凛「プロデューサーはだらしないなぁ」 (49)

あい「やぁ、おはよう」

凛「あいさんおはよう」

あい「おや?シャンプー変えたのかい?」

凛「え、うん、変えたけど……どうして分かったの?」

あい「分からないわけないだろ?こんなに甘くて良い匂いを振り撒いてたらね」

凛「……ッ///」ドキッ

あい「じゃあ、私はレッスンに行ってくるよ」ガチャ

奈緒「あいさんカッコいいなぁ」

凛「な、奈緒」

奈緒「さすがにプロデューサー大好きな凛でもドキッてしただろ」

凛「そ、そんなこと……」

奈緒「気にすんなよ!アタシもあいさんに『髪切ったかい?カワイイよ』って言われてドキドキしたからさ」

凛「あいさん、なんであんなに王子様みたいに振る舞えるんだろ……クールだし綺麗だし」

奈緒「本当にな……それに比べて……」

P「んがー……んがー……」

奈緒「いびきかいてるし……」

P「んがッ……やべ……ヨダレが……」ガタッ

凛「はぁ……」

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P「ん?凛に奈緒、来てたのか」

奈緒「1時間前から来てたよ!!」

P「1時間前?俺、そんなに寝てたのか……」ポリポリ

凛「プロデューサー寝癖ひどいよ」

P「寝癖?あー……」クシャクシャ

凛「良い大人なんだから身嗜みくらいしっかりしてよ……」

奈緒「凛の言う通りだぞ!ネクタイもしっかり締めてないし、なんで片方だけ袖捲ってるんだよ」

P「まぁまぁ、事務所に居るときくらい良いじゃないか」

凛・奈緒「「はぁ……」」

P「すっげぇ喉かわいた……冷蔵庫にお茶が……」

凛「シャツ出てるし……」

奈緒「本当にだらしないな……」


―――
――

凛「って事があったんだ」

みく「確かにPチャンはだらしないにゃ」

まゆ「まゆはそんな姿も愛おしいですけどぉ?カワイイじゃないですか」

P「ちーりゆくともにみれんなどーないさおれたちだみーぼーい」クチャクチャ

みく「あれのどこがカワイイにゃ!?スルメクチャクチャさせて渋い歌をうたってもまったくきまってないにゃ!!」

まゆ「そう?まゆは今すぐ抱き締めて撫でてあげたいけれど……」

凛「みく……まゆに何を言ったって無駄だよ……」

P「あースルメ食い過ぎて顎いてぇ……」クチャクチャ

みく「フシャー!!みくがPチャンに一言いうにゃ!!」

P「スルメ食い過ぎて顎痛いからみくにゃんのファンやめまーす」クチャクチャ

みく「貴様ァ!自堕落も大概にしろぉ!!」

凛(プロデューサー……前はもうちょっとしっかりしてかっこ良かったんだけどなぁ……)

ガチャ

あい「やぁ、みんなおはよう」

凛「あ、あいさんおはよう」

まゆ「おはようございます」

P「あいちゃんおはよー」クチャクチャ

凛・まゆ「「!?」」

あい「ぴ、Pさん……みんなの前であいちゃんは……よしてくれないか///」

P「なんで?」クチャクチャ

みく「クチャクチャすんの止めろ!話を聞けぇ!!」

P「前川うるさーい」クチャクチャ

みく「おのれぇ!言うに事欠いてうるさいとは何事か!!この前川がそのネジ曲がった根性叩き直してくれるわぁ」

凛「あ、あいさん、プロデューサーにあいちゃんって呼ばれてるの!?」

あい「あ、まぁ、ね……///」

まゆ「…………」グギギ

凛「プロデューサーの方が歳上だからおかしいって事は無いけど……なんかそんなイメージが……」

あい「まぁ……その……私からそう呼んでほしいと頼んだんだ///」

凛「え、本当!?」

まゆ「…………」ギリギリ

あい「あ、ああ……とある切っ掛けがあってね……その、あまり言うのは憚られるが……Pさんに……その惚れてしまって///」

凛(クールでカッコいいあいさんが乙女の顔になってる!?)

まゆ「」プッチン

P「おらぁ!鮭とば食え前川!!」グリグリ

みく「や、やめるにゃ!!セクハラにゃパワハラにゃ!!」

P「うっせぇ!ファンやめるぞ!!」グリグリ

みく「誰か助けてにゃーー!!」

凛「でも……最近のプロデューサーはだらしなくてカッコ悪いのに……」

あい「彼にとって事務所は憩いの場だから気を抜いてるのさ。それに、彼は私達に何か起こった時に臆面もなく身を呈して守ってくれる最高にカッコいい男性だよ」

凛「そうなのかな……」

まゆ(まゆノートにあいさんの名前を追加しないと……うふふふふあははははは!!)

