【きんモザ】忍「スプリング・クリーニングと」アリス「思い出のエアメール」 (48)

きんいろモザイク短編

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アリス「て、て、つ、つる、つれ、てよ」

パタパタパタ

アリス「な、に、ぬ、ぬる、ぬれ、れ」

パタパタパタ

アリス「かっこせ、まる、き、し、しかっ……ガハッ! ゴホッ!」

アリス「ちょっとシノ! さっきから何で部屋中『はたき』をかけてるの!?」

忍「え? いえ、お日柄もいいので部屋の掃除でもしようと思いまして」

パタパタパタ

アリス「ゲホッ! コホッ!」

アリス「テスト前なんだからテスト勉強しようよ!」

忍「いいじゃないですか、勉強の息抜きに掃除はうってつけですよ」

アリス「息抜きも何も始めてすらないじゃん……」

忍「まあまあ、部屋がほこりっぽいと喉にも悪いですし」

パタパタパタ

アリス「コホッ! コホッ!」

忍「ほら、アリスもさっきからせきをしてるじゃありませんか……もっと身体をいたわってください」

アリス「シノがほこりをまき散らしてるからだよ!」

アリス「かっこせら、まる、けり、ける、けれ、まる」

忍「ところでさっきからアリスは何の勉強をしてるんですか? 英語?」

アリス「……英語に聞こえるなら本気で留年の危機が迫ってるよ」

忍「またまたー」ヘラヘラ

アリス(危機感がない……)


アリス「掃除はテストが終わってからでいいんじゃ……」

忍「でも、テスト勉強をしようとするとどうしても部屋の散らかりが気になるんです」

忍「部屋の汚れは心の汚れ! まっさらに掃除してから始めてこそ、勉強も身に入ると思うのです」

アリス「わからなくもないけど、はたきなんて大掃除でもないのに使わなくていいから」

忍「いえね、イギリスでは春に大掃除をすると聞いたものですから」

アリス「『スプリング・クリーニング』だね……余計なところでは知識欲があるんだから」

忍「母国の文化を余計扱いしないでください!」

アリス「っていうかまだ春じゃなくて2月だよ?」

忍「そ、それは……でも暦の上ではもう春ですし」

アリス「へりくつだよ!」

忍「これからはグローバル化の時代ですし、ライフスタイルも色んな文化を取り入れていいと思うんです」

忍「ですので、今日はイギリス式大掃除と行こうではありませんか!」

アリス「はぁ……まあ確かに、最近けっこう部屋が散らかってきてるよね」

アリス「わかったよ、でも部屋をきれいにしたらちゃんとテスト勉強を始めるんだよ?」

忍「はい!」

~10分後~

忍「ふふふっ、やっぱり○ルミーベイベーは原作マンガだと面白いですね」ペラペラ

アリス「全然掃除進んでないじゃん!」

忍「掃除もいいですけど、漫画のほうが心のリフレッシュになります……」ペラペラ

アリス「やっぱり現実逃避だったんじゃん!」

忍「あぁ……私の前にも金髪の殺し屋が現れませんかねぇ……」ウットリ

アリス「今からわたしが殺し屋になろうか?」ゴゴゴ

忍「ひっ! す、すみません……ちゃんとやりますから!」

忍「これは使いますね……」

忍「これも多分何かに使います……」

忍「これはとっておくと何かに使えそうですね……」

忍「うーん……何に使えるかは分かりませんが工夫次第で使えそうです……」

忍「これは……正直使えそうにないですがなんとなく愛着があるのでとっておきましょう……」

アリス「全然仕分けられてないよ!」

忍「あ、この服は小さくてもう入りませんね……フリマに出しましょう」

アリス「それわたしの服!」

-----------


アリス「なんでわたしの抜け毛をこんなに集めて後生大事に保管してるの! 捨てようよ!」

忍「嫌です!」

アリス「そんなの何に使うつもりなの!」

忍「夢なんです……いつか集めた金髪で糸を紡ぎ、そしてマフラーを編むのが」

アリス「さ、さすがに気味が悪いよ……」

-----------


アリス「拭き掃除終わったよー」

忍「お疲れ様です、お茶を淹れて来たので休憩しましょう……あっ」ツルッ

バシャー

アリス「にゃあああ拭いたばっかりの床がー!」

-----------

-----


忍「いやー、部屋がすっきりすると心までさわやかになるものですね」

アリス「つ、疲れたよ……」

忍「アリスが手伝ってくれたおかげで、思っていたより早く掃除が終わりましたよ」

アリス「それはよかった……」

アリス(……わたし一人だったらもっと早く終わった気がする)

