【艦これ】竹取物語 (36)

これはとある鯖でのお話。


前線には程遠い田舎の鎮守府に、一人の老提督がいました。


竹取「長門や、朝食はまだかいの?」

長門「…提督、朝食が欲しければ山か海辺で調達してきていただきたい」


この提督は決して有能な将ではなく、レベリングもそこそこに遠征やデイリー任務で資材を貯めては大型建造を回すタイプでした。


当然のことながら、鎮守府の財政はいつも火の車。


竹取「なんじゃ、昨日トラック一杯に筍を採ってきたではないか」

長門「半分は皆の夕飯と非常用の缶詰に。残りは売りさばいて予算の足しにしました」

竹取「そうか。大和型を手に入れるためとはいえ、苦労をかけるのう」

長門「……」


何か言いたげな長門を後目に、今日も提督は山へと向かうのでした。

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竹取「さてさて、筍を掘るにはもう遅い時間じゃのう。今日は罠を見て回るとするか」


いたるところに仕掛けられた罠には、数羽の山鳥や兎がかかっていました。


…ああ、別にぷっぷくぷーとか喋ったりしない普通の兎です。


竹取「うむ、これなら皆も喜んでくれるじゃろ」


手際よくその場で獲物を〆ていると、何やら背後でガサガサと物音がします。


竹取「熊か、猪か?血の匂いに惹かれて大物がかかったようじゃの」


ほくそ笑みつつ、手に持った鎌を握りなおす提督。


年老いてもさすがは帝国軍人。たまに仕留める大型獣は、腹ペコ艦娘たちの何よりの御馳走になるのです。

竹取「しぇや!!!」


草木が震えるほど気合の入った掛声一閃、獣が怯んだところを狙う必勝の戦法。


しかし、茂みの中にいたのは意外なものでした。


?「……?」

竹取「子供…じゃと?」


何事もなかったかのようにトコトコと出てきたのは、どう見ても小さな女の子。


提督は警戒しながらも、怯えさせないように話しかけてみます。


竹取「これ娘子よ。こんなところで何をしておる?」

?「……ウ~」

竹取「唸っておるだけではわからぬぞぃ」

謎の幼女は応えず、何かを探すかのように提督の周りをぐるぐると回ります。


竹取「物の怪の類ではなさそうじゃが、どこかで見た気はするのう」

?「…イイ ニオイ」

竹取「ん?何か入れておったかの」


提督がポケットの中を探ると、駆逐艦のごほうび用に持っていた飴玉が出てきました。


?「ソレ ヨコセ!」

竹取「こ、これ、待たぬか!包みごと食べてはいかん!」


飛びついてくる幼女に翻弄されながらも、提督の記憶はある一つの事柄にたどり着きます。


艦娘たちが撮影した映像で見た、特徴的な幼い姿形、独特の話し方。それは北の海を棲家とする、人類にとっての宿敵。


竹取(こやつまさか……北方棲姫!)


物の怪どころの騒ぎではありませんでした。

竹取(迂闊じゃったわい。まさか姫クラスが直々に強行偵察をしてくるとは……冷蔵庫のプリン、食べておくべきじゃった)


予想外の出来事に、思わず死を覚悟する提督。しかし北方棲姫は特に襲いかかる様子もなく、鋭い視線を送ってくるのみでした。


竹取「……ん?」

北方棲姫「モット ヨコセ!」

竹取「ふむ、飴玉が気に入ったのか?少し待つとええ」


再びポケットに手を入れながら、提督はちょっとした戯れを思いつきます。


竹取「それ、包みを解いてやったぞ。あ~んするのじゃ」

北方棲姫「アー」


竹取(むう、なんじゃこの可愛い生き物)


疑うことなく素直に口を開ける北方棲姫に、提督は年甲斐もなく萌えてしまうのでした。

竹取「と、ときに北方棲姫よ。おぬしは一体、ここへ何をしに来たのじゃ?」

北方棲姫「…ホッポ?」

竹取「ホッポではなく北方じゃが……まあワシらが勝手につけた名じゃからのう」

北方棲姫「ホッポ!ホッポ!」


そう呼ばれるのが気に入ったのか、北方棲姫ははしゃぐように背伸びバンザイを繰り返します。


竹取(敵意は無いのか……ならば機嫌を取っておくのも一つの手じゃな)


