千早「私が歌う理由」 (31)


アニマスのssです。

はるちはにする予定でしたが、ほぼ千早の心境の変化ばっかりです。


千早が弟の死を吹っ切ってまた歌えるようになるまで、

を自分なりに解釈して書いてみました。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1596272444

プロローグ

千早「不安?」

千早ちゃんがそう声をかけてきた。
初めてのソロでの仕事、それも前座とはいえそれなりに大きなライブだ。
自信がないわけではないが、少しだけ、体が強張っている気がした。
この状態で、いつも通りの実力を発揮できるだろうか。

春香「ううん・・・、でもそうだね、ちょっと緊張してるかも。」

不安な気持ちを誤魔化すように、笑いながら答えた。

千早「そう」

対照的に、千早ちゃんは落ち着いてるようにみえた。
千早ちゃんも一人で、私より少し先に出演する予定だ。
彼女もこの規模のステージは初めてのはずなのに、気負う様子がなくてすごいなと思った。

千早「そういえばこんな言葉知ってる?」

緊張を和らげようとしてくれているのだろうか。
わざとらしく、今思い付いた、という風に千早ちゃんが話しかけてきた。

春香「んー、何?」

千早「存在するものはすべて、定義からして自然である」

春香「うーん、知らないなあ。どういう意味?」

千早「この言葉を言った人はね、同性愛者だったのよ。それに対する周りの理解が得られなくて、悩んでたの。
  『同性愛者であることは不自然だ。』『男性は女性を、女性は男性を愛するという自然の法則を破る』
   とか言われてね。でも、この人は科学を研究する中で気付くのよ。この世に存在する全ては何かの理由が
   あって、必然的に生まれてきた。だから不自然なんてものはないんだ、ってね。」

春香「へー・・・、確かに面白い考え方だね。」

感心して後で誰の言葉か調べてみようと思ったが、すぐになぜ今そんな話をするのかと不思議に思った。

春香「ええと、それが今の状況と何の関係があるのかな?」

千早ちゃんがちょっと困ったような顔をした。かわいい。

千早「ごめんなさい、うまく言えないのだけれど・・・学校のテストの目的は何だと思う?」

春香「テストの目的・・・?何だろう学習内容の確認かな?」

千早「そうね、それも正しいと思うわ。けど行う側としては、学力の測定が目的だと思うの。
  でもね、テストでも緊張で普段の力を発揮できないことはあるでしょう?
  それはおそらく失敗だと思うわ。いくら『本番でどれだけいつも通りの出せるかも力のうちだ』
  って言ったって、本来評価されるべき学力がテスト結果に反映できなかったんだもの。」

千早「けど、これはライブよ。普段の歌唱力がどうであろうと、関係ない。

  普段以上の力を発揮できても、ライブが失敗なら失敗だし、普段の力の半分も出せなくても、

  ライブが成功なら成功。そうでしょう?」


春香「そう、だね?」

いまいち何を言いたいのか分からなかった。

P「ああ、そういうことか。つまり、ステージで発揮できた力が実力なんだから、

 『実力が発揮できない』ということはあり得ない、っていうことだろ?」


いつの間にか近くに来ていたプロデューサーがそう言った。

千早「プロデューサー。ええ、そうです。なんとなく、さっきの『不自然なんてない』って言葉と似てないかしら?」

春香「あー!そういうことかあ。やっと分かったよ。」


これまでの努力も、練習でどれだけうまくできていたかも関係ない。

このステージで全てが評価される。そう思うと少し怖くなってしまう。


P「この考え方のいい所は、全責任が俺にあるところだな。」

春香「どういう意味ですか?」

P「アイドルの実力を測るのも、どんな仕事ならそのアイドルにふさわしいか考えるのも

 プロデューサーの仕事だからな。どんな結果であれ、全責任はプロデューサーの俺のものだろ?

 だから、お前たちは余計な心配はせずに自分の仕事をしてくれればいい。
 
 でもな、今回に関しては俺も全く心配してないよ。

 多少普段通りのパフォーマンスができなくても、こんなライブくらいお前たちなら絶対成功させられる。」


私の不安そうな様子を感じ取ったんだろう。プロデューサーが励ましの言葉をかけてくれた。

私なら大丈夫だ、というお墨付きをもらって、少し気が楽になった。

P「まあ、千早はもともと緊張なんてしてなかったかもしれないけどな。」

千早「そんなこともありませんけど・・・」

千早「でも、私には歌しかありませんから。

  どんな舞台だろうと、緊張していようと、やるべきことをやるだけです。」


かっこいいな、と思った。

でも、その後一人でステージに立って歌っている千早ちゃんを見たら、何だかすごく悲しくなってしまった。

春香(どうしてだろう、千早ちゃんがどこか遠くに感じる)

千早ちゃんの歌はすごい。

彼女の歌にかける情熱が伝わってくるし、聴いている人を感動させられる。

観客のみんなの心がステージの上の千早ちゃんに引き付けられているのが分かった。

でも、千早ちゃんの目には観客の様子は映っていないみたいだった。

もしかしたら今こうして歌っている彼女の世界からは観客や私たちの存在は消えていて、

歌とステージと、千早ちゃん自身しか存在してないのかもしれない。


千早『私には歌しかありませんから。』

千早ちゃんの言葉が思い返された。

そのとき、確かに思ったんだ。

『寂しそうだ』って。

彼女の在り方を、危ういと確かに感じた。


歌しかないなんて、そんなことないよ


そうあの時にちゃんと否定して、もっと千早ちゃんのことを知れていれば、あんな事にはならなかったんだろうか。

今頃になって、私はそう後悔している。

でも、千早ちゃんの目には観客の様子は映っていないみたいだった。

もしかしたら今こうして歌っている彼女の世界からは観客や私たちの存在は消えていて、

歌とステージと、千早ちゃん自身しか存在してないのかもしれない。


千早『私には歌しかありませんから。』

千早ちゃんの言葉が思い返された。

そのとき、確かに思ったんだ。

『寂しそうだ』って。

彼女の在り方を、危ういと確かに感じた。


歌しかないなんて、そんなことないよ


そうあの時にちゃんと否定して、もっと千早ちゃんのことを知れていれば、あんな事にはならなかったんだろうか。

今頃になって、私はそう後悔している。


あれ?何故か2回同じ書き込みしてしまってる・・・

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春香「千早ちゃんは、こうやってみんなで旅行するの嫌い?」

春香が気を使って話しかけてきてくれた。

私たちは今、プロデューサーに連れられて海沿いの民宿に慰安旅行に来ている。

仕事も入ってなかったし、765プロの全員が参加するから、と春香に強く誘われて私も参加することにしたのだ。


千早「分からない。歌の仕事がもらえないのは、私にまだ実力が足りてないからだと思うから。今は遊ぶより、レッスンの方が大切だと思う。」


そうだ、本当ならこんなことしてる場合じゃない。

少しでも仕事をとってこれるように、レッスンをして実力を付けないと。

私は、どうしてここにいるんだろう・・・?


