ドラえもん「ダンガンロンパ?」 (1000)


★エピローグ以外全て書き溜め済み。エタはなし。
★ダンガンロンパ及びスーパーダンガンロンパ2のネタバレあり。
★オリジナルの道具がたくさん出てきます。


  ― プロローグ ―


のび太「うわーん! ドラえも~ん! またスネ夫にバカにされたよ~!」

ドラえもん「今度はなんだい?」ハァ

のび太「17才以上じゃなきゃ買えない大人の人気ゲームをお兄さんからもらったんだって!
     それで、みんなには貸してくれるけどぼくだけ貸してくれないっていうんだ!」

ドラえもん「理由は?」

のび太「推理モノだからどうせバカなぼくにはクリアできるわけないって!
     それに過激な内容だからおこさまにはシゲキが強すぎるってバカにするんだ!」

ドラえもん「過激って……一体どんな内容なの?」

のび太「【ダンガンロンパ】っていうタイトルで、とじこめられた高校生たちが
     仲間同士でコロシアイをするっていうストーリーなんだ」

ドラえもん「やめときなさい、そんなゲーム」


のび太の保護者的存在であるドラえもんは当然すぎる反応を返す。


のび太「ドラえもんまでぼくをバカにするぅ~!」

ドラえもん「違う違う。ダンガンロンパでしょ? ぼくも知ってるよ。
       未来でもいまだに根強い人気があるゲームだからね」

のび太「どんなゲームなの?」

ドラえもん「詳しくは知らないけど残酷な表現があるって聞いたよ。のび太くんは楽しめないと思うな」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1515331445


のび太「でも、くやしいんだ! ぼくだけ仲間はずれなんて!」

ドラえもん「確か、何年か前にアニメをやっていなかったっけ。そんなに気になるなら
       まずはアニメを見てみたらどう? それで平気だったら貸してもらおうよ」

のび太「うん、そうする」


その日、ドラえもんとのび太の二人はダンガンロンパのDVDを借りて見ることにした。


のび太「楽しみだね!」

ドラえもん「パッケージを見る限り面白そうだけど、のび太くんは大丈夫かなぁ。
       人がたくさん死ぬけど本当に平気?」

のび太「正直ちょっとこわいけど、みんなをみかえしてやるんだ!」


二話視聴終了。


のび太「うわーん! 舞園さんが死んじゃったー!」


三話視聴終了。


のび太「うわーん! 江ノ島さんも死んじゃったー! オシオキこわいよー!」


四話視聴終了。


のび太「うわーん! 不二咲さんまで死んじゃったー!」


……色々あって最終話視聴終了後。



のび太「とうとう、とうとう終わっちゃったよ……ド~ラ~え~も~~~ん!!」



http://www.youtube.com/watch?v=vh3ZFtVqzac


チャララララララララ タラララララ タラララ ♪

チャララララララララ タラララララ タラララ ♪

チャララララララララン ダンッ ダンッ ♪


こんなこといいな できたらいいな

あんなゆめ こんなゆめ いっぱいあるけど

みんなみんなみんな かなえてくれる

ふしぎなポッケで かなえてくれる

そらをじゆうに とびたいな

「ハイ! タケコプター」

アンアンアン とってもだいすき ドラえもん ♪








          ドラえもん のび太の希望の学園



          ~   開    幕   ~





ドラえもん「なんだよ、もう。どうかしたの?」

のび太「うわーん! 結局六人しか生き残れなかった……こんなことなら見なきゃ良かった……」

ドラえもん「ほら、言わんこっちゃない」

のび太「だって! せいぜい四人くらいで終わると思ったんだもん。オシオキはえぐいし、
     まさかこんなに死んじゃうなんて……。しかもうさんくさいウニ頭や性格の悪い
     メガネが生き残って他の子は死んじゃうんだよ? こんなのりふじんだ!」

ドラえもん「しょうがないよ。そういうアニメなんだから」

のび太「しかも、みんな元は仲が良いクラスメートだったんでしょ?! それが記憶を
     消されてコロシアイをさせられるなんてかわいそうだよ。助けにいこう!」

ドラえもん「のび太くん、きみのそういう優しいところは素晴らしいけどね…
       これはアニメなんだ。作り話なんだよ? 一体どこに助けに行くつもりなの?」

のび太「なに言ってるんだい、ドラえもん? 世界はとても広いんだよ。つまりぼくたちが
     知らない世界でいまもこの話と同じことが起こっているかもしれないじゃないか!
     そしてぼくたちはそこへ行くための道具を持ってるじゃない!」

ドラえもん「なるほど。もしもボックスか。今日のきみはめずらしく冴えてるなぁ」

のび太「よし、いこう! さあ、いこう! 今すぐいこう!!」

ドラえもん「ちょ、ちょっと待ってよ! 念のために聞くけど、のび太くんは
       希望ヶ峰学園に行ってどうするつもりなの?」

のび太「そりゃもちろん……」ホワンホワンホワーン


  ~ 想像中 ~


モノクマ「オマエラにコロシアイをしてもらいます!」

苗木「そんなの嫌だ!」

舞園「いやー! 誰か助けてー!」

のび太「ちょっと待った!」

モノクマ「んー? 誰だオマエ?」

のび太「正義のヒーロー、野比のび太だ。モノクマ! ううん、江ノ島盾子!
     ぼくがやっつけてみんなを助けてやる!」


色々ひみつ道具でボッコボコ


江ノ島・戦刃「参りました」

のび太「もう悪いことしちゃダメだよ」

苗木「助かったよ、のび太くん」

石丸「君は僕らの救世主だ!」

霧切「流石のび太くんだわ」

舞園「ありがとう、のび太くん!」

書き溜めあるからエタりませんって言ってエタった人を俺は何人も見た

頼んだで


不二咲「のび太君って男らしいね!」

朝日奈「サンキューのび太!」

セレス「素敵ですわ、のび太くん」

大神「見事だ、のび太」

みんな「ありがとう! ありがとう!」


ちーやほーや


のび太「いやぁ、ぼくは当然のことをしたまでだよぉ。エヘッエヘッエヘッ」


  ~ 想像終了 ~


のび太「こんな感じになって~。エヘへヘヘッ」

ドラえもん「きみねぇ。確かにいったんはそうなると思うよ。でも、そのあとのこと考えた?」

のび太「あとってなにさ」

ドラえもん「わすれたのかい? 最終話で江ノ島が言ってたじゃないか。
       せっかく外に出れたって、外の世界は荒れ果てているんだよ?」

ドラえもん「自分の身にあてはめて考えてごらんよ。変な所に閉じ込められて、やっと脱出して
       帰ってきたのに家も町もめちゃめちゃ。家族や友達だって死んでいるかもしれない……」

のび太「そ、そんなのヤダ! ……そうだ。タイムマシンで過去に行って江ノ島さんが
     わるいことをする前にとめればいいんだ。えっと、じんるいしじょう……なんだっけ?」

ドラえもん「人類史上最大最悪の絶望的事件。……ところがねぇ、そうもいかないんだよ」

のび太「なんで?」


ドラえもん「それがあの世界の正しい歴史だからだよ。覚えてるかい? 昔ぼくたちは島を作って
       絶滅動物達を助けたことがあるよね? あれが許されたのは規模が小さかったからだよ」

ドラえもん「例えば、もしぼくたちが恐竜が絶滅するのはかわいそうと言って、それをとめようとすれば
       ぼくたちはタイムパトロールに逮捕されるだろうね。小さな改変は歴史の誤差として
       見逃してもらえるけど、歴史に影響を及ぼすレベルの改変は許されないんだよ」

のび太「そんなぁ、じゃあどうすればいいのさ!」

ドラえもん「ちょっとは自分で考えなよ! まったく、結局ぼくに頼るんだから」

ドラえもん「……そうだねぇ。最終話でみんな絶望しかけたけど苗木くんの言葉によって立ち直った。
       でもあれはみんなで一緒に苦難を乗り越えたからこそだと思うんだ」

のび太「ふんふん、それで?」

ドラえもん「あの世界の正しい歴史は、事件は起こるけど苗木くん達によって江ノ島さんが
       倒されることだから、そのお手伝いをするくらいなら問題ないかな」

ドラえもん「具体的には、ぼくたちが希望ヶ峰学園に一緒に入って事件が起きないようにしたり、
       生徒達が真実を知っても結束して乗り越えられるように陰から手助けしたりとか、
       そのくらいなら許されると思うよ」

のび太「ようはぼくたちもみんなと一緒に生活して事件をくいとめればいいんだね!
     よし、わかった。じゃあ行こう」

ドラえもん「気が早いよ。向こうは危険なんだよ? ちゃんと準備していかないと」


パパパパッパパー!


ドラえもん「透明マントと空気ピストル~。いざという時逃げられるようにこの二つを渡しておくよ」

ドラえもん「それに、いきなり乱入したらみんなに怪しまれるから肩書きとか
       言い訳を事前にいろいろ考えておかないと……」

のび太「むずかしいのはぜんぶドラえもんにまかせるよ。ぼくは昼寝してるから。……ぐぅ」

ドラえもん「もう! きみが言い出しっぺなのにしかたないんだから!」


プロローグ終了。
今日は二本立てなので一旦休憩入れて第一話に突入します。


>>9
今連載してる作品は連載四年目に突入してるからエタは心配しなくていい
もし書き込みなくなったら多分マジで死んでる



  第一話 ダンガンロンパのせかいへ


僕の名前は苗木誠。
どこからどう見ても平凡なただの高校生だ。

それが何を間違ったか、あの才能ある優秀な生徒しか入れない希望ヶ峰学園に
入れることになった。理由は単に抽選で選ばれたからだけど……

まあでも、卒業すれば成功を約束されるという学校に行かない手はないよね!
そして僕は希望ヶ峰学園への第一歩を踏み出したのだ。超高校級の幸運として。


でも僕は知ることになる。

僕の本当の肩書きは、超高校級の幸運ではなく超高校級の不運だったということを――


グニャリ――


苗木「う……ここは……」

「お兄さん、だいじょうぶ?」

苗木「君は……」

苗木(僕が目を覚ましたのは教室のような所だった。目の前には小学生くらいの
    男の子と、あと何だろう? 変な生き物がいる)

のび太「こんにちは! ぼく野比のび太って言います。よろしくね!」

ドラえもん「ぼくはドラえもんです!」

苗木「僕は苗木誠って言うんだ。よろしく。えっと、ドラえもんは……」

ドラえもん「ぼくはネコ型ロボットです。のび太くんの保護者だよ」

苗木「ロボット?! ネコ、型……? そうなんだ……」


どこが猫なのか全くわからなかったが、コミュニュケーション能力の高い苗木は黙っていた。


苗木(僕の知らない所で科学はだいぶ進歩していたようだ。それにしてもここはどこだろう?)

苗木「ここ、どこか知ってる? 何で窓に鉄板が……それにあれは、監視カメラ?」

のび太「ここは希望ヶ峰学園の中だよ」

苗木「そうなの?」

ドラえもん「そんなことより苗木くん、これを読んで。もうすぐ入学式があるみたいだ」つ【入学あんない】


入学あんない『あたらしいがっきがはじまりました。しんきいってんこの学えんがオマエラの
        あたらしいせかいとなります。入学しきは8じから。たいいくかんしゅうごう』


苗木「え? ……本当だ(オマエラ? きったない字。何か怪しいな……本当に普通の入学式なのか?)」

苗木「……って、うわ! あと五分しかない!」

のび太「お兄さん、ほかの人たちがまってるかも。早く行こうよ!」

苗木「う、うん」


  ― 体育館 ―


朝日奈「あ、新しい人が来たよ」

山田「これで15……いや、17ですか? と言いますか……」

桑田「おい、なんだありゃ?!」

大神「なんと面妖な……」

江ノ島(なにあの子達……どこから入ってきたの?!)


