提督「漂流するラブレター」 (1)
早朝。提督は鎮守府の見回りを行っていた。
管理者として自分の目で鎮守府の状況を確認する必要があるのだ。けれど、それはほとんど気楽な散歩のようなものであった。
港の方に出ると冬の潮風が提督を凍えさせる。提督は制服の襟を首に巻き付けるようにして散策を始めた。
特に代わり映えもしない景色を眺めながら歩いていると、鎮守府の港を囲うように切り立った岩の崖壁と海の合間に人ひとり通れそうな横道があることに気付いた。
港の主な設備から離れ、鎮守府の端も端、人工的な領域と自然的な領域が混じった曖昧な場所であった。恐らく艦娘も知らない道であろう。
「これはもしかしたら敵の侵入経路に使われるかもしれん。安全を確認せねば」とは言ったものの、内心は少年的な冒険心が主であった。
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