塩見周子「シオヅケサトウヅケ」 (52)
アイドルマスターシンデレラガールズのSSです。
「ちょ、や……んむっ、んっ!」
静謐なエントランスを置き去りにしてドアがするりと閉じ、エレベーターが外界から隔絶された鉄箱となった瞬間、男は傍らの少女を掻き抱いた。筋張った五指を銀砂のようなショートヘアに走らせ、細いおとがいを上向かせ、当然のように薄い唇を貪る。もう片手で成熟と未成熟の間にしか存在しない絶妙なアカ身の載った腰をぐいと引き寄せ、自らの懐にすっぽりと閉じ込めた。
ここまで2秒も経っていない。
「あっ、ちゅぱっ、むちゅ、んっ、ふぁ……」
(こんな、とこでキスっするなぁ……っ!)
不意を突かれた少女は、貪られるような接吻に眉を顰め、しかし、されるがままに口内を明け渡し無遠慮な舌を招き入れ、覆い被さってくる男の身体を、その奥の甘硬さを受け止める。少女のさながら柳のような、普段の飄々とした態度は微塵もない。こく、こく、と喉が鳴っているのは、流しこまれるよだれを天の施しのように飲み下しているからに他ならない。
「んっ、あむっゅ、んちぅっ、んむ、んっ、」
少女は短髪と薄化粧、ボタンシャツにデニムのホットパンツ、そしてあまりの線の細さのせいで妖艶な美男子にすら見える。が、鞠を割ってシャツの中に双つ並べたような美乳と、インディゴの生地をパンパンに満たす美尻は、紛れもなく特上の雌のそれ。
ねちゃ、にちゃ、れろ、くちゅ……、高層へ向け静かに駆動する箱の中で、厭に粘質的な音が上から下へ滴り落ちてゆく。
少女は、アイドルだった。名は塩見周子。
類稀な容姿と独特のキャラクター、纏うオーラは幽艶にして、確かな基礎の上に成り立つエッジの利いたパフォーマンスーーデビュー当初から実績を積み重ね、歴代シンデレラガールの座にも名を連ねたその少女は、今やこの国の芸能界でその名を抜きには語れぬ存在、といえる。
「あ、んちゅぅ、んっ、やぁ、ふぅ、あ、」
そして才能だけで渡っていけるほど、芸能界という濁流は甘いものではなかった。
れろ、くちゅう、ちろっ、ちろっ、はむ、
「特別な人物」に出会えなければ、如何程の才の持ち主であれ、呆気なく波間に消えて逝く。
「しゅぽ、れろ………ぉ、ほっ」
(べろ、熱、深ぁ……)
時間にして十数秒、男は周子の生温い口内からいかにも名残惜しそうに音を立てて舌を抜き、顔を離す。久しぶりの空気が冷たい。荒い呼吸が重なり、舌の間をつらと唾液が伝いブリッジを描く。
「ぷはっ、ほっ、はぁ、はっ、」
舌を引き摺り出されたまま喘ぐ周子。
男は、彼女の髪に触れていた手で、今度は自らの髪を梳く。
浅黒い指が流れるのは、昨日今日染め上げたかのような、不自然なまでに明るい金髪。
それはやはり持って生まれた色ではなく、若気の至り、としても度を超えた発色の代物で、そして「若気」は些か過ぎた齢であった。付け加えると、男自身の容姿は特別劣ってもいなかったが、その目鼻立ちにはお世辞にも似合いの色とは言い難かった。それこそ周子ほどの容姿を持ってすればあるいは、といったところだ。
であればこの髪の色は、寝ている間に悪戯でもされたかーーそれか、周囲に彼の愚行について諫言できる人物がいないか、そのどちらかだ。
ずゅっ、ずっ、すり……っ、
「ちょ、と、やぁ、だっ、って」
それぞれ位置の違っていた金髪の両手が、今度は息を合わせて周子のメリハリのきいたボディラインを滑降し、ホットパンツの尻の縫い目で逢着する。
(くっ、触り方、やらし……っ)
そしてボウリング球大の饅頭を真ん中で二つに分けるように、じっくりと力を込めて揉み込んだ。
「くっ、んふっ、う、すぅ……っ、っく」