石丸「みんな、こんな時こそ静粛に! 初めまして、僕の名前は石丸清多夏。君達の名前は?」

苗木「僕は苗木誠と言います」

ドラえもん「こんにちは! ぼくドラえもんです」

のび太「野比のび太です。よろしくお願いしまーす!」

石丸「うむ、元気でよろしい! ……ところでドラえもん君、君は一体何者かね?」

ドラえもん「ぼくはネコ型ロボットです。のび太くんの保護者としてこの学校に来ました」

腐川「……ネ、ネコ型じゃなくてたぬきかダルマの間違いじゃないの?」

ドラえもん「ぼくはたぬきでもダルマでもない! ネコ型ロボット!!」

桑田「ずいぶんブーデーなネコがいたもんだな」

山田「猫耳もしっぽもないネコ型なんて認められないですぞ!」

葉隠「つかなんで高校に小学生がいるんだべ? 三ダブの俺の反対で飛び級か何かか?」

のび太「ふふん、ぼくは超高校級の小学生だからね!」

大和田「いや、意味わかんねえよ。小学生で超高校級とか」

のび太「うわ、このお兄さんすっごく恐い……やっぱりアニメよりずっと迫力あるなぁ」

山田「(ピキーン)アニメとな?」

ドラえもん「のび太くん!」

のび太「はっ、ううん。なんでもない。こっちの話。えっとぼくたちは……なんだっけ?」


そこでドラえもんは事前に考えておいた設定を話し始める。


ドラえもん「実は希望ヶ峰学園は宣伝のために今年から小学生を体験入学させることにしたんだ!
       のび太くんはその抽選に選ばれて、ぼくはお付き。ぼくは子守ロボットだからね」

江ノ島「えっ」

江ノ島(ちょっと盾子ちゃん! 私そんな話聞いてないよ!)

霧切「…………」

不二咲「そうなんだぁ。凄いね!」

石丸「成程、未来ある子供達に我々が学業に励む姿を見せようと言う訳だ。
    粋な図らいではないか。ならば一層気を引き締めねばな! ハッハッハッ」

苗木「じゃあ、僕の超高校級の幸運に対してのび太くんは超小学生級の幸運てことだね」

のび太「うん、まあそんな感じ(本当は超高校級が良かったんだけどなぁ)」

朝日奈「じゃあ苗木達三人のために、もう一回自己紹介しよ!」


次々と個性的な挨拶をしてくる超高校級の生徒達。


のび太(わあー、アニメより全然キャラ濃いよこの人たち!
     この人たちと生活するんだぁ。楽しみだなぁ。うふふ!)

十神「おい、何をジロジロ見ている」ギロ

のび太(でもこの人はきらい)


不二咲「ところで、三人も教室で目を覚ましたの?」

苗木「うん、校舎に入った所までは覚えてるんだけど気が付いたら教室で……」

のび太「ぼくたちもそうだよ」

不二咲「そうなんだ。やっぱり……全員がそうなんだね」

セレス「全員が揃って気を失い教室で目を覚ましてここへ来た。妙な話ですわね」

桑田「まさか誘拐……とか? 俺達全員連れ去られた、なんて……」

葉隠「学校の用意したオリエンテーションか何かじゃねえのか?」


ガヤガヤザワザワ


舞園「あの、苗木君ですよね? 同じ中学だった」

苗木「え、舞園さん。僕のこと覚えててくれたの?」

舞園「当たり前じゃないですか。だって三年間も同じ学校だったんですよ」

のび太「知りあい?」

苗木「い、いや! 知り合いって言っても単なる顔見知りというか、中学が
    同じだっただけで僕みたいな地味な奴が舞園さんと知り合いだなんてそんな……」

舞園「そんな風に言われるとショックです……」

苗木「あ、ごめんなさい! 別にそんな意味で言った訳じゃ……」

舞園「ふふっ、アイドルだからって遠慮なんてしなくてもいいですよ。
    こんな所で知ってる人に出会えて少し安心しました」



キィィィィン!


苗木「うわ、なんだ?!」

「あーマイクテスッ、マイクテストッ。大丈夫? 聞こえてるよね?」

「どうやらみんな揃ったみたいだね。えー、新入生のみなさん!
 今から入学式を執り行いたいと思います」


ピョーン!


モノクマ「ジャジャーン!」

葉隠「お? また新しいロボットが出てきたべ」

セレス「今度はクマ型のようですわね」

朝日奈「わかりやすくて良かった良かった」

モノクマ「え? なに、やけにみんな冷静なんだけど……まあいいか」

モノクマ「僕はモノクマ! オマエラのこの学園の学園長なのだ! よろしくね!」

苗木「学園長?」

のび太「アニメみてた時もおもったけど、あいつドラえもんと声が似てるね」ボソボソ

ドラえもん「やめてよ。ゾッとする」ボソボソ

モノクマ「じゃあ進行も押してるのでさっさと始めちゃいましょう。
      ……起立、礼! オマエラ、おはようございます!」

石丸「おはようございます!」

のび太・ドラえもん「おはようございまーす」


腐川「なに普通に挨拶してんのよ……!」

モノクマ「えー、オマエラのような才能溢れる高校生は世界の希望に他なりません……って、アレ?」

モノクマ「…………」

全員「…………」

モノクマ「高校生じゃないヤツいるじゃん! てか、オマエラ誰だよっ?!」ガビーン!

のび太「あれー、学園長なのに知らないの?」

ドラえもん「ぼくたちは希望ヶ峰学園の体験入学生とその保護者だよ」

モノクマ「ハアアアアッ?!!」

江ノ島(ちょっと、盾子ちゃんどういうこと?!)

モノクマ(バカ、交互にこっち見んな。怪しまれるだろ! こっちが聞きたいよ!)

ドラえもん「その証拠にほら、ぼくたちは希望ヶ峰学園の電子生徒手帳を持ってる」スッ

ドラえもん(ほんとはとりよせバッグで事前に苗木くんの電子生徒手帳を借りて、
       フエルミラーで増やしたのをぼくが改造したんだけどね)

モノクマ「……!!」


― モニタールーム ―


真・江ノ島(……なになに、どういうこと?! 意味わかんない。でも超面白いじゃん!
       こんな予測不可能な事態が起こるなんて絶望的ィィィ!!)

真・江ノ島「いいよ。認めてやんよ、オマエラの入学。せいぜい絶望してよね!」



場面は再び体育館に戻る。


モノクマ「あ、あー。失礼。忘れてました。ボクってばオッチョコチョイ。えーっと名前なんだっけ?」

のび太「野比のび太と」

ドラえもん「ドラえもんです!」

モノクマ「そういう訳だから。まあ、オマエラ仲良くしてやってよ。……で、話を戻すけど
      オマエラにはこの学園だけで共同生活を送ってもらいます。期限はありません!」

一同「ハア?!」

モノクマ「オマエラは一生この学園で生活するんです。まあ予算は豊富だから不自由はさせないよ」

大神「成程。窓に貼られた鉄板は我らを逃さぬためか……」

大和田「冗談じゃねえ! さっさとここから出せや!」

モノクマ「はいはい。そんなオマエラのためにあるルールを設けました。誰かを殺した生徒だけが
      ここから卒業……つまり出ることが出来るというそれだけの簡単なルールです」

モノクマ「殺し方は問いません。希望同士が殺し合うなんて
      絶望的なシチュエーション……ハア、ドキドキする」

山田「な、何と?!」

舞園「そんな……どうして私達が殺しあわなきゃいけないんですか?!」

のび太「そうだ! ぼくたちがいる以上絶対にコロシアイなんてさせないぞ!!」

ドラえもん「お前の望みどおりになんてさせない!」

モノクマ「フゥ、いつまで強がりを言っていられるかな?」

大和田「殺し合いだぁ? テメーの悪ふざけはドがすぎんぞ!!」

モノクマ「悪ふざけ? それって君の髪型のこと?」

大和田「んだとクソがっ!」


モノクマの挑発に乗った大和田がモノクマの体を掴んで持ち上げた。


のび太「あ、お兄さん危ない!!」

大和田「ラジコンだかぬいぐるみだか知らねえがバッキバキにしてやんよ!」

モノクマ「ぎゃああ、学園長への暴力は校則違反だよー!」


ウィンウィンウィンウィン……


のび太「危ないよ! 早く投げて!!」

ドラえもん「遠くへ投げるんだ!」

大和田「ああ?」

霧切「その子たちの言う通りにして! 早くっ!」

大和田「チッ、うおらぁっ」


ブンッ

ドカアアアアアアアアアン!


「うわああああああああああああああ」


大和田「爆発しやがった……」

不二咲「あのロボット、死んだのかな……?」

モノクマ「ロボットって言わないでよ。モノクマ!」ピョーイ

「きゃああっ!」


どこからともなく新たなモノクマが生徒達の前に現れる。


モノクマ「今回は初めてだから警告だけで許すけど、校則違反者を発見した場合は
      今みたいなグレートな体罰を発動しちゃうからねっ!」爪ジャキーン!

モノクマ「ではでは、入学式は以上でおしまいとなります。
      豊かで陰惨な学園生活をどうぞ楽しんでくださいねー」


そう言ってモノクマはどこかへ消えてしまった。


「…………」

のび太「やっと終わった。とんでもないヤツだ!」

ドラえもん「まったくだね!」

石丸「こんな馬鹿げた話が……」

不二咲「こ、殺し合いだなんて嘘だよね……」

十神「嘘か本当かが問題なのではない。俺達の中にこの話を本気にする奴がいるかどうかだ」

「…………」


気まずい空気の中、生徒達は手始めに体育館の中を探索する。


大神「……ムウ、我の力でもこの鉄板を破壊するのは無理だ」

桑田「こっから出てきたはずなんだよなぁ、さっきのロボット」ゴソゴソ

ドラえもん「見てごらん。ここだけ四角くなってる。恐らくここが開閉するんだ」


大和田「じゃあここをぶっ壊せば、さっきのヤツの所に行けるんじゃねえか?」

ドラえもん「……やめておいた方がいいよ。多分頑丈に作られてると思うし、
       向こうは銃とか持ってるかもしれない。行くならそれなりの準備をしないと」

ドラえもん(今はダメだ。万が一通れちゃったら、きっと返り討ちにあって全滅しちゃう)

大和田「チッ」

石丸「諸君! 希望を捨ててはいけない。きっと脱出口があるはずだ。探索に行こう!」

十神「俺は一人で行くぞ。この中に、既に他人を殺そうと目論んでいる奴がいるかもしれんからな」

のび太(もうヤダ、この人……)

ドラえもん(始まったよ……毎回毎回この人が空気を乱すんだよね……)

舞園「そんなこと……」

十神「ないとは言い切れんはずだ」

大和田「待てやゴラァ! んな勝手はゆるさねえぞ!」

十神「どけよ、プランクトン」

大和田「ああん?! 転がされてえみてえだな……!」

苗木「ちょ、ちょっと待って」

のび太「あ!(この展開、覚えてるぞ。この後あのお兄さんはなぐられちゃうんだ!)」

ドラえもん「ま、待って! ケンカは良くないよ」


この後に起こることを知っているドラえもんとのび太は大和田の前に立ちふさがった。


大和田「どけ、お前ら! 離れねえと巻き添えくらうぞ!」

のび太「どうしよう……ジャイアンよりもずっとこわい……う、うわーん! ケンカなんてやめてよー!」

ドラえもん「そうだよ! ケンカなんてダメだ!」


うわーんうわーん!


朝日奈「ちょっと、大和田! 子供が怖がってんじゃないの!!」

石丸「いくら十神君の態度に問題があるとはいえ、暴力で解決するのは反対だッ!」

江ノ島「そうよ! 子供の前なんだし、ちょっとは考えなさいよ!」

大和田「う、ぐっ……しょうがねえな」

十神「フンッ」


スタスタスタ……


大和田(あの野郎、覚えてろよ……!)

