少年「かんむす?」【艦これ】 (40)

SS初投稿

軽い独自設定あり

書き溜めあり

拙い文章ですが、よろしくお願いします。

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「あ~あ、暇だなあ」

夏の午後。

照りつける日差しを浴びながら、少年は縁側から足を投げ出して、そうつぶやいた。

「夏休みに入ったらみんな内地のほうに行っちゃったからなあ」


深海棲艦の出現から数年、海が近いこの街は、住民たちが少なくなり道路は閑散としていた。

街に唯一残っていた学校も来年には廃校になり、

少年も内地の学校に転校することになっていた。


「お母さん!ちょっと散歩してくるね!」

暇を持て余しすぎた少年はガバっと起き上がり、玄関へと走る。

「夕飯には帰ってくるのよー!」

母の言葉に返事することなく、少年は外へと駆けていった。

この街の近くには海軍鎮守府がある。

今日も演習をしているのだろう、銃撃の音がパパパパ、と遠くから聞こえた。

「うんうん、銃の音だ。やっぱかっこいいよなあ」

たたた、と音に耳を傾けながら走っていた少年は、

道の角からふと現れた影にぶつかってしまった。


「きゃっ」

小さな悲鳴と、どすん、という音。

「うわあっ」

少年がしりもちをつく。

「いたたぁ…。ご、ごめんなさい!」

少年はあわてて立ち上がり、ぶつかった相手に謝る


「痛いわねえ、ちゃんと前を向いて走りなさいよっ」

少女だった。

長く青みがかった銀髪が、さらさらと音を立てるように見えて。

少女だった。

ややほっそりとした脚が、ワンピース型のセーラー服から見えて。

少年は、見惚れていた。


「ちょっと、なにぼうっっと見てるのよ。

 ぶつかってきた犯人さんは、女性を起き上がらせてくれないのかしら」

言われてはっとした少年は、少女に手を伸ばした。

「ご、ごめんなさい!銃の音がかっこよくて、聞き入っちゃってて…」

「銃の音、ね。近くに鎮守府があるものね。そっか、ここら辺まで聴こえるのね」

少女は海のほうを見る。

その横顔はとても綺麗だった。

「ねえ、ここら辺の学校の子?」

少年はふと思い、訊いた。

「え?あぁ、そうね…。まぁ、そんなところかしら。転校…してきたのよ」

「へえ、めずらしいね!ここら辺の学校は、大体もう閉校しちゃったってお母さんに聞いたよ?」

「あ~そうなの…ま、まぁ、いろいろあってね、この街に引っ越してきたのよ」

少女は、微妙な顔で返した。


「ふ~ん、そうなんだあ。いろいろ大変だねえ」

少年は少し大人ぶりながら、無邪気に笑った。

「そうだ、僕と友達になってよ!」

「え?」

少年のいきなりの申し出に、戸惑う少女。

「ここら辺の僕と同じ歳くらいの子は、みんな内地に行っちゃって。

 今、この街に住んでる子供といったら、僕くらいなもんさ。

 だから、君も僕と友達になっておいたほうがいいよ!」

少年以外にも、この街には子供はまだいる。

だがとても数が少なく、少年がそう思うのも仕方のないことであった。


「そうなのね。じゃあ、お友達になっておこうかしら。

 でも、私のことは、お姉さんとお呼びなさい」

「え?なんで?」

「あのねえ、どう見ても私のほうが年上でしょう?

 年上の女性に「君」なんて失礼なことよ」

「な、なるほどぉ」

少し勉強になった少年であった。

「っと…ちょっと話しすぎちゃった。
 
 もう行くわね」

少女は思い出したかのように、歩き出そうとした。

「ちょ、ちょっとまって!お姉さん!」

それを少年は呼び止める。



「なあに?」

「また、会えるよね?」

「そうね、また会えると思うわ」

「じゃあ、あの海が見える公園で、またお話しよう!」

少年が指さす方向、ここから少し歩くある公園が見える。

少女はそれを確認すると、

「ええ、わかったわ。また明日、公園で会いましょう」

少女はそう言うと、海のほうへ歩いていった。

少年はそれを見送りながら、鎮守府のほうだなあと、ふと思った。


翌日も、少年と少女は海が見える公園で、

二人ベンチに座りながら、おしゃべりをした。

主に少年の話題が中心ではあったが、とても楽しい時間を過ごした。

少年は少女のことを聞きたかったが、うまくはぐらかされてしまった。

お互い、名前もまだ知らない友達だった。


そんな日が何日か続いた日の夕方、

街に警報が鳴り響いた。

どうやら、街の近海で深海棲艦が現れたらしい。

深海棲艦が陸に上がることは今までなかったが、

街の住民は建物の外に出ないように、という内容の警報のようだ。


お姉さんは大丈夫だろうか。

少年はいてもたってもいられず、家から飛び出した。

「ちょっと!!どこにいくの!!!」

母の制止も聞かず、少年は街を駆け抜けた。

少年は、母の言うことを聞かない子供であった。


「はあっ…はあっ…」

どれくらい走っただろう。

街はいつも以上に静かで、人っ子一人歩いていなかった。

それもそうだろう。

警報が出ているのだ。外に出ている少年のほうがおかしいというものである。

「お姉さん、大丈夫だよね、そりゃそうか、家の中にいるよね」

走りつかれて、少年は海が見える公園のベンチで休んでいた。

気づけば警報も解除されたようだった。

今は何時だろうか。すっかり辺りは暗くなり、ぽつんぽつんと街灯の光があるだけだった。

「ちょっと!!なにしてんの!?」


いきなり後ろから声をかけられ、びくっとする少年。

「だめじゃない!さっきまで警報がなってたんだから!

 警報が止んだからって、まだ何があるかわからないのよ!?」

振り返ると、少女がいた。

「お、お姉さん!」

「あ、あんた!なにしてんのよ!」

どうやら、少女も少年とは気づかずに声をかけていたらしい。

「僕、お姉さんが心配だったから…」

少年はうつむきながら言った。

怒られると思ったのだろう。

「私が心配?なんで…」

「お姉さん、この街に引っ越してきたばっかりだったから、

 警報に驚いているかと思って…」

「ああ、そんなこと…平気よ、慣れっこなの」


「慣れっこ…?なんで…」

少年が疑問に思いか顔を上げると、初めて少女の体が目に入った。

「な…お、お姉さん!!」

少女の服は血にまみれていた。

セーラー服がやぶけ、そこから覗く細い腕も、スカートから伸びる細い脚も、

切り傷や痣などでボロボロであった。

「お姉さん!!大丈夫なの!?」

「あぁ、これ?大したことないわ、いつものことよ」

「いつものことって、どういう…」

「見つけた!!!」


少年と少女以外の声が、公園に響く。

声の方向を見ると、少年の母であった。

すごい剣幕で迫ってくる。

ぐい、と少年の腕をつかむと、

「さあ、帰るわよ!!」

と家のほうへと少年を引っ張っていった。

それを少女は、悲しそうな目で見ていた。

公園をでて家までの帰路の途中、

「お母さん、離してよ…っ」

しばらく引っ張られていたが、さすがに腕が腕が痛くなってきた少年。

母は腕を離すと少年のほうに向き直り、

「あのね、今後一切、あの子と会うのは許しません」

と言った。


「な、なんで!?」

「あの子はね、艦娘なのよ」

「か、かんむす?」

「そう、海軍の艦娘。だから、今後関わっちゃ…あ、ちょ、ちょっと!!」

少年は母の言うことを最後まで聞かず、走り出した。

少年は、母の言うことを聞かない子供であったから。

少年は公園まで戻ってきたが、少女はもういなかった。

「いない…」

少年は、鎮守府に向かって走り出した。


街の外れに鎮守府はあった。

少年自体、初めて来るところである。

門の周りを、中を伺いながらうろちょろしていると、

怪しんだ門番が声をかけてきた。

「ぼく、こんな遅くにここで何をしているんだい」

「あ…いや……っっ!!」

「あっ、待ちなさい!!」

少年は逃げようとしたが、大人に走りで勝てるわけもなく、

あっけなく捕まってしまった。


「は、離せー!!お姉ちゃんに会いにきただけなんだ!!」

ずるずると連行される少年。いや、鎮守府からしたら、保護した、といったほうがいいだろう。

むすっとした表情で応接間に連れて行かれる少年。

黒い革製の高そうなソファに座っていると、がちゃりとドアが開いた。

「おや、ずいぶんと小さいお客人だね」

白い軍服を着た、初老の男が入ってきた。

「大淀、彼にジュースを出してやってくれ」

初老の男は、連れ添ってきた眼鏡の女性、大淀に言った。

「さてさて、初めまして坊や。私は、この鎮守府の提督だよ」

提督と名乗った男は、こちらに向き直りにこりと言った。


「坊や、どうして門の前をうろうろしてたんだい?」

「お、お姉ちゃんに会いにきたんだ…。かんむすだって聞いて、ここにいるかなって…」

「艦娘のお姉ちゃん、か。名前はわからないのかい」

提督の問いに、ジュースを持ちながらふるふると首を横に振る少年。

「やれやれ、それじゃあ探すのは難しいなあ」

提督の言葉に、がくりと肩を落とす少年。


「提督」

大淀が提督に声をかけた。

「この子の親御さんと連絡が取れました。今から迎えに来る、とのことです」

「そうかい、良かった良かった。
 
 良かったな坊や、君の親が迎えに来てくれるそうだよ。

 その、お姉さんを探してやれなくて、悪いとは思うがね」

「大丈夫です…ご迷惑をおかけしました…ごめんなさい」


「ちゃんと謝れるなら、上等だ。君は立派な大人になれるな」

提督はカカカと笑い、

「では、しばらく待っていてくれたまえ」

そういうと大淀と共に部屋から出て行った。

提督が出てしばらく、がちゃりと再びドアが開いた。

「やっぱり、あんただったのね」

部屋に入ってきたのは、少女だった。

「ちょっと鎮守府が騒がしくなって、

 『男の子がお姉ちゃん探してる』って私の姉妹が言ってて、

 もしかしてって思ったから来たけど、

 あんた、なにしてんのよ」


「お姉ちゃんに会いにきたんだ。

 ねえ、お姉ちゃんって、艦娘なの?」

しんとする部屋。

そして、少女が口を開く。

「……そうよ。

 私は、艦娘」

少女は続ける。

「艦娘はね、深海棲艦と海で戦ってるのよ。

 戦争をしているの。だから、怪我も慣れっこ」


「そんな…」

「あんた、お母さんに、私に会うんじゃないって言われたんじゃない?」

「どうしてそれを…」

「わかるわよ、艦娘だもの」

そう言って、少女は袖をまくって見せた。

「ほら、怪我、治ってるでしょ?」

少女の言うとおり、少女の身体には傷ひとつ残っていなかった。


「艦娘はね、人間じゃないのよ。
 
 どれだけひどい怪我をしても、お風呂に入ればハイ元通り。

 それに、人間が扱えない兵器を扱える。

 海に浮いていられる。

 歳をとらない。ふふっ、これだけはちょっと良いかもね。

 いつまでも若くしていられるのよ?」



くすくす、と少女は笑い、

「私たち艦娘はね、化け物なのよ。

 撤退するところを誤らなければ、不死身。

 そりゃあ、一般の人から怖がられても仕方ないと思うわ。

 でも、私は艦娘を辞めない、戦うのを辞めないの」

「どうして…?」

少年が訊く。

「そうねえ。どうしてかしらね。
 
 辞めちゃいけないって思うの。
 
 あなたを守りたいからかしらね」

少女は冗談ぽく笑う

少年は、思った。

ああ、僕はこの人が好きになってしまったんだな、と。

たった数日、公園で話をしただけだった。

いや、出会ったときから、一目ぼれだったのかもしれない。

「来年から、内地のほうに行くのでしょう?
 
 安心なさい、内地は安全よ。

 海は、あなたは、私が守るから。

 あなたは、友達、だもの」

ふと少女が悲しそうに、言い聞かせるように笑った。


がちゃりと部屋のドアが開いた。

「坊や、親御さんが迎えに来たよ」

提督が部屋に入ってきて言った。

少年が、鎮守府の門まで来ると、確かに車が来ていた。

「ご迷惑をおかけしました」

横で母が頭を下げる。

目の前には、提督と少女。

「いえいえ、別に構わないですよ」

提督は、優しく笑った。


「ほら、行くよ」

と母に手を引っ張られる少年。

が、少年は手を振りほどき、少女のところまで行くと、

「お姉ちゃんは、僕が守るよ」

と言った。

「僕は、まだ子供だけど。

 お姉ちゃんを守れるように強くなるから。

 強くなって、また戻ってくるから。

 だから……待ってて…!」

お互いに、もう会えない予感がしていた。

少年は涙を零しながら言った。


「あんた、泣き虫ねぇ…。
 
 私を守るなら、まず泣き虫を治してらっしゃいな」

少女も、涙を零していた。


「お姉ちゃん、まだ、名前を聞いてなかったよ」

本当の別れのとき、少年はふと思い出して少女に訊いた。

「そうだったわね。艦娘だってばれちゃったわけだし、
 
 ごまかす必要もないわね。

 私の名前はね、叢雲、よ」



「むらくも、お姉ちゃん…」

少年は刻み込むように、その名を呟いた。

「あんたの名前も、聞いてなかったんだけど?」

少女、叢雲が言う。

「僕の名前はね―――」

――――く

――ぃとく

「提督!!」

「ん!?あ、あぁ、なんだい?」

大淀の声ではっと気がつく。青年は昔を思い出してぼうっとしていたようだった。

「提督、着きましたよ」

「…そうか」

鎮守府門前。

海辺の街。

向こうに行けば、海の見える公園がある。

門には、この鎮守府の提督がいた。

「やあ坊や、久しいね」

「はっ、この度はこの鎮守府に推薦していただき、誠にありがとうございます!」


青年は、提督に敬礼をした。

少年は、青年となって、白い軍服を身にまとっていた。

「今日からは、君がこの鎮守府の提督だ。

 さあ、引き継ぎを済ましてしまおう。

 老人はさっさと隠居したいんだ」

提督はそう言って笑う。

「また、ご冗談を…」

「冗談ではないぞ?

 しかしまぁ、自分で言うのもなんだが

 うちの艦隊は優秀でな」

鎮守府の中を歩きながら話す。


「存じております。

 そのような鎮守府の提督になれること、大変光栄に思って…」

「あぁあ、いいんだよそういう堅苦しいのは」

「いや、しかし…」

「ほれ、ずっと君を待ってた子が、この執務室にいるぞ」

執務室の前。


がちゃりとドアを開ける。

そこには、昔と変わらない姿の、叢雲がいた。

「お姉ちゃん…」

「ちょっと、お姉ちゃんはやめなさいな。
 
 今ではもうあんたのほうが年上でしょう」

ふふっ、と二人が笑う。


「叢雲、遅くなったね」

「ほんとにね、待ちくたびれちゃったわ、もう」

「すまないな」

「ふふっ、いいのよ。ちゃんときてくれたから」

「あぁ、強くなって、君を守りにきたよ」

「えぇ、待ってたわ!!」





「ちょっと!泣き虫が治ってないじゃない、まったくもうっ」



終わり

ありがとうございました。

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