戦士「勇者パーティーに入れりゃ安泰だぜー!」魔法使い「おうよ!」(59)

戦士「おい聞いたか!?勇者様が王都を出発したってよ!」

魔法使い「おう。腕利きの騎士と二人で旅立ったらしいな」

戦士「どこに向かうか聞いたか!?」

魔法使い「確か、鉱山の町だ。その近くにできた魔物の拠点の制圧に行くんだと」

戦士「急げば今日中に着くな!先回りしようぜ!」

魔法使い「ああ。そこで助力を申し出て合流すれば…!」

戦士「晴れて勇者パーティーの一員だ!」

魔法使い「無名な俺達の名を上げる、最初で最期のチャンスだー!!」

鉱山の町

戦士「どうやら勇者様はまだ来てないらしいぜ」

魔法使い「そりゃそうだ。王都からだとどんなに急いでも明日の朝までかかるだろ」

戦士「じゃあ宿とって明日からが本番か」

魔法使い「…ちょいと待て」

戦士「何だ?」

魔法使い「初対面で腕前も分からない奴を、パーティーに入れてくれると思うか?」

戦士「あっ!」

魔法使い「先に魔物の拠点に行って、露払いでもしとこう」

戦士「そうすりゃ実力を認めて入れてくれるかも知れねえ…!」

魔法使い「ついでに心象も良くなるしな」

戦士「そうと決まりゃあ善は急げ!行くぜ!」

魔法使い「おう!」

魔物の拠点

戦士「うし!門番だか守衛だか知らねえが、入り口の奴は倒したぜ!」

魔法使い「そうだな」

戦士「じゃあ帰るか!」

魔法使い「…ちょいと待て」

戦士「どうした?」

魔法使い「見張りの一体や二体、すぐに補充されるんじゃないか?」

戦士「あっ!」

魔法使い「もう少し実績らしい実績作っても、罰は当たらないよな」

戦士「だな!」

戦士「ちょっと中に入っただけでわらわら来るな!」

魔法使い「背を向けたら却って危ないな」

戦士「よっしゃ!このまま突っ切るぜ!!」



戦士「やりきったぜ…!」

魔法使い「結局全滅させたな…」

戦士「疲れたな…」

魔法使い「東の空が白み始めてるからな…」

戦士「町に戻って寝ようぜ」

魔法使い「異議なし」

夕方

鉱山の町

魔法使い「おい戦士!」

戦士「んあ!?どうした…?」

魔法使い「勇者様がもう出発したんだと!」

戦士「何!?魔物の拠点にか!?」

魔法使い「次の目的地だ!」

戦士「何だってー!!?」

魔法使い「朝方やってきて、昼には魔物の拠点の確認を終えて、次の場所へ向かったんだと」

戦士「何で起こしてくれなかったんだ!」

魔法使い「俺もちょっと前に起きたばっかなんだよ!」

戦士「何てこった!!」

魔法使い「今回の反省は、拠点の制圧を誰にも告げずに休んだこと、か?」

戦士「でもって、勇者様が来る時間帯を寝過ごしたことだな」

魔法使い「なら反省点を次に活かすとしたらその2点か」

戦士「最後までやったら報告はしっかり」

魔法使い「勇者様の活動時間にはこっちも起きておく、以上!」

一週間後

戦士「あれから勇者様とは会えず仕舞いだな」

魔法使い「その間に新たな仲間が加入したみたいだな」

戦士「マジかよ!どんな奴だ!?」

魔法使い「賢者だ。人類最高峰の魔道の求道者と謳われる、あの賢者だ」

戦士「おいおいおい!お前の完全上位互換じゃねえか!どうすんだよ!」

魔法使い「それを言ったら騎士もお前の完全上位互換だろ」

戦士「マジだ!やべえ!!」

魔法使い「一応棲み分けできてるから大丈夫だろ」

戦士「特化型と万能型ってことか?」

魔法使い「おう。俺達は前衛後衛それぞれのアタッカーに絞ってアピールしよう」

戦士「分かったぜ!!」

三日後

魔物の砦

戦士「ここに勇者様がいるのか」

魔法使い「ああ。魔王軍幹部、水の四天王の居城らしい」

戦士「うし!じゃあ正面突破だ!」

魔法使い「…ちょいと待て」

戦士「何だ!?」

魔法使い「正面からだと勇者様が進軍した後を通る訳だよな?」

戦士「それがどうかしたのか?」

魔法使い「漁夫の利を得に来た便乗野郎共だと思われないか?」

戦士「あっ!」

魔法使い「ここは別ルートで突入しよう」

戦士「何の意味があるんだ?」

