白坂小梅「幽霊だって休みたい」 (55)

 モバマスより白坂小梅や小日向美穂(たぬき)のSSです。
 独自解釈、ファンタジー要素、一部アイドルの人外設定などありますためご注意ください。


 前作です↓
海老原菜帆「たぬき語レッスン初級編」
海老原菜帆「たぬき語レッスン初級編」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1522942241/)

 最初のです↓
小日向美穂「こひなたぬき」
小日向美穂「こひなたぬき」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1508431385/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1523604908


 やめて……!
 シンデレラガール総選挙の特殊能力で、クレジットカードを焼き払われたら、リボ払いで繋がってるプロデューサーさんの口座まで燃え尽きちゃう……!

 お願い、死なないでプロデューサーさん……。あなたが今ここで倒れたら、美穂ちゃん達との約束はどうなっちゃう、の……?
 残高はまだ残ってる。ここを耐えれば、ちひろさんに勝てる、から……。

 次回、「プロデューサーさん死す」。ガチャスタンバイ……!


霊P『』フワフワ

小梅「わぁ……」

霊P『』ユラユラ

小梅「今日のプロデューサーさん……いつもよりイケてる……ね」

霊P『…………』

霊P『………………え何、俺死んだ?』

小梅「たぶん……」


  ―― 事務所


P「」チーン

美穂「うっうっ……ひっぐ……ぐしゅ……っ」

周子「まさか、でしょ……」

美嘉「嘘、嘘そんな、そんなことって……!」

楓「…………」

ちひろ「私が来た頃には、もう倒れていて……」

芳乃「…………ふむー」

芳乃「おやー」ピクッ

  ガチャ

小梅「みんな……見つけてきた、よ……」

霊P『うわほんとにぶっ倒れてる!!』


美穂「プロデューサーさん!! プロデューサーさんですか!?」バッ

美嘉「どこ!? どこにいるの小梅ちゃん!!」ババッ

霊P『おいおい二人とも落ち着……あ、見えてないし聞こえてないのか……』

小梅「私の隣にいる……よ。二人とも落ち着けって、言ってる……」

美穂「うぅゔ……プロ゙デューサーさぁ゙ん゙……」ズビズビ

美嘉「はぁぁ~~~っ……よ、良かったぁ……」

周子「散歩感覚で幽体離脱する人初めて見たわあたし……」

霊P『いやぁ俺もそんなカジュアルに抜けるとは思わなかったんだが……』

ちひろ「……あ、こっちはわずかですが脈があります!」

楓「魂が抜けたことによる、一時的な仮死状態ですね。道理でお仮死いと思いました」


霊P『そうか……俺は前日まで徹夜で働いていて』

霊P『明るくなってきたからスタドリもう一本キメるかって時に、意識を失って……』

霊P『で、気が付けばその辺ふよふよしてたんだ』


小梅「――――って、言ってる……」

美嘉「無茶しすぎでしょ……!」

周子「ふぅ……ま、でもいい薬になったんちゃう? これからはあんま根詰めちゃあかんよー」

周子(人間が幽体離脱してるってのにフツーに進行してんのもアレやけど)

