リヴァイ班「生存戦略、しましょうか」 (163)

※ネタバレ





ガチャ


エルド「……ん?なんだこの部屋」

グンタ「よおエルド」

エルド「グンタ。なにしてるんだ?」

グンタ「いや、気づいたらこの部屋にいてな」


ガチャ


ペトラ「あ……グンタ、エルドじゃない。この部屋なに?」

エルド「おう。いやそれが…俺たちにもわからん」

グンタ「いつのまにか真っ暗な道を真っ直ぐに歩いてて、その扉に辿りついた。で、開けたらこの部屋にいたんだ」

ペトラ「ああ、私もいっしょだわ」


ガチャ


オルオ「……ん!?ここどこだ!?」

エルド「やっぱお前もきたか…」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1371827559

ペトラ「私たち、ここにくるまで何してたんだっけ」

グンタ「エレンを守るために城で生活して…」

エルド「そうだ、壁外調査に行ったんだ。そして巨大樹の森に」

オルオ「………女型の巨人が」

「「「………」」」


ペトラ「っあああああああああああああああ!!!くっそ!!ああああああああああああ!!!」ダンダン

エルド「落ち着けペトラ!!深呼吸!」

オルオ「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお思い出したあああああああああ!!あのクソ女型の野郎に俺たちは殺されたんだあああああ」

グンタ「あ!?待て待て待て待て!女型の巨人は捉えられただろ!?」

グンタ「なに!?俺の首を切り裂いたあの人物が巨人だと!?」

エルド「そうだ」

オルオ「あの巨人は、エレンと同じ巨人化能力者だったようだな…」

ペトラ「それに視力の回復の仕方もおかしかった。あの巨人はエレンよりも巨人化を大分使いこなしてたわ」

エルド「俺たちが死んだあと、エレンはどうしただろうか……」

オルオ「……! なあ、この部屋窓なんてあったか」

グンタ「いや、なかったぞ」

ペトラ「……グンタ、右を見てみて」

グンタ「ああ?……あ!?窓が!?さっきまでなかったはずだぞ!」

エルド「何か見えるか?」

ペトラ「えっと………えっ?」



ペトラ「エレンが…!」



ペトラ「エレンが巨人化して…女型と戦ってる!」

オルオ「なんだと!?あのクソガキ……!!」ギリッ




エレン(巨人)「……ア」

女型「……ッ」

ブンッ ズバァッ!!


グンタ「エレン!!まずい! しかしなんだあの女型のキック…!」

エルド「くそ!この窓壊せないか!?」バンバン


女型「……」パカッ ブチブチ…


ビリビリッ…パクッ


ペトラ「エ、エレン!エレンが…あああ……!」

グンタ「…食われた……クソッ……俺たちのせいだ!俺らはあいつを守るためにリヴァイ班のメンバーに選ばれたってのに…」



ミカサ「エレン!!!」バッ



オルオ「あいつは…エレンの幼馴染だったか」

エルド「巨人もミカサも……行っちまう。もう俺たちからは見えなくなったな」

ペトラ「エレン…ごめんなさい、エレン……私たちのせいで…!!」ポロポロ

エルド「……エレンは本当に死んだのか…?」

ペトラ「え…?」

エルド「女型が人を食うことを目的にしていないのは分かってるだろ。エレンを殺したいだけなら、握りつぶすなりすればよかったんだ」

オルオ「…しかし、奴はわざわざ口に含んだ。ただ単に運ぶため、そういう可能性もあるとエルドは言っているのか…?」

エルド「ああ」

グンタ「だといいが…」



ペトラ「……あ」




リヴァイ「……」ヒュン

グンタ「」

リヴァイ「……」ヒュン

エルド「」

リヴァイ「……」ヒュン

オルオ「」

リヴァイ「……」ヒュン

ペトラ「」

リヴァイ「……」


リヴァイ「……」

リヴァイ「……」ヒュッ




ペトラ「……兵長…」ジワ

エルド「…俺たちは、最低の部下だな」

グンタ「ああ…」


オルオ「……俺たち、本当に死んだんだな」

エルド「……死んだあとも、こうして喋ってるから信じがたいけどな」

グンタ「でも俺たちは、もう何もできねえ。この窓も壊せないし、俺たちが入ってきたドアもこちらからは開かねえしな…」

ペトラ「…………」



ガチャ


   「どうもみなさんお待たせしました」

オルオ「!? もうひとつ扉がでてきた……ってか誰だテメェ」

   「みなさんをあっちの世界に案内するために来ました。さあ、私の後に続いて、私が今でてきた扉を抜けましょう」

ペトラ「あっちの世界って……あの世ってこと…?」

   「まあそんなもんですね」

エルド「待ってくれ!じゃあ、こっちの扉はあの世に通じてて、あっちの扉は俺たちが生きてた世界に繋がってるのか?」

   「そうですよ。でもあっちの扉は開けられません。私が鍵かけてますんで。戻られちゃ困りますからね」

ペトラ「……」

   「ちょ…なんですかその目。怖いなあ」



オーイ チョットヒトリ キテクレー

   「あ、呼ばれちゃった。みなさんもうちょっとこの部屋で待っててくれますか?すぐ戻るんで」フワフワ




グンタ「なんなんだ一体……あれが死神って奴なのか?」

エルド「あの世って、どんなんだろうな」

ペトラ「……」

ペトラ「あいつの鍵奪って、あっちの扉開けない?」

オルオ「!?な、なに言いだしやがる!?馬鹿かお前!」

エルド「ペトラ、自分の死を認めたくない気持ちは分かるが……俺たちは、もう死んだんだ。生き返ることなんて、無理だ」

ペトラ「…馬鹿だってこと、分かってるよ!でも!私たちが女型を仕留められなかったせいで、今エレンは危険な目にあってる」

ペトラ「エレンを守ることが私たちの使命だったのに。それに…兵長にあんな顔までさせちゃった……」

ペトラ「私……できることなら、もう一度やり直したい…!もう一度だけでいいから…!」

投下の途中で寝てた…



エルド「……」

グンタ「……」

オルオ「……フン。ったく俺の女房になる意気込みは十分のようだな、ペトラ」

ペトラ「オルオは私の今の真面目な話をちゃんと聞いてた?」



エルド「…はは。まあ、俺たちが持っている女型についての情報は、初戦のときと比べて格段に多い。……一つやってやるか?」

グンタ「ここでやんなきゃ、リヴァイ班のメンバーじゃねえよな」

オルオ「あのクソガキもションベン垂らしながら泣いてる頃だろうしな…」

ペトラ「…ふふふ。みんなならそう言ってくれると思ってたよ」



エルド「じゃあ、」

エルド「生存戦略、始めるか」



エルド「まず女型について知っていることをまとめよう」

グンタ「俺の知らない情報もあるだろうしな」


・視力の回復を片目に集中させることで早くできる。30秒未満で片目の視力は回復してしまう
・皮膚を硬化させる能力がある


ペトラ「硬化って、どれくらい固いの?」

オルオ「刃が全く通らなかった。むしろ刃が折れた」

エルド「そりゃあ…まずいな。刃より固いとなると」

グンタ「任意で全身硬化できるのか?持続する時間はどのくらいだろうな」

オルオ「俺のときはうなじを硬化していたな…」

ペトラ「……じゃあ、少なくとも絶望的な状況でもないね」

ペトラ「視力を奪ったあのとき、奴はうなじを手で守ってた。硬化がずっとできるなら、そんなことしないでただ急所を硬化していればいいもの」

エルド「確かにそうだな」


・視力の回復を片目に集中させることで早くできる。30秒未満で片目の視力は回復してしまう
・皮膚を硬化させる能力がある(ただし持続性はない?)


