まゆ「にゃんこうめ」小梅「さくまたたび」加蓮「私は人」 (27)

☆前回までのあらすじ☆


 小梅ちゃんに突然ネコミミが生えちゃった。
 どうしよう?

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加蓮「ぃよーしよしよし」ワシャワシャワシャ

小梅「にゃーん……♪」

ガチャ「ドアですよぉ」まゆ

加蓮「おはよう、まゆ」

小梅「あ、まゆさん……おはよう……にゃん?」

まゆ「これは……一体どういう状況なんですか?」

加蓮「見てのとおりだよ」ワッシャワッシャワシャ

小梅「なんかね、いつの間にか、こうなってた……」

まゆ「情報量が無ですねぇ」

加蓮「いいじゃん。かわいいかわいい」ヨーシヨシヨシ

小梅「ごろにゃーん」

まゆ「……」

加蓮「のどのあたりをこうやって撫でてあげると、ほら」ナデナデ

小梅「……♪」

まゆ「……」

加蓮「あとは後頭部とか耳の裏とか」サスリサスリ

小梅「んぅ……んにゃ♪」

まゆ「……」


まゆ「わ、私もいいですかぁ?」

加蓮(堕ちた)

まゆ「さあ、小梅ちゃん。こっちにおいで?」

小梅「あ……うん」


パタパタパタ
ぽすっ


小梅「……えへへ。にゃん♪」

まゆ「???????!?????!??? かわいすぎじゃないですかぁ???????!!??!」

加蓮「気持ちはわかるけど、ちょっと落ち着いて」

小梅「……なんか、まゆさんいいにおいするね……♪ にゃーん……」

まゆ「ぃよーしよしよし」ワシャワシャワシャ

小梅「ンニャー……んなーお……ンゴロゴロゴロ」スリスリスリ

まゆ「ひゃ、ちょっとくすぐったいですよぉ」

小梅「ニャウ、ニャーウ」スリスリスリスリスリスリ

加蓮「なーんか妬けちゃうなー。私のときそんな感じじゃなかったじゃん」

小梅「フシャー」グリグリグリグリグリ

まゆ「いえ、なんだか様子が」

小梅「……」グリグリグリグリグリ

まゆ「わぷっ、ちょ、ちょっと助け」

小梅「フーッ、フーッ」ジタバタジタバタ

加蓮「こら、暴れないの」ギュー

まゆ「あ、ありがとうございます、加蓮ちゃん」

加蓮「いいって。それより小梅ちゃん、かつてないほどに目がギラついてるね」ナデナデ

まゆ「どうしちゃったんでしょう?」

小梅「まゆさん、いいにおいするから……。なんか、クラクラしちゃった」

加蓮「クラクラ?」ナデナデ

まゆ「アップルジュース?」

小梅「お酒飲んで酔っちゃったら、こんな感じなのかな……?」

まゆ「お酒ですか。まゆにはよくわかりませんねえ。加蓮ちゃんは飲んだことありますか? お酒」

加蓮「あるわけないじゃん。私を何だと思ってるのさ」ワシャワシャ

まゆ「いえ、訊いてみただけです」

小梅「にゃーん」

加蓮「あ、お酒といえばさ、猫にマタタビあげると酔っ払うって言うよね。まゆの服とかにたまたまマタタビがついてたんじゃない?」ワシャワシャ

まゆ「都内で暮らす限りマタタビってたまたま服につくようなものじゃないと思いますけど」

小梅「ふふふっ、『たまたまマタタビ』って、面白いね……えへへ」

まゆ「あ、あの、やっぱりまゆにも小梅ちゃん撫でさせてくれませんかぁ?」

加蓮「ダメ」ヨシヨシヨシ

まゆ「ちょっとだけですから」

加蓮「さっきの小梅ちゃん見たでしょ? まゆがさわるとああなっちゃうんだから、まずいって」ナデナデナデナデ

小梅「私は、別に良いんだけど……にゃーん」

