「銀河漂流ウサミンロボ」【モバマス】 (27)
【モバマスSS】です
安部菜々のオーダーによって池袋晶葉の作ったお月見ウサちゃんロボ
ウサちゃんロボは、安部菜々の故郷ウサミン星の超科学によって新たな力を得た
その名は、ウサミンロボ!!
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1520775546
無限に広がる大宇宙。
♪わーいぱうぇー おーゆてぃー とぅぎゃざうぃっうぃー
何か聞こえてきましたが、空耳です。
ウサミンロボが漂っていました。
うーさー
ウサミン推進システムはダウンしていて、残っている補助システムでは簡単な姿勢制御しかできません。
うーさー
ウサミンロボはジタバタせずに救助を待っていました。
こんなことになったのも、不幸な事故のためなのです。
ウサミンロボたちは年に一度、超光速の亜空間航行(デスドライブ)でウサミン本星に渡ります。
ウサミン大王に拝謁して、地球の現状を報告するためです。
これを、超光速参勤交代といいます。
本来ならウサミン星人安部菜々の役目なのですが、菜々ママはアイドル活動に忙しいので仕方ありません。
ウサミン大王はウサミン星人安部菜々の活躍を聞くと喜んで、たくさんのお土産を用意してくれます。
それは地球にはない、色々な星の特産物や名物です。
ソリアンブランデーやロミュランエールは、地球にはないお酒で高垣楓さんや片桐早苗さんが喜びます。
コーヒーにも似たラクタジーノは、パンやドーナッツに合うので大原みちると椎名法子が大喜びです。
グラドスの缶詰やビーメラのローヤルゼリー、バカコーンなども喜ばれます。
宇宙にはこんなにたくさんの名産物があるのに何故か、宇宙旅行者の人気はラーメンとビフテキに二別されます。謎です。
ラーメンは人類永遠の友で、ビフテキは男の食べ物だそうです。ウサミンロボにはよくわかりません。
お土産を満載したウサミンロボは、地球への帰り道に渡りビヤーキー……地方によってはバイアクヘーとも呼ばれます……の群れや、猫村博士にも出会いました。
しかし、地球まであと三日というときでした。
亜空間航行中のウサミンロボは、亜空間で大きくて真っ赤ないかり肩のロボットを積んだ宇宙船にぶつかってしまったのです。
どうやら先方は急いでいるようで、ウサミンロボには気づきませんでした。
衝突により、ウサミンロボの顔にあるウサのゲージが変化しました。
特になにも起こりませんでした。
通常空間に弾き飛ばされたウサミンロボはすぐに積み荷を確認しました。
お土産は全部無事です。
しかしそのショックで、ウサミン推進システムが損傷を受けたのです。
うーさー
バレンタインデー当日には地球に戻る予定だったのですが、仕方ありません。
ウサミンロボは救助を待つことにしました。
地球では、バレンタインデーが近づいていました。
バレンタインライブ当日に渡す予定のチョコレートも当然手作りです。
ちなみにそのライブのチケットは抽選販売です。それでも発売時間になった瞬間、受付サイトはサーバーダウン、ファンたちの当選を熱望する思念に晒された依田芳乃は熱を出してしまいました。
翌日、白坂小梅の力を借りた思念返しで数万人のファンが熱を出しました。
それでもチョコレートの製造は続きました。
チョコドーナッツ、チョコパン、チョコパフェ、チョコ生魚、チョコマルメターノ、チョコぴにゃ、チョコ丼飯などの派生品の準備も怠りありません。
「チョコはチョコっとでいいですよね」
二十五歳児も絶好調でした。
うーさー
ウサミンロボは救助を待っていました。
うさ?
