ありす「今日も魔法少女、頑張ります」 (48)




『第2話 マジでセクシーなタチバナです』





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1524430054

――東京都内、橘宅(玄関)

ガチャッ!

ありす「いってきます」


――私は橘ありす。どこにでもいるごく普通の女子小学生です。あえて、違うところがあるとすれば、アイドルとして活動しているのと……。


ゆっこ「おはようございます、ありすちゃん!」ヒューンッ

ありす「おはようございます。昨日はどこに行ってたんですか?」タッタッタッタッ……

ゆっこ「ちょっと文香さんのお家にお邪魔してました。いやー、たまには他の場所でお泊りするのも楽しいですからね!」

ありす「図々しい妖精ですね」

ゆっこ「ま、さすらいの妖精ですから」

ありす「まったく……あまり文香さんを困らせないでくださいね」

ゆっこ「わかってますって。魔法少女のありすちゃんのお家にいないと、いざというときに困りますからね!」フワフワ


――私は先月、魔法少女になりました。



ありす「おはようございます。文香さん」


文香「おはようございます……今日は、体育の授業が、あるんですか?」

ありす「あ、この体操着ですか? はい、午後に跳び箱の授業があって」


――この人は鷺沢文香さんです。近所で書店を営んでいる叔父さんのお手伝いをしている聡明な方です。今年の春に大学生になりました。


ゆっこ「おはようございます! 文香さんは、今日は事務所ですか?」

文香「おはようございます……午前の講義を受けた後に、午後から、ボーカルトレーニングが……」

ゆっこ「そういえば昨日頂いた筑前煮、とても美味しかったです! まだ残ってますか?」

文香「昨夜のなら、余ったものが冷蔵庫に……」

ゆっこ「それじゃありすちゃんを学校に送った後でごちそうになります!」

ありす「あなた……それは図々しいにも程があると思いますが……」

ゆっこ「いやぁ、この世界のご飯は美味しいですねぇ……妖精の舌にもバッチリです」


――まあ、この変な妖精に乗せられて、成り行きで魔法少女になった、といったところでしょうか。


ありす「私も学校が終わったら事務所に行きますので、夕方は一緒に帰りませんか?」

文香「はい……待ってます」

ありす「それじゃあ、行ってきます」タッタッタッタ……


……
…………

――午前、ありすの通う学校

「イチゴクレープが食べたいー!」

「イチゴのサンドイッチが簡単じゃない?」

ありす「何を言っているんですか。ここはイチゴパスタを作る以外に有り得ません」

「えー、イチゴにスパゲティってマズそう」

「絶対おいしくないって」

ありす「聞き捨てなりませんね。イチゴパスタはここ最近、ナウなヤングにバカウケの料理なんですよ」

「ええええー? 嘘だー!」

ゆっこ『ありすちゃん、さっきから何を揉めてるんですか?』

ありす『ああユッコさん。念話ですか……いえ、明後日の家庭科の授業でやる調理実習で作る料理について、班の中で何にするか決まらなくて……イチゴを使わなきゃならないんですけど』

ゆっこ『それならイチゴサンドにしましょうよ。ユッコも食べたいです』

ありす『何を言ってるんですか。イチゴパスタ以外に作る物なんてありませんよ』

ゆっこ『ええー……それ、絶対マズイですよ。マジカルランドでもイチゴパスタなんて見ませんし。というか、ファミレスとかに行っても全然見ないメニューじゃないですか』

ありす『それは腕の悪い料理人が多いだけです。しっかりと調理すれば、美味しいイチゴパスタになります』

ゆっこ『それって大多数の料理人が作ってもマズイだけってことじゃないですか。やめましょうよそんなの、ありすちゃんが美味しく作れると思えませんし』

ありす『これだから住所不定無職の妖精は……』

ゆっこ『あーっ! なんですかその言い方は! ユッコだって王国に家くらいありますよ! 失礼ですねもうっ!』


……
…………

――放課後、通学路

ありす「……」ムスッ

ゆっこ「もー、そんなあからさまに膨れっ面にならなくてもいいじゃないですか」フワフワ

ありす「なってません」ムスッ

ゆっこ「いいじゃないですかイチゴサンドで。お腹に入ればみんな一緒です」

ありす「ユッコさんと無駄に念話を続けていたおかげで、私が話を聞いていないうちにイチゴサンドに決まったのがいけないんです」

ゆっこ「はぁ……いいじゃないですか。事務所に行くんですし、切り替えていきましょう」

ありす「まったく……まあ、これから事務所に行ったらお仕事の打ち合わせがあります。終わったことをいつまで言っても仕方がありません」

ゆっこ「そうですよ! ここはビシッと気持ちを――」


キィィィィンッ!!


ゆっこ「んっ!?」ピクッ!

ありす「今のは……!」

ゆっこ「この感覚は……魔物です、ありすちゃん!」

ありす「はい……場所は……」

ゆっこ「ペンデュラムが魔力の発生地点を割り出します……こっちです!」ビューンッ!!

ありす「はいっ!」タタタタタタッ!!

……
…………

――大田区(大通り)

ありす「はぁっ、はぁ……すみません、疲れました」ハァ、ハァ、ハァ……

ゆっこ「おかしいですねぇ……こんなに走るなんて。これだけ離れた場所の反応で、ペンデュラムがこんなに激しく動くなんて……」

ありす「ここは……オフィス街まで来てしまいましたね。えっと、あっちからこの大きなオフィスビルまで走ってきたので……」

ゆっこ「ぶわっくしょいっ! うう……春先だからか、吹いている風が少し冷たいですね。さむい……」ヒューン

キィィィィンッ!!