まゆ「ううう、加蓮ちゃんだけずるいです」

加蓮「というかさ、小梅ちゃんが突然猫っぽくなっちゃうくらいなんだから、まゆがマタタビそのものになっててもおかしくなくない?」

小梅「え……そうなの? まゆさん、実はマタタビ……マタタビ人間だったの……?」ワクワク

まゆ「まゆは人ですよぉ。なんなんですか、二人とも。異常事態への順応性が高すぎじゃないですか?」

加蓮「いや、まゆも大概でしょ」

小梅「この事務所……Kクラスシナリオ、なんかは……日常茶飯事だもんね」

まゆ「おかしな話ですねぇ」

加蓮「異常事態ってことなら、とりあえずプロデューサーに電話してみる?」

まゆ「あ、ならまゆが……」


ポパピプペ

まゆ「デスクの上にあるドブ色のファイルを見なさい、だそうです」

加蓮「ドブ色ってわかりにくいね。ただでさえ全然片付いてないのに……あ、あった」

まゆ「ほんとにドブみたいな色してますね」

小梅「ば、ばっちいかな……?」

加蓮「なになに……『社外秘・異常事態が起きた時用マニュアル』、だって」

小梅「わぁ……! すっごくうさんくさいね……!」

まゆ「どうしてそこで目を輝かせるんですかぁ?」

【異常事態が起きた時用マニュアル】

①:工学的アプローチで解決しそうなら晶葉に、化学的アプローチで解決しそうなら志希に頼みましょう。そもそも彼女たちが元凶である可能性もあります。

②:①による解決が難しい場合は、専門家を頼りましょう。我が社のアイドル達は皆一芸に秀でており、誰かに相談すれば何かしらの解決策を提案できる可能性は十分にあります。

③:芳乃や茄子、こずえに頼るのは最終手段にしましょう。解決した前後の世界が必ずしも同一であるとは言い切れません。



加蓮「おもいのほかしょーもない感じだったね」

まゆ「いえ、具体的な解決策が書いてあるのは良いことだと思います」

小梅「ゾンビパニックとかでも、この通りにすれば……安心……?」ニャン

まゆ「とりあえず、このとおりにしてみましょうか」

加蓮「この小梅もかわいいけど、ずっとこうというわけにもいかないしね」ナデナデ

小梅「そ、そうかな……?」

まゆ「見たところ、工学って感じじゃないですね。耳も尻尾もリアルですし、機械っぽくはないです」

加蓮「じゃあ志希呼ぶ? でもさっきふら~っと失踪しに行ったの見たけど」

まゆ「まゆも見ました。台車をキックボードみたいに使ってて危なかったですねぇ」

小梅「……」


小梅「なんか、飽きちゃった……」


しゅたっ
パタパタパタパタ


加蓮「あっ、小梅ちゃん行っちゃった」

美玲「ガ、ガオー!」

小梅「にゃーん」

美玲「ガオーッ!」

小梅「にゃーん♪」

美玲「ウウウゥゥゥ……」

小梅「グルグルグルグルグルグル……」

美玲「ガオーッ!!」バッバッ

小梅「フシャーッ!」バッバッバッ

美玲「……」

小梅「……」

二人「「えへへへへへ」」


まゆ「何やってるんでしょう?」

加蓮「さあ。楽しそうだから良いんじゃない?」

まゆ「とりあえず、猫三銃士を連れてきました」

加蓮「猫三銃士?」

まゆ「元は猫だったらしいです。フレデリカさん」

フレデリカ「シャバダバダバーン、フレデリカ~」

まゆ「猫とおしゃべりできるそうです。雪美さん」

雪美「………………ふふっ……。雪美、だよ」

ペロ「どうぞよしなに」

まゆ「そして、にゃん・にゃん・にゃんのメンバーの一人……」

みく(そわそわ……)