グンタ「硬化している皮膚でも、ずっと切りつければもしかしたら刃が通るかもしれないな」

エルド「かもな。が、視力の回復速度も考えるとそんな悠長なことはしてられないな」

オルオ「やはり、視力を奪って硬化される前に削いだ方がいいだろうな……チッ」

ペトラ「オルオ、なんだか今日はまともだね。…私もその意見に賛成だな」



エルド「もってる情報はこれで出つくしたか。さて、作戦を考える前にひとつ決めた方がいいことがある」

ペトラ「?」

エルド「俺たちが何を優先するか、だ。エレンの命か、全滅回避か」

オルオ「そいつぁ難しいな。あのとき俺たちはクソガキの命を優先して、あいつを逃がした。結果俺たちは全滅、そしてあのガキも女型に連れ去られた」

ペトラ「全滅を回避することで、エレンを守ることに繋がると思う。多分エレンにどう言い含めても、私たちが全滅したら女型に向かっていっちゃうような子だもの」

グンタ「確かにそうだ。まあ、あくまでエレンを守ることが最重要だが、今度は俺たちの命も守らなくちゃなんねえな」

エルド「骨が折れるな……だが、まあ悪くない」フッ

オルオ「おい!兵長の口調真似してんじゃねえ!」

ペトラ「オルオが言うな」




グンタ「次は作戦か。俺は初戦の時に死んでたからな、対女型戦経験済みの3人に従うぜ」

エルド「そうだな……あのときも、女型の目のことがあるまでは順調だったんだ。だから今度は、一人が奴の視力を常に奪おう」

エルド「視力が回復しそうになったら、奴の目をまた潰すんだ。その間にほかの3人が肩回りの筋肉全て削いで、うなじを無防備にする。どうだ?」

ペトラ「それが一番でしょうね」

オルオ「異論はねえな」

グンタ「俺も賛成だ」

エルド「よし。じゃあ決まりだ! あとは……」



ガチャ

   「みなさん、お待たせしてすいませーん。じゃあいきましょっか」

ペトラ「せいっ!!」ガツン

   「ほあッ!?……」バタン



ペトラ「持っててよかった超硬質スチール」

オルオ「ポケットにあったあった。これが鍵だな」チャリ

エルド「じゃあ行くか。扉の向こうへ」

グンタ「全くわくわくするな…黄泉がえりっつーのは」



……ガチャ……



————————
—————
———



エレン「すげえ!空中で撒き散らしたってことですか!?」



ペトラ「……え…?」
グンタ「あ…?」
エルド「……これは」
オルオ「……うおお」


エレン「えっ…。みなさん、どうしたんですか、急に?」


ペトラ(生き返った…の?)

オルオ(しかもよりによってこの話の時かよ…!)

エルド「エレン……!」

グンタ「……」グッ


エレン「本当にどうしたんですか先輩??」



エルド「エレン。落ち着いて聞けよ。今から女型の巨人が人の姿で、あっちの方向から襲ってくる」

エレン「え?」

エルド「お前は、方向転換して今すぐ本部へ向かえ。俺たちがあいつを仕留める」

エレン「あの…何言ってるんです?」

グンタ「いいから、エルドの言うことを聴いてくれ」

ペトラ「ほら早く早く」

オルオ「さっさと行けガキ」

エレン「ええええええええ!?」アワアワ


グンタ(エレン、訝しんでるぞ……おい)
エルド(さすがに無理があるか)
ペトラ(まかせて!)


ペトラ「エレン、今まで隠してたけど…エルドの右目は千里眼なのよ」

エルド「え゛」

エレン「まじですか!?」



ペトラ「だから今ここに近づいてくる奴の姿が、エルドには見えてるの」

エレン「そうなんですか!すげえエルドさん!」

エルド「」

オルオ「分かったらさっさと方向転換しろ。俺たちを信じてんだろ?」

エレン「…は、はい……どうか、ご武運を!」ヒュン




エルド「……おい、ペトラ。俺の右目がなんだって?」

ペトラ「ごめんごめん」テヘ

オルオ「信じるエレンもエレンだがな……」

グンタ「…おっと。おしゃべりはそれくらいにしといた方がいいぞ。……そろそろ来る」


…ヒュンッ



   「……」ヒュッ

グンタ「二度同じ手は食らわねえぜ、女型!」サッ

   「…!?……。」


カッ!


エルド「きたぞ!女型だ!」

ペトラ(…今度こそ、殺す!!)

オルオ(一度死んだ俺らは強ぇぞ!!)

グンタ(まずは視力だ!)


ザクザクッ
 ズバッ



エレン(…!)チラ

エレン(すげえ!さすが調査兵団の精鋭部隊……急襲にも慌てず、言葉もアイコンタクトもなしであんな連携がとれるなんて!!)




女型「……!」ダラン

エルド(よし!視力を奪って肩の筋も削いだ。奴の両腕が落ちたぞ!)

エルド(ここで俺は以前突っ込んだらあいつに食われたんだ。しかし……今度はそうはいかない)

エルド(グンタ!)

グンタ(ああ!)ヒュン


———ザクザクッ


女型「…!?」


ペトラ(よし……これで奴はまた少なくとも30秒、暗闇の中…)

オルオ(その間に)ヒュン

エルド(今度こそ、)ヒュン

グンタ(仕留める!!)


オルオ(次は首の筋肉だ……そうすりゃうなじが狙える!)ヒュゥゥゥ




ザクッ
 ザクッ!


女型「……」スー…

ペトラ(よし…もう少し!!)ヒュンッ

エルド「…? なんだ?女型の様子が……」


女型「………キィァアアア!!」


「!?」




グンタ「…!?」

ペトラ「これって、さっき聞こえてきた叫び声じゃない!?」

オルオ「何いきなり叫んでやがる……クソ女型!」


ドドドド・・・


エルド「……なっ!?」


エルド「巨人が…10m級3体、7m級2体接近中!足が速いな…!」

ペトラ「巨人を呼びよせたっていうの!?まさか!!」

グンタ「おいおい…まじかよ…」

オルオ「くっ…!周りの巨人どもを殺しつつ、女型の視力に気を配るか…!!めんどくせえことしやがって!」

エルド「やるしかない!俺とグンタ、オルオとペトラの組でやるぞ!」ヒュンッ



ペトラ「はぁ…はあっ!」

オルオ「あと2体!……おい、片目がもうそろそろ回復する頃だ」

グンタ「俺が行く!」ヒュン


グンタ「……フッ!」ブン

女型「……」


ガキンッ!!


グンタ「な!?」

グンタ「刃が…通れない!……瞼を、硬化したのか!?」

女型「……」パチッ

グンタ「………———ぐ!」


バキッ



ペトラ「グンタ…!」

エルド「くそッ!しかも女型の視力も戻っちまった!」



女型「……」ダッ

オルオ「くっ……ざっけんなテメエ!」ヒュン

ペオラ「オルオ!!後ろからも、巨人が!」

巨人「…」ブンッ


ゴッ……



エルド「…!!……2人じゃ、無理だ。エレンを護衛しつつ本部へ向かうぞペトラ!」

ペトラ「……あいつッ……!いつか殺してやる…!!」ヒュンッ


バキボキッ


エルド「…!!」グラッ

ペトラ「あっ…!?アンカーを刺した木を…蹴り折った!! エルド!!早くこっちに来て!!!」

エルド「ぅぐ…っ」

ペトラ「危ない!」

女型「……」


グチャッ


ペトラ「ああああ……」

ペトラ「あああああああ…」

ペトラ「許さない…………二度も殺した…!」

ペトラ「死ね!!」ビュッ



オレが…選択を間違えたから……

オレが、仲間を信じたいと思ったから 皆死んだ


「こいつを 殺す」


オレが 最初から自分を信じて戦っていれば…

最初からこいつを、ぶっ殺しておけば!!




———カッ


BAD END


————————
—————
———



ガチャ


ペトラ「うわああああああああああああああああああああああああッ」ガクッ

ペトラ「また殺されたああああああああああああの女型めええええええええ」

エルド「まさか巨人を呼びよせる力があったとはな…」



・視力の回復を片目に集中させることで早くできる。30秒未満で片目の視力は回復してしまう
・皮膚を硬化させる能力がある(ただし持続性はない?)
・巨人を叫び声で呼び寄せる←new!