のび太「ふー、ケンカにならなくて良かったー」

舞園「まだ子供なのに真っ先に飛び出すなんて、のび太君とドラえもんさんは勇気があるんですね!」

のび太「え? そ、そんなことないよ。あのままだと苗木お兄さんまで
     なぐられちゃうから、ムガムチューで……」

苗木「え、僕のために止めてくれたの? 二人共ありがとう!」


のび太「いや、その……えへへっ」

ドラえもん「どういたしまして!」

石丸「実に素晴らしい! 良い物を見させてもらった。この調子で協力していこうではないか!」

大和田「……チビすけのくせになかなか見どころあるじゃねえか」

朝日奈「よーし、それじゃあ探索にしゅぱーつ!」

霧切「…………」


― 寄宿舎 ―


ドラえもん「で、どうするの? ぼくたちの部屋ないんだけど」

苗木「僕らの部屋はあるけどのび太君達の部屋がないね。正規の学生じゃないからかな」

桑田「でもよ、校則によると個室以外で寝るのは校則違反なんだろ? ヤバくね?」

不二咲「誰かの部屋に泊めてあげるしかないね」

ドラえもん(あーあ、やっぱりこうなった。だから僕は事前に部屋も用意しておこうって言ったのに……)


ため息をつくドラえもんとは反対にのび太は怪しい笑みを浮かべている。


のび太(これでいいんだよ! きっとかわいそうに思ったお姉さんの誰かが部屋にとめてくれるはず。
     本当は男だけど優しくてかわいい不二咲さんでもいいなぁ。グヘヘヘ)

江ノ島「で、どーすんの?」

石丸「困っている子供を放っておく訳にはいかない! ここは風紀委員たる僕の部屋に泊めてあげよう!」

のび太「……え?」


大神「うむ、石丸なら安心であろうな」

セレス「適任だと思いますわ」

朝日奈「良かったじゃん、のび太。これで大丈夫だね!」

のび太(え、えええええ?! 冗談じゃないよ! よりによって一番うるさそうなお兄さんの部屋なんて!
     このお兄さんなんかニガテなんだよなぁ。出木杉くんをママの性格にしたみたいだし)


だが予想外の出来事はこれで終わらなかった。


大和田「……おい。二人もいたら大変だろ。一人は俺の部屋に泊めてやるよ」

ドラえもん・のび太「ええええええええええ?!!」

のび太(ちょっと、やめてよ! なんでとつぜんそんなこと言い出すのこの人?!)

ドラえもん(いやぁ、たまげたなぁ。大和田くんは本当は面倒見が良くて優しい子なんだね)

セレス「あら、乱暴そうな大和田君に子供の面倒なんて見れますの?」

桑田「え、なに? 見た目は怖いけど実は子供好きとかそーゆーキャラなワケ?! 似合わねー」

山田「さては不良が野良猫に優しくする現象で好感度稼ぎをするつもりですか!」

葉隠「ハッハー、大和田っちはあざといんだな!」

大和田「バカ言ってんじゃねえ! 俺はな、さっきのこいつらの男気に感心したんだ。それに考えてみろ。
     もしこんなかに仲間を殺そうなんて不届き者がいた場合、真っ先に狙われるのはガキどもだろ」

大和田「俺だったら大神以外の誰が襲ってきても守ってやれるじゃねえか」

石丸「フム、一理ある。……が、僕はあえて反対するぞ! 先程の件を見ても、どうやら君は見た目通り
    非常に短気で乱暴なようだ。また子供の前で怒鳴って怖がらせたりするのではないかね?」


のび太(そ、そうだそうだ。がんばってお兄さん! ほんとにじょうだんじゃないよ!)

大和田「もうガキの前で怒鳴ったり乱暴したりしねえよ!」

石丸「信用出来ないな」

大和田「……いいぜ。そこまで言うなら男と男の約束だ。もう絶対にガキどもを怖がらせたりしない。
     男の約束は絶対だ! もし破ることがあったら八つ裂きにしてもらってかまわねえ!」

不二咲(男の約束だって! かっこいいなぁ)キラキラキラ

石丸「フム……良かろう。そこまで言うなら君を信じる。ただしもし約束を破ったら僕は容赦しないぞ!」

大和田「よし、決まったな。じゃあ、二人のうちどっちかは俺んとこに来いや」

のび太「え、ええええええっ?!」

のび太(ちょっと、なに言いくるめられちゃってるのお兄さん?! そ、そんな~!)

ドラえもん「えーっと、のび太君が好きな方を選んでいいよ。ぼくは別にどっちでもいいから」

のび太「えぇー……」

石丸「さあ、どちらか好きな方を選びたまえ!」

大和田「どっちがいいんだ?」

のび太(キューキョクのセンタクすぎるよ……どっちもイヤだ! まったく、この二人が
     兄弟になるのはまだ先でしょ! なんでこんなところで足なみそろえちゃうのさぁ!)

のび太「ええっと、じゃあ……こっちの、うるさいお兄さんのほうにする……」シブシブ

石丸「う、うるさいぃぃっ?!」ガビーン!


思わず本音が出たのび太の言葉に石丸はショックを受ける。


桑田「アッハッハッハッ! 確かにそいつマジでうるせーもんな!」

葉隠「ああ、石丸っちはうるさいべ!」

朝日奈「あんまり子供にうるさくしちゃダメだよ! 手加減してあげないと」

石丸「こ、心得た……」ヒクヒクヒク

大和田「おし、じゃあそっちの丸いのが俺のとこだな。ドラ……なんだっけか?」

ドラえもん「ドラえもんです。よろしくね、大和田くん!」

大和田「おう。よろしくな、ドラ公!」

苗木「予備の布団はあるのかな? おーい、モノクマ!」

モノクマ「はいはい。のび太君達の布団とか着替えとかでしょ? ハァ、仕方がないなぁ。
      本当はまだ開けないつもりだったけど、倉庫を開放しといてあげるから
      あとは全部自分達で勝手に調達してよ。じゃーねー」


― 男子トイレ ―


ドラえもん「よかった。上手くもぐりこめたねぇ」

のび太「これからのことをかんがえたらユーウツだけどね……」

ドラえもん「自業自得だろう! だから部屋を事前に用意しようってぼくは言ったのに」

のび太「返すことばもありません。トホホ」

ドラえもん「……ハァ。とにかく、最初の事件は動機が配られるまでは起こらないはず。
       そして、DVDは僕らが先に処分しちゃえばいいから今回は簡単だよ」


のび太「じゃあ、それまではてきとうに遊んでいてもいいかな?」

ドラえもん「うーん。でもあんまり探索をサボると石丸くんが怒るんじゃないかな」

のび太「いいよ! ぼくは部屋に戻っておひるねしーよう」


バタバタ! ガチャ。


石丸「おお、こんな所にいたのか二人共!」

のび太「げっ、お兄さんどうしたの?」

石丸「仲間を疑うような真似はしたくないが、いかんせん今日会ったばかりだしな……
    子供達だけで行動するのはまだ危険だ。今日はずっと僕と行動を共にするように!」

のび太「ええー?! かんべんしてよー!!」

ドラえもん「あきらめなよ、のび太くん……」


               ◇     ◇     ◇


のび太「結局あのお兄さんに付き合わされて学校中を行ったり来たりするはめになった……
     どうせ今のだんかいではなにも出てきやしないのに」

ドラえもん「まあまあ。いい運動になったと思えば」

のび太「しかも、このあとはなにも発見がないほうこく会がえんえんとつづくワケでしょ?」


ドラえもん「仕方ないよ。彼らは何も知らずにいきなり監禁されたんだよ?
       きみじゃあるまいし、のんきに昼寝なんてしてられないよ」

のび太「そうだけどさー……はぁ、明日はもう少しらくができるといいけど」


  ― 食堂 ―


石丸「全員揃ったな。それではここに第一回探索報告会の開始を宣言する!」

のび太「ムニャムニャグーグー」

苗木「の、のび太君起きて。寝たら石丸君に怒られちゃうよ!」


しかし疲れきったのび太は机に突っ伏してひたすら寝ていた。


舞園「全然起きませんねぇ」

朝日奈「石丸、あんた何やったの?」

石丸「……いや、僕は何もしていないが。子供達だけでは危ないから一緒に連れて行っただけだ」

不二咲「疲れちゃったんだねぇ」

大神「石丸よ、子供を大人と同じように動かしては駄目ではないか」

江ノ島「マジ無神経じゃね?」

石丸「……す、すまない。次から気をつけよう」

ドラえもん「そんなに気にしなくていいよ。のび太くんは同年代でも特別体力ないから」

石丸「彼には僕から後で説明しておくから、とにかく報告会を始めよう……」


             ・

             ・

             ・


ドラえもん(まあアニメで見たのとほとんど同じだね。二階への階段はあるけどシャッターが
       閉まってて通れない。食料は毎日補給される。出口になりそうな所はない)

ドラえもん(一つだけ違ったのは霧切さんが学園内の見取り図を持ってきたことだね。流石記憶が
       ないとはいえ超高校級の探偵さんだ。……ぼく達の正体がバレないといいけど)

ドラえもん(そして例によって安広……いやセレスさんが、逃げ場がないことをみんなに
       再確認させて怖がらせ、夜時間の行動を禁止するというルールができたんだ)


報告会終了後、のび太をおぶった石丸とドラえもんが廊下を歩いていた。


ドラえもん「ごめんね、石丸くん。居眠りしたのび太くんを運ばせちゃったりして」

石丸「いや、とんでもない! 僕こそ子供相手に無神経だった。明日謝っておかねばな!」

ドラえもん(一見厳しくて口うるさい人だけど、本当はとっても面倒見が良くて優しいんだな。
       だから大和田くんとも仲良くなれたんだろうし。こんな人が殺されてしまうなんて……)

ドラえもん「ぼくがいるかぎり絶対、絶対! コロシアイなんてさせないぞ!!」

石丸「おお! ドラえもん君、その意気だ! 共に頑張ろうではないか。ハッハッハッ!」

ドラえもん「じゃあぼくは大和田くんの部屋に行くね。おやすみなさい、石丸くん」

石丸「グッドナイトだ、ドラえもん君!」


  ― 大和田の部屋 ―


ドラえもん「おじゃましまーす」

大和田「お、来たかドラ公。相棒はどうだった?」

ドラえもん「多分明日の朝まで起きないと思うよ」

大和田「貧弱だな。俺が少し鍛えてやろうか?」

ドラえもん「きっと怒鳴りたくなるからやめといた方がいい。とにかくトロいし
       根性なしだし、もうグズなんてもんじゃないんだから」

大和田「すげえ言われようだな……」

大和田「ああ、そうだった。そんなことより、俺はオメェに聞かなきゃなんねぇことがある」

ドラえもん「聞きたいこと?」ドキリ


何やら大和田は真剣な顔をしている。ドラえもんはつばを飲みこんだ。が……


大和田「オメェ……犬派か? 猫派か? ネコ型ロボットってことはやっぱ猫派なのか」

ドラえもん「そりゃあもちろん猫派に決まってるよ!」

大和田「カーッ! やっぱりか。まあ、猫もかわいいけどよ……俺はやっぱ犬だな!」

ドラえもん「大和田くん、動物が好きなの?」

大和田「おうよ! 昔、犬を飼っててなぁ」


ドラえもん(うーむ、人は見かけによらない。ジャイアンが大きくなったような感じかと
       思ってたけど、すぐカッとなるクセさえなければ普通にいい人だね)

ドラえもん(……まあ、そのカッとなるところが今回致命的なことになったんだけど)

大和田「マルチーズ飼ってたんだ。チャックって言ってなあ、かわいかったぜぇ」

ドラえもん(ちょ、えええ?! マルチーズってあの小さくてかわいいやつだよね? この顔で
       飼ってたの? まさかこの格好で散歩とか?! に、似合わない。ぷぷっ!)

ドラえもん(ああー、ダメだ。こらえなきゃ! 笑ったら絶対怒られる。ブフッ)

ドラえもん「か、かわいさなら近所のみーちゃんだって負けてないよ! ぼくのガールフレンドなんだ!」

大和田「ガ、ガールフレンド……だと?!(まさかロボットに負けるたぁ思わなかったぜ……)」


絶賛告白十連敗中の大和田はロボットにすら彼女がいるという事実に衝撃を受けていた。


大和田「……チッ、言うじゃねえか。じゃあ今日はお互いの好きなもんについて語ろーぜ!」

ドラえもん「負けないよー!」


こうして夜は更けていき、ドラえもんとのび太のダンガンロンパが始まったのだった。


今回はここまで!

週二ペースで行けたらいいけど、何せ三年前に書き始めて諸事情で
二年ほどお蔵入りしていた作品なのでところどころ手直し入れてます
一話まるごと投下と細切れで隔日投下とどっちがいいのかな?

あと補足事項ですが、このSSのドラえもんは通常より若干頭いいです。
ヘマをすると本当に殺される世界観なので……のび太も大長編仕様ですね

次は火曜日に来ます。それでは

>>13
まあ自信満々なのは評価するけど内容が・・・(Rの方が良かったんじゃない?)


まあそれに、ダンカンロンパ3ですら、いまだに否定的意見が殺到してるからな


まあ頑張ってくれ。

>>41
Rの方が良かったというのはコロシアイ有りで
[たぬき]側がバンバン死ぬということですかね?

