モバP「担当アイドルの学生時代が想像できない」 (46)

ちひろ「どしたんですか急に」

P「いや、うちのアイドルっていろいろ不透明というか。ステージの上の姿になるまでの過程が妄想しにくいというか」

ちひろ「妄想て」

P「そういう余地があるって大切だと思うんですよ。漫画も描けちゃうあのアイドルは、高校時代友達と徹夜で原稿書いてたのかなぁとか」

ちひろ「あー、そういう」

P「高校三年の頃もじゅうななさいを自称してたのかなぁとか」

ちひろ「で、ファンである自分がもしもその同級生だったら、みたいなかんじですか? そんなコがいたら楽しいなぁ、みたいな」

P「それですそれ。学生ネタに限ったことじゃないですけど、考えを膨らませやすいというか、妄想で飾りつけしやすいというか。そういうのって人気の秘訣だと思うんですよ。そこらへんうちのアイドルは―」

コンコン、ガチャ

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クラリス「おはようございます。本日も主の祝福がありますよう……」

梅木音葉「おはようございます。すみません、初夏が奏でる音に耳を傾けていたら、少し遅れました……」

P「この不透明さですよ」

音クラ「!?」

クラリス「あ、あの……P様? 何か私たち、粗相を……?」

音葉「不透明、ですか……?」

P「いえいえ、ちょっとした雑談ですよ。いや、雰囲気はとっても透き通ってますけど」

ちひろ「たしかに考えにくいですねぇ。正直、学友として机を並べている絵が想像しにくいです。何年もの間じゅうななさいを自称しているアイドルが同級生ってシチュエーションよりしにくい。ちょっとすごいです」

P「でしょう? 可愛いだけではファンの心をつかみ続けるのは難しいのです。その人のことを考えてると楽しい! ファンにそう思わせるようなアイドルになってほしいんですよ。これからはそういう方向にプロデュースしたいんです」

ちひろ「妄想について真面目に語るアラサー男性」

P「おう止めろやちひろ」



ちひろ「Pさんはまぁさておき、アイドル達の方向性を探すのはとてもいいと思いますよ」

P「でしょ? ではさっそく、うちのアイドルの学生時代を模索してみましょう。そして妄想に彩をつけましょう」

ちひろ「あ、教育番組っぽい。神秘の世界を覗いてみましょう、みたいな」

P「始まり始まりー」

ちひろ「わー。ぱちぱちぱちー」

音葉「? ? ……ぱ、ぱちぱちー」

クラリス「ぱちぱちー♪」

ちひろ(かわいい)




(説明中)

