セレナ「私、ホウエン行くのやめる」 (35)
空港
シトロン「もうすぐホウエン行きの便の搭乗が終わりますよ」
ユリーカ「セレナの乗る飛行機だよね」
セレナ「うん、このエスカレーターを下りたところが搭乗口だから……」
セレナ「そろそろ行かなきゃ!」
サトシ「ホウエンでポケモンコンテスト頑張れよ!」
ピカチュウ「ピカ!」
サトシ「……おっと」ヨロヨロ
ムニュ
セレナ「ひゃうん!」ビクッ
サトシ「悪いピカチュウ、尻尾踏みそうになっちゃった」
サトシ「どうしたんだセレナ」
セレナ「…………///」カァァ
ユリーカ「セレナどうしたの?」
セレナ「私、ホウエン行くのやめる」
サトシ・ユリーカ「えーっ!?」
シトロン「…………」
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サトシ「じゃあポケモンコンテストはどうするんだよ?」
セレナ「コンテストは……もういいの」
ユリーカ「どうしちゃったの?さっきユリーカに負けないくらい頑張るって約束したばかりなのに!」
ユリーカ「ポケモンのパフォーマンスでみんなを笑顔にするのがセレナの夢だったんでしょ?」
セレナ「私の夢はね……他にもあるの」
セレナ「ね!サトシ!///」
サトシ「……え?」
シトロン「……仕方ないですよサトシ」
シトロン「こうなったらセレナの夢もサトシが背負うしかありません」
セレナ「よろしくねサトシ!///」
サトシ「俺ポケモンパフォーマーなんかならないぜ?」
シトロン「そういう意味じゃなくてですね……」
ユリーカ「どういうことなのお兄ちゃん」
シトロン「つまりサトシがセレナのナニをナニしてしまったから……」
シトロン「責任を取って……そうする他ないというわけで……」
ユリーカ「ナニって何?」
シトロン「ユリーカはまだ子供だから言っても理解できませんよ」
ユリーカ「むぅー!子供じゃないもん」
シトロン「じゃあ教えますけど……」ゴニョゴニョ
ユリーカ「そういうことだったんだ。じゃあ仕方ないね」
シトロン「わかったんですか?」
ユリーカ「あたしだって女の子だもん」
ユリーカ「そんなことされたらお嫁に行くしかないよね」
サトシ「教えてくれユリーカ!」
ユリーカ「サトシ、さっき自分がやったこともわからないの?」
ユリーカ「セレナにおっ○いタッチしたんでしょ?」
サトシ「セレナが変な声をあげたとき、よろけた拍子に手が何かに触れたような気がしたけど」
サトシ「それがどうかしたのか?」
シトロン「おっ○いタッチとはそういうことなんですよ……」
サトシ「どういうことだよ?」
シトロン「だからそういうことなんです!」
サトシ「だからそういうことじゃわかんないよ!」
サトシ「セレナもこんなことでポケモンパフォーマーを辞めていいのか?」
サトシ「エルさんに憧れてトライポカロンに挑戦して」
サトシ「誰よりも努力してマスタークラスの準優勝まで勝ち上がって」
サトシ「セレナのママやヤシオさんにも応援してもらったんだろ?」
サトシ「そんな簡単に自分の夢を諦めていいのかよ?」
セレナ「うん、いいの」
セレナ「だっておっ○いタッチされたの……サトシが初めてだから///」
ユリーカ「おめでとうサトシとセレナ!」
シトロン「おめでとうございますサトシ、セレナ!」
セレナ「ユリーカ、シトロン……ありがとう!」
セレナ「私、絶対に幸せになるから!」
シトロン「急なことなので大したことはできませんが……」
シトロン「僕からのささやかなお祝いをしたいと思います」
サトシ「ちょ……待てよシトロン!」
サトシ「そういうことって何だよー!」
シトロン「今こそサイエンスが未来を切り拓くとき……シトロニックギア、オン!」シャキーン
シトロン「このマシーンでもうすぐ搭乗のカイリュー航空K91便カントー行きのチケットを発行します!」
セレナ「こんなのよく手荷物検査通ったね……」
