【あんこ】勇者「…………」 (123)




自分のコンマを使って勝手になんやかんや進めていくスレッドです
基本的に大体コンマ一桁目が頼り


勇者「性別は男、年の頃は十八歳」




【救世の英雄となるべき男、その実力とは】




0.普通
1.強い
2.強い
3.普通
4.普通
5.普通
6.弱い
7.普通
8.普通
9.強い
ゾロ目.戦術兵器

下1?


勇者「まぁ、やれるよね」




【強きことは良きこと。ではその秘めたる成長のポテンシャルをば】




0.普通
1.普通
2.普通
3.普通
4.普通
5.低い
6.普通
7.低い
8.高い
9.高い
ゾロ目.人類の敵レベル



>>3
コンマが81なので下一桁で1→ 強い
となりますこの場合


勇者「ちょっと最近は成長が……それでも強いけどね」




【では最後に大まかな性格でもおしえて下さる? 】




0.純粋純朴駆け出し
1.ネガティブ
2.純粋純朴駆け出し
3.純粋純朴駆け出し
4.純粋純朴駆け出し
5.ネガティブ
6.純粋純朴駆け出し
7.純粋純朴駆け出し
8.ポジティブ
9.ポジティブ
ゾロ目.手段は選ばない


勇者「まぁ……強いっていってもこの先割と多難よね絶対」




【そこらの冒険者程度には余裕で勝てる】

【成長の余地はまぁまぁ】

【割とネガティブ思考】






さぁ……旅立つのです勇者。この世の闇を祓い、人々の明るい未来を取り戻すためにーーーー









母親「ほら起きた起きた。今日はこれから国王陛下に旅立ちのご挨拶でしょう? 」

勇者「ん……行きたくない」

母親「んなこと言って世話焼……準備できてるじゃないか」

勇者「行きたくないだけで行かないとは言ってない」

母親「そうかい。……ほら、しっかりご飯食べてしっかり行きな!
これでもあんたはあたしたちの誇りなんだ! 旅立ちくらいいい顔で行きなよ」

勇者「うん。……いただきます、母さん」




いつも通りの朝、いつも通りの母さん、いつも通りの朝食。
旅立ち前だってのに家畜の世話までいつも通り。
でも、俺は知っている。それが母さんや、村の皆がくれる優しさだってことを。




勇者「やり遂げないと。…………でも行きたくねぇ」


~~御前にて~~





国王「さぁ征くのだ勇者よ。我ら人類の明日を明るきものとするために……! 」

勇者「はっ」




こんな田舎者一人のために随分と大層な演出をしていただいた。
正直さっさと一人で旅立ちたかったのだがそうもいかない。
そんな行事、平民は平民らしく畏っていればいつの間にか終わる。
せめてもの典雅な衣装を見繕ってくれた優しそうな人の言葉だ。
きっと彼は自分のような人物を何人も見てきたのだろう。
でなきゃ、王城で浮きに浮きまくるカッペに、あんな目はできないだろうから。




【与えられしもの】




0.結構な金銭
1.まぁまぁの金銭と武器
2.凄い剣
3.結構な金銭
4.まぁまぁの金銭と武器
5.まぁまぁの金銭と武器
6.まぁまぁの金銭と武器
7.まぁまぁの金銭と武器
8.まぁまぁの金銭と武器
9.凄い剣
ゾロ目.そんなものは無い


【1→ まぁまぁの金銭と武器】



勇者「結構な……平民なら数ヶ月は遊んで暮らせるお金と、何十年も節約しないと買えない長剣」



さすが国王陛下、さすが王国、さすが金。
託宣によって選ばれただけの田舎者にぽーんと、ぽーんと……。



勇者「うぅん……帰りたい。牛の糞でも掃除していた方が余程マシだ」



これで俺は逃げられない。こんなにも期待を、否、重石を与えられてしまったから。
ここで逃げてしまえば俺だけじゃない、母さんや村の皆にだって迷惑がかかる。
下手をすれば、それは迷惑なんかじゃなくて、災厄と同義になる。



??「もし……もし」

勇者「……? 」




【ボーナスチャーンス! 】




0.兵士
1.武闘家
2.兵士
3.僧侶
4.兵士
5.兵士
6.魔術師
7.兵士
8.剣士
9.兵士
ゾロ目奇数.魔王
ゾロ目偶数.お姫様


【11→ 魔王】




「もし……もし」

勇者「……うん? 」

「勇者様、ですよね? 」

勇者「まぁ、そうだ……そうですけれど、何かございましたか? 」



危ない危ない。俺みたいなカッペを送り出した後王城では舞踏会が催されるらしい。
そんなものに出席させられても困るが声も掛けられないのはなんとはなしに嫌、とかそういうのはどうでもいい。
ここはまだ王城の敷地内だったのだ。
ローブを着込んでフードを目深に下ろしたどこからどうみても怪しい人物、もしかするとやんごとなきお方かもしれない。
そんな人物が俺に話しかけてくるなんて考えられないが世の中そう簡単ではない。
用心するに越したことなんて全くもって一欠片も無いのだから。



「少しだけ……こちらへ来ていただいても? 」

勇者「いいけ……構いませんよ? 」




【勇者の明日はどっちだ】




0.籠絡
1.籠絡
2.偵察
3.嘲笑
4.偵察
5.嘲笑
6.偵察
7.偵察
8.偵察
9.偵察
ゾロ目.慈悲などあるかボケ


【3→ 嘲笑】




魔王「ふん……やはり我が手を下すまでもない」

勇者「ッ…………」




だから旅立つなんて嫌だったのだ、なんてことを吐き捨てる暇も無い。
いや、それどころか何かをする一瞬の無意識すら与えられはしなかった。

ローブの人物に着いていった先はなんの変哲も無い練兵場のような場所。
今日は王国挙げてのお祭りの様なものなのだ。当然そこに鍛錬を積む兵士などはいない。

そろそろ用をおしえてくれても……そんな一言を掛けようと思考する間も無い。
一瞬で、一瞬の数万分の一の時間すら与えられず、俺は地面とキスをして砂の味を噛み締めていた。

その次の瞬間には両手足が破砕される音、数瞬後には想像を絶する痛苦。
更に苦しみの呻きを漏らす猶予すら無く、音、音、音、痛苦痛苦痛苦痛苦痛苦痛苦痛苦痛苦痛苦痛苦痛苦痛苦……

何もさせては、もらえない。
何かをできる、わけがない。
何をも捧げる、暇すら無い。

無い、無い、無い。
あるのは数秒遅れてやってきた苦しみと、圧倒的な恐怖。

今この瞬間、勇者たる俺の背中には魔王がきっと心底つまらなさそうな顔で、立っている。


魔王「死ねない身体いえば多少聞こえはいいが……かえって苦しむだけよ」

勇者「ァッ……ぅ…………ッッッッ……! 」



無造作に、ただ行列をつくる蟻を踏みつける様に。
俺の背中は、宿命付けられた宿敵に蹂躙される。
既に血反吐もまともに認識することはできない。

文字通り破壊された俺の身体は、ただのガラクタだ。
生き物に行っていいことでは決してない。
いや、物言わぬ物にだってやってはいけないだろう。
本来であれば破壊とは即ち、不要であるとの烙印である。

