明「トレーナー4姉妹の中で地味なんです」あい「ほう」ジュルリ (13)

(事務所)

明(トレーナー・三女)「…」フゥ

あい「…」

あい「何を仏頂面をしているんだい。明?」ポンッ

明「ピャーッ!?」ビクゥ!

あい「フフッ。随分な驚きようだ」

明「び、びっくりした…驚かさないでくださいよ! あいさん!」カッ!

あい「すまない。驚かせるつもりはなかったんだが…それより何か悩んでいたみたいだね」

明「い、いえ…その…たいしたことではありませんから」

あい「ほう。私なんかには話したくないと」

明「違いますよ!? そ、そうではなくてですね…!」アタフタ

あい「ふふふ。冗談だよ」ニコリ

明「…あいさんは意地悪ですね」ムス-

あい「私の前で溜息なんかをつくからだよ。さ、コーヒーを淹れてあげよう。少し待っていてくれたまえ」

明「…ありがとうございます」

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(しばらくして)

明「私。存在感が薄いんですよ」ズズズ

あい「どういう意味だい?」

明「言葉の意味通りです。この事務所で『トレーナー』と聞いたらあいさんは真っ先に誰を思い浮かべますか?」

あい「明」

明「え?」

あい「明」

明「お、お世辞ですよね?」

あい「明」

明「あ、ありがとうございます…おまけに即答で…///」カァァァ

あい「お礼を言われるようなことじゃないと思うが」フフフ

明「返答が予想外だったもので…あいさんってそうやって女の子をたぶらかしてるんですね」

あい「人聞きが悪いな。本音だよ」

明「だから照れますってば…///」カァァァ

あい「それで。続きはなんだい?」

明「は、はい。あいさんは違いましたが、トレーナーと聞いて私を思い浮かべる人ははっきり言って少ないのです!」カッ!

あい「どうしてわかるんだい?」

明「だって考えてみてください。まず麗お姉ちゃん(マスタートレーナー)は『地獄のレッスン』があるので忘れたくても忘れられない人です!」

あい「ああ。確かに」

明「次に聖お姉ちゃん(ベテラントレーナー)は普段の指導と性格が厳しく印象に強く残ります。あの人はレッスンでも1番怒鳴りますから!」

あい「そうだな」

明「そして最後に慶(ルーキートレーナー)です! あの子は甘っちょろくて皆さんにレッスンが安パイだと思われている上にやたら可愛がられているのです! 存在感があります!」

あい「私もこの前ご飯を奢ってあげたよ」

明「そういうところです! 甘やかさないでください! 懐いたらどうするんですか!」カッ!

あい「猫扱いかい」

明「とにかくです。3人とも裏方役のくせに濃いんです! ウスターソースでひたひたにしたコロッケのように濃いんです!」

あい「それは否定しないが…」

明「それに比べて私は…いいところも個性もありませんし…」

あい「…」

明「どうして存在感がないんだろう…プロデューサーさんにもどうせこのままスルーされちゃうんだ…」シュ-ン

あい「ああ可愛い」ボソリ

明「何か言いました?」

あい「何も? それはさておき。明。キミは自意識過剰だね」

明「自意識過剰?」

あい「要は他人の評価や他人の目を過剰に気にしすぎている状態のことだよ」

あい「他者からどう思われているかを気にすることは悪いことじゃない。だが、気にしすぎてもいけないんだ」

明「わ、私、自意識過剰なんかじゃ…」

あい「自意識過剰は『自信のなさ』に繋がっている場合が多い。キミの言動はまさしくその通りじゃないか」

明「…」

明「そうかもしれません」ズ-ン

あい「落ち込むことはないさ。まず、私のように明のことをきちんと見ている人間のことを考えるといい。明の存在感は決して薄くないんだよ」

明「あいさん…」

明「でも、私にいいところなんて…」

あい「いやあるさ。まず美人で言葉遣いも丁寧だろう。私服も口調も清楚系なのに中身はがっつり体育会系というギャップが魅力的だ。恥ずかしがり屋なのもどストライクだよ。ついでに言えば水泳の指導をするくせにカナヅチという属性まで付いてるなんて隙だらけのくせに隙がない。胸も大きい。いいところがないどころか最高の塊で」ペラペラペラ

明「ん?」

あい「おっと…今のは忘れてくれ。何でもない」コホン

明「…」

あい「…」ジュルリ

明「よだれが垂れてるゥー!」ガ-ン!

