勇者「旅に出るぞ!」 (6)
勇者「しかしパスポートが無かったのでやめた」
勇者「パスポートの申請をするには、まず証明写真がいるだろ?」
勇者「その証明写真を撮るためには、プペポッポ火山の火口に店を構える写真屋まで行かなきゃならない」
勇者「さらにプペポッポ火山までは歩いて数ヶ月もかかる。馬車を予約しようにも、みんな貴族や王族に占領されている」
勇者「王の命令と言えば貸してくれるかもしれないけど、自分が勇者であることを証明する身分証がない」
勇者「他国への密入国がバレたら、一発で首が飛ぶ。たとえ勇者であってもね」
勇者「魔王の領土に入るのだって、パスポートがいるんだよ。おかしな話だろう?」
勇者「金ももらった、装備も整った、仲間も呼んだ。ここまで来て、旅を諦めなきゃならないとはね……」
勇者「残念だ。つくづく残念だ。本当に残念に思うよ」
戦死「……」
僧侶「……」
魔法使い「……」
勇者「はい解散。みんな帰っていいよ」
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戦士「いくらなんでも、その態度はないだろう。こちらも貴重な時間を削って、お前のおままごとに付き合ってあげているのだ」
僧侶「戦士殿の仰る通りです。勇者という看板が無ければ、あなたはケツの青い小童。自分が非力な存在であることを認めなさい」
魔法使い「そうね。アンタどこまで自分勝手なの? 世界の危機より、自分の命の方が大切ってわけ?」
勇者「いや……ははは……。国の憲法で決まっているというか……俺も魔王を倒す前に処刑されるなんてみっともないし……」
勇者「俺だって旅立ちたいのは山々なんだよ。まだ幼かった頃、教会の神父様から世界のことを教えてもらったんだ」
勇者「どうして海は塩辛いのだとか、空はどこまで続いているだとか、森の樹々はなぜ青々と茂っているのだとか……」
勇者「だからさ、俺だって世界を旅したい。この国を抜け出して、法律や身分の鎖から飛び出して、もっと自由に駆け巡りたいんだよ!」
戦士「実行すればいいではないか」
勇者「できないな!」
僧侶「法律の鎖を飛び出す。すなわち違法な密入国も、目的のためなら辞さないということではないのですか?」
勇者「違うぞ! 処刑されるのはいやだ!」
魔法使い「アンタね……」
魔法使い「行こうよ。こいつなんやかんや理由をつけて、結局は行きたくないだけなんだよ」ガタッ
戦士「うむ。勇者だと期待した私が、阿呆であった」スッ
僧侶「あなたは呪われるべき存在です。法皇様より破門を言い渡され、全身の穴という穴から血を垂れ流し、苦しみもがき死すべき人間です」ユラァ
勇者「クヌヌンッ……! 本当にパスポートなんて持っていないのにッ……!」
勇者「俺に恥をかかせやがって、三人だけで旅立とうとする魂胆だな?」
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門兵「それでは、出国のパスポートはお持ちでしょうか?」
戦士「はい」
僧侶「こちらですね?」
魔法使い「これでいいんでしょ」
門兵「よろしい。出国を認めます」
勇者「ゆ、許せねぇ……! 俺より先に出国するだと……? そんなこと、あってたまるかってんだよ!」
うわつまんねえ
どっち方面に向かおうというのか
パスポートが存在する世界観なのにビザには触れないのな
魔王側が勇者にビザを発行するとは思えんが
あと出入国の手続き程度のことが憲法に規定されているって冗談としか思えない
この手のネタは、有給勇者やサラリーマン召喚魔王の作者みたいに
確りした知識がないと書くのは難しいんじゃないか
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