要らなくなった椅子は分解して薪へ。
要らなくなった食べ物は家畜の餌に。
要らなくなった剣は溶かして農具を。

けれど破壊は基本それだけでは終わらない。
なんだって壊すのには理由がある。
平和な世でそれは、再利用、物質のサイクルともいえる。



魔王「お前は一体何の為に生まれたのであろうな」



そんなことは俺が知りたい、とは当然言い返せない。
肺は機能を止め、此処に至っては邪魔な気泡を口から吐き出させるだけだ。


魔王「まぁ……退屈凌ぎになるには時期尚早。そう聞いていたしな」



遠く、遠く、何か分からぬ、声にならぬ音に聞く。

それが、俺と、いつか超えなければならない、絶対悪との初対面。



超えなければ、踏み潰される。
容易く、興味も無く、いっそ面倒ごとの如く。
たったそれだけのことを理解させられた。




何故かは分からないが俺は街の宿で覚醒した。
死の淵まで突き飛ばされた痛苦の記憶はそのままに。

魔王がご丁寧にここまで運んだとは到底思えない。
けれど、あいつ以外の誰かが何も言わずにこんなことをするなんて。
もっとあり得ないこと、なんじゃないだろうか。



勇者「えっと……今日は、何日? 」

宿屋「……は? 」



どうやらあれから三日も寝ていたらしい。
頭のおかしいやつを見る目で見られたが、当然だ。
おかしくなったと誰かに言ってもらった方が、余程マシなんだから。


勇者「相場であれば勇者は旅の始まりあたりで仲間を一人くらいは見つけるとか」



相場ってなんだ、どこのなんの相場だ。

しかも何故酒場。あの宿屋も頭おかしいんじゃないのか。




【ボーナス失敗……? 】




0.僧侶
1.剣士
2.武闘家
3.魔術師
4.僧侶
5.剣士
6.武闘家
7.僧侶
8.魔術師
9.剣士
ゾロ目.淫魔


【0→ 僧侶】



勇者「もう痛いのは嫌だからな……」



なんで酒場で僧侶を呼べるんだ。頭おかしいんじゃないのか。
そんなことを呟いたらマスターにも看板娘にも可哀想なものを見る目で見られた。



僧侶「あのー……」

勇者「ひゃっ、ひゃい? 」

僧侶「? 」





【一人目】




0.強い
1.弱い
2.普通
3.強い
4.普通
5.普通
6.普通
7.普通
8.普通
9.弱い
ゾロ目.筋肉ファイター葬膂


【4→ 普通】



僧侶「よろしくお願いします! 」

勇者「うん、よろしく」



まぁ、細かいことを気にしていても仕方が無い。
彼女に罪なんてないのだから。
これからは彼女を助け、助けられる。
そんな未来に、自分で水を差す程空気が読めないわけではないのだ、俺は。



勇者「得意なものは? 」

僧侶「回復です! 勇者様は? 」

勇者「踏まれるこ……剣かな? これでもまぁ、結構強いよ」



人並には、ね。



僧侶「? 」



【割と大事】



0.お姉さん
1.ロリっぽい
2.お姉さん
3.平均的
4.ロリっぽい
5.平均的
6.平均的
7.平均的
8.平均的
9.ゾロ目.おっぱい痴女


【1→ ロリっぽい】



僧侶「勇者様? 」

勇者「ん? まぁ、なんでもないよ、うん、なんでもない」



よくよく見ればその顔はまだまだ幼いと言える顔立ちで。
可憐なその顔で、期待に目を輝かせて、ただそこにいるだけでまるで花が咲いたよう。



勇者「酒場でこんな子と二人……」

僧侶「? 」

勇者「…………」

僧侶「……? 勇者、様? 」

勇者「…………犯罪じゃね? 」

マスター「だな」



当然の様に宿は別部屋だ。
妙に離れたくないオーラが出ていたが知ったことではない。
宿賃をケチった挙句犯罪者にされてしまっては笑い話にもならない。
最後の方は涙目っぽかった気もするが、知ったことではない。
知ったことではないったら知ったことでは、ない。ないったらない。


【二日目(四日目)】



僧侶「まずは隣町まで、ですね! 」

勇者「うん。あんまり危なくはないと思うけど、気を付けて」

僧侶「はいっ、勇者様」



聞けば年の頃はギリギリまぁこの国で婚約までは許されるくらい。
教会で育てられた孤児で天涯孤独の身なんだとか。
なんでも 1 ばっかりなんですよ! とはなんのことだろう。

取り敢えず回復系統の魔術……いや、法力とでも言うべき神の御技はそれなりのものだった。
彼女の年齢でこのレベルというのは確かに凄いことだろう。
だからといって酒場で冒険の相棒を探すのはどうかと思ったが。


僧侶「ところで勇者様」

勇者「うん? 何? 」

僧侶「隣町はどんなところでしたっけ? 」

勇者「あぁ、隣町なら……




幼……少女と二人隣町へ。それだけならばまぁ、犯罪では、ない、よね?




【隣町】




0.特徴無し
1.剣闘の町
2.港町
3.特徴無し
4.山間の町
5.港町
6.山間の町
7.港町
8.山間の町
9.剣闘の町
ゾロ目.魔王支配下


【3→ 特徴無し】




勇者「まぁ、なんていうのかな……うぅん」

僧侶「うぅん? 」

勇者「うん……」

僧侶「うん? 」

勇者「…………」

僧侶「…………」

勇者「…………ま、取り敢えず、行こうか。行かないと、始まらない」

僧侶「あっ、勇者様! 待ってくださいよぅ! 」



見つめられるとその、照れる。

トテトテトテトテ、その足音に犯罪ちっくなものを感じつつ、割と悪くない気分も一緒に。


勇者「ふぅ……あと少しだな」

僧侶「そうですねー、勇者様」



モンスターが出れば斬り、モンスターが出れば斬り、モンスターが出れば斬り。
何のことはない、今までの修行とそれは然程変わらないものだった。

当然生命の遣り取りをしているわけだから、安全なんかでは決してない。
けれど、そこには絶対的な差というものがある。俺は、負けない。



勇者「それでも俺とあいつの差よりは、詰められやすいけど」

僧侶「はい? 」



小首を傾げて疑問符を浮かべる僧侶に語るようなことではない。
それが自分の無様だから、ではなくて。
そんなことは俺とあいつだけの秘密として、あいつごと葬り去るべきだと思うから。
葬り去るべき瑣末ごとだと思わなければ、進んでいけないだろうから。


勇者「それにしてもさ、僧侶」

僧侶「はいっ勇者様」

勇者「なかなかその、凄いね」

僧侶「頑張りました! 」



えっへん! なんて、なんて可愛らしい。
けれどその可愛らしさは実力を見た後だからこそより、可愛らしく映るのだ。

あまり傷自体受けなかったとはいえそれでも無傷ではなかった。
その傷はもう、どこにも無い。癒されてしまった。
まだあまり補助系や攻撃系は得意ではないようだけれど、十分だ。



勇者「うん、その意、気……で? 」

僧侶「ほえ? 」



あと少しで隣町。これが、今日最後の戦闘になるだろうか。





【いざ行かん】




0.雑魚
1.盗賊
2.雑魚
3.雑魚
4.盗賊
5.雑魚
6.盗賊
7.雑魚
8.盗賊
9.雑魚
ゾロ目.ロリコン


えぇ……えぇ……?