多分そういうのは既に先駆者がいると思いますし[たぬき]なら
チート無双しても許されるんじゃないかなと思い基本的には
コメディで行こうと思います。楽しめなかったらごめんなさい

サツバツ展開がお好きなら1のもう一つのSSの
ダンガンロンパ×スーパードクターKがかなり血みどろで
重い展開が多いのでもし良かったらこちらをどうぞ
苗木「…え? この人が校医?!」霧切「ドクターKよ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1382255538/)

sageで書いたらドラえもんがたぬきになっちゃったw

この特殊変換迷惑だしやめてほしいなぁ……


明日って言ったけど時間出来たんで投下します。
実質今回までがプロローグ



  第二話 たのしいがくえんせいかつ (ひ)にちじょうへん


コロシアイ学園生活二日目。朝。


「……たくん……」

のび太「うーん、もうちょっとだけ……」

「……びたくん……のび太君!」

のび太「わっ! お兄さんだれっ?!」

石丸「いくら昨日会ったばかりとは言えもう忘れられているとは……僕はショックだぞ」

のび太「あ……そうか。ぼくはいま希望ヶ峰学園にいるんだった」

石丸「その通り。思い出せたかね? では改めて……グッモーニンだ、のび太君!」

のび太「おはよう、お兄さん」

石丸「ウム、気持ちの良い朝だな!」

のび太「きもちがいいもなにも窓がふさがれてて外が見えないのに……」

石丸「たとえ外が見えなくても、心の天気が快晴ならば気持ちが良いのだ!」

のび太「ああ、うん……て、まだ7時ちょっとじゃない! もう少し寝かせてよ!」

石丸「君は何を言っているのかね? 先程起床を知らせる放送が鳴ったではないか」

のび太「え~、7時に起きるの~?!」

石丸「ちなみに僕は5時には起きて運動していた。その時間に君を起こすのは
    悪いと思ったから、放送が鳴るまで寝かせてあげたのだよ?」

のび太(なんなのこの人。いちおう気はつかってくれてるみたいだけど……)


のび太「うーん、ありがとう……なのかな?」

石丸「うむ。それと先程唐突に思いついたのだが、親睦を深めるために毎朝みんなで共に朝食を
    食べるのはどうかと考えたのだ。報告やその日の行動指針を決めたりするためにな」

石丸「………という訳で、だ。さあ、早く起きて支度をするんだ! 急がないと朝食会に間に
    合わなくなってしまうぞ。初日から遅刻なんて……いや、そもそも遅刻自体僕は許せない!!」

のび太(そう言ってお兄さんはとにかくぼくをせかす。これが毎日つづくのか……
     おとなしくドラえもんのいうとおり部屋を用意しておけばよかった。ドラえも~ん!)


  ― 朝食会 ―


石丸「おはよう諸君! よく来てくれた。それでは第一回朝食会を開催しようではないか!」

十神「よく来たも何も、貴様が無理矢理連れてきただけだろうが」

腐川「まったく……朝っぱらからあの熱苦しい顔を見なきゃいけないなんて……これは嫌がらせ?
    そう……そうよ、根暗のあたしに対する新手の嫌がらせなのよ……!」

葉隠「ま、まあ腐川っち。全身から負のオーラが漂ってるべ」

腐川「葉隠にまで馬鹿にされた。キィィィ、あたしなんてどうせぇー!」

山田「葉隠康比呂殿! どう考えても逆効果ですぞ!」

十神「黙れ、腐川。貴様の醜い声でこの俺の耳を潰す気か?」

腐川「……!」

霧切「人には人のペースがあると思うわ。強制するものではないと思うけど」

石丸「だが集団生活である以上、最低限の協調性も必要だ! 君なんて隠し事をしているではないか!」


セレス「そうですわね。才能も教えてくださらないなんて、
     暗にわたくし達を信用しないと言っているのと同じですわ」

葉隠「もしかすっと、モノクマのスパイじゃねえのか?!」

山田「ス、スパイ?!」

霧切「…………」

苗木(ま、不味い。なんか空気が不穏になってきたぞ)

苗木「みんな、やめようよ! そういう……」

のび太「霧切お姉さんはいい人だよ!」

霧切「!」

十神「いい人? 何故そう言い切れる? 常識的に考えれば、
    コロシアイに有利な才能だから黙っていると取るのが普通だ」

のび太「そう思うのはあなたの性格が悪いからでしょ!」

十神「何?」ピキッ

不二咲「の、のび太君!」アセアセ

十神「では聞くが、貴様はどうして霧切が才能を言わないんだと思う?」

のび太「言わないんじゃなくて言えないのかもしれないよ。たとえば、その……ど忘れしたとか」

江ノ島「ブフッ! そそそ、そんなのあるワケないじゃーん! ねぇ?!」

大和田「のび太……」

桑田「いくらなんでもムリあるだろ、それ……」

のび太「うう、ドラえもーん!」


ドラえもん「ど忘れなんてするのはのび太くんくらいだけど、人には色々事情があるんだ。
       きっと霧切さんには何か深い理由があってぼく達に才能を言えないんだよ」

ドラえもん「なのに、なにも知らないぼく達がよってたかって責めるのは良くないと思うな」

腐川「ググ……正論かもしれないけど、謎のロボットに説教されるってどういう状況なのよあたし達……」

苗木「ぼくものび太君達の意見に賛成。確かに霧切さんに限らず、僕達みんなまだ出会ってばかりで
    お互いを完全に信じきるのは難しいと思う。でも、信じようっていう気持ちが大事じゃないかな?」

朝日奈「うんうん! 私も賛成!」

大神「同感だ」

石丸「素晴らしい意見だ! 僕も支持する!」

のび太(良かった~。なんとかまるくおさまった)

ドラえもん(まったく、アニメにないシーンが来る度にどう対応すればいいのかヒヤヒヤするね……)

朝日奈「倉庫にお菓子やドーナツあったんだー! 親睦を兼ねてドーナツパーティーしようよ!」

不二咲「いいねぇ!」

葉隠「なら特別に俺の占いも大盤振る舞いするべ! 今なら半額だぞ!」

大和田「のび太とドラえもんが男気見せてるってーのに、お前ぶっ飛ばすぞ?」

葉隠「それは勘弁してくれぇ!」

苗木「は、はは……(ホント個性が強いメンバーだな。僕はやっていけるのだろうか)」

舞園「大丈夫です。苗木君ならやっていけます。今も止めようとしてくれましたし」

苗木「読まれた?!」

舞園「だって私、エスパーですから」ニコ


苗木「でも、僕だけだったら止められなかったかもしれないよ。のび太君達がいたから……」

舞園「あの空気で最初に止めようとしたのは苗木君じゃないですか。大丈夫です。私は見てますから」

苗木「舞園さん……」ドキッ

桑田「ひゅー、さすが舞園ちゃんは今日もかわいいねぇ!」

大和田「うっせーぞ。朝からチャラチャラしやがって。俺は寝不足でイラついてんだ」

桑田「じゃあなんで俺より早く来てんだよ。あれか? 暴走族って時間にうるさいのか?」

大和田「ちげーよ。ドラえもんに起こされたんだ。寝直すワケにもいかねえしよ」

ドラえもん「昨日はいろいろ語り合ったからね。ふふふ」

桑田「ていうか、普通に飯食ってるし?!」

江ノ島「昨日も食べてたじゃん。いまさらなに言ってんの?」

桑田「昨日はいろいろありすぎてパニクってたんだよ!」

不二咲「すごいなぁ。シャワーにも入ったって言ってたし。どうなってるんだろう」

ドラえもん「当然だよ! ぼくは二十二世……いや、いまをときめく最新ロボットだからね!」

桑田「ホントかよ……新種の生物って言われた方がまだ信じられるぜ」

葉隠「ドラえもんっちはアトランティスのロストテクノロジーだべ。俺の占いがそう言ってる」

江ノ島「その占い三割しか当たんないんでしょ? デタラメ言わないでよ!」

のび太「それにしてもこの朝ごはんおいしい~。誰が作ったの?」

朝日奈「私とさくらちゃんだよ!」

大神「皆の口に合ったようで何よりだ」


朝日奈「お代わりあるからたんとお食べー。食べないと大きくなれないからね!」

のび太「わーい! ハフハフハフっ!」

石丸「のび太君、食事はよく噛んで食べなければ駄目だぞ!」

大和田「昨日から思ってたが保護者かオメェは!」

セレス「風紀委員の肩書は返上して保父さんになった方がよろしいのではないですか?」クスクス

山田「セレス殿の小悪魔スマイルキター。性格悪いの見え見えなのに
    でも悔しいそんな所に感じちゃう。ビクンビクン」

葉隠「ドラえもんっちはUMAだべ!」

桑田「さっきと言ってることがちげぇ!」

腐川「よく朝からそんなに食べれるわね……栄養が胸に吸い取られてるのかしら……!」

朝日奈「だって朝にたくさん食べないと午前中に運動する元気が出ないじゃん!」

石丸「この朝食会が終わったらまたみんなで探索をしよう!」

大和田「それに異論はねえがオメーが指揮をとるのはなんか気にいらねえ!」


ワーワーガヤガヤ!




苗木「…………」

苗木(やっぱりこのメンバーでやっていける気がしない。埋もれそうだ……)


  ― 男子トイレ ―


のび太「ふぅ、朝食会もブジにのりきったし今日こそはラクにすごすぞ!」

ドラえもん「まったく……まあ、最初の三日間は何も起きないし遊んでてもいいか」

のび太「とにかくあのうるさいお兄さんから逃げなきゃ。やかましいのは朝だけで十分だ!」

ドラえもん「きみがだらしないからやかましく感じるんじゃない? ぼくはいい人だと思うけどな」

のび太「そりゃわるい人じゃないけど……とにかくもうげんなりなんだ!」

ドラえもん「で、これからどうする?」

のび太「苗木お兄さんといっしょに行動しよう!」

ドラえもん「苗木くんか。まあ、あの中なら一番無難な性格してるしね」

のび太「それだけじゃないよ。苗木さんといっしょに行動すれば舞園さんともいっしょに
     行動できるし。超高校級のアイドルとおちかづきになれるなんて……うふふ」

ドラえもん(その超高校級のアイドルが苗木くんをだまして殺人を企むんだけどね)

ドラえもん「たしかに事件を防ぐために舞園さんの行動パターンや考え方を知っておくのは
       いいかもしれないね。どうして桑田くんを狙ったのかイマイチわからないし」


その言葉を聞いて、のび太は少し申し訳なさそうな顔をする。


のび太「ぼくはそれわかる気がするなぁ。だってあのお兄さん……」

ドラえもん「女ったらしでいつも舞園さんに鼻の下伸ばしてデレデレしてるから?」

のび太「うん」

ドラえもん「確かになぁ。ぼくもビックリはしたけど……でも、いくらなんでもそれで人を殺すかな?」


のび太「どういうこと?」

ドラえもん「だって、舞園さんは仮にも天下のアイドルだよ? 桑田くんみたいな反応は
       それこそ毎日で慣れてるんじゃないかな。男の子なら仕方ないとも思うし」

のび太「まあね。ぼくもどっちかと言えばあのイジワルめがねの方が嫌いだし」

ドラえもん「十神くんだね。失礼かもしれないけど、確かに十神くんの方がよっぽど恨みを
       買いやすいと思うんだよなぁ。なのにどうして桑田くんなんだろう?」

のび太「原作のゲームをやれば動機もわかったのかな?」

ドラえもん「いや、舞園さんは裁判の時には既に死んでいるからね。
       はっきりとした動機は何もわからないはずだよ」

のび太「やっぱり性格じゃないの? ぼくも正直あのお兄さんそんなに好きじゃないんだよね。
     自慢ばっかりだし。せっかく才能があるのに野球がきらいなんてぜいたくだ。
     ぼくに才能をわけてほしいよ! あんな人に才能をあげるなんて神様は不公平だ!」