魔法使い「勇者様に向けられる増援を減らしつつ合流すれば…」

戦士「十分な実力を示して、パーティーに呼ばれるって訳か!?」

魔法使い「ああ。そうだな、裏手に回るか」

戦士「分かったぜ!!」

魔物の砦

最奥部

水「まさか、人間如きに…!」

戦士「敵将討ち取ったりだぜ!!」

魔法使い「期せずして大金星を上げた訳だが、勇者様はまだ来ないな」

戦士「待ってりゃそのうち来るだろ」

魔法使い「それもそうだな」

数時間後

戦士「っかしいな。まだ来ないな勇者様」

魔法使い「もうじき日が暮れる。大将首を取ったと言っても敵の手中で夜明かしは危険だぞ」

戦士「しゃあねえ!帰るか!!」

魔法使い「今度は報告もきっちりしないとな」

砦付近の町

戦士「誰も信じてくれねえ!!」

魔法使い「目立った実績のない冒険者がいきなり四天王を倒したと言っても普通は信じないか」

戦士「罵倒に加えて石まで飛んできたぜ!?」

魔法使い「最前線で皆ぴりぴりしてるところで大言壮語野郎が出ればこうなるか」

戦士「畜生!退散するぜ!」

翌日

戦士「勇者様、撤退してたらしいな」

魔法使い「まあ陽動もなく挑めば城内の抵抗は激しいだろうしな」

戦士「また勇者様のパーティーに入り損ねたぜ!」

魔法使い「今回の反省点は、勇者様と別行動し通したことか」

戦士「俺達の信用が低かったこともな」

魔法使い「信用の方は一朝一夕じゃな…」

戦士「じゃ、勇者様とどこかで合流すること、以上だな!」

他方その頃

火「水の四天王がやられたようだな」

風「所詮奴は我等四天王でも最弱。四天王の面汚しよ」

土「弔い合戦にでも向かうか?」

火「その必要はない。今は進軍の方が急務よ」

風「不憫な奴よ。勇者に敗れ気にもかけられず…」

火「…ただ、勇者とやらが我が居城へ来るとあらば、その限りではない」

土「ほう?」

火「勇者を冥府へ送り、同志に再戦の、汚名返上の機会を与えてやろう」

土「…それでこそ我等が長。風の、お主もそれで良いか?」

風「無論。では解散だ」

1ヵ月後

戦士「もうすぐ国境だな」

魔法使い「その付近の、隣国が陥落してから建てられた、対魔王軍の城、そこが勇者様の次の目的地だ」

戦士「そこって確か最近魔王軍の四天王が入ったってとこか?」

魔法使い「ああ。火の四天王が攻め滅ぼし、手中に収めたと聞く」

戦士「やばそうだな。そういや勇者様の戦力はどうなった?」

魔法使い「エルフが加入したと聞いた」

戦士「長命で魔法に長けた、あのエルフ?またお前とかぶるのかよ!ピンチじゃん!」

魔法使い「他人事じゃないぞ。弓矢とナイフも使えるそうだ」

戦士「物理アタッカーも兼ねるのかよ!?」

魔法使い「騎士に賢者にエルフ、勇者様は多芸なメンバーでパーティーを固めているようだ」

戦士「アタッカー一本の俺らアウトじゃん!」

魔法使い「だからこそ、不器用さを補って余りある戦果を、今度こそ示す必要がある」

戦士「勇者様の前で戦うんだろ?」

魔法使い「ああ。それもその辺の雑兵でなく、火の四天王相手にな」

戦士「すれ違い対策は?」

魔法使い「勇者様がこちらに気付いたのを確認して、それから突入する」

戦士「分かったぜ!!」

門前

騎士「四天王最強とされる火の四天王の居城だ。気を引き締めていくぞ」

勇者「はい!…ん?誰か、先客がいる?」

エルフ「男が二人、身なりからして冒険者のようね」

賢者「武器を握っているな。今にも敵陣へ飛び込んでいきそうだ」

勇者「早まらないで下さい!俺達が討伐するまで大人しく…!!」

戦士「っしゃ!行くぜぇ!!!」

勇者「ええ!?」

エルフ「なんて馬鹿なことを…!」

城内

魔法使い「雑兵相手に余計な時間も体力もかけられない。一気に行くぞ」

戦士「おう!おらー!どけどけー!!」

最深部

戦士「でけえ!ドラゴンか!?」

魔法使い「火の四天王、だろうな」

火「如何にも。迷い込んだ冒険者か?勇者にはとても見えん」

戦士「確かに俺らは勇者じゃねえぜ!」

魔法使い「だが迷い込んだ訳でもないぞ」

