(ちょろい)白石紬を、Pが(18禁的に)訓練するはなしです。
2万6000字ぐらいです。
「ちかかかかかっ」
❤が多めです。
※01-25までありますが、濡れ場だけ読みたい場合は ※09まで飛ばしてください。
――今からプロデューサーさんは、セクハラさんなの。よろしくね。
――もしチカンとかにあった時、さわられちゃうの、やでしょ……。だから、防ぐ練習したいの。
――あ……。ゃん……、ん……いや。なでまわさ……ないでぇ。
※03
「と、いうわけで……その、プロデューサー……あなたに、
私の“セクハラさん”対策のお付き合いをお願いする、という次第です」
不本意ではありますが、これは社長や青葉さんや音無さんには頼めないことです。
……と、私が忍びに忍んで申し上げたというのに、
プロデューサーは胡乱顔で私に目を向けて黙ったまま。
「なにをそんなじろじろと人の顔を……そういえば、あなたと出会った時も」
初めて顔を合わせた時、プロデューサーはうちのお店へ衣装の返却手続きに来ていて、
私は父の留守番として店に立っていたのですが、そのとき、お互い名乗っても居ないのに、
黙ったままじろじろと私の顔を眺めていて……。
……記憶をたどると、ずいぶん前の出来事に思えます。
暦の上ではさして星霜を重ねていないのですが、
プロデューサーとはいろいろ思い出されることが多く……
……のんきに回顧している場合ではありませんでした。
「あなたは、やはり、私以外の人間にも、そんなセクハラじみた振る舞いを……!」
プロデューサーは慌てて否定しますが、信用なりません。
担当アイドルとして付き合うなかで私も察してきました。
悪気はないでしょうが……この人の不躾さは、かなり“素”です。
……一歩でアイドルの世界では、この人が特別に不躾なほうではないことも察してきました。
……私が気にしすぎているのでしょうか。そういう覚えも若干あります。
他人の視線を絡め取るのが商売のアイドルとして、「私をじろじろ見ないでください」
という態度をあからさまにするのは、いかがなものか……と言われると、返す言葉もございません。
「ま、まぁ、かえって訓練に臨場感が出てよろしいでしょう。
あなたなら、そう、私も知らない仲ではありませんから……いささか行き過ぎがあっても……。
コホンっ! とにかく、私のセクハラ対策に協力してくださいっ」
プロデューサーは納得しかねた表情でしたが、無理やりうなづかせました。
「前もって申し上げておきますが……これは、あなたが楽しむためではありませんから。
いわばワクチンや予防接種の類いです。私に免疫をつけるためです。
まさか、役得だ、なんて思ってはいませんよね。
はぁ? 『実は少し役得だと思ってた』ですって!?
もう“セクハラさん”になりきっているとは、呆れるほど熱心なことですっ」
……正直、ぜんぜん役得だと思っていなかったとか言われなくて、
毫か眇ぐらいは安堵した気もしますが……それは、私の顔に出ていませんよね……?
(すみません。※02が抜けていました)
※02
「プロデューサー……つ、つかぬことをお聞きするのですが……。
……“セクハラさん”とは、いったいどういうことなのでしょうか?」
プロデューサーは、私の突拍子もない(……と、自分で言うのもおかしい気はするのですが)
質問を向けられ、頭を抱えていました。
じっと眺めていると、手首の隙間から『……ミキだな』とくちびるだけでつぶやいているのが見えました。
「あんですか、その反応……もしかして、私があなたを糾弾しにきたとでも?
確かにとんでもない狼藉ではあります……が、
あなたが美希さんに理由もなくそんなことをする……とは思っておりません。
まぁ、いかなことかて……ちょっとは考えましたが」
私が美希さんから聞いた話では、痴漢にカラダを撫で回されるなどのセクハラを受けた時、
断固それをはねつけるための予行演習と……という名目で、
プロデューサーが“セクハラさん”となって、美希さんを……撫で回したということでした。
『紬も、一回やっておいたほうがいいんじゃないかな、ってミキは思うな。
たとえばイヤラしくてお偉いオジサンが絡んできたとき、
軽くあしらったりするのとか、紬、ニガテじゃない?』
私はそういう対処について、自分では苦手意識はないのですが……。
……うち……店番ぐらいなら、できてたのに……。
『紬のおうち、古くからやってる和服のお店なんだってね。
それじゃ、物分りの良いお客さんしか来てなかったんじゃないの?』
……まぁ、その、界隈が狭いですからね。
悪評がすぐ回るので、慮外者は自然と居場所をなくしてしまうところではあります。
そして、芸能界、アイドルの世界は、そうと限らないことも承知です。
『それでね、紬がプロデューサーさんにするみたいに、つんけんするとね。
“セクハラさん”は『ぐへへへへっ』とか『ちかかかかかっ』って、
かえって張り切っちゃうんだって」
わ、私とプロデューサーが、美希さんからは、そんな風に見えて……?
そ、その、ぷ、プロデューサーとは、確かに……
いろいろとぎこちないところがあったのは、認めます、けど……。
『じゃあ、プロデューサーにセクハラされてもうまくあしらえたら、
ほかの“セクハラさん”になにかされても安心だね』
……。
…………。
うちより、美希さんのほうが、その手の機微にこなれているのは確かです。
……うちのが年上やのに。
※04
そうしてプロデューサーは、私のことをじろじろ眺め続けています。
二人きりなのを良いことに、そりゃあもう無遠慮に。視線で肌がくすぐったくなるほどに。
確かに、じろじろ見つめてくるのはセクハラのなかで一番よくあるパターンのようです。
美希さんは、痴漢を想定していたのか、いきなり手で触ってくるシミュレートを行っていたようですが。
「……そんなに見つめていても、穴など空きませんよ」
プロデューサーは椅子から立ち上がって、同じく立ち尽くしている私の周りを、
360度うろうろと歩きながら、私に視線を向けたり反らしたりするようになりました。
何も言わずに。私もしゃべることがなく、二人とも黙ったまま。
他に誰もおらず、電話さえ鳴らず、窓やドアの外の気配も消えて、空調ぐらいしか聞こえません。
……そういえば、うち、何の準備もしないまま、ここへ来てしまった……。
レッスン上がりやけど、身繕いがあてがいになってたら……汗の匂い、してるとか。
そういえば服も、水引きも、普段づかいの代わり映えしないもの。
もしかして、どこか、よれてたりしてるとか……
うぅ……うち、呉服屋の娘やんに……下着も、きょうに限って、朝とっさに手に取ったんで、
もう何を着たのやら、よう思い出せん……ワンピースが白だから、最低限、透けにくい色にした覚えはあるけど……
って、なぜ下着を気にしなければならないのですか!?
いけません。『穴が開く』とか独り言ちたせいで、こんな雑念が。
プロデューサーは、しばらく私の背中を見つめています。
『紬の後ろ姿を見るときは、たいていステージ衣装だから。普段着は珍しくて』……見世物のつもりですか?
言葉ばかりか摺り足の足音まで聞かせて、後ろにいるぞ……と、聞こえよがしに……。
ステージ衣装であれば、メイクさんや衣装さんのチェックもあり、
また自分でも姿見でちゃんとしているか確認できますが、普段着ではそうはいきません。
どこかおかしなところ、あったら、うち、恥ずかしくて……
かといって、『私の後ろ姿はどうですか?』なんて、聞けんし――
「――えひゃぃいっ!?」
あ……い、いま、あたま、ぞくぞくって……うち、なんのこえ、だしとるん……
「ぷ、プロデューサー、ですよね……?」
頭の、髪の毛を、さーって……幽霊に触られたかと思ったじゃないですか!
