【デレマス】血塗られた道に免罪などありません (72)

―女子寮

ハァハァハァ

タンタンタン

―息を切らして駆けていく一人の女性

「はぁはぁはぁ……間に合って」

―その手には一通の手紙

―やがてある扉の前にたどり着く

ドンドン

―朝早くなのに遠慮なしに強く叩く

「いるんですよね?返事を……返事をしてください!」

ドンドン

「お願い!出て来てください!」

―なるべくなら無事な姿で

―そう願う彼女の期待も空しく、返事は返ってこない

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1531914092

―その様子に何事かと次々に人が集まって来た

「ちひろさん……どうしたんですか?」

「うふぅ、いつからプロデューサーさんの後ろではなくて、女の子を追い掛けるようになったんですかぁ?」

―彼女達は知らない。ちひろと呼ばれた女性の手にある紙に書かれた内容を

「そんなんじゃ……それより申し訳ありませんが、管理人さんに頼んで鍵を持ってきていただけませんか?」

「え?は、はい」

―返事をしたのは髪の毛をツインテールにまとめた少女

―少しの間をおいて管理人を連れて帰って来た

「ちひろさん?どうしたんですか?こんな朝早くから……」

「これを……手紙にこうありましたので」

「何々……ええと……っ!!」

「嘘……」

「まさか……そんな」

―次々に少女達の呟きが聞こえる

―しかし、女性は構っている余裕はなく

ガチャガチャ

「嘘……開かない」

「中のチェーンか何かで止めているんでしょうか?」

「押忍!私にお任せを……でやぁぁぁぁ!」

ガギッ

「開いた……うっ」

プワーン

―流れて来たのは生臭い匂い

―しかも鉄の匂いがする

「皆さんは……中には……」

―覚悟を決めて入ろうとする

「なら、私も一緒に」

「清良さん……はい、お願いします」





―少しすると絶叫がこだまする

―泣くような声で人の名前を呼ぶ

―その部屋のプレートには



―「長富」の苗字が印されていた

勝手にアイドルの過去捏造シリーズ第三弾……今回はアイドルとプロデューサーは結ばれますが、ハッピーエンドではありませんので、気になる方はブラウザバックを


以上、独自の設定がありますので、よろしくお願いいたします

…………
……

ヴロォォォォォ

♪だけどそいつの心根と

燃える理想の気高さを

知っていたのは風ばかり……

「ふふふっ」

まゆ「プロデューサーさんもその歌が好きですねぇ」

モバP(以下P)「あぁ、前にも教えたけど、いなくなった親父が教えてくれた唯一の歌だからな」

響子「60年代でしたか?このウエスタンロックというのは?」

P「まぁ、流行っていた時代と親父の年を考えればまぁ……」

智絵里「す、すみません。私はこの歌詞……」

P「すまんな。たしかに吊し首ってのは女の子に聞かせるそれではないからな」

ゆかり「でもプロデューサーさんの嗜好に併せられるのもお嫁さんの勤めですから……」

まゆ「うふぅ、ゆかりちゃんは愉快なことを言いますね」

智絵里「そうですね。しまだ結婚できない人が言うセリフじゃありません」

響子「あぁ?」

まゆ「うふぅ」

バシッバシッ

P「ははっ、みんな仲良しで嬉しいよ」(棒)

キキッ

P「さぁ、着いたからみんな降りなさい」

四天王「はぁい」

P「じゃあ、ちょっと休憩したらレッスン時間だから遅れないようにな」

P「俺はエライさんと新人の面接に行ってくる」

智絵里「また……新しい子……」ギリリ

ゆかり「うふふ……私とプロデューサーさんの仲について、理解が早い子ならいいんですが」ギリリ

響子「あぁ?」ギロッ

まゆ「うふふ、ゆかりちゃんも愉快なことばかり言いますね」ハイライトオフ

P「胃が痛い……」キリキリ

バタン

ちひろ「お疲れ様です」

ちひろ「あ、面接担当から50年代から80年代のヒットソングの資料を持って来て欲しいとの伝言です」

P「はい?……面接……アイドルのですよね?」

ちひろ「えっと、私にもよくはわからないのですが?」

P「やれやれ、かな子のクッキーすら食べられないのか」

ガタッ

P「ちょっと資料室まで行ってきますね」

ちひろ「すみません」

…………

ポンポン

P「これでよし。しかし何に使うんだろう?」

P「昔のアイドルとの比較?……誰かにそっくりなのが来るのかなぁ?」

―面接会場

コンコン

P「失礼します」

面接担当「ほーい……おぉ、すまんな。ちょっと今日の子が特殊でな」

P「何が特殊なんですか」ホイッ

面接担当「なんでも、昔のアイドルが好きでそうなりたいんだとさ」サンキュ

P「昔のねぇ……それだけじゃネタが尽きたらすぐ売れなくなりそうですが」

面接担当「違いない」アハハ

コンコン

「失礼します。面接の方が」

面接担当「おお、もうそんな時間か」

P「じゃあ……入って来てもらいましょう」

「はい」

ナガトミサン、ナカヘドウゾ

ハ、ハイ

ガラガラ

「失礼します」

―そういって入って来た少女に

「長富蓮実といいます。本日はよろしくお願いいたします」ペコリ

―俺は目が離せなかった

―既視感?運命の出会い?

