【ミリマス】北上麗花と甘い二度寝♪ (13)
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目覚めれば麗花の隣に彼はいた。
だがなんら不思議なことではない。
なぜならここは彼の部屋で、世間的に言えば麗花がこの場所にいることの方が不可解な出来事だったからだ。
しかし、その謎もすんなりと解いて見せよう。
なに、昨日はお泊りしたのである。
だから麗花は心地よい朝を迎えた時、大好きな人の隣で目を覚ますという自然な状況に存在した。
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「くすっ。プロデューサーさんの寝顔発見~♪」
普段の仕事中では中々お目にかかれない、
男の油断しきった表情を間近で見られた彼女は気持ちのままにすぐ呟く。
深い付き合いである自分だけが知る表情だ。
ついでに彼の唇から、だらしなく垂れた涎を見つけてまた笑う。
麗花は枕元に置かれていたティッシュケースから
――全くどうでも良いことだが中身は殆ど空っぽで、そろそろ取り替え時である――
ティッシュを一枚引き抜くと、それを男の唇に押し当てた。
「ジッとして、動いちゃダメですよ?」
「ふがっ」
「ふふっ。ちょーん、ちょんっと」
だらしない男の口元をキレイキレイにし終わると、
麗花は涎を拭いたティッシュをベッド脇のゴミ箱へと押し込んだ。
……こちらも余談極まりないことではあるだろうが、
中のゴミ袋は早急に交換するべきだろう。
その証拠に押し込んでもゴミが溢れるほど、
今や小さなゴミ箱の中はいっぱいいっぱいになっていた。
「……ふ、あぅ」
生まれたてのゴミを捨てるという一仕事を終え麗花は小さく伸びと欠伸をする。
そうして寄り添う男の体温を、その温もりを地肌で直接感じ取ると。
「今日はお休みなんだから……。慌ててすぐに起きなくても……くぅ」
あっという間にその目を閉じ、意識は睡魔とまどろみが待つ世界へ――。
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さて、それからおおよそ一時間後にだらしない阿呆は目を覚ました。
カーテン越しに差し込む光が柔らかく時間を教えている。
『寝坊助、既に昼前だぞ』
「――馬鹿め、今日の俺は一日オフだ」
幻聴に向かって寝ぼけた調子で返事をすると、このアホデューサー……
否、寝ぼデューサーは自分の胸に頭を預け、
世界一幸せそうな寝息を立てている可愛い生き物に気がついた。
「……キスしちまうぞ、眠り姫」
おお! なんと寒気がするほど歯の浮く台詞なのだろうか?
……神をも恐れぬ痴態を晒し、キザに笑った男は滑稽だ。
このアホめ、バカめ、起きて早々似合わんことなどしとらんで、
ササっとシーツ――は無いので足元の布団をおかけなさい。
なぜなら眠っている麗花の肩は剥き出しで、その上には艶やかな自慢の長髪がかかっていた。
このままでは寝汗で風邪を引いてしまうかもしれない。
急いでタオルを持って来て、拭いてしまうのも一つの手だ。
だが男は横になったまま彼女の寝顔を眺めると、
今はトレードマークの結び目の無い艶やかな髪に指を通す。
櫛ですくように動かせば、サラサラとした水のように吸い付くその髪質。
そうして目を閉じればまざまざと思い出せる。
滴る汗で張り付いた髪をかき上げる度、麗花が甘い高音を響かせたあの夜を。
……力いっぱい抱きしめた、彼女の感触は今でも手の平に残っている。
「えぇっと……寝てる、よな?」
そんな破廉恥な記憶を思い出したせいか、男はついついイタズラ心を逸らせた。
「コホン!」とワザとらしく咳払い。
左手を麗花の背中にそっと回し、空いた右手は仰向けになっている彼女の胸元へそわそわ伸びていく。
「……ムフ♪」
ああ男よ、しかしお前はなんて情けない!
わざわざ寝ているところを「……んっ」せんでも「ふ、あ」だから
「うぅん……」な麗花に面と向かって「ん、んぅ」すればいいじゃないか!
見ろ、彼女は眠りに落ちているというのに少しづつ吐息を乱しだし
「……あっ、ん……はぁ、ふぅ……」なんて無意識に蕩けた有様だ!
そうして男が指先に力を込めた刹那、麗花は「ふぁっ!?」っと一際声を荒げ、その意識は無理やり起こされた――
まだぼぉっとするまま目を開ければ、意地悪な笑顔をたたえた男の顔が飛び込んで来る。
「ん、ぁ……プロデューサーさん?」
「おはよう」
「……う~……おはよう、ございます……?」
いまだ事態の呑み込めていない麗花に言葉を返しながら、しかし男の右手は彼女の胸の上にあった。
……全くなんというほどの卑劣漢か!
神は悪びれもしないこの男に、今こそ天誅を下すべきであろう。
しかしながら、男に天罰が下る気配は一切無い。
むしろ状況はその逆へ、目覚めた麗花は瞳をしょぼしょぼ瞬くと。
「……あふ」
「なんだ麗花、まだ眠たいのか?」
「えへへ、欠伸見られちゃいましたね。……実はまだ、今も突然起こされたみたいな感じがして」
不思議そうに呟く麗花からそっと視線を逸らす男。
「なら、もう一度一緒に寝直そうか」
「もう一度?」
「ああ。……それとも、やっぱりこのまま起きるかい?」
「う~……ん。どうしようかな」
そうして麗花は、彼の言葉にしばしの間迷って見せると答えたのだ。
「――だったら昨日の夜みたいに、ぎゅーってしてくれたら考えます」
だがしかし、彼女はもう少しだけ慎重になるべきだったと言えるだろう。
恥じらいながら告げた言葉、続くハズだった
「なんてなんて」という誤魔化す際の常套句はたちまちキスに飲み込まれて。
「ぷはっ――よし寝よう! すぐ寝ようっ! 今から頑張って二度寝しよう!!」
「プ、プロデューサーさんっ!? でも、私、このままじゃ――」
まさか窒息してしまうんじゃないか? 愛しい相手の腕の内、
そう思わせられる程に力一杯抱きしめられた麗花は顔を真っ赤にしながらこう言った。
「これじゃあ私、私もうっ――ドキドキしちゃって眠れません!!」
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以上おしまいどっとはらい。書けば出る、出たら書く。
麗花さんは十連どころかおはガチャでも
来てくださっていたのでようやく「書けた~」って感じです。
では、お読みいただきありがとうございました。
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