勇者「長老、なんかこの剣喋ってない?」長老「なんじゃと」聖剣「……」7 (764)





勇者「長老、なんかこの剣喋ってない?」長老「なんじゃと」聖剣「……」

勇者「長老、なんかこの剣喋ってない?」長老「なんじゃと」聖剣「……」
勇者「長老、なんかこの剣喋ってない?」長老「なんじゃと」聖剣「……」 - SSまとめ速報
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↑のつづき

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勇者「––––––––と言うわけで、夜の見張りは剣士達のパーティに先にやってもらうことになりました」

勇者「俺たちの番が来るまでの間、みんなにはゆっくり休んでてほしいんだけど」


メロンパン職人「……」

モヒカン「……」

ピエロ「……」

老人「ぐびぐび」


勇者「……」

勇者「爺さん、俺の話聞いてた?」

老人「……ん?」

勇者「……俺の話、聞いてた?」

老人「……」

勇者「……」


老人「酒はやらんぞ」ガバッ

勇者「……いらないし。そもそもそれ取ってきたの俺だし」

メロンパン職人「勇者さん。みんな休む前に自己紹介でもしてもらったらどうですか」

メロンパン職人「俺たち、今日がほぼ初対面だし名前以外よく知らないでしょ」

勇者「……それもそうだな」



勇者「じゃあまずは俺から––––––––」


モヒカン「ケッ、くだらねえ」

勇者「モヒカン?」

モヒカン「俺たちはお友達ごっこしにここに来たんじゃねえんだ。そういう馴れ合いや年寄りの介護は、やりたい奴だけでやってやがれ」

ザッ、


勇者「お、おいっ、モヒカン!」

モヒカン「俺ぁ先に休ませてもらうぜ。仕事さえキッチリやりゃ文句はねえだろ」

勇者「……」


ザッ、ザッ…

メロンパン職人「行っちゃいましたね」

勇者「うーん。仕方ないな……」

勇者「残った俺らだけでもやっておくか」


勇者「じゃあまずは、なりゆきとは言えパーティのリーダーになってることだし。俺から行こうか」

ピエロ「……」

老人「……」

勇者(自己紹介だが……)

勇者(メロンパン職人はまあいいとして、この二人の反応が全然読めないな)

勇者(モヒカンみたいに舐められたりしないように、ここはビシッと決めておきたいんだが……)

勇者(どんな感じで行こうかな)


聖剣「>>10

踊れ 心の赴くままに

聖剣「踊れ 心の赴くままに」

勇者「お、踊る……?」

勇者(俺は辺境のど田舎出身だし、王都の貴族のような華麗で上品なダンスは踊れない)

勇者(……てか、上品でなくても踊りなんか知らなかったわ)

勇者(せいぜい村のおっさん連中が酔っ払ってヘンテコな踊りしてんのを見たことあるくらいだ)

勇者(そんな俺が……やれるのか?)

勇者(……)

勇者(やれるやれないじゃない)


勇者(……やるしかないんだよな)


勇者(だってこれは、安価なんだから)

勇者「えー、俺の名前は勇者」

勇者「自己紹介の前に、まずは皆に見せておきたいものがある」


メロンパン職人「……」

老人「……」

ピエロ「……」

勇者「この場にいる皆との、この出会いを祝しまして」




勇者「踊ります。心のままに」




メロンパン職人「へ?」

老人「お?」

ピエロ「……」

勇者「あっそーれ」

フニャフニャ~~~


勇者「あらよっと!」

ヘニョヘニョ~~~


勇者「へいへいへい!!」

ビロビロ~~~




メロンパン職人「ちょっと待って」

勇者「なんだよ」

メロンパン職人「何やってんすか」

勇者「見りゃわかるだろ」

メロンパン職人「わからないから聞いてるんですけど」

勇者「この出会いを祝した喜びの舞だよ」

メロンパン「あのふやけた昆布みたいなのが?」

メロンパン職人「あれが踊りなのは良いとして、急に何なんですか」

勇者「言ってなかったっけ。俺の地元では初対面の人にはこうやって友好を示すんだよ」

メロンパン職人「俺そんなの見たことないんですけど!?」



老人「うーい、いいぞ若いのー。踊れ踊れぇい!」


勇者「ほら」

メロンパン職人「ほらじゃなくて」

勇者「あらよっと!」

フニャフニャフニャ~~~

老人「へいへいへい!」


勇者「そーらよっと!」

ヘニョヘニョ~~ヘニョヘニョ~~

老人「ほいさっさ!」



メロンパン職人「はぁ……」

メロンパン職人「この人たち、自己紹介のこととかもう忘れてないですかね。トップバッターなのに」

メロンパン職人「本人たちが良いならそれでいいかもですけど……」


クスクス…


メロンパン職人「……ん?」

クスクス…


メロンパン職人「笑い声……?」


クスクス…クスクス…


メロンパン職人「な、なななんですか」


クスクス…クスクス…クスクスクスクス…


メロンパン職人「い、いったいどこから………………はっ!?」バッ!




ピエロ「クスクス…」


メロンパン職人「…………!!!」

勇者「あそれそれそれ!」

老人「ほいこらしょー!」


メロンパン職人「ゆ、ゆゆゆ勇者さんっ!!」

勇者「ん、なんだよ。今いいとこなのに」

老人「空気読め」

メロンパン職人「ピ、ピピピピエロがっ!!」

勇者「ピエロがどうしたんだよ」

メロンパン職人「笑ってる! ピエロが笑ってる!!」

勇者「はぁ?」

メロンパン職人「ほらあっち! あっちでピエロが!」



ピエロ「……」



勇者「別に普通じゃねえか」

メロンパン職人「いやいやいやいや」

メロンパン職人「絶対笑ってた! ピエロが笑ってた!」

勇者「笑ってないけど」

メロンパン職人「笑ってたんですってば!」

勇者「たとえピエロが笑ってたとして何がいけないんだよ。ピエロだって笑うだろ」

勇者「俺の踊りで笑ってくれたんならいいことじゃないか」

メロンパン職人「いやそういう笑いじゃなくて、もっと不気味で怖い感じの!!」

勇者「怖い? ピエロが?」



ピエロ「……」



勇者「普通じゃん」

メロンパン職人「ええぇ……」

勇者「まったく……これからしばらく一緒にやってく仲間なんだから仲良くやってくれよ、お前ら」

メロンパン職人「うぅん……」

勇者「じゃあ俺もうちょっと踊ってくから」

メロンパン職人「気のせいだったのかな……」

チラッ


ピエロ「……」


メロンパン職人(勇者さんの踊りをジッと見つめている……)

ピエロ「……」

メロンパン職人「……」


ピエロ「……」

メロンパン職人「……」


ピエロ「……」

メロンパン職人「……」





ピエロ「……」ギュルンッ!!


メロンパン職人「!?」ビクッ!

