそろ終わりにしたいのだけれど…」
由比ヶ浜さんのことは正直、衝撃だった。でも今はそれよりも…
雪乃「…いえ、もう一つだけどうしても貴女に聞かなければならないことがあるわ」
今夜は以上になります。
シリアス編は退屈ですよね…おそらく次で終わるハズ
もう少々お付き合い下さい。
姫菜「……何かな?」
雪乃「……何故、私に気付かせたの?比企谷くんへの想いを」
姫菜「……答えたくないって言っても聞いてくれないよね…」
雪乃「私に彼への気持ちを自覚させる貴女のメリットってなんなのかしら?
理由をいくつか推定してはみたものの、貴女が何を考えているか、その真意がどうしても読めないの」
優越感の獲得、所有権の明確な主張による警告、友情の破壊、etc…
無理に考えればメリットはでてくるものの、どれもきっと違う…
姫菜「…そうね、ホントの事言うと最初は雪ノ下さんが彼の事をどう思っているか、いえどこまで想っているか探るだけのつもりだったの、結衣を含め彼と一番近い距離で接してきた間柄だしね。
まずは比企谷くんのことをどこまで理解っているか、好きになっているか否かを知りたかった…
貴女が彼のことを語るその過程で彼をやっぱり好きなこと、そしてその気持ちに気付いていないことは分かった…
想定はしていたし、その際には現状維持、つまりあなたに恋心を気付かせないという意図も持っていたわ、貴女が疑問に思っている通り私のメリットがないしね。
この今でさえそうしておけば良かったと思う私がいることは否定しない、全く後悔してないという訳でもないわ…」
雪乃「じゃあどうして…?」
姫菜「それは端的に言うと、貴女に対して怒りを感じたからかな、
私にとっては計算外だったわ………、嫉妬?いえきっと悔しさだったんだと思う…」
雪乃「それは…」
姫菜「多分、雪ノ下さんの表情(かお)に彼への想いが溢れ出ていたから…
当然自覚はないんだろうけど、彼の事を語っている貴女の表情、とっても綺麗だった…
そうね、見る人誰もが恋する乙女の顔だって断言出来る程の表情だったわ」
雪乃「----っ!」
知らず知らずに溢れ出ていた気持ちを見透かされたことによる羞恥の感情が駆け巡る…
姫菜「でも、そんな赤裸々な顔をしながら、気持ちが分からない?ふざけんなっ!…ってことだと思う」
確かにあの時の彼女は、怒りの衝動を抑えきれないでいた……
雪乃「……そう……貴女としても不本意ながらも私に気付かせてしまったということかしら?」
その割には迷いなく完膚なきまでに論破されたような気がする…
姫菜「えーと勘違いしないでね、私、雪ノ下さんが自分の気持ちに気付いてもらってさ、なんかやっぱり嬉しいんだ」
そう言った彼女の言葉はそれまでと正反対の意味にも関わらず、私の心にストンと入り込む。
雪乃「……それは…どういうことかしら?」
警戒もなく自然と湧いた疑問を口にする。
姫菜「うん…ほら比企谷くんっていろいろ誤解され易いじゃない、まぁあえて彼がそう仕向けているってのもあるんだけどさ…
でも、そんな彼を正しく知って、ちゃんと理解して、好きになった人がいたのはただ純粋に嬉しかったんだ。
自分の好きなものを認めてもらった喜びっていうのかな、価値観の共有っていうの?
えっと例えばイベントとかで同じ嗜好の同志が見つかった時の喜びっていうのが近いかな?…これが理由の一つ」
理解る……確かに私も由比ヶ浜さんが彼を好きだと聞いて、ショックでもあったが微かな嬉しさも感じた…
共感ってことかしら……
何のイベントなのかについては深く知らないほうがよさそうね…
短いけれど深い呼吸の後で真っ直ぐに彼女を見る。
雪乃「……その言い方だと、まだ他にも理由があるのかしら?」
姫菜「そうね……私の目論見どおりであれば、雪ノ下さんの気持ちさえ誤魔化せれば、多分、私と彼は二人で上手くやっていけたと思うの…要は貴女や周囲を騙すという形をとり続けることによってね…
でも貴女のその秘めた気持ちを伝えたい、教えてあげたいって所は純粋に損得抜きの私の衝動からきたものだった…
こんな腐りきった私の中にまだそんな純粋な気持ちがあって、それを実行することができた自分のことが、今は少し好きになれたんだ…
これがもう一つの理由よ、まぁとても個人的な理由なんだけどね」
はにかんだ笑顔を湛えながらのその言葉は、何故かとても哀しい物語を語るように聞こえた…
雪乃「そういうこと…海老名さん、あらためて貴女にお礼を言うわ。ありがとう、感謝しているわ。
私独りでは、そして貴女でなければ今の段階で自分の気持ちに気付くことは出来なかったと思う……」
姫菜「そう?じゃあそのお返しにぜひとも聞いて欲しいお願いがあるんだけど」
雪乃「ごめんなさい、それは無理」
姫菜「えー、まだ何も言ってないのにー」
口を尖らせ拗ねた仕草をしつつ、その顔はとても朗らかだった、
どこかで聞いたようなやり取り…、やはり彼女にはどこか彼と近いものを感じる…
雪乃「さっきはちゃんと言えなかったけれど、比企谷くんを諦めることは多分できそうにないわ」
変わっていく自分自身への戸惑いはある。独占欲、嫉妬、焦燥…
そんな以前の自分であれば無関心だったあまりにも人間らしい感情を含んで膨れ上がる気持ち…
それを抑えることはきっとできない……
姫菜「ふふっ、そうよね、それを知ってしまったら、もう抑えられないよね、
あーあやっぱり失敗したかな~、結局最初からやり直しか~」
そういう彼女はどこか達観した表情で楽しげだ…
雪乃「一つ言っておくけれど、私は比企谷くんを諦めないとは言ったけれど、彼が貴女と付き合うことを邪魔するつもりはないわ」
であるならば、そう私は私らしく……
姫菜「……そんなこと言っていいのかな?」
思ったより意外な提案だったのか、警戒の眼差しが返ってくる。
雪乃「勘違いして欲しくないから言うのだけれど、少なからず私は貴女を認めているわ。
彼自身をちゃんと理解って、自分自身ときちんと向き合い、その結果、今の状況を得たあなたに賞賛の気持ちすら抱く程よ」
あんなやり方をした人を認めるなんて私らしくない…?
いや違う、やり方云々ではない、その人自身がどうなのかだ。
雪乃「……それに比企谷くんへの気持ちを気付かせてもらったという借りがあるわ…
だから海老名さんが彼に秘めている気持ちについては誰にも他言しないし、今後の貴女の行動について私がとやかく口をだすことはしない…」
姫菜「……なるほど、それは大きなアドバンテージね…じゃあ私は遠慮無く行かせてもらうけれどいいのね?」
不敵な笑みを浮かべ挑むような視線をしっかりと見つめ返す…
雪乃「えぇ、でも比企谷くんと付き合っているとはいえ、今がやっとスタートラインといったところでしょう?
私はやっと自分の気持ちに気付いてこれからではあるけれど、挽回できない差とは思わないわ」
そう正々堂々と向き合う……これが私のやり方
姫菜「ふふっ、恋愛初心者なのに言うわね」
雪乃「これまで私を初心者扱いした人達は、全て私の前にひれ伏してきたわ」
姫菜「恋愛も同じだったらいいのにね、初恋の成就率についてありがたい格言があるから後で調べることをオススメするわ」
挑戦的な眼が鋭さを増してくる、普段のおっとりした印象は既にもうない
姫菜「ねぇ、面白い対比だと思わない?
同じ捻ねた性格を持っている私と比企谷くんだけど、対人関係では上手くやっている私と、独りの比企谷くん。
対して、正反対の性格である、真っ直ぐな雪ノ下さんと捻ねた比企谷くんだけど、どちらも独り…三者三様だよね」
たしかに面白い、しかし的確な視点だ…
雪乃「そうね…それに自分自身に対し、変わりたいと望んでいる私や貴女に対して、頑なに変わることを否定する比企谷くん…」
姉みたいに、と抱いていた願望に対し、『ならなくていいだろ、そのままで』と彼に言われたことがある。
ありのままの自分を肯定され、救われた気がした…
今の私は変わりたいのか、それとも…
姫菜「恋愛における男女共通の大きなのテーマの一つにこんなのがあるのよ、
パートナーに対し、共通の価値観を求めるのか、お互いに持っていないものを求めるのか?
比企谷くんが求めているのは何なのか?そして誰なのか?興味深いよね」
何故だろう、彼女と話す度に気持ちが昂ぶってくる…理解り合えている?
そうたしか材木屋くんの作文に書いてあったフレーズがあったわね。
『好敵手と書いて友と呼ぶ』だったかしら。
あの駄作のなかでそこだけ、何故か気になったのよね、そう今、まさにそんな気持ち…
雪乃「えぇ確かに面白いわね。そのテーマによると私は自分に無いものを求めているのね、
なんでも出来る私が、欠陥だらけの彼を求めているのはそういうことなのかしら」
姫菜「ふふっ、違うよ、何も理解っていない雪ノ下さんが、いろんなことを理解っている彼を求めているのよ」
前言撤回…
どうやら友達を作るのは、やはり私にはハードルが高いみたいね…
お互い強い瞳で相手を見据える…
「海老名さん…貴女には負けないわ!」
「私こそ負けるわけにはいかない……雪の下さん!」
私は今夜初めて海老名姫菜という存在を正しく認識した。
彼女が雪ノ下雪乃という存在を正しく認識したのと同様に。
彼女に捉えどころない印象は既になく、どこか苛烈さを秘めたその内面。
負ける訳にはいかないといった言葉に、遠慮など何一つないことを私は直感した。
私と彼女、そうどちらかは必ず失ってしまう。
失ってからきっと嘆くのだろう。
でも後悔はしない、何もせず諦めて失うくらいなら、戦って、抗って、そして失うことを願う。
変わってゆく世界の中で、変わらないではいられない関係は多分ある。
取り返しがつかないほどに壊れてしまうものもきっとある。
だから誰もがみんな嘘をついている。
そんな欺瞞に満ちた世界であればこそ、虚言を吐かず真摯にこの世界に挑みたい。
以上でこのSS
八幡「ずっと前から好きでした。俺と付き合って下さい。」姫菜「…いいよ」
は 第一部 ~完~ となります。
初投稿かつ公私共に忙しいため、更新が遅くなりがちでしたが、
忍耐強く応援していただいた読者の方々にはとても感謝しております。
この後の話ですが、番外編が入ります。書きためているので明後日までには投下致します。
それでは番外編を投下します。
その前に一部本編の訂正をさせて下さい。
文中182で雪ノ下が初日に告白を3人から受けたことになっておりますが、
この設定を2日目に変更します。ラーメン行ったのが2日目と勘違いしておりました。
ラーメンの後は部屋で八幡との帰路を無意識に反芻しているゆきのんを妄想しております…
ということで番外編はゆきのんが3人から告白された所を3回に分けて投下致します。
修学旅行 二日目の夜のこと
総武高校2年J組、雪ノ下雪乃はある男性から呼び出された…
??「ずっと前から好きだったんだ、俺と付き合ってくれない?」
雪乃「…いやよ」
バスケ部イケメンエース「あれっ?冗談だよね。へ、返事間違ってない?ほら知らない?俺、バスケ部エースのさ……」
雪乃「返事はNOよ、間違えようがないわ、あなたのことなんて知らないし、知っていたとしても付き合うことはありえないわ。
私用事があるの、もう行ってもいいかしら」
エース「いやいやちょっと待ってよ、知らないのはショックだけど、それなら俺を知ってもらうためにも、もう少し話しさせてよ」
雪乃「知る必要なんてあるのかしら?あなたの魅力なんてどうせ陳腐で薄っぺらい内容でしょう?そんな下らない自分語り興味ないわ」
エース「で、でも、やっぱり君のこと気に入っているしどうしても諦めきれないんだ」
雪乃「…はぁ、しつこいわね、そこまで言うのなら一体私の何処が好きなのか言ってみてくれないかしら?
少しでも私の琴線に触れるような内容であれば、話を続けさせてあげなくもないわ」
エース「え、えーとやっぱりその綺麗で美しいところと君が持つ雰囲気っていうのかな、そういった所を含む全てだよ」
雪乃「あらそう、私の容姿に対して褒めていただいたことに関してはお礼を言うわ。
であなたは、その私に釣り合う自信があってここにいるのかしら?
私がみたところそれほど大した容姿ではないように感じるのだけれど…」
エース「ははっ、手厳しいなぁ…まぁ、自分で言うのもなんだけどアイツと違って雪ノ下さんの隣に立っていても、そこまで違和感を与えないくらいではあると思っているんだけどダメかな?」サワヤカスマイル
雪乃「あなた、誰と張り合っているのか知らないけれど、美的感覚なんて主観でしかないのよ?つまり、あなたと私の二人しかいないこの場では私の言うことだけが正しいのよ?」
エース「え?な、なにを言っているかよくわかんないんだけど…」タジタジ
雪乃「…はぁ、この程度の理屈も理解できないの?あなた日本語使える?国語って知っているかしら?もう一度小学生から授業受け直してきたほうがいいかもしれないわね。
そう言えば小学校であなたみたいな人いたわ、低学年の頃はグループの中心になって私に嫌がらせをかけてきたくせに、高学年では掌を返したように優しく構って来たんだけど、あなたも身に覚えあるんじゃない?」
エース「はははー俺はそんな底の浅い男じゃないさー(棒)そ、それにそんなに劣等扱いしないで欲しいな。こう見えて俺、そんなに国語の成績は悪くないんだよね、学年30位以内には入っているんだぜ」ドヤァ
雪乃「30位程度でいい気になっている時点で程度が低いわね。だいたい私に認めて欲しいなら、1桁ズレているわ、せめて学年3位以内に入ってからそういう自慢をしたほうがいいわよ」
エース「国語3位以内って…うちの学年の秀才たちが幻の表彰台として誰も入れないって嘆いているレベルじゃないか。
君は当然入っているとして、噂ではにっくきサッカー部キャプテンのあいつがその一人と噂されているが……
や、やっぱり雪ノ下さんも葉山が好きなのか?またアイツなのか?くそっアイツさえいなければ俺の天下だったのに…」ブツブツ
雪乃「最後はよく聞き取れなかったけれど、もういいかしら?あなたに割いている時間が無駄なのだけれど…」
エース「他に好きな奴でもいないなら、友達からでも…」
雪乃「それは無理、ありえないわ」
エース「なんでだよ。あんな眼が腐ったような奴と友達になっているくらいだったら、俺の方が数倍マシじゃないか」
雪乃「……あなた今何て言ったの?眼の腐った奴って比企谷くんのこと?どうやらあなたの方が眼が腐っているみたいね。
まず、何を根拠に私と彼が友達であるという空虚な妄想に浸ることになったのか説明しなさい」
エース「だ、だってほら春くらいだったか昼休みにテニス勝負していた時からちょくちょく一緒にいるだろ?