ドラえもん「確かにのび太くんは色々足りなすぎて神様に文句をいう権利があるよね」

のび太「……さすがにちょっときずつくよ。ほんとのことだけどさ」

ドラえもん「まあ、いいじゃない! のび太くんにもいいところはたくさんあるよ。
       それよりいつまでもトイレにいたら黒幕に怪しまれる。さあ、行こう」

のび太「じゃあ苗木お兄さんを探しに行こうか」


  ― 学園エリア廊下 ―


のび太「いたいた。苗木お兄さーん」

苗木「あ、のび太君にドラえもん。どうしたの?」


舞園「苗木君と一緒に行動したいらしいですよ」

のび太「ぼくまだなにもいってないのに!」

舞園「エスパーですから……というのは冗談で、顔を見ればわかりますよ。
    私達のことを探していたみたいですし」ニコッ

苗木「(ドキッ)あ、はは……さすが舞園さん」

のび太(やっぱりキレイだなぁ)デレデレ

ドラえもん「二人でなにをしていたの?」

苗木「ああ、舞園さんの護身用の武器を探していたんだ」

舞園「私が無理を言って苗木君に付き合ってもらったんです」

苗木「む、無理なんてそんな! 狙われるとしたら多分女の子だし、僕で良ければ
    いくらでも付き合うよ。困ったことがあったらなんでも言って!」

舞園「はい、ありがとうございます」

のび太「仲がいいねぇ」ニヤニヤ

ドラえもん「二人は仲良しなんだねぇ」ニヤニヤ

苗木「ちょっと! からかわないでよ。僕なんかが相手じゃ舞園さんに迷惑が……」

舞園「迷惑じゃないですよ。むしろ、苗木君なら大歓迎です」

苗木「え? それってどういう……」


聞き返すが、舞園ははぐらかして話題を変えた。


舞園「それより、体育館に行きませんか? 入口にいろいろ置いてあったはずです」

のび太「そうだっけ?」


ドラえもん「んもう、いろいろ変なものが置いてあったじゃないか」

のび太「じゃあ行こうー!」

ドラえもん「待ってよ、のび太くん!」

舞園「苗木君も行きましょう」

苗木「う、うん」

苗木(さっきのってどういう意味だったんだろう……い、いや気のせいだよ!
    うん、そうだ。そうに違いない……)


そう自分に言い聞かせながら苗木は平静さを取り戻し、三人を追うのであった。


  ― 体育館前ホール ―


のび太「みてみて! 金色の刀がおいてあるよ!」

舞園「本物ではなく、模擬刀のようですね」

苗木「これなら大きさも重さもちょうどいいし、護身用に……って、うわ!」

ドラえもん「あらー、手に金箔がべったり」

苗木「これじゃあ持ち歩くのには向かないな」

舞園「でも部屋に置いておく分にはいいかもしれませんね」

のび太「キラキラしてかっこいいなぁ」ジーッ

舞園「……あの、もしかしてのび太君。これほしいですか?」

のび太「うん! ほしい!」


苗木「じゃあのび太君にあげようか? 思えば大和田君も言ってたけど、
    子供ののび太君が狙われる可能性だって十分あるんだし」

のび太「ほんとう?!」

ドラえもん「あー、せっかくだけどムリムリ。のび太くんにあげたって
       使いこなせないよ。バットもろくに振れやしないんだから」

のび太「それもそっかぁ。でも部屋がなんか殺風景だし、飾るくらい……」

ドラえもん「やめなよ。他に使う人がいるかもしれないじゃない」


諦めきれないのび太の姿を見て、なんとか出来ないかと苗木は考える。


苗木「……そうだ! 石丸君に使ってもらえばいいんじゃない?」

舞園「そうですね! 石丸君なら剣道くらいやってそうですし、
    のび太君を狙って暴漢が部屋に押し入らないとも限りません」

のび太「じゃあ持ってかえっていいの? ヤッター!」

苗木「子共が持つには少し重いし、新聞紙で包んで僕が持って行ってあげるよ」

のび太「ありがとう、お兄さん!」

ドラえもん「よかったね、のび太くん」


             ・

             ・

             ・


のび太(そして残り一日半、ぼくたちは楽しくすごした。動機がくばられるまでは事件も
     おきないって知ってたし、ほかのみんなは最初こそ緊張してたみたいだけど
     ぼくたちふたりのそんざいがいろいろといい方向にはたらいたみたいだ)


  ― 体育館 ―


生徒達の何人かとドラえもんのび太はドッジボールをして遊んでいた。


ドテッ!

のび太「いったー!」

江ノ島「あんたねー……これで三回目だよ? マジで運動オンチってヤツ?」

桑田「ほんとーに呆れるほどトロくさいヤツだな……」

大和田「おいボールそっちにあんだからさっさと投げろよ」

桑田「へーへー」シュッ!

ドラえもん「のび太くん、がんばれー!」

大和田「気持ちはわかるけどよ、いまは敵だぜ。自分の身を考えろよ」

苗木「最初は渋ってたけど始まったら結構ノリノリなんだね、大和田君」

大和田「ったりめーだ。男なら勝負は常に全力よ!」

舞園「そうです! 手加減なんてしてあげませんよ!」

苗木「舞園さんまで?!」

朝日奈「あ、苗木危ない!」


ドカッ。


苗木「」キュー


  ― 食堂 ―


生徒達はドラえもんが持ってきていたトランプでババ抜きをしている。


葉隠「ババはこっち! つまり反対側がセーフだべ」

のび太「わーん、また負けちゃった!」

葉隠「俺の占いを使えばなんのこれしき!」

セレス「何が占いですか。のび太君の顔色を見れば一目瞭然ではありませんか」

不二咲「ね、落ち込まないでもう一回やろ? 次はきっと勝てるよ」

のび太「うん、ありがとう不二咲さん」

山田「子供をさりげなく気遣うちーたんマジ天使」

ドラえもん「それにしてもセレスさんは強いなぁ。もう八連勝だよ」

セレス「当然ですわ。わたくしギャンブラーですから」

大和田「イカサマでもしてんじゃねえか?」

石丸「大和田君! 根拠もなく仲間を疑うなど最低の行為だぞ!」

大和田「ああ? 軽い冗談だろ。いちいち本気にしてんじゃねえよ! うぜーヤツだな」

苗木「け、喧嘩はやめてね……頼むから」


朝日奈「ホント。のび太がぶっちぎりのビリだけど、その次は石丸と大和田だよ?
     ケンカする時間があるなら早く逆転しないと。下位三人は罰ゲームだからね!」

石丸「む、ゲームはやりなれていないものでな。次こそは勝ってみせるぞ!」

大和田「ちょ、罰ゲームとか聞いてねえぞ! おい、朝日奈テメェ!」

桑田「いーじゃんいーじゃん。このメンツになにやらせるよ?」

舞園「のび太くんがいるからあんまり酷いのはダメですよ!」

大神「一人ずつ歌でも歌ってもらうか」

江ノ島「ちょっとやめてよね……聞かされるこっちがマジヤバなんですけど」


             ・

             ・

             ・


のび太(一階しか解放されてないからスペースは限られてるけど、ぼくたちのために
     みんなで一緒に缶ケリやドッジボールをしてくれたり、退屈しのぎのために
     こっそりもってきてたトランプで遊んだりした。たのしかったなぁ)

のび太(アニメでは本当にみんなの一面しか知れてなかったんだってイタいほどわかった。
     舞園さんはすっごく優しくて、苗木さんと仲が良くて、二人はお似合いで……)

のび太(ほんとうに舞園さんは苗木さんをうらぎって人殺しなんてするのかな……?
     今回はぼくたちがいるから考えを変えてくれたりとか)

のび太(ぼく、イヤだよ……コロシアイなんて……)


ここまで。ちょっと序盤テンポ悪かったですね…
ロンパと合わせると人数が多いからドラのびだけに絞ったんですが

次からいよいよコロシアイスタート。



  第三話 コロシアイをとめろ!


  ― 男子トイレ ―


コロシアイ学園生活四日目。朝。


ドラえもん「いよいよだね」

のび太「うん、いよいよだ」

ドラえもん「ぼくたちがやること、ちゃんと覚えてる?」

のび太「わすれるわけないよ。モノクマが視聴覚室の話をしたらまっさきに
     走っていってDVDをこわせばいいんでしょ? かんたんじゃない!」

ドラえもん「うまくいくといいけど……」


『校内放送、校内放送。全員体育館に集合!』


のび太「きた!」


  ― 体育館 ―


モノクマ「やあ、みんな元気? 三日ぶりだね」

苗木「僕達に一体何の用だ?」

モノクマ「オマエラがなかなかコロシアイをしないからだよ!」

セレス「あら、コロシアイをせずここで一生過ごす選択肢もあると初めにおっしゃったのは
     あなたではありませんか。わたくし達は適応しているだけですわ」

モノクマ「なんとでも言いなよ。とにかく、先生は考えました。人も環境も
      整っているのにコロシアイが起こらないのは動機がないからだと」

十神「動機だと?」


モノクマ「と言う訳で、視聴覚室にプレゼントを用意しました!」


言うやいなやドラえもんとのび太は駆け出す。


のび太「わああああ!」

ドラえもん「ぬおおおお!」

苗木「ド、ドラえもん? のび太君!」

大神「一体どうしたのだ?」

モノクマ「何だ、あいつら? まあ、いいや。とにかくそういう訳だから。じゃーねー」ピョーイ

苗木「二人を探さないと!」

霧切「その必要はないわ。彼らは私達が向かう場所を聞いている。
    視聴覚室に行けばそのうち合流出来るはずよ」

石丸「で、ではとりあえず視聴覚室に向かうとするか。そこで合流出来なかったら探しに行くとしよう」


  ― 視聴覚室 ―


ドラえもん「あった! これだ!」

のび太「よし! 壊そう! ……けっこうかたいな」

ドラえもん「机を使って折り曲げたり足で踏み付けるのがいいよ」


バキバキ!


モノクマ「ちょ、ちょっとおおお! 何やってんの君達?!」

のび太「なにって……こわしてるんだよ!」


モノクマ「だから何で?! 意味がわからないよ!」

苗木「あ、のび太君達がいたよ!」

大和田「なんだ、先に来てただけかよ。心配させんな!」

十神「そんなことはどうでもいい。それより貴様等、ここで何をしている?」

ドラえもん(マズイ、十神くんに目をつけられた。頭が回るから厄介だな……)

のび太「もう安心してよ! DVDはこわしちゃったから!」

霧切「……ここに置かれているプレゼントがDVDだとわかっていたの?」

ドラえもん「い……いや知らなかったよ! いま見つけたんだ!」

モノクマ「もう! せっかく君達が気になって気になって気になって
      仕方がない外の映像をいれてやったスペシャルDVDなのに!」

苗木「外の映像?」

舞園「外の様子がわかるんですか……?!」

のび太(ざーんねんでした。もうDVDはぜんぶこわしちゃったもんねー)ベー

モノクマ「そう。のび太君達によって壊されちゃったけど……ま、ここに予備があるんだけどね!」

のび太「へ?」

ドラえもん「そ、そんな……!」

モノクマ「もしかしたら勘の良い奴が壊すんじゃないかと思って二枚用意しといて正解だったよ。
      まさかそれがどんくさいキミ達だというのはちょっと予想外だったけどね。うぷぷ」

モノクマ「そもそもさー、DVDだよ? 元のデータがある限り何枚だって用意出来るに
      決まってるじゃん! 馬鹿なの君達? さ、みんな自分のDVDを受け取って」


結局、モノクマの手によって全員にDVDが配られてしまった。


のび太「あ、あ、みんな見ちゃダメ~!!」

苗木「のび太君?!」

のび太「それは見ちゃいけないんだ~! 見ないで~!」

霧切「……どうして見てはいけないのかしら?」

のび太「う、ぐぅ……それは……」

ドラえもん「く、黒幕の用意した映像なんてろくなものなワケないよ!」

のび太「そ、そうだそうだ! 催眠光線が出てコロシアイをしたくなるかもしれないよ!」

山田「催眠光線ですか……」

葉隠「サブプライム効果ってヤツか?」

霧切「サブリミナル効果ね」

のび太「とにかく! ダメなものはダメなんだよ! わかってよ! うわーん!!」

舞園「のび太君……」

石丸「……のび太君、君の気持ちはわかった。その通りだ! 黒幕の用意した映像など
    ろくな物ではないに決まっている! 君達の決死の思いを尊重し、僕は見ないぞ!」

苗木「僕も見ないことにするよ。だって二人とも本当に真剣に見えるし」

不二咲「子供だから、僕達より感受性が強いのかもしれないね。何か危険を感じたのかも」

大和田「俺も見ねーわ。ガキが泣いてここまで訴えてんだぜ? クるものがあるだろうよ」

のび太「みんな、ありがとう……舞園お姉さんは?」


舞園「え。私、ですか……?」


逡巡する舞園の後ろを江ノ島含め数名が通って行く。


江ノ島「子供のワケわかんない言葉信じるとかバッカじゃないのぉ?!
     外の映像なんてメチャクチャ気になるじゃん。アタシは見るから!」

十神「同感だ。くだらん」

腐川「と、十神君の言う通りよ! 私も見るわ」

セレス「見ないことには判断出来ませんものねぇ」

のび太「あ、ああ……」

ドラえもん(彼らは予想通り見てしまうか……でも、舞園さんさえ止められれば!)