あい「そうだね……出来れば私の胸にとどめて起きたかったけど、私が惚れた男をとやかく言われるのは癪だしあの時の事を話そうかな」

みく「Pチャン!!女の子に筋肉バスターはだめにゃ!!」

P「筋肉バスターをさせてくれないみくにゃんのファンやめます」メキメキ

みく「に゙ゃーーーーー!!」


―――
――

P「首痛い……」

あい「デスクワークのやり過ぎかい?」

P「んや……仕事を速攻で終わらせてソファの肘掛けに頭乗せてゲームしてたら寝落ちしちまってさ……」

あい「はぁ……しっかり仕事を終わらせたところは評価するけどね……最近の君はちょっと仕事以外に対する態度がだらしないんじゃないかい?」

P「そう?」

あい「いくら装っても普段のだらしない態度は見えるものだよ?」

P「うーん……でも、俺はあいさんみたいにキリッとしたタイプじゃないしなぁ」

あい「仮にも私のプロデューサーなんだからキリッとしてほしいね」

P「まぁ、心掛けますよ」

あい「じゃあ、裏返しに着たジャケットを直すところから始めようか?」

P「おっ、気付かなかった」

あい「はぁ……」

―― テレビ局スタジオ ――

AD「CGプロの東郷あいさん入りまーす」

あい「やぁ、皆さんよろしくね」

キャーアイサンダイテー コッチミテー

番組P「あいちゃん今日もイケメンだねぇ」

P「そっすねぇ」

番組P「観覧の女の子だけじゃなくてスタッフやタレントの子達までうっとりしてるよ」

P「あ、このクッキー食べて良いすか?」

番組P「君ねぇ……」

P「あいさんのポテンシャルはあんなもんじゃないですよー……そっすねぇ……今、企画してると噂の二時間ドラマとかに出してみればわかるんじゃないかなぁ」サクサク

番組P「なっ!?……あははは君ってヤツは……」

番組P(極秘でオーディションをしてたんだが、どこからそんな情報を……まったく、昼行灯装って大した食わせものだよ)

新人アイドル「あ、あの……東郷あいさん……」

あい「ん、どうしたんだい?」

新人アイドル「その……私、あいさんの大ファンで……憧れてて……一緒にお仕事出来て嬉しいです」

あい「私も君みたいにカワイイ子とお仕事出来て嬉しいよ。よろしくね」ニコッ

新人アイドル「は、はい///よ、よろしくお願いします///」

AD「収録始めまーす!!みなさん所定の位置に移動お願いしまーす」

D「おらぁ!!大道具いつまでチンタラやってんだよ!!早く退け」

大道具「ったく……仕方ねぇ……さっさと撤収!!」

あい「こっちだよ」

新人アイドル「あ、ありがとうございます///」

グラッ

あい(ん?今、セットが揺れた?)

司会者「今日のゲストはクールな王子様系アイドルの東郷あいさんでーす」

あい「ふふ、どうも」

司会者「男の僕でもドキッっとしちゃうほどカッコいいねぇ」

あい「そんなことないですよ?司会者さんも素敵ですよ」ニコッ

司会者「あーこのスマイル見せられたら女の子一殺だわ。そう言えば新人アイドルちゃんはあいさんのファンなんだよね」

新人アイドル「は、はい!!す、すごくスマートでクールでかっこよくて」

あい「君みたいにカワイイ子にそう言ってもらえて私は幸せだよ。ありがとう」ニコッ

新人アイドル「ひゃ、ひゃい///」

司会者「顔真っ赤だよー?」

アハハハハハ

番組P「やっぱりあいちゃんがいると画が映えるなぁ」

P「そっすねぇ」サクサク

グラッ

P(ん?あのセット揺れてね?)

司会者「じゃあ、ゲストさんのプロフィール紹介いきましょー!新人アイドルちゃんよろしくー」

新人アイドル「はい!!」

グラッ

セット「もう、むーりぃー……」

あい「危ないッ!!」

新人アイドル「えっ!?」

バターンッ

司会者「うわっ!?」

D「カメラ止めろー!!」

番組P「出演者に怪我ないか確かめろ!!早く、セットどかせ!!」

大道具「くそッ!!やっぱりセットの補強が……」

番組P「Pくん!あいちゃんの……Pくん?」

あい(くそ……せめて女の子だけでも巻き込まないようにしようと思ったのに……)

