高森藍子「歌鈴ちゃんがくっついてきます」 (10)


・「アイドルマスター シンデレラガールズ」のSSです
・描写について、複数のコンテンツの要素や独自の解釈を含むことがあります



道明寺歌鈴「……」ギュー

高森藍子「……あ、あの……歌鈴ちゃん?」

歌鈴「ひゃ、ひゃいっ!?」ビクゥ

藍子「どうして、私の腕にしがみ付いているんですか?」

歌鈴「ああああのですね、それは、えっと」

歌鈴「……はっ。藍子ちゃんっ!」

藍子「はい」

歌鈴「今日は、いいお天気ですねっ!!」

藍子「そうですね。ちょっと暑いですけど、とっても綺麗な青空で……」

藍子「そういえば事務所に来る途中、鳥さんが気持ちよさそうに飛んでいくのを見かけて。写真を撮りたかったんですけど、カメラを取り出している間に遠くにいってしまったんです……」エヘヘ

歌鈴「そうなんですか……ふふっ。空を飛ぶのって、きっと気持ちいいんでしょうねっ。全身で風を受けて……」

藍子「人間にも翼があればって、想像することありますよね」

歌鈴「……飛んでいれば、バナナの皮を踏んで転んだりしないだろうし……」

藍子「……ところで、その。どうして、私にくっつくんですか?」

歌鈴「はうっ!」ビクゥ

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歌鈴「そそそそれは、あうぅ……あ、藍子ひゃんっ!」

藍子「はい」

歌鈴「えぇと、えぇと……」

歌鈴「バナナと、鶏肉、どっちが好きですかっ!?」

藍子「さ、さすがに話題の逸らし方が強引すぎるんじゃないかなぁ……?」

歌鈴「そ、そうですかっ!? あ、あはは……」

藍子「もう、そうまでされると、逆に気になりますよ」

藍子「聞かせてもらえませんか? 甘えんぼ歌鈴ちゃんになっている理由を」

歌鈴「あ、甘えんぼ歌鈴ちゃん、でしゅかっ!? ……あぅ」

藍子「だって、まるで小さい子みたいに、ぎゅーってしてくるから」

歌鈴「うぅ、そう言われてしまうと、ちょっぴり恥ずかしくなってきました……!」

藍子「えへへ。よしよし」ナデナデ

歌鈴「ふわぁ……気持ちいい……」トローン

歌鈴「……はっ! ち、違いますっ! なでなでは、のーせんきゅーですからっ」

藍子「そうですか……じゃあ、私はいったい、何をすれば……?」

歌鈴「何も言わずに、どうか私を側にいさせてくだしゃいっ!」

歌鈴「今日の私には……藍子ちゃんの力がどうしても必要なんですっ!」ギュー

藍子「今日の、って……何か、あったんですか?」

歌鈴「うぅ~……じ、実はですね……」

藍子「はい……」ゴクリ

歌鈴「私……今朝の星座占いが、ひどい結果だったんです~!」ヒーン

藍子「占い、ですか」

藍子「えぇと、歌鈴ちゃんはお正月が誕生日だから……やぎ座? で、合ってますか?」

歌鈴「はいっ! 正解です! そのやぎ座の運勢が……もう、ダメダメの、ズンドコだったんですよぉ!」

藍子「……ズンドコ?」

歌鈴「ひゃうっ! 噛んじゃった……。ズンドコじゃなくて、どん底です!」

藍子「き、器用な噛み方しますね……」

歌鈴「なんでも、やること成すこと全部うまくいかない日になるって……」

藍子「そうなんですか……それは確かに、不安になっちゃいますよね」

歌鈴「はい……もう、いつドジをやらかすか、気が気じゃなくて……」

歌鈴「事務所に来るときも、一歩踏み出すたびに転んじゃわないかって、びくびくしながら歩いてたら……こんな時間に……」

藍子「なるほど。そういえば、今日は歌鈴ちゃん遅いなーって、思ってたんですよ」

歌鈴「はうぅ……藍子ちゃんを心配させるなんて、やっぱり歌鈴はダメな子……」ズーン

藍子「……うーん。ちょっと怯えすぎな気もしますけど、でも『石橋を叩いて渡る』って言いますし。いつもより慎重になることで、転ばずに事務所に来れたなら、かえって良かったんじゃないですか?」