音葉「私たちの学生時代、ですか?」

ちひろ「勝手なイメージですけど、音葉さんはまず人工物のそばにいなさそう」

P「コンクリ製の建物には寄り付きすらしなそうですよね。森の中で青空の下」

ちひろ「白と緑のひらっひらな服で、切り株の机で勉強してたり」

P「葉っぱのノートにハープの楽譜を描いたり……まぁ、ないでしょうけど。普通に学生服着てチャリ通とかでしょうけど」

ちひろ「……いや、どっちがありえそうかっていうと……」

Pちひ「…………」じーっ

音葉「あ、あの……普通ですよ? 中学も高校もセーラー服で、徒歩通学でしたけど……パストラーレ……周りは水田ばかりの、田舎の学校でした」

Pちひ「…………ですよねぇ」しょぼーん

音葉「す、すみません……?」

クラリス「多分ですけど、音葉さんに一切非はないかと」


ちひろ「音楽で有名な学校とかですか?」

音葉「吹奏楽部とか合唱部はありましたけど、アッチェーソでは……その、鮮烈な音色ではなかったかと」

P「所属してたとか」

音葉「いえ……ですが放課後、野球部の声を背景に聞こえてくるトランペットの音色は好きでしたよ」

P「音葉さんからそういう郷愁的なセリフ聞くの、なんか不思議な感じしますね。音葉さんも自分と同じような帰宅部の放課後を過ごしてたみたいで」

ちひろ「うー……私はまだ想像できないですねぇ。放課後の教室。部活に行く坊主頭の運動部。机の並んだ教室を出て、私は寄り道の算段立てながら帰宅部仲間と下駄箱へ」

P「そこにいる和製金髪碧眼……うわ、たしかに違和感すげぇ。僕も田舎育ちですけど、黒髪じゃない人ってそれだけで目立つのに」


ちひろ「学生音葉さんとか、存在自体がファンタジーですよそんなの。ただでさえ雰囲気が俗世離れしてるのに。声かけたくてもできない男子が何人いたことやら」

音葉「男性の友人は……たしかにあまり……一人が多かったです……」

ちひろ「めちゃめちゃ意識されてたと思いますけどね。よほどの胆力がないとアタック行けませんよ」

P「スカウトしたての頃は、声かけるにも度胸いるようなオーラ出てましたし。学生時代の男子同級生にちょっと同情しますよ」

音葉「音楽以外のことでの調和は、昔から苦手で……。グラッセ……冷たい、と周囲に思わせたこともあったと思います」

ちひろ「それ考えると今は丸くなりましたねー」ナデナデ

音葉「皆様のおかげです……。共に歌える、友達までできて……」

クラリス「ふふっ。私だって、音葉さんと仲良くなれたことを何度神に感謝したか分からないくらいですよ」

ちひろ「きれいな友情ですねー」

P「でも、音葉さんにも僕らと同じような学生時代があったんですね。声をかけにくい不思議な空気の美少女……アタック行きたくてもできない男の意識にも気づかず、いつも一人」





P「まぁ、俺だったら玉砕上等で間違いなく行ってましたけど」

音葉「」ピクッ

クラリス「」ピククッ


音葉「あ、あのっ。それはどのような……ど、どのようなっ」ずいっ

P「お、おう?」

音葉「ですから、今の発言は……」

P「いや、もしも音葉さんと同じ学校だったら、絶対声かけてたろうなーと。そんな妄想を少々」

ちひろ「まぁあんたならそうでしょうけど。荒んでたころの、ニコリともしなかった音葉さんをスカウトしてきた人ですし」

音葉「ぜひお聞かせくださいっ。もしも学生の私と出会っていたら、どのようにお声をかけてくださるのか……どのような関係になれるのか………」

クラリス「ちょっとっ。ず、ずるくありませんか? 一人だけそんなの」

ちひろ「本人が聞いてもキモい以外の感想なんて出ないと思いますよ」

P「言い方」

ちひろ「話すなとは言ってませんよ。存分にキモさをひけらかせばいいじゃないですか」

P「よーしあとで屋上こいやちひろ」


音葉「Pさんっ。ちひろさんも話せって言ってます。言ってますよ」

P「んー……いや、たいした膨らみ方もしてませんけど、それでよければ」

音葉「大丈夫ですから……! ベゼールト……気持ちを込めて、あなたの言葉を聞かせていただければ……」

クラリス「わ、私も出演させてくれていいですよ?」

音葉「すみません、雑音はちょっと……」

クラリス「ほ、ほぉん……!?」ゴゴゴゴゴゴ

音葉「」ツーン

ちひろ「さっきの友情どこ行ったんでしょうね」

P「やっぱり出会いからちょっと異質になると思うんですよね。思春期男子には十分に非日常ってかんじの」

ちひろ「話始めるんかい。お二人さーん、お話始まりますよー? 険悪オーラしまってくださーい?」


P(学生)『学校終わったし帰ろー……と思ったけど、なんかピアノ音と歌声が……それも、音楽室とは逆方向から……』

P『CMか何かで聞いたことあるなぁこれ。テンポ早くて高い音が多いけど、なんかさみしいかんじのやつ』

P『ていうかめっちゃうまいな……素人耳でもミスなしで引いてるのがわかるくらい。どんな人が演奏してんだろ……行ってみよう』

(P移動中……)

P(で、はずれの空き教室まできたわけだけど)

音葉『♪……』

P(すごくきれいな人が古いピアノを……たしか、梅木音葉さんだっけか。隣のクラスの……)

音葉『♪~♪~』

P『(にしてもうまいな……CD音源って言われたら信じられるくらい。ピアノの音もだけど、声がすげぇ。大声じゃないのに耳じゃなくて腹に響いてくる……何時間でも聴いてられそう…………)』

