曜「夢の結末」 (34)

曜(ここは・・・?)

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目に映る景色には見覚えがある。

曜(そうだ、ここは私の家の近くにある歩道だ・・・)

彼女は一人、太陽が照らす道を歩く。

曜(夢なのかな?でも、何だかすごいリアル…)


「キャー」


曜「!」

曜(今の悲鳴、向こうからだ・・・)

曜「気になるし、行ってみよう」

曜「確か、ここら辺・・・」

曜(?あのコンビニどうしたんだろう)

そっとコンビニに近付き、覗く。

曜「あ、あの人、ナイフを持ってる・・・」

曜(ご、強盗だ…)

曜(どうしよう…)

その時、ナイフを持った男がこちら側を向いてきた。

曜(まずい)

目があった。一瞬だが、向こうに見つかってしまっただろう。

曜(とにかく逃げなきゃ)

あれに捕まってはいけないと私の感が言った。


全速力で走った。走り続けた。

ドン

曜「痛てて・・・」

人とぶつかった。

曜「あの、すみませんでした」

「こちらこそ…あ、あなた、曜さんではないですか」

曜「ん?ダ、ダイヤさん!」

ダイヤ「こんな所で奇遇ですわね」

曜「そうですね…」

ダイヤ「そんなに慌ててどうしましたの?」

曜「そ、そうだ、ダイヤさん、早くここから逃げてください!」

ダイヤ「はい?」

曜「早く!」

ダイヤ「わ、分かりましたわ…」

沼津駅前

曜「ハァハァ・・・」

ダイヤ「どうして…走ったんですの?」

曜「それは…」

「みつけた」

曜「ダイヤさん、逃げて・・・」

「ふっふっふっ」

男はナイフで曜を刺した。

ーーーーーー朝

曜「うわっ!」

目が覚めた。ゆっくりと周りを見渡す。

曜「夢で良かった…」

時計に目をやる。

曜「まだ朝の六時か…」

曜(なんか・・・夢で見たコンビニが気になる・・・)

今日は休日で予定も無い。

曜「ちょっと行ってみようかな・・・」

早速、パジャマから着替え、コンビニへと向かった。

曜「いい天気だなぁ」

雲一つ無い晴天だ。日差しで輝いている。

曜(夢ではこっちの道を歩いたんだよね…でも、こっちの方が近道だし、こっちの道から行こう)

曜「悲鳴も聞こえない」

曜「良かった~ただの夢だったんだ」

安心しきった頃、コンビニに到着した。

曜「何か飲み物でも…」

周りから音が消え去り、沈黙が流れた。

曜「嘘でしょ…」

あの男が居た。ナイフを持った、夢で見たあの男と同じだ。

曜(逃げなきゃ)

男が振り向き、顔が一瞬見えた。

ニヤニヤした不気味な顔だった。

曜「こっちだと捕まった。だから、違う道で逃げる・・・」

ひたすら走り、自宅へと向かう。

曜「ハァハァ・・・もう少し」

視界に自分の家が入った。

曜「くっ・・・」

全力を出して走る。

ガチャ

扉を開き、家に入った。急いで全ての限りを掛けた。

曜「これで…大丈夫…」

「夢と違うことするんじゃねえよ」

曜「ひっ…」

扉の向こうから聞こえた。あと少し遅ければ殺されていただろう。

曜「助かった…」

安心し、疲れていた彼女は玄関で寝てしまった。

「曜・・・起きなさい」

曜「んっ・・・?お母さん?」

曜の母「全く、どうして玄関で寝てるの?」

曜「えーっと」

曜の母「まぁ、いいわ。朝ご飯出来てるから食べなさい」

曜「うん!」

TV ー今日も猛暑日が続いており・・・

曜「今日は一日中、家に居たいな」

TV ー次のニュースです。

TV ー静岡県沼津市の沼津駅駅前で、高校生と見られる女性がナイフで刺されて倒れているのが発見されました。

曜「!」

TV ー女性は搬送先の病院で死亡が確認され・・・

曜「ま、まさか・・・」

ポケットからスマホを取り出し、電話をかける。

曜「繋がらない・・・」

曜「なら・・・」

もう一度電話をかけてみる。

『も、もしもし・・・』

曜「ルビィちゃん、ダイヤさんは今どこ?」

ルビィ『お、お姉ちゃんなら用事があるって、朝出掛けましたけど・・・」

曜(そ、そんな・・・)

ルビィ『よ、曜さん・・・?』

曜(な、何でダイヤさんが…)

《夢と違うことするんじゃねえよ》

曜(私が夢と違うことをしたから…)

曜(もし、私が夢の通りの事をしていれば、ダイヤさんは死ななかった・・・)

曜「私が殺したようなもんだ…」

ルビィ『え?』

ピッ

黒澤家

ルビィ「曜さん、最後に何て言ったんだろ?」

「ル、ルビィ、早く来なさい!」

ルビィ「今行くよ」

ルビィ(お母さん、どうして声が荒ぶっての?)