まゆ「アーニャちゃん」

アーニャ「よろしくお願いしますね」

みく「なんでにゃ!」

まゆ「あ、みくちゃん。おはようございます」

加蓮「おはよう、みく」

みく「おはようにゃ……じゃなくて! ネコチャンの専門家なのにみくが入らないのはおかしいにゃ!」

加蓮「みくは猫そのものだからこそ、かえってこの場にはそぐわないっていうか」

まゆ「そうですねぇ。みくちゃんはもう、THE・猫って感じですから……」

みく「言いくるめるにしてもちょっと雑すぎじゃない?」

アーニャ「アー、フレデリカ、どこにいますか? 見当たりませんね」

雪美「……フレデリカ…………あそこ…………楽しそう……」


フレデリカ「面白そうなことしてるね! フレちゃんも混ぜてー」

小梅「なーお、なーああお!」

美玲「わおーんッ!」

フレデリカ「キ、キキキ、キリーン!」

小梅「ニャーゴ、ゴロニャーゴ……」

美玲「グルルルルルル……ガウッ!」

フレデリカ「ヒポポタマース、ヒポポタマース!」

三人「「「えへへへへへへへへへ」」」

アーニャ「フレデリカ、すごいです。カバの真似、上手ですね」

まゆ「アーニャちゃん、ちゃんと聞こえてますか? 耳かきしてあげましょうか?」

アーニャ「??」


雪美「…………ペロ……お願い…………」

ペロ「合点承知」


シュタッ
スタタタタ……


みく「どうしたの雪美チャン?」

雪美「ペロにね…………小梅のお話……聞いてもらう………………問診……?」

みく「なるほどにゃ」

雪美「猫同士…………じゃないと…………伝わらない……ことも」

加蓮「おおっ、専門家っぽいね」

みく「ヒトって言葉でものを考えるでしょ? 言葉って一次元的にしか繋がらないから、ヒトの思考は基本的には直線的なのにゃ。頭のいいヒトはいくつも別のこと考えられるけど、それも『線』の本数が増えただけにゃ。でもネコチャンは違う! ネコチャンは言うまでもなく高次元生命体だから、同じ時間軸方向でも実時間と虚時間のニ軸観測できるのにゃ。だから文字通り思考速度の次元が違うにゃ! これは、普通のコンピュータと量子コンピュータくらい大違いにゃ。で、あるからして……」

加蓮「わ、わかったわかった。猫ってすごんだね」

まゆ「加蓮ちゃんわかったんですか? まゆには難しくってちょっとよく……」

加蓮「いや、全然。でもいきなりトンデモ設定出されたらビックリしちゃうでしょ」

みく「と、トンデモとかじゃないにゃ!」

雪美「…………みくのお話…………。……ちょっとだけ、わかる…………。ちょっと、だけ……」

みく「ほんと!?」

雪美「………………ペロと話すと…………言葉……じゃなくて、なんか…………。……ばばーんって……感じ…………。違う?」

みく「たぶんそれにゃ。みくもちっちゃいときは『ばばーん』ってできたんだけどにゃあ……」

アーニャ「ばばーん……いい響き、ですね。ばばーん……」

小梅「(高次元の会話)                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              」ババーン

ペロ「(高次元の会話)                                                                                                                                                                                                                                 」ババーン

小梅「へー」

ペロ「ふむ」


美玲「ん? どうかしたか?」

フレデリカ「パンダ、パンダー! パンダ、パンダー!」

ペロ「無理」

雪美「…………無理………………。だって…………」

加蓮「そんなー」

アーニャ「コウメ、ずっとあのまま、ですか?」

雪美「そう…………かも……?」


ガチャ


志希「おはよ~」ガラガラガラガラ

まゆ「あ、志希さん。おはようございます。どうしたんですか? その荷物」

志希「これねー、タバスコのガロン瓶。ダース買いしちゃった♪」

みく「台車が悲鳴を上げてるにゃ」

加蓮「ねえ志希。小梅ちゃんが猫になったみたいだけど、なんとかできる?」

志希「難しいかにゃー。ヒトから猫にするのは簡単でも、逆はあたしにはちょっと。志希ちゃんパワーも万能では無かったのであった」

まゆ「そういうものなんですか」

志希「そーなんです」

みく「納得いかないにゃあ」

加蓮「というか、てっきり志希のしわざだと思ってたんだけど」

志希「そもそも、ヒトに戻る必要ってあるのかな? あの状態の小梅ちゃんもかわいくて素敵じゃない?」

加蓮「それはそうだけど。でもなんというか、広げた風呂敷は畳まないといけないし。どこかで収拾つけないと」

志希「加蓮ちゃんにその義務があるかどうかはさておき、収拾つけようとする姿勢は大事だね」

加蓮「あと、姿も変わって意識も猫っぽくなってるんなら、それって本当に元の小梅ちゃんと同じ? ちょっと危なくない? このまま小梅ちゃんが小梅ちゃんじゃなくなっていくような気がして」

志希「『あたしをあたしたらしめるもの』ってヤツ?」

加蓮「そうそう、そんな感じ」

志希「難しいこと考えるね~。でもそれって、小梅ちゃんにしかわからないコトじゃない?」

加蓮「と、いうと?」

志希「ヒトは変わってくものだよ、加蓮ちゃん。ちょっと顔を合わせないうちに全くの別人になってしまうなんてことはザラ。それでも変わらない根っこの部分、『Cogito ergo sum』の『Cogito』にあたるトコロは、結局当人しか……いいや、当人すらもわからないかもしれない」