ありす「またこの感覚……! それに、何だか体が少し重いような……」

ゆっこ「近いですよ! あっ、あそこです!」


魔物「ぴにゃ?」



ありす「あれは、ホテルの壁に張り付いて……って、なんであのフォルムでビルの壁に張り付いていられるんでしょうか。というか、周りを歩いている人たちの動きが止まっていますけど……」

ゆっこ「今回は結界が張られてる……魔物が出てきたら周囲に結界が張られるんです。その中では魔法少女やユッコたち以外は動くことができません! ありすちゃん、スタージュエルですよ!」ビュッ!

ありす「はいっ! マジカルクローゼット、いきますよ!」カチッ!

ありす「マジカルチェーンジ!!」

パアアアアアアッ!!!!

シュパアアアア……

ゆっこ「おっ、今日はイチゴパンツなんですね! 調理実習の日の勝負パンツにするべきだったのでは?」

ありす「そんなこといちいち言わなくていいですから!」

パアアアアア……

ありす「クールにいきます! マジデ・クール・マジカ・タチバナ!」

ゆっこ(うーん、ダサい)

魔物「ぴにゃっ!」グルンッ!

ありす「こっちに気づいた……!」

魔物「ぴにゃああああああ!!」キュドオオオオオンッ!!

ゆっこ「破壊光線です! 避けてください!」

ありす「そんなのに当たったら死んでしまいますから!」タタタタタッ!

ドガアアアアアアアアンッ!!

ありす「ううう……ビルの上に登られては、こちらからは手が出せません……」

ゆっこ「うー……あ、そうですありすちゃん、この前出したながーい魔法の杖、アレ使って空を飛びましょう!」

ありす「え、出来るんですか?」

ゆっこ「はい! 杖にまたがってすいーっていきましょう!」

ありす「なるほど、それは魔法少女ですね。それでは……魔法の杖よ!」ジャキンッ!

ゆっこ「さあいきましょう! ゆっこも戦いますよー!!」

ありす「跨って……えいっ!」ピョンッ!

ドシャッ!!



ありす「……」

ゆっこ「……」

魔物「……」

ありす「……」ムクリ

ありす「……跨って、えいっ」ピョンッ!

ドシャッ!!

ありす「……飛べませんが?」ムクリ

ゆっこ「あれ、おかしいですね……」

魔物「ぴにゃっ! ぴにゃっ! ぴにゃっ!!」

ありす「あれ、絶対にバカにしてますね……」

ゆっこ「はい」

ありす「こうなったら……この距離からでも私の魔法を当ててみせます!」

ゆっこ「あのホテル、結構な高さですけど届きますか?」

ありす「頑張ります! ストロベリーフレグランス!」ギュオオオオオオオッ!!

魔物「ぴにゃ……」スッ……

ありす「えっ?」

ゆっこ「ええっ!? ま、魔物が霧のように散って……」

シュウウウウウウ……

ありす「……消えてしまいましたね」

ゆっこ「うーん……結界も、崩れてきていますね。よくわかりませんが、とりあえず目立つ前に移動しましょうか」

ありす「むぅ……逃げられたということですか」

……
…………

――夕方、事務所

文香「なるほど……霧のように、魔物が散っていった、と……」

ありす「はい。まあ、離れた場所にいたのでどの道逃げられていたと思いますが」

ゆっこ「ユッコもあんなふうに消える魔物は初めて見ましたよ。普通はそのまま逃げ出すはずなんですけど」フワフワ

ありす「今回みたいなことは、初めてということですか?」

ゆっこ「少なくともユッコが戦ったことのある魔物で、あんな逃げ方をするヤツはいませんでしたね。王国に調べてもらったほうがいいかもしれません」

ありす「そうですか。それでは私たちは魔物が出てくるまで待ちましょうか」

文香「あの……もう少し、その魔物と戦った時のお話を、聞かせてもらえますか……?」

ゆっこ「へ? 何か気になることでもありましたか?」

文香「いえ、何が出来るかわかりませんが……私も、少し調べてみようかと……」

ゆっこ「それじゃあ、ユッコの持ってる昔の記録でも見ますか? 魔物と戦ったときの資料とかも残してますし」

ありす「意外とマメですね」

ゆっこ「ちゃんと報告書出さないとお給料に響くので……」

ありす「というか、そんなことを調べるのも大変そうですし、大丈夫ですか文香さん?」

文香「大丈夫です。私は……魔法少女のありすちゃんを、全力でサポートします……!」

ありす「お話は嬉しいですけど、私のサポートの前にまずはレッスンを頑張ってください」

文香「あう……」



ガチャッ!!


ゆっこ「おっと、サイキックテレポート!」シュッ!