ユリーカ「カントー行きって……サトシの乗る飛行機だね!」
ユリーカ「わかった!セレナのぶんのチケットを取ってあげるんだね!」
シトロン「そのとおり!窓口に行ってももう手続きは終了してしまいましたからね」
シトロン「これでサトシのお母さんにご挨拶に伺えますよ」
セレナ「ありがとうシトロン!」
シトロン「空席情報確認……よし、サトシの隣は空いてます」
シトロン「あとは手続きリストをちょこっと書き換えてQRコードを発行して印刷すれば……チケットの完成です!」ウィーン
サトシ「科学の力ってすげー!」
マサラタウン
セレナ「シトロンのおかげで一緒の飛行機に乗れたね!」
サトシ「あ、ああ……」
サトシ「でもセレナ、どこまでついてくる気なんだ?」
セレナ「サトシの家に決まってるでしょ」
セレナ「サトシのママにご挨拶に伺わなきゃ!」
サトシ「そんなの別にいいと思うけど」
セレナ「よくないよ!だって……私のママにもなるんだし……///」ボソボソ
サトシ「えっ?『私のママにも会う』?」
サトシ「ミアレシティでセレナのママに会ったから、セレナも俺のママに会いに来てくれるってことか?」
セレナ「///」ボケー
サトシ「そうか!それで俺と同じ飛行機に乗ってマサラタウンまで来てくれたのか!」
サトシの家
サトシ「ただいまー!」
ハナコ「おかえりサトシ!」
ハナコ「……って、あら?」
セレナ「こんにちは……サトシのママ」
ハナコ「まあセレナちゃん!来てくれたの?」
サトシ「セレナはママにご挨拶に伺い?に来たんだぜ(たしかそんなこと言ってたよな)」
ハナコ「えっ……?」
サトシ「俺、お腹すいちゃったよ。ご飯できてる?」
ハナコ「今日帰るって連絡あったから準備してたけど……」
サトシ「やったぜ!」パクパク
ピカチュウ「ピカチュウ!」モグモグ
ハナコ「それにしてもセレナちゃん、ご挨拶ってまさかサトシと……」
セレナ「はい!サトシのママ……いえ、お義母さま」
サトシ「やっぱりママの手料理がいちばんだぜ!」モグモグ
サトシ「旅先ではセレナやシトロンが作ってくれたけど、やっぱりママには敵わないよな!」
ハナコ「ちょっとサトシ、セレナちゃんに失礼でしょ!」
セレナ「いいんです、私がまだまだ未熟なだけですから……」
セレナ「それに、はっきり言ってくれたほうが今後の勉強になります!」
セレナ「私も早く家庭の味を作れるようにお義母さまに教えてもらわないと……!」
ハナコ「セレナちゃん、家庭の味は教わるものじゃないの」
セレナ「えっ……?」
ハナコ「盗むものなのよ」
ハナコ「それが花嫁修行でもあるんだから……頑張ってね!」
セレナ「はいっ!」
サトシ「ハナヨメ?新しいポケモンか?」
夜
ハナコ「セレナちゃん、サトシの部屋にお布団敷いておいたから」
セレナ「えっ……でも今日は泊まっていくつもりなんて……」
ハナコ「私たちはもう家族なんだからそんなことは気にしなくていいのよ!」
サトシ「そうだぜセレナ!もう夜なんだし泊まっていけよ(家族?まあ一緒に旅をした仲間だし、似たようなものか)」
サトシの部屋
サトシ「あれ?ママが予備の布団を用意しておいたはずなのに……ベッドしかない」
サトシ「枕はふたつあるけど……予備の布団なかったのかな」
セレナ「(ありがとうお義母さま!)」
サトシ「じゃあセレナがベッドを使ってくれよ!俺は寝袋があるから」
サトシ「……って、寝袋はママが洗濯しちゃったんだ」
サトシ「まあいいか」
サトシ「枕がふたつあるってことはベッドにふたりで入れってことだし……」
サトシ「セレナ、一緒に寝ようぜ」
セレナ「うんっ……///」
ドアの向こう
ハナコ「(計画通り!)」ニヤリ
サトシ「悪いな……なんか窮屈で」
セレナ「へ、平気だよ……むしろもっと側に来てほしいかな……なんて///」
サトシ「そっか、よかった」
セレナ「ねえサトシ……手つないでいい?」
サトシ「…………」
サトシ「セレナはいいのか?」