やっぱり二人が一緒にいても釣り合ってなくて違和感ありまくりだし、さっきもちょっと言ったけれど俺とだったらそんなことにはならないぜ、きっと息ピッタリのベストカップルになれると思うんだけど…」
雪乃「…………あなた、少しその軽薄で頭の悪そうな単語しか生み出しそうにない口を閉じなさい、不愉快よ」
エース「いやでもだってさ、あいつ校内でもいい噂も聞かないし、あんな暗そうなぼっちの男なんかより絶対俺のほうが」
雪乃「黙りなさい!口を閉じなさいと言ったのが聞こえなかったのかしら?あなたには口ではなく息をピッタリ止めたほうが良さそうね、あなたガムテープ持ってない?口封じってのはよく言ったものね、存在を消すという意味が私の意思と息ピッタリだわ。あと彼のこと目が腐っていると言ったわね、確かに彼は目が腐っているわ、腐りすぎて腐臭が漂わないのが不思議なレベルよ。そう、良く解っているじゃない。あら初めてあなたと意見が合致したわね。意外だったわ私とあなた、もしかしたら意見が合うのかもしれないわね。私一人でいるのが好きなの、もちろん意見の合うあなたも一人が好きよね?私のことが好きなのだから私に合わせてくれるんでしょ?あら不満顔ね?嫌なの?私と一緒に孤高の道を歩んでみましょうよ。あ、でも一人だから一緒には無理ね。ごめんなさいあなた一人で独りの道を歩んでね、大丈夫、心配しなくていいわ、私奉仕部なの、あなたちゃんと独りになれるよう面倒見るわ、いい方法があるのよ。ただトラウマを量産するだけ、ちゃんと実績ある方法だから心配は無用よ。あなたあまり挫折したことがないんじゃないかしら?人は挫折を繰り返し人間的に大きくなっていくのよ、貴方の人間性が矮小で陳腐な理由はどん底に堕ちたことがないからだと思うの、だから私があなたに慈悲の心を持って挫折を味あわせてあげる。遠慮はいらないのよ、あなたの誠意ある告白への御礼なのだから、そうねまずはなんで自信を持っているのか理解できないその容姿についてかしら?よくよく見るとあなたその程度の容姿でよくも自信があるようなセリフを吐けるわね、吐き気がするわ、あとそのファッション、なんでズボンを腰まで下げているの?もしかしてカッコいいとか思って…、いえ流石にそこまで馬鹿じゃないわよね?気持ち悪いとからちゃんと穿いたほうがいいわよ。あとよく見るとあなた背が高いのね?えーとなんて言うのだったかしら?そう、木偶の坊!いえそれよりもウドの大木のほうが適当ね、あれでしょ?髪型も鳥の巣みたいにメチャクチャだけれど大木に巣食う鳥をイメージしているのよね?斬新だわ!私としたことがそのセンスに多少の興味を禁じ得ないわ。でももう一捻り欲しいわね、どうせ鳥ならいっそのこと鶏の頭のようにしていれば三歩歩くと忘れるという鶏の格言が頭の悪そうなあなたにピッタリなのにね。でもそれじゃ今せっかく与えられてるトラウマもすぐ忘れてしまうかもしれないわね?分かったわ仕方ないわね、もう少しだけ付き合ってあげる。あらまた不満顔ね、遠慮しなくていいのよ、さてさっきから変な匂いがするのだけれど、もしかしてあなたの体臭かしら?あなたの体臭ハッキリいって臭いわよ、もしかして香水なんてことはないわよね?そんな不快な匂いの香水、売っているワケないでしょうし、ちゃんとお風呂には入ったほうがいいわよ。あとその首に掛けてるシルバーの十字架だけどあなたクリスチャンなの?学生なのに普段から信仰厚い人はステキよ!まさかファッションでつけてるとかそんな恥ずかしいことではないのでしょう?偉いわ今度あなたの通っている教会教えてくれるかしら?あなたがいかに矮小で惨めな人間でも頑張って生きていけるように私もそこでお祈りさせてもらうわ。あらごめんなさい私あなたのためにもっと客観的評価とアドバイスを提言してあげたいのだけれど、あなたのその腐った外見くらいしか褒めてあげることができないの。お互いもっと中身を知れば他にも言えることがあるかもしれないけれどその薄っぺらい空虚な中身を知る時間が私にはもう残ってないのよ。あら少しだけ魅力的な眼になってきたようね、でもまだまだ彼のレベルには達していないわ、仕方がないわね、依頼を途中で投げ出すのは良くないわ、今度私と目があった時には今日の続きをするというルールにしましょう!」
雪乃「だ、か、ら、今後はできる限り私とは距離をとって行動するよう注意したほうがいいわよ」
エース「……………グス」
雪乃「もういいかしら?今後はあなたの身の丈にあった言動をお勧めするわ、早く私の視界から立ち去って頂戴」
コメント、ご批評ありがとうございます。
先の文章は読みにくいとは思いつつ、仰るとおり
まくし立てる感じを出したかったのであのような形になりました。
本日投下します。
今回は若干のキャラ崩壊とネタっぽくなってしまいました。
ご容赦下さい。
??「ずっと好きでした。僕と付き合ってください」
雪乃「えっと、あなた見たことあるわね。何処でだったかしら?」
J組モブA「お、同じクラスメイトだよ。文化祭実行委員でも一緒だったんだけど…」
雪乃「あら、そうごめんなさいね、興味ない人の顔はあまり覚えられないの。
……と、同じクラスメイトのよしみで遠回しに断っているのだけれど理解してくれたかしら?」
モブA「な、なんで?クラスでも何度も目が合って、てっきり雪ノ下さんも僕のこと少しは気にしているのかななんて思っていたのに…」
雪乃「まずは目が合ったという事実誤認を正す必要がありそうね…あなた少し思い込みが激しいんじゃない?まぁいいわ、私急いでいるの、もういいかしら」
モブA「くそっ、やっぱり比企谷なのか…」ボソ
雪乃「なんですって?」ピク
雪乃「あなた今、何て言ったのかしら?」
モブA「その反応…やっぱり雪ノ下さん、比企谷と何かあるの?」
雪乃「どうしてそこで比企谷くんの名前が出てくるのかしら?」
モブA「だって今クラスで噂になっていて、クラスの女子達ももしかしたらアイツと付き合っているかもしれないなんて言ってたし…」
雪乃「つ、付き合っている?流石にその噂は捨て置けないわね、いったいどういった根拠でそのような噂が流れているのかしら?」ゴゴ
モブA「いや俺も最近の二人での行為が噂になっているのを聞いた人達が、面白可笑しく脚色しているだけだと信じているんだけど…」
雪乃「そんな事実無根の行為がでっち上げられているのね?詳しく話しなさい!」ゴゴゴ
モブA「まずは文実のスローガン決めの際、アイツの発言で凍りついたあの空気の中、雪ノ下さんは肩を震わせ笑っていたり「あ、あれは怒りよ」、
文化祭自体も二人一緒にまわっていたし「あ、あれは仕事の一貫よ」、
模擬店のトロッコにも二人一緒に乗ったり「あ、あれは無理矢理」、
あいつとペットの模擬店で二人いちゃついていたり「し、仕事よ」、
文化祭開始の際も二人でインカムを使って漫談していたり、「あ、あれは…くっ」、
お姉さんのバンドの演奏を見ながら身を寄せあって話してたり「寄せ合ってなんか、た、たまたま」、
文化祭終了後、人気のない教室で二人逢引き?していたり、「た、ただの部活よ、な、なんでそこまで知って」」
モブA「そういった話をクラスの女子に話したら、それはもう付き合っているとしか考えられないって話が盛り上がって……」
雪乃「………………」ゴゴゴ
雪乃「……えぇと、何?つまり 貴方がその噂を作り出した張本人ということでいいのかしら?」ゴゴゴゴ
モブA「うーん、そうなるのかな……あ、あれ、雪ノ下さん?おかしいな目が(ゴシゴシ)…雪ノ下さんのいつもの冷ややかな表情が崩れて、か、髪がなんで重力に逆らっているの、静電気?でも、そ、そんな雪ノ下さんも魅力的かも…、んっ?か、身体が動かない…なにこれ金縛り…?」
雪乃「あなた、少しやり過ぎたわ、よくもまぁそんな嘘八万を並べて私を貶めようと企んでくれたわね」
モブA「だ、だって全部事実じゃ…」
雪乃「黙りなさいっ!「ハイィ」まずは私と彼が付き合っているという事実はないわ、「で、でも」な・い・わ!「ハ、ハイ」
その前提の元、あなたの告白について回答させてもらうわ、覚悟はいいかしら?「か、覚悟?」」
雪乃「そうよ、私あなたの誠意ある告白に心打たれたのよ、だから誠心誠意、あなたの気持ちに回答するわ。それを受け入れる覚悟よ」
モブA「え?ま、まさかのここから大逆転ホームラン?」パアァ
雪乃「まずあなた、とても魅力的よね?その自分の存在感のなさは際立っているわ、私一度聞いた人の名前忘れないのだけどにあなたの名前はおろか存在自体も記憶にないの。それに関してあなたは何も思うことはないのかしら?いえごめんなさい、でもそんな存在感のないあなたがよくもこの私に告白なんてできたものね。あまりの身の程知らずっぷりに逆に感心するわ。一体どんな脳内お花畑の空想、妄想が蔓延って私に告白してきたのかしら?もちろん告白してきたからには勝算があってのことよね?いえ少し興味あるのよ、いったいどのような思考回路を紡げばそんな無謀な行為に至ることができるのか、心理学的な好奇心なので気にしないで答えてくれていいのよ」
モブA「いや、そんな魅力的だなんて困るな~(テレテレ)、これまで雪ノ下さんも時々俺のことを見ているの気がついたし、夢の中でも何度も話しかけこともそうだし、雪ノ下さんっていつも俺の行く所にいるんだよね、だからこれはもう運命なのかなってさ!」
(なんかさりげなく罵倒されているような気もするが、俺の勇気を賞賛してくれているみたいだな、俺の天使が罵倒なんてするはず無いし…きっと照れ隠しなんだな)
雪乃(!?この私の口撃が効かないですって……これは自虐史観の比企谷君より性質が悪いわ。
仕方ないわ、不本意だけれど作戦の方針転換が必要のようね…)
雪乃「そう、あなた最初に私と目が合ったとか言っていたけれどかなり重症ね、文化祭当日の行動についてもよく知っていたようだけど、もしかして後をつけていたの?存在感のなさ故に気付かなかったわ。
確かにストーカー被害の加害者評として、『そんな人に見えなかった』『優しそうな人にだと思った』というのが定型文句となっているこのご時世、きっとあなたのような人が将来、犯罪者になるのね。
いえ心配しているのよ、あなたのそのストーカー癖が世間に晒され、あなたの将来が崩壊してしまうんじゃないかと、
だから私が矯正してあげる。いえ礼には及ばないわ。犯罪者予備軍を捨て置くなんて私の正義感が許さないだけだから」
モブA「わかった、そこまで言われたら僕も男だ、君のために己を変えよう」
(危険な男に惹かれ、そしてその身を案じるがあまり彼を変えようとする彼女、マジ天使)
雪乃「そ、そう。(本当に重症ね)まずあなた、勉強はできるのかしら?テストの順位は?
早く答えなさい、反応まで愚鈍だなんてあなた本当にいいトコなしね」
モブA「まぁ真ん中よりちょっといいくらいかな、国語は壊滅的なんだけどね」(ツンデレ属性キター)
雪乃「それはマズイわ、あなたのような何の特徴もない人が頭も平凡だなんて、それはもう世の中に生きている価値がないレベルよ、いやでもここ日本は一億総中流と言われるだけあってあなたの様な平凡な人でも生きていきやすい国だったわ。良かったわねあなたのアイデンティティである平凡がこの国では認められているようよ。
ただ自慢出来る程の能力がないから性格が鬱屈してしまうのね、あなたこれから毎日最低授業以外で10時間は勉強なさい。でもそうね、努力より結果が必要ね、これから毎回テストの順位を報告なさい、奉仕部の相談メールというのがあるからそこに送ればいいわ」
(時間があるから余計なことを考えてしまうのよね…)
モブA「くっ、それくらい、愛する人のためやってみせる!」
(そうだよな、自分より劣る彼氏だと恥ずかしいよな、彼女に釣り合う男に…俺はなる!)
雪乃「ちなみに総合で30位以内に入っていないと今後私の視界に入ることを許さないわ」
モブA「えっ?それはハードル高いんじゃ…視界も同じクラスだし難しいと…」
雪乃「国語の点数で3位以内に入ればご褒美を上げるわ」
モブA「よっしゃ分かった!やってやんぜ」
雪乃「次に容姿ね、あらあなたよく見たら普通なのね?身長も平均くらいだし、見た目も少し悪いくらいでしょうし、まぁ少し足が短いようね。その短足さをアピールしたらすこし印象には残るんじゃない?
ごめんなさい頑張ると意気込んだ割にあなたへの容姿に関してこれ以上の印象に残る部分を見出せないわ、なかなか難しいわね、これは斬新な変更が必要ね。髪型でなんとかできないかしら?
そうだわ、あなた坊主いえ、スキンヘッドにしなさい!そうすれば目立つしあなたの特徴が際立つと思うの。
いいわね、明日の自由時間ですぐ床屋に行くのよ!」
(放っておくと危険だから目立つようにしておかないと…)
モブA「え、流石にそれは…ハイ、分かりました」
(ヤベー目がマジだ、髪がないのが趣味だったのか…調査不足だったぜ、でも俺のために一生懸命だし、
きっと自分色に染めたいんだな、もしかして束縛とかキツイのかな~、まぁ愛されてると思って我慢するか)
雪乃「あとはあなた何か部活には入っているの?」
モブA「帰宅部だけど…」
(もしくは雪ノ下調査部、調査結果見せたら喜んでくれるかな~)
雪乃「だからそんな貧弱な身体なのね。あなたの精神が病んでいるのは体を鍛えていないからよ。
すぐ部活に入りなさい…そうね、柔道部がいいと思うわ、来週には入部届を出しなさい。」
(身体も酷使すればより安全、保険は必要よね…)
モブA「え、流石にそれは…そうか、分かった」
(これはいざという時には私を守ってアピールだな、もしくは雪ノ下さん合気道の達人だったから、乱取り展開からのラッキースケベが…)
雪乃「まぁこんなところかしらね、私あなたに期待してるのよ。
これであなたがまともな人間に生まれ変わることが出来ると信じてるわ。
次にあなたと話すのは私があなたが変わったと認めた時よ!
それまではお互い距離を置きましょう、もちろんこの話は他言無用よ」
モブA「くっ、辛い選択だけど、それはお互い様ってことだな、分かった」
(会えない時間が愛を育む…か、同じクラスで理解り合えているのは二人だけ…いいね)
雪乃「今から私とあなたはまた他人に戻るの、この意味わかってくれるわね…」
モブA「…あぁ分かった!僕を信じて待っててくれ」キリッ
雪乃「それじゃあ、私の前から消えてくれるかしら?」
モブA「あぁ、次に君の前に現れる時は今の僕とは違う僕をみせてあげるよ!」タタッ
雪乃(ふぅ、恐ろしい相手だったわ、あんな人もいるのね…比企谷くんがまともに見えてしまうわ)
本日は以上になります。
一人目とは違う味を出そうとしたら、
こんなんになってしまいました。
申し訳ありませんm(_ _)m
明日、3人目を出したいと思います。
二人目のキャラは確かにダダ被りでした。申し訳ありません。
J組、文実委員までは少し意識あったのですが、キャラまでは意識してませんでした。
探偵娘は尊敬している作品ですので、二人目のキャラは完全に別人ということにしておいて下さい。
それでは3人目の告白編 投下致します。
雪乃「ごめんさい、お待たせしたわね、少し止めを刺すのに手間取ってしまって…」
??「止め?」
雪乃「いえ、ごめんなさいこっちの話よ、で話って何かしら?あなたから呼び出されるなんて少し意外なんだけど」
??「雪ノ下、どうやら俺は君の事が好きみたいだ。それを言いたかったんだ。…すまんな時間をとらせて」
雪乃「あら?言うことはそれだけかしら城山くん。多少なりとも縁があった間柄なのだから理由くらい聞かせてもらってもいいんじゃない?」
城山「あぁ、流石に俺も身の程はわきまえているし、付き合おうだとかそんな分不相応なことは考えていない。
ただあの大会で君の素晴らしい技を見て以降どうにもモヤモヤしてな、
君には迷惑なだけの話だとわかっているが自分の気持ちに気付いてからは単にただ気持ちを伝えてスッキリしたかっただけだ、自分勝手な理由で済まんな」
雪乃「いえ、今まで受けた数多くの告白のなかで不快にならなかった告白は数少ないの、あなたの告白はその一つだったわ。気持ちに答えられなくてごめんなさいね。」
城山「そう言ってもらえると気が楽になる、ありがとう。氷の女王と呼ばれる君のことだし、玉砕した人達の話を聞く限り幾ばくかの精神的ダメージは覚悟していただけに内心、ホッとしているよ」
雪乃「……そう、そんな風評を聞いてもこうして告白できるなんて勇気があるのね」
城山「まぁこんな精神状態だと部活にも集中できないし、完全に自己中な理由だ、君の修学旅行での貴重な時間も奪っていることだし、とても褒められる類のものではないさ」
雪乃「あ、そうだわさっき柔道部にぜひとも入りたいって人を見つけたの。こんな時期だけど根は単純そうだから厳しくしごいてあげて」
城山「おぉそうか、こんな時期なのに珍しいな、部員はいくら増えても困らないから助かる、もっと詳しい話を聞きたい所なんだが、
君に貴重な時間を割いてもらっているのにはもう一つ別の理由があってな…実は君に聞きたかったことがあるんだが、
まぁ今回の告白のきっかけになったあの大会での最後の試合、君はどうみた?」
雪乃「最後というと比企谷くんの試合のこと?」
城山「そうだ、俺の先輩との対戦について何か思う所はないか?」
雪乃「……そうね…端的に言うなら『惜敗』だったと思うわ」
城山「……流石だな、見る目も一流って訳か、他の観客にはいちゃもんつけて足掻いた挙句、アッサリ負けただけのようにしか見えなかっただろうが、実際は違う、たしかに君の言う通り惜しかった。
先輩の怒りや動揺を誘った手管に関してはまぁ何とも言えんが心理戦も駆け引きの一つ、曲がりなりにもスポーツ推薦で進学までした人に素人が危うく勝ちそうな所までいったというのは正直信じられない、アイツは何か武道の経験者なのか?」
雪乃「いえ…確か中二時代に、色々手をだしたとか言ってた気もするけれど、私の知る限り武道に関しては素人よ」
城山「そうか…センスがありそうだし部活に勧誘しようかと思ったんだが……
いや、でも先輩からアイツを柔道部に関わらせるなとキツく言われているしな」(苦笑)
雪乃「フフッ、そうね、彼を引き抜かれると奉仕部の人員が減って困るわ、代わりに入る部員をしごいてあげて。
それにまだ私には比企谷くんを調ky、真人間に矯正するという使命も負っていることだし…
それにやはり彼はオススメできないわね、きっと直ぐにサボったり姑息な手段を使ったりときっと他の部員に悪影響を与えるわ、彼をしつk、管理するのは想像以上に大変よ」(微笑)
城山「!? ……そうか、そうだったんだな…」
雪乃「どうしたの…?」
城山「いや、なんでもない、いや振られたってのに清々しい気持ちだな、ちゃんと諦めがついたってことか、うん、これで部活にも集中できそうだ。
それにちょっと珍しいものが見れたし、そうだ!お礼にいいコトを教えてやろう」ニヤ
雪乃「珍しいもの?それにお礼って…?」
城山「あの大会で君が試合に出るという話になった際、まぁ俺も含め会場中の誰もが驚きや心配、懸念の眼差しを向ける中、
一人だけ自信に満ちた顔で君を信頼しきっていた奴がいたよ。俺もその顔をみて試合をすることを決断したんだが…」
雪乃「……誰?もしかして…」
城山「…あぁ比企谷だよ」
雪乃「っ!!…………そ、そうなの?へぇ比企谷くんが……ま、まぁそんなの当たり前でしょう。
彼は私のことを他の誰よりもよく理解っているのだから……って、あっ、ち、ちがっい、いまのは」カアァ
城山「今サラリと凄いセリフを聞いた気がしたんだが」ニヤニヤ
雪乃「あ、貴方、な、なにか勘違いしていないかしら?今のは彼のストーカー気質を揶揄しただけよ。
あぁそうね、確かに私が悪かったわ、私としたことが大失態ね、最も危険なストーカーをこれまで容認してきたなんて、私の正義感も堕ちたものね。
いいでしょう、彼を即刻社会から抹殺するための方策を練ることにするわ、そう丁度さっきいい方法を編み出したところなのよ、それを使えば」
城山「わかった、わかった、これでも俺はアイツにも感謝しているんだ。あまりアイツを虐めてやるなよ、まるで小学生が……
おっと誰か来たようだな。俺はかまわんが君はこんなところ見られると困るだろう。じゃあ俺行くわ」
雪乃「……えぇ分かったわ、告白ありがとう」
城山「あぁ最後に君が彼のことを語っている時、とてもいい表情(かお)してたよ、珍しいもんってのはそれのことだ、いいもん見させてもらった。
そんな表情させることのできるアイツに、まぁ正直嫉妬してしまったよ、おかげで諦めもついたわ、じゃあな」タタッ
雪乃「~~っ!な、な、なにを、言って、ちょ、ちょっとま、待ちなs………ハァ」
番外編 ~完~
原作では本日13日が修学旅行2日目ということで、この日に合わせてみました。(合っているよね?)