火「勇者でないならどうでも良い。同志の仇敵たる彼奴を迎え撃たねばならん。今なら見逃してやろう」

魔法使い「余計な気遣いだな」

戦士「お前とやり合って、勇者様のパーティーに入れてもらうために来たんだからな!!」

火「愚か者共め…蛮勇の代償、その命で贖わせてくれるわ!」

勇者「てい!あの二人、どこまで行ったんでしょうか…」

騎士「せああ!!ここまで来て尚、影も形も見当たらないとはな」

賢者「道中魔物の死骸があった以上、ここまで突破してきてはいるはずだが…」

エルフ「この先なんて四天王くらいしかいないわ。大変なことになってなきゃ良いけど…」

賢者「…既に交戦中のようだ。迸った魔力の余波を強く感じる」

勇者「遅かったか…!急がないと!!」

騎士「単独行動は危険だ!」

エルフ「ああもう!!」

勇者「大丈夫ですか!?くっ!火の四天王か!」

火「勇者か…一足遅かったな…」

勇者「先に入った人達をどうした!」

火「その目で確かめるが良い…我を屠った…つわもの、共を…」

戦士「っしゃあ!大金星だぜー!!」

勇者「え!?」

魔法使い「漸く倒れたか、流石に今回は危うかったな」

騎士「追いついたぞ勇者…!と、この状況は!?」

賢者「これは…」

エルフ「追いかけるこっちの身にもなってよね!って…」

戦士「お!?勇者様達じゃん!初めまして!俺、戦士!」

魔法使い「初めまして。魔法使いです。是非、俺達を勇者様のパーティーに入れてください!」

戦士「四天王二体倒したんだぜ!実力はばっちりだろ!?」

勇者「えっと、何が何やら…俺は、勇者です。彼らは仲間の、騎士、賢者、エルフです」

賢者「立ち話の前に、治療を優先しては如何か。大回復魔法」

魔法使い「!傷一つ残ってない…!これが人類最高峰の…」

騎士「一先ず、改めて話を聞こうか」

勇者「鉱山の町と水の四天王の砦も、あなた方が先行していたんですか」

騎士「なるほど、それで粗方討伐済みだったのか」

戦士「おう!そうすりゃ実力認められてパーティー入りだと思ってな!」

賢者「確かに我らに引けを取らん実力ではあるな」

魔法使い「なら…!」

エルフ「そのために、こんな無茶をしてきたの?」

戦士「そう言ったじゃねえか!」

エルフ「命を落としかねない自覚はあったの!?」

魔法使い「ありました。が、俺達が名を上げる機会なんて今回しかないので、気にしてられませんよ」

エルフ「馬鹿じゃないの!!?」

騎士「見事に地雷を踏み抜いたな」

エルフ「私がこのパーティーに入ったのは、勇者の方針に賛同したから!」

戦士「勇者様の方針?」

勇者「誰も失うことなく討伐を果たすことです」

騎士「俺達パーティーメンバーはもちろん、協力者もな」

賢者「そのために必要とあらば、攻城戦時の撤退も視野に入れている」

エルフ「なのにあなた達は…!名誉のためなら命は二の次!?」

エルフ「どんなに実力があっても、そんな考えの人を入れられる訳ないでしょ!!」

エルフ「何で死に急ぐの!?どうして自分達の命を大事にできないの!?」

エルフ「天寿を全うしても私を遺す側の癖に、何で!?どうして!?」

騎士「おいエルフ。それ以上は…あ、待て!」

勇者「概ね彼女の言った通り、方針が折り合わない以上、あなた方を迎え入れることはできません」

魔法使い「そんな…」

勇者「すみませんが、ご理解を。俺も追いかけないといけないので失礼します」

戦士「マジかよ~…」

賢者「…長く生きても、誰もが死に慣れる訳ではない。却って過敏になることもある」

魔法使い「その実例が、先のエルフさんだと…」

賢者「然り。功を焦るな汝らとは相容れない価値観だろうな」

戦士「俺ら勇者様のパーティーに入れないのかよ…」

魔法使い「つまりは一生無名のままか…」

賢者「…名を上げるだけなら手はある」

戦士「マジかよ!」

魔法使い「是非ご教授を!」

賢者「それはだな…」

賢者「ではまた、互いに健勝で再会しよう。転移魔法」

戦士「おう!ありがとなー!!」

魔法使い「良し、俺達も脱出するぞ」

戦士「おうよ!」

他方その頃

土「火の四天王がやられたようだな」