桑田「お、おい。俺達はどうするよ……?」

山田「気にはなりますが、いざ見るとなると……」

葉隠「よ、よし! ここは俺の占いで決めるべ!」


悩む彼らの動きを制するように、霧切が一歩前に出た。


霧切「私は見るわ」

桑田「マジかよ……」

霧切「……あなた達、怖いのなら私の反応を見てから見るかどうか決めたらどうかしら」

葉隠「おお! そりゃ名案だな!」


苗木「なんだか霧切さんに嫌な役目を押し付けちゃうような気がするけど」

霧切「気にしないわ。もしこのDVDが本当に良くない物の場合、全員が見てしまうよりマシだもの」


そう言って霧切は席に座り、ディスクを入れた。その時、悲鳴が上がる。


腐川「ひ、ひぃぃぃっ!!」

石丸「な、何だ?!」

舞園「悲鳴?!」

十神「フン、こんなものか。予想の範囲内だ」

苗木「十神君! 君のDVDには一体何が……?」

十神「霧切に聞くんだろう? ……まあ、そうだな。貴様等精神の弱い愚民は見ない方が
    いいかもしれんな。この俺にとってはつまらんコケ脅しだが。クッ、クハハハ」

霧切「…………」スッ

舞園「あ、霧切さん! ……どうでしたか?」

霧切「見ない方がいいわ」

舞園「えっ」

霧切「のび太君達の言った通りね。このDVDには決して楽しい映像は入っていない。見ても
    気分が悪くなるだけよ。どうしてもと言うなら止めないけど、あまりお勧めしないわ」


スタスタスタ……


桑田「マジか……じゃあ、俺も見んのやめよー」

葉隠「あの冷静な霧切っちに言われるとなぁ」

山田「ぼ、僕もやめておきます。僕のゴーストが見ない方がいいと囁くので」

舞園「…………」

ドラえもん「舞園さん……」

苗木「舞園さんはどうする?」

舞園「……私も見ないことにします」

のび太「やったー! 良かったー!」

ドラえもん「良かったねぇ!」

苗木「舞園さん、なんか顔色悪いけど大丈夫? 部屋に戻ろうか?」

舞園「……大丈夫です。こんな所にいたら気分も暗くなっちゃいますし、行きましょう」



  ― 男子トイレ ―


のび太「やったね! これでひとつ目の事件はふせげたよ。かんたんかんたん」

ドラえもん「安心するのはまだ早いよ。一応タイムテレビで苗木くんの部屋を見てみよう」


二人はタイムテレビにかじりつく。


のび太「ほら、部屋の交換なんかしてない! ほんとにだいじょうぶなんだよ!」

ドラえもん「……待って。念には念をいれて次の日も見てみよう」

のび太「あ、あれ? 舞園さんが苗木さんの部屋にいる……で、苗木さんが出て行った」

ドラえもん「これは……部屋の交換だ!」

のび太「まさか……じゃあ!」

ドラえもん「場所はそのままで時間を犯行時刻まで進めてみよう!」


パッ。

そこに映っていたのは、ベットのすぐ横に仰向けとなって倒れた人間……
全身血まみれで虚ろな目のまま事切れた【桑田怜恩】の無残な姿だった。


ドラえもん・のび太「きゃあああああああああああああああああああああああああああああっ!!」

のび太「な、なんで?! どうして?!! 死ぬのは舞園さんのはずじゃ?!」

ドラえもん「わからないよ! 一体なにが?!」

「おい、なんだ今の悲鳴?!」バタバタバタ

ドラえもん「マズイ! 隠さないと!」ガチャガチャ


誰かがこちらに向かってくる音が聞こえた。慌ててドラえもんはタイムテレビをポケットに仕舞う。


桑田「おい! どうしたっ?!」

のび太「え、えっと……」


ドラえもん「何も……ないよ……」

桑田「ハァ? 何もなくてあんな悲鳴あげるかフツー? ……つーかなんだよ。
    幽霊でも見てるみたいな顔して人を見やがってさ」

ドラえもん「あ、いや、その」

のび太「ゴキブリ! こーんなおっきなゴキブリがそこにいたんだ!」

桑田「ハアァ?」

石丸「どうしたあああっ?! 何があったんだ! 大丈夫かね、二人共?!」

桑田「……ああ、大丈夫だ。ゴキブリだってよ。まったく人騒がせなヤツらだぜ」

石丸「む、虫だと? なんだ、良かった……しかし男子たるもの、たかだか虫程度で
    あのように盛大な悲鳴をあげるとは些か情けないぞ!」

ドラえもん「ご、ごめんなさい」

のび太「さっきのことで、ちょっとこわくなっちゃってて……」

石丸「ム……そうであったか。そうだな。あまり思いたくはないが、あの映像を見た誰かが、
    早まった行動を取らないとは断言出来ない。外で待っているから早く手を洗いたまえ」

ドラえもん「はい……」

のび太「どうしよう。これ以上トイレにこもれないよ。へんに思われちゃう」

ドラえもん「そうだ。もう一ヶ所監視カメラのない所があっただろう?」

のび太「そんな場所あったっけ?」

ドラえもん「個室のシャワールームだよ! シャワーを浴びるふりをして続きを話そう」

のび太「うん……」


一旦中断


  ― シャワールーム ―


のび太「それにしても、犯人はたぶん舞園さんだよね……?
     どうして?? DVDは見なかったはずなのに!」

ドラえもん「待って! 今舞園さんの行動を追っているから!」


タイムテレビを必死に操作するドラえもん。すると何かを見つけ驚愕した。


ドラえもん「これは……!」

のび太「視聴覚室? あ、舞園さんが!」

ドラえもん「DVDを見てる! そうか、やっぱり気になって見てしまったんだ……」

のび太「いますぐ視聴覚室にもどってこわしに行こう!」

ドラえもん「無駄だよ……モノクマが言ってただろう? 元データがある限り何度でも
       複製できるんだ。それに次の動機もある。舞園さん自体をとめないと意味がない」

のび太「そんな……」

ドラえもん「しかしそれは至難だろうなぁ。どうして舞園さんが桑田くんを狙ったのかの
       動機もよくわからないし、最初に殺人を企むくらいだからきっと舞園さんは
       すごく思いつめていて決意も固いだろうし……」

のび太「なんとかできないの?!」

ドラえもん「あきらめてくれるのが一番だけど、最悪直接のりこむしかないだろうね……」

のび太「あ、そうだった。ぼくらにはひみつ道具があるじゃない! ちょくせつ助ければいいんだ!」

ドラえもん「……気はすすまないけどしょうがない」


意気揚々となったのび太に対し、ドラえもんの表情はどこか暗かった。


のび太「ドラえもん……どうしてあんまりノリ気じゃないの? ふたりを助けるんだよ?」

ドラえもん「助けた後が問題なんだ。考えてもみなよ? あの感情的で短気そうな桑田君が、
       自分を殺そうとした舞園さんをただで許すと思う?」

のび太「そういえば、反撃して追い詰めたただけでじゅうぶんなのに
     殺しちゃったんだもんね……やっぱりそうとう怒ってたのかな……」

ドラえもん「そりゃあ怒るだろうよ! 間一髪で自分が死んでるんだし、しかも
       信じていた相手から裏切られたんだよ? 逆上するのもしかたないさ」

のび太「まあ、そうか……ぼくでいえばしずかちゃんにだまされたようなもんだしね。
     ……でも、ぼくだったらきっと殺せないなぁ」

ドラえもん「きみは優しいからね。虫一匹殺せないのがきみの長所だし。
       でもみんながみんなそういうワケじゃないんだよ」

のび太「……やっぱり、舞園さんにおもいとどまってもらうのがいちばんだね」

ドラえもん「事件までに全力をつくすほかないよ」

のび太「うん。……それにしてもさ、なんで桑田さんが死んでたんだろう?
     死ぬのは舞園さんだよね? 殺される場所も違うし」

ドラえもん「事件の直前まで見てみようか」

のび太「怖いな。ぼく見たくない……」

ドラえもん「……わかった。ぼく一人で確認するからきみはあっち向いてて」

のび太「ごめんね、ドラえもん……」

ドラえもん「気にすることないよ。みんなのためならこのくらいへっちゃらさ」


そしてドラえもんは深夜に起こる凶行の一部始終を目撃する。


桑田『お、おい舞園?! なにやってんだ、お前?!』

舞園『死んで! 桑田怜恩!』

桑田『や、やめろ! 話せば分かる! 来るな! 来るんじゃねええええ! ぐっ……!!』


ドラえもん「こ、これは……わかったぞ! 桑田くんが殺された原因!!」

のび太「な、なに?!」

ドラえもん「模擬刀だよ!!」

のび太「モギ刀って、この部屋にあるあの金ぴかの刀?」

ドラえもん「そう! あれは本来は苗木くんの部屋に置かれる物だったんだ!」

のび太「え? どういうこと??」

ドラえもん「思えば変だなって思ってたんだ。きみは寝てたから知らないだろうけど、
       報告会の時アニメになかった出来事があったんだ。つまりこの世界はアニメの
       ダンガンロンパじゃない。ゲームか、アニメとゲームが混ざった世界なんだ」

ドラえもん「アニメだと尺の関係でカットされて最初から苗木くんの部屋に模擬刀があったけど、
       恐らくゲームではあの時苗木くんが自分の部屋へ模擬刀を持ち帰るんだろう」

のび太「えっと……モギ刀が苗木さんの部屋にないとなんでダメなの?」

ドラえもん「裁判を思い出してごらん。漫画みたいなイラストで事件を振り返っていたけど、
       桑田くんは舞園さんの攻撃を咄嗟に模擬刀で防ぐんだ。でも今回その模擬刀は……」

のび太「あっ! ああっ!」

ドラえもん「のび太くんにもわかったようだね」

のび太「じゃあ、ぼくのせいで桑田さんは殺されちゃったってこと?! そんな……!」


ドラえもん「おちついて、のび太くん。まだ事件は起こっていないよ。
       これからぼくらがとめるんだ。いいね?」

のび太「ぼ、ぼくのせいで……ぼくのせいで……うう……」グスッ

ドラえもん「きみのせいじゃないよ。だって知らなかったんだから!
       おちこまないで、これからどうするか二人で考えよう!」

のび太「……うん」


しかし考えども考えども名案は出てこない。


のび太「ダメだ。ぜんぜんうかばないよ」

ドラえもん「こういう時は犯人の気持ちになって考えるんだ」

のび太「舞園さんの気持ちに? ……仲間が死んでるかもしれない。ゆめが叶えられなくなる。
     ……たしかにすごくこわいし、イヤだけど……でも、でもぼくはやっぱり殺せない……」

のび太「わからないよ、舞園さんの気持ち……すごく苦しいってことしか……」

ドラえもん「ぼくたち、誰かを殺したいなんて思ったことないからね……」

のび太「やっつけたいとか、いなくなっちゃえばいいならしょっちゅうだけどなぁ」

ドラえもん「いっそ、誰かに聞いてみる? 大人の方が色々知ってるだろうし」

のび太「そうだね。ぼくたちだけで考えるよりいいかも」


そしてシャワールームを出ると、真っ先に目に入った大人に意見を求めてみる。


石丸「……フム。今までに誰かを殺したくなったことがあるか、かい?」

のび太「お兄さんはある?」


石丸「ウム、ないなっ!」

ドラえもん「一度も?」

石丸「ないっ!」

のび太「実際に殺すとかじゃなくて、そのくらいハラが立ったとか……」

石丸「僕も人間だ。自分本位な人間や努力をしない怠惰な人間に腹を立てることもある。
    だが、他人に腹を立てるくらいならその時間を自身の向上に当てるべきだと思う」

