【モバマス】LiPPS「虹光の花束」 2スレ目 (371)
このスレは
【モバマス】LiPPS「虹光の花束」
【モバマス】LiPPS「虹光の花束」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1553202110/#footer)
の続きです。先に↑を読まないとわけわかめです
また
・多数のオリジナル要素
・キャラ崩壊
・長い
等の要素が含まれるため、苦手な方はご注意ください
全年齢対象に出来ないくらいにはブラックなネタを使うので一応R板での進行となりますが、過度なエログロ展開は(多分)そんなにないと思います
あら?前スレのリンク貼れてない?
【モバマス】LiPPS「虹光の花束」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1553202110/)
貼れてたわ.....
凄くざっくりとしたあらすじ
ある日奏は設立3か月の新米芸能事務所811プロにスカウトされてアイドルになる
その後なんやかんや仲間が増えLiPPSを結成、なんやかんや困難を乗り越え、遂にアイドルランクがAランクになった
そしてそんなLiPPSの姿を見て、遂に彼女たちに後ろめたい気持ちを隠していたプロデューサーも、彼女達に心を開いたのだった...
主要人物紹介
速水 奏
811プロのエースでLiPPSのリーダー
びっくらポンが天敵
塩見周子
811プロ所属のアイドル、兼事務員
Pが最初にスカウトしたアイドル
宮本フレデリカ
20歳になったパリジェンヌアイドル
たまたまPの落とした名刺を拾ったことから811プロに加入した
一ノ瀬志希
フレデリカの初仕事にたまたま居合わせたケミカルアイドル
最近ようやく父親との関係を修復した
城ケ崎美嘉
みんなの憧れのカリスマアイドル、ブラックな事務所から移籍してきた
無事志望校に合格し、自身のCDが受験生から学業開運のお守り扱いされている
P
811プロのプロデューサー兼社長
かつては歌手だったが、ある事件のせいで辞めてしまった
ベテラントレーナー
本名は公式設定より青木 聖
怒らせると怖い
片桐早苗
この物語ではまだ警察官
Pとは旧知の仲
主要用語
811プロ
主人公の奏達が所属する芸能事務所、まだ設立したばかり
010プロ
トライアドプリムス等多くの人気アイドルを抱える大型事務所
あとちひろさんがここで事務員をやっている
891プロ
Pとちひろさんが前にいた事務所
アイドルだけでなく多くのジャンルの芸能人を抱える超マンモス事務所
iMB事件
『iDOL MOVIE BIGBANG事件』の略
その企画にかかわった芸能事務所の不祥事が次々と週刊誌によってリークされたことから名付けられた
811プロもこの事件によりかなりの被害を受け、Pは出版社の裏に更なる黒幕がいると考えているが....?
とりあえず重要な用語だけまとめましたが、正直設定が多くなりすぎたので前スレを読まないと全く話が分からないと思います
あかりんご初手で笑わせてくるのずるいやろ....
前スレの続き、Chapter18から投下していきます
俺が自分の秘密を打ち明けた翌日
歌姫楽園明けでの疲れを予測していた俺は、この日を全員オフになるように調整していた
...はずなのだが
P「なんで全員事務所来てんだ?」
『なんとなく!』
P「さいですか...」
周子「家で暇を持てあましててもしょうがないし、とりあえずどっか行こうと思って歩いてたらいつの間に事務所来ちゃった」
フレデリカ「アタシは、事務所に遊び行けば誰かいるかなーって思ったから来たんだー♪そしたらみんな揃っちゃった!これってもう、811プロはあたし達のお家って事じゃない!?」
P「会社で寝泊まりとかブラック企業を疑われるから止めてくれ....」
奏「でも折角全員集まったのだし、一度これからの方針をみんなでちゃんと話しておかない?最近色々なことがあったもの、情報の整理は必要よ」
美嘉「それいいね!なんか秘密の作戦会議って感じで面白そう★」
周子「という訳で、もう第何回か分からない811プロ会議を始めるよー!」
美嘉「今日の議題は...まあいっぱいあるよね。議長、どれからいく?」
奏「そうね...とりあえず、これから私達が出場する大会、『IG』についての確認から始めましょう」
P「...なんかお前ら手慣れてないか?結構何度もこうやって会議してたのか?」
周子「そうだよー、いっつも奏ちゃんが議長でね」
P(社長なのに一度も参加してないんだが...)
奏「IGについてはプロデューサーさんが一番詳しいだろうし、解説お願いできるかしら?」
P「えっ、あっはい。承りました」
美嘉(奏の方が社長っぽい....)
P「IGはSランク認定オーディションってだけあって予選からルールが特殊でな」
1.まず参加者は4つのブロックに分けられる
2.その後歌姫楽園の様に1ユニットずつ審査を行う
3.それぞれのブロック毎の一位、計四組が翌週の本戦へと進出する
美嘉「てことは、本戦へ進めるのは4ユニットだけって事?凄いシビアだね」
P「んで、本戦に進出したユニット4組でトーナメント組んでそれぞれ1対1でライブバトル、勝ち抜いたユニットが晴れてSランクアイドルってわけだ」
P「ただし...」
周子「ただし?」
P「予選にしろ本戦にしろ審査の基準が普通と違う。審査の基準は星ではなく、投票で決まるんだ」
美嘉「投票?」
P「IGっつーのはアイドルにとってはSランクを掴むためのオーディションという側面があるが、世間にとっては違う。トップアイドルがわんさか集まってライブする、いわばお祭りなんだ」
志希「お客さんにとってはお祭り...もしかして投票するのって」
P「ああ、オーディションを見る観客達だ。それも直接会場に来た観客だけじゃない、テレビやネットで見ている観客も投票の権利がある」
P「たかが45個の星の奪い合いじゃない...この国の人間すべて、一億三千万人の心の奪い合いなんだ」
周子「ひゃー...なんかスケールの大きい話やなぁ」
奏「でも、アイドルの頂点を決める大会なら、それくらい大きな規模になるのも頷けるわね」
フレデリカ「沢山の人を笑顔にすればいいんでしょ?なら大丈夫だよ!みんなをハッピーにするのは、アタシ達の得意分野だからね!」
フレデリカの言葉に、全員が同意を示す
P「そうだ、結局のところやることはいつもと変わらねぇ」
奏「今まで通り、ファンも対戦相手も、自分自身さえ巻き込んで、全力で楽しむだけね!」
P「その通りだ!お前ら、どんなことがあろうと本番は全力で楽しんでいけよ!!」
LiPPS『はーい!!』
奏「じゃあIGについての確認が済んだところで、次の議題に行きましょう」
奏「...iMB事件について」
周子「iMB事件...」
奏「IGに参加する事が発表されている事務所には、iMBにも参加した事務所がほとんどよ」
志希「まぁiMBがそもそも勢いのある事務所を集めた企画だったし、IGの参加者も自然とそうなるだろうねー」
志希「...だからこそ、嫌でもIGとiMB事件の繋がりを勘ぐらなきゃいけなくなる」
奏「それに阿苦都苦出版があのパーティー会場に入れたのは,間違いなくあのパーティーの参加者の誰かが手配したから」
奏「その上で色んな条件を踏まえて考えると、その犯人はiMBに参加していた芸能事務所のどれかというのが濃厚ね」
P「だがそれだと,、怪しいのは唯一被害を受けてない010プロって事になるんだよな...」
美嘉「そんな!凛達は不正なんてしてないよ!」
周子「そうだよ!Pさんだってあのパフォーマンス見たでしょ!?そんな汚い手でのし上がったやつにはあんなこと出来ないって!」
P「分かってるよ!でも目に見えてるもんだけが真実な訳じゃないだろ!?010はトラプリだけで成り立ってるわけじゃない、あの子達が無実でも事務所全部が無実とは限らない」
P「実際、被害を受けてないのはあそこだけなんだから...」
志希「んー、それはどうかなぁ?」
P「えっ?」
志希「確かに010プロはiMB参加事務所の中で唯一出版社による被害を受けてない。でも、そのせいで世間ではiMB事件を起こした犯人としての疑惑も上がって、最近かなりバッシング受けてるよね?」
志希「それってむしろ、この事件で一番被害を受けてるって事じゃないかにゃ?」
P「それは...確かにそうだけど...」
フレデリカ「つまり、010プロは犯人じゃないって事だね!」
志希「『黒幕も自分の首を絞めることを想定していなかった』とかじゃなければだけどね」
奏「ここまでの規模の事件を起こせる人間が、そこまで馬鹿だとは思えないけど...」
奏「手掛かりはまだあるわ。プロデューサーさんが歌手を辞めることになった、あの事件」
美嘉「それって確かプロデューサーの仲良かったアイドルが枕営業したってバッシングされて、それで心を痛めて...」
P「...ビルから飛び降りて、自殺した。夢だったアイドルに絶望してな。だからこそ俺はアイドル業界にあの子を貶めた犯人がいると推測して、この事務所を立てたんだ」
周子「...ちょっと嫌なこと聞くようで申し訳ないけど、枕したってのは本当なの?もしかしたら濡れ衣着せられたって可能性も...」
P「分からない...俺には何も、話してくれなかった...出来れば濡れ衣であってほしいが...」
周子「...ゴメンPさん、やっぱ聞かなきゃよかったね」
P「いや、大丈夫だよ周子。気にすんな」
フレデリカ「でも、その時の事件がどういう風にiMB事件の手がかりになるの?」
P「...手口だ」
フレデリカ「手口?」
奏「思い出してみて。プロデューサーさんがそのアイドルの自殺に裏があると思った理由を」
美嘉「確か違う出版社の記事なのに使ってる写真が全く同じだから......あれっ?」
美嘉「それってあたしの時と一緒じゃん!?」
周子「ついでに、大しておいしくないネタなのに皆でこぞって叩いたってとこも似てるね」
P「ああ....だから俺は美嘉の記事を見た時、あの子の事件とiMB事件が繋がってることを確信したんだ」
志希「とりあえず、黒幕への手がかりが残ってるとしたら当時の記事だね。用意できる?」
P「前に電子書籍でバックナンバー買ってこのタブレットに入れてある...これだ」
周子「阿苦都苦、須藤華、極亜久...美嘉ちゃんを叩いてたトリオがそろってるね」
奏「その3つだけじゃないわ、本当に多くの雑誌が同じような記事を書いてる。確かにこれじゃ、どの出版社が一番の黒なのか分からないわね...」
フレデリカ「....んー?」
志希「相手の男の顔も写ってるけど、心当たりある?」
P「無い......当時もかなりこの写真を手がかりに探しはしたんだが、ダメだった。この男の情報は、マジで砂の一粒も集まらなかったんだ」
奏「なら、当時所属してた事務所に話を聞きたいところだけど...」
P「倒産しちまったからな...当時の社長も、彼女を担当していたプロデューサーも、今となっては生きているかすらわからない...」
美嘉「それじゃあ、結局手掛かりなしってこと...?」
周子「相手の男が見つかればいいけど...そこまでして駄目だったんなら、難しいだろうね」
美嘉「そんな...ここまで来て...」
フレデリカ「やっぱり、おかしい!」
P「おかしいって、何が?」
フレデリカ「だって、マクラエイギョー....ってよくわかんないけど、兎に角普通は嫌なことだよね?」
P「そりゃまぁ、好きでもないやつに無理やり抱かれるんだから、誰だって嫌だろうな」
フレデリカ「でもこの記事の写真に写ってるこの子、全然嫌な顔してないよ?」
フレデリカ「アタシわかるよ!この子が写真を撮られたとき、絶対この子は幸せな気持ちだったはず!どう見たって、自分で嫌だって思ってることする時の顔じゃないよ!」
奏「......そう言われると確かに、むしろ少し微笑んでいるようにも見えるわね」
周子「じゃあ、この写真は枕営業の時の写真じゃないってこと?なら、一体何の写真なんやろ?」
志希「...この背景の写真、公園じゃない?」
美嘉「...ホントだ、よく見たらちらっとブランコみたいなのが写ってるね」
美嘉「でも...それがなにか?」
志希「プロデューサー、もう一度写真をよく見て。本当にこの写真、心当たりない?」
志希が写真をプロデューサーの眼前へ付き出す
するとプロデューサーは、何かに気づいたかのようにはっと血相を変えた
P「....!!」
P「もしかしてこれ、俺とのレッスンの時の写真!?」
奏「プロデューサーとのレッスンの写真ということは...」
周子「映ってる相手は実はPさんだったって事!?」
美嘉「でも、どう見たって違う人間だよ?」
P「間違いない、この公園はいつもの......ならこの写真には、俺も一緒に写っていたはずだ!なのに一体何故!?」
志希「合成だろうね、プロデューサーのとこだけ全然違う人間に置き換えたんだ」
志希「相手の人、顔は全然違うけど肩幅とか足の長さ、体格はプロデューサーに似てる。今の技術なら、元々写ってたプロデューサーを体格の似た別の人間の様に編集するくらい、ワケないよ」
奏「どれだけ探しても相手の人が見つからなかったのは、そもそもいない人を探してたから?」
志希「多分ね」
周子「でもそれってなんかおかしくない?Pさんは当時すでに売れっ子の歌手だったんだよ?」
P「そうだ、どうせ叩くんなら知名度のある俺を叩いた方が出版社にとってはるかにウマい!」
P「JKアイドルに手を出した鬼畜とでもしとけば、あの子を叩くよりかなりの注目を集めれたはずだ!一体なんで...」
フレデリカ「プロデューサーを、守りたかったんじゃないかな?」
P「えっ?」
フレデリカ「犯人は実はプロデューサーのことが大好きで、そんなプロデューサーがスキャンダルになりかけてたから、守ったって事じゃない?」
フレデリカ「......なんとなく、そんな気がするんだ。この記事を書かせた人は、どうしてもプロデューサーを守りたかったんだろうなって」
美嘉「じゃあ黒幕は....いろんな出版社を動かせる力があって、iMBに参加した事務所の関係者で、当時スキャンダルになりかけてたプロデューサーを守りたかった人間?」
P「いやぁ、そんな都合のいい人間がいるはずは....」
奏「.............!!」
カチリ、と頭の中で音がした
欠けていたパズルの、最後のピースを見つけた様な感覚
脳が急速に回転し、あのパーティーであった事を思い起こさせる
そうだ、私は一度会っている!
多くの出版社に働きかけれるほどの資金と権力を持っていて、MBに参加した事務所の関係者で
そして、当時プロデューサーを守る動機があった人物.....
すべての条件を満たすパズルの答えを、私は知っている!!
奏「全てを仕組んだ犯人は...」
「891プロの社長、屋久井 清...!」
志希「...誰だっけその人?」
奏(ズコッ)
志希「聞いた覚えはある...けど多分キョーミなかったんだろうね、忘れちゃった♪」
フレデリカ「アタシも忘れてるー♪」
美嘉「えぇ...でも屋久井社長の名前はともかく、891プロのことは分かるでしょ?」
志希フレ「「なんだっけ?」」
美嘉「二人とも、ちょっとは他の事務所にも興味もとうよ!?」
奏「...この国で最も大規模な芸能事務所よ。アイドルはもちろん、歌手や芸人、役者や声優...この世界で芸能と呼ばれるジャンルに属するもの全てでトップクラスの力を持っているわ」
奏「アイドル以外の部分も含めれば、010プロをも軽く凌ぐ規模でしょうね」
周子「ほら、前に番組でレイジレイジ―の二人と共演した人気の俳優と芸人がいたでしょ?あの二人も891プロ所属の人達だよ」
奏「そして、プロデューサーさんがかつて所属していた事務所でもあるわ」
志希「........あー思い出した、そう言えばそんなこと言ってたね」
フレデリカ「確か、プロデューサーは891プロの社長さんにスカウトされて歌手になったんだよね!」
P「ああ....だが、信じられん」
美嘉「信じられない?」
P「だって、屋久井のおっちゃんは俺を拾ってくれて、ずっと支えてくれた恩人で、ホントにいい人なんだぞ!?あの人が悪事を働くなんて......」
奏「プロデューサーさん、貴方さっき自分で言ってたじゃない。『見えてるものだけが真実じゃない」って」
P「!!」
奏「もしかしたら、貴方には自分の本性を見せていなかっただけかもしれないわ」
P「だが!891プロだってiMB事件の被害を受けただろ!?おっちゃんは自爆する程馬鹿じゃねぇぞ!?」
奏「...本当にそうかしら?」
P「えっ?」
奏「確かに891プロにもゴシップ記者が侵入したわ。でも、それだけよ。他の事務所はみんな何かしら不祥事を暴露されたのに、891プロの不祥事を書いた記事は無かった」
奏「私達の時だってあんなにしつこく付きまとってたじゃない。なのに、891プロだけはただ侵入されただけで済んでる」
P「そりゃあ891プロはでかい事務所だし、警備が優秀だから...」
奏「そんな警備が厳重な事務所に、カメラ一つで正面から侵入したって言うの?そもそもそんなに警備が厳重な事務所に忍び込むより、私達の時みたいに撮影現場やプライベートに張り付く方が無難じゃない?」
周子「それは...確かにあたし達の時に比べて杜撰すぎるような...」
奏「それに、黒幕が屋久井社長だとすれば色々とつじつまが合うのよ」
美嘉「どういう事?」
奏「志希とフレデリカの初仕事よ、あの時フレデリカと共演するはずだった芸人さんも891プロ所属だったわよね?」
P「あ、ああ...」
奏「あの時は急病で来られなくなったって言ってたけど、本当はそうじゃなかったのかもしれない。もしかしたら屋久井社長が芸人さんが現場に行かないよう手を回したのかもしれないわ」
奏「それに...なんであの時二人が狙われたのか、ずっとその理由が分かってなかったでしょ?」
志希「というか、そもそも本当に狙われたのはあたし達だったのかすらよく分かんないよね。あの時のまだ新人だったあたし達には、わざわざあんな妨害されるような理由はないはずだし」
P「だが、おっちゃんとあの時の二人が狙われたことに、一体何の関係が?」
奏「やっぱり、あの時本当に狙われていたのは志希とフレデリカじゃなかったのよ。本当に狙われていたのは...,,」
プロデューサーさん、あなたよ
P「狙われていたのは...俺?」
周子「でも、Pさんにだって狙われる理由なくない?むしろPさんは屋久井社長の仕事仲間だったんでしょ?」
奏「だからこそよ。屋久井社長にとって、プロデューサーさんは事務所の総力を挙げて支援していた稼ぎ頭だった。そんなプロデューサーさんにある日急に事務所を辞められれば、相当な痛手を負ったはずよ」
奏「稼ぎも減るし、事務所にとって大きな存在が急に抜けたことで、社内も混乱に陥ったはずだわ」
フレデリカ「アタシだって、急に811プロの誰かが辞めるっていいだしたら大混乱する自信あるし、屋久井社長もきっと焦っただろうね」
奏「動機は『復讐』、愛しさ余って憎さ100倍ってところね。自分を裏切ったプロデューサーさんへ復讐するため、それと、プロデューサーが真相にたどり着くのを防ぐ目的もあったのかもしれない。だから、プロデューサーさんが同伴しているタイミングでアクシデントを起こさせて、プロデューサーさんの信用を失墜させようとした」
奏「きっと、志希というイレギュラーとフレデリカの機転がなければ、次の日にはプロデューサーさんはメディアで大きく叩かれたでしょうね」
美嘉「確かに、筋は通ってるね...」
奏「そして、プロデューサーさんが会社にとって大事な稼ぎ頭だったからこそ.....当時の屋久井社長はプロデューサーを守った。合成写真を使わせてね」
P「でもそれなら、そもそも記事を差し止めればよかったじゃないか!わざわざあの子だけ嵌めるような真似をする必要はない!」
奏「その理由は、確かにまだ分からない.....状況証拠がそろってるというだけで物証もないわ。でも、掘り下げてみる価値はあると思うわ」
奏「だから、一度納得のいくまで調べてみましょう?プロデューサーさんには辛いかもしれないけど...」
P「...いや、大丈夫だ。覚悟ならこの事務所を立てた時に、とうに済ませた。例えどんな事があっても、真実を追い求めるってな」
P「...いいだろう、もう一度しっかり調べ直すとしようか。」
891プロも、あの子の事件も....!
Chapter18「Whereabouts of evil」
会議で891プロのを調べる事が決まった後、プロデューサーさんは3人の助っ人を事務所に呼び出した
現役警察官である早苗さんと、いつも世話になってる青木さん
そして...
ちひろ「こんにちは、811プロの皆」
奏「貴方は...確か前にトラプリと一緒にいた人よね?名前は.....」
ちひろ「千川ちひろよ、010プロで事務員をやっているわ」
ちひろ「そして......P君の元プロデューサーでもある」
美嘉「プロデューサーの、プロデューサー!?」
フレデリカ「ややこしやー!!」
P「ちひろさん、今は少しでも情報が欲しいんです。どうか力を貸してください」
ちひろ「もちろんよ、可愛い担当の為ならね」
早苗「あたし達も力を貸すわ。警察官として、悪人は見過ごせないしね!」
ベテトレ「あの子の無念を晴らす為なら、私も全力を尽くそう」
P「ありがとうございます、では早速.....」
P「....ということなんです」
ちひろ「社長が、黒幕......」
早苗「確かに、条件的にはあり得るわね...」
奏「信じられないかしら?」
ちひろ「...正直、屋久井社長がそんなことをするとは私も思えませんけど...でも、実は私少しだけ社長に違和感を覚えた事があるの」
周子「違和感?」
ちひろ「まだP君が現役だったころ、一度社長に阿苦都苦出版の記者が訪ねてきたことがあったの。普通はゴシップ誌書いてる記者なんてそうそう社内にいれたりしないんだけど...」
美嘉「確かに変だね....どんな事務所だって、阿苦都苦出版を社内に入れるのは嫌がるはず...」
ちひろ「あの時期は結構色んな事務所で不祥事が続いていて、891プロも警戒を強めていた時期だから尚更ね」
ちひろ「...今思えば、あれはあの子が自殺する少し前の事だった」
早苗「一気にキナ臭くなったわね...」
奏「もしかしてその記者、屋久井社長と取引していたんじゃないかしら?例えば、何かを対価に、プロデューサーのスキャンダルを都合のいいものに書き換えるとか」
ちひろ「有り得ないと切り捨てることは、出来ませんね......」
P「俺の知らないところで、そんな事が.........」
奏「ただ、まだ証拠が全然足りていないのよね.......」
P「...なら、直接乗り込むしかない」
周子「乗り込むって、本気?」
P「俺ならある程度は891プロの中の事が分かる。どうにかしてそれっぽい証拠を...」
ちひろ「待ってP君、それっぽい証拠なんて曖昧じゃダメよ。もっと具体的に決めていかないと」
P「具体的にって.....例えば?」
ちひろ「お金の動きが分かるようなもの、帳簿とかがいいわね。人間の欲望を最もむき出しにするのは、やっぱりお金だもの」
P「帳簿かぁ...それは何処にあるか知らねえや....」
ちひろ「なら私も一緒に乗り込むわ、私なら帳簿の場所が分かるから」
ベテトレ「だが、正面から帳簿をよこせと言うわけにもいくまい?」
ちひろ「そこは私に考えがあります。ただ、私とP君の他にもう一人欲しいですね...」
ベテトレ「....なら私が行こう、アイドルの皆じゃ顔が割れてて潜入しづらいだろう」
P「じゃあ明日、俺とプロデューサーと青木さんで891プロに行きましょう!」
早苗「...私も、ちょっと気になることがあるからそれを調べてみる」
周子「気になること?」
早苗「最近あった芸能関係であった事件で、ちょっと怪しい事件があってね。時期が時期だしもしかしたらiMB事件と何か関係があるかもしれない」
P「それってもしかして...」
早苗「多分P君の考えてる通りよ。ただ、この事件は確証のない間はちょっとLiPPS皆に聞かせるわけには.....」
P「確かに、刺激の強すぎる話ですね....」
奏「なによ、また隠し事?」
P「大丈夫だよ、早苗さんの調査が終わったらちゃんと話すから」
奏「ならいいけど...」
P(明らかに不機嫌........)
早苗「ごめんね奏ちゃん、この話に関しては、本当に軽々しく話せるものじゃないから....」
奏「そう....早苗さんがそう言うならしょうがないわね。でも、確証が取れたらちゃんと話してよ?」
早苗「ええ、その時は必ず」
美嘉「あたし達はどうすればいい?」
P「お前たちは今はとにかくIGの方に集中してくれ、こっちの調査に力入れ過ぎてIGの方でしくじるわけにもいかないからな」
P「事件の真相を掴むこともそうだが、それ以上に今の俺たちの目標はIG優勝だからな...できるか?」
『もちろん!』
P「よし!じゃあ明日の作戦が終わり次第、また事務所で集まろう!」
~~~翌日、891プロ前~~~
ベテトレ「ここが891プロ.....噂通りでかいな」
P「それで?なんかずっとはぐらかされてたんですけど、結局どうやって入り込むんです?」
ちひろ「よく聞いてくれました!まずは変装します!」
P「......ゑ?」
....猛烈に嫌な予感がする
ベテトレ「やたらデカい荷物だとは思っていたが、もしかしてそれ全部変装用の衣装か?」
ちひろ「そうですよ。P君のは....はい!」
P「はいって...えっ?これ俺が着るんですか!?」
ちひろ「そうよ?時間が惜しいから早く着てください。メイクもしなきゃいけないんだし」
ちひろ「青木さんも同じ服着てもらいますからね?」
ベテトレ「なんだと!?こんなヒラッヒラのをか!?」
P「ていうかなんでこんな服着なきゃなんないんですか!?」
ちひろ「それはですね....ゴニョゴニョゴニョ」
P「えぇ...」
ちひろ「しょうがないですよ。私とP君の顔は割れてますし、これくらいしないと」
P「だからって....ハァ」
「また女装かぁ...........」
==========891プロ===========
891P「えーっと...確か売り込みに来たアイドルとプロデューサーが待ってるって...あれか」
891P「初めまして、わたくし当事務所でプロデューサーを務めています、891Pと申します。名刺どうぞ」
ちひろ(男装)「これはこれはご丁寧にどうも!」
ベテトレ(アイドル衣装)(.....ん?)
P(女装アイドル)(どうしました?)
ベテトレ(いや、この男...前に一度会ったことがある)
ベテトレ(....あの子のプロデューサーだった男だ)
P(なんですって!?)
891P「ところで、貴方は010事務所を担当ごとクビになったと伺ったのですが...」
ちひろ「そうなんです...なぜか私達が不正をしたとかで...ホントは何もしてないのに!」
ちひろ「でも、そんな理不尽に夢を断たれたら諦めきれないじゃないですか!彼女達は本当に素晴らしい才能を持っているのに!...だから、3人そろって別の事務所で今度こそアイドルになりたいんです!」
P(いやどっちもアイドルじゃねえよ、片方中身男だよ....)
891P「それは...心中お察しします。立ち話もなんですねので、あちらへと...」
ちひろ「分かりました。二人とも、行くわよ!」
P『アッハイ』
ベテトレ「.........」
~~~同時刻、某所~~~
JK「...って事があったんです」
早苗「成程ね....貴重な情報をありがとう」
JK「いえ...それよりも婦警さんって、美嘉と知り合いなんですよね?」
早苗「そうだけど...それが?」
JK「伝言を頼まれてほしいんです...061プロの時は酷い事言ってゴメンって...それと、私はアイドル辞めちゃったけど、美嘉がアイドル頑張ってる姿見て毎日元気貰ってるって」
JK「今更私にこんなこと言う資格ないとは思うんですけど....」
早苗「...いいえ、大丈夫よ!美嘉ちゃんはファンの声援をないがしろにはしないもの!」
早苗「安心して、必ず伝えておくわ!」
JK「ホントですか!?ありがとうございます.......!」
早苗「ええ、それじゃまたどこかで会いましょ!」
やっぱり、あの自殺には裏があった
早苗(061プロと891プロは裏で繋がっていた...いや、もしかしたら061だけじゃない、もっと多くの事務所が...)
早苗(そして、そうやって集めた莫大な資金で、061社長の自殺を詳しく調べられない様に圧力をかけた....いや、こうなってくるとそもそも本当に自殺だったのかすら怪しいわね)
早苗(....まあ、なんにせよ)
カギを握っているのは屋久井社長...か
891P「いやー素晴らしいですよ彼女たち!是非契約交渉を...」
ちひろ「すいません、有り難いお話なのですが私達これからどうしても外せない用事がありまして...また後日お話しを伺えますか?」
891P「そうですか...では都合が良いときに私までご連絡ください」
ちひろ「ありがとうございます....帰るわよ二人とも!」
P『はい......いやーなんとかデビューできそうですね...ヨカッタヨカッタ』
ベテトレ「ああ!この事務所なら、最近良く聞く枕営業とかの心配も無さそうだしな!」
891P「.....!!」ピクッ
ベテトレ(!!...あの反応、やはり...!)
