「ある日魔法が使えるようになりまして」 (26)
※1週間ちょっと前に似たような題で立てのを内容の変更と全部地の文なしの会話分のみにして再チャレ
元の方は後でHTML化依頼をします
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1521447017
「それではやり方の説明をします」
「やり方は実に簡単で、特殊な加工を施した紙をそれをイメージしながら指でなぞり唱えるだけ」
「例えば『ドライヤー』と言いながらこの紙を指でなぞれば」
ボンッ
ブオオォォォ...
「このように何もない空間からドライヤーが出て髪を乾かしてくれます。実に便利」
「やり方はとっても簡単。多分魔力とかいったぶっ飛んだ要素も特には必要ないです」
「ただ、その代わりと言ってはなんですがその特殊な紙の作り方が面倒で」
「まあ、ここら辺はまた別の機会に」
「という事で作ってしまったという訳です」
「勿論これは偶然では出来なかった事です。完成までにはえらく時間がかかりました」
「ざっと1000年くらい」
「ちなみに私はタダのFラン大学生で普通の人間です」
「別に仙人という訳でもなく、世界観が未来でもありません。時間軸は現在です」
「ぶっちゃけ1000年後なんて人類滅亡してそうですし」
「ではどうしてかという話になりますが、これは実に単純な話です」
「私が今現在、同じ1週間をループしているという状況だからです」
「何故そんな状況になったのかは分かりません」
「ちなみにタイムリープとかではありません」
「私が住んでいる部屋以外が1週間ループしているという状況で、部屋の中の物はリセットされないというじつにご都合展開だからです」
「なので魔法を作ったのもそんな状況から抜け出す為でもありました」
「まあぶっちゃけ魔法なんて使えたところでなんの解決にもならなかった訳ですが」
「では何故そんな八方塞がりに近い状況でこんな語りをしてるかと言いますと─」
「おいコラ、いつまで無視してんだ。誰に語りかけてんだよ」
「いやはや、先にある程度世界観の説明をしないと…」
「朝起きたらぱっと見知らない世界に飛ばされていた私をスルーしてまでもすることか!?」
「こんな感じで異世界からの訪問者というテンプレがありまして」
「それでは始めます」
「生活便利書/グリモワール」
「機嫌なおしてくださいよ。ちゃんとさっきとは別に理由はありますから」
「…理由しだい」
「あなたは頭がいっぱいいっぱいで気づかなかったのでしょうが、翻訳魔法が翻訳しきれていなかったのでまず何言ってるのかがさっきまで分からなかったんですよ」
「なに?」
「さっきもご自身で言われた通り、あなたからすれば見知らぬ世界、私からすれば無駄にでかい魔女っ子帽子被ったローブの女の子の言語が同じわけないじゃないですか」
「あっ」
「そういう事です」
「なるほど、確かに見た感じ世界観そのものがこの部屋からすでに違う」
「さしずめ私から見ればあなたは古き良きレトロファンタジーの世界の住人に見えます」
「レトロとはなんだレトロとは!これは城下の魔術師では流行りの恰好なんだぞ」
「それが私からすればレトロファンタジーなんですよ」
「…むう、流石は大魔導師か。先の世界に生きていると見ても良さそうかな」
「大魔導師?私がですか」
「お前の周りに散らばってる本がどれも私が持っている『黒の禁書(グリモワール)』と似ているのでな」
「この魔法を書き留めたノートの事ですか。それにしてもぐりもわーる?とは」
「私の国では邪神が復活した時に1000年1度選ばれた勇者のみが使えるとされた、それはそれは強力な魔導書のことだ」
「何故それをあなたが?」
「勿論私が勇者でこれを用いて邪神を倒したからだ」
「なにそれ凄い」
「それはこっちのセリフだ。そんな魔導書に似た物が散らばっているんだ、お前はその製作者かもしくは近い関係。どちらにせよ私からすれば大魔導師だ」