ありす「Pさん、おつかれさまです」

P「お疲れ様。待たせてゴメンな。局から出るのが遅くなった」

文香「お疲れ様です……あの、お仕事のお話……ですよね?」

P「ああ。そうだ、期末に撮った文香の写真、資料と一緒に伝手のある人たちに紹介しておいたからさ。今度挨拶に行こうか」

文香「は、はい……」

ありす「今日の打合せ、何のお仕事の話ですか?」

P「ちょっと待ってくれ。えっと、資料は……これこれ」

ありす「……撮影ですか」

P「ホテルでな。もう少しで結婚式のシーズンになるし、雑誌に載せる子供用のパーティードレスの見本だ。それと、はい」

文香「……私も、ですか」

P「今回指定されているドレスは落ち着いたデザインが多いから、文香も着やすいと思って一緒に入れてみたけど、どうだ?」

文香「……はい。頑張り……ます」

P「難しいかもしれないけど、ある程度はリラックスしてやれると思う。とびきりの笑顔って感じでする撮影でもないし、今回で少し慣れておこうか」

ありす「私もいますから一緒に頑張りましょう、文香さん」

文香「は、はい……」

P「衣装合わせとメイクは現地でやるから、当日は今日くらいの格好で来てくれ。あ、一応髪は切らないように」

ありす「渡してる資料と印象が変わると、相手も困りますからね」

文香「……なるほど」

P「それじゃもう少し細かい話もしておこうか。これが撮影場所の資料と、後は時間が……」

ありす「……あれ」

ありす(この場所……)


……
…………

――夜、橘家(ありすの部屋)

ありす「うーん……」

ゆっこ「どうしたんですか? さっきから唸ってますけど」

ありす「この資料、次のお仕事の撮影場所なんですけど……」

ゆっこ「海の近くのホテルなんですね。あれ、そこってもしかして」

ありす「はい、魔物がいたホテルです。ホテルの中のホールで撮影するそうです」

ゆっこ「偶然ですねー」

ありす「そういうことではなくて……もしまた魔物が同じ場所に現れたら、Pさんや文香さんが危ない目に遭うと思いまして」

ゆっこ「ああ、それは大丈夫ですよ。魔物は出てきたら結界が……ってそういえば前はなぜか結界が張られなかったんですよね。うむむ……」

ありす「Pさんが一緒にいると魔法少女に変身するのも難しいですし、どうしよう……」

ゆっこ「まあもしものときは、ユッコのサイキックパワーでプロデューサーを締め落としておきますから大丈夫ですよ」

ありす「まったくもって大丈夫な気がしませんけど」

ゆっこ「むー……それにしても、王国からの連絡もありませんし、資料は文香さんに貸したままですからやることがないですねぇ」

ありす「はぁ、それじゃあもう寝ましょう」

ゆっこ「え? もう寝ちゃうんですか?」

ありす「明日は学校もお休みですし、それなら朝から現場に行って魔物がいないか少し探してみましょう。地道にやるのも大事です」

ゆっこ「最近の子はしっかりしていますねぇ……魔法少女は小さい子たちのお手本になるべき存在ですから全然いいんですけど。それじゃ、明日に備えて寝ましょうか!」

……
…………

――翌日、午後、大田区(大通り)