美嘉「ほんとだよ……。体に戻ったらしばらく休みな?」

美穂「それでその、プロデューサーさんはちゃんと戻れるんだよね……?」

芳乃「ふむー。本人が望むのであれば、何の問題もなくー」

芳乃「そなたー、いかにー?」

霊P『そりゃもちろん今すぐにでも……って芳乃には聞こえるんだな俺の声』

芳乃「よろしいのですねー? それでは、いざー」


芳乃「ほっ」ガシッ

霊P『ぐえっ』

芳乃「はいなー」グイーン

霊P『あがががががが』

芳乃「そいやーっ」ダンクシュート

霊P『アバーッ!』ズボーッ

P「…………」

P「はっ!?」ガバッ

美穂「プロデューサーさんっ!」パァッ

周子「戻った!」

P「はぁ……ふぅ……うっ……!?」ビクンッ


P「うぐぐぐぐぐ……!?」ググググ

美穂「ぷ、プロデューサーさん!?」


P「ウボアー!!」

霊P『グワーーーーッ!?』シュポーーーーンッ


P「」チーン

美嘉「プロデューサーーーーーーーーーっ!!?」

周子「また抜けたの!? ウソやん!?」

小梅「は、弾き飛ばされ、ちゃった……」

霊P『アイエエエ……』フヨフヨ


楓「これは……なるほど」

楓「体さんの方のお話も聞かないといけませんね?」

美嘉「か、体の話って……」

芳乃「ふむー……少々お待ちくださいませー」ミミヨセ

体P「」ピクッピクッ

芳乃「ほー」

体P「」ドクンドクン

芳乃「それはー、なんとー」

美穂「わ、わかるの、芳乃ちゃん……?」

芳乃「意志なき体とて、自然の一部なればー。命の脈動に耳を傾ければ、多少はー」


芳乃「体のそなたは、『働き過ぎでうんざりする』と申しておりましてー」

霊P『えぇ……』


芳乃「『そもそもちゃんとベッドで寝たのいつ以来だ』とー……」

芳乃「『食事も三食不規則だし、ひどい時はスタドリだけで済ますし』……」

芳乃「『どうして自分の体を大事にできないんだ。もうやってられん』とのことでしてー」

霊P『なんで俺自分の体に説教喰らってんだろ……』

美穂「えと、プロデューサーさんは何て?」

霊P『体に戻る為にも最善の……って聞こえないのか』

小梅「ちょっと、不便……だね」


小梅「そうだ……プロデューサーさん。私の中に、入ってきていいよ……?」

霊P『は? 中に入るって、それひょっとして……』

小梅「うん……憑依……」


美嘉「そだね。一回プロデューサーとも話がしたいし」

美穂「小梅ちゃんさえ良ければ、やってくれるかな……?」

霊P『すまん、いけそうなら頼む』

小梅「ん……い、いいよ……おいで……♡」シュルル

霊P『妖しい目付きで上着はだけるのやめなさい』

霊P『これは……普通に重なればいいのか? ん? 口の中?』

小梅「あ……違う、もうちょっと上……」

霊P『こう? ここか?』

小梅「そう……うん、そこ……♡ そのまま、ずぶぅっ、て……♡」

小梅「あ、あ、あっ♡ 入ってくるぅぅ……っ♡」

霊P『妖しい雰囲気で実況するのやめなさい!』

美穂「みっ美嘉ちゃんっ、どうして目隠しするの!? なんにも見えないよぉ!」

美嘉「ご、ごめんなんとなく……///」

周子「危うく犯罪沙汰やな」


 ヌポンッ


P小梅「はっ……!」

美穂「小梅ちゃん……じゃない?」

芳乃「成功したようでしてー」

P小梅「肩凝りが……無い」

P小梅「疲れ目でも……ない」

P小梅「眠気も頭痛もほとんど無い……!」

周子「どんだけギリギリだったの元の体」

P小梅「それと…………」ビクッ

美穂「どうしたんですか?」

P小梅「いや……な、何でもない」

P小梅(見えちゃダメっぽいものが普通に見える……)ゾワワワワワ

美穂の後ろにいる落ち武者(イェーイ)ブイブイ


周子「ともかく、話戻そっか」

P小梅「そうだな。芳乃、どうすればいいだろうか」

美穂(小梅ちゃんの声と体でこの口調なの、変な気分だなぁ……)