取り敢えず今日は終わり
また今日か明日来たり来なかったりします


【ゾロ目→ ロリコン】



勇者「! 」

僧侶「? 」



一目でも見れば、分かる。その佇まいからして只者では、ない。

何故茂みから出てきたのだろうか、とか。
何故前衛である俺を無視するのか、とか。
何故視線を僧侶に注いでいるのか、とか。
何故視線が異常な血走り方なのか、とか。
何故それに僧侶が怯えているのか、とか。

只者ではないのは当然として、できれば避けて通りたいのも当然だった。



勇者「自分が犯罪者スレスレなの自覚して必要以上に気を付けてたのにさぁ……」

僧侶「ひっ……」



ぎゅっ、と袖口を彼女に掴まれる。
その瞬間ヤツの目が険しくなった。

僧侶がそれでも杖を握り締めた。
その刹那ヤツの歯軋りが耳に響く。

彼女がその音に反応して俺の背中に隠れる。
その反応はヤツの何かを突き動かした。



「女は女になったら女じゃないんだよぉぉぉぉぉぉぉぉっ! 」



勇者「」

僧侶「」




この時程男として生まれたことに感謝することはきっと無い。
ヤツの表情を見て、俺は心の底からそう思った。思って、しまった。



僧侶「勇者様ぁ……」



【因縁の予感】



0.強い
1.そこそこ
2.雑魚
3.そこそこ
4.そこそこ
5.雑魚
6.雑魚
7.雑魚
8.雑魚
9.雑魚
ゾロ目奇数.仲間になりたそうに
ゾロ目偶数.慈悲などあるか死ね


【4→ そこそこ】




勇者「うわっ、なんだこいつ妙に強ぇ! 」

ロリコン「YEぇぇぇぇSっルぉぉっルィィっタ! 」

勇者「唾飛ばすんじゃねぇ馬鹿! 」

ロリコン「ヌォォっっっっ! 」

勇者「なんでその体系でそんな早ぇんだよてめぇっ! 」

ロリコン「タぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっチっっっっ! 」

勇者「うわやめちょっとその顔キモ過



ボゴン



ロリコン「ふごっ」

勇者「…………」

僧侶「…………」




人体が発してはいけない音を立ててそいつは盛大にぶっ倒れた。
背後には呪文など忘れ鬼気迫る顔で杖を握り締める、僧侶。
その先端が鮮血に塗れているのは見なかったことにしよう。
ついでに悍しい笑顔でぶっ倒れているソレも見なかったことにしたい。


勇者「…………」

僧侶「…………」



何を思ったか一心不乱に僧侶目掛けて突進してきたソレ。
ソレの行手だけはなんとしても守らなければと相対した俺。

ブヨブヨと揺れる肉の動きすら鮮明な肥満体は何故か素早かった。
素早かったけれど、ソイツは俺なんて眼中になかった。

だから迎え撃つ様な邪魔をする様な動きをしてやった。
気付いたらソイツは念願の目的そのものに討たれた。

オシマイ。



勇者「…………」

僧侶「…………」

勇者「…………」

僧侶「…………」

勇者「…………今晩は何食べたい? 」

僧侶「…………お肉以外」



然もありなん。正直俺も肉はあんまり見たくない。
特に脂肪が多いやつとか、なんか濃いもの全般。


勇者「ふぅ……何か妙に疲れたな」



記憶上は憂鬱な登城と思い出したくもない嬲り殺しから一日経っているかいないか。
数日寝込んで肉体は頗る健康とはいえ精神的にはあまりよろしくない。
なんならば今すぐ帰宅して母さんの手料理を食べ眠りに就きたいくらいだ。

そんな下降線から漸く昇り始めた調子はある意味魔王よりも思い出したくないアレに見事へし折られた。
川魚が中心の料理を一応は美味しいと笑って食べてみせた僧侶の引き攣った顔が更に心に響く。

モンスターの断末魔や流血は平気でも殺意以上に悍しいナニカが相手では無理も無い筈だ。
自分だって仮に女の子だとしたらアレは……



勇者「ぅおぇ……」



今思い出しても吐き気がする。
というか吐き気と頭痛と腹痛と蕁麻疹となんだかもう凡ゆる拒否反応が出る勢いだった。



勇者「……俺が割と強い方で、あと僧侶が結構冷静でよかった」


勇者「まぁ、明日も早いし気を取り直して、寝るか」



僧侶とは当然別室である。
先日の離れたくないオーラだとか涙目よりももっと強い意志を感じたが断固として別室である。

閉じた目蓋の裏でヤツがニヘラ顔をしながら手招きしていたが蹴り飛ばしてやった。死ね。
俺はそっちじゃないしそっちに行ってしまったら僧侶に滅してもらおう。

決心も新たに、あんなことがあってもやっぱり身体はそれなりに疲れていたようで……



勇者「…………Zzz」




【出目に過度な期待は禁物です】





0.夜が明けた
1.夜が明けた
2.夜が明けた
3.夜が明けた
4.夜が明けた
5.僧侶
6.夜が明けた
7.夜が明けた
8.夜が明けた
9.僧侶
ゾロ目奇数.僧侶(はぁと)
ゾロ目偶数.因縁再び


【8→ 夜が明けた】



僧侶「んー……」

勇者「ちゃんと眠……れるわけないな、うん」



早寝快眠ついでに快便で申し訳無いやら情け無いやら。
食事中も僧侶は赤くなった目を擦ってばかりだった。

目を閉じればアレの顔が浮かび寝返りをうてばアノ肉塊が思い出され。
いっそ眠れなかった方がまだ悪夢を見ずに済んだだろう。

早朝彼女の叫び声に起こされ押っ取り刀で駆けつけた俺が言うのだから間違い無い。
危うく驚いて飛び出してきた他の宿泊客を切り捨てるところだった。

それ程、彼女のトラウマは、深い。



僧侶「勇者様……今日の予定はなんでしたっけ? 」



なんと健気な。その痛々しい微笑に絆されそうになったが、抑える。
未だに手招きしてくるヤツを幻視してしまうが、努めて抑える。死ね。



勇者「あぁ、今日はーーーー




【今日は? 】




0.領主への手紙が
1.近くの洞窟に
2.領主への手紙が
3.近くの洞窟に
4.領主への手紙が
5.近くの洞窟に
6領主への手紙が
7.領主への手紙が
8領主への手紙が
9.近くの洞窟に
ゾロ目.服でも買ってこようか


【1→ 近くの洞窟に】




勇者「どうやらこの洞窟に悪さをするモンスターがいるらしくてさ」

僧侶「勇者様がそれを抹殺するのですね? 」

勇者「お、おう……」



ドスドス、ドスドス。
その杖は魔術を行使する触媒であって地面を抉るものじゃないとおしえてあげたい。
おしえてあげた挙句八つ当たりの八つ当たりで殴られそうなのでやめておくが。



勇者「俺はそれなりに強いし僧侶も回復を中心にまずまずだけど、さ」



腕試し、という程でもないがこれは丁度いい肩慣らしと言えるだろう。
故郷の村では敵無しで、周辺のモンスターも歯が立たず。
時々近くの街で募集されたモンスター討伐依頼に参加したことだってある。
何よりここ何年かは国王陛下に派遣された騎士に剣技や魔術も一通りおしえてもらって及第点はとうに越した。

僧侶がまだまだ実戦経験の浅い頭でっかちでもカバーは十分可能だと思われる。

この探索の主な目的は彼女に実戦経験を積んでもらうこと。
俺と彼女の連携を更に深めてパーティとして強くなること。
大まかにはこの二つである。

まぁ……おまけでもう一つ、あることにはあるが。



僧侶「…………安心してください勇者様。勇者様の傷は何があっても許しませんからっ」

勇者「お、おう……」


ドスドス、ドスドス。
そろそろその杖削れ始めているんじゃないのか、とはやっぱり言えないが。

彼女のストレスを発散できれば、実に嬉しかったりしなかったり。


勇者「ふぅ……これで最後、かな? 」

僧侶「そうみたいですね……あぁ、なんて痛ましい」



なんていうことは無い、呆気無い終わりだった。

ちょっと頭の回る周囲よりも一回り大きいコボルトを切り捨てて、終わり。
頭を失った群れは正直、ただの動く肉塊と同じだ。

俺が突っ込み、切り捨て、突き刺し、稼いだ時間で僧侶が覚えたての呪文を唱える。
それだけで呆気無く、本当に呆気無く、目標とも言えない目標は達されてしまったのだった。