忍「ところでアリス、押入れを掃除しているときに懐かしいものが出てきましたよ」

アリス「え?」

忍「ほら、『これ』ですよ」

アリス「これって……」

忍「中学生のころ、アリスが私にくれたエアメールです」

アリス「わあ、懐かしい!」

忍「ホームステイが終わった後すぐ、お互いにエアメールを送り合ったんですよね」

忍「思い返せば懐かしいです……」

******

~中学時代~


忍「いつかまた、日本にも来てくださいね、と……」カキカキ

綾「しの、何書いてるの?」

忍「イギリスでお世話になったホストファミリーにお手紙を書いてるんですよ」

綾「ああ、ホームステイの!」

忍「英語でお手紙を書くのは初めてなので大変です……」

陽子「見せて見せて~!」


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Hello!

Hello hello hello hello!

Hello hello hello hello hello hello.

Hello hello, hello hello.

Hello hello hello hello hello?

Hello hello hello hello.

Hello hello hello hello hello!

-----------------------------------

陽子「何の暗号!?」

忍「どこか間違ってるところがあったら教えてください!」

陽子「間違いしかないよ!」

綾「……教えてあげるから一緒に書きましょう」

忍「ありがとうございます!」


忍「ではまず、『ホームステイの間はお世話になりました』と」

綾「うーん……」

綾「『お世話になりました』って英語でどう書くのかしら……」

陽子「一文目からつまずいてるじゃん」

綾「う、うるさい……!//」

綾「そういう陽子はどうなのよ!」

陽子「私は英語苦手だし?」

綾「開き直らないでよ……」

忍「そうですね……ではこうしましょうか」


--------------------------------

アリスへ


秋風の立ち始める季節になりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

ホームステイの間はお世話になりました。

日本に帰ってきてから数日、私は早くもイギリスシックになりそうです……


--------------------------------


綾「日本語!?」

忍「こちらの方が、私の気持ちをそのまま伝えられますよね」

綾「相手が読めないと伝わらないんじゃ……」

忍「大丈夫です! 誠意を込めて書けば気持ちは必ず伝わります!」

陽子「なんという精神論……」


*****

忍「何てやりとりも、今ではいい思い出ですね……」

アリス「シノがそのとき送ってくれた手紙、わたし日本に持ってきてるよ!」

忍「本当ですか!」

アリス「うん! 久しぶりに読み返してみようよ!」

忍「ふふ、何だか恥ずかしいですね……」


ガサゴソ

アリス「……あれ?」

忍「どうしました、アリス?」

アリス「……手紙が無い」

忍「ふふ、掃除した後に置き場所が変わっちゃって物を探し回ること、よくありますよね」

アリス「そ、そんなはずは……!」

忍「最後に見たのはいつなんですか?」

アリス「さっきの大掃除のときに手紙類を整理しようと机の上に出して……そこでトイレに行きたくなったから部屋を出て……」

アリス「あっ! そのときから見てないよ!」

忍「机の上……」

忍「あっ」

アリス「心当たりがあるの!?」

忍「……実はですね」

***

大掃除中


忍「このゴミ袋、あと少しだけ入りそうですね」

忍「何か捨てるものは……」キョロキョロ

忍「ああ、アリスの机の上に紙くずが置いてあります! これも一緒に捨ててしまいましょう!」


***

忍「ということがありまして……」

アリス「にゃああ!?」

アリス「なんで気付かなかったの! 普通捨てる前に中身確認するでしょ!」

忍「だ、だってもうボロボロだったものですから……」

アリス「何回も何回も読みこんだんだよー! 私の心の支えだったのにー!」

忍「うう、どうしましょう……!」

忍「そうです! 代わりに私がもらった方のエアメールを差し上げますから!」

アリス「自分の書いた手紙をもらっても!」

アリス「ひどいよシノ……」ズーン

忍「ア、アリス……落ち込まないでください」

忍「確かに手紙は無くなってしまいましたが、ここに手紙を書いた本人がいます!」

忍「手紙ではとても書ききれないほどたくさんのメッセージを、高校生活の間にアリスに届け続けますから……!」

アリス「シノ……」

アリス「そうだね……手紙は無くなっちゃったけど、今はシノ本人がそばにいるんだもんね」

アリス「それに、手紙の内容はもう一言一句頭の中に入ってるよ」

アリス「形は失われても、シノのくれたメッセージはいつまでもわたしの心にあるよ……」

忍「アリス……」

