朝霜「あれ、どうした清霜。酒でも飲んできたか?」
霞「ちょ、ちょっと、何で泣いてるの……」
清霜「か、霞ちゃ……うぇぇ……おろろろろろ」
霞「!?だ、大丈夫!?」
足柄「泣きながら吐く人久しぶりに見たわ」
大淀「年末の足柄さん以来ですね」
朝霜「霞の顔見て吐いた可能性あるか?」
霞「ないわよ!」
霞「……な、ないわよね?」
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清霜「ひっく、ぐすっ……うぇぇぇ」
足柄「ちゃんと袋に吐くあたりお行儀良いわね」
大淀「足柄さんは窓から外に撒いてましたからね」
朝霜「霞が原因だとしたら背中さすってんの逆効果じゃね?」
霞「あんたらちょっとは心配する素振り見せなさいよ!水持ってくるとかさぁ!」
清霜「霞ちゃん……ひぐっ……悪くない……おぇぇ」
霞「い、いや無理して喋らなくていいから……ひとまず私の顔が原因じゃなくてよかったわ」
清霜「…………」
大淀「落ち着きました?」
朝霜「何があったか話してみな。洗いざらい」
清霜「うん……ぐすっ」
清霜「えっと……その……誕生日って……あるじゃない……?」
朝霜「?」
霞「あるわね、誰にでも」
足柄「ちょっと待って!私忘年会で吐いたの!?」
朝霜「今更ぁ!?」
大淀「その話長くなりますよ」
清霜「……うぷっ」
霞「私以外いないものとして良いからゆっくり話してちょうだい」
霞「誕生日がどうかしたの?」
大淀「まあ私たちは誕生日というより、進水日ですけど」
足柄「着任した日にするか起工日にするか進水日にするか迷ったらしいわ」
朝霜「誰が?」
足柄「提督が。祝うにあたって」
大淀「まあ、いつ『生まれた』と判断するかは難しいですからね、私たち。意志と記憶は艦艇時代からのものなわけですし」
朝霜「今は第二の人生だもんな」
足柄「物心ついたときには鉄の塊だったから人生って気はしないわね」
大淀「『物心つく』って言い得て妙ですね」
足柄「ホントね!」
朝霜「ウケる」
清霜「…………」
霞「黙らなくていいから。今あんたの話の方が大事だから」
清霜「その……進水日なんだけど……」
足柄「ああ、清霜の進水日」
霞「2月29日ね」
大淀「ちょっと珍しいですよね」
朝霜「あれだろ?4年にいっぺんしか来ない日」
清霜「おええええぇぇぇ!」シャバー
霞「!?」
大淀「かつてない波が来たみたいですね……」
足柄「もう胃の中空っぽよ、きっと……」
朝霜「顔から垂れてんのが透き通ってて涙なのかさっき飲んだ水なのかわかんないな……」
霞「清霜ーー!」
清霜「はぁ……はぁ……げほっごほっ」
大淀「とりあえずこれで顔を拭きましょう。溺れた人みたいになってますよ……大丈夫ですか?」
足柄「涙の海で溺れるってちょっと情緒があるわね……大丈夫?」
朝霜「半分吐瀉物だけどな……大丈夫か?」
霞「あんたたち純粋な心配はできないの?」
朝霜「さっきの流れのどこに泣きゲロ最高潮の波を感じたのさ」
清霜「……」フキフキ
清霜「例えばの話さ……」
霞「うん……」
清霜「霞ちゃんが12歳だとするじゃない?」
足柄「んー」
大淀「ちょっと若い気もしますが、まあ妥当ではないでしょうか」
朝霜「世の12歳はこんなんなのか?」
霞「こんなんって……」
清霜「例えばの話ね」
清霜「で、8年後……20歳で戦艦になるとするじゃない?」
足柄「ん?」
朝霜「おっと?」
大淀「雲行きが……」
清霜「怪しくなってません!」
足柄「そうね。いつもの清霜だわ」
霞「……私は20歳で戦艦にはならないわ」
清霜「24歳かもしれないのはわかってるよ!例えばの話だからそれは置いといて!」
霞「いや、いくつになろうと」
清霜「でもさ!仮に今、同い年だとしてさ!」
清霜「霞ちゃんが20歳の戦艦になったとき、私まだ14歳なんだよ!」
清霜「4年に一度の誕生日だから!」
清霜「霞ちゃんだけじゃない!今この瞬間にも、私の4倍速でみんな戦艦になっていって……私だけ取り残されていってるんだよ!」
朝霜「おい、あたいら全員戦艦になりゆく運命なのか?」
足柄「そうなった場合、誰が1番困るって提督よね」
大淀「確実に任務に支障をきたしますからね」
清霜「置いてかないでよ霞ちゃああああぁぁぁおろろろろ」シャバー
霞「…………」
大淀「超理論ですね」