殲滅されただの肉片と化したコボルトたちと、それらに連れ去られて嬲られたであろう人間の死体。
町から少しだけ離れたく山奥の洞窟、その最奥にあって動くのは今や俺と僧侶二人だけ。


僧侶「さすがに、これは」

勇者「祈ってやることしかできないよ、俺たちには」

僧侶「…………はい」



残酷な様で、実際にそうするしか無いことを彼女も理解している。
陰惨な死体なんてものはこのご時世幾らでも目に入ってしまう。
それが戦場ではなくたって、そこらの歓楽街を一歩裏へ行けば原型を留めないものがそこかしこ。

ましてや実戦経験こそ少ないとはいえ彼女は、僧侶だ。
教会には医師や魔術師に首を振られた末期の患者が数多く運びこまれただろう。

そういうことではなくて、これは、心の問題だった。
誰かと共に歩む普通の人がいて、誰にも看取られることなく屈辱と苦痛に苛まれて死んだ。
そして今やその死はただの事実であってそれ以上でもそれ以下でも無い。

その、省みられない現実が彼女を苛んでいるのだろう。



勇者「せめて何か装身具だとかがあれば町に持っていってやることはできるだろうけど、さ」

僧侶「…………」

勇者「…………」

僧侶「…………」



結局、彼女は自らを何かで奮い立たせて立ち上がった。
死者への祈りを捧げ、誰かの指に嵌っていた指輪をそっと摘み上げて。

それから一輪、儚げな笑顔を、一差し。



それは気安く触れるなんて許されない、不可侵の聖域。
あぁ、これを守らなければいけないんだ、なんて。
一瞬だけ、何か妙に面映い感傷に襲われた。








………

……………


俺の村だってそういった不幸に合わなかったわけではない。
あるときは俺の幼馴染が逃げた家畜を追って森へ入ったきり、遂に帰ってはこなかった。
帰ってきたのは一年以上も経ったときで、しかもあいつが着けていた腕輪と右腕の骨だけ。

俺にとっては大事件だったし、村にとっても事件ではあった。
けれどそんなものは正直、予想されて然るべきで、万に一つも有り得ない、そんな出来事ではない。

毎年一人いなくなるかならないか、そんなペースで起きてしまう不幸な日常。
それとも日常にある珍しい不幸と言うべきだったろうか。

だから、俺は慣れてしまっている。慣らされながら成長してしまっている。



勇者「……酒でも飲むか、それともやっぱり僧侶と話でもしにいくか」



まだ夜も早い時間だし、多少肩の力を抜く時間も必要だろう。
勝手な判断ではあるけれど、構うものか。
慣れてしまってはいるけれど、やっぱり誰かの不幸に無関心ではいられない。
アルコールで無理矢理忘れてしまうか、僧侶と話でもして優しさで埋めてしまうか。
それともそれ以外のことをして過去にしてしまおうかーー




【フリータイムですよ、フリータイム! 】





0.夜が明けた
1.僧侶
2.僧侶
3.夜が明けた
4.酒場
5.夜が明けた
6.夜が明けた
7.酒場
8.夜が明けた
9.夜が明けた
ゾロ目奇数.僧侶(はぁと)
ゾロ目偶数.因縁再び


ササミはまぁこんな感じで

今日は短め少なめ









………

……………


【3→ 夜が明けた】




勇者「ふぁ……ちゃんと寝れた? 」

僧侶「まぁそれなりに。勇者様こそしっかりお休みできましたか? 」



あれから一夜明け、また陽は昇ってきた。

よく晴れた一日の始まり、僧侶と食事を摂り、他愛無い会話をして。

さて、今日はこの町を発ち次の目的地へと向かう予定だが。



僧侶「あんなに早く寝てしまってすみません。勇者様、お暇ではありませんでしたか? 」

勇者「え? ん、まぁ……」



【なんと、答えたものかな】



0.次は何か食べにでも行こう
1.次は何か食べにでも行こう
2.一人になる時間も必要
3.次は何か食べにでも行こう
4.一人になる時間も必要
5.一人になる時間も必要
6.一人になる時間も必要
7.次は何か食べにでも行こう
8.一人になる時間も必要
9.一人になる時間も必要
ゾロ目.だ、だだだだだっ大丈夫ですよ?


【5→ 一人になる時間も必要】




勇者「まぁ、一人になる時間も必要だろう? 俺だってまだ旅に慣れているわけじゃないし」

僧侶「そう、ですか……そう、ですよね、うん」



僧侶はコクコクと続けて頷いて、それから何かを自分の中に落とし込んだ様だった。
一晩一人で考え何か欠片を得て、また一つピースでも得たのだろうか。
いつか彼女が自分の中に何かを見つけたとき、それを訊いてみるのもいいと思う。

でもまだ、そのときではない、と思う、たぶん。
伊達にネガティブな性格をしているわけじゃないのだ、俺は。
他人の機微にはそれなりに敏感である。
そもそも時々空気を読めなかった経験があるからこその敏感さではあるが。



僧侶「さぁ、勇者様! 今日も困っている人を助けていきましょうねっ」

勇者「うん分かっ……うん? 」

僧侶「はい? 」



僧侶が得ようとしているものが分からない。というか、もう彼女がそもそも分からなくなりつつあった。




勇者「…………」

僧侶「♪ 」



【旅路はまだ始まったばかり】




0.トラウマ発動
1.山間の更に奥へ
2.港町へ
3.港町へ
4.港町へ
5.山間の更に奥へ
6.港町へ
7.山間の更に奥へ
8.港町へ
9.港町へ
ゾロ目.カジノでも行こうか


申し訳ありませんが今回はこんなところで……何も進んでいませんが

また今日か明日再開します
ありがとうございました


【1→ 山間の更に奥へ】




勇者「さて、これからまた山間の更に奥へ向かうわけだが」

僧侶「はいっ、山奥となると物資が滞ったりお医者様がいなかったりと困ることが多いですね! 」

勇者「お、おう……そうだね」

僧侶「ええ」



何やらこの先の旅路で必ず必要になるアイテムだか武器だかがそこにはあるらしい。
国王陛下が言っていたのだから間違いは無いのだろうがどうも気が乗らない。

らしい、おそらく、たぶん、きっと。
こんなものを信用せよという方が無理な話だ。

けれどまぁ、僧侶がよく分からないやる気を出しているようだった。



【さて】



0.なんか強いやつ
1.普通に三日くらい
2.普通に三日くらい
3.なんか強いやつ
4.普通に三日くらい
5.なんか強いやつ
6.なんか強いやつ
7.普通に三日くらい
8.普通に三日くらい
9.普通に三日くらい
ゾロ目.面倒だしパワーアップしてスキップ


