【モバマスSS】比奈センセ、耳かきをする (11)
早朝に一人、眼鏡と可愛らしい猫のワンピースの女性が事務所に入ってくる。
「...おはようございま~ス...」
彼女の名前は荒木比奈。眼鏡がよく似合うオタク系アイドルだ。
「誰もいないっスかね...おお...一番乗り初めてかもっス...」
正直な所、彼女が事務所に朝早く来ることは珍しい。
普段は深夜アニメをみているか、原稿をやっている彼女であまり朝が得意な方ではないからだ。
しかし今日は少し違った。といっても別に何もしていなかったわけじゃない。
前日がオフなのをいいことにに三度寝をしアニメを目一杯鑑賞し、
早朝にシャワーを浴び、通勤のタイミングが少し早くなっただけだ。
そして...彼女の目の前には寝息をたてている男性が一人。
「プロデューサー?...おお、寝てる。...珍しいっスね」
彼女は、自分の担当プロデューサーが寝息をたてているところが目に入った。
「プロデューサー......プロデューサー...?だめっスね、反応ないっス...まあ...起こすのも可哀想かな...」
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恐らく徹夜で仕事をしていたのだろう。と彼女は判断する。
ソファーにセルフ腕枕で寝る...原稿が終わったばかりの自分のようで、少し同情する
「...こういう時彼女なら...ひ、膝枕とか...?しちゃうんスかねえ......?」
そんなことを言っている彼女は力なく笑う、この力のない笑い方も彼女の魅力の一つだ。
...彼女はキョロキョロ首を振り、他に誰もいないことを確認する。
「よし...だれもいない...っスね...」
彼女は彼の顔に近づく。思えば彼の顔をこんなに近くで見たことはなかった。彼は自分より割と背が高いからだ。
とりあえず頬を突っついてみる...彼が少し身じろぎする。慌てて手を引っ込める。
「おっと、いけないいけない...起こす所だったっス...」
起こしたら可愛そうだ。恐らく仮眠時間を決めてソファーの前に携帯があるのだということに気づく。
恐らく時間が経ったらなるのだろう。何故か救急箱も目の前にあった、誰か怪我でもしたのだろうか。
「あとどれくらいなんスかねえ...」
少し彼の携帯の中身に興味はあるが彼女は見ないことにする
。...自分にだって見られたくないものがあるのだ。それは触れないほうがお互いのためだ。
「いやまあ...ある程度なら許容しまスけど...って何言ってるんだろ自分」
なんだか思考が変な方向に進みかけたので彼の顔の方に戻る。
「しかしまあ...なんて顔して寝てるんでしょこの人...」
なんというかとても寝苦しそうだ。...日頃のストレスだろうか、悲しみと苦しみと疲れが混ざっているかのようだ...
「いや、どんな顔っスか」
自分で自分にツッコミを入れる、朝っぱらから何をやっているのだろうという思いが彼女を支配する。
よし何か別のことを考えよう...
そう言えば、と彼女の友人兼ユニットメンバーである松本沙理奈の言葉を思い出す。
『眠っている男に膝枕してやれば起きた時何でも言うこと聞くわよ』
細部は違うかもしれないが、大まかにはこんな事を言っていた。
「あ~あんとき千枝ちゃん顔真っ赤だったっスねえ...」
さて、あれは事実なのだろうか、とふと思う。そう言えばソファーには彼女が座っても全く問題ないくらいのスペースがあるようで。
「......誰もいないっスよね?」
彼女は再度周りを見る。そこまで時間は経っていないようだ。
「......よし」
彼女は決意を固める。彼の顔の方に座り...彼の頭を持ち上げ...膝に乗せてみる。少し重く感じたがまあなんとかなったようだ。
「結構がっつり動かしたのに...起きないもんっスねえ...」
彼女はそうひとりごちる、彼の顔をここまで近くで見たのは初めてかもしれない。そう思った。そして気づいた...
