奈緒「晶葉がぼんやりしてる」 (10)
独自の設定となっております。
短いです。
よろしくお願いします。
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奈緒「おい晶葉、何してんだ、大丈夫か?」
晶葉「ああいや、すこしぼーっとしていたんだ。ちょうど新作の試運転が終わったところで」
奈緒「お、そりゃお疲れ様。今度はどんなの作ったんだ?」
晶葉「悪いが企業秘密というやつでね、上役からストップがかかってる」
奈緒「もうあたしらとは完全に雇用形態が違うな?」
晶葉「はっはっは、冗談だよ奈緒さん。とはいえまるっきりウソってわけでもないが」
奈緒「すまん晶葉、冗談がどの部分なのかまるでわからん」
晶葉「なに、上役が麗奈のやつってだけのことだよ」
奈緒「まーた妙ちくりんなイタズラのために駆け回ってんのかアイツ。って待て、麗奈が上役?」
晶葉「うむ。実はちょっと前に秘密組織を結成したのだ」
奈緒「思いっきり秘密組織のことバラしてるけどいいのか晶葉」
晶葉「別に構わないんじゃないかな、ただの仲良しクラブみたいなものだし」
奈緒「そういうアレなのな」
晶葉「もちろんまともな活動内容みたいなものもない」
奈緒「いいじゃないか、あたしもそういうの好きだぜ」
晶葉「こういうのは正直初めてだからちょっと嬉しくてね、奈緒さんに自慢してしまった」
奈緒「よしよし、あたしにだったらいくらでも自慢していいからな」ナデクリナデクリ
奈緒「で、メンバーは誰がいるんだ?」
晶葉「うむ。それは――」
奈緒「待った待った。ここはあたしが当ててみよう」
晶葉「先に言っておくが光や紗南は違うからな」
奈緒「マジか……、お手上げだ」
晶葉「早くないか?」
奈緒「面目ない」
晶葉「というか私たちの構成人員は三人だけだからな、実はあとひとりなのだ」
奈緒「えっ、ホントに誰だあとひとり」
晶葉「もったいぶる意味もないから言ってしまうが、ほたるだ」
奈緒「あー……、あーあーなるほど言われれば納得だわ」
晶葉「だろう?」
奈緒「そういえば麗奈の後ろについてまわってる印象あるもんな、ほたる」
晶葉「事務所をはじめ寮内でも学校でもそうだな。私もよく見かける」
奈緒「あれ、晶葉も入れて三人とも学校同じなんだっけ」
晶葉「まあ私は学年が違うがね」
奈緒「しかしほたると麗奈が仲良しなのはいいとして、馴れ初めというかそのへん謎じゃないか?」
晶葉「ああ、それなら単純だよ」
奈緒「あ、知ってるんだ」
晶葉「なんでも麗奈が目をつけたんだそうだ。それもほたるがうちに入ってきたその日に」
奈緒「表現のせいで不良が絡んだようにしか聞こえない」
晶葉「妙にビクビクしてたのが気に入らなかったらしくてね、捕まえて話を聞いたと言っていた」
奈緒「二人の性格考えると間違ってなさそうなのがなぁ」
晶葉「まあ自己防衛と気遣いというのもあったのだろうな、ほたるが最初の頃の調子で答えて」
奈緒「不幸だから近づかないほうがいい、ってやつか」
晶葉「うむ。それを聞いて麗奈はピンと来た」
奈緒「えっ、どこに?」
晶葉「不幸の部分だね。さすがにこの辺りの思考は麗奈ならではだと思うよ」
奈緒「晶葉、説明を頼む」
晶葉「要約すれば本物の悪党なら多少の不運くらい飼い慣らせないとダメ、ということらしい」
奈緒「あいつ意外とビジョンみたいなの持ってるのか?」
晶葉「麗奈もあれで器の大きいところがあるんだよ、奈緒さん」
奈緒「そういやちびっこ衆からの人望すごかったなアイツ」
晶葉「話を戻すと、とはいえ初めはほたるも距離を置こうとしていたと聞いている」
奈緒「相手に迷惑かけるの極端にいやがるもんな、ほたる」
晶葉「そこは我らのレイナサマ、というやつでね。事あるごとに独りになろうとするほたるをさんざん強引に連れ回したんだそうだ」
奈緒「うわ、ちょっとうれしそうなほたるの顔まで目に浮かぶ」
晶葉「それで根負けと言うと言葉が変だが、麗奈にはついていって大丈夫と思うようになったというのが馴れ初めらしい」
奈緒「アイツやっぱすげえいい奴だよな」
奈緒「ところでさ、なんでわざわざ仲良しクラブなんて作ったんだ?」
晶葉「さすがは奈緒さんだな。そこに目をつけるとは」
奈緒「うん、わりと多くの人が気にかけるんじゃないかな」
晶葉「そ、そうか……。うむ、秘密組織結成の理由だったな」
奈緒「そういや秘密組織って言ってたな」
晶葉「これは光たちが構成人員ではない理由にも関わってくるんだが」
奈緒「あ、そこ理由あったのか」
晶葉「私たちは世界征服を目論む悪の組織なのだよ」
奈緒「…………はぁ」