グンタ「厄介だな」

オルオ「だがまた新たな情報を得られた」

エルド「俺たちの命と引き換えにな」

ペトラ「大きな前進だって、ポジティブに考えなくちゃね…」

今日はここまでで



ガチャ


   「帰ってきましたね。勝手な真似されるとこっちとしても困るんですよ」

ペトラ「げ」

   「死神はっ倒して現世に戻る人たち初めてですよ。……でも無駄です」

   「あなたたちは、この日この時この場所で死ぬ運命なんです。何度やっても、この運命を覆すことなんてできませんよ」

エルド「……」


   「じゃあ、今度こそおとなしくしててください。また来るんで」




グンタ「死ぬ運命か」

オルオ「……下らねえな」

エルド「ああ下らないね」

ペトラ「ふざけんなって感じね」





グンタ「…よし、じゃあ改めて」

グンタ「生存戦略、再開だ!」




グンタ「しっかし、女型と巨人5体は、俺たちだけじゃきっついな……」

オルオ「兵長がいればまた違っただろうがな……」

ペトラ「女型の筋肉を削いでも、巨人たちを始末してるうちに再生しちゃって、結局また一から攻撃になっちゃうしね」

エルド「そのあとまた巨人たちを呼ばれちゃ敵わないな。うーん」

グンタ「…俺は時間をかけてでも、巨人を全部やってから女型に取り掛かるべきだと思うね」

グンタ「まず一人が女型の近くに常駐し、視力を奪い続ける。あとの3人が一体となってほかの巨人を殺す」

オルオ「……時間をかければかけるほど、兵長が駈けつけてくれる可能性も挙げるしな」

ペトラ「…ねえ。巨人になる前にやっつけられればいいんじゃない?」



オルオ「……ああ?」

ペトラ「私たちはあいつがどの方向からいつ来るのか分かってる」

ペトラ「女型に変身する前に、人間の姿のままのうちに戦った方がリスクが少ないんじゃないかしら」

グンタ「なるほどな。こちらが奇襲を仕掛けられる分、有利だな」

エルド「試す価値は十分にあるな、ナイスだペトラ。じゃあそれで作戦を立てよう」


エルド「まず奴は我々に向けて信号弾を打ってたな。初戦では俺たちはそれを兵長だと思って、自分たちの位置を知らせるためにこっちも信号弾を放った」

グンタ「そういや、さっきは打つの忘れてたな」

オルオ「なんで俺たちの位置分かったんだろな」

ペトラ「うるさかったからじゃない?」

エルド「おい、脱線するな!」



エルド「…えー、で、それを利用して俺たちの位置を誤解させようじゃないか」

ペトラ「うん、いいね。で、奇襲をかけるために隠れた私たちがいるところにおびき寄せるのね」

エルド「ああそうだ。だが奇襲は1人か2人だろうな。あの女型には俺たちの人数が知られてしまってる」

グンタ「奴が少ない人数に違和感を感じる前に、勝負を決めなければならない」

オルオ「奇襲が2人として……残りが2人っつーのは、さすがに少なすぎるな。エレンにも囮をやってもらうか?」

ペトラ「やむを得ない……ね。でもこの作戦は短期決戦、奇襲が成功するかどうかの一瞬にかかってるわけだから、奴を仕留められれば結果オーライ。エレンに危険はないわ」

エルド「奇襲はオルオと俺がいこうか」

オルオ「……へっ、いいぜ……」

ペトラ「まあ、妥当だね」

グンタ「まかせたぞ」



エルド「俺たちは木の影にそれぞれ離れて隠れてる。お前たちは俺たちの間を女型が通るように誘導してくれ」

オルオ「で奴が通り過ぎたら、背後から同時に俺たちが切りかかる……!」

エルド「…急所を狙っても再生されたらどうするか」

グンタ「再生が間に合わないように攻撃をしかけるしかないな」

ペトラ「拘束できるものも持ってないしなぁ…」

グンタ「…立体機動のワイヤー?」

オルオ「ワイヤーかよ…」



エルド「よし。俺とオルオが奴の首と胴体をそれぞれ切りつけよう。再生されたらまた攻撃を畳みかける。その間グンタとペトラはワイヤーで奴を縛り上げる準備しててくれ」

ペトラグンタ「了解」



ガチャ


   「みなさんおとなしくしてました?じゃあ逝きましょう。大丈夫、あっちの世界はすごくいいところですよ」

オルオ「てめえ一人で逝け!」ドゴッ

   「ひどい!」ドサッ




エルド「再び鍵ゲット」チャリ

ペトラ「さすがにちょっと気の毒になってきた…」

グンタ「気にしたら負けだ」

オルオ「俺今度生き残れたら結婚するんだぜ…」

エルド「明確な死亡フラグを立てるんじゃない、オルオ」

ペトラ「相手もいないくせに……」



……ガチャ……



————————
—————
———



エレン「すげえ!空中で撒き散らしたってことですか!?」



ペトラ「…あとほんのちょっとだけ戻る時間が前だったらいいのに…!」
グンタ「ハハハッ」
オルオ「毎回毎回、黒歴史暴露される身になってみやがれバーカ!バーカ!!」



エレン「??」


エルド「ああ、エレン驚かないで聞いてくれよ。これから女型の巨人の本体と思われる人物が立体機動で襲ってくるから、奇襲をかけるぞ」

エレン「え?女型は捉えられたんじゃ……というか、なんでエルドさん知って……!?」

ペトラ「エルドはね、隠してたけど予知能力者なのよ。だから未来が見えるの」

エレン「えー!まじですかエルドさんすげえ!!」

エルド「だからペトラお前……勝手に……」

グンタ「周を重ねるごとにエルドがどんどん能力に目覚めてくな」



エルド「よし、ここらへんで俺とオルオが隠れるぞ」ザッ

オルオ「準備完了だ」


パシュウウウウゥゥ


エレン「あ…!信号弾が上がりました」

ペトラ「奴が来るわ!こっちも信号弾を打っておびき寄せるわよ」

グンタ「よし、いいぞ」


パシュウウウウウ


   「……」ヒュンッ



   「……」ヒュッ


エルド オルオ(来た…!!)

エレン(あ、あれが女型?兵団のマントを着てる……兵士なのか?顔が見えない…)

ペトラ(奴はまだ自分の正体が知られてることに気付いてないわ。悟られないように……)



   「……」ヒュン



エルド(まだだ。もう少し……奴が完全に背中を見せてから………)

オルオ(…………いまだ!!)


バッ




エルド(首を撥ねてやる!)ヒュゥゥゥ

オルオ(あと少しで届く…!真っ二つになれ女型!!)ヒュゥゥゥ


ヒュッッ!!


   「…っ!?」バッ


グンタ(…躱された!?)


エルド(くそっ!!……ならばせめて腕だけでも!)

オルオ「ああああああああ!!」

   「……くッ」


———ザクッ



   「……ッ」グラッ


ペトラ(女型の両腕を落とした!!もし巨人化の自傷行為がエレンがしているように手の平限定だとすれば、これで奴は巨人化できない)

ペトラ「でも、確証はない……奴がバランスを崩してる今がチャンス!グンタ!!」

グンタ「ああ!!」ヒュン


オルオ「ぐぁ…!!ってえ…!」ボタボタ

エルド「オルオ!お前…!?」

オルオ「やられた……っ俺に構わず女型を仕留めろ!再生される前に!」

エルド「…ああ!」



ヒュウウゥゥゥ……———


グンタ(両手がなければ立体機動もうまく使えねえだろ!)

ペトラ(三人で一気に叩く!)ジャキ

エルド(………追いついた!!死ね!!!)ジャキッ






   「……」パキッ…



シュゥゥゥ……バキパキッ…

ヒュンッ



ペトラ(なっ……両腕の再生スピードが速すぎる……!)

グンタ「くそ!!!またかっ!!」

エルド「また逃げられた!!まずいぞ、巨人化するつもりだ!!」




エルド「間に合え………ッ!!!」ジャキ

ペトラ「ぐ……ッ!!!」ジャキ


   「……」スッ


———ガブッ






カッ!


女型「……」シュゥゥゥ



エルド「ちくしょう!」スタッ

ペトラ「あと一瞬早ければ奴の首を落とせたのに…!」スタッ

グンタ「エレン!!俺たち3人で女型を仕留める。お前はそのまま本部へ向かえ!!」

エレン「で……ですが!!俺も、戦います!!!」

エルド「お前の力はリスクが多すぎるんだ!俺たちにまかせろ!!」

エレン「でも……!!!」


オルオ「おい………エレンよ……、そんなにあいつらのことが、信じられねえってのか……? ゴホッ」

エレン「オルオさん、しゃべっちゃだめです!!血が……。くそっ!」

エレン「……分かりました、みなさんのことを信じてます…!!負傷したオルオさんを連れて、戦線を離脱します!!!」

エレン「さあオルオさん、掴まってください!!」グッ



オルオ「馬鹿野郎……テメエ一人でさっさと行っちまえ……馬鹿が……」

エレン「な、なんでですか…!!すぐ手当してもらえば助かります!!だから早く!!」



エルド「……エレン、オルオは置いていけ」

エレン「エルドさん!?」

グンタ「オルオを背負って立体機動すれば、お前の生存率が落ちる。俺たちの使命はな、エレン。お前を命に代えても守ることなんだ」

エレン「……オルオさんを見捨てろってことですか!?」

ペトラ「………ええ、そうよ!!!早く行きなさい!!」


エレン「……っ!!」

オルオ「……どうせ俺は助からん。あいつらが必死に戦って、時間を稼いでる間に、さっさと行け……エレン!」

エレン「………、……………ッッ!!」




ヒュンッ



オルオ(……へっ。なぁに鼻水たらして謝ってやがる……クソガキが)

オルオ(謝るのは俺の方だ……こんな様でな)

オルオ「おい……頼んだぞ…!!」


ペトラ「分かってるわよ!三度目だもの!!」

エルド「油断するなよ…!」

グンタ「オルオ、お前も死ぬんじゃねえぞ!俺たちが奴を仕留めるまでな!!」


オルオ「………ああ……」

オルオ「分かってる………」



———————
—————
———


オルオ「…………」

オルオ「…………」

オルオ「……三度目も、ダメ…だったか」

オルオ「また、巨人を呼びやがったな……クソ野郎め」


ズシン…ズシン……

———ガシッ


オルオ「………イテエな……触るんじゃねえ……クソが」

オルオ「手に力が……入んねえ……こいつのアホ面に、刃をぶッ刺してやりてぇのに………」

オルオ「…………!」

オルオ「あ、の……クソガキが……!なんで……戻ってくんだよ……!!」

オルオ「馬鹿が……!!」


ああ、また………同じ。



———カッ



BAD END




ガチャ


オルオ「……」


「「「………」」」


エルド「…ダメだったな」

オルオ「すまん。俺が負傷しなければ……クソ」

ペトラ「巨人化した時点で負けのようなものよ。二度目と一緒の展開だったもの」

グンタ「でも、二度目より惜しかったと思うぞ。エルドとオルオが両腕を落とした後、本当にあと一瞬あれば……」

エルド「確かにな。もう一回この作戦で試してみるか?」

ペトラ「やってみましょうか」



ガチャ


   「あ!帰ってきた!あんたらほんといい加減に

エルド「そぉい!!」シュッ

   「貴様…」ドサッ



オルオ「フン…リベンジと洒落こむか……」

ペトラ「そうね」


……ガチャ……


——————
———





———カッ





BAD END




ガチャ


エルド「……っくぁあああああああああああああ!!」

グンタ「なんでだぁあああああああああああ!!!」

オルオ「落ち着け!!お前ら!!!鼻水ふけよ汚えな!!!」

ペトラ「まあまあエルドもグンタも……どうどう」



エルド「ハァハァ……くそ!今度こそうまくいくと思ったのに」

オルオ「俺も負傷しなかったしな……やっぱり巨人化されると厄介だ」

ペトラ「4回も死ぬことになるとはね…」

グンタ「だめだな……ちょっと慣れてきた」

エルド「それほんとにだめだろ……畜生」


今日はここまでで
戦闘だけ地の文書けばよかったと後悔
分かりづらくてすいません



グンタ「でも諦めてたまるかこんちくしょう!こうなったら10回でも20回でも死んでやるよ!!」

エルド「しかし、打つ手がなくなってきたぞ。女型出現からの全滅ルートはもう試したくない」

ペトラ「強すぎでしょあいつ」

オルオ「俺にひとつアイディアがある……」

グンタ「お?なんだ?」

オルオ「聞きたいか…?斬新でなおかつ画期的な俺の秘策を……お前らの頭では到底考えつかないだろうな」

ペトラ「焦らさなくていいから。早くしないと死神きちゃうよ」



オルオ「……フッ…」

オルオ「生存戦略、これで終いだ!」



エルド「…………馬に乗って逃げる?」

ペトラ「秘策って言うから……何かと思えば……」

オルオ「おい!なにがっかりした顔してんだ!?今までとは違う方向の作戦じゃねぇとやる意味ねえだろうが!」

オルオ「まずな。これまでと違って信号弾をこちらから撃たなければ、馬まで戻る時間が稼げる」

グンタ「ほう」

オルオ「馬に乗ったら一気に本部へ走る。俺たちに足りないものは圧倒的に人数だろ」

エルド「だが、女型が捕縛される前にも奴に追いかけられたが、あの時も間一髪だったろ」

エルド「ましてや今度は時間を稼いでくれる兵士も……いないんだ」

オルオ「あの時は開けた一本道での追いかけっこだったろうが」

ペトラ「そっか!本部への道は木が乱立してるわね。それだったら小回りがきく馬に有利で、女型に不利ね」



グンタ「……女型が現れたら、俺が立体機動で時間稼ぎをする。3人はエレンとともに本部へ行ってくれ」

オルオ「ああ!?なに下らねぇことほざいてやがるこの毬栗頭が…!」

ペトラ「ちょっ……全員生存を目指すって話だったじゃない!」

グンタ「それより優先すべきなのはエレンの命だっていう話でもあったろ」

エルド「……俺もやる。ペトラとオルオ、頼んだぞ。エレンはお前らによく懐いてたしな」

ペトラ「二人とも!急になに言ってるのよ、やめてよ……」

オルオ「なにかっこつけてやがんだ馬鹿め。それなら作戦言い出しっぺの俺がやる」

グンタ「まっ、たまには先輩を立てろっつー話だ」ニッ

エルド「そういうことた。後のことは頼んだぞ、二人とも」ニッ

ペトラ「……」

オルオ「……」


エルド「はは、なに泣きそうになってるんだ、オルオまで」

グンタ「よしよし、いい子だな二人とも」ワッシワッシ

ペトラ「やめてよ子どもじゃないんだから!っていうか泣いてないし別に……!」

オルオ「おい髪型崩れるだろうが!!この野郎!やめろってんだよ!!」



エルド「今回は大分シンプルな作戦だな。もう決めることもないだろう」

グンタ「やるべきことをやるだけだな。あとはあいつが来るのを待つだけだ」



ガチャ

   「こらっあんたら———

ペトラ「せいっ!」バシッ
オルオ「おらぁ!」ドカッ
エルド「ふんっ!」ゲシ
グンタ「はっ!」デュクシ


   「」バタリ



……ガチャ……


————————
—————
———


エレン「すげえ!空中で……

ペトラ「エレン、静かに!」

エレン「…へっ?」


エルド「今から迂回ルートを通って馬をとりに行く。全員フードを被るんだ」

グンタ「詳しいことは後で説明するからな、とりあえずしたがってくれエレン」

オルオ「ぎゃーぎゃー喚くんじゃねえぞ……ガキ」

ペトラ「女型が来るからね」




エレン「え?」


エレン「……え?」




エレン(なんで先輩みんな、急に様子が変わったんだ?)

エレン(つーか女型ってさっき捕えられてたよな…?)

エレン(でもなんだか質問できない雰囲気だ……)


パシュゥゥゥ


エレン「! 信号弾……」

エルド「女型が撃ったんだろう。まだここから遠いな。でも急ごう」

グンタ「ああ」



ペトラ「よし…!馬まで戻ってこれた……っ」

オルオ「ここからが勝負だぜ……すぐ出発するぞ!おらさっさと乗れクソガキ」

エレン「えっ は、はい」ワタワタ

エルド「行くぞ!」


ドドドドドド………


エレン(うっ、木がたくさんあるところはさっきの道より馬の操作が難しいな)

エルド「……」
グンタ「……」
ペトラ「……」
オルオ「……」


エレン(森は静かだ……この森のどこかで、本当にまだ女型の巨人が俺を探してるのか?)

エレン(先輩方を信じてないわけじゃないが……どうにも様子がおかしいような)



ヒュンッ

   「……!」


カッ!


女型「……っ」ダッ


ドドドドドドドドッ……


ペトラ「!! 来た!女型……!!」

エレン「な……まさか!?」

オルオ「こら、ガキ!!振り向くんじゃねえ!フード被ってる意味を考えろ!!」

グンタ「来たか…。ペトラ、味方に向けて信号弾を撃っとけ。二人とも、頼んだぞ」ヒュッ

エルド「エレン!生き伸びろよ!!」ヒュッ


エレン「っ!?」



エレン「エルドさん、グンタさん!?なんで……っ」

ペトラ「前を向いて!エレン!!」

エレン「でも二人だけじゃ……いくらなんでも、無茶でしょう!それじゃあまるで、さっき殺されてった兵士たちみたいに……!!」

オルオ「それでも、前を向けっつってんだよ!」

エレン「なんでですか!?俺とみなさんで戦えば、勝てるかもしれないじゃないですか!!」

オルオ「だめだっつってんだろ!物わかりの悪ぃ餓鬼だな!」

オルオ「あいつらが稼いでくれてる時間を無駄にすんじゃねえ!!さっさと腕を下ろして手綱を握れ!!!」

ペトラ「……エレン!」

エレン「……っ」


エレン(……見捨てろって言うのか!?)

エレン(俺の命のために戦ってくれてる、二人が……死ぬのを、ただ見てるだけしかできないのか?)

エレン(そんなことしたくない。エルドさんにも、グンタさんにも死んでほしくない。そんなの嫌だ……)

エレン(嫌だ。もうこれ以上、誰かが目の前で死ぬのを見たくない。嫌だ。嫌だ。嫌だ……!)