芳乃「ふむー」

芳乃「『ちゃんと健康を大事にする』と体さんに納得させねばならぬかとー」

楓「この場合……休み方を覚える、といったところかしら?」

ちひろ「……仕事は溜まってるんですけどね?」ズモモ

美嘉「まあまあちひろさん、そう言ってる場合でもないっぽいし……」

芳乃「しかしながらー、体さんも相当にうっぷんが溜まっておりましてー」

芳乃「ただの休みっぷりでは納得しないものかとー」

P小梅「なら……?」

芳乃「かくなるうえはー……」



芳乃「だらけ仙人殿に、教えを乞うほかないでしょー」


美穂「だ、だらけ仙人?」

周子「いかにもだらけのプロって感じの肩書きだけど……」

芳乃「だらけ仙人殿は、名の通り怠惰の道を極めし者ゆえー」

芳乃「休憩、安息、脱力ー……全てにおいて達人の域にありましてー」

芳乃「かの者よりだらけ道を教わりしそなたなればー、体さんも納得することでしょー」

P小梅「とはいえ、それで怠け癖がついちゃうと困るんだが……」

周子「今が働きすぎなんだから、プラマイゼロで丁度いいんちゃう?」

P小梅「そうかなぁ」

美穂「小梅ちゃ……じゃなくてプロデューサーさん、他に手はありませんよっ」

P小梅「……かもな。で芳乃、そのだらけ仙人とやらは一体どんな深山幽谷に……?」

芳乃「ここから西へ三駅の住宅街でしてー」

P小梅「近い!!」


霊小梅(それじゃ……行こうか、プロデューサーさん……)

P小梅(直接脳内に……!?)

P小梅「とにかくわかった。みんな、心配かけてすまない」

周子「この体どうすんの? ほっぽっとくわけにもいかないでしょ」

P小梅「うーん……仮眠室にでも放り込んでおいてくれるか? ちひろさん、いいですか?」

ちひろ「はいはい、プロダクションへの説明と今できる雑務処理ですね。わかりましたよーだ」プー

ちひろ「それと、向こう三日分の休暇申請を代わりに出しておきますから。どーぞご存分におくたばりなさってて下さいね」

P小梅「すいません、ありがとうございます」

P小梅「えっと……それじゃ小梅に体を返すには……?」

霊小梅(そのまま……内側から、ずびゅぅって搾り出るイメージで……)

P小梅「こうか…………!」ムニュルルルル

霊小梅(そうそう、そのままそのまま…………っ)

小梅「あっ、やぁっ、出ちゃうっ♡ 出ちゃうよぉ……っ♡」

霊P『だからやめなさいってば!』シュポーンッ

小梅「ひぃうっっ♡♡」

美穂「み、美嘉ちゃ~んっ!」メカクサレ

美嘉「ごめん美穂、アンタにはまだ早いと思う……///」メカクシ

美穂「私美嘉ちゃんと同い年だよぉ!」

美穂の後ろにいる落ち武者(ヒャッハー)ブイブイ


小梅「じゃあ……行ってくる……ね」

美穂「気を付けてね……!」

芳乃「仙人殿に、よろしくお伝えくださいませー」

霊P『すまぬ……すまぬ……』

楓「これは、ちょっとした化けーションですねぇ。いってらっしゃ〜い♪」


  ―― 外


霊P『今日もまたとんでもないことになっちゃったなぁ……』

小梅「そう……だね……」ルンルン

霊P『いつもよりテンション高くない?』

小梅「ごめんなさい……不謹慎かもだけど、なんだか、ちょっとうれしくて……」

小梅「幽霊のプロデューサーさんとお散歩……楽しいなぁ……んへへぇ……」

霊P『むぅ若干複雑だがかわいいから良し』

小梅「♪」

小梅「手、つなご……? 私なら、触れる……から」

霊P『おう。わっ手冷たっ』

小梅「えへへぇ……プロデューサーさんの手も、氷みたいに冷たい……♪」キャッキャ

小梅「そうそう……この先で、あの子が待ってる、かも……」

霊P『あの子? そうか、この姿だと会話できるのか! なんかちょっと楽しみだな』


小梅「あ……いた」

霊P『…………』

霊P『あれスタープラチナじゃね?』


  ┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨ ┣¨┣¨……


小梅「ふぇへへ……むきむきで、かっこいいね……」

霊P『そりゃかっこいいよ無敵のスタプラだもん!』

霊P『って違う! マジにあれがあの子なの!? どこ行ったの本体は!?』キョロキョロ

あの子?『きさま、なぜ急に顔をそむけるのかッ! こっちを向けいッ!』

霊P『しかも初期の喋るスタプラじゃあねえかッ!!』

霊P『ってこうしちゃあいられないぜッ、小梅、ペンと色紙持ってる!?』

小梅「うん……たまたま、ある……」スチャッ

霊P『よっしゃ! あの、ファンです。サインを下さい……!』

あの子?『……』カシャッカシャッカシャッ

あの子?『!』

  ザザザーーッ ザザーッ ザザ

  バァーーーンッ

霊P『アスワン・ツェツェ・バエじゃあなくてッ!!』

小梅「エジプト……! やつはエジプトにいる……! それもアスワン付近だと限定された……ね……!」

霊P『誰だよ奴ってよォーッ! もう誰もいねーぜッ!』


小梅「あ」

小梅「ごめん、間違えちゃった……。そのひと、あの子じゃ……ないよ……」

霊P『でしょうよ!』

あの子?『……』スゥーッ

霊P『行っちまった』

小梅「少年ジャンプとビールのおつかいに行ってたみたい、だね……」

霊P『完全に最初期の悪霊扱いされてた頃のじゃん……』

霊P『ってじゃあ、本当のあの子は何してんの今』

小梅「プロデューサーさんの体が疲れてるから……いつかみたいに、代わりはできない……けど」

小梅「休んでる体を、ちゃんと見守ってくれてる、よ……えへへ」


【見張りのあの子:その1】

  ―― 仮眠室


あの子(……)ジーッ


美穂「……プロデューサーさん、大丈夫かなぁ……」

ポンッ!

美穂(狸)「ぽこん」モゾモゾ

美穂「…………」ギューッ

美穂(ほんのりあったかい……)

美穂(寂しいよ、プロデューサーさん。早く起きてください……)

美穂(あ、おヒゲがちょっと伸びてる)

美穂(良かった、ちゃんと体も生きてるってことだよね)

  ポンッ!

美穂(人)「えへへ、おヒゲざりざり……♪」ナデナデザリザリ


  ガチャ

卯月「プロデューサーさんが仮死状態ってほんとですか!?」

響子「わ、私たちに何かできることはっ!?」

幸子「ボクのカワイさを補給すれば動き出すんじゃないでしょうか? 試してみる価値はありますね!」


美穂「あっ」

卯月響子幸子「「「あっ」」」


卯月「美穂ちゃんが」

響子「プロデューサーさんに添い寝して」

幸子「ほっぺを撫でながら、顔を近付け……て……」

卯月響子幸子「「「…………///」」」

美穂「あ、あの…………ちが」

卯月響子幸子「「「お、お邪魔しましたーーーーーーっ!!」」」ダダダッ

美穂「違っこれはっ、聞いてぇ~っ!!」ダッ


P「」チーン

あの子(にぎやか)