8巻待ち遠しい皆様の少しでも暇つぶしになればと思います。
今晩投下します。
相変わらず遅筆での進行になると思いますが、
またお付き合い宜しくお願い致します。
日曜日。
不自然なほど明るい空と、気持ちいい陽気に晩秋の涼風が頬を撫でる。
時刻は正午を少し過ぎたというところだ。
かれこれ15分程、駅前のベンチで本を読んでいるのだが、全く内容が頭に入ってこない。何度もページを行ったり来たりしている。
どうやらあまりの出来事に動揺しているらしい。決して朝起きて鏡に映った自分の目が腐っていたからでもなく、慣れない髪型のせいでもない。
まさかあいつから『付き合って』なんて言われるとは…
どうしよう……やっぱり断ろうかな……だが今から断ったとしてもアイツの事だ、週明け早々に学校で糾弾されることは間違いない……
いやでも待て、しかし考えようによっては今ならまだ糾弾程度で済むという考え方もある。
そもそも何故おそらく最後になるであろう穏やかな休日がいきなりこんなことになってしまったのか?
まぁどう考えても修学旅行での告白の余波っつーことなんだろうが…
☓ ☓ ☓
土曜日夜。
八幡「だぁっ!くっっそ!材木座のやつ、このSDカードウィルス入ってんじゃねーか!」
しかも最新のウィルスときたか…あっぶね~、旅行前にマカフィー更新しておいて良かったー(汗)
修学旅行での写真が入ってるってゆーから、強引に借りた(奪った)ってのに……
くそう戸塚の写真が手に入らねぇ~。
色々あった修学旅行の疲れ(主に精神)を癒やすべく、俺は部屋で休日を満喫(現実逃避)していた。
材木座への怒りもそのままに、せっかくだからとウィルス関連の豆知識でもとネットの海をサーフィンしつつ材木座への仕返しを画策していると携帯がピロリンと音を立てる。
どこだ俺の携帯、普段は南米の巨大河川からしか届かないメールなど気にしないが、修学旅行を終えて以降、不穏当な予感を漂わすメールが届いておりスルーできない状態に陥っている…
俺同様のステルス機能を発揮する携帯を四苦八苦しながら見つけ出し画面を見る。
なーんだ、いつもの迷惑メールか~、もうビックリしたなぁ(震え声)
メールには怪しいアドレス貼ってるだけだし、クリックするときっと怪しいサイトに繋がるんだろうな~。件名に入っていた見覚えのある名前は見なかったことにする。
ぜってー押さねーと、迷惑メールフォルダに移行させようと画面をヌルヌル触っていると着信が入り、偶然通話ボタンを押してしまう、慌ててどうにか切断しようと触っているとスピーカーボタンもタッチ…
「………もしもし」
繋がっちゃったよ…まだ抵抗をしようかしばし逡巡するが、
この声はまさかと言うかやはりと言うかあいつの声だった。
抵抗を諦め電話に出る。
八幡「………もしもし」
繋がり難いっていうから、わざわざこのキャリア選んだのに、なに頑張ってつながりやすさ向上させてんの?
振り向くとそこには、二年F組のみならず総武高校のスクールカースト最上位に君臨する獄炎の女王、三浦優美子がいた。
よかった。午後って12時からだってちゃんとわかってたんだな、三浦の見た目以上に良識があることに安堵する。
三浦はというと冬も間近だというのに、やや肌を露出した格好で腕を組みながら値踏みするような視線でこちらを見ている。
キャミソールに目の荒いニットのカーディガン、下品にならない程度のミニスカートからその美脚が惜しげも無く晒され、ややヒールの高いブーツを履いているせいかその長い脚がより際立って見える。
こいつスタイルいいなーとか、属性が炎だから寒くないのだろうかとか益体もない事を考えてると三浦が意外4割、感心1割、気だるさ5割くらいの声音で言葉を続ける。
あーし「へーー、あんたキチンと整えたら思った以上に見れるようになるじゃん」
ん?今こいつは俺の事を褒めたのか?しかし今までは見れるもんではなかったと揶揄したのかとも取れる。雪ノ下であれば完全に後者だ、変換すると「あら、髪型を変えただけでも少しは人類に近づけるものなのね」といったとこか。
あーし「聞いてんの?」
どうでもいい事を考えてて自分がまだ何も喋っていなかった事に気付く。
八幡「あぁ聞いてる、なされるがままにされただけで、自分では何が変わったのかよくわからん。
ところでオシャレ美容師のトークに相槌を打つのに疲れたんでもう帰ってもいいか?」
いや、もう綺麗な美容師さんに髪を洗われてる間は夢心地だったんだが、強面のお兄さんに切られると分かった瞬間、斬られるんじゃないかとヒヤヒヤした。
あーし「はぁ?あんた相槌しかうってないのに疲れるとかありえないっしょ?」
バカヤロー、相槌ってのはそれなりに会話を聞いてないとうてないし、同じ相槌ばっかうってると向こうも気を使って、
さらにこちらも気を使ってといった相槌デフレスパイラルに陥り、むしろ精神的に疲れる部類だっつぅーの。
と心のなかで反論していると、怪訝そうな表情をした三浦が
あーし「てか、あんた今日なんで呼び出しされたかわかってないの?」
そんなノーヒントのクイズわかるわけねぇだろ、あの一方的な呼び出しで理解できるか。まぁこいつはそーゆー奴だったな。
八幡「いやあの一方的な電話の内容でわかるわけないし、そもそもお前のようなビッ、美人が俺ごときに用があるとは…」
あっぶねぇー、ビッチと言いそうになったが、とっさに回避、マジ俺の危機回避能力高すぎ、ナイスすぎる。
あーし「びっ、美人とか、い、いきなり何ゆってんの?あんたバカ?」
ナイスではなかったようだ…何故か褒めたっつーのに怒りのため紅くなった顔で怒られてしまう。
うーむこいつは褒められ慣れていると思ったのだが、意外とそうでもないのかね。
あと『あんたバカ?』のセリフは蔑むような感じと最後に『ぁ』を付けて伸ばす感じが必要だ。
あれっ、俺まだQ見てない…、あの作品は見るまでの期待している間が一番幸せなんだよな…
そんな崇高な思索に耽っていると、隣に三浦が腰掛ける。
うむ適切な距離だ、近過ぎず遠過ぎず、これが陽乃さんとかなら、一歩ばりのインファイトボクサーさながらの距離を取ってくるので非常に困る。
しっかりガードしないとハートブレイクショットをもらう勢い、そっちは伊達のおっさんだったな。
俺と同じ向きに座っているため、おそらく三浦の視界にも俺と同じ景色が映っているだろう。
少しばかりの沈黙の後、三浦の口から一つの事実が語られる。
あーし「あんた海老名と付き合うことになったんだよね」
八幡「…………あぁ」
やはりその話か、むしろそれ以外でアイツが俺に絡んでくることはないしな。
それに事実とは言ったが、半分正解で半分間違っている。
正しくは『嘘や欺瞞に満ちた男女の付き合いをすることになった』が正解かな。
生まれて初めての彼女がニセ彼女という事実に若干気持ちが沈む……
ごめんなさい純情で真っ白だった八幡のハート汚れちゃった…虚空に浮かぶ戸塚の顔を眺め懺悔する。
とりあえず女王が何を意図しているのか分からない以上余計な情報は与えない、最低限の回答で、三浦の続きの言葉を待つ。
あーし「海老名が何を考えているのかは、分からないけど、そういうの嫌いだと思っていた海老名が何か変わろうとしてるんならあーしはそれを見守ろうと思う。
まぁあんたが彼氏ってのは全くもって理解できないし納得もいってないんだけど」
そう言った三浦の声音からはどのような感情が含まれていたのかまでは分からなかった。
ただ三浦は変わっていく様々な変化を受け入れ、それでも最善を尽くそうと、足掻こうとしているのかもしれないなんて考えてしまった。
八幡「……言い分は分かった。で、そのことと今のこの状況について、やはり接点を見いだせないんだけど」
あーし「あんたがちゃんと海老名の彼氏に相応しくなるよう、私が今日面倒みてやるってこと」
ま、まじか?三浦のやつおかんスキル高いとは思っていたが、世話焼き過ぎでしょ。
だがその言葉を額面通り受け取れるほど、生憎俺は人間ができていない。
まぁつまりなんだ、友達に彼氏ができたから心配なんで俺の身辺調査をするってところか。
確かに仲の良い友達に急に彼女ができたら、……ムカつく、あれっ?心配じゃないな…
爆発しろっとか思っちゃうよね?どういうことだ?
身近な例で検証してみよう。そうたとえば戸塚……戸塚に彼女ができたら…
まぁいいんじゃないかな?百合百合したものは部室で見飽きているし、
では友達でもなんでもないが、材木座に彼女ができたとしよう。
うん、殺意意外の何も浮かばない…まぁアイツ友達じゃないしな。
というかやはり男友達のいない俺にとってはよくわからんってことだな。
結局はだ、つまりなんだ、これから三浦と二人で出かけるってこと…?
い、いや、あ、ありえん。いや無理でしょ、無理ゲーすぎるでしょ。
あーし「ほら何ボヤボヤしてんの?行くよ」
しかし帰りの新幹線で海老名さんの依頼を受けた以上、三浦との関係は有耶無耶には出来ないしな、今後の展開次第ではコイツにも利用価値があるかもしれん。
まぁ俺も出来る限りは足掻いてみるか…
スッと立ち上がりカッコ良く先導しようとする三浦を見つめながら、持っていた本をポッケに入れ腰を上げる。
見上げた青空はどこまでも澄み渡り、時折り撫でる風の温度が冬の始まりを予感させていた。
本日は以上となります。
次回は1周間以内を目標と致します。
駅から少し歩いたところにおしゃれな服屋(ショップというらしい)が立ち並ぶ。
こんな所あったんだ、てっきり以前雪ノ下と行った時のようなショッピングモールに行くものと思ってたんだが。
何気無く周囲の景色に目をやりながら歩いていると違和感を感じた、俺の頭部に美容室でも切られず残ったボッチセンサーがピコピコと警告を送ってくる。
感覚を研ぎ澄ますと空気が違うことに気付く、何故だか息苦しい……ふと周りを注意深く見渡すといつの間にかオシャレな格好をした若者の比率が急上昇している。
ほう、これが俗に言う魔界空間、魔物(リア充)の巣窟ってやつか、ショッピングモールなんかは家族連れや学生も多く何とも思わなかったが、ここは街行く人が皆、オシャレに非ずんば人に非ずと言わんばかりの空気を纏っている。
すれ違う際にお互いの格好をドン小西、もしくはピーコばりのファッションチェックしているような錯覚に陥る。あまりの居心地の悪さに毒フィールドをHPを削りながら進む妄想をしていると三浦が声を掛けてくる。
あーし「まず服な、今日のはまぁ思ったより悪かないけど、持っている服でなんとか合わせたって感じで、センスが感じられないっつーか、?」
流石にファッションにはこだわりがあるのか、俺が小町に超適当にコーディネートしてもらった服装に鋭いチェックを入れてくる。
ちなみに小町には今日のことは何も言ってない。今日出掛けるんだけど服装これでいいかと聞いたら3番目の引き出しの奥にあるグレーの服の方がいいと言われた…
なんで俺の引き出しそこまで把握してんの?お兄ちゃん的にポイント高いんだけれど俺の部屋のもの全部把握されてんじゃないかとお兄ちゃん少し怖くなっちゃうよ。
いやあれだ、別に見られて困るものがあるとかあるとかそういったことでは結局あるんだが…
まぁ俺ごときがリア充トップカーストに君臨する女王様のファッション観に対して意見を述べれる訳もなく、黙って従者の如く横に並んで歩いていく。
女王のイメージはマリーアントワネットといったところか、パンがないならバター入りのお菓子を食べればいいじゃないとか言いそうだしな。
因みに会話は殆どない。これが立場が微妙な関係なら喋ったほうがいいのかなーとか少し気にしたりするのだが、女王と従者という明確な身分差は逆に楽でいい、三浦が全く気を遣わないなら、こちらも気を遣う必要がないしな。
少し暇だったのでジョブを従者からランクアップさせてボディガードにしてみる。
インカムで連絡がはいってきたような振りをしたり、尾行者がいないか探す遊びをしていた。
警備対象も我儘な女王様という設定で妄想すると興が乗ってくる、
道は程々に狭い、 ふと後ろから車が来たので車道側に移動し女王を守るように歩いていると三浦から怪訝そうな目で睨まれる。ヤベェ、調子に乗りすぎたか、ウロチョロすんなしとか言われるのかと身構えてると女王も寛大な気持ちになったのか、何も言わずまた歩き出す。
流石にこのリア充通りとも呼べる空間の中においても三浦は目立つ存在なのか、すれ違う人達の視線を度々感じる。
特に俺に対して男性の刺すような視線は以前雪ノ下とショッピングモールで歩いた際に感じたものだから特に気にするでもないと思っていたのだが、何故か時たま女性の視線も刺さってる気がする。
いやあれだ決して自意識過剰な訳では無い。
訓練されたボッチマイスターであるこの俺がそのような初歩的なミスは冒さない。ただ俺の最強のフィルターを通しても今まで感じた事のない視線に戸惑う。
さて三浦はというとそんな下々の視線は慣れているのかそれとも元々眼中にないのか、我関せずと颯爽と歩き、予め店を決めていたのだろう目的の店に入る。
ごめんなさい。
もっと投下する予定でしたが、眠たすぎるので残りはまた後日。
店は小綺麗に整っていてオシャレな男女が服を手に取りキャッキャウフフと楽しそうだ。
休日だけあって店内はそこそこ賑わっている。
三浦は早速顔見知りと思われる店員さんに話しかけられていたが、すぐに店員さんが俺の存在に気付く。
三浦が何か告げると、店員さんは店の奥から幾つかの男物の服を持ってきた。
あーし「これちょっと着てみ」
店員さんから服を受け取り一通り目を通した三浦はそこから二着を俺に渡してくる。
無言で頷き三浦に言われるがままに服を試着しカーテンを開く。
店員さんがすっごく似合ってますよと絶賛するも俺にはどうもピンとはこない。
三浦も少し感心したような表情を見せるが、次と言い放ちカーテンを閉める。
店員さんと三浦は次から次へと服を選んでは着せ替えてくのだが、おかん属性が刺激されたのかあーだこーだと店員さんと議論を重ねているのを、俺はというとリカちゃん人形の如く無心を貫き言われるがままにしている。
するといきなり三浦が刺すような視線でこっちを睨んだ。
あーし「つーかさ」
その尊大とも言える声が、無心と化していた俺の意識を引き戻す。
あーし「ちょっとヒキオ、やる気あんの?」
女王から恐ろしく冷めた声音で問い詰められる。……うん全く持ってやる気有りません。
……まぁ正直に伝えるのも申し訳ないので適当に誤魔化す。
八幡「い、いや、することないなー、なんて思っていたり…」
いや着たり脱いだりはちゃんとやってるよ。
あーし「はぁ?ちょっとあんた分かってんの?」
八幡「え?な、何が?」
あーし「今日の目的」
八幡「え?…お前が俺の服選んでくれるんじゃないの?」
俺としては服を選んでくれるのは有難いんだが、どちらかと言うとさっきから着てる服の値札の方が気になってしょうがないんだが…
あーし「違うし、これからあーしがあんたの服、ずっと選び続けられるわけないじゃん?てかヒキオと買い物なんて金輪際あり得ないし」
まぁそうだな、俺もお前と二人でとか金輪際ないわ。
あーし「こうやって色んな服を試着して自分に合う服、合わない服を見極めんの。センスなんて始めから備わってるんじゃ無いし、流行りだってあっという間に変わってくんだから店で試着したり、雑誌や他の人の格好を参考にしたりすることで身に付けてくんじゃん」
………予想外の言葉に少し戸惑った、拙いながらも論理的な説明もそうだが、それ以上にその考え方に。
飢えている人に魚を与えるのではなく、魚の捕り方を教える、何処かのブラック部活の部長様と同じやり方…
女王の名を冠するには資格試験でもあるのかね。
流石にトップカーストに君臨し、その座を維持し続けているだけのことはある。
確かに友達の為とはいえ、全くと言ってもいいくらい興味のない俺ごときに休日を割いて面倒見ようなんて普通であればまずしない、もしかしたらコイツ本当に優しい奴なのかもしれない。
確かにコイツが今日をそれなりに真剣に考えているのであれば、俺の態度はまぁ糾弾に値するだろう。
どちらに非があるかと言われれば俺のほうが分が悪いのは言うまでもない。
まぁ俺も彼女が出来た以上(ニセとはいえ)、少しくらい容姿に気を回すべきかもしれないしな、と自分に少し言い訳しつつ三浦の責めに応える。
八幡「そうか、すまなかったな、確かにお前の言う通りだわ、少しだけやる気出してみるんで、色々指導してくれると助かる」
言葉を発した後、俺にしては珍しく前向きな心構えだなーと自分でもびっくりした。
三浦も俺が素直に謝ったのが意外だったのかキョトンとした素の表情が意外と可愛かった。
鳩が豆鉄砲喰らったようなとよく表現するが、実際に鳩のそんな顔を見た人間がどれだけいるんだろうなとかどうでもいい事を考えてる間に三浦も再起動する。
あーし「そ、そう、分かればいーし、…じゃあコレとコレを着てどっちがいいか自分でも考えてみ」
セリフの最後に三浦は少し笑い、俺に服を手渡し、新たな服を探しに店の奥に向かって行った。
以上です。次回もできれば近いうちに…
結局最初の店では何も買わず、次の店に向かっている。
すげぇな、あんなに試着しておいて何も買わずに店を出れるなんてどんだけメンタル強えんだよ。
店員さんなんか若干引きつってたぜ。まぁ俺も服の値札を見て若干引きつっていたから結果としては助かったんだが。
あーし「じゃあこの店では自分で服選んでみ」
先程の店に比べ若干カジュアル色が強い店に入り、早々に三浦が告げてくる。
なん、だと?…オイオイもし店員さんに声かけられたらどうするんだよ?