加蓮「……」

フレデリカ「はーい、フレちゃん村人でしたー」

アーニャ「占い師、引きました。真ん中は……村人と、人狼でしたね」

美玲「ウチもヒトだ。狼じゃないぞッ」

小梅「わ、私はネコ……じゃなくて村人……。怪盗さん、出てこないね? ど、どうして……?」


雪美「…………みんな…………嘘つき…………。……嘘つきだよ…………」

みく「ちょっと雪美チャンに見せるにはドロドロすぎるゲームだったかにゃー?」

志希「なーんて♪ ちょっとクサいこと言ってみたかっただけにゃー♪ 飛鳥ちゃんが好きそうな話だね~にゃははは~」

加蓮「……はぁ~。なんかどーでもよくなってきちゃった。しばらく小梅ちゃん撫でてから考えるかな」

志希「うんうん、それが良いって。それに、そろそろ時間切れだし」

加蓮「あ、やっぱり志希の仕業だったんだ」

志希「いいや、そういうわけじゃないよ? でもとにかく、小梅にゃんこ……いや、にゃん小梅ちゃんを愛でられるのはあとちょっと、っていうコト」

加蓮「そうなの? じゃあ急がないとね」

志希「じゃ、あたしは寝よっかなー。おやすみー」

加蓮「もう、どっちがにゃんこなんだか」

美玲「うう、アーニャ……ひどいぞ……。占い師なのに嘘つくなんて……」

アーニャ「イズヴィニーチェ、ミレイ……。ごめんなさい、村のため、でした。仕方ない、ですね」

加蓮「小梅ちゃーん。ちょっといい?」

小梅「あ、加蓮ちゃん……。はい、じゃあみくちゃん、交代……ね」

みく「おっしゃぁ! やってやるにゃ!」

雪美「…………がんばって…………。ふふっ…………」


まゆ「どうしたんですか?」

加蓮「いや、やっぱりもうちょっと小梅ちゃんを撫でていたいなあって」ナデナデナデナデ

小梅「んふふ~……。私も、加蓮ちゃんに撫でてもらいたかった……。にゃ~ん♪」

加蓮「よしよし」

まゆ「でも大変残念なお知らせなんですけど」

加蓮「ん? どうかしたの?」

まゆ「もう時間切れなんですよねぇ」

小梅「そっか、残念……にゃーん」

加蓮「それってどういう――」


 言い終わる前に、ふとプロデューサーのデスクが目に入った。
 散乱した資料の上に、いつの間にかレモンがひとつ、ちょこんと置いてあった。
 そのレモンには安っぽい液晶画面が埋め込まれており、その表示は1秒ごとに減っている。

 5

 4


まゆ「風呂敷を畳む時間ですよぉ」

加蓮「いや、ちょっと待っ――」


 どこかで収拾をつけるべきとは言ったけど。
 まさか爆発オチ……?


 2

 1


………………
…………
……

 ピピピピピピピピピピピピ……


加蓮「……」


 という夢を見たんだ。
 確かに、この目覚まし時計のけたたましい電子音は、爆発と言えなくもない。


加蓮「ええー……」


 夢オチも爆発オチと大して変わらないお粗末な落とし方じゃないかな。
 『夢オチは手塚治虫先生が禁止して以来、漫画界最大のタブーらしいぞ』って、随分前に奈緒が言ってた気がする。
 身にしみてわかった。
 夢オチは、理不尽だ。
 だって、猫っぽくなった小梅ちゃんを撫でて幸せな気分になっている最中に叩き起こされたんだから。


加蓮「はぁー。事務所行こっと」


 あと、夢の中で志希に真理めいたことを聞かされた気がしたけど、忘れてしまった。
 夢あるあるだね。
 思い出したところで、きっと真理でも何でもない、どうでもいいことなのだろう。
 儚い。

加蓮「ぃよーしよしよし」ワシャワシャワシャ

小梅「あーうー……」

まゆ「おはようございます」ドアガチャ

加蓮「おはよう、まゆ」

小梅「あ、まゆさん……おはよう……」

まゆ「一体どういう状況なんですか?」

加蓮「いや、なんか小梅ちゃんを猫可愛がりしたい気分だったから」ワッシャワッシャワシャ

まゆ「そうですか」

終わります
小梅ちゃんお誕生日おめでとうございます

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