―なんなんだこれは?

―気がつけば面接も終盤

―大体、軽く歌とダンスを披露してもらっている最中だ

面接担当「じゃあ、ちょっと失礼だが、お父さんの……」

―ん?何か引っ掛かってる?

―資料を見ると、なるほど。数年前に亡くなっていたのか

蓮実「は、はい。父の一番好きな歌を」

―その歌を聞いて、俺は本日最大の驚愕に直面した

♪~愛する大地がほしかったのさ

愛する家族がほしかったのさ

愛する友を求めてたのさ

ジョー

ジョー

ハンギング(吊し首の)ジョー

あわれ吊られた無法者(アウトロー)

そいつのやさしい心根を

知っていたのは風ばかり……





―それは間違いなく俺が親父から教えてもらった唯一の

―親父のお気に入りのナンバーだ

―しかもウエスタンロックなのに、親父と同じようにバラードで歌うなんてどういうことだ?

P「あ、あぁ」

蓮実「はい!」

P「あー、すまない。それって『吊し首のジョー』だよね」

―少女に今日一番の笑顔が

―少なくとも、アイドルに手を出さないと誓っている俺が心を奪われる程の笑顔だ

蓮実「ご存知なんですか?!」キラキラ

―あまり知られていない自分の趣味を他人と共有するのは、そういう人にとってとても喜ばしいこととは聞くが



―……こんなにとはな

P「たしかこれはロック調で歌うような」

蓮実「は、はい。でもオリジナルの方ではこういう歌い方もありまして」

P「なるほどね」

―俺は今とてもうずうずしている

面接担当「その反応を見るに大丈夫みたいだな」

―この子をアイドルにしてやれるということに

P「えぇ、しばらくは今時の曲をメニューに入れないといけませんが」

蓮実「大丈夫です。好きなのはたしかにちょっと昔のですが、ちゃんと今の歌も聞いてますよ」

面接担当「ほぅ、それは頼もしい。では決まりかな」

P「えぇ」

―こんな気持ちの高まりは久々だということに

面接担当「では、長富蓮実さん。合格おめでとう。これからもよろしく」

蓮実「はいっ!ありがとうございます」

とりあえず一旦終了しますね

蓮実「ら~、らりら~、ららるぅー」

トレーナー「んー、その『ららるぅ』は半音あげられるか?」

蓮実「は、はい」

蓮実「ららるぅ~」

トレーナー「よし、音のイメージ化をうまく使いこなしているようだな」

蓮実「はい、ありがとうございます」ウキウキ

トレーナー「……ふむ」



ガチャ

P「失礼します。どうですか」

蓮実「あ、プロデューサーさん。おはようございます」

P「おはよう。頑張ってるな」

蓮実「はい、ありがとうございます」

トレーナー「プロデューサー。こいつは逸材を見つけたな。よほどのキャラ特化曲でもない限り大抵歌いこなしているな」

トレーナー「『毒茸伝説』や『メルヘンチェンジ』はちとキツいがな……」

P「あははは……まぁあいつらの領分まで侵す気はありませんからね」

P「まずはデレステ曲みたいな、グループソングから始めたいですし」

トレーナー「うむ、妥当な判断だな。私もこの子がソロで歌えるようになるのを楽しみにしているよ」

P「はい、ではよろしくお願いいたします」

―そして迎えた初ライブ

蓮実「あ、あ、あ……き、緊張します」

―彼女も人並みに緊張していた

蓮実「ひ、人並みってなんですか?私は怪物でも妖怪でもないんですよ」

P「ははっ、こんな可愛い妖怪がいたら」

P『ハスミン、ゲットだぜ!』

P「って、捕まえるんだがな」

蓮実「んもう!酷いです!こっちは緊張して……あれ?」

P「どうだ。少しは納まったか?」

蓮実「は、はい。ありがとうございます」

蓮実(それに……可愛いって言ってもらえたし)

P「なら、やることは一つ!」

蓮実「ステージの妖精なって、みんなを魅力することです!」

ホンバンイキマース

P「気持ちよくやってこい」ポンポン

蓮実「はい、笑顔と気合と微笑みときらめきで頑張ってきます!」

ワーワー

―そんなこんなでデビューを果たした彼女

―ファンの心をがっちり捕らえた彼女は、トントン拍子で数々のライブに出演

―そして待望のCDデビュー

蓮実「♪~風とビルの谷間で愛を探します」

―昭和テイストが平成最後のナントカというヤツで大ヒット

―こうしてデビュー間もない彼女もシンデレラの一門に認めれることとなった

蓮実「ありがとうございます。お母さ……母に薦められて、憧れて、そしてアイドルになれたのもプロデューサーさんのおかげです」

蓮実「母もとても喜んでます。ぜひ、実家に来て下さいと」

蓮実「母もきっと(ry」

P「はははっ……」



―その時、初めて彼女の中に隠れた

―地雷とも呼べる存在を見つけた

P(母親か……)

―事務所

P「……」カタカタカタ

P「……」ピタッ

P「……母親かぁ」ボソッ

ちひろ「何です?急にマザコンが燃焼しましたか?」ニュッ

P「うわぁぁぁぁぁ!」



バタン

まゆ「プロデューサーさん!大丈夫ですかぁ!?」

ボスン

響子「ついに蛍光緑が手を出しましたか!?」

ガラガラガラ

智絵里「私のチョップで……お命、頂戴します」

ベキガキドスン

ゆかり「私のプロデューサーに手を出して……生かしてはおきませんからね」

まゆ「あら、ゆかりちゃん。ゆかりちゃんのではなく、まゆのですよぉ」

響子「はぁ?」

P「とりあえずここ四階だから、智絵里は窓から入ってこない」

智絵里「えへへ……褒められちゃいました」

P「あと、ゆかり。壁は壊すものじゃないから」

ゆかり「えへへ……怒られちゃいました」

まゆ「むすー」

響子「ぷすー」

ちひろ「と、とりあえず、私の心配を……」アセダラダラ

―事情説明

まゆ「そうだったんですかぁ。そうならそうと言っていただければぁ」

ちひろ「そんな余裕はありませんでしたけどね」

智絵里「でも……やっぱり家族と離れて過ごすのはさびしいですから」

響子「そうですね。旦那様と離れて過ごすことを考えると、心配です……」

ゆかり「響子ちゃん?旦那というのは?」

響子「もちろん、プロデューサーさんです!」キャッ、イッチャッタ

智絵里「はぁ!?」



P「いや、そういうことではなく」

P「本人……というか彼女自身がアイドルを楽しんでいるかなんだよ」

ちひろ「なるほど、親が楽しいから私も楽しいというのと、自身が楽しいから楽しいでは違いますからね」

P「そこなんだよなぁ……それさえ解決できれば、もっと伸びてくれるかもしれないのに」

まゆ「……逆に触ってほしくないポイントかもしれませんよ」

P「まゆ……?」

まゆ「もし、まゆがプロデューサーさんと離れなければいけない事になったら、まゆはアイドルを続ける自信がありません」

まゆ「まゆはアイドルの活動を楽しいと思ってますし、プロデューサーも大好きですけどぉ」

P「なるほど……難しいな」

―結論からすると、俺は蓮実自身の口で、彼女の心の底からアイドル活動が楽しいです……と言わせることができなかった

―そして



―恐れていた「母親」に関したトラブルが発生してしまった

―それは、蓮実のセカンドシングル発売数日前

…………
……

P「発売まで、もう一週間切ったか」カタカタカタ

ちひろ「正直なところ早い方ですからね」カタカタカタ

P「まぁ、ほかのみんながファーストを出してた頃は、うちも小さかったからペース配分を一緒にするべきではないですがね」

ちひろ「それでもですよ。これも敏腕プロデューサーのおかげです」

P「何をおっしゃる。全力でサポートしてくれるちひろさんがいなければ……」

ちひろ「うふふふ」

P「あははは」



ジリリリリリリーン

ちひろ「あら?登録していない外部からの電話ですね」

ちひろ「もしもし、こちら346プロですが」

ちひろ「はい、はい……はい、たしかに長富蓮実はうちの……」



ちひろ「え?蓮実ちゃんのお母さんが!?」

P「!?」

…………
……

蓮実「お母さん……」グスッ

―死因は交通事故による全身打撲

―いわえる歩行者を巻き込んだよくある事故

―ただ、彼女にとっては唯一の肉親を奪った憎むべき事件であった

―もちろん発売イベントはすべてキャンセル

―本人は出たがっていたが、スタッフのみんなや彼女の親衛隊のSNS等の励ましもあり、こうして最後の別れに出向くことができた

―訓練されたファンほど頼りなる存在もないだろう



―とはいえ

パシャッ

パシャッ

「長富さん、今のお気持ちを」

P「申し訳ありません。今回はプライベートですので」

「蓮実さーん、天国のお母さんに何か言葉をお願いしまーす」

―正直、殴り倒したい気分だ

―通過事例とはいえ、16歳の子には厳し過ぎる現実

―だが、彼女は

蓮実「ご心配をおかけしてすみません。たった今、母と最後の別れを済ませてきました」

蓮実「母の励ましでアイドル活動ができるようになりました。これからも一生懸命頑張って、天国の母にも笑われないように精一杯やっていきます」

―そのフレーズは間違いなくお涙頂戴モノだろう

―実際、泣き出したアナウンサーもいたぐらいだから



―だが

―俺は蓮実のどこかが壊れている。そう確信していた



―なぜなら、彼女はカメラでなく人の顔を見て歌ったり、話したりする

―それなのに、彼女の視線の先は



―何もない、虚空だったから

―親が亡くなったということでこちらも数日、蓮実本人には一週間の休日が与えられた

―実際は彼女の親権者と話合いをして、アイドルへの続行の許可を貰うことではあったが

―話そのものはトントンと纏まった

―むしろこちらがすんなり行き過ぎて戸惑うぐらいだ

―普通、こういう時…それなりに売れたアイドルだと特に、モメるものなのに

―まるでいらない子を押し付けるようだったのは気になったが、こちらはそこまで手が回らなかった





―この時、何かしら動いていれば多少はよい結果が見えたかもしれないが

―ともあれ蓮実自信、母親がいない環境に耐えることができないようで、当初一週間の予定がこちらの親権その他の手続きが終わると東京へいきたがった

―むしろ帰りたがっていたというべきか?