忍「私の方も、アリスにもらった手紙は記憶の中にもしっかりと保存してますよ!」

アリス「シノ……!」ジーン


アリス「そういえば、わたしはシノへの手紙にどんなこと書いてたっけ?」

忍「え? それは……」

忍「えーと……」

忍「……」

忍「……」

アリス「シノ?」

忍「も、もう少しで思い出せます! もう喉まで出かかってるので……」

忍「えーと、うーん……最初のアルファベットはAだったような?」

アリス「多分"Dear Shinobu"で始まるからDだよね?」

忍「なるほど! さすがアリスですね!」

アリス「……本当に記憶の中に保存してるの?」

忍「も、もちろんですよ……」

忍「……っ! 思い出しました!」


***

中学時代


勇「しのぶー、アンタ宛てに手紙よ」

忍「これは……変わった体裁の便せんですね」

勇「エアメールじゃない? ほら、ホームステイから帰ってきてすぐ手紙書いてたじゃない」

忍「ああ! お返事が返ってきたんですね!」

忍「さっそく読みましょう! えーと、ディア シノブ?」

忍「ふふ、私は大宮忍ですよ……アリスったら」


数時間後

忍「うーん……辞書で単語を引きながら読んでますが、文の意味がまったく理解できません……」

忍「でも、アリスの気持ちはしっかり伝わってきます!」

忍「いつか……高校生くらいでしょうか? これをちゃんと理解できる英語力を身に着けるそのときまで、手紙は大事にしまっておきましょう……」ガサゴソ

***


忍「ということがあったのでした」

アリス「読めてないじゃん! 手紙!」

アリス「記憶の中に保存してるっていうのはウソだったの!?」

忍「ち、違いますよ……! 手紙から伝わってきたアリスの気持ちを心に記憶したという意味であって、その、えーと……」

アリス「視線泳ぎまくってるよ!?」


忍「で、でも! これは今こそ手紙を読むべきだという天の導きですよ!」

忍「あのときのアリスの気持ち、読ませてもらいますね」

アリス「う、うん……」


忍「『Dear Shinobu』」

忍「ふふ、あのころはまだ、アリスは私の名字を知らなかったんですよね」

アリス「え?」

忍「それに『ディア』なんて名字……日本にはいませんよ」フフフ

アリス「……」

アリス(まるで成長していない……!)

忍「えーと、本文は……と」

忍「えー……」

忍「……」

忍「」

アリス(シノが言葉を失ってる!)



忍「うぅ……何ということでしょう」

忍「私はまだ、この手紙を理解するには至らないようです」

忍「高校を卒業するころにはきっと……それまでもう一度大事にしまっておきましょう」ガサゴソ

アリス「こ、高校レベルなら絶対読める内容だよ! 諦めないでシノぉ!」

忍「そういえばアリス、私が送ったエアメールも日本語で書かれたものだったんですよね?」

忍「アリスはどうやって内容を理解したんですか?」

アリス「頑張って勉強したんだよ! 日本語を理解できるまでね」

忍「うぅ、私も今まで英語を頑張って勉強してきたんですが……私とアリス、どこで差がついたんでしょうか……」

忍「やっぱり頑張りが足りなかったのでしょうかね……」ズーン

アリス(シノが落ち込んじゃった……)

アリス「自分を責めないで、シノ……生まれついての頭の良し悪しはシノの責任じゃないよ」

忍「それフォローなんですか……?」


アリス「で、でも、イギリスではみんな英語を話せるんだよ! 例え時間はかかっても、シノだってできるようになるはず!」

忍「そ、そうですよね……」

忍「それに、単語はともかく文法ならもう一通り勉強し終わってます!」

アリス(単語も簡単なものしか使ってないんだけどな……)

忍「ここであきらめるわけにはいきません! 辞書を使いながらもう少し粘れば今度こそ……!」

アリス「その意気だよ、頑張って!」


15分後

忍「……」

忍「……うぅ」ポロポロ

アリス「! な、涙が出るほど感動しちゃった……?」

忍「ぜ、ぜんぜん読めません……!」グスグス

アリス「」

忍「中学高校と5年間英語を勉強してきたのに、ネイティブとはいえ小学生の子が書いた文すら読めないなんて……」

アリス「当時中学生だよ!」

忍「……うすうす勘付いてはいましたが、やっぱり私って語学の才能に欠けているのでしょうか」

アリス「し、シノ……」

忍「やっぱり無謀なんでしょうか……通訳者になる、なんて夢を追いかけるのは」

アリス「……周りから無謀だって言われた夢をかなえた人なんてたくさんいるよ、ビートルズもそうだし」

アリス「確かにシノは今のところ英語の成績はよくないけど……それでも夢を追いかける限りは可能性があるよ」

忍「わかってます、わかってますよ……」

忍「今までそう自分に言い聞かせてきたんですから」

忍「でも、アリスはたった2年で日本語をマスターしてしまったのですよ?」

忍「かたや私はあのころからほとんど進歩がないんです」

忍「どうしても、自分のふがいなさを実感せざるを得ません……」

アリス「シノ……」


アリス(いつもあんなに楽しそうに自分の夢を語るシノが……こんなに弱気になるなんて)