ピエロ「…………」ジーーーーッ

メロンパン職人「……」



ピエロ「……クスクスクス」




メロンパン職人「……」



メロンパン職人「はわわわわわ……!!」ガタガタガタガタ

御者A「ふーっ。今日はお疲れ」

御者B「お疲れー」

御者A「普段より護衛の人数が少なくなりそうで心配だったけど、なんだかんだで人数揃ったみたいで良かったな」

御者B「ああ。王都であんなことがあったしな。雇われの戦士たちにも負傷者が多かったし、どこも人手が足りないもんな」

御者A「そんな状況でも、10人も集まってくれたんだからありがたいよ。下手すりゃ半分以下だと思ってたからな」

御者B「……10人?」

御者A「ああ」

御者B「……俺、9人って聞いてた気がするんだけど」

御者A「え? さっき護衛の人たち見てきたけど、確かに10人いたぞ」

御者B「あれぇ? ……連絡ミスかな?」

御者A「まあ、そうだとしても予定より少ないよりは多い方がいいだろ。最近は物騒なんだし」

御者B「……それもそうか」

御者A「それより、明日も早いんだしさっさと寝ようか」

……

……

勇者「はぁ、はぁ……」

老人「どうしたどうした」

勇者「も、もう終わりで」

老人「はぁ?」

勇者「そろそろ踊りはいいんじゃないかなって。友好も深まったと思うし」


老人「まだ脱いでないじゃろ」

勇者「えっ」

老人「これからが本番じゃろ」

老人「諦めるんか?」

勇者「……いや、もう無理だ。勘弁してくれ爺さん」

勇者「俺は心のままに踊った。もうこれ以上晒け出せるものなんかない」

勇者「もう十分だろ? 俺は満足したよ」


勇者「……」

老人「……」


勇者「……」

老人「ぱーちー……」


勇者「……爺さん」

勇者「寂しそうに言ったところで俺は脱がないからな」

老人「あっそ」

勇者「と言うか、自己紹介の続き……」

勇者「……あれ? メロンパン職人はどこ行った?」


勇者「ピエロ、メロンパン職人知らないか?」

ピエロ「……」フルフル

勇者「そうか……何やってんだよあいつ」

馬車


ズタ袋「……」

主「……」


メロンパン職人「はわわわわ……ピエロが……ピエロが……!!」ガタガタ


ズタ袋「……鳥にしがみついて、何をしているのだこの男は」

主「キィ……」

ズタ袋「お前も鬱陶しいだろうに」

数時間後


剣士「勇者君、そろそろ交代だよ」

勇者「……ン。もうそんな時間か」


剣士「よく休めたかい」

勇者「微妙……」

剣士「そ、そうか」

剣士「悪いけど、決まりは決まりだからね」

剣士「とりあえず、僕達の番では特に異常は無かった。至って平和な見張りだったよ」

勇者「そっか」

剣士「けど、気を付けるべきは今の時間かもね。幸い、月明かりがあるから視界は悪くないけど。魔物が活発になるのもこういう夜だから」

勇者「……まあ大丈夫だろ」

勇者「よーし、全員いるか?」

モヒカン「おう」

ピエロ「……」コクッ


勇者「……」



勇者「……あれ?」

勇者「爺さんとメロンパン職人は?」

モヒカン「……パン屋は知らねえが、ジジイならそこにいるだろ」

勇者「ん?」



老人「くかー、くこー、すぴー……」



勇者「……」

モヒカン「酒瓶抱えて眠ってやがる」

勇者「おい、爺さん」

老人「くかー、くこー、むにゃむにゃ……」

勇者「時間だぞ」ペチペチ

老人「……」

勇者「起きろって」ペチペチペチペチ

老人「……うぅん…………」

勇者「……おっ?」




老人「ぷはーっ」モワッ

勇者「うわっ、酒臭っ!!」

老人「くかー、すぴー、ぐごー」


勇者「起きねえ……」

モヒカン「ったく……何なんだこのジジイは。初日からこんなので大丈夫なのかよこのパーティ」

勇者「う。」

勇者「ま、まあ、爺さんには明日俺から注意しとくよ。ガツンとな」

モヒカン「頼むぜリーダーさんよぉ」

勇者「……それで、メロンパン職人は知らないか?」

モヒカン「俺が知るわけねえだろ」

勇者「そうだよな」

トントン、

勇者「ん?」

ピエロ「……」


勇者「ピエロ?」

ピエロ「……」


勇者「どうかしたのか?」

ピエロ「……」チョイチョイ


勇者「あっちの方を指差して……もしかしてメロンパン職人の居場所か?」

ピエロ「……」コクッ

馬車

メロンパン職人「うぅん……むにゃむにゃ……」

主「……」もふもふ



勇者「あの野郎……主を枕にしやがって」

ピエロ「……」

メロンパン職人「くかー、くこー、くかー」


トントン、

メロンパン職人「……」


トントン、

メロンパン職人「……」



トントントントン、

メロンパン職人「……うぅん……?」

メロンパン職人「誰ですかぁ……? まだ夜じゃないですか……」



ピエロ「……」

メロンパン職人「……」

ピエロ「……」

メロンパン職人「……」




ピエロ「……」ニコッ




メロンパン職人「……」


メロンパン職人「いやぁぁぁあああぁぁぁあああ!?!?」

勇者「これで全員揃ったな」


老人「ぐごごご……」

ピエロ「……」

モヒカン「……」

メロンパン職人「はわわわ……」

モヒカン「お前、俺に引っ付くのやめろよ。邪魔くせえ」

メロンパン職人「だ、だだだだってぇ……」


モヒカン「五人の内、一人は酔い潰れたジジイ。一人はピーピー泣いてるパン屋。一人は何考えてるかわからねえピエロ」

モヒカン「そしてそいつらを指名したパーティリーダー」

モヒカン「大丈夫なのかよこいつら……」

勇者「さて。今から俺らが見張りの番をするわけだが」

モヒカン「……」

勇者「……」


モヒカン「……」

勇者「……えー、」



勇者「何すればいいと思う?」

モヒカン「こいつ……!!」

モヒカン「お前よぉ……!」

モヒカン「夜のこの時間帯でこんだけの人数で番やってるんだぞ」

モヒカン「ただただ全員ここで油売ってるだけでいいわけねえだろうがよ」

モヒカン「五人もいるんだ。時間決めて交代で定期的に周囲に魔物がいないか見回り行って、待機人員でここ見張るもんだろうが」

モヒカン「単独行動は危ねえから、五人いるなら見回りの人数は二人。三人ここで待機の配分ってとこだろ」


勇者「お、おう」

勇者「詳しいんだなモヒカン」

モヒカン「お前が素人なだけだ!」

勇者「う。」

モヒカン「少なくとも、俺らの前の剣士の野郎達はそうしてたはずだ。奴らはいい子ちゃんぽいし、変なやり方はしてねえだろう」

勇者「じゃ、じゃあ見回りは三十分くらいのスパンでやろう」

勇者「三人残って二人で見回り」

勇者「爺さんは動けないから今日は実質2-2で動いてもらうことになるけど」


メロンパン職人「……」チラッ

ピエロ「?」

メロンパン職人「……」ビクッ


モヒカン「……チッ。どいつもこいつも頼りねえな」

モヒカン「そもそもパン屋とピエロがまともに戦えるのかよ」

モヒカン「お前、勇者って言ったか? その腰の立派な剣が飾りじゃねえってんなら、この中で戦えるのは俺とお前くらいだろう」

勇者「なら、俺とモヒカンは分かれて組んだ方が良さそうだな」


勇者「モヒカンの武器はそのトゲトゲボールか?」

モヒカン「モーニングスターと呼べ」

モヒカン「少なくとも、俺はピエロと組むのは御免だぜ。喋らねえし、何考えてんのかわからねえ」

メロンパン職人「お、俺も……ピエロさんはちょっと……」

ピエロ「……」

勇者「何だよお前ら。同じパーティなんだから仲良くやってくれよ」

モヒカン「知るかよ。ただ仕事で一緒になっただけだ。仲良しこよしをやるために組んでるわけじゃねえ」

勇者「むぅ」

勇者「仕方ないな。じゃあ、ピエロは俺と。メロンパン職人はモヒカンと一緒に行動してくれ」

勇者「見回りの番は……そうだな。リーダーなんだし俺が先に行くことにするよ」

勇者「ピエロもそれでいいか?」

ピエロ「……」コクッ

勇者「決まりだな」

勇者「じゃあ俺らは先に行くから」

ピエロ「……」

モヒカン「あまり遠くに行き過ぎるんじゃねえぞ。大声出してここまで届く位置にしておけ」

モヒカン「もし二人で処理し切れない量の魔物を見つけたなら、深追いはするな」

モヒカン「強い方がその場で見張りをやって、弱い方がこっちに応援を呼びに来い。下手に挑もうとするんじゃねえぞ」

モヒカン「あと、場合によっちゃあ今寝てる剣士の野郎達を呼ぶことも考えろ」

モヒカン「奴らも休憩邪魔されて文句言うかもしれねえが死ぬよりはマシなはずだ」


勇者「……お前、意外と考えてる奴なんだな」

モヒカン「こんなのは常識だ。お前らが知らなすぎるんだよ」

今週ちょっとバタついてた
来週はそうでもないと思います

なんか忙しい
年度始めなめてた

てす

勇者「じゃあ、ちょっと行ってくる。留守番よろしくな」

ピエロ「……」


モヒカン「チッ、ようやく行ったか」


メロンパン職人「モヒカンさん、お爺さんどうしましょう」

老人「くかー、くこー」

モヒカン「……ほっとけ」

メロンパン職人「……」

モヒカン「……」

メロンパン職人「モヒカンさん」

モヒカン「何だよ」

メロンパン職人「モヒカンさんってこういう仕事慣れてるんです? さっきも何かと詳しそうでしたし」

モヒカン「ふん。俺が普段どんな仕事してんのかなんて、このナリを見りゃわかるだろ」

メロンパン職人「いや見た感じだともっと頭パーな」

モヒカン「喧嘩売ってんのか?」

メロンパン職人「ごめんなさい」

メロンパン職人「……」

モヒカン「……」

メロンパン職人「モヒカンさん」

モヒカン「何だ」

メロンパン職人「俺、なにかやることあります?」

モヒカン「お前は何ができるんだよ」



メロンパン職人「パンを作れます」グッ

モヒカン「……」イラッ

モヒカン「火の番でもしてろ」

メロンパン職人「わかりました」


パチパチ…

老人「くかー、くこー、むにゃむにゃ」

モヒカン「うるせえな……」イライラ

メロンパン職人「……」

モヒカン「……」


メロンパン職人「モヒカンさん」

モヒカン「……今度は何だ」


メロンパン職人「メロンパン食べます?」

モヒカン「お前は何をしに来たんだ?」

メロンパン職人「いやぁ。俺にできることってこれくらいかなって」

モヒカン「ケッ、大体何でこんな所にパン屋がいやがるんだ。乗客の方にいるならまだしもよ」

モヒカン「場違いにも程があんだろ」

メロンパン職人「そんなことは」

メロンパン職人「……」


メロンパン職人「言われてみれば確かに」

モヒカン「確かにじゃねえよ」

野営地周辺

テクテク

勇者「うーん、さすがに夜は冷えるな」

勇者「ピエロは寒くないのか?」

ピエロ「……」フルフル

勇者「まあお前結構厚着だもんな」

勇者「俺もパンツは重ね着してるけど」

ガサガサ

勇者「ん?」


勇者「今何か草むらで動かなかったか?」

ピエロ「?」

勇者「……」


勇者「気のせいか」

テクテク

勇者「もうこの辺りグルっと一周したんじゃないか?」

勇者「これだけ見て回れば十分だろ。そろそろ戻ろうぜ」

ピエロ「……」コクン


勇者「っと、その前に……」ブルルッ

ピエロ「?」

勇者「ちょっとおしっこ」

……

モヒカン「ったく、俺はお前らがこれだけ気が抜けてるのが信じられねえよ」

メロンパン職人「はぁ。……けどモヒカンさん、そもそもこの辺りって魔物とかあんまり出ないんじゃないですか?」

メロンパン職人「案外俺ら、何もしなくても大丈夫だったりして」

モヒカン「素人め」

メロンパン職人「う。」

メロンパン職人「けど、剣士さん達の番にも特に異常なしって言ってましたし」

モヒカン「その剣士が言ってただろうが。この時間くらいから魔物は活発になる」

モヒカン「で、ついこの間王都で何があったか忘れたのか?」

メロンパン職人「何って……ええと」

モヒカン「魔物の群れの襲撃だ」

モヒカン「聖女サマのなんとやらで蹴散らしたらしいが、あの数だ。撃ち漏らしがいたとしても不思議じゃねえ」

モヒカン「特に奴ら、ほとんどが下級悪魔の群れだったろう」

メロンパン職人「ギィギィ鳴いてた奴らですね」

モヒカン「下級悪魔どもは統率でもされてなけりゃあエサの人間の多いところに集ってくる性質がある」

モヒカン「さすがに本能的に追っ払われたばかりの王都にすぐ仕掛けようって奴はそういねえだろうが……ここはどうだろうな。王都から離れてはいるが、離れすぎてもいない」

メロンパン職人「つ、つまり?」

モヒカン「逃げ散らかした奴らがそこら辺にいるかもしれねえってことだ。この馬車団なんて格好の的なんじゃねえか?」

そこら辺の草むら

勇者「うぅ、漏れる漏れる」タタタッ

勇者「……この茂み、丁度良さげだな」

勇者「では失礼して」ゴソゴソ


勇者「ふんふーん」

ジョロロロロ

勇者「はぁー。何とも言えない開放感」

ジョロロロロ

勇者「ふんふふーん」

ギィギィ

勇者「……? 鳥か?」

勇者「……」

勇者「そういやこういう時、女の子ってどうしてんだろうな」

ギィ

勇者「乗客にも何人かいたけど。まさかずっと我慢してるわけじゃないよな」

勇者「それとも俺が知らないだけでそれ用の魔法のアイテムでもあったりするのかね」

ジョロロロロ

勇者「……」

勇者「今度傭兵に聞いてみるか」


ギィ!

勇者「さっきからうるせえ鳥だな……」

勇者「人が用足してる時くらい静かにしろよな」クルッ


下級悪魔「ギィ」

勇者「……」


チョロッ…

ひゃああああああああああ!!?


ピエロ「!」

ピエロ「……」キョロキョロ


ピエロ「……」


タタタッ

メロンパン職人「い、今の声は……」

モヒカン「勇者の野郎か?」

メロンパン職人「たぶん……」

モヒカン「チッ、何があったのか知らねえが情けねえ声上げやがって」

メロンパン職人「ど、どうしましょう」

モヒカン「どうもこうもねえ。あんな声上げるってこたぁ勇者の野郎に何かあったんだろうが、俺達がそう簡単にここから動く訳にはいかねえだろ」

モヒカン「奴らには悪いが、とりあえずは自分で何とかしてもらうしかねえな」

メロンパン職人「そんな! モヒカンさん薄情ですよ! 仲間を見捨てるつもりですか!」

モヒカン「テメエかこのジジイがまともに戦えるってんなら一人くらい応援にやっても良かったんだがな!」


メロンパン職人「よーし、勇者さんなら大丈夫でしょうし、俺らはここの守りに専念しましょう!」

モヒカン「こいつ……」

下級悪魔「ゲギャギャギャ!!」


勇者「この……野郎っ!」


ズバッ!

下級悪魔「ギィーー……」ドサッ

勇者「はぁー、めちゃくちゃびっくりした」

勇者「おしっこ途中で止まっちゃったじゃないか」

下級悪魔「ギッ、ギギッ……」ピクピク

勇者「こいつ、王都にわらわら集まってた悪魔と同じ奴か? 何でこんなところに……」


ギギャッ、ギィギィ、ゲギャギャギャ


勇者「……どうやら一匹や二匹って訳じゃないみたいだな」

タタタッ

勇者「!」


勇者「ピエロか」

ピエロ「……」

勇者「悪いな。変な声上げちまって、ちょっとびっくりさせたかもだけど俺は大丈夫だよ」

ピエロ「……」ホッ

勇者「それより、こんなところに悪魔たちが群がってるみたいなんだ」

勇者「ほっといたら馬車団の野営地にまで行っちまいそうだし、俺たちでなんとかしないといけないと思う」

ピエロ「……」

勇者「えーと、こんな時モヒカンはどうしろって言ってたかな……」

ピエロ「…………、……!」フリフリ、サッサッ

勇者「ん? パントマイム?」

勇者「なになに、『一人が足止め』……『一人が応援』……か?」

ピエロ「……」コクン

勇者「へぇー。にしても、上手いもんだな。今のめちゃくちゃわかりやすかったぞ」

勇者「こういうの得意なのか? さすがピエロだな」

ピエロ「……」フリフリ

勇者「……ん? 後ろ?」


下級悪魔「ゲギャギャッ!」バッ

勇者「おっと」サッ

ズバッ!

下級悪魔「ゲヒッ……!」ドサッ


勇者「ここは俺が何とかしておくから、ピエロはモヒカン達の所に行ってくれ」

勇者「この量だと、あいつらの所にも何体か向かってるかもしれない。一応注意してやってくれよ」

ピエロ「……」フリフリ、サッサッ

勇者「ん? 俺が一人で大丈夫かって?」

勇者「まあ何とかなるさ。俺はそれよりあっちの方が心配なんだ」

勇者「頼むよ、ピエロ」

ピエロ「……」


タタタッ

ギギギ、ゲギャギャ、ギィギィギィ

勇者「ひぃふぅみぃ……何体いるんだこれ……」

勇者「王都の時の生き残りか? この辺に巣でも作ってんのか」

勇者「何にせよ、ここから先に行かせるわけにはいかないよな」

下級悪魔「ギギ……!」


勇者「……やるか!」チャキッ

野営地


モヒカン「……」

メロンパン職人「……」

モヒカン「……」

メロンパン職人「……」


メロンパン職人「……あの、モヒカンさん」

モヒカン「何だ。こんな時にくだらない話だったら張っ倒すぞ」

メロンパン職人「ひっ」

1年経つまでには終わらせたいと思ってる

てす

メロンパン職人「い、いや、勇者さん達、大丈夫かなって」

モヒカン「……」

メロンパン職人「その、はい……そう思った次第でありまして」

モヒカン「……チッ」

タタタッ

メロンパン職人「!」

モヒカン「あいつは……!」


ピエロ「……」ブンブンブン!


メロンパン職人「ピエロ!」

メロンパン職人「ピエロだ! モヒカンさん! ピエロが走ってる! ピエロが走ってきてますモヒカンさん!」

モヒカン「……おぉ」


ピエロ「……」ブンブンブン!


メロンパン職人「めっちゃ手ぇ振ってる! ピエロがこっち見てめっちゃ手を振ってます! ひぃぃ!!」

モヒカン「見りゃわかるようるせえな!」

モヒカン「おいピエロ。さっき勇者の悲鳴が聞こえてきたが、何があったんだ?」

ピエロ「……」ピタッ


モヒカン「……」

ピエロ「……」

モヒカン「…………」

ピエロ「…………」


モヒカン「何か喋れよ!」

ピエロ「!」ハッ

ピエロ「……」ササッ、サササッ、サッサッサッ

メロンパン職人「何ですかこの謎の動き」

モヒカン「パントマイムか? 無駄に器用な……」


メロンパン職人「なになに……『見廻り中に勇者がおしっこしてたら魔物に遭遇した。自分は報告のために逃げてきたけど勇者はただいま戦闘中』……?」

モヒカン「どうでもいいがわざわざパントマイムでションベンのくだり説明する必要あったのか?」

モヒカン「群れの規模はどんなもんだ」

ピエロ「……」ササッ、サッサッ

モヒカン「……チッ。そんなにか」ガチャッ

メロンパン職人「モ、モヒカンさん、行くんですかっ」

モヒカン「仕方ねえだろ。一人でどうこうできる数じゃねえしな」

メロンパン職人「モヒカンさんが行っちゃったら誰が俺たちを守ってくれるんですか!」

モヒカン「お前、自分が雇われた護衛ってこと忘れてないか?」

キィーー!


モヒカン「!」

メロンパン職人「あれは……!」


主「キィ」バッサバッサ


メロンパン職人「主!!」



モヒカン「何だあの鳥」

メロンパン職人「僕らのペットです」

メロンパン職人「主がきてくれたならもう安心だ」

メロンパン職人「モヒカンさん、何やってるんですか。早く勇者さんのところに行ってあげてください! たった一人で頑張ってるんですよ!」

モヒカン「おまえってやつはよぉ……」

主「キィ」

モヒカン「お前のこの鳥に対する謎の信頼は置いといて……まあお前らよりはよっぽどマシに働いてくれそうだな」


老人「くかー、くこー、すぴー」

ピエロ「……」

メロンパン職人「えへへ」

モヒカン「笑ってんじゃねえよ」

……

……

勇者「うおお!」ズバッ

下級悪魔「ゲギャッ!?」


勇者「はっ!」ドシュッ

下級悪魔「ギギィ…!」


勇者「……ふぅ。次から次へと湧いてくるな。思ってたより居るもんだ」


ギギャギャギャギャ!

勇者「けど、何だかな」

ズバッ!

下級悪魔「ギィ!?」

ドサッ

勇者「俺、すごく調子がいいみたいだ」

勇者「王都にいたのと同じような魔物なら、あれだな」

勇者「今の俺ならこのくらい、いくら居たって何てことは無さそうだ……!」


ズバッ!

少し離れた所


中級悪魔「はぁ……ついてない」

中級悪魔「詳しい事情は知らないが魔王様のため、と王都襲撃に参戦したはいいが」

中級悪魔「まさかあの数の手勢がほぼ壊滅とは……」

中級悪魔「死霊騎士様も妖術師様も居なくなってしまった」

中級悪魔「……城に帰るにしても、中級悪魔として、生き残った下級悪魔どもを捨て行く訳にはいかない」

中級悪魔「何とか皆を引き連れて帰城したいところだが、魔力が足りぬ」

中級悪魔「この辺りを通り行く人間どもから細々と魔力を補給し続けるにも限界を感じ続けていた所だが」

中級悪魔「……あの旅団、百は行かずとも数十は居るか」

中級悪魔「それだけのエサがあれば、しばらく足りるか」

中級悪魔「当然護衛も付いているだろうが、知性の低い下級悪魔だけならばともかく、この私がいるならば策を練れる」

中級悪魔「知さえあればこの程度、どうということは無いはずだ」

中級悪魔「……やるぞ。奴らを狩り尽くして、魔力を充実させ、私も城へ帰るのだ」

中級悪魔「私はまだ、このような所で死ぬ訳にはいかんのだ……!」


ギィギィ、ギャイギャイギャイギャイギャイギャイ!!


中級悪魔「うるさいぞ貴様ら!!! 襲撃前に人間どもに気付かれたらどうするのだ!!!」

下級悪魔「ギィ」

中級悪魔「……ん、何?」

下級悪魔「ギギィギィギィ」

中級悪魔「『人間にはもう気付かれた。いま戦闘中』……?」

下級悪魔「ギィ」

中級悪魔「……」

下級悪魔「……」


中級悪魔「何をやっているのだ馬鹿者どもめ!!」

下級悪魔「ギィ……」

モヒカン「うおおおおおお!!」ビュッ!

ズガァン!

下級悪魔「ガギュッ……!」ドサッ


モヒカン「はぁ、はぁ、こいつら……!」


下級悪魔達「ゲギャギャギャギャ!」

モヒカン「クソッ、俺だってこの量はキツイってのに」

モヒカン「こんなに居たんじゃ勇者の野郎は、もう……」


下級悪魔「ギギャギャッ!」

モヒカン「ッ!?」

ズガン!!

下級悪魔「……ギヒィ」ドサッ

モヒカン「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!!」

モヒカン「クソ、倒したはいいが足をやられた……!」

モヒカン「こんなことなら剣士達を叩き起こしてでも連れて来るべきだったか」

モヒカン「俺としたことが……!」


下級悪魔達「ゲギャギャギャギャ!!」

モヒカンの所からちょっと東の場所


ズバッ、ドシュッ、ズガッ!

勇者「ふぅ。少しは減ってきたか?」

聖剣「……」

勇者「……ん?」


聖剣「……」

勇者「この感じは……」


聖剣「>>180

いきなり再開してこの時間はさすがに安価は無理だったかもしれない
ごめんなさい

ロリサキュバスっていいよね

聖剣「ロリサキュバスっていいよね」

勇者「久々に喋ったと思ったらそれかよ!」

勇者「その唐突なカミングアウトは何なんだいったい」

勇者「と言うかお前、仮にも伝説の聖なる剣がサキュバス趣味ってどうなの。どう考えても相容れないと思うんだけど」


聖剣「……」


勇者「こいつ……!」

勇者(この聖剣、そう言えば前にも全然関係ない時に「ロリババアっていいよね」とか言ってたな)

勇者(こいつのロリ趣味はひとまず置いとくとして)

勇者(あの時は流れが流れだったから普通に無視しちゃったけど特に問題はなかったよな……?)

勇者(つまりこの聖剣の安価は、その場の気分だけで呟く時もあるってことか?)

勇者(思えば今までもそんな感じの安価って何回かあったような気もするし……)


勇者「こいつら、どう見てもロリサキュバスって感じしないもんな」

下級悪魔「ギギィ!」バッ!

勇者「考えてもわからんし、とりあえず、保留!」ズバッ!

……

……

───ぐああああああああああ!!

勇者「!」



勇者「なんだ今の野太い悲鳴は」

勇者「……行ってみるか」

タタタッ

勇者「悲鳴はこっちの方から聞こえてきたと思うんだけど……」キョロキョロ

勇者「ん?」


ギィギィギィギィ、ギャギギィギ!


勇者「なんか、あの辺りだけヤケに悪魔が集ってるような」

勇者「まるでエサを見つけて群がる蟻というか、鳥というか……」


──ぐあああああぁぁぁ……

勇者「ッ!?」

勇者「お前ら、そこをどけ!!」

ドシュッ、ザシュッ、ズバッ!!

下級悪魔「ギギィ!?」

勇者「ッ!」


モヒカン「…………」ピクピクッ


勇者「モ、モヒカン!?」

そろそろお仕事行かなきゃなのでこの辺で
長い間すみませんでした

今日お仕事休みになったから日中爆睡してた
眠れんので続ける

中級悪魔「──まあ、見つかってしまったものは仕方ない」

中級悪魔「あの人間ども全員に我らのことが伝わりきっている訳ではなさそうだし」

中級悪魔「……本当はもっと知的に事を済ませたかったのだが」

中級悪魔「油断している今の内に、奴らの元へ攻め入ることにしよう」

てす

中級悪魔「ということで、今から襲撃するわけだが」


ギィギィ、ギィギィ!


中級悪魔「……? これで全員か?」

中級悪魔「何だか悪魔の集まりが悪いような」

中級悪魔「半分くらい減っていないか……?」


下級悪魔「ギィギィギィ」

中級悪魔「先程戦闘中と言っていた奴ら、たかが数人の人間相手にまだ遊んでいるというのか」

中級悪魔「大方食事中なのだろうが、こちらの方が獲物の数は多いというのに……これだから知性の低い下級は」

中級悪魔「悪魔達よ、行くぞ!!」

下級悪魔達「「ギギャギャギャギャ!!!」」

バサバサバサバサッ!



「キィーーーー!!」

カッ!!


下級悪魔達「ギギャアアアアア!!?」ボウッ!!!



中級悪魔「!?」

中級悪魔「まあ良い。この数でも奇襲が決まれば人間どもにはひとたまりもないだろう」


中級悪魔「悪魔達よ、行くぞ!!」

下級悪魔達「「ギギャギャギャギャ!!!」」

バサバサバサバサッ!



「キィーーーー!!」

カッ!!


下級悪魔達「ギギャアアアアア!!?」ボウッ!!!