「なるほど。ちなみにそれを見せては貰えませんか」
「それは構わないが」
ゴソゴソ
「これだ。…翻訳魔法?のお陰で今まで読めなかったタイトルが読めるようになってるな…」
「あっ」
「なになに…、『生活便利書』?…は?」
「おお、数万年ほど前に何故か忽然と姿を消したいたのがそんなに所に飛ばされていたとは」
「やっぱりお前のか。って、生活便利書って…」
「そのまんまの意味ですか」
「ええー…」
「内容は私が初めに使ったのと同じで、日常生活を非常に便利にしてくれる魔法を書き記したノートですね」
「……」
「なぜかあなたの世界では黒の禁書(グリモワール)と3ステップもランクアップしてますが」
「……」
「ぶっちゃけどうやって邪神とやらのを倒したのかが気になりますね。口元にセメントでも出して窒息死させたのでしょうか」
「だー!うるさーい!!お前のと違って私の場合はどでかい炎とか、物凄い風とかそんな感じのが出来ちゃう魔法だったんだよ!!」
「落ちついて落ちついて。なるほど、少し違うようですね。これは研究価値がありそうです」
「畜生…、もう2度と黒の禁書なんて呼べないじゃんか」
「別に呼んでもいいではないですか」
「うっさい!」
「あっ、大事なことを忘れていました」
「こっちはそれどころじゃ…」
「まだお互いに自己紹介してませんでしたよね。しましょう」
「…別に後ででも良くないか?」
「いや、正直メタ的な話、いい加減「」の前に名前を置きたいんですよ」
「うわー…」
「地の文なしではキャラが立ってない現状では誰が何を喋っているか分からないですから」
「メタネタにしてはキツい」
「ええ、滑ると分かっていてもこうして強引にでもいれておかないと、後になればなるほど入れ辛くなりますからね」
「それなら初めから名前じゃなくてもお前なら「大学生」とか私なら「少女」とかいれておいて、後から名乗ったあとに表記を変えるようにしておけば良かったんじゃ…」
「…こうやってメタネタもするよという事前アピールです」
「忘れてたのな」
「はい」
「もうやめやめ。これ以上するとメタネタのジレンマに陥るは」
「そうですね。ではさっそく」
「おう」
「の、前に」
「おい」
「ここに指をおいてゆっくりなぞってください」
パサッ
「ここか?」
「はい」
「それ」
『共有』
ポワンッ
ドクンッ!
「はぐあっ!?」
「大丈夫ですか?」
「おー…頭いてぇ…。お前何したんだよ」
「私の世界の常識をあなたの頭に入れ込みました」
「なにそれこわい」
「では質問です。あの四角い板はなに?」
「テレビ」
「どんなもの?」
「電波受信してそれを画面に映すもの…。はっ!」
「こういう事です。これで一々何かある度に説明しなくても話しがスムーズにいけます」
「…なぜ自らネタを潰していくのか」
「何か言いました?」
「別に。それよかさっさと自己紹介しよう、話しが進まない」
「そうですね。もう下準備も終わりましたし」
「ドンドンパチパチ」
「私の名前はサトウ、19歳。頭の方でも言った通り大学生で、何故か世界がこの1週間を延々と繰り返すというループに巻き込まれています。かれこれ約22万年ほどこの生活を続けてますが、作り出せたのは魔法をだけです。…こんな感じですかね」
「さらっと数万年とか言ってたが22万年もやってたのか」
サトウ「約ですけどね。計測を始めるまでにもかなりタイムラグがありましたから」
「そいつはご苦労なことで」
サトウ「軽いですね…。では次にあなたの」
「なぁ、さっきの『共有』ていう魔法は使えないのか?」
サトウ「申し訳ないですが、あの魔法は私からの一方通行でしか出来なくて」
「なんだよ、大魔導師の割には大したことないな」
サトウ「元を辿ればバカ大学生ですので…」