【9→ 普通に三日くらい】



勇者「そーいやさ、僧侶って妙に足腰強いよな」

僧侶「いいえ? 」

勇者「は? 」

僧侶「足腰なんて何も鍛えておりませんよ? 」

勇者「……うん? 」



町を出発して三日目。
そろそろ今日の夜には目的の村だか集落だかに到着する予定である。

野宿は旅の常として兎も角、僧侶の健脚には驚かされる。
確かに特に走っているわけでもないがそれにしても、だ。

曲がりなりにも成人していて、なおかつ一応は救世の旅を始めるくらいには鍛えた俺と同じペース。
多少合わせてはいるがあくまでそれはスピードの話。

何らの文句も吐かず泣き言も言わない僧侶は、凄い。語彙が少ないのは悲しいが、取り敢えず、凄い。



僧侶「太腿はパンパンですし足裏のマメは潰れ放題ですっ」



えへっ

えへっ、じゃないんだけど何言ってるんだろうこの子。



勇者「……可愛いのは兎も角としてだな、僧侶」

僧侶「? 」



【そろそろ到着】



0.明日一日くらいは休もうな
1.明日一日くらいは休もうな
2.本日最後のバトル
3.本日最後のバトル
4.明日一日くらいは休もうな
5.本日最後のバトル
6.明日一日くらいは休もうな
7.明日一日くらいは休もうな
8.明日一日くらいは休もうな
9.明日一日くらいは休もうな
ゾロ目.因縁ストーカー


【9→ 明日一日くらいは休もうな】




僧侶「はぁ」

勇者「俺は鍛えてるし別に何ともないけど僧侶はまだ幼……若いしさ」

僧侶「む……」

勇者「女の子が足痛めてまで旅なんてするものじゃないよ」

僧侶「……」



それは嘘偽り無し、全くの本音だった。

しかも俺が選んだパートナーということは、最後まで隣にいてもらわなければ困る人材である。
序盤で下手な無理をしていてはアレに勝てる可能性など万に一つも無い。

万全の態勢で、勝ちに行かなければならないのだから。



僧侶「分かりました。明日は一日、休みましょう」

勇者「うん。俺も結構疲れちゃったしさ」



不服な感じは多少あるものの、納得はしてくれたようだった。
それでいい。まだ反抗期がきていてもおかしくないような年齢なのだ、僧侶は。

それにまぁ、パートナーとして、色々とゆっくり話す機会がほしいところでもあるわけなのだ、俺としては。












………

……………


勇者「さて、それで一晩経ったわけだが」

僧侶「休むといっても、何をしたらいいんでしょう? 」

勇者「そうだな……」

僧侶「……」

勇者「……」

僧侶「…………」

勇者「…………」



到着したるは山間の更に奥へと進む手前の村である。
一応は宿屋もあり旅の行商人だって来るわけなので隔離された里なんかではない、うん。

けれどそこでは険しい山々の間で人々が慎ましく暮らしているだけなわけで。



僧侶「私はお酒を飲んだこともありませんしここにはそれ以外の娯楽なんて無い気が……いえ、別に貶しているわけではありませんが」

勇者「…………」



【寝てるだけで休めると思うよ? 】



0.足、見せてよ
1.足、見せてよ
2.……取り敢えず自由行動で
3.……取り敢えず自由行動で
4.足、見せてよ
5.足、見せてよ
6.足、見せてよ
7.足、見せてよ
8.……取り敢えず自由行動で
9.……取り敢えず自由行動で
ゾロ目.トラウマシーカー


【0→ 足、見せてよ】



僧侶「ほえ? 」

勇者「自然体過ぎるからちょっと忘れかけてたけどさ、足」

僧侶「え? 」

勇者「辛かったんだろう? 別に医者なんかじゃないけど、薬を塗ったりマッサージくらいはできる」



娯楽なんて無くたっていいじゃない。
割と孤独になってしまいがちっぽいような気のする二人旅である。
お互いを労ってゆっくりと話したってバチは当たるまい。



勇者「思えば僧侶はいきなり旅を始めたわけだしな。ほら、遠慮せずに」

僧侶「え、えーっと……」



【山道ってかなり辛いんですよ本当】



0.硬くなってますねぇ
1.敵襲
2.硬くなってますねぇ
3.敵襲
4.硬くなってますねぇ
5.敵襲
6.硬くなってますねぇ
7.敵襲
8.硬くなってますねえ
9.硬くなってますねぇ
ゾロ目.……硬くなってません?


……^^

申し訳ありませんが想定外なので明日か明後日続きで……

ありがとうございました


【ゾロ目→ ……硬くなってません? 】




努めて、そう努めて疚しい気持ちなど微塵も、欠片も、寸分たりとも、全く何にもちょっとも無かった。
これだけは信じてほしい。いや、誰に言っているのかは分からないが、取り敢えず信じてほしいのだ。

自分よりも随分と小柄な割に美しい素足に見惚れたことが無かったといえば嘘になる。
例えば、華麗なバックステップを決めた際に見せた脹脛だとか。
例えば、無頓着にも自分の怪我を見せてくれたときの太腿だとか。

けれど、断じて、断じて違うと信じてほしい。
よもやギリギリ婚約が許される様な年齢の女の子に対して巫山戯た感情を持つなんてことはーーーー



僧侶「あの……えーっと…………硬くなってません? 」



湯浴みをした後は筋肉が解れるものだ。
だから、湯浴みをしてもらった後に、薄手のローブだけを着て寝台に寝てもらったのだが……。


勇者「え? えーっと……」

僧侶「私は今うつ伏せです」

勇者「う、うん」

僧侶「勇者様は私の足先に座って私の腿裏をマッサージしてくれています」

勇者「……はい」

僧侶「別にそんなことに対してつまらない感想なんて持ちません、私は」

勇者「…………ええ」

僧侶「戦場での裂傷で意図せずに肌を見られてしまうこともあるでしょう。
野宿続きで止むを得ず肌着や下着を見てしまうこともあるでしょう」

勇者「…………」

僧侶「ですから、私はこのローブ一枚で勇者様に身を委ねることに何の嫌悪感もありません。
それはひとえに、あなたを信頼しているからです」

勇者「……………………」



枕に突っ伏した彼女の独白めいた告発は続く。
彼女の身体に触れているのは誓って両の腕だけだし、
腿より上、特に女の子が嫌がりそうな部分は触っていない筈だが。



僧侶「…………これは、ただの純粋な質問なんです。私、背中に目は付いていませんから」

勇者「…………」



ここで、何かが、決定的に決まってしまうがするーーーー




【さらば純朴青年? 】




0.ま、冗談ですけれど
1.勇者様の手、凝っていますよね?
2.ま、冗談ですけれど
3.ま、冗談ですけれど
4.勇者様の手、凝っていますよね?
5.ま、冗談ですけれど
6.ま、冗談ですけれど
7.勇者様の手、凝っていますよね?
8.ま、冗談ですけれど
9.勇者様の手、凝っていますよね?
ゾロ目偶数.……踏み付けて、よろしいですね?
ゾロ目偶数.……あと一年は、待てませんか?


【1→ 勇者様の手、凝っていますよね? 】




勇者「……え? 」

僧侶「触れられれば分かるものもありますから。考えてみれば主に武器を揮っているのは勇者様でした」

勇者「…………」

僧侶「本来であれば労り労わなければならないのは私の方です」

勇者「…………僧侶」

僧侶「ふふっ……いえ、今すぐ役目を代わって、なんて子供っぽいことは言いませんよ?
折角勇者様が癒してくれようというのですから」

勇者「…………」

僧侶「ただ、そうですね……明日からは一層、私ーーーー



頑張りますからっ!



勇者「…………あぁ」



天使かな? 天使に違い無い。間違い無い。僧侶は天使。

悪魔かな? 悪鬼に違い無い。間違い無い。勇者は変態。



勇者「…………次、仰向けになってよ、僧侶」

僧侶「はいっ。勇者様、マッサージまでお上手なんですね! 」


その後三十分程でマッサージはつつがなく何の問題も生じさせず変なことが起きることも無く、終わった。

何か妙な勘繰りと後ろめたさを覚えた自分の怯懦と少しばかりの変態性を恥じるばかりである。
もうなんかどっと疲れたというか、素直に殴ってほしい。

考えてみれば湯浴みを終えてすぐの女の子にあそこまで信頼されて接することなんて今までには無かったことだ。
どう考えてもそちらに頭がいきそうなのに斜め方向の想像をしてしまった自分の嗜好……思考には目を瞑りたい。



勇者「じゃ……また、明日」

僧侶「はいっ。勇者様のお陰で随分楽になりましたから。明日からはもっとお役に立ちますね! 」

勇者「あぁ……ありがと。また、ね」



元気にも程があるんじゃないかな、とか。
天使にも限度ってのは無いのかな、とか。
明日には顔を合わせられないかな、とか。
天使って現世に降臨してたのかな、とか。
変態ってアイツだけじゃなかった、とか。



色々と思うことはあるけれどーーーー



勇者「……………………僧侶って職業は何で誰も彼もスタイルがいいんだろう」



自分の代わりに自室の枕を殴り過ぎて翌朝隠れて弁償したのは秘密である。




………

………………




僧侶「…………」

僧侶「…………」

僧侶「…………」

僧侶「…………」

僧侶「…………」

僧侶「…………」

僧侶「…………」

僧侶「…………」

僧侶「……………………クスッ」











………

……………


勇者「おはよ、僧侶」

僧侶「はいっ、おはようございます勇者様」



まぁ、何があったとしても生きていれば朝は来るわけで。
今日も今日とて最近と変わらぬ二人の朝だった。
二人で朝食を終え、装備を確認して、目的地までのラインを調べて。
今日一日に達成すべき最低限度の目標を決めた。

僧侶に変わったところは無い。
俺自身も特段変わったところは出さなかった、と思う。

もしかすると僧侶が何か気を遣ってくれたのかもしれない。
演技だとすればそれはそれでもう本格的に彼女に足を向けて寝ることはできないだろう。
いや、しかしそこまでこの天使を疑う様な真似をたかが人間がしてもいいものだろうか。



勇者「…………」

僧侶「? 」



笑顔で小首を傾げるな可愛いなおい。



勇者「…………えーっと、この先の洞窟にいるのがだな」

僧侶「はいっ」



この子につまらない人間の下らない感情などぶつけてはならない。
この子をつまらない敵意の下に一人ぼっちなんて以ての外である。
彼女を守ることを当座の目標にしよう。今決めた。




まぁ、とはいえ。罪も無い枕を殴り過ぎて傷んだ手を自分で治療しているときにはさすがに乾いた笑いが溢れたが。




【??+1 】

【この先の洞窟に……】



0.魔法使いを拐かしたモンスター
1.魔法使いを拐かしたモンスター
2.四天王の一人らしい
3.魔法使いを拐かしたモンスター
4.四天王の一人らしい
5.四天王の一人らしい
6.魔法使いを拐かしたモンスター
7.四天王の一人らしい
8.四天王の一人らしい
9.四天王の一人らしい
ゾロ目.逃亡した女騎士がいるらしい


【3→ 魔法使いを拐かしたモンスター】




そもそもこの山間の村へやってきたのは当代きっての術師、俗に魔法使いと呼ばれる人物が目当てだった。

魔法、という代物は魔術とは全くの別物なのだ。

その本質はこの世に広く拡がった万物の源たるマナを利用するものであって変わりは無い。
けれど魔術とはあくまで魔法の代用品。

マナそのものを使って世界そのものを変質させてしまうのが魔法。
マナに触れ世界からの干渉を減らしたり、逆に増やしてしまうのが魔術。

例えば俺や僧侶が自分の戦傷を治療するのは単純な魔術だ。
普遍的にただようマナを使って傷という存在の時間を早めてしまう。
学者様に詳しく説明してもらえば時間を早めるだけではなくて、
マナの固定化、マナによる傷という概念の強化、認識を外さないためのマナ活性化、なんて面倒だけれど。

魔法、というのは至極シンプル、ザ・簡単。
マナによって治す、それだけらしい。


その違いだけおしえられても魔法というものの凄さは分からない。
正直なことを言うと未だによく分かってはいないのだ、俺は。

けれどまぁ、一応は国王陛下に是非会えと勧められたわけで。
圧倒的屈辱を味わされた魔王はその身そのものが魔法と恐れられているわけで。

幾つかの攻撃魔術と簡単な回復魔術しか使えない自分は必ず会っておくべきなのだ。




僧侶「んーっと……その方、凄い方なのですよね? 」

勇者「その筈だよ」

僧侶「魔法といっても種類があるらしいですけれど……取り敢えず、凄い」

勇者「うん」

僧侶「……………………そんな人を拐うモンスターに私たちが敵います? 」

勇者「さ、さぁ? 」



目撃した村人によれば酒をたらふく飲んで切り株に座ってうたた寝していたところを拐われたらしい。
正直昨日のうちに会っておけば面倒は全く無かったと言わざるを得ない。ウチの天使を困らせるな間抜け。


勇者「ま、まぁそれでも助けなければならないだろう? その人が仮にただの一般人でも」

僧侶「それはっ、そうですけれど……」



間抜け一人の為に笑顔を曇らせないでほしい、本当に。
なんならばその微笑みが既に魔法だ。俺はそう言いたい。言えないが。



勇者「ま、取り敢えず、行こうか。極論、そのモンスターを倒さなければ魔王になんて絶対勝てないわけだし」

僧侶「そう、ですね……ええ、困っている人は放っておけませんものね! 」

勇者「う、うん」



いざ行かん、間抜けを助ける聖者の旅へ。



【洞窟の前まで来ましたが】



0.そもそも魔法使いってどんなやつ?
1.ダルいしボスまでスキップ
2.そもそも魔法使いってどんなやつ?
3.ダルいしボスまでスキップ
4.そもそも魔法使いってどんなやつ?
5.ダルいしボスまでスキップ
6.そもそも魔法使いってどんなやつ?
7.ダルいしボスまでスキップ
8.そもそも魔法使いってどんなやつ?
9.そもそも魔法使いってどんなやつ?
ゾロ目.トラウマ野郎再来


【8→ そもそも魔法使いってどんなやつ? 】



ーーそれにしてもどんな人なんでしょうね。
魔法使いとかいう間抜けの話が出た。



僧侶「私でも王都で聞いたことがあります。若くして魔術は一級品。
今最も魔法使いと呼ぶに相応しい人間だ、と」



目的の洞窟前まで来てトラップが無いか確認している最中。
手持ち無沙汰な僧侶が話しかけてきた。

俺とて大した情報は持っていないが王都暮らしの長い僧侶と情報を交換する。



勇者「俺は大概田舎暮らしだったから基本的な情報しか知らない。
国王陛下と、あとはさっきの村で聞いた話くらいさ」

僧侶「はぁ。でも、きっと油断なさっていたから拐われてしまったのでしょうね……」



油断というよりは慢心、呆けのレベルであることは言わないでおこう。
これ以上僧侶に要らぬ心配は掛けたくない。

若いとわざわざ言われるだけあってそういった失敗も仕方の無いことかもしれないが、さすがに無い。
才能に吸い取られて脳味噌の容量も食われてしまったのだろう、きっと。



勇者「かもね。……聞いたところによるとーー



【お仲間チャンス】



0.普通の男の子(自称)
1.普通の女の子(自称)
2.普通の女の子(自称)
3.普通の女の子(自称)
4.普通の女の子(自称)
5.普通の男の子(自称)
6.普通の女の子(自称)
7.普通の男の子(自称)
8.普通の女の子(自称)
9.普通の男の子(自称)
ゾロ目.エルフのお姉さん


日付を跨いだところで続きは今日か明日にでも
普通の男の子が仲間って王道の冒険っぽくていいですね!