竹取「北方……いやほっぽや、腹が減っておるのか?良ければうちで飯でも食っていかぬか」

北方棲姫「メシ… ゴハン?」

竹取「うむ、大したもてなしはできんがの」

北方棲姫「ゴハン! ゴハン!」


こうして北方棲姫は、提督と共に鎮守府へと向かうのでした。



…幼女誘拐?ええ、そうですね。良い子の提督さんは決してマネをしないようにしてください。

さて、当然のことながら鎮守府は上へ下への大騒ぎです。


長門「提督、何を考えているのです!敵を連れて帰ったかと思えば、食事を振る舞うなどと!」

竹取「そう怒らずにこれを見てみよ。さあ、ワシが丹精込めて作った筑前煮じゃぞ」

北方棲姫「ア~ン… ウマウマ」

長門「ぐっ……た、確かに可愛いが、これしきで絆される長門ではないぞ!」

竹取「ふふふ、ならばこれはどうかな?ほっぽや、さっき教えた通りに話してみるんじゃ」

北方棲姫「ウン… ナガト オネーチャン?」

長門「ぐほぁっ!」



龍驤「どしたん長門はん、なんで陸上で轟沈しとるんや」

こうして鎮守府内に迎え入れられた北方棲姫は、ほっぽ姫と名付けられ、大事に扱われることになったのですが…


ほっぽ「ゼロ ヨコセ!」

龍驤「わぁぁん、ウチのゼロ返してぇー」


ほっぽ「オヤツ♪ オヤツ♪」

赤城「いやあぁぁぁ!私のボーキサイトぉぉぉ!」


ほっぽ「オエカキ オエカキ」

電「い、電の掛け軸に落書きしちゃダメなのですぅぅぅ!」


それはそれはワガママいっぱいに、やりたい放題でした。

もちろん艦娘たちも黙ってはいません。被害を受けた艦が次々と執務室へ陳情に来ます。


龍驤「提督、どないしてくれんねん!ウチが愛情込めて育てたゼロやのに!」

赤城「ボーキサイト……私のボーキサイト……」

電「ぐすんぐすん…」


爆発寸前の不満に対し、提督はのんびりとこれを受け返します。


竹取「まあ子供のすることじゃし、大目に見てやるがええ。それ、代わりにこれをやろう」

龍驤「なんやのこれ!こんなもんでウチが誤魔化せると………え!?」

竹取「なんじゃ?烈風では不満かえ」

龍驤「いやその、六〇一空ってどっから手に入れたんや…?」

竹取「赤城もおやつくらいで大人げない。これで面倒を見てやってくれぬか」

赤城「たった一枚の券で済むと思っているのですか!」


【給糧艦一隻分食べ放題】


赤城「こ、これは一体!?」

竹取「丁度補給艦隊が到着する頃じゃろ。存分に味わうとええ」

赤城「…失礼しましたマイロード。ほっぽ姫の護衛、この一航戦赤城が完璧に務めてみせます!」


次々と堕ちていく艦娘たちに、電も驚きを隠せません。


電「どうして司令官さんが、こんなに貴重品を…?」

竹取「なあに、大本営にちょいと報告を入れての。鹵獲した姫級の調査のために物資の融通を、と頼んだのじゃよ」

電「電の分も……あるのです?」

竹取「くくく、超レア物、雪ダRoma人形でどうじゃ?」

電「これはなかなかに良き品。司令官さんもワルよのう、なのです」

<演習>


御隣「竹取殿、今日のメンバー表にほっぽ姫とあるが……お戯れが過ぎるのでは?」

竹取「いやなに、正式な名前ではなくての。気にされることではない」


御隣(この老人、艦娘を玩具扱いなどと……演習で仕置いてくれるわ!)