「ま、なけりゃなしでもいっか。じゃあ、ここに来るまでの過程も踏まえて自己紹介してやるから、ちゃんと聞けよ」
サトウ「はいはい」
「こほんっ。私の名前はマリカ=ガーレム・フ
で、朝起きたらお前の横で寝てたのが今のまでの話だ」
サトウ「それはそれは」
マリカ「おいちょっとまて。なにキレイさっぱりカットしてるんだよ」
サトウ「はて何か」
マリカ「名前の途中から思いっきりショートカットしてんじゃねぇか!」
サトウ「いやはや、こちらからすればコミック換算なら30巻分の冒険活劇のあらすじを延々と聞かされているようなものでしたからね」
マリカ「何か問題あんのかよ」
サトウ「いや、長さ的にそっちでもう物語作っちまえよという感じでしたから」
マリカ「何か問題あるのかよ」
サトウ「私が聞きたかったのはあなたの名前とこの世界に来る前のアクションだけでしたから」
マリカ「釈然としねぇ…」
サトウ「さて、マリカ。あなたが数万年前に紛失した私の生活便利書を持ってきた事で、実はかなり事態が変わっています」
マリカ「真面目路線に戻ったな」
サトウ「締める時は締めるのが大事な事なんです。で、あなたの存在によってこの世界は少なくとも第三者の介入があったという事が証明されました」
マリカ「と、言うと」
サトウ「正確にはあなたとそのノートの存在がその証明です」
マリカ「…なあ、気になってたんだがお前の現状を要約するならこの世界はこの部屋以外がループしてるんだろ?」
サトウ「ええ」
マリカ「どうやったら無くすんだ?外に出さない限りは残ったままなんだろ?」
サトウ「そこです」
マリカ「どこ?」
サトウ「そこなんですよ。当時私はそのノートを外に持ち出した事はありません。あの時点ではコピーを作ってませんでしたからね」
マリカ「ふむふむ」
サトウ「それがある朝目が覚めると、ピンポイントに消えてたんです。数冊が」
マリカ「まだ消えたノートがあったのか」
サトウ「そこは後ほど。で、次に戻って来た時にはノートだけではなくあなたまで。これって少し変ですよね」
マリカ「どこが?」
サトウ「あなたはここに来る前の日は適当にブラブラと過ごした後に、城下の宿で寝たと言いましたね」
マリカ「ああ、言ったな。お前がショートカットしてる部分で」
サトウ「つまりは何もアクションをしていない。それは私も同じで昨日は、正確には先週の今週の日曜夜は特に何もすることなく就寝して終わってるんですよ」
マリカ「ややこしいな。先週の今週って」
サトウ「仕方ない事です」
マリカ「まあ、とにかくお前が言いたいのは双方何もしてないのに私がここにポンと置かれるのは当然だがおかしな話だから、第三者の干渉があったと思うのが妥当って話だろ」
サトウ「その通りです」
マリカ「まあ、そーだった場合はお前が今陥ってる状況も第三者が作り出してる可能性が高いな」
サトウ「ええ、お陰様で解決手段には至ってはいませんが、核心にはそれなりに近づけた様な気がします」
マリカ「僅か20レスで凄まじい進歩だな」
マリカ「つかさっきさ、さらっと数冊消えたって言ってた気がするんだけど」
サトウ「はい、その生活便利書を含めて7冊」
マリカ「…そしてその内の1冊を持ってる私が本来の持ち主の所にきた」
サトウ「そうですね」
マリカ「逆ドラゴンボールみたいな感じになるのか、これ」
サトウ「…否定は出来ませんね」
マリカ「だよなぁ。これってあれだよな、間違いなく定期的に追加される魔導書とそれを持つ人間を携え全ての元凶に挑むストーリーの流れだよな」
サトウ「そうなってくれればある意味ではゴールが見えてる分有難いんですがね」
マリカ「もう口に出したからそのルートは消えたな」
サトウ「…自分でやっておいて言うのもなんですが、会話が異世界系感要素が0ですね」
マリカ「お陰様で読んでもいないドラゴンボールのあらすじが言える」
サトウ「さて、どうしましょうか」
マリカ「どうしましょうかって、」