泣いて困っても知らねーぞ、俺が…と心の中で反抗するその声が届くわけもなく、大人しく三浦の言に従う。
空気と同化する俺のステルススキルを駆使して店員さんの捕獲網を掻い潜りいくつか服を見繕う。
三浦に事前にチェックしてもらい試着室に入った。
八幡「これどうだ?……あれっ?」
服を着て試着室のカーテンを開けると三浦がいなくなっていた。
どこにいったのかと辺りを見回してると隣のカーテンからシャッとカーテンが開く音がし、先程とは違う装いをした三浦が姿を現す。
あーし「ねぇこれどーよ?」
スレンダーな身体によくフィットした黒のワンピース、ひらひらしたレースで縁取られた部分が柔らかめな印象を与えて入るものの、しっかりとスタイルの良さは強調されている。
八幡「どうと言われてもなぁ……すげぇよく似合ってるとしか」
他に言いようがない。三浦はその金髪のせいか、この手の派手系アイテムが異様に似合う。
俺は素直に褒めたのだが、三浦は姿見の方を向いて肩を右に左に捻っていた。
今、三浦がどんな顔をしているか知っているのは鏡と本人だけだ。
あーし「……これ結構気に入ったんだけど、た、例えばさ、隼人とか気に入ると思う?」
ストレートだなぁ、何の例えにもなってねぇし。
八幡「葉山の好みなんざ毛程も知らんが、アイツはきっとその服が気に入らないと思う」
あーし「あん?なんで知らないのにそう言い切れんのよ」
声音が瞬時にして捕食者のそれに変わる。怖ぇよ。
八幡「よく考えてみろ。葉山と俺は例えるなら水と油だ、いやもうむしろ、富士の天然水とアラブで産出される原油くらいまである、そこまではいいな?」
何を言い出すのかと言った顔で不承不承ながら三浦も頷く。
八幡「俺が黒なら葉山は白、葉山が人気者なら俺は日陰者、光と影としてお互い相容れない存在が葉山と俺、つまりあいつと俺は正反対である、よって俺がその服を似合ってると思っている以上、アイツがそれを気に入る事はないってことだ!証明終了、Q・E・D」
俺がドヤ顔で持論を展開すると、三浦は呆れ顔で応える。
あーし「いやその証明、間違ってるの私でもわかるし、まぁ確かに隼人の好みとかヒキオにわかる訳ないよね」
おかしいな、これが由比ヶ浜ならなるほど~と納得する所なんだが…、流石にグループのツッコミ役だけあってある程度の分別はつくようだ。
ふーんそっか、と楽しげに呟き振り返った三浦はまた色違いの服を手に取り試着室のカーテンを閉める。
あれっ?結局俺のこの服どうなの?俺的には結構似合ってんじゃないかな~とか思ってんだけど、、 、
するとカーテンの中から三浦が語りかけてきた。
あーし「その服だけど、まぁまぁいんじゃない、下はもう少し濃いめの色の方がいいと思う」
一応ちゃんとチェックしてくれてはいたようだ、そろそろ飽きて終わりになるんじゃないかなーと若干期待したんだが…
そして先程より青が深みを増したGパンを見つけ試着室に入ろうとした所で、また隣の試着室のカーテンが開き、今度は明るい色合いのワンピースを纏った三浦がこっちを向いている。
似合っていない訳ではないが、少し大人しい印象を与えるその装いは若干三浦の魅力を削いでいるようにも感じる。
あーし「やっぱ黒?」
半ば独り言っぽく呟き、先程の黒のワンピースを手にし、うーんと思案顔だ。
八幡「そうだな、さっきの方が似合っているんじゃないか?黒は女を美しく見せるっていうし」
国民的アニメの名セリフから引用させて頂く。
あーし「やっぱり?あーしもそう思ったんだよね、おソノさんの言うことに間違いないしね」
なんだよ、ジブリ見てんのかよ。でもキキに共感する三浦ってのも萌える。でも三浦はトンボの友達だったワガママそうなお嬢様かな、いや自由で面倒見のいいウルスラって線もある。
そんな平和な事を考えていた時代が俺にもありました。
もう一度、姿見を見るために振り返った三浦に対して、俺は一瞬自分の目を疑った。
まぁ常時腐っているから、いつも疑いの目で見られてはいるものではあるんだが。
…姉さん、事件です。
やめておこう、『姉さん』と『事件』というフレーズは一緒にしちゃいけない気がする、混ぜるな危険!
まぁなんだ、トラブル発生と言うか、いや正確にはToLOVEる発生と言うべきなのだろう。
淡い色合いのワンピースの裾で隠れているべき小悪魔的な丸みを帯びた艶美な曲線が、薄い桃色の布に包まれただけの状態で俺の網膜に飛び込んでくる。
うんハッキリと言おう、パンツ!ピンク!意外!
あっぶねー。一瞬、今日来てよかったな~とか思っちゃったぜ…
何故そんなことになっているのかと注意深く見ると、どうやらスカートの裾に付けられたタグがベルト位置にあたる装飾に引っ掛かっているようだ。
完全に三浦の死角になっており本人は気付いていない。
指摘をしてあげようか逡巡するも、その後にどんな厄災や災厄が降ってくるか全くもって読めない以上そのリスクを取るのは得策ではない。
周囲に目をやるも試着室は店の奥まった所にあることも幸いし、今のところ他の誰かに見られる心配もない…
試着を終えて最初の服に着替え直すことを祈りつつ、様子(パンツ)を見ていると三浦は何を思ったのか試着室から出てこようとする。
八幡「ちょ、ちょ待った」
慌てて止めるも三浦が鬱陶しそうに言い放つ。
あーし「何?他の服見るんだから、そこ邪魔」
考えろ八幡、ここからの起死回生の一手を…
あれっ何も浮かばん…
八幡「い、いやさっきの黒い服、結構似合っていたし、折角だからもう一度着て欲しいなぁなんて…」
とりあえず褒めてみる…が、このミッション、コミュ症ボッチには難易度が高すぎる…
は、恥ずかしい、このセリフ、確実に黒歴史…
あーし「え?…な、何言ってんのよ?キ、キモ」
怒りのせいか顔が若干紅潮している。
くそう、やっぱり試着室に押し返すのは無理か…
女はとりあえず褒めときゃ上手くいくなんて都市伝説だったんや。
もしくは『ただしイケメンに限る』の注釈付けとけっ
あーし「…で、でもヒキオがそこまで見たいって言うなら…」
うぞっ?
八幡「い、いやそんなに強い要望って訳じゃぁ……」
何を言ってるんだ俺は、願ったりの展開なのに三浦の恥ずかしそうな仕草につられ、俺も日和ってしまいそうになる。
幸い俺の言葉は聞こえて無かったようで、三浦は口を尖らせ渋々といった顔で試着室に掛けたさっきの黒いワンピースに手を伸ばそうとする。
だが服に手が届くすんでの所で、えっ、と三浦が声をあげ、伸ばされたその細長い手がピタリと止まる。
三浦の視線は斜め後ろに置いていた移動式の姿見に固定されており、その角度は見事三浦の背後を捉えている…
停止した手の先がゆっくりと背中へと移動し、そしてその下に降りて目標地点に到達する。
既に危険を察知した俺はというと、試着室の中に入るところまでは来た。
後はカーテンを締めるだけだ。
だがカーテンに手をかけたところでこっちを向いた三浦と目が合った途端、まるで蛇に睨まれたヒキガエルのように手が全くもって動かなくなる。
あーし「……ねぇヒキオ」
八幡「な、なんでせぅ?」
あーし「…見た?」
八幡「な、何をでせぅ?」
あーし「ミタ?」
家政婦のドラマなら見てたけど…専業主夫の参考になるかなぁ~って?でも違うんだよね?
ダメだ三浦の目のハイライトが消えている。
八幡「い、いや待て、お、俺は悪くない…」
あーし「見たんだ…」
八幡「……」
あーし「責任とって…」
何責任て?セリフが重いよ。
八幡「…無理です」
あーし「じゃあ、あーしの言うこと何でも聞くこと」
あれっ?今、俺無理って言ったよね?
八幡「(…無理です)…承知しました」
あれっ?俺、今承知したって言ったの?ミタさんなの?
なんで思ってる事と違う事…あぁそうか、俺の生存本能が久しぶりに仕事したんですね。
ちょ、パンツ見たくらいで奴隷確定とかどんだけ俺の人権安いんだよ。ねぇ泣いちゃっていい?
その後、試着室に閉じ籠った三浦は出て来るまで5分くらいかかった。落ち込んでいるのか若干涙目だ。意外と乙女…
しかし、こう普段超強気な子の涙目ってのはなかなかいいものですね!
だが意気消沈ながらも律儀に先程の黒い服を着てくれていたので、この時ばかりは歯に衣着せぬ物言いが自慢の俺も、一張羅の衣を歯に着せ、全力で三浦の容姿を褒め称えた。
幸いにもそれが功を奏したのか三浦の機嫌も少し持ち直したようだ。
結局、店を出る時に、三浦はその黒い服をしっかり購入していた。
俺がそれを見てると、あーしが気に入ったから買ったんだと聞いてもいないのに話してきた。
確かによく似合っていたし三浦が言うならまぁそうなんだろう。
因みに俺はというと気に入った服はあるにはあったんだが財布の中身と相談した結果、店員さんにまた来ますと告げ店を出た。うんもう来ない。
× × ×
さて奴隷へとジョブチェンジした俺と女王様は店を出て、街を闊歩する。
三浦は気に入った服を買えたせいか機嫌も持ち直したようだ。購入した服は当然の帰結とばかりに俺が運搬している。
ぼっち男子高校生の日常とは180度異なる生活パターンのせいなのか若干、腹が減ってきた。
俺のストマックバグズ(注:腹の虫)からも確かな呻き声が聞こえる。しかしそれは三浦も同様だったようだ。
あーし「なんかお腹空いた」
まるで自宅にいるかのような物言い、でも、おじさんはこんな時恥じらいを見せてくれる方がポイント高いと思うの。
バター入りのお菓子を食べればいいんじゃないか、とは流石に思ってても言わない。言えない。
八幡「じゃあどっか入るか、どこにする?」
俺の意見が通る訳もないので、選択を丸投げする。
俺が問うと、三浦は予め決めていたのか、悩むことなく言う。
あーし「サイゼでいんじゃない」
意外だな、てっきりコイツは洒落たカフェなんぞを指定してくると思ってたんだが。
まぁプロのサイゼリアンを自負する俺的にはポイント高い。
八幡「それならこっからも近いし、いいんじゃないか、道は…こっちだな」
千葉のサイゼの位置ならほとんど網羅している俺だ。最寄りの店までの最短ルートを脳内マップに思い描き、歩き始める。
何食べようかと、レギュラーメニューを思い浮かべながら進んでいると、襟首を勢い良く引っ張られる。
あーし「ちょっとここ寄る」
首に服が食い込み、んげっと変な声が出ながらも、気まぐれ女王の指差した先に目を向けると、そこは代表的なアルファベットの記号が印象的な名前の靴屋だった。
あーし「今のやつ少しヘタってきたから買い換えようと思ってたんだ」
店に入ってそう言いながら向かった先は、意外にもスポーツシューズのコーナーだった。
機能性とデザインを兼ね備えた色とりどりのシューズが、爪先立ちの格好で棚の上に並んでいる。
八幡「…たしか三浦って部活入ってなかったよな?」
レディース、ランニングシューズと表示された箇所で立ち止まった三浦の背中越しに話しかける。
あーし「あー、あーしたまに外走ったりすんの。高校入って運動しなくなってからかな、中学ん時は普通に毎日何キロか走ってたし、そんでかな、今でもたまに走りたくなんの」
そういや三浦は確か中学ん時、女テニで県選抜にもなってたとか由比ヶ浜が言ってたな、あのテニス勝負からもう半年くらい経つのかと懐かしんでいると、三浦も似たような邂逅をしていたようだ。
あーし「そーいや、アンタと前にテニス勝負とかしたっけ、ヒキオなにげに上手くなかった?変な魔球、…たしかオイシー・ミルフィーユとかヒキオ・ストライキ?とか名付けてたよね。マジうけるんだけど…」
八幡「おい待て、俺が名付けたみたいにしてんじゃねぇ、あと微妙に名称も違ってるから」
なんで脳内スイーツみたいになってんだよ、あと俺がストライキしたところで一人だから完全に効果ないからな。
…まてよ、専業主夫だから家事放棄という手でいけるかも、要望はそうだな、家に帰ってくるなりまず暴言を浴びせるのを止めろとかか?
うん、とても要望が通る見込みがない、むしろ即時、家から追い出されてしまうまである。
まて、今一体誰を想像した?
あーし「ヒキオ初心者だったっしょ?もしかして運動できんの?」
八幡「いや、別に普通だ」
まぁ結構運動は出来る方かもしれない、中学の時、スポーツテストでA判定だったし。
あーし「ふーん、でもあーしといい勝負したくらいだから上手いっつってもいんじゃない。何か運動系の部活とかやればよかったのに」
八幡「いや、団体競技とか無理だし」
あーし「あー、…でも個人種目とかならいけんじゃね?テニスだって基本シングルだし」
八幡「ふっ、何も分かっていないな。競技じゃないんだ、部活である以上、団体で行動するだろ、その時点でもう俺には入れないんだ」
あーし「でも今は部活やってんじゃん」
八幡「………」
三浦はおそらくただ思ったことを言っただけだろう。何らかの意図を持って言った訳では無いのは分かっている、しかし俺はその言葉に対し何も言えなかった。
いや頭の中では言い訳の言葉がいくらでも浮かんでいるのだから、あえて言わなかった、の方が正しいのかもしれない。
俺が黙っていると三浦は言葉を言い添える。
あーし「まぁ確かに部活だと、人間関係とかいろいろあるしヒキオには無理かもね」
手に取ったシューズに視線を向けたまま三浦が言ったそのセリフに違和感を抱いた。
何も気付かなければ俺も額面通りの意味としてスルーしていたであろう。
しかし三浦の背中の強張り、手に持った靴の微かな歪みがそこに何かあることを暗に物語っている。
なにより人間関係においておよそ気苦労や気遣いとは無縁そうな女王の言葉だけに、その真意を推し量りたくなる。
八幡「三浦は何で高校じゃあ部活やんなかったんだ? テニス、県選抜までいったんだろ?」
あーし「……いや高校まで来て熱血とか無理っしょ」
しかし、その返事にはついさっきまで含まれていた微かな緊張は既になくなっていた。
半ば諦観めいたその声音は逆に少し三浦らしくない。
さっきとの変化に更なる疑念が頭をよぎる。
……いや、よそう。常に言葉の裏を読もうとするのは俺の悪い癖だ。
またぞろ、その悪癖が顔を出しそうになったとき、三浦が「あ、でも」と思い直したように言い添える。
あーし「隼人がサッカーに打ち込んでる姿は別だから」
そう微笑んで言った三浦は俺とは反対方向にある靴棚へと歩いてく。
もう既に三浦はこの話はお終いとばかりに、ジョギングシューズを幾つか見繕っている。
さほど興味のない人間の内面や過去が分かったところで俺が何とかできる訳でもないしその気もない。
八幡「…さいですか」
俺も興味なさげに返しておいた。
今回、短いですが以上になります。
靴屋を出て目的地であるサイゼを目指す。
当然俺の手には先程の紙袋に加え、靴屋の黄色いビニール袋も携えられていた。
おかしい、まだ俺何も買ってないよね、まあ小町と買い物行った際もこんな状態か。
窓越しに見えるショップのディスプレイをつらつらと眺めつつ、大通りから少し逸れた道に入る。
と、ふと一軒の店に目がとまった、こじんまりした店構えだが雰囲気ある佇まいが好感を抱かせる。飾られた服も何となく俺好みだ。
サイゼまで行った後、ここまで戻って来るのも無駄足となる。空腹の女王にお叱りを受けるかもしれないが、効率を重視する俺としてはここで一着くらい買っておきたい。
うまいこと行けば食事を取って解散という流れも期待できる。まぁダメならダメで三浦はバッサリ断ってくれるだろう。
八幡「なぁちょっとあの店見てみたいんだけど?」
俺が指した先の店を見た三浦は一瞬微妙な顔をしたが、直ぐにいつもの気怠い表情に戻る。
あーし「ふーん、いいよ」
思ったよりアッサリと了承され、身構えていた俺は少し拍子抜けするも、女王の気が変わる前にと足早に店に向かう。
店の中は所狭しと服や帽子、靴などがディスプレイされ、ガラスケース内には革製の小物やシルバーアクセ等がディスプレイされている。商品はほぼメンズのみで構成されてるようだ。
店の中をざっと見回していると店員さんが背後から話しかけてきた。
気配を消していたのに捕捉されたようだ、この店員できる。…振り返るとかなり強面の店員さんが笑顔でこっちを見ていた…
結論、店に入った事を後悔しました…むり、ムリ、いや無理でしょ。
この店員さん、リア充オーラ出し過ぎだし、怖いし、ピアスいくつ空けてんの?怖いよ、なんで腕にいっぱい絵書いてんの?怖いから!客商売なのにその容姿はマイナスでしょ。
こちとら絶句しているのにも関わらず、店員さんは矢継ぎ早に営業トークを浴びせかけ、俺の精神力を膨大に削ってくる。もうやめて八幡のライフはゼロよ。
涙目で相槌スキルを発動させていると、三浦がコッチに来てくれる。た、助けて、ご主人様。
あーし「店長ゴメン、こいつあーしの連れなんだ」
店長「あれっ?うそ、もしかしてユミコちゃん?…マジか、久しぶりじゃん!髪染めてっから一瞬誰か分かんなかったわ」
どうやら俺を縮み上がらせた店長らしき人物は三浦の知人だったようだ。知ってる店なら入る前に教えてくれれば良かったのに…しかしあれだな、美容院の人といい、この店長といい、三浦の知人は恐怖というカテゴリーでまとめられているんじゃないだろうか。
猛獣というサークル作った方がいいんじゃないか、檻に入れという意味でも。
店長の言葉通り三浦も久しぶりの来店みたいで、表情から見るに若干、距離感を図っているように見える。
あーし「うん、久しぶり」
店長「いやー元気してた?そうか…今はもう高校生か、しかしあれだな『可愛い』から『綺麗』になってて一瞬わからなかったわ」
あーし「あいかわらずだね、口上手いところ」
店長のくだけた会話術も手伝ってか三浦の表情も緩む。
店長「いや、えらい美男美女のカップルが来たなって思ってたんよ、んで何?このクールなイケメンにーちゃん、ユミコちゃんの彼氏?」
三浦はともかく、この人今、俺のことイケメン扱いした?まさか俺、もしかして……
なんて勘違いをする程俺は未熟ではない。
今のはあれだ販売スキルの一つ、とりあえず客をヨイショして気持ち良くさせたところに高いもの売り付けようって算段だ。
親父の話は為になるなぁ。
あーし「彼氏じゃねーし、ってかコレ中身は悪いけど素材は悪くないと思うんだよね?なんか適当に見繕ってくんない?」
いやいや俺確かに見てくれは悪くないと思ってたけど、お前に中身を否定される程、酷いこと……まぁテニスで卑怯?な手段で勝ったり夏合宿では小学生に非道い仕打ちしたなぁ。
そいやコイツ文化祭での事、どう思ってんだろ?相模をウザいとは思ってたみたいだが、あの一件についてイマイチ三浦の真意は掴めていない。
まぁそれはさておき三浦から依頼されたコワモテ店長さんはというと、俺を上から下へと一瞥し、ふむと呟き店の裏に入っていった。
あーし「あの人一応ここの店長なんだけど、別でスタイリストやってんの、結構やり手みたい。どっちかーつーと、この店が趣味でやってるような感じかな」
ほうそうかスタイリストだったのか、道理で怖いハズだ…ところでスタイリストってなに?食えんの?