  ―― 都内 某住宅街


小梅「着いた……」

霊P『なんかフツーのマンションだな』

小梅「うん……じゃあ、チャイム押すね……」

 ピンポーン


 ……ピンポーン

 ピンポピンポピンポーン


霊P『留守じゃね?』

小梅「ううん……絶対、いるはず……」

小梅「だらけ仙人は、絶対に家を出ないから……居留守、かな……」

霊P『あーアポ無しのチャイムは絶対に出ないタイプね……』


  ピポピポピポピポーン

小梅「気配は……あるんだけど……」

霊P『頑として出ない姿勢だなこれ』

小梅「ちょっと……待ってて、ね……」ピトー

霊P『小梅? ドアに顔くっつけて何を……』

小梅「〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓」

霊P『小梅さん!!?』

小梅「んぇへへぇ……色んな声……とか、ラップ音……とか、吹き込んでみたの……」

霊P『任意で気軽に怪奇現象起こすのマジやめて』


  ノタ ノタ ノタ…


?「んあぁ~~~い…………うるさいなぁ~…………」ガチャ

小梅「あ、仙人さん……こんにちわぁ……」

霊P『え……仙人って』


霊P『女の子じゃねーか』


?「あぁ、霊感ちびっこじゃん」

小梅「仙人さんの方が、小さい、よ……?」

?「それもそうかぁ……ていうか、今忙しいんだよねぇ」

?「もうちょっとで歴戦イビルジョーが狩れるとこなんだよー」

霊P『…………』

?「……なんか、もう一人いない?」

小梅「うん……あのね。今日は、お願いがあるんだ……」


小梅「聞いて欲しいな……仙人さん、いや……杏ちゃん」


杏「えぇ~……杏、出るべきじゃなかった気がするよ……」


【見張りのあの子:その2】


奈緒「二人とも今頃なにしてんだろーなー……」

凛「ここで待つしかないよ、私達は」

加蓮「まったく。体を大事にしろってさんざん私に言っといてこれなんだから」

凛「でも、なんとかできるみたいで良かった。プロデューサーもこれでちょっとは懲りたらいいけど」

奈緒「あの人はもっと怠けるくらいでちょうどいいんだよっ。今こうやって寝てるみたいにさ」

奈緒「……ってか今更だけど、ここにほっといて大丈夫なのかな? 仮眠室って誰でも入れるだろ?」

凛「誰かがイタズラしないかって?」

奈緒「そこまでは言わないけどさぁ、なんつーか防犯? 的な面でさ……」

加蓮「大丈夫でしょ? いつも見張ってくれてるみたいだし」

奈緒「? 見張るって誰が」

加蓮「誰ってあの子が」

奈緒「あの子ってどの…………」

奈緒「………………それひょっとして小梅がいつも言ってる」

加蓮「うん、ほらそこいるじゃん。やっほー♪」フリフリ

あの子(♡)フリフリ


奈緒「」

奈緒「てか加蓮お前、見えっ、見えっ……!?」

加蓮「うん、小梅ちゃんほどはっきりとじゃないけど」

加蓮「ほら私ちっさい頃から病院いたし、なんかそーゆーの慣れてるんだよねー」

奈緒「ま、マジかよぉ……」

加蓮「ところで……りーんー? どうして部屋の隅っこにいるのかなー?」

凛「…………………………なんでもない」

加蓮「あれぇ? 凛ってそういうのダメなタイプだったっけぇ。ねえ奈緒はどう思う?」

奈緒「どうもこうも、ひゃあっ!? 今誰かあたしの背中触ったか!?」

加蓮「あ、こらこら。あんまりイタズラしちゃダメだってばー」

凛「私ジュース買ってくる」ダッ

奈緒「あっずるいぞ凛! あたしも……って開かねぇ!?」ダダッ

凛「ジュース買うだけだから! すぐ戻るから! その子の分もちゃんとお供えしてあげるから!」ガチャガチャガチャガチャ

加蓮「……そのドア引くんじゃなくて押すんだよ?」ニヤニヤ

あの子(ウンウン)


あの子(やっぱりにぎやか。話しかけられて嬉しかった)


【見張りのあの子:その3】


藍子「わぁ、ほんとにぐっすりですね……」

未央「昏睡状態っていうのかなぁ。うーん、不思議なこともあるものですなぁ……」

茜「むむむ……!」

未央「茜ちん?」

茜「責任感ですっ!!」クワッ!

茜「思えばプロデューサーは、日頃から己の運動不足を嘆いておられましたっ!」

茜「私がもっと早くコーチになり、プロデューサーの摂生とトレーニングを手伝えていれば……っ!!」

茜「無念っ!! 日野茜、一生の不覚ですっ!!」

未央「まあまあ茜ちん、それは次への反省ってことにしてさ!」

藍子「今は、ゆっくり休ませてあげましょう?」

未央「……それにしても私、プロデューサーの寝顔って初めて見た気がするなぁ」

茜「いいですね、寝顔! グウグウって感じで!! よく寝ています!!!」

藍子「私も初めて見ました♪ あ、そうだ……撮ってみませんか?」

未央「おっ、いいねぇあーちゃん! じゃ私のスマホ使っていいよっ」

茜「記念写真ですね!!」


藍子「はい、じゃあ撮りまーすっ」

未央「いえーい!」

茜「だーっ!!」

藍子「ぱしゃりっ♪」カシャー


未央「どうどう? 寝顔with未央ちゃん&茜ちん撮れたー?」

藍子「ええ、とってもよく撮れましたよ♪」

未央「どれどれー……」

茜「賑やかな写真ですね!!」

未央「ホントだねっ! いっぱい映って……」

未央「…………いっぱい映って…………」

藍子「なんだか、みんな映りたかったみたいですねっ」

未央「」


  ギャース!!