石丸「僕が本当に許せないのはモノクマのような世の理不尽だ!」

ドラえもん「つまり、社会とか政治の理不尽に対しては怒るけど、
       特定の誰かに対して本気で怒ったりはしないということ?」

石丸「その通り。どんな人間でも、その人が悪事を行うまでに必ず何か原因があるだろう?
    それは周囲の環境だったり、挫折や苦労の経験がなかったり……だから、その人だけに
    責任を求めて責め立てるというのはどうにも肌に合わないのだ」

ドラえもん(まだ高校生だというのに、立派だなぁ)


ドラえもんは石丸の考え方に感心したが、まだ子供ののび太にはその言葉の意味がよくわからなかった。


のび太「もう! ぜんぜん参考にならない! お兄さんにきいたぼくがバカだったよ」

石丸「う、ぐぅ……役に立てないようですまない。それにしてもどうしてそんな質問を?」

のび太「えーと、それは……」

ドラえもん「コロシアイが起こらないようにするには、逆に人を殺そうとする人の気持ちを
       理解できればなにか手を打てるんじゃないかってぼくらは考えたんだ」

石丸「! そうだったのか! 君達は君達でコロシアイを止めようと動いているのだね?!」


健気な子供達の姿に石丸は深い感銘を受けたが、それと同時に自己嫌悪に陥ってしまった。


石丸「……子供達ですらこんなに頑張っているというのに、高校生で風紀委員の
    僕は役に立つ意見の一つすら言えない。どうにも僕は空気が読めないな……」

ドラえもん「あ、あの……そんなにおちこまないで。のび太くんはまだ子供だから、ね?」アタフタ

石丸「……いや、いいんだ。ありがとう。力になれなくてすまない……」

のび太「はやく行こうよ、ドラえもん。ぼくたちには時間がないんだから!」

ドラえもん「う、うん……」チラッ

石丸「…………」ブツブツ


後ろ髪を引かれながらもドラえもんは部屋を後にした。


ドラえもん「なんだか悪いことしちゃったなぁ」

のび太「しかたないよ。いまはあの人にかまってるヨユウはないんだし。
     それより急がないと! 全員に順番に聞いていってみる?」

ドラえもん「気をつけないと舞園さんに見つかるかもしれない。それに、あまり動きすぎると
       黒幕に怪しまれるよ。ぼくたちは今監視されているんだから」

のび太「じゃあ、とりあえず苗木さんに話を聞いたらまたそうだん会しよっか」


               ◇     ◇     ◇


のび太「どこにもいないね」

ドラえもん「部屋にいるんじゃないかな? そうなら好都合だ。行ってみよう」


苗木の部屋の前に来た二人はインターホンを鳴らす。


苗木「はーい。あ、どうしたの? 二人揃って」

のび太「その、ちょっと聞きたいことがあって……」

苗木「じゃあ立ち話もなんだし、中に入りなよ」

ドラえもん「いいの?」

苗木「うん? もちろん、いいよ。さ、どうぞ」

ドラえもん(……警戒心がないなぁ。だから舞園さんに利用されちゃったんだろうけど)

苗木「それで、どうかしたの?」

のび太「そのー、ちょっと聞きにくいんですけど」

ドラえもん「苗木くんは、誰かを殺したいほど怒ったことってある?」

苗木「え、ええ?! ないよ! 見ての通り僕って普通ど真ん中だし、普通の人は
    まずないんじゃないかなぁ。……もしかして、僕が誰かを殺しそうに見えた?」

のび太「い、いやいや!」

ドラえもん「そんなそんな!」

ドラえもん・のび太(殺すのは舞園さんだよ!)

のび太「じ、じつはね……」カクカクシカジカ

苗木「なるほど。殺人をする人の心理を調べる、か。すごいね、小学生なのに」

のび太「そんなたいしたものじゃないよ。ただ、人を殺そうとするくらいだから、
     きっとその人はあいてをすごい怒ってるしきらってると思うんだよね」

ドラえもん「嫌いな人を好きにさせるにはどうしたらいいと思う?」

苗木「嫌いな人に好感を持ってもらう方法かぁ。うーん、難しいな。とりあえず、
    やっぱりその人のいい所を根気よく伝えていくしかないんじゃないかな」

ドラえもん「いい所を伝える、か」

のび太「それいいね! 苗木お兄さんは石丸お兄さんと違って頼りになる」

苗木「え、まさかさっきの質問を石丸君にもしたの? なんて言ってた?」


のび太「なんだっけ。えーと、だれかにハラを立てるくらいならその時間勉強する。
     人にハラは立たないけど社会やせいじ?のリフジンにはハラが立つ、だってさ」

苗木「……そんなこと言ってたんだ。なんていうか、石丸君らしいな」

のび太「へんなお兄さんだよね」

苗木「いや、凄いと思うよ。僕は普通の人間だからとてもそんな考えは出来ないし」

のび太「ふーん、そうかな? でもぼくは苗木お兄さんの方がはなしやすいよ?」

苗木「ふふっ、ありがとう。でもそれは僕が平凡だからじゃないかな。思えば、石丸君だけ
    じゃなくて他のみんなも、天才だからこそ周りから理解されない所があるかもね」

ドラえもん「理解されない……お互いの不理解がコロシアイに繋がるのかもしれないな」

苗木「うん、それはあると思う。人間なんだから、長所も短所もあるのは仕方ないのに
    こんな所に押し込められてコロシアイを強制されて……余裕がないんだよね。
    十神君達だって、時間さえればきっと理解し合えると思うんだ」

のび太「えー、ほかの人はともかくあの人はムリじゃないかなぁ……」

苗木「わからないよ? 最初に無理だって決めつけちゃったら、どんなことだって
    無理になっちゃう。まずはなんでもやってみないとね」

のび太「お兄さん、前向きだね」

苗木「ハハ、よく言われるよ。前向きなのが平凡な僕の唯一の長所だからね」

のび太「かっこいいよ」

のび太(さすが主人公だなぁ。すなおに感心できる)

ドラえもん「ぼくもそう思うよ」

ドラえもん(苗木くんはやっぱり主人公なんだねぇ。すごい能力はないけど安心感がある)

のび太「ありがとうお兄さん。やる気も出たしヒントももらったし、ぼくたちガンバるよ!」

苗木「何をするのかわからないけど、無理はしないようにね。
    何か困ったり、僕達の手が必要になったらいつでも協力するから」

のび太「うん、わかった!」

ドラえもん「じゃあぼくたちこれで失礼します」

苗木「役に立てて良かった。二人共頑張ってね!」


ここまで。

読んでくれてる皆様ありがとうございます。
ドラとのびは結構ボケボケな行動取ることも多いと思うので
合いの手は助かります。乙や感想も嬉しいです。

明日は用事があって来れません。明後日は可能なら来たいと思います。



  第四話 桑田くんのなやみ(前編)


  ― 男子トイレ ―


ドラえもん「さて、勢いに乗ったところで作戦を立てようか」

のび太「桑田さんのいいところを舞園さんにアピールするんだね!」

ドラえもん「そういうこと。じゃあ、桑田くんのいい所を挙げていって」

のび太「え? うんと……明るいところ、にぎやかなところ、おもしろいところ」

ドラえもん「他には?」

のび太「えーと、あとは野球がうまいところ」

ドラえもん「他には?」

のび太「えーっと……もううかばないよ! だって、たった四日しか会ってないし
     そもそもそんなに親しくないもの! ゲームの時に話したていどだよ?」

ドラえもん「意外と不良の大和田くんの方が面倒見が良くて話しかけてくれるんだよね……」

のび太「でも、いま言ったいいところのなかで一ついいのがあった!」

ドラえもん「なんだい?」

のび太「野球だよ!」

ドラえもん「野球? 野球がなんでいいんだい?」

のび太「だって、野球がうまいってそれだけでもうかっこいいじゃない!
     舞園さんだってきっと見なおしてくれるよ!」

ドラえもん「あのねぇ、のび太くん……もう忘れちゃったの? 桑田くんはね、超高校級の
       野球選手で天才だけど野球が嫌いってしょっちゅう自分で言ってるじゃない」


のび太「そんなの知ってるよ。でもほら、あの人って大の女の子好きでしょ?」

ドラえもん「ああ、なるほど。女の子にモテるとか適当なこと言って
       その気にさせるってこと? きみにしては考えたじゃない」

のび太「きみにしてははよけい。さっそくいこう!」


  ― 食堂 ―


のび太「おにーいーさん!」

桑田「あ? なんだよ」

のび太「さっきは心配してまっ先にかけつけてくれてありがとう」

桑田「……ん、まあな。そりゃガキの悲鳴聞こえたら駆け付けるだろフツー」

ドラえもん「いやぁ、かっこよかったよ!」

ドラえもん(まずはおだてて機嫌を取ろう)

桑田「んなオーゲサな……」

のび太「ほんとうだって! ピンチの時にあらわれるヒーローみたいだったよ! かっこよかった!」

ドラえもん「タイミングとかね。表情とか」

桑田「……え、マジで? いやいやホントにマジで??」

のび太「マジだよ」

ドラえもん「大マジだね」

桑田「え、ホント? いや、お前ら見る目あるわー! 俺ってやっぱかっこいいよな?!」

のび太「う、うん」

ドラえもん「そうだね!(色々言いたいことはあるけどがまんがまん)」


桑田「おしっ! なんだ、その……なんか遊んでやろうか? ヒマだから俺んとこ来たんだろ?」

のび太「うん! じつはね……」

のび太(よし、きたぞ。ほんとうにたんじゅんだなこの人……)


のび太に言われるようでは人として終わっている。


のび太「お兄さんと野球がやりたいなー」

桑田「……野球?」ピクッ

ドラえもん「なにせ、超高校級の野球選手だもんね!」

のび太「そう! 超高校級の野球選手と野球ができるキカイなんてそうそうないもの。
     帰ったらみんなにじまんできるしさぞかしうらやましがられるんだろうな~」

ドラえもん「野球が出来るとモテるでしょ?」ボソ

のび太「舞園お姉さんにいいところ見せちゃおうよ」ボソ

桑田「……確かに俺は野球の天才だし、野球やってた時はめっちゃモテた」

のび太「お?」

ドラえもん「お?」

桑田「でもやらねぇ」

のび太「え? え?」

ドラえもん「どうして……」

桑田「もう野球はやめたんだ。あんな泥くさくてダセースポーツはしねー。
    どうしてもやりてぇって言うなら大和田にでも頼め」

のび太「そ、そんなぁ……」


ドラえもん「そんなこと言わないで……ハッ(視線を感じる)」


振り向くと、そこには真顔でこちらを見ている舞園がいた。


ドラえもん(まずい! 舞園さんに今のやりとりを見られてた!)

舞園「(スッ)桑田君、子供のお願いですし……引き受けてあげたらどうですか?」

桑田「……わりぃけど、いくら舞園ちゃんの頼みでもそれはきけねえわ。
    あー、野球なんて言うからなんかテンション落ちちまったよ」

舞園「…………」

のび太「ア、アワアワアワ!」

ドラえもん「ま、舞園さん?」

舞園「すみません。お二人の力になれなくて……」

のび太「い、いや……急にいいだしたぼくらがわるいんだよ!」

ドラえもん「そ、そうそう! 気分が乗らない時って誰でもあるしね。ハハ!」

のび太(まずいことになっちゃったよ!)

ドラえもん(ど、どうしよう?!)


