学校の先生「最近の児童の名前がキラキラネームすぎてマジで読めねえ」 (29)


先生「えーと、これは……田中……あくむ君?」

悪夢「違います、悪夢(ないとめあ)です」

先生「え、あ……そうなんだ」

先生「田中悪夢(ないとめあ)君、ね」


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先生「君は……佐藤、ぼうけん君、でいいのかな?」

冒険「冒険(あどべんちゃあ)です」

先生「あー、アドベンチャーね……なるほど」

先生「佐藤冒険(あどべんちゃあ)君、と……」


先生「次は……吉田ななちゃんかな?」

菜々「ちがうのー、菜々(せぶん)なのー」

先生「そうだったのかー」

先生「ごめんねー、ちゃんと覚えるからねー」


先生「鈴木……いんせき君?」

隕石「そんな名前じゃありません。隕石(めてお)です」

先生「あー、はいはい」


先生「……これは分かったぞ!」

先生「杉山どらえもん君だろ!」

銅羅衛門「銅羅衛門(たぬき)です」

先生「そうきたか……」


先生「はぁ……」

先輩「どうした?」

先生「近頃の児童の名前が全然読めなくて……困ってるんですよ」

先輩「ああ……今は独特な読み方の名前をつける親が増えてるからなぁ」

先輩「キラキラネームっていうみたいだけど」

先生「ええ……年を経るごとに、変わった名前の子が増えて大変ですよ」


先生「読めないと、ショックを受ける子やクレームをつけてくる親もいますし……」

先生「ホントどうしたらいいのか……」

先輩「だったら……キラキラネーム対策講座を受けてみたらどうだ?」

先輩「それを受ければ、どんな名前だって読めるようになるぞ」

先生「そんなのがあるんですか! 受けてみます!」


講師「えー、皆さん、こんにちは」

講師「ここにいる皆さんは、いずれもキラキラネームの読み方に苦慮されている方々だと思います」

講師「しかし、私の講義を受ければ大丈夫! ご安心下さい! 必ず読めるようになります!」

先生(よぉし、頑張ってキラキラネームを克服するぞ!)


講師「まず大切なことは、今までの常識は全て捨てることです」

講師「“この漢字はこう読む”ということに捉われていては、キラキラネームは絶対読めません」

先生「なるほど……」

講師「次いで大事なのは、親の意図を読むことです」

講師「どういう意味を込めて名前をつけたか、というのを読むことができれば」

講師「どんな無茶なキラキラネームだって読むことができるのです」

先生「ふむふむ……」


やがて――

講師「これは?」

『三十代』

先生「“もうおっさん”です」

講師「ふむ、よろしい」


講師「では、これは?」

『不倫』

先生「“ぶんか”」

講師「これは?」

『紅茶』

先生「“ごぜんちゅうにのむな”でしょうか」

講師「ふむ、素晴らしい!」


講師「あなたならば、もう大丈夫!」

講師「どんなキラキラネームでも読むことができるでしょう!」

先生「自信がつきました! ありがとうございました……!」

先生(これでもう、どんな名前だって怖くない……!)


――



『前田滅血流亜留光流』

先生「前田めたのおる君!」

滅血流亜留光流「はいっ!」


『伊藤年金』

先生「伊藤はらってももらえない君!」



『本田十円』

先生「本田うまいぼうちゃん!」



『山本墾田永年私財法』

先生「山本ずっとおまえらのとち君!」



先生(読める……読めるぞ! 面白いようにどの名前も読める!)


先生「おや? えーとこれは……ふらわあちゃん?」

少女「ちがうよー」

先生「え、違うの!? じゃあ、らふれしあちゃん?」

少女「ううん」

先生「な、なんだって!? それじゃ、つぼみちゃん!? さきみだれるちゃん!?」

少女「全部ちがうよー」

先生(バ、バカな……。よ、読めない……!)


先生「この子の名前は一体なんて読めばいいんだぁぁぁぁぁ!?」

少女「花子(はなこ)だよー」










おわり

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