ちひろ「こらっ、大声でそんな事言うもんじゃありませんよ.....それでは、失礼します」
891P「あっ、はい!また後日!」
====811プロ、事務室====
P「よし、全員集まったな......」
フレデリカ「プロデューサーさんとトレーナーさん、なんだが凄くお疲れみたいだねー?」
ちひろ「囮として頑張ってもらったから二人ともお疲れなのよ。そっとしておいてあげて」
周子「囮って......何したん?」
P&ベテトレ「「聞くな.......」」
奏「何があったのかは知らないけど.....収穫はどうだった?」
ちひろ「こっちは豊作よ。早苗ちゃんは?」
早苗「あたしも中々興味深い情報を得たわ...やっぱり、あの事件には裏があった」
P「ホントですか!?」
周子「ちょっと待って。結局、『あの事件』って何なの?」
奏「確証が見つかったのなら、約束通り話してもらうわよ」
早苗「もちろんよ、ただ、覚悟して聞いてね」
早苗「特に....美嘉ちゃん」
美嘉「あたし?」
早苗「ええ、貴方にはショッキングな事件かもしれないから...」
美嘉「.....大丈夫、話して」
早苗「分かったわ。実は.........」
美嘉「そんな....061の社長が...?」
061プロの社長.....あの男が、自殺していた...!?
志希「プロデューサーは知ってたの?」
P「ああ、だがお前らに余計なショックを与えると思って当時は言わなかった。んでそのまま昨日まで忘れてた」
周子「ええ...確かに聞いたらショックだったろうけどさ」
フレデリカ「でも、黙ってたのは良くないと思うな!ぷんぷん!」
P「悪かったよ...あの後結局何もなかったから忘れてたんだ」
早苗「ただ、もしかしたら自殺というのは間違いかもしれない」
奏「どういう事?」
早苗「061プロはね、891プロとある契約を結んでいたのよ。毎月061プロへ資金やコネの支援を行う代わりに、061プロから二つの報酬を受け取るという契約を」
早苗「一つは、061プロの売り上げの3割。これがあるから061プロのアイドルのギャラは大分カットされていたらしいわ」
美嘉「だから061プロの時、あんだけ働かなきゃ家族を養いきれるの収入にならなかったんだ」
志希「ブラック企業ってレベルじゃないね...」
早苗「そしてもう一つは............」
所属アイドルの、カラダ
『!?』
早苗「061プロは支援を受ける代わりに、売れないアイドルに枕営業をさせていたの。891プロが色んなとこにコネを作るためのね」
早苗「実際に枕営業をさせられた子から聞いた、確かな情報よ」
美嘉「そんな...じゃあもしかしたらあたしも!」
早苗「もしあそこまで売れてなかったら....あまり考えたくないわね」
....もしかして、あの時のセリフ
【「そうだよ!あたし達お仕事もらうためにあそこまでしたのに、こんなしょーもない事で終わったら...」】※前スレChapter6参照
奏(あそこまでっていうのは、枕営業の事だったってわけね....)
P「待てよ、自殺じゃないかもしれないって、もしかして...061の社長は、その秘密を暴露しようとしたから、口封じで消されたって事か!?」
早苗「ここまでくると、それも有り得なく無いわね。あの自殺の捜査は上から妙な圧力がかかったり、遺書だけで自殺と断定されたり...兎に角不自然な事は多かった」
美嘉「そんな....そんな事って...」
早苗「......あと、その子から美嘉ちゃんに伝言を預かってるわ」
早苗「『061プロの時は酷い事言ってゴメン』、それと、『今は美嘉がアイドル頑張ってる姿見て毎日元気貰ってる』って」
美嘉「!!!」
早苗「美嘉ちゃん、ショックかもしれないけど、どうか気を落とさないで....」
美嘉「気を落とす?....大丈夫だよ、むしろすっごく燃えてきた!」
早苗「えっ?」
美嘉「だって、あたしは061時代の仲間に夢を託されたんだもん!こんな所でへこたれない!アタシに自分の夢を託してくれた皆の為に、アタシは絶対負けられない!」
美嘉「やってやろーじゃん!アイドルのてっぺんも、皆を苦しめた事件の真実も、全部まとめて掴み取ってやるんだから!」
ちひろ「次は私達ね。二人頑張ってくれたおかげで、無事帳簿のデータは入手できたわ。それで帳簿の中身なんだけど....ちょっとそこのPC借りるわね」
周子「どうぞどうぞー、パスワードは............だよ」
ちひろ「ありがとう。じゃあこれにUSBを刺して...」
周子「.......うわ、ファイルいっぱいある!」
ちひろ「891プロはかなり昔の分まで帳簿を残すからね。でも一番重要なのは....これよ」
周子「なになに...『子会社帳簿』?」
P「なんだそれ?」
ちひろ「とりあえず見てもらった方が早いわ...これよ」
全員が一斉にPCのモニターをのぞき込む
...えっ!?
奏「061プロ、666プロ、4989プロ...芸能事務所の名前が何十個も....」
P「芸能事務所だけじゃねぇ、養成所やテレビ局の名前まである...まさかこれって!?」
早苗「891プロと契約していた事務所との、資金のやり取り...!?」
ちひろ「私も見た時はまさかと思ったけど、早苗ちゃんが持ってきた情報を聞いて確信したわ」
ちひろ「061プロだけじゃない、891プロはいくつもの芸能関係の会社とと契約を交わしていた。支援をする代わりに、その見返りとして売り上げとアイドルを差し出させたり、テレビ局には仕事を斡旋してもらったり....」
P「でも、ここに書いてある事務所は891プロの子会社じゃない!全部独立した事務所のはずだぞ!?」
志希「だからこそ、気づかれなかったんじゃないかな?表向きは独立した芸能事務所だから、891プロとのつながりを疑われることはなかった」
P「な、成程......」
ちひろ「大事なとこはまだあるわ。この061プロとのやり取りのとこ、本来毎月この日に891プロから支援金が送られてるんだけど...」
P「061プロが倒産した月には入金されていない、この日はまだ061プロは残っていたはずなのに...
P「まさか、倒産する事を知ってたってのか!?」
周子「じゃあもしかして、あの時061プロの不正をリークしたのは891プロだったんじゃ!?」
奏「そういう事になるでしょうね....」
ちひろ「それに...倒産するまでは『あの子』のいた事務所とも同じ契約をしていたみたいね」
ベテトレ「やはり、あの男は知っていたんだな...あの子の枕営業について」
美嘉「あの男って?」
ベテトレ「今日891プロのプロデューサーに会ったんだが、その男は前にあの子のプロデューサーをやっていた男なんだ」
早苗「ちょっと待って、担当が枕営業したって騒がれたのに、またプロデューサーとして再就職できたの?しかも、891プロなんて大きな事務所に?」
ちひろ「普通はありえないでしょうね...あんなに騒がれたんですもの、担当プロデューサーだった彼も業界で信用を失ったはず......」
奏「......もしかしてその人、当時も891プロとグルだったんじゃないかしら?」
P「どういうことだ?」
奏「担当アイドルを売る代わりに、891プロで再就職できるように手配した。前の事務所より良い条件でね」
奏「そうでもないと、そのプロデューサーが891プロに再就職なんてできないはずよ」
ベテトレ「確かにそれなら、891プロでプロデューサーをやっていても不思議ではないな」
奏「担当アイドルを891に売る代わりに、108プロが倒産した後891プロで再就職できるように手配した。前の事務所より良い条件でね。」
奏「そうでもないとそのプロデューサーが891プロに再就職なんてできないはずよ」
ベテトレ「そうか、それならあの時の反応にも説明がつく!」
奏「そして、ここまでの根回しができるのは、相当の力を持つ立場.....それこそ、社長くらいしかいない」
周子「てことは、奏ちゃんの予想大当たりって事!?」
奏「IGには891プロも参戦する...そしてIG程の大舞台なら、いかに社長という大きな立場であろうと必ず見に来るはず」
奏「こうなったら、IGでとことん暴いてやろうじゃない...!」
891プロ、その本性を!!
to be continued.....
Chapter18終了したところで、今回はここまで―
2スレ目突入してすぐ黒幕の正体判明.....まぁ、最初からミステリー要素は重視していなかったので露骨に怪しい人だったと思いますが.......
それにしても、段々アイマス要素から遠ざかっているような気がしますね.....ゆるして
前スレを丸ごとまとめてくださったサイトがありましたので自分で読み返してみました。2時間かかりました
プロット書いてた時はこんなに長くなる予定じゃなかったんだけどなぁ......
総選挙始まりますね
今回のCGは未央あたりが有力そうですが、新アイドルが追加された直後だったりガチでボイス獲得狙いに来る層も多かったりで順位予想が難しい所です
それではChapter19、投下開始します
~~~ IG予選前日 ~~~
美嘉「というわけで、今日の『正気のサタデーナイト!』はここまで...と言いたいところだけど、実はまだあたし達LiPPSからの重大発表が残ってるよ!」
奏「明日、この国のアイドルの頂点を決めるアイドルの祭典、通称『IG』が始まることはみんな知ってると思うけど...なんとそのお祭りに、私達LiPPSも参戦するわ!!」
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!
周子「絶対、ファンの皆を楽しませてあげるから!皆あたし達の本気を見に来てねー!」
フレデリカ「あたし達はもちろん、他にも凄いアイドル達が一杯集まるんだー!だから、集まったアイドル全員でサイコーに素敵なステージをお届けするよ!」
志希「もし会場に来られないって子も、NHKや動画サイトで生放送されるから安心してね❤」
奏「それじゃあ最後にIGの前夜祭って事で、今から一曲歌いましょう!皆、準備はいい!?」
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!
奏「OK!LiPPSで、『お願い!シンデレラ』」
Chapter19「Start walking Cinderella Road!」
3月22日、IG予選開始日
ついに、この日がやって来た
奏「いよいよね...」
P「ああ....お前ら、覚悟はできてるか?」
周子「そんなもん、とっくの昔に出来てるよ!」
フレデリカ「トレーナーさんもプロデューサーも、今日の為に一杯頑張ってレッスンしてくれたもんね♪」
美嘉「おかげで技術も気合もばっちり!あとは、あたしに夢を託してくれたみんなの分まで突っ走るだけ!」
志希「知らない香りがいっぱい....志希ちゃん、トリップしちゃいそ~♪」
奏「まずは予選.......みんな!頂点を目指してまず一歩、その最初の一歩を全力で楽しみましょう!」
『オー!!!!』
予選開始の1時間前、私達の控室へとスタッフさんがブロックの組み分け表を持って来た
Aブロック Bブロック
アイドルの達人DX 和田プロ トライアドプリムス 010プロ
グランブルー騎空団 サイゲプロ グレイセス アスベルプロ
姫接続 サイゲプロ 祝儀心 ヘキサプロ
LiPPS 811プロ NO TITLE WESTプロ
Cブロック Dブロック
覇王エンジェルズ 真・最強プロ トリニティスターズ 010プロ
Venus 369プロ ワルキューレレジェンド マーベルプロ
Night Juels 456プロ 鉄拳ガールズ 三島プロ
不思議な桃娘 567プロ Project.Queen 891プロ
周子「これは....どうなんやろ?とりあえず全部聞いたことがあるアイドルなのは確かだけど」
美嘉「そりゃあ、IGに出れてる時点でAランクまで昇りつめたトップアイドルだからね。有名なところばっかだよ」
P「どこのブロックも、誰が勝ち上がるか予測がつかないような熾烈な争いになることは確かだが......優勝候補はばらけてるって感じかな」
フレデリカ「そうなの?」
P「巷の予想だとトラプリ、覇王エンジェルズ、トリニティスターズ、アイドルの達人DX辺りが優勝候補って意見が強い」
P「特に覇王エンジェル...あそこは本当に強い。所属事務所も数々のSランクアイドルを輩出してきた超名門だ。アイドル部門の実績だけなら間違いなく010や891も上回るだろうな...」
奏「トリニティスターズも強敵よ。加蓮曰く、010プロの大先輩で010の最強ユニット。自分たちでさえ事務所内の対抗オーディションでまだ一度も勝てたことがないって言ってたわ」
周子「ていうか、010プロって二組出てるんやね。あとあたしらのブロックのサイゲプロもか」
P「同じ事務所からは二組まで出場できるんだ。もちろん、ただでさえ倍率の高い切符を2枚手に入れることが出来ればだが」
美嘉「じゃあ二組出てる事務所は、それだけ実力の高い事務所だって事だね」
周子「010プロなら確かにそんだけの力があるだろうね。事務所811プロの10倍は大きいからなぁ...」
P「それにサイゲプロも010に匹敵するレベルの事務所だ。特にグッズの人気が妙に高くてな、サイゲプロのアイドルグッズの売れ行きは全ての芸能事務所の中でも一番いいんだとか」
P「だが...それ以上に厄介なのは優勝候補の一組、アイドルの達人DX.....あそこは恐らく今回の参加者で一番アイドル歴が長い、アイドルとしての経験値は間違いなくナンバーワンのユニットだ」
フレデリカ「つまり....みんな凄いって事だね!もちろん、あたし達も含めて!」
P「当然!LiPPSだって最高のアイドルユニットさ!」
奏「ところで、一つ気になるユニットがあるのだけど...」
P「....『Project.Queen』か」
奏「ええ、iMB事件の容疑者、891プロのアイドル....」
P「Project.Queenは...正直未知数だな。今までオーディションで当たったことはないし...でも、俺が891プロにいた頃は間違いなく無かったユニットだ。デビューのウワサを聞いたのははちょうど811プロを建てた時か...」
P「ただ、Project.QueenがAランクに上がるきっかけ.......まだBランクだった時に受けた特別オーディションでは、周りが全部格上のAランクアイドルだったのにも関わらずパーフェクトで合格したらしい....」
美嘉「Aランク相手にパーフェクト!?」
周子「ふーん...でもDブロックはトリニティスターズもいるんでしょ?案外予選であっさり負けちゃったりするんじゃないの?」
奏「どうでしょうね...未知数って事はそれだけ実力の予測がつかないということよ。少なくともこの場に建てる以上トップクラスのアイドルであることは間違いないわ」
奏「それに.......」
iMB事件の犯人の疑いがある891プロ....
もし本当に犯人なら、勝つために何をしてくるか分からない.......
P「....はい!一旦考えるのやめやめ!!」
奏「えっ?」
P「おまえら疑念なんて暗い気持ちを抱えてライブするつもりか?」
P「ステージに立ったらやるべきことはただ一つ、『全力で楽しんで、楽しませること!』その為に、暗い感情なんか必要ないだろ?今はただ、この最高のステージを楽しむことだけ考えようぜ!」
奏「...そうね!ごめんなさいプロデューサーさん、危うくステージで大恥かくところだったわ」
P「目ぇ醒めたんならよし!じゃあお前ら、今日はめいっぱい楽しんで、皆を楽しませて来い!」
『はーい!!』
Aブロックは全ブロックの中で最も早くライブが行われる、いわば祭りの入り口
しかし会場は、その入り口から既に大熱狂の渦を巻き起こしていた
プロデューサーの言ってた通り、先にライブを行った3つのユニットはその圧倒的なパフォーマンスで見事に観客達の心に大きな花火を打ち上げて見せた
特に優勝候補の一つアイドルの達人DXは、トップバッターというプレッシャーのかかる状況にもかかわらず、今だかつて一度も見たことない、異次元の様なパフォーマンスを見せ、逆に後続のアイドル達にプレッシャーを与えて見せた
今LiPPSの出番を待っている観客達も、心の中でAブロックの勝者は彼女達だと確信しているのかもしれない....
....でも、悪いわね
私達LiPPSは、逆境の時こそ燃えるアイドル達なの
どんな困難をもみんなで笑って乗り越える.....『アイドル』という道を、全力でを楽しんで駆け抜ける!
このブロックの主役は、私(あたし)達だ!!
奏「みんなー!この夢の様な祭典を、私達全員で!」
『全力で楽しんでいこう!!!』
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!
Aブロック 投票結果
アイドルの達人DX 344765票
グランブルー騎空団 276522票
姫接続 263551票
LiPPS 346012表
投票総数 1230850票
Aブロック本戦進出ユニット 『LiPPS』(811プロ)
~~~舞台裏~~~
LiPPS『やったーー!!!!!!!!!』
奏「プロデューサーさん、見ていてくれた!?」
P「もちろん!!これで本戦進出だ!」
美嘉「本戦...そうか、まだIGは始まったばかりだったね」
志希「まだまだ面白くなるって事?あたし、もう興奮し過ぎて飛んでいっちゃうかも!」
フレデリカ「それに、まだ今日のお祭りも終わってないよ♪この後の発表も楽しみ!みんなどんなパフォーマンスを見せてくれるんだろ?」
周子「ていうか、もうAブロックの結果出しちゃうんだね。なんか最後の最後で全ブロックまとめて発表するんかと思ってたわ」
P「集計と発表は観客とスタッフの休憩時間も兼ねてるんだよ。予選は10時間以上続くし、ぶっ続けで盛り上げ続けてたらどっちにしろ身が持たないからな」
周子「成程...ちゃんと考えられてるんだねぇ」
P「それと、ある人達からお前らにメッセージが届いてるぞ」
奏「ある人?」
早苗『みんな―!本戦進出おめでとー!!』
美嘉「早苗さん!見てくれてたの!?」
ベテトレ『私もいるぞ』
P「二人とも客席からお前らのライブを応援してくれていたんだ」
早苗『皆の晴れ舞台を見ないわけにはいかないもの!ばっちりチケット確保したわ!』
ベテトレ『ところで...塩見と宮本、お前たち途中一度振付けを間違えていたな?』
周フレ「「ギクッ!」」
ベテトレ『そして城ケ崎はテンポを走らせすぎだし、速水は動きに緩急が足りない、一ノ瀬は後半スタミナ切れして声が小さくなっていたな。これでは本戦で足元をすくわれるぞ』
美嘉「あ、あはは....」
奏「トレーナーさんはいつも通りみたいで、なんか安心するわね」
ベテトレ『....だが、あえて言おう。よくやった!』
『!!』
志希「と、トレーナーさんがデレたよ!?」
フレデリカ「これは激レア、SSRだねー!」
ベテトレ『.....予選が終わったら一ノ瀬と宮本だけ特別レッスンにするぞ?』
志希フレ「「えー!?」」
P「あははは!ベテトレさん照れるとポンコツっぽいですね!」
ベテトレ『ほう.....面白い事を言うなPは』
P「やっべ」
美嘉「なんか、ある意味いつも通りのオチだねっ★」
周子「ほんと、実家の様な安心感ってやつ?」
アナウンス『お集りの皆さまにお伝えします、30分後に予選Bブロックを開始します』
P「だってさ」
奏「私達もライブを見に行きましょうか、トライアドプリムスも出ることだしね」
フレデリカ「アタシ達関係者用のいい席で見れるんでしょー?役得だね!」
P「まあ、普段とは別の角度で見れるからそういう意味ではいい席かもな」
周子「じゃあ折角だし、この後の祭りも楽しんでいきましょか!」
次のブロックの審査を見に行こうと、廊下を歩いていく
すると....
トラプリP「ん...?あれは...」
奈緒「あっ!811プロの皆!」
凛「とりあえずお疲れさま、それと、本戦進出おめでとう」
美嘉「トラプリはこれから本番だよね?頑張って!」
奏「私達も客席から応援させてもらうわ」
加蓮「ほんと?じゃああたし達のステージ、ちゃんと目に焼き付けてもらわないとね!」
トラプリP「ところで、Pさん...」
P「...大丈夫です。もう、010を疑ってなんか無い。だから、もっとシャキッと晴れやかでいてください」
トラプリP「...はい!ああ、それと...」
P「?」
トラプリP「さっきのステージ、本当に素晴らしかったですが...アレが本気なら、本戦では私達が貰いますよ?本戦第一試合ではAとBの勝者が激突する...つまり、LiPPSとトライアドプリムスがぶつかるんですから」
P「......へぇ、言ってくれるじゃん。大口叩けるくらいには元気になったって事ですか」
トラプリP「アイドル達が頑張ってくれているのに、私が暗い顔するわけにはいきませんから。プロデューサーってそういうものでしょう?」
P「そりゃ違いねぇ! だが...もう勝利宣言とは大した自信ですね。Bブロックも強者揃いだ、ウチを本戦で倒す前に終わってくれるなよ?」
トラプリP「彼女らのステージを見ればわかりますよ。iMB事件も乗り越え、彼女たちはもっと強くなったいう事を!」
Bブロック 投票結果
トライアドプリムス 458959票
GO血寺一家 306879票
祝儀心 289045票
NO TITLE 389763票
投票総数 1444646票
Bブロック本戦進出ユニット 『トライアドプリムス』(010プロ)
奏「凄い...これが今のトライアドプリムス...」
P「確かに、言うだけはあったみたいだな......」
奏「45万票...私達の得票数より10万票も....」
トラプリPさんの言った通り、トライアドプリムスは最後に会った時とは比べ物にならない程魅力的になっていた
それは、トップバッターで会場のボルテージをすべて持って行ってしまう程に......
美嘉「投票総数も増えてる...あたし達Aブロックよりも注目されたって事か」
フレデリカ「みんな凄かったねー!アタシまだドキドキが収まらないよ!」
周子「フレちゃんはぶれないね...でも、ビビってる暇じゃないか」
P「そうだ、予選の票数では負けたが、まだ本戦が残ってる。必ずそこでリベンジしてやろう」
フレデリカ「何より、今は皆でライブを楽しむことが一番だよね!」
P「そういう事!今はただ、祭りを楽しむとしよう.....」
Bブロックが終わり、迎えたIG予選後半戦
そこで私達は、また自分たちの想定を大きく上回る衝撃を受けることになる
Cブロック 投票結果
覇王エンジェルズ 766666票
Venus 223495票
Night Juels 235215票
不思議な桃娘 286588票
投票総数 1401964票
Cブロック本戦進出ユニット 『覇王エンジェルズ』
P「流石Sランクアイドルユニット、『魔王エンジェルズ』の名を継ぐユニット......」
奏「文字通り、圧倒的だったわね...面白いじゃない!」
優勝候補筆頭『覇王エンジェルズ』は文字通り、圧倒的なパフォーマンスで他の3組を完全に抑えCブロックの勝者になった。
もちろん、その姿は私達に大きな衝撃を与えたわ
......でも、私達が一番驚いたのはここじゃない
最後のブロック、Dブロックだ
フレデリカ「いえい!いえい!♪」
志希「Fooooooooooooooo!!!!!!!」
観客『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!』
周子「志希ちゃんとフレちゃん、めっちゃノリノリやーん♪」
奏「そう言う周子もノリノリじゃない」
美嘉「ていうか、この場の全員みんなトリニティ―スターズに夢中だよ!流石010最強のユニットだね!」
Dブロックのトップバッター、010プロのトリニティスターズ
トラプリの先輩ユニットで、010最強と呼ばれるユニットである彼女達は、Bブロックでトラプリがやったように、ドームにいる全員の心を一瞬にして奪ってしまった
もちろん、私たちの心も......
これはもう、このブロックの勝者は決まってしまったかしら?
P(..............?)
その後の二組、ワルキューレレジェンドと鉄拳ガールズのライブもとても素晴らしかった
ただ、やはりトリニティスターズのパフォーマンスを見た後ではどうしても霞んで見えてしまった
観客の皆も、やはり最初より盛り上がりに欠けている気がした
やはり、トリニティスターズの勝利になりそうね......
私達は最後のユニットのライブを見る前から、そう確信していた
それが、間違いだった
Dブロック 投票結果
トリニティスターズ 655755票
ワルキューレレジェンド 102402票
鉄拳ガールズ 98340票
Project.Queen 775123票
投票総数 1631620票
Dブロック本戦進出者 Project.Queen
『Project.Queen』、あの891プロのアイドルユニット
彼女達は、このトリニティスターズ一色だった会場を、瞬く間に自分たちの色に塗り替えてしまった
......彼女達に疑いを持っていた、私達も含めて
祭りはまだ、始まったばかり
だが、確実に
アイドル業界を揺るがす大いなる嵐、その到来を告げていた
周子「これ、マジで.....?トリスタの65万票だって桁違いなのに...」
フレデリカ「でも、確かに凄い人達だったねー。ザ・アイドルって感じ?」
志希「この様子だと、特別オーディションで格上をなぎ倒したって噂も本当みたいだね...」
奏「...みんな、今はProject.Queenの事を考えるのはやめましょう。目の前のライバルに勝ててもいないのに先の試合のことを考えてもしょうがないわ。そんなんじゃトライアドプリムスに笑われるわよ?」
奏「それに、決勝で戦うのがProject.Queenとも限らないでしょ?」
美嘉「えっ...あ、そっか。覇王エンジェルが勝つかもしれないね」
奏「というか、僅差とはいえ得票数は覇王エンジェルズの方が多いもの。そっちの方が確率は高いわ」
奏「それにさっきプロデューサーさんも言ってたでしょ?ステージに立ったらやるべきことはただ一つ、全力で楽しんで、楽しませることよ。今からステージで本戦進出者インタビューがあるのに、そんな余計な感情を持っていちゃだめよ」
『!!』
P「そういう事だ。家に帰るまでが予選、びしっと決めていけよ?」
『ハーイ!!』
P(................まさか、な)
予選が終わった翌日、私達は本戦に向けて予選のライブを徹底的に見直し、それぞれトレーナーさんに指摘された弱点の克服するべく、一週間の合宿をする事になった
ただ、その合宿先が.....
奏「なんで、こんな山の中なの.....?」
美嘉「さ、寒い....高いところだから?」
ベテトレ「高地トレーニングというやつだ。本戦は今までのオーディションより、圧倒的に長く過酷.....お前らの今のスタミナじゃ、間違いなく最後まで踊りきれず倒れるだろう」
ベテトレだが、お前たちは今何よりも時間が足りない!だからこそ、この過酷な場所で技術もスタミナも一気につけてもらう!」
高地トレーニング...確かアスリートが本番前に体力をつけるためにやるトレーニングだっけ...?
酸素の薄い山の高い所でトレーニングすることで運動能力の急激な向上を図る過酷なものって聞いたけど....成程、確かにこれはキツイわね....
でも、今の自分を脱ぎ捨てて、一歩先の私達に生まれ変わるためなら!
ベテトレ「この試練も越えられんようならIG優勝どころか本戦第一試合にも勝てん!必ずついてこい!」
LiPPS『はい!』
ベテトレ「良い返事だ!それじゃあ始めるぞ!」
ベテトレさんの号令を合図に、地獄の特訓の日々が始まった
振付けを身体に染み付けるために何度も踊って、曲調に完璧に掴むために何度も歌い、自分たちをよりよく魅せるための工夫もみんなで考え、どんなプレッシャーの上でもバテないようスタミナとメンタルも徹底的に鍛えぬいたわ
過酷な環境に最初は皆倒れそうになっていたけど、三日も経つころにはみんな環境に慣れ初めて、自分たちが急激に成長していることを実感していた
そして..........
~~~IG本戦当日、控室前廊下~~~
奏「おはよう、トライアドプリムス。今日は最高の日ね」
加蓮「おはよう、LiPPS。でも、あんた達にとっては厄日かもね?」
凛「ついに、この時が来たね。準備は出来てる?」
周子「もちろん。そっちはどう?」
奈緒「良いか悪いかで言えば、最高って感じかな!」
フレデリカ「ホント?気が合うねー!」
志希「あたし達も、絶賛トリップ中~!」
奈緒「いやそれ、むしろ調子悪そうに聞こえるけど....」
美嘉「あはは...大丈夫だよ。あたし達今すっごく燃えてるから!」
奏「じゃあ、あの時の約束通り」
加蓮「アイドルの頂上を賭けて、戦おうか!」
『『勝つのは、私(あたし)達だ!』』
to be continued.....
Chapter19終了したところで、短いですが今回はここまで―
予選のユニット名はほとんどサイゲかバンナム産のゲームが元ネタです
今回はあっさり終わりましたが、次回からようやくIG編本番に突入します
久々にまともなライブ描写が書ける.........