歌鈴「え? 転びましたよ? 二回くらい」

藍子「えぇっ!?」

歌鈴「占いの力がこれほど恐ろしいとは……今度朋さんに会ったら、いろいろ教えてもりゃって……あっ」

藍子「……これ、本当に占いが関係してるのかな……?」

歌鈴「それでですねっ」ズイ

藍子「は、はいっ」

歌鈴「その占いによると、私の厄を落としてくれるラッキーパーソンが、藍子ちゃんなんですっ!」

藍子「えぇと、つまり、ラッキーアイテムの、人間版……っていうことですよね?」

歌鈴「そうですっ! だから、今日は出来るだけ、藍子ちゃんの側にいさせてもらいたいんでつっ! はぅっ」

藍子「事情はわかりました。……でも……」

歌鈴「や、やっぱり、迷惑ですか……? ……ですよね。私のドジが藍子ちゃんにまでうつっちゃったら、大変ですし……」

藍子「そんな。迷惑なんかじゃないですよ?」

藍子「ただ、今日は予定が別々ですし……事務所にいる間は大丈夫ですけど、そのあとはどうしましょう?」

藍子「私はラジオの収録で、歌鈴ちゃんは、来月のフェスに向けてのレッスンでしたよね?」

歌鈴「あわわわわ、そ、そうでした……」

歌鈴「え、えぇと……藍子ちゃんが収録しているブースの中で、私もレッスンをさせてもらうというのは……?」

藍子「さ、さすがに駄目だと思いますよ……? 絶対、物音とか入っちゃうでしょうし……」

歌鈴「で、できるだけ小声で歌いますからっ!」

藍子「よりによってボーカルレッスンなんですか!?」

歌鈴「あうぅ……で、でも一人でレッスンを受けるのは心配です……また転んじゃうかもしれないし……」

藍子「ボーカルレッスンなのに!?」

歌鈴「私、お腹から声を出そうとすると、バランス感覚も同時に出て行っちゃうタイプなので……えへへ」

藍子「初めて聞きましたよ、そんなタイプ……。歌のレッスンなら、歌詞を噛んじゃわないようにとか、そっちを心配するほうがいいんじゃないですか?」

歌鈴「……はっ! 考えてみれば、そうですねっ! 普段噛むのが当たり前過ぎて、考えが及びませんでしたっ!」

藍子「……前から少し思ってたんですけど。歌鈴ちゃんって、ちょっとそのへんの感覚が普通の人とズレてますよね」

歌鈴「えぇっ!? そ、そうなんですかぁ!?」

藍子「ほら。先月私のラジオに、歌鈴ちゃんがゲストで来てくれたこと、あったじゃないですか」

歌鈴「ありましたねぇ。たくさんお話できて、楽しかったです」

藍子「あの時歌鈴ちゃんの台本をちらっと見たら、一行ごとに『噛まない!』って書き足してあって、びっくりしましたもん」

歌鈴「え……? だ、だって、気を付けなきゃいけないことをメモしておくのは、普通なのでは……?」

藍子「例え加奈ちゃんでも、あそこまで同じことは書かないですよ……」

藍子「それに、『アルバム収録曲』とか、言い辛い単語が出てくるところは、『なるべく噛まない!』になってましたし……。どうしてちょっと諦めそうになってるんですか」

歌鈴「うぐぅ……だって、何回練習しても『しゅうりょくきょく』になっちゃうんですもん……」イジイジ

藍子「これは、前に茜ちゃんが言ってたことなんですけどね」

藍子「『諦めずに努力を続ければ、いつかきっと目標に辿り着きます! 努力! 根性! 勝利っ!』……だそうですよ? だから、歌鈴ちゃんも頑張ればきっと……!」グッ

歌鈴「はうぅ……! あ、藍子ちゃんが眩しい……!」

歌鈴「最終的に妥協しちゃって、そのうえで『アルバムに入ってりゅ曲』って、結局噛んじゃった私とは、月とすっぴょん……すっぽんですよぉ……」