中級悪魔「!?」

中級悪魔「な、何だあの炎は!?」

中級悪魔「下級悪魔達が次々と燃やされていく……!」

野営地

御者A「うーーん……? なんだか騒がしいな」

御者B「むにゃむにゃ……何かあったのか?」

御者A「いや、なんか、外うるさくないか。妙に明るい気もするし」

御者B「……知らん。何かあるなら護衛が何とかしてくれるだろ。気になるならお前が行ってきてくれよ俺は眠い……zzz」

御者A「はぁ……仕方ないな」モゾモゾ

御者A「そういえば護衛の中にピエロがいたなぁ」

御者A「まさかこんな時間にサーカスでもやってるんじゃないだろうな……」

御者A「……まさかね」

御者A「よっこらしょ」ガラガラ



主「キィーー!」バサッ!

下級悪魔「ギャァァア!?」

ボウッ!!



御者A「……!?」

てす

平日夜がキビシイ
また寝落ちてた

てす

モヒカン「ぐ……あ、ぁ……」

勇者「おい、モヒカン! しっかりしろ!」


ドロッ…


勇者「血が……!」

勇者「くそっ、止まれよ!」

ギュッギュッ


勇者「ダメだ、こんなの素人の俺じゃどうにもできないぞ……!」

勇者「せめて医者とか、僧侶とかが居てくれれば……!」


勇者「僧侶……」


勇者「……あっ」

回想

剣士『力を貸してもらえるとありがたい。どうかな、僧侶さん』

僧侶『は、はいっ。私、お役に立てるようにがんばりますね』

剣士『ありがとう。それじゃあ、これからよろしくね』

僧侶『こちらこそ、よろしくお願いしますっ』



勇者「……いるじゃん僧侶。剣士のパーティに」

勇者「よいしょ」グイッ

モヒカン「……」

勇者「重っ……。このトゲトゲボールは持ってけないな」ガシャン


勇者「ちょっと乱暴になるかもしれないけど、我慢してくれよ。キャンプに着くまでの辛抱だ」

モヒカン「……」

勇者「お前らの相手は後な」

下級悪魔達「ゲギャギャギャギャ!」


下級悪魔「ギギィッ!!」バッ

勇者「……まあ、言葉が通じないのはわかってるけどさ」


ズバッ!!


勇者「どうしてもって奴だけかかってこいよ。邪魔する奴から斬ってやる」ジャキッ

キィーーーー!!


ボウッ!!


ギャアアアアアア!!?



中級悪魔「何だ、何なのだあの炎は! あの鳥は!」

中級悪魔「この位置からでも感じられるほど聖の力を秘めた炎……! まさか、神獣の類か……?」

中級悪魔「なぜあんなものがこのような所に!」

中級悪魔「上級でもないそこらの悪魔が相手になるような代物ではないぞ!」


??「……本当に、忌々しい鳥よな」


中級悪魔「ッ!? 何者だッ!!」

ズタ袋「……」

中級悪魔「……」

ズタ袋「……」

中級悪魔「……いや、本当に何者だ貴様。いつからそこに転がっていた」


ズタ袋「……」

中級悪魔「……」

ズタ袋(あの鳥め……夜中に突然起き上がってわたしを掴んだまま飛び立ったと思ったら)

ズタ袋(まるで思い出したかのように空から放り投げたな)

ズタ袋(痛くはない……別に痛くはないが、この扱い)

ズタ袋(このわたしを何だと思っているのだ)


ズタ袋「力が戻ったらどうしてくれようか……今度はあの程度の封印で済むと思うなよ」

中級悪魔「何だこいつは」

投稿お疲れ様です!
なによりありがとうございます

というか魔王軍?のみなさんって一枚岩じゃないのな
ずだ袋と中級悪魔って元々は同じ勢力だったろうに

中級悪魔「この感じ……貴様、人間ではないな?」

ズタ袋「……」

中級悪魔「同胞か? その姿を見るに、人間に捕らえられでもしたのか」

ズタ袋「……」

中級悪魔「……おい、何か言ったらどうなのだ。場合によっては助けてやらんことも────」


ズタ袋「……ふん。」 モゾ…

ズタ袋「……見たところ中級悪魔と言った所か」

ズタ袋「わたしは見下されるのが嫌いだ。特に、お前のような末端の魔族に偉そうな口を利かれる謂れはない」

ズタ袋「失せよ。興味もない」


中級悪魔「き、貴様……!!」



────ギギャアッ!?

中級悪魔「ッ!?」ビクッ

中級悪魔「う、後ろから……!?」


ズバッ、ザシュッ

  ギギィッ…


中級悪魔「……これは」


ドシュッ、ズガッ

  ゲギャッ!?


中級悪魔「下級悪魔達の声……!」


ギィン、ズバッ

  ギャアア!?


ザッ、ザッ

中級悪魔「こちらに、近づいてくる……!?」




勇者「む。」

中級悪魔「……ッ!」バッ

>>228
古の勇者に退治されたという共通点はありますが魔女さんは別に魔王の配下ではありません
封印解いてもらったから2スレ目>>346のような取り引きに応じてちょっと協力したりもしましたが
魔王とか関係なく好き勝手やってたから退治された人です
基本的に魔王軍に対しては3スレ目>>888のようなスタンス

中級悪魔(人間……剣士?)

中級悪魔(まだ後ろに控えていた大量の悪魔達はどうした?)

中級悪魔(奴らが獲物を見つけて自らを抑えられるはずもない。目に付き次第襲い掛かっていた筈だ)

中級悪魔(それに、あの返り血……)

中級悪魔(この男がここまで辿り着いているということはつまり……ッ!)


勇者「お前、ここに来るまでに会った悪魔達とはちょっと雰囲気違うな」

中級悪魔「!!」

勇者「話通じる? 俺、急いでるからそこ退いてほしいんだけど」

中級悪魔「……」


勇者「後でちゃんと相手してやるからさ」

中級悪魔「……ッ」ゴクリ


勇者「……ダメか。それじゃあ斬ってくかんな」ジャキッ

中級悪魔「!!」

中級悪魔(あの剣は……!!)


中級悪魔「ま、待てッ!」

勇者「!」

中級悪魔「あの馬車団からは手を引く……道は通すし、お前にも手出しはしない……」

勇者「……」

中級悪魔「頼む……見逃してくれ……!」

勇者「……」

勇者「逃げるんなら早く行けよ」

中級悪魔「…………!!」

バッサバッサバッサ…



勇者「えぇと、馬車の位置は……」

勇者「……うわっ、めちゃくちゃ燃えてるっ?」

勇者「この感じ、主の炎かな。なんか神々しいし」

勇者「さすがだ。悪魔なんか蹴散らされるわけだ」

勇者「俺も早くモヒカンを運ばなきゃ」


ズタ袋「……おい」

勇者「ん?」

ズタ袋「……」

勇者「なにやってんのお前。こんなところで」

ズタ袋「……お前の鳥のせいだ」

勇者「主の……?」

ズタ袋「お前の鳥が……! ……くっ……!」

ズタ袋「いいから早く運べ。このような所にわたしを置いていくつもりか?」

勇者「うーん。よくわかんないけど……」



勇者「お前はあと! 俺、急いでるから!」タタタッ…

ズタ袋「あっ!」

年内に終わんなくてごめん

そろそろ頑張りたいと思う
帰省中だから携帯回線しかないけど

てす

……

………


モヒカン「うーん……」

僧侶「あっ、モヒカンさん。気がつきましたか」

モヒカン「僧侶? ……ここは」

僧侶「救護用に空けてもらったテントです。と言っても、怪我人はモヒカンさんしか居ませんが」

モヒカン「怪我人」

モヒカン「……そうだ、思い出したぞっ。あれからどうなった、今は何時だ、魔物はどうした、他の奴らは! ……ぐっ」

僧侶「お、落ち着いてください。まだ全部の傷は塞がってないんですから」

モヒカン「……ミイラか、俺は」

僧侶「全身くまなく噛み傷だらけでしたからね」

僧侶「ええっと、今はお昼で、モヒカンさんは昨夜の遅くに勇者さんに運ばれてきたんです」

モヒカン「勇者にぃ?」

僧侶「はい。それと、さっきも言ったように怪我人はモヒカンさんひとりです」

モヒカン「……魔物は? 大量の悪魔の群れがいたはずだが」

僧侶「あの、私も直接見たわけではないんですけど」


僧侶「神鳥? が現れて、その炎? ですべて退治されたとかなんとか」

モヒカン「なんだそれは」

僧侶「見てみますか? ちょうど今お祈りを捧げられているはずです」

モヒカン「???」




ズタ袋「……」ムスッ

勇者「や、悪かったって」

ズタ袋「……」

勇者「モヒカンが思ったよりやばくってさ。俺もちょっと慌てててさ」

ズタ袋「……」

勇者「急いで僧侶の方に向かってたら、ほら、主がすごい炎で悪魔達追っ払っててさ」

ズタ袋「……」

勇者「信徒としては感謝の祈りを捧げなければならないのだ」

ズタ袋「……それで?」

勇者「それで、偶然その場面を目撃してた御者さんとか乗客さんが居たわけだ」

ズタ袋「……」

勇者「信徒としては、ほら、主の素晴らしさを伝える布教活動を」



ズタ袋「お前がわたしの所に来たのは日が真上に来る頃だったわけだが」

勇者「ごめんて」

主「キィキィ」ムシャムシャ

御者「ははぁーー。主よ、こちらの果物もお食べください」

乗客「魔物どもを追い払い、わしらを救ってくれた神鳥だ。こちらもお食べください」

主「キィ」ムシャムシャ


モヒカン「なんだこれは」

メロンパン職人「あっ、モヒカンさん! 気が付いたんですね」

モヒカン「……ああ」

メロンパン職人「いやぁ、血塗れのモヒカンさんを勇者さんが抱えて来た時はどうなることかと」

モヒカン「メロンパン職人」

メロンパン職人「はい」

モヒカン「なんだこれは」

メロンパン職人「ああ、昨夜、主が悪魔達を派手に追っ払っちゃいまして」

メロンパン職人「それをたまたま目撃した人たちがいて」

メロンパン職人「そこにたまたま出くわした勇者さんが布教活動をしたらこうなりました」

モヒカン「……」


モヒカン「なんだそれは」

メロンパン職人「気持ちはわからなくもないです」

メロンパン職人「いやー、でもたしかに凄かったんですよ、主の炎は。特に、全身が炎に包まれてこう、グワーっと……」


勇者「あっ! モヒカン!」テクテク

ズタ袋「……」ズルズル


メロンパン職人「あ、勇者さん」

モヒカン「……」

勇者「生きてて良かった! お前、あんなに血だらけだったのにもう歩けるのか」テクテク

ズタ袋「引きずるのはやめろ」ズルズル


モヒカン「……僧侶の奴の腕が良かったらしいからな」

勇者「僧侶、すごいよな。俺なんかじゃどうしようもなかったよ本当」


モヒカン「勇者、お前……」

勇者「うん?」

モヒカン「……お前は、あの時」


ワァァァァァァァァァ‼︎‼︎

勇者「!」

モヒカン「!」

ピエロ「♪~~」

乗客A「いいぞーー! ピエローー!」

乗客B「もっとやれーー!!」

乗客C「主を楽しませろー!」



勇者「ピエロすげえ。あんなデカイ玉に乗って逆立ちしながらステップ踏んでナイフでジャグリングしつつ主に祈りを捧げてる」

モヒカン「凄いのは同意するが祈りの部分はどうやってわかるんだ」

勇者「顔見ればわかるだろ?」

モヒカン「あの不気味なメイクから何も読み取れねえよ」

メロンパン職人「というかあんなアクロバティックなことしながらお祈りって最早失礼なのでは?」

主「キィキィ」

ムシャムシャパクパク


メロンパン職人「あ、そうだ。主」

主「キィ」

メロンパン職人「皆さんからの捧げ物もいいですけど、何か物足りないんじゃないですか?」

主「?」


メロンパン職人「ほーら、主の大好きなメロンパンですよー」ジャーン

主「……」

メロンパン職人「……」


主「……」

メロンパン職人「……主?」


主「……」

メロンパン職人「……」



主「……」プイッ

メロンパン職人「!?」


勇者「まずいわけじゃないけど、別にうまいわけでもないんだよな」

ズタ袋「鳥の分際で、舌が肥えたか」

モヒカン「何なんだ、あいつらは……」

モヒカン「……ん?」


老人「うぃー、ひっく」ゴクゴク

モヒカン「テメェ、くそじじい……!」

老人「お前さんは飲まんのか?」

モヒカン「あのなぁ……!」

老人「……わしのはやらんぞ」

モヒカン「いらねえよ!! そもそもこんな傷で酒が飲めるか!」

老人「……」


老人「それが戦を共にした仲間への態度か。わしは悲しい」

モヒカン「テメェはぐーすか寝てただけじゃねえか!!」

モヒカン「くそ、何なんだ本当に……」

モヒカン「俺は確かにあの時、悪魔どもの群れに囲まれて……」

モヒカン「そんで、勇者の野朗も同じように孤立して……」

モヒカン「けど、あいつはケロッとしてるし、俺を運んだだとか。それに怪我人は俺一人とか言うし、他は鳥がどうのとうるせえし」


勇者「よーし、ピエロ! こいつも使ってくれー!」

メロンパン職人「勇者さん、聖剣、危ない」

主「キィ」


モヒカン「……つーか、早く出発しろよ」

……

……


東の空


フードの男「……チッ、魔将軍め。おかげで出立が遅れたか」

フードの男「所詮、腕にしか能のない魔王の信奉者」

フードの男「賢しいフリをするのだけは立派で困る」

フードの男「何も考えず、黙ってこちらの言うことを聞いておけば良いものを」

バサバサッ

フードの男「……む?」



中級悪魔「はぁ、はぁ、ひぃ、はぁ……!」バッサバッサバッサ



フードの男「……」


フードの男「……ふむ」

ガタンゴトンガタンゴトン


勇者「ケツが痛い」

メロンパン職人「何日か経ちましたけど、結局あれから特に何もありませんでしたね」

勇者「んー。夜、剣士たちの番では何匹か獣とかの襲撃はあったみたいだけどな」

メロンパン職人「初日はあんなに色々あったのに。あの時は大変でしたね」

勇者「お前何か疲れるようなことしたっけ」


メロンパン職人「…………あっ勇者さん! 海見えてきましたよ! ほら、海!」

勇者「こいつめ」

御者「えー、乗客の皆さん、予定からは大分遅れましたが、もうすぐ目的地に到着です」


御者「手荷物等、忘れ物の無いように降車の準備をお願いします」

とりあえず今週はできるだけ毎日やるつもりでがんばろうと思う
このままじゃいつまで経っても終わらねえ…

ID変わってた

溜め込んでたんですね!待ってました!

今日19時または23時頃にまたくる

>>298
溜め込めてないです

てす

御者「よーし、護衛の皆、お疲れさん! 思ってたより大きなアクシデントもあったけど、無事に到着できた。アンタらが居てくれて助かった」

御者「報酬があるから順番にこっちに来てくれ」



剣士「勇者君、お疲れ様。そっちは随分大変だったみたいだね」

勇者「剣士か」

剣士「僕らの番ではあまり大したことが起こらなくて、ちょっと君たちには申し訳無かったかな」

勇者「そんなことはないだろ」

剣士「そうかな?」


勇者「お前達が居たから俺達も順番に寝れた訳だし。そういうこというのはちょっと違うと思うぞ」

剣士「そう言ってくれるかい」

剣士「ああ、それと。僕らは今回組んだメンバーでしばらくパーティを組んでみようと思うんだ。みんないい人達で、パーティバランスも悪くないし、思いの外意気投合できてね」

勇者「ふーん」

剣士「君たちはどうなのかな」

勇者「俺は……」


御者「おい、爺さん! よく名簿見てみりゃアンタ、護衛でも何でもないじゃないか! どおりで人数が合わない訳だよ!」

モヒカン「このジジイ、怪しい怪しいとは思ってたがまさかこんな……!」

老人「細かいことをうるさいのう」

ピエロ「……」



勇者「……特にそういう話はしてないな」

剣士「そうかい」


勇者「爺さんは酒ばっか飲んでるし、ピエロは何も言ってくれないし、モヒカンにはあれから何故か避けられ続けてるし……」

剣士「そ、そうかい」



老人「わしの分は?」

御者「出さねえよ」

剣士「ま、まあ、君たちがどんな目的でここに来たのかはわからないけど。南の都市は観光名所でも有名だし、ゆっくり休むといいよ」

剣士「海に隣接してて、街中を歩いてるだけでも他所とは随分違う気分を味わえるはずだ」

勇者「そうなのか」


メロンパン職人「勇者さん、報酬受け取ってきましたよ」チャリンチャリン

主「キィキィ」バサバサッ

ズタ袋「……」プラーン


勇者「まあ、あんまりゆっくり観光してる暇は無いかもだけど、覚えておくよ。それじゃあな」

剣士「ああ、元気で」

南の都市


メロンパン職人「うわ、すごい。本当に海がすぐそこにあるんですね。街の感じも、王都とはまた違った綺麗さがあるというか」

勇者「なんかポッカリ小島みたいなのが浮いてるな」


勇者「王様も魔物とかが荒れてるのは東の方ばっかで、こっちは全然平和だって言ってたな。ここではあんまり物騒な話も無さそうだ」

勇者「道中はともかく」

メロンパン職人「あれは王都の一件の残党らしいって話みたいですけどね」

メロンパン職人「とりあえず、どうします? もう日が暮れそうなんですけど」

勇者「馬車がついた頃にはもう結構いい時間だったもんな」


勇者(今からでも霊能者ってのを探しに行くか、今日はもう休んでおくか?)