……そ、そうです。私がつい変な声をあげてしまったのも、怖かったからで、その……
「かっ、髪は女の命ですっ! そっそれを、そのような、無遠慮にっ」
私はその続きを噛み殺しました。
……セクハラなどという無神経な問題を起こす人間に、無遠慮がどう、などと。
詐欺師に向かって「嘘つき」と罵るぐらい不毛でした……。
「……『紬の髪が、きれいだから』……あんた、まさか私の髪以外は……」
反語を口走ろうとして、また私は口をもごもごさせてお茶を濁します。
賛辞を素直に受け取れない悪癖、治ってきたと自分では思っていたのですが。
※05
「……あまり、私を無邪気に褒めないでください。本気に、してしまいますから」
ただの自慢ですが、私は小さい頃、よく『べっぴんさんだね。末は女優かアイドルかな』
とよく褒められました……親戚のおじさんおばさんお兄さんお姉さんや、お店のお客さんからですが。
子供だった私は、それを本気にして……でも、だんだんそれが気安い社交辞令だったと、
誰に教えられるわけでもなく察してきて、アイドルはたわいもない夢として薄れていって。
でも、あんたは、プロデューサーは、本気やって、それで、本当にしてしまったから――
「ふ……うっ、うぅ、こそばゆい、です……犬猫みたいに、撫でられたら、うち……」
私の髪や背中を撫でるプロデューサーの手付きから、なんとなく犬猫を連想してしまいます。
えてしてその手付きは、セクハラと似ているかも知れません。
美希さんからうかがいましたが、“セクハラさん”は、悪意をもった嫌がらせというより、
コミュニケーションの際に相手がどう感じるか? ということに無頓着な人がよく起こすようです。
ちょうど、犬猫が可愛く見えるからって、頭や耳やしっぽなど敏感なところを無造作に触ってしまうような。
プロデューサーも、私がどう思うかについて、本当に考えているのか……?
と疑問を抱かせる振る舞いに、しばしば及びますが。
「こ、こんなの、だめ、ですっ……私、抵抗、できない、からっ……」
『まぁアイドルって、犬猫扱いみたいなところがあるよね。どうかと思うけど』
美希さんの面影が、またちらついては失せ、うろついては消えます。
『たとえば、アイドルって恋愛がバレるとスキャンダルになって困るけど、
それって、セクハラされてるのと根っこは一緒な気がするの。
……例えば、紬が誰かと付き合いたくなったら、そう思うの、ホントは紬の勝手でしょ?
それがちゃんとしたヒトに対する扱いだよ。まぁ結婚してるとかなら別だけど。
……って、フツーの話が、通らないんだよね。アイドル、だから』
私がアイドルであるがゆえに、そういう葛藤に折り合いをつける必要がある……というのなら、
プロデューサーは、いちばん協力すべき立場ではありませんか。
私をアイドルとしたのは、ほかでもない、プロデューサーなのだから。
※06
プロデューサーは、私の髪を我が物顔――表情は見えませんでしたが――で弄り回しながら、
私のことを耳元で褒めそやしてきます。耳殻からプロデューサーに声を流し込まれるたびに、
私の頭やうなじや肺のあたりが赫々と熱くなって、ふわふわと舞い上がって、熱気球か何かにされた気分です。
「あ、ふぁっ……んんっ……あんた、ぁ……❤ そんな、甘言を弄して……
あなたはっ、私の心をオモチャにして、そんなに楽しいのですか……?」
腹が立たないといえば嘘になります。
ただ、私を震えさせる熱や脈拍の原因を、すべてその怒りのせいにできる……わけでも、ありません。
「うなじに……顔をっ、埋めるなど……! や、ぁっ……におい、嗅がないで、嗅がんといて……っ!」
されるがままになってしまいます。
身をよじってプロデューサーの手や腕に逆らおうとしても、
プロデューサーの感触が離れない程度に加減してしまいます。
「いっ、息遣いを、荒く、しないで、ください……!
髪や、首にかかって……っ」
恐ろしくてたまらないのです。
興奮しているのに背筋が震えて止まらなくなっています。
プロデューサーに何をされるかわからないのに、何をされても受け入れかねない私が、
ここに突っ立ったまま、背中から回されてるプロデューサーの両腕に、しがみついて、すがって、
「私の匂いが、いい匂いだと……? 妄言もたいがいにすることです!
私が毎日、どれだけ気を遣っているとお思いですかっ」
これまで私は「セクハラ」と聞くと、
胸やお尻にいきなり触れてくる痴漢のともがらを思い浮かべておりました。
それが、髪やうなじのような、直接的に性的(セクシュアル)と言い難いところでも、心が、乱され……っ!
「こ、興奮などしておりません! こ、これは、怒りです!
あなたの不躾さに、私は、憤っているのです……!」
するとプロデューサーは『ここからどうやって逃れるか』を私に静かに問うてきます。
「う……どうやって、逃れるか……?」
そうでした……。
これは、セクハラに対処するすべを会得するための……。
プロデューサーは『つらいなら、止めるか?』と、訳知り顔。
「こっここで止められたら、私は、あなたに触られ損ではありませんか!
かくなるうえは……乗りかかった船です!」
私の虚勢混じりの挑発に応じてか、
プロデューサーは、私の身体に腕を絡ませ、ぎしりと重みを乗せて……。
「あっ、ん、くぅ……肩、手を、回し、て……っ」
私はついよろけて、背中をプロデューサーへ押し付ける体勢になってしまいます。
※07
「あ……うっ……こ、こんなん……い、今までっ、こんな不届き者に遭ったことがありませんでしたので……。
存外、抵抗するというのは難しいものですね……」
あまりに白々しくて、プロデューサーが見てもいないだろうに、
私は目を開けていられず、目交をくしゃくしゃにしてしまいます。
「わ、私がこれから不埒な仕打ちをこれから受けるかも知れない……なのに。
そうなってしまったとき……私が、このような、成されるがままでよい、と……?」
私は、いぶかしんでいたはずの美希さんのお題目を、そっくりプロデューサーへぶつけていました。
「ひぁぅうっ!? あ、ひっ、へぇあっ、ぷろ、でゅーさーっ……!」
プロデューサーは、私の言葉があまりにたどたどしいのを気にしたのか、
私のくちびるに、指を、添えて、滑り込んで、歯のざらざらする表面までつついて、
「あ、あなたは、人のくちびるに……私があんみつを頂いている時、そんな目で見ていたのですか?」
プロデューサーは、私のくちびる周りをくすぐりながら、
『紬があんみつを食べている時、寒天や求肥みたいに自分が歯を立てられたら、
どんな気分か考えたことがある』などと、戯言を聞かせてくるのです。
「ほんな、あだけ……! もう、いや……あなたの前では、おちおち食事もできません……っ」
それとも、そんな妄想を私に聞かせておけば、
こうやって私の口中に指を突っ込んでも、かじられずに済むかも、という浅薄な魂胆でしょうか。
いや、ここでそんな小賢しさを出すほど、私のプロデューサーは、器用ではないと思います。
器用じゃないから『逆に紬のくちびるを舐めてしまったら、あんみつぐらい甘いんだろうか』などと続けて、
「ひっ、他人をそんな甘味か何かのように……」
犬猫どころか、甘味と同類の扱いです。
美希さんのおっしゃってたことの道理がわかりました。
「あなたは……どうやらひどく三毒煩悩の根深い人間ようで……
あなたに慣れておけば、たいがいの不心得者がなんでもない者のように思えるでしょうから、
訓練にはもってこい、でしょうね」
私の唾液で濡れた指先を、プロデューサーが引っ込めました。
その指先をプロデューサーがどうしたか、私は強いて考えないようにしました。
※08
「き、きす……くちづけ、接吻のこと、ですよね」
まだプロデューサーの指の感触も生々しく残る私のくちびるは、
たどたどしい応(いら)えをこぼすのが精一杯。
私から腕を離して、私の正面に舞い戻ったプロデューサーは、
――『セクハラ対策としては厳しすぎる気もするが』など、と。
「あなたは、私を気遣うのか、私に厳しくするのか、どちらなのですかっ」
私も、女……女の子、なのです。キスに、人並みの夢を見ます。
こんな、情緒や浪漫のカケラもない場面で、くちびるの操を捧げるなど……という葛藤もあります。
ただ、プロデューサー……あなたに関して言えば。
あなたのせいで、キスよりもずっと重い覚悟の必要なことを既にしているわけですから……。
そうです。今更あなたとキスするなんて、動揺することでは。
だから、抵抗する気が起きないだけ、で……。
「あ、あなたは、私なんかと、その……キス、したいの、で――」
私は『したい』の部分を発声した瞬間に、
口から出したばかりのそれが愚問である、と気づいてしまいました。
プロデューサーは今さっき私のくちびるについて『味が知りたい』とのたまったばかり。
しかもそれ以前に、私は、このふしだらを『あなたが楽しむためではない』とクギを刺したのに。
これでは自分のクギを踏む醜態を――
――『したい、紬と、キス、したい』……と、聞こえたのですが。
私の聞き間違いではありませんか。
舌がおかしくなっているのですから、耳までおかしくなっていても、おかしくありません。
あ……そ、そんな、何度も、言わんでぇ……わかりました、わかっています、からっ。
プロデューサーがキスのことを話すので、ついそっちに視線を向けてしまいます。
何の変哲もないはずの――私は誰かさんと違って人の顔をまじまじと眺める趣味は持ち合わせていないので、
私が知らないだけで本当は特別なのかもしれませんが――あなたの口元。
……私がこんなにも浮ついてるのに、あなたは口元を引き締めたままですね。
血色はまずまずのようですが、かさついている具合がします。
リップクリームを塗ってはいかがでしょう。
このくちびるでむさぼられたら、私は内側まであなたのものにされてしまうかもしれません。
……冗談にしても悪趣味な想像ですが、私にとっては笑って済ませられない夢想です。
だって私は、まさにあの口車で、金沢から東京までやってきて、まるで別人に……
え、ええいっ。何がおかしくて度を失っているのですか白石紬っ。
そうです。これはスカウトのときと同じですっ。
プロデューサーが『したい』とのたまって、私が、応じて。
お、お、応じる……の、ですか……?