音葉『♪……。……あの』

P『は、はい?』(おわ、話しかけられた。なんだろ)

音葉『プレテュードな空間が、崩れました』

P『???』

音葉『……ぶつぶつ、呟きがうるさかったです』

P『』グサッ


ちひろ「妄想音葉さん、辛辣じゃありません?」

P「当初の音葉さんって割とこんなんでしたよ。自分が理解されないのは当たり前だから、自分も周りを理解しません、みたいな」

音葉「ご、誤解です……」

クラリス「く、くふふっ……いえ、理解かと」

音葉「……プレンティフです……」

P「で、その日はすごすごと帰るんですよ。その日は」

ちひろ「続くんですかこれ」


音葉『……あの。なぜ、またいるんですか?』

P『聞きたいから。今日は静かにしてるから、頼むよ』

音葉『……うるさくしないなら、まぁ』♪~

P『……』

音葉『♪ ♪~』

モバP『おぉ……うぉおおお……! 今日のはすっごい早え曲……なのにピアノも歌声もぜんっぜん乱れなくて……うおぉ……!』

音葉『……』ジロッ

P『ご、ごめん。出ていく』

翌日

音葉『なぜ口にガムテープを……?』

P『もがもが、もがもーがも(これなら静かに聞けると思って)』

音葉『……いいですけど』♪~

P『もが……もぉおおお……! もがー!(おぉ……やっぱりすげー!)』

音葉『……』ジーッ

P『も、もがもが……(た、退室しまーす)』





ちひろ「めげませんねぇ」

P「でなけりゃPなど務まりませんよ」


また翌日

音葉『なぜ木の仮装を……?』

P『植物のような心を持てば静かでいられると思って』

♪~

P『わっはー! これ聞いたことある! メッツコー〇のCMで流れてた……ご、ごめん。出ていきます』

またまた翌日

音葉『それはお坊さんの恰好では……?』

P『座禅も二時間ほど組んできた。明鏡止水の心を持った今の俺なら静かに……おぉ! これは甲子園でよく聞くやつ! こんなのまで歌え……で、出ていきまーす……』

またまたまた翌日

音葉『な、なぜパンツのみなのですか!?』

P『本来だったらパンツも脱ぎたいくらいだ。いや、生まれたままの姿でなら落ち着いて……あ、ちょっと先生方、離してくださいよ! せめて一曲だけ聞かせて! 離してー!』