待っている間、三浦からスタイリストのいろはを簡単に説明してもらっていると、店長が何着かの服を携え戻って来た。
服はどれも年季が入っている。古着というのか、俺が言うのもおこがましいがどれもセンスがいい。
店長「うーん、これとこの組み合わせがいちばんベストかな、売り物じゃないから気に入ったならタダでいいし、まぁとりあえず着てみてよ」
店長から受け取った服を横から覗き込んだ三浦が口を挟んでくる。
あーし「マジ?これって結構いいやつなんじゃないの?」
そう言われ改めて服を見ると確かに服に造形のない俺でもなんとなく高そうな雰囲気は感じることができた。
店長「俺のお古でもう着ないやつだし、それに他ならぬユミコちゃんの彼氏だしね」
あーし「彼氏じゃねーし、……でもありがと、ほらヒキオもお礼言うし」
バシッと背中を叩かれる。
八幡「あ、ありがとうございます」
店長「いやーでもユミコちゃんがまた来てくれて嬉しいよ。中学の時以来だからねぇ、いやあの頃のユミコちゃんも可愛かったんよ、黒髪で強気でオシャレにも精一杯背伸びしてて」
さすが三浦、中学の時からこんな店に出入りしてたのか、でもこの店ってメンズしか置いてないよな。
あーし「っもう、昔のことはいいから、ほらヒキオも早くそれ試着しろし」
三浦に捲し立てられたのと、まぁ俺も店長の持ってきた服がちょっと気になっていたのでそそくさと試着室に入り手渡された服を見る。
グレーの薄い皮のジャケットと所々に解れや切れ目が入っているダメージジーンズ。
先ずはジーンズを履きシャツはそのままでいいと言われたので上着を脱いでジャケットを羽織る。サイズはやや大きめかもしれないが気になる程でも無い。何度も着られた為か新品のような堅さもなく程よく馴染む。
これはなかなか似合ってるんじゃないかと、斜め後ろの姿見を見て唖然とする、なん…だ、と?
これは果たして一体、俺なのか?見違えたというのか見間違えたが正しいのか…
自分の事は自分が一番分かっている、人に何か言われる度に言い訳のように使ってきた言葉だが、しかしその言葉は俺にはまだ早かったようだ。
ハッキリと言おう。俺!カッコイイ!意外!
どういうことだってばよ?服を変えただけでこんなに印象変わるの?変化の術か?
お礼を言わねばとカーテンに手をかけたところでピタリと手が止まる…
いや待て八幡よ、…お前はまた同じ過ちを繰り返すのか?…そう、思い出せ、過去に超絶カッコイイ服を買ってドヤ顔で妹の前でファッションショーをした時の事を…
その服で外出たら兄妹の縁斬るからねと宣言された時、もう二度と自分のセンスを過信しまいと誓ったではないか。
…小町のあの目はマジだった。あの時初めて妹は本当に斬る人間だと認知したのだ。
トラウマセンサーがすんでのところで働いたことも手伝い、なるべく平静さを装いながらおそるおそるカーテンを開き、二人のリアクションを見る。
八幡「ど、どうかな?」
俺が呼びかけると三浦は店長との会話をやめ、こちらを見る。
すると驚いた表情で目を見開き、その整った唇から言葉が漏れる。
あーし「うそ……っこいぃ」ボソ
うん?最後何つったんだ?隣の店長には聞こえてたようでうんうんと満足そうな顔で頷いている。
店長「やっぱこの組み合わせで良かったな、かなり似合ってんじゃない?自分でも結構気に入ったでしょ?」
八幡「は、はい、身体にもすごく馴染んで着心地もいいし、な、なぁ?、、おい、三浦?」
褒められた恥ずかしさを誤魔化す様に、まだ固まったままの三浦へ話題を振る。
あーし「あ…、う、うん、カッコイイ…ち、ちがくて、いや似合ってんだけど、それは服がいいから、そう服と髪型のおかげだし、勘違いするんじゃねーし」
八幡「…マジか、似合ってるのか?」
これまでの曖昧な表現ではなく、直接的な言葉を言われ少し照れる。
言った本人も失言だったとばかりにそっぽを向くも、チラチラと目線だけの視線を感じる。
あーし「服と髪型だけね、後は腐ってるから」
あれれ~おかしいよ~?さっき素材は悪くないって言ってたよね?腐ってるのは眼だけだから。
コナン風に脳内ツッコミを入れていると、店長は今のやりとりを聞いて何か思いついたようだ。
店長「そうか、あとは…ちょっと待って」
そう一人納得したように呟き店長はレジの方から何やら取り出してきた。
店長「これ掛けて見てよ」
手渡されたのは黒縁の眼鏡だ、よく見ると度は入ってない、伊達か。
俺の脳内小学生キャラを読んだのか?…うんあるな、いやない。
店長に促されるまま、眼鏡を掛ける。
あーし「っ……」
店長「うぉっ!?…自分すごいなぁ、これビフォーアフター出れるで」
なんということでしょう、匠の持って来た何の変哲もない唯の眼鏡、それが彼の顔に掛けたとたん、なんと別人へと早変わり、あれほど目が腐っていた八幡が、こんなにきれいな八幡へと生まれ変わったではありませんか。
これでもう引き立て役んと言われる心配はありません。
相談者である三浦さんも、あまりの変化に絶句しています。
家の大改造だった番組は俺の知らない間に人間の大改造へと変わっていたようだ、んな訳あるか。
まぁ確かに姿見に写る自分は全くの別人に見える。誰こいつ?三浦なんか頬を染めてぽーとしちゃってる。
やめて俺をそんな目で見ないで。
店長「うん、その服が似合うなら…、ちょっとこっちも着てみてよ」
店長は他の服も見繕いながら、いろいろ着こなし方のコツなんかをアドバイスしてくれた。
三浦はというと、カーテンを開く度にチラリと見てはくれるのだが視線は合わせず、ずっと無言だ。
店長「やっぱこれが一番いいかな、ユミコちゃんもそう思うでしょ?」
一回りして最初の服に着替えた俺を見て店長は頷く。
あーし「う、うん」
やっと口を開くも、いつもの強気な三浦は何処へ行ったのやら、えらく殊勝な態度にこちらもどう対応していいのかわからなくなる。
店長「それ、もう着て帰ったらいいよ」
言いながら店長はレジに向かい、元々着ていた服を店のロゴが入った紙袋に詰めてくれた。
ついでにと試着した他の服もいくつか重ねてくれる。
流石にタダは申し訳ないのでいくらか払わせて欲しいと申し出るも、眼鏡は売り物だからそれだけでいいと言われるとコミュ症の俺にはそれ以上言えるわけもなく、仕方なくと財布を取り出す。
と、レジ下のディスプレイに並んだ品に目がとまった。
どうなんだろうと考えこんでいると何かを察した店長と目が合い、ニヤリと笑みを返してくれた。
× × ×
店長「毎度あり~、また来てね~」
店先の扉まで見送ってくれた店長に再度お礼をと、いいかけた先を三浦が代弁する。
あーし「店長ありがと、でもホントにいいの?」
店長「いや他ならぬユミコちゃんの彼氏だし」
あーし「彼氏じゃねーし」
店長「ははっ、まぁ俺の古着でもう着ないやつだから特別サービスってことでさ、けっこう愛着持ってた服もあるから、ユミコちゃんと同様、大事にしてよね」
レまむらやウニクロ愛用の俺でもこれらの服がそれなりのものだってことは分かる。
八幡「は、はい、ちゃんと大事にします」
あーし「ちょ、ヒ、ヒキオ何言ってるし」カアァ
顔を真っ赤にして慌てふためく三浦はさておき、店長に何度もお礼を言って店を出た。
さて行くかと三浦を見るも先程と同様、何故かこっちを見てくれない。まあお礼は言っとかないとな。
八幡「いや三浦のおかげでいい買い物が出来たよ、ありがとな」
あーし「だしょ、ちゃんと大事にしろし…って、ふ、服のことな、…ほらっさっさと行くし」
追い立てられるように急かされ歩みを進めると、隣から呟きにも似た言葉が聞こえる。
あーし「……でも意外」
八幡「…ん、何が?」
あーし「あの店長、結構人を見るんだ、仕事でも気に入らない人の依頼はどんなに条件良くても受けないくらい、……ヒキオは気に入られたみたいね」
八幡「…三浦の連れってことで良くしてくれたんだろ、だったら三浦のおかげってことなんじゃないか」
初見殺しとして名を馳せた俺が初対面でいきなり気に入られるとかありえないしな。良くて社交辞令の挨拶を交わしてくれる程度、最悪無視されるまである。
かと言って二回目以降でも気に入られるとかはないけど…、いや二回目の機会自体が無かったな、何それ哀しい。
俺が自虐史のページをめくっていると更に三浦は続ける。
あーし「あーしはなんか気に入られて結構良くしてもらったんだけれど、昔の連れはそんなこと無くて、それで最後にちょっと揉めちゃってさ、あの店には少し行き辛かったんだ」
八幡「…まぁ好みなんて人それぞれだろ、仮に俺が気に入られたとしても、単なる気まぐれみたいなものかもしれないしな」
三浦はさらに何かを言おうとするも、しばし沈黙し、歩みを早め俺の隣に並ぶ。
さっきまでとは異なる雰囲気にふと三浦を見ると、三浦もつられてこっちを向く。
目が合った瞬間、うっと声を詰まらせ顔を背ける。
あーし「……外して」
八幡「は?」
あーし「だから眼鏡外してって言ってるの」
八幡「え、や、やっぱ似合わないのか?」
あーし「い、いやそうじゃなく…、に、似合いすぎるというか、じゃなくて、そ、そうヒキオらしくないから…」
八幡「そ、そうか…まぁ何でも言うこと聞くって約束だしな」
言いながら眼鏡を外して胸ポケットに入れる。
三浦は伺うようにこちらを向いて頷く。
あーし「うん、ヒキオはやっぱそっちの腐った目の方が合ってるかも」
いつもの気怠い表情から一転、屈託のない無防備な三浦の表情に不覚にもドキリとしてしまった。
くそう、軽く貶されてるのに、可愛いから何も言えねえじゃねーか。
あーし「お腹空いたし早くいこ」
そう言って、三浦は笑った。
本日は以上となります。
毎回毎回、遅くてすいません。
年度末は忙しいですね。
それではまた。
店を出て再びサイゼに向けて歩を進める。さっきの店を出てからというもの、すれ違う人の視線がやけに突き刺さる。今までより若干、目立つ服装ではあるものの、そこまで特記すべきものでもない……ハズ。
それになんというかやたら女性と目が合い、慌てて逸らされるのが非常に気になる。意図して異性と目を合わせないようスキルを磨いた俺と目が合うのだから一層不可解でもある。もしこれが俺一人であればきっと高い絵を売りつけられているだろう。
時刻は4時ちょい前、日が短いせいか既に夕暮れの気配が漂いつつある。
駅前は車や人が行き交い喧騒に満ち、その雑踏を抜けサイゼに到着した。
店内は駅が近くなったせいか客層も若者だけでなく、家族連れや年配の方もチラホラ見える。
店員さんにお好きな席へどうぞと案内され奥の席へと向かう。当然とばかりに最奥の席に鎮座した女王の向かいに座りメニューを三浦へ渡そうとするも、既に三浦は注文ボタンを押していた。ポチッとな。
自由な奴だなと三浦に目を向けると目が合う、少し挑発的な視線は……気のせいではないな。ほぉ、このプロのサイゼリアンである俺を試してるのか?いいだろう。
時間的に食べ過ぎると夕食に差し支えるも代謝の活発な十代の若者には空腹が堪えきれない、3時台という点からもデザートメニューから選ぶのがベストだろう。であればコレしかない。
丁度都合よく通り過ぎた店員さんが呼び出し番号を見て直ぐに注文を取りに来る。
八幡・あーし「「ミルクアイスのせフォッカチオ……」」
お、同じだと……だがっ
八幡・あーし「「とドリンクバー」」
……ほう、やるじゃないか。俺と同じ思考トレースをなぞるとは。
俺と三浦が謎のシンクロノシティを発揮すると、しばし間が空いた。
追加の注文がないと判断した店員さんはオーダーを繰り返し、お二つずつでよろしいですねと微笑ましい物をみる眼差しで確認を取る。やめて俺達をそんな目で見ないで。
あーし「真似すんなし」
八幡「いや、まて、同時だっただろうが! むしろ俺のほうが少し早かったまである」
あーし「はぁ? あーしの方が先だったし」
知らず大きな声が出ていたようで、周りからクスクスと嘲笑めいた笑い声が耳に入り急に恥ずかしい気持ちになる。
対面に座る三浦も気恥ずかしさからか通路と反対側を向いて髪先をみょんみょんと引っ張っていた。
八幡「飲み物コーヒーでいいか?」
なんとも言えない空気に耐えきれず、席を立つ。
三浦は、ん、と頷き取り出した携帯をカチカチやっている。
ホットコーヒーを二つテーブルに置き、席につく。持ってきたコーヒーに砂糖を入れ一口啜り、そのほろ苦い熱さが喉を通り抜けると今日一日の疲労も若干癒される。
三浦はコーヒーカップの取っ手に指を掛け、少しの逡巡の後、話を切り出してきた。
あーし「ヒキオはさ、海老名の事好きなの?」
何の脈絡もなくそう言い、コーヒーカップを口に運ぶ。
いきなりどストライクだな。……まぁこの質問はまだ想定内だ。
八幡「まあ好きじゃ無かったら告白なんてしないだろう」
大嘘である。むしろ嘘しか無い。
聞いた三浦は訝しがるような視線を送るもそれ以上は突っ込んでこない。
あーし「じゃあちゃんと海老名のこと大事にするって事でいい?」
確認、というよりは言質を目的とした問い。
しかし、そこに秘められている想いがきちんとある。
だから俺もここは応える。
八幡「……あぁそれでいい」
あーし「ん、分かった、聞きたかったのはそれだけ」
そうか、それが聞きたかったのか……。
だがなんだ、他にもいろいろ根掘り葉掘り聞かれると身構えていただけに肩透かしを喰らったような感じもするが、俺もこの機会に知りたい事を聞いておこう。
八幡「三浦はさ、俺のことどう思ってんの?」
俺に向けられる忌避や憎悪といった負の感情であれば、会話や視線からさほど違わずに読み取ることが可能だが、三浦が当初持っていた無関心から明らかに変化した感情については未だ読み解くことができない。
あーし「は、はぁ? な、なに言ってんの? あんた海老名と付き合ってんでしょ、あーしには隼人が」
八幡「い、いや違う、そうじゃなくてだな、俺みたいな嫌われ者がお前の友達と付き合っていることについてどう考えてるのかってことだ」
あーし「ま、紛らわしい言い方すんなし」
回りくどいことをせず、ストレートに聞いた方が良いと思ったんだが、まぁ不味かったのか。
三浦は少し間を置き、口を開く。
あーし「……あーしは別にあんたが悪い人間だとは思ってない、性格は悪いと思うけどね。千葉村の時そう思ったし、文化祭の時だって結局相模が悪いんじゃん。バンドであーしの組が急に延長させられたのもそれが原因っしょ? あーしも言いたい事言う方だから別にアンタが相模に酷いことしたとは思ってない」
意外な回答に驚く。三浦がそんな風に捉えていたとは……。
思ったより見ている。これは女王への偏見を改める必要があるかも。
八幡「たしか三浦も相模を気にかけてたな、ほら相談メールで」
あーし「べ、別にそんなんじゃなくて、相模が暗くてウザかっただけで……、あーし泣けばいいって思ってる女や、過ぎたことをグチグチ言ってる奴……、嫌いなの」
そう言いながら三浦は窓の外に目線を移す。
あーし「相模もあれから少し変わったみたいだし、今は別にどうでもいいし……」
八幡「でもまぁ三浦が俺の事、そこまで悪く思っていなかったのは意外だな」
あーし「べ、別にヒキオに興味が無かっただけ、勘違いすんなし……」
うん、……そうですよね。
あーし「……でも、昨日海老名からあんたと付き合うって聞いてさ、あの海老名が付き合うって思ったんなら何か理由があるのかなって、少しあんたの事考えてみたの」
あーし「結衣もあんたの事気に掛けてるし、海老名はさ普段あんなだけど、多分色々考えてる…
…、あの子があんたの告白を受けたならそれは……、そういう事だと思う」
前向きに捉えている三浦には悪いが、その色々ってのは風よけ用の道具としてだけどな。
俺が黙っていると、真面目な発言に照れたせいか三浦が急に話題を変えてきた。
あーし「そいやさ、海老名のあの趣味ってどうなんの?」
確かに……どうなんだろう?BLと恋愛の両立について考えてみるも、結局俺の事好きじゃないんだから、ただ趣味が本物というだけでいいのだろう。
八幡「まぁ趣味がホントだとしても、実際はやはちなんてあり得ない妄想の世界なんだから、そこはスルーでなんとかなるんじゃないか」
でも新幹線での時の様に暴走されてもどう対応したらいいんだろうか?
海老名テイマーとして実績十分の三浦にご教授してもらおうかな。
半ば本気で依頼しようか逡巡していると、三浦は意外な所に反応してきた。
あーし「……隼人はさ、あんたの事気に掛けてると思うよ」
なん、だと……?
おいおいおい勘弁してくれ、遂に海老名さんの腐教活動が三浦までをも洗脳しちゃったのか?
それとも本当に葉山が……?