「そ、そうですね。くちづけですから。目を、閉じなければ、いけません……」
細くなる視界の中で、正面のプロデューサーが屈んで、ゆるゆると私に近づいてきます。
私の肩から、面輪にかけて、手をそえられ、指先で少し首をかしげるよう誘導されます。
「わ、わたし、その、はじめて、なので……うまく、できなくても、笑わないでっ――」
私のためらいは、プロデューサーと私のくちびるの間で押しつぶされ、はかなく霧散しました。
※09
キス――といっても、私がプロデューサーと最初にしたのは、くちびるを重ねたり、
触れ合わせるぐらい。小鳥の餌付け程度の……
「んっ、く、ふ、ぅう……❤ う、っ、んんっ……❤」
海外ドラマならあいさつで済みそうなそれが、私にはめまいを起こさせてしまいます。
プロデューサーが探り探り、私の歯のエナメル質を舌でなぞってきて、
私の味を知られてしまう……もしかしたら、私自身でさえままならない内心も知られて……
「ひゃ、ぅ……! ひゅっ、ふ、ぅ、んくっ……」
――し、舌の裏、なんて……自分でも、触ったことがないのに……!
こじあけ、ないで……とめられないんです。私、あなたをとめられない……。
音、立てられたら、や、ぁ、っ……ざら、ざらって、なめられたら、とけ、ちゃうっ。
私が舌で刺激されるのに慣れる前に、プロデューサーは私を解放しました。
息、ひゅうひゅう荒れてるのに、息が止まってるかと思うほど苦しくて、
鼻息の荒いところを見られて……はしたないところを……。
……はしたないどころではありません、ね。キス、していましたもの。
鼻息なんて、プロデューサーの頬やおとがいへ直に吹きかかっていたはずです。
「ぐ、すっ……う、ぁ……私、泣いて、など……い、いや、だめ、
あんた……離さんといて……うち、立ってられな……あっ」
私はプロデューサーの肩口に寄り掛かってしのいでいました。
プロデューサーの胸や腕は、背中で感じていたときよりもずっと堅固に私を受け止めてくれていました。
「ちがい……ます……うち、いやなんかじゃ……う、うっ……
本当に、泣くほど嫌であれば……とうに、人を呼んでおります……っ」
こんな時に限って、プロデューサーは的外れの管を巻くのです。
貴音さんが、よくプロデューサーのことを「いけず」と責めなじっておりますが、
今その意味が泣くほど身にしみます……。
「うちだって、そんな、なんで泣けてくるのかなんて……後生だから、言わせんといて……」
……私は情けなさにまみれながら、プロデューサーに甘えていました。
だって離したら終わってしまうんです。
もし冷静に考えられたら、終わるわけはないと心得ていたでしょうが、
冷静さなんかきっとプロデューサーの前に立つ前の道中に落として忘れてしまっていたんです。
でも自分の不甲斐さは忘れられません。
察して、と。言わなければわかりませんか、と。
「思っていること、口に……そんな、苦手さけ……っ」
こんなん、てんごうです。
そうほざく私こそ、プロデューサーの気持ちを今までどれだけ察せてきたんですか。
ちゃんちゃらおかしい……痴人夢を説くとはこのことです。
でも舌が回らないので、やむなく私は、プロデューサーへ絡めた腕に力を込めます。
伝わって……私の、体温で……ほら、こんな、私自身が焼けそうなぐらい、熱いから……。
などとドラマか少女漫画じみた感傷に酔っていた私は、
しばらくすると、下腹部あたりに、不審な棒状の感触が押し付けられていると気づきました。
※10
……は?
プロデューサー。これは、もしや。
「そ、それより、私の腰の上あたりに、あなたの……あたって、もしや、それは……」
私は性行為の経験などございません。
家族以外の男性の裸を直接この目で見たことはありません。
ですが、多少の知識はあります……皮膚や肉にしては、妙に固いこの感触は、あなたの……。
わ、私で性的に興奮して……その、陰茎、ペニスを、勃起させているとでも……?
どれだけ性欲絶倫なのですか!? 今は、私が乳房を触らせているとは言え、
ほんのさっきまで、私の髪の毛を梳いて、匂いを嗅いで、口づけしただけ……。
そういう私が、興奮していないと言えば……嘘になりますが。
「収まりがつかない……と。はぁ。それ、うちのせいなん……?」
……まぁ、その。
舞い上がってたのが私だけだったとしたら、それはそれで女の一分が廃れに廃れて、
私は立ち直れないぐらい胸に堪えてしまっていたのでしょうが。
「ま、まだセクハラではありませんよ。
私だって、多少の下調べは済ませております……。
された側がセクハラだと思えば、セクハラ、なのですよね……」
私は屁理屈をこねてばかりです。
勃起した男性器を押し付けられたのがセクハラでなかったら、
いったいどんな行為がセクハラに該当するのでしょう。
「私がセクハラではないといえば、セクハラではないのです。
白石紬が、あなたに二言を吐いた例しがありますか?」
私は、すっかり癖になってしまった反語的な言い回しで、お茶を濁します。
「続けても、構いません……いえ、私が、あなたの手を振り払ってしまうまで、続けてくださいっ」
プロデューサーに目を丸くされると、
なんだか自分がとんでもないことを言い放ってしまった気が湧いてきます。
……ですが、駟(し)も舌に及ばず。
「ただ、その、顔は、見ないで……恥ずかしい、から……」
そう付け足すのが、せいいっぱいでした。
※11
「胸……なるほど、あなたも男性、ですからね……」
また私のすぐ後ろに立ったプロデューサーは、『触るぞ』と言って、両二の腕の外側を抑えてきます。
私は自分の歯がかちかち鳴ってしまうたびに、言い訳のようにため息をつきます。
そうです。私は、落ち着いているのです。
「あなたなら、触ってもよろしい……とは言いましたが。
その、髪のときぐらい……優しくして、いただければ……」
髪も手入れには本当に気を遣いますが、胸は本当にままならないところです。
……どっちも、私の身体の一部なのに。
胸は、子供の頃はどうという変調はありませんでしたが、中学に上がって、
乳腺だかどこかが張ってきたあたりは、何かとキシキシ腫れぼったく痛んで、
着替えなどに神経を使わされてうんざりしたものです。
「ぁ……ふぁあっ……❤ ぃ、あぁ……っ❤ こ、こえ、ぐらい、でますっ。
む、むね、触られているのですよ? おかしくないでしょう!」
それを、もっと膨らみの豊かな女性の悩みだろうと独断していた当時の私は、
ずきずきうるさい胸を抱えながら『別に見世物じゃないのだから』と強がっていました。
幸い、中学を卒業する前には和らいでいましたが……今では考えられないことです。
「だ、だいじょうぶ、です。いたく、ありません。くすぐったいけれど……」
プロデューサーの手付きは、撫でるというには力が抜けていて、触れると押さえるの間の心地がします。
痛くはありません。
痛いといえば、私自身の心臓が発作じみて跳ね回ってるほうが、よほど痛みます。
「私の、心臓……どきどき、しとるの、感じて、ますか……?」
プロデューサーの手のひらが、アンダーバストに、紋意匠の布1~2枚ぐらい埋まっています。
ちょうど心臓のあるあたりだから、あの人が私の拍動を察せられる……どころか、
あの人に私の拍動を察せられていることが私自身で否応なく感知できてしまうほど、
私たちはぴったりとくっついていました。
「っふ、ふぅむぅ、ぅ……❤ はひゅ、ぁ、あっ❤ あぁっ……❤
あ、あなたという方、は……ずいぶん、手慣れていらっしゃるの――い、いえ、その。
とがめている、わけでは、なく……んぐむっ、くぁ、っふ、あっ❤」
私の反応に気を良くしたのか、プロデューサーの手は、だんだん行動範囲を広げていきます。
