荒木比奈「周遊」 (26)
Pと結婚した旧姓荒木比奈さんのエロSSです
「あっ……♡」
彼女から、一際甘い声が発せられた。それが合図のようになって、我慢出来なくなり、僕は比奈の中で果てた。膣内でペニスはビクビクを収縮と膨張を繰り返して、奥の方まで液体で満たそうとしている
結び合わせた手の平は、互いに力を入れ合ってしまってぬめるように熱い。爪を食い込ませたかも知れないし、人差し指のペンだこの所だけ感触が違ったりする
ペニスを引き抜くと、自分のものを彼女の者が混じった液体が膣口から垂れる。それをティッシュでぬぐい取ると、首の後ろに手を回された。引き寄せられるようにベッドに倒れ込んで、彼女の顔を見る
見慣れた顔の、見慣れた表情。薄暗さの中じゃないと現れない表情
意図的でないにしても蠱惑的で、色が変わった頬へ唇をつける。軽く触れた後、また唇へ。啄むようなふれあいから、軽い水音が生まれた
「その……もう一回、いいっスか?」
照れるような、恥ずかしむような声だった。僕はまた唇を塞いだ
◆◇◆
据えた匂いの中、目を醒ます。またシーツを洗濯しないと。それに、キスマークが仕事の日までに消えてくれると良いのだけれど。もう春だから、マフラーで隠すことが難しい。
隣で比奈が寝返りを打った。枕とシーツの皺が形を変えた。
寝起きの髪の毛がもっさりしているよなぁ。
妻の寝顔を見るとそう思う。癖毛が水分や寝返りで更にねじれ、爆発する。アイドル時代はこの髪の毛のセットが大変だったらしい。
ブランケットをズラしすぎないようにベッドから這い出る。喉が渇きを潤すために冷蔵庫を開けた。ついでに朝飯のメニューも考える。目玉焼きでいいや
テレビをつける。ここ数年、朝のニュース番組のチェックは欠かさないようにしている。芸能、スポーツ、政治、ご当地グルメ、どれが相手との会話で役に立つか分からない。もうアイドルのプロデューサーではないが、イベント企画や営業で、相手との敷居を下げるのにこういう普通の話題は役に立つ
比奈のプロデューサーじゃなくなってから、営業の機会なんて減ったけど、もう癖のようになってついつい見てしまう。最近のニュース番組はバラエティ番組みたいな要素も多くて、普通に面白いし
『私は今、仙台市のラブミー牧場にいま~す!』
レポーターがどこかの牧場でソフトクリームを食べ、動物と触れ合っている。旅行シーズンにぴったりなオススメスポットを紹介するというコーナーだった。牧場以外にも、横浜の中華街や京都の遺産、北海道の五稜郭、長崎の軍艦島、鹿児島の種子島、山口の壇ノ浦、岐阜の関ヶ原……コーナーを組んだ人の趣味が分かるラインナップだな。
旅行……旅行かぁ。新婚旅行でアメリカへ行ったきりで、二人だけでどこかへ行くってのはめっきりないな。そうそう、あのとき比奈がラスベガスで200ドルを3ドルにしちゃったんだっけ。今となっては良い思い出だなあ
皿を用意しながら、そのニュースを眺める。味噌汁はたしか昨日のが残ってたからそれにしよう。早炊きにしていた米もそろそろ出来上がる
フライパンに油を引いて熱し、卵を割って落とそうとしたそのとき
「お弁当!」
どたどたとした足音と、ボサボサの髪の毛を携えて、比奈がやって来た。ずいぶんに慌てている。きっと寝坊してしまったと思い込んでいるのだろう
「今日は休みだよ」
「あ」
『みてくださいこの廃墟感! ツアーだと軍艦島を余すところなく楽しめて』
今日は休日。だから職場で食べるお弁当も、スーツに袖を通す事も必要ない。レポーターの声と、卵が焼ける音が良く聞こえる。比奈は恥ずかしそうにうつむきながらテーブルに向かい椅子へ腰掛けた。そこへ目玉焼きと味噌汁とご飯を置いた。
「……いただきまス」
「いただきます」