ゆっこ「案の定、収穫はゼロです」

ありす「魔物の反応もありませんしね」

文香「……」ハァ……ハァ……

ゆっこ「おや文香さん、大丈夫ですか?」

文香「いえ……はい……」

ありす「朝からずっと歩き続けていましたからね……少し休憩しましょうか」

ゆっこ「いいですね、お昼ごはんにしましょう!」

文香「賛成……です……」

ありす「もう少し体力付けましょうか」

……
…………

――カフェテラス

文香「……」ホワァ……

ゆっこ「いまにも死にそうだった顔が、みるみるうちに生気を取り戻していきますね!」

ありす「文香さんは落ち着いた方ですし、こういったことはまだ苦手なんです」

ゆっこ「まあ激しい動きが出来そうかと言われれば……あれ?」

ありす「どうしました?」

ゆっこ「あそこのテーブルの下、何か落ちてますね」

ありす「これ……パスケースですね。どなたか落としたんでしょうか」ガタッ

ありす「高橋、礼子さん……の物みたいですね」ペラッ

文香「テラスには……私たち以外のお客さんが……いませんね」キョロキョロ

ありす「あ、端の席に一人座ってる方がいますね。あの方のものでしょうか?」

ゆっこ「今日は風が吹いてますから、他のお客さんはカフェの中にいますし……あの人くらいしかいませんね」

ありす「それじゃあ、ちょっと聞いてきます」


……
…………

ありす「すみません」

???「……あら、私?」

ありす「はい。あの……このパスケース、そこのテーブルの下に落ちていたんです。あなたが高橋……礼子さんですか?」

礼子「ええ……私のね。いつの間に落としていたのかしら……ありがとう、お嬢ちゃん」

ありす「いえ、無くしたままお店を出る前でよかったです」

礼子「ふふ、良い子ね」

ありす「……高橋さん、この後、どこかに行く用事でもあるんですか?」

礼子「あら、どうして?」

ありす「パーティードレスを着ていらっしゃるので、ただカフェに来ているお客さんにも見えなかったので」

礼子「……そうね。パーティー……行こうかと、思っていたわ」

ありす「そうですか。楽しんできてください」

礼子「ええ、お嬢ちゃんも」

……
…………

ありす「やっぱり、あの人の物だったみたいです」

ゆっこ「ずいぶんと美人な人ですね」

ありす「今日はパーティーがあるみたいですよ。ドレスを着ているのもその為だと思います」

文香「……」ペラッ、ペラッ……

ありす「文香さん、何を読んでるんですか?」

文香「……ユッコちゃんから、お借りした資料です」

ゆっこ「なにか分かりましたか?」

文香「そう、ですね……たとえば、この記録……」

ありす「ん……字が汚いですね」

ゆっこ「いいじゃないですか別に! ユッコは王国からの支給品もあまり持っていませんので……」

文香「燃え盛る炎の空間で、魔物と戦った……こちらの記録は、海の中での戦闘……魔物は、どのような場所でも、現れるのですね……」

ゆっこ「それはもう、いつでもどこでも戦闘ですよ」

文香「これは、私の予想ですが……恐らく魔物は、周囲の環境に適応し、その体を変化させたのかもしれません」

ありす「???」

ゆっこ「えぇぇ~? それはないですよ、ユッコは他の世界で炎の中や、海の中でもアイツらと戦ったことがありますが、そんな体が突然変わるなんて……」

文香「ですが、ユッコさんは先日お話してくれたかと思います……このような現象は、今までになかった、と……」

ゆっこ「まあ……それはそうですけど……」

文香「少し、視点を変えてみましょう……つまり、これまでとは異なる条件があれば、魔物の体を変化させることができるのです」

ありす「たとえば、何があるんですか?」

文香「……外的要因、つまり……ありすちゃんが魔法少女になったような……まったく別の力」

ゆっこ「答えになってないじゃないですか……それに、周囲の環境に適応して体が変化したから霧になるって……あ」ピーンッ!

文香「……分かりましたか?」

ゆっこ「そっか、海ですね。少し歩けば海がありますし、昨日風が吹いたとき寒かったです。体を水に変化させたとすれば……でもそれだけじゃあ……」

文香「ですが、通常では有り得ない現象……であるなら、可能性の1つとして、考えていたほうが良いかと……」

ゆっこ「うーん、そう考えたとしてありそうなのは、魔物を変化させた存在がいる、かもしれないってことですね」

ありす「心当たりはあるんですか?」

ゆっこ「特には……これも王国に聞いてみたほうがいいですね」

……
…………

――数時間後、夕方、大田区

ゆっこ「なーんにも収穫なかったですね。海沿い歩いても寒いだけでしたし」

文香「すみません……どうやら、私の考えが、見当違いだったようで……」

ありす「いえ、闇雲に歩いても仕方がありませんし、次は別の視点で調べてみましょうか」

文香「はい……ですが、今日はもう日も暮れてきていますし……」

ありす「そうですね。また明日でも……あ」

ゆっこ「どうしました?」


「それじゃあ礼子さん、また次の機会に」

礼子「ええ、今日はありがとう」


ありす「こんばんは」タッタッタッタッ

礼子「あら、また会ったわね。もう遅い時間よ?」

ありす「暗くなるし、これから帰るところです。高橋さんも、お帰りですか?」

礼子「ええ、そろそろ帰ろうかと思っていたわ」

ありす「そうですか。それでは、失礼します」

礼子「それじゃ」

文香「お昼に、お会いした方ですね……」

ありす「はい。ここのホテルでのパーティーの帰りだったみたいですね」

ゆっこ「いいですねパーティー。ユッコも美味しい物食べたいです」

ありす「家のご飯で我慢してください。というか、食費くらい払ってくださいね」

ゆっこ「あいや、それはちょっとユッコの懐事情が……」

文香「……車が来ましたね。ここで、立ち話をしていると……車の邪魔になりますし、移動しましょう」

ありす「あ、はい。そうですね」



「あら、もう始まってるみたいね。少し遅れちゃったわ」

「まあまあ、夜は長いんだから、少しくらい遅れてもいいじゃないか」



ありす「……」


……
…………

――数日後、事務所

P「よし、戸締りも終わったし、それじゃ現場行こうか」

文香「はい……」

ありす「今からだと、移動中に昼食を取ったほうがいいですね」

P「道中でどこか寄っていこうか。撮影場所のホテル会場の周りにも店はあるだろうし」

ありす「あ、Pさん」

P「どうした?」

ありす「撮影、どれくらい掛かる予定ですか?」

P「そうだな……衣装も何着かあるけど、半日は……掛からないとは思うな。夕方には終わるとは思う」

ありす「そうですか」

ありす(撮影自体はそれほど多くないみたいですね。仕事中に魔物が出なければいいですけど……)

P「それじゃ車出してくるから、ちょっと待っててくれな」ガチャッ!

パタンッ……


ありす『……ユッコさん、ユッコさん』


……
…………

――駅前、パーラー『ムムムムーン』(店内)

ゆっこ「こい、こいっ! キター!! ようやく確変入りましたね!」

ジャラジャラジャラッ!

ありす『ユッコさん、ユッコさん』

ゆっこ「ん、ありすちゃんから念話が……」

ゆっこ『はいサイキック美少女妖精のユッコです』

ありす『これからお仕事に行ってきます。魔物が出るかもしれませんし、ユッコさんにも一緒に来てもらおうと思っているんですけど』

ゆっこ『ええええ……今からですか。ちょっと忙しいので、後で行きます』

ありす『そうですか。ちなみに、何をしているんですか?』

ゆっこ『アレですよ、この前お話した銀色の玉を入れる遊びをしてるんです。ようやく確変に入っていいところなので……』

ありす『何でもいいですけど捕まらないでくださいね。それじゃ、終わったら来てください』

ゆっこ『はーい』

ゆっこ「さーて、このまま継続してくれればいいんですけど……まあ、いざとなったらサイキックパワーで無理やり継続させればいいですけど」

ジャラジャラジャラッ!