風「奴は我等魔王軍でも最強。最強…」

土「つまり我等が個別に戦っても勝機などない」

風「泣き言を言っている場合か!?どうするのだどうするのだ!?」

土「魔王城へ撤退する。今こそ本陣を固める時」

風「敵前逃亡を咎められるのでは!?」

土「汚名を恐れて陛下を討たれる位なら、共に咎められようぞ」

風「!!では急ぎ撤退だ!」

1ヵ月後

魔王城

騎士「道中の砦がもぬけの殻になっていたな」

勇者「またあの二人でしょうか」

賢者「四天王半壊を受けて、ここに戦力を結集したのかも知れん。あるいはその両方か」

エルフ「あれから残りの四天王には出くわさなかったし、賢者の言う通りかもね」

勇者「四天王クラスの幹部との戦いは今日が初めてですから、気を引き締めていきましょう!」

賢者「…そろそろ連絡しておくか」

騎士「何してるんだ賢者。突入するぞ」

賢者「分かっている」

勇者「では、行きましょう!」

風「敵襲!!者共、出合え出合え!」

土「門番と共に時間を稼ぐ。風の、急ぎ陛下に報せるのだ」

勇者「まずい…!止めなきゃ…!」

門番「ここは通さんぞ!」

騎士「こいつも並みの兵とは比べ物にならない…!賢者!エルフ!」

エルフ「魔法は撃ってるけど…!」

賢者「衛兵があまりに多く、そちらまで手が回らん…!」

土「火の四天王を討ったからと油断したか。実力こそ劣れど、耐久戦は我が独壇場ぞ」

騎士「これ以上兵が寄ってくるなら撤退も厳しくなる…!どうする!?」

勇者「悔しいけど、ここは…!」

賢者「…来たか…!」

戦士「おりゃー!!」

門番「ぐぎゃ!?」

魔法使い「大風刃」

土「ぐお…!」

勇者「あなた方は先月の…!」

戦士「おう!戦士と魔法使いのコンビだぜ!」

魔法使い「勇者様、ここは我々にお任せを!すぐに追いつき加勢しますから!」

エルフ「賢者、あなたまさか…!」

賢者「保険は、あって然るべきだろう?」

騎士「お前なあ…」

賢者「勇者!今の内に!」

勇者「~!分かりました!お二人とも、助力、ありがたくお受けします!でも…!」

エルフ「決して命を粗末にしないでね!」

戦士「おう!戦士が戦死とかつまらねえからな!」

魔法使い「名誉は生きて勝ち取りますよ!ではまた後ほど!」

土「愚か者共め…火の四天王を討った勇者ならいざ知らず…」

門番「貴様ら程度、足止めにもなると思うてか!」

魔法使い「くくく…!これは滑稽だ」

土「何がおかしい」

戦士「賢者の情報操作にまんまと踊らされてんな!」

門番「何!?どういう意味だ!」

魔法使い「行くぞ戦士!」

戦士「おう!さっさと倒して、おいしいとこ掻っ攫わねえとな!!」

門番「まさか…勇者ですらない、人間共に…」

土「火の四天王を討ったのは…!」

戦士「気付くのが遅えよ!」

魔法使い「もう聞こえてないだろ。放っておいて、さっさと勇者様を追うぞ」

戦士「分かったぜ!」

門番「まさか…勇者ですらない、人間共に…」

土「火の四天王を討ったのは…!」

戦士「気付くのが遅えよ!」

魔法使い「もう聞こえてないだろ。放っておいて、さっさと勇者様を追うぞ」

戦士「分かったぜ!」

城内

戦士「これまでと違って楽ちんだぜ!」

魔法使い「勇者様方が粗方制圧してるからな」

戦士「これまでと役割が逆って訳か」

魔法使い「とはいえ、大将首が取られてるとこまで再現する訳には行かないぞ」

戦士「おう!急ごうぜ!」

魔法使い「最終決戦でなし崩しで勇者様と共闘して、名を上げるためにな!」

玉座の間

戦士「やっと着いたぜ!敵は、まだデカブツが二体いるな!」

魔法使い「俺達とそう変わらないサイズのも二体倒れてるな」

勇者「無事でしたか!」

賢者「倒れているのは風の四天王と魔王の側近だ。そして…」

騎士「手前にいるのが親衛隊長。奥にいるのが…」

エルフ「魔王よ…」

魔王「増援か……忌々しい…」

親衛隊長「後詰が来ようが同じこと…!陛下は討たせんぞ!!」

賢者「魔王も親衛隊長も強力だが、それ以上に連携が厄介だ。片方、頼めるか?」

戦士「おう!任しとけ!」