ちひろ「めげろや」

P「ちひろさん言い方」

ちひろ「一歩間違えばストーカーになりそうですよね、そのお餅みたいなメンタルは。音葉さんももっと嫌がっていいんですよ」

音葉「Pさんが私の……? シュテール……いつも、そばにいようとすると……? ふ、ふふっ」

ちひろ「誰がニヤけろっていいましたか」

クラリス「むー……」


何十回目かの翌日

音葉『また、来たのですね……』

P『音葉さんの歌を聞きたいんだからしょうがない。大丈夫! 今日こそ静かにしてるから!』

音葉『(いつのまにか名前呼びに……)すでにうるさいのですが……お願いしますね……』♪~

P(やっぱすげー……)ダンマリー

音葉『♪~ ♪~♪~』

P(いるんだなぁ、天才って)シズカー

音葉『♪~。……』チラッ

P(ん? 今こっち見た? 歌ってるときに目が合ったのって初めてかも……?チンモクー

音葉『……♪! ♪~!』

P『(お、おお……!? なんか急に迫力が……)』


音葉『♪! ♪♪!』

P『おぉ……! こんな声で歌えるんだ……!』

音葉『!』

P『あ、やば……つい声が……』

音葉『ふふっ』ドヤァ

P『あ、あれ? 笑った?』

音葉『私が笑うのは変ですか?』

P『いや、雑音は迷惑じゃなかったの? 演奏の邪魔とか……』

音葉『あ……そ、そうですよ。うるさいですよ』

P『いや、でも今すんごいドヤ顔を』

音葉『してません』

P『もしかして、歌とか演奏を褒められるのが嫌ってわけでも』

音葉『そんなことありません』

P『……もうちょっと聞いててもいい?』

音葉『…………ダメだと言ったことは、一度もないつもりです』♪~





ちひろ「ようやく軟化しましたね。硬かったお餅をぺったんぺったんし続けるような交流でした」

P「お餅の例え気に入ってるんですか?」


それからまた、何十回目かの翌日

P『音葉さん、合唱部とか入らないの?』

音葉『……楽しんで歌う場所、のように思えましたから。私の声は……ベメルクバールの域を超えてしまうから……』

P『はぁ……べめるく……』

音葉『……』

P『えーっと、目立つ、とかそんな意味だっけ』

音葉『! ……知っているのですか?』

P『音楽用語勉強してるんだ。音葉さんと話したいから』

音葉『……』

P『なんで笑うの』

音葉『笑ってません。ニヤけてませんから。こっち見ないでください』





ちひろ「実際に私たちも勉強しましたもんね。楽想記号とか」

P「プロデューサーとそのアシですから。まぁロシア語とか熊本弁よりはハードル低いと思いますけど。語学は大切ですよね」

ちひろ「語学とはいったい」


P『つまり、あれか。悪目立ちしちゃうから一人で歌ってるってことでいい? たしかに一人だけ上手すぎるとなぁ』

音葉『……うぬぼれと思いますか?』

P『ううん。夢中で聞いてた立場だし、確かに音葉さん目立つよ』

音葉『吹奏楽部もそう……彼女たちには、彼女たちのプレテュードな空間がありますから……私がそれを壊すわけには……』

P『あー……充実した場所? 初めて会った時も聞いたな、その言葉。でも、音葉さんくらい上手なら……』

音葉『どれだけ上手くても、他人のそれを侵すのはダメです。音楽ではなく、雑音……。いいのです。ここで一人、声を奏でることも嫌いではありません』

P『……今更だけど、なんか申し訳ないな。毎日来ちゃって。一人で歌う時間は、音葉さんのプレテュードだったんだよな』

音葉『…………いい、です』

P『おう?』


音葉『一人は嫌いではありませんけど……。聴いてくれる人がいた方が好きです……。…………すき、ですから……』

P『…………』

音葉『な、だ、黙らないでください……。いつものように何か……』

P『今まで聞いたどの歌より心にキた。もっかい言って』

音葉『いぃ、いやですよっ。今のはあなたが言わせたというか、自分からは形にできない声もあるというか………』

P『あ、なら俺が言わせればいいんだな。よーし、頑張るぞー』

音葉『と、トリオンファーレである必要は……何がしたいんですか、もう……』

P『そこは最初からずっと変わってないよ。音葉さんの歌と演奏と、声が聴きたいってずっと思ってる』

音葉『え、あ……ぅ……』


P『音葉さんのいろんな声が聴きたいんだ。だから、頑張っていい?』

音葉『……あなたの想うような声が、私にも出せるのでしょうか……。音楽のことしか知らないのに……』

P『出来る。絶対できる。間違いない。ここ最近で一番音葉さんの声を聴いてる俺が言うんだから間違いない』

音葉『…………出せるようになるまで、時間がかかるかもしれませんよ? ラルゴにさえも届かないくらいの進歩かも……』

P『それでもいいから頑張りたい』

音葉『……………………』

P『ダメ?』

音葉『……あ、あなたが、嫌でなければ……。私も知らないような、私の音色を……あなただけに…………………』





P「で、このあとはもうドスケベですよ」

音葉「!?」

ちひろ「おい」


P「なんですか。せっかくきれいに締めくくったのに」

ちひろ「最悪ですよ。なんですかドスケベって」