『ここ! 宇宙センターもオススメスポットの一つです!』
味噌汁を啜る音もした
ごちそうさまとお粗末様を言って、食洗機に食器を入れる。それから今日の掃除の分担を決めた。僕が洗濯とお風呂場、比奈がリビングと寝室の掃除
ベッドからシーツを剥がして洗濯機に入れた。今日は快晴だし、あとで布団も天日干しにしておこう。
掃除機の音をBGMに、洗濯物の皺を伸ばしていっては干していく。ベランダの鉢植えにミツバチが来ていた。春だなぁと思った
「あー! この店、アタシが高校時代に通ってた店っスよ!」
掃除機の音で半分以上聞き取れなかった。「聞こえなーい!」と返事をすると、「アタシのー! 店―!」と返事が返ってきた。いや比奈の店ではないだろう
二人とも掃除を中断してテレビを見る。レポーターはさっきのような歴史的な場所以外にもいろんな所を取り上げていた。それこそ定番のような場所も多かった
『いや~旅行シーズン、オススメスポットが日本にはたくさんありますね。しかし途中、ピックアップする場所に偏りがあったような……』
VTRが終わり、スタジオでアナウンサーやゲストがそれに関してコメントしている。ゲストが「僕はハイゲイト墓地に一度行ってみたくて」とコメントしてアナウンサーが困り果ててる。どこの何なんだハイゲイト墓地って
「ハイゲイト墓地って吸血鬼の伝説が残る所っスよね」
「そうなの……? てかなんで知ってるの……?」
「いやぁ……吸血鬼をモチーフにした作品を書くときに調べて……」
漫画家ってすごいな……こないだは北欧神話とかタロットカードについてすっごく語ってたし、比奈って実は知識の量がとんでもないのでは……
「しかし、旅行っスか」
「旅行だね」
「僕らあんまり行ってないよね」「アタシら結構行ってますよね」
「え?」「え?」
二人とも違うことを行った後で、二人して同じように困惑した
「関東だけじゃなくて関西の即売会にも行ってまスし、あなたに売り子をしてもらって、その後に美味しい料理を食べたりしてるし、観光もするし、もう旅行と言えるんじゃないっスか?」
と、比奈は言った。その通りだなと僕は思った。前日乗りする時はホテル近くを、それこそ旅行デートのように遊んで、ご当地の名産品やB級グルメを食べて、帰ってからはそれを思い出話にして次のイベント会場近くの美味しいお店を調べる。
「確かに、僕ら結構いろんな場所を制覇している気がする……」
……いや、ちょっと待って。確かに結婚して数年、比奈のサークルの売り子として、いろいろなところには行った。でも、毎年同じ季節に、同じ場所にしか行ってない気がする。
まだアイドルとしての活動で全国回ってたときの方がいろんな所を訪れていた気がする
「比奈……僕ら毎年大阪の即売会にも参加するよね?」
「ええまぁ、はい、あれも結構デカいイベントで……」
「……僕ら、結婚してから……あれ以外で大阪に行ったこと無くない……?」
「……言われてみれば、っスねぇ」
「インテックス大阪(即売会の会場)から離れた場所の大阪を……僕らは知らないのではないか……?」
「…………っスね」
ということで、イベントも何もない場所へ旅行をすることになった。
今日はここまでです、続きはまた
◆◇◆
私のスマホの画像フォルダには、私自身の写真がほとんどなかった。ゲームのスクショ、自分の描いたイラスト、料理、資料用の風景。ほとんどが無生物のものばかりだった
でも、アイドルをやってからは、一緒に活動していく仲間や、ステージ衣装に袖を通した自分もカメラロールに増えて行った
そういう変化が、少し嬉しかった
アイドルじゃなくなった今も、自分自身を撮影した写真の数は増えている。そして、私のスマホで私を撮影してくれる人は、私がまだアイドルだった頃と変わらないで、今も一番近くにいる