ありがとうございました


【9→ 普通の男の子(自称)】



勇者「普通の男の子だって紹介しやがった宿屋の店主はぜってぇ張っ倒す」

僧侶「…………」

勇者「なーにが年相応なところもある普通の少年ですよ、だ間抜けがぁ! 」

僧侶「…………」



低級から中級までそれなりのモンスターを時に切り時に吹き飛ばし。
そこそこに苦労して辿り着いた洞窟の最奥。

心配して損をした、とかそういう問題ではなかった。
件の魔法使い様は僧侶と同じくらいか少し上、俺よりも下くらいの年齢だ。
顔もまぁ中の中から中の上くらい。身長も普通なら声も普通。
ただし普通なのと話通りなのは見た目だけのもので行動が既に常軌を逸している。



僧侶「…………オークやオーガってあんな流暢に会話できたんですね」

勇者「…………驚くところはそこなのか、僧侶」

僧侶「いえ、あの……なんというか…………えーっと」

勇者「や、分かるよ、うん。俺もどこに対してツッコめばいいのかは正直分からないからさ」

僧侶「はぁ……」



少なくとも多種多様なモンスターに囲まれて和気藹々と酒を酌み交わす少年は普通ではない筈。
それが十八年それなりに苦労して修行を積んだ俺の確固たる意見である。


勇者「…………」

僧侶「…………」

勇者「…………」

僧侶「…………」

勇者「…………」

僧侶「…………」

勇者「…………」

僧侶「…………話しかけないんですか? 」

勇者「正直帰りたいんだけど俺。僧侶が話しかけてみたらいいんじゃないか? 」

僧侶「はぁ…………」



やつらの話は最先端の魔具とその派生系について。
簡易的に召喚陣を描いた杖のデザインを語るオークの笑顔が新しいトラウマになりそうである。


魔法使い「ま、結局のところデザイン性っていうのは僕みたいな人間には無理な話だからね。
その辺は君がやってくれればいいよ。…………やぁ、待たせたかい? 」

勇者「なぁ、僧侶。あいつが呼んでいるぞ」

僧侶「当然勇者様を、でしょう? 」

勇者「しかしだな……」

魔法使い「安心しなよ。こいつらはまぁビジネスパートナー、
というか僕の友人達だから」

勇者「だから安心できないんだが。特にお前に」

僧侶「…………」コクコク

魔法使い「そんなこと言われてもな……まぁ、無理も無いか。
君たちもここに来るまでこいつらの同類を殺してきたんだろう? 」

勇者「……あぁ」

僧侶「……そうですね」

魔法使い「どうしても寄ってきちゃうんだよね。こいつらみたいにセンスと才能のある同胞のニオイに惹かれて、さ」



まるでここに来るまでに切り捨てたオークと座を囲むオークが違うかの様な言いようである。
いや、これが幻影だとかで無い限り違うのは確かなのだろうが、しかし。



魔法使い「ふぅ……分かった分かった。僕の家で簡単にだけど説明するよ。
変なとこ見られた所為で誘拐されたとか思われているんだろうしさ」



やれやれこれだから馬鹿は、というような態度に腹が立つ。
僧侶が隣にいなければ助走をつけて殴り飛ばしていたところだ。最低三回くらいは。


帰路に着く間、オークが、オーガが、ハーピーが。
様々な種類のモンスターが荒ぶる同胞を宥め賺してくれた。
もう全く意味は分からないが取り敢えずもう一つ噂通りなことを見つけた。



僧侶「こういうのが……天才、って人なんでしょうね」

勇者「……あぁ」



俺たちにとって天災にならないことを祈るばかりである。








………

……………


勇者「えーっと、何かつまりあのモンスターたちはお前が見つけ出してきたやつらのうちでも人間と親和性が高い方で」

僧侶「魔法使いさん謹製の魔具で理性を大幅に強化していたと? 」

魔法使い「実に簡潔な要約だね。実際はもっと色々細工してあるんだけど概ねはその通り」



宿屋の店主をはじめとした村人達に歓声をもって迎えられ、
魔法使いの自宅へと帰れたのは洞窟から帰還して更に後のこと。

何やら複雑な図式を見せられたが俺や僧侶には全く理解不能で。
それは魔法使いも最初から悟っていたようで教師めいた動作で講釈を垂れてくれた。
その要約、というか理解できた範囲の内容がそれである。



魔法使い「僕は確かに天才だけど実利的な、特に君たちの旅で活躍するような魔術は実のところ苦手な部類でね。
理論を組み立てていざやってみるとなったら日々溜め込んだマナで道具をつくるんだ」



俗に攻撃魔術なんて言われているものは既に君の方が何倍も得意だと思うよ、なんて。
当代随一の使い手、現在最も魔法使いに近いと謳われる少年はそう言い切った。


魔法使い「まぁ、逆に道具の製作に関してはそれなりに自負はあるけどさ。
並の宮廷魔術師ならオークとまともな会話を楽しむなんて不可能だろう? 」

勇者「お、おう」



確かにそうなのかもしれないがそもそも楽しむ気が無いだろう、とは言わない。
そんなことを言ったってこの少年に普通の返答なんてものは期待できないからだ。



魔法使い「君たちがここへ向かっているのは知っていたよ。
結構前におーさまから手紙を貰って以来色々と“ 目 ”は配置しておいたから」


“ 目 ”というのは恐らく山の中にいたモンスターのことなのだろう。
普通に自宅で迎えるつもりが酒に酔った挙句友人であるところのオーガに連れて行かれ、
気付けば友人総出で飲み会が始まっていたらしいが。



魔法使い「で? 君たちはなんだって僕なんか訪ねてきたんだい? 」

勇者「一緒に魔王を倒す旅に来てほしい」

魔法使い「いいよ」

勇者「……は? 」



訊いておいてなんだが正直なところ断られるだろうと思っていた。
僧侶も隣で驚いた様な顔をしているし彼女も同じ気持ちみたいだ。驚き顔も可愛い。


魔法使い「こんな山奥まで来てお話が聞きたかった、なんて有り得ないだろう?
今のはちょっと言ってみたいセリフだったんだ。山奥の賢者みたいな感じでさ」

勇者「…………」

魔法使い「あぁ、僕は天涯孤独の身だしオークたちのことは大丈夫。
最近だと彼らの理性を研ぎ澄ます魔具なんて彼らでもつくれるようになったからさ」

僧侶「…………」

魔法使い「よし、そうと決まったら早速準備をしてこないとね。
魔術関係のものは粗方まとめておいたし大丈夫だけどこの家は封印しておかないといけないから」



村の人たちに危害が及ぶと悪い、とかなんとか笑顔で呟いていたのは見なかったことにしたい。

ただまぁ、冒険に喜んで着いてきたがったり、賢者に憧れてみたり。
普通の少年っぽさというやつもまぁ、見えた、のかもしれない。











………

……………


時刻は早めの朝食を終えてすぐのこと。
僧侶の欠伸は今日も可愛らしいし天気も非常に良い。
ついでに自称普通の男の子である魔法使いは旅人っぽいローブ姿だった。



勇者「まぁ、お前がいるというのは正直相当心強い。これからよろしく頼む」

僧侶「よろしくお願いしますねっ、魔法使いさん」

魔法使い「あぁ、うんよろしくね」



ぼんやりとした顔はどう考えても寝不足である。
まさか旅が楽しくて寝られなかったのかと訊いたらそれの何が悪いと開き直られた。

そもそも勇者と旅に出ることに心踊らない男がいるかと言われてしまった。
確かにそう言われるとそうだがこれに言われると妙に納得がいかないのもまた確かで。



勇者「まぁ、いいか。取り敢えず俺と僧侶が滞在していたとこに戻って次の日からだな。まともな旅は」



ここから元来た街へ戻るのなんていうのは精々がちょっと危ない遠足みたいなものである。
人格は兎も角としてまともな後衛が一人、増えた。
多分きっと恐らく大体、王道の冒険っぽく、順風満帆、ぽいと思う。