勇者(休むって言ってもまだ微妙に早いっちゃ早い気もするが)

勇者(まさか観光って訳にも……いやでも探索くらいなら……)


聖剣「>>312

おっぱいはやく

聖剣「おっぱいはやく」

勇者「……!!」

勇者(そうだ、随分前のことだからうっかりしてたけど)

勇者(俺、早く聖女のおっぱいを揉まなきゃいけないじゃん)

勇者(……いやでも今はその聖女を探すためにこうしてわざわざ南の都市なんかに来たりしてる訳で)

勇者(……いやいや、そもそもこの安価は前回の安価を急かすための安価なのか?)

勇者(この安価自体は独立していて、聖女とは別のおっぱいを求めての安価か?)

勇者(しかし「はやく」というだけで特に何か指定がある訳でも……)

勇者(いや、そういえばここのところ男所帯のむさ苦しい馬車でおっぱいとは程遠い無縁の状態だった訳で)

勇者(乗客はよく知らないけど、女なんて剣士のパーティにいた僧侶くらいしかいなかったしな。うん、ひとりも)

勇者(おっぱい……聖剣は、俺に女の子に会えと言っている……?)

勇者(とは言え最初の聖女の安価を急かしているという可能性も捨てがたくは……)


勇者「……」ブツブツ


メロンパン職人「また何かひとりでブツブツ言ってますね。ちょっとこういうの久しぶりな気がしますけど」

主「キィ」

ズタ袋「……」

勇者(……おっぱい……はやく……)ブツブツ

メロンパン職人「……」

勇者(はやく……聖女……いやでも聖女は……)

メロンパン職人「……勇者さん?」

勇者(南の都市……おっぱい……海……)

メロンパン職人「勇者さんってば」

勇者(……ん?……海?……おっぱい……)

メロンパン職人「あの、俺も長旅でそこそこ疲れてるんではやくどうするか」



勇者「そうか!! 海だ!!」

メロンパン職人「うわびっくりした」

勇者「海だよメロンパン職人! おっぱいが俺たちを待っている!」

メロンパン職人「アンタちょっと自分が何言ってるかわかってます?」

メロンパン職人「えっ……。えっ? 何がどうなってそんな結論が出たんです?」

メロンパン職人「俺はてっきりこの後宿でも取りに行くか霊能者さんを探しに行くかで迷ってたもんだと思ってたんですが、おっぱい?」

メロンパン職人「暑さで頭でもやられましたか? 日は落ちかけてますけど?」


勇者「何を意味のわからないことを言っているんだ。ふざけている暇があったらはやく海に行くぞ」

メロンパン職人「今この空間で最もふざけているのは間違いなくアンタの頭だと思うんですけどね!」

主「キィ」

砂浜

ザザァーー……

クゥクゥー


勇者「……」

メロンパン職人「……」

ザザァーー……

クゥクゥー


勇者「……メロンパン職人」

メロンパン職人「何ですか」


勇者「夕日、綺麗だな」

メロンパン職人「……そうですね」

勇者「……」

メロンパン職人「……」


勇者「……なぁ」

メロンパン職人「はい」



勇者「どうして俺はお前なんかと二人きりで浜辺で夕日を眺めていなくちゃいけないんだ?」

メロンパン職人「俺が知るわけないでしょう」

勇者「いやいや、こんな綺麗な浜辺なんだぜ。いくら時間ちょっと遅いからって誰もいないって絶対おかしいだろ」

メロンパン職人「だから俺が知るわけないじゃないですか。俺だってこの都市に来たの初めてなんですから」


勇者「くそっ、アテが外れた。ここに来ればイチはやくおっぱいに会えると思ってたんだが」

メロンパン職人「勇者さん、絶対当初の目的忘れてるでしょう」

勇者「聖女のおっぱいだろ?」

メロンパン職人「アンタそんな目的してたんですか!?」

メロンパン職人「勇者さん……アンタって人は……! 俺達の目的は拐われた聖女様の救出で、そのために聖女様の居場所を探れる霊能者さんを探しにこんなところまでやってきたんでしょうが!」

勇者「そりゃそうだけど。ほら、お前が当初の目的って言うから俺はだな」

メロンパン職人「当初の目的でもおかしい!! いくら勇者さんでも聖女様をそんな目で見ることは許しませんよ!」

勇者「待て待て落ち着け。俺は安価のためにだな。あとここに来た当初じゃない目的もおっぱ……」

メロンパン職人「だーから安価って何なんですか!! それが勇者さんがおっぱいおっぱい言っても許されるって言うんですか!!」

勇者「だから落ち着けって! えー、それはだな……」



??「……ちょっと、そこの二人」

勇者「ん?」

メロンパン職人「はい?」

袴の女「喧嘩をするのは結構だけれど。この場所で、あまり不浄な気を撒き散らさないでほしいの」

袴の女「ここをどこだと思っているの?」


勇者「どこって……」

メロンパン職人「砂浜?」

袴の女「……はぁ」

袴の女「そこを見てほしい」

勇者「ん? ……何だこれ。祠?」

勇者(俺の村にあった、聖剣あった場所に似てる……? いや、ちょっと雰囲気が違うな)


袴の女「そっちもそうだけど。そっち」

メロンパン職人「えーと…………関係者以外立入禁止」

勇者「……あー……」


袴の女「そういうことなの」

……

……


勇者「……ごめんなさい」

メロンパン職人「すみませんでした!!」

袴の女「わかってくれればいいの。次からは気をつけてほしい」

勇者「はい」

袴の女「あなたたち、観光客? あまり見ない顔だし、ここのこともよくわかってなかったみたいだし」

勇者「うーん……俺たち、別にここに観光をしに来た訳じゃないんだ。ちょっと大事な目的があってさ」

袴の女「大事な目的?」

勇者「そう」


袴の女「……おっぱい?」

勇者「そう」



袴の女「……」

勇者「……あっ、違う、そうじゃない違うんだ」

袴の女「でもさっきはあんなに叫んで……」

勇者「違う、誤解なんだ、いや若干違わなくもないけどちょっと違うんだってば」

袴の女「変な人」

袴の女「とにかく、観光が目的なら違う海岸に行くべき。ここと違って、ちゃんと一般向けに開放されている場所もあるんだから」

勇者「そうだったのか。……どおりで人っ子一人居ないわけだ。いや、アンタがいたか」


勇者「そう言えば、アンタ誰なんだ? なんか見慣れない変な服着てるし、普通にあの場所にも入ってただろ?」

袴の女「変な服…………私はここで巫女をしている者。ここは少し特別な場所だから、入っていい人も限られてるの」

勇者「特別な場所……?」

巫女「そう」

巫女「気になる?」

勇者「うん? まあ多少は……」

巫女「じゃあ。はい、これ」スッ

勇者「へ? なんだこれ……」


巫女「南の都市の観光ガイド」

勇者「観光ガイド?」



巫女「この場所についての説明はそのページに詳しいことが書いてあるの。あと、ここも全部が立入り禁止な訳じゃなくて一般開放されてる場所もあって、そこにはお土産やご当地グッズのコーナーなんかもあるから暇があれば是非立ち寄って何か買って行ってね」

勇者「お、おう」

勇者(何だこいつ、妙に独特なペースで喋るな……)

勇者(……なんか、どこかで会ったことがあるような)


巫女「……」ジーーーーッ

勇者「……」


巫女「……」

勇者「……」


勇者「あーっと……じゃあ、俺はこの辺で」

巫女「……あなた、とっても不思議な人ね」

勇者「えっ」

巫女「私はお爺ちゃんほどそっちの方はよくわからないのだけれど。少しはわかる方なの」

巫女「普通の人は、もうちょっとこう、一本道? 時々逸れることはあってもだいたい一本だけなの」

勇者「??」

巫女「けれど、あなたは少し普通じゃないかも。あなたの先が全然見えないの」

勇者「……」

巫女「それじゃあ、またね」

テクテク


勇者「……」

勇者「……」

勇者「……あっ。あの時の壺売り女か」

勇者「壺売りじゃなくて、実はおみや売り女だったってことだな」



メロンパン職人「俺ら、完全に蚊帳の外でしたね」

主「キィキィ」

https://i.imgur.com/VIfVb8o.jpg

宿

勇者「くそ、結局別の海岸に行ったけど誰もいなかったじゃないか」

メロンパン職人「もう日も暮れてたし仕方がないですよ」

メロンパン職人「とりあえず今日のところはもう休んで、探索は明日からにしておきましょう」

勇者「……ああ」

メロンパン職人「早く聖女様の居場所を見つけなくちゃいけないんですから、まずは霊能者さんを探しますよ」

勇者「……ああ」

メロンパン職人「……聞いてます?」

勇者「……ああ」


勇者「ところでメロンパン職人、この宿の風呂のことなんだけど女湯って」

メロンパン職人「もうやだこの人」

勇者「……ん? メロンパン職人、何を読んでるんだ?」

メロンパン職人「ああこれ。さっき巫女さんに貰ったガイドブックですよ」

勇者「ガイドブック? あの観光ガイド?」

メロンパン職人「はい」

勇者「……メロンパン職人、俺たちに観光をしてる暇なんてないんだぞ?」

メロンパン職人「アンタに言われたくはないですよ」

メロンパン職人「ほら、明日都市を見て回るんですから。土地勘もない所だし、少しでも知っておくのは悪いことじゃないでしょう」

勇者「なるほどな」

メロンパン職人「今日みたいに、立入禁止の区域に入り込んじゃうこともあるわけだし」

勇者「……そうだ、ちょっとそれ、貸してみてくれ」

メロンパン職人「どうぞ」スッ

勇者「ええと……最初のページは、この島の見取り図か」

メロンパン職人「なんか全体的に王都とは雰囲気違いますね。俺たちがあんまり海とか見慣れてないからかもしれないけど」

勇者「……あったあった、ここ、今日行った砂浜だよな」

メロンパン職人「確かに。このポッカリした浮島が近くにあるところですね」

メロンパン職人「なになに……『ぞうさんの祠』?」

勇者「……ぞうさん?」

メロンパン職人「……うーん。読み進めてみると、どうもこの辺りの地域の守り神? みたいなものらしいですね」

勇者「ぞうさんが? パオーンって?」

メロンパン職人「ちょっと想像つきませんけど、そういうことみたいですね」

勇者「ふーん。まあ、だからあいつも不浄な気をうんぬんって言ってたのかもな」

メロンパン職人「勇者さんってば神様のお膝元でおっぱいおっぱい連呼してたわけですか」

勇者「お前も言ってたじゃねえか」

ズタ袋「……ぞうさん……ぞう……ふむ……」モゾモゾ


勇者「うん? 何か言ったか?」

ズタ袋「……」

勇者「……」

ズタ袋「……」

勇者「……」


ズタ袋「……ふん。勇者よ、わたしが何を言ったか、そんなに気になるか?」

勇者「いや別に」

ズタ袋「……」

勇者「……」


勇者「よーし、明日に備えてそろそろ寝るかぁ」

ズタ袋「この男……いや、もとから答えるつもりなど無かったが、この男……!」

ちょっと前、東の空


中級悪魔「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ……!」バッサバッサ

中級悪魔「よ、ようやく帰れる……!」

中級悪魔「勇者め……くそっ、聖剣の勇者め、くそっ!」

中級悪魔「おかげで私の配下は全滅だ……!」

中級悪魔「せっかく中級になって魔将軍様に部隊をいただいたというのに……!」バッサバッサ


フードの男「そこの悪魔、少し待て」

中級悪魔「ひっ!?」

フードの男「息も絶え絶えに、そんなに慌ててどこへ行く?」

中級悪魔「お、お前はっ。……少し前に魔将軍様に取り入ってきた新参者か」

フードの男「お前は南の空から飛んで来たようだな。何があった?」

中級悪魔「ふん、何を偉そうに。私の方がお前よりも前から居たんだ。少しはそれらしい態度を取ったらどうなのだ」

フードの男「何があった?」

中級悪魔「魔将軍様はお前にある程度自由に動くことを許されているらしいがなっ。あまり調子に乗るんじゃないぞ」

フードの男「……何があった?」

中級悪魔「私の方がお前よりも長い間配下を務めているのだ。忠誠なんかもよっぽど……」

フードの男「……」


ドスッ

……


中級悪魔「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ……!!」

フードの男「ふむ。聖剣の勇者が、南の方に」

フードの男「奇しくも、私の行き先と同じ場所へ向かっているようだが」

フードの男「……まあ、勘付かれた訳でもあるまい」

中級悪魔「はぁ、はぁ、ひぃ、はぁ……!」

フードの男「……あぁ、そこの悪魔。少しうるさいな。もう行っていいぞ」

中級悪魔「!」

バサバサッ


中級悪魔「はぁ、はぁ、これで……!」バサバサッ

中級悪魔「……あれ?」バサバサ

中級悪魔「何故だ、何故か、上手く、飛べな……」バサバサ…


フードの男「……」


ザンッ

やべ、一個抜けてた

中級悪魔「ぐっ……がっ……」ミシミシ…!

フードの男「話のできない奴は嫌いだ」

中級悪魔「き、貴様っ……やはり……!!」

フードの男「これが最後の問いになるかどうかはお前次第だ」

中級悪魔「……!!」


フードの男「何があった?」

……


中級悪魔「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ……!!」

フードの男「ふむ。聖剣の勇者が、南の方に」

フードの男「奇しくも、私の行き先と同じ場所へ向かっているようだが」

フードの男「……まあ、勘付かれた訳でもあるまい」

中級悪魔「はぁ、はぁ、ひぃ、はぁ……!」

フードの男「……あぁ、そこの悪魔。少しうるさいな。もう行っていいぞ」

中級悪魔「!」

バサバサッ


中級悪魔「はぁ、はぁ、これで……!」バサバサッ

中級悪魔「……あれ?」バサバサ

中級悪魔「何故だ、何故か、上手く、飛べな……」バサバサ…


フードの男「……」


ザンッ

南の都市

メロンパン職人「うーん、宿を出てちょっと街を散策してみましたけど、なかなか見つかりませんね」

勇者「観光案内所に行っても教えてもらえなかったな」

メロンパン職人「まあ、霊能者さんのおうちが観光場所になってる訳でもないんでしょう」

勇者「……」


勇者「なあメロンパン職人、やっぱりビーチに行かないか?」

メロンパン職人「行かないですってば! アンタどんだけ飢えてるんですか」

メロンパン職人「そもそも勇者さんってそんな下心全開な人でしたっけ?」

勇者「失礼な。俺は別にエッチな目的でおっぱいを求めてる訳じゃない。そこ誤解すんなよ。大事なとこだから」

メロンパン職人「えぇ……」


勇者(とは言え、どうするかな)

勇者(俺としては昨日の安価をはやく達成したいもんだけどメロンパン職人の言うことも一理あるし)

勇者(けど、霊能者探しもちょっと行き詰まってもいるんだよな)

勇者(昨日の安価に従っておっぱいを探しつつ霊能者を探す?)

勇者(いや、それともおっぱいを探すことが霊能者を探すことに繋がってるのか? ははは、そんなばかな)


聖剣「>>358

谷間の向こうに道が見えるだろう

聖剣「谷間の向こうに道が見えるだろう」

勇者「!」

勇者「谷間の……向こうに……?」

勇者「どういう意味だよ」

聖剣「……」


勇者「……また自分で考えろってか。ちょっとポエミーなこと言いやがって」

勇者(なんかそれっぽいこと言ってたけどさ)

勇者(これって結局胸の話だよな)

勇者(なんだよ、もう。行くしかないじゃん?)

勇者(俺だって別に進んでそういうことしたい訳じゃないんだけどな、安価だからな)

勇者(……うん)

勇者「メロンパン職人、やっぱりビーチに行くぞ」

勇者「谷間の向こうにこそ道は見えるのだ」

メロンパン職人「はぁ?」


タタタッ


メロンパン職人「……行っちゃったし……。別にこの街、谷間とか無いんだけどなぁ」

メロンパン職人「仕方ない。こっちはこっちで別行動しますか」

メロンパン職人「勇者さんは何か様子がおかしいけど、うん。これは聖女様がかかった大事な任務なんだから」

メロンパン職人「俺がしっかりしないと」

主「キィ」

砂浜

ワイワイガヤガヤ ワイワイガヤガヤ
  キャーー、アハハハハ


勇者「お、おぉ……」

勇者「実際、安価に従ってこんなとこに来てみたけども」チラッ

勇者「俺、故郷の村では小さい頃に川遊びをしてたくらいで……その、うん」チラチラッ

勇者「こう、水着の女の子とかを間近で見るのはあんまり無かったわけで」

勇者「だからこれはちょっと見慣れないものにびっくりしてるだけだから緊張してるとかそういうあれじゃないことだけはわかって欲しい」

勇者「……誰に言い訳してるんだ、俺は」

勇者「……」

勇者「谷間なんて恥ずかしくて直視できんぞどうしよう」



ヒソヒソ、ヒソヒソ


勇者「……なんか怪しまれてるし」

岩陰

勇者「……参った」

勇者「とりあえず岩陰に避難してみたはいいものの、まさかこんな様になるとは」

勇者「メロンパン職人には勇んで出てきた手前、何の成果もなしには帰れないな」

勇者「あいつの視線もなんかちょっと痛かったし」

勇者「……しかし安価ではおっぱいと」

勇者「……」

勇者「この岩陰からなら、俺でも……」ジリジリ…

そーーっ



翁「……」

勇者「……」

勇者(なんだこの爺さん)

勇者(砂浜の方を眺めてる?)

