ルビィ「お姉ちゃんが嫌い」 (14)
ルビィはお姉ちゃんが嫌いです。
黒澤父「さすがはダイヤだ、今回もよくやった」
黒澤母「立派に娘が育ってくれて嬉しいわ」
ダイヤ「いえ、黒澤家の長女として当然の事ですわ」
成績優秀だし何でも器用にこなすお姉ちゃん。
そんなお姉ちゃんとルビィはいつも比べられます。
決して成績も悪いワケではないのに、お姉ちゃんのせいであまり良い顔をされません。
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ルビィはお姉ちゃんが嫌いです。
ダイヤ『おはようございます、生徒会長の黒澤ダイヤです』
全校集会でたくさんの人の前だというのに、ステージの上にたった一人で立っているというのに堂々としているお姉ちゃん。
それに比べてルビィは一対一でも上手く話せません。
花丸ちゃんや見知った人は別だけど、相手が男の人だとしたら話せないどころか逃げ出したい気持ちでいっぱいになります。
そんな時はいつもお姉ちゃんに呆れた顔をされ、そして小言を言われます。
お姉ちゃんは"できる人"だからルビィみたいにできない人の気持ちがわからないんです。
ルビィはお姉ちゃんが嫌いです。
果南「おはようダイヤ」
鞠莉「ダイヤ~、あとで理事長室に来てもらえる?」
モブ「黒澤さん、宿題でわからないところがあるんだけど…」
教師「黒澤、大学の推薦の件で話が~…」
お姉ちゃんの周りには人がたくさん集まります。
人望があって、信頼されていて、同級生だけじゃなく教師や他の学年の生徒からも評価されています。
そんなお姉ちゃんとルビィを比べる人は少なくありません。
そしてガッカリされる事も少なくありません。
反抗期でもやってきたのでしょうか?
お姉ちゃんとやってきた習い事を全部辞めました。
長い月日をかけて伸ばしてきた髪も切りました。
お姉ちゃんに迷惑をかけるようになりました。
お姉ちゃんのプリンを勝手に食べたり、寝坊をして一緒に遅刻ギリギリに登校したり、他にもいっぱいいーっぱい色々な事をしました。
また、アイドルについて一緒にお話しする事もなくなりました。
お姉ちゃんと過ごす時間より、他の人と過ごす時間が増えてきました。
ある日のこと、沼津駅方面にあるクラスメイトの家に遊びに行く事になりました。
普段は駅方面に来る時はお姉ちゃんや花丸ちゃんと一緒に行っていますが今日は一人です。
でも不安はありません。
駅まではバスで行けるし、駅から友達の家まではそう遠くないし、何よりルビィだって一人でできるんです!
…と、さっきまでは思っていました。
ルビィ「ここ…どこ…?」
はい、迷ってしまいました。
冷静に考えれば、スマートフォンでナビ機能を使うとか、友達に連絡するとか色々と方法はあったんです。
でもその時のルビィはパニックのあまりそこまで頭が回らず…
ルビィ「こっちかな…?」
あても無く見知らぬ道を進んで行きました。
知らない道を歩いているせいか周りをキョロキョロしていたら…
ドンッ
不良「ってーな、オイ!」
自分の不注意で他人にぶつかってしまいました、それも不良と呼ばれる人に、です。
不良「どこ見て歩いてんだっ!」
ルビィ「す、すいません…」ビクビク
不良2「あー、こりゃ折れてるね」
不良「痛てて…慰謝料もらうしかねーな」
ルビィ「え、でもちょっとぶつかっただけで…」
不良2「じゃあコイツが嘘ついてるって言うのかっ!?」
ルビィ「ヒィッ!」
ルビィは本当に駄目な子です。
相手が理不尽な事を言っているのは解っているのに、怖くて言い返す事ができません。
誰か、誰か助けて……!
助けの言葉すら声に出す事もできず、必死に願うしかありませんでした。
でも日頃からお姉ちゃんに迷惑をかけているので、きっと神様もルビィを見放す事でしょう、そう思っていました。
ところが……
「お待ちなさい」
不良「あぁ? 誰だテメー」
なんと助けが来たのです。
でもルビィと不良の間に割って入ってきたその後ろ姿には見覚えがあります。
助けに来てくれたその人はなんと…
ダイヤ「私は、その子の姉です」
そう、お姉ちゃんでした。
今日は用事があって朝からいなかったのに…と言うか迷惑ばかりかけてるのに何で助けてくれるの…?
ダイヤ「妹の不注意で迷惑をかけてしまったようで申し訳ございません」
ダイヤ「そのせいで負傷したのであればしっかりと対応させていただきます」
ダイヤ「ただ、さきほどのような言いがかりをつけるのであれば、それこそ然るべき対応をとらせていただきます!」
不良2「お、おい…」
不良「…ちっ、妹の面倒くらいちゃんと見とけっ。行こうぜ」
不良2「おう」
おどおどしてるだけのルビィと違い、堂々とした立ち振る舞いでお姉ちゃんはあっという間に不良を追い払ってしまいました。
やっぱり皆が言うように、お姉ちゃんとルビィは全然違うんだなぁ…。
ダイヤ「ルビィ、大丈夫ですか?怪我はしていませんか?」
ルビィ「大丈夫だけど…どうして?」
ダイヤ「え?」
ルビィ「いつも迷惑ばかりかけてるのに、どうして助けてくれるの…?」
ダイヤ「ふぅ、何を言いますか…確かに手のかかる妹ではあります、ここ最近は特に」
ルビィ「うぅ…」
ダイヤ「それでも、私にとってはたった一人しかいない大切な可愛い妹なんです。理由なんてそれだけで十分ですわ」
そう言ってルビィを優しく抱きしめてくれたお姉ちゃんは少し震えていました。
その時ルビィは気付きました、さっきはあんなに堂々としていたけど決して怖くなかったワケではなかったんだって。
当然と言えば当然です、不良と呼ばれる人たちにたった一人で立ち向かうんだから怖くないワケがありません。
妹の為に危険を顧みず体を張るなんて…
ルビィはそんなお姉ちゃんが大嫌い
…なワケありません、大好きです!
成績も優秀、何でも器用にこなす、いつでも堂々としている、人望がある、信頼されている、そんなお姉ちゃんが大好きです。
大好きだからお姉ちゃんと同じ習い事を始めた。
大好きだからお姉ちゃんのように髪を伸ばし始めた。
大好きだからお姉ちゃんと一緒にいる時間をたくさん作った。
嫌いだったのはそんなお姉ちゃんと"比較される"事、そして"不出来な自分"だったんです。
お姉ちゃんは自分に厳しくて、そして誰にでも優しい…だからこそ家族や友達や周りの人からの良い評価なんです。
ルビィができないのは単に自分に甘かっただけだったんだ、そう気付かされました。
やっぱりお姉ちゃんはすごいなぁ…。
ダイヤ「行ってまいります」
ルビィ「行ってきまーす!」
黒澤母「はい、行ってらっしゃい」
あの日からまたお姉ちゃんと一緒に過ごす時間が増えました。
そしてルビィは生まれ変わりました。
苦手な事や辛い事から逃げず、しっかり向き合う事にしました。
近くて遠い、大好きなお姉ちゃんに早く近付けるように、そして胸を張って隣に立てるように…。
その為には今までよりもたくさん頑張らないといけないのは解っています。
だけど…目標が『大好きなお姉ちゃん』なので全然苦じゃありません!
今日も元気に、頑張ルビィ!!
おわり
テスト
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