「あっ……❤ きゃぁあっ……! う、うちの……さ、さきっぽ、固く、なって、など……っ❤」
プロデューサーが、ワンピースと下着越しに、咎めるように、爪先で、何度も、
かりかり、ざりざりって音が聞こえるぐらい……。
そんな、その……身体を交わすの準備が、万端であるかのような……。
「んきゅうっ❤ へ、へんなこえ、でてっ、でてしまいますから、そこ、かんにん、してぇ……❤」
そうしながら、私のお尻のあたりには、例の固い感触が押し付けられます。
プロデューサーが……私を妊娠させずには収まらない、とでも言わんばかりの、これみよがしに、誇示して……。
まさか、そんな、執拗に……乳首を、弄っているのは……。
私を孕ませて、ここから母乳を出させるという合図か符丁なのでは……。
※12
「あ、くうっ❤ や、やらぁっ❤ む、胸っ、おかしく、なって、ぁ、あっ❤」
いや、いやいやいや、いくら私のプロデューサーが突飛なことをする人とはいえ。そんなまさか。
そう思いとどまろうとするのですが、プロデューサーの手や指は止まらず、
ずり、ずり、ずり、と馴らすように指を食い込ませたり、何事かささやいてきたり、
(その言葉の真意を推し量る余裕は、私から失われつつありました)
指の一こすりのたび、私の羞恥と妄想が剥き出しにされていきます。
「い、いやっ、胸、さきを、ちくびっ、いじらないで、動かさないで……っ!」
生理痛が重い時ぐらいしか意識しなかった、自分の下腹部の奥が、
プロデューサーの胸愛撫でじりじりする感覚の飛び火をもらってしまって、
それをまた、固い、プロデューサーの、その、陰茎、が、お尻や腰あたりにぐいぐいとされて、
焦れったさが肌の下を霧雨か糠雨のごとく音無しに降り注いで、私の奥底に溜まって熱く重くなります。
「い、やぁっ、こえ、でちゃ……んんんぅっ❤ あっあんたが、妙な雰囲気出すから、うち、は……❤」
そういいながら、私はあなたに背中を押し付けてしまう。
私の乳房に這い回る手を、自分の手で抑え付け……でも退けるどころか、
もっと深く食い込ませるよう後押ししてしまう。
離しては、いや。
今、あなたと離れてしまったら、もう二度とあなたと触れ合えないと……絶対そうなってしまう。
私は、そういう人間だったから……。
「か、感じて、興奮してなど……そんなん、あてがいなことを……っ!」
私の聞き分けがあまりに悪いせいでしょうか。
プロデューサーは、器用にも私の衣服を脱がさぬまま、胸下着の肩紐をずらして、
私の胸を覆っていた守りを一枚脱落させます。
下着の裏地より粗粗しい折り目が、張り詰めていた乳首に食い込んで、とても外を歩けないような有様です。
「んひぁぅううっ❤ そ、そこ……っ、むね、ちくび、浮いて、なんかぁ……❤」
私が言葉で否定したものの、プロデューサーの動きは、完全に私のそこを探り当てている風でした。
さらさらと撫でて値踏みするようだった手付きが、いつの間にか指を立てて、
特定の場所をちくちくと刺激する意図をもって、爪先で引っ掻いたり、指の腹を押し付けたり……
「ぁ、ん……❤ そんな、こりこり、して、してっ、なんか……❤」
こんなん、絶対おかしい……直接、肌に触られてもいないのに。
プロデューサーの力加減も、ゆるくて、じれったいぐらいなのに。
うちのカラダ、こんなに大げさに反応して、アタマまで、熱くなって……。
――ずる、ずるっ、ざり、ざりっ。こり、こりっ。
も、もう目も開けられません。プロデューサーの手付きを直視できません。
もてあそばれるがままの私の乳房なんて見たら心臓が口から出てしまいそう。
そうやって頭がうぶな猫をかぶってる間に、首から下はどんどんプロデューサーに勝手になびいていく。
まるで、本当に、子作りの準備をさせられて、うちの身体は、それに唯々諾々と従って、
口だけ抗弁してるのも、これだと、甘えてるみたいにしか聞こえないのでは……。
※13
「そんな卑猥なこと、耳元で、ささやかんといて……
うちが興奮してると、こっちもますます興奮する、なんて……」
ほかの人なら、そんな妄言……と聞き流せても、あなたの言葉は聞き流せないのですっ。
「だって、だって、あんたの、はぁ……❤」
あなたの言葉は、これまで、私を別人のように変えてきたんですよ。
だから、それが本当になってしまうと、そう錯覚して……。
「汗なんて……肌が熱い? あなたが、べたべたとくっつくからっ、あなたの体温が写っただけですっ」
あなたの興奮が私に伝染して、私の興奮もあなたに伝染して混じり合ってしまう。
お互いの衣服を隔てているのに、既に私は肌をすりすりと重ね合わせた気分。
「ひっ……❤ い、あっ……脇腹、くすぐったぁ……❤」
胸からプロデューサーは手が離れた……と思ったら――物寂しくなんて、思って――
そうした内心の言い訳を、今度はくすぐったさが押し流します。
「ひゃあぅううっ❤ こ、こんな、とこ……触る、なんてぇ……」
今度は、脇腹、肋骨や横隔膜、おへそのあたり……また、敏感なところを。
「触りたかった、て……もしかして、アイドルのお衣装を着てるときも、あなたは、私を、そんな……目、で……」
ヒーローズ・ジェネシスのお衣装で、ヘソ周りの素肌を出したときは、
あとで暖かくしなければ……ぐらいにしか思わなかったのに、あなたの手が触れると。
爪先でなぞられ、指の腹をわずかに食い込まされ、それだけで……。
「くっ、くすぐったぁ……❤ やっやめ……立って、られ、なく……うぅう……❤」
さっき胸から下腹に流れ落ちて、器をつるつるに満たしそうな興奮が、
プロデューサーの指のそれだけで揺れまくって溢れかけてしょうがないんです。
肌がくすぐったいどころか、肌の下、お腹の奥までじわじわ広がってたまらないんです。
「あっ、あ、……プロデューサーっ、さ、さわらん、といて、ぇ……❤」
さっき舌の根元をほじられたときと同じ。自分の身体の、自分で意識しなかったところに、
あなたが塗られてしまう。染められてしまう。それがつま先立ちみたいに落ち着かなくて。
「こ、こんなん、ずっとされたら、うち……ナカまで、おかしく、……うぅ、あ……んんんっ❤」
でも、あなたが私の悲鳴――にしては我ながらあまりにか細い声でしたが――で、手を止めてしまうと、
「……ま、まだですっ。まだ……この程度で、私が音を上げるとお思いでも……?」
詭弁でした。
この触れ合いが危うければ危うくなるほど、二度目があるかわからない。
私は退けなくなってしまう。あなたの手が、名残惜しくて、離せなくなる。
「んひぅっ❤ お、おしり、も……っ」
プロデューサーの手が、さらに私の下へ降りていきます。
「もうっ、あなたは、本当に貪欲で、とどまるところを知らない……っ!」
※14
腰骨から太腿あたりを撫でられると、布の一枚二枚へだてているのに、びりびりと力が入ってしまうのに、
むしろ抵抗する力は抜けて、あなたのほうに寄り掛かってしまいます。
「むね、え、んぁっ……❤ うえも、したも、なんて、そんなあちこち、欲張り、されて……っ❤」
そうかと思えば、今度は片手ずつで上と下を同時に……。
私は息を喘がせながら、プロデューサーがこんな器用な真似ができるなんて。
……などと妙な方向に思考を逃避させて、かろうじて精神の平衡を保っていました。
「濡れて……!? あ、あ……❤ み、見せんといて、うち、そんな、ぁ……っ」
プロデューサーの手が、私のスカートをたくしあげて、その下の内腿に、ついに素肌に……。
私の肢体は内側だけでなく外側も濡れていたようでした。
自分の身体が返したその反応の意味を、私は知っていました。