赤城「第一次攻撃隊、発艦!」

龍驤「ウチの烈風、初陣やでぇ!」

ほっぽ「シズンデェ!」


御隣戦艦「あれ?何か見覚えのある丸いのが混ざって……きゃぁぁぁ!!!」


竹取「うむ、我が艦隊の勝利じゃな」

御隣「」


この一件により竹取鎮守府が北方棲姫を鹵獲し、艦隊に編入したという話が各地へと、瞬く間に広がっていきました。

演習以降、鎮守府には生ほっぽ姫見たさに、連日大勢の提督が押し寄せて来るようになりました。


近隣「竹取殿、次回の演習はなにとぞ我が鎮守府を。これはほんの志にございます」

竹取「おお、山吹色のボーキサイトとは気が利くのぉ」


辺境「本日のデイリー任務、当方が受け持ちますゆえ、どうか我が方を…」

竹取「う~む、毎日来客が忙しくてのぉ」

辺境「な、ならばあ号ではいかがでしょうか?」

竹取「なにをしわいことを。ウィークリー全てくらい言えぬのか」

辺境「うぐぐ……こちらにも事情がありますゆえ、ろ号までにてご容赦願いたい」

竹取「考えておこう。下がるがよい」


ここは鎮守府です。某EDO城内ではありません、念のため。

また、念願かなってお目通りが許された提督たちは…


前線「こちらは南海で採れた珍しい果実です。どうぞお納めください」

ほっぽ「シンデン オイテケ」

中継「職人の総力を挙げてお作りしました、61㎝六連装間宮羊羹でございます」

ほっぽ「ケイウン オイテケ」

後方「ほっぽ姫をご招待するために、リッツ〇ールトンホテルを建設いたしました!」

ほっぽ「ヒエン244 オイテケ」


炉利「姫のためにケッコンカッコカリ書類一式をご用意いたしました!是非とも私の嫁に…」

長門「 カ エ レ ! 」


鎮守府の倉庫は全国からの貢ぎ物であふれんばかりです。

竹取「ふぁっふぁっふぁ、愉快愉快」

龍驤「いやーウチは信じとったでぇ?キミはやればできる提督なんやって」

竹取「うむうむ、そうじゃろうそうじゃろう」


電「あっ、あの……他のみんなにも羊羹を食べさせてあげたいのです」

竹取「よいぞよいぞ。いちご大福とチョコ最中も一緒につけてやろう」

電「はわわわ、嬉しいのです!」


長門「おおおお、ほっぽ姫が、私の膝枕で…」

ほっぽ「Zzz…」

竹取「くかかっ、ビッグセブンとは思えぬデレっぷりじゃの」

赤城「ご報告します。本日の建造の結果、我が鎮守府には大和型以下、ほぼ全ての大型艦が揃いました」

竹取「ほぼ、とはなんじゃ?」

赤城「申し訳ありません、独艦ビスマルクだけがレシピ不明で…」

竹取「よいよい、最大資材で回し続ければ、じきに出て来よう」

赤城「はっ、御心のままに」



龍驤「ん~、おや~?」

竹取「龍驤、如何いたした」

龍驤「いや、ビス子はんのレシピって何か条件あったように思ったんやけど……気のせいやろか」

竹取「戦艦の建造じゃ。長門を旗艦に置いておけば何も問題はあるまいて」

龍驤「うーん、まあせやな」

<査察>


査察官「竹取殿。深海棲艦の調査はどうなっている?聞けば任務もそこそこに、毎日遊び呆けているとのことだが」

竹取「これは手厳しい。されど、こちらの写真をご覧いただければ納得いただけるかと」

査察官「ふむ、艦娘たちと同じ物を食べたり、文字を解し、カタコトで意思疎通もできる、とな?」

竹取「いかにも」