あの子(写真、いいよね……)


  ―― マンション


杏「ふ~~ん、大変なんだねー。あ、剛刃球出た」

霊P『そうなんだよ。おっ良かったじゃんレアだぜレア』

杏「杏ガンナーだからなー。こんなことで運使いたくなかったよー」

霊P『ハンマー使えって飛鳥文化アタック超つええってマジで』


霊P『…………じゃない!! とにかくそういうことで大変なんだよ!』

杏「へぇ~~~~」

霊P『完全に聞き流しモードだこいつ!』

小梅「だから杏ちゃんに、だらけ方を教えてほしいの……」

杏「そう言ってもなー。そういうのって人に教わるものじゃないし……」

杏「なんだったらもうちょい幽霊ライフ楽しんでもいいんじゃない?」

霊P『そうもいかないんだよ、仕事あるし』

杏「ほらぁ、働く為に戻ろうとしてるんじゃん」

杏「そういうの良くないよー。もっと気楽にいこうよー」

霊P『ぐぬぬ』


小梅「でもね、杏ちゃん……」

小梅「プロデューサーさんは、ちゃんと、だらけ直そうとしてるんだよ……」

小梅「確かにお化けには学校も、試験もなんにもないし、夜は墓場で運動会だけど……」

小梅「ゲームをやったり、漫画を読んだりは、できない……から」

杏「……」

小梅「プロデューサーさんが起きたら、一緒にゲームとか、できるよ……」

小梅「悪くない取引だと思う……な……」ツンツンツン

杏「それは……ぅぁーほっぺたぷにぷにするなー」プニプニプニ

霊P『一狩り行こうぜ』キリッ

杏「うーん……もう家にも上げちゃったしなぁ……」

杏「それじゃあ、たたかうマヌカハニー一袋で手を打つよ」

霊P『よっしゃやったぜ。生き返ったらたたかう乳酸菌もおまけにつけちゃう』


杏「ただし……」

杏「だらけの道は、甘くないよ」


【見張りのあの子:その4】


芳乃「そなたーよいこだねんねするのでしてー」ポンポン

紗枝「い~まもむかしもかわりなく~♪」ポフポフ

蘭子「い、いかなる寓意を秘めし詠唱か……!?」
(訳:二人とも何してるの……?)


紗枝「せっかくやさかい、子守歌でも歌ったろかなぁ思いましてな~」

芳乃「これを機にー、十分に眠るべきなのでしてー」


紗枝「え~え~な~え~え~な~、に~んげんってえ~え~な~♪」トントン

芳乃「たのしいらいぶにーぴかぴかじゅーえーるー、そなたのかえりをまっていましてー」サスサス

紗枝「うちもかえ~ろ、おうちへかえろ~♪」ミギミミ

芳乃「でーんでーんでんぐりがえってー」ヒダリミミ

紗枝「ばいっ」

芳乃「ばいっ」

紗枝芳乃「「ばいっ♪」」


蘭子「はゎわわわわわ……///」


あの子(催眠音声だコレ)


  ―― 杏宅


杏「じゃあ、お兄さんにはこの服を着て貰うよ」バァーン

 働
 い
負た
けら


霊P『俺、幽霊なんだけど着れるの?』

霊P『着れたわ』スポッ

小梅「わぁ、似合ってる……♪」

霊P『フフフそうかな……ぐおッ!? 着た瞬間に謎の倦怠感が!?』

杏「それは杏特製のだらけ養成ギプス……どんな働き者でも、体が怠惰を求めるようにできているんだよ」

霊P『どういう仕組みだよ! くそっ何もしたくねぇ! 一日中ゲームしてぇ! ガチャ回してぇ!』

杏「目標はギプス無しにその域に到達すること……。それじゃ、いくよ」

杏「地獄のだらけ訓練……!」キラッ


【見張りのあの子:その5】


P「」チーン

美嘉「まだ戻ってない、か……」

美嘉「いい機会なのかもしれないけど、こっちは気が気じゃないっての」

P「」ガサガサ

美嘉「ってか、唇荒れてるし」

美嘉「ただでさえいつも無理してるのに……男のヒトってこういうの気にしないのかな」

美嘉「リップクリームくらい塗ればいいのに。あ、そだ」ゴソゴソ

美嘉「あった」リップクリィーム

美嘉「これくらいはしといていいよね。どーせ自分じゃやらないんだろうし……」ヌリヌリ

美嘉「よし、っと――――――」

美嘉「――――え、あれ?」

美嘉「これアタシので……今それ塗って……唇に……」

美嘉「か、か、かん、かっ、間接……っっ」


美嘉「お、落ち着け、落ち着けアタシ……っ」

美嘉「これは事故、わざとじゃない、ノーカン!」

美嘉「本人、意識なんて無いんだし……」

美嘉「…………意識無いなら、いっそ…………」チラッ

美嘉「はぁっ!? ダメダメダメ! そんなのフェアじゃないし!?」

美嘉「でも試しに……? いや試しって何!? ああでも、一瞬ちょっと、マネだけでも……?」


奏周子志希フレ「じーーーーっ」


美嘉「」

奏「気にしないで」

周子「そのまま」

志希「最後まで」

フレデリカ「続けたまへ」

美嘉「す、するかぁっ!!」


あの子(なんかくすぐったい)


  ―― 杏宅


杏「復唱! 働きたくない!」

霊P『働きたくない!』

杏「不労所得万歳!」

霊P『不労所得万歳!』

杏「口で労働意欲垂れる前と後に『働きたくない』を付けろ!」

霊P『働きたくない、イエス、働きたくない!』

杏「十分間に一回だらけ、一秒間に十回だらける!」

霊P『ぬおおー!』

杏「ひとつお手本を見せてあげるよ」グオン

霊P『なっ!? 座ったままの姿勢! 孫の手だけで棚の上のポテチを!?』

 ワーワー ドギャァン
 メメタァ ズギュゥーン


【見張りのあの子:その5】


楓「……」ガチャ

楓「……」テクテクテク

楓「……」ストン

楓「……」ジー

P「」チーン

楓「……♪」クスッ

楓「……」ナデナデ

P「」チーン

楓「……ゆっくりお休みになって下さいね」ナデナデ


あの子(意外と大人しい。何やらただならぬ空気)

楓「あなたも無理はしないでね?」

あの子(うわびっくりした)


  ―― 杏宅


 ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ・ ・ ・


杏「ふぅ……習熟したみたいだね」

霊P『こ、これが、だらけの力……?』

杏「今のお兄さんなら屍生人(ゾンビ)みたいに働くことなく、適度にだらけられると思うよ」

小梅「わぁ……プロデューサーさんの顔、いい感じにユルくなってる……」

霊P『複雑』

杏「じゃそーゆーことで……杏、疲れたし寝るよ」

杏「あ、お礼の飴待ってるからね」ポフッ

霊P『だらけ仙人……いや師匠。ありが』

杏「ぐうぐう」

霊P『はえーな寝るの!』


  ―― 仮眠室


小梅「ただいまぁ……」ガチャ

霊P『俺の体は無事――』

こずえ「らん……らん……らぁーん……」ボソボソボソ

霊P『何かよからぬことをしているーッ!?』

こずえ「こうめー……ぷろでゅーさー……おかえりー……」

霊P『た、ただいま……』

芳乃「だらけの道は修めたのでしてー?」

小梅「うん……すごかった、よ……」

霊P『今の俺なら24時間眠れる気がするぜ』


芳乃「それでは、蘇生に入るのでしてー」

芳乃「しかしながらー、ただ魂を入れるだけでは不足かとー」

霊P『マジで?』


芳乃「そなたの体からは、長く魂が抜けておりましたゆえー、生命力も落ちておりますー」

芳乃「仮死状態が長く続けばー、まことの死に繋がってしまうのでしてー」

芳乃「体を蘇らせる、相応の手段が必要となりまするー」

霊P『マジか……それは俺の力じゃどうにもできないのか?』

芳乃「ご安心なされませー。既に専門の方にお頼み申しておりますゆえー」


小梅「プロデューサー、さん……」キュッ

霊P『小梅?』

小梅「短い間だったけど……幽霊のプロデューサーさんと一緒にいられて……とっても楽しかった……」

小梅「私、忘れないね……今日のこと、プロデューサーさんのこと……」

霊P『小梅……』

霊P『…………永遠の別れっぽく言ってるけど体に戻っても普通に会えるからな?』

小梅「そうだった……んへへ」

霊P『かわいい』


芳乃「それではまずー、そなたの魂を体に入れまするー」ガシッ

霊P『ああ頼ぐえっ』

芳乃「はーっ」ブンブン

霊P『んぎぎぎぎぎぎ』

芳乃「あそーれーっ」オーバーヘッドシュート

霊P『ぬわーーーーーっ!!』ズボーッ


芳乃「続いて、体の蘇生に入りましょー」

芳乃「心臓マッサージをばー、よろしくお願いするのでしてー」


あの子?『……』ズギュン

霊P『スタプラじゃねーか!!』

あの子?『オラァッ!!』ドギュゥゥーンッ

霊P『手による心臓マッサージ!!?』ニギニギニギ


 ドク… ドク… ドクン…

 ドクンッ ドクンッ ドクンッ


  ―― 事務所


P「というわけで目覚めました」

美穂「プロデューサーさん!!」ガバッ

P「おっとっと」ダキッ

小梅「えへへ……やっぱり、生身の方がいい……ね。お肉があって……」

P「……ところでなんか唇が妙にうるおいリップなんだけど、誰かなんかした?」

美嘉「知らない」

P「美嘉?」

美嘉「知らないったら!」

周子「……ま、今後はほどほどに働いてよね。ぶっ倒れられたらみんな困るんだしさ」

P「肝に銘じます、申し訳ない」

P「じゃあ、今日のところはとりあえず帰るわ。お疲れさ……」

P「……あれ? そっちの子、見ない顔だな。迷い込んだのか? 別部署の子?」


美穂「え?」

周子「そっち誰もおらへんけど」

P「え? いや確かに、小柄な女の子が……」

P「………………」


小梅「プロデューサーさん、見えやすくなってる……ね♪」


一同「」


  ギャーーーース!!


あの子(♡)



~オワリ~


〇オマケ


P「だらけ仙人をスカウトしたい」

芳乃「難儀なことかとー」

小梅「無理だと思う……」

P「そうかなぁ。素質はあると思うんだけど」

小梅「杏ちゃんが、やりたがらない……と思う」

P「いや実はこないだ飴のお礼しに行ったついでに名刺渡したんだけどさ」

P「まあ2秒で断られたよね」

芳乃「必然なのでしてー」

芳乃「それでもなおー、かの者をあいどるにしたいと欲すならばー……」

P「おっ……何か名案が?」


芳乃「はぴはぴ仙人殿に頼むしかないのでしてー」


P「新たな仙人!?」


芳乃「はぴはぴ仙人殿は、ここより東に二駅の住宅地におりましてー」

P「何なの、東京って実は結構仙人いるの」

芳乃「いかようになさるかは、そなたにお任せいたしますー」

小梅「大変なんじゃない……かな……」

P「うーん……色々考えておこう」

芳乃「あまりご無理をなさらずー。わたくしはこれよりー、おせんべい限定たいむせーるに参りまするー」

小梅「私もそろそろ、借りてた映画観るね……」

P「ああ、お疲れさん」



P「ふぅ~……」ノビノビ

P「ほぉ~……」パキポキ

P「……よし溜まった仕事一気に片付け」

  ビキィッ!!

P「グワーッ突然謎の筋肉痛!!」


~おしまい~

 以上です。13日の金曜日なので小梅ちゃんです。
 お付き合いありがとうございました、依頼出しておきます。

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