ガ、リ……ッ

オルオ「おい!!」







ペトラ「エレン」

ペトラ「あなたは兵士でしょう!?」


エレン「……!?」


ペトラ「エレンの考えてること、分かるよ」

ペトラ「でもね、兵士になった以上、あなたの心臓はその胸の中にないわ」

ペトラ「そしてその心臓を預かってる人類の代表の、団長や兵長が、あなたの命は私たちより重いって判断したのよ」

ペトラ「だから私たちは命を投げうってでもあなたを守る。兵士として……仲間として」

ペトラ「エレンも兵士なら、四の五の言わず!!私たちに守られて!!!」

ペトラ「それがどんなに辛くっても、私たちを見捨てて自分の命を優先して!!! いい!?」

エレン「………っ」

エレン「……納得できません」ギリッ

オルオ「エレン!」

エレン「ですが、従います……! 兵士ですから!!」ギュッ

ペトラ「……ありがとう!」




ドドドドドドド


オルオ「この先、後ろでどんな音が聞こえても、絶対振り返るな」

エレン「…はい」

ペトラ「全速力で馬を走らせることに、集中し続けて!」


ドドドドドドド


ヒュンッ
ヒュッ

ザクザクザクッ……
ズバッ!

プシュゥゥ…


———エルドっ


ブンッ



…グチャァッ



———くそっ!

ヒュッ
パキンッ

   ドッ ドッ ドッ ドッ…

ヒュンッ…ヒュ、

パシッ


———ぐぁ……っ


ブチブチブチブチ

ブチブチブチブチ

ブチブチブチブチ


———ぁ…


ブチ



エレン「……っ……!」

オルオ「本部まで3分の2あたりまで来た…!あいつらのおかげだ……ッ」

ペトラ「絶対に生き延びてやる!!絶対よ!!」


ドドドドドドドドドドドドドドドド


エレン(さっきより、足音が近くなってきてる!)

ペトラ(まずい……こうなったら、私が)

オルオ「ペトラ、このクソガキを頼んだぞ!」ヒュッ

ペトラ「は!?オルオ、なに勝手に…!!」

オルオ「生きろよ!!俺らの分までな!」ジャキッ

エレン「オルオさ……っ」

ペトラ「……馬鹿!」

ペトラ「………ばか…っ」




ドドドドドドドドドドドドドドドド


ペトラ「本部まで半分は過ぎたわ!このペースで、行けば!」

エレン「はあ…はあ…!」

エレン(オルオさんが、今も一人で…戦っている)

エレン(エルドさんとグンタさんの死を無駄にしないためにも……前を向いて、進み続けることがきっと正解なんだ……!!)


ブチッ
———ドォン!


エレン「!?」

エレン(い…今の音は……? まさか、…………)

エレン(…………)

エレン(…………)ギュッ



ペトラ「このまま逃げ切る!!みんなの……おかげで!!距離は十分あるわ!!」

エレン「…はい!!」



ドドドドドドドド、…………


ペトラ(……!?背後からの足音が……消えた?)

ペトラ(諦めたの…?いや、それほど絶望的な距離でもないはず)

ペトラ(……なに?)


ヒュッ……
バキッッ!!


エレン(な……なんの音だ?)チラ



女型「………」


エレン(……折った木を持ってる? そんなもので何を……)


女型「……」スッ


エレン「………!」

ペトラ「…!? エレン、振り向いちゃ………」

エレン「木を、投げるつもりだ!!!ペトラさん、避けて!!」

ペトラ「ぇ…」



ブンッッッ!!

ヒュゥゥゥゥゥゥゥ………

———ドガァアァァアアアアアアアアアアアアアアアアンッッ




ズシン…ズシン……


エレン「がはぁ……っ」ビチャビチャ

エレン(体が…動かない……腕はあるか?……足は?……目が…開けられない……)

エレン(一体……どうなったんだ……?)

エレン(確か…投げられた大木は、直撃して……そうだ、ペトラさんは………どうなって……)



エレン「……トラ……さ……」


エレン(…くそ、これが邪魔で……うまく、周りが、見えねえ……)

エレン(んだよ、これ………蒸気……?そんなの、一体どこ、から……)

エレン(……?)

エレン(俺の……体から…?)

エレン(…ああ……そうか)


ズシン、ズシン……


エレン(俺は化け物だった)

エレン(巨人みたく、体が再生するんだったな……トカゲみたいで気持ち悪い、って……兵長が言ってたっけ……)

エレン(……ちがう、ペトラさんを……探さなくちゃ……)ズリ…ズリ……


ペトラ「 」

エレン「ペトラさん。ペトラさん……」



エレン(ペトラさんの体からは、蒸気がでていない)

エレン(当たり前だ。ペトラさんは人間なんだから)

エレン(流れた血は戻らない。負った傷は治らない)


ズシン…ズシン……



エレン(誰のせいだ?)

エレン(…俺のせいだ)


ズシン……

女型「……」


エレン(化け物扱いをされるのが、本当は、嫌だったんだ)
   (そんな中、先輩方が仲間だって言ってくれたから)


エレン(俺への罪滅ぼしにと、手の甲を揃って噛むような)
   (優しい人たちだったから)


エレン(暖かいその場所が居心地良かったから……)
   


エレン(みんなを信じて戦えば、もっと『仲間らしく』なるって)
   (そう思ってたんだろ?)



エレン(馬鹿だな)
   (そんな甘えた考えが、みんなを殺したんだ)
   (……俺のせいだ)



エレン「ペトラさんの言ったことは守りますよ」

エレン「こいつを殺して、俺は生きます」

エレン「ああ、それにしても」

エレン「……最初から」

エレン「自分だけを信じて」

エレン「戦っていれば」

エレン「こんなことにならずに」

エレン「済んだのに…!!」




———ガブッ!



BAD END


ここまでで

エルド「あいつらうまくやったかなー」

グンタ「だといいな」

エルド「あいつらが生き残ってくれるなら、もう生存戦略しなくていいよな」

グンタ「だな」


ガチャ


オルオ「……よう」

エルド「あー」

グンタ「駄目だったか」

オルオ「でもペトラが」

グンタ「そうか。あいつは来ないといいな」


ガチャ


ペトラ「………はぁ〜〜〜〜〜」

ペトラ「木を折って、投げるってアリだと思う!?普通、ナシじゃないのそういうの!?」

エルド「あー」

グンタ「結局全滅だったか」

オルオ「なにやってんだよ……」



オルオ「五度目も失敗か」

ペトラ「木さえ投げられなければなぁ。本部へ行ける感じだったのに」

エルド「ああ……」

グンタ「……これまでの作戦を微調整して、もう一度やるか」

エルド「もしかしたら少しの変化で、運命が変えられるかもしれない」

ペトラ「…そうね!」




それから俺たちは何度も何度も女型戦を繰り返した。

これまで得た知識を総動員し、女型対策を考え抜いた。

現世に戻っては、またあの部屋へ戻って死神のようなものに説教を食らい、

そしてまた現世に無理やり戻って、殺されて。

その繰り返し。ずっと、ずっと、ずっと、ずっと。



しかし、何度やろうと結果は同じだった。




   「あああもう!!あんたらほんと何回目!?ねえ何回目!?」

   「こっちだってさあ、仕事でやってんの!!分かる!?」

   「次脱走したら、あの世へすら連れていかないからね」

   「彼岸と此岸の間を、永遠に一人でさ迷い続けることになるよ」

   「真っ暗で寒くて怖いよ。それが嫌ならここにいてください。いい!?」

   「次やったら、本当の本当に、死より辛い結末が待ってるからね!!」

   「じゃあちょっと手続きしてくるから!!!じっとしてなさい!!!」



バタン



シーーーン


ペトラ「……。……あの世って、どんな感じなのかな」

オルオ「……死んだ奴、みんないるんじゃねぇか。あの世なんだからよ」

エルド「さすがに巨人はいないだろうな……」

グンタ「いねえだろ………」


オルオ「巨人のいない世界か……」

ペトラ「みんなは、巨人がいなかったら兵士じゃなくて何になってたの」

エルド「そんなこと想像したことすらなかったな」

グンタ「……そうだなぁ……なんだろう」

エルド「でも……まあ、親孝行したいな。俺は」

オルオ「ああ……」



グンタ「……いいところなのかもしれないな」

オルオ「巨人がいねぇってだけで、どんな環境でも俺たちがいた世界よりはいいところだろ」

エルド「ははは。違いないな」

ペトラ「死んでいったみんなにも、会えるんだよね。それで…それで」

ペトラ「もう誰かが死ぬのを見続けなきゃいけないこともなくなるよね」

オルオ「そうだな」

エルド「壁もないんだろうな。どこへでも好きなところへ行けて」

グンタ「ああ、なんでも好きなことして暮らしてさ。腹いっぱい食って騒いで」

ペトラ「きっと、楽しいだろうね」

エルド「楽しいだろうな、きっと」



「…………」


エルド「……あと、女型に挑むチャンスは一度きりしかない」

エルド「これに失敗したら本当の本当にバッドエンドだ」

エルド「みんな、目をつぶってくれ。勿論俺もつぶる」

エルド「もうなす術がなくても、これまで何十回と失敗していようと、それでも」

エルド「……それでも、ラストチャンスに賭けるという奴は、手を上げてほしい」

エルド「これで最後だ。自分に正直に答えてくれよ」


ペトラ「……ええ…」

グンタ「……」

オルオ「……わかってらぁ」



エルド「……みんな、決めたか?」

エルド「じゃあ、目を開けるぞ」




「…………」





エルド「………」

エルド「お前ら、やっぱ馬鹿だな」


ペトラ「エルドだって、手を上げてるじゃない?」クス

オルオ「全員救いようのねぇ馬鹿ってことだ……」

グンタ「よくやるよな、俺たちも…」ハァ



グンタ「正直言うと、怖いけどな。まあ……勝手に手が挙がっちまったんだ」

オルオ「けっ、情けねぇなグンタ……」ガクガクガクガク

ペトラ「オルオ、膝笑ってるけど」

エルド「無理すんな」



エルド「……さて。じゃあ最後の作戦会議だが」

オルオ「どうすんだ?もう考えうることは全てやったぞ」

グンタ「これまでと同じじゃ生き残れない。発想を飛躍させなくちゃな」

エルド「………成功率は、かなり低いと思うんだが」

エルド「アイディアがなくも、ないかもしれん」

ペトラ「本当!?さっすがエルド!」

オルオ「いよっ副リーダー!」

エルド「やめろ」



グンタ「話してくれ、エルド」

エルド「ああ、それは———

ペトラ「待った!まだあれ、私言ってないよ!」

オルオ「俺への告白のことか?それなら別に言わなくても伝わってるが?」

ペトラ「違う!」






ペトラ「これで最後にするんだから……よっし!」スーハー




ペトラ「せいぞん!!せんりゃくぅぅぅーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!」




————————
—————
——


エレン「すげえ!く

オルオ「エレン、黙れ」

エレン「え!?」


ペトラ「今からエレンに話すことは、全部事実だからよく聞いてね」

グンタ「なんで知ってるかはいつか話すからな」

エレン「はい?」

エルド「女型捕獲作戦は失敗した。逃げた奴が兵士の格好をして、エレンを狙って間もなく襲ってくる」

エレン「は…はい!?」



エルド「エレン。奴が巨人化してやって来たら…………」








エルド「俺たちと一緒に、戦ってくれ」








エレン「………は、はい!!」



ペトラ「頼りにしてるよ、エレン!」ニコ

グンタ「俺らを今まで散々信じてくれたからな。今度は俺らがエレンを信じる番だ」

オルオ「期待はしてねえが……俺らが全力でサポートしてやるんだ、半端だったら承知しねぇぞ!!」

エレン「……勿論です!」


エルド「やるぞ……5人で!!」

エルド「全員必ず生きのびろ!!!」


————————
—————
——

数分前


グンタ「は!?エレンを一緒に戦わせる!?」

ペトラ「な…なに言ってんの?それじゃあ本末転倒じゃない」


エルド「もうこれしかないだろ。考えつく最善策はすべて実行した」

エルド「で、結果どうだ?全滅を一度も免れることができなかった」

オルオ「……」

エルド「きっとそれじゃあだめなんだ。俺たちとエレンの運命を……運命って奴が本当にあるなら……それを変えるためには」

エルド「大きなリスクを冒すことも必要だと、俺は思う」



グンタ「リスクか。エレンは一度、トロスト区奪還の時に巨人化の自制ができていなかったと聞く」

ペトラ「それに女型は硬化ができたりするし、たぶんエレンよりも巨人化に熟知してるわ」

オルオ「あいつが負ける可能性の方がはるかに高いな。いや、俺たちのサポートがあればどっこいどっこいくらいか?」



エルド「ああ。問題は山積みだ。だからこの策はかなり成功率が低い」

ペトラ「……」ゴクリ

オルオ「……ラストチャンスに、あえて一番成功率が低い作戦をやるのか」

グンタ「……」

グンタ「……今度は俺らがエレンを信じる番じゃないのか?」


ペトラ「…え?」

グンタ「これまで、何十回と女型に挑んできて、何十回もエレンに『俺たちを信じろ』と言い続けてきたが」

グンタ「あいつがそれを断った時があっただろうか?」



エルド「……ないな」

ペトラ「そうね。いつも私たちを信じてくれた」

オルオ「渋々のときもあったけどな」


グンタ「だろ? だから俺たちも信じようぜ、あいつを」

グンタ「あいつならきっと、巨人化を制御できる。俺たちとエレンが揃えば、女型だって倒せるはずだ」

グンタ「あいつだってリヴァイ班なんだからな」



エルド「そうだな…」

ペトラ「…そうだよね。私たちがエレンを信じなくてどうするって話よね!」

オルオ「別に奴を頼りにするわけじゃねぇが……それしか策はないっつーんなら……やってやらんこともない」


エルド「じゃあ、決まりだな」



————————
—————
——


ヒュンッ、ヒュンヒュン


ペトラ「よし、なんとか無事に馬まで戻れたね」

オルオ「さっさといくぞ…。時間がねぇ」


エレン「……あれ?あの…本部はそっちじゃないと思いますが」

グンタ「本部へ向かうんじゃない」

エレン「……え?」

エレン(じゃあ…どこへ?)




ヒュンッ…


   「……!」


カッ!


ペトラ「!! 女型が来た!!」

エルド「エレン!!」

エレン(本当に……女型が!?)

エレン「は、はいっ!」スッ

グンタ「エレン!俺たちがお前のサポートをする。だからお前は全力で女型に向かえ!!」



エレン(みんなが、俺を信じてくれてる。俺も、4人を信じている)

エレン(先輩方がいれば………こいつだって……絶対殺せる!!)



ガブッ


———カッ!



   「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」




エルド「立体機動に移るぞ!!」ヒュッ

グンタ「エレンと女型の戦いに巻き込まれないように気をつけろ!」

エルド「あくまでサポートだからな!まずは目、次に腱だ!」

ペトラ「ええ、分かってる!!」ジャキッ

オルオ「油断するんじゃねぇぞお前ら!!」ヒュッ





ドシュッ
 ザクザクッ


エルド「視力を奪ったぞ!」スタッ

グンタ「何回も実践済みだからな。お手のもんだ」



   「ガァアアアアアアアアアアッ!!」


バキッッ


ペトラ「エレン……すごい……!」

オルオ「視力が回復される前に、腱と体中の筋肉を削ぐぞ!!」




———ザクッ


エルド「…よし!これで奴はしばらく動けないぞ!!」


ドガッ
 バキッッ 




ペトラ「エレンが圧倒してるわ。これで隙をみて、うなじをやれば……!!」

グンタ「いや、そろそろアレが来る頃だろう」



   「キィアアアアアアアアアアアアア!!」



オルオ「ああ……チッ!クソったれ!!」



ドッドッドッドッド……



エルド「くそ!」




エルド「……全員最速で巨人を殲滅だ!目標5体!いくぞ!!」ヒュッ

ペトラ「このぉ……っ!!」ヒュンッ




———パチッ

ガシッ 
  ドォッッ!!



オルオ「チッ!やっぱり女型の視力も削いだ筋も戻っちまいやがったか!!」

エルド「でも疲弊はしているはずだ。今はエレンを信じろ!!俺たちはこっちに集中するんだ!」






ペトラ「……はぁっ、はあ…」

グンタ「雑魚は終わったな。くっ、ガスを大分消費しちまった」

エルド(初めて巨人5体の討伐に成功した。エレンが女型と戦ってくれてるおかげだ)

エルド(しかも全員生存している。………この調子でいければ!)グッ





ブンッ
バキャッッ

 ドシン…ッ


   「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

   「……ッ」



ペトラ「いまのところ、互角か…。エレンを援護するよ!急いで!!」

オルオ「お———


ブォオンッ!!


オルオ「あああああああああっ!!あぶねええ!!!」ヒュン

エルド「エ、エレンが女型を吹っ飛ばした……」

グンタ「エレンが押してるぞ!いまのうちだ!!行くぞ!!」



ドォンッ!


女型「……」グググ


オルオ「チッ 木を背にしやがってるせいでうなじが削げねえな」

ペトラ「腕、肩…」ザシュッ

グンタ「右足ッ」ザクザクッ

エルド「左足!」ザシュ


   「アアアアアアアアアアアアアアアッ」ドッドッドッ


エルド「! おい全員女型から離れろ!!」

ペトラ「う、わッ」ヒュッ




バキャアアアッ!!!