―それからの彼女は吹っ切れたように活動の幅を広げた

―歌やダンスだけでなく、演劇やドラマ。さらにはバラエティまで

―さすがに高度一万メートルからの落下傘降下は止めさせたが

―つまり誰もが違和感を感じるぐらいにがむしゃらだった



P「まずいなぁ」

ちひろ「えぇ……まるで」

ちひろ「母親がいない寂しさを、仕事で埋めているみたいですね……」

P「多分、それだけじゃないですよ」

ちひろ「と、いいますと?」

P「精神科の人間でもなんでもありませんから、キチンといえるわけじゃありませんが」

P「今の彼女、次の依存先を探して迷走してように感じられるんです」

P「つまり、今だけ脱しても根本的に爆弾を抱えてますからねぇ」

ちひろ「……実体験ですか?」

ちひろ「朝起きたら、まゆちゃんが横に寝ていたとか?」

P「甘いですね」

P「誰が横で寝るか、静かに四人でキャットファイトしてましたよ」

P「全裸で」

ちひろ「OH……」

ちひろ「まぁ、とりあえず解決したみたいですね」

P「えっ、何がですか?」

ちひろ「四天王がゴレンジャーになるだけですからね」

P「ちょ!!」

P「そうなる前に」

ちひろ「それ以外ありますか?」

P「……」

―とりあえず仕事帰りに蓮実の寮に寄ることにした

―運悪く今日はデスクワークしかなく、その上あの鬼悪魔に追い出されてしまったからだ

P「とりあえず誰にも見つからないようにしないとな」コソコソ

美穂「あれっ、プロデューサーさん?」

フレデリカ「ボンジュール、プロデューサー!」

―……終わった



―美穂の部屋

美穂「やっぱり……蓮実ちゃんですか」

フレデリカ「んー、フレちゃんも声をかけてはいるんだけどね。そのなんていうか」

美穂「仕事で疲れた時に、寮で宮本さんと鉢合わせた時の絶望感といえば……」

フレデリカ「ぱーろんみー」

P「……美穂の中でのフレデリカの扱いって」

フレデリカ「そう思って気を使ったつもりだったんだけどなぁ」

美穂「ならドアから頭にうさぎ耳をつけたまま、全裸で出てこないで下さい!」

P「なってこった……ここはカオス空間かよ」

美穂「……まあ、フレデリカさんも私だからそこまでやるんですけどね」

P「何?何か弱みでも握られているのか?」

美穂「そっちじゃありませんよ。信頼されているから、体を張って励ましてくれているんですよ」

美穂「やり過ぎなのは、どうしようもないですけどね」ニコリ

フレデリカ「すみませんでしたー!」ドゲザ

P「……んっ、よかった」



フレデリカ「でも蓮実ちゃんはあまりよくないかもね」

P「それは……?」

フレデリカ「うん……言っていいのかな?」

美穂「……私やフレデリカさんはきちんとしたグループがありますし、CDデビューしてさらにセカンドまで出してますが……」

フレデリカ「最近ぽっと出……という訳じゃないけど、やっぱりデビューできない子には不満が溜まるからねぇ」

P「……ん。そんなに…か」

P「人によっては、俺が長所というか売れると思ったところばかり推しているから、その不満も混ざっているんだろうな」

フレデリカ「みんながみんなプロデューサーに全面的に信頼している訳じゃないから、売れないとどうしても不満は出るのかもね」

美穂「ごめんなさい。それぐらいしか……」

『あとは蓮実ちゃん本人次第かな』

『仕事と学校以外は、杏ちゃんみたいになってるしね』



P「……」

P「……ここか」

ピンポーン

ピンポーン

P「いるはずなんだが……」

コンコン

コンコン

P「……寝ているのか?」



ギイィィィ

蓮実「はい…………どなたですか?」



―出て来たのは蓮実本人

―ただ、一瞬誰かと思うぐらいにマイナスの空気をしょい込んでいた

P「よぉ、ここ……寮で会うのは初めてか?」

蓮実「……プロデューサー?」

蓮実「……」

蓮実「!?」

ガチャン

ドドドド

P「は……?」

ガチャンバタンドンドカプップカー

P「な、なんなんだ?」

パタパタパタ

蓮実「お待たせしました。よろしかったら中へ」

P「お、おう」



―まゆみたいに、中で枷とか手錠とか睡眠薬を用意しているわけじゃなさそうだが……

―響子は惚れ薬、智絵里は媚薬だったし……

―あ、ゆかりは自分を縛っていて亀甲縛りのはずが、縄が引っ掛かって大変だったんだよなぁ

コトッ

蓮実「すみません……せっかく来ていただいたんですが」

蓮実「お茶とかなくて、缶コーヒーになってしまって」

P「いやいや、逆に安心できるよ」

蓮実「はい?」

P「それより……思い出させるようですまないが」

蓮実「……」

P「返事がないのは、わかっているという意志とさせてもらうよ」

P「この所、活動も目覚ましいが、あんな事が起きて蓮実もつらいはずなのに、事務所には血も涙もないのかという意見が来ててな」

蓮実「……」

P「どうかな……少しだけ休んで貰えないだろうか。もちろん何かあっても俺と事務所のせいにしていいし、給料は振り込むようにしておく」

蓮実「……」

蓮実「……」

蓮実「……やっぱり」

蓮実「駄目なんでしょうか」

P「……」

P(思ったより早く、蓮実の本音が聞けるか?)



蓮実「……見てくれる人がいないと」

蓮実「私と、考えたり悩んでくれる人がいないと」

蓮実「もう……頑張れないんでしょうか……」



P(思ってたより重傷だな……)

蓮実「自分でも情けないと思います……」

蓮実「母が……喜んでくれるというだけがアイドルになりたい理由じゃないはずなのに」

蓮実「……」グスッ

蓮実「ごめんなさい……」グスッグスッ

蓮実「やっぱり……まだ落ち着いてないようで」グスッグスッグスッ

蓮実「また、休みをいただければ……私に戻れると」

P「我慢することはない」

蓮実「…っ」ビクッ

P「蓮実にとって大切な家族がいなくなったんだ。誰が何と言おうと、いるだけで幸せになれる家族がな」

蓮実「……」

P「我慢することはない、倒れてもいい、泣けばいい、無理に笑うことも歌う必要もない」

P「みんなが復活を望む?新しい朝が来る?んなもん、くそくらえだ」

蓮実「プロデューサー……さん」

P「だから……今だけは俺を家族と思っておけ」

ギュッ

蓮実「あ……」

蓮実「あぁぁ……」





―その日、結局蓮実の部屋に泊まることになったのはとっぷしーくれっとだ

―でも何故だろう

―二人とも初めてのはずなのに





―どこか深い所で繋がった感覚があったのは

チュンチュン

P(ん……)

P(朝か……)

蓮実「……すぅ……すぅ」

P「……」

P「やっちまったんだよなぁ~」

P「でも……」

P「ケジメはつけるよ。あと四年待ってな」

蓮実「くぅ……すぅ……」

P「だから……」

チュッ

P「すべてを委ねていいんだからな」

P「それにしても可愛いなぁ……」

P「俺だけの……」

ニヘヘヘ



P「いかんいかん」パシッパシッ

P「でも……はぁ~、今日はプロデューサーを休みたい」

P「こうやって一日中蓮実とらぶらぶえっちしたいなぁ~」

こずえ「するのぉ~」

P「うん、蓮実と朝からずっと」

ちひろ「ナニをするんですね」

P「そうナニを」

ちひろ「……」ニコニコ

こずえ「ふぁ~?ちひろ、おかんむりぃ~?」

P「……」

P(ぐっばい、俺)

ちひろ(ザオリクで生き返らせますから大丈夫ですよ)

P(死ぬことすらできねぇのかよ!)

―事務所

P「……勘弁してくださいよ」ボロボロ

まゆ「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」

智絵里「えへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ」

響子「あはははははははははははははははははははは」

ゆかり「くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす」

ちひろ「やーっておしまい!」





蓮実「あ……あの……」

美穂「やっちゃったんですか」ニコニコ

フレデリカ「んー、以外に早かったね」ニコニコ

蓮実「えっと……ごめんなさい」







こずえ「はすみー」

蓮実「あ、はい?」

こずえ「……ぷろでゅーさーと……おなじうつわぁ?」

蓮実「えっ?……それはどういうことで?」

こずえ「……わからないのぉ?」

蓮実「??」



―何はともあれ(謹慎という形だが)一週間の休みを二人揃って貰えた

―少し調べたいことがあった為だ

―実は先日、ひょんなことから意外な事を知ってしまったからだ



作詞家「懐かしいね。あの『吊し首のジョー』を歌っている人がいるなんて」

P「ありがとうございます」

作詞家「しかし、なんだ。あれのバラード版を知っているのがいたなんてな」

P「といいますと?」

作詞家「あれを知ってるのは……作曲の○○だけだよ」

P「えっ……」





―その名前を忘れるはずがない

―それは俺の

―三つの時にいなくなった父親の名前だからだ

―そこで簡単ながらも調べた

―ウィ○○ディアによると、たしかに俺の記憶通りの年に長男……つまり俺が生まれて、数年後離婚とある

―問題は、そこから先



―さらに数年後、島根に移住して現地女性と結婚し、長女の出産とあり数年前に亡くなったとある

―これは蓮実の生まれた年、さらに父親が亡くなった年と重なる



―鼓動が止まらない

―ひょっとして、俺は



―妹と恋愛関係にあるのか?

―いや、恋愛関係という生易しいものではない

―そう



―肉体関係となっている

ドクン



―そう思った瞬間、俺の心に何かが突き刺さった気分になる

―不快とか抵抗とかちゃちなものではない

―これは……俺は、血のタブーに…近親行為に興奮しているというのか?

―まずい。ただでさえ蓮実との関係で事務所に迷惑をかけて


メイワク?


ソンナノ


カンケイナイヨ





ブンブンッ

―頭を振って考え直す。というより、今の感情はなんだ……

―俺の……心の一部なのか?

―まるで、蓮実との関係がもっと深まればいいのにと思えて……いると

―依存症になっているのは、俺の方だというのか……

―次の日、休みなのを幸いとして俺は医者にいった

―蓮実には嘘をついて



―結果はまだ薬で抑制レベルだとか

―まだ……か



―蓮実とは少し距離を起きたいし、本人も嫌ではあろうが父親のことも聞かないといけないし

―ともあれ、家に帰ることにした

カチャカチャ

P「ん?鍵は閉めたと思ったが、またまゆか?」

カチャ

P「ただいま」

蓮実「あ、お帰りなさい。Pさん」ニコッ

―やられた……今一番会いたくなくて

―でも会わねばならない愛しい……

P「いやいや!」

蓮実「ど、どうしたんですか!何かイヤなこととか?」

P「どうしたじゃなくて……何で蓮実がここにいるんだ?」

蓮実「あー……その、美穂ちゃんや卯月ちゃんがその……」

美穂『響子ちゃんや智絵里ちゃんにまゆちゃんのプロデューサーさんを思っての行動力はすごいんですよ!』

卯月『だから、命を取られないようにするに蓮実ちゃんはプロデューサーさんのお家に非難するべきなんです!』

蓮実『えっ!た、大変です』オロオロ

蓮実『でもPさんのおうちの鍵なんて……』

フレデリカ『ふふーん、ここにプロデューサーん家の鍵なら』

カチャ

蓮実『えと……どうしてフレデリカさんが?』

フレデリカ『前に、智絵里ちゃんが複製していたのを、ちょちょいなちょいなって』

蓮実『あははは……すみません』

フレデリカ『子どもが生まれたら教えてね』

美穂『あ、でも男の子だったらまたみんなで争奪線だね』

…………
……

蓮実「って」

P「……はぁ」

P「何はともあれ、まぁそういう好意なら仕方がないな」

蓮実「とりあえずお昼ですし……まだ食べてないんですよね」

P「あ?あぁ……朝は食欲がなくてな」

蓮実「いけませんよ!もうPさんだけの身体じゃないんですから!」

P「まぁ、まだ休みはあるから大丈夫か……」

P「よし、食べるか」

蓮実「はいっ!」





蓮実(……)

…………
……

P「ふぅ、うまかった」ゲフッ

蓮実「お粗末様でした」

P「これだけできれば、いいお嫁さんになれるぞ」

蓮実「あら?Pさんには貰っていただけないんですか?」

P「まぁ、貰えるならな……プロデューサーとアイドルとか世間の目とかあるし」

蓮実「大丈夫ですよ。内縁の妻や事実婚というのもありますから」

蓮実「今の時代では兄妹でも幸せになれるって『おやすみセ○クス』でもいってましたよ」

P「兄妹……」ズキッ

P「あのなぁ。俺は蓮実を絶対に幸せにしてやりた……なんだ……急に……」ウツラウツラ

蓮実「朝からお医者さんへいったりしてましたからね。疲れたのもあるんですよ」

P「なん…で…それを……駄目だ……意識が……」カクッ



スーッスーッ

ユサユサ

スーッスーッ



蓮実「……」

蓮実「お休みなさい」



蓮実「……お兄ちゃん」

今日の夕方から明日の午前様にかけて終わらせますが



見ている方がおりましたら、2~6人ぐらい、人が死にます

嫌悪感がある方はブラウザバックをお願いします

ハァハァ

―ん……頭が

ズキッ

―ぐっ……薬を盛られたか……

ア゙~

―誰かの……蓮実か?

―喘ぎ声が……

P「んっ!!」ガバッ

ズキッ

P「痛っ……」

蓮実「あっ……あんっ……お兄……ちゃん?起きなくても……あぁっ!」

―下腹部の違和感

―そこには蓮実が全裸で……騎乗位で性に溺れていた

P「蓮実っ!今……何て」

―聞き違いであって欲しかった

―でもはっきりと

蓮実「うん……お兄ちゃんとのセックス……気持ちいいよぉ」

―そういう蓮実の顔は、今まで見てきたどの女性より艶やかで

―どの女性よりも綺麗で



―どの女性よりも濃い性行為であった

―だから俺は

―頭ではわかっていても、その濃さから逃れることはできず

P(愛の濃さは、血の濃さに比例する……そしてセックスも濃くなるのか)

―そう思いながらも、やっと上辺だけで取り繕った関係から逃れると思い

―妹を犯し続けた





―もう、プロデューサーとアイドルの関係にも

―兄妹の関係にも

―家族の関係にも

―戻れない

―そして謹慎が解ける最後の晩

P「明日からはまた、プロデューサーとアイドルに戻るのか……」ハァ

蓮実「どうして?お兄ちゃんも私もこんなに愛し合ってるのに?」キョトン

P「あのな……こう意識しないと我慢できなくなっているんだから、外ではそれぐらいはケジメをつけないと」

蓮実「じゃあ、またしちゃおうか」

P「それが駄目だから言ってるじゃないか」

蓮実「でも……私は、全然足りないよ。私の中にお兄ちゃんが入ってないと不安だよ」

P「蓮実……」

P「いや、駄目だ駄目だ駄目だ!」

P「こんなんじゃ……こんな事をするために」

P「父さんも母さん……蓮実の母さんも俺や蓮実を生んだんじゃない!」

蓮実「ッ!」

蓮実「……お母さん」

蓮実「……」グスッ

P「あっ……そのすまない」



P「俺の母さんはな……父さんが出ていった後もずっと父さんの写真を飾っていたんだ」

P「中学ぐらいかな……自分が偉くなったって思っていたころ、なんかそれがムカついて問い詰めたことがあった」

P「その時……いつもただ笑っているだけの母さんが、ものすごく泣いたんだ」

P「その母さんも、俺がここに就職して……すぐに」

P「だから、そんな悲しんで泣かれるぐらいならって、俺は女性の涙に弱くなった」

P「おかげで、相手のしょい込んでるものすべて引き受けることになったこともある」

P「だから……蓮実にも」

P「蓮実……?」



蓮実「そうか……そうだったんだね」

蓮実「お兄ちゃんの……」ブツブツ

P「蓮実……?」

蓮実「他の人を取られたくないから」

蓮実「どうしようもなく私だけを求めてほしいから」

蓮実「私、頑張ってきたのに」ユラァ

P「蓮実……」ゾクッ



蓮実「最初から……勝ち目なんて」

P「や……やめ」

蓮実「なかったんだね」

P「止めろ!蓮実!」





蓮実「さようなら。Pさん」

蓮実「でも大好きだから……お兄ちゃん」

―苦しい

―息ができない

―体中血だらけだ

―でも

―ぼやけて見える妹は泣いている

―ないている?

―ならぼくがどうにかしないと

―でも、もうちからがはいらないや

―ごめんね







―俺の意識はそこまでだった

「っ!?」

「今のって……まさか」

「プロデューサーさん?」

「そなた……」

「だめ……だめなのぉ」

「こずえ殿ー?」

「いっちゃあ、だめなのぉ」ポロポロ

「こずえちゃん……」

「だめなの……」

「うっ」



「うわぁぁぁぁぁぁんっ」

―私……

―お兄ちゃんを殺しちゃった

―でもお兄ちゃんも悪いよ

―お兄ちゃんの心には私だけでいいのに

―これからどうしよう

―まず、私のお部屋に行って

―あ、お兄ちゃんも寂しいかな

―うんしょ、うんしょ

―なんかすごくおもいよ

―あ、いなくなったっててがみもかかないとね

―じむしょにおいておけばいいかな

―じゃあいこっか

―よいしょっと

―これでいいかな

―おてがみもおいてきたし

―おにいちゃん、おきないなー

―またわたしのなかにおにいちゃんのをいれればいいかな

―おかしいなー、からだがかたいよ

―もっとうんどうしないてだめだよ

―ん……はいった

―でもあたたかくないなぁ

―もっとつながりたいな

―そうだ、ゆびとゆびをあかいいとでむすべば

―んー、しろいいとしかないなぁ

―そうだ、わたしのちであかくすればいいんだ

―うでをきって

―あははは、いっぱいでてきた

―あれ

―なんか、ぼーっとしてきた

―さむくなったし、おにいちゃんを……

―いっしょに……

―事件から数日後

―事務所は一時の喧騒からは逃れていた

―後追いをしようとした数人と刃物沙汰にもなった

―事務員として、卯月ちゃんと美穂ちゃんには感謝しきれない

ちひろ「でも……」

ちひろ「空っぽなんですよね」



―事件にマスコミはいろいろ食いついてきた

―生前のプロデューサーが好人物だったこともあり、親を亡くした少女の後追いに巻き込まれたという説で纏まってはいた

―しかし、その後の四人の後追い未遂の話はさすがにマズすぎた

―内一人は意識不明というおまけ付きである



ちひろ「プロデューサーさん……あなたならどうしたんでしょうか」

ちひろ「あんなにアイドルを愛していて、さらに恋愛に発展した子に……」

ちひろ「私なんかじゃ……」

ちひろ「駄目だったんですね……」



?「……」

「もう事務所も駄目なんでしょうか」

「私ではもうどうすることもできないのでしてー?」

「幸運だけではどうすることも……」

「乱れた音階……指揮者が必要」



「……時間子に干渉するのー」

「それしかないのー」

「こずえちゃん!?」

「時間子って、歴史ごと書き直すの?」

「でも……」

「みんなのちから……かしてー」

「こずえちゃん……」



「依田の力ー、全力で」スタッ

「ゆるふわしかできませんが」スタッ

「楽譜を書き直す……見てみたいです」スタッ

「我が主よ……我が罪をお許しください」スタッ

「幸運だけでもすべてを」スタッ



「じゃあ、やるよー」

…………
……

―お墓

ちひろ「プロデューサーさん。事務所は辛うじてまだやっています」

ちひろ「でもやっぱりあなたがいないと……」

ちひろ「ううっ……」ポロポロ



サーッ

ちひろ「えっ……風?」

♪~

哀れ吊られたそいつのことを

腹をよじって皆わらう

ジョー

ジョー

吊し首のジョー

名もない町の名もない辻で

吊られた男のものがたり

だけどそいつの心根と

燃える理想の気高さを

知っていたのは風ばかり……

「ありがとうございます、ちひろさん」

「私達の父親に墓参りしていただいて」



ちひろ「もう、本当はたかだかアシスタントの仕事ではないんですよ」

ちひろ「それにしても」

ちひろ「プロデューサーさんと蓮実ちゃんはどうしたんですか?」

P「いやぁ、母親のお墓に先に行ってたもんで」

蓮実「幸せになりますって約束してきました」

ちひろ「本当にもう」

ちひろ「『実』の兄妹なのに作るからですよ」

ちひろ「よく堂々と言えますねぇ」

P「ははっ……今まで両親を騙してきた償いは背負います」

蓮実「もう、お兄ちゃんだけが償うってそんな」

蓮実「私だって……罪は償わないと」

ちひろ「はいはい、蓮実ちゃんはもうそんなお腹なんですから、大事にしないとね」

ちひろ「来月なんでしょ?予定日は」

蓮実「はっ、はい」

ちひろ「いいなぁ、ちっひも誰かいい人いないかなぁ」

P「その銭ゲバさえなければ誰でももらってくれますよ」

ちひろ「わぁー。蓮実ちゃん、お兄さんが虐めてきますよぉ」シクシク

蓮実「もう、お兄ちゃんったら」

P「ははっ」





(o・▽・o)&(●・▽・●)おわりだよー
(*>△<)<ナーンナーンっっ

バットエンドのグタグタを楽しみにしていた方申し訳ありません

やっぱりグッド(?)なのが一番ということで

ありがとうございました



あと、「吊し首のジョー」は「銀河旋風ブライガー」小説版からの出典になります

具体的に何が悪いと書いていただけるのはとってもありがたいです

……しばらく小学生とのえっちな話ばかり書いているか

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