魔法使い「挨拶代わりだ。大風刃!」

魔王「氷壁!」

勇者「隙あり!」

魔王「ぐぬっ!」

親衛隊長「貴様…!」

戦士「おっと!お前の相手は俺だぜ!」

親衛隊長「ええいどけえぇぇ!!」

親衛隊長「陛下…申し…訳、ありませぬ…」

戦士「っしゃあ!こっちは片付いたぜ!」

魔法使い「もう余力が…勇者様の方は…」

魔王「ぐはあ…」

魔法使い「丁度片付いたようだな」

勇者「ええ。お陰様で」

魔王城前

賢者「弔い合戦を仕掛ける残党が少なかったのは楽だったな」

騎士「忠義に欠ける連中だな」

勇者「敵の内情はともかく、これで、終わったんですね…」

エルフ「帰るまで気を抜いちゃ駄目よ?勝ち戦の兵こそ弱いんだから」

勇者「はい、気を付けます。あなた方も、せめて王城まではご同行願えますか?」

戦士「ああ!いいよな!?魔法使い!?」

魔法使い「ええ。そこまでが、賢者さんとの約束ですしね」

騎士「どんな約束をしていたのやら」

賢者「彼らの望みを一部叶える見返りに、助力を願ったまで」

エルフ「私達のパーティーに入って名を上げたいって言ってたわね」

騎士「魔王城攻城戦のどさくさで加入して、魔王討伐の功労者に、ってところか」

戦士「確かそんな感じだったぜ!」

魔法使い「正規の加入は断られてしまいましたから」

賢者「なし崩しで加入した助っ人としてならば、とな」

戦士「駄目か!?」

勇者「いえ、今日も以前も、助けられたのは事実ですし感謝してますから。お二人こそ、良いんですか?」

魔法使い「勿論ですよ!!」

戦士「俺も!」

勇者「分かりました。では戦勝報告はその内容にします」

人類に未曾有の危機をもたらした魔王は、当代勇者一行によって倒された

討伐まで勇者を支えた仲間は3人いたとのこと

王室親衛隊期待の若手、騎士

人類最高の魔道の求道者、賢者

悠久の時を生きる女傑、エルフ

彼らと共に各地の拠点を奪還しつつ、魔王城まで討ち入り重臣共々討ち滅ぼした

なお、道中を共にはしなかったが討伐に大きく貢献した協力者が二人いたという

その協力者とは―――――――

魔法使い「おい戦士!これを見ろ!」

戦士「新聞かよ。読んだんならお前の口から教えてくれよ」

魔法使い「馬鹿!俺達のことが載ってるんだ!」

戦士「マジかよ!どこだ!?」

魔法使い「ここだ」

戦士「えっと……討伐に大きく貢献した協力者…!俺ら超有名人じゃん!!」

魔法使い「おう!これで一生安泰だな」

翌週

戦士「誰もちやほやしてくれねえぞ!」

魔法使い「同姓同名の別人の功績と思われてるみたいだな」

戦士「そりゃねえぜ!これからどうすんだよ!」

魔法使い「魔王討伐協力の恩賞がある。細々暮らしていく分にはそれと利息で十分なんだが…」

戦士「そんでも無名のままじゃつまらねえよ!」

魔法使い「何かうまい話はないものか」

勇者「お久しぶりです」

魔法使い「勇者様!?どうしてここに!?」

勇者「あなた方を探しにきたんです」

勇者「魔王城や四天王の支城付近一帯を開拓することが決まりまして」

魔法使い「そうですか。魔物の残党はすでに掃討済みということですか?」

勇者「いえ、まだです。そこで、開拓人員とは別に、彼らの護衛が必要になります」

戦士「勇者様もその一員ってことか?」

勇者「ええ。俺も騎士も賢者もエルフも。そして、あなた方も、加わって頂きたく、お願いに来ました」

戦士「いいのかよ!」

勇者「お二人ほど強い人は早々居ませんし、ただ二人で危険な状況に挑まれる前に予め声を掛けておこうと」

魔法使い「これは手厳しい。しかし、願ってもない話です…!」

戦士「なし崩しの共闘じゃなくて、正式なパーティー加入ってことだよな!?」

勇者「そう取って頂いて構いません。俺と一緒に来て頂けますか?」

魔法使い「勿論!宜しくお願いします!仕事も名誉も一度に手に入った…!」

戦士「っしゃあ!!勇者様のパーティーに入れたし安泰だぜー!」

終わり

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