ポタッポタッ

あい「ん……Pくん!?」

P「大丈夫ー?」ポタッポタッ

あい「わ、私は大丈夫だけどPくん……頭から血が」

P「お、本当だ!道理で痛いはずだわ。それよりセット支えるのキツいからその気絶してる女の子連れてはやく離れてくんね?」ポタッポタッ

あい「わ、分かった」

P「あ、そうそう……お前はプロなんだから平然としてろ。その狼狽えた表情はみんなに見せるな。しっかり王子様しろよ」ポタッポタッ

あい「……分かった」

AD「おーい!あいさん無事だぞ!!早くセット持ち上げろ!!」

番組P「Pくん!!」

P「いやぁ、ビックリしましたねぇ」

番組P「君、頭から血が!?すまない……大道具を急かしたからセットの安全確認を疎かにしてしまったようだ……私の責任だ」

P「まぁまぁ、幸い演者に怪我人は出なかったし誰にでもミスはあるんすから気にしないでくださいよ」

番組P「君が怪我してるし君がもしセットに飛び込んで支えなかったらあいちゃんが怪我をしていた……あいちゃん……危ない目に合わせてすまない……」

あい「気にしないでください。自分から彼女を庇ったんですからむしろ自分から危険に飛び込んだんですよ」ニコッ

番組P「申し訳ない!!」

P「やだなぁ……頭あげてくださいよ」

番組P「しかし、私の気がおさまらない……」

P「そうだなぁ……じゃあ、美味しい焼肉奢ってくれたら良いっすよ。俺とあいさんに」

番組P「もちろんご馳走しよう。後日、正式に謝罪を……」

P「いやいや、けっこうですよ。僕が新人の頃、番組Pさんに迷惑かけましたんでこれでイーブンって事で」

番組P「本当にすまなかった……そうだ!救急車を」

P「大丈夫大丈夫!大袈裟に出血してますけど軽く切っただけだと思うんで……あ、タオルと楽屋しばらく使わせてください」

番組P「ああ、使ってくれ。今日は本当にすまなかった」

P「どうもです。じゃあ、あいさん行こうか」

あい「Pくん……本当に救急車呼ばなくても良いのかい?」

P「険しい顔してるよーまだ、涼しい顔してなさい。もう、王者の貫禄たっぷりで堂々とねー」

―― 楽屋 ――

P「カァー……なんか疲れた……」

あい「…………」ブルッ

P「あいさん、どうしたの?」

あい「ははッ……Pくんが助けてくれなかったかと思うと……今さら震えてきてね」

P「君も何だかんだ女の子だなぁ……まぁ、安心しなよ」

あい「……ふふ、こんな時でも君らしさは崩れないね。尊敬に値するよ」

P「そう言えば、あの時のあいさんの怯えっぷりは少女だったなぁ……あいさんってよりあいちゃんだったね」

あい「し、仕方ないだろ!……こ、怖かったんだから」

P「ハイハイ、そうだね」ナデナデ

あい「あ……///」

P「ふぃー……一時間くらいサボってこうか」グデン

あい(は、始めて撫でられた……それに、セットを支えてた時のPくん……男らしいキリッとした顔してたな……)

あい「なぁ、Pく……さん」

P「いきなりさん付けとはどんな心境の変化?」ゴロンゴロン

あい「あ、いや、何となくだよ……それで、なんで君はあの場面で飛び出す事が出来たんだい?」

P「あいさんがあの女の子を守ると思ったから俺が君を守らないとなぁと思ってさー」ゴロンゴロン

あい「……すまない。その結果、Pさんに怪我をさせてしまった」

P「プロデューサーってもさ……やれることには限界があって結局は君達自身の力なわけじゃん?それがなーんか歯痒くてもっと俺に出来る事はないかとこれでも常日頃探してるわけですよ。未だにこれだ!!って事が見つからないのがもどかしくて、でもうじうじすんのも性に合わないしだったら出来る事を全部やっちまおうとねー今回もその思考が働いた結果ですわ」

あい(臆面も出さずにそんな事を考えてたのか……それを咄嗟に実行出来るなんて……ふふ、カッコいいなぁ。ズルいよ?そんなギャップ見せられたらさ)


―――
――

あい「それから彼を見る目が変わってね……後からあの時に彼に惚れてたんだと気付いたんだ。『俺が君を守らないと』なんて気取らず言える男性はなかなかいないよ?」

凛「プロデューサー……私にそんな面見せてくれた事ないや……」

まゆ「Pさぁん!!もし、まゆが危険な目に合ったら身を呈して守ってくれますか!?」

P「いいともー」

みく「」チーン

まゆ「うふ、うふふ///」

凛「……まゆ」

P「さぁて、んじゃ行きますか凛ちゃん」

凛「う、うん」

P「あ、みく……」

みく「にゃ、にゃんですか」

P「鮭とば食えよ」

みく「みくが何したにゃ……」

凛「ねぇ……プロデューサー」

P「なんざんしょ」

凛「キリッとしてみせてよ」

P「」キリッ

凛「ぷっ……」

P「笑うなよー」

凛「プロデューサーにキリッとした顔は似合わないね」

P「そっかなー?」

凛「そうだよ」

P「まぁ、疲れちゃうしなぁ」

凛「ねぇ、プロデューサー」

P「なに?」

凛「もし、私になんかあったらさ守ってくれる?」

P「もちろん。死屍累々踏み越えて守ってあげますとも」

凛「確かに臆面もなく言えちゃうところはカッコいいかな」ボソッ

P「なに?」

凛「なんでもないよ。それより、スーツの襟立ってるよ?」

P「お、本当だ」

凛「プロデューサーはだらしないなぁ」

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