【モバマス】伊吹「恋愛映画には遠い」 (11)
[ファーストフード店]
伊吹「お待たせっ! ゴメンね、遅くなって」
奏「いえ、さっき来たところだし、いいわよ」
伊吹「何か気ぃ、使ってない? そういうのいいって」
奏「フフ、言ってみたかっただけ。格好いい彼氏役やったばかりだから、抜けてないのかも」
伊吹「はー、奏はそういう余裕のある大人な感じ合うよねー」
奏「一応、伊吹ちゃんより、年下よ?」
伊吹「へへ、忘れてた。と、もひとつ忘れてた。乾杯乾杯っ」
奏「そうね、じゃあ」
伊吹「テレビ企画の撮影と……」
奏「合同ライブ……」
伊吹・奏「「お疲れさまー!」」
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奏「……っていう、曲にぴったりな出来事があってね」
伊吹「ふーん。そんな感じだったんだー。いいよねー、そういうのー」ポワワ
奏「小さな恋の物語、ってやつね。伊吹ちゃんは、何か浮いた話ないの?」
伊吹「えっ、いや無いかなっ。全然。奏は……?」
奏「私の事はいいの」
伊吹「さりげなく避けたよね」
奏「こほん、伊吹ちゃんのプロデューサーとかはどう? 傍目には、結構お似合いに見えるけど?」
伊吹「いやー、ナイナイ。確かにお世話にはなってるけどさー」
奏「お世話になってる……けど?」
伊吹「恋愛対象ではない、かなー……うん」
奏「好きなタイプ、優しくて頼りがいのある、ダンス力のある人だっけ?」
伊吹「いや、ダンスはこだわらないけどさ。こう、ちゃんと気持ちを汲んでくれるような人がいいワケ」
奏「その点、プロデューサーは、ダメ、と」
伊吹「もーちょっと、女の子として扱ってくれないとね。恋愛映画までとは言わないけどさー」
奏「ふうん……。そんなにダメなの?」
伊吹「そうそう!例えばねー」
伊吹「そーだなー、女の子をお昼に誘うならどんな店?」
奏「そうね。普段のご飯なら、パスタなんか気取り過ぎなくていいかも」
伊吹「でしょ!普通そうでしょ! けどさー」
[撮影後]
P「いぶきー、撮影お疲れー。飲んどけー」 ポイッ
伊吹「おっ、さんきゅ! はー、染みるなー」ゴクゴク
P「調子は?」
伊吹「とーぜんバッチリ! いいの撮れたよ」
P「ならよし! 午後は移動してライブのリハだな。伊吹、腹は減ってるか?」
伊吹「うんっ。いい運動したからねっ」
P「ちょうど良かった! この辺に美味い店があるんだよなー」
伊吹「ホント? 気が利くじゃん」
P「楽しみにしとけよー。挨拶してくるから、伊吹も準備できたら連絡よろしくな。車回しとく」
伊吹「了解っ! 着替えたら行くねー」
伊吹「えーと……」
伊吹(よし、シャワー浴びて、汗は流した! お店によるだろうけど、こんなラフな格好で大丈夫かなー、あ、髪留めは、いちお可愛いのにしとこ……)
伊吹「お、お待たせっ」
P「おーし、準備おっけーだな。乗った乗った」
伊吹「うん。お願いしまーす」
P「ふっふっふっ、そんな遠くないからなー」
伊吹(最近は忙しくて、簡単に済ませちゃう事多かったし、プロデューサーと一緒になんて初めてだな……)
伊吹「へへっ」
P「お、何だ? 良いことあったのか?」
伊吹「や、何でもないよっ」
P「そうかー、お、駐車場はココだな……よし、行くか!」
伊吹「はーい、よろしく♪」
P「お、やっぱ昼過ぎでも混んでるなー」
伊吹「あ、えーと、ここ?」
P「そうだ! あ、見た目はアレだが味は保証する。担当プロデューサーを信じろっ!」
伊吹「いや、疑ってるんじゃなくてー……」
伊吹(赤い中華風のれん……町の定食屋さんだね……どう見ても……)
P「お邪魔しまーす」ガラガラッ
店主「らっしゃーせー! カウンター奥どうぞー」
ガヤガヤガヤガヤ
伊吹(すっごく賑わってるなー、見事にオッチャンばっかりだけど)
P「そうだなー、オススメは肉野菜炒めかレバニラかなー」ギギ……ドスッ
伊吹「え、じゃあ、肉野菜炒め……」ギギ……ストン
