先生「えーと、これは……田中……あくむ君?」
悪夢「違います、悪夢(ないとめあ)です」
先生「え、あ……そうなんだ」
先生「田中悪夢(ないとめあ)君、ね」
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先生「君は……佐藤、ぼうけん君、でいいのかな?」
冒険「冒険(あどべんちゃあ)です」
先生「あー、アドベンチャーね……なるほど」
先生「佐藤冒険(あどべんちゃあ)君、と……」
先生「次は……吉田ななちゃんかな?」
菜々「ちがうのー、菜々(せぶん)なのー」
先生「そうだったのかー」
先生「ごめんねー、ちゃんと覚えるからねー」
先生「鈴木……いんせき君?」
隕石「そんな名前じゃありません。隕石(めてお)です」
先生「あー、はいはい」
先生「……これは分かったぞ!」
先生「杉山どらえもん君だろ!」
銅羅衛門「銅羅衛門(たぬき)です」
先生「そうきたか……」
先生「はぁ……」
先輩「どうした?」
先生「近頃の児童の名前が全然読めなくて……困ってるんですよ」
先輩「ああ……今は独特な読み方の名前をつける親が増えてるからなぁ」
先輩「キラキラネームっていうみたいだけど」
先生「ええ……年を経るごとに、変わった名前の子が増えて大変ですよ」
先生「読めないと、ショックを受ける子やクレームをつけてくる親もいますし……」
先生「ホントどうしたらいいのか……」
先輩「だったら……キラキラネーム対策講座を受けてみたらどうだ?」
先輩「それを受ければ、どんな名前だって読めるようになるぞ」
先生「そんなのがあるんですか! 受けてみます!」
講師「えー、皆さん、こんにちは」
講師「ここにいる皆さんは、いずれもキラキラネームの読み方に苦慮されている方々だと思います」
講師「しかし、私の講義を受ければ大丈夫! ご安心下さい! 必ず読めるようになります!」
先生(よぉし、頑張ってキラキラネームを克服するぞ!)
講師「まず大切なことは、今までの常識は全て捨てることです」
講師「“この漢字はこう読む”ということに捉われていては、キラキラネームは絶対読めません」
先生「なるほど……」
講師「次いで大事なのは、親の意図を読むことです」
講師「どういう意味を込めて名前をつけたか、というのを読むことができれば」
講師「どんな無茶なキラキラネームだって読むことができるのです」
先生「ふむふむ……」
やがて――
講師「これは?」
『三十代』
先生「“もうおっさん”です」
講師「ふむ、よろしい」
講師「では、これは?」
『不倫』
先生「“ぶんか”」
講師「これは?」
『紅茶』
先生「“ごぜんちゅうにのむな”でしょうか」
講師「ふむ、素晴らしい!」
講師「あなたならば、もう大丈夫!」
講師「どんなキラキラネームでも読むことができるでしょう!」
先生「自信がつきました! ありがとうございました……!」
先生(これでもう、どんな名前だって怖くない……!)
――
『前田滅血流亜留光流』
先生「前田めたのおる君!」
滅血流亜留光流「はいっ!」
『伊藤年金』
先生「伊藤はらってももらえない君!」
『本田十円』
先生「本田うまいぼうちゃん!」
『山本墾田永年私財法』
先生「山本ずっとおまえらのとち君!」
先生(読める……読めるぞ! 面白いようにどの名前も読める!)
先生「おや? えーとこれは……ふらわあちゃん?」
少女「ちがうよー」
先生「え、違うの!? じゃあ、らふれしあちゃん?」
少女「ううん」
先生「な、なんだって!? それじゃ、つぼみちゃん!? さきみだれるちゃん!?」
少女「全部ちがうよー」
先生(バ、バカな……。よ、読めない……!)
先生「この子の名前は一体なんて読めばいいんだぁぁぁぁぁ!?」
少女「花子(はなこ)だよー」
おわり
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