海未「学校に行きたくない…」 (18)
ちゅんちゅん
海未「ん…んん…」
朝日が眩しい。こんな清々しい朝はどれくらい振りだろう。ここの所部活の練習も厳しかったし生徒会の仕事も日舞の稽古もと色々重なってたから。
海未「朝ですか…。ふっ…ふふっ…ふふふっ…ふふふふ。どうしましょう。学校に行きたくない」
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海未「学校に行きたくない。行きたくないです」
仕方ない。
海未「そう。仕方ないんです。疲れていたんです」
そう、私は疲れていた。
だから、あんな事を…。
海未「どうしてあんな事を…」
後悔したって仕方ない。皆んなはきっと気にしてないし。私の日常が変わる訳でもない。
海未「そうです。気にし過ぎです」
バシャ。
顔を洗う。昨日の記憶を一緒に洗い流す。スッキリとして鏡を見る。そこには昨日の朝と同じ私が居たーーーーー。
そう。昨日の『朝』と同じ私が。
海未「よしっ」
もう大丈夫。昨日は終わり。そして今日が始まるのだ。
バシャ。
私はもう一度だけ顔を洗い鏡を見る。
そして…
海未「あぁぁぁぁぁぁぁ」
また思い出す。
海未「どうして私はあんな事を…」
何度洗い流そうともそれはやってくる。
やはりーーーーー
昨日の私も私なのだから。
そう。昨日の私、今の私、未来の私。全てが私なのだから。
そうーーーーー
私なのだから。
昨日の私はあれを良しとしていた。
海未「ふぅ…。そうです。昨日のあれは別に恥ずかしい事ではありません」
私は考え直す。間違っているのは昨日の私ではなく今の私だと。
海未「だいたい、いつもやってる事ではないですか。作詞だって似た様なものですし…」
そう。私は昨日の私を肯定する。
海未「誰も気にしていません。いつもの私です」
そうする事でしか…助かる道はない様に思えたから
穂乃果「海未ちゃーーーん!ことりちゃーーーーーん。おはよう」
ことり「おはよう。穂乃果ちゃん」
海未「おはようございます。遅いですよ」
穂乃果「ごめーん。だって昨日帰り遅かったじゃん?寝るの遅くなっちゃってさ」
ことり「昨日疲れちゃったよね」
穂乃果「そうなんだよぉ」
海未「穂乃果の寝坊はいつもじゃないですか」
穂乃果「そ、それを言われると…」
あの後、あれを何度か繰り返して、結局私はいつも通り登校している訳ですが。
穂乃果「いや~。しかし、いい天気だねぇ」
ことり「そうだね」
ほら、誰も触れてこない。きっと誰も気にしてない。私は自意識過剰だったのだ。
穂乃果「海未ちゃん課題終わってる?」
海未「もちろん」
穂乃果「え~本当に?」
ことり「穂乃果ちゃん…。終わってないの?課題が出たのって先週だよね?」
穂乃果「え?あはは…いやぁ…部活も生徒会も忙しかったじゃん?」
海未「それは私もことりも同じです」
そう。自意識過剰だった。今日もいつも通りの一日が始まる。そう思っていた。
にこ「あら?朝から騒がしい声が聞こえると思ったら穂乃果じゃない」
穂乃果「あっ!にこちゃん!!おはよう!!!」
にこ「おはよ。ことりもおはよう」
ことり「おはよう、にこちゃん」
にこ「それから…ポエマー海未もおはよう」
うわぁぁぁぁぁぁぁぁ。
にこ「え?」
ことり「う、海未ちゃん…」
穂乃果「行っちゃった…」
にこ「も、もしかして…私が悪い?」
穂乃果「え~っと。そうじゃない?」
にこ「いや…だって…昨日の夜自分で言ってたじゃない。私はポエマーだって…」
ことり「夜のテンションだったからね…。疲れてたし」
海未「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」
やっぱり、やっぱり、やっぱりやっぱりやっぱりやっぱり。
花陽「あっ、海未ちゃんだ」
真姫「え?海未?」
凛「本当だ。お~い」
海未「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」
花陽「海未ちゃん、おは…」
海未「あぁぁぁぁぁぁぁ」
花陽「よ……」
凛「行っちゃったにゃ…」
真姫「なんなのよ」
やっぱり皆んなちゃんと覚えていた。
海未『実は私…中学の頃からずっと詩を書き溜めていたんです』
自意識過剰なんかじゃなかった。
絵里『ハラショー!海未はポエマーだったのね』
海未『はい。実はそうなんです』
凛『流石μ'sの作詞担当にゃ~』
夢でもなんでもなかった。事実だった。
海未『私が海なら…まるで、あなたは太陽』
真姫『へ~友達を思って作った詩って…』
穂乃果『え?私?』
にこ『他に居ないでしょ』
穂乃果『え~…なんだか恥ずかしいなぁ』
海未『では、次の詩を。ことりの…』
あんな恥ずかしい事を…。
あんな歯の浮くようなセリフを…。
希『海未ちゃんはロマンチストなんやなぁ』
海未『ロマンですか…。それはちょっと違うかもしれません』
花陽『え?違うの?』
海未『私は思った事を詩にしただけですから』
穂乃果『海未ちゃんかっこいい!』
にこ『いや…よく聞いてると意味わからない事言ってるわよ』
ことり『あはは…』
意味わからない事言ってるわよ。
意味わからない事言ってるわよ。
意味わからない事言ってるわよ。
あはは…。
ちゅんちゅん
海未「ん…んん…」
あれ?ここは…どこ?
海未「私は…」
絵里「海未…。疲れてたのね。酷くうなされてたわよ?」
海未「絵里…私は…寝てしまっていたのですか?」
絵里「ここの所忙しかったんでしょう?ダンスの練習に弓道にに生徒会に家に帰ったら稽古もあって。いくら海未が凄いからって無理はダメよ」
海未「はあ…」
絵里「穂乃果達は先に帰したわ。随分心配してたけどあまり遅くなってもね」
海未「ごめんなさい。迷惑を掛けてしまって」
絵里「別にいいのよ。私の事は」
海未「所で…私はいつ頃から寝てしまっていたのでしょうか?」
絵里「覚えてないの?」
海未「はい…」
絵里「呆れた。どれだけ疲れをためてたのよ。学校が終わってからずっとよ」
海未「え?学校が終わってから?それって…」
絵里「そう。部活が始まる前ね。部室で寝てしまっていたのよ」
海未「そうだったのですか。通りで…」
絵里「ん?」
海未「長い夢を見ていた気がするなと。なんだか記憶も混同していますし」
絵里「そう。どんな夢?」
海未「あまり…言いたくありません」
絵里「そ。なら私も無理に聞くのはやめるわ」
海未「そうして頂けると助かります」
絵里「さっ、もう遅いし帰りましょう」
海未「はい」
どうやら私は今夢を見ていたらしい。それは凄く鮮明で残酷でけれどどこか曖昧な。正反対の特徴を合わせ持つ長い長い夢を。お陰でまだ少し頭の中が混乱している。
海未「はあ…。夢で良かった」
絵里「なあに?」
海未「いえ…なんでも…ありません」
絵里「何よ。変な海未ね」
海未「す、すいません」
絵里「いいえ。所で海未?」
海未「はい?何でしょうか?」
絵里「実は…ここだけの話なんだけど…」
海未「はい…」
絵里「私もポエマーだったりするのよね」
海未「え?」
完
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