アリス(わたしの手紙と、わたしの流暢すぎる日本語が原因で……)

アリス「うう……わたしという存在がなければシノが自分の夢に疑問を持つことはなかったのに……!」ウルウル

アリス「自分の存在が憎いよー!」ウワーン

忍「べ、別にアリスのせいでは! 自分の存在意義を否定しないでください!」

コンコン

勇「アリス、カレンちゃんから電話よ」

アリス「カレンから?」ヒックヒック

勇「なんで泣いてるの? ダメじゃない忍、アリスをいじめたら」

忍「い、いじめたわけでは!」

アリス「……ごめんね、ちょっと行ってくるよ」

忍「……はい」



カレン『Hello! アリス!』

アリス「どうしたの?」

カレン『せっかくのお休みデスし、私の家で一緒にテスト勉強会しマセンか?』

カレン『アヤヤとヨーコも誘う予定デース!』

アリス「うーん……ちょっとシノに聞いてみるよ」


アリス「シノ、カレンから勉強会しようって誘われたんだけど……」

忍「そうですか……せっかくですけど、今はカレンたちと会う気分にはなれません……」

アリス「そっか、じゃあ断っておくよ」

忍「……アリスは行ってきたらどうですか?」

アリス「え」

忍「せっかくのお誘いですし、それに……」

忍「正直なところ、今は一人になりたい気分なんです」

アリス「シノ……」


アリス「ごめんねシノ、元はといえばわたしのせいで」

忍「そんなこと!」

アリス「『もう帰ってこなくていい』ってシノが少しでも思ってるなら、わたしはその通りにするから……」ウルウル

忍「何怖いこと言ってるんですか!? ちゃんと帰ってきてください!」

カレンの家


アリス「……というわけで、今日はシノは来られないの」

カレン「そうデシタか……残念デス」

綾「しののこと、ちょっと心配ね」

陽子「アリスのメンタルも心配だけどね」

アリス「大丈夫! ここに来たからには気持ち切り替えるから!」パシッ

アリス「シノがどんな決断をしようと、わたしはそれを応援するよ」

陽子「そかそか」

アリス「わたしのせいでシノが夢をあきらめることになっちゃったとしても……一生その罪を背負って生きていく覚悟はできてるから」

陽子「お、大げさだろ……」


綾「というかカレン、部屋汚くない?」

ゴチャゴチャ

カレン「ム、汚いじゃなくて『にぎやか』と表現してほしいデース」

綾「表現を変えても現実は変わらないわよ……最近掃除してないでしょ」

カレン「大掃除はちゃんとしたデスよ」

アリス「その割には汚い部屋だよね……」

カレン「それだけ密度の濃い生活を送ってるってことデスよ!」

陽子「そのポジティブさをアリスにも少しわけてやってくれ」

カレン「まあ慣れれば意外と快適なんデスよ。どこに何があるかは大体把握してマスし」

綾「うぅ……こっちは不快指数90%よ」

陽子「今度掃除しとけよ……じゃ、さっそく始めるか」

カレン「その前に、景気づけに対戦ゲームでもしましょうデース!」

綾「勉強会は!?」

カレン「1戦だけデスよ! で、勝った人がどの教科から勉強するか選べるんデス! それを一時間ごとに繰り返すデース!」

アリス「無理やり理由付けてゲームしたいだけじゃん……」

陽子「ま、1時間に1戦くらいならいい気分転換だろ」

カレン「イエス! さっそく始めマショウ!」

カレン「……と、あれ? ゲームのソフトが見当たらないデスね……」ゴソゴソ

カレン「ちょっと探してもらえまセンか?」

陽子「場所把握してないじゃん……」

カレン「この辺の山に埋まってるってのは分かってるんデス……タブン」

陽子「多分っておい」

~5分後~

カレン「い、意外と見当たらないデスね……」ゴソゴソ

陽子「探してるときに限って見当たらないんだよね、こういうのって」ガサガサ

カレン「確かにこの辺の山の中だと思うんデスが」ゴソゴソ

綾「この辺って……辺り一帯物の山じゃないの……」ガサガサ

アリス「もう、人使いが荒いんだから……」ゴソゴソ


カサ……

綾「……」

綾「ねぇ、今不吉な音が聞こえなかった?」

アリス「不吉な音?」

綾「いえ、その……」

カサカサカサ……

綾「……!」








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綾「はぎゃああああああ!!!!」

アリス「にゃあああああ!」

綾「いやああ! こないでえええ!」ブンブン

陽子「いてえっ! 見境なく拳を振り回すな綾!」

カレン「Wow! これがウワサの『ゴキブリ』ってヤツデスね!」ウキウキ

陽子「何で嬉しそうなの!?」

カレン「イギリスは緯度の関係で、一般家庭ではゴキブリにお目にかかれないのデスよ!」

カレン「日本のマンガやアニメには幅広く出演しているゴキブリ……初めて本物に会っちゃったデース!」キャッ♪

陽子「よ、よかったね……?」


アリス「ゴキブリ!? ゴキブリナンデ!?」ガタガタ

陽子「アリスはめっちゃ取り乱してるんだけど! カタコトなってるし!」

カレン「イギリス人的感覚ではゴキブリはドラゴンや吸血鬼のような創作の中のモンスターなので、それが現実として目の前に現れその圧倒的なスピードに蹂躙されるという有り得ない状況に一般人はショックを受けてしまうんデス!」

カレン「いわゆる『ゴキブリアリティ・ショック』ってやつデスね!」

陽子「カレンは平気なのな」

カレン「ハーフデスからね」


綾「いや! いやあああああ! 助けて陽子!」ギュー

アリス「ああああ! ひぃいいい! 何とかしてヨーコ!」ギュー

陽子「や、やめろっ……首が……! カレン、殺虫スプレーとかない……!?」

カレン「ヘアスプレーがあるデス!」

陽子「ダメだ、私の経験上それは効かない!」

カレン「じゃあ頼れるものはオノレのコブシしかないデス!」

陽子「やだよさすがに!」

カサカサカサ……

アリス「に、逃げちゃうよー!」

陽子「何か新聞とか雑誌的なものないの!?」

カレン「えーとえーと……!」ガサガサ

カレン「! あったデース!」

陽子「貸してくれ!」

カレン「いえ、あったのはゲームソフトの方デス!」

陽子「くそー! 探してないときに見つかるんだよな本当!」


陽子「仕方ない……この机の上の雑誌借りるぞ!」

カレン「そ、それ『まんがタイムきららMAX』デス! ダメデスよ!」

陽子「どうせ『ごちうさ』と『ステラのまほう』しか読まないしどっちも後で単行本買うから要らないだろ!」

カレン「ノー! 『こみっくがーるず』も面白いデスよ!」

陽子「単行本買えーーー!」

スパーンッ

陽子「……」

カレン「……ヤッタか!?」

綾「さすがのゴキも、あの一撃を受けて生きていられるわけがないわ……!」

陽子「……」

陽子「……ごめん、手ごたえなかったっぽい」



カサカサカサ……




       ,  '"     \            /     \
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               {{    .`⌒^   ヽ} {
               {!            {



綾「はぎゃああああああああああああああ!!!!」

アリス「にゃあああああああああ!!!」

カレン「ヤレヤレ……みんなダラシないデスねー」

綾「カレンがだらしないからゴキが出たんでしょ!」

カレン「ヤレヤレ……ここで真打ち登場と行きまショウカ……」シャキーン

陽子「おお、新聞紙を丸めて棒状にしたヤツ……ゴキ退治の定番だな」

カレン「あーかったるいデスねー……ヤレヤレ……」

陽子「何で急にラノベの主人公っぽくなってんの? ヤレヤレ系?」

カレン「カレカレ系デス」

陽子「上手くねーぞ」


シーン

カレン「……アレ?」

アリス「どっか逃げちゃったみたい……」

綾「もたもたしてるから!」

カレン「フ……この九条カレンに恐れをなして逃げマシタね」


カレン「まあゲームも見つかったことデスし、気を取り直してゲームやりマショー!」

綾「取り直せるわけないでしょうが!」

カレン「え、なんでデスか?」

アリス「当たり前だよ! いつまたゴキが出てくるかもしれないのにおちおちゲームなんてやってられないよ!」

カレン「ドキドキハラハラがアップしていいじゃないデスか!」

綾「そんなドキドキいらないわよ!」

アリス「も、もう……! ゴキブリがいるかもしれない部屋にこれ以上いられないよー!」

アリス「わたしは一人で帰らせてもらうからね!」ズンズン

カレン「ま、待つデスアリス!」

カサカサカサ……

アリス「……え?」





       ,  '"     \            /     \
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              ハ  \:i:i:i:i:i/ミ*、 {!

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               {!            {



アリス「きょおおおおおおお!!」

陽子「カレン、棒貸して!」

陽子「おらっ!」

スパーンッ


陽子「……まったく、手こずらせやがって」

アリス「意外とあっさり死ぬんだね……」

陽子「そんなもんだ」

カレン「イゥ! 変な汁が出てるデース……」


~死骸処理後~


カレン「さて、これで心置きなくゲームができるデスね!」

綾「できるわけないじゃないの……」

アリス「うんうん」

カレン「えぇー、どうしてデスか?」

カレン「マンガやアニメじゃないんデスから、一匹倒したらもう第二第三のゴキは出てこないデスよー」HAHAHA

綾「出るわよ! これだけ汚い部屋だもの!」

綾「今日は徹底的に部屋をきれいにしてもらうから! 大掃除よ!」

カレン「えー、勉強しなくていいんデスか?」

綾「4人でさっさと掃除してから勉強するの! ゲームする時間を削れば十分時間はあるわ!」

カレン「ぶーぶー」

陽子「手伝ってもらえるだけマシだろー? ほら、さっさと掃除するぞ」

アリス「今日二度目の大掃除……」

陽子「カレン、この本どこに置いとく?」

カレン「あー、もうそれは捨てちゃって大丈夫デス」

綾「このキーホルダーは?」

カレン「それも捨てちゃいマショウ」

アリス「ちょ、ちょっと! それ前にわたしがプレゼントしたやつだよ!」

カレン「Oh……そう言われればそうだったヨウナ」

アリス「はっ! 『贈り物』……『捨てる』……」

アリス「うっ……頭が……!」ズキズキ

カレン「アリス!?」

陽子「しのとの出来事がトラウマ化してる!」

アリス「はぁ……シノ大丈夫かなぁ」

陽子「大丈夫だって、しのはそう簡単に夢をあきらめたりしないよ」

陽子「今頃は部屋でケロッとしてるって」

アリス「だといいんだけど……」

カレン「いや、でも……正直語学の才能はお察しレベルデスし、ここで別の夢に乗り換えるのも一つの選択かもデスね」

綾「……確かに、服飾の才能は人並み以上にあるものね」

陽子「『やりたいこと』と『向いてること』かぁ、難しいなぁ」

アリス「はぁ……」

アリス「やっぱり、わたしのせいだよね……」

綾「そんなに自分を責めることないんじゃない?」

アリス「わたし、日本に来るべきじゃなかったのかも……」

アリス「ついに留学にまで疑問を持ち始めたデス」

アリス「さっきシノの言ってたこと、わたし考えてたんだ」


忍『私とアリス、どこで差がついたのでしょうか……』


アリス「シノがイギリスから日本に帰っちゃったあと、わたし思ったの……『絶対シノにもう一度会いたい』って」

アリス「でも、シノって英語がhelloしか話せないのにイギリスに来ちゃうほどアクティブだったでしょ?」

陽子「アクティブというか考え無しというか」

アリス「きっと日本にも、もしかしたら他の国にもいっぱい友達がいて、わたしはその中のほんの一人なんだと思ってた」

アリス「だから……自分から日本に行かないとシノの『特別』にはなれないんだって思って」

アリス「大学まで待ってると忘れ去られちゃうかもしれないから、絶対高校で留学するぞって……必死で日本語を勉強したの」

アリス「わたしがたった2年で日本語を話せるようになったのは、きっとそれだけシノに対する想いがあったからだよ」

カレン「アリス……」

アリス「でも、今となってはそれがシノにとって仇になったのかも」

陽子「なんで?」

アリス「だって、わたしが一緒に住んでいれば日本にいながら金髪少女と毎日会えるし、コミュニケーションも日本語で全部通じるし……」

アリス「わざわざ英語を勉強しなくても満たされちゃうんだよ!」

綾「た、確かに……」

カレン「つまり、アリスが日本語ペラペラな状態で日本に来たことで、シノのハングリー精神が養われないってことデスね!」

陽子「いやいや、考えすぎじゃない?」

綾「でもロジックとしては筋が通ってるわ……」

アリス「でしょ?」

陽子「おいおい」

アリス「だから、シノの夢を応援するならわたしが取るべき手段はひとつ……」

アリス「今からイギリスに帰ることだよ……!」

陽子「いやいやいやいや」

アリス「だって、わたしが日本にいたらシノは心から本気で英語を勉強できないよ!」

陽子「だからって帰国までしなくても……」

