【デレマスss】リスと食べものの話 (25)

深~い森の中に、1匹のリスが住んでいました。

そのリスはとても臆病で、しかしとても優しいリスでした。

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今日も、リスはいつものように木の実を集めていました。

リス「たくさん木の実がとれました…これで、しばらくは安心ですけど」

すると、下の方からなにやら声が聞こえてきます。

「きゃあ、助けてっ、食べないで」

リス「だ、誰かの悲鳴が聞こえるんですけど…」

心配になったリスは、こっそり下に降りてみました。

オオカミ「」ガツガツ
ウサギ「」

するとそこには、ウサギを食べているオオカミがいました。

リス「ひぃっ」

オオカミ「!だれかいるのか!?」

リスは逃げようとしましたが、オオカミに見つかってしまいました。

リス「た、食べないでほしいんですけど…」

オオカミ「なんだ、リスか。ウチはこのうさぎでお腹いっぱいだから、今なら見逃してやる」

あぁ、助かった。リスはひと安心です。

ですが、リスにはひとつ、気になることがありました。

リス「あの、オオカミさん」

オオカミ「なんだ?」

リス「…どうしてオオカミさんは、ウサギさんを食べるんですか」

心優しいリスには、他の動物を捕まえて食べてしまうオオカミのことを理解できませんでした。

オオカミ「どうしてって…食べないと、お腹が減って死んじゃうだろ」

リス「そ、それなら…私みたいに、木の実を食べればいいじゃないですか…」

リスがそう言うと、オオカミは困った顔をして言いました。

オオカミ「ウチらオオカミは、木の実だけじゃ生きていけないんだ。だから他の動物を捕まえて食べる…それは仕方ないことで、当たり前のことだ」

それに、とオオカミは続けます。

オオカミ「お前が食べてる木の実だって、生きてるものなんだぞ?」

リス「えっ…?」



リスはとても驚きました。自分も、誰かの命をもらって生きていただなんて!

オオカミ「食事の邪魔だから、もうどこかにいってくれ。引っ掻くぞ!」

リス「ひぃっ」

オオカミに吠えられたリスは、慌てて逃げ出しました。

ーー
巣への帰り道で、リスは考えていました。

リス「…いっそ、お花にでもなってしまいたいんですけど…」

心優しいリスにとって、誰かの命をもらって生きていくのは、とても辛いことのように思えました。

リス(もしも、お花になれたなら…誰かを食べなくても静かに生きていけるのに…)

その時、どこからか声が聞こえてきました。

「そこのリスさん」

リス「だっ、誰ですか?」

リスはあたりを見渡しました。

「こっちこっち、ここだよ」


リス「こっち…?」

リスが振り向くと、そこには小さなキノコが生えていました。

キノコ「やぁ、リスさん。なんだか悲しそうな顔をしてたから、呼んでみたんだ…フヒ」

リス「き、きのこ…?」

リスを呼んでいたのは、キノコだったようです。



キノコ「花になりたいと言っていたけど、どうしてなんだ?」

リス「…お花になれば、誰かの命をもらわなくても生きていけるから…」

キノコはゆらゆら揺れていましたが、しばらくすると話し始めました。

キノコ「それは違うぞ、リスさん」

リス「えっ…?」

キノコ「花だって、地面にある栄養を食べてる…その栄養は元々、葉っぱとか、死んじゃった動物とか…そういうのからできてるんだ」

キノコは続けます。

キノコ「リスさんが木の実を食べなきゃ生きていけないように…どんな生き物も、誰かを食べないと生きていけないんだ」

リス「…そんなの、悲しすぎます…」

リスは、今にも泣いてしまいそうでした。

キノコ「悲しいし、辛いかもしれないけど…この森ではみんな、そうやって生きてるんだ。私たち生き物は、独りじゃ生きていけないから…」

ーー
巣穴に戻ったリスは、一人考えていました。

リス(木の実だって、生きている…それを私が、勝手に食べていいのでしょうか…)

ついこの間まで美味しく食べていた木の実も、今は食べる気になれませんでした。

「食べないの?」

リス「ひっ!?」

急に耳元で声がしたので、リスはとても驚きました。

「ぇへへ…おどろいた?」

リスの目の前に、白くてゆらゆらしているものがあらわれました。

リス「あ、あなたは誰なんですか…?」

おばけ「私は、おばけだよ…リスさんが食べた、木の実のおばけ…」

リスの目の前にいるそれは、おばけでした。


リス「木の実の、おばけ…?」

おばけ「さっきまでの話を聞いてて、リスさんに会いたくなったから…来ちゃった」

どうやらおばけは、リスが狼やキノコと話していたのを聞いていたようです。

リス「…その、おばけさんは、私のこと恨んでないんですか…?」

リスは気になって聞いてみました。


おばけ「どうして恨むの…?」

リス「え、だ、だって…勝手に食べられて死んじゃったら、誰だって恨むと思うんですけど…」

おばけ「う~ん…」

おばけはしばらく考えていましたが、やがて話し始めました。


おばけ「食べられてる時は、とっても痛かったよ…痛いよ、痛いよって、大声で泣いちゃうくらい」

リス「ひっ…ご、ごめんなさい…」

おばけ「謝らないで…それは、リスさんにとって必要なことだったから…それで恨むなんてこと、しないよ」

リス「えっ…で、でもっ、私のせいでおばけさんは…」

死んじゃったのに。そう言おうしたリスを、おばけはとめました。

おばけ「いいの」



悲しそうにほほえんで、おばけは言いました。

リス「うぅっ…ひぐっ」

リスの目から、大きな涙がぼろぼろとこぼれ落ちました。おばけは、そんなリスをそっと抱き寄せて、こう言いました。

おばけ「リスさん…一つだけ、覚えていて…」

リス「ひとつだけ…?」

おばけ「うん…なにかを食べる前には、命をくれてありがとうって…そうすれば私たちも、安らかに眠れるから…」

ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
「…~い」

美玲「お~いノノ~、起きろ~」

乃々「…え、オオカミさん…?」

美玲「はぁ?寝ぼけてるのか?」


乃々「…あっ、美玲さん…おはようございます」

美玲「おはよう。まったく、机の下なんかで寝てたら風邪ひいちゃうぞ…ってノノ、何で泣いてるんだ?」

乃々「えっ…?あっ…な、何でもありませんけど」ごしごし

美玲「そっか、ならいいんだけど…それより、今日はみんなでお昼食べにいくって約束だったろ?みんな待ってるぞ」

乃々「あっ、ご、ごめんなさい…今行きますけど」

ーーー

「「「いただきます」」」

美玲「ここのハンバーグ、蘭子がおすすめって言ってたけどすごく美味しいな!」

輝子「あぁ…キノコソースも美味しいぞ」

小梅「美味しい…♪」

乃々「…」


美玲「ノノ、食べないのか?」

乃々「あ、いえ…食べますけど」

輝子「冷めないうちに、食べた方が良い…フヒ」

乃々「はい…」



乃々(…皆さんの命を、ありがとうございます)





「いただきます」

終わりです

最近の子供は魚が切り身で泳いでると考えてるという話を聞いてこの話を思いつきました

普段はこのシリーズを書いてます
【モバマスss】乃々「机の下で凛さんと」
【モバマスss】乃々「机の下で凛さんと」 - SSまとめ速報
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