それでいて、素知らぬふりや、かまととぶることなどできませんでした。
「ひ、開くの、な、あ……っ❤ あ、あっ」
プロデューサーは、私の素肌へ我が物のように手のひらを押し付けてきます。
いや、私自身だって、自分が入浴中に身体を泡立てて洗うときでさえ、そんなぐいぐいと肌に触れたりしません。
「そんな、脚、やめ……はしたないかっこう、させ、て……ぇ……❤」
立ったまま、脚を開くよう促されます。
肌に跡も残さない程度のプロデューサーの手つきと、緊張で力んでいる私の腿では、
力比べで負けるわけがないのに、抵抗できません。
「なんで、どうしてっ……私、こんなに良いように、オモチャにされ、て……」
ここで私が拒絶したとて、今更あなたは私を悪しく思ったりはしないでしょう。
でも、プロデューサーの手が、吐息が、体温が、声音が、
ほかにももっといろいろの気配が、私を変えて、絆していって……。
「あなたは……私を弄んで、何をしようというのですか……?」
その先が何に続いているのかわかっているのに、わかりきっているのに、愚問を投げてしまいます。
押し付けられるペニスが、固くて、腰の上のくぼんだあたりで、にらんでくるようで。
私の身体はその先を期待して、切望して、勝手に開きゆくのです。
プロデューサーの手にゆだねてしまうのです。
「……言わなければ、わかりませんか……?」
私は知っているのです。言えないだけで。
期待しているのです。あなたが私をどう変えてしまうのか。
ただ口で言えないだけで。
「あんたの……せいで、うち、もう……プロデューサーぁ……っ」
もう私は、あなたに完全に寄り掛かっても、立っていることが叶いません。
とうとう、椅子に座らされます。
膝がだらしなく開いてしまって、閉じようとしたら、あなたの肩に割り込まれます。
「あ――い、や、うち、見られちゃいけない顔しと――っ」
手で顔を隠したら、足の間は無防備です。
顔で隠したから仕方がない――そんな言い訳を、とっさにして、あなたに、ここを明け渡してしまいます。
※15
「んひゅぅう! い、いきなりっ……!? 黙ってないで、なんとか、言って……」
スカート、めくれ上がって、さっきいじられてたよりもっと奥の内腿に、
プロデューサーの手も、息も、たぶん視線も、舐めるように、私に迫っています。
「き、きれい、って……言うことに欠いて、私が、褒められて喜ぶとでも……っ」
プロデューサーの言葉だけで、身がねじれるほど恥ずかしい。
ご機嫌取りや打算がない賛嘆だと思っているのに、私の舌はさかしまに回ります。
太腿の付け根に迫って、下着の縁をなぞって……すぐそこで、うちの、大事なところを、見られて、
「さわ、ぁ――ああぁあっ❤ あんた、ぁあっ❤ 触るなら、触ると、言って、心臓が、止まるかと……っ」
ずり、ずりっ。くい、くいっ――直に目を向けられないプロデューサーの感触が、
私の見えないところで、私の見えないところまで、響い、て――
「あ、溢れ、てっ。こんなん、感じたこと――言えるわけが、ないでしょうっ!?
はじめて、か? ……なんて、聞かなければ……んんっ、くぅうっ、ぁ、ぁあっ……❤」
ついには、ぴちゃ、くちゃ……なんて、ふしだらな音まで……
また私の身体は、相変わらず勝手に先走って、私の中身のことを置き去りにします。
「あ、あなたは、そうやって、また、私の口から……言わせるおつもり、でしょう?」
プロデューサーは、私の両腿の間に顔や手を突っ込んだまま、感想を要求してきます。
まるで、身体に引きずり回されてる私を待つような、そんな訳知りぶった声音が小面憎い。
「だから、そんな、じれったく、やきもきさせる手付きで……い、いや、うち、じれて、なんかぁ……❤」
そうして嘘ばかり、吐き出して、浴びせてしまいます。
焦れてなんかいない――なんて、口だけのこと。
いえ、もう、口以外のすべてが、身も世もないぐらい、あなたをせがんでいます。
「きゃうっ❤ あ、あっ、あぅっ、く、んんうっ……❤」
ずり、ずりっ。くしゅ、くしゅっ。爪先、下着によったシワの一筋一筋。プロデューサーの鼻息。
興奮で浮き上がってしまったかのような私の神経は、あなたと私の催情の気配をすべて拾ってしまう。
「自分で触ったことがあるか、ですって……? な、なにゆえ、そんなことを、あなたに教え――へゅっぅうっ❤」
陰唇とか、クリトリスとか、そんなの――知っていますし、その、試したこともないではありませんが……。
でも、自分で触れたときと、あなたとは、あまりに違う。
本当に同じ私の身体なのか、自信がなくなってきました。
※16
「ゆ、ゆびっ、抑え、こす、って、ぇ❤ ぃ、ぁぉああっ❤」
プロデューサーの指に爪弾かれて、私の身体は楽器のように、否応なしになってしまいます。
感覚――鳴った音――が、私の身体の内側でくらくら反響するのまで楽器そっくりです。
「あ、あなた、顔を、そんな、近くで……まさか、い、いやっ、だめ、きたない、か、ら――ああぁああっ❤」
鼻息、吐息、肌と粘膜に触れる味蕾らしきザラつき。
プロデューサーは、私の、そこに、顔を、近づけ、て――
「だ、め、えぇえっ! 本当に、離して、うち、そんなん続けられたら、粗相を、し、て……❤」
指だけでも、私がすべて解けてしまいそうなのに、舌は……舌は、だめ。
あなたの舌は、私を本当に……変えて、しまうから。
何度も私を、私自身でも想像だにしなかった様に、変えてしまうから。
そして、変えられた私は……っ。
「あぁあぉぉあっ❤ も、もう、だ、めぇ……なも、ねぇ……、ゆ、ゆるし、てぇ……❤」
つい先刻までの、残響を味わう……などという意識の余白が、
プロデューサーの口舌であっさり吹き散らされ、
「いっ、ぃきっッ……はァおっ、ぉア゛❤ っはいっぃ、い、ぁぁあっィイ゛……っっ❤❤」
※17
私が坐ったまま気をやってしまった椅子に、今度はプロデューサーが坐っていました。
「……別に、普段の私は、このような淫らな行為、考えもしません……。
ちょうど、普段のあなたが、そこまで……欲望を露わにしないのと、同じことです」
折り目が乱れたあなたの洋袴をくつろげると、
下着を食い破りそうなばかりに膨張したペニスが目に入ってきます。
「仮に、あなたからいきなり脈絡なく……しろ、と言われていたとしたら……
いくらあなたの言葉であっても、私は受け入れませんでした……本当、です」
プロデューサーの舌で散々によがらせられた私の内側は、あの絶頂の空虚感が去ったあと、
どうにかして彼にその報いを受けさせてやらねば、という意気地が底から湧き上がっていました。
私が見上げると、プロデューサーの顔は奇妙なつやが乗っていました。
私のほころびの成れの果てでしょうか。
「ただ、あなたが致してくださって、私がされるだけというのは……
私もあなたに……というのが、道理でしょう……?」
どう聞いてもつじつま合わせでした。目的のはずのセクハラが脇に追いやられています。
でも、あなたのせいで、私は粗相させられ――なんらかで報復しなければ、
私はこれ以降、あなたの顔どころか名前すらまともに見られないでしょう。
だから、やむを得ないのです。
「あなたが先に……私の、その……そこに、触れて、撫でて、舐めて……うううっ……」
私が椅子に坐ってプロデューサーに愛撫されていたのとは逆で、
プロデューサーが椅子に坐って私が愛撫を加えようとしている……というのに、
プロデューサーの股間を目前にして私の下腹や内腿は自分がされたときのことを勝手に思い出すし、
それでいてくちびるや舌の根本はキスしていたときのことを思い出すし、私の身体もどんどん病膏肓です。
「すん……すん……へ、変な匂い、です、ねぇ……?