綾「そうよ、大体アリス自身はしののいない生活に耐えられるの?」

アリス「そ、それは……」

アリス「た、耐えられないよぉー!」ウワーン

カレン「デスよね」

アリス「で、でも……耐えなきゃ」

アリス「シノの夢のためなら……シノの幸せのためなら、わたしは毎晩涙で枕を濡らすこともいとわないよ……!」

綾「アリス……」ウルウル

陽子「泣く要素ある?」

陽子「まったく……」

陽子「そうじゃないだろ? イギリスに帰る必要なんかないんだって」

アリス「でも……! 夢を諦めるべきかもって言ってたときのシノ……あんなに元気のないシノは初めてみたよ」

陽子「私が今まで見た中で一番元気のないしのの顔は、アリスがイギリスに帰省したときの顔だったけどな」

アリス「……え」

陽子「アリス、夢を追う中で壁にぶつかるっていうのはとっても辛いことだよ……」

陽子「でもな、しのにとってはアリスが離れてしまうことも同じくらい……いや、きっとそれ以上に辛いことなんだよ」

アリス「……」

陽子「アリスが日本に来る前な、しのって何というか……いつもぼーっとしてる子だったんだよ」

カレン「え、今もそうデスよね」

綾「しーっ!」

陽子「でもアリスが日本に来てから、あいつは毎日本当に楽しそうだし、生き生きしてるよ」

アリス「……」

陽子「だからさ、アリスが日本に来て間違いだった……なんてことは絶対ないよ」

陽子「昔っからしのをそばで見てきた私が言うんだ、間違いない」

アリス「ヨーコ……」

アリス「そうかな……そうかも」


アリス「わかったよ、わたしのやるべきことはイギリスに帰ることじゃないって」

陽子「おう」

アリス「みんなゴメン……わたし行かなきゃ!」

カレン「シノによろしくデス!」

綾「元気が出たら、また改めてテスト勉強会しましょう」

アリス「うん!」


バタン


カレン「行っちゃったデス」

陽子「まったく……お騒がせな二人だよ」

綾「でも、あんなに強く想われてるっていうのも……なんだかステキよね」ポワーン

陽子「ステキなのかなぁ……」

カレン「あ、窓からアリスの姿が見えるデス」

陽子「おーどれどれ」


アリス「……」フラフラ


陽子「……なんか、足取りがおぼつかない気がするんだけど」

カレン「ほっとして気が抜けてるんじゃないデスかね?」

陽子「それならいいけど……」


アリス「……」フラフラ



綾「……向かってる先の横断歩道、赤信号だけどちゃんと見えてるかしら」

陽子「さすがに大丈夫だろ……大丈夫だよな?」

アリス「……」フラフラ

アリス「シノ……やっとわかったよ」

アリス「わたしのやるべきことはイギリスに帰ることじゃない」

アリス「今から記憶喪失になって日本語を全部忘れればいいんだ……」

アリス「そうなればシノはわたしとコミュニケーションを取るために必死で英語を勉強するようになるはず……」


陽子「赤信号を渡り始めたぞアイツ!」

綾「アリスううう!! 赤信号! 赤信号だからー!」


アリス「今日3度目の大掃除……頭の中のいらない記憶をきれいに掃除しなきゃ」フラフラ

アリス「高校生活の記憶が飛んじゃったら悲しいけど……でも、シノの頭の中に残っていればそれでいいよ」

アリス「グッバイ、記憶の中の高校生活……」


ブッブー


陽子綾カレン「アリスーーーーーー!!」

空太「ぶっぶー」

美月「アリスちゃん何やってるの?」

アリス「……二人こそ縄跳び持ってなにやってるの?」

空太「タクシーごっこ」

美月「たまには童心に帰ろうと思って」

アリス「……」

空太「アリスちゃん、ここは車がほとんど通らないからって信号無視はいけないよ」

アリス「……そうだね」

美月「アリスちゃんも乗ってく? 初乗り410円よ」

アリス「……」

美月空太アリス「……」トコトコ

美月「お客さん、どこまで行きましょう?」

アリス「……とりあえずまっすぐ」

美月「まっすぐね」

美月空太アリス「……」トコトコ


アリス(何やってるんだろ、わたし……)

アリス(車にぶつかったところで都合よく記憶が抜けるわけないのに……)

アリス(しかも、そんなのシノが喜ぶはずがないのに……)

アリス(……はぁ)

空太「お客さん」

アリス「え?」

空太「何か悩みでもあるんですか? 思いつめたような顔してるけど」

アリス「えーと……」

アリス(うぅ、小学生に気を使われるなんて……)