ギシ、ギシ、カリ、カリ……荒い布目に爪を立て、時折腰骨辺りまで掌を這わせて、そのもどかしさ自体を愉しむかのように、念入りに摩擦する。その嗜虐心に同調するように、粗い生地が敏感な柔肌を無慈悲に擦り下ろす。
(擦れて……赤くなっちゃうやん……っ)
「あ、や、ん、あ………………っぁ」
一瞬だけ性感帯が爪弾かれる。視界にちりッと、小さな小さな火花が跳ぶ。
「っう……ぅ!」
少女の声の周波数が変わった。金髪の指は依然として図々しく蠢いているが、ペースは一定で、ことさら局所を弄り出した訳でもないーー切っ掛けは、金髪と周子の「狭間」にあった。
むくっ、むくむくぅ………ぴとっ、
(あ、おっき、い……)
正面から尻を揉みしだいていた金髪のスラックスが雄々しく盛り上がり始め、周子にピタリと触れたのだった。触れ合う位置は、ちょうどホットパンツのベルト下、あわせの金具が鎮座するY字の接合部。
つまり子宮の座標。
頭ひとつ分は身長の違う二人だが、周子の長すぎる脚とサンダルのヒールのせいで、奇しくも股下の位置は同じ高さになっていた。
周子はピストルを押し付けられた心地になる。ズドンと撃たれるその威力は嫌というほど知っている。
ずり、ずり、ずっ、ず…………っ、
「も、あ、だ、だめだって、もう……っ」
(こ、これに、アタシはいつもめちゃくちゃに……っ、)
周子は、金髪がキスを止めた理由を察した。
哀れな少女が、これまで散々自分を泣かしてきた肉砲を押し付けられてどういう顔をするのか、どういう声を上げるのか、しみじみと見下ろして楽しんでいるのだ。
そのうちに金髪は、尻を撫で回したまま、周子との密着度合いを更に強め、腰も折れよとばかりに抱き潰してくる。
「やっ、あか、はっ、あー、っ、くうぁ、あはぁ………!」
(ちから、強い……ぎゅーぎゅーされたら、逃げられないやん…っ)
美乳が分厚い胸板の緩衝剤となってぎゅむぎゅむ押し潰れ、思わず切ない吐息を漏らしてしまう。
「は…………ぁ、んっ、ここ、じゃ、」
ブルブルと膝が震え始める。はじめて抱かれてからしばらくの間は、どうしてこんなにも尻に執着するのかが周子には分からなかった。グラビアもやる手前、ヒップラインにだって当然自信はある。が、自分より立派なものをもった娘は幾らも居るし、この金髪は、そのコらも当然手中にいれていて、存分に味比べはしているのだから。
けれど、ある夜。例によって散々に乱され気を失う寸前、周子は唐突に悟った。
それはその夜五度目の射精を、またしても膣中で受け止めたその刹那のこと。麻の着物を着せられ玩具の狐面で顔を塞がれ、伝奇モノの生贄のように一方的に性交された時のこと。
狐面の内側の暗闇に怯える周子へ、男(この頃は黒髪だった)は、散々勿体ぶった前戯を施した。奪われた視界と引き換えに敏感になった耳をカラスのように啄み、人工甘味料のような毒性の淫語を囁いた。同じく神経質な肢体の方にも搦手を施し、陰核をかわし、乳首の芯を外し、麻の衣擦れまで使って尽く直撃を避け、その代わり普段の倍近い時間と手間をかけられた周子は、やがて、打ち上げられた魚の様にぴちぴちと悶えた。全身は砂糖水を湛えた布のように重く、性感帯に指一本でも触れられれば弾け飛びそうなほど高められた。もう止めを刺してくれと泣いて頼んだが散々勿体ぶって同様の責を2時間に渡って行い、
そして、快楽と痛痒の間で朦朧としていた周子は、予兆なしでズッポリと女陰を挿し貫かれた。
「~~~~~~~ッひ?!、~~ぎっ、~~~~~イ゛っ!!」
メーターはあっけなく振り切れた。周子は声にもならない絶叫をし、血の汗を噴出し、ジョロジョロと失禁した。男が全力で抑え込まなければ跳ね飛ばされそうなほど腰がうねり背は逆海老に反った。
ぎちっ、ぎちゅっ、じゅぽっぐじゅちゅぽぬぷつるぷちゅ!!
「あぎっ。ひはっあ、かはっあっらめっ、あっ、あっ、あ………ア゛ア゛っ!!」
男は、我慢していたのは自分だと言わんばかりに暴走(スタンピード)した。官能が狂桜のごとく内側で爆ぜ続ける周子の五体を取り押さえ、挿入箇所を支点にしてそこだけはずっぽりハメこんだまま、操り人形のように弄んだ。周子は四肢をまるで関節技のように訳のわからない体位に捻られながら、折られながら、曲げられながら、深く浅く犯された。身動きの取れないままハメ潰されるのはさながら幾重もの男肉の迷路に迷い込んだようで、目隠しをいいことに途中から三人、四人の男が紛れ込んで代わる代わる嬲られているのでないかと思ったくらいだった(あとから見せられた録画では間違いなく男一人と周子ひとりだった)。
「がふっ、うぁっあぁ!! あやきっ、いっイギっ、ひやぁぁぁ!!!?」
荒波のように寄せては返す快楽で焼き切れてゆく神経と、尻にがっしりと爪を立てる感触だけが花火のように鮮明に散る。
ぬぷー、ぬぷー、ぬぶーっ、ぬっ、ぬっ。ぬっ。ぬっ、
「あーっ! あっ、あかはっ、ぁっああ!! も、もっうっ、じぬっ! うぁっやあっ!」
そして立て続けの絶頂の最中、恐らく捻れた後背位に体位を変えられ尻を捉えられた刹那、周子は理解した。
つまり、繁殖欲だ。
性行為の本来の意義。このメスを孕ませてやるという本能が、尻を捕まえ逃さないという行為に繋がる。だから、この人は、こんなにも自分のお尻を掴んで抜き差しするし、行為に至る前も、こんなにも執着してくるのだ。
びぼっ!! びゅー!!
「っっ、~~~~~~~~っ、!」
直後、身動きできないように肉楔を子宮まで打ち込まれ、ドロドロ熱々の白濁餡が最奥で撒き散らされた。
周子はもう声も出せず、腰を二、三度クイッ、クイっと痙攣らせて、ついに失神した。
だがその時、種付けられながら至った悟りは、今も覚えている。
だからそれ以降、尻を揉まれるたびに、この男は最終的に自分を孕ませたいのだと感知してしまい、その後に来る行為と教え込まれた悦びが否応なしに想起され、
…………潤(ジュン)っ、
「も、ぅ、あ…………」
泣き声のような。
あらがいとあきらめ、ひとにぎりのきたい。
そんな、雄の気分に縋るしかない雌の声を、出してしまう。
ーーその声で鳴かせて、ひとつ実績を解除したとでも思ったのか。
金髪の手は次に、周子の太腿の正面に回り、それぞれ両のポケットへ差し入ろうとしてくる。機能性は無く、ほぼ装飾に過ぎないポケットはあまりに窮屈で、ソテツのように浅黒く逞しい指先は半分も入らない。
「んっ、っ、う、だめだって、ばぁ……ん」
その、指先が、カリ、こりっ……ッ、と、硬いデニム生地の奥を引っ掻く。当然ながらポケットの底では、周子の秘匿された領域には到底届かない。が、熱の篭ったその空間を他人に弄られるというのは、想像以上の戸惑いを周子にもたらした。
カリっ、カリっ、スリスリ、スリ……ィ、
「ね、だめだって、ね、ここじゃ、ぁ、」