音葉「そ、そうです………もっと言ってくださいちひろさん」

ちひろ「たしかに音葉さんも、内心ではスケベなこと考えてるんでしょうけども。実際ドスケベし放題でしょうけども。でもきれいな終わりにするのが筋ってものです」

音葉「ちひろさん!?」

ちひろ「胸と尻にだけ脂肪蓄えてるんですよ。こんな身体の女性が清楚であるでしょうか、いやありません。いやらしい体の女性は内面も相応です」

クラリス「………そうなのですか?」

音葉「し、知りません……! 聞かないでください……」

P「その理論だと向井のたくみんレベルになったら」

ちひろ「あれはもう極地ですよ。ファンが抱えてるいかがわしい妄想の百倍いやらしいこと考えてます」

P「マジですかたくみんのファンになります」


ちひろ「閑話休題です。まぁ如何にいやらしい女性だろうと、話の最後はきれいに締めないといけませんよって話ですよ」

音葉「そこではなく……私はいやらしくないということを……」

モバP「なるほど……どれだけ現実がいやらしくても、空想の中ではきれいに保て、と。勉強になります」

音葉「あう……Pさんまで……」

クラリス「……………………はいっ。はい、P様っ」

モバP「どうしました?」

クラリス「私の場合はどのようになりますか?」

音葉「!?」


クラリス「音葉さんだけずるいではありませんか。私のもあっていいと思います」

音葉「ず、ずるいとは……」

ちひろ「聞きたいんですか?」

クラリス「ぜひぜひ」

P「クラリスさんはー……やっぱりあれですか? ミッション系の学校に?」

ちひろ「礼拝堂と体育館が同じ敷地にあるかんじの?」

クラリス「はい。ホームルームの前にお祈りの時間がありました」

ちひろ「音葉さんよりずっと想像しやすいですね。なんというか、自分とはちょっと違う学校生活のほうがしっくりきます」

P「んですね。自分の学校に、よりも自分がその学校にってパターンのほうが妄想ふくらみますね」

ちひろ「パターン分けできるくらい妄想のネタ持たれててもなんか嫌なんですけど」

P「中二の必修科目ですから」

ちひろ「義務教育とはいったい」


先生『では皆様。本日も主の御心のままに……』

P(学生)『(お祈りってめんどくさいな……家から近いってだけの理由でこの学校選んじゃったけど、毎日わざわざ礼拝堂に行ってお祈りするって、正直だるい……)』オイノリー

モバP『(他にも、そんな感じの人が割と……特に上級生ほど多い気が…………………ん?)』

クラリス『…………………』

P『(クラリスさん、だっけ。背筋まっすぐで。微動だにしてなくて……あの人の周りだけ空気が違う……本気でお祈りしてる人って、その人自身を拝みたくなるくらいきれいなんだな。初めて知った)』

先生『P君? お祈り中にどこを見ているのですか?』

P『すみません、神がかってるってくらいきれいな人がいたもので』

先生『は?』





ちひろ「この後めちゃくちゃ怒られるやつですね。にしても、神がかりって」

P「初めてクラリスさん見たときそんな感想でしたけどね。こないだクラリスさん本人にそれ言ったら目ぇ見開いて説教されましたけど。おこがましいとかなんとか」

ちひろ「(言われた本人顔真っ赤でしたけどね)」


P『不真面目の罰として、昼休みに礼拝堂の清掃をさせられるとは……失敗したなぁ。いや、良しとしよう。神を見た代金と考えれば安い安い』

クラリス『あの……』

P『おぉう、神様!?』

クラリス『?』

P『じゃなくて……隣のクラスのクラリスさん。どうしたんですか?』

クラリス『お掃除。日課なんです』

P『昼休みに? 自主的に?』

クラリス『変ですか?』

P『……いや、なんかこう、自分の浅ましさが浮き彫りになるなぁ、と……』





ちひろ「音葉さんが天使だとしたら、クラリスさんは女神か何かですよね」

P「ここの事務所にアルフレイムとか天界プロダクションとかあだ名がつくわけですね」

ちひろ「天使と女神と、さらには緑の服が似合う聖女がいるわけですもんね」

P「はぁ、通りで。一緒にいるとドキドキするわけです」

ちひろ「…………………」

P「照れるなら言わないでくださいよ」


P『昼休みを使って掃除なんて……せっかくの休み時間なのに』

クラリス『好きでしていることですから』

P『まぁ、それなら……掃除が終わっても、まだ時間はありますもんね』

クラリス『いえ、この後は花壇の世話を』

P『……ちなみに、普通の休み時間は何かしてるんですか?』

クラリス『普通ですよ? 次の授業の準備が終わったら、先生方のお手伝いを』

P『………』

クラリス『放課後だけでは、時間が足りないものですから……あの、なぜお黙りになられるのですか?』

P『俺みたいな下々の人間が言葉を交わしていい存在なのかなぁ、と』

クラリス『?』



ちひろ「清らかすぎて近寄りがたいですね」

P「そうなんですよ。妄想の中でさえ汚しがたい。アイドルとしては素晴らしいことなんですが、妄想盛りの男子ファンを得ようとする場合にはディスアドバンテージになってしまうんです」