空太美月「……」

アリス「……」

アリス「……自分がいることで、友達の夢がかなうのを邪魔してるんじゃないかって思うの」

アリス「その友達はすごく大事な人で、いっぱいお世話にもなったから……それが辛くて」

アリス「わたしはその友達が大好きで、友達もきっと同じくらいわたしを好きでいてくれてて……」

アリス「それはすごく幸せなんだけど、だからこそどうしたらいいか……迷ってて」

空太美月「……」

アリス「……ごめんね、何か愚痴っちゃって」

美月「……お客さんは、そのお友達が夢をかなえるのは無理だと思う?」

アリス「……難しいし、能力的には向いてないと思う」

アリス「でも……」

アリス「ほんのちょっとずつだけど、進んではいるはず……」

アリス「かなえられる夢だって信じたいし、かなえてほしいよ……」

美月「……そう」

美月「なら、それを伝えてあげるときっと喜ぶわ……忍お姉ちゃんは」

空太「一時停車します」

アリス「え?」


「アリス……どうしてここに?」

アリス「?」

忍「勉強会に行ったんじゃ……」

アリス「シノ!」

アリス「えーと……シノがやっぱり心配になって」

忍「アリス……」

アリス「あの! さっきわたしの手紙が読めなくて落ち込んでたけど、でもシノは……」

忍「ふふふ」

アリス「?」

忍「読めましたよ、アリスの手紙」

アリス「え……」

忍「一度はあきらめかけましたけど……でも、アリスが私に送ってくれたメッセージがどうしても知りたくなりまして」

忍「文法の参考書、英和辞書、それから私の培ってきた英語の知識を……総動員して頑張りました」

アリス「シノ……!」

忍「アリスがあんなに熱く私を想ってくれてたなんて……感激ですよ!」

アリス「熱く……?」

アリス(そういえば、勢いに任せてかなり熱烈な思いをつづってたような気もする……)

アリス「あはは……恥ずかしいよ……//」

忍「ふふふ、私の名字は間違って『ディア』だと覚えていたようですが、それでもアリスの情熱が伝わってきましたよ……!」

アリス「え」

アリス(ほ、本当にちゃんと読めてるのかな……)

忍「というのは冗談で、今ではもう『Dear』の意味はちゃんと分かってますよ」

アリス「もーっ! びっくりさせないでよ!」

忍「すみません」フフ

忍「……アリスの手紙を読んでいて、『やっぱり言葉っていいな』って思いました」

忍「アリスが小学生のとき……まだ日本語も知らないときに綴った気持ちが、3年の年月と──それから数千キロの距離を超えて、今日の私に届いたんです」

忍「何だか不思議で、すごく温かい気持ちになりました」

アリス「シノ……」

アリス「さっきも言ったけど当時中学生だよ……」

忍「え? まあそれはさておき」

アリス「さておかれた……」

忍「先ほどは弱気になっていましたが、やっぱり私、通訳者になりたいです」

忍「人と人が気持ちを伝えあう、その手助けをしたいです!」

アリス「シノ……!」

忍「アリス、私に初心を思い出させてくれてありがとうございます」

忍「これからも……私のそばにいて、夢を見させてください」

アリス「……うん!」

美月「忍お姉ちゃんも乗る?」

忍「えーと、これは?」

空太「タクシーごっこだよ」

忍「それはそれは……では乗せて行ってもらいましょうか」

美月「行先は?」

忍「カレンの家へお願いします」

忍「夢は見るだけじゃなくて叶えたいですからね……もっともっと勉強します」

忍「まずはみんなと一緒にテスト勉強です!」

アリス「応援するよ、シノ!」


美月「ラジオでも流しましょうか」

忍「ではFMで……洋楽が聴きたいです! イギリスの曲が!」

美月「分かりました」

ポチ

空太「へいじゅ~♪」

空太「どんめいきば~♪」

アリス(人力ラジオ……)

忍「わあ! んふふ……私の大好きなビートルズのスーパー名曲、『Hey Jude』ですね!」

忍空太「てかさ~そ~♪」

忍空太「あめきべ~た~♪」

忍「ほら、アリスも一緒に!」

アリス「え? う、うん」

忍空太アリス「りめんばー とぅれたーいんとやーはー♪」

忍空太アリス「ぜんゆーきゃんすた~ とぅめきべた~♪」

忍(やっぱり私、英語が大好きです……)

忍(いつか英語でアリスとお話しできるよう、これからも頑張ります……だから)

忍(これからもよろしくお願いしますね、アリス)




忍「カレン! 私も勉強会に参加します!」

カレン「シノ! 今はそれどころじゃなくてデスね……」

忍「え?」

陽子「うおおおおお腹いてえええええ!」

綾「もう! 期限切れのシュークリームなんて食べるから!」

陽子「だって未開封のシュークリームを見つけたらさ! そりゃ誰だって食べるだろ!」

綾「食べないわよ!」

カレン「はぁ……ヨーコの食い意地にも困ったものデスね」ヤレヤレ

綾「カレンがゴミ山の中にシュークリーム放置してるのが悪いんでしょ!」

アリス「……」

忍「やっぱり、部屋の掃除はちゃんとやっておかないとダメってことですね!」

陽子「誰か私の腹の中を掃除してくれー!」


END

アリガトウゴジャイマシタ
誰かきららファンタジアでクロスもの書いてクダサイ

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