嗅いだこと、ありませんから、何とも、言えませんが……」
そうして、プロデューサーが私の脚の付け根や股間を嗅ぎ回ったのを真似して、
私もことさらに勃起へすぅはぁと鼻息を吸ったり吐いたりします。
たぶん、最後に入浴してから半日以上は経っているのでしょう。
ごつごつとした汗臭さが、鼻から両の肺腑の間をぎゅうっと締め付けてきます。
それは鼻を背けるほど強烈ではありませんでしたが、一呼吸ごとに私に沁み入ってきて、
やがてプロデューサーに気管支や心臓を掴まれた錯覚さえします。
「では……脱がせますので、腰、上げてくださいね」
つとめて事務的に言ったつもりでしたが、声は語尾まで震えたまま消え入りました。
手を伸ばし、ついに下着――最後の布を取り去ると、赤黒く、長く、腫れぼったいそれが、目の前に……
「うぅっ……ゆばりでは、ないようですが……これは……?」
さっきよりも強く否応なしに迫ってくる匂い――その先に目を向けると、
太いキノコのように膨らみとくびれを持つ肉茎が、てらてらと薄く透明な液体に濡れ、私を睥睨していました。
と思えば、よく見るとシルエットはキノコのようでも、表面は古い広葉樹の幹のごとく節くれだっています。
さしずめ、浮き出た血管はツタ、濡らす液体は樹液とでも言えばいいでしょうか。
※18
「ま、まぁ、そうでしょうね。女性と同じですね?
ぬめっていたほうが……何かと、よろしいのでしょうね」
自分でも呆れるほど知ったふうな口ぶりを漏らしながら、
私は自分がねじ込まれたときのことを想像して、お腹の奥から太腿までをすくませていました。
「……私が、あなたを興奮させたのですか……ここまで……?」
この、グロテスクと言うか、赤黒い肉の塊が、私のせいで……?
「……あなたに思いを寄せられた女性は、これから、さぞ苦労することでしょうね……」
他人事のように言わなければ、あなたのソレから、目も心も逸らせてしまいます。
この肉器官を、膣内に挿入して射精すれば……という性行為の流れは知識として持っております。
その知識内容を、いまだ現実感をもって受け入れられない……というのが私の心持ちでした。
……すると決まったわけではないのだから、受け入れねばならない筋目もないはずですが。
「私が、触れたら……気持ちいいのでしょうか? あなたは、快楽を覚えるのでしょうか?」
指先でそっと、ペニスの裏……とでも言うのでしょうか。
先っぽのひときわ太く張り出したあたりと、根本に向かって走る筋の交わるあたりを、指で触れます。
たぶん、プロデューサーが私の乳房を手慰みにしたのと同じぐらいの加減です。
プロデューサーの感触は、熱しすぎた浴槽のお湯のようで、触れた私の指先が、逆に震えてしまいます。
「指で、輪を作って……締め付けるように……です、か」
指先から肩口あたりまで硬直して、目線をうろうろさせる私を待ちあぐねたのか、
プロデューサーが小声で申し入れてきて、私は促されるまま、肉茎を根本から刺激します。
「加減は……もっと強く、ですか……っ……」
ぬめりが増し、息遣いが荒くなり、ペニスの根本や鼠径部が力みます。
プロデューサーの反応を感知するたびに、私の中に、笑ってしまうぐらいの……
頬が緩んで落っこちてしまいそうな高揚が湧き上がってきます。
「気持ちよい、じょうず……? うっうちが、男性器の扱いを褒められて浮かれる女とでも……?」
そう口で虚仮にしなければ、その高揚にぐでぐてと酩酊し切ってしまいそうです。
こんなに嬉しいのなら、私も、自分がされてるときに、もう少し素直になっていれば……。
「あっ……ごめんなさいっ! その、あの……強く、しすぎましたか……?」
邪な思いで指先が狂ってしまったのか、先っぽを弄っていてつい力が入りすぎたようです。
プロデューサーが痛みを噛み殺す息遣いが、私にもひりひりと伝わる気がします。
ペニスは、くびれから下の血管がいくつも這い回っている部分は、
私が指圧すると倍の力で押し返してくるほど力強いものでした……が、
先端に近いぬめりをこぼす部分は、私が想像だにしないほど柔らかく、相応に敏感なようでした。
「クリトリスみたいなものだ……って。なんですか、その比喩はっ。
その……確かに、わかりやすくは、ありますけど……」
そう言われると、自分は指で刺激を与えている側なのに、
自分の性器まで幻の指でつつかれている迷妄がよぎります。
※19
「それなら……あなたは、私に……その、口づけ、されましたね。私も、いたしても……?」
近くによると、ツンとした刺激臭が前にも増して……
堪えきれないほどではありませんが、快いとは言えませんでした。きっと清潔とも言い難いのでしょう。
私はプロデューサーに押し迫ってから、湯浴みをさせる時間さえ与えませんでした。
この匂いはそのせいでしょうか。私は、なぜかそれを後悔する気がまったくしませんでした。
「は、ぁ、ぉ……むっ、ぐ、んくっ……ぉうっ、んじゅっ、ずじゅっ……❤」
プロデューサーの先走りは塩くどく、そういう私の唾液は痺れるほど酸っぱくなっていて、
それらを混ざり合わせて舌で転がしたり口腔粘膜に塗りつけていると、
このまま続けていたら神経ごしに顎が侵食されて落ちてしまう気がします。
「ぇぉおっ❤ ぐ、んきゅっ、っんぶぅぅぅ、えぅっ❤ ふぅぅううっ……❤」
でも、いっそ落ちてしまえばいい、なんて仇めきに私は取り憑かれていました。
あなたの、その声を――快楽、でしょうか?――何度も、ずっと、聞かせてくださいっ。
熱さを、震えを触らせてください。匂いを舐らせてください。
もっと指示を……いえ、私にねだってください。望んでください。
「ぉごっ、ぷ、ふぅっ❤ んぐっ、ふ、ふぅっ……ふぶ、ぇあっ、うぷっぶふぅうっ❤」
私から、快楽をむさぼってください。
あなたが茫然自失するほどに、恍惚の果てまで突き進むように。
私があなたに導かれたのと同じように。
「へうぅっ……じぇぷ、ぇぇろっ、れぅっ、ろろぉっ……ぐぷっ、ぱふっ、ぐぢゅ……❤」
くちびるも、舌も、口腔は喉の奥まで。絡みつく。引きずり込む。
私の知らなかった――たぶん、ほかの誰も知らない――あなたを、私に暴かせてください。
「ぐっ。んぷぅっ……❤ んあっ、あっ、あんた……❤ 気持ち、よくなかった……?」
プロデューサーに仕返しをしてやりたいという捻じくれた底意地と、
私の口舌で快楽も肉欲も暴露されてる様に煽られた愉悦と……
私を衝き動かす勢いが強まっていくと、いつしかプロデューサーは私を抑えようとします。
どうして、止めるのですか。
あなたが、私の不慣れなこれで快楽を覚えていること、お見通しですよ。
「んぐっ、んっぐっ、あぅうっ、ぐっ、ぶふッ、んぶゥウッ❤ んくくッ、ぉううッ……❤」
息遣いも痙攣も体温も声も何もかも、切羽詰まらせて――何をそんなに。
えっ――出る? 何が。プロデューサー……いや、言ってくださらなければ、分からな――
「ぉブッ――! んぶふ、ッん、ぶゥ、がッ――ンォ、ォ゙、ォおオッ、ぶほぇぇえ――ッ」
――プロデューサーの反応にはしゃいでいた私は、
こうして、本来は子作りに供すべき精液を、あたら口中に放出させてしまったのでした。
「お゛ォ゛……ぐっ、ァうぁ゛っ、げ、ほっ――えぇぅうっ、ぁ、は、ぁあっ……」
精液は、先走りを百倍も濃くしたと思うぐらいえぐく、半固形のようにへばりついて、
思わず吐いてしまいそうになるのを、歯を食いしばってこらえます。
※20
「んぎゅっ、ぐ、にぢゅ――くぁ、あ、ぶ、くぅ……」
そうしてると、私の焼け落ちそうなほど熱くなった唾液腺から、
末期の水のごとく唾奇が溢れてきて――私を孕ませるはずだった子種が絶命していくせいで、
そんな妙な連想をしてしまったのでしょうか――それらを混ぜ合わせながら、
にちゃにちゃと無作法に歯ぎしりしていると、えぐみに舌が馴染んできて、
どうにかこうにか飲み下せそうな気になってきます。
プロデューサーは私の背中を擦りながら吐き出すよう促してきましたが、
私は無視して、口腔に張り付いたものまで舌でこそげ取りつつ、ついに精液を飲み下しました。
「え、ぁ、あっ、うぁ゛っ、げ、ほっ――ぁ、は……ひ、ひどい、味、です、ね……っ」
なんでこんな益体なしの戯れに、脂汗を浮かせて没頭していたのか、
私はちょっと自分でも理解できませんでした。やっぱり、身体が勝手にやらせたんでしょうか。
「どうして、止まらなかったか、と……? あなたが、それをおっしゃるのですか。
プロデューサーは、どうして私が吸茎を止めなかったのか――
本来すべきでない場所に射精してしまった後ろめたさで背をかがめながら――論詰してきました。
「あなた……私の、ここを、ねぶっていたとき……
私が何を言っても、止めてくれなかったじゃないですか。
……だから、私も、止めなかっただけ、です」
プロデューサーは、それだけで押し黙って顔をうつむけました。
「……まぁ、あなたが止めてくれなかった気持ち、わかりましたよ。不本意ですけれど」
沈黙がきまり悪くなった私の口は、また、妙なことを言い出します。
「私であなたが感じてくださってると……そう思うと、気持ちが、高ぶって……高ぶったまま、なんです」
私のあられもない肌の下、頭蓋の内側の感覚を、あまりに明け透けに紡ぎます。
「おそらく……自分がされて、感じるのとは、似ているようで、違っていて……」
自分が愛撫されて感じるのは、けっきょく、生理現象です。
神経が燃えたり痺れたりするのは波があり、それらは強烈ですが、いつか収まります。
……けれど、
「あなたが喜んでくれて、それで嬉しくなるのは……止めどが、なかったんです」
※21
「んっ、ぁ――❤ プロデューサーっ、なに、を……?」
疑問に答えはありませんでしたが、私は気にしませんでした。
あなたの目と、息遣いと、力み方と……あと、まぁ、
無駄撃ちしたばかりなのに固くなりっぱなしのペニスで、言葉なしに察せられました。
「私に……その……致しますか? いま、ここで……」
私のほうは、その――道具というか、持ち物と言うか――女性器……は、なんとも言えませんでした。
濡れているから受け入れる準備ができている……と言えばそんな気もしましたが、
だからといってあのプロデューサーの肉塊を受け入れられるでしょうか……?
あんな大きさだと、濡れてる濡れてないが関係無さそうな気もします。
「あ……ゆ、ゆび、ですか……?」
私と同じ危惧に至ったのか、プロデューサーはいっそう盛んになった勃起を見せつけながらも、
それを差し置いて、髪や胸で致したのをなぞるように、指で私を開こうとします。
「……その、はじめて、なんです……私……だから、あなたの、もので……」
プロデューサーは、鉢割の作法など知らぬ、とばかりに黙殺します。
……私のほうこそ、閨の作法などとんと通じぬ甘ちゃんでしたので、それ以上は何も言えませんでした。
「い、やっ、ゆび、は、違、う――ちが、あっ……だ、めぇ……❤」
指で、大事なところを開かれ、見られ、甘い、痛い、熱い、うずうずとした侵入を受け入れさせられます。
「きゃぅうっ❤ な、なか、はぁ……い、いれ、ちゃ、あっ――」
だって、私、ゆび、気持ちいい、けど、けれど。
私だけじゃ、いや。いやや。
プロデューサーが気持ちいいのは、指じゃなくて、そっちの――
「ゆびじゃ……あっ、や、ぁっ❤ とめ、て、そこ、うら、こすっちゃ、あっ、あぁあっあっ❤」
や、いやっ、だめ、私だけなんて……止めてっ、おねがい、ですっ。
うちだけなんか――そんな、いけず、あかん、や、めっ――❤
「い、痛くなんか……そんなん、うち、わからんて……❤
こんなん、されたら、あ、あっ、くっ、ふぅぅうっ❤」
挿し込まれて、かさぶたを剥がされるとか、傷に消毒液を塗られるのに似た痛みがあるにはある――のですが、
それを感じて、言葉にして……そんな余裕、ありません。
頭がゆだって、心臓が跳ねて、肌の内側が切なくて……これ以上、何を感じろって言うん……。
「もう、だめ、ぇっ❤ これ以上、されたら、うち、だらに、なるっ❤ あ、んくっ――はあぁあっあっ❤」
止めなきゃ――こんなプロデューサーを煽り立てるばかりの声――止められ、ないっ❤
愛撫されて気持ちいいのは、いつか収まる――? いつ、収まるんですか。
あなたに、されるがまま、ままにっ、ナカを、されて、いじられ、うち、は――❤
「あ゛っ、ひぃ、ゃ、ア……❤ ……ぁ…あ゛――……」
な、ナカ、かきかきって、ごそごそって、うらがえされるっ❤
こんなん、しらないっ❤ あ、アナがっ、こわれっ❤ ぐちぐちって、ほじられ、ぇっ❤
や、ぁっ❤ シて――いやっ、シないでぇっ❤ もう、だめっ、うち、い――いッ、イク――っ❤
※22
頭からお腹の底まで、眩しいのか暗いのかもよくわからないチカチカした感じが収まって、
腰を抜かしたあとのお尻の重さと、こじ開けられたナカのひりつきが残っていました。
「こっ、このだらぶちッ!? う、うち、はじめて、やったのに……っ!」
涙が止まりませんでした。
どうしてほしかったかも言葉にできないのに、
私は「望みを叶えられなかった」とプロデューサーを罵っていました。
なんでこの人相手だと、いつも……うちに、いや、うちは――
ただ、このときばかりは、いつもの通りには行きませんでした。
いつもなら、プロデューサーは困惑をごまかす笑みを浮かべながら、もごもごと弁解するのです、が――
「ぁ――い、いやっ❤ うちだって、そんなん知らんけど……❤」
――ヨダレ垂らして愉しんでるくせに――と、熱いのに背筋をぞくぞくとさせられる囁きを、
穏やかに、だけど骨髄までうがって刺されるように、深く――私の、中、に……。
「で、でも、こんな無体、なんて、ぇ……❤ や、ぁ……❤」
私は、押し倒され四つん這いにされながら、性懲りもなく、形ばかりの拒絶をこぼすだけ。
プロデューサーは黙って、私の腰を両手で、痛むほど掴んできます。
こうなれば、私も、どうされてしまうか、わかって、悟らされて……。
「ぁ――あっ❤ プロデューサーぁ……っ、う、うち……❤」
期待、していました。
内心だけじゃなく、身体まで、勝手に誘い水を垂らして、お尻をゆるゆると振って。
この私が、プロデューサー相手とは言え、こんな真似を……。
昨日までの私が聞いたら、驚愕のあまり卒倒してしまったでしょう。
何かがぴたりと、私の入り口につけられました。
ずりずりっと軽くこすられて、陰茎の先だとわかりました。
挿入直前と私にわからせるための、ゆっくりとした動き。口では言ってくれない念押し。
報いのおつもりですか。
うち、プロデューサーに向かって『言わなければわからないのですか?』
なんて……いさどうて、きずいなこと、今まで数え切れないぐらい、言いましたからね。
さけ、プロデューサーも、何も言ってくれないまま……なんでしょうかね。
それなら、うち、は……いまは、いまだけ、でもっ。
「あたってあそばせ……うち、覚悟は、できて、ますから……」