……
…………

――午後、ホテル会場(中ホール)

「休憩入りまーす!」

ありす「はい。お疲れ様です」

文香「お疲れ様……で……す……」

「一旦着替えて休憩にしましょう。メイクの直しは休憩終わった後にやりますから」

ありす「わかりました。それでは少し外しますね。文香さん、楽屋に戻って着替えましょうか」

文香「は、はい……」


P「お疲れ様です。予定より早く消化できてますね」

「撮り直し少ないですからね。ありすちゃんもそうだし、新しく来てくれた文香ちゃんって子も、今回の撮影に結構ハマってますし」

P「無理やり捻じ込ませたのはこちらですし、いい絵になっているのであれば助かります」

「ははっ、まあそこはお互い良かったということで。だけど彼女もまだ慣れてないから疲れてきているみたいだし、10分15分は休憩しましょうか」

P「それじゃ、うちのアイドルたちが休憩している間にレイアウトでも確認しておくか……」

「場所移りますからね。少し準備しておきましょうか」

……
…………

――ホテル会場(楽屋)

ありす「大丈夫ですか文香さん。口から魂が抜けているような顔になってますよ」

文香「……ダイジョウブ、です」

ありす「ダメみたいですね。飲み物買ってきますから、少し休んでいてください」

文香「すみません……」

ありす「いえいえ、私も初めての頃は慣れなくて、Pさんに色々としてもらっていましたから」ガチャッ


ありす「あ、でも撮影はまだ半分残っていますし、もう少し頑張ってくださいね」

文香「はい……」

パタンッ!


……
…………

――ホテル会場前

ありす「えっと、コンビニは……」キョロキョロ

ありす「……あれ」


礼子「……」




ありす(高橋さん……あの格好、またパーティーがあるんでしょうか……でも……)

ありす「……高橋さん」タッタッタッタッ


礼子「え?」ピクッ

ありす「お久しぶりです。今日も、パーティーに行くんですか?」

礼子「貴方……」

ありす「あ、すみません……名前を言ってなかったですね。橘ありすです」

礼子「そう、ありすちゃん。そうね……今日も、パーティーに呼ばれていたわ」

ありす「……まだ明るい、こんな時間からですか?」

礼子「ええ、そうよ」

ありす「……この前、すぐに帰ったのはどうしてですか?」

礼子「……」

ありす「あ、いえ……すみません、少し気になっていたので」

礼子「そう……」


……
…………

――大田区(大通り)

礼子「本当は、誘われたパーティーに行こうか悩んでいたのよ。この前も」

ありす「パーティー、行きたくないんですか?」

礼子「そんなことないわ。パーティーは私も好き……だけど、少し考えて、悩んじゃったから」

ありす「……何を悩んでいるんですか?」

礼子「そうね……それじゃあ、ありすちゃんは私を見てどう思うかしら?」

ありす「どうって……そうですね、ドレスも似合っています。私のイメージする大人の女性という感じもしますし、綺麗で、セクシーで」

礼子「ありがとう。私も、そう見られるように努力して、この姿になっているのよ。相応の場所で、自分を美しく見せる為にパーティーに来ているの」

ありす「なるほど……それなら、やっぱりパーティーに行くべきじゃないですか?」

礼子「そう思っていたけど……最近、思うようになったの」


礼子「自分を着飾って、煌びやかで、華やかな場所で自分を美しく見せる……そんなことに、若い頃は憧れていたわ」

礼子「それに満足していたこともあったけれど、いざそうしてみて、その場所で色々な人間と出会って……ふと思ったの」

礼子「その場所で私は何をしたいのか、私を見ている男たちは、何を思っているのか……」

礼子「私を見て、その体を欲しいと思われているのか……まあ、それも私自身が体を磨いた成果だと思えば、悪くないわ」

礼子「だけど、私自身は、どうしたかったのか……何をしたくて、何を求めていたのかが、分からなくなって」

礼子「最初から、何も望んでいなかったのかもしれない。ただ自分を美しく見せる為に、相応の場所に行くことだけが、目的になって……今頃、それに気づいて」

ありす「今頃、ですか……?」

礼子「そう、私ももう31歳……夢も希望も、何も残ってない……」

礼子「このパーティーの光も、いつかは消えていく儚い光……」

ありす「いえ、このご時世、世間一般的に31歳はまだ十分若い年齢だと思います。おばさんだとは思いますが」

礼子「いつか消えてしまう光の為に、私自身が何も求めていないまま、その光だけを求めているのが……なんだか馬鹿らしくなってきたの」

ありす「……よくわかりません。私は大きな場所でのパーティーに参加した経験もほとんどありませんので」

礼子「ふふっ、大人になれば……もしかしたら、分かるかもしれないわよ?」

ありす「そうですか。まあ、私にはまだ――」

キィィィィィンッ!!

ありす「っ!?」ビクッ!

ありす(この感じ……まさか!?)キョロキョロ

礼子「あら、どうかしたの?」

ありす「どこかに、前のような魔法陣が……いえ、それならもしかして……!」キョロキョロ

ありす「文香さんの予想が正しければ……海の、上!」バッ!


パアアアアアアアッ!!


礼子「え、何……?」

ありす「高橋さん、離れてください!」


魔物「ぴにゃあああああああああっ!!」

ズドォォォォォンッ!!

礼子「きゃっ!?」

ありす「魔物……海の上に出た魔法陣から……!」

魔物「ぴにゃあああ……」

パアアアアアアッ!!

ありす「えっ、周りが……」

ズズズズズズ……

ありす「体が重い……ユッコさんが言っていた結界というのは、もしかしてこのこと……?」

ありす『ユッコさん、ユッコさん!』

ゆっこ『はい!? ちょっといま継続してるんでもうちょっと――』

ありす『大人の遊びはいいですから、魔物が出ました! 仕事先のホテルです!』

ゆっこ『でえええっ!? うぬぬぬぬまだ交換してないのに……何か、何か置く物……い、いまそっち行きます!』

魔物「ぴにゃっ!」

ありす「ホテルの近くに……ホテルにはPさんと文香さんが……!」

魔物「ぴにゃああああああ……!」ゴゴゴゴゴゴッ!

ありす「あれは破壊光線……高橋さん、こっちです!」タタタタタッ!

礼子「ちょっと、貴方――」

ありす「早く!」

魔物「びにゃあああああ!!!!」ズドドドドドドッ!!

ドガアアアアアアアアンッ!!!!

ありす「あうっ!?」

礼子「ううううう……!」

魔物「ぴにゃっ! ぴにゃっ!!」

ありす「くっ……はっ、し、しまった……ホテルが魔物に壊されて……!」

礼子「あ、あああああ……」

魔物「ぴにゃあああああ!」

礼子「……そう、ね。あの光も、こんなに脆い物だったのね……あんな簡単に、崩れるなんて。私は、どうしてそれに拘って……」

ありす「高橋さん、いまはそんなことより……」

礼子「結局はその時だけの輝き……そんなものを、求めても……」

ありす「……」



ありす「……いいじゃないですか。それを求めても」

礼子「え……?」

ありす「パーティーとか、ステージとか、綺麗な場所、美しい場所にいたいなんていうことは、誰だって思います」

ありす「それに理由なんて必要ありません。それに、その場にふさわしい自分でいられるように、美しくなることも……女性なら、そうしたくなるものだと思います」

礼子「でも、そんなことをしても、いつかは……」

ありす「はい、いつかは消える光かもしれません。美しい物も、いつかは色褪せていくかもしれません」

ありす「ですが、私はたった一瞬でも……相応の場所で、美しくなった自分を見た誰かの心に、残せるものがあるのなら……意味のある物だと信じています」

ありす(そう、それは……私が、アイドルだから……あのホテルは今日、私がアイドルとして光る為の、場所でもあった)

ありす「だから、私はあのホテルを壊した魔物をそのままにはしておけません。煌びやかな場所であり、私を光らせてくれるはずだった、あの場所の為にも」

礼子「貴方……」

ゆっこ「ありすちゃーん!」ヒューンッ!

ありす「ユッコさん!?」

ゆっこ「お待たせしてすみません! サイキックテレポートですっ飛んできました!」

ありす「魔物にホテルを壊されて……まだ、中にはPさんと文香さんが……!」

文香「だっ、大丈夫です……!」タッタッタッタッ!

ありす「文香さん!?」

ゆっこ「はい、この前のこともあったので、きっと魔物が盛大にホテルをぶっ壊すと思っていたので先にプロデューサーと文香さんを逃がしておきましたよ!」

ありす「え、でもPさんは……?」

文香「結界の外に……外からは、中に入ることはできないとのことで……私は、ユッコさんについてきたので……」

ゆっこ「なのでありすちゃんは安心して、あの魔物をぶっ飛ばしてください! スタージュエルですよ!」ビュッ!

ありす「はい! マジカルクローゼット!」カチッ!


ありす「マジカルチェーンジ!!」

パアアアアアアッ!!!!

シュパアアアア……

文香「……」カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ

ゆっこ「何やってるんですか?」フワフワ

文香「ありすちゃんの活躍を……写真に収めておこうかと……」カシャカシャカシャカシャカシャカシャ

ありす「そんな呑気なことやってる場合じゃありませんから!」

パアアアアア……

ありす「クールにいきます! マジデ・クール・マジカ・タチバナ!」

ゆっこ(ダサい)

文香(ダサい)

礼子「え、え……?」

ゆっこ「あ、ありすちゃんと一緒にいたから結界の中でも動けちゃったんですか。見られちゃったなら仕方ないですけど、ありすちゃんは魔法少女なんです!」

礼子「魔法……少女……?」

ゆっこ「はい! みんなの夢や希望の為に戦う、魔法少女です!」

礼子「夢……希望……」

魔物「ぴにゃああああああ!!」ズジンッ! ズシンッ!

ありす「この前みたいに距離を取られるわけにはいきません。まずは動きを止めないと……魔法の杖よ!」ジャキンッ!

ありす「ストロベリーショット!」ボボボボボンッ!

文香「イチゴの……爆弾でしょうか……?」

ボボンッ! ボボンッ!

魔物「ぴにゃ?」

ゆっこ「あまり効果がなさそうですね……」

ありす「くっ、最近流行の魔法少女アニメを見て真似をしてみましたが、やっぱりもう少し練習しないと……!」タッタッタッタッ!

魔物「ぴにゃあああああ……!」ズゴゴゴゴゴゴゴッ!!