藍子「あ、あはは……でも、ほら。歌鈴ちゃんは、そういうところも可愛いって評判だから、ね?」

歌鈴「それはそれでありがたいですけど……やっぱり、ドジはなるべく無くしたいですし……」

歌鈴「そのためには、藍子ちゃん先生のお力添えが必要なんです~!」ウルウル

藍子「もう、だから先生は……って、そういえばそういうお話でしたね」

藍子「うーん……一緒に居てあげたいのはやまやまだけど、お仕事も大事だし……何かいい方法は無いかなぁ……?」

歌鈴「うぅ……今の私に出来ることといえば、今のうちに藍子ちゃんのゆるふわ開運オーラを充電しておくことしか……」ギュー

藍子「あ、いいことを思いつきましたよっ」ピコーン

歌鈴「ほ、本当でしゅかっ!?」

藍子「歌鈴ちゃん。そのまま、もう少し顔を寄せてもらえますか?」

歌鈴「ふぇっ!? え、えぇと……こ、こうですか……?///」ギュー

藍子「ふふっ♪ いい感じですっ。 それでは……」

藍子「はい、チーズっ」カシャ

歌鈴「ひゃうっ!? ……え、自撮り……?」

藍子「はいっ。お仕事の間、側に居られない代わりに、この写真をお守り代わりにしてもらえたらなって。あ、今から送りますね?」ピロリン

歌鈴「あ、藍子ちゃん……! ありがとうございますっ! 待ち受けにして、持ち歩いて……いえ! いっそ家宝にしますっ!」

藍子「あはは、相変わらず大袈裟なんだから」

歌鈴「あ、届いた……はわわ、私ったら、目を瞑っちゃってる……! 言ってくださいよぉ、藍子ちゃんっ」

藍子「えへへ……なんだか可愛いなって思って、つい♪」

歌鈴「むぅ……でも、これでなんだか、勇気が湧いてきた気がしますっ! 道明寺歌鈴、もう大丈夫でつっ! ……あぅ」

藍子「よかったぁ。ラッキーパーソンの役割は、果たせそうかな?」クスクス

歌鈴「はい! それはもう!」




歌鈴「ラッキーパーソンは『イニシャルが【I】の人』ですから! 藍子ちゃんのパワーを借りて、今日一日、乗り切って見せます!」


藍子「………………あれ?」


歌鈴「……はい? どうかしましたか?」

藍子「あのぉ……私って、高森藍子、ですよね?」

歌鈴「え? は、はい。存じておりますっ」

藍子「……えぇと……藍子って、『AIKO』だから……イニシャルは、【A】なんですけど……」

歌鈴「…………あああああぁー!」ガーン

藍子「も、もしかして、今気付いたんですか?」

歌鈴「だ、だって、『アイ』って聞いたら、もう藍子ちゃんしか頭に浮かばなくって……!」ワタワタ

歌鈴「あぁぁもう、恥ずかしい……! こんなの、ドジじゃなくてただのおバカさんじゃないですかぁ!」ヒーン

藍子「と、とりあえず落ち着きましょう? ね?」

藍子「……あ。そうだ! 私たち、二人合わせてインディゴ・ベルじゃないですか! それならイニシャルは【I】ですよっ。きっと大丈夫ですっ!」

歌鈴「はうぅ~! こんな私でも、見捨てないでくれますか……っ!?」ギュー

藍子「見捨てるわけ無いじゃないですか、もうっ」ナデナデ

藍子(…………一応、私のほうが年下なんだけどなぁ。なんだか逆になったみたい)クスッ



おわり


以上、お付き合いありがとうございました。
あーちゃん誕生日おめでとう!

歌鈴を情緒不安定に書き過ぎた感もありますが、俺も仕事でやらかした時はだいたいこんな感じなので、たぶん大丈夫だと思います。
インディゴ・ベルもっと流行れ!

前作
高森藍子「歌鈴ちゃん会議」

も、よろしければどうぞ。

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