サトウ「どちらにせよあなたが来ただけで他に新しくする事が増えたわけでもありませんし」
マリカ「普通なら私が持ってきた黒の禁書が発端で話が進みそうなものだけどさ」
サトウ「普通ならそうなんですがね」
マリカ「お前もう既にコピー作ってんじゃん」
サトウ「それもほぼオリジナルと同じものです」
マリカ「…ちなみに他の消えた数冊のコピーは?」
サトウ「他は大半が実用性皆無のものでしたのでコピーは作ってませんね」
マリカ「何故私はここにいるのか」
サトウ「…なんかすいません」
マリカ「いや、マジでどうするの。ここのままだと次の奴が来るまでただ待っとくだけになるじゃん」
サトウ「そうですね。本来ならば次のパートは『初めての異世界案内編』という感じでコメディーパートに行く筈なのですが」
マリカ「もうバッチリこの世界の知識はインプットされてるからな」
サトウ「困りましたね。ラブコメしようにも私自身がほぼそっちの方は精神的に枯れてまして」
マリカ「…22万年ってスゲーな」
サトウ「楽しかったのは最初の100年ぐらいでしたから」
ペらん
マリカ「ほれほれ〜」
サトウ「…ショーツの生成技術だけは無駄に発展してる世界だったんですね」
マリカ「なんかムカつく」
サトウ「こうなってくるとあなたの自己紹介はショートカットすべきではなかったかもしれませんね」
マリカ「もう喋ってはやんねーぞ」
サトウ「あの長さならそれだけで次の人間が来るまでの繋ぎになったかも…」
マリカ「それはそれでどうなんだよ」
サトウ「こう普通の魔法ものと言ったら魔法を用いたバトルが展開されるのに」
マリカ「まあ、大半のそういったやつなら戦いの核になる要素だな」
サトウ「しかしそれすらできない」
マリカ「戦う必要がないからな」
サトウ「あなたが王道のツンデレキャラなら最初のセリフ時点で雷魔法でも撃ってきてコメディーバトル的な事が出来たのに」
マリカ「それでお前が死んだらどうする。普通の感性の持ち主なら出会ったばかりの人間にそんな事はしないからな」
サトウ「死なないから問題ありません」
マリカ「あれか、『いきなり何すんだよ!?パキンッ』みたいな感じでガードでもするのかよ」
サトウ「いえ、死んでも問題がないということです」
マリカ「それってどういう…」
ゴゴゴゴゴゴゴ......
サトウ「おや…」
ズズーン!
マリカ「!?」
サトウ「まさかこのまま何もないなんて事はありえないと思っていましたが、流石にそうはいけませんよね」
マリカ「ようやくそれっぽくなってきたな」
サトウ「どうやら外の方に何かが出てきたようですね」
ズーン...ズーン...
マリカ「結構近い…。そしてデカそうだな」
サトウ「とりあえず行ってみましょう」
タッタッタッ...
「こっちには向かってない!」
「逃げろぉ!」
「国はなにやってんだ!?」
サトウ「ビル群の方から人が逃げて来てますね」
ズーン...ズーン...
マリカ「あれだな、知識はあってもやっぱすげぇなこの世界の建物は。あんなに細長いのによくさっきの揺れでも倒れないな」
サトウ「まあ、魔法の代わりに培われた技術ですから」
マリカ「あの世界の建物なら民家程度は倒壊してる」
サトウ「レトロファンタジーな世界ですもんね」
マリカ「にしても見えねぇ」
サトウ「音からして相当大きいはずなのですが」
マリカ「ビルがデカすぎるんだろ」
サトウ「…まあ、少なくともウルトラマンとかゴジラなような感じでは無さそうですね」
マリカ「だな」
サトウ「……」
マリカ「なにガッカリしてんだ。そんなものきたら勝てる気しねぇし来なくて正解だ」
サトウ「邪神には勝てるのに?」
マリカ「デカさってのはそれだけでも戦闘ではかなり比重が大きい要素なんだよ」
サトウ「なるほど」
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