八幡「お、おれに、そんな趣味はない」
ドン引きの表情で腐海へのいざないを拒否する。
あーし「はぁ? ……あ、っち、違うし。異性としてじゃなく、ん? 同性として? ち、ちがくて隼人はただヒキオ自体に興味を持ってる? あれっ?」
何度も言い直そうとするも脳内がどうしてもあっち方向に逝ってしまってる。腐海の瘴気を吸いすぎたんじゃないのか? 姫様~マスクを~。
あーし「とにかくっ、そっち方向じゃなくて隼人はヒキオの事意識してる、どういう気持ちかは分からないんだけどさ……、隼人をずっと見てるあーしが言うから間違いないし」
言いたいことは分からないでもないが、あまりまともに取り合いたくない。
八幡「なんだそりゃ、学校のトップに君臨する人気者が最底辺の俺を憐れんで手を差し伸べたいと思ってるだけだろ、そんなもんコッチは願い下げだ」
まぁこう言えば……ほら、やっぱり
あーし「……ヒキオ」ゴゴゴ
……ちょい煽り過ぎたかな? 本日最大級の怒りが滲み出てる。やべぇ。
とそこに、お待たせしましたー、とナイスなタイミングで店員さんが注文した品を持ってきてくれた。三浦も流石に怒りのオーラを抑え皿を受け取る。
きっとお腹が空いててイライラしてたんだな、うん。
八幡「さ、さぁ食べようぜ」
不承不承と三浦も頷く。お互いにしばし無言でアイスを口に運ぶ。
嫌な会話の流れを断ち切ろうと話題を逸らす。
八幡「三浦はさ、葉山に……、言わないのか?」
あーし「……」
告白という言葉は何かちょっと恥ずかしくて使えなかった。
意図は伝わったようだが、軽々しく触れていい話題でも無かったか。
八幡「い、いや話したく無いなら別に……」
俺が言い終える前に三浦は意外な事を言う。
あーし「隼人ってさ、何考えてんのか? 本音っつーのかな、それあまり見せてくんないの」
俺は葉山の素顔を時折垣間見ているせいか、そう感じていなかったが、三浦くらい近くにいる人間でも、いや近くにいる人間ほどそう感じるのかもしれない。
あーし「さっきも言ったけど隼人のヒキオへの態度はやっぱり違う」
三浦の視線はさっきと変わらないものだったが、今度は茶化すことが出来なかった……。
あーし「だから、もしあんたと隼人が近づいたら、そん時はいろいろ何か変わってしまうんじゃないかってさ……、そう思ったの」
俺と葉山が? それはない……俺からアイツに近づくことは、更に言えばその可能性は誰よりも葉山が否定した。俺とは仲良くなれない……と。
共に、絶望的なまでに互いに隔たりがあることを理解している。
八幡「俺にそんな影響力があるとは思えないが、つまり今の関係を変えたくない三浦としては、俺に近づくなと、そう言いたいのか?」
今が楽しい、これまで通りやっていきたい……、確かそう願っていた。
修学旅行でも余計な事するなと釘も刺されていた、既に海老名さんを含む周囲の関係を大きく変えた俺を疎ましく思っている……、ということか?
だが俺の言葉を三浦は軽く首を振り否定する。
あーし「確かに変えて欲しくないと思ってた、今のままがいいってさ、そしてそれは皆も同じなんだって……、でも」
僅かな沈黙が続き、促すように繰り返す。
八幡「……でも?」
俺を真っ直ぐに見据え三浦は言う。
あーし「……海老名は踏み込んだ!」
八幡「――!」
……それは間違っている、誤解だ……、表面上とはいえ踏み込んだのは俺であり、受けた彼女の意図も三浦の言うそんな大仰なものでもない。
誤解なら解かねばと、何か言い訳を、と口を開きかけ、止まる。
『誤解は解けない、何故ならもう解は出ている』
誰の言葉だったか、その言った本人が覆してどうする……。
何より三浦の言ったその言葉は強く、容易には否定出来そうにない。
おそらく三浦の中で最初から解は出ていた。
しかし――、大事だから、失いたくないから。
だからこそ――、隠して、装ってきた。
そんな自分自身についた些細な嘘なんて、誰にも責めることなんて出来ない。
あーし「あーし誤魔化してたのかもしれない……、隼人との関係、先に進めたい自分がいるってこと……、そんなこと最初からとっくに分かっていたのに」
女王といえども一人の女子高生だ、同世代の皆と同様の悩み、葛藤だってする。
あーし「踏み込むと無くしてしまうかも知れない、でも……」
その先の言葉は容易に想像出来た、本当にそれでいいのかとの問いかけを抑え、黙って続きの言葉を待つ……。
だが、ついぞ言葉は出てこなかった。
「……優美子?」
それは予想しないところからの声だった。
俺に向けられていた三浦の視線は横に推移し、俺の背後に移る。その途端、目は見開き顔色は瞬時に蒼く変化し表情が固まった。
声の出処と三浦の視線を辿るように振り返るとそこには片手には携帯、反対の手にはドリンクを持った見知らぬ大学生風の男がいた。
本日は以上です。展開の都合上勝手なキャラが出ます。ご容赦下さい。
それではまた。
ドグマ「パズドラとのコラボを引き受けてくれてありがとうございます」
山郷「あ、うん。どうも」
ドグマ「それでコラボガチャについてですが」
山郷「は?」
ドグマ「……コラボするから当然ガチャの方も用意してもらえますよね?」
山郷「フッ…」
ドグマ「いや、あのコラボですよね?」
山郷「このコラボに関してはガチャないんだわ」
ドグマ「何でですか?モンハンはガチャあったじゃないですか」
山郷「お前の三流ゲームとモンハンを一緒にすんな!犯すぞ!!」
ドグマ「…」
山郷「じゃあな、サタンなめんな」
「やっぱ優美子か、髪の色変わってっから一瞬わかんなかった」
あーし「な、なんであんた、こんなとこいんのよ」
「いやさ、たまたま地元に帰って来てただけなんだけど……、あー優美子の今彼? コンチワ俺、優美子の元彼」
俺を一瞥し軽い挨拶をしてくる、見た目は体格のいいイケメンだが髪は品のない茶髪で、話口調は少しチャラい、戸部強化版といったところか。
男は笑みを浮かべながらちょっといいかなと、俺の隣に腰掛ける。甘ったるい香水の香りが鼻につく。
初対面の男の隣に無遠慮に腰掛けられる行動やその話し方に、俺のようなコミュ症とは異なるリア充特有のオーラが見て取れる。三浦に目を向けると、余裕のない様で男との視線を逸らしている。
あーし「彼氏じゃねーし、何の用? あーしあんたと話す事なんてないから」
いつも以上に排他的な態度でもってその男との関わりを拒絶しようとする。
元彼「まぁそんな邪険にすんなよ、久しぶりに会ったんだし、な。俺もお前と別れて勿体無いことしたなって思ってたんだよ。あの時のことはさ、ちょっといろいろ誤解があったんだって」
あーし「はぁ? あんたのせいであーしら無茶苦茶になったのに今さら誤解とか、何言ってんの? もういい、死ね、このクソ野郎」
誰もが恐れる女王三浦の最大級の威嚇にも男は悪びれもせず、余裕の笑みを浮かべている。
懐柔は無理だと諦めたのか態度を一変させ口を開く。
元彼「あれれー? 俺にそんな口きーていーのかな?」
言いながら男は携帯をヌルヌル操作する。なんか既視感を覚えるな思いきや俺と同じ機種だった。これこれと言いながら画面を三浦に見せた。
途端に三浦は顔を引き攣らせ、苦虫を噛み潰したような顔になる。
元彼「こいつの連絡先まだ知ってんだよね。メールとか送ったら何て返事来ると思う? でももうメルアド変わっちゃったかな? 優美子、仲良かったよね? まだ連絡取ってんの?」
三浦の反応を楽しむように矢継ぎ早に質問を重ねる。
あーし「そんなのもうあーし関係ないし、勝手にすれば」
三浦は気丈に応えるも、握りしめた手は微かに震え、余裕のない様がそれが精一杯の強がりだということを示している。
男もそれを察しているのか、あっそ、といいつつ携帯をタップし操作する。
指の動きから察するにどうやらメールの文面を作っているようで、よしといいつつ画面を三浦に見せ、嗜虐的な笑みを浮かべる。チラリと見えた画面には制服を着崩した半裸の女性の画像が写っていた。
あーし「――!」
画面を見た三浦は蒼い顔で絶句する。
元彼「この内容で送ろうと思うんだけど、どうだろう? でももう関係ないんだったら優美子が気にする必要もないよな? お前の言うとおり俺が勝手にやるだけなんだけど……」
男はセリフを途中で留め、三浦を眺めている。
あーし「…………わかった、どうしたらいい?」
暫しの沈黙の後、三浦は今にも消え入りそうな声で、男に尋ねる。
元彼「物分りが良くて助かるよ、そうだな……どっかで時間作れよ、でも俺明日には東京に戻るんだよね……、今日なら助かるんだけどな~」
悔しそうな三浦を男は嬉しそうに眺めた後、俺を見て得意気にニヤリと嗤った。
あーし「……じゃあ、今日でいい」
三浦は俯きながらそう返事した。
元彼「そうか、助かるよ。お前も連れがいるみたいだし、俺は暫くあそこの席に居るから時間ができたら来いよ」
そう言って男は席を立ち、指差した方へと戻って行った。
男が行くと三浦は小さく息を吐いた。そしておもむろに口を開く。
あーし「……つーことなんで、ヒキオもう帰っていいし」
そう言われると俺が残る理由はもはやない。召喚者が帰れって言ったら帰るのが正しいルールだ。念願の帰宅の目処が予想外な形でやって来た。
八幡「そうか、じゃあ今日はこれで終了ってことでいいのか?」
あーし「あーしこれからあいつと話あるからもうここでいいよ、ここの代金もあいつに払わせるし」
八幡「……わかった、今日はイロイロありがとな」
席を立ち最後に三浦を見るも、既にいつもの気怠そうな表情で携帯を弄っていた。
しかしながらその携帯に触れる指は微かに震え、目の焦点も画面に合っていない。
恐らくあの男に弱みでも握られているとかだろう、でもまあ、三浦がこの後どうなろうと俺の知ったこっちゃない、あんな男と付き合ったのが悪いのであってどう見ても自業自得……。
と、そこで思考が問いかける、偉そうに批評しているお前自身はいったいどうだったのか……? と。
俺が過去に告白した相手は次の日にはクラス中にその事実を喧伝して回った。
告白されて舞い上がった後に待っていたのは『罰ゲームなの、ゴメンね』の一言だった。
好きになった相手だっておとなしい子や、騒がしいのがタイプだったこともある。
……それこそ中学時代の恋愛なんて浮かれて、間違って、些細なことで一喜一憂し、あえていうならそう、若気の至りというやつなのだろう。
三浦を自業自得と責める資格なんて俺にあるはずもない。
先程の会話からあの男が三浦に歓迎されてないのは解る。だがそんな相手にあの三浦が従うくらいだから余程のことなのだろう。
そこまで思い至り、さて今の俺は一体どうしたいのか?
俺が三浦を助ける? ……うん、 ない、まずもって俺と三浦は完全に他人だ。唯のクラスメイトであって友達と言えるような関係でもなんでもない。なら、俺の出番はない。
なにより三浦がそれを望まない、俺の手助けなんてそれこそ忌避するレベルだろう。プライドの高い人間は他人に、特に何も分かっていない人間に憐れまれることを最も嫌う。
やはりこのまま真っ直ぐ家に帰るのがいつもの俺だ、それは揺るがない。
……だというのに、何かしなければならないという焦燥感だけはある。
このままでいいのかとそればかりを問うている 。
と、ふと手に持った紙袋の重みに気付き、さっきの店長とのやり取りを思い出す。
そういやたしか約束したな、大事にしますって……、俺は服のつもりだったんだけどなぁ。
あーあ、せっかく家でアニメや本をゆっくり堪能できると思ったのに……。
まったく難儀な性格だ。
自分自身が嫌になる。こんな些細な問題でさえ、理由を見つけることが出来なければ、動き出せないなんて。
気付くと店の前のドアまで来ていた。取っ手に手をかけドアを押す。
その際にうっすらと映った自分の顔に喜色が滲み出ていることに気付き嗤った。
本日は以上となります。
推敲不足ですが今晩投下します。
店を出ると同時に取り敢えず状況と情報を頭の中で整理する。
効果と効率を鑑み策を練り、実行する。いつも通りだ。
脳内で幾つかの案を競わせるも最後の部分が詰めきれない。
……まだ不確定要素が多いな、情報がもう少しいるか。
ぼっちが情報収集する過程において人づてという手段は取れない、よって選択できる方法は限られる。
暫し立ち止まって思案する。
……いけそうだな。
店近くの商業ビルのトイレで準備をし、再びサイゼの店内へ足を踏み入れる。
店員さんが案内のため入り口に向かってくる。さっきも案内してくれた店員さんだ。
先程以上に愛想のいい笑顔でお好きな席へ、と促してもらい予め狙っていた席――三浦が移動した席の薄いすりガラス越しのボックス席に座る。
丁度三浦と壁越しに隣り合う形だ。
座る際に三浦の視線に気を付けながら席の様子を伺う、男は余裕の態度で三浦に話しかけ、逆に三浦は俯き周りを気にする余裕も無いようだ。
男がチラリと俺を見たが視線をすぐに三浦へと戻す。
……よし気付いてはいないようだ。店員さん、元彼の反応から擬態の効果は確認できた。
店長に貰った服とアドバイスからコーディネートをガラッっと変え、美容院でもらった試供品のワックスで髪をオールバック気味に掻き上げた。そして駄目押しの伊達眼鏡。
これにステルスヒッキーを加えることでまず俺と気付かない……ハズなんだが、何故かステルス機能だけは上手く機能していない。店員さんを含め女性の視線がやけにまとわりつく。
いつもであれば、わー俺って人気者! って自嘲気味に嘲笑や侮蔑の視線を受け流すところなのだが、明らかにいつもと一線を画している視線をどう受け取ったら良いのか分からない。
……まさか? もしかしてだけど、俺のこと好きなんじゃないの? って小気味いいリズムにのった勘違いから玉砕までのプロセスを辿ってしまいそうになる。なにろっくだよ。
危ない、危ない、訓練された俺じゃなければヤバかったよ?
きっとアレだ、少し派手な服装だからちょっと目についただけだろう。うん。
とりあえず盗聴に集中するためにも、先にオーダーを済ますべく店員さんを呼ぼうとボタンに手を伸ばそうとした瞬間、横には既に店員さんがいた。
あれ? さっきと同じ店員さん……だよね? こんなに化粧濃かったかな? まぁいいか。
ドリンクバーのみをオーダーし集中する。
あ、辛味チキンも頼めばよかったな。うまいよね、チキン。
さて、ここからがファーストミッション、目線を悟られないよう男の表情を観察し、聞き耳を立てる。
☓ ☓ ☓
あーし「無理、絶対いや!」
元彼「大丈夫、問題ないって、ちょっとお客さんと楽しく話してくれればそれでオーケーだからさ」
あーし「だってそれ違法のやつでしょ? この前たしか摘発されてたじゃん」
元彼「あーそれは一般客を相手にしてたからね、うちのはちゃんと会員制で危ないことないし、相手も金持ちばっかりだからいろいろ買ってもらえるよ、別に身体売るわけじゃないんだし」
あーし「嫌、そんないかがわしいのとかムリだから」
元彼「あーでもさ、これ引き受けてくんないとこのデータも消去してあげられないよ?」
あーし「――っ! …………やれば本当にそれ消してくれるの?」
元彼「あー大丈夫大丈夫! 俺の言う通りにしてくれたらちゃんとお前の目の前で消してやるよ」
あーし「…………そのバイト本当に問題ないやつなん?」
元彼「あぁ、有名女子校の生徒なんかですらけっこう登録してみんな小遣い稼いでるぜ、お前くらい可愛ければすぐランキングトップになれるわ、それに俺は紹介すれば良いだけだから、合わなければ一回やってすぐ辞めてもいいし」
あーし「……分かった、けどすぐ辞めるからね」
元彼「構わない、あとさお前の友達、何人か誘えよ、お前の事だから可愛い子しか周りに置いてないんだろ」
あーし「はぁ、何言ってんの? あいつらにそんなバイト絶対させないから」
元彼「へぇ? どうせ高校の友達なんてすぐ疎遠になるんだしいいじゃん、実際に中学の時もそうだったろ」
あーし「それはっ、あ、あんたがあーしの友達に手出したからでしょっ!」
元彼「結局、その程度の友情だったってことだろ? 高校だって同じだよ、所詮そんなもんだって、好きな奴とか出来たら友達なんてすぐ疎遠になるさ」
あーし「あいつらは違うしっ」
元彼「本当にそうか? お前みたいな女王様気質だと周りのみんな言いたいことも言えずに合わせてるだけじゃないの? 中学の時もそうだったじゃん、ほら今も思い当たる節あるんじゃない?」
あーし「くっ! 何を言われてもあーしは紹介しないかんね、これだけはその写真で脅しても聞かないから」
元彼「本当にいいのかよ? 俺はやると言ったらやるぜ」
あーし「……これだけは何言われても無理! もしあんたがそれ(写真)やったらあーしも行かない、でも今ならあーしはちゃんとやる、あんただって一人も紹介できないよりそのほうがいいでしょ」
元彼「……分かった、とりあえずそれでいいだろう」
……弱みを握られるとなし崩し的に何でも言うことを聞かざるを得ないものだが。
流石に強気の三浦は迫力がある。だがそれでも男のほうがまだ上手だ。
それにそのやり方は良くない、自分を顧みないのは俺の専売特許だ、どんな結果も受け入れる覚悟がないと痛い目を見る。それにお前のように悲しむ人間がいる奴はそれをしてならない。
あの男が勧めているのはおそらくかなり怪しいバイト、おそらく法律ギリギリの線だろう。
そんなバイトはやってしまったが最後、蟻地獄のようにどんどん深みにハマって行く。
隣では一区切りついたか、まだ話が進んでいるが一方的に男が他愛ない話を振ってるだけだ、取り敢えず聞き耳を立てつつも今後のプランを検討するべく、思考を深い位置へ持って行く。
まず元凶であるあの写真をどうにかしなきゃならない。なんとかそれを消す方法を考える。
まずは幾つかの案から最適案を残す。それを新たな案と戦わせ勝者を残す。3番目に出た案が勝ち残った。
…………リスクはあるが確率が最も高い、これで行こう。
……店内を見渡し動きをシミュレートしていると隣の会話も新しいフェーズに入ったようだ。
元彼「千葉にも支店があるんだよ、とりあえず今日のうちに面接と簡単な講習だけ受けてみようか」
あーし「今日? そんな いきなりとか………」
元彼「こういうのは早い方がいいしな、それに今日やれば、この写真もすぐ消してやるぜ、どうする?」
あーし「……わかった、いいよ」
元彼「じゃあちょっと店の人に連絡取ってくるわ」
男は携帯を手に取り席を立つ。こういった何かを行動させる際には相手に考える時間を空けさせないことが重要らしい、また『後日』、にするのと『今』、とするのでは物事の正否の割合が圧倒的に違うのだそうだ、だから『今すぐ申し込むと』って頭文字が付いた売り文句には注意が必要。ソースは昔怪しい契約をいくつもさせられた親父。やっぱり親父の話はためになるな。
ちょうどいい、俺もシミュレーションがちょうど終了したところだ。
先回りしてドリンクバーで待機する。と男が携帯を耳にあて近づいて来る。
元彼「もしもし、俺です、今いいっすか? 今月の分なんですけどあれなんとか今日1人いけそうなんで……」
元彼「ええ、とりあえず今は1人ですけど、結構可愛いんで、けっこうやるの渋ってるんで、またいつもの要領でお願いします。うまく行けば友達も後から追加できると思います……ええじゃあ取り敢えず千葉まで来てもらえますか?……ハイ、んじゃまた後で」
そう言って携帯を上着のポケットに突っ込み男はトイレに向かった。
とりあえず男の平常心を少しでも揺さぶる必要がある。
俺もタイミングを合わせトイレへと向かう。
微かな中の気配を読みながら、ドア横の照明スイッチに手を掛け心の中で呟く。
「照明終了、L・E・D ……蛍光灯だったかな?」
パチっとスイッチが切替わる音と同時にドアの小さなすりガラスが黒く変わる。中からうおっ、と慌てふためく声を背に俺はドリンクバーへと戻った。
しばらく経って男が訝しんだ表情でドアから出てくる。辺りをキョロキョロ見回すも周りと同じように俺も無関心を装った。男が俺の背後を通りすぎたのを確認して背後から声を掛ける。
八幡「あれっ? ちょっと、ズボンの裾なんか濡れてますよ」
男はえっ? とさっきの暗闇でひっかけたのかと身体を捻り慌てて俺の指差した方を見やる。
そこには確かに濡れた跡がある。まぁ俺が今さっきストローで狙い撃ちしたんだけどな。
昔風呂場で特訓したテッポウウオのスキルが役に立った。
これ使えば、と男に親切な人を装い紙ナフキンを何枚か渡す。
男は恥ずかしさを誤魔化すように、なんだよこれと悪態をつきながら紙ナプキンを受け取って裾に手を伸ばした。
☓ ☓ ☓
一連の作業を終え席に戻り安堵の息を吐く。取り敢えず最初のミッションはクリア。
ポケットから携帯を取り出しテーブルに置く。その数、2つ。
さてハード(道具)は手に入れた、あとは運用のやり方だ。
これこそ何通りでも案が思いつく。
性格上の問題なのか、様々な案が湯水の如く湧き出てくるのには自分でも少し呆れてしまう。
一体どの案が勝ち残ることやら。
さっきの電話で男が三浦との約束を守るつもりが無いのは明白、であるならば……
遠慮なく、躊躇なく、徹底的にやらせてもらおう。
本日以上となります。
最近はクロスのSSが面白いですね。
おやすみなさい。
もし、もしもだ、仮に、ゲームのように一つだけ前のセーブデータに戻って、選択肢を選び直せたとしたら、より最適な未来を得ることは可能だろう。
しかし、現実世界においてどう足掻こうと時間は戻せない。
選択し、決定した時点で引き返すことは不可能……。
で、あるならばだ、より最適な選択肢を選ぶために必要なこととは?