エレベーターには当然監視カメラがあり、その回線の先には警備が常駐する管理室に繋がっているはずである。だが、そこの警備員が画面を見ていようがいまいが警報が鳴らされることはない。通報ボタンが押されるか、あるいはまさに本番をおっ始めたのならまだしも、エレベーター内で男女が絡み出したくらいではーーたとえその片方が未成年者であろうとーー舌打ちこそすれいちいち割って入ることなどないのである。
「ね、せめて、っ、部屋まで、うう、んっ、」
強張った顔をなんとか取り繕い、周子はやんわりと金髪の腕を抜こうとする。手首に巻きついた硬質な時計に触れる。と、金具の隙間にネイルが取られ、一瞬痛い思いをする。
途端、すっ、と金髪の指がポケットから抜かれた。同時に、上昇を続けていたエレベーターが静止する。
金髪は、何事もなかったかのように周子の隣に立ち位置を戻し、だらりと垂れ下がった少女の腕に手を添えてくる。隙に付け入るそのあまりの自然さに、周子は反射的に指を絡めてしまう。
(手ぇ、おっきい、指、ゴツゴツして、力、つよ……)
そのことに、指を絡めてしまってから気付く。金髪の振る舞いはまるで紳士が淑女へ行うエスコートであり、その実野獣が獲物を巣に持ち帰る習性の一動作である。どうしてだろう、腰に手を回されるより手を握られる方が、もう戻れない場所へ連れて行かれそうな気がする。ドアが開く。縦に長く、横に広く、それでいて部屋数はごく少ない、白く静謐な廊下。住んでいる者の地位がおのずと知れるが、当然ながらその人間性までもを保証するものではない。
広がる余熱に足の運びを取られつつ、なんとか金髪に歩調を合わせる。一瞬前まで劣情をほしいままにしていたとは思えない堂々たる歩みに思うところもあるが、今更それを言っても仕方あるまい。どの道、今夜引き返すことも決してない。
「はあ、はっ、ふう、ふ……ぅ」
僅かなよろめきを押し隠して進む。
(今夜は、何、されんのかな。また、ナカ、ゴリゴリほじくられて……縛り、するのかな。イヤイヤ言っても堪忍してくれなくて、溺れるくらい、タネ付け……っ、)
一歩踏み出すごとに一歩セックスに近づくという事実は、時そのもののように止まることはなく、周子の思考もそこに集約してゆく。淫蕩な記憶がきゅうきゅうと周子の脳を溶かしてゆく。もう何度も繰り返したはずなのに、一度も慣れることのない大きすぎる感情。10回のライブより1000回の収録より、一晩のセックスでカラダとココロに刻まれる跡の方が深く、広い。今夜もまたカラダの外に中に残される痕跡。外のアトは仕事に響くから、絆創膏でも隠せる程度。その代わり、内側につける痕跡は、一生掛かってもきっと消えない。
「どうぞ」
ああーー気がつけば部屋の前。扉はすでに開けられ、勝手に電気が点いて、促されるまま、飾り気のない玄関に足を踏み入れて、
ーーバタンっ、
閉ざされるドアの音を背中で聞いて、
ガチャ、
オートロックが、合図になった。
「あ、ふむっ、んっ、んあっ、んっ、ちょっ、んっあえろっ、えぅ」
(あっ、やっぱり、ドア閉じたしゅんかんっ……、ちから、つよいっ、)
壁に縫い止められ唇を貪られる。
身体を弄られるシャツを破かれる。
贈答品の包装に興味はないと言わんばかりの乱雑を、周子はその全てをなされるがまま受け止める。
「ちゅっ、んちゅっ、あ、あ、あっ。」
(立って、られないっ、)
舌の扱いがウマすぎて足腰が立たなくなり、周子は金髪の身体に腕を絡め足を絡める。キスの勢いのあまり後頭部が壁を二度叩き、金髪の掌が割って入ることで三度目はなかったが代わりに接吻の深さはいや増した。
「はほぅ、んちゅぅ、ん、あんっ、やっ、やらっぁ、んっんっ、」
(きすだめっ、なんも、考えられなくなっ、)
勝手に涙が出る。喉の奥までズポリと触手のような舌を差し込まれ、すぐに抜いたと思えば眼球から顎まで犬のように顔中を舐め尽くされる。さっき食べたもののにおいがする。でもアタシもたぶん同じ匂いをさせていると周子は思う。ぴた、と金髪の舌が静止すると、それは今度はメスのほうから奉仕しろという命令に他ならない。
「あ…………」
(ベロ、おっき……)
たゅ、ちゅろっ、ぇろ、れろぉ……
「んふっ、ーっ、んーー、はぁおむ……ぅ、」
でろりと長く、太く、魔羅そのもののように突き出された金髪の赤黒い舌を、周子はこれまで教え込まれた通りに口を窄めてねろねろと舐めしゃぶり、ぱくぱくと甘噛みし、滴る唾液をじゅろろらろんと甘露の如く飲み下す。
れろちゅぽっ、ちゅぱっ、ちゅぷっ、ぶちゅっ、くちゅっ、
「んっ、あんっ、らんぼー、しなぁっ、んみゅっ、ちゅあ、あっ、あらや、あふっうっっう!!」
仕事上、自分の録音の声はよく聞くようになった。だからアイドルになる前ほど、録音した声に違和感はない。
だが、録画した自分のセックスを観せられる時、周子はいつも驚く。呼吸すら困難なほど苦しい時の喘ぎも、これ以上イカされたらおかしくなるということへの恐怖の悲鳴も、どれもオスに媚びて艶かしく淫蕩に誘っているようにしか聞こえないのだ。そしてその声に従うかのように、この男は、自分を明け方まで犯し尽くす。だから、きっと悪いのはアタシ。
「ふあ、あふちゅっ、やらぁんちゅぱっれろりゅりろっ、んちゅっ、んっっぁ、」
右も左もなくぴちゃぴちゃと粘淫音がひたうち、時折の嬌声が弱点を曝け出す。愛撫は開始され、金髪の自由な方の手はブラジャーからまろび出した片乳を餅のようにぶにぶにと捏ね、くりくりと小豆のように乳首を潰す。
「ひゃ、あ、ぁ……ッ! んあっ、かはっ、う、く……ぅ!!」
掻き毟るに近い乱暴な手つきは痛いに決まっているし、周子に浮かぶ表情は苦悶と言えなくもない。が、感じているのはただただ快楽で、漏れるのは嬌声を堪える女狐の甘い唸りだ。これまで施された調教の甲斐あって、周子には罠に嵌った痛みすら、股をじっとりと濡らす要素となっていた。
ぐい、ぐり、ぐりぐり、ぐいっ、グ……ッ
「あっ、嗚呼っ、っま、ああっ、んちゅっれろちゅっ、んぁっあっああっあ、あ」
静止を口で塞がれ股座に膝を捻り込まれ、周子はじりじりと太ももをO字に開く。その情けない蟹股間を、金髪が膝で擦り上げるようにして撫ぜるほどに、源泉から愛液がしとどに溢れ下着を濡らし、ホットパンツの裾からとろりと垂れた本気汁がすらりとしたふくらはぎを伝う。足元へ流れ落ちた雫は、足裏とサンダルの狭間でにちゃにちゃと擦り潰された。ブラジャーはとうに壊され打ち捨てられた。白い肌に残る赤い痕が、狂おしいまでの愛撫を物語る。
ずろ、ずろろろろっ、れっるゅっ!!
「ほあっ、あ、は、は、はふっ、はあっ、」
その時は金髪が周子の口内を犯していた番だったが、不意にずろんと舌が抜かれ、ようやく顔が離される。すでに両者の呼吸はぜえぜえと荒く速く、周子の白肌は赤みがかり、まろび出た舌といい口元といいネトネトした涎が淫に光沢を放っていた。
ーーそら、あっち向いて、
命令。周子はその意図を悟る。
精一杯の抵抗をしてみる。
「あの、シャワー、」
頭を鷲掴みにされた。
「あ………」
それが答えだった。
ただ、力加減され、痛くはなかった。どちらかといえば髪を撫でる趣で、実のところ男としてもそのつもりだったのだろう。汗まみれの少年のような短髪が、丁寧に解きほぐされてゆく。
さしゅ、さしゅ、さしゅ、さら………っ、
「んん、…………っ、」
しかしその手には、全てを有耶無耶にする魔力が備わっていた。周子は首を震わせ、金髪の手首に浮いた太い青筋を見るうちに狐に化かされたように蕩け顔になり、ついには促されるまま金髪に背を向け、壁に手をつきーー震える尻を突き出した。自分がなにをしているか、自分がこれから何をされるか、完全に、理解した上で。
(されちゃう、されちゃう、玄関で、立ったまま、サンダル履いたまま、後ろから串刺しにっ、あっ、うっ、)
エレベーターで盛り、玄関で獣性を剥き出しにし、なし崩しで立ったまま犯すこの流れを、金髪は大層気に入っていた。周子に限らず何人ものアイドルが、ここで靴も脱がないうちに下着を脱がされ、壁に押し付けられ、肉棒を乞う姿勢をとらされた。
そしてまるで、足が長いとどういう目に合うか、教え込むかのように、頭のてっぺんまで丹念に串刺しにして、子宮から脳味噌まで響く勢いで肉棒を叩き込み、どっぷりと精を注いでやった。そういえばここの壁小さな傷が多いなと思う。
思いながら金髪は、周子の腰に手を伸ばしてベルトを解き、するりと抜き取る。そして、
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ーーギッ、
「え、へ、えっ、?」
壁にもたれた細い首へすばやく巻き付け、一番細くボタンホールを留めた。
「っ!」
ぶるっ、と周子の脊椎が震える。無論腰に巻くベルトなので、首でホールを締めたところで窒息するようなことはまずない。しかしその圧迫感たるや想像以上で、革の余った部分を犬用のリードのように背中に乗せられると、本当に自分がこの金髪の所有物になってしまったかのような心地になってしまう。
周子の混乱などどこ吹く風で、金髪は改めて柔腰に手を伸ばし、まるで自らが用を足すときのようにホットパンツの釦をひらきチャックを下ろしーーやけに瀟洒なショーツごとずり下ろした。
ーーとろっ、
ぽた、ぽた、
「う、あ…………っ」
ぷりんっ、と、白桃が現界する。
粘り気のある愛液がとろり、ピッチリ閉じた女唇から甘露の糸となってショーツのクロッチへ垂れ落ち、ひたひたと染みを深める。内腿の暗部を掴み上げ、眼下に晒す。遊んでいそうな外観に反し、見れば見るほどキレイな一本筋だ。こうして見ると指の一本だって入りそうにないし、これまで散々交わった時も、挿入のはじめはかなり難儀した。しかしいずれも、最後には自分の弾頭をまるまると飲み込み感極まってしまうのだから、つくづく女体とはわからないものだ。もしかしたらこの娘はセックスのはじめに毎回必要以上に緊張してしまって、筋肉が硬ってしまっているのかもしれない。
金髪はあらわになった丸尻を、今一度じっくりと揉み込む。
「はぁ、んあっ、ふぅ、う、く………ぅ」
すりすり、すべすべ、さすさす、こねこね、腰近辺や太腿の裏側、骨盤の真横、谷間の内側ーー部位によって違う脂のノリ方。それにより触感が変わり音まで変わり、そのいずれもが極上の味わいだった。布地越しに揉んでいたときとは比べ物にならない。
金髪は気紛れに、両の親指に力を込め、桃の谷間を割り開いた。
「こ、こら……ぁ、いけずっ、そこ、はずかしっ、い……」
慌てて抗議する周子を無視し、まじまじと陰部を眺める。ひくひく縮こまる菊座の窄まりは極々小さく色素も薄く、和栗で拵えた茶巾絞りといった可愛らしささえあった。まさか舐めたら甘いなんてことはないだろうが、陰毛の一本もないそこを不浄と呼ぶのも憚られるーーそう思わせるだけの手入れがされていた。さすが、一流アイドルはこんなところまで行き届いている。そういえば他の娘もそうだったなと、男はこれまで手籠にしてきたアイドルたちの端正にして百花繚乱の顔立ちと、端正ながら千差万別の窄まりを、生物学者のようにひとつひとつ脳裏に並べた。
「え、や、ちょっと、ほんと、堪忍……っ、あ、おしりは、あの、えと、」
うろたえる様子がおかしくなり、金髪はようやく指先の力を緩める。すると強張っていた背中、薄い筋肉の内側の骨から明らかに緊張が抜け滑らかになる気配がして、今度こそ笑ってしまう。笑いながら金髪は言う。
「使わないさ。準備もしてないのに」
いずれ仕込んでもいいかもな、そう付け加えながらすみやかに自らのスラックスを解く。シワだらけになったスーツ地が、履いたままの革靴の上に蟠る。
そして、蜂のように括れた腰を掴み、末広がりの尻の角度を一瞬で調整して、
ーー使うのはこっちだ。
ず、ずぷっ、
白玉に菜箸を通すくらいの気安さで、
ずずるりゅりゅううりゅううっ、
二十センチ超の砲身を、根本まで、一息に女体へ埋め込んだ。
「? っ、 あぅあ、え、あっ、っ、あ、っ、ッ、え、 え ? 」
その瞬間は、いつの間にか済んでいた。
(え、え? はいっ、た?)
不意打ち、ではないはずだった。毎回挿入される時が一番緊張するし、生尻を曝け出された時点で来るべき挿入には覚悟を決めていたのだから。しかし、金髪の菊門への戯れのせいで如意と不如意がごった返し、それが来ないとわかった安堵で全身の筋肉が弛緩した一点を逃さず過たず、周子は中心をくるりと穿たれたのだった。熟練の鍼灸師もかくやという手練。
驚いたのは周子だ。
「あ、は、は、はいって、んね、はっ、」
他人事のような言い草だった。
まるで過程をすっ飛ばして結果だけもたらされたかのようだった。子供の腕ほどの太さと長さと硬さの肉棒を、すっと股の中に一本通されているというのに。だからまるで古いドラマにでてくる、撃たれたことに後から気づく探偵役か、これまた古い映画で、腕が吹っ飛ばされたことに気付かないまま手を振り続ける兵隊さんの役みたいだなと、のんきに考えた一瞬が確かにあって、
づっ……………ちょっ!
………ふるっ、
「え? え?」
ぶるっ、
「…………あ、」
そんな一瞬は一瞬でしかなく、
亀の鼻先が肉めしべの付け根をつついた瞬間、
撃たれた胸から千切れた腕から鮮血が迸るように、
……ふるふるっ、ぶるっ、ぶるっ、ぶるっ!!!
たったの一刺しで周子は壊れた。
「…………あ、えあっ、ああっあっあ、あ…………!! あアっ!!! 嗚呼゛ッ!!」
圧縮された快感が逃げ場を求め暴濫し、身体中の隙間へ流れ込むように全神経に殺到した。痙攣にあわせて、ばるんっ! と剥き出しの乳果実が左右ばらばらに跳ねっ返る。
(なにこれ、なにこ、れっ、知らないっ、しら……!)
腹から喉元、脳天まで迫り上がる途方もない圧迫感と、逆に背筋から尾?骨、爪先まで伝い落ちる、電気のように冷たいもの。
壁を見る周子の目がぐるんと回る。
唇から涎がこぼれる。
「いや、ぁ、あーーーーーっ゛!!!!」
じつにあっけなく周子は絶頂した。
ペニスを包み込む痙攣を堪えつつ、小娘を一撃で殺した金髪は、野狐を狩った猟師の笑みを浮かべる。
中から外から蠢動する膣内をペニス全長で味わいつつ、一考する。これまで抱きつくしてきた女達のデータベースから「塩見周子」を引っ張り出す。
周子の中肉は小豆天井とでもいうべきか、挿入の初めは入口から奥までキツイくらいの締め付けで迎えられ、天井のつぶつぶも鈴口をつついて小気味良く反発してくる。が、肉棒が馴染んでくるにつれて煮立てた豆状に肉芽がぷちぷちとほぐれだし、あたかもつぶあんの塊を亀頭ですり潰している心地になる。そしてしまいには、さながら汁粉のように熱くとろとろの甘豆蜜が最奥から溢れ出すのだ。そして耐えるようにくぐもっていた声は、豆を挽くにつれひいひいと高鳴りだし、最後には甘く高くさえずるようになる。
いわば処女を犯す征服欲と、太夫に包まれる多幸感の両方が常に愉しめるのだ。
もっともその手練れは周子の天性のものであり、意図してそうしているわけではない。裏を返せば彼女自身は、貪欲に快楽を求めるカラダへ心がついてゆかず、ただただ哀れな小舟のように快楽に翻弄されることになる。
くいっ、くいっ、
「あ、や、うごか。ないで……っ、」
泣き言を垂れる少女を尻目に、これまで散々味わってきたその具合を思い出して金髪の口端が更に歪む。埋め込んだ竿が肉饅頭の中の小豆をぷちぷちとすり潰して粒餡に仕立ててゆく感触。百枚の小ぶりの舌で舐め尽くされる具合もある。普段薄い体臭が味濃く変わった気さえする。この様子だと今の一発で相当仕上がった具合だ。
よし、決めた。
金髪はぶるぶると痙攣する周子の尻をロデオマシンにそうするようにがっちり掴み、最奥まで通した肉串を、女孔の淵までヂリヂリと引き抜き始める。
「あ、おっ、ほっ、ほおっ、ぉ……っ!」
目を白黒させながら喘ぐ周子は、ペニスにマン肉を絡ませ、万力のような力で追い縋ってくる。途方もない摩擦熱が粘膜間を奔る。この締まりは、意識してやっているモノではないはずだ。無理やり排泄させられるような虚脱感に抗うが故の執着。
嗜虐心が湧く。
一気に腰を抜き、女肉の渦を振り解く。
ずろりっ!
「へぎっ?! ぃあ、あ、あ~~~~~~~~~~ッッッ!」
ペニスごと内臓まで引き摺り出される錯覚で周子の意識が遠のく。全身からネトついた汗が吹き出す。女身の内側でまた二十センチが蠢いた。今度はハッキリと分かった。男根のカエシが少女の肉壁に鉤爪よろしく引っかかり、まっとうな神経をズタズタに引き千切りながら走り抜け、亀頭の切っ先だけ膣口に埋めた状態で止まる。抜身の肉刀には、今の一刺しで胎内から迸った愛液が、沸騰さながらに泡を吹いてテラテラと纏わり付いている。
「あ、は、はーは、はーっ、はーっ!! フーっ!、ふぅ、はぁ、はぁ、はぁ……!!」
二十センチ二十センチ計四十センチ、身長の何割かを体内でめちゃくちゃに掻き混ぜられるのだから当然といえば当然か、中距離を全力で走らされた後のような喘鳴。肘が笑う膝が笑う。上体は壁を舐めるように顔ごともたれかかり、宙ぶらりんの両乳は背中の裏で収穫時期を迎えた梨のように瑞々しく、腕は挫かれたように折れ曲がり支えの用をなさない。本気汁がぼたぼたと流れ足は生まれたての哺乳類のようにガクガクと震え、金髪が腰肉を掴んでいなければすぐにでへたり込んでしまっただろう。
だが、当然、休ませるために支えているわけではない。
金髪は再度照準を合わせる。
ちなみに、今の腰砕けの少女に立ちバックで挿入するには、10センチ少々、『下』に打ち下ろす必要がある。
金髪は躊躇いもなくエンターキーを押す。
ばすんっ!!
「あ゛ッ!!」
まるでけものの吠え声。
女壺に分銅を落とすような一撃。
周子の性感と精神に亀裂がはしる。
そして間髪入れずに女肉から抜錨する。
ずりゅぅ!!
「ひいッ゛?!」
腹を掻っ捌いて生肝を貪られる弱き獲物の絶叫。
雄鎖に絡みつく淫肉海藻は千々に乱れ散る。
ばすんっ!
じゅぽっ!
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