「これ、とんでもなく恥ずかしいっ......///」
何故、自分はこのようなことをしてしまったのだろう。頬が熱くなる、普通に待っていればよかったではないか。
クッションか何か用意すればよかったではないか。どうして今日自分はジャージではなくスカートなのか。
何故そんな事になっているのか...自分でもわからなかった。しかし、同僚の言うとおりならば。
「起きるまで待ってなきゃいけないっ......」
ああ、自分はなんということをしたのだろう。軽はずみな行動を慎めと彼にも言われていたはずなのに。
財布が厳しくともBDやグッズを買ってしまう...そんな時に言われたことだが、まさかこのような形で痛感しようとは...
「...まあ。気持ちよさそうだし良いっスかね...」
彼の顔が気持ち安らいでいるような...そんな気がするのでまあいいだろう、そう彼女は思った。
しばらくこのまま顔を眺めることにした。
「...さすがに飽きてきたっスね」
それなりの時間が経過した。だが彼は起きる気配はなく、誰も来る気配もない。珍しいこともあるものだ。
休みの日ですらいつもここには誰かしらいるというのに。と彼女は思う
「寝顔も見慣れてきたし...ここはネタのためになにかするべきでは...?」
だがしかし、自分はあまり動けない。なぜなら膝の上に彼がいるからだ。立ち上がりでもしたら、彼だって起きてしまう。
目の前にあるものは救急箱とペン立てくらいだ。
「あ、もしかして...」
彼女は救急箱に手を伸ばす。さすがに持ってくることは出来ないが近くに引き寄せて片手で器用にあける。
「あ、やっぱりあった」
彼女が取り出したのは...容器にはいった綿棒だった。
「膝枕っていったら...耳かきっスよねえ...」
おそらくこの行為をした事自体に後で彼女は赤面するだろう。
自分の膝くらいたいしたことないと思ってても恥ずかしいものは恥ずかしいのだから。
しかし現状の彼女はそれに気づかない。いや、気づいているが寝ている彼に対しての遊び心が勝ってしまっているのだ。
「さて...お邪魔しま~ス...」
綿棒を耳の中に入れてみる...コショッ...コショッ...彼の耳の中を綿棒で弄る...心なしか気持ちよさそうだ
「...結構汚れてるもんっスね...あんまり中までやらないほうがいいんだっけ?」
綿棒についた耳垢を見てひとりごちる。彼の耳を思うがままに弄って遊ぶ、彼が起きたらどんな顔をするのか、楽しみでしょうがない
彼の耳を綿棒で掃除するのも案外楽しい、惜しむらくは反対側が出来ないことだが、ひっくり返せないので無理と彼女は結論付けたようだ。
「こういう細かい作業は得意っスよ~」
彼の耳元で囁いて...コショッ...コショ...っと一つ一つ丁寧にとっていく。ガーゼに耳垢を落としていく。
「意外に溜まってるっスね」
恐らく耳を掃除する暇もないんだな...と彼女は思う。自分たちのために頑張っている彼のために少しは優しくしてあげなければ。
あらかたとりおえたところで。
「最後は......ふ~~~っ.........えへ、やっぱりこれっスよね~」
お約束と言われた耳に息を吹きかけて彼女の悪戯は終わった。後は頭をなでながらゆっくりと待つことにする。
「......起きたらどんなリアクションするっスかね~」
そんな事を言いながら彼女は屈託のない笑顔で笑うのだ。この後に続く仲間たちのからかいという悲劇に気づかないまま。
...その後起きたプロデューサーに状況の説明を求められR「じゃあ反対側も頼むわ」と寝返りを打ち、顔を真っ赤にしながら耳かきをさせられたのはまた別の話。
以上です。速報復活おめでとうございます。せっかくなのでサクッとやってみました。ありがとうございました
あ、誤字多いっすね。急ごしらえすぎた。ごめんなさい
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