ちひろ「そのファン層必要なんですかね」


P『なんか……ここまで心がきれいだとちょっと納得いかないんですが』

クラリス『はぁ』

P『クラリスさん、放課後空いてます? 一緒に食べ歩きでも……』

クラリス『すみませんが、聖歌隊の活動がありますので……』

P『じゃ、じゃあ明日。歌うのが好きなら、カラオケとか』

クラリス『いえ……そもそも、放課後の寄り道は校則で禁じられています。主は見ています。いけないと定められたことは、するべきではありません』

P『いや、それくらいは割とみんな……』

クラリス『するべきでは、ありません』

P「」



ちひろ「強い。女神強い」

P「伊達にシスターしてませんよね。正しいことの白の中にいようとする意志が半端ない。だからこそ、俗な文化に連れ込みたいわけで」

クラリス「あら、どこかに連れて行ってくださるんですか? 食事でも何でも、是非に♪」

音葉「……ずるいのはどちらですか……」


翌日の昼休み
P『クラリスさーん。今日の放課後空いてません? ゲームセンターに緑のキモいぬいぐるみが景品で入ったらしいんですけど、一緒に見に行きませんか?』

クラリス『いけません』


そのまた翌日
P『クラリスさんクラリスさん。新作のハンバーガー買ってきたんですけど、一緒に食べませんか? スタドリ味の肉とかいう世にも胡散臭いバーガーですけど』

クラリス『食事は清貧が一番です。お米と少しのお野菜をすでにいただいていますから。というか、昼休み中に学校を抜け出すのはいけないことです』


さらに翌日
P『クーラリースさーん。ゲームを持ってきたんですけど、一緒にどうです? 巨乳忍者を揉んで癒すとかいうわけわからんゲームですけど、おもしろいですよ?』

クラリス『校則違反です。先生にお渡しなさい』





ちひろ「うわ、出ましたねお餅メンタル」

P「ゴキブリ見つけたみたいなリアクション止めてくださいよ」


何度目かの翌日
P『うーん……クラリスさん、もっと楽しいことしましょうよ』

クラリス『喜楽が必ずしも充実に結びつくとは限りません。私の今は、とっても充実していますから』

P『むぅ……』

クラリス『真面目なのはいいことです。あなただってそれは分かるでしょう?』

P『俺はそこまで……どっちかというと悪ガキよりだと思いますけど』

クラリス『毎日礼拝堂に来るじゃありませんか』

P『クラリスさんと遊んでみたいので』

クラリス『一緒に掃除をしてくれるじゃないですか。毎日』

P『いや、クラリスさんがしてるからですよ。俺だけなんもしてないのも居心地悪いじゃないですか』

クラリス『床がピカピカに、顔が映るまで熱心にはそうそうできません。心がきれいな人でなければ、物はきれいに磨けません』

P『いや、そういうわけじゃ……』

クラリス『素直じゃありませんね。きれいな心は、透き通って本音が見えてしまうものなのですよ♪』


何十回目かの翌日
P『クラリスさん、今日は遅いな……いや、なんで俺は一人で掃除してるんだろ。でも掃除を一人で終わらせたらその分時間が出来て、クラリスさんと遊べるかもだし』