足柄「霞、何か一言」
霞「今日の晩ご飯何かしら」
大淀「その理論で行くと私たちがおばあさんになる頃、清霜はまだ30前ですね」
足柄「ずるいわ」
清霜「!?霞ちゃん先に死んじゃうの……うぷっ……」
霞「話がどんどん飛躍するわね……」
清霜「死ぬ時は一緒って約束したのに……おええええぇぇぇ」
霞「そ、そんな恥ずかしい約束したっけ?」
清霜「ええっ!?ゆくゆくは一緒のお墓に入るってえろろろ」
霞「それは確実に約束した覚えないけど!?」
朝霜「とうとうみんな泣きゲロには触れなくなったな」
朝霜「まあとりあえず、霞には夕雲型家の墓に入っていただくとして……」
霞「いや入らないけど……」
清霜「うっ……ぉえ」
足柄「というか、私たちの墓ってやっぱり姉妹ごとなの?」
朝霜「知らんけどそんなイメージ」
大淀(私一人の墓かぁ……)
清霜「なんかこう……無理やり霞ちゃんねじ込めないかな……」
霞「他所の墓にねじ込まれたくはないんだけど……」
足柄「ほら、こないだ提督に借りた音楽盤の歌手みたいに……こらぼ?みたいな」
大淀「フィーチャリングですか?」
足柄「そうそれ」
朝霜「『夕雲型家の墓 feat.霞』」
清霜「ふぃーちゃりんぐしよう!」
霞「しないわ」
清霜「おああぁぁぁ」シャバー
大淀(明石か夕張あたりとフィーチャリングできないかな)
霞「お墓の話は置いといて」
霞「2月29日生まれだろうと歳は毎年取るわよ」
清霜「!?」
霞「『!?』じゃないわ」
朝霜「ふつーに考えたらそうだろ」
足柄「そんな都合の良い日があるわけないでしょ」
清霜「だ、だって……だって……」
清霜「うちの鎮守府、月ごとにまとめて誕生会するでしょ……?」
朝霜「だな。司令の提案で」
清霜「今月の誕生会……私祝われなかったもん……」
足柄「え?」
霞「えっ?」
朝霜「うわっ」
大淀「……?」
朝霜「司令……やっちゃったんじゃね」
足柄「これは軍法会議物よ」
霞「だ、誰も気づかなかったの?」
朝霜「酒で記憶が」
足柄「左に同じく」
大淀「いや、そもそも清霜……」
朝霜「霞は?」
霞「わ、私は長期遠征で先月の会いなかったのよ」
清霜「…………」サラサラサラ
朝霜「とうとう嗚咽が無言になったぞ」
足柄「目を閉じると澄み切った小川が流れる音がするわ」
霞「ちょっと私、司令官のとこ行ってくる」
大淀「霞、そうじゃなくて……」
ガチャ
提督「おっ、ここにいたか」
朝霜「向こうからおいでなすったぞ戦犯が」
提督「えぇ……なんでこの部屋床が水浸しなの」
足柄「収まりきらなくて溢れた乙女の涙よ」
朝霜「あと、ほぼ水の吐瀉物な」
提督「何があったんだよ……」
霞「あんたのせいよ!」
提督「!?」
清霜「………」サラサラサラ
提督「マーライオン……?あ、いや、清霜か」
朝霜「最低だ司令!見損なったぞ!何しにきやがったこんにゃろー!」
提督「い、いや……3月の誕生会で清霜の食いたいものとかリクエストを聞きに……」
清霜「え?」
足柄「ん?」
霞「あれ?」
朝霜「先に謝っとくわ。ごめん司令」
大淀「…………」
…………………………
提督「前に閏年じゃない年の誕生会、3月にしたいって言ったのお前だぞ清霜……」
清霜「!?」
提督「『!?』じゃなくて」
清霜「そ、そうだっけ……えへへ……」
足柄「なんで3月がいいの?」
清霜「忘れました!」
大淀「『あったかいから』って言ってましたよ」
足柄「ふわっとしてるわねぇ」
朝霜「よくわからん理由だな」
霞「っていうか大淀は知ってたんじゃない……」
大淀「だからちゃんと言いかけてはいましたよ」
提督「ちゃんと言い切って欲しかった」
大淀「成り行きを見守りたいという葛藤もありましたので」
清霜「じゃあ私来月誕生日だやったー!ふっふふっふー♪」
足柄「さっきまで泣きながら吐いてたとは思えない元気っぷりね」
朝霜「どうでもいいけど体内の水分量超えてるよなこれ」
提督「ちゃんと掃除しとくんだぞ……」
清霜「また一歩戦艦に近づいちゃうなぁ楽しみだなぁ」
足柄「そうね」
大淀「そうですね」
霞「………そうね」
朝霜「何年経っても近づかないぞ」
清霜「……………」サラサラサラ
HAPPY END
これだけだよ
またどこかで
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