身体が重力にひかれる感覚があります。
センサー最大。
これはブラックホールです。大ピンチです。
これがどこかの太陽ならば、太陽の力をもらって、「太陽の子ウサミンロボRX」として蘇るチャンスもあったかもしれません。「太陽の使者」ではありません。大切なことです。
でも、ブラックホールです。
夕暮れ、やっとあの子といい感じの時にしゅわっと風が吹いて、ぶっ飛ぶ二人の間をすり抜けて何者かが消えていく、あのブラックホールです。
コンドルのジョー(声:ささきいさお)が命がけで阻止したブラックホールです。
四天王がデスクロスで発生させるブラックホールです。
うーさー
ウサミンロボのウサミニアックブレインが必死で計算します。
推進補助システムと残り少ないエネルギーでブラックホールから脱出する方法を模索します。
一つありました。
ブラックホールに吸い込まれる力を利用した、スイングバイ航法です。
またの名をフライバイ航法。
まぶしいばかりに輝いてなンにも言わずにフライバイです。
燃える命の片道切符でただ行くだけです。オゥイェイ。
うーさー
バレンタイン当日、アイドルたちはチョコレートを配ります。
当選率0.029%に勝利したファンたちも大喜びです。
托鉢僧の格好をしたパンツまるだしの変態もいましたが、ウサミンロボが追い出しました。
勿論このウサミンロボは、銀河漂流ウサミンロボとは別の個体です。
他にも沢山のファンが集まりましたが、極一部を除けば皆礼儀正しいファンばかりで、警備担当のウサミンロボたちも一安心でした。
法子のチョコドーナッツを受け取ったファンは感極まって泣いています。
みちるのチョコパンも大人気です。
「勿体なくって食べられません、家宝にします」
「ありがとうねー☆ 食えよ」
しゅがはのツッコミも冴えます。
鞭を振り回す財前時子さまの周辺では、鞭に塗られたチョコを一口でも舐めようと男たちが頑張っています。
舐めることに成功した者も直後に顔面直撃の鞭を受け、「ありがとうございます!」と叫んで散っていきます。
「はーい、ほらほら君たち、これはどうかにゃあ~」
濃厚なチョコの匂いを周囲に撒きながら、一之瀬志希はしゃなりしゃなりと歩きます。チョコ本体はどこにもありませんが、ファンは大満足です。
「ありがとう、嬉しいよ!」
「はい、頑張ります」
「いつも見てくれてるんだ、ありがと」
本田未央、島村卯月、渋谷凛を始めとするアイドルたちはオーソドックス、しかしそれゆえに王道のチョコ配りです。
握手までついています。
双葉杏はチョコの入った大型ケースの前に座っています。
ファンたちは勝手に一つずつ持って行くのです。
オゥイェイ
ブラックホールのあった恒星系を無事フライバイした銀河漂流ウサミンロボです。
緊急脱出だったので現在の進行方向も宇宙絶対座標も不明です。
本当の大ピンチです。
アルファ宇宙域なのかどうかもわかりません。もしかしたらデルタ宇宙域かもしれません。あるいは悪の暗黒ひも宇宙か。
これほどのピンチはいつ以来だろうかと、ウサミンロボは思いました。
平行宇宙でミシーロ帝国を率いる暗黒大常務と戦った時以来でしょうか。
あの時は、戦闘のプロであるグレートウサミンロボが助けてくれたのです。
エネルギーも残り少ないのです。
せめて、知り合いとまではいかなくとも、ウサミン星人と友好的な宇宙人が近くにいれば……
ウサミン星人と仲の悪い宇宙人は珍しいので、そちらの心配はありません。
うーさー
バレンタインライブの打ち上げ会場には、徐々にアイドル達が集まりつつありました。
「御苦労様でした、プロデューサー」
「いやいや、みんなの努力の結果ですよ。もちろん、ちひろさんも」
ちひろさんとモバPがノンアルコールカクテル片手に話していると、市原仁奈と龍崎薫がやってきます。
その手に持っているのは、プチチョコのたくさん入ったケースです。
「ちひろさん、どーぞでごぜーます」