グンタ「うおっ直撃……やったか!?」

オルオ「女型の顔が!!よしチャンスだエレン!!!やっちまえ!!」


シュゥゥゥゥ……


   「………、」グラグラ

   「ガァアアアアアアアアアアアアアアア」


バキッ
バキャッ


ペトラ「す、すごい」

エルド「女型がほとんどなすがままだ。……エレン!!いけえ!!!」

グンタ「これで……終わるんだ」



グンタ「人類の、勝利だ」

   「アアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


ブンッ

———ヒュッ



ペトラ「え!?」



ドシッ ダンッ!


ペトラ「え!?な、なんで今、女型がエレンの攻撃を避けて……エレンから距離をとれたの!?」

ペトラ「なんで動けるのよ! さっき私たちが全身切り裂いた!エレンかたの攻撃で上半身はずたずたじゃない!」

エルド「……!!」ギリッ

エルド「……上半身の再生を遅らせて、下半身の再生を優先したんだろう」

オルオ「おいおい……!」

グンタ「いや、でもエレンの一撃でダメージを受けた眼球は再生が間にあっていない!!」


   「……………」スッ


ビキ ビキビキビキ ビキビキ



ペトラ「な、なんかやるつもりじゃないの!?あの構え!!」

エルド「視界が塞がったままで…!?まずい!行くぞお前ら!!」


ビキビキビキ……




オルオ「くそ女型!!いい加減にしろ!!!」ザクッッ


   「……!!」グラッ

   「…………ッッ」スッ



ズバァアアアアアアアアアアアアアッ!!!



………ドォッ

………………ゴド…


ペトラ「エレン!!!!」


グンタ「女型をエレンに近づけるな!!!なんとしてでも守れ!!」

エルド「ああ!!」ヒュンッ


……プシュ…


オルオ(!! クソが……!!巨人5体を倒したせいで、ガスの残りがあとわずかだ!)

ペトラ(替え刃ももうこれ一つしか…………)

エルド(………いま俺たちにできるのは……女型をここに足止めすることだけだ)

グンタ(やれるだけやってやる!!!死なんて怖くない)

グンタ(何回お前のせいで死んだと思ってんだ!!)ギロッ



ドシン……ドシン……


ペトラ「ぁああああああっ!!」ザクッ ザシュ

オルオ「止まれ!エレンに手を出すなこの野郎!!」ザクザク


   「……」グラッ

エルド「いいぞ……一秒でもあいつの歩みを止めるんだ!!」ヒュンッ

エルド「あいつがエレンを浚ったらもう終わりだ!!」




   「……」ギロッ


———スッ


グンタ「!!(両手で一気に2人を…!?)」

グンタ「避けろ!!エルド!!!ペトラ!!!」



エルド「くっ……!?」プシュ

エルド(!!! ガスが………)

ペトラ「……ぁ……」






オルオ「ペトラッ!!!!エルド!!!!」






ペトラ(あ………死ぬの…?)

エルド(やっぱり…………ダメだったのか?)

ペトラ(手がどんどん、近づいてきて……)

エルド(今度こそ、終わりか……)

ペトラ(私はここで死ぬけど、)

エルド(俺はここで死ぬが、)


((………))




みんなは生きのびて。

お前らは絶対に生きてくれよ。





——————ヒュッ!!
——————ヒュンッ



ザシュッッッ!!
ズバァァァッッ!!!








ペトラ「……え?」


エルド「………!!」


グンタ「……ああ…!!」


オルオ「…………っ!!!」


———スタッ


リヴァイ「おい、全員無事か!?」

ミカサ「大丈夫ですか?」



ペトラ「へいちょう……!」

エルド「…!助かった!」



グンタ「来てくれたか………間に合った……!!」

オルオ「とりあえず賭けには、勝った…!くそっ……ペトラとエルドの奴!!」

オルオ「俺の肝を冷やしやがって!!馬鹿野郎!!馬鹿が!!!」


   「…………」シュゥゥゥゥ……


リヴァイ「エレンはどうなった」

ペトラ「生きてます!巨人体は頭を吹っ飛ばされてますけど」

ミカサ「……!!」

エルド「兵長、すいません。俺とペトラ、それからオルオとグンタも、ガス残り僅かで、もう役に立ちません」

リヴァイ「…いやいい。あとはまかせろ」

リヴァイ「おい。ミカサと言ったか。俺らで奴を削ぐぞ」

ミカサ「……はい!」

リヴァイ「お前は奴の気を逸らせ。奴は皮膚を硬化することもできる。気をつけろよ」

リヴァイ「そして俺が削ぐ。いいな」ヒュンッ



ミカサ「……ふっ!」ザシュッ

   「……ガァッ!」ブンッブン

ミカサ「…うっ(動きが速い!)」


ミカサ(でも……エレンが無事で、本当によかった)

ミカサ(エレンはあそこにいる。ちゃんと生きてる)フー…

ミカサ(……落ち着いて。奴の行動をきちんと見極める。私はそれができる)

ミカサ(ここで仕留める!!絶対に!!!)キッ





リヴァイ「……」ギュインッ


ゴオオオオッ
———ビュオッ!


オルオ「さすが兵長……目で追うことすら難しいぜ」スタッ

グンタ「あっという間に腕、目、全身と切り裂いちまった。硬化する暇も与えない」スタッ

グンタ「おい!エレン、しっかりしろ!!」

オルオ「引きずり出せそうか?」

グンタ「やってみよう」



ザシュッ バシュビシュッ…


ペトラ「女型も疲弊してるみたいね……最初より動きが随分鈍いわ!」

エルド「! うなじを覆ってた手を落とした!!」



ミカサ「!!」

リヴァイ「……」ジャキ

リヴァイ「ようやくご対面か」ギュイイイイン


———ズバッッ!!




リヴァイ「……お前が、エレンを狙ってた奴か」

ミカサ「…!?」

ミカサ「……………アニ……?」

ミカサ「……どうしてあなたが?」



アニ「………」

アニ「………」

アニ「………」

アニ「……、……………」

アニ「———。」


ミカサ「え…?」




シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……





ペトラ「な、なに…?」

エルド「なんだこの光は?」


パキン…



リヴァイ「あ…?なにしやがった…こいつ」

リヴァイ「……チッ。とりあえずここを離れるのが先決か」


「兵長!みなさん!馬もってきましたー!」
「負傷者はいますか!?」


リヴァイ「来たか。おい!エレンはどうだ!?」

グンタ「衰弱してますが、無事です!今下に降ろします!」

ミカサ「エレン!!……ああ……よかった」ギュッ

リヴァイ「荷馬車があるだろう。それにこの水晶乗せてけ」ゴツゴツ

「!? は…はい!」

リヴァイ「さっさと森を抜けるぞ」




——————
————
——

ガラガラガラガラ

ド ド ド ド ド ド …


リヴァイ「……」

リヴァイ「…おい、お前ら。さっきからなにアホ面ぶらさげてんだよ」


ペトラ「え?」
オルオ「へ?」
グンタ「は?」
エルド「え?」


ペトラ「いや……なんかまだ、信じられないっていうか……」

エルド「……あの、改めて、ありがとうございました。兵長」

ペトラ「それに、ミカサも。ありがとう……ほんとに」

グンタ「二人が間に合うかどうかが、賭けだったんですよ」


リヴァイ「は…?賭け?」
ミカサ「……?」



オルオ(そう、かなり勝率の低い賭けだったぜ…)

ペトラ(馬に乗って、目指したのは本部ではなくて、兵長とミカサの中継地点だった)

エルド(何回も何回も繰り返した中で、二人がくる方向を探り当てて……)

グンタ(二人が最短時間で辿りつけるような地点に女型を誘導した)

オルオ(まあ、それでもかなりぎりぎりだったんだが……それでも、俺たちが今生きてることには変わらない)


ペトラ(私たちの目的は、あくまで二人が辿りつくまでに、エレンを女型に渡さないことだった)

エルド(ガスもなくなることも予想されてたしな。結局、俺たちができたことなんて微々たるものだ)


グンタ(ただ、俺たちはエレンを信じて、兵長とミカサを信じた。それだけだ)

オルオ(でもそれでいい。俺たちは組織なんだ)

ペトラ(これまでだって、そうやって生き残ってきたのよ私たちは。……でも、今回のことで痛感した)

ペトラ(もっと訓練頑張らなくちゃね。これからもみんなで生き残るためにも)







ペトラ「エレンにも、目覚めたらお礼をたくさん言わなくっちゃね…」

エルド「ああ。俺たちが生きてるのも、エレンが頑張ってくれたおかげだ」

オルオ「……まあ、そうかもな」

グンタ「おっ。オルオ珍しいじゃねえか」

オルオ「うるせえっ。なんでもねえよ!」


ガラガラガラガラ……


ペトラ「ほら、オルオ静かにしなさいよ。もうすぐ壁につくよ」



カランカラン

調査兵団が帰ってきたぞ!
 今朝より数がかなり少なくなってないか?


エルド「……」

エルド(そうだ。俺たちが生きることができたからといって、全員がそうだというわけではない…)

グンタ(……俺たちも、本来なら今この場にいなかったんだ)

オルオ(……)

ペトラ「………。…!? あっ」





ペトラ父「リヴァイ兵士長殿!!」タッ



ペトラ父「娘がお世話になっております!ペトラの父です!娘に見つかる前に話してぇことが……」

ペトラ父「娘が手紙をよこしてきましてね…腕を見込まれてリヴァイ兵士長に仕えることになったとか」

ペトラ父「あなたにすべてを捧げるつもりだとか……まぁ……」

ペトラ父「親の気苦労も知らねえで惚気ていやがるわけですわ……」

リヴァイ「……」


ペトラ父「その、まあ…父親としてはですなぁ……嫁に出すにはまだ早

ペトラ「ああああああああああああああああああああっっっ!!!」


ダダダダッ!!


ペトラ「お父さん!!なにやってるの!?わ、わ、わ、私と兵長はそういう関係じゃないってば……!!」

ペトラ「ていうか勝手に人の手紙の内容暴露しないでよっ!」

ペトラ父「うわっペトラ!見つかっちまった……」



ペトラ父「そ、そんな怒るなよ、ちょーっと兵士長殿に話したかっただけだ」

ペトラ「いいから!もう、あっち行ってよ!!兵長本当にごめんなさい父が全く失礼なことを……!!!///」

リヴァイ「……」

ペトラ父「おい、ペトラ!今度の休暇、帰ってくるんだろ?お前の好物、用意して待ってるからな!」

ペトラ父「リヴァイ兵士長殿、お話はまた今度!!では失礼します!」

ペトラ「だ、だから違うって言ってんでしょ……!!もおおおっ」ブンブン

リヴァイ「……ハァ」



それから俺たちは、例の古城へと帰還した。

今回の遠征の目的——壁内にひそむ巨人側の内通者を捕獲できたのは、確かな成果と言っていいだろう。

女型の巨人に変身していた人物は、エレンの同期の少女らしい。

今現在彼女は強固な水晶体に身を覆われ、情報を聞き出すことは不可能となっている。

彼女は地下深くに移送された。



手に入れたかった情報が入手困難となったことで、

内通者を捕えるという遠征の目的は果たせはしたものの、

多くの犠牲に見合うだけの成果かと言われれば、俺たち一兵士としては言葉につまるしかない。



でも、きっとエルヴィン団長はこの事態すら予期していたのだろう。

こうなると分かっていて、それでもこの作戦を実行に移したのだろう。

ならば、俺たちは首を縦に振ろう。

例えどんなに多くの犠牲があったとしても、人類の進撃への一歩を踏み出せたことは間違いないのだと。

そう断言しよう。



古城 


ペトラ「エレン、体調は大丈夫?」

エレン「はい……まだ起き上がれませんけど。つーか俺、地下室でなくていいんですか」

グンタ「さすがに今のお前に巨人化できる体力は残ってねぇだろ。安心して寝とけ」

エレン「先輩方はケガないんですか?」

オルオ「ねえよ。人の心配してる場合か?自分の体調だけ気にしてろ……馬鹿め…」チッ

エレン「………あの」

オルオ「まだなにかあんのかよ!?」

エレン「俺を、一緒に戦わせてくれて、…信じてくれて、ありがとうございました」


エルド「そりゃあな、俺らの台詞だ」

ペトラ「そうだよ、エレン。エレンが私たちを信じてくれたから、今私たちここにいられるんだよ」

ペトラ「本当にありがとう。頑張ってくれて。疲れたでしょう?もう眠りなよ」

エレン「そういえば……なんか急に眠気が……ふぁ」

エレン「…………」スースー

オルオ「寝付き早すぎだろ」

グンタ「疲れてたんだろ」



「「「「…………」」」」


ペトラ「…………はぁぁぁ……!」ガクッ

エルド「俺たち……生きてるのか?本当に?」ドサッ

グンタ「まだ信じられねえ…………」ガクリ

オルオ「は……てめえら一気に崩れおちて情けねぇな」ガクガクガクガクガク

ペトラ「だから膝が爆笑してるってば……ってもうつっこむ気力もないわよ……」ブルブル


ペトラ「……帰ってこれた」ジワ

ペトラ「帰ってこれた……エレンと兵長と……みんなで……」ポロ

ペトラ「うぅぅぅぅぅっ……っく」


エルド「……やばい。俺も涙腺がちょっと……年かコレ」ジワ

グンタ「なんだおいやめろこの空気。俺はもともとなあ……涙もろいんだよ……!!」ジワ

オルオ「ばががっ!おどごのぐぜになに泣いてんだよっなざげねえなお゛い゛!!」ダバー


ガチャ


リヴァイ「…おい。エレンの調子は…………、なにしてんだお前ら」

ペトラ「へいちょぉ〜〜〜〜〜〜!うぅぅっ、すいませんでしたぁ…あんな表情させちゃってぇぇ…っ」グスグス

リヴァイ「は?」

エルド「……俺たち、何回も何回も何回も死んで、やっと最後で……っ」ゴシゴシ

グンタ「ええ…ッ、やっと最後で戻ってごれだんでずよぉぉぉぉ」

グンタ「リヴァイ兵長ぉぉぉぉ……ありがとうございました……あとずいばぜん゛でした……」

オルオ「り゛ヴァ゛イ゛べい゛ぢょお゛おおおおおおお!」ダバダバ




リヴァイ「お前ら、頭打ったのか」



数日後


エレン「……」ズズ カチャ

リヴァイ「……」ズズズ

エレン「……」ズズズ

リヴァイ「あいつら…おっせーな。エルドたちも、エルヴィンの野郎も」

エレン「そ、そうですね」


「「………」」


エレン(間がもたない!食堂に兵長と二人っきりって、こんなに間がもたないものなのか)

エレン(すげえ静か!あとテーブルすげえ広い!)

エレン(さっきからお茶ばっかり飲んでるぞ俺!ええーと、なんか喋った方がいいのか!?でもうるせぇって怒られたらどうすればいいんだ!?)ダラダラ


ガチャ


エルド「遅れてすいません」

グンタ「まだ団長来てないですか。よかった」

ペトラ「あんたがあんなことするから」ボソ

オルオ「お前のせいだろが」ボソ



ガタッ ガタ
 ギィ  ガタン


エレン(……あれ?)


ペトラ「今日は団長と、エレンの今後の待遇について話し合うんですよね」

リヴァイ「ああ。そのつもりだ」

グンタ「オルオ、茶いれてきてくれ」

オルオ「ハァ!?自分でいれやがれ」

エルド「たまには先輩を敬ってくれよ」

オルオ「誰が先輩だ誰が。俺の方が討伐数は上だ」



エレン(……? なんだ……これ?)



リヴァイ「………、」

リヴァイ「エレンよ。何故泣いてる」


エレン「…え………?」ツー…



エレン「あ、あれ……なんでだ?」ゴシゴシ

エレン「なんか……このテーブルに、全員座ってるの見たら……」

エレン「急に涙が…………すいません……」ゴシゴシ


エルド「……エレン!今日の俺のパン、食っていいぞ!」ワシワシ

グンタ「俺のスープもやろう!」グリグリ

ペトラ「じゃあ私はなでなでしてあげるね!」ナデナデ

オルオ「俺からは叱咤激励をやろう。有り難く受け取れ」バシバシ


エレン「え?な、なんですか……ちょ、いたっ!!オルオさんのは本当にいらないです!!返品するんで!!」

オルオ「生意気だぞ新兵!!」

リヴァイ「お前ら静かにしろ……ガキかてめぇら」チッ

ペトラ「あ、兵長新しいお茶いれますね」ガタ

エルド「ははは。いつも通りだな。戻ってきたんだなほんとに…」

グンタ「ああ。いつも通りだ。また見れて嬉しいよ」





生存戦略、大成功。


TRUE END

原作の展開が一番好きだけど、SSの中でくらい夢みてもいいよねってことで
あと一生分のヒュンッとザクッを使い果たしました 擬音の拙さェ

読んでくれた方、どうもありがとうございました。

おつかれさん
本編でもリヴァイ班の面々にはもうちょい長生きしてほしかったな
他にも>>1が書いたssあれば教えてほしい

>>154
亀レスすまん
ペトラと兵長の一カ月SSと、エレン「今日は肌寒いな…」が前のです

でもこれは一カ月SSの続きとか救いとかじゃなくて、全く別のものです
あっちはあっちでそれなりにハッピーエンドのつもりで書いたので、あれで終わりです

長々とすいません消えます


このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年08月08日 (金) 03:56:11   ID: Ky9-aYDY

生存ルートのエンディングはイイね!

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