たったった

クラリス『ふぅ……あら、今日も会いましたね』

P『あ、こんにちわ。何かあったんですか?』

クラリス『ちょっと授業が長引いて……終わってからすぐにきたんですけど』

P『ってことは、ご飯も食べずに? ダメですよそれは。なんでそこまで急いだんですか』

クラリス『それは……ふふっ。ふふふっ♪』

P『なぜ上機嫌に』

クラリス『心配だったんです。素直じゃない誰かさんが、お一人で掃除をしているんじゃないかって』

P『……』

クラリス『杞憂通りで、とても幸せです♪』

P『ぐぬぅ……』


P『いや、俺のことはいいんですよ。掃除終わってからでも、ご飯食べに行きましょう』

クラリス『いけません。この後はいつも通り、花壇のお世話が……』

P『いつも通りにご飯を食べてないのはもっとダメですよ』

クラリス『平気です。多少の空腹にも耐えてこそ、主への奉仕というものですから』

P『でも……』


くきゅぅううう


クラリス『』

P『……あの、今』

クラリス『気のせいです』

ぐきゅるるるる

P『二回目』


P『腹ペコじゃありませんか。なんか食べるもの、食べるもの……あ、ポケットにあった。カロリーメイト、スタドリ味。どうぞ』

クラリス『い、いけません。主への奉仕より食欲を優先するなど……』

P『クラリスさんを苦しめるような神様を信仰した覚えはありません。仮にいたとしたら俺がそいつに説教してきますから。食べてください』

クラリス『しかも、礼拝堂でなんて……』

P『おいしそうに食べてるとこ、神様に見せてあげればいいんです』

クラリス『うー……』

P『じゃあ、俺がクラリスさんに奉仕をするってことで。他人への献身ですよ。俺が人の役に立ちたいって思うんです。神様も許しますって』

クラリス『え、あ……と……よいのでしょうか……?』

P『いいんですって。はい、口開けてー』

クラリス『ふぇ? あ、あーん……』


ぱくっ

クラリス『……』もっきゅもっきゅ。ごくん

クラリス『……んふぅ……♪』

P『ご満悦』


クラリス『はっ……わ、私はなんてことを……』

P『はい、まだありますから。口開けてください』

クラリス『は、え? いや……あ、あー……』

ぱくっ

クラリス『あむ、あむ…………………んふ……♪』

P『めっちゃ笑顔じゃないですか。もっと普段からいっぱい食べましょう。放課後がだめなら、お休みの日にでもご飯行きましょう』

クラリス『も、もうっ。なりません。食事は清貧が一番です。今は非常時ですからともかく……いつもはつつましくなければ』

P『神様のために尽くしてる人が幸せそうにしてるのを嫌がる神様なんていないですよ。クラリスさんみたいな人が信じている神様なら、絶対に喜びます』

クラリス『詭弁ですっ』

P『正論でもあると思います。駅前にバイキングができたそうなのでぜひに。最近の食べ放題って、おいしいんですよ』

クラリス『な、なりません』

P『十一時ころに駅で待ち合わせしましょう。予定、空いてますか?』

クラリス『…………………三時まで、なら』





クラリス「P様。私、次の土曜日お休みなんですが」

P「あ、そうでしたっけ。なら、おいしいパスタのお店が……」

ちひろ「あんたはお仕事でしょうが。音葉さんのレコーディングの付き添い、その日ですよ」

クラリス「むぅ……」

音葉「残念でした、ね……♪」


休日の翌日
P『なんか今日、掃除に気迫籠ってますね』

クラリス『昨日の醜態をそそぐためには、これでも足りません……! 私としたことが、列をなす食べ物に誘惑されるなんて……』

P『店員からストップかけられるくらい食べる人初めて見ましたよ。いやー、いいもん見ました』

クラリス『~~!』ぽこぽこぽこ

P『いたいです、いたいですって。いいじゃないですか、食べるのが好きっていいことだと思いますよ』

クラリス『あなたはっ、どうしてっ、私を堕落させようとっ』

P『いいじゃないですか。精神的に、日頃すんごく高いとこにいるんですから。食事くらいは凡俗になっても。その方が神様にも人にも好かれますよ』

クラリス『またそうやって都合のいいことを……』

P『間違いないです。いっぱい食べるクラリスさんが好きな人が、ここに一人いますから』

クラリス『ぅう…………………』