「ちひろさん、ハッピーバレンタインだよ!」
二人からちひろさんにもミニチョコです。
小学生組は、プチチョコを皆に配って歩いていたのです。
全員が全員に普通の大きさのチョコを渡していたのでは、渡す方ももらう方も大変です。
だから事務所のアイドル同士、お友達同士で配るのは、プチチョコにしようと決めていたのです。
勿論、ちひろさんも準備は怠りありません。
「はい、ハッピーバレンタイン」
チョコレートのお返しです。
「なるほど、楽しそうでいいですね。金銭的にもそんなに負担にならないし」
「ええ、プロデューサーは別格ですけども」
「いや、嬉しいけどこれは」
自分の身長と同じくらいの高さに積み上げられたチョコを前に、モバPは途方に暮れていました。
アイドルたちは笑っています。
「皆の感謝の気持ちじゃないですか」
そう言うちひろさんも、山の上にチョコを一枚。
「モテモテですね、プロデューサー」
「はは……糖尿になるな、これ」
「美味しいから大丈夫ですよ」
「いやそれ、かな子だけだ」
三村かな子は体内の血糖値を自在に操る能力者なので平気ですが、そういう問題ではありません。
ちひろさんや、その場にいたアイドルからチョコをもらった仁奈ちゃんと薫は、再び移動を開始します。
「次は、わんことハナコでごぜーます」
ペットのみんなにもチョコレートのおすそわけです。
わんこやハナコ、勿論ヒョウ君やブリッツェン、うえきちゃんたちも大切なお友達なのです。
「二人とも、ちょっと待って」
駆けだそうとした一堂に声をかけたのは三船美優お姉さんでした。
「なんでごぜーますか? 美優お姉さん」
「わんこちゃんやハナコちゃんにもチョコレートをあげるの?」
「うん!」
元気良く手を上げた薫の持つチョコレートケースを見て、美優お姉さんはにっこり笑います。
「うーん、あのね、犬や猫はチョコレートは食べられないの。病気になってしまうのよ?」
「え」
「ええーっ」
二人はびっくりしてしまいました。
「代わりのペット用クッキーがあるわ、これをあげればいいのよ」
「う……」
仁奈ちゃんは泣きそうです。
薫が言いました。
「せっかく準備したのに……」
「じゃあ、今から準備しましょう」
「え?」
「二人は、そのチョコレートを自分のお小遣いで買ったのでしょう?」
「うん」
「それじゃあ、チョコレートとクッキーを交換しましょう。これで、クッキーは貴方たちのものになるから、それをあげればいいのよ」
二人の泣き顔が、瞬時に笑顔にかわります。
「ありがとうごぜーます、美優お姉さん!」
「ありがとうございます、美優お姉さん!」
お礼を言った仁奈ちゃんがふと、首をかしげました。
「美優お姉さんは物知りでごぜーますね」
「私もね、昔は犬を飼っていたの。このクッキーも、あの子が好きだったものよ。クッキーをあげるとね、いつも私の膝に前足を置くの。それが、あの子のお礼のポーズなの」
「美優お姉さんのお犬にも会いてえです」
「ふふっ、難しいわね。あの子はもう、お星さまになっちゃったから」
「お星さま?」
そこでモバPが声をかけます。
「仁奈、薫。早くいかないとハナコもわんこも帰っちゃうぞ」
「あ、行こう、仁奈ちゃん」
「合点でごぜーます」
二人は再び笑いながら駆けだしました。
「走ると危ないわよ」
駆けていく二人の後ろ姿に声をかける美優お姉さん。
「美優さん、あのクッキー、美優さんが自分であげるつもりだったんじゃ」
「いいんですよ、プロデューサー。仁奈ちゃんたちも笑っているんですから」
うーさー
今日が帰還予定日です。
予定通りに帰ることができないので、ウサミン救助隊(特救指令ウサブレイン)が編成されるに違いありません。
だけど、現在位置がわからないのです。
ウサミンロボは為すすべもなく銀河漂流中です。
抗うすべはわが手にはありません。
エネルギーも尽きてきました。
〝あ、ご主人様の匂いがする〟
うさ!?