栃木県は鬼怒川温泉。私と彼はそこへ向かっている。本当は大阪に行くつもりだったけれど、彼の仕事の都合と、私の原稿の都合が合わずに、一泊二日で帰ることが出来る近くの温泉地になった。温泉なのは、互いの労を労う意味でもあって。だから大阪はまた次の機会に、となった
東京から公共交通機関でおおよそ2時間。のんびりと
「鬼怒川は行ったこと無いから楽しみだなぁ」
「えーっと、どこでしたっけ、行ったことある温泉地」
「草津」
それと、どうせなら2人ともが行ったことのない場所にしようと。草津は彼が学生時代に仲間内で行ったことがあるそうな。また時間を作って今度は2人で、と軽く約束を交わした。
それと今回の旅先を鬼怒川に決めたのは、私が前々から行きたかったと言うのも理由の一つ。
かつて少年ジャンプで連載していた、漫画家として輝くコンビを描いた漫画の旅行先に、この鬼怒川が登場する
早い話が聖地巡礼。
そういえば前にも聖地巡礼したなぁ。ちょっとマイナーなアニメの舞台になった静岡の駅。今と同じで、彼と2人で。あのときの私はアイドルで、彼が担当のプロデューサーだったけど。もう一回あそこにも行きたいなぁ
駅弁の冷たいご飯と、車内販売で買ったお茶が良く合う。車窓から見える景色は春らしく、緑が萌えていた
到着、鬼怒川。
「先に旅館に荷物置いて、それから観光しよっか」
「そっスね」
予約していた旅館へ向かう。旅行カバンはイベントに行くときよりも小さくて、歩幅は大きくなった
旅館はネットの予約ページで見たとおり、趣のある囲炉裏が特徴的なロビーや、自然の風景に溶け込む木造建築で、思わず「作画の資料になる」と写真を撮った。隣の彼もとっていた。多分、私とは違う理由だろう
「ようこそおいでくださいました、すぐにお部屋に案内致します」
女将さんの後に付いて、廊下を歩いて行く。木漏れ日が差し込む程度で薄暗く、それがまた良い雰囲気を出すのに一役買っているのだろう
「いいところだね」「奮発しましたもんねぇ」と小さな声で話しながら歩いていると「新婚さんですか?」と聞かれた。「もう新婚ってほどじゃ……いや、新婚?」と彼が悩んでた
結婚前からずっと一緒だから、私も彼もそこらへんが曖昧。年数的に言えばまだ新婚のそれだと思う。あの新婚さんをいらっしゃいする番組のルールなら新婚の範囲だし
「いやぁね、こんな仕事ですからいっぱいの人と接するんですよ。貴方たちは、新婚さんくらい仲が良くてねぇ、ああ新婚旅行で鬼怒川なんて珍しいなぁと思いましてねぇ」
「……ありがとうございます」
「……っス」
他人から言われるのは、まだ照れる。それはお互い様だった。薄暗い廊下の中で、左手薬指の輪っかが鈍く光った
トリックアート美術館、ワールドスクウェア、龍王峡、猿山……ググってサイトに載ってた所はとりあえず回ろうと、歩いたり見たりものを食べたり。
いろいろなところを四角く切り取って、スマホのフォルダに入れていく。思い出と作画資料をかねて。ただ、1人だったときとは違って、風景には私が入り込んでいて
「じゃ撮るよ~、はい…………」
「『チーズ』とかなんか言ってほしいっスよ!」
「これ動画」
「うわ! 騙されたっス!」
写真を(騙されて動画も)撮影するだけでも、楽しかった
もちろん、サイトにあったところを全て回ることは出来なかった。夕暮れ時、辺りの景色に紫とオレンジが混じり始める。
「そろそろ戻ろっか、お腹空いちゃったし」
「そうっスね」と言うのと同じタイミングで、最後に一枚、と今度は彼を撮ってやった。「不意打ちだ!」と言われた。ふざけ合うのが楽しかった
行きたいところに行けなかったのは名残惜しい。けれど、明日もあるし。今日は旅館に戻って、温泉に浸かって、また明日。