【賽は明後日に投げられた】



0.鍛治の街へ
1.鍛冶の街へ
2.港町へ
3.剣闘の街へ
4.港町へ
5.港町へ
6.港町へ
7.港町へ
8.剣闘の街へ
9.港町へ
ゾロ目.カジノでも行こうか


ちょっと設定周りの為にあんこほぼ無しでしたすみません
明日か明後日はまともにあんこしますすみません

ありがとうございました


【2→ 港町へ】



魔法使い「馬車を買うべきだと思うよ、僕は」



旅を始めて二日目の朝のこと。
一日目で全く弱音を吐かなかった魔法使いがそんなことを提案してきた。



勇者「まぁ、仲間が増えた上に荷物もこれから更に増えるだろうし俺もそうしたいが」

僧侶「何ぶん元手が足りませんからね」



効率的なのは分かっているし俺や僧侶だってできれば楽をしたい。
徒歩のみでの旅で鍛えられるのは確かでも、そこには限界がある。
何より移動で疲労してしまい肝心なときに力を発揮できない、なんてのは非常に困る。

しかし僧侶は騎馬の経験が無いので旅を始める段階で馬による移動は不可能と判断。
もう一つの案が馬車だったが金銭的な理由で提案前から却下されていた。



魔法使い「それくらい君が色々と稼げばいいだろう。モンスターでも盗賊でも世の中沢山いるんだから」

勇者「それはそうだが旅を始めて十日程度なんだぞ俺たちは」

僧侶「それに馬車を使うのならもう一人は仲間が欲しいところですね。
この三人で馬車を扱えるのは勇者様だけですから」

魔法使い「む……」


勇者「僧侶の言う通りだな。移動中はできれば背後の警戒に一人。
僧侶には回復薬と援護を頼みたいしお前もどちらかというと後衛だろう? 」

魔法使い「そうだね。正直言って今すぐ僕が四六時中見張りを務められるかといえば当然、否だ」

勇者「だろう? 」

魔法使い「……うん」



変に馬鹿にした顔をしたりやれやれと嘆息することもあれば、
今の様にすぐ様自分の非力や経験不足を認めてしまう。

自称普通の男の子ではあるがこの辺りが妙に憎めないところで良いところだと分かってきた。
自分が彼と同じ年齢で同じ立場だとして自分の非力を認めるなんてきっと無理だっただろう。
場合によっては今でも尋常では無い忍耐が必要かもしれない。



魔法使い「まぁ、金銭的にはそのうちクリアできるはずだよね?
なんなら僕が適当な魔具でもつくるからそれを売ろうか」

勇者「そうだな」

僧侶「じゃあ取り敢えず目先の目標は港町として、
これからは馬車の調達と御者役の確保も考えていきましょうか」



目標がまた一つ決まった。
どうせ旅の最終目的は決まっているわけで、しかも長いわけで。
魔法使いの言う通り、鍛錬も含めてモンスター狩りに行くのも悪くないだろう。




朝食を終えて旅を再開させた後は魔法使いも弱音を吐かなかった。










………

……………


勇者「これで行程は三分の一を消化した辺りだな。
順調に行けば一週間も掛からずに港町だ」

僧侶「馬車のことを考え始めると急にお金も惜しくなるものですね。
食材を値切るなんて初めてしちゃいましたよ、私」

魔法使い「僕はもう疲れたよ……足が石化しそうだ」



深夜になる前に目標の村へ到着して宿屋へ。
部屋割りは僧侶が一人で俺と魔法使いが二人。
魔法使いが嫌がるかと思ったが特に何も感じない様だった。
彼の言葉によれば、



魔法使い「これでも山奥でおっさんとかおばさんたちと生活していたわけだしね。
あとモンスターたちと接していれば君だって天使様さ」

勇者「お、おう……そりゃあ、うん」



とのことであった。他人をモンスターと比べるのはやめていただきたい。


魔法使い「ま、倒したモンスターから素材も採取できたし、
僕はここでちょっと工作でもしているよ」



少しだけ眺めていただけだが魔法使いの手先は普通なんかじゃ有り得ないものだった。
砂一粒の向きすら拘泥る様なその手付きは本気で神がかっている気すらする。

途中からは此方のことなど全く気にもしてくれなくなったので退散してきた。
そういえばあれだけモンスターと酒を飲んでいたにも拘らず魔法使いは旅を始めて一度も飲んでいないな、なんて。

どうでもいい様なことを考えながら宿屋の一階、酒場となっているスペースでエールを飲む、美味い。実に美味い。



勇者「僧侶は飲まねぇだろうし……どうするかな」



この国の法でいえば彼女ももう飲める年齢の筈だ。
そもそもその法だって一応つくられているだけで、慣例でいえば一桁の少女でも飲まされるときは飲まされる。
主に親戚のおじさん、とかいう厄介者たちの所為で。
加えて彼女の信奉する神も聖職者の飲酒は特段禁止してはいない。
過度な飲酒と怠惰を戒めているくらいである。
飲まないだろう、というのは単にキャラの感じで決め付けているだけだ。



勇者「んー……あんま大きい村でもないが」



【賽を投げてみよう】



0.寝る
1.寝る
2.寝る
3.僧侶と話す
4.寝る
5.僧侶と話す
6.寝る
7.魔法使いと話す
8.寝る
9.魔法使いと話す
ゾロ目.深夜に不審なやつが出るらしいな


【4→ 寝る】


勇者「……明日も取り敢えずは徒歩だし。早めに寝るかな」



身体は最高の資本だがすぐに失えてしまう資本でもある。
もう一人いれば話は違うが今のところ前衛と言えるのは俺一人だけなのだ。
二日酔いや寝不足で傷を負ってしまっては僧侶の目を見れなくなってしまう。
そんな不幸だけは避けなければなるまい。



勇者「早寝早起き快眠ーっと」



俺が寝る頃になっても魔法使いは何やら呟きながら作業を続けていた。
明日の朝この村で売ってみるのだそうだが果たして何をつくっているのだろう。

俺も不器用なわけではないしマナの扱いも一応は勇者の名を与えられるくらいには得意だ。
今度おしえてもらおうか、なんて考えていると眠気に襲われた。


魔法使い「…………足が痛い」








………

……………


勇者「」

僧侶「」



魔法使い「さぁさぁ王都流行りのサンダルにペンダント!
魔術的効果も様々で良い物を沢山揃えてますよー! 」



売れた。それはもう売れた。凄まじいの一言である。
何が凄いといえばまずその精巧さであった。
寒村の懐事情に合わせたとはいえかなりの低価格で売るのが忍びないくらいには技巧が凝らされている。
物々交換も大歓迎とあって少ない村人たちはどこからか現れては魔法使い謹製の魔具を購入していった。



魔法使い「ふぅ……まぁ、御者が持つ鞭の分くらいにはなったろ。…………待ったかい? 」

勇者「お前……商人になれば? 」

僧侶「職人としても一流なんて凄いですっ」

魔法使い「うん……? 」



【賽は高く高く放り投げるもの】



0.次の村
1.盗賊
2.次の村
3.次の村
4.盗賊
5.次の村
6.盗賊
7.盗賊
8.盗賊
9.次の村
ゾロ目.ストーカー登場


僧侶に忍び寄る魔の手、再来

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