ーーーーーー
一週間後

千歌「曜ちゃん…今日も来ないね…」

梨子「・・・」

花丸「ルビィちゃんも…」

善子(ダイヤが死んで、一週間経った。果南とルビィ、曜はずっと学校を休んでる。無理もないけど…)

千歌「梨子ちゃん、曜ちゃんと何か連絡出来ない?」

梨子「全然…電話も繋がらないし、LINEも返事がないわ…」

善子「・・・」

渡辺家

曜(外に出たくない…)

あの日から全く寝ていない。寝てしまったら夢にあの男が出てくるかもしれないからだ。

曜(眠い・・・でも、あの男が・・・)

睡魔に負けてしまった。また始まる。あの悪夢が・・・

ーーーーーー

曜「ここは…海?あ、あれ果南ちゃん?」

果南は制服のまま海に浮いていた。

嫌な予感がする。

曜「果南ちゃん!」

返事が無い。急いで海に飛び込む。

波に抵抗し、段々と果南に近づいていく。

曜「果南・・・ちゃん・・・」

果南の腕を掴んだ。

曜「後は陸に・・・」

曜「・・・」

あの男が立っていた。ニヤニヤした表情は変わっていない。

あいつが突き落としたんだろう。

曜「あいつ・・・」

ーーーーーー朝

また目が覚めた。海中ではなく自分の部屋だ。

曜「果南ちゃん、絶対に助けるから・・・」

自分の家を飛び出し、海に行った。

曜「ここだ…」

夢で見た場所に着いた。海辺にはポツンと一人の人が立っている。

曜(果南ちゃん・・・という事はあの男はまだ来ていない・・・)

曜は果南の周辺をじっくり見守っていた。その時、

曜(き、来た・・・)

建物の物陰から男が出てきた。

曜「果南ちゃんを・・・守る」

曜は隠れていた場所から飛び出すと、男に思いっきり体当たりした。

「ふっふっ…またか」

曜「果南ちゃんには近付かせない…」

彼女は男を地面に押さえ付けた。

曜「これで果南ちゃんは…」

先程まであった果南の姿が無い。

曜「か、果南ちゃん!」

返事は何処からも返って来ない。

曜「!」

波の中に浦の星の制服が見えた。

曜「い、今助けに・・・」

大きな波が来た。その波は果南を飲み込む。

曜「・・・」

曜「何で?」

曜「どうして?こいつは確かに・・・」

「誰が突き落としたと言った?」

「あの人間は自ら命を絶った」

「もし、夢の通りの事をしていれば、あいつは死ななかったかもな」

曜「私が…余計な事を…しなければ…」

曜「くそっ…」

曜「私が…私が…」

曜「ごめん、果南ちゃん…」

ーーーーーー三日後 夜
曜「私が二人を殺した」

曜「私が夢の通り行動していればダイヤさんは死ななかった」

曜「果南ちゃんをもっと見守っていれば、自殺は止められたかもしれない」

曜「私は自分が嫌いだ」

曜「私のせいで・・・」

曜「私が…しっかり…していれば…」

眠い。あの日から全く寝ていない。体も限界だ。

曜(次は、夢の通りにする…)

ベッドに入り、眠りについた。

ーーーーーー

曜「ここは・・・?」

見慣れた景色と場所だ。

曜「風が冷たい・・・」

どうやらここは、浦の星女学院の屋上のようだ。

曜「・・・」

彼女は柵に手を置く。

夢はそこで途切れた。

ーーーーーー朝

曜「・・・」

曜「うん・・・」

決心した。次は絶対に・・・

曜「・・・」

無言で家を出て行く。

Aqoursの練習はしばらくやっていない。
屋上は今、無人だ。

朝一のバスに乗り、目的地に向かう。

浦の星女学院 屋上

曜「ここで・・・終わる・・・」

冷たい風が頬を撫でる。

曜(夢の通りに・・・)

柵に手を掛ける。

曜「みんな・・・ごめん」

「待ちなさい!」

曜「善子ちゃん…」

善子「曜、早まらないで」

曜「どうして…ここに?」

善子「いいでしょ、そんな事は。戻ってきて」

曜「私は…もう…戻らない」

曜「私が夢の通りに動けば、これ以上誰も死なない」

善子「夢・・・」

曜「みんなに伝えておいて。ごめんって」

善子「何でよ!一人で抱え込むのはやめなさい!」

曜「もう、いいんだよ…」

曜は柵を登る。

善子「曜、待って・・・」

曜「さよなら…」

飛び降りた。これで誰も不幸にならなくて済む・・・


バサッ


善子「い、嫌…」

善子「救えなかった…現実でも…」

ーーーーーー
「やっと夢の通りに動いたか」

「ふっふっふっ…次はあいつだ…」

「夢の結末をどう変えるか楽しみだ・・・」

終わり

最後までありがとうございました。

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