俺「俺が買った製品の強度が偽装されてただって!?」 (14)


俺の目に信じられないニュースが飛び込んできた。


「強度を偽装していたと、メーカーが発表……」


ようするに、あんたらが買った製品は思ったよりもずっと早く壊れますよ、ということだ。

ニュースによると、俺が買った製品も、強度偽装した品に当てはまっていることは間違いなさそうだった。

えらいことになってしまった。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1540224025


さっそく俺は専門の業者を呼んで、手持ちの製品について調査してもらった。

偽装された品だったとしても、必ずしも壊れやすいとは限らない。

祈るような気持ちで俺は調査を見守ったが、結果は残酷だった。


「あー……これはもうダメですわ。もうすぐ壊れちゃうと思いますよ」

「そんな……」


「なんとかならないんですか?」


と聞いてみたものの、


「こうもあちこちイカれちゃってるとねえ……もう寿命ですよ。
 あとは壊れるのを待つだけですね……」


余命宣告されるだけだった。

まだまだ大丈夫だと思っていただけに、俺はひどく落胆した。


こうなるともう、怒りの矛先をメーカーに突き立てるしかない。

俺はメーカーの本社ビルに直接出向いた。直談判だ。


アポなしにもかかわらず、メーカーの人間は丁寧に応対してくれた。

おそらく俺のような人間が何人もやってきて、むげにあしらったりするより
最初から丁重に接した方が話が早く済むと学習したのだろう。


「このたびは、私どもの製品で表示に不正がありまして、誠に申し訳ありません……」

「ホントだよ!」


俺は不満と怒りを洗いざらいぶち撒けた。


これまでそれなりの期間、ずっと購入した製品を愛でてきたというのに、一体どうしてくれるのかと。


メーカーの社員は、ひたすら平身低頭で話を聞くのみであった。


俺が一通り溜まっていたものを吐き出し終わると、待ってましたとばかりに社員はこう切り出した。


「……本当に申し訳ありませんでした。
 つきましては、製品の代金については全額返金させていただきますし、
 さらに代わりとなる新しい製品を無料で提供いたします」

「えっ、ホントか!?」

「はい、むろん新しい製品は強度表示に誤りはありませんので、ご安心を……。
 長持ちすること間違いなしです」

「そ、そうか……」


「どうかご穏便に……」

「んー、まあいいかな」


自分でも驚くほどあっさりと許してしまった。

いくら謝罪されても補償がしっかりしてても、このメーカーが不正したという事実には変わりないのだが、
金が返ってきて新品までくれるならまぁいいか、という気分になっていた。

まったく現金なものである。あるいはこの社員がやり手なのか。

帰る頃には、あれほど俺の中で燃え盛っていた怒りはすっかり鎮火してしまっていた。


俺が長年愛でてきた(強度偽装されていた)製品を見る。


改めて見ると、もう壊れる寸前だというのが分かる。


せっかくここまで構築してきたというのに……。


俺が購入していた製品は――「星」である。

創造主となって、星の環境を整え、住人を育てていくという代物だ。


だいたい46億年ぐらいかけて今の状態まで持っていき、まだまだもつはずだったのだが、
今回の騒動で想定よりずっと早く壊れることが分かってしまった。

46億年なんていうのは俺からすれば大した時間でもないのだが、それでも残念は残念である。


ちなみに名前は「地球」だ。


それからまもなくして、業者の余命宣告通り、製品は壊れてしまった。


全体にひびが入って、粉々に砕けた。

あまりにもあっけない最期であった。


だが、その頃になるとすでに代わりとなる新品がメーカーから届いており、
俺は次はどういう星に育てていこうかということで頭が一杯になっていた。





― 終 ―

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom