【シュタインズ・ゲート】紅莉栖「髪を切った」 (31)

書き溜めあり。初心者だから何か間違いがあったら指摘お願いします。

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岡部「今日も暑くなりそうだな」

ラボの窓を開ける。スズメの鳴き声と共に朝の心地よい風が流れてくる。

ダル「なんか予報では最高温度30度超えるらしいお」

岡部「なに!? 昨日よりも高いではないか」

ダル「なあ、オカリン」

岡部「ん?」

ダル「いい加減ラボにエアコンつけね?」

岡部「むう、だがな、我がラボの財政は家賃を払うだけでカツカツ……」

ダル「でも、このままじゃPCに熱こもり過ぎてシャレにならないし、エロゲも捗らないお」

岡部「エロゲは家でやれ!」

まゆり「まゆしぃもエアコンほしいなー。最近は暑くてコス作るのも大変だよー」

岡部「まゆりまで……」

ダル「はっ! それともオカリン」

岡部「なんだ?」

ダル「あっつあつのラボで、ラボメンガールズが汗だらだらなのを、視姦してハァハァしたいとか? あっ、ちょっと鼻血出てきた」

岡部「お前と一緒にするな!」

ダルにティッシュ箱を投げつける。しかし汗だらだらのラボメンガールズか……紅莉栖の服は透けやすいから……と、そこまで考えて思考を止める。これではまるでダルのようではないか!? このままでは暑さにやられて、まいってしまうかもしれない。とにかく、エアコンのことを考えねば。

岡部「仕方あるまい……この鳳凰院凶真、我がラボのためにこの灰色の脳細胞を労働にあててやろうではないか」

まゆり「まゆしぃもバイト代からちょっと出すねー」

岡部「うむ、それは助かる。ダルもいくらか頼むぞ」

ダル「ちぇー、でも、ま、こればっかりは仕方ないかー」

しかしバイトといっても今まで短期バイトしかやったことがない。また新しく探さねば……そういえば開発室の方に求人情報誌があったな。

岡部「なあ、ダル」

探し始めて数分。窓もなく、部屋の構造上、風の巡りが悪い開発室に俺は音を上げていた。

ダル「んー?」

岡部「この辺に求人情報誌を置いていたのだが知らないか?」

ダル「えーと、見た覚えはあるけど、よいしょ」

岡部「心あたりのある場所は探したんだが見つからなくてな」

ダル「徹夜でエロゲしてた時に僕がどこかに移動させたかも」

そうしてダルと開発室で探していると、ラボのドアが開く音がした。

紅莉栖「ハロー」

どうやら助手のようだ。

まゆり「え? 紅莉栖ちゃん?」

ん? 何やらまゆりの様子がおかしい。気になって振り返ると、そこには――――髪を切り短髪になった紅莉栖がいた。

岡部「じょ、助手?」

ダル「ん?」

それまで作業をしていたダルも、俺の反応に異常を感じ取り、振り返る。そして、固まった。

紅莉栖「ちょっと、みんなして何? そんなに変?」

じょ、助手の……あの綺麗な長髪が跡形もなく……。

岡部「お、俺だ! ああ、何やら大変なことになった。何!? ガンマ線バーストによる高エネルギー放射が原因だとう!?
    ふ、何を言っている。致命傷で済んださ。ああ、必ず生きて帰る。エル・プサイ・コングルゥ。」