査察官「この程度のことは既に周知の事。裏付けが取れたに過ぎないではないか」

竹取「では、次の写真を見ていただけますかの」

査察官「艦娘の膝枕で……深海棲艦がお昼寝、だと!?」

竹取「ここだけの話、後ろから撮影したレア物もございましてな」チラッ

査察官「く、黒p…!」

竹取「シーッ、声が大きいですぞ。長門あたりに聞こえたら一大事ですゆえ」

査察官「我々と深海棲艦、お互い平和に向けて歩み寄れる可能性があると?」

竹取「御意。さればこそいま少しの間、資材の融通を願えぬでしょうか」

査察官「うーむ、総司令部を納得させるには少々、参考資料が足りぬかもな」

竹取「くっくっく、新たな写真は査察官殿宛に郵送すればよろしいかな?」

査察官「…竹取殿の忠義ぶり、しかと伝えておきましょうぞ」


まさにやりたい放題。竹取鎮守府は我が世の春を謳歌していました。


電「慢心が過ぎるのです。これは早いうちに何とかしないと…」


電の予想する通り、どんな栄華も必ず終わりを告げる時が来ます。


盛者必衰。それはこの鎮守府においても例外ではありません。

そしてその時は、唐突に来ました。


ほっぽ「ブーン」

竹取「おや、ほっぽや。今日は自前の艦載機で遊んでおるのかえ?」

ほっぽ「オムカエ タノンダ」

竹取「ほうほうお迎えとな……………はて?」


提督はほっぽ姫の真意が理解できず、思わず聞き直します。


竹取「お、お迎えとはなんじゃ?どこへ行こうというのかね?」

ほっぽ「ソロソロ オウチ カエル」



竹取「ぬわわーーーっ!!!」



崩壊の、始まりです。

竹取「鎮守府内の全艦娘に告ぐ!非常事態宣言を発令!先ほど当敷地内より飛び立った飛行体を捕捉し、これを撃墜せい!」


…ですが、ぬるま湯に浸りきった艦娘達は状況が呑み込めずに、なかなか動くことができません。


長門「提督、軽々しく警報など鳴らさないでいただきたい。姫が驚いてしまいます」

竹取「たわけ!そのほっぽが深海へ帰ると言い出したのじゃ!」

長門「…はい?」

竹取「ええい、おぬしでは話にならん!誰ぞ、誰ぞおらぬか!」


大混乱が続く中、冷静に事態を把握していたのは電でした。


電「赤城さん、お願いします」

赤城「はいっ!索敵機、直援機発艦します!」


慢心を恐れた電は予め赤城に相談し、万が一に備えていたのです。


密かに赤城も、贅沢な暮らしを失いたくない、という本音があったとかなかったとか。

赤城「…敵艦載機は捕捉できませんでしたが、洋上に感あり!艦影2、姫級がいるようです!」

竹取「でかしたぞ赤城!そやつらが連絡を受け取ったに違いない!」

長門「高圧缶、タービンの装着完了だ。私からほっぽ姫を奪おうとする愚か者め、報いをうけるがいい!」

電「高速水上打撃部隊、出撃なのです!」


ようやく鎮守府としての機能を回復させたものの、執務室には説明を求める提督達が大挙として押し寄せます。


「ほっぽ姫が帰るというのは本当か!」
「演習の約束は守るんだろうな!」
「我々を騙していたのか!」
「金返せー!」
「軍法会議だ!百条委員会だ!」
「那珂ちゃんのライブ、みんな見に来てねー」


龍驤「ちょ、君ら落ち着いて!大丈夫、大丈夫やから!」

―鎮守府近海―


電「敵影、発見なのです!」

長門「よし、敵の数が少ないからと油断するなよ。全艦、砲撃開始!」


ドゥン!ドドゥン!