P「体力付けとかないとなー」
伊吹「ウン……そうだねー」
P「おっちゃん、肉野菜炒め2つー」
店主「あいよー、肉野菜炒め2つー」
P「外回りの時に見つけてなー。あ、今日は本番前ではラストの通し練習だけど大丈夫か?」
伊吹「うん、それはまあねー」
P「ん、何かテンション下がってないか?」
伊吹(Pのせいだよー)
店主「へい、お待ちー」ドン、ドン
P「お、よし、食うかっ」
伊吹「うん、いただきます……あっ美味しい……」
P「だろっ」
伊吹(女の子にこの店ってのはどうかと思うけどねー)
P「いやー、伊吹好きそうだと思ってなー」
伊吹(美味しい……美味しいけど、なんかなー)
伊吹「と言うことが、あったり」
奏「零点ね」
伊吹「うん、だよね! 」
奏「文句の1つでも言って帰っちゃえば良かったのに」
伊吹「それが、いい匂い嗅いだからお腹なっちゃってさー。あ、すごく美味しかったよ肉野菜炒め」
奏「この子にも問題がある気がするわ……」
伊吹「何か思い出しちゃった。それはそれとして、また行きたいなー」
奏「あとは……恋愛映画はあまり見ないから分からないけど、荷物持ってくれたり、
車道側をあ歩いてくれるのが世間ではポイント高いみたいよ。プロデューサーはどう?」
伊吹「……覚えがないや。むしろ……」
[リハーサル前]
P「おっ、着いたぞライブ会場!」
伊吹「おー、やっぱ大きいっ!」
P「合同とはいえ、こんだけのステージは初だからな。リハも気合い入れてけよー」
伊吹「今からワクワクしてきた! 任しといて!」
P「頼むぞー、伊吹お得意の、派手な技も演出に組み込んでるしな」
伊吹「うん、大丈夫! それはホント感謝してる。結構練り直したし、イイモノに出来そうだよっ」
P 「うんうん。そんじゃ、搬入もあるし車は裏に回すからなー。あ」
伊吹「どしたの?」
P「あれは……」
P「ヤバい、ギリギリだっ!」
伊吹「もー、詳しくないのに道案内なんてするからっ!」
P「これから楽しみにしてたライブなんですって言われたら、心配になるだろ!」
伊吹「そうだけどっ!」
P「大丈夫、走れば間に合う! すまん、これ持ってくれ」
伊吹「あ、えとカメラ?」
P「そう、撮影機材だ。いけるか?」
伊吹「大丈夫! 他は!?」
P「じゃあ、そこのコードと……」
伊吹「これとこれ、はいはい、おっけー」
P「よし、走るぞ! ダンサーの意地見せろ!」
伊吹「いや、ダンサー関係ないから。よいしょっ! まったく、しっかりしてよね、P!」
P「すまん頼りになるっ」
伊吹「とか……」
奏「まあ、息の合い方は熟年夫婦かもね」
伊吹「ふうふ!?いや、そんなー……///」
奏「実際は色気ゼロみたいだけど」
伊吹「そうなんだよねー、はあ……」
奏「聞いてる感じ、仕方ない気もするわ」
伊吹「ホント、こんなんばっかり!」
奏「でも、たまにはあるんじゃない? ライブ前に優しい言葉とか……」
伊吹「あったかなー」
[ライブ・本番前]
P「……えー、私からは以上です。いいライブにしましょう!」パチパチパチ
P「では、順次ステージ裏に……」
「わー、ドキドキしてきたー」「頑張ろうねっ」「衣装おかしくないよね?」ガヤガヤ
P「いけいけー、転ぶなよー」
伊吹「あ、プロデューサー……」
P「お、伊吹、どした」
伊吹「えーと」
P「腹でも下したか」
伊吹「バカッ! 行ってくるね!」ペシッ
P「ッテ。なんだ、緊張してんのか。らしくない」
伊吹「……う」
P「ファイトだ! あと、気合いだ!」バシン
伊吹「っと」
P「せっかくの大舞台だ。楽しんでこい」グッ
伊吹「うんまあ、何か気合い入った気がする。うしっ! 行ってくるね!」グッ、コツン
P「ぶまちかませ伊吹ー!」
伊吹「プロレスじゃないから!」
奏「何というか、雑、よね」
伊吹「そう! なんか体育会系のノリまんまっていうか」
奏「まあ、ロマンスって感じではないわね……」
伊吹「でしょー」
奏「ライブも盛況だったみたいだし、プロデューサーとしては優秀なんでしょうけど」