単純なことだ。生じうる可能性を予め予想し、備えるだけ。
相手がいる場合には手筋を読むという点において将棋やチェスと同じ。
斜め向こうに座る相手を見る。先ほどその容姿から戸部強化版と評したが、コミュニケーション能力に優れ、外見もまぁイケメンの部類に入る。
肩書きだけで言えば葉山と共通するものはあるが、本物には遠く及ばない、よってコイツはニセ葉山と言える。
内面に目を向けると性格が悪く狡猾なタイプ、俺と同類、だが要領の良さとしたたかさで、世の中を上手く渡り歩いている、リア充版八幡とでも言っておこう。略してリーマン、……専業主夫を目指す俺はリア充になるなという啓示だな。
以上を鑑みれば、おのずと男の行動パターンも読める、傾向と対策もここから導き出せるはずだ。
プライドは高く、だが自分より強者に対してうまく取り入り媚を売る。対して自分より弱者に対しては虐げ、搾取することを厭わない。
つまるところ、男は相手を自分にとってメリットがあるか否か、損得勘定でしか判断しない。
であれば男にとって強者であると認識させ、さらには男にとってデメリットが大きい駆け引きを提示することができれば男は逆らってこないはず。
分析が一段落ついたところで、手元にある男の携帯のロックを外す、これはあるルートを線でなぞるタイプ、自分と同じ機種で慣れているのと、注意深く男の指の動きは観察しておいた……、よし解除。
本体の画像データを閲覧し、相手の情報を探る。
写真の幾つかに見覚えのある私大のキャンパスが写っている。思った以上にそこそこいい大学に通っているようだ。
それにしても女の写真が多い。合間合間にバカそうな友達や怖そうなお兄さん達が写っている。
写真の立ち位置や表情から男の人間関係を把握する。
ざっとデータを確認し、利用できそうなネタは見繕った。
思考を更に掘り下げ、先程浮かんだ幾つかのアイデアに細かい修正を加える、曖昧だった道程をよりハッキリしたものへと補正。
当然一本道ではない。枝分かれが生じる際には、その先が絞れるように会話文を組み立てる。漏れ、抜け、ミスがないかと再確認。
――――――よし、ある程度のシナリオは読み切った。分岐ルートも選択肢も問題ない。
隣のテーブルを横目で伺うも男はまだ携帯がないことに気づいていない。先の電話の相手が来るまで時間を潰すつもりなのだろう。
まずは男の携帯に入っていた使えそうな写真をチェックし、まとめてmicroSDへ移す。
そしてカードを抜き取り、自分の携帯でデータに問題ないか再チェック、男の携帯には代わりにダミーのSDカードを入れ、すぐにバレないよう男の本体から幾つかのデータをダミーとしてコピーしておく。
次に発信履歴からさっきの電話の相手、おそらく仕事の先輩の情報を得る。
まずはこの先輩の番号を着信拒否リストに追加した後、その先輩に男の携帯から電話をかける。
先輩『おう、俺だ、もう2、30分でつくわ』
低い、そしてドスの利いた声で応答してきた。
八幡『あ、もしもし、スンマセンさっきの件なんすけど、ちょっと面倒くさくなったんでやっぱなしっつーことでおなしゃす』
バレるリスクはあるが、あえて舐めた口調を意識する。
元彼先輩『あ? なんだよそれ、もうそっちに向かってんだぞ! ちゃんと説明しろよ!』
いきなり予定を狂わされ、先輩もおかんむりのようだ。電車の中ではお静かに~。
八幡『ちっ、うっせーな』
ギリギリ聞こえる程度に呟く。
先輩『おいっ、今なんつった?』
八幡『すんません、聞こえちゃいました? 反省してまーす』
先輩『おい、てめぇ俺のこと舐めてんのか?』
うーん、人に好意を向けられるのは難しいのに、なんで人の感情を逆撫でするのってこんなに簡単なんだろう?
八幡『てか先輩いつも偉そうにしてますけど、ぶっちゃけ俺の方が強いんじゃないかと思うんですよね』
先の画像データで見た、おそらくこの先輩と思われる人もかなりいかつい容姿だった。
ぶっちゃけ絶対にお知り合いになりたくないタイプ。
先輩『てめぇ……、マジで言ってんのか?』
八幡『えぇマジっすよ、先に入っているだけで先輩風吹かれてもこっちはいい迷惑っつーか? てか俺と勝負してみません? でも先輩いつも口だけだかんな~、ぶっちゃけ俺が勝ったら下克上ってやつでしょ、あ、すんません下克上なんて難しい言葉理解できました?』
先輩『……この野郎、いいだろう、その舐めた口、二度ときけないようにしてやる』
さっきより一層低い声で、そう脅されると流石にちと怖い。
八幡『じゃあ駅の改札でた所で待ってて下さい。今ちょっと立て込んでるんでそれが終わって暇だったら相手してあげますよ』
言って直ぐに電話の通話ボタンを切る。
着信拒否に加え、メルアドも一応迷惑メール扱いとしていたので、これで先輩とやらからは音信不通となった。
そして最後にアドレス帳にある先輩の番号を俺の携帯番号へと変えておく。
あとは携帯にいくつか細工を施し、一連の予定していた作業は終了。
残っていたコーヒーを一気に飲み干し、伝票を持ってレジへと向かう。
店員さんに落し物だと、電源を切った男の携帯を渡して店を出た。
ごめんなさい、眠いので続きは多分明日、遅くとも三日以内
書き込む時間が取れれば更新します。
ある程度キリのいいところまで書ききらないと話に齟齬がでそうだったので、こんなに遅くなりました。
では
復活してる…(歓喜)
復活してる…(歓喜)
サイゼの入り口が確認できる位置でしばし待機。
俺の携帯に電話がかかって来る。どうやら店員さんから無事に携帯を受け取れたようだ。
元彼『あ、先輩、今どこすか?』
予定通り俺のこと、先輩だと思い込んでいる。
八幡『もうすぐで着く、土地勘ねーから改札出たとこで待ってるわ』
元彼『じゃあ駅の方に向かいます、近くに行ったらまたかけます』
八幡『あー、今、女も一緒にいるんだろ? 軽く打ち合わせしときたいから、先に一人で来れない?』
元彼『……え? まぁいいすよ、じゃあ先に向かいます』
× × ×
暫し待つと男が一人で店から出て来た。三浦は店で待機ってことでいいだろう。
足早に男は駅方向に歩いてく。
男の後を付け少し人通りの少ない箇所に差し掛かった時を狙い、男に声をかける。
八幡「ちょっと待てよ」
呼び止められた男は気怠そうな仕草でこっちを振り向く。
元彼「あ? ………なんだ? あれっ? おまえさっき優美子と一緒にいたやつじゃん。なんか用?」
髪は元に戻し眼鏡も外している。
八幡「三浦のことでなんだけど、ちょっといいかな?」
元彼「……いや、俺急いでんだけど」
八幡「すぐ終わる、なぁもし三浦になんか変なことさせるんだったら、止めてくれないか? 用ってのはそれだけだ」
元彼「はぁ? そんなもん、お前には関係ない……、ああ、そういうこと? あんたあいつのこと好きなの? まぁ見てくれはいいから騙されるんだよな、でもやめといたほうがいい、あいつ性格はきついし、付き合うとか大変だぜ」
八幡「そりゃ男としての器が小さいかったからだろ、あんた三浦と付き合ってたとかいう割に、アイツこと何も分かってねぇのな」
元彼「あぁ? あいつの取り柄なんて外見くらいじゃん? 中身なんて唯の我儘な女なだけじゃねーか」
八幡「……確かにあいつは我儘だ、自己中だし人の言うことも聞かない」
元彼「だろ? なんだよくわかってんじゃん」
八幡「でもさ、そんな欠点を補って余るほど、あいつは他人のこと思いやれる優しい奴なんだよ、まぁお前みたいな薄っぺらい男にはわかんないだろうけどさ、ほら、あいつの名前にも書いてんだろ、優しく美しいってさ」
このくらいキザったらしく正義の味方を演じた方が、嫌悪感を抱きやすい。
元彼「っは? 何言ってんだよ、おまえちょっとうぜぇな。まいいや、この後いろいろ立て込んでいるからさ、とりあえず何か言いたいことあるんだろうけど、今日が終わってからにしてくんない?」
男は鬱陶しそうにそう言い、嘲笑とも侮蔑とも取れる笑みを向けてくる。
八幡「いや、この後って、仲間と一緒に三浦を脅すための写真を撮ってくんだろ?」
男が持っていた余裕の笑みが、警戒の眼差しへと推移する。
八幡「今回はラブホ街を歩いてるとこ?、それとも酒、飲んでるとこか?、まさかいきなり薬、使っちゃうの?」
元彼「……なんだお前? なんでそんなこと知ってんだよ?」
すでに男の視線は完全に敵意を孕んだものに変わっている。
八幡「大体悪人の考えそうなことは想像できるさ」
さっき見たデータの中にそういった脅しのネタにしてそうな他の女性の画像をいくつか見た。
そうやって得た弱みを元に、徐々に行為をエスカレートさせていく。
一度ハマれば蟻地獄のようなもの、胸糞の悪い話だ。
この発言で俺は男にとって唯のウザいキザ野郎から、ウザい要注意人物へ格上げとなった。
元彼「てめぇ、いったいどういうつもりだ? まさかあいつに余計なこと言うつもりなんじゃねーだろーな?」
八幡「そうだ……、と言ったら?」
男は眉間にシワを寄せて胸ぐらを左手で掴んでくる。血の気が多いな。これならもう煽る必要もないか、まぁ展開は早いが想定通り。
元彼「けっこう痛い目見ることになるけど」
ガタイもいいし、それなりに迫力もある。けっこう喧嘩慣れしてるのかも。……やっぱプラン変えよかな……?
俺も勝算がないというわけではない、喧嘩だって向かうところ敵なし状態だ、相手がいないって意味で……。
喧嘩の経験がないから、やりあったとしても勝てるかは未知数。
畜生、怖えな、しかしここで勝てれば、より男にダメージを与えられる。
それに別に負けても既に最低限の目的は達成できている。
まぁ俺が痛い思いをするだけなら分は悪くない、覚悟を決める!
漫画でよく見る胸ぐらを掴む行為なんだが、これって相手の行動を制限できる代わりに近接距離においてかなり無防備なんだよね。
だから取り敢えず男の左足の脛を思いっきり蹴ってやった。弁慶さんも泣いちゃうくらいだから痛いんだろうな。
元彼「いっ!? っあんだ、こらっ! てめぇ何しやがる」
怒りに駆られた男が衝動的に言葉と同時に一歩詰める。
俺の襟元を掴みあげる拳に力がぐっと込められ、反対の拳が今にも殴りかからんばかりの勢いで振りかぶられる。
蹴られたほうの足は痛みゆえか体重がかかっていない。俺は襟元を掴んでいる左腕の袖を掴み思いっきり下へと引く。すると男はいともたやすくバランスを崩す。
男の身体が前のめり、つまり俺の方向へと流れる。
来る。
逆らわず。
起点、力点、作用点を意識する。
いつぞやの柔道大会での相手に比べればスローモーションみたいなものだ。
拙い技術はタイミングでカバーする。
投げ込める体制に入れば、あとは力なんて必要ない。
地球の重力に、慣性の法則に、戦う本能に任せるだけだ。
地面から俺の背へと体重を移した男の身体は次の瞬間、再び地面に叩きつけられていた。
かはっ、と男は衝撃でうめき声を漏らし、呼吸もうまくできてない。
うおっ! おいおい勝っちゃったよ。すげぇ、俺TUEEEE!
なんだ、あれか柔道大会で負けたのが実はちょっと悔しくて、余り物の俺と相手してくれるじゃが山こと城山と半ばホンキで乱取りしてたのが良かったのか?
城山もちょっと感心してたような顔してたし。
暫し勝利の愉悦に浸っていると下で呻き声が聞こえた。
おっと、ここでちゃんと決めとかないとな。
八幡「俺柔道やってんだ、関節極めてやろうか?」
学校の授業でやってるから嘘じゃないよね。とまぁこのハッタリは通用したようで腕を極める素振りをしただけで男は呼吸もままならない状態で答える。
元彼「わ、わかった! やめてくれ」
でもまぁ奇襲が上手く行って良かった、これ以上向かってきたら化けの皮が外れるとこだし。
八幡「じゃあ金輪際、三浦に手を出さないって約束してくれるかな?」
元彼「や、約束する」
八幡「よし、三浦はまだサイゼにいるんだろ? じゃあアイツには俺から直接言っておくから。 もう三浦と連絡とるなよ、因みに、約束破ったらもっと酷い目に遭うから気をつけてね」
最後にそう言い、立ち去る。
とりあえず、一度だけチャンスを与えよう。まぁ結果は見えてるけどな。
俺がしたのは唯の口約束、守ろうが破ろうが全て男次第。
もしかしたら、男は今頃甘い対応だとほくそ笑んでいるかもしれない。
確かに甘かったかもしれない、酷い目に遭うなんて忠告してあげたんだから。
このまま男が忠告に従って何もアクションを起こさなければ、男の被害は『悪い』だけで済む。
しかし、男がこの後……、と、手元の携帯が震えるのを感じた、画面を見ると案の定男からだ。
どうやら男は、『最悪』を選択したようだ。
男には見えない位置に移動したのを確認し、電話を取る。
八幡『おう、着いたぞ、どこだ?』
元彼『せ、先輩、ちょっと変な奴に邪魔されてしまって……』
どうも変な奴です。
八幡『なんだそりゃ、どういうことだよ?」
元彼『例の女の件なんすけど、そのツレって奴がいきなり喧嘩うってきて、不意打ちだったもんで俺もやられちゃって』
不意打ちねぇ? よく言うぜ。
八幡『おい、そいつの居場所分かんのか?』
元彼『え? えっと、そうだ、たしか例の女と会うみたいなこと言ってたから、多分大丈夫です』
八幡『よし、とりあえず合流しよう、駅の改札前にいるからまずこっち来い』
元彼『分かりました、ありがとうございます』
八幡『あとそいつヤるにしても物騒な話し合いになるから、人気のないところで打合せしなきゃな、着いたらすぐ案内してくれ』
元彼『了解っす』
男との電話を切りふー、と一息つく、これで男の件はとりあえず一段落ついた。
あとは三浦をどうするか、
一応プランは立ててはいたんだが……、
…………困ったな。
なんで目の前に三浦が いるんだろう?
えっと、ここで三浦が出てくるパターンね。
オーケーオーケー、たしかこの場合における選択肢はっと…………ねーよ、想定外だわ。
『シナリオは読み切った!』ドヤァ
…………はい読み切れていませんでした。
おかしいな、確か三浦さんは店で大人しく待ってる……わけないか。
うん、あの三浦さんだしな。あの女王は我儘で自己中で人の言うこと聞かない奴だった。
三浦はじっと俺を見て、口を開く。
あーし「我儘で自己中で、人の言うこと聞かないって、誰のこと?」
なん、だと? なぜ俺の考えていることを……? まさか直接俺の脳内を?