春香「千早ちゃん?どうかした?」

春香が少し心配そうに声をかけてきた。

千早「え、いえ、何でもないわ。でも、こうやって静かに波の音を聞くのは悪くないわね。」

みんなと過ごす時間が楽しくて、自分の目的を見失ってしまいそうになる。

私は歌わなければいけないんだ。あの子が好きだった私の歌を。

そう、私には歌しかないんだから。

そのために、余計なことは何もしないって決めてたのに。

P「レコーディングお疲れ様。」

765プロ感謝祭ライブの後から念願の歌の仕事が増えてきて、今日は新曲のレコーディングに来ていた。

P「よし、じゃあ帰るか」

千早「すみません、プロデューサー。この後予定がなければレッスン場に送っていただいてもいいですか?」

プロデューサーが少し眉をひそめて聞き返してきた。

P「・・・レコーディングが終わったばかりなのにか?」

千早「ええ、これから歌番組などで歌うこともあるでしょうから。それに最近は新曲の練習ばかりだったので、他の曲も練習したいんです。」

P「今日の所は休んだらどうだ?自主レッスン以外にも家でトレーニングもしてるそうじゃないか。たまには気分転換に・・・」

千早「私は大丈夫ですから。お願いします。」

プロデューサーの言葉を遮ってそう言った。多少の棘があるように言ったつもりだったが、

一度小さくため息をついてからプロデューサーは構わず言い返してきた。

P「そう言うんじゃないかと思ってたよ。」

それなら最初から余計なことを聞かないでほしい、と思ったが、プロデューサーの次の言葉に私は思わず息をのんだ。

P「その歌へのこだわりは、亡くなった弟と何か関係あるのか?」

千早「・・・どうして知ってるんですか。」

どうして今そんな話をするのか。どこまで知ってるのか。

困惑と不快感と怒り、そして何故か僅かな恐怖が胸の奥に渦巻いた。

P「すまん。最近のお前はちょっと危なっかしいからな。気になって少し調べたんだよ。」

千早「プロデューサーには関係ありません。」

気になった、なんて理由でそんなところまで踏み込んでこられたらたまらない。

これ以上話したくないという意思を込めて、はっきりと言った。

P「どうして自分を責めてるのか知らないけどな、何をしても弟がなくなったって事実は変わらないぞ。」

千早「あなたに何が分かるんですか。」

千早「私は歌わなければいけないんです。あの子が好きだった、私の歌を。
   そのためならなんでもします。私には歌しかありませんから。」

P「歌のためならなんでも?そんなこと、本当にできると思ってるのか?」

千早「できます。」

P「できないよ。人はそんな風には生きられない。

大切なものなんて変わっていくし、増えていく。それでいいんだ」。

千早「私は変わりません。」

P「変わるんだって。生き方は変えないこともできるだろうけど、人は変わる。

 それなのに生き方を変えなかったら、自分に嘘をついて生きることになる。

 それは、多分辛いことだ。」


千早「そうかもしれませんね。

  でも、それならやっぱり大丈夫です。

  今までだってそうでしたから。

  私はただ、あの子が好きだった私の歌を歌うだけです。

  辛くても、楽しくなくても関係ありません。

  だって、私には歌しかありませんから。」

P「・・・」

運転席にいるプロデューサーの表情は後ろにいる私からは見えない。

千早「話は終わりですか?」

P「・・・ああ。」

それからの車の中では二人とも無言だった。

少しして、レッスン場に到着する。

千早「・・・ありがとうございます。」

P「ああ」

ふと思い出してプロデューサーに声をかける。

千早「弟のことは」

P「ああ、誰にも言わない。安心してくれ」

プロデューサーはこっちを見ずに淡々と言った。

千早「ありがとうございます。それでは。」

P「千早」

千早「・・・何ですか。」

プロデューサーはしばらく何と言うべきか迷っていたようだったが、最後に憐れむような顔になって、頑張れよ、とだけ言った。

『誰にも、他人に言えないことの一つや二つはあるものです。千早にもあるのではないですか?』

そう四条さんに言われて、思わず優のことを思い浮かべる。
その時、後ろで水風船の割れる音がした。

振り返ると小さな男の子が泣いていて、姉らしき女の子が男の子を慰めている。

千早(思い出した。)

あの時もそうだったっけ。

あの子は水風船を落として泣いていた。
私が歌を歌ってあげたら泣き止んで笑ってくれたっけ。

どうしてこんな大切な思い出を忘れていたんだろう。
私だけはあの子のことを覚えておくんだって決めてたのに。
優との大切な思い出は全部覚えているつもりだったのに。

思い出せなくなってしまったら・・・
忘れていることすら忘れてしまっていたら、私はどうすればいいんだろう

眩暈がする。自分の今立っている場所がひどく頼りないものに感じる。

歌だけは、歌だけは歌い続けないと。あの子との思い出の私の歌だけは。

貴音「千早、どうかしましたか?」

四条さんの心配そうな声で我に返った。

千早「・・・いえ、なんでもありません。」

春香と我那覇さんが駆け寄ってくる。屋台で食べ物を買ってきたようだ。

千早「ごめんなさい、私はもう帰るわ。」

二人に別れを告げて歩き出す。

そうだ、私はこんなことしていてはいけないんだ。

そう思って、私はみんなと別れてその場を後にした。

皆と別れて、優の眠るお墓に来た。今日はあの子の命日だ。

優のお墓の前に水風船を供えて、手を合わせる。

千早(ごめんなさい。私、頑張るから。)

ふと後ろに人の気配を感じて振り返った。

千早「・・・お母さん。」

千種「あなたも来てたのね。」

千早「どうして・・・」

千種「どうしてって・・・今日はあの子の命日でしょう?久しぶりね。元気だった?」

千早「関係ないでしょう。」

千種「え?」

千早「関係ないでしょう、あなたたちには。あなただって本当はそう思ってるんでしょ。

   私たちのことなんか忘れて、もう新しい生活を始めてるくせに!」

たまらず、私はそこから走り出してしまった。

千種「ちょっと、千早!」


後ろから私を呼び止める声が聞こえる。

今更、なんだっていうんだ。

千早「おはようございます。」

今日は音楽番組の収録のためにスタジオに来ている。

椅子に座ると、テーブルの上に一輪の黒いバラと、一部の雑誌が置いてあった。

誰の雑誌だろう、と思わず手に取って、私は絶句した。


千早(そんな・・・どうして!?)

雑誌は優の死に関するものだった。混乱して、思考がまとまらない。

P「千早?どうかしたか?もうすぐ収録だぞ。」

プロデューサーの声にギクリとし、思わず雑誌を隠した。

プロデューサーから漏れた訳ではないのだろう。

雑誌の表紙には先日優の墓の前で母と言い争った時の写真が載せられていた。

誰が、何のために・・・

色んな思いが頭の中をめぐるが、雑誌に書いてあった

『如月千早 弟を見殺し』

という言葉がどうしても頭から離れなかった。

誰か見てくれないかなあ・・・

納得のいく最後にするのに、結構ない頭を絞って考えたんだけど・・・

一人、部屋でうずくまっていると、水道の蛇口から漏れる水滴の音だけが聞こえてくる。

歌が歌えなくなってからは、ずっとこうしている。


優のために歌い続けないと・・・

そのためならなんでもする。

そう思っていたのに。


?「本当に?」

そう問いかける声が聞こえて、思わず顔を上げる。声の主はテレビに映った自分だった。

千早「何を・・・」


千早?「本気でそんな風に生きられると思っていたの?できないわよ、そんなこと。

戦いきれなくなったあなたは、今更になって言い訳を求めたのよ。

良かったじゃない、この病はあなたが望んだんでしょう?

『ショックで歌えなくなったから、仕方ないんだ。』

そういって、あの子のために歌い続ける道から逃れる言い訳を手に入れたんだから。」


千早「・・・うるさい」


千早?「認めなさいよ。嘘を認めて、諦めるの。

あの子はもう笑いかけてはくれないけれど、きっと許してはくれるわ。」


千早「うるさい!」

テレビのリモコンを私に向かって投げつける。

リモコンはテレビにぶつかって、床に落ちた。

私は優のために・・・

でも、どうすればいいの?

千早「もう分からない、分からないわよ・・・」

春香「どうしたらいいんだろう」

そう言って手元のお絵かき帳に視線を落とし、はあ、とため息をつく。

これは千早ちゃんの弟さんのもので、事務所の前で千早ちゃんの母親から渡されたものだ。

ここに描かれている千早ちゃんは、どれもマイクを持って笑顔だった。


千早『歌わなくちゃ。優のためにずっと歌い続けていかなくちゃ。』

千早『歌えなくなった以上、この仕事を続けていくつもりはありません。』


本当にそうなんだろうか。

千早ちゃんがこれまで歌ってきたのは、優くんのためだけだったんだろうか。

他のアイドル活動なんてどうでも良かったんだろうか。


これまで一緒に歌ってきた私には、とてもそうは思えなかった。

だって、歌っている千早ちゃんは本当に生き生きとしていたし、歌の話をしている千早ちゃんは本当に楽しそうだったから。

私には、どうして千早ちゃんが弟のために歌を歌い続けようと思ったのかは分からない。

でも、千早ちゃんがそんな責任感で押しつぶされて、歌えなくなることなんて優くんだって望んでないはずだ。

優くんは、多分千早ちゃんの歌だけじゃなく、歌を歌って笑顔になってる千早ちゃんのことが好きだったんだと思うから。


きっと千早ちゃんだって同じはずだ。

弟のためでもあったのかもしれないけれど、きっとそれ以上に歌が好きだからこの道を歩んできたんだと思う。

だから、私はまた千早ちゃんと一緒に歌いたい。千早ちゃんに、この絵みたいに笑顔で歌ってほしい。

そのためなら、私はお節介だと言われても、千早ちゃんに嫌われてもかまわない。

そう思った。

『歌が大好きで、歌ってると笑顔になっちゃう。そんなお姉ちゃんが大好きだったんじゃないかな』


春香からの手紙を読んで、あの子の残したお絵かき帳に目をやった。

そこにはマイクを持って笑っている私と、それを見て笑っている優の様子が拙い絵で描かれていた。

懐かしい、とっくの昔に無くしてしまっていた記憶がよみがえってくる。


『歌って!歌ってお姉ちゃん!』


そうだった。確かに春香の言う通りだったのに。

私はそんなことすら忘れてしまっていたんだ。



もうどうすればいいのか分からない

私は・・・

『歌が好きだから、自分が歌いたいから歌うんじゃダメなのかな?』

歌いたい。
もう一度、あの子に歌ってあげたように、また笑顔で歌いたい。

そう思って、みんなが作ってくれた歌とその楽譜を手に取った。

春香「千早ちゃん、来てくれたんだね。」

千早「優の絵と、みんなの作ってくれた歌を見てたら、また、もう一度歌いたいと思ったの。」

あの頃みたいに、もう一度だけ。

千早「だから、ありがとう、春香。」

ありがとう、あの子との別れに踏ん切りを付けさせてくれて。

最後にもう一度、あの子のために歌いたい。
そう覚悟を決めた。

声の出ない私の代わりに、みんなが歌ってくれている。

皆が、また私が歌えるように応援してくれていた。


ああ、そうか。

もうとっくに、765プロのみんなは私にとってかけがえのない宝物になっていたんだ。


優のために、歌い続けないといけない。

そう思っていたのにそれを口にできなかったのは、知られたくなかったのは、
きっと私にはその覚悟ができていなかったからだろう。

それを口にしてしまったら、きっと今までのように皆と楽しくアイドル活動をすることなんて、きっとできないだろうから。

始まりはあの子のためにと選んだ道だったかもしれないけれど、今は違う。

これからもみんなと一緒に歌っていきたい。

同じステージに立ちたい。

こころから、そう思った。

P「インタビューお疲れ様。これで、また仕事が入ってくるはずだ。

 吉澤さんには感謝しないとな。」

千早「ありがとうございます。」


これからまた、アイドル活動を再開していく。

ある意味当然のことなのかもしれないが、私は何だか不思議な気分になっていた。


千早「本当は、もう一度笑顔で歌えたら、あの子との別れにちゃんと決着を付けられたら」

少し躊躇ったが、それでもやっぱり話すことにした。

千早「私、引退しようと思ってたんです。だってそれ以外にアイドルを続ける理由が、歌い続ける理由がありませんでしたから。」

P「・・・」

千早「でも、結局プロデューサーの言うとおりだったかもしれませんね。」

目的とか、道しるべとか、あまり関係なかったみたいだ。

千早「やっぱりアイドル活動を続けていきたいので、これからもよろしくお願いします。」

私は、そうしたいからそうするだけだ。

プロデューサーは「そうか」と言って少し笑った。

優のお墓の前で手を合わせる。

あの子がいなくなって、私はつらい現実から逃げるように歌や音楽にのめり込んでいった。

そして、自分は毎日喧嘩してばかりの両親とは違う、と自分を正当化するために『優のために歌わなくてはいけない』と思い込んでたんだ。

私はそんな自分のための言い訳に、いつの間にか縛られてしまっていた。


そしてその苦しみを私は両親にぶつけてしまっていたのだ。

二人だって辛くないはずなかったのに。悲しくないはずなかったのに。

そんな悲しみを乗り越えて、二人は前に進もうとしていたのに。


忘れたくても、忘れることなんてできない。

でも、覚えていたくても、いつかは忘れてしまうんだ。

だから、ごめんね、優。

今は、前に進むわ。

いつか、お母さんやお父さんと一緒に、笑ってあなたのことを思い出せるように。

終わりです!

アニメの展開を文章に起こすの無理そうだったので、アニマス履修済み前提みたいな感じになってしまったけど

この間一挙放送あったしいいよね。

うわ15周年記念特番5時からやん

7時からやと思ってた
こんなことしてるばあいじゃねえわ

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