ダル「ちょっと、オカリン」

と必死に平静を取り戻そうとしていた俺にダルが耳打ちしてくる。

ダル「オカリン、牧瀬氏と何かあったん?」

岡部「なに?」

ダル「だっておにゃの子がここまで髪を切るなんて、男絡みで何かあったとしか思えないのだぜ」

岡部「俺は、何もしていないぞ!?」

ダル「気づいていないだけで牧瀬氏の地雷踏み抜いたとかない?」

岡部「あっ」

ダル「何かあるん?」

岡部「いや、大したことないのだが……この前助手のプリンを助手のマイスプーンで食べてしまってな」

岡部「そしたら助手が“プリンに牧瀬って書いてあるでしょう?”なんて言ってくるから、そこから言い合いになってな」

岡部「最終的に俺がプリンを買ってくることで落ち着いたが、まさか、これか?」

ダル「うーん。それではなさそうだけど」

岡部「あっ」

ダル「他にもあるん?」

岡部「この前、お前が由季さんとデートしていた日があっただろう?」

岡部「あの日、助手と二人きりでラボに泊まったのだが」

ダル「ん? パンツ脱いだ方がいい?」

岡部「…………脱がんでいい」

息が荒くなったダルにストップをかけながら話しを続ける。

岡部「あの日、助手が“何か食べたいものはある?”と聞いてきたのでな」

岡部「何か買ってきてくれるのかと勘違いした俺はカレーを頼んだのだが」

ダル「まさか……」

岡部「そう、二時間後、俺の目の前にあったのは“紅莉栖がカレーと言い張る何か”だった」

ダル「oh……」

岡部「とにかく酷い味でな」

ダル「え? 食べたん?」

岡部「ああ、一応、こ、恋人が作ってくれたわけだし……な」

ダル「オカリン、僕はその場にはいなかったけど、間違いなく言える。あんたその日一番輝いてた男だぜ」

岡部「それで、ここからが本筋なのだが、さすがに俺もまいってな。つい口からポロりと“科学は得意なのになぜ料理は駄目なのだ?”と出てしまった」

ダル「それで?」

岡部「反論してくるのかと思ったら、泣き出してしまってな」

ダル「あちゃー」

岡部「謝った上で、料理はルカ子やフェイリスに教えてもらって、一緒にこれからうまくなっていこうと方針を立ててなんとか仲直りはできたのだが…まさか、これか?」

ダル「うーん。仲直りできてるなら牧瀬氏の性格的に引きずることはないと思われ」

岡部「だよな……あっ」

ダル「聞くお」

岡部「この前研究室の新入生配属の歓迎会があったんだが」

ダル「ああ、僕のとこはカラオケだったお」

岡部「俺のとこは、BBQの後ちょっとした飲み会でな」

ダル「うは、何そのリア充展開!」

岡部「今はお前もリア充だろ。もちろん俺もな。」

ダル「まあね!」キリッ

ダル「それで参加したん?」

岡部「ああ、“一応授業としてやるから参加しないと単位に響くぞ”って教授に釘を指されてな」

岡部「だが、その日は午後から助手と買い物に行く予定だった」

ダル「なんで授業あるのに牧瀬氏との予定を入れたん?」

岡部「当初は午前中のBBQしか聞かされていなかったんだ」

岡部「しかし、当日になって教授が急に“悪いが午後も授業の日程になってたから何かやらないとだわーわっはっは”と言い出してな」

ダル「ああ、それで飲み会を」

岡部「それで渋々メールで助手に断りを入れてな……」

ダル「許してもらえたん?」

岡部「飲み会後、お詫びとして、二人で夜桜で花見をしたんだが……許してもらえたかはわからんな」

ダル「うーん。断定はできないけどそれも違う気がするお」

岡部「だよな。あっ」

ダル「牧瀬氏とのイチャイチャを聞く流れになってる気がするお」

岡部「いや……これだ! これに違いない!」

そこで、記憶の棚からある項目を思い出した。俺はピンときた。忘れもしない。むしろヒントは自分自身で言っていたのだ。

紅莉栖「おい、おのれら、さっきから何をこそこそ話してる?」

助手が鋭い眼光をこちらに向けている。しかしひるむわけにはいかない。

岡部「じょ……紅莉栖!」

紅莉栖「な、なによ」

勢いのまま言葉を紡ぐ俺に助手の語気が弱まる。ここしかない! あの夜の俺の……いや、俺たちのミスを!

岡部「すまなかった! あの夜のお前の下着は今、俺の実家にある! 洗濯をしたんだが手違いでお袋の部屋にあるのを取り戻せていない」

紅莉栖「え?」

岡部「だが、必ず取り戻す! それが、運命(シュ)石(タイン)の(ズ)扉(・ゲート)のせんた……ぶべら」

殴られた。グーで。

紅莉栖「ちょっとこい」

岡部「はい」

まゆり「ダルくん、オカリンと何話してたの?」

ダル「ノーコメントで」

ルビ振ったらこういう表示になるのかー

岡部「だが、必ず取り戻す! それが、運命(シュ)石(タイン)の(ズ)扉(・ゲート)のせんた……ぶべら」

岡部「だが、必ず取り戻す! それが、シュタインズ・ゲートのせんた……ぶべら」
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紅莉栖に襟を掴まれズルズルとラボの外まで引きずられる。

紅莉栖「話せ」

岡部「はい」

話した。あの夜のこと。行為の後、紅莉栖が自分のカバンと勘違いして、俺のカバンに下着を入れてしまっていたこと。俺が実家に帰ってからそれに気づいたこと。洗濯して干していたが親父が勘違いしてお袋の洗濯物と混ぜていたこと。お袋が見知らぬ下着について語ったことで所在が判明したが回収できていないこと。そして、紅莉栖がそれについて何も言わない俺に怒ってなんやかんや髪を切ったのではないかということ。

紅莉栖「……」

ため息をつく紅莉栖。

紅莉栖「あんたって、ほんと馬鹿よね」

岡部「なにっ!?」

紅莉栖「どうして、その解に辿り着くのかわからないって言ってるの」

岡部「し、しかし……あんなに綺麗な髪だったのに、それを切るなんて何かしらあったと思うだろう」

紅莉栖「え!? き、綺麗って」

岡部「事実だ」

紅莉栖「そ、そう? だったら切らない方がよかったかしら」

岡部「うむ。まあ、どちらかと言えば……ではなくて。だったらなぜ切ろうと思ったのだ?」

紅莉栖「暑いからよ」

岡部「え? 暑い?」

紅莉栖「そう、暑いから。だってこのラボ、エアコンないじゃない? 扇風機はあるといっても焼け石に水程度の効果しか見込めないし。
     それに例年より今年は暑くなるって言ってたから、なら、いっそのこと切ってさっぱりしようって」

岡部「ほんとうにそれだけか?」

紅莉栖「え、あ、うん」

岡部「はー……」

真相を聞いて安心した。今の俺は紅莉栖なしでは生きられない。
なぜなら、かつて彼女が生きていてくれればそれでいいと望んだ俺は、彼女が俺を“観測”したことでなかったことになったのだから。

紅莉栖「でも、本当は」

岡部「ん?」

紅莉栖「いや、その、脳の報酬系というのは欲求が満たされた時、もしくは将来的に満たされるという予測ができると活性化するの。これは記憶や学習と関係性が深いもの。
     それで、この報酬系が何度も同じ手段で活性化すると脳はそれに慣れてしまうというか……」

岡部「何が言いたい?」

紅莉栖「つまり、その、たまには印象を変えないと岡部も飽きるかなって……」

岡部「…………」

岡部「……くくく、フゥーハハハハ! 殊勝なことだな! クリスティーナよ! 悠久の時を過ごしてきた俺がこれ程度で飽きるだと? 
    この鳳凰院凶真も見くびられたものだ……フゥーハハハハ!」

紅莉栖「はいはい、厨二病乙。というか早く下着返せ」

岡部「はい」

紅莉栖「それで?」

岡部「それで?とは?」

紅莉栖「感想は?」


岡部「ああ。ゴホン……可愛いよ」

紅莉栖「そっか。ふふ」

世界線はSG。時系列は映画の後で細かくは考えてません。

続編考えてみますね!読んでくれた方ありがとうございました。

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