花売りの少女「言葉の分からない、貴方は」 少年「僕は異世界に戻って来た」 (11)



(大きな音が鳴り続けて、足元が揺れて立つ事もままなりませんでした)

(あの日、あの時)

(私は訳も分からずお母さんと城へと逃げる最中に……死にました)

(街の中央広場に建っていた時計塔の下敷きになって)

(とても痛かったし、怖くて、悲しくて)

(お母さんとまだ幼い子猫と一緒に私は、沢山声を上げながら、死んでしまいました)


(だからこれはきっと夢なのです)


(これは死んでしまった私が見ている夢)

(言葉の通じなかった『あの男の子』ともう一度会って、お話をする……その為だけに見ていた夢)

(それに気付いたのは、もう一度死ぬ……今でした)




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        【karen'Device】











? 《西暦XX99年・日本》


女学生「やっば……!」

学生「何、どうかした?」

女学生「ごめん! 弟の塾迎えに行くんだった、もう行かなきゃ!」

学生B「弟君かわいそー、早く行ってあげなよ」

女学生「ありがとう、また明日学園でね!」タタッ

< タッタッタッ・・・・・・!


学生「あいつ、弟なんて居たんだ」

学生B「うん。結構有名だよ」

学生「なんで」

学生B「性同一性障害なんだって、女装してるの。まだ14歳だから可愛いんだよね」

学生「マジか……大変だなぁ」




女学生「ごめーん!待ったー?」

少年「のんびり歩きながら言うセリフじゃないよお姉ちゃん」

姉(女学生)?ピッ!

姉「これでも急いで来たんだよ、ほら! 帰ろう?」

少年「うん」

姉「今日はお爺様の家に行くからアンタ道分かんないんだよね、いい加減覚えたら?」

少年「まだ首都に引っ越して来てから二週間だし、お爺様の家まで遠くて覚えられないよ」

姉「仕方ないなぁ……これだから田舎者は」

少年「お姉ちゃんだって田舎出身でしょー」






< 『発車します、ご注意下さい』プシュ-ッ


姉「わ、旧式音声だ」

少年「珍しいね、首都なのに」

姉「路線が多いからかもね、今はポッドがあるから」

少年「そっかぁ」

姉「……何してんの? それ」

少年「メッセージのやりとり」

姉「またアンタ彼氏出来たんだ」

少年「うん」





姉「懲りないなぁ……この間、襲われて別れたじゃん」

少年「あれはアニメとかのせいだよ、そういうの好きな人だったから」

姉「だからって裂傷沙汰になって救急車呼ぶハメになる?」

少年「今度の人は大丈夫だってば」

姉「母さん、心配してたよ。最近のアンタは夜に出かけたりもするって」

少年(……また始まった)

姉「ここは首都なんだよ。夜に出歩いたりして……もしアンタが『LC』に遭遇したら母さん悲しむよ」

姉「家族だって、多分また離れ離れになる」

姉「そんなの嫌でしょ?」


< キィィイッ!!
< ガコォォッ・・・!


姉「っ……!? な、なに? 急ブレーキ?」

姉「アンタ、大丈夫……





< 「いってて……おいおい、どうなってんだよこの列車!」

< 「ママァ……!!」

< 「びっくりしたねぇ、もう大丈夫よぉ」



姉「……え?」

姉「ちょっと、どこに行ったの……?」

姉「あれ……?」

姉(どこにも、いない)






? 《????・泉の畔》


少年「……?」

< ザァァァ…

少年(噴水?)

少年「えっ、お姉ちゃん……?」チラッ

少年「お姉ちゃん、どこ……」

少年「お姉ちゃん!! お姉ちゃ───ん!!」


< ザァァァ……


少年「…………」

少年「嘘……っ」ドサッ




少年(落ち着こう……これが夢の可能性も、ある)

少年(携帯は?)スッ

少年「あった……」

少年「……!」

少年(圏外を示すマーカー、って事はこの森。森? ……多分ここは森の筈)

少年(もう世界で安全な森は無いけれど、少なくとも僕の知ってる限りここは知らない場所)

少年(日本は人口植物しかないから……こんな葉の樹は無いしね)トゲがある……




少年(そもそも国内なら圏外にはならないだろうけど)スッ

< すぅー……はぁー……

少年(空気が澄んでる……からかな、落ち着いてきちゃった)

少年(…………)

少年(国外。つまり外国の何処かの森に僕は拉致されて放置って、まるで映画みたいだ)

少年(都合良く水辺に立っていたのも、そういう事なのかな)

少年(現実味が無いや……)


~~~~・・・二時間後




少年(……どうしよう、もう日が暮れる)

少年(ちょっと泉を離れてぐるっと歩いてみたけど、どこに出るのか全然分からない)

少年(人の気配も、『クルマ』も通ってる音はしない)

少年(歩いて何日かかるんだろう。アメリカとかって相当広いよね?)

少年(…………)

少年(このまま、助けも誰も来なかったら……?)ぞくっ


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