……焦った時の18番、とりあえずとぼけてみる。
八幡「な、何のことかなー」
あーし「全部見てた……」
何を? 全部ってまさか男との一部始終をか……?
あぁ、そういやさっきのは男に言ったセリフだったな……
あちゃー、やべー、だから言ったじゃん人の陰口は叩いちゃダメだって。
今まで何度俺への陰口を陰で聞いてヘコんだんだよ。
あれっ? 陰口なのに俺が陰っておかしくない? 陰の陰って闇ってこと? やだ俺にピッタリ。
いや陰の反対になるから陽か、なんだ陽っていい意味の漢字なはずなのに、凄い不吉な感じだな、因みに感じと漢字を掛けてます。
あと陰口を言い合う相手がいないってツッコミはNGだ。
ん? まてよ、そこを聞かれてるってことは……
あーし「あ、あと……優しくて、……くしいって…………」ゴニョゴニョ
八幡「……………」
三浦の言葉を反芻する。さっきのセリフが思い返される。
『優しくて美しいってさ』
いやぁぁぁぁーーー!
やめてぇぇぇーーー!
735 sageてぇぇぇーー!
『優しくて美しいってさ』キリッ
うああああ! 死にたい! 死にたいよおおおおお!
馬鹿じゃねーの! バカなんじゃないの! 馬鹿、ばーか、バーーカ!
な、なぜ俺はあんなに恥ずかしいことを言ってしまったんだ…………。
確実に黒歴史ランキング上位に入るキザセリフを本人の口からリピートされるという……。
『優しくて美しいってさ』キリッ&ドヤァ
あかん、これなんていう精神破壊ウェポン? もう俺のSAN値がもたへん。
殺せ! いっそのこともう殺せ!
そうだ、もう八幡は死んだんだ!
だったらいいか、もう俺、開き直る!
八幡「ご、ごめんなさい、すいません、許して下さい」
開き直った結果、謝罪が第一声という…………でも、そんな俺が好き。
腰を90度に曲げ背筋をピンと伸ばす。指先までも神経を尖らせ目線は真下よりやや前方、俺の視界は地面と三浦の脚しかない。
やっぱいい脚してるなーとか思ってませんよ、いやホントに。
あーし「べ、別に怒ってないし……」
最敬礼(45度)を超える俺の謝罪スキルを前にさすがの女王も許さざるを得なかったか。ふっ、敗北を知りたい。ちなみに謝ってる時点で負けてるという意見は受け付けない。
あーし「…………む、むしろ、嬉しかったっつーか」
む? なんか様子がおかしい、状況を伺おうと、おそるおそる頭を上げようとするも、途中で三浦に頭を抑えられた。
あーし「ちょ、顔あげないで、多分あーし、今顔すごくヤバイから………」
中途半端な位置で止められたせいか今俺の視界は三浦の脚しか見えない。
いや、すっげーいい脚してんなとか思っても仕方ないよね。うん。
まだ三浦は顔を背けているのでその表情は伺えないものの、頬はほんのり染まり、耳の先も赤い。
八幡・あーし「「…………」」
741ミス(下二行の上に追記)
時間にして10秒を超えたくらいだろうか、ようやく頭から手が離され、もうちょっとこのままでも良かったのになんて未練を振り切り顔を上げる。
まだ三浦は顔を背けているのでその表情は伺えないものの、頬はほんのり染まり、耳の先も赤い。
八幡・あーし「「…………」」
なんとも言えない気まずさと面映さを抱えた沈黙がが続くものの、その空気に耐えれなくなった三浦が口を開く。
あーし「そ、そんなことよりさ、アイツと、結局どうなったの?」
視線をこちらに戻し、そう問うてくるものの、三浦の目に既に不安の色はなくなっていた。
さっきの会話聞いてたってことは男とやりあってるところもみてたんだよな。
どうしよう、なんて誤魔化そう。
とりあえず、予定では三浦へのフォローは通りすがりのハヤマンが解決したって超適当なプランを考えていたんだが……
だってほら、あーしさん、葉山のことになると盲目的に肯定モードになるしさ。
あっ! やべぇ! ハヤマンとハチマン一文字違いじゃん! うんどうでもいいよね。
なんとか言い訳をと、俺の脳内HDの中から数少ない三浦の会話履歴をググる。
ふと、つい最近のやりとりがヒットした。これなら……よし、いける!
ちょっと無理はあるが、やっぱり葉山の指示でやったとかそんな感じでなすりつけよう。
八幡「それなら心配ない」
ふふふ、さあこい、『なんでそう言え……』
あーし「…………わかった」
…………あれれー? おかしいよー? ここから『俺を信用できる根拠が何一つない』って下りから葉山がなんとか、ってとこまで行く予定なのに……
あーし「ヒキオがそう言うなら信じる」
朱に染まった頬、潤んだ瞳で、しかしまっすぐに俺を見据えて三浦は言った。
空気が変わった。いやそんな気がしただけなのかもしれない。
三浦の真剣な眼差しに気圧され、何も言えず固まっていると、さらに三浦は続ける。
あーし「ごめんなさい、そして……ありがとう」
キリがあまりよくありませんが、本日ここまでです。
この後少しシリアスに入るので、次いつかは読めません。
出来る限り頑張ります。
あと737は深夜のテンションです。後悔はしています。許して下さい。
え? ―――目の前には頭を下げた三浦がいる。
見間違いかと腐った目をこすって見るも、結果、やはり腐ってる。違う、謝ってる。
普段の三浦を知っているものからすれば、到底信じられないその光景にただ驚くことしかできない。
見栄を張ることも誤魔化しもしないその三浦の真摯な姿に、チリッと胸が痛んだ。
八幡「――っ!」
咄嗟に喉から出てこようとした言葉を必死で抑え、代わりに何かを、と言葉を発する。
八幡「……べ、別に三浦が謝る必要はないだろ、悪いのはあの男で三浦は唯の被害者なんだし」
……誤魔化すようにどうでもいいことを言う。
だが三浦は、首を左右に振った。
あーし「……がう……」
小さな声で、三浦が何か言葉を発した。
八幡「え?」
聞き返すと、三浦がゆっくりと顔を上げて口を開いた。
あーし「……違う、違うの……」
見ると震えた声で否定する三浦の頬に、数滴の小さな雫が伝っていた。
うそ、だろ? ――泣いている? あの三浦が?
……事実を目の当たりにしてもまだ信じられないその姿に、何も応えられずに固まっていると、肩を若干震わせながら三浦は続ける。
あーし「…… ホントは怖かった……、これから何されんのかとかいろいろ考えてさ」
あーし「……でも、あいつが店から出てった後、窓からヒキオが見えて……」
あーし「海老名が言ってた……、ヒキオは誤解されやすいけど、いざという時、頼りになるよって」
あーし「だから……、もしかしたらって……期待、しちゃって……」
あーし「……でもこれはあーしの問題で、……ヒキオは関係ないのに」
時折小さな嗚咽を交えながら、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
あーし「だから、…………ごめんなさい」
2度目の謝罪の言葉を告げた三浦の瞳は真っ直ぐ俺を捉えている 。
そんな三浦の態度にきちんと向き合うことが出来ず、つい顔を逸らしてしまう。
そうか、わかった、もういいから気にすんな。―――そんな感じで応えればいい。
それでこの気恥ずかしいやり取りも終えることができる。
だが俺は自分への苛立ちからか無意識に拳を強く握っていた……
八幡「止めてくれ」
つい漏れでた呟きに、三浦が顔を向けてくる。
そう、口から出たのは予定とは違う言葉……
三浦の眼差しに促されるように、ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。
八幡「そうじゃない……、俺は……俺は三浦を助けたんじゃない…………」
震えた声で絞り出すように出た俺の言葉に三浦も少し驚いた顔になる。
そう……ずっと感じていた……、わだかまっていた違和感……。
それは俺が三浦を助けた本当の理由。
多分きっと、自分自身でも最初から分かっていた。
これは俺の独善的な願望だ。
多分俺は見たかった、三浦が身を賭してでも守ろうとしたその正体……、そしてその先を。
三浦は信じている。一度失ったものが、また修復できるかもしれないと。
取り返しがつかない程壊れてしまったものでさえ、またやり直せるんじゃないかと。
三浦は信じている。いつかは壊れてしまう関係であっても、その運命に抗うことは可能だと。
変わらずにはいられない関係であってさえ、努力することでそれを紡いでいけるんじゃないかと。
既に壊れてしまったもの、今、紡ぎたいと思っているもの、そんな脆くて不確かなものを、守ろうとしたその先に希望があるのか。
これまで俺は、そんなものの存在を、否定していた……。
そんなものはない、存在もしないし、手にすることもできない…………と、そう思い込もうとしていた。
しかし、もしかしたら……、そんなものがあったなら……、あればいい……、と、多分心の底で期待もしていた……。
結局、俺は……そんな自分の願望を三浦に重ね、勝手に期待した。
三浦の目指すその先にあるものが、もしかしたら俺の希望になるんじゃないかと……
すでに失い、諦めてしまったものでさえ、やり直すことは可能なんじゃないかと……
そう、俺のしたことなんて全て自分の為であって賞賛されるいわれなんて全くない。
元からして三浦の言葉を受け取る資格なんてない。
いつだったか俺のことを潔癖だと、そう言われたことがある。なるほどめんどくさい男だ、ここまで来ると、いっそ気持ちが悪い。
思考がひと段落したところで、ふと三浦が怪訝そうな目で見ていることに気づく。
俺の言葉は途切れたままだ。そもそもなんて言っていいのか分からない。
きちんと言葉に出来そうにもないし、出来たところで理解してもらえるとも到底思えない。
何か言わなければと思う一方で何を言っても無駄だとも諦めている。
あーし「なにそれ? どういうこと?」
煮え切らない俺に業を煮やしたのか三浦が問うてくる。
目の周りが赤くなっているものの、その瞳には既に涙はあふれていない。
三浦の声には若干の怒気を孕んでいる。
まぁ訳のわかんない事言って黙ったまんまじゃ怒って当然だ。
言うまいとしていた言葉を言ってしまった以上、説明責任は俺にある。
しかし、こんな時に限って得意の言い訳も屁理屈も出てこない。
ごめんなさい。
あとちょっとなんで頑張ってみましたが、無理そうです。
キリもよくないところで申し訳ありません。
続き(短いですが)は明後日までに仕上げます。
おやすみなさい。
とりあえず何も言わないよりは、ひたすら謝るだけでもやっといたほうがいいか……。
だがあの三浦が相手だ、きっと曖昧なままでは終わらせてくれそうにないよな……。
と、三浦の追求に思考がシフトする直前、自分が大きな思い違いをしていることに気付く。
いや……なんで俺は三浦に納得してもらおうとしている?
―――そうじゃない、考え方が根本からして間違っている。
……こんなどうでもいい俺の動機を三浦に納得させる必要なんてない。
それこそ唯の俺の自己満足でしかない。
今俺がすべきこと……、それは歪になった三浦との関係の是正だ。
三浦が本来持っていた俺への認識は「クラスメイト?」、「ヒキオ」、「きも」といった表現でカテゴライズされたものであり、圧倒的に赤の他人という一線を画していた。
だが、それを下手に白馬の王子様のごとく振る舞ってしまったせいで、三浦の俺を見る目が本来あるべき姿と明らかに乖離している。正直とても居心地が悪い。
で、あるなら……、いま俺が取るべき行動は…………。
いざ冷静になってみるとさっきまでの動揺が嘘のように霧散する。
さっきまでの言動と違和感がないよう注意しつつ口を開く。
八幡「まぁなんだ、繰り返すが俺は別に三浦を助けるつもりじゃ無かった、あの男の性格からしてほっとけばお前の友達……、由比ヶ浜や海老名さんまで巻き込む可能性もあっただろ」
なるべくそっけなく、突き放すように言う。
あーし「―――ッ! そ、そんなことあーしがさせないし!」
実際にその可能性はあった訳で三浦はその事実を否定できない。動揺を気どられまいとして三浦は声を荒げる。
八幡「いや三浦の友情談義とか知らねぇし。まぁそれで、だ、部活仲間や一応彼女が巻き込まれるのなら流石に俺も出て行かざるを得ない、そんな面倒なことになる前に手を打っただけ。だから今回のは単なる予防措置だ」
あーし「………………」
一応は由比ヶ浜や海老名さんへの配慮を見せることで、今後の関係性もそこまで悪くはならないハズ。
だが、三浦は訝しむような視線を向けたまま……。まだ弱い、決定的な止めも刺しとくか。
八幡「でも、あんな男と付き合ってたなんて三浦も見る目ないよな、意外と葉山も中身あんなんだったりして」
きっと俺の目はこういったセリフを際立たせるのに向いている。
その目の相乗効果も手伝ってか、最後のはやはり決定的だった。
三浦は完全にハイライトの消えた瞳で明らかにショックを受けた様子で立ち尽くしていた……。
少したった後に顔をあげ、溢れんばかりの敵意に満ちた瞳で俺を射すくめる。
おぅふ、何だこれ? もう視線だけで人を殺せるレベル。
その迫力に思わず「すすす、すびばせんでしたっ!」って謝ってしまいそうになる。
三浦は無言のまま前に一歩踏み出す。威圧感に気圧され後ろに下がってしまいそうになるのを、必死で堪える。
息づかいすら聞こえそうな距離まで詰められ、襟首をがっと掴まれた。
あーし「あーしの事はまだいい、でも隼人を侮辱するのは許さない」
ほう、自分のことはまだ許容できるんだ。他人のために怒れる所素敵だと思います。
八幡「そうか……まぁ俺は思ったことを言っただけだ。ムカついたのなら、殴るなり好きにすればいい」
三浦は俺の言葉に少し驚いたような素振りを見せそっと顔を伏せる。しかし意を決したのか俺の目をじっと見つめ口を開く。
あーし「……分かった。じゃあ目を閉じてくれる? あと歯食いしばって」
そういいながら三浦は手の平を自身の顔の近くまで持ってくる。
まぁひっぱたかれるまでは想定してた。むしろ言った直後に叩かれなかったのが不思議なくらい。
だがこれでいい、これで明日からは本来あるべき元の関係に戻れる。
しかしあれだな、激情のままにひっぱたかれるより冷静に準備されたほうが怖ぇな。
とっとと終わらせようと目をつぶる。
しかし自分で仕向けたとはいえ、何も見えないと流石に怖い。
女の子だしそんなに痛くないよね。幼い頃小町に叩かれたことがあるくらいで、流石にこの年になって頬をひっぱたかれたことなんてない。
言われた通り歯を食いしばりその時を待つ、すると右の頬にしっとりとした手の感触を感じた。
うん? あぁ片側を抑えて叩くのか。的がぶれないように……か? いや、本気過ぎんだろ。
いつ来るかと反対の頬に神経を尖らせていると、その頬にも先ほどと同様の冷たい感触が伝わる。
叩かれると思って身構えていたせいもあり身体がビクッとなる。あれっ? 顔を挟まれてる? どういうこと?
この顔を押さえつける体勢は……もしや! まさかまさかの頭突き?
え、マジ? と額に神経を持って行きつつ薄く目を開ける。
目鼻立ちの整った三浦の顔がゆっくりと近づいてくる。
うん!? 頭突きの割には速度が遅い? あれか危機に瀕した際に景色がスローモーションに見えるってやつ? そうかこれが加速世界か。
いよいよ顔がぶつかりそうな距離に近づき、目をギュッとつぶって衝撃に備える。
しかしその衝撃は想定外の場所に柔らかい感触を伴う形でもたらされた。
以上となります。
遅くなってしまい申し訳ありません。
このSSまとめへのコメント
ふむ、なかなか面白いではないか?
だが……だが……材木座が出てないのは我が認めぇぇぇぇぇぇん!
期待
期待
期待、、、でもゆきのんも学年1位で本好きだから色々読んでるよね
ヒッキーと姫菜さんと本好き小説好き三つ巴恋愛論破合戦とか?
期待してます
頑張って下さい
期待して待ってます
時間かかってもいいので質を落とさないよう頑張って下さい
続き待ってます。とても良いと思います。
いちいち気持ちわりー>>1だな。黙って投下だけしてりゃーいいんだよ
あーしちゃんかわいい
※8
元スレで言ってこいよ
test
くおぉ~八幡超かっこいい
とてもいいですね!
期待してます
続きが気になります。
期待(^ω^)
めっちゃ期待!!
シリアス展開楽しみ!頑張ってください(=゚ω゚)ノ
優美子がデレる所が見たい!!
面白いです続きがんばってください。
スレ民の言う事なんか気にするな。自分の好きなように書いて下さい。
今全部読んだ
期待支援
待ってるよ!!頑張って!!
やっぱ、あーしさん良い女!
続き楽しみ!
何回も読んでる。
あーし編完結、期待してるよ
早く続きが見たいです♪(*´ω`*)
あーしさんの可愛いさと、八幡の男前なのが最高ダヨ!( ´艸`)
続きどこ⁉
まだかにゃー?
たのしみやなー
なんで海老名ルートからあーしルートに変更しちゃってるの?雪ノ下さんはどーなったの?
あーしさんがヒロインにww
wwww
あーしさんかわいいw
あーしさんと恋人になってほしいw
渋に続きあった
いきなりあーしさんだなー
2つに分ければ良かったのに。もったいない
素晴らしいです
とても面白いです。
更新待ってます!
八幡かっこいい‼️
続きまだ?
ゆっくりでいいので続き期待してます!!
八幡がクズ男の脛蹴った辺りで体勢変えたら俺も脛打ったんだが?
変わらぬ思いで御待ちしております(白目)
ここで終わりかよ
あまり無責任に言えませんが
続き期待してます。
途中にあった、
藍染「一体いつから・・海老名姫菜がヒロインだと錯覚していた?」の通りでしたね
おもしろい
あーしさんがヒロインになってもおもしろさが衰えないですなぁ~ニヤニヤ
続きが気になります…
今追いついたけどもうこれ1さん来ない系?
もう書かねぇならお前に価値無ぇよ
消えろ
これで完結なのか...
優美子かわいいよ優美子
④
楽しみに待ってます!中傷有りますが、期待の声がある事に気づいて下さい!!
※8.45
お前に生きる価値無ぇよ
消えろ
>>49 同意
途中で投げ出すのは支援してくれてる
人を裏切る行為