ゆっこ「破壊光線ですよ! シールドで防いでください!」

ズドドドドドドドドドッ!!

ありす「シールド……!」サッ!

ドガアアアアアアンッ!!!!

ありす「くううううううっ!?」

文香「ありすちゃん……!」

礼子「無理よ、あんな小さい子が……」

ゆっこ「このままじゃピンチですよ、ありすちゃん!」

ありす「まだ、諦めません……魔法少女ですから!」

ザッ!

ありす「夢や、希望を……意味の無い物だと、いつか無くなる物だと諦める……私にはそんなことは出来ません! だって、今を輝きたいって思う気持ちは、今しかないから!」

礼子「!!」

ありす「私はあんな魔物にやられません。ちゃんとやっつけて、またPさんと次のお仕事をするんです。アイドルですから!」

文香「ありすちゃん……」

礼子「……って」

ゆっこ「ん?」

礼子「……頑張って、頑張って……!」

ありす「……はい!」

パアアアアアアアッ!!!!

礼子「え……?」

ゆっこ「な、なあああああっ!?」

ありす「あの人の体が、光って……!?」

礼子「……そう、ね。この気持ち、美しい自分になりたい、煌びやかな場所に立ちたい。昔、素直な気持ちで憧れていたこと……こんなに、昂る気持ちだったのね」ギュッ!

パアアアアアアッ!!

文香「光が……」

ゆっこ「ありすちゃんの……いえ、ありすちゃんが持っている、マジカルクローゼットに……」

ピカッ!

ありす「この感覚……この気持ち……クローゼットの中に、新しい衣装が!」サッ!

ゆっこ「もしかしてそれは、ライトプランのくせに無駄に豊富なオプション機能では……ありすちゃん! それはきっと、この人の心から作られた新しい衣装です!」

ありす「え、なんですかそれは」

ゆっこ「なんでもいいので使ってください! 新しい魔法少女の力です!」

ありす「……はい!」カチッ!

ゆっこ「テレビの前のお父さんお母さん見ていますか!? これが本作の収集アイテムですよ! さあ、お子さんの為にも今すぐ全国のおもちゃ屋さんにゴーです!」


『クール!』

『セクシー!』


ありす「ヴァリアブルパフォーマンス!」

パアアアアアアッ!!!!

シュパアアアア……

文香「あ、あれは……!?」

ゆっこ「のわああああああっ!? あ、ありすちゃんの体がみるみるうちに大きくなって……!?」


『クール・セクシー!』


ありす「魅せます、マジデ・クール・セクシー・タチバナ!」ボインッ!

礼子「あの衣装……昔、私がパーティーで見て、憧れた……ドレス……!」

ゆっこ「な、なんということでしょう……! 王国から支給されているマジカルスカウターでありすちゃんを計測していますが、どんどんパワーが上昇して……85、88、90、91……!?」

文香「……」カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ!!

ありす「……あら、暴れん坊の悪い子は、私がお仕置きしてあげないと、ね?」

ゆっこ「何か口調まで変わってるんですが……というか、マジカルスカウターの計測結果が、『167-91-62-90』!? 12歳でこれはマズイですよ! それに衣装がちょっとアレです!」

文香「……」●REC

ゆっこ「何やってるんですか?」

文香「動画に収めておこうかと……」

魔物「ぴにゃ?」

ありす「ユッコちゃん? あの子、逃げられないように何とかできないかしら?」

ゆっこ「あ、はい。ただいま……サイキック金縛り!」ビビビビッ!

魔物「ぴっ!?」ギシッ!

ゆっこ「抑えましたよ! これで霧になって逃げられることはないです!」グググッ!

ありす「うふっ……それじゃあ、私の輝き……みせてあげるわ!」ザッ!

パアアアアアアアアッ!!!!

ありす「シャイン・セクシーダイナマイト!!」カッ!

ゆっこ(ダサい)

文香(ダサい)


魔物「ぴっ――」

ドガアアアアアアアアアアンッ!!!!

ゆっこ「あ、なんか爆発しましたね」

魔物「ぴにゃあああああ……」シュウウウウウウウ……

ありす「ふふ……私の輝きで、浄化完了……ね」

パアアアアアッ!

ジャラッ……

ゆっこ「えええええ浄化された……まあ、いいです。スタージュエル回収しておきませんと……」フワフワ

文香「何とか……なりましたね……」

礼子「これが、魔法少女……」

パアアアアアアッ!!

ありす「ふぅ……なんだか疲れる変身でした」タタタタッ

ゆっこ「あ、戻った。見た目も元のありすちゃんですね」

文香「はい……やはり、ありすちゃんはこのままのほうが……」ナデナデナデナデ

ありす「ちょっ、や、やめてください……」

ゆっこ「まあまあ、とりあえず無事に終わったことですし、結界が消える前にユッコたちもここから離れておきましょうか」

ありす「そうですね。Pさんも心配しているでしょうし。行きましょうか、高橋さん」

礼子「え、ええ……」


……
…………

――大田区(大通り)

P「ああよかった、ありす。怪我はないか、具合の悪いところは?」

ありす「大丈夫です。文香さんに見つけて頂いて、一緒に逃げてましたから」

文香「すみません……手分けしてありすちゃんを探していましたのに……連絡をするのが、遅くなって……」

P「いや、見つかって無事ならそれでいいんだ。文香が探しにいった先にありすがいてくれて、本当に良かった」

文香「はい……」

ありす「それに私は、高橋さんと一緒に逃げていたので大丈夫でしたから」

P「高橋さん?」

ありす「こちらの女性です。少し前に、知り合った方ですが」

礼子「どうも……」

P「……」ティィィィィンッ!!