勇者(俺の方には気付いてないみたいだけど)


翁「……」

勇者「……」


翁「……」

勇者「……」


翁「ぐひひひ……」

勇者「……うわぁ」

翁「っ!! 誰じゃ!!」

勇者「やべ、声出てたか……」


翁「ここはわしの秘密の場所。なんぴとたりとも立ち入ることは許さんぞ!」

勇者「秘密の場所?」

翁「ああ! 見ろ、ここの陰がちょうど向こうからは見えず、そしてこちらからは絶妙に水着のお姉ちゃん達のキャッキャウフフな姿が見やすい秘密の場所!」

勇者「そ、そうなのか。……ああでも、ここからだと遠くないか?」

翁「勿論準備はしておる! ほれ、ここに持ちたるは双眼鏡!」

勇者「そこまで準備してるのか」

翁「お菓子もあるぞ! 食うか?」

勇者「えっ、いいの?」

翁「ああ! 旨いぞ!」


バリバリムシャムシャ
ポリポリ

勇者「……」

翁「……」



翁「誰だお前は!?」

勇者「マイペースな爺さんだな」

……

翁「ふむふむ、なるほど。つまりお前さんは水着のお姉ちゃんのキャッキャウフフな姿を目当てでビーチに来てみたはいいものの、実際その姿を目の当たりにして恥ずかしくなって岩陰に逃げてきた純情な少年というわけじゃな」

勇者「そこまで細かに口に出して言われるとさすがに照れるんだが」

翁「ティーンにありがちなやつじゃな」

勇者「ほっとけ」

翁「そんなティーンなお前さんには尚のことこの場所はまだ早い」

翁「とっとと去るが良い」

勇者「いや、それは困る。俺には大事な使命があるんだ」

翁「使命?」


勇者「『谷間の向こうに道が見える』」

翁「!」


勇者「……俺、今ちょっと迷っててさ」

勇者「この『道』って言うのがどこにあるのか、探している途中なんだ」

勇者「これを見つけるまで、俺は、この谷間から逃げる訳にはいかないんだ」

翁「おぬし……」

勇者「頼む、爺さん。俺が道を見つけるまで、どうかこの場所を使わせてくれ!」

翁「……」

翁「……ふん。」

コロン

勇者「!」

勇者「これは……双眼鏡……!」

勇者「爺さん!!」

翁「……好きに使え。迷える若者を導くのもまた、年寄りの使命じゃろうて」

勇者「ありがとう!!」

その頃

メロンパン職人「はぁ、はぁ、はぁ……」テクテク

メロンパン職人「暑い……王都なんかよりずっと暑い……」

メロンパン職人「勇者さんはどっか行っちゃうし、氷の魔女は「暑いのは嫌いだ」とか言って宿に引きこもっちゃうし……」

メロンパン職人「太陽めっちゃ晴れてる……なんか近くないです……?」

メロンパン職人「けど、俺は聖女様を助けなきゃ……」

メロンパン職人「勇者さんがしっかりしてない今くらいは、俺が……」

メロンパン職人「はぁ、ひぃ……馬車旅の疲れが、あんまり抜けてないのかな……」

メロンパン職人「いやいや、そんなこと言ってる場合じゃ……」

メロンパン職人「ええと、あっちの方は見て回ったし、次は、こっちの区域に……」

フラフラ


巫女「あなた、大丈夫?」

メロンパン職人「……ほぁ」

メロンパン職人「えっと……昨日の、巫女さん?」

巫女「随分辛そうに見えるの。汗の量もすごいし、今にも倒れちゃいそう」

メロンパン職人「い、いえ……このくらい、なんてことありませんよ……俺には、やらなくちゃいけないことがあるんです……!」

巫女「……もうっ。だからってそんなんじゃ倒れちゃう」

巫女「あなたが倒れちゃったら、そのやらなくちゃいけないことはどうするの?」

メロンパン職人「それは……でも、早く……俺がしっかりしなきゃ……!」

巫女「……ふぅ。じゃあ、そこの木陰に行こうよ。あなたは少し休んだ方がいいと思うの」

木陰

巫女「はい。お水」

メロンパン職人「……すみません」

巫女「あなた、厚着のしすぎ。ここらへんを回るなら、少しは気をつけないと」

メロンパン職人「……はい」

巫女「あと、純粋に体力がないのかな」

メロンパン職人「…………はい」

メロンパン職人「……なんか、本当、いろいろすみません。巫女さんもどこかに向かってるところだったんですよね」

巫女「あ、そうだった」

メロンパン職人「そうだったて……」

巫女「私、人を探してるの」

メロンパン職人「人?」

巫女「うん。私のお爺ちゃん。見なかった?」

メロンパン職人「お爺ちゃんって言われても……たしかに俺、ここら辺をグルグル歩き回ってましたけど」

メロンパン職人「何かお爺ちゃんの特徴とかないんですか?」

巫女「特徴? うぅん……」


巫女「ちょっとエッチなお爺ちゃんなの」

メロンパン職人「エッチて……」

メロンパン職人「うーん、そんな人が居ても、パッとすれ違っただけじゃあなあ……」

巫女「そう……」

メロンパン職人「力になれなくてすみません」

巫女「うぅん……お爺ちゃんの方が私を探すなら、すぐに見つけられちゃうんだけどね。私はそういうのはあんまり得意じゃないの」

メロンパン職人「? それって、どういう……」



「あっ、おい! お前!」


メロンパン職人「!」

巫女「!」

メロンパン職人「あの大柄な図体は……」

巫女「モヒカン」

メロンパン職人「!」


モヒカン「探したぞ……こんなところに居たのか。祠の方にもいなかったし」

巫女「お爺ちゃんを探してたの」


メロンパン職人「……モヒカンさん?」

モヒカン「……げっ。お前は」

モヒカン「何でお前がそいつと一緒にいるんだ」

巫女「うぅん……なりゆき?」


メロンパン職人「……なんだろう、うまく言えないけど、この組み合わせがすごく変だってことだけはなんとなくわかる」

一旦切り上げます
また19時頃に来れたら来る

てす

モヒカン「……おい。お前がここにいるってことは、勇者の奴も近くにいるのか」

メロンパン職人「え、えーと。今は勇者さんとは別行動をしてるのでここにはいないです」

モヒカン「……」

メロンパン職人「……? 何か用があるんですか?」

モヒカン「……いや、いないならいい」

メロンパン職人「??」

巫女「モヒカン、帰ってきてたんだね。いつから?」

モヒカン「……昨日着いたばかりだ」

巫女「そう……あ、また怪我してるの? いっぱい包帯巻いてる」

モヒカン「大した傷なんかじゃねえ。治療した奴が大袈裟に巻きやがっただけだ」

巫女「そうなの?」

モヒカン「ああ」

巫女「本当に?」

モヒカン「大したことねえって言ってんだろうが」

巫女「でも、そこ、血が滲んでる」

モヒカン「うるせぇなぁ……ンなこたどうだっていいだろうがよ」

巫女「どうでもよくないよ?」

モヒカン「……」

巫女「また危ないことしてるの?」

モヒカン「……これは、仕事で…………」

チラッ



メロンパン職人「……」ポカーン


モヒカン「見てんじゃねえよ!!」

メロンパン職人「ひっ!? すみません!!」

巫女「もう。またそうやってすぐに人にむかって大声を出す」

モヒカン「ふん」

巫女「あんまり人を怖がらせるようなことはしちゃダメ」

モヒカン「……」イライラ

巫女「でないと、みんなに嫌われちゃうって言ってるでしょ」

モヒカン「……だから、そういうのがうるせぇって言ってん……!!」

巫女「……」ジーーッ

モヒカン「……だろ……」


巫女「……」

モヒカン「……」


巫女「……」

モヒカン「……あぁ、くそっ、こいつはもう……っ!!」


メロンパン職人(モヒカンさんのモヒカンが心なしかちょっとしなだれてる)

モヒカン「だから見てんじゃねえよ!!」

メロンパン職人「すみません!!」

巫女「モヒカン!」

メロンパン職人「え、ええと! 差し出がましいことかもしれませんが!」

メロンパン職人「モヒカンさんは、巫女さんに何かご用があって探して来たのではないでしょうか!」

巫女「あ、そういえばそうだったね」

モヒカン「チッ……くそ、大した用事じゃねえ。居るんなら後でいい」

巫女「そうなの?」

モヒカン「何でこんなとこフラフラしてんだか知らねえが、どうせ祠の方に戻るんだろ」

巫女「うん。……あっ、そういえば私、お爺ちゃん探してたんだった」 


巫女「お爺ちゃん見なかった?」

モヒカン「見てねえよ」

巫女「あなたはもう大丈夫?」

メロンパン職人「はい! もう大丈夫であります!」

巫女「そう。じゃあ、もう行くね」

メロンパン職人「お忙しい所ありがとうございました!」

巫女「暇があったらお土産買いに来てね」

メロンパン職人「……」


メロンパン職人「……あの、ちなみに、お二人はどういう……」


モヒカン「……」ギロッ!!

メロンパン職人「なんでもありません!!」

巫女「睨むのもダメ!」

寝落ちてた…
一応また昨日と同じ時間くらいに来ます

ちょっと遅れる

やらかした…

明日起きたら続き書きます
今日はもうきつい

てす

巫女「じゃあ二人とも、あんまり喧嘩しちゃダメだからね」

テクテク


モヒカン「……」

メロンパン職人「行っちゃいましたね」

モヒカン「ふん」

メロンパン職人「あ、あのっ、モヒカンさん」

モヒカン「あァ?」

メロンパン職人「ひっ!」

モヒカン「……チッ、いちいちビビってんじゃねえよ」

メロンパン職人「すみません……」

メロンパン職人「モヒカンさんって、もしかしてここの出身なんですか?」

モヒカン「……そうだ、何か文句でもあるのか?」

メロンパン職人「も、文句とかいう訳じゃなくて……ええと、実は俺、ここの都市には人探しに来てまして」

モヒカン「人探し?」

メロンパン職人「はい。それで、どうもなかなか上手く見つけることが出来ずにですね……」

モヒカン「で、ここ出身の俺に何か聞きたいってか」

メロンパン職人「はい。さっきの巫女さんとのやりとりからして、なんか昔からの付き合いというか幼馴染的なあれかなと思っ……」

モヒカン「……」

メロンパン職人「たのはまあどうでもいい話でして!! とにかくここらに詳しいモヒカンさんなら何か知ってたりするんじゃないかなって思って質問させていただきたくてですね!」

……

モヒカン「霊能者?」

メロンパン職人「はい」

モヒカン「……ふん、そういうことか。まあ確かにあの爺さんなら、わざわざ遠路はるばる会いにくるような奴らがいてもおかしくはねえ」

メロンパン職人「! それじゃあ」

モヒカン「お前やあの勇者にこの辺あんまりウロチョロされるのも面白くねえしな、教えてやるよ」

モヒカン「お前の探してる霊能者ってのはな……」

岩陰

勇者「……」

勇者「……」


勇者「……」ダラー


翁「小僧、鼻血でとる」

勇者「ん? ああ、サンキュ」

翁「して、小僧。道は開けたか?」

勇者「うーん……もうちょっと」

翁「そうか。……さて、そろそろ」

勇者「……もうちょっと……もうちょっとだと思うんだけどなぁ」

翁「……」

勇者「もう少し……ああそうそう、もうちょい前屈みに……」

翁「……ふむ」

勇者「谷間の向こうに道が……」

翁「……」

勇者「うおおぅ、そんなに……まじかー……」

翁「……なぁ小僧、それ、そろそろ返してくれんか」

勇者「もう少し、もう少しだから……」

翁「……う、うむ」

勇者「ふむふむ、なるほどなぁ……」

翁「……」

勇者「もう少しで道……道が……」

翁「……」

勇者「……おおっ!!?」ガタッ

翁「!!」ガタッ


勇者「あっ、そんな体勢になったら……うひゃぁあ」

翁「……」


勇者「いやいや、その格好でそれはまずいって!」

翁「ええい、いい加減にせんか!!」

岩陰

「いや、おい、ちょっ待てよ!」

「少しばかり見込みがありそうだからって貸してやったわしが馬鹿じゃった! いいから返せ! もうそれ返せ!」

「待てって爺さん! 今いいところ……」

「いいところなら尚更返さんか! わしだって見たい」

「若者を導くのは年寄りの使命じゃなかったのかよ!」

「年寄りを労るのも若者の義務じゃて! 貴様、ちょっと優しくしてやったらつけ上がりおって!!」

「あっこらやめろ糞ジジイ!!」



観光客達「「「…………」」」

翁「だってそれってもともとわしのだもん!! この場所もわしの秘密の場所だもん!! 返して!!」

勇者「わかっ、わかっ……わかったから!! 返すから!! 返すからちょっと離せ!! く、首が……!!」

翁「わしだってな! いつでもかつでも当たりの日にここに来れるわけじゃないんじゃ!! ハズレの日なんてそりゃもうひどいぞう……何でお前に貸した日に限ってそんなイイもんばっかし……!!」



警備員「あー、そこの二人、ちょっといいですか?」

二人「「ん?」」

夕方

警備員屯所


勇者「……」

翁「……」



ガチャッ

メロンパン職人「勇者さん……」


勇者「……何も聞かないでくれ」

警備員「あー、君、そこのお兄さんの連れの人?」

メロンパン職人「ああ、はい……宿の人に言われて……」

警備員「そこのお兄さんの泊まってるって言う宿に連絡したら、連れの人が居るって言うからさ……わざわざ来てもらって悪いね、これも規則だから」

メロンパン職人「いえ、元はと言えばうちの連れが」


勇者(もういっそ殺してくれ)