P『今度は違うお店に行きましょう。どこがいいかなー。量が食べれるとこがいいですよね』

クラリス『…………………あなたは』

P『ん? なんですか?』


クラリス『あなたは、どうして私にかまうのですか……? 私は別に、一緒にいて楽しい人間ではないと思いますけど……』

P『ん……いや、それは、その……』

クラリス『……』

P『透き通っていて、本音が見えているんでしょう? とっくに気づかれているんだと……意地悪ですか?』

クラリス『あなたの言葉で、見えている気持ちを聞きたいんです……。こんな風にしたのは、あさましくしたのは、あなたですよ……?』

P『困りました……』

クラリス『嫌ですか? そうでなければ……もっと、変えてもいいんですよ?』

P『もっとあさましくなってほしいと思っても?』

クラリス『はい……主と、あなただけが知る私です……。もっと、もっと、あなたの好きな私に……私を、好きに…………………』





P「で、ドスケベまったなしですよ」

ちひろ「おい」


ちひろ「妄想でさえ汚しにくいとか、どの口がほざいてんですか。一緒じゃないですかさっきと」

P「きれいなものほど自分で汚したいと思う男心がですね」

ちひろ「分からないでもありませんけど。清廉潔白を絵に描いたような美女が、自分だけには肉欲に溺れる顔を見せるってたまらないですけど」

P「自分で言っておいてなんですが、理解を示されるとそれはそれで複雑です」

クラリス「思うだけでよろしいのですか?」

音葉「!?」

ちひろ「おいシスター」


P「とまぁこんな感じで。これからは二人のプライベートとかをある程度オープンにしてもいいと思うのですよ」

ちひろ「こんな妄想がファンの間ではびこるアイドルってどうなんでしょうか」

P「そこから過去や生い立ちを想起させて、ファンに想像の余地を作りたいのです。その人を思うだけで楽しい、そんなアイドルであってほしいわけです」

ちひろ「今のままでいいような気もしますけど」

P「よーし、やる気出てきましたよー! さっそく企画作ってきますよー!」だだだだ

ちひろ「幼児のようなダッシュ止めてくださー……ああ、行っちゃいました。すみませんね、二人とも。変な話を聞かせてしまって」

クラリス「いえいえ、とても楽しかったですよ。…………………私の方が、音葉さんよりちょっとリードみたいですし♪」

音葉「……はい?」


クラリス「お話の内容がそうだったじゃありませんか。汚したいだなんて……♪ ふふっ、どうしましょう?」

ちひろ「肉欲シスターってあだ名つけていいですか?」

音葉「わ、私にだって……。それに、私のために頑張ってくれました……お話の中でも、現実でもですっ。きっと外で、開放的な場所で初めてを……」

ちひろ「願望交じりに張り合わないでくださいドスケベエルフ」

クラリス「次のお休みはお食事にでも……ふふっ、何を食べられてしまうのでしょう♪」

音葉「私、つつ、次のお休みは私がお誘いしますからっ。ダメです、ダメですっ」

ちひろ「…………………」


ちひろ「……まぁ、いいんですけどね。お二方、一つよろしいですか?」

音クラ「?」

ちひろ「いや、一つ見落としがあるようなので。些細なことなんですけど、一応」

音葉「なんでしょうか……?」

ちひろ「『音葉さん』」

音葉「? はい……?」

ちひろ「『クラリスさん』」

クラリス「なんですか?」



ちひろ「『ちひろ』」



音クラ「!」


がちゃっ

P「いやー、忘れ物しちゃいました。あ、ちょうどいいや。ちひろさんも一緒に来てくれません?」

ちひろ「えー。私をなんだと思ってるんですか?」

P「俺のアシスタントでしょうがちひろは。ほら行きますよ」

ちひろ「はいはい。あなたのちひろがお供しますよー♪」チラッ

音クラ「…………………」

ちひろ「ふふーん♪」にっこり

音クラ「!!!」

P「じゃあちひろと会議室行ってきますから。二人はここで……」

音葉「Pさん!」

クラリス「P様!」

P「お、おおう?」




このあとめちゃめちゃ呼び捨てを強制された。


終わりです。見てくださった方、いらっしゃいましたらありがとうございました。増えろディヴァイニアP。

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