【ガルパン】みほ「ホットカルーアミルクですっ」 (18)


梓「あ、はい、いただきます」――ズズ

みほ「おいしい?」

梓「はい、なんかカフェオレみたいですね。それよりちょっと甘いですけど――。
  で、何で西住隊長はこんなスレ立てたんです?」

みほ「うん、ちょっとね。それに最近はガルパンSSが全然ないから」

梓「言い訳っぽくありませんか?」

みほ「言葉を変えれば言い訳だね。でも、いいんだよそれで。
  理由と言い訳にさしたる違いも無いからね。
  ただ、今日は何となくそう云う気分だったんだよ」

梓「で、何かあったんです?」

みほ「そろそろ、潮時かなってさ」


梓「それって、SSは書かないって事ですか?」

みほ「書かないっていうか、書けなくなっちゃったのかな」

梓「でも、今こうしてSS書いてるじゃないですか」

みほ「いいところに気が付いたね、澤さん。
  まさにそう、今こうしてSSを書いてることが不思議なんだよ」

梓「よくわかりませんね。もっと解るように説明してください」

みほ「そうだね、澤さんは覚えてるかな?私のSS」

梓「はい、知ってますけど」

みほ「どう思う?」

梓「う~ん……。どうでしょうね、西住隊長のSSは万人受けはしないと思いますけど
  ――私は好きですよ」

みほ「ありがとう、澤さん。で、どこら辺が問題だと思う?」

梓「そうですね、やっぱり地の文でしょうか」


みほ「そうだね、確かにSS速報――ううん、SSを読む人にとって地の文は鬼門だよ。
  地の文があるってだけで倦厭しちゃう人は多いと思う」

梓「じゃあ、地の文を書かなければいいんじゃないですか?
  今みたいに――」

みほ「うん、そうなんだよね。でも考えてみて欲しいな。
  澤さんは、台詞だけのSSを読んでどう思う?」

梓「読みやすいってのはあると思います。
  でも、状況描写や心理描写が旨く読み取れないですね」

みほ「私もそう思うんだよ。そう思うんだけど、実際のところは旨く描かれている」

梓「読み手が補間してくれてるんでしょうか?」

みほ「そう、まさに澤さんの言うとおりだと思うよ。
  台詞だけのSSが何故物語を紡ぐことが出来るのか?
  多分、読み手が自分好みに登場人物の内面や行動を旨く補ってるんだよ」


梓「なるほど、とすると作者の意図とは違った印象を与える可能性もありますね」

みほ「それは違うよ澤さん。どんな文章でも作者の意図なんて正確には読者に伝わらないよ。
  文章は書き上げた途端、作者とは切り離されるものなんだよ」

梓「西住隊長は影響されやすいですね。それ京極ですよね?
  まあ言いたいことはわかりました。
  だとして、何で西住隊長は台詞だけのSSを書かないんです?」

みほ「私の求めるものを台詞だけで纏められないから――かな」

梓「小難しいこと書こうとしてるだけなんじゃないですか?」

みほ「そんなつもりは無いんだけどなぁ。
  ただ他の人の書くものとは明らかに目指すものが違ってることは事実だよ」

梓「で、なにを目指してるんです?」

みほ「うん、その質問には今は答えられないかな。
  逆に質問するけど、読者は一体何を求めてると思う?」


梓「読者が求めてるもの?
  それって”ガルパンSS”に何を求めてるのかってことですよね。
  私は、ただの暇つぶしだと思ってますけど――」

みほ「じゃあ、どんな内容なら暇つぶしができるかな?」

梓「暇つぶしなら何だっていいんじゃないですか?」

みほ「もっと具体的に絞れないかなぁ――」

梓「具体的に、ですか。
  そうですね、萌え――とか?」

みほ「萌え――か。じゃあ、萌えって何かな?」

梓「さぁ、私にはよくわかりませんけど……」

みほ「私はただのバズワードだと思ってるよ。
  だってそうでしょ?萌え萌え言ってても具体的に何を指してるのかさっぱりじゃん。
  ただ、かわいいってだけならわざわざ萌えなんて言葉使う必要無いと思うんだ」

梓「世間に浸透した言葉ですしね。本来の意味を失っててもおかしくないです」


みほ「だから――かな、萌えるSSを書くことが出来ないんだよ」

梓「意味が解らないから書けないんですか?
  そんな、深く考える必要も無いと思いますけど……」

みほ「うん、勢いでスレ立ててノリで書き始めればそんなこと気にならないよ」

梓「なるほど、西住隊長のSSは専ら書き溜めて投下してましたね」

みほ「書いてる途中で何度も推敲するんだけどさ、
  その度に思うんだ、これ面白いのか?――て」

梓「あぁ……。きついですね」

みほ「それで気晴らしに他の人のSSを見るんだよ」

梓「……で、どうなりました?」

みほ「面白いなって思いが一つと
  これは面白いのか?って思いがもう一つ」

梓「SSもピンキリですしね」

みほ「やっぱり面白いほうを見るんだけどね。自信喪失しちゃうじゃん?」

梓「西住隊長――SSに何を求めてるんですか?」


みほ「私にもわからなくなっちゃった……」

梓「面倒臭い先輩ですね。
  SSなんて暇つぶしに書いて暇人が見ればそれでいいじゃないですか」

みほ「でも、功名心とか虚栄心が疼くんだよぉ」

梓「いやいや、間違ってますって。
  そんな高尚なものじゃないでしょう、SSなんて」

みほ「わかってる、わかってるよ、澤さん」

梓「だったら、適当に書けばいいじゃないですか」

みほ「それは私のプライドが許しません!」

梓「本当に面倒くさいですね。
  いったい何がしたいんですか?」


みほ「書きたい――って事だけは確かだよ」

梓「まあ、今書いてますしね。でも、もう書けないんですよね?」

みほ「うん、3つほど書き溜めてるんだけどね」

梓「書いてるじゃないですか」

みほ「そうじゃなくて……その」

梓「あぁ、途中で投げ出したって話しですか」

みほ「だって、今のガルパン界隈見てみて?
  百合や幼児化までは許容範囲だけど、ちょっと前の催眠○○○○なんかは
  澤さん、どう思う?」

梓「人の性的嗜好はそれぞれですし、マイノリティでも楽しむ人が居ればいいんじゃないですか?」

みほ「本当に、澤さんはマイノリティだと思ってる?」

梓「――いえ、あの伸び方はちょっと異常かも知れませんね」

みほ「そうだよ、ガルパン界隈には変態がいっぱい居るんだよ。私はノーマルだよ。それは絶対。
  なのに、皆は変態嗜好のSSを求めてる!
  こんな状況下で地の文ばかり台詞の殆ど無い仄々SSを投下できる?」

梓「難しいかもしれませんね。でも私は読みますよ?」

みほ「ありがとう、社交辞令でも嬉しいよ。
  兎に角、この3つのネタを仕上げようにも他人のSSを見るたびに筆が滞るんだよ。私、もう書けない……」


梓「そんな気張らずに少し寝かせるのもいいんじゃないですか?」

みほ「そうは言っても出来る限り新鮮なものをって思いが焦りに変わるんだよ」

梓「必死ですね。じゃあ他人のSSなんて気にしなければいいじゃないですか」

みほ「そうはいかないよ。いつ優れた作品が出るかわからないじゃん。
  出来ればリアルタイムで遭遇して支援したいと思うのがSS好きの本分だよ」

梓「西住隊長、ちょっと休んだほうがいいですよ。なんだか強迫性障害の気があります」

みほ「アンビリーバボー見た?」

梓「見ましたけど今関係あります?」

みほ「いや、さっき澤さんが私は影響されやすいって言ってたから」

梓「何レス前の話ですか?誰も覚えてませんよ」

みほ「そう!それだよ!」

梓「何がですか?」


みほ「書き溜めなしで勢に乗って書くと矛盾が生じたりするよね?
  でもね、ゆっくりしたペースで話を進めると読んでる人は気にならない。
  時間が記憶を薄めていくからなんだよ」

梓「へぇ、それで?」

みほ「うん、逆に思うんだよ。巧緻な伏線を張ったとして、それに気づける人が居るのかって」

梓「なるほど、でもちょっと待ってください……もう無理です」

みほ「えっ!?どうしたの?セリフ違うよ?」

梓「もう限界ですよ!まさに潮時です!」

みほ「あはは……そうだよね。私もきついかなって思ってたんだ」

梓「10年近く前のSSのパロディ改変だってことに気付いた人はどれだけいるんでしょうか……」

みほ「しかもガルパンSSじゃなくてけいおん!のSSだしね」

梓「10年前にガルパンは無いですから」


みほ「最終章がこのペースだと確実に10年目に突入しそうだけど」

梓「それはいいじゃないですか。しかし同じ人気深夜アニメのSSとはいえ、10年経つといろいろ環境は変わるものですね」

みほ「うん。当時はVIPが主流だったしね。保守しないとすぐに落ちちゃうから基本的に立てたその日のうちに完結するか途中で落ちるか、長命なスレでも持って1週間くらいだったかな」

梓「今と比べれば良いところもあれば悪いところもありましたね」

みほ「そうだね。そのあたりの違いは挙げ出すとキリがないから当時を知ってる人たちで各自懐かしみ合ってもらうとして」

梓「このSSに関してですけど、まず登場人物の名前と、明らかに今と環境的に違う部分はちょっと改変しましたね」

みほ「登場人物の名前は私しか変えてないけどね」

梓「ガルパンとけいおん両方知っててこれ読んでる人の脳内イメージどうなってるか気になりますね。あっちの梓さんが嫌でもチラつくと思うけど私は澤梓ですからね!」


みほ「それはそれとして、『萌え』のあたりからガタが来た感じだね」

梓「萌えって単語がこの時代にこうも古臭く感じてしまうとは当時は思いませんでしたね。このSSでは『推し』に変えようかと思ったけどそれはそれで違和感出るからやめましたけど」

みほ「ところで私も言っててわからなかったんだけどアンビリーバボーって何?」

梓「正直私も覚えてないんですけど多分その時放送してたTV番組だと思います」

みほ「リアルタイムネタは風化すると懐かしいどころか意味不明になっちゃうんだね……」

梓「それで、この後どうするんですか?元ネタだと作者が過去作を晒して盛り上がりますけど」

みほ「盛り上がるって言うか炎上って言うか……あはは、私はやめとくよ」

梓「懸命な判断です。さすがは西住隊長ですね。でも、過去作の宣伝目的じゃなければなんでこんなスレを建てたんですか?」

みほ「なんとなく、懐かしくなっちゃって。もし元ネタを知ってる人がいたら、懐かしんでほしいなって、その程度かな。付き合ってくれてありがとう。澤さん」

梓「いえ、こちらこそ良い経験になりました」

みほ「次はちゃんとしたSSを書きたいな」

梓「お願いします。このままだと最終章2話までにガルパンのSSがゼロになりかねませんから」

みほ「そういう義務感で書こうとすると大抵上手くいかないんだけどね……だから書きたいものを書けるように頑張ります!」


梓「それじゃあ西住隊長、すっきりしたところでこれからどこか出かけませんか?」

みほ「デートだね澤さん」

梓「まあそう思って頂いて結構ですけど――。何か食べに行きましょうよ」

みほ「じゃあ、マカロンが食べたい」

梓「好きですねマカロン。本編で食べてるの見たことありませんけど……でもいいお店知ってますから付いて来てください」

みほ「はいっ!」




おしまい。

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