メロンパン職人「さ、勇者さん、帰りますよ」

メロンパン職人「俺、今日の探索でちゃーんと手掛かりを見つけて来たんですから」

勇者「手掛かり?」

メロンパン職人「そう! なんと俺達の探してる霊能者さんはあの巫女さんの……」

翁「……巫女?」

メロンパン職人「……って、このお爺さんは?」

勇者「ああ、うん。この爺さんは俺にある道を示そうとしてくれた……」

勇者「……」


勇者「……何なんだろうな。爺さん、アンタ誰だ?」

翁「よく考えたらお前も誰じゃ」


メロンパン職人「えぇ……」

ガチャッ

巫女「お爺ちゃん、どこにいるのかと思ったら……」


メロンパン職人「あ」

勇者「ん?」

翁「……ふん」

翁「来るのが遅いわい。どこで油を売っとったんじゃ」

巫女「もうっ。油を売ってたのはお爺ちゃんの方なの。お店にお客さんだって来てたんだよ?」

翁「知るか。適当にお前が見ておけばええじゃろ」

巫女「私は祠の方もあるからダメなの。それに、お爺ちゃんに見てもらいたい、ってわざわざ来てくれた人だっているんだから、そういうこと言っちゃダメだよ」

翁「綺麗なお姉ちゃんは居たか?」

巫女「男の人だったけど」

翁「知らん、塩でも撒いておけ」

巫女「またそればっかり……」

メロンパン職人「え……あれ……巫女さん?」

巫女「あっ、昼間ぶりだね。そっちの人は昨日ぶり?」

勇者「おみやの女か」

巫女「そういうあなたはおっぱいの人」ジリ

勇者「……なんだよ、その距離の取り方は」

巫女「なんとなく?」

勇者「それで、アンタその爺さんの知り合いか?」

巫女「知り合いというか、私のお爺ちゃんなの」

メロンパン職人「!」

勇者「ふーん、そりゃあ……」


メロンパン職人「勇者さんこの人ですよ!!!!」

勇者「うわびっくりしたっ」

巫女「耳がキンキンする……」

メロンパン職人「俺、昼間のうちにモヒカンさんに聞いたんですよ! そこに居る巫女さんのお爺さんこそが俺らの探してる霊能者さんだって!」

勇者「は? 爺さんが霊能……? というか、モヒカン?」

メロンパン職人「巫女さん、その人、お爺さんなんでしょう!?」

巫女「う、うん」


メロンパン職人「ほら!! 勇者さんほら!!」

勇者「いいから落ち着けよ」

翁「うるさいのぅ」

23時過ぎくらいにまたくる

てす

霊能者の館

勇者「それで、爺さんに相談したいことがあるんだけど」

霊能翁「断る」

勇者「えぇ……」

メロンパン職人「即答!?」

霊能翁「だいたい何じゃ、人の家まで付いて来て勝手に上がりおって」

勇者「そりゃあ出るとこが同じで、俺らはアンタに用があったんだから付いて行くだろ」

メロンパン職人「というか、ここお店じゃないんですか」

霊能翁「もう営業時間外じゃ」

勇者「営業時間だったら聞いてくれるのか?」

霊能翁「ふん、さてのう」

メロンパン職人「そんな……」

勇者「参ったな……俺、アンタに用があって王都からこっちまで来たんだけど」

霊能翁「そりゃご苦労なことじゃの」

巫女「ねえお爺ちゃん、お話くらい聞いてあげたら?」

霊能翁「お前まで言うか。わしの仕事に口出しするな。それにお前、祠の方はどうした」

巫女「営業時間外だもん」

勇者「せめて理由くらい教えてくれよ」

霊能翁「~♪」


メロンパン職人「なんか折り紙で遊び始めたんですけどこの人」

勇者「なあ、お前ってこの爺さんの孫なんだろ? どうにかできないのか」

巫女「うーん……難しいかも」

巫女「お爺ちゃんってば、生活に困ってないからって仕事を選り好みするの」

勇者「選り好み?」

巫女「うん。私はあんまり良くない、って思うんだけど……綺麗な女の人とか、それかよっぽど興味を引くような物を持ってる人じゃないとお仕事しようとしないの」

勇者「綺麗な女の人に、興味を引く物、か……」

メロンパン職人「あっ、そうだ! 勇者さんアレ、アレですよ!」

勇者「ん? アレって……」

メロンパン職人「ほら、王都を出る前に王様から貰った……」

勇者「! ああ、そうだ、そう言えばそんなの貰ってたな!」ゴソゴソ

勇者「爺さん!」

霊能翁「なんじゃ」

勇者「これこれ、王様の書状!」

霊能翁「王の書状だぁ?」

巫女「!」

勇者「そうだよ、俺たち王様の紹介で来たんだ。ここに腕の良い霊能者が居るって話でさ」

霊能翁「ほーん?」

霊能翁「……たしかに、この書状は本物らしいな」

巫女「本物……じゃあ、勇者さんとメロンパン職人さんは王様からの使者ってこと?」

勇者「一応そういうことになるのかな」

メロンパン職人「なんかそういう呼ばれ方するのはあんまり実感ないけど、そういうことですね」


巫女「ねえお爺ちゃん、やっぱりお話だけでも聞いてみようよ。王様がわざわざお手紙書いてくれるような用事って、私も少し気になるな」

霊能翁「うーむ……」

霊能翁「……王の書状では、お前さんはあの古の勇者が持っていた、伝説の聖剣に選ばれし者とあるが」

勇者「ん?」

霊能翁「腰に差してるそれか?」

勇者「ああ、これ」シャラン


聖剣「……」


霊能翁「……ふむ」

霊能翁「……」

霊能翁「…………」

霊能翁「………………よし、わかった、話くらいは聞いてやろう」


勇者「おお!」

メロンパン職人「よかったぁ」

勇者「王様と聖剣、様々だな」

メロンパン職人「実はですね……」

…………

………

……

…………

………

……


巫女「聖女様が……」

霊能翁「ふーん」

勇者「という訳で、聖女を探すために爺さんの力を借りたいんだけど」

霊能翁「うーむ……まあ、いいじゃろう」

勇者「! じゃあっ……」

霊能翁「その前にひとつ聞きたい……ああ、それと、お前は席を外してろ」

巫女「え、何で?」

霊能翁「仕事じゃ仕事。お前べつに何もせんしいいじゃろ。ここから先はあれじゃ、大人の話じゃし。一対一で話す必要がある」

巫女「私、もう子供じゃないよ」

霊能翁「いいからさっさと行かんか」

メロンパン職人「ま、まあまあ巫女さん、ほら、霊能翁さんが言ってるんだし。一対一っていうなら、俺も一緒に出ていきますね」

巫女「なんだか納得いかないの……」

バタン



霊能翁「……」


霊能翁「さて、邪魔者は行ったか」

勇者「えっ」

霊能翁「いや、こういう話、孫の前でするのってちょっと気まずいじゃん?」

勇者「こういう話?」

霊能翁「ごほん! ……勇者、改めて、ひとつ聞きたいんじゃが」

勇者「な、なんだよ……」


霊能翁「お前さん、実物の聖女を見たことがあるか?」

勇者「あるけど」

霊能翁「ふむふむ。それで……」


霊能翁「聖女ってのがボンキュッボンの金髪美人のお姉ちゃんというのは本当か?」

勇者「は?」

霊能翁「いやほら、あれじゃろ。噂では聞いとる。そりゃあもう目が飛び出るほどの美人じゃとかまるで天女のような美しさじゃとか」

霊能翁「でもほら、そういう噂って結構誇張されて流れるもんじゃろ。聖女って立場じゃから……ほら、ブサイクだとしても皆あんまし悪くは言えんじゃろ」

霊能翁「実際、多忙故に遠目以外で直接お目にかかる人間もそうそうおらんって言うし」


霊能翁「わしは真実が知りたい。どうなんよ」

勇者「どうって……その質問、今回のことと何か関係あるのか?」

霊能翁「大いにあるとも! 言っとくけどこれ結構重要じゃからな。場所を探るにしても、わしのやる気とかそういうのめっちゃ大事」

勇者「むむむ……」

勇者「……金髪なのは、まあそうだな。サラサラで、結構綺麗な髪してると思う」

霊能翁「ほう」

勇者「顔は、まあ……少なくとも、今日の昼間に見た水着の姉ちゃん達に負けないくらいには整ってると思う」

霊能翁「ほうほう……それで?」

勇者「胸も大きいし、スタイルはいいんじゃないか」

霊能翁「ほほーう!! そいでそいで?」

勇者「……まあ、王都でもなかなか見ない美人ではある、と思う」

霊能翁「ほぁー、噂は本当だったってことじゃな。わしも直接お目にかかりたいもんじゃ」

勇者「性格は……」


勇者「俺はあいつに殴られて気絶させられたことがある。ああ見えて結構凶暴な性格してる」

霊能翁「!?」

霊能翁「む、むむむ……性格にやや難アリ、か」

霊能翁「いやしかし、ないすばでーの綺麗なお姉ちゃんならそれもまた……」

勇者「で、どうなんだ? 聖女の情報はこれで十分なのかよ」

霊能翁「……わかった、とりあえずはこれで十分じゃろ」

霊能翁「では、これから聖女の位置を探るための千里眼を使おうと思う」

霊能翁「確か、聖女に縁ある品を持ってきとるんだったな?」

勇者「ああ」

霊能翁「なるべく普段から身に付けているものがいい。まずはそれをもとに、聖女の気を覚える。そこから、気を辿って現在の位置を探り出す」

勇者「ようやくそれっぽい話になってきたな」

勇者「ええと、ちょっと待ってくれよ……確か聖女のリボンを……」ゴソゴソ……

勇者「あれ? どこ行ったかな……結構前に鞄に入れたから、奥の方に……」


ポロッ


勇者「あっ」

霊能翁「!? そ、それは……ブラジャー!!?」

霊能翁「おまっ、おま……!! たしかに普段から身に付けておる物がいいとは言ったが……!!」


勇者(あー、あの時王都で買ったやつだ……)


勇者「悪い悪い、これじゃないんだ」サッ

霊能翁「……あっ!!」

勇者「えーとえーと……おっ、あった! これこれ、このリボンが聖女の……」

霊能翁「待たんか!!」

勇者「えっ」

霊能翁「お前さん、さっきのブラジャー……」

勇者「あー、あれは、違う。違うんだ。別にアンタに見せようと思った訳じゃ……」

霊能翁「まさか、聖女のブラジャーを持って来るとは……!!」

勇者「や、違うってば」

勇者「ほら、このリボンだって。俺がアンタに見てほしいのはこのリボ……」

霊能翁「いや、わかる。わかるぞ」

霊能翁「お前さんは王の命を受け、このわしを探すように言われた」

霊能翁「そして、その際に聖女に縁ある品を持って行こうとして聖女の家を漁り……」

霊能翁「我慢できんかったんじゃろうな……わかる、わかるぞ……!」

霊能翁「わしに見せる建前のリボンのほかに、下着なんかもこっそり取っといたんじゃろ」

霊能翁「違うか? え?」

勇者(なんだろう、行動だけ見れば合ってるっちゃ合ってる気もする……傭兵に阻止されたけど)

霊能翁「後生じゃあ……聖女様のそのブラジャーを、ちょろっと、ちょびっとでええから触らせ、いや、見せ……匂いだけでも……」

勇者「いや、だからこれは違うんだって」

霊能翁「自分だけで楽しむつもりか! ずるいぞ!」

勇者「聞けよ」


霊能翁「……どうしてもダメか?」

勇者「だからそもそも……」



霊能翁「……特別サービスをしてやっても良い」

勇者「!」

勇者「特別サービス?」

霊能翁「お前さんの腰に差してるその聖剣……一目見た時からわしも気にはなっておったんじゃが。もともとは古の勇者が使っていた聖剣なんじゃろ?」

勇者「……ああ、そうらしいが」


霊能翁「古くから今にまで伝わる、御伽噺の中にある古の勇者の英雄譚」

霊能翁「その聖剣は実際に、常にその傍で見ていたはずじゃ。古の勇者の活躍、そのものを」


勇者「……」


霊能翁「興味はないか? 古の勇者を間近で見続けた聖剣の、その記憶を」

勇者(こいつの、記憶……?)



聖剣「……」



勇者(……)

勇者「……確かに、興味はあるかもしれない。俺もこいつとはもうそこそこの付き合いがあるけど。古の勇者が実際どんなことをしていたのか、俺は知らないことが多すぎる」

霊能翁「じゃろ? 古の勇者の時代から時が経ち、ここまで形に残った物があるというのも珍しい」

勇者「けど、どうやって? 記憶って言っても、こいつは剣だぞ」

勇者(喋るけど)


聖剣「……」

霊能翁「簡単なことよ。わしがその剣に触れてチョチョイとサイコメトって読み込めばいい話じゃ」

勇者「チョチョイとって」

霊能翁「言っておくがな、こんなことができる霊能者なんて王国中探し回ったとてわし以外におらんぞ、たぶん」

霊能翁「わしの孫も筋は悪くないが、こっちの方面だとわしには及ばんわ」

霊能翁「……まあ、いくらわしとて、古の勇者の時代まで遡って読み取るとなると完璧とまでは断言できんが」

霊能翁「今なら特別サービスで、わしが見た物をお前にも直接見えるようにしてやる。こんなことは滅多にないぞぅ?」

勇者「……」

勇者「わかった。頼むよ爺さん。俺も古の勇者ってやつを見てみたい」

霊能翁「うむ」


勇者「それと、このブラジャーはアンタにやる」

霊能翁「うひょーーっ! マジかお前、くれるの!?」


勇者(市販の新品だけど)

霊能翁「では早速……その聖剣をここに置いてみ」

勇者「ん」

ガチャッ


聖剣「……」


霊能翁「そんで勇者、手を貸せ」

勇者「手?」

霊能翁「わしとお前で手を握る必要がある」

勇者「ほい」

スッ


ギュッ


霊能翁「……」

勇者「……」


霊能翁「……うえぇ、これだから男相手にやりたくなかったんじゃ」

勇者「うるせえな、俺だって我慢してるんだから早くしろよ」

霊能翁「それじゃ、行くぞ」

勇者「……」



聖剣「……」



カッ!!!

ゴポポ……

勇者(……これが、聖剣の記憶?)

勇者(真っ暗だ。何も見えない)

勇者(……)

勇者(……おいおい)

勇者(これ、もしかして爺さん失敗したんじゃ……)


ザ、ザザ、ザーーーー


勇者(!)


勇者(声が、聞こえる……これは……!)

男の声『おお、これが例の……!』

男の声『ああ、魔王に苦しめられている我らのために、女神様が贈ってくださったという聖剣か』

男の声『……だが、抜けんな』

男の声『ああ、抜けん……どうやら選ばれし者にしか抜けないようだ』

男の声『傍目から見てもわかるこの聖気……仮に扱うことさえできれば、あの魔王にさえ刃が届くことだろう』

男の声『ああ、ああ……選ばれし者が、早くこの聖剣を抜く時を待つばかりだ……』


勇者(……)

ザ、ザザ、ザーーーー

勇者(!)

勇者(場面が飛んだ?)


男の声『ふんっ!! ……ぎぎ、ぎぃ……っ!!』

男の声『ちくしょう、抜けねえ!!』

男の声『なんだ、ここらで一番の力自慢のお前でも抜けないのか』

男の声『うるせえな……こんなの、人間に抜けるもんじゃねえよ。ドラゴンにでも括り付けて無理やり引っこ抜いた方が早いんじゃねえのか』

男の声『おいおい、そんなことしたら剣の方が折れちまうだろうが』

男の声『そんなんで折れる剣なのかねぇ』

男の声『次は俺だ! 俺がやる!』

男の声『待て待て、順番は守れよ、次は俺の番だ』


男の声『……あぁん? おいおい小僧、まさかこの剣に用があるってのか?』

男の声『やめとけやめとけ、ここらの腕自慢がよってたかって抜きにかかってびくともしねえんだ』

男の声『この剣が抜けた時の報酬目当てか知らねえが、お前みたいなガキじゃあ時間の無駄だ。とっとと帰んな』

若者の声『ん? いや、別にそういうつもりじゃないんだが、気になって』

男の声『気にはなる? なんだ、観光目当てか?』

若者の声『うーん……なあ、あんた達、聞こえないのか?』

男の声『?』

若者の声『声だよ、声』

男の声『声ぇ? 何言ってんだこいつ』

若者の声『いや、だからさ』



若者の声『なんか、この剣喋ってない?』


過去の聖剣『>>475

zzZ

https://i.imgur.com/1YxxmNt.jpg

過去の聖剣『zzZ』


男の声『喋ってる? 何も聞こえねえぞ』

若者の声『あ、喋ってるって言うか、いびきだったか。寝てるのかな?』

男の声『???』

男の声『何だこいつ、頭おかしいんじゃねえか?』

若者の声『そんなことないってば。……本当に、皆聞こえないのか?』


若者の声『なぁおい、ちょっと起きてくれよ』

ズボッ


男の声『ぬ、抜けたーーーー!!?』

ザ、ザザ、ザーーーー


勇者(め、目が回る……なんだ、また場面が変わるのか?)




女の声『ふーん、あなたがあの聖剣に選ばれた勇者って訳?』


勇者(……この声、師匠?)


古の勇者『なんかそういうことらしいな』

女の声『思ったより冴えない顔ね……』

古の勇者『ほっとけ。それで、アンタがここらで一番の魔法使いってやつか? ちょっと協力して欲しいことがあるんだが』

女の声『……それはまあ、あの魔王にギャフンと言わせられるって言うなら、大抵のことは協力してあげるつもりよ』

古の勇者『おお、助かる。俺だけじゃどうにもならなくってさ』


女の声『……ところで、どうして頭からパンツを被っているのかしら』

古の勇者『いや、安価だから』


ザ、ザザ、ザーーーー

ザ、ザザ、ザーーーー


勇者(め、目が回る……なんだ、また場面が変わるのか?)



女の声『ふーん、あなたがあの聖剣に選ばれた勇者って訳?』


勇者(……この声、師匠?)


古の勇者『なんかそういうことらしいな』

女の声『思ったより冴えない顔ね……』

古の勇者『ほっとけ。それで、アンタがここらで一番の魔法使いってやつか? ちょっと協力して欲しいことがあるんだが』

女の声『……それはまあ、あの魔王にギャフンと言わせられるって言うなら、大抵のことは協力してあげるわ』

古の勇者『おお、助かる。俺だけじゃどうにもならなくってさ』

女の声『……ところで、ずっと気になっていたのだけれど』

古の勇者『?』


女の声『どうして頭からパンツを被っているのかしら』

古の勇者『いや、安価だから』

鳥の声『キィーーーー!!』

古の魔法使い『す、凄い……! こんなに力を秘めた魔法生物、見たことない……! これって、聖獣の類かしら』

古の勇者『まあ、何だっていいけどさ』

鳥の声『キィキィ』

古の勇者『? やけに俺にすり寄ってくるな』

古の魔法使い『この鳥さん、あなたのことを親と思い込んでるんじゃないかしら』

古の勇者『へー。なかなかかわいい鳥じゃないか。おーよしよし』

古の魔法使い『鳥……ねえ、この子の名前、あなたが決めてあげたら?』

古の勇者『俺が? うーん、そうだな……名前かぁ……』

鳥の声『?』



過去の聖剣『>>485

から揚げ

過去の聖剣『から揚げ』


古の勇者『から揚げ……うん、決めた!』

古の勇者『今日からこいつの名前はから揚げだ! よろしくな、から揚げ!』

鳥の声『キィ』


古の魔法使い『非常食か何かだと思ってないかしら……?』


ザ、ザザ、ザーーーー

氷の魔女『勇者……貴様……!!』

古の勇者『はぁ、はぁ……くそ、参ったな。お前、不死身ってやつか……』

古の魔法使い『まさか勇者の聖剣でも倒せないなんて……』


から揚げ『……キィーーーー!!!!』


勇者『から揚げ!? お前、何をするつもりだ!』


ゴゥッ!!


ザ、ザザ、ザーーーー

古の勇者『……』

古の魔法使い『から揚げのことは……その、仕方なかったのよ。あのままじゃいつか、私たちの方まで……』

古の勇者『……』

古の魔法使い『ねえ、私たち、魔王を倒すまで止まっちゃいけないわ。そうでしょ?』

古の勇者『……ああ』


ザ、ザザ、ザーーーー

女の声『キャーーーーッ!! ちょっと、何で女湯にいるのよ!!』

古の勇者『あ、安価だから!』

女の声『この、ヘンタ────』

ザ、ザザ、ザーーーー


男の声『よぉ、お前が最近ウワサの勇者って奴────』

ザ、ザザ、ザーーーー


女の声『ありがとうございます、勇者様! なんとお礼を言えば……────』

ザ、ザザ、ザーーーー


男の声『ああ、これからよろしく頼む────』

ザ、ザザ、ザーーーー



勇者(……? な、なんだ? 急に飛び飛びになって来たぞ)

17:30にはちょっとお出かけしなきゃいけないからそれまでは続ける

勇者(……)


勇者(……)


勇者(急に真っ暗になって動かなくなっちゃったんだけど)


勇者(爺さん? おい、どうかしたのか?)


勇者(……)


勇者(……おーい)



ザ、ザザ、ザーーーー

勇者(!)

勇者(……まだ続きがあるのか)


古の魔法使い『勇者!!』

女の声『勇者さん!!』

男の声『勇者!!』


古の勇者『はぁ、はぁ、はぁ……!』


勇者(仲間が、増えてるのか?)