伊吹「成功か……あ」
奏「? どうかした?」
伊吹「いや、アタシ実はちょっとトチっちゃったんだよね、本番」
奏「あら、私には大成功としか伝わってないけれど」
伊吹「まあ、ミスってよりは、リハでもやってたトリック決められなかったって感じ」
奏「へえー、トリックってダンスのだったかしら」
伊吹「うん。ちょっと無理言ってフリに入れて貰ったんだけど、ちょっと呑まれて跳べなくてさー」
奏「大舞台は初だったものね」
伊吹「口であれだけ言っといて……ってちょっとヘコんだなー」
奏「その割には、元気そうだけど?」
伊吹「まあ、それが取り柄ですしー。それに……あ、」
伊吹(これは言わなくてもいいか……)
[ライブ後・公園]
伊吹「うー……」
伊吹(あー、失敗したなー。結構ショック大きいかも)
P「お、いたいた。よー伊吹」
伊吹「げ」
P「打ち上げも早々に居なくなったから、みんな気にしてたぞ」
伊吹「……ほっといて」
P「惜しかったな、あの場面」
伊吹「……うん。気付いてたんだ」
P「そりゃ、俺が判断して行こう、って決めたワケだしな」
伊吹「Pは信じてくれたのになー」
P「だけどな、あんなもんは慣れだ。ちびっと反省したらすぐに次を見ろ、ほれ」バサッ
伊吹「これ……」
P「感想アンケ。ある分勝手に持ってきた」
伊吹「いいの?」
P「よくはないが、まあ気にするな。色々書いてあるぞー、こういうの見るとスゲーやる気出るんだ」
伊吹「うん、どれも楽しかったって書いてある……あ、アタシのダンスの事も……嬉しいな」
P「転んだら、次に生かして立てばいい。また、凄い仕事もってくるぞー」
伊吹「……」
P「ま、あれこれ言われんでも分かってるか。落ち込んだら食う! 何も食ってないだろうから、差し入れだ」ガサガサ、パサッ
伊吹「……なにこれ」
P「マックだ。好きだろ」
伊吹「好きだけどさー。落ち込んでる女の子にコレはなくない?」
P「あー、ナシだったか。すぐ何か買って……」
伊吹「フフッ、ううん、いいよ。食べる」
P「いや、無理しなくても」
伊吹「いーの、そういう気分になった! せっかくだし、一緒に食べよ」
P「一人分だし、そんな量ないけどな」
伊吹「半分あげる、バーガー割れるかな?」
P「いや、無理だろ……あと、アンケート汚すなよー、ちひろさんに絶対怒られるから」
伊吹「大事な物だし、じゃあ後にするね。もー、ホント変なチョイス」フフッ
P「すまんな」
伊吹「いいって。その…………ありがと…ね」
P「ああ、どういたしまして。次も頑張ろうな!」
伊吹「うん、よろしく♪」
伊吹「あ、でも、いちおう、たまーには頼りになる、かなー」
奏「ふうん」
伊吹「な何だよ」
奏「いえ、いい関係なら、それはそれで良いんじゃないかしら。もうちょっとプロデューサーさんには頑張って欲しいところだけど」
伊吹「だよねー。ホント仕事以外鈍いんだよー」
奏「その言い方だと……いえ何でもないわ」
伊吹「というか、今日はやたらアタシの話に食い付いてきたよね? どうしたの?」
奏「フフ、気まぐれよ」
伊吹「そんなもん?」
奏「そんなものよ」
奏(聞いて欲しそうな顔してるのが分かりやすいのよね、伊吹ちゃん)
奏(恋愛映画は苦手だけれど、現実が映画みたいだったら素敵、くらいのロマンは私にもあるわよ?)
伊吹「かなでー、せっかくだし、このあと一汗流してく? 練習したい事あるんだー」
奏「撮影ばかりじゃ鈍っちゃうし、それもいいわね」
奏(お互い意識してなかった男女が運命の相手、なんてベタベタなストーリー。あるかもね、伊吹ちゃん?)
伊吹「さ、行こ! とことん踊るよー」
奏「軽く運動じゃ、終わりそうにないわね。いいわ、最後まで付き合ってあげる」
伊吹「おっ、やる気♪ よろしくねっ」
奏「ええ、よろしくお願いね♪」
おわり
ありがとうございました。
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