重巡棲姫「ヴェアアアア!」

集積地棲姫「ヤメロヨ…!セッカク買ッタ牛丼ガ、燃エテシマウ……ヤメロォ!」




赤城「…報告します。敵深海棲艦を撃退したものの、目標とは別のおつかい艦だった模様です」

竹取「ぐぬぬぬ…」

ほっぽ「オムカエオムカエ オネエチャンガ オムカエ♪」


初動の遅れが招いたC敗北。後に「魔の5分間」と呼ばれることになります。

近隣「竹取殿、この責任をどうお取りになるつもりか」

竹取「ま、まだじゃ!のこのこと迎えに来た敵艦を一網打尽にすれば、我々の勝利は疑いないぞ!」


各地へ援軍の要請が出され、瞬く間に大艦隊が編成されていきます。


廃提督たちの士気も高く、鎮守府側の優勢は揺るぎないものと思われていました。


龍驤「敵さんのお越しやで。数は……およそ50。なんや陸上型まで曳航して来とるで」

前線「ふむ、我が方の半分というところか」

竹取「戦いは数じゃ!いかな深海棲艦どもとて、この重厚な布陣を突破することはできまい」



連合旗艦「……チッ」

空母1「全機爆装、順次発艦始め!」

空母2「直掩機発進、続いて攻撃隊準備!」


ゴオオオオ…


竹取「おお、凄い数じゃの。頼もしい限りじゃ」

熟練「我が艦隊の実力、とくとご覧あれ」

龍驤「間もなく会敵や。まずは基地航空隊が……あれ?出撃命令出しとったんか?」

熟練「はっはっは、竹取殿もお人が悪い。手柄の独り占めはさせぬ、ということですかな?」

竹取「いや、その様なことは……誰ぞ気を利かせたようじゃの」

龍驤「…ちょい待ち、なんか様子が変やで」


いつの間にか出撃していた飛燕、隼などの主力局戦は、連合艦隊の航空隊へと急降下を開始していきました。

空母1「は、背後より奇襲!」

空母2「どうして友軍が…!?」

空母3「混戦により対空砲、撃てません!直掩機隊に大打撃です!」

空母4「深海側の航空隊、来ます!ああ、また村田殿がお亡くなりに…」


竹取「な、何をしておる!誰が基地航空隊を動かしておるんじゃ!」

長門「それがその……滑走路はほっぽ姫の遊戯場として、我々の管理下から外れていまして…」

ほっぽ「オムカエノ ジャマヲスルナ!」

竹取「なんということじゃ…」

瞬く間に制空権を失い、浮き足立った連合軍は、次々と各個撃破の的になっていきます。


重巡棲姫「無粋ナ……ヤツラ……メ……ッ!」

集積地棲姫「牛丼ノ怨ミ……生カシテ返スナ!」


なかでも、姫級二隻の暴れっぷりは凄まじいものでした。


近隣艦隊旗艦「艤装大破、撤退します」

航空艦隊旗艦「艦載機全滅、戦闘続行不能です」

前線艦隊旗艦「損傷艦多数、孤立の恐れもあるため退却します」


竹取「い、いくらなんでも脆すぎではないか!?精鋭艦隊ではなかったのか!」

熟練「こんなはずでは…」

連合旗艦「…ご決断ください。全艦隊に撤退の命令を」

竹取「そのようなことはできん!」

熟練「確かに。これほどの戦力を用いて敵はほぼ無傷、むざむざとほっぽ姫も奪われては、恥さらしもいいとこであろう」

連合旗艦「その、北方棲姫こそが!全ての元凶ではないですか!」

熟練「…ッ!?」


連合旗艦「私たちは北方棲姫への貢ぎ物と称して、装備を、資材を、甘味を、そして提督の関心を奪われてきました」

連合旗艦「挙句の果てに守れと言われた対象から攻撃を受け、さらにお迎え艦隊と戦えと?こんな状況で士気が上がるとでも!?」


竹取「……」

熟練「……」

連合旗艦「申し訳ありません、つい感情的になってしまいました。どうぞ進撃の御命令を」

熟練「いや、撤退だ。損傷艦の保護を最優先に。敵の目的がお迎えなら、進路を譲れば追撃はあるまい」

連合旗艦「…っ!はいっ!」

前線「我が方も撤退せよ。…全く、自軍に裏切り者がいてはとても戦えんな」

中継「被害の軽い艦は、孤立している艦の救援を。…竹取殿、此度の戦の失態、しかと大本営に伝えますぞ」

後方「退路の確保を急げ!心配はいらん、全ての責は竹取殿が負うそうだ!」

風見鶏「だから私は最初から反対だったのだ!深海棲艦を守るために戦うなど!」

近隣「預けていた資材は引き揚げさせてもらいますぞ。不足分は後日、請求します故」

竹取「あわわわ…」


さすがは歴戦の提督たち。手のひら返しも鮮やかなものです。

ほっぽ「オネーチャン♪」

港湾棲姫「オ帰リ 楽シカッタカイ?」

ほっぽ「ウン トッテモ!」

港湾棲姫「ソレハ良カッタ」


連合艦隊が撤退し、深海棲艦に制圧された鎮守府。


長門や赤城たちも武装を解除され、もはや成す術ありません。


港湾棲姫「サテ、オ前ガココノ提督カ?」

竹取「ひええっ!い、命ばかりはお助けを…」

港湾棲姫「北方棲姫ガ世話ニナッタ。礼ヲ言ウ」

竹取「ははぁぁっ!もったいなきお言葉」

港湾棲姫「ダガ貴様等人間ト我々トハ、ヤハリ相容レヌ存在ダトイウ事ガワカッタ」

重巡棲姫「今殺ス!スグ殺ス!」

竹取「ど、どうかお許しを……ナンマンダブナンマンダブ」

ほっぽ「オネーチャン…」

港湾棲姫「…北方棲姫ニ免ジテ、今日ノトコロハ引キ揚ゲル。シカシ次ニ会ッタ時ハ、容赦ナクソノ首ヲモラウ!」

竹取「この通り、この通り土下座いたします故、なにとぞ命だけは…」

港湾棲姫「……」


必死で命乞いをする提督には、港湾棲姫の話はまるで聞こえていないようです。

港湾棲姫「帰ルゾ」

重巡棲姫「チッ、今殺レバイイノニ…」

集積地棲姫「詫ビトシテ、コノPSトソフトハ貰ッテイクネ」

ほっぽ「…ゴハン オイシカッタヨ」


深海棲艦たちは水平線の彼方へと消えていき、海は平穏を取り戻しました。


竹取「どうか……どうかぁぁ!!」

電「いつまでやってるのですか?もう誰もいないのです」

こうして、ほぼ誰も得をしない戦いが終わり、各地に戻った廃提督たちは竹取鎮守府への糾弾を始めます。


数々の悪事が明るみになり、もはや極刑は免れない、と誰もが思いましたが…


電「大和型姉妹セットですね?了解なのです」

電「大鳳2隻、オプションでカタパルトもつけるのです」

電「イベント札対策ですか?ならば長門赤城龍驤の主力セットが練度もそれなりにあるのでお得なのです」

電「局地戦闘機5点、二式大艇添えお待たせなのです」

電「瑞雲をご所望?なら、とっておきの特別な瑞雲があるのです」



電「…その代わり、こちらの書類にサインをお願いするのです」



この窮地を救ったのはまたしても電でした。


量産された艦や献上装備をバラ売りし、中堅提督たちの同情票を集めて見事、提督の助命嘆願を勝ち取ったのです。


電「これが……電の最後のご奉公なのです」

―そして、現在の竹取鎮守府―


竹取「やれやれ、色々な物を失ってしもうたの」

ポーラ「でもでもぉ、命あっての物種ですよぉ」

竹取「じゃが、電に対しては救われた半面、モヤモヤ感が残ってな」

ポーラ「そんな時は飲めばすっきりしますよぉ~」


今回の一件での対応や処理の速さから、その評価を大きく上げた電。


しかしながらその裏では、引っぺがした46㎝砲を手土産に自らをも売り込み、ちゃっかり主力鎮守府への移籍を果たしていたのです。


望月「単に愛想を尽かされただけじゃん」

初雪「…自業自得」

竹取「耳が痛いのぉ」

初雪「そんなことより司令官、遠征終わったからおやつ頂戴」

竹取「うむ、ワシのお手製の芋餅とドクダミ茶があるでの」

望月「なんだよ~アイス無いのアイス」

竹取「それを食ったらあと二回、遠征を頼むでな」

望月「げっ、まだ働かせる気!?」

初雪「一回の遠征につき、一週間の休みを要求する」

竹取「済まんのぉ。これも大和型を手に入れるまでの辛抱じゃ」

望月「このジジイ…全く懲りてねぇ」

初雪「もしもし労働基準監督署?艦娘の酷使について相談が…」

なお、港湾棲姫が今回密かに進めていた、人類との共存計画は重巡棲姫等の強い反対もあり頓挫。


深海棲艦と艦娘との果てしない戦いは、現在にまで至ることになります。


竹取「今一度、あの輝かしい日々を取り戻したいものじゃ…」

望月「夢ばっか見てんじゃねー」

初雪「もう嫌、こんな極貧ブラック鎮守府…」

ポーラ「んふふ~、提督と飲めるなら~ポーラはコンビニの安ワインでも大満足ですよ~」


―【艦これ】竹取物語 完―

このSSまとめへのコメント

1 :  北方棲姫   2018年05月09日 (水) 20:46:30   ID: ffyjzWBW

北方棲姫を見ていると無性に『発・狂』するまで肉体的・精神的に『責め苛み』たくなる。特に手袋で保護している綺麗な両手を『数百度の天麩羅油』をぶっかけて『火傷』でグチャグチャの『ケロイド状』にしてから両手に『真っ赤に焼けた鉄の手袋』をはめさせ、野口英世並みに『全ての指がくっついた『テンボウ』状態』の所謂『カ・タ・ワ』にしてやりたくなる。

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