勇者(古の勇者もなんかボロボロっぽいし、飛んでる間にいったい何があったんだ……)

女の声『ひ、酷い傷……! こ、こんなのって……』

古の魔法使い『僧侶、勇者に早く治療を!』

女の声『……』

古の魔法使い『何やってるのよ!!!』

男の声『魔法使い、落ち着け!!』

古の魔法使い『こんなの……こんなの、落ち着いてられる訳ないじゃない!!』

古の魔法使い『ようやく……魔王を倒して、これから世界が平和になるって言うのに……!』

古の魔法使い『一番頑張ったはずのアンタが、何で、こんな……!!』

男の声『……』

女の声『……』

古の勇者『ぐ……げほっ、かはっ!』

女の声『ゆ、勇者さん、無理に喋ろうとしてはっ!』

男の声『……僧侶』

女の声『っ!! …………!!』

男の声『……』


古の勇者『ま、魔法使い……』

古の魔法使い『な、なに、勇者っ』

古の勇者『はぁ、はぁ……』

古の魔法使い『何? 何を伝えようとしているの……?』

古の勇者『……魔王は、まだ死んじゃいない』

古の魔法使い『ッ!?』

古の勇者『身体は、討ち滅ぼした……』

古の勇者『けど、奴の魂だけは、まだ生きている……ちょっと入りが浅かったみたいなんだ』

古の勇者『しぶとい奴だよな……』

古の勇者『聖剣でとどめを刺してやろうにも……はぁ、俺の身体の方が、もう動かないみたいなんだ』

古の魔法使い『……!!』

古の魔法使い『じゃ、じゃあ、どうすれば? どうすれば魔王の魂なんて……』


古の勇者『お前が……お前が、封印するんだ、魔王の、魂を……!!』

古の魔法使い『!!』

古の魔法使い『封……印……? 私が?』

古の勇者『ああ、そうだ。お前にしか出来ないことなんだ。今この世界で、俺が知る限り最高の魔法使いである、お前にしか』

古の魔法使い『……』

古の勇者『俺はまあ……ここで、死んじゃうかもしれないけどさ。いつかまた、この聖剣を扱うことができる奴がきっと現れる』

古の魔法使い『……』

古の勇者『面白いだろ。魔王とか、魔族の連中は、自分達のことを永遠の命だとか最強だとか思ってるフシがあるみたいだけど』

古の勇者『そういう奴らを打ち倒すのは決まって、託され、受け継がれてきた人間の力なんだぜ』

古の勇者『少なくとも、俺は、先のことは心配しちゃいないよ……』

古の魔法使い『勇者……』

古の魔法使い『……わかった。私、やってみる』

古の勇者『……頼んだ』


古の魔法使い『封印に使う媒体……依代はどうしようかしら……長い間、魔王の魂を封じ込めるだなんてモノ……』

古の魔法使い『勇者の聖剣は……ダメよね、魔王の魂なんてものがこの剣に定着できるとは思えない』

古の魔法使い『何か……何か、いいものは……』


古の勇者『……封印に使う、依り代か』

古の勇者『何がいいんだろうか』



過去の聖剣『>>504

メロンパン

過去の聖剣『メロンパン』

古の勇者『……』

古の勇者『……メロンパン』

古の魔法使い『えっ』


古の勇者『魔王の魂は……メロンパンに封印してくれ』

古の魔法使い『……はぁ!?』


古の魔法使い『ちょっと、メロンパンなんてそんな……そんな物に封印するの!? 魔王の魂を!?』

古の勇者『ああ。メロンパンがいい』

古の魔法使い『えぇ……』

古の勇者『お前なら……できるはずだ……』

古の勇者『あとは……頼んだ……ぞ……メロンパン……』


古の魔法使い『……ちょっと! 勇者!? ねえ、勇者!!』


ザ、ザザ、ザーーーー

勇者「……」パチッ


勇者「今ので、終わりか……」

勇者「なあ爺さん、今のって……」


霊能翁「ぜぇーー、ぜぇーー、ぜひゅーー……」


勇者「爺さん!?」

霊能翁「げほっ、がほっ、はぁはぁ……!」

勇者「お、おい爺さん、大丈夫なのか?」

霊能翁「はぁはぁ……さすがのわしも、これだけ強い力を持つ剣から、あれだけ遡った記憶を読み取るのはキツかった……少し休ませてくれ……」

勇者「少しって、どれくらい?」

霊能翁「……い、一日くらい」

勇者「はぁ!? おいおい、もともとこっちはオマケで聖女の居場所の方が本番だっただろ」

霊能翁「キツかった……思ったよりもキツかったんじゃて……!」

霊能翁「くそぅ、わしももうちょっとだけ若ければ……!」

勇者「……はぁ。しょうがないか」

巫女「お、お爺ちゃん!? 大丈夫なの?」

霊能翁「あ、あんまし大丈夫じゃないかも」

巫女「もう、いったい何やったらこんなことになるの」


メロンパン職人「えぇ!? 聖女様の居場所、まだわかってないんですか!?」

勇者「……しょうがないだろ、爺さんの方が伸びちまってるんだし」

てす

……

……


巫女「とりあえず、お爺ちゃんはもう休ませたよ。……本当にどうしちゃったんだろう、普段ならお仕事した後でもケロッとしてるのに」

勇者「ちょっと色々あったんだよ」


巫女「何か、ブラジャー、とか、幸せそうに呻いていたけれど」


勇者「……色々あったんだってば」

巫女「……」ジーッ

勇者「そ、そんな目で見たって何も出ないぞ」

メロンパン職人「とにかく、勇者さん。お爺さんが元気になるまで俺たちは何か出来るわけでもないですし……」

勇者「ん。帰ろうか」


勇者「俺も、ちょっと考えたいことと出来ちゃったしな」

巫女「それじゃあね」

勇者「ああ。また明日くるよ」

メロンパン職人「勇者さん、いいですか、今度こそ聖女様の居場所を探し出して貰うんですからね。余計なことをさせちゃダメですからね」

勇者「わかってるよ……でも、今日爺さんにやってもらったこと、あながち余計なことって訳でもないと思うぞ」

メロンパン職人「? それってどういう……」

勇者「あとで話すさ」


テクテク


巫女「ばいばい」

バタン

巫女「ふぅ。」

巫女「不思議なお客さんだったなぁ」

巫女「王さまからの書状を持ってきたお客さんなんて、初めて」

巫女「お爺ちゃんが珍しく男の人からのお仕事を受けてたみたいだし」

巫女「そのお爺ちゃんはお仕事の途中で疲れて倒れちゃうし」

巫女「……でもお爺ちゃん、なんだか少し楽しそうだったかも」

巫女「聖女様のことを探す、ってだけなら、あんなことにはならないと思うんだけど」

巫女「いったい何をしてたんだろう?」

巫女「……」

巫女「……聖女様、大丈夫なのかな」

巫女「早く見つかるといいんだけど」

巫女「今日はいろんなことがあった気がする」

巫女「モヒカンも久しぶりに帰って来たみたいだし」

巫女「……」

巫女「……私も、そろそろ休んじゃおうかな」




──── パキィーーーン……!


巫女「っ!!?」

巫女「これは……この感じ……!」

巫女「……祠の方?」

巫女「まさか、結界に何かあったの……?」

巫女「……」



巫女「行かなくちゃ」


ガチャッ、バタン

タタタッ……

ぞうさんの祠


フードの男「……」


バチッ!!


フードの男「……ふむ。結界か」

フードの男「あまり手間を掛けさせないで欲しいものだが」


フードの男「……ッ!」

ビキッ! バチバチバチバチッ!!


フードの男「……思いの外、強力な物が張られている。これの解除には少々骨が折れそうだ」


フードの男「ッ!!」

バチバチバチバチッ!!

宿

メロンパン職人「聖剣の記憶……そんなことが」

勇者「ああ。あの霊能の爺さんの力は本物っぽいぞ」

メロンパン職人「うーん、いいなぁ。あの御伽噺にある古の勇者を見ることができたなんて……俺もちょっと見てみたかったかもです」

勇者「そのおかげでへばっちゃったし、あんまり何回もお願いできることじゃなさそうだけどな」

勇者「あっ、そうだ! これが一番重要なことかもそれないんだけど、ついに主の真名を知ることができたぞ」

メロンパン職人「主の真名? ……そうか、主はかつて古の勇者と一緒に居たんでしたっけ」


メロンパン職人「なんて名前なんです?」

勇者「から揚げ」

メロンパン職人「……」

勇者「……なんだよ」

メロンパン職人「それ、誰が?」

勇者「古の勇者が言ってた」

メロンパン職人「……」


勇者「から揚げ様……言われてみれば神々しい名前だよな」

メロンパン職人「なんか、テカッてそうな名前ではありますね」

メロンパン職人「ああぁぁあぁぁ……なんか、今の話で俺の中にある古の勇者様のイメージが……」

メロンパン職人「……」チラッ


勇者「なんだよ」


メロンパン職人「……なんでもありません」

勇者「まあいいや。そろそろいい時間だし、もう寝ようぜ」

メロンパン職人「そうですね」


メロンパン職人「……とにかく、明日こそはちゃんと聖女様のこと見てもらいますからね。

勇者「ああ」

メロンパン職人「たしかに、今日のことは無駄じゃなかったかもですけど、俺たちがここに来た本来の目的を忘れちゃダメですよ」

勇者「そう何回も言わなくてもわかってるってば」

ゴロン

勇者(古の勇者……気になること言ってたよな……)

勇者(魔王の魂はまだ死んじゃいない、って)

勇者(なんか師匠似の魔法使いに頼んでたみたいだけど)

勇者(もしかして、今もどこかに、封印された魔王が……)

勇者(……)

勇者(まあ、今考えても仕方ないか)

勇者(さて、明日は早くに起きなきゃまたメロンパン職人がうるさいからな)

勇者(そろそろ本当に寝るとするか)

勇者(……)



聖剣「……」


勇者(……ん?)

勇者(この感じ……まさか、こんな時間に安価か?)


聖剣「>>536

ぞうさんを増産するぞう

聖剣「ぞうさんを増産するぞう」

勇者「は?」

聖剣「……」

勇者「……」


勇者「ぞうさんをぞうさん?」

勇者「まるで意味がわかんねえ」

勇者「ぞうさん……ぞうさん……」

勇者「ええと、確か、ここの都市だと守り神? だか何だかの名前がぞうさんとか言うんだったっけ」

勇者「それを増産?」

勇者「……」

勇者「……んぁー、わからん」

勇者「確か、巫女が言うにはぞうさんの祠にはお土産とか売ってるんだったか」

勇者「よくわからないけど、ぞうさんのグッズとか売ってたりするのかな」

勇者「それを増産するぞ、ってことなのか?」

勇者「……つっても、増産しろって言ってきてる訳でもないから何とも言えないんだが」

勇者「ただダジャレを言ってみたかっただけかも知れん。……こいつそういうとこあるからな」

勇者「何にせよ、いま祠に行ったってこんな時間じゃ巫女も誰もいないだろうし」

勇者「……一応、明日ちょっと行ってみるかな。ぞうさんの祠」

……

……


バチバチバチッ、バチバチッ!!


フードの男「くっ……まさかここまでとは」

フードの男「これほどの結界を張れる術者が、今の平和ボケした人間の中にいたとはな」

フードの男「……いや、これは単独で張られたものではない、か」

フードの男「ここの管理者が代々力を注いで維持をしてきた結界と見て良さそうだ」

フードの男「やれやれ、もう少し準備をしてくるべきだったか」

フードの男「魔将軍め。奴に引き留められなければ相応のモノを……」


タタタッ


フードの男「!」

フードの男「誰だ」


巫女「はぁ、はぁ……そこのあなた、何をしているの?」


フードの男「……」

巫女「こんな時間に、たった一人で。それに、ここは立ち入り禁止の場所のはず」

巫女「ここは特別な場所。悪戯なら、やめて欲しいのだけれど」

フードの男「……」

フードの男「この気配……ふむ。ここに張られている結界と似た質のものを感じる」

フードの男「お前がここの管理者と言うわけか」

巫女「結界……そう。だいぶ、傷付けられてる。……これ、あなたがやったんだね」

フードの男「だとしたら、どうする?」

巫女「だとしたら……私、あなたを止めなきゃならない。私は、ここを守るのが仕事だから」

フードの男「止める? ……ククク、貴様にそれができると思うか?」

フードの男「顔には出ていないようだが、足が震えているぞ。 戦いは初めてか?」

巫女「っ、」


フードの男「今からでも逃げるか、大人しく結界を解いて私を通してしまうのが賢い選択なんじゃないのか?」

巫女「……正直、たった一人で結界をここまで傷付けられるような人は、ちょっと厳しいかも」


巫女「でもそういうのって、できるとか、できないとか、そういうことじゃないと思うの」

フードの男「……まあ、少々手間は掛かるが。私としては貴様がどちらを選ぼうとも構わない訳だ」

フードの男「この都市には少し面倒な輩が来ているみたいのでな。騒ぎになる前に、手早く終わらせてもらうぞ」


巫女「……っ!」

……………………

…………

……

翌朝

勇者「ふああ……よく寝た」

メロンパン職人「やっぱり、馬車の中とか野営とかじゃなくて、屋根の下にあるベッドが一番ですよねぇ」

メロンパン職人「さあ勇者さん、霊能翁さんの所に行きますよ!」

勇者「んぁぁ……こんな朝早くに行っても、爺さんまだ寝てるんじゃないのか? 年寄りの朝は早いって言うけど、昨日あんなに疲れてただろ?」

メロンパン職人「だったらお店の中で待たせて貰えばいいじゃないですか。巫女さんは起きてるでしょうし」

メロンパン「巫女さんは昼間は祠の方でお土産とか売ってるって言うし、むしろ巫女さんが出掛けちゃう前にお店に行きましょうよ」

勇者「……それもそうか」

霊能翁の館


勇者「たのもーっ」

メロンパン職人「ごめんくださーーい」



シーーーーン……



勇者「……」

メロンパン職人「……」

勇者「おいおい、誰もいないじゃんか」

メロンパン職人「そんなぁ……」

勇者「やっぱり爺さんはまだ寝てるんじゃないか?」

メロンパン職人「けど、巫女さんまでいないもんですかね」

勇者「もしかしたら、もうおみやの店開いてるのか? 祠の方に行ってるのかも」

メロンパン職人「うーん、お店とかが開くにはまだ早い時間のような気もするんですが」

昨日変な時間に寝たから眠い
明日とりあえず今日と同じくらいの時間にきます

ごめん今日はまだ帰れない
体力が残ってれば23時過ぎに

てす

途中まで書いて寝てた…
とりあえず書いたとこまで投下して今日は終わりにさせていただきたい

宿

ズタ袋「zzz……」

ズタ袋「……」


ズタ袋「……むっ」


モゾモゾ

ズタ袋「この感じは……」


────────。


ズタ袋「……」


ズタ袋「街を覆う気配が、昨日までと少し違う」

ズタ袋「……何があった?」

ズタ袋「まあ、この街がどうあれ、わたしには関係のないことだが」


ズタ袋「……気にはなるな」

ズタ袋「……」


ズタ袋(忌々しいことに、あのとき勇者から受けた傷は未だ回復の気配を見せない)

ズタ袋(やはり、ここに纏わり付く聖気を祓わん限りはどうしようもないか)

ズタ袋(……)

ズタ袋(ただ……僅かだが、王都に居た時より薄れているのか……?)

ズタ袋(これは、常に王都に通っていたあの量の聖気から離れたせいか?)

ズタ袋(それとも……)


ズタ袋「……」

霊能翁の館前


メロンパン職人「……あれから何回か呼び掛けてみましたけど、全然誰も出てきませんね」

勇者「うーん……」

メロンパン職人「どうします?」

勇者「どうするって言ったってなぁ。爺さんがいつ起きてくるかもわからないし、どこかで適当に時間でも潰してくるしかないんじゃないか」

勇者(昨日の安価……ぞうさんがどうのこうのってやつについて調べてみるか?)

勇者(ぞうさんについて、俺はあの観光ガイドに書かれてたことくらいしか知らないし)

勇者(安価の意味もまるでわからん。ぶっちゃけただダジャレ言いたかっただけのいつもの無意味なやつのような気もするけど……)

勇者(……巫女に聞いてみれば少しは何のことだかわかるんだろうか? 居るとしたら祠の方か?)