あい「垂れてない垂れてない。ははは。安心したまえ。さあおいで」

明「おいでじゃないですよ!? おいでに乗ったら捕食されるじゃないですか!? 美味しく食べられちゃうじゃないですか!?」

あい「安心したまえ!」カッ!

明「何をですか!?」

あい「私は女性もいけるクチなんだよ!」バ-ン!

明「何も安心できませんよ!? 最悪のタイミングでのカミングアウトじゃないですか!?」

あい「…」シュ-ン

明「…?」

あい「ああ…やはり私は異常な人間なんだろうか…駄目だ…明にまで拒否されるとは…もう…何も信じられない…」ガクッ

明「!」

明「(ど、どうしよう…! 私の何気ないツッコミがあいさんを傷付けてしまった…! と、とにかく…慰めないと…!)」

明「い、異常なんかじゃないと思いますよ!」カッ!

あい「…本当かい?」

明「は、はい!」

あい「明は同性愛者も受け入れると?」

明「も、もちろんです!」

あい「私のことを嫌わないと?」

明「当たり前です! 人間として尊敬していますから!」カッ!

あい「私はOKだと?」

明「OKです!」カッ!

あい「よし。ならば何も問題はない」ガシ-

明「グァァァ! 騙しやがりましたねッ!」

あい「騙される方が悪い。さて、まずは顎クイか? それとも壁ドンが好みか?」クイ-

明「言いながらもう顎クイしてるじゃないですか! ていうか、顔近っ!?」

あい「よし…いくぞ♪」ズイッ

明「待て待て待て待てや! 待て待ってください馬鹿野郎!? ここで何をするつもりですか! 唇を近づけて何をするつもりですか! やめてくださいよ!」ブンブンブン!

あい「そうか…明は嫌なのか」

明「は、はい。やめてくれるんですね! わかってくれて嬉しいです!」

あい「ホテルでするのが好みとは欲張りだな。だがいいだろう。人目を気にせず楽しもうじゃないか♪」ガシ-

明「何もわかっちゃいねえ!」

あい「何。心配することはないさ。同性愛者に偏見がないのならば堂々と2人で入っていけばいい。ははは」ガシ-

明「嫌ァァァ! この人手慣れてる! 絶対学生の頃、後輩と同級生を食い散らかしてる人です! 嫌ァァァ!!」

あい「そ…そんなことない…私だって初めてさ…」

明「…え?」

あい「…///」カァァァ

明「(ま、まさか…あいさんは本当に私のことだけを見て…)」ドキドキ

あい「本当に嫌ならはっきり言ってくれ…その方が私も気が楽だ…」

明「あ、い、いえ…その…絶対に嫌ではないですけど…駄目ではあるといいますか…」

あい「嫌ではないんだね、よしそれじゃあ行こうか。馴染みの場所があるんだ♪」ガシ-

明「こんの嘘吐き野郎! 『馴染みの場所』があるんじゃないですか! 狩場があるんじゃないですか! ちくしょー! 力が強い!」

あい「明に鍛えられた身体が役に立ったよ。ヘイタクシー!」ズリズリズリ

明「こんなことをさせるために鍛えたわけではありません! うわぁぁぁん! プロデューサーさーん! 助けてくださーい!」

バタン
ブロロロロロロロ...

イヤァァァァァァァァ!!

(お城のようなホテル)

あい「さあ、乾杯だ♪」

明「乾杯じゃないですよ! 何落ち着いているんですか!」

あい「まあまあ飲みたまえよ。ちょっと話をするだけさ。どうせ部屋にはロックがかかっていて逃がさないんだ。女子トークとやらを楽しもう」

明「この人いま逃がさないっつったぞ。私は聞き逃しませんでしたよ」

あい「ほら。キミの分のグラスだ」スッ

明「ふん。私は酔いませんからね」グビグビ

あい「ジンジャーエールで酔うも何もあるまい。いい飲みっぷりだね」

明「ツッコミ疲れて喉乾いたんですよ」プハ-

あい「そうか喉が渇いたか。私が潤してやろう」ジュルリ

明「舌を出して何をしようってんですか! 何を飲ませようってんですか!」

あい「アミラーゼ」

明「無機質な感じに言えば中和されるとでも?」

あい「まあいいじゃないか」ガシッ

明「ち、ちょっと!」

あい「なんだい?」ゴロ-

明「な、何押し倒して、抱きついてきてるんですか!」

あい「大したことじゃない。ベッドで一緒に横になるだけだよ」

明「うわ…ま、待ってくださいって…///」

あい「こっちを向いてごらん」ジー

明「うっ!」キューン

あい「何もしない何もしない。目を見つめるだけさ」ジ-

明「ま、待って…」ドキドキ

あい「安心したまえ。苦しくないようにシャツを緩めるだけさ」スッ

明「」

あい「さて…力を抜くんだ。あとは私に任せておくといい♪」

明「」

ミャァァァァァァァ///

(後日)

P「何か弁明することはあるか?」

あい「わ、私はな、何もしていないよ。ただ明と部屋に入って話をしていただけで…」

P「ははは。そんな言い訳が通用するとでも? さあ地下施設に送ってスタージュエルを発掘する肉体労働を課してやろう」ガシ-

あい「待て! 聞いてくれプロデューサーくん!」カッ!

P「辞世の句を?」

あい「違う! 私はな。これまでの人生の中で下級生や同級生はおろか、上級生にさえキャーキャー言われつつけてきたんだ。はっきり言って女子からはモテモテだ!」

P「羨ましい限りで」

あい「そのモテモテの私がだ。憧れや尊敬、嫉妬の眼差しを向けられまくってきた私がだ。生まれてこの方フラれ知らず、微笑むだけで世の中の女性を堕としてきたこの私が」
P「さっさと言え宝塚」

あい「その私が! なんと! 同い年の子から指導を受けているんだ!」カッ!

P「へー」

あい「これは大変なことだぞ」

P「知らん」

あい「『そこ違います!』『キレが悪いです!』と厳しくされるのは初めての経験だったんだよ。このシチュエーションが興奮しないわけがないだろう」フフフ

P「あいの性癖なんか知らないよ」

あい「とりあえずだな」

P「はい」

あい「明はいいぞ」グッ!

P「わかる。わかるが地下労働だ」グイ-

あい「待て待て待て待て!! 待つんだ! 私は手を出していない! まだ手を出していない!」ジタバタジタバタ

P「何を馬鹿なことを。昨日ホテルに連れ込むところを偶然タクシーの下に張り付いていたまゆが目撃していた上に、偶然タクシーに備え付けられていたマキノのカメラが捉えていたんだ。言い訳はきかんぞ!」

あい「連れ込んだのは認めるが何もしていないんだよ」

P「証拠」

あい「明に聞けばわかる」

P「…トラウマになってないかな」

あい「信用がないな。ほら、今日はレッスンが入っているだろう。私の明に会いに行こうじゃないか」

P「ふざけたことをぬかすな。俺のだ!」

あい「私のだ!」

(しばらくして)

明「さあ! 張り切っていきましょう! 1、2、3! 1、2、3!」キラキラ

柚「今日はトレーナーサンだからそんなに厳しくないと思ったのにー!」ヒ-ン!

明「ビシバシ行きますよ! 1、2、3! ターン!」

柚「ヴァァァァァ! ふくらはぎが死ぬゥ!」

P「…」

あい「ほら見たまえ。調子が良くなったみたいじゃないか♪」ウンウン

P「嫌な記憶を消すための空元気かもしれない」

あい「あのにこやかな表情を見てもそう思うかい?」

P「…」

明「あははは。キレが足りませんよー♪」ニコニコ

柚「今日のトレーナーサン怖いィィィ!」ガタガタガタ

P「本当にそう思えてきたよ」

あい「馬鹿な!」

P「地下送りは間近だな」ガシ-

あい「ま、待ちたまえ! 本当に手を出していないんだ! そもそも私からは手を出さない。むしろ手を出されるのが好みで…」

P「知らん」

明「…さっきから部屋の外で何をしているんですか」ヒョッコリ

あい「!」

P「あ、ごめん。騒がしかったな」

あい「おはよう。明。今日も帰りに2人きりでどうだい?」

明「おはようございます。東郷さん。お断りさせていただきます」

あい「!」ガ-ン!

P「ほら名前呼びから苗字呼びに変わってるじゃん! 距離を置かれてるじゃん!」

あい「…」シュ-ン

明「…」

明「まったくもう…冗談ですよ。あいさん」ハァ

あい「!」パァァァ!

P「明。昨日は何もされなかったのか?」

明「平気です。ホテルに連れ込まれて一時はどうなることかと思いましたけど。ただ私が落ち込んでいたのを見かねて相談に乗ってくれただけでした」

あい「そら見たことか!」

P「当たり前のことを偉そうにするんじゃない」

明「抵抗しなければ完全にアウトな場面もありましたけどね。無事ですよ」

P「おい」

あい「無事で何よりじゃないか」

明「あいさん。次にあんなことをしたら二度とレッスンは受け持ちませんからね?」

あい「あ、ああ。肝に命じておこう」

明「…でも、ありがとうございました。心は軽くなりましたよ♪」ニコリ

あい「!」ズキュゥゥゥゥン!

あい「お礼はいい! 結婚しよう!」バッ!

明「断ります!」

あい「!」ガ-ン!

P「ははは」

あい「…こうやって無下にされるのも悪くないな」ゾクゾク

P「何か新しい扉を開いてしまったようだ」

柚「プロデューサーサーン! そっちはどうでもいいから柚を! 柚を助けて! そろそろ脚が死」

明「さあ柚ちゃん。レッスンを再開しますよ♪」グッ!

柚「待って!?」

P「頑張れよ柚! 選挙は全投票してるからなー!」ブンブンブン!

イヤァァァァァァァァァ!!
バタン!

P「…」

あい「…さて、これで晴れて無罪放免になったわけだな」

P「そうだけど。この先も自重はしなさいよ」

あい「何をだい」

P「女遊び」

あい「女性に向けて言う言葉じゃないね」

P「当てはまるじゃないか」

あい「まあ否定はしないが」

P「…週刊誌に撮られたらせっかく努力してきたことが無駄になるんだぞ」

あい「ああ。わかっているよ。キミは相変わらずの心配性だね」

P「心配をかけないようにしてくれたらなぁ」

あい「フッ。子供扱いをされるのはむず痒いな♪」

P「嫌なら節制なさい」

あい「…嫌ではないというのに」ボソリ

P「何か言ったか?」

あい「私は両方いけるぞ!」バ-ン!

P「謎のタイミングでカミングアウトをされても反応に困るよ」

(後日)

明「…ということがあったんですよ」

美優「まあ…大変でしたね」

明「あいさん。カッコいいですけどね。それでも私は男の人が好きですし。ていうかプロデューサーさん振り向いてくれませんし。私は相変わらず存在感が薄いですし。飲んでなきゃやってられませんよちくしょう」グチグチグチグチ

美優「ふふふ。飲みすぎないように気をつけてくださいね」

明「美優さんは素敵ですよね。おしとやかで美人ですし…男だったら惚れてますよ」

美優「…そんなことありませんよ♪」

明「あーあ。私もいつか可愛さとかっこよさを両立できるようになりたいですねー」グビグビ

美優「…」

美優「(明さんって何だか可愛らしいですね…ダメ男みたいです…)」ズイッ

明「どうかしましたか?」

美優「いいえ。明さん。もう一軒行きましょう♪」ガシ-

明「あの。終電が」

美優「大丈夫です。私の家に泊まっていけばいいですから…♪」ジュルリ

明「ちょ」

美優「ふふふ…♪」ヒック

明「」

ミャァァァァァァァァァッ///

【明の個性: やたら同性に好かれる】

終わり

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