すいません、Chapter19まだ投下し忘れてたシーンがありました
もうちょっとだけ続気を投下するので>>78の後に脳内補完しておいてください
~~~ 一方、会場内別の廊下 ~~~
P「えーっと、トイレトイレ....本番前にちゃんと行っとかないとな」
トラプリP「おや、811プロのプロデューサーさん」
ちひろ「P君、おはようございます」
P「トラプリのプロデューサーさん!それに、ちひろさんもいらしてたんですね!」
ちひろ「私も加蓮ちゃん達と奏ちゃん達のライブ、見たいですから!トラプリPさんにお願いして入れてもらいました」
トラプリP「ホントはこの辺、関係者しか入っちゃいけないんですけどね....私、ちひろさんには頭が上がらなくて」
P「あー、それ凄く分かります.....」
ちひろ「でも、ライブを見るときは舞台袖じゃなくてちゃんと客席で見ますよ。関係者用のですけど」
P「相変わらずちゃっかりしてますね......」
トラプリP「それで、調子のほどはどうですか?」
P「ばっちりですよ。今日の為に山籠もりまでしましたからね!」
トラプリP「山籠もり.....?仙人デビューでもさせる気ですか?」
P「いやー、なんか高地トレーニングとかなんとか.....とにかく!予選の時とは比べ物にならないって事だけは断言できます!」
トラプリP「そうですか....なら、是非ステージでその力を見せてください。その上で、トライアドプリムスが叩き潰します!」
P「望むところです!」
ちひろ「二人とも、そろそろ時間もなくなってきましたよ。早く皆のところに行ってあげないと」
トラプリP「そうですね。ではPさん、私達はこれで」
P「はい、ではまた」
ちひろさんとトラプリのプロデューサーが、横を通り過ぎていく
その刹那、確かにちひろさん俺の耳元で小さく囁いた
ちひろ「社長が、来ているわ」
P「えっ?」
社長....おっちゃんが、この会場に来ている
確かにそう言い残して、去っていった
P「おっちゃん......」
P「.....いや、今はトラプリとの対決に集中しよう。時間もないし」
あと、結局トイレいけてないし!
司会「会場にお集りの皆さま!遂にに、遂にやってまいりました!『IDOL OF GRATEST』本戦第一試合!」
司会「誰にも予想が付かないこの祭りの行方、私達全員で見届けていきましょう!」
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!
周子「おー、会場あったまってるねー」
フレデリカ「すごい....みんな、みんなアタシ達を待っててくれてるんだね!!」
志希「こんなの、予測なんてつけようがない。やっぱりアイドルって、サイッコーに面白いね!」
美嘉「じゃあ熱くなってきたファンの心、もっともっと燃え上がらせに行こうか!」
奏「ええ!何年たっても今日という日が忘れられなくなるように、最高に楽しませてあげましょう!」
P「よし!じゃあリーダー、号令頼むぞ!」
奏「分かったわ。それじゃあみんな、肩を組んで」
あのとき.....初めての811プロのライブの時のように、みんなで肩を組み円を作る
ああ、感じる......
今、私達の心が、絆が!確かに一つに繋がっている....!
私達はここにいると、皆で一緒に、こんなに高いところまで来たんだと実感できる!
これから皆で、最高のステージを作りあげられるんだって、確かに信じられる!!
奏「....いくわよ? 『811プローーーーーーー!!ファイトーーーーーーーーーーーー!!!!』」
LiPPS『オーーー!!!!!!』
to be continued.....
今度こそChapte19終了です。以後こういう事が無いように気を付けます
時間が取れそうにないので今日の更新はお休みします
あきらちゃんも実装されたし、明日明後日辺りでりあむも来るんですかね?
Chapter20 投下開始していきます
会場は既に熱気の台風
全ての人がトップアイドル同士の魂のぶつかり合いを今か今かと待ち望んでいる
でも、ちょっとだけ待ってね?
私達がステージに立つ前に、一つやっておかなといけない事があるの
司会「えーみなさん、ライブを開始する前に一つやっておかなきゃならないことがありますよね?....えっ?前置きはいいから早くやれ?OK!皆さんの興奮が伝わってきました!」
司会「それでは早速まいりましょう!第一審査の先攻を決める運命のコイントス!」
.....来たっ!
司会がパチンと指を鳴らすと、モニターに大きなコインの映像が映し出され、掛け声とともに打ち上がる
まず最初、ここがこの先の流れを左右する第一の分岐点!
~~~審査開始数十分前、控室~~~
P「宣戦布告は済ませてきたか?」
奏「もちろん。もうステージに立つのが待ちきれないわ」
P「そいつは重畳。だが、一応本戦のルールをもう一度確認しておこう」
周子「本戦は予選とまたルールが違うんだったよね?」
P「ああ。ざっくりまとめるとこうだな」
①.本戦の審査は第一審査~第三審査の計3回行われる
②.各審査の初めにランダムでその審査での発表順(先攻後攻)が決まる
③.先攻第一審査→後攻第1審査→先攻第2審査........後攻第3審査と各ユニット交互に発表が行われる
④.審査一回ごとに投票が行われ、全審査終了時に3つの審査の合計票数が高いほうが勝ち抜けとなる(各審査毎に票数は公表される)
P「こんな所か......何か質問はあるか?」
フレデリカ「はーい!」
P「なんだフレデリカ?」
フレデリカ「②の各審査で先攻後攻を決める....って、イマイチよくわかりません!」
P「あー、ここ複雑だよな.......ざっくり言うと、第一審査が先攻だからってそれ以降も絶対先攻!とは限らないって事だ」
P「もしかしたら全部先攻になるかもしれないし、全部後攻かもしれない。はたまた先攻→後攻→後攻みたいにごちゃごちゃになるかもしれないって事」
フレデリカ「........???????????」
P「....つまり、各審査開始まで自分と相手、どっちが先に発表するかは分からないって事だ」
フレデリカ「....なるほどねー!完全に理解した!」
美嘉「ホントに?」
フレデリカ「分かんなくても大丈夫そうって事は分かったよ♪」
美嘉「ダメじゃん!」
P「いやいやフレデリカ、結構発表順は重要だぞ?先攻か後攻かでそれぞれメリットとデメリットがあるからな」
奏「例えば?」
P「まず、先攻なら観客の頭の中がまっさらな内にアピールできるから印象に残りやすい。ついでに後攻にプレッシャーもかけれる。だが逆に観客のテンションが上がりきってない状態から始めないといけない分盛り上げるのにやや苦労するのと、後攻が自分たちの与えたインパクトを越えてくるとそのまま観客の心が後攻に奪われやすいのがデメリットだ」
P「それに対して後攻は、先に先攻のステージを見て色々と分析し、対策が練れる猶予がある。それに観客が予め温まってる状況だから観客をそのまま自分たちのノリに乗せやすい。だが、先攻よりプレッシャーのかかる状況になりやすいのと、観客の頭の中が先攻のアピールでいっぱいになってる状態でアピールする分、観客から求められるハードルが上がるデメリットがある」
奏「つまり、どっちになってもいいように予め作戦を立てとかなきゃなきゃいけないって事ね。審査開始までどっちになるか分からない以上、発表されてから作戦を立てることは出来ないもの。」
P「まっ、そういう事だ」
志希「ちなみにー、プロデューサー的には『どっちの方がお得!』.....みたいな事はあるの?」
P「うーん....どっちに転ぼうと一長一短だからなんともいえんな」
P「だが、少なくとも第一審査は........」
奏(お願い、先攻で!!)
カラァン、カラァン、カラン、カン、カン............
小気味良い音を立ててコインが跳ねる
祈りが届いたのか、コインはLiPPSが描かれた面を上にして落ちた
それは、第一審査の先攻がLiPPSに決まったことを示すサイン!
周子「よしっ!」
奏「第一審査の先攻は、トップバッターである故に観客に与えられる印象も強くなりやすい....最初の風はこっちに吹いてくれたわね」
美嘉「その分プレッシャーもかかる状況だよ.....でも、あたし達なら大丈夫だよね!」
奏「当然よ!折角掴んだチャンスだもの、最初からスパートかけて行くわよ!!」
司会「それでは登場していただきましょう!第一審査先攻、『LiPPS』の皆さんです!」
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
『みんなー!早速私達が皆の心を空の果てまで引っ張っちゃうから!覚悟してね!』
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
奈緒「先攻はとられちまったか....LiPPSもしっかり観客の心つかんでるし、第一審査は厳しそうだな」
凛「でも、まだ序盤も序盤。全然巻き返せるよ」
加蓮「そうだね。後から巻き返せるように今のうちに作戦を確認しておこう」
奈緒「おっけー!後攻だからプランBだよな?」
P「ああ、第一審査はとりあえず.......」
第一審査 結果
LiPPS 782543票(累計782543票)
トライアドプリムス 679292票(累計679292票)
周子「よしっ!上手くリード出来た!」
フレデリカ「プロデューサーの言ってた通り、皆の心にドカーンと残ったんだね!みなの者、この勢いのまま次の審査も張り切って行こー!」
P「........いや、ちょっと待ってくれ。想定より差が開きすぎてる、これは.....」
志希「プロデューサー、多分その予想あたってるよ」
美嘉「どういうこと?」
志希「さっきの審査、トライアドプリムスは全力じゃなかった。多分、第一審査で有利な先攻を取られたから体力を温存したんだと思う」
奏「後半での巻き返しを狙っているってことね....」
志希「そういう事になるだろうねー。だから、第2審査で飛ばしすぎるのはちょっとマズイかも」
周子「なんで?第2審査で巻き返せないくらい差をつけた方がいいんじゃないの?」
P「周子、お前さっき全力出したばっかなのに、第2審査も全力だして最後まで体力持つか?」
周子「そりゃあ.....ちょっと厳しいかな。第2審査はギリギリ持たせられるかもしれないけど、次の審査は無理だ」
P「だろ?その反面、向こうはさっき温存したおかげで第2審査は多少無茶ができる。全力で突き放そうとしてもそこまで差は広げられないだろう」
P「それにもし第2審査の間は大丈夫でも、ここで体力を使いきった状態で第3審査の後攻.......大トリを取られようもんなら負け一直線だぞ」
奏「そうね。第3審査の後攻は最後の最後である分、より大きなインパクトを与えやすい。残った体力に差がある状態で第3審査の後攻を取られれば、まず逆転されると考えた方がいいでしょうね」
P「だが、だからと言って折角広げたリードを必要以上に詰められるのもマズイよな.....」
P「......周子、第2審査の間だけなら、全力を出しても体力は持つか?」
周子「多分大丈夫....ううん、絶対持たせて見せる」
P「よし、じゃあ立ち位置を変えよう。周子、お前がセンターに入れ」
周子「センター?あたしが?」
P「ああ。お前にはなるべく差を縮められない様に、ちょっと無茶をしてもらう」
周子「......なるほどねー、皆のの体力を温存するために、あたしに働けって事か。よし、任せて!」
P「頼むぞ周子。そして美嘉、お前は前に出て周子のフォローを頼む。ウチで一番スタミナがあるのはお前だからな、二人でリードを何とか死守してくれ」
美嘉「オッケー!」
P「そして奏、志希、フレデリカは後ろに下がって第3審査の為に体力を温存するんだ、いいな?」
奏「分かったわ」
志希「周子ちゃんに美嘉ちゃん、頑張ってね!」
フレデリカ「その代わり、第3審査はアタシ達にお任せ♪」
周子「うん!あたしと美嘉ちゃんでしっかり繋いであげるから、第3審査でぬからないでね?」
奏「もちろん!最高のステージにして見せるわ!」
P「よし!じゃあお前ら、第2審査も楽しんで来い!」
続く第2審査はトライアドプリムスが先攻、LiPPSが後攻でスタートした
そして.......
第二審査 結果
LiPPS 768365票(累計1550908票)
トライアドプリムス 818650票(累計1497942票)
凛「第2審査は勝てたけど.....」
奈緒「差は10万から6万...大体半分いかないくらいかー。もうちょっと行けると思ったんだけどな」
トラプリP「こっちが後半の巻き返しを狙ってるのを読んで、第2審査は温存しに来ると思ってたからな。その隙をついて一気に縮めれると思ったんだが....成程、第2審査と第3審査で力を分けてきたか」
加蓮「周子と美嘉を前に出してリードを保ちつつ残りのメンバーの体力を温存する....面白いことしてくれるじゃん」
加蓮「.......でも!」
モニターにでかでかと映しだされた、トライドプリムスの描かれたコイン
それはようやく、ステージの風向きがあたし達に回ったことを告げた
加蓮「最後の最後で来たチャンス.......絶対、ものにして見せる!!」
トラプリ『勝つのはあたし(私)達だ!!』
周子「ハァ.....ハァ.....!」
美嘉「後攻.....取られちゃったね.....」
P「クソッ、流れが向こうに行っちまったか」
奏「でも、周子と美嘉のおかげでかなりリードを保つことができたわ。まだ勝機はちゃんと残ってる」
志希「じゃあ、今度はあたし達が頑張らなきゃね!」
フレデリカ「あたし達にお任せ―!」
周子「ゴメン3人とも、頼んだよ」
奏「ええ、後は私たちに任せて。
周子と美嘉が繋いでくれたバトン、決して無駄にはしない!
第3審査、先攻となったLiPPSは、先の審査で後ろに下がっていた3人がメインとなってアピールしている
体力を温存した甲斐あってか、前に出ている3人のパフォーマンスはクライマックスに相応しい、最高の出来だ
観客達は次々と彼女達に魅了されて、ボルテージもすでに昇るところまで昇り詰めている
メインにするアイドルを第2審査と歳3審査で分ける....向こうのプロデューサーも、土壇場でなかなか良い作戦を思い付いたものだ
だが......
トラプリP「811プロ......貴方たちは一つだけミスを犯した」
P「クソッ!ダメだ、これじゃ足りないッ....!!」
アイドルユニットというのは人数が多い分インパクトも強くなるが、その分全体のバランスを取るのが難しくもなる
一人でも崩れてしまえば、なし崩しに全員の調子が崩壊してしまう
体力を温存させた奏達はしっかりと100%のパフォーマンスが出来ている。だが周子と美嘉は限界が近い!
LiPPSは元々5人のユニット。もしそのうち二人のスタミナが尽きて完全にバテてしまったら....
いや、そもそも5人がかりでようやく3人のトライアドプリムスと互角だったんだ
全員で全力を出してぶつかりに行かなければ、流れを完全に持っていかれちまう..........!
クソッ!完全に俺の作戦ミスだ!
やはり、リードを捨ててでも第2審査は温存させるべきだった.....!
P(.....だが後悔しても、俺に出来るのは祈ることだけ......)
頑張れ『LiPPS』......!!
.....とか思ってるんやろうなぁ、Pさん
そりゃあ、確かに凄くキツイよ。心臓バクバク言ってるし、四肢はもう気合で動かしてるって感じ
今にぶっ倒れてもおかしくないかも
....でも、大丈夫
3人が約束通り頑張ってくれたおかげで、あたしも美嘉ちゃんも、ギリギリ曲の終わりまで体力を残すことができた
本当に少しだけ、雀の涙くらいの体力だけど、このクライマックスで最後の賭けをするには、十分すぎる体力!
美嘉ちゃんも準備万端みたいやね!
それじゃあ、行くよ!
周子&美嘉(あたし達の全力を、ここでぶっ放す!!)
~~~数日前、合宿中~~~
青木「来たな、二人とも」
美嘉「トレーナーさん、なんであたし達だけ呼び出したの?」
周子「あたしだけならなんかお叱りかもって思ったんだけどねー」
青木「別に説教するわけじゃない、むしろ先ほどのお前ら二人のダンス技術を見込んで話がある」
周子「話って?」
青木「IG本戦、どのユニットもトップレベルのアイドル達だ。そんな相手に、ただただ真っ向勝負を挑むだけじゃ勝つのは難しいだろう。必ず、強敵と戦うための確かな武器が必要になるだろう」
周子「武器?」
青木「言ってしまえば『必殺技』というやつだ。それも、観客の度肝を抜いて、一気に心に深く刻み込まれるような派手なものがな」
青木「だから、お前たちにその必殺技を伝授する」
美嘉「必殺技....口に出すとちょっと恥ずかしいけど、なんだかカッコイイじゃん!」
青木「まずは一度私がやって見せよう。いくぞ......」
青木「....っと!こんな感じだ」
美嘉「す、凄い.......!」
周子「青木さん、なんで今までそんな凄い技隠してたん!?」
青木「そりゃあ隠すさ、この技は生半可な努力で習得できるもんじゃない。それに、もし本番でこの技を失敗すれば大ケガするかもしれない」
青木「それでも....これを習得する覚悟はあるか?」
周子「....青木さんは、あたしたちなら無理じゃないと思ったから、これを見せたんだよね」
青木「ああ、だがとんでもない無茶振りではある自覚はある.....残り数日でこれを身につけるには、文字通り地獄の特訓を受けてもらうことになるだろう」
周子「そっか...なら、美嘉ちゃん!」
美嘉「そうだね、周子ちゃん!」
周子&美嘉『やってやるしかないよね!』
トラプリP(バックの二人が、前へ出始めた!?)
P(二人とも、もう限界なんて超えてるはず....一体なにする気だ!?)
周子(正直、100%成功させられるわけじゃない)
美嘉(でも、ここで決めずにトップアイドルなんて名乗れない!だから!)
周子&美嘉(絶対、決めて見せる!!)
蝶が、舞い飛んだ
ステージに立つ私達、裏で働くプロデューサーさんとスタッフ達、次のステージを控えているアイドル達
そして、ドームに隙間なく敷き詰められた観客達
この空間に存在する数万の目が一斉に奪われる
今、この世界は、二人の蝶に支配されていた
P「あいつら、いつの間にあんなバック転ができるように....いや、あれはただのバク転じゃねぇ....」
トラプリP(バック転....それ自体はアイドルのパフォーマンスでもそう珍しいものでもない。身体能力に自信があるアイドルなら、かなりの割合がダンスに取り入れている)
トラプリP(だが....あそこまで豪快且つ美しい物を、しかもそれを三連続でやったアイドルは、おそらく今地球上で彼女たちだけだろう.....)
トラプリP(あれ程の技、もちろん百発百中ではないはず。しかも失敗すれば大ケガに繋がる....実行するのにはとんでもない勇気が必要だろう。本番で、しかもクライマックスというプレッシャーのかかる状態では特に)
.......これまでか
加蓮「プロデューサーさん、なーに暗い顔してるの」
トラプリP「えっ!?ああ、すまない。そんなに暗い顔してたか?」
加蓮「うん、すっごい暗い顔してた」
奈緒「まあ、あんなの見せられちゃ意気消沈するのも無理は無いかもしれないけどさ。次はあたし達がステージに立つんだぞ?」
凛「だから、プロデューサーもそんな落ち込まないで。ちゃんと笑顔で送りだしてよ。まだ負けが決まったわけじゃないんだからさ」
トラプリP「お前ら....大丈夫なのか?」
加蓮「なぁに?あたし達がすっかりビビったと思っちゃった?」
加蓮「....大丈夫、貴方が育てたアイドルだよ。大事なことはちゃんとわかってる。ステージに立てば、私達がやることはただ一つ!」
トラプリ『皆に、最高のステージを届ける事!』
トラプリP「!!!」
トラプリP「そうか、そうだよな....」
加蓮「だからプロデューサー......ちゃんと、あたし達を送り出して。プロデューサーに頑張れって言ってもらえれば、どんな逆風に吹かれたって、きっと輝けるから.....!」
トラプリP「そうか....なら、頑張って来い」
トラプリP「トライアドプリムス!ファンの皆が、ステージでお前らを待っている!全力で楽しませて来い!」
トラプリ『うん!』
プロデューサー.....行ってきます!!!
~~~~~ステージ裏~~~~~~
P「みんなお帰り!本当にお疲れさま!」
周子「はぁ....はぁ....Pさん、あたし達、やったよ.....」
美嘉「どう、だった....?あたし達、カッコよかった....?」
P「...ああ!最高だった!今日のMVPは間違いなくお前たちだ!」
奏「ステージに立っていた私達も、貴方たちに目を奪われたわ.....二人とも、本当に凄かったわよ」
周子「そっか.....よかっ、た....」フラッ
美嘉「でも、ちょっともう限界かな...」バタッ
フレデリカ「わっ!二人とも大丈夫?」
志希「明らかにオーバーワークだね、ちょっと控室で休みにいこうか」
周子「そうする....ごめん、誰か肩貸して...ちょっとまとも歩けそうにない」
美嘉「あたしもー....でも、全部出し切ったって気持ち...!」
P「じゃあ俺が控室まで連れてくよ。ほら二人とも、肩に腕まわして.」
奏「あら、プロデューサーさんったら両手に花ね♪」
美嘉「あたし達のファンが見たら刺されちゃうかもしれないよー?」
周子「あららー、Pさん大ピンチやねー♪」
P「こんな時までからかうな......でも」
二人とも、本当にお疲れさま.....
最高に、カッコよかったぞ......!
司会「いやー、本当に白熱した戦いでした!両者共に、最後まで一歩も譲らない激戦.......どちらが勝ったのか予測がついている者は誰一人いないでしょう!」
司会「しかし、たった今集計が終わりました!ついに第一試合の勝者が決まります!皆さま、心の準備はいいですか!?」
P(やれることはやった....周子と美嘉の最後の大技のおかげで、大分観客の心を持って行けたはず....だが、トラプリの最後のパフォーマンスも負けてなかった。むしろ今まで見た中で最高の物だった!)
P(大トリなのも相まって、かなり強く観客に印象を残された....逆転されていてもおかしくないインパクトだったが.....頼む!)
司会「それでは発表します!本戦第一試合を制し、決勝へと駒を進めたのは.....
第三審査 結果
LiPPS 918754票(累計2469662票)
トライアドプリムス 901515票(累計2399457票)
勝者 LiPPS(811プロ)
P「かっ.....た....?」
P「みんな!俺たちの勝ちだ!」
『やったあああああああああ!!!』
凛「完敗、だね」
トラプリP「すまない、俺の采配ミスだ....第一審査で、力を温存させすぎた.....」
奈緒「Pさんのせいじゃねぇよ。あたし達は全員で全力を出してぶつかって、それでも負けた。だから、誰のせいとかじゃないって」
トラプリP「奈緒.......」
加蓮「それに、まだあたし達のアイドルの道が終わったわけじゃない。むしろ、これからまだまだ続いてくんだから」
加蓮「だから....次は勝てるように、これから頑張ろ?泣いてる暇なんて.....ゴメン、やっぱ悔しい」
凛「あはは...加蓮ったら、涙、我慢できてないよ....?」
奈緒「そう言う凛もだろ....ていうか、あたしもか。Pさん、ちょっと胸貸してくれるか?」
トラプリP「....ああ、今は泣いていい。泣くだけ泣いたら、また次のステージへ、皆で歩き出そう」
トラプリ『うん....!』
加蓮(LiPPS.....あたし達に勝ったんだから....絶対、優勝してよね!)
勝負である以上、必ず勝者と敗者が分かれる
だが、敗者になれば終わりというわけでは無い
むしろ、どれだけの屈辱を味わおうと、どれだけ不格好に泣くことになろうと
それでも立ち上がり、次に繋げようとする事こそ、人間として成長した証なのだ
そして.....
それをいつだって、何度だって笑顔で前を向いて出来るからこそ、『アイドル』は美しいのだろう
奏「私達が、決勝進出.....」
美嘉「あはは......なんか、夢みたいだね」
志希「夢かどうか試してみる?いいものあるよ❤」
美嘉「いや、なんかやばそうだからやめとく....」
フレデリカ「んー.....!ほっぺつねって痛いって事は、現実だね!」
周子「そういや、決勝の相手はどうなるんやろ?」
P「次の第2試合で勝った方と、1週間後に決勝で戦うことになるな。そろそろ始まるし見に行くか?」
奏「そうね、次の相手がどんなアイドルか、しっかりこの目に焼き付けておきましょう」
人々の夢を乗せて、踊り、魂を輝かせるアイドルのステージ
IGという特別な舞台で、私達は他の何に代えることもできないまばゆい光を見る......
はずだった
鳴動するステージで私達を待っていたのは、光り輝く夢ではなく
底が見えなく程暗く、あまりにも残酷な悪意が、大口を開けて待っていたのだ
スタッフ1「おい!早く救急車呼べ!」
スタッフ2「くそっ!なんでこんなことに!」
奏「そんな.....」
P「おい....おいおいおいおい!一体どういう事だよ!」
覇王エンジェルズ、転落事故により棄権
よって第2試合の勝者は、そして、私達が決勝で戦う相手は.....
奏(891プロ所属、『Project,Queen』.........!)
夢のドームに吹き荒れる嵐は、未だ止まない
でも、全ての因縁に決着を付けるその瞬間は、もう目の前に迫っている
物語がエンドロールへ近づいていく音を、私は確かに感じていた......
to be continued......
Chapter20終了したところで、今回はここまでー
ついに最後の舞台.....ですが案の定長くなってしまい、執筆が難航しております
あと4話(とエンディング)程で終わる予定ですが、どこかで一度時間を開けさせていただくかもしれません
りあむちゃんデレステ追加まだ?
Chapter21、投下開始します
最初に異変があったのは、第一審査後攻、覇王エンジェルズのLIVE開始時
彼女達の歌がサビに突入するその瞬間、急に音楽が途切れた
全員が動揺するのも束の間、今度は証明が落ち、ドームは闇黒と静寂に包まれた
それでも、覇王エンジェルズは歌う事を辞めなかった
唐突に訪れた静寂に負ける事なく歌い続け、誰の目にも見えない暗闇の中でも、自分達がまだ舞台で踊り続けている事を、自分たちの存在を必死にアピールしていた
どんなに連続してアクシデントが起きようと、彼女達は自分たちの勝利を疑わなかった
もう、流石今大会最大の優勝候補としか言いようがない。本当にとてつもない精神力だった
だが、今回に至ってはむしろ、そこで折れていた方が良かったのかもしれない
美しい歌声と力強いステップの音の中から、微かな悲鳴が俺の耳に飛び込んできたその刹那、照明が復旧し、舞台は光を取り戻した
だが、照らされたステージの上からは、数秒前まで確かにそこにいたはずの少女が消えていた
代わりに現れていた大穴を目にして、察する
あの悲鳴の正体は、あの穴の下に落ちた少女が発したものだったのだと.......
美嘉「プロデューサー!一体何が起こったの!?」
P「セリが....セリが落ちてる....あの穴に落ちたんだ!」
志希「セリって、迫?人や道具を舞台から上げたり下げたりするあれ?」
奏「......本当ね。確かにステージの真ん中、穴が開いているわ。ステージが始まったときには、あんな穴無かったのに!」
フレデリカ「それより落ちた子は!?落ちた子は大丈夫なの!?」
フレデリカの問いかけに答えるかの様に場内アナウンスが鳴り響く
あまりにも冷たい機械越しの音声が、無情にも最悪の答えを語りだす
『会場にお集りの皆さま、誠に申し訳ございません。ただいまの事故で負傷者が出た為、IG本戦第2試合、及び3位決定戦はここで中止とさせて頂きます』
『また、覇王エンジェルズ棄権の為、決勝進出は『Project,Queen』、3位決定戦は『トライアドプリムス』の不戦勝となります』
観客A「ふざけんなー!!」
観客B「なんでこんな事故が起きるんだよ!!」
警備員1「申し訳ございません、現場検証を行うため関係者以外はドームから退出してくださーい!」
観客C「なんだと!?」
警備員2「皆さん落ち着いて!暴れないでください!」
警備員3「係員の誘導に従ってドームの外に....誰かー!応援をよこしてくれー!?」
奏「皆、パニックになってるわね....」
フレデリカ「そんな.....こんなのってないよ!こんなんじゃ、みんな笑顔になれないよ!」
周子「Pさん、どうにかなんないの?落ちた子のケガが治るまで延期とかさ」
P「無理言うな、俺にそこまでできる力はねえよ。それに、どっちみち大会規定で仕切り直しは無しって決まってる」
P「まあ、それを認めてしまうと、不利になったらわざと事故を起こしてやり直せちまうからな........」
周子「それはそうだけど....でも、こんなの納得いかないよ」
ちひろ「みんな、無事!?」
美嘉「ちひろさん!」
ちひろ「会場で事故が起きたって聞いたから、まさか皆が巻き込まれたんじゃと思って飛んできたんだけど....無事なようね」
フレデリカ「アタシ達は無事だけど、覇王エンジェルズが!」
ちひろ「さっき館内放送で聞いたわ....加蓮ちゃん達も怒ってた、『不戦勝なんて納得いかない』って」
ちひろ「まさか、こんなことになるなんて......」
奏「でも、偶然音響が落ちて、偶然証明も落ちて、偶然セリも下がってた.....こんな偶然、一度に3つも起きるはずないわ。特にセリは人の手がないと動かない、まず間違いなく人為的に引き起こされた物よ」
美嘉「その犯人って、やっぱり......」
ちひろ「...........」
???「なんだかお取込み中のところ悪いのだが、君たちがLiPPSかね?」
......!!!
この男は!
周子「んー?おじさん誰ー?」
奏「周子!そいつに近づいてはダメ!」
周子「えっ?」
P「.....おっちゃん」
周子「!!」
志希「この悪意のこもった匂い......奏ちゃん、この人がそうなんだね?」
奏「ええ、この男が.......」
奏「891プロ社長、屋久井 清!」
美嘉「この人が、全ての元凶.......!」
屋久井「元凶?一体何の事かな?私はただ、決勝戦の相手に挨拶に来ただけだよ」
奏「とぼけないで!さっきの事故、貴方が仕組んだことでしょう!?」
奏「iMB事件だってそう、今芸能界を覆っている闇....全ての糸をその裏で操っていたのはあなたでしょう!?」
ちひろ「社長、891プロの帳簿、調べさせてもらいました.....『子会社』の事も」
ちひろ「だから正直、今私達はものすごくあなたを疑っています。なにか、釈明はありますか?」
屋久井「おやおや二人とも、前に会った時に比べて随分敵意むき出しじゃないか。一体どうしたんだね?」
P「おっちゃん、俺からも一つ聞かせてくれ.......予選の時から、どうしても気になってたことがあるんだ」
屋久井「何かね?」
P「予選のトリスタの曲聞いてるとな、なんか違和感を感じたんだよ。前に聞いたときと何かが違うって思ったんだ。まさかとは思ったけど、一応あの後当日録画したライブの音源とCDの音源、比べてみたんだ」
P「......曲の速さが、わずかに早くいじられていた。そんな訳ないと何度も確認した、でも、やっぱり予選の音源の方が、歌い終わりが数秒早いんだ!」
P「たった数秒.....それだけでも、ステージに立っていた本人たちには致命的だ.....そしてそんな妨害をやるのは、同じDブロックでぶつかった奴しかいない.....」
屋久井「............」
P「なあおっちゃん.....あんたが、やったのか?」
屋久井「P君.....相変わらず君は頭が悪いな」
P「!.....そ、そうだよな!おっちゃんがそんなことするはず」
屋久井「違うよ」
P「えっ?」
屋久井「今になって、やっと気づいたのかって事だよ」
P「は........?」
屋久井「いやー、昔から馬鹿だとは思っていたが、まさかここまで救いようが無い程だったとはな」
P「嘘....嘘だろ?だって、俺はあんたを、あんたを信じてたんだぞ!?あんなに優しかったおっちゃんがそんなことするはずないって!」
P「なのに......なんでだ!なんで俺を裏切った!?」
屋久井「裏切ったとは心外だな、君が勝手な信頼をしていただけだろう。それに、先に裏切ったのは君じゃないか」
P「俺が、裏切った.....?」
屋久井「だってそうだろう?私は君を信じていたのだから。君ならきっと、891プロが芸能界を支配したときに、その象徴となってくれるだろうと。だから資金もコネもキミの為に全部用意した。我が社の総力を挙げて君を売り出していたんだ」
屋久井「なのに、君はたった一人のガキに心奪われて、私もちひろ君も裏切ったじゃないか。分かってるかね?君はあの子との密会を週刊誌にすっぱ抜かれて、危うく大スキャンダルになる所だったんだよ?」
P「それは.....」
屋久井「でもねP君、私はそれでも君の事を許すつもりだった.....だから、写真を持ちこんできた出版社と取引したんだよ」
奏「その、取引というのは......!」
屋久井「なんだ、気づいてるようだね」
屋久井「お察しの通り、あのガキを売ってやったのだよ。P君のスキャンダルを握りつぶしたうえで、あのガキが二度とP君にまとわりつかない様にな」
P「売っ.....た?あの子を......?」
屋久井「ああ、キミは馬鹿だからしっかり言わないと分からないかい?」
屋久井「あのガキは、私が殺したという事だよ!!」
P「そん....な.....」
屋久井「あのガキの所属事務所は我が社の傘下だったからな、少し圧力をかけてやれば簡単に済んだよ。担当プロデューサーもちょっといい条件で引き抜いてやると言ったら、快く自分のアイドルを売り出してくれた。しかも、かなりの『おまけ』つきでな」
屋久井「私もP君の目を覚まさせてやろうと、徹底的に潰してやったよ。随分ムカつかせてくれたから、少し虐めさせてもらった。いやー、あの時は年甲斐もなくハッスルしてしまったよ!」
屋久井「犯されてる間ずっと『師匠、師匠』と何度も君を呼び続けていてね!おかしなもんだよ、彼女の穴に突っ込んでいたのは君じゃなくて、歳食った汚いおっさんだったというのに!」
周子「最っ低.....!」
屋久井「最低?むしろ感謝してほしいくらいだよ。夢を見ることしか知らなかった哀れなガキに、しっかり現実というものを教え込んでやったのだから!」
美嘉「....とりあえず、あんたがとんでもないゲスって事はよくわかったよ」
美嘉「でも、どんな理由があろうと自殺まで追い込む必要はなかったでしょ!」
屋久井「あのガキは、私が芸能界を支配するという崇高な計画を土足で踏みにじったのだ。当然の報いだよ」
フレデリカ「.....アタシね、皆がハッピーじゃないと嫌だから、誰かの心を傷つけることが本当に嫌だから、絶対に人の悪口とか言いたくないし、聞きたくないんだ。でも、ゴメン。今だけは言わせてもらうね」
フレデリカ「アタシ、あなたの事は嫌い。大っ嫌い!!」
屋久井「フン、別に構わんよ。小娘に何を言われようがね」
P「........何人だ」
屋久井「んー?」
P「あんたのその下らねえ計画の為に、一体何人犠牲にしたかって聞いてんだよ!子会社とやらのアイドルも、061プロのアイドルも、『あの子』だって......みんな本気でアイドルって道に命賭けてたんだ!なのに、あんたはそんな命を何人踏み躙って来た!あの子達が抱いた何よりも尊い夢を、一体いくつ踏み躙って来たァ!?」
プロデューサーさんが、今まで貯めこんで来た感情を吐き出す
怒り、憎悪、嘆き.....今までずっと仇敵に対して貯め込んでいた感情が、決壊したダムの様にプロデューサーさんの口から流れ出る
でも、その激情の矛先を向けられた男は依然堂々と....いや、むしろどんどん凶暴な笑みを浮かべながら答えた
社長「何人って....知らないよ。踏みつぶしたアリの事なんざいちいち考えないからな」
自分が犠牲にしてきた人間を虫同然に言い切った男の顔を見た時、私の頭に最悪の予感がよぎった
まさか、この男の狙いは.....!
P「....殺してやる」
屋久井「何かね?」
P「許さねぇ!あの子の夢を汚して、あの子の命を奪ったッ!あんただけは絶対に許さねぇ!!ブッ殺してやらアアアアアアアアアアァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
奏「ダメよプロデューサーさん!!止まって!!!!」
慌てて呼び止めたけど、私の声はもう、プロデューサーさんには届かない
ダメ、間に合わない.....!
パチィン!!!
とても高い音がした
一瞬、プロデューサーが屋久井を殴った音かと思ったけど、違う。この音はもっと、平手打ちの様な高い音だ
例えば、癇癪を起こした子供をはたいて疎めるような.....
恐る恐る目を開けてみる
プロデューサーさんは屋久井社長へたどり着いておらず、二人の間には一人の女性が割って入っていた
ちひろ「何をやってるの.....?」
P「ちひろ、さん.....?」
ちひろ「貴方はもう彼女達の、『LiPPS』のプロデューサーなのよ?LiPPSの夢を、一緒に背負って支える立場の人間なの。それなのに....貴方がここで社長に暴力を振るえば、彼女達の夢まで一緒に砕けることになるわ。こいつは、それを狙っているのよ!?」
P「でも!このままじゃ『あの子』の無念は!」
ちひろ「憎むことばかり考えるな!!」
ちひろ「もう一度、頭冷やして考え直しなさい....今の貴方には、その恨みよりもっと大事な人達が、大事にしなきゃいけない人がいるでしょう!!」
P「!!」
プロデューサーさんが、はっとした顔でこちらを向く
ちひろ「確かに、始まりは復讐だったのかもしれない、自分の目的の為に、表面上思いやっていただけなのかもしれない......でも、彼女達は、LiPPSは!貴方にとって大切な人達になったんでしょう!?なら、彼女達を泣かせるような真似するんじゃないわよ!」
ちひろ「どれだけ正当な理由があっても....どれだけの憎しみを抱えたとしても.....自分にとって大事な人ができたのなら、自分を大事に想ってくれる人がいるなら、その人を悲しませるような事しちゃいけないのよ!!!」
P「................クソッ!」
ちひろさんに平手打ちで叱られたプロデューサーさんは、行き場の失った怒りとともに、逃げるように去っていった
奏「プロデューサーさん!....私、追いかけてくる!」
美嘉「ちょっと奏!.......いや、頼んだ!」
屋久井「チッ.....余計な事を」
ちひろ「悪かったですね、計画を邪魔してしまって」
屋久井「....まあいい、なら正々堂々と王者の座を頂くまで」
周子「正々堂々?どの口が言うのさ。今までずっとズルばっかしてた癖に!」
屋久井「フン....だが、証拠に繋がるようなヘマはしていない。仮に通報したとしても、私にはもみ消せるだけの力がある。無駄なことだ....」
屋久井「まあせいぜい頑張り給え、別に棄権してくれても構わないがね」
美嘉「棄権なんてしない!どんな妨害したって、勝つのはあたし達だよ!」
屋久井「そうかい.....では、そろそろ失礼させてもらうよ、まだ商談が詰まっているのでね」
ちひろ「社長、最後に一つだけ言わせてもらいます」
屋久井「何かね?」
ちひろ「P君は私達を裏切ってなどいません。P君は、この芸能界に潜む闇に立ち向かうために、勇気を出して一歩を踏み切ったんです」
ちひろ「だから....裏切ったのは貴方の方です。P君の信頼だけじゃない、この国のアイドル全てと、アイドルに夢を見た人々全ての想いを、貴方は裏切った。それは、決して許される事じゃない!」
ちひろ「いずれ貴方は必ず、その報いを受けることになります。覚悟しておきなさい!!」
プロデューサーさんを追いかけてドームの外へ出る
すると、植込みのところにぱたりと座り込んでいる彼を見つけた
しかしその姿からは、一切の気力を感じられない......
奏「プロデューサーさん、大丈夫?」
P「奏か......少し落ち着いたけど、大丈夫ではないかな.....」
奏「.........」
P「悪かったよ」
奏「えっ?」
P「感情に任せて、お前たちの夢をめちゃくちゃにするところだった。ちひろさんが止めてくれなきゃ、811プロは暴力プロデューサーの率いる危険集団にでもされるところだったんだろう」
P「今度こそちゃんとお前たちに胸張れるプロデューサーになるって誓ったのに、またやっちまった.........」
奏「......やっぱり屋久井社長の事、信じてたのね」
P「ああ....どんだけ怪しいって証拠が出てきても、あの人は俺の恩人だから、俺の記憶の中の優しかったあの人は、絶対そんな事するはずないって!......ずっとそう、信じてた」
奏「...そっか」
P「でも、裏切られた....やっぱりおっちゃんが犯人だったんだ。俺、もう何を信じたらいいか分かんねえよ.......」
P「奏.....俺、もうダメだわ」
奏「ダメ....って?」
P「俺さ、さっきちひろさんにあんなに説教されて、憎しみに身を委ねちゃだめだって分かったのに、お前らの夢まで一緒に壊したくないって本当にそう心から思ってるのに!」
P「それでも....消えてくれないんだ。あいつをぶっ殺したいっていう醜い憎悪が、消えてくれないんだ!ずっと胸の中で色んな感情がぐちゃぐちゃになっててさ、もう、どれがホントの気持ちなのか分かんねえんだよ!」
P「俺、これから自分が何するか分かんねぇ....もしかしたら、また感情のままに取り返しのつかない事しちまうかもしれねぇ。信じてた人に裏切られて、その事に、どう向き合えばいいか分からなくなって!........もう、自分の心すら信じられないんだよ.......」
奏「プロデューサーさん......」
P「すまない、奏....こんな情けないプロデューサーで、本当に、ごめん......!」
奏「...........ねぇ、プロデューサーさん。少し、昔話に付き合ってちょうだい?」
P「昔話........?」
奏「ええ、昔話....といっても、割と最近の事なんだけどね」
私が高校生になってすぐ、私に一人の友達が出来たの
勿論、それまでにも人との付き合いがなかった訳じゃないけど、自分から友達って呼べるくらいに心を開ける人ができたのは、多分その子が初めてだった
その子はね、入学式の日、すぐに私に話しかけてくれた。その次の日も、次の日も.....何度も私とおしゃべりしてくれたの
それでどんどん仲良くなって、一緒に遊びに行ったりして.....あんなに仲のいい友達が出来たのは初めてだったから、その友達と過ごす毎日がいつもいつも凄い新鮮で.....とても、楽しかったわ
そんな充実した日々を過ごして、気づいたら学年が一つ上がって、新しい春が始まった.....そんな時だった
私、ある男の子に告白されたの
......そんなに慌てなくても大丈夫よ、お断りしたから。大体、受けてたらアイドルになってないわよ
まあ、今まで殆ど話したことない人だったし、私も特別彼氏が欲しいと思っては無かったからね
結局、その日はそれ以降何もなく終わったのよ。私も、告白なんてされたって明日は何事もなくやってくるんだなーって、そんなどこか達観した事を考えながら、その日は眠りに付いたわ
でもその次の日、友達から絶交を宣言された
理由?私があの子の男を奪ったかららしいわ。あの子、私に告白してきた男子が好きだったみたい
もちろん反論したわよ。そんな積もりないし、彼の事は振ったから関係ないって
でも、逆に色んなことを暴露されたわ
私の友達になったのは、私につられて男が寄ってくると思ったから。私と一緒にいれば、自分も一緒にモテると思ったから。でも、男子は皆私目当てで、誰と話しても聞かれるのは私の事ばかりで、自分に目をくれる人なんか一人もいなかったって
私の事も本当は、お高く留まって気にいらないと思ってたらしいわ。私、そんな積もり全然なかったのに....いや、もしかしたらそういう態度だったからこそ、余計に気にいらなかったのかもしれないわね
そんな不満を抱えていたら、自分の一番の本命が私に告白しているのを見て、ついに裏切られたと思ったらしいわ
私、それを聞いた時、本当に訳が分からなかった
何もしていないのに裏切られたと言われて、今まで感じていた友情は全てまやかしだったと分かって、本当にショックだった
それはもう、人を信じる事そのものが怖くなって.....人間に、いや......世界に或る種のあきらめをつけてしまうほどに............
だから、そんなどうにもできない感情をどうすればいいか分からなくて、でも、少しでもこの苦しみを洗い流せたらいいなって.....そう思ったからあの日、あの海岸でずっと黄昏ていたの
P「そんな事が.....」
奏「あの時私は、本当に何も信じられなくなっていた....貴方スカウトに乗ったのも、ほとんどヤケよ。貴方の事を疑ってはいたけど、もしこのどうしようもない現状を壊してくれるなら.....そう思ったら、どうでも良くなっちゃってね」
P「お前....ヤケになったからといって女の子がホイホイ怪しい奴の誘いに乗っちゃダメだろ!」
奏「あら?じゃあ断った方が良かったかしら?」
P「それは.....ダメだけど」
奏「ふふっ、だよね!」
奏「.....でもね、貴方がアイドルに誘ってくれたから、貴方が皆と引き合わせてくれたから、私にこんなに光り輝く世界があるって事を教えてくれたから!」
奏「だから、ちゃんと思い出すことができたのよ。大事な事を....ね」
P「大事な事?」
奏「結局、誰も信じ無い生き方なんて到底無理だってこと!」
奏「最初から何も信じず生きれば、裏切られずに済む。それはきっと、賢い生き方なんでしょう。でもね、それって凄く苦しいのよ。だって、自分の心の傷は、自分じゃ癒すことができないから」
奏「愛想よく振る舞いつつも、常に相手を警戒し続ける。心が落ち着く事なんてなくて、常に擦り減らし続ける。誰かに傷つけられることはない。でも、癒されることもない...そんな虚無感をずっと抱えて生きることのできる人はいないわ。プロデュ―サーさんも、そう思うでしょう?」
P「...........まあ....そう、だな」
奏「人は誰しも自分の想像を超える壁にぶつかったとき、その困難から目を背ける為に、自分自身の心を鎖で縛り付けてしまう。そしてその鎖は、自分ではどうにもできない。外すには、必ず自分じゃない誰かの力を借りなければならないの」
奏「だから、どんな人間も一人で生きることは出来ない。自分と他人との信頼って言う繋がりは、捨て去ることは出来ないのよ」
P「....................」
奏「それにねプロデューサーさん。信じるって、素晴らしい事よ」
奏「だって、例え裏切られるかもしれなくても......信じるって事、誰かを信じられるって事は、何よりも暖かい事だから!私の心を縛る鎖を解いてくれたのは、他ならぬ811プロの皆だから!」
奏「だからプロデューサーさん......もし貴方が自分を信じられなくなったのなら、私達を信じてよ」
P「奏達を....?」
奏「そうよ、私達LiPPSを.....他ならぬあなた自身がずっと守り導いてきた、私達を信じて!」
奏「大丈夫!私達は必ず、貴方の期待に応えて見せるわ。必ず.....貴方の心を救って見せる。貴方が私にそうしてくれたようにね!」
P「......そうか、じゃあ、お前らを信じる!その為に、俺もお前たちのプロデューサーとして出来ること、なんだってやってやる!」
P「だから.....お前たちがトップアイドルになる瞬間、この目で見届けさせてくれよな」
奏「うん!任せてちょうだい!!」
P「..............なぁ、奏」
奏「何?」
P「少しだけ、むこうを向いててくれないか?なんか、色々あふれだしそうでさ」
P「あんまり、見せたくないから」
奏「.....分かったわ、でも」
そっと、プロデューサーさんの手を握った
私と彼の温度が混ざり合っていくのを感じて、なんだか心が暖かくなる
奏「涙は見ないであげる。でも、寄り添うくらいはいいでしょ?」
P「....ああ、ありがとな」
P「...........ほんと"う"に..................あ"りがと"う.................!!」
今日の天気は、晴れのち大雨
降り出したのは、耳をつんざくような豪雨
....でも、とても暖かい雨
私は、傘を差さなかった
彼の溜まりに溜まった感情の雨を、全部この身で、受け止めてあげたかったから.....
Chapter21「warm,warm rain.......」
P「.....はぁ、はぁ.....よし!」
奏「もう、落ち着いた?」
P「ああ!もう泣くだけ泣いた、皆の所に戻って決勝へ向けて準備を......」
???「あれ?もしかして貴方たち、811プロ?」
P「えっ?そうだけど.....キミ達はっ!?」
???「ええ、貴方たちと決勝で、文字通り頂点をかけて戦う相手......」
ちとせ「Project,Queenよ」
奏「貴方たちが、Project,Queen...!」
ちとせ「そうよ。私はリーダーの黒埼ちとせ、それでこっちが私の僕で、同じユニットのメンバーの」
千夜「白雪千夜です、あとこの二人は....」
颯「はーとなーだよ!同じくProject,Queenメンバー!」
凪「久川凪と颯です。双子です。エモいでしょう?」
P「エモいって.....まあ双子属性はウケがいいか.....」
凪「そうです。双子と主従属性と美少女とアイドル.....私達は世のエモさの集合体なのです」
P「そ、そうなのか......」
颯「今日はなんか残念なことになっちゃったけど.....来週の決勝は、頂上をかけて正々堂々、思いっきりぶつかり合おうね!」
奏「正々堂々って...もがっ!」
事故を仕込んだのは貴方たちの癖にと咎めようとすると、プロデューサーさんに口を押えられ遮られた
P「ああ、俺たちも決勝を楽しみにしてるよ!」
奏(プロデューサーさん、何で止めるの?)
P(多分、この子達は何も知らない。あいつは自分の本性を隠すのが本当に上手かったから......だから俺とちひろさんも、何年も一緒に仕事したのに気づかなかった)
奏(な、成程......)
確かに、不正だけで勝ってきたならあそこまで凄いパフォーマンスは出来ないか......
ちとせ「.....ところで千夜ちゃん、ちょっとケーキとか買ってきてくれない?コンビニのでいいから」
千夜「構いませんが....急ですね」
ちとせ「なんか糖分が足りてなくって、私もう動けないの。.私が奢るから、はーちゃんとなーちゃんも好きなスイーツいっぱい買ってきなさい?」
颯「ほんと!?ありがとうちとせちゃん!」
凪「ちとせちゃんの奢り....つまりちーPayですね?」
ちとせ「そうそう!ほら、皆行ってらっしゃい。千夜ちゃんも好きなの買ってきていいから、二人の事お願いね?」
千夜「.....お嬢様が、そうおっしゃるのなら」
ちとせ「行ってらっしゃい、なるべくゆっくりね」
千夜「畏まりました......それでは」
ちとせ「さて.....と」
ちとせ「社長に会ったんでしょ?大丈夫だった?」
P&奏「「.......!」」
奏「貴方、もしかして」
ちとせ「私は、人の嘘がなんとなく分かるから。他の皆は....千夜ちゃんはいつも私と一緒にいるから、もしかしたら察しちゃってるかもしれないけど.....はーちゃんとなーちゃんは気づいてない」
P「キミは891プロの不正を知ってたのか....だったらなんで!」
ちとせ「私にも、どうしても負けられない理由があるから」
P「負けられない、理由?」
ちとせ「私ね、もう長くないの」
奏「長くない.....?」
ちとせ「後3年....いいえ、まともに体を動かせるのはあと1年あればいいほうって、そう言われた」
P「余命3年....だと?」
ちとせ「....これ、皆には秘密にしてるから、絶対言わないでね?特に今は、IGの決勝直前だし」
P「そんな....治療に専念すれば良くなったりしないのか?」
ちとせ「無理、まだ治療法が確立してない奇病なんだって。ずっと病院で寝たきりなのを受けいれれば、延命措置くらいはできるかもしれないけど」
P「そんな.......」
ちとせ「だから私、どうしても残したいの。この世に『黒埼ちとせ』っていう女がいたことを。私が、最後まで私として生きたって言う証を」
ちとせ「.....あと、千夜ちゃんの事もあるしね」
奏「白雪さん?確かさっき主従がどうのって言ってたけど....」
ちとせ「そう、あの子はずっと私の僕として、私に尽くしてくれた.....でも、それだけなのよ。ずっと私に縛られて、それ以外の生き方を知らない....だから私が死ぬ前に、あの子には自分自身の生き方を見つけて欲しいの」
ちとせ「それに....はーとなーは、純粋にアイドルに夢を見て、ただひたすらにトップアイドルを目指して頑張ってきたの。そんな二人の夢を、私が壊すようなことは出来ない」
ちとせ「だって....3人とも同じ道をずっと一緒に歩いた仲間だもの。なにも残さず死ぬはずだった私の手を、ずっと掴んでいてくれた何よりも尊い仲間.....だから、私があの子達の幸せを願うのは、当然のことでしょう?」
奏「.....そうね。同じ立場だったら、私もそうするわ」
ちとせ「.......ねぇ」
棄権、しないの?
P「....どういう事だ?」
ちとせ「別に、LiPPSと戦いたくないと思ってるわけじゃないの。でも、もし決勝のステージに立てば貴方たちはきっと酷い妨害を受けるわ。今日の覇王エンジェルズみたいに、大ケガを...最悪、命に関わるかもしれない」
ちとせ「それでも....決勝に挑む覚悟はあるの?」
奏「当然よ」
ちとせ「!!」
奏「私達の身を、純粋に心配してくれるのは有り難いわ。でも、あえて言わせてもらうわね.....余計なお世話よ。どんな逆境に苛まれようと、全力でアイドルを楽しむのが私達811プロの信念だから!」
奏「ねっ?プロデューサーさん?」
P「ああ!正直すげぇ怖いけどな....でも、絶対に立ち向かうと決めたからな!」
ちとせ「アイドルを、全力で楽しむ.....そっか、じゃあもう遠慮しないよ。言っとくけど、妨害とか抜きにしても勝つのは私達だから!」
ちとせ「だから....覚悟してなさい。決勝で、私達『Project,Queen』が、貴方たちを叩き潰すから!!」
奏&P「「望むところよ(だ)!!」」
千夜「お嬢様、ただいま戻りました」
颯「ちとせちゃんの分も、一杯買ってきたよー!!」
凪「人の金だと思って、大量に買い過ぎました。でも、美味しければ大丈夫らしいので、おーるおっけーです」
ちとせ「おかえり皆。じゃあ、事務所に帰ってお茶でもしましょうか」
千夜「お話は、もう済んだので?」
ちとせ「うん、もう大丈夫。それじゃあ、さっさと帰りましょ?私もう糖分不足でヘロヘロー!」
ちとせ「というわけで二人とも、また決勝で会いましょうね」
奏「ええ、楽しみにしてるわ」
決勝の舞台で思い切りぶつかることを誓い合って、Project,Queenは去って行く
そして彼女達が見えなくなった頃、入れ替わるように811プロの仲間達が帰ってきた
美嘉「二人とも、やっと見つけたよ!中々帰ってこないから心配したんだから!」
志希「随分長い事二人きりでいたみたいだけど.....ナニしてたのかにゃー?」
奏「さて、ナニかしらね?」
P「誤解を招くような発言はよせ....」
奏「もう、ノリが悪いわね」
フレデリカ「だめだよプロデューサー!芸能界を生き抜くには、ノリに乗れる力を見につけないと!」
P「いや、俺はもう芸能人じゃねえし.....」
周子「そう言えばさっき、青木さんと早苗さんから連絡があったよ。客席でライブ見てたけど事故の事調べようとしたら追い出されたから、先に事務所で待ってるって」
P「そうか....じゃあ、一旦事務所へ帰ろうか。色々と情報共有しといた方がいいだろうしな」
ちひろ「私は010プロに戻りますね。多分色々やらなきゃいけない事が山積みになってると思うので....」
美嘉「そっか。じゃあちひろさん、またね!」
ちひろ「ええ、皆も決勝に向けて頑張って!私も応援してるから!」
その後、私達はプロデューサーさんの車に乗って811プロへと帰ってきて、早苗さんとトレーナーさんに今日あったことを説明した
そして、Project,Queenの事も.....
早苗「成程ね....やっぱり、あの事故には891プロが噛んでたか」
ベテトレ「あの子のプロデューサーが、何事もなかったかのように891プロに再就職していたのも、これで合点がいったな....あの男、プロデューサーの屑だな!」
美嘉「でも、Project,Queenの方はむしろ被害者だね....特に、リーダーのちとせちゃんは.....」
フレデリカ「後3年しか生きられないって.....折角、アイドルになれたのに!」
P「その上、891プロの実態を知ってしまって板挟みだ。仲間の為に負けられないからこそ、891プロの手で良いように転がされてる....」
周子「ほんっとに許せない!アイドルをまるでおもちゃみたいに扱って!」
志希「でも、だからって手を抜くわけにはいかないよね?」
奏「ええ、むしろ全力でぶつかって、お互い最高のステージを作り上げる事....それがProject,Queenに対する、最大限の礼儀よ」
奏「それに....私達が負ければ、芸能界は本当にあの男に支配されてしまうかもしれない。もしそんな事になれば、とてつもない数の人が苦しむことになる」
P「だがあの人の事だ、必ず何かしらの妨害をしてくるだろう.....何とかならないもんか......」
周子「早苗さん...なんかこう、国家権力の力とかで何とかならない?891プロにガサ入れして摘発するとかさ」
早苗「私もそうしたいんだけど....きっと上に止められるでしょうね。061プロの社長の時もそう、891プロに少しでもつながりそうになると、いつもに圧力をかけられるわ....多分、警察の上層部に891プロと繋がってる奴がいる」
美嘉「そんな、警察にまで!?」
早苗「悲しいけど、このアイドル戦国時代と呼ばれるような世の中、割と良く聞く話なのよ....芸能事務所が賄賂を差し出す代わりに、不正を見逃してもらったり....そういう癒着の話は、そこまで珍しい話じゃない」
早苗「ホントは私も締め上げてやりたいんだけど....ごめんなさい、私の権限じゃ、そこまで無理な捜査はできないわ.....」
P「気に止まないでください片桐さん。それにそういう事情なら、あまり噛み付くと片桐さんの身が危ないかもしれない」
フレデリカ「アタシ達の為に早苗さんが傷つくなんて、絶対嫌だからね!」
周子「でも、実際どうするの?このままじゃ戦いの舞台にすら上がれないかもよ?」
P「正直警察組織まで懐柔されてるとなると、あまりにも話がデカすぎる.....歯がゆいが、今は向こうの出方を伺うしかないな.....」
奏「....................」
あの男が、この期に及んで決勝当日まで何もしてこないはずがない
.....とてつもない悪寒がする
まるで、見えない刃を首筋に突き付けられているかのような..........
~~~某時刻、891プロ社長室~~~
屋久井「それでは君たち、最後の仕事、よろしく頼むよ」
記者1「もちろんでさぁ、頂いた報酬の分はしっかり働かせていただきますよ」
記者2「それに、我々もあのプロダクションには一度煮え湯を飲まされているのでね....個人的な復讐もしたかったところです」
記者3「まあウチは、なんでもいいから叩ければそれでいいがな。やっぱり、いたいけな少女を陥れるのはたまんないからねぇ!」
記者1「相変わらずあんたは性癖歪んでんな....じゃあ、811プロ以外の事務所の方はあんたに任せるわ。好きなだけぶっ叩いてやれ」
891「これで、芸能界のすべてを、この891プロが....私が!この手に握ることになる.....!」
891「P.....私が売り出してやった恩を忘れて好き勝手やって来たみたいだが....私を裏切ったらどうなるか、しかとその身に刻むがいい......」
クククク.......アーッハッハッハッハァ!
to be continued.....
Chapter21が終了したところで、今回はここまでー。 このP完全にヒロインみたいな立ち回りしてんな
今回だけでこの物語で書きたかったシーンの半分以上を書きました。というか、この話とエンディングのワンシーンと事務員周子のネタをやりたいがためにわざわざイチからプロダクションを立てる設定にしたと言っても過言ではない
次回の更新ですが、明日から1週間クソ忙しくなりそうです....
一話くらいは隙見て更新できると思いますが、更新頻度が劇的に下がる事をご容赦ください
時間が開いてしまった今でも見てくださってる方がいるかは分かりませんが、Chapter22の投下開始していきます
歩んで、歩んで、歩み続けて、ついに頂上が目前に差し迫ったその時こそ、人は最後の振るいにかけられる
問われるのは、それまで歩んできた道のり
中途半端な覚悟で挑んできた者、苦難から目を背けてきた者、妥協に妥協を重ねてきた者、自分自身に嘘をつき続けてきた者.....
楽な道ばかりを選び、自らを誇る事が出来なくなった人間に、頂上は掴めない
だが、確かな信念の元、自分自身が正しいと思える道を選び歩み続けてきた者ならば
その歩んできた道での出会い全てが、旅の中で胸に積まれていった、『自分』を貫き通した証が
きっと、力尽きゆくその背中を支え、押しだしてくれるだろう
光差し込む終着点、何よりも誇り高い頂へと.......
本戦第一試合が終わった次の日、私達はいつもよりだいぶ早い時間に集合をかけられていた
周子「おはよー......あたしが最後?」
P「ああ、でも時間通りだから大丈夫だぞ周子」
周子「久々にこんな早起きしたよー....まあ、決勝直前だし仕方ないか。仕事もレッスンも詰まってるもんね」
志希「そうだねー....早起きも、致し方にゃいねー......」
美嘉「なんか志希ちゃんすっごい眠そう....てかもう半分以上寝てるけど、よくちゃんと事務所まで来れたね?」
ベテトレ「志希は寝坊かもしれないと思ったから、私が迎えに行って連れてきたんだよ。案の定爆睡していた.....」
志希「無理やり叩き起こされたから志希ちゃんまだ夢の中~.....」
P「あー、もう話始めるぞ?まず最初に重要なお知らせがある」
P「IGの決勝、一週延期になった。だから今日からちょうど2週間後だな」
奏「やっぱり、あの事故のせい?」
P「ああ、あの後ステージとか機材の見直しで色々揉めたらしいからな。その対応に追われてるんだとか。まあ、逆に一週間で済ませられるんだから大したもんだがな」
P「んで、今日のスケジュールについてだが......」
その時、プロデューサーさんの携帯が....いや、それだけじゃない
事務所の固定電話まで、一斉にけたたましく鳴り出した
P「こんな時に.....周子と青木さん、向こうの電話の対応頼む」
周子「りょうかーい」
ベテトレ「分かった」
美嘉「朝から凄い電話だねー」
フレデリカ「きっと決勝進出したから、色んなところからオファーが来たんだよ♪」
P「.....はぁ!?キャンセルって、一体どういう事ですか!?」
『!?』
キャンセル、ですって?
一体、何が起こっているの....?
P「何で急にそんな事に!?......は?そんなの、事実無根ですって!!ちょっと!」ガチャッ
奏「プロデューサー、一体何があったの?キャンセルがどうのって聞いたけど....」
P「今日の24山テレビの仕事.......キャンセルになった」
美嘉「キャンセルって、いくらなんでも急過ぎじゃない!?」
P「今朝の週刊誌の内容を鑑みて見送ることにしたらしいが....二人とも、そっちの電話はどうだった?」
周子「こっちもキャンセルの電話だったよ。なんかスタッフが怪我で足りなくなったから、番組の収録そのものが中止になったみたい」
ベテトレ「こっちもだ.....このタイミングで、これだけ同時にキャンセルされるのは痛すぎるぞ....!」
トゥルルルルル!!!!!
P「はい.....えっ!?ちょっと待ってください、なんで急に!?」
P「クソッ、またかよ!」トゥルルルッルル!!!
周子「電話が切れた傍からまた...!」
ベテトレ「まさかこれ、全部キャンセルの電話じゃないだろうな....」
P「....どうやら、そのまさかかもしれません」
....プロデューサーさんの危惧は、当たっていた
その後数十分、事務所中の電話が鳴り続けた
番組そのものが中止になったり、何かの理由で役者が変更になったりと、原因は様々だったけど
そのコール全てが、既に入っていた仕事のキャンセルを告げる電話だった
Chapter22 「Still,Stand Up」
ベルの音が鳴りやんだ頃、真っ黒だったはずのホワイトボードは、僅かばかりのシミを残して漂白されてしまった.....
P「残ったのは、これだけか......」
奏「『正気のサタデーナイト』まで、特番に変えられてしまったのね.....」
真っ白になってしまったホワイトボードを、皆ただただ呆然と眺めていた
でもその視線は、大きな音を立てながら勢いよく開いた扉に奪われる
早苗「みんな!大丈夫!?」
P「片桐さん!急に来てどうしたんですか?」
早苗「さっきコンビニでこれ見つけて、いてもたってもいられなくって......」
フレデリカ「それって、雑誌?」
志希「.......こりゃ酷いね、見出しから色んなアイドルのゴシップがてんこ盛りだ。特に、あたし達はめちゃくちゃバッシングされてるみたい」
奏「見て、これとか酷いわよ!【速水奏は映画好きを自称しているが、その実態は意味の分からないB級映画ばかり好むクソ映画ハンターである】って、デタラメじゃない!ねえみんな!?」
『................................』
奏「なんでそこで黙るのよ!?」
周子「でも叩かれてるのはウチだけじゃない、010も....本当に色んな事務所が叩かれてる.......大きな事務所程特に酷いね」
周子「だけど、891プロを叩く記事は一つもない.....ていう事は」
P「iMB事件の時と同じ、891プロの常套手段って事か....あいつ、マジで芸能界を891プロ一強にするつもりなんだ」
早苗「それに、今回は出版社やテレビ局だけじゃないわ、警察にも圧力がかかってる」
ベテトレ「警察にも....?どういう事だ?」
早苗「そもそもあたし、今日は別に非番じゃなかったのよ。でも、制服も着ずにここへ来た....何でだと思う?」
美嘉「....もしかして!?」
早苗「昨日、自宅謹慎を言い渡されたわ。どういうわけか、潰れた美嘉ちゃんが前にいた事務所...061プロとの癒着を疑われてね」
早苗「多分、上に圧力をかけられたんだわ。私が891プロの事嗅ぎまわっていた事ばれたみたい。891プロとの密約で甘い汁を吸ってる上層部に、邪魔だと思われたんでしょうね」
P「あいつら、本当に片桐さんまで狙ってきやがった....!」
周子「でも、自宅謹慎ならお家にいないといけないんじゃないの?」
早苗「そこはほら、811プロはあたしの第2の実家だから!というわけで、暫くはここで皆のお手伝いするわよ。人手足りてないでしょう?」
P「そりゃ有り難い!もう今日は電話番だけで手が足りなくなるくらいでしたからね!」
ベテトレ「早苗が手伝ってくれるのはいいが、これからどうするんだ?状況は最悪に近いぞ」
フレデリカ「お仕事ほとんど無くなって、暇になっちゃったねー」
決勝の直前である今の時期の仕事は、宣伝としても経験を積む目的としても重要だったのに、こんな理不尽が許されていいの.....。?
一体、どうすれば............
P「.........なあみんな、こういう時こそ初心に帰ってみないか?」
周子「初心?」
P「ほら、向こうから仕事が入ってくる今と違ってまだ駆け出しだったころは、自分たちの魅力を伝えるのに必死で、我武者羅にアイドルの階段を駆け上がってただろ?もちろんその過程で壁にぶつかることもあったけど、皆で乗り越えてきたじゃないか。今回もそれと同じさ!」
P「仕事を奪われたのなら、また新しく掴み取ればいい。悪い噂を流されたのなら、そんな噂吹き飛ぶくらいの魅力を見せればいい。ファンを奪われたのなら、それ以上の人を新しく魅了すればいい!」
P「大事なのは、何度折られたって、何度崩れ落ちたって、それでも立ち上がって前を見据える事......だって、アイドルはいつだって前を向いて笑う仕事なんだからな!」
......!!!
P「それに、考えようによってはチャンスかもしれないぞ?決勝の為の練習に費やせる時間が増えたんだから!どうせなら、この妨害も利用してやろうぜ?」
P「どんな逆境だろうと楽しんで、ファンの為に最高のステージを作り上げる.....それでこそ、俺たち811プロだろ?だから.....どんなに不利な状況だって俺たちは降参しないって、叩きつけてやろう!」
プロデューサーさんの言葉で、全員の顔に気力が戻っていく
....やっぱり、プロデューサーさんはちゃんと、私達にとってただ一人のプロデューサーよ
目の前の壁に心を折られかけた時、理不尽な状況に恐怖したとき......そんな時にいつも、"いってらっしゃい"と背中を押してくれる人
たったそれだけで貴方は、私達の迷いも不安も、全部振り切ってくれる
男は船で、女は港と言うけれど.....私達はきっと逆
私達がアイドルとして未知の海へと漕ぎ出していけるのは、いつだって帰れる場所があるから..........
ねぇ、プロデューサーさん.....これからも貴方だけは、私達の帰れる場所でいてね?
貴方が私達を見守ってくれている....ただそれだけで私達は、どんな壁にも立ち向かえる!
改めて決勝の舞台に立つという決意を皆で固めた後、彼女達のレッスンは深夜まで続いた
だが、熱中するあまり時間を忘れて残ってレッスンをしていたので、先ほど流石に日付が変わるまでいるのはマズイと無理やり返した
あの子達、ホントに一度火が付くとすげぇなぁ....
志希とか周子とか、いつもは気分屋なのに、今日のレッスンは別人みたいな集中力だった....
そんな二人に影響されたのか、いつだって本気が信条の美嘉も、今日はいつもの本気"以上"に本気で自分を高めていった
フレデリカはこんな非常事態になっても決してぶれず、笑顔でアツくなり過ぎていくみんなを和ませ、それでいて真剣にレッスンに挑んでいた
そしてそんな個性の塊みたいな集団を、奏はリーダーとして確かにまとめ上げた
みんな後悔しないように、今自分ができる事を全力でやっているんだ......
なら、あの子達が頑張ってる分、俺もプロデューサーとして、自分が今できる事を精一杯やり遂げなきゃな
P「.....まあ、それにしてもこの量....仕分け大変だなぁ」
ファンからアイドルへの贈り物
それは手紙だったりお菓子などの差し入れだったりと様々だが、その全てをアイドル本人に渡す前に検品を行わなければいけない
中にはファンを装ってアイドルを傷つけるような手紙を出してきたり、嫌がらせの様なものが送られてきたり....酷いときには食べ物に毒が盛られてたりする事もあるらしい
だからいつも俺がこうやって中身を確かめて、安全を確認してから翌日本人に渡しているのだが......
P「これも891プロの妨害なんかねぇ.....」
何故か今日に限って届いた贈り物が多い......だが、その分やたら攻撃的な内容の物が多かった
P「仕事なんか本心なんか知らんが、よくもまぁこんなに非道いことが書けるもんだ....」
彼女たちに向けられた敵意を見る度に何とも言えない気持ちになるが.....それでも、少しでもあの子達の力になるために仕分けを続けていた
だが.....
???「おー、やっぱりまだ仕事してたんやね」
P「えっ....お前!?」
周子「Pさん、お勤めごくろうさま♪」
P「周子、なんで戻ってきた?帰ったんじゃなかったのか?」
周子「偶には事務員らしく、事務所の為に残業してやったた方がいい気がしてね.....それで、何してんの?」
P「いや、これは.....」
なんとか誤魔化そうとするが、周子はひょいっと身を乗り出して持っていた手紙を奪い取ってしまう
周子「.......なるほどねー、暇な奴もいるもんだ」
P「見ないほうがいい....まだ結構あるし、お前はさっさと帰って『やだよ』」
周子「皆いつも言ってるでしょ?あたし達を信じろってさ。そうやって辛い事一人で抱え込むの、Pさんの悪い癖だよ?」
周子「それに.....ほら!」
周子が手紙の入った段ボールから、次々と手紙を掴み取り、読み上げていく
『LiPPSを応援しています!頑張ってください!』
『必ず頂点を取ってくると約束したんだ、最後までお前の思うまま突き進みなさい。"私達"の希望よ』
『志希さん、フレデリカさん、俺たち二人は死ぬまで貴方たちの大ファンです!決勝も絶対応援しに行きます!!』
『周子、優勝したら一度実家に帰ってきなさい。優勝祝いに貴方の好きだった和菓子一杯用意して待ってるから、お友達も連れてきてね!』
『美嘉、私達ずっと、貴方を応援するよ。なんだかんだ言ってもやっぱり、貴方はいつまでも私達の憧れだったから....』
『奏さん、周子さん.....あのオーディションで貴方たちに出会えたおかげで、私達は純粋な思いでアイドルとしての夢を描けるようになりました。いつかまた貴方たちに会いに行けるアイドルになるから、それまで頂上で待っていてください!その時は....頂上をかけて戦いましょう。今度こそ必ず、私達が勝ちます!』
『あたし達に勝ったんだから、絶対優勝しなさいよ!トライアドプリムス全員でで応援するからね!』
読み上げられていくのは、理不尽な呪詛ではない
LiPPSが今まで積み重ねてきた、アイドルの道をずっと歩んできた証
彼女達から笑顔を貰った、数多の人達からの声援だった
周子「こんな風に、応援してくれるファンも沢山いるしね♪だから、大丈夫だよ」
周子「それにアイドルである前に811プロの看板事務員として、あたしだって事務所の皆を守りたいんだ、だからここは811プロのスタッフ二人で、一緒に頑張ろ?」
P「.....そうか、なら手伝ってくれるか?あんまりにも数が多くて参ってたんだよ」
周子「もちろん!でも、残業代はちゃんと出してよ?」
P「分かってるって。明日もあるしちゃっちゃと終わらせよう」
周子「りょーかい、じゃあ早速.......お!これなんかすっごく豪華じゃない?」
P「ホントだ、なんかお嬢様っぽいデザインの便箋だな」
周子「中身は.........えっ?」
P「どうした?」
周子「見て、これってもしかして......」
P「?...............これは!?」
周子「どうやらあの子、もの凄いお宝を送ってくれたみたいやね?」
P「ああ.......これならまだ、逆転の目はある!!」
反撃開始だ.......!
フンフンフフーン、フレデリカー♪
....あっ、ママ!えへへ、分かっちゃう?
そうなの、今すっごく楽しいんだ!
なんせアタシ達、遂に決勝まで来ちゃったからね!
....あー、うん。確かに辛い事もいっぱいあったよ。でも、フレちゃんは大丈夫!
だって、LiPPSはムテキのアイドルユニットだからねー♪
だってLiPPSって、アタシだけじゃなくて、志希ちゃんに、美嘉ちゃんに、周子ちゃんに、奏ちゃんがいて、プロデューサーがいて
そして、いつだってアタシ達の背中を支えてくれるファンがいるんだ!
だからどんなに辛い事があっても大丈夫!
みんなで笑顔で支え合って、乗り越えて、アタシ達を支えてくれた人達を、みーんな楽しませてみせるから!
もちろん、ママとパパもね♪
....ねぇ、ママ
アタシがアイドルとしてこんなに大きくなれたのは、ママがアタシをこんなに可愛く産んでくれて、パパがママとアタシを支え続けてくれて、二人がアタシを立派に育ててくれたから
そして、ママがアタシを立派に育てる事ができたのは、おじいちゃんとおばあちゃんがママを立派なパリジェンヌに育ててくれたからだよね?
もしも誰か一人がちょっとでも違ったら....きっと今のフレちゃんはいなかったと思うんだ
だからアタシ、おじいちゃんとおばあちゃんにも恩返しするよ!
二人の孫のフレちゃんは、二人のおかげでこんなに大きくなれましたーってね♪
大丈夫、きっと仲直りできるよ
ママだってほんとは、おじいちゃんの事大好きでしょ?なら、大丈夫だよ
おじいちゃんだってホントはママが大好きで、きっと今でもママに会いたいと思ってる
だから、見てて
アタシが日本にいるママと、パリにいるおじいちゃんを繋いで見せる
日本とフランス、二つの故郷の懸け橋になるから!
だからほら、泣かないで、ね?
うん、悲しい涙じゃないのは分かってるよ
でもね、どうせなら笑顔がいいな?
だって、ママの笑顔は、いつだってアタシを明るく照らしてくれる、アタシの太陽なんだから.....ね!
プロデューサーに家へ帰らされた後、あたしは決勝の対戦相手、黒埼ちとせちゃんの出ている番組をいくつか拝見してみた
....この子、やっぱりそうだ
余命3年、動けなくなるまで1年、まだ治療法の見つかってない奇病....
この子を蝕んでる病は、やっぱり.....
スマホにいつものコードを打ち込み、あの人にコールする
....出た、今日は早かったね
もしもしパパ、元気?
あたし?あたしはもう絶好調だよ!
....なんだ、それも知ってるの?
でも、安心して。今のあたしには、アタシを支えてくれる仲間がいっぱいいるからさ!
......そうだね、ちょっと前のあたしなら、"仲間"なんて言葉出てこなかったと思う
人のコミュティからぽつんと放り出されたって、つまはじきにされたって平気だよーって振る舞って、自分勝手に生きたと思う
でもねパパ、多分あたし、昔からずっと、今みたいに一緒に笑える仲間が欲しったんだと思う
あの時はパパがいたから、学校で一人でいたって大丈夫だった。でも、日本に帰ってきた後LiPPSの皆に会えなかったら.....
あたしは今日、ここでいつもの様にご飯を食べて、いつもの様にお風呂に入って、いつもの様にベッドで寝る.....
そんな"いつも"すら、出来なくなっていたかもしれない
でも、それって結局ifの話だよね?
確かにどこかの世界には、そんな"あたし"もいたかもしれない
もしかしたら、あの時パパについていかず、ママと過ごして、ママを最後まで看取ることが出来た"あたし"もいたのかもしれない
逆に、日本に帰らず今でも大学のラボで研究に明け暮れてた"あたし"もいるかもしれない
......ギフテッドじゃなくて、何の肩書もない、普通の"一ノ瀬志希"として生まれた、幸せなあたしもいるかもしれない
でも、今ここで生きてる"あたし"は、そうじゃない
そんなifに繋がる選択肢を選ばずに、今のあたしに繋がる選択をしてきたあたしなんだ
そしてそれは、決して他の"あたし"より不幸な"あたし"じゃない
だって、あたしはあたしなりに正しいと思う選択をし続けてここまで来たから、どれだけ辛い目に合ったとしても、それと同じくらい....ううん、それ以上の幸福を手に入れられた
だから、今ここに居る"あたし"は、決して失敗作なんかじゃないと思うんだ
ギフテッドとして生まれたからこそ、出来たことがあった。パパについていったからこそ、学べたことがあった。アイドルになったからこそ、出会えた人達がいた
そうやって沢山のものから選び取ってきた運命は、決して間違ったものじゃないと思うんだ
そして、あたしが道を間違えずに済んだのは....どんな道を選んだとしても、いつだってあたしを支えてくれた誰かがいたから
独りぼっちだと思っていた時すら、あたしは自分じゃない誰かと一緒に歩いていたんだ
パパに、ママに、811プロの皆....
思い返してみれば、あたしの人生、一人だったときなんて一度もなかったよ
.....そうだね
あたし変わったよ、変われたんだよ
アイドルになって、仲間と一緒に沢山の事を経験して.....やっと、変われた
ずっと自分でつまらないと思ってような自分自身から、ようやく変われたんだ.....!
だから、今度はあたしも、"誰か"の歩みを支える"誰か"になりたい
ねぇパパ、あたし約束通り頂点取ってくるからさ、ご褒美っていうか.......パパにお願いしたいことがあるの
あたしが大学に使ってた頃のデスク、その一番下の引き出し、実は二重底になってるの
そこに、隠してある。あたしの最後の研究成果
....そう、お母さんの命を奪った、あの病気の特効薬の研究
だけどその研究、まだ未完成なんだ。どうしても最後のピースが見つからなかった
でも。パパならきっと、あたしが見つけられなかった最後のピース、見つけられるから
......どうしてもその薬が必要な子がいるんだ、教えてあげたいんだ、未来を諦めなくたっていいって
だから、お願い。あたしの最後の研究、パパの手で完成させて
.....ありがとう
じゃあ、待っててね
パパとママの希望が、世界で一番輝く日を!
ただいまー!
あれ?莉嘉まだ起きてたの?
お姉ちゃんが心配で寝つけなかった....?いやいや、だからってこんな時間まで起きてたら体調崩すよ?
....でも、ありがと!莉嘉が応援してくれるならあたし、いつまでも本気で走り続けられるよ!
....うん、確かに今、芸能界は大変なことになってる
莉嘉の言う通り、アイドルの世界を荒らす悪い人がいるんだ
811プロだけじゃない、色んな事務所がその人の悪意にさらされて、色んな人が苦しんでるんだ
でもね莉嘉、あんたもアイドルになりたいんなら、これは覚えておいて
アイドルってね、どんな逆境でも前を向いて笑ってやるもんなの
どんな時にも自分を応援してくれる人がいる、だから、その人まで一緒に落ち込ませないようにいつだって笑顔を見せてあげなきゃいけないの
.....そうだね、061の頃のあたしを見てきた莉嘉は、それも分かるよね
確かにどうしても、耐えられないくらいに辛いときはある。そんな時は、思い出すの
いつだって自分は一人じゃない、頼れる仲間がいるんだって事
あたしからしたら莉嘉やママとパパ、それに811プロの皆
応援してくれるファンの皆に、ステージを作り上げてくれるスタッフさん達、あたし達が歌う曲を作ってくれる作曲家さん達....
どんな凄いアイドルでも自分一人でステージに立つなんて事絶対なくて、いつだって誰かに支えられてるんだ
だから.....本当に辛いときは、誰かに頼ればいいの。辛い事は、一緒に背負ってもらえばいい
その代わり、助けてもらった分、自分がやれることを精一杯やって、今度は自分が助けてくれた人を支えるの
どんな人でも、『自分一人でも大丈夫』って強がることは出来る
でも、本当に一人で生きようとする人は、いつか必ず心が折れちゃう
そうなったら、自分を今まで支えてきてくれた人まで悲しませちゃうでしょ?
......昔のあたしが、そうなっちゃったように
でもね莉嘉、あたしにとってそれはもう、"もしかしたらあったかもしれない"ってだけのものなの
あたし、最近やっと気づいたんだ
案外人生ってさ、敵が多いって思った時こそ、それ以上の味方が助けに来てくれるものなんだよ
だからあたしはいつだって、自分を助けてくれた人に、胸を張って"ありがとう"って言えるようにしたい
その為に、いつだって自分が一番だって誇れるように生きるの
妥協なんてナシ!応援してくれる人達に応えられる様に、いつだって本気で生きぬいてやるの!
だから、あたし達は諦めない
莉嘉、あたし達一足先に、てっぺん取ってくるよ
だから....いつか必ず、追いついてきなさいっ★
.....ずっと、待ってるから!
もしもし....うん、元気だよー
今?今ちょっと残業中ー..........ううん、あたしがやりたいからやってるの
Pさんほっとくとすぐ無理するからさー、そりゃ大家さんも心配するよねー
....."やりたいから"、か
実家でぬくぬくしてたあの頃のあたしじゃ、絶対言わなかっただろうねー
不思議だよね
つい1年くらい前まで流れに流されるまま無気力にフラフラしてたあたしが、今本気でトップアイドル目指してんの
そうそう!最初は実家にいた時と一緒で流れに流された感じで初めてさー、ぶっちゃけた話、給料と寝床に釣られて始めたんだよねー
そんな感じで中途半端な覚悟で始めちゃったからさー、そのせいで、大きな壁にぶち当たった時もあったよ
あの時はPさんにもLiPPSの皆にも迷惑かけちゃったなー.....
でもね、あたしその時初めて、本気で悔しくて泣いたんだ
そうだよ、あのしゅーこちゃんがだよ!?
何事も適当に、なあなあで生きてきたしゅーこちゃんが、"悔しいから"って大泣きしたんだ!
....うん、やっと見つけたんよ
あたしが、本気でやりたいこと
誰かに流されて決めたんじゃない、あたし自身の意思でこの道を選んだんだ
こういっちゃ怒るかもしれないけどさ.....あたし、家出してよかったよ
あたしずっと、ゆらゆら流された方が楽、楽して生きた方が得って、ずっとそう思って、自分の心に蓋してた
もしあの時も流れを受け入れて、半端な気持ちでお見合いして、適当な気持ちで家継いでたら.....
それはそれで普通に生きてたんだろうけど、きっと、最後まで心に疑問を持ちながら生きてたと思う
自分は、何の為に生きてるのか....って
だからあたし、家出できてよかった
あの時、流されずに『好きでもない人と結婚するなんてイヤ!』ってワガママが言えて、本当に良かった.....
もしかしたらお父さんも、あたしが自分の気持ちを吐き出せるように、わざと無理やり迫ったんかな?
...まあ、そうだとしても言わないだろうね、あの人頑固だから♪
.....うん、分かってるよ。さっき手紙見たし
必ず勝って、みんなと一緒に、お土産たっぷりもって行くよ
なんだかんだ京都は、あの家は、あたしの大事な故郷だからさ
だから、見てて
『本気』でトップアイドル目指す、あたし達の生き様を!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ベッドに潜り、目を閉じて追想する
プロデューサーさんに連れだされたあの日から歩んできた、アイドルとしての道
多くの出会いがあった、多くの研鑽を積んだ、多くの世界を知った
多くの苦しみを知った、多くの涙を流した、多くの悪意に触れた.....
でも、多くの人の笑顔があった
プロデューサーさんに光る舞台に連れだされて、アイドルとして多くの経験をしたからこそ見れた、とても暖かくなる笑顔ばかりだった
そして、アイドルになれたからこそ、得られたものが山ほどある。811プロのみんなと一緒だったからこそ、断ち切る事が出来た鎖がある
そして....この道を選んだからこそ、手に入れることができた明日がある
もしあの時、プロデューサーさんに会わなかったら
例えばあの時、告白されなかったら?
例えば、心の淀みを洗い流そうと海に行った日が、一日ずれていたとしたら?
例えば、あの日の天気が雨だったとしたら?
そもそも、海で黄昏ずにさっさと家に帰っていたら?
プロデューサーさんと鉢合わせても、声をかけてもらえなかったら?
もしもプロデューサーさんが、プロデューサーにならなかったら?
そんなifの可能性も、きっとどこかにあったんだろう
でも、プロデューサーさんはそんな多くの可能性の中から、私を連れ出す運命を選び取ってくれた
だから私は、プロデューサーさんがもたらしてくれたその幸運に報いたい
彼に、『復讐』(おんがえし)をしてあげたい
自らに降り注いだ過酷な運命にあらがって、私達のプロデューサーになってくれた
そんな彼に、私があげられる精一杯の幸福を
その為に私は、私達は......
必ず、トップアイドルになる
なあ、『..........』
俺たち遂に、こんなところまで来ちゃったよ
....今でも思うんだ、お前が生きていたらって
もしかしたら今あの夢の舞台に立っているのは、お前だったんじゃないかって
でも、そういう未来だったらきっと、俺はあの子達のプロデューサーになれなかったんだろうな
今でもおっちゃんの悪事を知らず、歌手やってたのかもしれない
だからと言って、お前が死んでよかったなんて微塵も思わない
今だって出来ることなら、時を戻してやり直したい。あの子達に出会えなくなっても、お前を助けたい
でも、思うんだ
俺、あの子達のプロデューサーになれて良かったって
お前が死んでからも、諦めないでよかったって
失ったものをどれだけ嘆いたって、時間は戻らない
だからこそ、選択を間違えてしまった未来でも、それを間違いにしないために足掻かなきゃいけないんだと、あの子達のおかげで知ることができたから
.....いろんな偶然が重なって、俺は最後まで投げ出さずにここまで来れたけど
きっと、俺も、あの子達も、ほとんど奇跡みたいな確率だったんだろうな
奇跡的な確率でプロデューサーになろうと思った俺がいて、奇跡的にアイドルになりたいと思ったあの子達がいて
そんな俺たちが、天文学的な確率で出会えたからこそ、ここまで来れたんだろう
もし何かが少しでも違ったら、きっと、こんな今は訪れなかったと思うんだ
なあ、『.......』、あの子達のステージは、空の上でも見えるか?
俺たち、お前の残した夢を背負って、お前と一緒に夢の舞台に行ってくるからさ
だからお前も、あの子達と、自分自身の夢が花咲くところを、空の上から見守っていてくれ.........
その後、決勝までの間私達は『アイドル』に全力で励み続けた
決勝に向けてのレッスンはもちろん、テレビや雑誌の仕事だって完全に無くなったわけじゃない
私達を信頼して仕事を回して、応援してくれる人達だっていた。プロデューサーさんも朝から晩まで駆けまわって、新しい仕事を取ってきてくれた
トレーナーさんの指導もこれ以上ないってくらいに厳しかったけど、でもとてつもない情熱と期待を込めて私達の魅力を磨き上げてくれた
確かに、一時は理不尽な悪意の暴風に膝を折りかけたけど、どんなに辛い状況でも、諦めず支えてくれた早苗さんとトレーナーさん、プロデューサーさん。そしてずっと応援し続けてくれたファンの皆に、何度もお互いを高め合ったライバル達.....
沢山の人達がエールを送り続けてくれたから、どんな逆境に苛まれようと、何度だって私達は立ち上がることができた
今まで出会った沢山の人に支えられて立ち上がる
映画だったらベタすぎる王道展開だけど、だからこそこれ以上ないってくらい燃えるじゃない?
例えたった一人しかいないとしても、自分を応援してくれる人の気持ちに答えたい....きっとそれが、アイドルにとって最も大事な気持ち
たったそれだけで、私達は何処にだって咲き誇れるんだから!
その思いを胸に私達は走り続け、そして............
~~~IG決勝当日、811プロ事務所~~~
奏「おはようみんな、私が最後かしら?」
P「ああ、これで全員そろったな.......お前ら、準備はいいか?」
『もちろん!!』
P「良い返事だ!じゃあ、行くぞ!」
夢、欲望、思惑、因縁......
数え切れない人の感情に満ち溢れた舞台がどんなエンディングを迎えるかは、誰にも分らない
ただ一つ、確かなことは......
"私達"は今日、全員でトップアイドルになる!!!!!
to be continued........
Chapter22が終了したところで今回はここまで―
ついに最終決戦とエンディングを残すのみとなりましたが、やっぱりクソ忙しい時期なので、次回更新はまた時間が開きます。
少なくとも日曜、運が悪ければ来週いっぱいの間本編の更新は出来ません
代わりに、pixivの方で今まで投下した話を読みやすいようにぱぱっと加筆修正したものを少しずつ投稿していきますので、時間があればそちらの方で今までの話を振り返ってみてください
ナターリアと呟くだけで大量のスネークに囲まれるようになるなんて誰が予想しただろうか
Chapter23、投下していきます
Chapter23「Last stage curtain call」
決勝当日
開演の2時間ほど前に、私達は控室に入る
裏口からドームの中に入る時にちらと見えた入り口には、既に終わりの見えない行列が出来ていた
それだけこの国において、『アイドル』という存在は人々の心を動かし、夢を託される存在なのだろう
.....そう、今私達はProject,Queenと共に、何万人という人々の夢を背負っている
それをしっかりと理解した上で、改めて決意を固める
どっちのファンとかは関係ない
ここまで私達を応援しに来てくれた全ての人達の為に、無様な姿は絶対に見せない
思う事は、色々ある
それでも、私達は揺らがない。余計な雑念なんか、いらない
今日やる事はただ一つ
アイドルとして全力でファンを楽しませて、アイドルである自分自身を楽しんで
世界で一番楽しいセカイを作り上げる事!!!
ステージが始まるまでの間、私達はその時間をフルに使い、本番に向けて何度も確認と調整を重ねた
特にミーティングは、残された時間の半分以上をかけて入念に行われた
本番の予定を一つ一つ確認するたびに、私達は噛み締める
このライブが、とても大きな危険を秘めている事
今、私達は、少し足を滑らせば即座に奈落に落ちる、細い綱の上を歩いているという事
そして、同時に理解する
それでも尚、勝機はあると........
最終調整の時間が終わり、ステージへ向かう
その途中、あの男に出会った
そしてその傍らには、もう一人......
屋久井「やあ君たち、本当に来てしまったんだね」
美嘉「当然だよ、来ない理由なんてないじゃん」
奏「むしろ、貴方たちにとっては好都合なんじゃない?自分にとって邪魔な人間を、纏めて始末できるんだから」
屋久井「いやまぁ、棄権するならそれはそれで楽だったのだがね。確かに君のその顔を見ると、この手でぐちゃぐちゃにしてやりたくなってきたよ」
P「隣の方は....ああ、891プロのプロデューサーですか。初めましてで、いいんだよな?」
891P「そのはずですが、なにか?」
P「....いえ、別に」
屋久井「ところで君たち、このままライブが始まればどうなるか、予想はついているのかね?」
フレデリカ「ファンの皆がハッピーになる!!」
屋久井「......本気で言っているのかい?まあいい、ならせいぜい頑張ることだね」
屋久井「だがP君、君は本当にいいのかな?このままこいつらをステージに上げれば、君はまた私に大切な人を奪われるんだぞ?」
P「...........」
屋久井「それに私のの隣にいるこの男は、君の愛しの女を枕に売り出した張本人だ。その上、自分はトップアイドルユニットのプロデューサーとして、のうのうと生きてる。憎くないかい?」
891P「ちょっと社長、これでも私、業界一クリーンなプロデューサーとして活動しているんですから、あんまり人聞きの悪いこと言わないでくださいよ~」
891P「まぁ、全部事実ですけども」
P「......................」
屋久井「私と彼が憎いだろう?殺してやりたいだろう?いいんだぞ一発くらい殴ってみても、ん~?」
煽るように下卑た笑みをプロデューサーさんの前に差し出しされる
その顔を見たプロデューサーさんから、一瞬だけ冷たい殺気が漏れた
......でも、すぐに心底興味なさげな顔になって、冷たい視線でその笑みを見つめる
P「どーでもいいんで、話が済んだんならさっさとどいてくれます?俺たちステージに行かなきゃならないんで」
屋久井「どうでもいい....だと?」
P「そりゃああんたにも、そっちのプロデューサーにも、色々思うところはありますがね。それは今、ステージに持ちこむもんじゃない」
P「それに.......今は本当に、あんた達に興味を向けてる余裕はないんですよ。なぁ、お前ら?」
周子「そうやねー、あたし達これから、あの『Project,Queen』と一緒にライブするんだもん。それ以外のこと考える余裕、ないかなー」
志希「あたし達別にキミたちと戦うわけじゃないしー、正直なところ、キミたちにはぜんぜん興味わかないんだよねー」
P「そっちのプロデューサーさんも、こんな所で油売らず、自分の担当の所に行ってあげた方がいいんじゃないですか?」
P「.........それとも、彼女たちの所へ向かえない事情がある、とか?」
891P「....................」
屋久井「フン、まあ精々、無様な姿を見せないように頑張ることだね」
P「ご期待に沿えるよう、頑張らせていただきますよ。それじゃあ、また.....」
ドス黒い悪意を振り払い、プロデューサーさんはステージの方向へ歩いていく
私達も、その後に続いていく
今私達に見えているものは、ただ一つだけ
私達を待っている人達がいる、あの煌く夢の舞台.....
ただそれだけしか、見えていない
891P「思ったより落ち着いてましたね。それとも、プレッシャーのかかりすぎで、頭がおかしくなったんですかね?」
屋久井「さあね......まあ、なんでもいいさ。それよりも891P君、手筈は整っているな?」
891P「勿論です、準備は滞りなく完了しています.......」
屋久井「そうか、ならそのままよろしく頼むよ」
屋久井「811プロ.....望み通りこのIGを、貴様らの墓場にしてやろう!!」
~~~~ 一方、客席では ~~~~
早苗「おー!こりゃいい席ねー!」
ベテトレ「Pが運営にかけ合わせて、一番高い席のチケットを取ってくれたからな」
早苗「数万円するんだっけ?やっぱIGの決勝ともなると、値段も跳ね上がるのねー」
ベテトレ「だがその分、一番アイドルに近づける場所でもある。LiPPSの集大成を見届けるのには、これ以上ないくらいに相応しい場所だろう」
早苗「でも、皆大丈夫かしら?きっと891プロの妨害があるでしょう?」
ベテトレ「大丈夫だ、あの子達を信じて、見届けてやれ。ファンである私達が曇っていては、彼女達が思いっきり輝けないだろう?」
早苗「......そうね!お姉さん精一杯応援するわ!こう見えても昔、応援団長だってやったんだから!」
早苗「って、そんなこと言ってたら早速コイントスが始まるわよ!第一審査は先攻の方がいいのよね?」
ベテトレ「.....ああ、そうだ」
早苗「よしっ!先攻出ろ先攻出ろー!」
ベテトレ「.....................」
ピンッ!カラカラカラカラン........
デンッ!!
『Project,Queen』
早苗「って、あぁ!先攻、取られちゃった......」
ベテトレ「いや、これでいいんだ」
早苗「えっ?」
ベテトレ「第一審査で先攻を取られるのは想定済みだ。大丈夫、彼女たちならきっと、上手くやってくれるさ」
P「"予定通り"、第一審査は後攻になったな。お前ら、作戦は頭に入ってるか?」
美嘉「もちろん!この日の為に毎日練習してきたからね★」
フレデリカ「それより、もうすぐProject,Queenのステージが始まるよ!みんなで応援しよー♪」
周子「せやねー♪こんな大きなお祭りなんだから、あたし達だって楽しまないとね!」
~~~♪~~~~♪~~♪~~~♪~~~
フレー!フレー!
ミンナガンバッテー!
チョットフレチャン、シキチャン!ソレイジョウハチカヅキスギダッテ!
P(やはり、第一審査はリーダーのちとせを前に出してきたか。それにしても凄い存在感だ....まるでファンタジーのような容姿もそうだが、何よりもこの歌声.....)
P(脳と心臓に直接突き刺さって、身体が甘く溶かされていくような感覚がする....何十年に一度出るか出ないかの歌姫だ。やっぱおっちゃん、見る目はあるんだなぁ)
だからこそ、彼女達の抱いた夢に敬意を払って、全力で相手してやらないとな!!
ちとせ「あー.....ちょっと疲れちゃったわ」
千夜「お疲れさまですお嬢様。次の出番までしばらくありますので、今のうちにお休みください」
颯「ちとせちゃん凄かったよー!流石あたし達のリーダーだね!」
凪「トップバッターだったのもあると思いますが、観客の皆さん完全にメロメロになってましたよ。まさにちとせ無双」
颯「千歳ちゃんが頑張ってくれた分、第2審査はあたし達が繋いであげるからね!」
ちとせ「ごめんね?私あまり体力がないから....」
千夜「仕方ありません、お嬢様のそれは生まれつきの物ですから。それでも全力でステージで歌うそのお姿は、本当に立派でしたよ。隣に立つ私も、心が跳び跳ねるように沸き立ちました」
ちとせ「そっか。千夜ちゃんが喜んでくれたなら、私も嬉しいな」
ちとせ「....ところで、プロデューサーは?」
颯「スタッフさんと次の審査の演出の事話しに行くって。もう!折角ちとせちゃんが頑張ったのに、肝心なときにいないんだから!」
ちとせ(.....やっぱり、仕掛けに行くのね)
私の魔法、どうか、役に立ちますように......
第一審査後攻、LiPPSの曲が始まる
先攻のProject,Queenの魅力的なパフォーマンスによって、大きなプレッシャーを押し付けられたはずだったが、彼女達は全く動じることなく自分たちの魅力を100%......
いや、それ以上の輝きを放っていた
だが、それでもまだ、足りない
トップバッターを取られたのもあるが、単純にProject,Queenのポテンシャルが非常に高く、彼女たちが遺していったハードルも、それ相応に高いものになってしまったのだ
流石に、891プロが事務所の総力を挙げて押し上げてきたユニット......『女王』の名を冠するに相応しい貫禄だ
その事実を、悔しくも歯を食いしばって受け止めるしかなかったその時、事件は起きた
LiPPSが歌う曲を流していた音響が、ピタリと止まったのだ
もちろん、891プロが仕組んだものだろう
ステージは一瞬、静寂に包まれる
俺は目の前で起こったその悪意ある現実に.......
P(......よしっ、計画通り!!)
心の中で小さくガッツポーズを決めた
おっちゃん、確かにちとせちゃんはこの世に二つとない才能を持った歌姫だ
だけどな.........
『歌姫』は、こっちにだって飛びっきりのがいるんだよ!!
もしLiPPSの中で、『一番』歌が上手いのは誰かと聞かれれば
全員が間違いなく、彼女を指名するだろう
811プロが証明する最高の化学式、『歌姫 一ノ瀬志希』を!
あたしとパパの一番の繋がりって言ったら、まあケミカルだね~
パパの教えてくれる化学式が楽しくって、パパの期待に応えたくって、パパと一緒に研究したくって
その為に色んな化学式を弄り回して、色んな反応を起こしてきたんだから
じゃあ、ママとの一番の繋がりは?
ちょっと前まで、ママを見捨てて海の向こうへ渡ったあたしに、そんなものは残されてないと思ってた
だけど、アイドルとして生きて、ようやく気付いた
あたしにはちゃんと、ママから受け継いだ物があったことを
(ママ、今日もあれ歌って~)
(あらあら、志希は本当にあの歌が好きね)
(うん!ママが好きな歌だから!それに、ママが歌ってるのが大好きだから、あたしも歌うのが好き!)
(まあ!志希にそう言ってもらえると嬉しいわ!ママも志希の歌、大好きよ)
(ホント!?じゃあ一緒に歌おう!)
(もちろん!じゃあいくわよ?)
まいにちまいにち僕らは鉄板の~~.............................♪
志希「~~~♪~~~~♪~~♪~~♪~~~~♪~~~~♪」
スーツ姿の観客「すげぇ、すげえよおい....」
清楚な観客「こんな綺麗な歌声が、この世にあるなんて.....」
志希フレ親衛隊1「志希さんのアカペラ、まじ最高っス.....!」
志希フレ親衛隊2「天使か?ヤバイ惚れそう....いやもう惚れてたわ、デビューの時から惚れてたわ」
屋久井(アカペラアレンジ、だと!?)
屋久井(どういう事だ!?音響が落ちるのを読んでいたという事か?一体何故!?)
屋久井(マズイ......音源が無くなって静かになったことで、逆に歌声を際立たせるための演出に利用されてしまっている!
屋久井「891P君!すぐに音源を戻すんだ!」
891P「は、はい!かしこまりました!」
屋久井(急に音源が戻れば、その分バランスを崩すはず.....これで終わりだ)
891P君に指示を出した数秒後、唐突に音源が復活する
これで奴のアカペラも崩れ....ッ!?
『~~~♪~~♪~~~~♪』
音源が復旧したその瞬間、奴の崩れるはずだったアカペラは、突如入り込んできた残りのアイドル達に巻きとられ、より強く、盛り上がる歌声へと変貌した
そして、自らの失策に気づく
音源を復旧させたその瞬間こそ、曲の最後の盛り上がり
大サビに突入した、まさにその瞬間だったという事を......
おっちゃん、最近ずっと会って無かったから、すっかり忘れちまったみたいだな
昔のあんた、何年も俺と一緒に仕事してた頃のあんたなら、すぐに気付けただろうに
P「よりにもよってこの俺に、『歌』で勝負を仕掛けるなんて.......」
そんなの、余りにも相手が悪すぎるだろ?
第一審査 結果
LiPPS 777543票(累計777543票)
Project,Queen 819225票(累計819225票)
P「まっ、かっこつけても逆転までは出来ねぇか」
周子「やっぱトップバッターの補正もあるだろうけど......それを差し引いても、本当に凄いパフォーマンスだったよ」
奏「でも、志希のおかげでしっかり食らいつくことができたわ。お手柄ね、志希」
志希「プロデューサーが音響がない時に映える歌い方を仕込んでくれたおかげだよ。でも、ちとせちゃんがあの手紙を送ってくれなかったら、やばかったかもねー」
P「ああ、本当にあの子には感謝しかねぇよ.....」
~~~ 2週間前、事務所 ~~~
P「みんな、この手紙を見てほしい」
フレデリカ「綺麗な手紙だねー!ファンレター?」
P「うーん....ファンレターというわけじゃないと思うが、まあ俺たちのことを応援してくれてるみたいだな」
美嘉「どういう事?」
P「とにかく中身を見てくれ、その方が早い」
プロデューサーさんが机に広げた手紙を、皆が一斉にのぞき込む
奏「.......これって!」
P「彼女もIGの決勝っていう最高のステージを、汚い手で汚されたくないんだろう。そりゃそうだ、あの子だって『アイドル』なんだから」
P「きっと彼女は、自分を取り巻く困難に葛藤し続けて、それでも自分の信念を貫いて、この手紙を俺たちに託してくれたんだろうな」
奏「だったら、私達はその想いに応えないといけないわね」
P「ああ、だから今日のレッスンからは、この手紙の内容を鑑みてメニューを組んでいく」
P「見てろよおっちゃん......あんたの腐った妨害を、煌く宝石に変えてやるよ」
周子「プレゼントの仕分け中にあの手紙を見つけた時はびっくりしたねー、決勝でこんな事されるよって、妨害の内容がズラーっと書かれてたんだもん」
奏「だからこそ私達は、その妨害を逆に利用できるように練習を重ねることができた.....彼女の決意を無駄にしないためにも、必ずLIVEを成功させるわよ」
美嘉「手紙によると、次はあたし達が先攻なんだよね?」
P「そうだ。おそらくリーダーのちとせの体力を回復させたいんだろう、残りの3人が前に出てくるはずだ。だが、リーダーが後ろに下がっているからと言って油断は出来ない。むしろちとせの頑張りに報いる為に全力で来るだろうな」
P「だが、この隙に勝負を仕掛けに行かなきゃ俺たちに勝機はないだろう。折角の先攻だ、一気にプレッシャーをかけに行くぞ!」
美嘉「次の審査は照明が落とされるんだっけ?なんか覇王エンジェルズの時に比べて、あたし達への妨害ちょっと甘くない?あの時は音響も照明も一斉に落ちたし、物理的に怪我までさせたのに」
P「向こうとしても、ProjectQueenの最後のステージが終わるまでは、審査が中止になるほど大きな事はしたくないんだろう。折角IGで優勝しても、審査が途中で終わったってミソが付けば、その後芸能界の覇権を取るのに支障が出るかもしれないからな」
P「だが、覇王エンジェルズはあれだけの妨害を食らっても動じない精神力があった。だからこそ、無理やりにも初手で一気に潰しにかかる必要があったんだろう。半面、俺たちにはそうしてこないって事は.......ムカつくことに、舐められてんだろうな」
奏「舐められてる.....ふーん」
周子「へぇ.....成程ねぇ。じゃあその油断に付け込ませてもらおうよ」
P「ああ、一発かまして、俺たちを舐めた事後悔させてやれ。その為にもお前ら、ちゃんと例の物は用意できてるか?」
奏「ええ、ちゃんと5人分用意してあるわよ」
志希「あたしも、頼まれてた物はばっちり作ってきたよー」
フレデリカ「"秘策"も、ばっちり用意してあるもんね!準備万端だよー♪」
P「OK!じゃあ次の審査も楽しんでこい!!」
第一審査では予定を狂わされたが、次はこうはいかない
偶然なのか狙ってやったのかはわからないが、確かにあのアカペラアレンジには驚かされた
だが、照明が落とされることの対策までは考えているか?
仮に考えていたとしても、さっきの様にプラスに変えることは出来ないだろう。精々損をできるだけ軽減させるのが関の山だ
なぜなら、誰からも姿見えなくなれば、アイドルはその価値を失くすから
アイドルの魅力は歌そのものではなく、"歌う姿"にこそ存在するからだ
必然、その姿が見えなくなれば、魅力は崩壊する
それに、人間は本能的に暗闇を恐れる物
明るいステージが突如闇に覆われたら、ステージに立つ本人も、観客達も、少なからず動揺し、会場は恐怖の渦で満たされるだろう
あいつらにその恐怖を覆すことなんぞ、出来やしない
891P(これで、終わりだ.....!)
奴等の絶望を目に浮かべながら、照明機器のコードを断つ
まるで、ギロチンを支える糸を切断する、処刑人のような感覚だった
だが、ただ一つだけ誤算があったとすれば
処刑台に捧げられていた首が、自分の物であったことだ
一瞬しか光ることのない花火が美しいのは、暗い夜に撃ち上げるから
周りに光がないからこそ、その一瞬の輝きが、より一層美しく映えるようになる
だから、今ここにある闇に包まれた世界こそ、私達の花火を撃ち上げるに相応しい舞台でしょう?
照明が落ちるのと同時に、私達は胸に潜ませた秘策を投げ上げる
投げ上げた物が最高点へと到達すると、それは鮮やかな色の煙を噴きだした
観客1「なんだ、あの鮮やかな色の煙は?」
観客2「綺麗.....それに、いい匂い.....」
流石に火薬を使うことは出来ないけれど、撃ちあがった志希特性の『香り付き煙玉』は、本物の花火より輝いて見えた
突然訪れた暗闇に動揺していた観客の目が、再び私達に集まる
そのチャンスを見逃さず、私達は二つ目の秘策、ペンライトを取り出した
虚空に向かって、光のサインを描く
姿が見えなくなって、不安に苛まれているファンの皆に証明するの
私達は、ここに居るって!!
891P(.....だが、足りないっ!!)
891P(確かに暗闇への対策はしてきたみたいだが、詰めが甘い!それじゃまだ足りないんだよ!)
891P(煙もペンライトも、誤魔化せるのは一瞬だけ!照明が戻らない以上、次第にまた"見えない事"の不安に取り込まれていく!少し驚かされたが、やはりここが奴等の最後......ッ!?)
二つの秘策をもってしても、この暗闇を完全に覆すことは出来ないでしょう
そんなの当然、分かってる
だからこそ、私達はもう一つ、絶対的な秘策を用意した
その秘策は、私たちでは.......いえ、きっとどんなに凄いアイドルだって実行できないでしょう
ただ一人、彼女を除いて
たとえ世界がどれ程の暗闇に覆われようとも、彼女のその笑顔は、『みんながハッピーでいられるように』と願う純粋な心は、揺らがない
いつだって太陽は、彼女の中にある!
どんなん時もアタシは、たくさんの太陽に照らされていた
ママやパパに、811プロのみんなに、ファンのみんな.....
アタシと出会ってくれた人達の笑顔が、アタシを照らし続けてくれた
だからアタシも、恩返ししよう!
みんなが照らしてくれて、ぐんぐん成長して、こんなに大きくなれたから
今度はアタシが、みんなを照らす太陽になるんだ!
フレデリカ「みんなー!大丈夫、アタシ達はここにいるよー♪」
フレデリカ「でもでも~、こんなに真っ暗だとみんなげんなりしちゃうよね~?そんな時は、隣の人と手を握ってみて!あったかくて、不安なんてぜーんぶ吹っ飛んじゃうよ!」
フレデリカ「みんなで手を繋いで、一緒に歌って踊ってはしゃいじゃおう♪きっと楽しいよ!」
彼女の声が、観客の心を照らしていく
照らされた心達が、手を取り合い繋がっていく
フレデリカ「じゃあいくよー?フンフンフフーン、フレデリカー!」
『フンフンフフーン、フレデリカー!!!』
何万人の人々の心が、今一つに繋がっていた
目に見えなくても、きっと彼らの瞳には映っているのだろう
太陽のように眩しい、フレデリカのとびきりの笑顔が!
颯「フンフンフフーン、フレデリカ―!」
凪「はーフン、洗脳フンされてフーンますねデリカ」
千夜「お前の方が重傷の様ですが」
颯「でも、これちょっとまずくない?観客の皆の心、大分持ってかれちゃってるよ?てか、はー達もなんだけどさ」
凪「照明のアクシデントと見せかけて、実は派手な演出を仕掛ける布石だったとは、人ができない事を平然とやってくれますね。そこに痺れたり憧れたりします」
ちとせ「..................」
千夜「仕方ありません。私達が全力で、あれより上の刺激を観客に与えてやるしかないでしょう。お嬢様の為にも、私達3人で.....」
ちとせ「いえ、私も前に出るわ」
千夜「お嬢様!?」
颯「ダメだよ!ちとせちゃんまだ第1審査の疲れが残ってるんでしょ?あんまり無理したら、また貧血で倒れちゃうよ!?」
ちとせ「それでも、やらなきゃいけないわ。LiPPSには、私達全員で立ち向かわなきゃ勝てない。一人も欠けることなく、全員でね」
ちとせ「それに....この最高の舞台で自分の限界を超えられなきゃ、トップアイドルになんてきっとなれないわ」
千夜「.....本気の様ですね、お嬢様」
ちとせ「ええ、だからみんな、お願い」
千夜「....それがお嬢様の望みならば、承ります」
颯「千夜ちゃん!?」
千夜「.......と、いつもの私なら、そう言うのでしょうね」
ちとせ「えっ?」
千夜「お嬢様、今回ばかりは非礼をお許しください。第2審査は、私とはーとなーがメインでやらせてもらいます。お嬢様は、なるべく体力を温存してください」
ちとせ「でも、手を抜いて勝てる相手じゃないわよ?」
千夜「手を抜くのではありません。勝つために全員が最善を尽くすのです。LiPPSに勝つために、最後の審査でお嬢様が全力を出せるよう、私達が支えるのですよ」
千夜「それに、もう私達はお嬢様に心配されなければならない程弱いアイドルではありません。どうか私達を、信頼していただけないでしょうか?」
颯「そうだよ!はー達だってやればできるんだから、もっとはー達を頼ってよ!」
凪「凪もはーちゃんと同じ気持ちです、双子ですので。シンクロ召喚ですね」
ちとせ「....分かった、みんなを信じるよ」
千夜「ありがとうございます、お嬢様」
ちとせ「それにしても、千夜ちゃんも変わったね。私の意見に反発するなんて、今まで無かったのに」
千夜「.....申し訳ありません」
ちとせ「違うよ千夜ちゃん、私今すっごく嬉しいの」
千夜「えっ?」
ちとせ「ちゃんと千夜ちゃんが、私以外の生きがいを見つけてくれたこと。アイドル、楽しいんでしょう?」
千夜「そんな、私はお嬢様の望みを叶えたいから........いえ、お嬢様のおっしゃる通りかもしれません
千夜「確かに今は、私自身がアイドルを楽しんでいるから、ここに立っている。そんな気がします」
ちとせ「そっか....ねぇ、千夜ちゃん。私今すっごく幸せなの。なんでか分かる?」
千夜「?.....一体、何故ですか?」
ちとせ「ずっと想い続けていた願いが、一つ叶ったからだよ」
ちとせ「だから、この審査が終わったら、幸せ次いでにもう一つみんなに話したいことがあるんだけど、いいかな?」
颯「いいよー!」凪「ペネ(良し)」千夜「もちろんです」
ちとせ「あら、みんな即答?」
颯「だって、ちとせちゃんが話したいことがあるなんて、すっごく珍しいじゃん!」
颯「それに.....なんかすっごく大事な話の様な気がするから、聞かないと後悔しそうだし」
千夜「何年も一緒にいるのですから、分かりますよ.........ですが、今は」
ちとせ「ええ、今はステージに立って、皆を魅了してくるのが先決ね。それじゃあ、行くわよ!」
私達『Project,Queen』全員で、会場の皆を虜にしてしまいましょう♪
第二審査 結果
LiPPS 835678票(累計1613221票)
Project,Queen 813443票(累計1632668票)
P「!?」
周子「よしっ!フレちゃんのおかげでリードを縮められたよ!この勢いで第3審査で.....」
P「いや、かなりマズイぞこれ.....」
周子「えっ?」
P「俺の見立てだと、この第2審査で逆転できる予想だった、いや、逆転できてないとダメなんだ!」
美嘉「逆転できないとダメ?」
P「第3審査のPrjectQueenは後攻.....大トリだ。当然、その分観客に与える印象は非常に強くなる。だからこそ、リーダーのちとせちゃんが体力を温存したこの第2審査でリードを取らなきゃいけなかったのに........」
志希「さっきの審査で前に出てた3人、すっごい集中力だったからねー」
フレデリカ「きっと、ちとせちゃんの為に、すっごく頑張ったんだろうねー♪」
P「そりゃあ、あの3人が全力を出してくることは想定していたが、それでも逆転できる予想だった。つまり、この土壇場であの子達はまた一つ進化したって事か!やっぱり、一筋縄じゃ行かねぇか」
P「厳しい状況になってしまったが、やるしかない。最後の秘策は残ってるし、どうにか先攻で一気に観客の心を持ってくしか......」
奏「待って!みんな、モニターを見て」
P「えっ?」
会場の巨大なモニターが、IG最後のコイントスを映し出す
そこに映し出されたコインは、『Project,Queen』の面を上にして止まっていた
それは同時に、私達『LiPPS』が後攻.....大トリを務める事になったことを告げる、福音でもあった
P「俺たちが後攻だと!?大トリはProjectQueenになるよう細工がされてたんじゃ!?」
奏「理由は分からない.......でも、これだけは確かよ」
勝機はまだ、十二分に残ってる
きっとこれが、ハッピーエンドを掴むための、最後のチャンスよ!!
to be continued.........
Chapter23終了したところで、今回はここまで―
次回、決着
更新は次の日曜以降になります
総選挙中間発表来ましたね(今更)
Cu暫定1位の志希を中心にLiPPSメンバーいい感じに順位高くていいですねー
でもスネークだったりポテトだったりアーロンだったりとやたら混沌とした総選挙になってるので、皆さん最後まで気を抜かずに推しを推していきましょう
本編は今日の夜(20時以降?)予定です
でも一番驚いたのはりあむ、お前だ
りんごと歯と白黒と強弱はどうなるやら?
平成中に終わる?
Chhapter24 投下始めていきます
>>271 ギリ令和いきそう(小声)
なんとかGW中には終わる....はず
今日という日が終われば、明日は来ないかもしれない
毎日そんな風に、終わることへの恐怖に震えて生きている
でも、今だけは
死ぬことよりも、怖い事がある
例え、今日この命が終わるとしても、この最高のステージには、自分自身の力で立って、誇りを持って頂点を掴みたい
勝つためでも、納得の出来ない終わりにするくらいなら、死んだ方がマシよ
人生で一番の大舞台に立っているんだもの、誰だってそう思うでしょ?
屋久井「おい貴様!ウチを大トリにしろと言ったじゃないか!?あんだけ金を握らせたのに、今更裏切る気か!?」
スタッフ「そんな!?あんたたちが変更の指示を出したんじゃないんですか!?」
891P「何を言ってる、そんなものは出していないぞ?」
スタッフ「嘘だ!だって、黒埼さんが報告にきましたよ!?計画に変更があるから、次の審査を先攻に変えてほしいって!」
891P「なんだって!?あいつ何考えてッ!?」
891P「いやそもそも、私達の計画を知っていたというのか!?まさか奴らに計画が読まれていたのも!」
屋久井「あの女、余計な真似を.....!!」
891P「しゃ、社長.....いかがいたしましょう?」
屋久井「仕方がない、こうなったら本当に計画変更だ。811プロは最終審査で徹底的に潰す、妨害の内容が漏れていたとするなら、それも変更しなければならないだろう」
屋久井「すぐに次の策を考えるから、891P君は黒埼君に事実確認をしに行きなさい。もし本当に我々の計画を知っていたとするなら、IGが終わった後、彼女には消えてもらわなければならない」
891P「か、かしこまりました!!」
~~~ ステージ裏 ~~~
891P「はぁ....はぁ....あ、貴方たち」
颯「....なぁに、おじさん?そんなに息を切らして、今更何しに来たのさ?」
891P「おじさん、だと?私は貴方たちのプロデューサーですよ?貴方たちの勝利の為に、こうやって駆けつけたのに、酷い言い草じゃあ」
ちとせ「とぼけるの、やめましょう?」
891P「ッ....!」
ちとせ「私の魔法に気づいたから、急いで確認しに来たんでしょ?私が貴方たちにとって、消さなければならない人間なのか」
颯「ちとせちゃんから全部聞いたよ。プロデューサーに社長、二人でずっと悪い事してきたんでしょ?」
891P「そんな、違いますよ。みなさん黒埼さんのくだらない妄想に付き合わされているだけです、目を覚ましてくださ.....」
千夜「おい、今なんと言った?」
891P「!?」
千夜「くだらないだと?お前たちの身勝手な欲望に振り回され、心臓に杭を打たれたような苦しみに悶え続け、それでも、人々の夢を壊さぬよう一人で戦い続けたお嬢様の意思を、くだらないだと?」
千夜「.................ふざけるなァ!!」
凪「吐き気を催す邪悪とは、まさにこのことですね、プロデューサー?」
凪「.......いや、失礼しました。もう貴方は、私達のプロデューサーではありませんでしたね。Ppayも、今日でサービス終了か」
891P「き、貴様ら.....!」
千夜「よくも今までお嬢様を弄んでくれましたね......私は、"私達"は、お前を絶対に許さない」
颯「千夜ちゃんの言う通りだよ、『アイドル』の全てを汚し続けたあんたたちを、はー達は絶対に許さないから」
891P「貴様ら、分かっているのか?貴様らがIGの決勝まで来れたのは、私達の"助力"があったからだぞ!?」
ちとせ「だからこそ、よ。自分の最期の夢くらい、自分自身の力で掴み取るわ。女の子なんだから当然でしょ?」
ちとせ「それに、貴方たちの助力なんてなくても、私たちはきっとこの場所に立っていたわ。何年かかっても、きっとたどり着いた。だって、私達『ProjectQueen』の力を合わせれば、どんな運命にも打ち勝てたはずだもの」
891P「ちとせ、貴様ァ.....!」
千夜「お前はもう、その汚らわしい口を開くな。二度とお嬢様の視界に入るな、さもなくば.......」
凪「おっと、千夜ちゃんが本気の目になっていますね。あれはやるといったらやる、そんなスゴみがある目です。こっわ」
颯「でも、はやくはー達の前から消えてほしいのは同意かな。あたし達これから、サイッコーのステージで、世界一キラキラ輝いてくるんだから。だから、その邪魔はしないでよ?」
891P「.....そうか。わかったもういい、勝手にしろ!」
891P「ただし、我々を裏切るのなら容赦はしない。IGが終わった後も、アイドルでいられると思うな!必ず、後悔させてやる.......!」
ちとせ「やれるもんならやってみなさい、どの道もう消える寸前の灯だけどね。それより、貴方たちは自分たちの心配をした方がいいわよ?」
891P「なんだと?」
ちとせ「勝敗がどうなるとしても、私達とLiPPSがぶつかる以上、IGが終わる頃には世界が変わっているわ。その変化に、貴方たちは抗えない。だから、精々怯えていなさい?」
多くの夢を踏みにじった貴方たちの業は、白木の杭に貫かれる
もう二度と、日の当たる場所なんて歩けないから........!
司会が、Project,Queenの名を高く呼び上げる
それに続いて、狂ったような歓声が、雷の如く鳴り響く
.....うん、もう大丈夫
ずっと私を縛り付けていた鎖は、もう存在しない
今私の心には、雲一つない、清々しいほど鮮やかな快晴の空が広がっている
暖かい陽の光に照らされて、ずっと一緒に歩いてきた愛する人達と共に、いのちの灯を燃やしている
私は今日ここで、最高に輝ける。輝いて見せる
そして、『LiPPS』
貴方たちには、本当に驚かされてばかりだった
どんな妨害も利用して、逆に自分たちを魅せる為の武器へと変える
まるで、魔法使いの様だった
でもね、魔法を使えるのは貴方たちだけじゃないの
"私達"にもまだ、とっておきの魔法が残っている
私達だからこそ使える、数多の人々を魅了して、この会場を支配できる魔法が
アイドルの"女王"の座は、私達の物よ!
奏「Project,Queenの最後の曲は、『Fascinate』ね」
フレデリカ「確か、ちとせちゃんと千夜ちゃんのデュエット曲だったね。準決勝の最初の審査で歌ってたやつだ!」
P「......いや、ちょっと待て。あの時聞いたのと、何かが違う。裏で何か別の音が入っているような.......!?」
P「これ、『O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!』だ!予選の時の、久川姉妹のデュエット曲!」
美嘉「まさか、マッシュアップ!?あの二つ、全然曲調違うのに!」
志希「でも全然違和感ない.....ううん、もう完全に新しい一曲として生まれ変わってる。すっごく面白くて、興味深い面白い反応だね~!」
周子「"秘策"があるのは、あたし達だけじゃなかったって事か。こりゃ本格的にやばくなってきたね」
奏「この土壇場で、何度も進化を重ねる.......本当に凄いアイドル達ね。でも、勝機が無くなったわけじゃない」
奏「向こうが戦いの中で成長するのなら、私達もそれより一歩先へ進化すれば、きっと勝てる。私達の力を合わせれば、きっとそれが出来る!」
奏「そうよね、プロデューサーさん?」
P「....ああ!俺たちにだってまだ最後の秘策が残ってるしな!」
P「それに、俺たちの一番の武器は、今もずっと胸の内で輝いてるだろ?」
周子「あたしたちの.......」
美嘉「一番の武器......?」
P「目を閉じて、自分の鼓動に耳を澄ませてみろ。感じるだろ?いつだってお前たちの心で燃えているものが」
P「思い出せ、どんな逆境の上でもブレることなかった、俺たち811プロの信念の炎を!」
志希「........楽しむこと」
フレデリカ「それに楽しんで、みんなを楽しませる事!」
P「お見事!」
美嘉「うん、確かに感じる.....ステージに立つのが楽しみ過ぎて、待ちきれなくなってる自分が!」
周子「こんなに期待で心がバクバク脈打ってるの、人生で初めてだわ。でもこういうの、嫌いじゃないかな♪」
奏「どんなステージでも、私達は"楽しみたい"という気持ちを貫いてきた。なら今回も.....ううん、この大舞台でこそ、全力で楽しみましょう」
奏「そうすればきっと、ファンのみんなにこの炎が伝わる.....みんなの"楽しむ心"を、燃え上がらせることができる!」
奏「このセカイの感情を、"楽"一色に変えてみせましょう。それが、"トップアイドル"だから!!」
自分の心の内に、眩く輝くものがあることを確かに感じ取った私達の心が、今一つに繋がる
繋がった心が、私達の胸の奥に灯った炎を、聖火の如く熱く大きく燃え上がらせる!!
P「よし、じゃあ最後のステージをしっかり楽しむためにも、今は彼女達のステージを楽しもう!」
『はーい!』
ソウダ!セッカクペンライトアルンダカラコレフッテオウエンシヨウヨ
イイネー!アタシタチモカンキャクニナッタミタイ!
イエーイ!ブンブン♪
スゴッ!フレチャンフリツケカンペキヤン!
P(だが、ここまで計画が崩れている以上、向こうも何も手を打たないなんてことはないだろう。きっとちとせちゃんが出してくれた手紙の内容から外れた行動を取ってくる)
P(俺もプロデューサーとして、全力で彼女達を守らなければ.......)
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!
颯「みんなー!盛り上げてくれて、本当にありがとー!!」
千夜「はい、今回ばかりは本当に、お前たちに感謝していますよ」
凪「千夜ちゃんがデレた、だと......?会場の皆さん、今です!シャッターチャンス!」
千夜「お、おい!やめろ!茶化すな!」
ちとせ「いいじゃない千夜ちゃん♪ほら、最後なんだし、ここまで私達を応援してくれたファンのみんなに、今日一番の笑顔を送りましょう?」
ちとせ「大丈夫だよ、千夜ちゃんの笑顔の可愛さは、私が一番知ってるから♪」
千夜「お、お嬢様まで......」
颯「あはは!それじゃあみんな、いっくよー!」
『Project,Queenを応援してくれて、本当にありがとう!!』
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!
~~~ ステージ裏 ~~~
『ハァ....ハァ.....』
颯「なんとか、やりきったね.....」
凪「ここまで疲れたのは、人生で初めてです。マジで倒れる5秒前です。早く控室で休みに行きたいですね」
息を切らしながら、震える手で握ったスマホの内カメラで、今の自分の顔を確かめて見る
あはは......疲れ切ってる。今にも死んじゃいそうな顔
でも、我ながら綺麗な顔してるね
まだ胸に火が灯っている内にこの鼓動を伝えようと、1つずつ指を動かしていく
屋久井「いやー、凄かったよ君たち」
891P「......お疲れさまです、皆さん」
千夜「ッ!?お前達は!」
屋久井「まさか君たちの代表曲2つをマッシュアップするとは!そんな練習していたとは知らなかったよ。891P君にも秘密にしていたのかい?」
ちとせ「そうよ、驚かせてあげようと思って」
屋久井「ああ、本当に驚かされた.........色んな意味でな」
屋久井「だが、君たちには本当に感謝しているよ。おかげで我が891プロはついに、芸能界の覇権を握ることができる」
凪「嬉しくはありませんが、どういたしまして」
颯「はー達頑張ってこんなにファンのみんなの心掴んだんだし、もう十分でしょ?LiPPSの邪魔しないでよね」
屋久井「そうだね.....まぁ、いいだろう。"私"はもう、811プロに手を出さない事を約束しよう」
千夜「信用できるとでも?」
屋久井「安心しなさい。私だって"最期"のステージを華々しく飾ってくれた英雄に嘘はつかない」
ちとせ「そう......ならいいわ。私達は控室で休ませてもらうから、またね」
肩の力を抜きながら悪魔の横をすりぬけつつ、がくがくになった足で滑稽に、されど自分の力で歩く
そのすれ違いざま、指先のまで込めていた力を抜いて心を落ち着かせ、呪文を唱えた
誘惑するような甘い声で、だけど銀の弾丸の様に冷たい呪文を
ちとせ「これで、貴方たちも終わりよ」
屋久井「フン、生意気な小娘だ」
891P「しかし、ある意味嬉しい誤算でしたね。これだけ斬新かつハイクオリティのパフォーマンスなら、わざわざ妨害しなくても」
屋久井「いや、万が一という事もある。やはり811プロにはここで散ってもらおう」
891P「ということは、やはり811プロに手を出さないというのは嘘ですか?」
屋久井「約束したのは"私"が手を出さないという事だけだ。君が手を出す分には嘘をついたことにならないだろう?」
891P「ああ、そういう事ですか。では、私はどうすれば?」
屋久井「当初予定していたセリを落とす妨害は読まれているだろうから、手を変える。ちょうど今日はいいものを持ってきていてね」ガサゴソ
屋久井「.......これだ」
891P「これって....なっ!?」
891P「拳銃じゃないですか!?」
屋久井「人に恨まれることも多い立場だからねぇ。もしもの時の為に取り寄せておいたのさ。なんとなく今日は嫌な予感がしたから持ってきていたんだけど、まさか本当に使う時が来るとはねぇ」
屋久井「というわけだ、君はステージの奥からこれで奴等の頭をぶち抜いてくれたまえ」
891P「さ、流石に殺人はマズイですよ!」
屋久井「大丈夫だよ、スタッフにはちゃんと話を付けておくから」
891P「で、ですが!」
屋久井「断ってもいいが、その時は......分かっているだろう?」
891P「ッ!?」
屋久井「君が今の様な暮らしをする事が出来るのは、私の力あってこそだ。もしそれが無くなれば、君に待ち受けているのは破滅のみ。Project,Queenを制御できなかった責任は、ちゃあんと取らないとねぇ?」
891P「そ、そんな........」
屋久井「なぁに安心なさい。ステージの奥は暗い上にセットの陰に隠れて客席からはほとんど見えないから、売った後すぐに逃げればバレやしない。仮に怪しまれても、私が何とか警察に口利きしてあげよう」
屋久井「それにまぁ、最悪当てられなくてもいい。銃声一つ聞こえるだけで、奴らも観客もパニックになるだろうからな。そうすればどの道勝つのは私達だ」
891P「ほ、本当ですか?」
屋久井「891P君。私が聞きたいのはやるかやらないか、どっちなのかだ」
891P「........やります」
屋久井「良い返事だ。私は部下に恵まれて嬉しいよ」
屋久井「撃つタイミングはそうだなぁ.....やはり銃声が綺麗に響くように、曲が始まる直前にしよう。ターゲットは誰でも構わないが、そうだなぁ........どうせならあいつがいい」
891P「あいつ、とは?」
屋久井「LiPPSのリーダーの、速水奏君だよ。最後の審査が始まる直前、リーダーが非業の死を遂げる!奴等にとって、これ以上ないくらい相応しい結末じゃないか!」
屋久井「811プロ、それにP.........散々私をコケにしてくれたが、もう、貴様らは終わりだ。あの時のように、目の前で貴様の大切なものを奪ってやる!アーハッハッハッハッ!!!」
奏「みんな、準備は出来てるわね?」
周子「もちろん!今日はあたしたちの本気、出しつくすよ!」
フレデリカ「だいじょーぶ♪みんなの背中はフレちゃんにお任せ!」
美嘉「じゃあ、フレちゃんの背中はあたし達が!みんなで支え合えば、あたし達きっとムテキだよ★」
志希「この先に広がるのは、誰も見たことのない未知の世界!楽しみ過ぎて、あたし飛んでいっちゃいそうだよ!」
奏「OK!じゃあ、行くわよ!!!」
大勢の人間が、私達を、『LiPPS』を求めて待っている場所へ
人々の夢が花となり、鮮やかに狂い咲き誇る、あの輝かしい『花園』(ステージ)へ!!!!
891P「も、もうすぐ奴らのステージが始まっちまう.....クソッ!」
891P「でも、や、殺るんだ.....殺らないと、終わりだ.....!大丈夫、すぐに逃げれば、守ってもらえる....きっと.....」
スタッフ1「君、891Pか?」
891P「ひっ!?は、はいそうです!あ、貴方達は....?」
スタッフ2「891プロの息のかかったスタッフ、ってところかしら?」
スタッフ3「話は聞いてます。ライバルのLiPPSのステージを間近で見て研究する為に、LiPPSの舞台の奥に隠れさせてほしいんですね?」
891P「そ、その通りです!」
スタッフ3「いや~素晴らしく仕事熱心な方なんですね~!なにせ」
スタッフ3(P)「891プロの為に、人殺しにまでなるんだから」
891P「へっ?」
スタッフ1(ベテトレ)「せいっ!」
891P「ぐはぁ!」
P「うひょー、相変わらず見事な技だこと」
ベテトレ「青木家直伝、確実に男をオトす108の奥義さ」
スタッフ2(早苗)「物理的に落としてどうすんのよ。でも、有り難いわね。そのままシメといて」
ベテトレ「ああ」ギチギチ
891P「あだだだだだだだだ!!!!!」
早苗「じゃあ荷物改めさせてもらうわね.......ハイ拳銃みっけ、証拠として押さえさせて貰うわよ」
早苗「んでついでに手錠をガチャリと、銃刀法違反及び殺人未遂で現行犯逮捕よ」
891P「な、何で計画がばれたんだ!?」
P「お前らの敗因はただ一つだよ。お前ら、自分の担当舐めすぎ」
891P「な、なんだと......?」
~~~ ProjectQueenのステージ終了直後 ~~~
P「一応青木さんと片桐さんに連絡してあちこち警戒してもらっているが、891プロがどこから攻めてくるか分からねぇな.......」トゥルルルルル
P「こんな時に電話か。二人が何か見つけたか......って、鳴ってたのは仕事用の携帯か。なんだこの番号?」ピッ
『そうだね.....まぁ、いいだろう。"私"はもう、811プロに手を出さない事を約束しよう』
P「!?」
この声、おっちゃん!?
『信用できるとでも?』
『安心しなさい。私だって"最期"のステージを華々しく飾ってくれた英雄に嘘はつかない』
『そう......ならいいわ。私達は控室で休ませてもらうわ、また後でね』
この電話をかけてきた当人であろう少女の声と、その仲間たちの声がどんどん小さくなっていく
だが、残った二人の男の狂った会話は依然、スピーカーを通して漏れ続けている
P「......成程ねぇ。これ、意外と常套手段だったみたいだな」
891P「まさか、また黒埼が....!」
P「あんた達が奏を撃ち抜く前に、彼女の放った銀の弾丸が、悪魔に魂売ったあんた達の心臓をぶち抜いたってわけさ」
P「そうだ、ついでにちょっとあんたの携帯借りるな」ピポパポ
891P「ふざけるな、返せ!」
ベテトレ「少し黙っていろ」ギチギチ
891P「あばばばばばば!!!!」
早苗「覚悟しなさいよ~?青木ちゃん、『あの子』を売ったあんたの事めっちゃくちゃ恨んでるから」
ベテトレ「『あの子』の分も含めて、しっかり利子を付けて返させてもらうぞ」ギチギチギチ!!
891P「あががががががgっがあg!!」
ガチャッ
屋久井『891P君、急に電話をかけてきてどうしたんだい?』
P「891P?誰それ?俺Pです!」
屋久井『なんだと......?』
P「まぁそういうこった、あんたらの作戦は失敗したんだよ」
屋久井『貴様、一体何故!?』
P「答えは、あんたのポケットの中」
屋久井『はぁ?.......これは黒埼君のスマホ!?まさか、あの時に!』
P「つまり、あんたは2回もちとせちゃんに嵌められたって事。同じ女、しかも担当アイドルに二度ひっかけられるとか、おっちゃんって"救いようのない馬鹿"だな」
屋久井『P、貴様ァ!』
P「まぁそうカッカせずにさ、ウチのLiPPSのステージを楽しんでくれよそんでもって、しっかり噛み締めるんだな」
あんたたちが今まで、どれだけ尊いものを壊し続けていたのかを!
~~~ 2週間前 ~~~
P「レッスン始まる直前で悪いが、お前たちに大事な話がある」
周子「なんなん急に改まって?というか、今の時期に出る話って全部重要やと思うけど」
P「昨日一晩ずっと考えてある結論にたどり着いたんだが.....率直に言うと、このままじゃお前らはIGの頂点を掴めない」
奏「それは、一体何故?」
P「今のお前らは、確かにトップアイドルに相応しい技術と精神を見につけている。だが、IGっつー特別な舞台では、それだけじゃ勝てない。なんつーか多分、もっとドデカいインパクトを観客に与えれないといけないんだ」
P「だが安心しろ、俺もちゃんとプロデューサーとして、最後の秘策を考えてきた」
フレデリカ「その気になる秘策とは.......CMの後で♪」
美嘉「いやいや!CMとかないから!」
P「最後の秘策、それは............」
最後のステージの衣装は、ちょっと特別
特別といっても、胸に一つ花を差し込んだだけだけど
それでもこの一輪は、何よりも特別な意味がある
『思いやり』の花言葉を持つそれは、どんな花より私達に勇気をくれる!
奏「みんなー!私達、このIGという大舞台の為に、ここまで私達を応援してくれたみんなの為に!とっておきのプレゼントを用意してきたわ!」
周子「ほうほう!それじゃ、気になるプレゼントの正体、さくっと発表しちゃいましょうか♪」
奏「ええ!それじゃあ行くわよ、皆に送るプレゼントの正体、そして、IGという最高の舞台をを締めくくるフィナーレの正体は!」
パチン、と指を鳴らす
それを合図に、モニターに"プレゼント"の正体が映し出される
同時に、会場を狂喜の嵐が包み込んだ
それは、たった5文字のアルファベット
だけど、このキラキラ輝く素晴らしき世界に、『私達』が捧げるとっておきの贈り物!!
奏「みんな、準備はいいかしら?IG決勝、最後の最後で初公開する、とっておきの完全新曲、その名も.......」
Capter24 「Tulip」
・
・
・
・
P「どうだ、この曲の感想は?」
美嘉「凄い.....まだ声が入ってないのに、凄く引き込まれる」
志希「歌詞もなかなか興味深いねー。確かにしゃべるだけなら唇っていらないし。でも」
奏「キスするために、咲いている。ロマンチックでいいじゃない」
周子「Pさんったら、よくこんなすごい曲持ってこれたね?いつの間に用意してたん?」
P「用意してたって言うか、元からあったんだよ」
美嘉「元からあった?」
P「この曲はな........俺が歌を教えてた、『あの子』が作った曲なんだ」
『!!!』
P「『あの子』は、この曲に自分自身の歌を付ける事を夢に抱いてたんだ。でも結局、それが叶うことはなかった........」
周子「それで、お蔵入りになっちゃったんやね」
P「実はな、あの子が死んでからずっと、ずっとこの曲が嫌いだった」
奏「それは、思い出してしまうから?」
P「ああ、この曲を聞くと思いだしちまうんだ。『あの子』の事を......だから、必死に忘れようとしていたんだ、でも」
フレデリカ「忘れられなかったんでしょ?思い出すと苦しくなっても、プロデューサーの大事な思い出だもんね。そんなの、忘れられる訳ないよね」
P「その通りだ。どれだけ苦しむとしても、どれだけ逃げ出したくっても、この曲のことだけは、あの子の夢が詰まったこの曲のことだけは!忘れる事が出来なかった.......俺にとって『Tulip』は、大嫌いな曲だけど、何よりも愛おしい、思い出の曲だったんだ........」
P「だからみんな、頼む!」
P「お前らの手で、この曲を完成させてやってくれ!『あの子』の夢を、あの子が何より憧れていたあの舞台へ、一緒に持っていってやってくれ!」
『任せて!!!』
奏「プロデューサーさん、私達この曲も、この曲に込められた夢も、必ず最高のステージで、何よりも華やかに咲かせてみせるから!」
だから、『あなた』もプロデューサーさんと一緒に見ていて頂戴
『あなた』と私達の夢が、花開く瞬間を!
チューリップの花言葉の由来は、オランダのある物語から来ているらしい
その昔、ある村に住む一人の少女が三人の騎士にプロポーズされた
騎士たちはそれぞれ家宝の王冠、剣、黄金を少女に贈ったが、優しい少女は自分を愛してくれた三人の騎士を思いやるあまり、一人を選ぶことができなかった
そしてとうとう結論を出すことができなかった少女は、花の女神に自分を花に変えてくれるよう頼んだ
女神は少女の願いを聞き入れ、少女をチューリップの姿に変えた
チューリップの姿は、彼女へと贈られた家宝から形作られている
その葉は剣、芸能界に吹き荒れた悪意の嵐に真っ向から立ち向かった、彼女達の覚悟
その球根は黄金、黄金の様に眩い輝きを放つ、彼女達の抱いたトップアイドルという夢
その花は王冠、今まさにアイドルの頂点を掴もうとするあの子達へ贈られる、トップアイドルになったことの証
そして、チューリップにはもう一つ花言葉がある
それは.....................
トレーナーさんに早苗さん、ちひろさんにトライアドプリムス、ProjectQueenに、ずっと支え続けてくれたプロデューサーさん
そして、私達とプロデューサーさんを引き合わせてくれて、私たちに夢を託してくれた、顔も知らない『あなた』
見て、いま私達は、このドームに集まった全ての人達の心は、一つに繋がっている
心の揺らめきに合わせて、その手のサイリウムを揺らめかせる
その光景はまるで、優しい風が吹き抜ける色鮮やかな花園のよう
性別も出自も年齢も思想も、彼らの放つ光の色は、みんな何もかも違うはずなのに
一つ一つの光が、必ずほかの誰かと繋がっていって、一つの大きな束となっていく
これが、私達の抱いた"愛"そのもの
どんな嵐が吹き荒れようと、私たちはここに咲いていられる。隣を一緒に歩んでくれた仲間たちがいるから、その嵐の先に、淡く光る希望を見つけられる
だって私達はアイドルという人生の舞台を、本当に愛しているから!
奏(そう、これが『私達』全員で作りあげた.......)
P「虹光の花束........」
ああ、ちくしょう。分かってた、分かってたよ
『あの子達』の夢が花咲く瞬間を見れば、こうなるって分かってたんだけどなぁ
涙が、止まらねぇや................
司会「いやー......本当に、本当に、どちらも素晴らしいステージでした!わたくし、感動して、涙が止まりません.......!」
司会「しかし、ついにこのIGも最後の結果発表、終わりの時間となってしまいました。激戦に続く激戦の末、トップアイドルの称号、Sランクアイドルの座を手にするのは果たしてどちらのユニットか!!」
奏(やれることは、全部やった。全力を出しきった)
ちとせ(だからあとは、ただ、受け入れるだけ)
司会「それでは発表します!IDOL OF GRATESTに優勝し、名実ともにアイドル界の王者の座を手にしたのは!」
最終結果
LiPPS 1333590票(累計2946811票)
Project,Queen 1260901票(累計2893569票)
優勝 LiPPS(811プロ)
早苗「やっ....」
ベテトレ「やっ....」
P「やっ、た.....?」
『いやったあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!』
to be continued
and,the time of Ending........
Chapter24終了したところで、今回はここまで~
次回、最終回
更新は.....多分元号変わった後
長らくお待たせして申し訳ございません
GW中予定やら色んなソシャゲのイベントやらに囲まれたせいで執筆が滞っていました
明日の21時~22時頃最終話投下予定です
お待たせいたしました
エンディングの投下を開始します
Chapter Final「Under the Moon」
ちとせ「そっか。私達、負けちゃったか」
千夜「ッ.....申し訳ございません、お嬢様」
ちとせ「謝らないで千夜ちゃん。負けたのは千夜ちゃんのせいじゃないでしょ?」
ちとせ「私達は全員で力を合わせて、これ以上ないってくらい全力で挑んで、その上で負けた。だから、誰のせいとかじゃないわ。みんなで頑張って、みんなで負けたの。だから、反省するならみんなでね」
颯「そうだよ千夜ちゃん!みんなでこの悔しさを分け合って、いつかきっとリベンジしよう!はー達で力を合わせれば、きっと大丈夫だから!」
颯「だから........................う、うわああああああああああああああああん!!!!やっぱり悔しいよー!!!!!!」
凪「おや、はーちゃんがここまで泣くのは久しぶりですね。私がはーちゃんのプリンを間違って食べてしまった時以来でしょうか」
千夜「.......気づいていないようだが凪、お前も泣いているぞ」
凪「えっ.....?」
ちとせ「いいのよ二人とも、今日はみんなで泣いて、みんなで乗り越えましょう?」
颯「うぅぅ....ごめんねちとせちゃん.....!ちとせちゃん、ずっとはー達の為に頑張ってくれてたのに......!」
ちとせ「もう、はーちゃんも謝らないの。私はこの道を選んだこと、ちっとも後悔なんてしてないんだから」
ちとせ「だって、負けちゃったけど楽しかったもの。『黒埼ちとせ』の最後のステージを、こんなにも夢のある終わりにする事が出来たんだから」
ちとせ「本当に......よかっ、た.......」
ドサッ
『お嬢様((ちとせちゃん))!?』
ちとせ「あはは.....やっぱり、無理し過ぎちゃったかな。身体、動かないや」
千夜「お嬢様、しっかりしてください!」
ちとせ「ごめんね、みんな........私、これが本当に最期のステージになっちゃったみたい」
凪「最期.....?そんな、まるで死ぬ前みたいな.....」
ちとせ「すぐ死んじゃうわけじないと思う。でも、もうアイドルを続けるのは、無理かな.......」
颯「何言ってるのちとせちゃん!まだ、まだあと一年はあるんでしょ!?あたしたち、これからなんだよ!?今度こそ胸を張れるアイドルとして、みんなで頑張っていこうって言ったじゃん!」
ちとせ「実はね.....一年っていうのは、激しい運動をせず、安静に日々を過ごしていたらって話だったの。今までずっと誤魔化してきたけど、正直、このIGが私の最期になるってことは、なんとなく分かってた」
颯「そんな........」
ちとせ「でも、本当に後悔はないわ。最期まで貴方たちといられたから、だから、私は幸せなの」
ちとせ「最期にして最高の舞台で、私が生きた証を残せた.....本当にもう、十分よ........」
最期なんて言うには、まだ早いんじゃないかにゃー?
ちとせ「えっ....?」
千夜「お前たちは......」
ちとせ「ふふっ....LiPPSも、私を看取りに来てくれたの?」
奏「違うわ。貴方に伝えなきゃいけない事があるの」
ちとせ「伝えなきゃ、いけない事?」
志希「ちとせちゃん、これを見て」スマホ
[不治の奇病、MITの一ノ瀬教授がついに特効薬を完成]
ちとせ「えっ......」
千夜「この病は、お嬢様の.......」
奏「貴方の病気は今、"不治の病"から"治る病"に変わったの。だから、最期だなんて言わないで」
周子「しっかり病気を治してさ、また一緒にステージに立とうよ。リベンジ待ってるからさ」
颯「ほ、本当に....?本当にちとせちゃんは治るの?あたし達と一緒に、アイドル続けられるの......?」
志希「本当だよ。なんたって作ったのは、あたしのパパだからね!」
凪「そうなんですか......」
颯「よ、よ.......」
颯&凪「「よがっだアァァァァァ!!!!!!!!」」
『!?』
凪「よがっだでずねはーちゃん!本当に......本当に!」
颯「うん!うん!本当によかったよお"お"お"!!!!!!!!」
千夜「お前たち......普段の性格は違う癖に、泣く姿はそっくりだな......」
千夜「でも.....本当に、よかった........」
ちとせ「夢じゃ、ないの....?本当に私、まだ生きられるの.....?こんな奇跡、本当に起こっていいの....?」
美嘉「確かに奇跡だけど、偶然起きた奇跡じゃないよ。自分が誇れる生き方で必死に生きぬいてきたからこそ、自分の手で掴み取る事が出来た"報酬"だよ」
フレデリカ「きっとちとせちゃんが頑張ったから、神サマがご褒美をくれたんだよ!"もっとアイドルとして輝く姿を、わしに見せてくれー!"って♪」
フレデリカ「だから、治ったらまたみんなで一緒に遊ぼうね♪約束だよ」
千夜「それにしても、よくお嬢様の病の事を知っていましたね?」
志希「ママが、同じ病気だったんだ。だからちとせちゃんを見た時すぐ分かったよ」
志希「......今度こそ、助けられた」
千夜「そう、だったのですか......」
ちとせ「なら、"明日の為に"、私達も残ってる仕事を片付けなきゃね。みんな、一緒に来てくれる?」
千夜「もちろん。どこまでもお供しますよ、お嬢様」
凪「いつ出発する?私も同行する」
颯「4人全員そろっての『Project,Queen』だからね!」
奏「........貴方たち、まさか」
周子「大丈夫なん?きっと今後の活動に差し支えるよ?」
ちとせ「いいの、これは私達が新しい道を歩むために必要なことだから」
ちとせ「それより、貴方たちもまだやり残したことがあるんじゃない?」
奏「.....そうね、まだ最後の仕事が残ってる」
ちとせ「なら、この世界の頂点に立った貴方たちの手で、引導を渡してきて。アイドルの世界の"夜"を、終わらせて」
この世界の新しい夜明けを、迎え入れるために............
屋久井「クソッ、どいつもこいつもしくじりおって!」
屋久井「......だが、まだ終わったわけじゃない。邪魔者を排除し、今度こそ私がこの世界の覇権を......」
???「いいや、これで終わりだ」
屋久井「ッ貴様は!?」
P「おっちゃん、もうやめにしよう」
891P(縛られ状態)「くっ.....」
ベテトレ「891プロのプロデューサーは抑えた」
早苗「あんたが渡した拳銃もばっちり証拠として確保してある。もう逃げられないわよ」
屋久井「......なんの事かね?891P君の犯罪と私に、一体何の関係が?」
891P「なっ!?」
屋久井「彼は先程解雇したのだよ。その後に彼が何をしたところで、私とは無関係だ」
891P「そんな!?話が違います!?」
P「とぼけても無駄だぞ、あんたらの会話はばっちり録音してある。拳銃だって、詳しく調べれば入手ルートも指紋も出てくる。これだけ証拠があれば.....」
屋久井「フン、それがどうしたというんだね?」
P「なんだと......?」
屋久井「忘れたのか?そこの婦警が謹慎を言い渡された理由を」
早苗「あんたが警察の上層部に圧力をかけたからでしょ?でも、いくらなんでもここまで証拠がそろえば......」
屋久井「甘いな、貴様らは本当に甘い!」
早苗「はぁ....?」
屋久井「私の警察組織の"顧客"が誰だと思う?『警視総監』だよ」
早苗「なんですって!?」
ベテトレ「警視総監?」
早苗「......警視庁のトップ、警察組織のナンバー1よ」
ベテトレ「なるほど、だがそれが一体どうした?この男と一緒に、その警視総監とやらも吊り上げられるだけだろう」
早苗「ッ.........」ギリッ
P「片桐さん....?」
屋久井「どうやら気付いたようだな」
早苗「警察組織のトップが犯罪に加担していたとなれば、警察という組織そのものの信用は失墜する。そのような事態になるなら.....」
屋久井「そうだ、私が何もしなくとも警察は勝手に証拠隠滅を図るだろう。当然、その秘密を握る私を逮捕することなどできやしない!」
P「だがっ!俺たちがこの証拠をどこかにリークすれば......ッ!?」
屋久井「流石の君でも分かるか。それこそ無駄なことだよ、私に逆らえるマスコミなど存在しない。どんな情報を持って行ったところで握りつぶされるだけだ」
屋久井「むしろ、"我が社を陥れるために811プロが工作した"とでも書き替えられるんじゃないかね?」
P「くそっ.......」
屋久井「残念だねぇ、ここまで無駄な努力を重ねた結果が、こんなつまらない結末だなんて!アーッハハハハハハハ!!!!」
奏「いいえ、最高のエンディングよ」
屋久井「何.....?」
奏「これを見なさい」
私は自分のスマホを屋久井に投げ渡す
そこに映し出された、悪魔を穿つ最期の弾丸と共に
ヨーツーブLIVE
【Project,Queen 重大発表】
ちとせ『みんな、聞いてくれているかな?』
屋久井「黒埼.....?」
ちとせ『それじゃあ、話させてもらうわね.....891プロがこれまで行ってきた悪事、その真実を』
『!?』
千夜『891プロは今まで屋久井社長の先導の元、買収、枕、ステージの妨害.......この芸能界において悪とされることの全てを行っていました』
千夜『先日の覇王エンジェルズの事故も、891プロが仕込んだものです。これまでに悪事を裏付ける証拠も、既に811プロが握っています』
凪『ソースは私達。LiPPSが立ち向かってくれなければ、芸能界は吐き気を催す邪悪に堕ちていた。私達も何も知らぬまま、間違ったアイドルを続けていたでしょう』
颯『知らなかったとはいえ、私達のせいでひどい目に合った人達はたくさんいると思う......本当に、ごめんなさい!』
屋久井「なんだ、これは....一体どうなっている....クソッ!」
屋久井「くっ、クソっ!」ピポパポパ
屋久井「おい!あいつらの行動は監視しておけと言っただろう!?今すぐ放送を止めろ!」
スタッフ『む、無理です!止めようにも大量のファンたちの妨害を受けて、見動きが取れません!』
屋久井「なんだと!?ええい!なら動画サイトの方に強制終了するよう要請を」
周子「無駄だよ、もう現場に駆け付けたファンの皆が拡散してる」
周子「『大事な話をしたいから、みんな私たちを守りに来て』.....たったそれだけのツイートで、今これが放送されている場所には何千、何万の人達が集まってる。流石トップアイドルだよ」
美嘉「これだけじゃないよ、あんたが利用してた元061プロのアイドル.....あたしの仲間達も今、あんたにやらされた枕営業の話を暴露してる」
美嘉「みんなもしもの時の為に、ちゃんと証拠を握っていたんだよ。でも、ずっとあんたからの報復が怖くて抱え込んでたんだ。それを、また自分たちが酷い目に合うかもしれないって覚悟の上で、みんなであんたを倒す為に公表してるんだ!」
奏「耳を傾けてみなさい、聞こえるでしょ?貴方への怒りの声が」
屋久井「何....?」
ファン1「出て来い屋久井!アイドルを食い物にしやがって!」
ファン2「よくも俺たちのアイドルに手を出してくれたな.....万死に値する!」
ファン3「絶対に放送を止めさせるな!LiPPSとProject,Queenの覚悟を無駄にするなァ!ファンなら推しを死んでも守れェ!!!!」
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!
屋久井「こんな、こんな事が.....!?」
美嘉「見たか!アイドルを舐めないでよね!」
周子「ちなみに~、今志希ちゃんとフレちゃんも生配信してるとこだよ。今まであたしたちが集めた証拠を大公開中♪志希ちゃんの科学的な解説付きでね。ほら」
志希『とゆーわけで、状況証拠的にも科学的にも、最近の阿苦都苦出版は891プロとイリーガルな取引をしてたのは確実ってワケ』
フレデリカ『すごーい!フレちゃん難しい話全然分かんないけど!』
志希『だいじょーぶだいじょーぶ、分かる人にはちゃんとわかってもらえるから♪』
屋久井「き、貴様ら........」
周子「勿論止めようったって無駄だよ、あっちにもいっぱいファンが集まってるからね」
奏「警察でもマスコミでも、どうぞ自由に使ってちょうだい。そんなものを積み重ねたところで、私達が火をつけた心の束には勝てないわ」
奏「貴方は最後の最後で、自分が利用し続けてきた『アイドル』に敗れるのよ」
屋久井「..........なら」
早苗「ッ!奏ちゃん危ない!」
奏「えっ?」
屋久井「貴様も道連れだ!!」チャキッ
拳銃!?もう一丁持っていたの!?
逃げなきゃいけない、なのに、突然眼前に突き付けられた死の恐怖に、足が固まってしまう
早苗(しまった、間に合わない.....!)
パァン!!
P「ッ......」ポタ......ポタ......
奏周美「「「プロデューサー(P)さん!!!」」」
早苗「ッ!そおりゃっ!」
屋久井「ぐはっ!」
早苗さんが銃を蹴り飛ばし、屋久井を抑える
でも、今はそんな事より!
奏「そんな、私をかばって!」
P「大丈夫、かすり傷だ.......」
美嘉「そんな訳ないじゃん!早く血を抑えて!」
P「大丈夫だって...それに、俺も終わらせないといけないから.....」
周子「終わらせるって、何を......」
プロデューサーさんが足元に転がった拳銃を拾い上げる
そして私達の顔を見つめて、可細い声で、だけど確かに意思のこもった声で囁いた
P「もう、大丈夫だ。だからどうか、見守っていてくれ......」
奏「プロデューサーさん........」
......そっか
今度は私達が、彼を信じる番なのね
奏「分かったわ。でも、必ず帰ってきてね」
彼は小さく頷き、柔らかく微笑む
そして屋久井にフラフラと近づき、その頭に銃口を突きつける
早苗「P君!?」
ベテトレ「P!止めるんだ!」
奏「待って二人とも!」
早苗「奏ちゃん!?でも!」
奏「お願い。彼を、信じて.........」
屋久井「や、やめろ!撃つな!」
P「おっちゃん.........俺はあの日からずっと、あの子を貶めた犯人をどうやってぶっ殺すか考えてきた」
P「頭の中で何度も何度も、犯人を殺し続けた。そして今、その妄想が現実になろうとしている」
屋久井「ヒ、ヒィ......」
P「怖いのかおっちゃん?それとも、見下してた人間に陥れられたのが屈辱的か?」
P「でもな......あんたが食い物にしてきた人達が味わった恐怖も屈辱も、こんなもんじゃないだろう。あんたへの怨嗟は、あんたを殺したくらいじゃ収まることはないだろう.....!」
ギチリ、とプロデューサーさんが拳を握りしめる音が聞こえた
それと同時に、引き金にかけた指がピクリと震える
でも、プロデューサーさんは引き金を引くことなく、その手に握っていた殺意を投げ捨てた
P「だが、俺はもうLiPPSのプロデューサーなんだ。アイドルを泣かせるような真似は、もう出来ない」
P「だから...............!」バゴォン
屋久井「ぐごぉ!」
プロデューサーさんが屋久井の頭を蹴り飛ばす
サッカーボールのように蹴り飛ばされた顔から鼻血が噴き出たけど、意識までは飛ばなかったようで、プロデューサーさんもそれ以上追撃しない
屋久井「がっ、っはぁ.......はぁ......い、生きてる.....?」
P「俺は、これで勘弁してやる。だが後の分はしっかり法の裁きを受けて、一生かけて償え。あんたが潰してきた夢全部に、一つ一つ懺悔しながらな」
P「これで、俺の復讐は終わり、だ........」バタッ
奏「プロデューサーさん!」
周子「何が大丈夫だよ!やっぱり傷酷いじゃんか!」
P「大丈、夫....ちょっと貧血なだけだ......死には、しねぇよ......」
美嘉「そんな消えそうな声言われても説得力ないって!待ってて、今救急車呼ぶから!」
P「ああ、頼んだ.......それと.......」
P「俺を信じてくれて、ありがとう....」
奏「.....当然よ。だって私達は........」
あなたが信じてくれた、あなたが選んだアイドルだもの...........
その後、駆けつけた救急車がプロデューサーさんを病院まで運んで行った
一時はどうなることかと思ったけど、幸い撃たれた場所が良かったらしく、命にかかわるようなことにはならずにすぐ退院することができた
屋久井も無事逮捕され、同時に屋久井と繋がっていた人間たちも日が立つにつれ次々と検挙されていった
その中には警視総監を始めとした有力者もいて、一時期世間は大パニックになったけど.......多くの事務所のアイドル達が必死にみんなを勇気づけたおかげで、芸能界を中心に沢山の人が一丸となり、今回の事件の事後処理に励むことができた
そして、IGの決勝から2週間が経ち、世間がいつも通りの落ち着きを取り戻してきたころ.....
~~~クルージング、パーティ会場~~~
司会「それでは、IGの終了と激戦を繰り広げたアイドルの皆さん、そして見事Sランクアイドルのを手にしたLiPPSの皆さんに!」
『かんぱーい!!』
美嘉「Sランク授与式が船上パーティなんて、なんかテンション上がるね★」
周子「ほんとにねー♪料理も出演者もめっちゃ豪華やし♪」
美嘉「....って、あれっ?そういえば志希ちゃんとフレちゃんは?」
奏「二人ならさっき他の事務所の子達と遊んでくるって走ってたわよ?」
美嘉「.....なんか心配だし、あたし見てきたほうがいいかな?」
周子「まぁ大丈夫でしょ、それより......」
加蓮「やっほー♪」
奏「加蓮!それに凛と奈緒も!」
奈緒「おっす!優勝おめでとう!」
凛「ちゃんと約束、守ってくれたね。ありがとう」
周子「そっちもありがとね、あたし達がピンチの時にファンレター送ってくれたでしょ?」
加蓮「なんかじっとしていられなかったからね。ちょっとでもあんた達の力になりたくてさ」
奈緒「ウチのプロデューサーさんも結構頑張ってくれてたんだぞ?010や811プロになるべく被害が出ないように、色んなところを走り回ってさ」
美嘉「そうなの?それじゃあ後でお礼を言っとかないとね★」
奏「それで?貴方たちのプロデューサーさんは何処に行ったの?」
凛「船酔いでダウンしてるよ」
奏「えぇ......」
加蓮「プロデューサーったら船に乗るとアタシより病弱になるんだから、笑っちゃうよね♪」
奈緒「ってワケで、あたし達プロデューサーにご飯とか持っていってやんなきゃだから、また今度な!」
凛「私達もすぐに追いついて、今度こそ私達が勝つから、それまで待っててよね」
美嘉「もちろん!いつでも挑戦待ってるよ★」
手を振りながらトライアドプリムスの3人が去って行く
彼女たちを見送った後、次に現れたのは.....
ちとせ「ごきげんよう、みんな」
美嘉「ちとせちゃん!もう大丈夫なの?」
ちとせ「まだ車椅子が無いとだめだけどね。千夜ちゃんにはまた迷惑かけちゃうかな」
千夜「いいえお嬢様、こうしてともに居られることが、私の何よりの喜びですよ」
ちとせ「ありがとう。でも、段々良くなってきてるし、きっともう少しの辛抱だから」
ちとせ「その証拠に.....」スクッ
周子「おお!」
ちとせ「っとっと.....ほら、もうちゃんと自分の足で立てるよ」
千夜「ですが、まだ無理をしてはいけないと言われたでしょう。ほら、座ってください。ちゃんとどこまでも付き添いますから」
ちとせ「ふふっ、ありがとね千夜ちゃん♪」
美嘉「ところで、颯ちゃんと凪ちゃんは?」
ちとせ「二人なら、あっちの方で志希ちゃんとフレちゃんと一緒に遊んでるわよ。実はあの二人、前からレイジレイジ―のファンだったから、一緒にのステージに立って、もっと好きになっちゃったみたいね♪」
美嘉「そっか、あの二人が一緒なら志希ちゃんとフレちゃんも大丈夫かな★」
千夜(実はなにかとんでもない事を仕出かしそうな会話が聞こえていましたが.....まぁ大丈夫でしょう)
奏「そういえば貴方たち、これからの活動はどうするの?」
ちとせ「とりあえず、今まで通り891プロで続けていくことにしたわ。あんなことがあったけど、それでもずっと私達と一緒に頑張ってきたアイドルががいっぱいいるから、その子達の応援にも答えたくて、ね」
ちとせ「だから、私が療養してる間3人で活動を続けてもらおうと思ったんだけど.....」
千夜「お嬢様が復帰するまでは、私達も活動を休止することにしました」
ちとせ「もう!私の事なんて気にしなくていいのに」
千夜「お嬢様、私達は4人そろって『Project,Queen』ですよ。それに、新しいプロデューサーも付きましたし、きっとなんとかなりますよ」
周子「新しいプロデューサー?誰なん?」
ちひろ「私ですよ!」
周子「って、ちひろさん!?」
ちひろ「891プロの上層部が沢山捕まってしまって、その穴埋めのために私を含めていろんな人に声がかかったんですよ。だから私もこれを機に過去を振り切って、もう一度プロデューサーに戻ることにしたんです」
美嘉「ちひろさんって、プロデューサーのプロデューサーだったんだよね?じゃあ次に『Project,Queen』と会う時は、きっともっと凄いアイドルになってるね★」
ちひろ「勿論です!新しくなった『Project,Queen』の皆で、今度こそ貴方たちに勝ちますから、P君にも伝えといてくださいね!」
奏「ええ、必ずつt『ドカアアアアンン!!!!!』!?」
美嘉「.....何、今の音?なんか、すっごく嫌な予感がするんだけど.......」
志希「にゃははー♪シージャックごっこだー!」
颯「この船は、あたし達レイジーレイジーwithなーはーが頂いたよ!」
凪「手始めにフレちゃんさんが飲み過ぎてしまったので、お水持ってきてください」
フレデリカ「えへへー!海賊王に、俺はなる!!」
美嘉&ちひろ「」
千夜「ああ、やっぱりこうなりましたか」
美嘉「どうすんのツッコミ不在だよあの4人!」
ちひろ「と、とりあえず止めに行きましょう!なんでいきなり問題起こすんですかもー!!」
ちとせ「一応私達も止めなかった責任あるし、手助けしに行きましょうか♪」
千夜「かしこまりました、お嬢様」
周子「んじゃ、あたしも混ざってこようかな。奏ちゃんは?」
奏「私は、そうね....少し行きたいところがあるから遠慮しとくわ」
奏「ところで.....混ざるって、どっちに?」
周子「やだなー、そんなのもちろん決まってるやろ?んじゃ、行ってきまーす」
コラー!アンタタチナニヤッテンノー!
ヤバッ!ママニミツカッタ!
ママジャナイシ!
イケーシュウコチャン!
リョーカーイ♪
チョッ、シュウコチャンマデ!
ダマシテワルイガコレモシゴトナンデネ
奏「.........ふふっ!」
~~~船、デッキ上~~~
P「...............」
奏「プロデューサーさん、こんな所に一人でどうしたの?」
P「奏か、いやなに、月が綺麗だったからさ。なんかずっと眺めちまってたよ」
奏「......プロデューサーさん、夏目漱石って知ってる?」
P「?」
奏「.....いや、なんでもないわ」
P「というか奏こそどうしたんだ?他の皆は?」
奏「みんな思い思いパーティーを楽しんでるわよ。私は、そうね.........月が見たくなったの」
奏「ほら、だって今日はこんなにも、月が綺麗だもの」
P「ああ、ホントにな!」
奏「....................ばか」
P「えっ?」
奏「何でもないわよ」
P「それにしても、こうして海を一緒に眺めてると、最初にあった時の事を思い出すな」
奏「そうね。あの時海に映りこんでいたのは、月じゃなくて夕陽だったけど、確かにあの時と一緒ね.......」
P「あの時、奏をスカウトしたときさ、俺はあの子が自分の為に復讐を遂げてくれって、背中を押してくれたんだと思った」
奏「...............」
P「だけど、今なら分かる。あの子は復讐の為に俺とお前達を引き合わせたんじゃない。復讐なんて暗いもの、人に笑顔を届けるアイドルだったあの子は、初めから望んじゃいなかったんだ」
P「きっとあの子は、過去に縛られた俺の心を救うために、俺とお前たちを引き合わせてくれたんだ..........」
奏「.......ええ、きっと」
P「だからさ......みんな、俺と一緒にアイドルを続けてくれて、俺をプロデューサーにしてくれて........俺を救ってくれて、本当にありがとな」
P「ほんとうに......ありがとう.........」
奏「ねぇ、プロデューサーさん。顔を上げて」
P「奏...............ッ!?」
奏「ん............ぷはぁ」
P「ちょっ!おまっ、奏!?」
奏「ふふっ!ファーストよ、責任とってね♪」
P「ファーストって、マジで何やってんだ!こんなとこ誰かに見られたら..........」
奏「大丈夫よ、だって.......」
月しか、見ていないもの..........
EDテーマ 「if」(歌:速水奏)
https://youtu.be/IIrIA-nJTDM
周子「まっ、見てるんだけどね~♪」
美嘉「は、はわわわ////////」
志希「やるねぇ~奏ちゃん」
フレデリカ「ヒューヒュー♪」
エピローグ 「未来へキスを」
あれから、色んなことがあった
IGが終わった後、私達にはまた多くの仕事が舞い込んできた
IG優勝、Sランクアイドルという肩書の力は、それはそれは凄まじかったわ
私は女優としてのオファーが多く舞い込んできて、ほぼ毎日のように出演作が流れている
まだ新年度が始まったっばかりだけど、既に5つの作品で主演が決まった
周子は京都を代表するアイドルになり、地元の観光客が以前の3倍に増加
特に実家の和菓子屋は売れすぎて商品が完全になくなってしまい、嬉しい悲鳴を上げてるんだとか
美嘉はカリスマJK改めカリスマJDとして、これまで以上に世の中の女子の憧れとなっている
特にファッションの情報を扱うものは、テレビだろうと雑誌だろうと至る場所に美嘉がいた
フレデリカは念願だったパリでの仕事を手に入れた
亀裂が入っていた祖父母と母親の関係も、フレちゃんのパリでの活躍のおかげで見事修復されたらしい
志希はその歌の実力をメキメキと上達させ、日本が誇る歌姫の地位を欲しいままにしている
新曲が発売すると一時間もしないうちにCDショップからその姿が消えることから、巷ではCDにまで失踪癖が移っているのではと噂になっている
そんな風に、慌ただしくも充実した日々を送っていた811プロだったけど.............
~~~811プロ、事務所~~~
P「というわけで、今日は新しいアイドルが来ます!」
フレデリカ「ホント!?」
P「ああ!お前らにも遂に後輩ができたんだ、先輩として色々教えながら支えてやってくれよ!」
周子「じゃ最初に、アレだけは教えてあげなくちゃね♪」
奏「そうね、811プロ社訓、そしてアイドルをする上で最も重要なことだもの」
P「なんて事言ってたら来たみたいだぞ。よし、お前ら!今日も全力で楽しんで、楽しませるぞ!」
『ようこそ811プロへ!!』
頂上にはたどり着いたけど、道はまだまだ続いていく
私達が前を向いて歩き続ける限り、未来はずっと続いていく
アイドルの道に、終わりはない
人生を楽しむ心があれば、きっと、どこまでも.................
これにて完結です
いや~ホント疲れました.....安易な気持ちで長編なんて書くもんじゃないですね......
予定してた891プロ絡みの枕営業シーンがほぼカットされたせいで、完全にR板で建てた意味が無くなってしまったのが本当に申し訳ないです
キャラのブレやシナリオの粗さなど、至らぬ点が多々あったとは思いますが、その上でここまで付き合って下さった皆様に、心からの感謝を申し上げます
渋の加筆修正版の方はこれからもちょくちょく更新していこうと思いますので、もしよければそちらもお楽しみいただけると幸いです
それではまた、いつの日か
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