ありす(あ、なんか閃いた顔ですね、これは)

文香「それにしても……これでは、お仕事どころではありませんね……」

P「ん、ああ……ホテルが崩れて、瓦礫で近くの道路も使えなくなったみたいだ。怪我をした人もいるし……今回の仕事は、また日を改めて撮り直しだな」

ありす「はい、仕方がありません。だけど、また撮ればいいですから……次も頑張りましょう」

P「そうだな。今日はこんなことになって残念だけど……次も、頑張ろう」

ありす「はいっ」


……
…………

――数日後、事務所

『瓦礫の撤去作業が完了し、破損した道路の修復作業の完了については――』

ありす「道路も、ニュースの様子ですともう少しで使えるようになりそうですね」ピッ!

文香「はい……元通りになるのであれば、よかったです」

ありす「それにしても……このマジカルクローゼット、あんなことができたんですね」

ゆっこ「そうみたいですね。ユッコもマニュアルを読み直して気付きましたが、他の衣装を組み合わせることで別の姿になれるとは……」フワフワ

ありす「このセクシーの衣装、礼子さんから頂いた力……これも、1つの奇跡なのかもしれませんね」カチッ!

ガチャッ

礼子「あら、私がどうかしたのかしら?」

ありす「あ、礼子さん。Pさんとの打ち合わせ、終わったんですか?」

礼子「ええ、ついさっき終わったわ。彼、買い出しに外に出て行ったけれど……」

文香「お昼……まだ済ませていなかったと、言ってましたから……」

ありす「礼子さんから頂いたこの衣装、どうしようかと思いまして」

礼子「あら? いいのよ、ありすちゃんが使って。私は……そうね、思い出としては大切なものだけれど……今があるもの」

ありす「アイドルの話、すぐに決めましたね」

礼子「この歳からアイドルっていうのも、少し考えたけれど……輝ける場所に、自分を立たせることが出来るチャンスがあるなら、それを目指してみてもいいかと思って、ね?」

ゆっこ「文香さんに続いて礼子さんも事務所に所属して、ありすちゃんも大きな後輩が増えましたね」

ありす「なんだか複雑ですね」

礼子「あら、そういえば私は後輩ってことになるのね。それじゃあ……魔法少女の先輩? よろしくね」

ありす「あっ、ま、魔法少女のお話は、Pさんの前では……」

礼子「ふふっ、分かっているわ。そこの小さい妖精さんのことも、ね?」

ゆっこ「さすらいの美少女妖精のユッコです! よろしくお願いしますね!」

文香「いま……お茶を用意しますね……」

礼子「それなら私も手伝うわ。給湯室、勝手も覚えておきたいから」

ゆっこ「それじゃユッコはムムムムーンにでも……」ヒューン

ありす「捕まらないように気を付けてくださいよ」

ゆっこ「はーい。それにしても、結界といい魔物の変化といい、どうなっているのやら……」ブツブツ

ありす「まったく、妖精なのに変な遊びばっかり覚えて……まあ、個人の自由ですけど。それにしても、事務所も礼子さんが増えて……」

ありす(まさか、これから魔法少女を続けていくと、文香さんや礼子さんみたいに事務所にアイドルが増えたり……)


ありす「なんて、そんなことばっかり続くわけないですよね。多分……たぶん」


つづく


……
…………

『次回予告!』


幸子「フフーン! カワイイボクと一緒に仕事できるなんて、あなたはラッキーな人ですね!」

ありす「なんですかあなた。突然変なことを喚いて」

美穂「ご、ゴメンね? 幸子ちゃん、いつもこんな感じだから……」


――別の事務所のアイドルと仕事をすることになったありす。


幸子「カワイイボクなら、遊園地の取材も可愛く魅力のある内容になりますからね!」

文香「ジェットコースター……乗るのは……乗らなければ、ならないのですか……」ガクガクブルブル

美穂「だ、大丈夫っ! 私もちょっと、怖いけど……」

ありす「最新の施設、ジェットコースター……嫌な予感がしますね」


――新しい仕事で交流を深めていく4人。


幸子「ひぎいいいいいいいいいいいっ!!!!!」

美穂「きゃあああああああああっ!」

文香「」(白目)

ありす「文香さん、ジェットコースターなんですから気絶してないで反応してください! 撮り直しになりますよ! 文香さん!」


ゆっこ「自分に足りないもの、ですか?」

ありす「はい。いまの私に、アイドルとして足りない何か……幸子さんと、美穂さんを見ていると、思うところがあって……」

ゆっこ「芸人魂ですか?」

ありす「いえ、それは違いますね」


――ありすの中で見つけた、自分に足りないものとは……!


『第3話 キュートでカワイイ、タチバナです』


ありす「手に入れた衣装、単品でも使えるんですか?」

ゆっこ「マニュアルに書いてましたけど、ベースの属性衣装を使わなかったら出来るみたいですよ」


『次回もお楽しみに!』


――
――――

ちゃんとありすに魔法少女やらせたいと思っていたんですが、何か結局頑張れなくなりそうなんで難しいです。

HTML化依頼出して終了。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom