海老原菜帆「たぬき語レッスン初級編」 (31)
モバマスより小日向美穂(たぬき)と海老原菜帆(たぬき)のゆるいSSです。
独自解釈、ファンタジー要素、一部アイドルの人外設定などありますためご注意ください。
前作です↓
アナスタシア&一ノ瀬志希「はるのうた」
アナスタシア&一ノ瀬志希「はるのうた」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1521733502/)
最初のです↓
小日向美穂「こひなたぬき」
小日向美穂「こひなたぬき」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1508431385/)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1522942241
―― 事務所
ガチャ
美穂「ただいま戻りましたー……あ、菜帆ちゃん」
菜帆「――ってなりますから~、ここはこういう意味で~」
P「ふむふむなるほど。予想以上に奥が深いな……」
美穂「……と、プロデューサーさん? 何してるんですか?」
P「おお、美穂か。おかえり。いや実はな、菜帆に頼んで……」
菜帆「たぬき語のお勉強をしてるんですよ~♪」
美穂「たぬき語の?」
P「うちって色んな子がいるだろ?」
P「たぬきにきつねにうさぎに悪魔、サンタやサンタの孫や神様っぽい何か達と別次元のグローバルさだ」
P「ここまで来ると、人間でも別種族の言葉の一つや二つは覚えないといかん気がしてな」
美穂「な、なるほど。それでたぬき語なんですね……」
P「ところが、これがものすっっっごく難しい」
P「たぬきっていつもこんな高度な言語でやり取りしてんの?」
菜帆「そんなに複雑じゃないと思うんですけどね~」
美穂「そうですよっ。基本は『ぽん』と『ぽこ』の2パターンですよ?」
美穂「尻尾の動きとか腹鼓とか、そういうのもちょっと絡んできますけど……」
P「どっちも無いからなぁ俺」
菜帆「それだと~、イントネーションや発音の強弱、あと息づかいなんかで表現するしかないかなぁ~」
菜帆「たとえば~……りぴーとあふたーみ~、『ぽこぽん』っ」
P「ぽ、ぽこぽんっ」
美穂「あ、だめですよ。二つ目の『ぽ』は強めに発音しなくちゃ」
菜帆「そうですね~。発音で細かく意味が違いますから~……」
菜帆「それだと『わかりました』じゃなくて、『知ってるがお前の態度が気に入らない』になっちゃいます~」
P「大違いだな!?」
菜帆「そうなんですよぉ。くれぐれも、公共の場では気を付けてくださいね~?」
美穂「えと、それじゃあ私に続いてくださいね。『ぽーっこ』!」
P「ぽーっこ!」
菜帆「良い感じですけど、『ぽ』の発音がくぐもり気味でしたね~」
美穂「そうだね。これだと、『よろしくお願いします』が……」
P「また暴言になっちゃったか?」
美穂「いえ、意味は通るんですけど、『武器なんて捨ててかかって来い!』くらいの強いニュアンスになります」
P「発音一つでいきなり肉密度1000%になるの怖すぎるだろ」
P「そうだなぁ、じゃあ一回ちょっと手本見せてくれるか? せっかく二人ともいるんだし」
美穂「わかりましたっ。じゃあ、半分狸モードに……」ポンッ
菜帆「耳と尻尾を出しまして~」ポンッ
美穂「ぽんぽっこ、ぽこぽこんっ。ぽぽこっこん?」ポンポコポコポコ
菜帆「ぽんこ~、ぽこぽぽ~んぽ~。ぽぽっこ~」ポコポコポンポン
美穂「――わぁ、それほんと?」
菜帆「そうなんですよ~。うふふ~っ♪」
P「お、おお……。ちなみにどういう会話だったの?」
菜帆「このあいだ小梅ちゃんと見た映画の紹介をしました~」
美穂「菜帆ちゃん、レビューすっごく上手なんですよっ」
P「今の短いやり取りで!?」
P「しかし、本当に腹鼓を間に挟むんだな……」
美穂「感覚としては句読点とかに近いイメージですね」
菜帆「無いと、どこで文を区切るのかわかりませんからね~……あっ、そうだっ」
菜帆「ちょっと待っててくださいね~」タタタッ
P・美穂「?」
菜帆「――お待たせしました~っ」
美穂「これって……」
P「でんでん太鼓じゃないか! どこにあったんだこんなの?」
菜帆「芳乃ちゃんが貸してくれました~」
P「法螺貝の他にもこんなものを……ともあれ確かに音は似ている」ポコペンポコペン
菜帆「それじゃあ、昔の名文を読み上げてみましょうか~。美穂ちゃん、お手本お願いしま~す♪」
美穂「任せてっ!」ポコポン
『吾輩は猫である。名前はまだないにゃ』
美穂「ぽこぽっこ、ぽこんぽここ、ぽこー」ポコポコ
『国境の長いトンネルを抜けると雪国であつた』
美穂「ぽんこぽぽぽこっこ、ぽこぽこーんぽん」ポンポン
『港の空の色は、空きチャンネルに合わせたTVの色だった』
美穂「ぽここっぽこんぽこ、ぽーぽーぽこぽぽこー」ポコポン
『まずコンパスが登場する。彼は気が狂っていた』
美穂「ぽここんここっぽ、ぽこぽーぽん、ぽこっこ」ポンポコ
P「チックショさっぱりわかんねぇ!」
―― しばらくして
P「ふぅ、ふぅ……たぬき語ムズすぎるぽこ……」ポコペン
美穂「ふふっ、ゆっくりでいいんですよ♪」
美穂「――って、あ! もうこんな時間!」
菜帆「何か用事ですか~?」
美穂「うん、スーパーで辛子蓮根限定タイムセールなの! ごめんなさい、行ってきますっ」タッ
P「――ふぅ。行ったか……?」
菜帆「はい、もう見えませんよ~」
P「ごめんな、グローバ……何だっけ? 変な建前に付き合わせちゃって」
菜帆「いえいえ、いいんですよぉ。美穂ちゃんが来ちゃったら仕方ありませんものね~」
菜帆「それにしても、美穂ちゃんにたぬき語で日頃の感謝を伝えたいだなんて。プロデューサーさんって、結構ロマンチストなんですね~♪」
P「ん……まあ、色々大変な思いもさせちゃったしなぁ」
P「とりあえず手紙みたいな形で、短めの文章にまとめたいと思うんだ。手伝ってくれるか?」
菜帆「もちろん♪ ぷにょ船に乗ったつもりでいてください~♪」ポヨーン
それから数日、俺は特訓を繰り返した。
大切なのは発音、息遣い、合間合間のでんでん太鼓……。
ネイティブたぬきではない俺はスタートから大きなハンデを抱えており、特に呼吸面においてかなりの苦戦を強いられた。
そうして出来上がった文章はとても平易なもので――――
『小日向美穂さん。
お元気ですか? 私は元気です。
アイドル活動、とてもよくがんばってくれていますね。
君にはよく大変な思いをさせて、本当にすみません。ですが、いつも心から感謝しています。
何か困ったことがあったら、いつでも言ってください。なんでも力になります。
これからも、みんなと一緒にがんばっていきましょう。
改めて、いつもありがとう』
P「…………なんつーか小学生の作文だなこれじゃ」
菜帆「ふふ~っ。素朴で、とっても素直な想いがこもっていると思いますよ~♪」
P「そうかな。……まあ、たぬき語で音読するならこれくらいの方がやりやすいか」
菜帆「そうですねぇ。じゃ、音読のチェックいってみましょうか~」
P「ウム!」
―― 後日 事務所
美穂「日頃の、感謝……?」
菜帆「はい~っ。たぬき語で、美穂ちゃんに伝えたいって~♪」
P「…………」ポリポリ
美穂「感謝……私に……たぬき語で……」
美穂「あぁあ……ぷ、プロデューサーさぁん……」ジワワ
菜帆「ああっ、美穂ちゃん~! まだ泣いちゃだめですよ~!」
美穂「そ、そう……そうだよね、えへへ……」グシグシ
美穂「喜んで、お聞きしますっ」ピシー
P「うん……よし」ペラッ
菜帆(回想)『いいですか~? 一に発音、二に呼吸、三四が無くて五にでんでん太鼓ですよ~』
菜穂『細かい違いで意味も大きく変わってくるんです~。正確な発音を心がけてくださいね~っ』
P(わかってるさ……菜帆。ここまで付き合ってくれたお前の為にも……)
P(…………実は今朝から、なんかちょっと風邪気味なんだが…………)ケホッ
P(やるしかない。思いは伝わる! ……よし!)カッ!
P「ぽこっこぽぽん、ぽここ(ケフッ)ぽんぽん」 ←一瞬むせた
訳『小日向美穂さんのお尻』
美穂・菜帆「!?」
P「ぽこぽっぽん、ぽぽ(ズズッ)ぽこーこーこん」 ←ちょっと鼻をすする
訳『限界を知っているか? 私は超えてご無沙汰でした』
P「ぽぽこここ、ぽこん(ックチッ)っぽんぽ、ぽーんぽーんこっこぽん」 ←くしゃみを押さえつける
訳『アイドル活動、それのことはよろしい。よろしくない。大変健康にいい。興奮によろしいないある』
P「んぽっぽ(ゼヒ)こん、んーぽーぽぽんぽ、ぽっこっこー(スヒ)」 ←喉が少し鳴る
訳『君はとても興奮の尻。本当のこと服の中にきわどいある。デスレースの逸品に映える脊椎の心臓、どれが大変な勝手になさい。愛』
P「んーぽこぽー(ムズ)、ぽこっぽこんぽ、ぽーこあぽーこ(ムズズ)」 ←今度はくしゃみを我慢する
訳『私は困る。いつでも困る。ここにあるいつも漲る力の熱源がえんやとっとで馬の骨。水着。哀愁の果てに我が闘争』
P「ぽこぽ……ぽ、っごめんちょっと(チーン)、ぽんぽんぽーん、ぽぽぽぽん」 ←流石に鼻をかむ
訳『これ尻よ、尻尻ああ尻尾よ! 魔性のもじゃもじゃ! 尻尻の尻が切れ上がる闇に砕け散って夢が尻咲く、ぼくは好き。
ぬくもりのしゅらしゅしゅしゅが今後笑う。偉い。とっくに偉い。遥かにイイ』
P「ぽこ……ぽ! ぽここここ(スヒー)ぽんこっこ(スヒュー)ぽっぽ!」 ←ちょっと息が苦しくなる
訳『その之それは豊穣生脚大回転! ひっくり返して茶釜にしよう! 全て遥かなる僕と君は桃源郷のアダムとイヴ! LOVE?
そこへはお前の俺ぞ男、アレはこの星の繊毛ぐるぐるこれはない、暮れ明け花ずっとよく来たな、天の光は全て尻』
P「ぽこぽん、ぽんぽこ……! ぽん!」 ←言えた
訳『――改めて、いつもありがとう』
P(途中かなりつまづいた気がするが……)
P(つ、伝わったか……?)
美穂「………………ぽ」
P「ぽ?」
美穂「ぽこーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」バッシィィーッ
P「グワーッ尻尾ビンタ!!」
美穂「ぷ、ぷ、ぷ、プロデューサーさんのばかばかぁっ! もう知りません~~~~っ!!」タタッ
P「ハァ……ハァ……」
P「………………しくった?」
菜帆「あわわ~……///」
菜帆「ひっくりかえして茶釜にするなんて、完全に放送禁止用語ですよ~……///」
P「茶釜!? 何が!?」
―― しばらくして
美穂「むすーっ」プクーッ
P「いやごめん、ほんと申し訳ない、知らないとはいえセクハラ連発してしまったようで……」
美穂「………………許しますっ。私の方こそ、いきなり尻尾で叩いてごめんなさい……」
菜帆「だけど、やっぱり急に長文は難しいみたいですね~?」
P「う~む……風邪は言い訳にならんしなぁ……」
美穂「そう、ですね。……とにかく、たぬき語を覚えてくれようっていう気持ちはとっても嬉しいんです」
美穂「まずは声だけで表現できる、簡単な挨拶だけを覚えていきましょうっ。それからです!」
P「ああ……ローマへの道は叩いて渡れとも言うしな」
菜帆「やっぱり基礎が大切ですね~」
美穂「まずは『ぽぽんぽここ』……これは『おはようございます』って意味です」
菜帆「?」
P「ぽぽんぽここ! これでいいか?」
美穂「ばっちりです! 比較的簡単ですからねっ」
美穂「次は、『ぽーぽーぽこん』。『お疲れさま』、という意味ですっ」
P「ぽーぽーぽこん。なるほど汎用性の高いたぬき語だ」
菜帆(これって~……)
美穂「最後に、『ぽっこぽーんぽ』。これは『さようなら』で、『また明日』としても通じます!」
P「ぽっこぽーんぽ……ぽっこぽーんぽ。よし!」
菜帆(……まあ、いっかぁ~♪)
―― また後日 事務所
紗枝「それでなぁ。幸子はんが言うには、世界に人のカワイさの光を見せなきゃあかんと~……」
美穂「幸子ちゃんの野望って時々遠大だよね……」
ガチャ
P「おう紗枝、おはよう。美穂もぽぽんぽここ」
美穂「プロデューサーさんっ。えへへっ、ぽぽんぽここ♪」
紗枝「」ポカーン
P「……って、紗枝はびっくりするよな。俺がいきなりこんなこと言い出したら」
美穂「プロデューサーさんね、たぬき語を勉強してくれてるんだよ!」
紗枝「ほぁ~……それは、思い切りはりましたなぁ~」
P「プロデューサーとしてはこれくらいはな。今度はきつね語も覚えてみようと思ってるよ」
紗枝「あら、お稲荷の言葉はややこしいで~? プロデューサーはんの手ぇに負えますやろか♪」
P「うーむ、たぬき語で既に手こずりまくってる身としては耳に痛いが……」
P「ま、やるだけやってみるわ。それじゃ、ぽーぽーぽこん!」
美穂「はいっ、ぽーぽーぽこんっ♪」
紗枝「……」アングリ
美穂「紗枝ちゃん、びっくりさせちゃってごめんね? 私も最初びっくりしたんだけど……」
美穂「まあ、こういうのもいいかなぁって……えへへ」
紗枝「せやなぁ……」
紗枝「美穂はん? うちがたまげたんは、プロデューサーはんがたぬき語を使わはったこと自体やのうてな?」
美穂「?」
紗枝「……うちな、教養いうことで、たぬき語もちぃとは齧っとるんどす」
美穂「えっ」
紗枝「美穂はん? ぽぽんぽここ、いうんは『おはようさん』やのうて――」
美穂「わああっ、ちょっ紗枝ちゃん、紗枝ちゃん待って!」
美穂「…………い、言わないでくれる?」
紗枝「………………」
紗枝「こん♪」
美穂「さ、紗枝ちゃん~っ!」
紗枝「うそや、うそやて。うちからそない無粋なことせぇへんよぉ♪」
美穂「ほんと? ほっ、良かったぁ……」
紗枝「にしても、美穂はんたらぁ……」
美穂「な、なに?」
紗枝「純な乙女や思うとったら、なんや狡(すこ)い手管も覚えてはってぇ。うふふっ」
美穂「も、もう、からかわないでよぅ!」ポコポコ
紗枝「うふふふふふっ♪」
菜帆(こんにちわ~。突然ですけど、海老原菜帆のたぬき語レッスン補足編のお時間ですよ~♪)
菜帆(ぽぽんぽここ、というのは直訳すると、『実りの秋みたいに素晴らしい尻尾だ』となります~)
菜帆(ぽーぽーぽこん、というのは『グルーミングをさせて欲しい』となって~)
菜帆(ぽっこぽーんぽ、というのは『君の匂いを鼻先にずっと感じる』となります~)
菜帆(ひらたく言えば、順に『とってもかわいいね』『大好きだよ』『いつもあなたを想っているよ』という意味になるんですね~)
菜帆(まあ、プロデューサーさんはまだ全然気付いていないようですけど~……ふふふ~♪)
菜帆(それでは、今週のたぬき語レッスンはここまで~。しーゆーねくすとぽんぽこ~)
―― 女子寮前
ブロロロロ…
P「じゃ、今日の予定はこれでおしまいだな。美穂、ぽーぽーぽこん!」
美穂「はいっ。プロデューサーさんも、ぽーぽーぽこん、ですっ」
P「ゆっくり休むんだぞ。ぽっこぽーんぽ!」
美穂「送ってくれてありがとうございます! それじゃ、ぽっこぽーんぽ♡」
美穂「えへ、えへへっ、えへへへ~っ♡」ルンルン
P「?」
~オワリ~
以上です。お付き合いありがとうございました。
依頼出しておきます。
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