この季節でも、夕暮れ時はまだ冷える。日中の暑さに合わせた服装のせいで、風が吹く度に肌寒い思いをした
手袋をしてくれば良かったと思った。けれどすぐに、してこなくて良かったなと思うようになった。二の腕がくっつくくらいに近づき合って、指と指を絡ませて、旅館へ向かう
女将さんがニコニコしながら出迎えてくれた。そこでまた恥ずかしさがわき出てきた。
今回はここまでです、次回から性的な描写が含まれます。セックスします
◆◇◆
一つの布団の上でキスをしながら、「まあこうなるだろうな」と僕は思った
旅館に帰ってからのこと。「料理の先にお風呂に入ろう」と言うことで、一日歩いた疲れを温泉で癒やすことにした。美しい景色を眺めながら、広い湯船で足を伸ばす。中々に気持よかった。
その後の食事も極めて美味しかった。特に魚料理が日本酒に良く合う。僕も比奈も、いつもより速いペースで飲み進めていった。
そして、ご飯も終えて、自分たちの部屋に戻ってから
「でねぇ~、さっき女湯でお猿さんを見かけたんスよ~!」
僕はアルコールに強い方だが、比奈はあまりそうでもない。猿の話は4回くらいされてる。零れたお酒が浴衣の脇の所を濡らしていて、それはまだ渇いていない。
「水持ってくるから、ちょっと待ってて」
「はぁ~~い♪」
―
コップに水を入れて、比奈の元へ持っていく
「はい」
「はぁい♪」
お酒が入るとすごい上機嫌になるよなぁ
コップに両手を添え、ちびちびと水を飲んでいく比奈を眺める。こういうとき、もう20代も後半だというのに、比奈の顔に残る幼さと言うものに注目してしまう。童顔で、前から変わってない
アイドルだった頃も「成人してたの?」と言われることが多かったけど、それは今でも変わらないのではないだろうか。まだ成人していない、と言われても半数の人間は納得すると思う
いつか若々しい理由を訊いたら「瑞樹さんに教わったアンチエイジング法を実行しているだけ」と比奈は言っていた。川島さんの力、すさまじい
「んっ……ぷはぁ、はい、全部飲んだっスよ~」
「あい」
全部飲み終えて、比奈はコップを高く掲げる。こういう無邪気な行動の一つ一つも、幼さを形成している要因なのかもしれないと思った
「ん!」
コップを手渡される
「ん、まだ水飲む?」
コップを受け取りながら、そう聞く。
「ん~ん」
首を横に振られた。コップをテーブルに置いた。まだ底の方に少し水が残っていた。
置いてしばらくもしないうちに、比奈が隣にやって来て、座って、僕に向かって顔を突き出してきていた。
「……なに?」
「ん~♪」
そのまま比奈は眼鏡を外して、唇を尖らせる。
比奈はいつもこうだ。お酒を呑むと上機嫌になって、そして甘えたがりになる。近くの人に絡みに行って、ベタベタとしていく。これを知ったのは初めて会った年のクリスマスだったっけ
もっと飲んでるときはすぐに寝てしまうけど、今回はそうじゃ無いらしい。良い感じに酔って、良い感じの気分になっているらしい
頬が朱に染まって、はだけた浴衣から桃色の肌が覗いていた。
僕もその、酒気にあてられた。
彼女の肩をやさしく握り、抱き寄せる。顔を近づけ、軽く水音をさせた
「……えへへ♪」
思い返せば、旅行に来てから初めてキスをした気がする。少しだけお酒の匂いがするキスを、何度もしたくなった。もう一度顔を近づけようとした、けれどその前に比奈がこっちの瞳をのぞき込んできて、目が合って、笑った
「……お布団いきましょ♪」
キスは触れるようなものから、互いの口の中へ下を入れ合い、混ぜ合った唾液を飲み込むようなキスへとエスカレートしていく
互いの衣服は脱ぎ捨てられ、布団のそばで散らかっている。肌色と肌色を重ねさせて、体温のやりとりをした。
キスをやめ口を離すと、首の後ろに手を回されて抱きつかれる。そのまま胸板や鎖骨に唇をはさせられ、リップ音が鳴る
僕は開いた右腕を比奈の秘部に伸ばす。陰毛を指先でかき分け、割れ目をなぞり、膣口を中指の先端で探った
「……下、もう濡れてる」
「あは、なんでっスかね……」
僕が指摘すると、比奈は恥ずかしそうに顔を胸板へ埋めた。それだけじゃなく、比奈は抱きついていた腕の内右の方を解いて、僕のペニスに右手を添えていた
「……こっちも、もう」
「うん……」
比奈の右手には、何年も前からペンだこがある。同人作家として活動を続けていく内に出来た勲章のようなペンだこ。指を絡ませてペニスを触られると、少しだけ堅くなっているペンだこが刺激をしてくる。その違う刺激が、ペニスをより固くする。
比奈が上目遣いで手コキしながら、淫靡さの混ざる吐息を漏らす。そのまままたキスをした。さっきまでのお酒の匂いは薄れかけていた。
そういえば内湯もあったよな、今度はそれを利用させてもらおう。
頭のどこかでそういうことを冷静に考える一方、頭や腹の底では煮えたぎるほどの情念が生まれていて、腕に入る力が強くなりすぎないようにするのが精一杯だった
互いに向き合い、布団の上。
「うっ……んっ……♡はぁ……っ♡」
濡れぼそった膣内へ、ペニスが侵入していく。奥まで入りきったところでまた抱き締め合い、対面座位の状態で、僕らはつながり合った。
膣内は熱く、締め付け、ペニスを射精させようと蠢く。ヒダの一つ一つが纏わり付いて離さなくて、ピストンをしようものなら更に締め付けて、絡みついてくる
「ぅんっ♡あっ♡そこっ♡」
下から突かれる度に比奈は甘い声を短く漏らし、胸を揺らし、髪の毛をたなびかせる。揺れる乳房に手を添えると、案の定乳首は主張を強くしていて、指先でつまんだりすると、比奈の声はまた甘さを増す
「少しっ……激しくしてもいい?」
「うっ♡うんっ、シて、もっと♡」
乳房に添えていた手を比奈のお尻へ持っていく。お尻を手のひらで覆い、ピストンを更に早く、激しくする
「あっ♡やば、いっスよっこれ♡ひぅっ!」
結合部から泡立った愛液が互いの陰毛に絡まって白色になる。汗がシーツの上に垂れて、シミを作る。部屋に暖房なんて入ってないのにどんどん熱くなっていく。愛がそこで生まれていく
ピストンを激しくしていく。大きさを増していく水音の中で、乱れていく妻の姿が愛おしくて、両手で抱き締めて、耳元で言葉を紡いだ
「比奈、好きだよ」
「うん、好き♡アタシも、好きっ!」
愛を伝える手段なんて、いくらでもある。文字に起こしたり、手をとったり、一緒の道を歩いたり、笑いあったり、セックスしたり。
こうやって、言葉で伝えたり。
「好きだ」なんて、結婚した後何度も言ってきた。けど、まだまだ足りない。伝えれば伝えるほど、奥から溢れるくらいにまた、伝えたい気持ちが溢れてくる。そして、彼女から同じ気持ちを受け取る度に、また同じ気持ちをお返ししたくなって、もうどうしようもなくなる。
70億を越す人間が居るこの世界に、たった一人の、愛する人へ伝える気持ちが耐えることはこれまでに一度もないし、これからもきっとないだろう
感情と性的な刺激が合わさって、僕らは昂ぶっていく。
髪の毛越しに頭を撫でた。汗ばんだ癖毛もまた愛おしかった。
不意に、肩の付け根にちょっとした痛みを感じた。またキスマークでもつけられたのだろう。前のがまだ消えてないのに、まあ、もう、どうでもいいや
汗が混じり合って、どちらのものか分からなくなるくらいに肌をくっつけ合う。僕の腕の中で、比奈が蕩けていく。柔らかな感触が体に伝わる。膣内でペニスが更に硬度と大きさを増した
「もぉ、あっ♡い、イく……っ♡」
ピストンの最中、腕の中で比奈の体が痙攣する。足を僕の腰にまで絡ませながら、体全身に電気が走ったかのように小刻みに震えた
膣もそれに合わせるように強く締め付け、ペニスにこれまでになかったほど強い刺激を与えてきた。僕はそれに耐えられなくなり、膣内へ精液を注ぎ込む
「っ……♡中、で……っ♡」
収縮を繰り返す膣内で果てる。息は上がっていて、それが落ち着くまでに時間を要した
荒げていた呼吸がある程度戻ってから、膣からペニスを引き抜いた。膣口から白濁液が一筋、垂れていく
互いに汗をかき、体もかなり汚れてしまった。後戯を終えたら内湯を使わせてもらおう、と思っていたら、比奈に手首を掴まれた
「その……ちょ、お願いが……」
掴んできた手の力は、さっきまでと比べると弱々しく、さっきまでと同じくらいに熱かった
「あせ……いっぱいかいちゃったんで……お水を少し…」
「……うん」
テーブルまで這って、コップを手に取る。わずかに残っていた分の水も、もう乾ききっているのが分かった。もうすこしゆっくりと休んでから、内湯を使った方が良いなと思った
今回はここまでです、終わりは明日にでも
総選挙の季節ですね、一票でもいいので荒木比奈産へよろしくお願いします
◆◇◆
さっきまでとは打って変わって、のんびりとした時間を彼とすごす。
内湯に浸かりながら、ふくらはぎの辺りを揉んでほぐす。日中、かなり歩いたから疲労もその分溜まっていた。
「明日は筋肉痛かもっスねぇ……」
引退してからは座りっぱなしで、あんまり運動をしてないしなぁ。ジムとか行ってみた方がいいのかなぁ
「はは、僕もそうなりそうだ」
彼は太もも、大腿四頭筋を手のひらでほぐしている。水面が波打って、ちゃぷちゃぷと音を立てていた
「というか、もう痛い」
「アタシもっスよぉ……」
マッサージのせいでちょっとムードが壊れてしまったかも。まあ、これはこれで私達らしいと言うか、嫌いではないけれど
私は酔うのが早いし、それが醒めるのも早い。もう頭のほわほわとした感覚は大分薄れている。
「酔いはもう平気?」
「はい」
「よかった」
纏わり付いていたアルコール臭は消えて、代わりに温泉の匂いや、木々の音、春の夜の冷たさを風が運んでくる。
「……またここに来たいっスね」
「……だったら、明日行こうとしてた場所は、またにしようか」
「……っスね」
明日はのんびりして、筋肉痛の足でも労って、ゆっくり帰ろう、と彼は言う。私は腰掛けていた身体を少し、彼の方に寄せて、肯定の意を示した
まだ旅行は終わってないのに、また次の事を考えた。次はどこへ行くんだろう、どんな季節で、どんな料理を食べて……何人で、旅行に行くんだろう
どれだけ考えても、未来のことは分からない。けれど、明るいものになるだろうと言うことだけは確信出来た
水の音、風の匂い、空気が肌を撫でる感触……どれもこれも、漫画では伝えられない、目で見えないものだ。それを、最愛の人と一緒に共有出来る幸せを噛みしめながら、湯船で時間を溶かしていく。
この感情は、写真じゃ切り取れないだろうな
彼の手をとった。指先が湯のせいでふやけていた。私も同じようにしわしわだった。構わず握った。
空気が澄んでいて、月が美しく夜空に映えている。「綺麗でスね」と言うと「綺麗だね」と返ってきた。互いの顔が赤いのは、シチュエーションのせいで、きっと、温泉のせいじゃないだろう
ここまでです、読んでいただきありがとうございました
射精一回に含まれる精子の数は約1~4億ほどだそうです(個人差あり)。このSSを読んだ人は、これまでの人生で出した精子の数の分だけ荒木比奈さんに投票してくれると嬉しいです
このSSまとめへのコメント
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