〝君は、ご主人様のお友達なの?〟
何者かが接近してきました。
敵意は全く感じません。
誰うさ?
うひゃい
ウサミンロボはペロリと舐められました。
舐められたうさ
現れたのは、一頭の立派なゴールデンレトリバーです。
〝やっぱりご主人様の匂いだ〟
ご主人様って誰うさ?
レトリバーはウサミンロボの問いに首を傾げます。
〝?〟
忘れたうさ?
〝ご主人様は、優しいよ!〟
うーさー
ウサミンロボは気付いていました。
ここは宇宙空間です。宇宙空間でゴールデンレトリバーは生きられません。そして、ウサミンロボのセンサーも生命反応は探知していないのです。
それでもウサミンロボは驚きません、なぜならウサミンロボは知っているからです。
菜々ママに聞いたことがあるのです。
ご主人様と一緒に生きられなくなったペットは、虹の向こうでお星さまになると。
きっとこのレトリバーも、お星さまになったのです。
一緒に行くうさ?
もしかすると、一緒に地球へ帰ればまたご主人様に会えるかもしれません。
ウサミンロボに匂いがついているのなら、ご主人様はアイドルの誰かに決まっています。
〝ありがとう〟
〝でもいけないよ〟
うさ?
〝一緒だと、君は帰られなくなってしまうよ〟
ウサミン科学は凄いうさ、きっと帰られるうさ。
〝ありがとう。僕はもうご主人様には会えないんだ。会っちゃいけないんだ〟
どうしてうさ、会いたいうさ?
〝ううん、もう僕は、別の世界にいるから〟
〝でも、君は間に合う、君は帰るんだ〟
うーさー
〝またご主人様の匂いを思い出したよ。ありがとう〟
うさ!
〝ありがとう〟
待つうさ、一緒に帰るうさ!
レトリバーの姿が消えていきます。
ウサミンロボはセンサーを最大出力にしますが、それでも姿が見えなくなっていきます。
〝元気でね、あ、思い出したよ。ご主人様の名前はみ……〟
うさぁ!!
ウサミンロボは自分が亜空間に突入させられたことに気づきました。それどころか、ウサミン推進システムが復旧しています。
どういうことでしょうか。
亜空間から抜け出したとき、ウサミンロボの前には青い地球の姿がありました。
バレンタインライブの打ち上げが終わるころ、予定から二時間ほど遅れてウサミンロボが帰還しました。
出迎えてチェックを済ませた池袋晶葉は首をかしげています。
「おかしいな、航行ログが一部損傷してる。行きの記録はいいが、帰りの記録の後半が無くなっているぞ」
帰ってきたウサミンロボは何故かわたわたと急いで会場へと向かいます。
「どうした、ロボ。ウサミンは会場にはいないぞ」
会場についたウサミンロボは、迷わず美優お姉さんのもとへ走ります。
うさっうさっ
「どうしたの? ロボちゃん」
美優お姉さんはその手にまだ交換したプチチョコを持っていることに気づくと、にっこり笑ってロボにチョコレートを渡します。
「そんなに慌てて、もしかしてチョコレートがほしいのかしら」
うさっ!
チョコレートをもらったウサミンロボは、ミトンハンドをお姉さんの膝においてお礼を言います。
あとから聞いても、どうしてそんなことをしたのか、ウサミンロボにもわからないのです。
美優お姉さんは一瞬絶句しました。そして頷くと、ウサミンロボを優しく抱きしめたのでした。
以上お粗末様でした
流石に「バカコーン」わかる人は少ないと思う……反省はしていない
無茶苦茶遅れたけれど、冬コミ来てくれた人ありがとう
そして今日の神戸のシンステに来てくれた人もありがとう
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