セレナ「えっ……?」
サトシ「ポケモンパフォーマーの夢、本当に諦めていいのか?」
サトシ「俺がエイセツジム戦で負けて落ち込んでたとき……セレナ言ったよな」
サトシ「『こんなの私の知ってるサトシじゃない』って」
サトシ「今のセレナだって、俺の知ってるセレナじゃないと思うんだ」
サトシ「俺の知ってるセレナはいつだってポケモンに一生懸命で」
サトシ「失敗したってそれをバネに頑張れる強い娘だ」
サトシ「俺がバトルで勝ったときは自分のことのように喜んでくれたり」
サトシ「俺のことを誰よりも心配してくれた」
セレナ「それはサトシのこと……いちばんに想ってるから……」
サトシ「…………」
サトシ「そうなら、ホウエンのポケモンコンテストに行ってこいよ」
サトシ「ポケモンパフォーマーを辞めるってことは、ライバルのサナやミルフィやムサヴィさん」
サトシ「それに憧れだったエルさんや、認めてくれたヤシオさん」
サトシ「それにセレナのママを裏切ることになるんだぜ」
セレナ「そうだけど……私には別の幸せが……」
サトシ「俺だってセレナの頑張ってる姿にいつも励まされてきたんだ」
サトシ「夢を諦めた弱いセレナなんていらない」
セレナ「そんな……ひどいよ……」グスッ
ハナコ「なんてこと言うのサトシ!」バタン!
サトシ「マ、ママ!」
ハナコ「セレナちゃんは自分の夢を犠牲にしてまでサトシのお嫁さんになるって決めたのよ!」
サトシ「(おヨメさんって?)」
ハナコ「私もポケモントレーナーであるサトシのパパに嫁いだからわかる……」
ハナコ「私にも夢があった……でも結婚して、サトシが生まれて、日々の生活の中で夢はいつの間にか消えていった」
ハナコ「でもパパや、息子のサトシが夢に向かって頑張ってる!」
ハナコ「だから後悔なんてしてないの……それはセレナちゃんだって同じはずよ!」
ハナコ「サトシ……あなたの夢はセレナちゃんの夢でもあるの」
ハナコ「セレナちゃんの夢を奪ってしまった責任があるの」
ハナコ「だからあなたはセレナちゃんの想いに応えなければいけないのよ」
サトシ「そうか……あのときシトロンが言ってたのってこういうことだったのか」
サトシ「ごめんなセレナ……俺ひどいこと言っちゃって」ダキッ
セレナ「ううん……わかってくれたならいいの」ギュッ
ハナコ「ピカチュウはママと寝ましょうね」
ピカチュウ「ピカ?」
ハナコ「それじゃあ後はごゆっくり……」バタン
サトシ「(でも俺、セレナと結婚するなんて言ったっけ?)」
サトシ「まあいいや!」
セレナ「えっ……?」
サトシ「いや……何でもない、こっちのこと!」
サトシ「俺の夢はセレナの夢でもある、か……」
サトシ「こうなったら何がなんでもセレナの想いに応えるぜ!」
サトシ「セレナのためにもポケモンマスターになってやるんだ……!」
セレナ「私、いつだってサトシの側で応援してるよ!」
サトシ「サンキューセレナ!」
サトシ「何だかセレナと一緒だと、どんなことでも乗り越えていけるような気がしてきたぜ!」
サトシ「そうと決まったら……今夜はセレナの想いに応えるために何でも言うこと聞くぜ」
セレナ「じゃ、じゃあ……手つないでいい?」
サトシ「ああ!」ギュッ
セレナ「サトシの手……あったかい///」
サトシ「熱でもあるのか?顔が赤いぜ?」
セレナ「ふぇ!?そ、そういうわけじゃ……///」
サトシ「一緒の布団で寝てるんだ。俺が温めてやるよ」ギュッ
セレナ「ありがとう……///」
セレナ「ねえサトシ……」
サトシ「ん?」
セレナ「カロスを旅してたときは別々だったけど」
セレナ「こうして一緒に寝るのは初めてだね!」
サトシ「そうだな……なんかちょっとだけ照れくさいよな///」
セレナ「サトシ……///」
セレナ「不束者ですが……よろしくお願いします!」
おわり
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