プロデューサーの反応を伺おうとして、首をもたげようとした瞬間、
私はがしりと両手で腰骨を保持されて、ぎりぎりと貫かれていました。
「ぁ……か、はぁ゛……っ❤ お、おおき、いっ……!」
お腹の中から、腰も、お尻も、背中からうなじのあたりまで、
寒くなったり、熱くなったり、とにかく震えがとまらなくて、
「は、ぁ……あ、あんた、あっ❤ ふぁ、あ、んんんぅっ……❤」
※23
腰に添えていた手を、私の肩や胸の方に回して、私は後ろに引っ張るように抱きしめられます。
肘が浮いて、膝立ちで、不安定になって、背骨も後ろにねじられて、
おまけにねじ込まれたままのナカは変な角度でえぐられて、痛みも増して、もっと苦しいはずなのに、
「ひぁ、あっ……❤ あ、はぁぁあ……❤」
安堵したような声音が漏れてしまう。
そのあとも、ヨダレが垂れてしまいそうなほど口元がままならなく緩んでしまいます。
口元につられたのか、頭もきらきら玉虫色になってきて、プロデューサーと出会ってから今までのころが、
順序でたらめに思い浮かんでは消えていきます。これが、走馬灯ですか? ……縁起でもないですね。
「ぁ゛、ひ、くぁ……あんた……気持ちええ……? うちの、は……」
プロデューサーが深く挿し込んでくると、ちょうど吐く息が、私の髪やうなじをくすぐっていました。
最初のセクハラもどきのときと同じぐらい近くで、感想をささやかれました。
「は、ぁ……っ、い、いいですっ……女冥利に、尽きます……本当、ですよ……?」
プロデューサーが私を後ろから抱く腕に、ますます力が入ります。
「思うままに……致して……うち、あんたに、されたい、からぁ……❤」
そう言ったら、手ひどく痛めつけられる……そういう確信は、ありました。
でも……私は、プロデューサーから、気持ちよくなってもらえる喜びを、教えられています。
たぶん、そのせいで――こう言うと大げさかもしれませんが――生まれ変わってしまったんだと思います。
「プロデューサー……ぷろでゅ――ひぁ、あうぁ゛ だ、め゛っ❤」
ぐぢゅっ、くちゅっ、ぬぢゅっ――乱暴に、ナカを奥までずるずるえぐられながら、
思い出したように胸をもみくちゃにされて、あるいはクリトリスを手のひらで圧迫されたり、
首を後ろに半分ひねられて唇を食べられて、
「きもちっ、よすいてっ、う、うちっ――ひぬっ、ひむっ、ひんじゃうっ❤」
好き勝手に折檻されているのに、心地よくて、死んでしまいそう。
……軽々しく、死ぬ、などという言葉を使うつもりはないのですが、つい、出てしまうんです。
死ぬ、死ぬと艶っぽい都々逸ではよく言いますが、私は今それが腑に落ちました。
「ぁン゙ッ! あ゙、ひっ、ううっ――ひぁっ❤ あッ、んふぁ、い――ぁあっあっ❤」
だんだん、プロデューサーの抜き差しが慌ただしくなっていきます。
お尻と腰、次第に後ろから強くぶっつけられるようになって、肌の上と肌の下から同時に響かされて、
私はあられもない――自分でも、嬌声と認めざるを得ないような――愛垂れた小舌を、漏らすばかりです。
そうして、プロデューサーも限界が近くなり、うちは、また――出すぞ、って聞かされます。
だして。うちの、なか、にっ。
そうしたら、やっと思いが遂げられる、と――事ここに至って、やっと、
いつか女として抱かれるんだったらプロデューサーがよかったとか、
むしろさっさとプロデューサーに捧げてしまいたかったとか、
そんな魂胆が自分の底でぐちゃぐちゃ湧いてぬかるんで、そのまま自分の中に沈んで溺れる心地です。
「な、なかぁ……❤ うちの、なか、に……っ?」
※24
ナカ、出すということは……そういうこと、やね? うちのこと……そう思って。
それで、実際、いい大人のあんたが、矢も盾もたまらない格好で、うちを、ね、こんな……。
「きもちよく、なって、だして、はらませてっ、しまうの……❤」
そんで、出して……妊娠、してしまうかしら。
あぁ、これ、考えたら、だめ、あたま、離れなくなることです。
ナカ、おく、女のいちばんだいじなところ、受け入れてしまって。
だめなのに。せっかく、アイドルにしてもらったのに。
「ひゃっ、いぃ、あ――あっ、いゃぁあっ❤ あ、あっ……❤
く、くるっ、キ、てっ、う、うちっ、もう……っ❤」
まぁ、でも、うちの幕を上げたのは、プロデューサーだから、
幕を引くのも、プロデューサーなら、いい。
きっと。今度こそ、うちの勘違いじゃなく。
プロデューサーが、うち、ぎゅーってしたまま、がくがくして。
あぁ、さっき、ぶちまけたんと、おなじ。
「んい゛っ❤ ご――ゅっ❤ も゛っあ゛ァあっ❤」
つよく、はやくなって、もう、くる、きちゃう。
たねつけされる――たねつけされて、いく、イク、うち、いって――❤
「ぁっお゙―― ぁっ、あぇっ……あ゙❤ あ、うぁァ、あぁぁぁっ……❤」
うちがわをえぐるソレが、はねて、はねて。
それがおさまって、プロデューサーにぐったりのしかかられ、
「――ぁ、ぅあ、あっ……ぁ……っ❤」
お腹の奥の絶頂感がふわふわと穏やかになってきても、
私がプロデューサーを満たした、というつるつるした感慨が、まだまだ私を蕩けさせていました。
なお、膣内射精されたというのは私の思い込みで、プロデューサーはいつの間にか避妊具をつけていました。
それに気づいたのは、私はずるずるとペニスを抜かれ、ひしと重ね合わせていた肌も離れ、
うら寂しい喪失感に浸っていたところでした。
……は? うち、孕ませてとか、なんとか、口走ってたんですけど。
ほかにも、いろいろ。
「……も……ぉ……な、なんなん……?」
するとプロデューサーは、私が不満足だと見たんでしょうか。
今度は私を仰向けにして、上からのしかかる体勢で挑みかかってきます。
私は、さっきあれほど気をやったのに、こうして再びプロデューサーに迫られると、
ナカがひりつく痛みとともに、交合への未練がむくむくともたげてきました。
「あ……髪、が……」
プロデューサーは、私が結髪を背中の下敷きにしてしまわないように、
髪をすくい上げて、私のつむじの向こう側にまとめて流しました。
髪を結んでいた位置が、背中のだいぶ低い位置だったせいか、あっさりと片付きました。
まるで、自分がそうされるために髪型をあつらえていた気がしてしまい、私は次の朝から、
髪を結ぶたびに、プロデューサーにのしかかられた瞬間がよぎるようになってしまいました。
……これでは、女の命も形無しです。
※25
――ところで、実際にセクハラをされたら、私はどうすればいいんでしょうか?
――……誰か、他の人を呼べば、いい?
なるほど。妥当だと思います。
私も両親からそう教えられております。
――そういえば、あなたに初めて声をかけられたとき、
私はあなたに向かって『人を呼びます』と言った覚えがありますね。
――……あなたのセクハラ対策、意味があったのですか?
(おしまい)
星井美希のセクハラさんコミュが箱○で公開されて、13年経ったようです。
ことしはよろしくお願いいたします。
プロデューサーもノリいいなぁ
乙です
白石紬(17) Fa
http://i.imgur.com/8jTfNea.png
http://i.imgur.com/JwrTs0s.png
>>4
星井美希(15) Vi/An
http://i.imgur.com/ogbG66e.jpg
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