勇者(メロンパン職人が昨日言ってたモヒカン云々のことも気になるっちゃ気になるけど)

勇者(……どうしようかな)


聖剣「>>570

ぞうさんを増産するぞう

三連休ちょっと忙しかった
もしかしたら夜来るかもしれないけど明日以降になるかもしれない

すまぬ
ちょっと息抜きに短編書いてた

その短編のタイトルを教えてもらおうか

>>581
これ

セル「ふむ……セルゲームの会場はこの辺りでよかろう」

ちょっとしばらく忙しいかもしれない

とりあえず生存報告だけ
トリップ忘れかけてた

てす

聖剣「ぞうさんを増産するぞう」

勇者「だから何なんだそれは」

勇者「めんどくせえ……とりあえずここで駄弁ってても仕方ないし、巫女の所行ってみるか」

勇者「ぞうさんだの増産だのもあいつなら何か知ってるかもだし」

メロンパン職人「増産?」

勇者「何でもないよ」

祠の前

メロンパン職人「巫女さん、お土産屋さんにもいなかったですね」

勇者「そうだな」


勇者「……なぁメロンパン職人。なんかここ、前来た時とちょっと雰囲気違くないか」

メロンパン職人「?」

メロンパン職人「どうかしたんです? 特に何か変わったようには」

勇者「いや違うね。なんかこう……何か違うだろ」

メロンパン職人「はぁ」

勇者「前はもっと空気良かった気がするんだが」スーハー

メロンパン職人「空気て」

勇者「あっちの方かな」

タタタッ


メロンパン職人「勇者さんそっち立ち入り禁止の場所では……行っちゃった」

メロンパン職人「巫女さんに怒られても知りませんよ!」

メロンパン職人「……」

メロンパン職人「……」


キョロキョロ


メロンパン職人「……」


メロンパン職人「ま、待ってぇ」

タタタッ

勇者「変な感じは……こっちの方からか」

テクテク

勇者「……」




勇者「ッ!? お前!」

メロンパン職人「はぁ、はぁ……あ、いた」

メロンパン職人「おーい、勇者さーん!」タタタッ



勇者「……」


メロンパン職人「置いてかないでくださいよ……」


勇者「……」

メロンパン職人「……」



メロンパン「……えっ」

メロンパン職人「え、ちょ、何で……」

勇者「……」


メロンパン職人「何で、巫女さん、こんなところに」

勇者「……知るか。俺も今来たとこだよ」


メロンパン職人「血が、こんなに」

勇者「……」


メロンパン職人「なんでそんなに冷静なんですか、勇者さん……」

メロンパン職人「巫女さん、早く、何とか、しないと」

勇者「血は固まってる。やられてから大分時間経ってるみたいだな」スッ

メロンパン職人「そんな、じゃあ、もう」

勇者「……いや、まだ生きてる。何でか知らんけど」

メロンパン職人「え?」

勇者「魔法か何かか? 自分で使ってるみたいだ。それでも死ぬのを遅らせる程度のモノっぽいから、早く治療しないとマズイかもな」

メロンパン職人「それじゃあめっちゃ急がなくちゃじゃないですか! なにこんな時にのんびりしてるんですか!」

メロンパン職人「ああえっと、このまま運んでいいのかな、まず傷口抑えたりした方が、布!タオル!」

勇者「メロンパン職人」

メロンパン職人「何ですか!!」



勇者「めっちゃ逃げろ」

メロンパン職人「は?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!


メロンパン職人「うわっ、わっ、わっ!?」

勇者「祠の奥の方から、なんかヤバい感じがする」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

勇者「乱暴でも何でもいいからそいつの傷口縛って抱えて走れ」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

勇者「よくわからんけど魔法でなんとかしてるっぽいから多少雑に扱っても大丈夫だろ」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

勇者「というか、雑でも急がないと、ここにいたらたぶん────」

ドカァァァァァァァン!!!


パオオオオオオオオオオオオン!!!!!



メロンパン職人「ぎゃあああああああああ!!?」

勇者「……死ぬなぁ、俺たち」




キャーーーー!! ナニガオコッタ!? バケモノダ!! 
  ウワァーーーー!! ザワザワ…



モヒカン「おいおい……」

モヒカン「何なんだよあのバカでけぇバケモノは……!」


パオオオオオオオオオオオオン!!!!!



モヒカン「……」


モヒカン「象? いやまさか……」

モヒカン「つーか、あそこって祠の方じゃ……」

モヒカン「…………ッ! くそ!!」


タタタッ

メロンパン職人「あわわわわわわ」


メロンパン職人「浮き島が立ち上がったと思ったらぞうさんにぃぃぃ」


勇者「早く行け! メロンパン職人!」

メロンパン職人「ゆゆゆ勇者さんは!?」

勇者「わからん!」

メロンパン職人「はぁ!?」

勇者「わからんけど、どうにかしなきゃいけないだろ、あれ! すごく嫌な感じがする!」

メロンパン職人「どうにかって、あれ島1個分くらいの大きさですよ!? しかも海だし!」

メロンパン職人「いくら勇者さんの聖剣だって届かなきゃどうにもならないですよ!」

勇者「あれだけデカいもんが出てきてるんだから街だって騒ぎになってるだろ」

勇者「主も異変に気づいて様子見に飛んで来てくれると思う」

勇者「たぶんお前らと一緒に街の方に逃げるよりこっちに居た方が早く主に見つけて貰えるだろ」

勇者「目印もデカイしな!」

勇者「主が来たら、飛んで近づいて何とかしてみる!」

メロンパン職人「何とかって!」

勇者「何とかだよ! 俺だって知るか!」

ズゴゴゴゴゴゴ……!!


勇者「ッ! 動き始めた……」

メロンパン職人「ひぃぃ、俺、もう行きますからね!」


メロンパン職人「巫女さん、痛いかもだけど我慢してください……!」グイッ

巫女「……」


メロンパン職人「ヤバいと思ったら勇者さんも逃げてくださいよ!」

タタタッ


勇者「ヤバかったら、か」


ズゴゴゴゴゴゴ……!!


勇者「……ん?」


ズゴゴゴゴゴゴ……!!


勇者「周りの、海の水位が下がってく……」

勇者「……あれ? この砂浜、なんかちょっと動いてね?」

勇者「ちょっとずつアイツの方へ吸い込まれて行ってるような」

勇者「……」


勇者「……ひょっとして、もうヤバかったりする?」

勇者「……」

メロンパン職人「……」


勇者「……なぁ」

メロンパン職人「はい」



勇者「どうして俺はお前なんかと二人きりで浜辺で夕日を眺めていなくちゃいけないんだ?」

メロンパン職人「俺が知るわけないでしょう」

勇者「いやいや、こんな綺麗な浜辺なんだぜ。いくら時間ちょっと遅いからって誰もいないって絶対おかしいだろ」

メロンパン職人「だから俺が知るわけないじゃないですか。俺だってこの都市に来たの初めてなんですから」


勇者「くそっ、アテが外れた。ここに来ればイチはやくおっぱいに会えると思ってたんだが」

メロンパン職人「勇者さん、絶対当初の目的忘れてるでしょう」

勇者「聖女のおっぱいだろ?」

メロンパン職人「アンタそんな目的してたんですか!?」

メロンパン職人「勇者さん……アンタって人は……! 俺達の目的は拐われた聖女様の救出で、そのために聖女様の居場所を探れる霊能者さんを探しにこんなところまでやってきたんでしょうが!」

勇者「そりゃそうだけど。ほら、お前が当初の目的って言うから俺はだな」

メロンパン職人「当初の目的でもおかしい!! いくら勇者さんでも聖女様をそんな目で見ることは許しませんよ!」

勇者「待て待て落ち着け。俺は安価のためにだな。あとここに来た当初じゃない目的もおっぱ……」

メロンパン職人「だーから安価って何なんですか!! それが勇者さんがおっぱいおっぱい言っても許されるって言うんですか!!」

勇者「だから落ち着けって! えー、それはだな……」



??「……ちょっと、そこの二人」

勇者「ん?」

メロンパン職人「はい?」

袴の女「喧嘩をするのは結構だけれど。この場所で、あまり不浄な気を撒き散らさないでほしいの」

袴の女「ここをどこだと思っているの?」


勇者「どこって……」

メロンパン職人「砂浜?」

袴の女「……はぁ」

袴の女「そこを見てほしい」

勇者「ん? ……何だこれ。祠?」

勇者(俺の村にあった、聖剣あった場所に似てる……? いや、ちょっと雰囲気が違うな)


袴の女「そっちもそうだけど。そっち」

メロンパン職人「えーと…………関係者以外立入禁止」

勇者「……あー……」


袴の女「そういうことなの」

……

……


勇者「……ごめんなさい」

メロンパン職人「すみませんでした!!」

袴の女「わかってくれればいいの。次からは気をつけてほしい」

勇者「はい」

袴の女「あなたたち、観光客? あまり見ない顔だし、ここのこともよくわかってなかったみたいだし」

勇者「うーん……俺たち、別にここに観光をしに来た訳じゃないんだ。ちょっと大事な目的があってさ」

袴の女「大事な目的?」

勇者「そう」


袴の女「……おっぱい?」

勇者「そう」



袴の女「……」

勇者「……あっ、違う、そうじゃない違うんだ」

袴の女「でもさっきはあんなに叫んで……」

勇者「違う、誤解なんだ、いや若干違わなくもないけどちょっと違うんだってば」

袴の女「変な人」

袴の女「とにかく、観光が目的なら違う海岸に行くべき。ここと違って、ちゃんと一般向けに開放されている場所もあるんだから」

勇者「そうだったのか。……どおりで人っ子一人居ないわけだ。いや、アンタがいたか」


勇者「そう言えば、アンタ誰なんだ? なんか見慣れない変な服着てるし、普通にあの場所にも入ってただろ?」

袴の女「変な服…………私はここで巫女をしている者。ここは少し特別な場所だから、入っていい人も限られてるの」

勇者「特別な場所……?」

巫女「そう」

巫女「気になる?」

勇者「うん? まあ多少は……」

巫女「じゃあ。はい、これ」スッ

勇者「へ? なんだこれ……」


巫女「南の都市の観光ガイド」

勇者「観光ガイド?」



巫女「この場所についての説明はそのページに詳しいことが書いてあるの。あと、ここも全部が立入り禁止な訳じゃなくて一般開放されてる場所もあって、そこにはお土産やご当地グッズのコーナーなんかもあるから暇があれば是非立ち寄って何か買って行ってね」

勇者「お、おう」

勇者(何だこいつ、妙に独特なペースで喋るな……)

勇者(……なんか、どこかで会ったことがあるような)


巫女「……」ジーーーーッ

勇者「……」


巫女「……」

勇者「……」


勇者「あーっと……じゃあ、俺はこの辺で」

巫女「……あなた、とっても不思議な人ね」

勇者「えっ」

巫女「私はお爺ちゃんほどそっちの方はよくわからないのだけれど。少しはわかる方なの」

巫女「普通の人は、もうちょっとこう、一本道? 時々逸れることはあってもだいたい一本だけなの」

勇者「??」

巫女「けれど、あなたは少し普通じゃないかも。あなたの先が全然見えないの」

勇者「……」

巫女「それじゃあ、またね」

テクテク


勇者「……」

勇者「……」

勇者「……あっ。あの時の壺売り女か」

勇者「壺売りじゃなくて、実はおみや売り女だったってことだな」



メロンパン職人「俺ら、完全に蚊帳の外でしたね」

主「キィキィ」

宿

勇者「くそ、結局別の海岸に行ったけど誰もいなかったじゃないか」

メロンパン職人「もう日も暮れてたし仕方がないですよ」

メロンパン職人「とりあえず今日のところはもう休んで、探索は明日からにしておきましょう」

勇者「……ああ」

メロンパン職人「早く聖女様の居場所を見つけなくちゃいけないんですから、まずは霊能者さんを探しますよ」

勇者「……ああ」

メロンパン職人「……聞いてます?」

勇者「……ああ」


勇者「ところでメロンパン職人、この宿の風呂のことなんだけど女湯って」

メロンパン職人「もうやだこの人」

勇者「……ん? メロンパン職人、何を読んでるんだ?」

メロンパン職人「ああこれ。さっき巫女さんに貰ったガイドブックですよ」

勇者「ガイドブック? あの観光ガイド?」

メロンパン職人「はい」

勇者「……メロンパン職人、俺たちに観光をしてる暇なんてないんだぞ?」

メロンパン職人「アンタに言われたくはないですよ」

メロンパン職人「ほら、明日都市を見て回るんですから。土地勘もない所だし、少しでも知っておくのは悪いことじゃないでしょう」

勇者「なるほどな」

メロンパン職人「今日みたいに、立入禁止の区域に入り込んじゃうこともあるわけだし」

勇者「……そうだ、ちょっとそれ、貸してみてくれ」

メロンパン職人「どうぞ」スッ

勇者「ええと……最初のページは、この島の見取り図か」

メロンパン職人「なんか全体的に王都とは雰囲気違いますね。俺たちがあんまり海とか見慣れてないからかもしれないけど」

勇者「……あったあった、ここ、今日行った砂浜だよな」

メロンパン職人「確かに。このポッカリした浮島が近くにあるところですね」

メロンパン職人「なになに……『ぞうさんの祠』?」

勇者「……ぞうさん?」

メロンパン職人「……うーん。読み進めてみると、どうもこの辺りの地域の守り神? みたいなものらしいですね」

勇者「ぞうさんが? パオーンって?」

メロンパン職人「ちょっと想像つきませんけど、そういうことみたいですね」

勇者「ふーん。まあ、だからあいつも不浄な気をうんぬんって言ってたのかもな」

メロンパン職人「勇者さんってば神様のお膝元でおっぱいおっぱい連呼してたわけですか」

勇者「お前も言ってたじゃねえか」

お久しぶりです!
次いつになるか分からないけどまたボチボチやってくのでどうぞよろしく

>>731の人は俺じゃない

ゴゴゴゴゴゴゴ……


勇者「……あの象、鼻で海水吸ってねえか?」

勇者「あんなデカイ身体でそんなことされたら、こんな浜辺の砂ごと」


ズボボボボボボボボボボ

勇者「……」




勇者「主ーーーっ!! 早く来てくれーーーっ!!?」


ツルッ

勇者「あっ」


ボチャン

タタタッ


メロンパン職人「はぁ、はぁ、巫女さん! 巫女さん!」

巫女「……」


メロンパン職人「うぅ、体がどんどん冷たくなってく……」

メロンパン職人「とにかく病院! ……でもこの傷は魔法がどうとか言ってたから、えぇと、教会!?」

メロンパン職人「はやく連れてってあげないと……!」

街中

ワーワー、キャーキャー! ヒナンシロー!

メロンパン職人「あ、あのっ! 病院に行きたいんですけど! 怪我人がいるんです!」


ワーワー、キャーキャー!

メロンパン職人「ぐぬぬ……」

メロンパン職人「そこの人! 病院、どこか教えてくれませんか!!」

ガシッ!

市民「あぁ!? そんなの、もう医者だって逃げてるに決まってるだろ!」

メロンパン職人「でもっ」

市民「見ろあのバケモノ! 怪我人の前に、お前だって早く逃げなきゃ死ぬんだぞ!」

バッ!

メロンパン職人「あっ」


タタタッ……

メロンパン職人「うぅ、どうすれば……」


モヒカン「メロンパン職人!!!」

メロンパン職人「!」

巫女「……」


モヒカン「おまえ……そいつは……!! 何があった!!」

メロンパン職人「わからないですよ!!」


メロンパン職人「勇者さんが、なんか変な感じするって言うから、祠に行ったら巫女さんはこんなことになってて、そしたらあんな怪物が出てきて!」


モヒカン「あぁ、くそ! わかった! とりあえず怪我だな!?」

メロンパン職人「そう!」

モヒカン「見せろ!」

メロンパン職人「はい!」

モヒカン「……ッ! こいつは……」


巫女「……」


モヒカン(こんな傷、いったいどこのどいつが……!!)

モヒカン(出血は自前の結界か何かで覆ってるみたいだが……治してるんじゃなくて遅らせてるだけだ……)

モヒカン(それもあとどんくらい保つか……)


メロンパン職人「な、治せそうですか!?」

モヒカン「俺が治せるわけねえだろ! プロの癒士が要る!」

モヒカン「この街の駐屯所なら兵士とか医者もまだ残ってる筈だ! 一旦そこまで運────ッ!?」


ズボボボボボボボ


メロンパン職人「……えっ」

メロンパン職人「な、あ、あれ……でっかい象の周りに……うず潮……!?」

モヒカン「……チッ、ほっとけ! 今の俺らにどうこうできることじゃねえ!」

タタタッ

メロンパン職人「あっ!」


メロンパン職人「……」



メロンパン職人「勇者さん、大丈夫かな……」

メロンパン職人「……」


タタタッ

バサッ、バサッ、バサッ

主「……キィーーーー!」


ズタ袋「むっ」

ズタ袋「突然わたしを持って慌ただしく飛び上がったかと思えば……」


ズタ袋「どうした、鳥よ。速度が落ちているぞ」

主「キィ……」

ズタ袋「……フフッ、その様子、主人の気配でも見失ったか?」

主「……」バサッ、バサッ


ズタ袋「この魔力の濁り具合……袋から顔を出さずともわかるぞ。魔獣だな? それも古く、強きものだ」

主「……」バサッ、バサッ



ズタ袋「……そういうことか」

ズタ袋「フフッ……ふはははははは! 良い気味だ! わたしの手で直接葬ってやれないのは残念だが」

ズタ袋「あのとき、わたしの言葉にもっとありがたく耳を傾けていれば、少しは違った結果になっていたろうにな」

ズタ袋「なぁ、鳥よ」

主「……」バサッ、バサッ

ズタ袋「まぁ、耳を傾けられたところでこのわたしが勇者なんぞに教えてやる道理はないのだがな」

主「……」バサッ、バサッ


ズタ袋「これはもう、わたしの策が奴を嵌めたようなものよ」

主「……」バサッ、バサッ


ズタ袋「なぁ、鳥?」

主「……」




バッサバッサバッサバッサ‼︎

ズタ袋「あ、やめろ、振りまわすなっ」

このSSまとめへのコメント

1 :  MilitaryGirl   2022年04月19日 (火) 22:52:24   ID: S:XGhRfH

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2 :  MilitaryGirl   2022年04月20日 (水) 01:52:12   ID: S:JwGLE-

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3 :  MilitaryGirl   2022年04月20日 (水) 21:09:07   ID: S:4sALfb

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4 :  MilitaryGirl   2022年04月21日 (木) 00:23:05   ID: S:Tyi0Ir

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