晶葉「なっ、そんなため息までつかなくてもいいだろう!? そういう目も良くないな!?」
奈緒「いやいいんだ。悪ふざけって楽しいもんな」
晶葉「ホントちょっと待ってくれ奈緒さん、その辺の説明もさせてほしい」
奈緒「いやそれ仲良しが集まってチーム結成したってだけだろ?」
晶葉「違うんだって、違うんだって奈緒さん」
奈緒「わかった、わかったから話してみな」
晶葉「きっかけは麗奈がラボにやってきて私を誘ったことになるんだが」
奈緒「終わりじゃんか。晶葉はもうちょっと常識的な判断をする子だと思ってたぞ、あたしは」
晶葉「そこなんだよ奈緒さん! 私だって遊ぶだけなら組織はいらんだろうと一蹴するさ!」
奈緒「じゃあなんでさっきうれしそうだったんだよ」
晶葉「その、あ、悪の科学者って、か、かっこいいだろう……?」
奈緒「ちょっとあたしにはわかりかねる感覚だな」
晶葉「そんな気はしてた」
奈緒「で、その世界征服が目的のイタズラ組は普段なにやってんだ?」
晶葉「いつの間にか組織名がマイルドなものに決められているね?」
奈緒「麗奈がトップな以上その範疇からは出られないだろうし」
晶葉「まあそれはいいとしよう。普段とはいっても本当にふつうに遊ぶだけなんだ」
奈緒「いっしょに出かけたりとか?」
晶葉「休みが合えばそういうこともあるし、誰かの部屋にただ集まるだけの時もある」
奈緒「わかる。わざわざ他人の部屋に勉強道具持ってくるやついるだろ」
晶葉「麗奈もほたるもそのタイプだな。あいさつして勉強だけして帰って行った時もある」
奈緒「ほたるもそうなのか、麗奈とは別の意味で意外だな」
晶葉「仲良くなると自由人だってことがだんだんわかってくるんだ。これが正直面白くてね」
奈緒「お前も相当に自由人だと思うぞ。ふつう事務所にラボは作らない」
晶葉「ま、まあそれはいいじゃないか奈緒さん。そうだ、あとは私も勉強させてもらっているぞ」
奈緒「あれ、学年違うんだろ?」
晶葉「ファッションセンスの話だよ。恥ずかしい話だがそういう方面には疎くてね」
奈緒「なるほど」
晶葉「系統は違うがどちらも自分に似合う服選びが上手いからな、見ているだけで参考になる」
奈緒「まあ13歳ってことを考えたらあの二人はそのへん成熟してるかもな」
晶葉「というか私は基本的にあの二人を年下とは捉えていないよ」
奈緒「あー、外見の話か。たしかにどっちも妙に大人っぽいなとは思ってた」
晶葉「そこも系統が違うのが非常に興味深い」
奈緒「麗奈は間違いなく美人になるよな、将来」
晶葉「私もそう思う」
奈緒「あとは度合いの差というか、完成度って言うと変な感じだけど」
晶葉「既に美人要素がちらほら見えてるのが驚きだな。振る舞いは別にしてだが」
奈緒「ほたるに関してはたまに色気が匂い立っている気がするな、あたしは」
晶葉「この間ほたるが出ているミュージックビデオを見たのだが、頬を赤らめたほたるはマズいと思った」
奈緒「それ教えてくれ、後で観る」
奈緒「そういえばプロデューサーさんはイタズラ組のこと知ってるのか?」
晶葉「知ってるぞ」
奈緒「さすがにそういうところは目が利くよな、あの人」
晶葉「違う違う、これまでに二回説教を食らっているからだ」
奈緒「三人そろって?」
晶葉「うむ。三人とも正座だな」
奈緒「ほたるも悪ノリしちゃったかぁ……」
晶葉「怒られるのも含めてそういう経験がないから新鮮で楽しいんだそうだ」
奈緒「そういう新しい風を吹き込むのは感心しないぞ」
晶葉「いいじゃないか奈緒さん、ほたるだって大人になった時に笑える思い出くらい作っておかなきゃな」
奈緒「いいこと言ってるっぽいけどお前も共犯な上に年齢ほぼ変わらないからな」
晶葉「奈緒さんはそういうところ本当に逃さないよな」
奈緒「環境が作り上げたんだよ」
晶葉「そこで目の光を失くすのはやめてくれないか」
奈緒「こほん。しかしそれだけ仲が良いならさ、いっそプロデューサーさんにユニット組ませてもらえるよう頼んでみたらどうだ?」
晶葉「……試しに一度ふたりに相談してみても面白いかもしれないな」
奈緒「あたしはいい線いくんじゃないかと思うぜ」
晶葉「素敵な提案をありがとう、奈緒さん。……む、スマホが」ヴゥゥ ヴゥゥ
奈緒「ウワサをすれば、ってやつか」
晶葉「ああ、うちのボスから招集がかかった」
奈緒「上手くいくといいな、そうなるよう祈ってるよ」
おしまい
うちの事務所を見てくれ、っていうアレ
読んでくれた方、ありがとうございました。
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