そこへ、更に運悪く大和田がやってきた。


大和田「うーっす、ガキ共。どうしたそんな顔して? 元気ねえな」

のび太「あ、いやそれは……」

ドラえもん「なんでもないよ!」

大和田「なんでもねえわけねえだろ。なんか顔色良くねえぞ?」


舞園「ちょうどいい所に来てくれました、大和田君」

大和田「あん? どうした、舞園?」

舞園「大和田君からも頼んでもらえませんか? のび太君達、野球がしたいって
    桑田君にお願いしてるんですけど、桑田君は嫌だって言うんです」

大和田「ああ? 野球? そんくらいやってやれよ。お前超高校級の野球選手だろうが」

桑田「だから……もう野球はやめたんだって。あんなダサいスポーツ元々好きじゃねーし」

大和田「ハァ? 別に試合するワケじゃあるめえし、少しガキどもに付き合うだけだろ?
     なんでそんな意地はってんだ。ちょっとくらいやってやりゃいいじゃねえか」

桑田「うるせぇな! やりたくねえっつってんだろッ! 俺は野球なんて大嫌いなんだよ!!」


ガタッバタバタバタ……


のび太「あ!」

ドラえもん「追いかけよう!」タッタッタッタッ

大和田「なんでぃ、変なヤツらだな」

舞園「……酷い人ですね。子供のお願いすら応えてあげないなんて……」


しかし、桑田の去った方向を見る舞園の目はとてつもなく暗くて冷たい。


大和田(なんだ……? 今こいつやべぇ目つきしてたぞ)ゾクッ


               ◇     ◇     ◇


のび太「どこいっちゃったんだろ」

ドラえもん「すぐに見つかるはずだよ。一階しか解放されてないんだから」

のび太「いってるそばから見つけた! お兄さ……」


ドラえもん「待って! なにか様子が変だ。トイレで透明マントをかぶって近付いてみよう」

のび太「でも、透明マントをかぶったらぼくたちもおたがいに見えなくなるよ」

ドラえもん「姿は見えなくても声は聞こえるし、はぐれないように手をつなげば大丈夫」

のび太「よし、じゃあ行こうか」


             ・

             ・

             ・


桑田「ああぁ、畜生……人の気も知らないで野球野球言いやがって……
    ガキどもがやりたいなんて言うから久しぶりにやりたくなっちまったじゃねえか」

桑田「いや! 違う! 俺は野球なんて嫌いだ。そうだ、大嫌いなんだ。夏は暑いし
    ユニフォームや部室はくっせえしボウズはダセエし監督はうるさいし」

桑田「野球なんて嫌いだ野球なんて嫌いだ野球なんて大大大嫌いだ」

桑田「……ボール、投げてぇなぁ。バット振りてえ……」

桑田「違う! 違う違う違う! こんなの本心じゃねえ。俺は野球に洗脳されてるだけだ!」

桑田「好きじゃない。好きなんかじゃない! あー! 畜生ー! ムシャクシャするー!」


ブツブツブツブツ……


のび太「……なにやってんの、あの人? さっきからずっとあんなかんじだけど」

ドラえもん「あぁ……そうだったのか。桑田くんは本当は野球が大好きだったんだね……」

のび太「え、まさか? きらいだっていってるじゃない?」

ドラえもん「悪いことをしちゃった。とりあえずトイレに戻ろう」


  ― 男子トイレ ―


のび太「好きだっていったりきらいだっていったり、ワケわかんないよ!」

ドラえもん「いや、本当は好きなんだよ! 理由はわからないけど、自分にウソを
       ついているんだ。嫌いだって言い聞かせているだけなんだよ」

のび太「なんのために?」

ドラえもん「……わからない。けど、きっとなにか深い事情があるんだろうね」

のび太「そっか。好きなことを好きっていえないんだ……なんだかかわいそう」

ドラえもん「うん。なんとかしてあげたいね」

のび太「でもどうすればいいんだろう……?」

ドラえもん「こればっかりはぼくにもわからないよ」

のび太「もう! かんじんなときに役に立たないんだから!」

ドラえもん「しょうがないだろ! どうせぼくは落ちこぼれのダメダメロボットだよ!」

のび太「べつにそこまでは言ってないけど……」


その時、二人の前に突然タイムホールが開く。


ドラえもん「な、なんだ?!」

のび太「なに?!」

「ちわーっす。未来デパートの者でーす。ドラえもんさんいらっしゃいますかー?
 ドラミさんからお中元の品のお届けでーす」

ドラえもん「あ、宅配の人か。ご苦労様です」

「じゃ、サインここにお願いします」

ドラえもん「はいはい」


のび太「なにがとどいたの?」

ドラえもん「わあ、ドラ焼きだ! あとで電話しないと」

のび太「……そうだ!」

ドラえもん「なに? どうしたの?」

のび太「おもいきってドラミちゃんに相談してみようよ!」

ドラえもん「ドラミに?」

のび太「そうだよ! ぼくたちにわかんないことでもあたまのいいドラミちゃんなら
     わかるだろうし、きっといい案をかんがえてくれるはずだ!」

ドラえもん「なるほど! じゃあ、久しぶりに会いに行ってみようか」

のび太「うん!」


  ― 未来 ―


ドラミ「お兄ちゃん! のび太さんも! 突然どうしたの?」

のび太「こんにちは、ドラミちゃん」

ドラえもん「やあドラミ。お中元届いたよ。ありがとう」

ドラミ「そんな、いいのに。わざわざお礼を言うために直接来てくれたの?」

ドラえもん「いや、それだけじゃないんだ」

のび太「実はね……」

ドラえもん「カクカクシカジカ、と言うわけなんだよ」

ドラミ「まあ。お兄ちゃん達ったら、また大冒険をしているのね!」

のび太「大冒険って言っても、今回はずっと学校の中にいるだけだけどね」


ドラミ「私そのゲーム知ってるわ」

のび太「え? 本当?」

ドラミ「ええ。レトロゲームって安いし良質な物が多いから、セワシさんもよくやるのよ」

ドラミ「それで私が、どうせゲームするなら推理物とか頭を使う物にしたら? って言って、
     今ちょうど裁判物にハマっているの。ダンガンロンパとか逆転裁判とか」

のび太「じゃあ、ドラミちゃんはぼくたちの知らないことも知っているんじゃ!」

ドラミ「あ、ごめんなさい。私はゲームを直接やった訳じゃないから深い内容までは
     知らないわ。セワシさんも出掛けているし……詳しく話してもらえないかしら?」

ドラえもん「わかった」


今までの状況をドラミに説明する。


ドラえもん「――ということなんだ」

ドラミ「……そうだったの。自分の好きなこと、それも世間から評価されている物を嫌いって
     言うなんてよっぽどよ。多分、野球関連で何か凄く嫌なことがあったんだわ」

のび太「いやなこと?」


ドラミ「ええ。それが何かはわからないけど、恐らく人間関係じゃないかしら? 高校生の
     悩み事なんて勉強、進路、あとは対人関係くらいしかないと思うし」

のび太「人間関係かぁ。……もしかして、チームのなかまとケンカしたとか?」

ドラえもん「ありうるね。ほら、さっき苗木くんが言ってたじゃない?
       天才は周りに理解されづらいみたいなこと」

のび太「じゃあ、げんいんはそれでいいとして……ぼくたちはどうすればいいの?」

ドラえもん「結局そこなんだよなぁ」

ドラミ「ムリにでもやらせてみたら?」

のび太「野球を?」

ドラミ「そう。仮に人間関係が原因だったとしてもそうでなかったにしても、少なくとも今の
     生活でまでウソをつく必要性はないでしょ? 好きだって気持ちを思い出させてあげれば
     案外素直になれるんじゃないかしら。そのきっかけを作ってあげたらいいと思うわ」

のび太「すごい! さすがドラミちゃんだ」

ドラえもん「いやぁ、優秀な妹を持ってぼくは幸せだよ」

ドラミ「どういたしまして! これで舞園さんも思いとどまってくれるといいわね」

のび太「…………」

ドラえもん「…………」

ドラミ「……どうしたの? 私、何かおかしなこと言った?」


のび太「いや、そうじゃなくてね……」

ドラえもん「桑田くんに気を取られていてすっかり忘れてたよ。そうだった。
       舞園さんをとめるのが元々の目的だった……」

ドラミ「……まあ、呆れた。まずは今晩起こる事件をなんとかしなくちゃダメじゃない」

ドラえもん「めんぼくない」

のび太「もう! ドラえもんはいつもかんじんな時にぬけてるんだから!」

ドラえもん「きみだって忘れてただろう! ぼくだけのせいにしないでよ!」

ドラミ「ケンカはやめて。お兄ちゃんとのび太さんにかかっているんだから頑張って! ね?」

ドラえもん・のび太「はーい」


 ― 現代・男子トイレ ―


ドラえもん「ドラミが気付いてくれて良かった。まずは今晩をなんとかしないとね。
       ちょっと反則だけど、今回だけソノウソホントで事件を防ごう」パパラパッパパー

ドラえもん「『今晩は誰も事件を起こさない』。よし、これで今日は大丈夫!」

のび太「もういっそこれで全部なんとかしたいけどね」

ドラえもん「それはダメだよ。前にも言ったけど生徒達が精神的な成長をなにもしてないじゃない」

のび太「わかってるって。……でもさあ、ムリヤリやらせるって言ってもどうやって?
     舞園さんはおろか、あのこわいお兄さんが言ってもきいてくれなかったんだよ?」

ドラえもん「うーん、ぼくに考えがあるんだけど……」

のび太「え?! なにか案があるの? おしえてよ!」

ドラえもん「今こそあの“うるさい人”に活躍してもらう時じゃないかな?」


ここまで。2スレ同日更新はなかなか大変だ
次から別日にしよう…


~ NGシーン ~


ドラえもん「ヤル気スイッチ~!」パパラパッパパー

のび太「なにそれ?」

ドラえもん「この装置を相手に向けてプラスのボタンを押せばヤル気が出るし、
       マイナスのボタンを押せば相手のヤル気を下げることが出来るんだ!」

のび太「それで舞園さんのヤル気を下げるんだね!」

ドラえもん「そういうこと!」

のび太「ぼくにやらせて」サッ

ドラえもん「あっ、ちょっと!」

のび太「えい」ポチッ

舞園「うおおおおおおおお! 桑田ぶっ殺してやる!!」

のび太「まちがえた~!」

ドラえもん「なにやってんだ?! 殺る気をだしてどうするんだ!!」

のび太「ごめんなさーい!」



~ まもなく再開 ~



  第五話 桑田くんのなやみ(後編)


翌日。朝食会にて。


石丸「静聴せよ!! 今日は諸君らに重大な知らせがある!」

葉隠「重大?」

山田「なんなんですかね?」

石丸「この朝食会終了後、本日は全員で野球を行うっ!」

桑田「ハアアア?! なんでっ?! 冗談じゃねえ!」

十神「俺は参加しないぞ。お前達で勝手にやっていろ」

石丸「ちなみに女子はどうしても嫌なら見学でも良いが男子は全員参加だ。
    特に桑田君! 超高校級の野球選手である君は絶対に絶対に参加とする!」

桑田「だから! なんでだよっ! ありえねーし!」

石丸「これは決定事項だっ!!」

山田「ムチャクチャですよ!」

大和田「おい石丸、別に俺は構わねーがせめて理由くらい言えや」

石丸「ム、失礼した。実はこれには深い理由がある!」

葉隠「なるべく短めに頼むべ」

石丸「実は他ならぬのび太君の頼みなのだっ!」

朝日奈「え、のび太の?」


舞園「……そういえば、昨日も桑田君を野球に誘っていましたね」

石丸「のび太君は現在友達がキャプテンをしている地域の野球チームに所属しているのだが」

石丸「その友達というのはジャイアン君と言ってとんでもないガキ大将なのだ!
    そして事あるごとにのび太君をイジメるらしい!」

葉隠「ジャイアン? ジャイアント馬場か?」

山田「ガキ大将でジャイアン……子供向け漫画のキャラクターみたいな安直さですな」

朝日奈「アハハ、ジャイアンだって変な名前!」

苗木「いや、アダ名だと思うよ?」

石丸「のび太君は元々運動が苦手で、今もこんな所に閉じ込められますます野球が下手に
    なってしまうことを危惧している。このままでは帰ってからイジメられてしまうだろう!」

大神「成程。つまりはここに閉じ込められている間に特訓したいということか」

石丸「そうだ! のび太君がイジメられないように僕達は年長者として協力する義務がある!
    そしてのび太君は超高校級の野球選手である桑田君を指名したのだ。わかったか!」

石丸(昨日はのび太君達が困っていたのに僕は何の役にも立てなかった。みんなを
    まとめる風紀委員として、いや人生の先輩として余りにも不甲斐ない……)

石丸(これはチャンスなのだ! 今日ここで僕は名誉を挽回し汚名を返上するぞ!!)


熱い決意と共に石丸の真っ赤な瞳が狂気的に爛々と輝く。


桑田「冗談じゃねえよ! 俺の意思は無視か?!」

石丸「無視に決まっているだろう! 子供の希望を優先する!!」

桑田「やめてくれよ……俺は本当に野球が嫌いなんだって……!」


石丸「いいや、駄目だ! 僕が羽交い締めにしてでも君を参加させるぞ!」

桑田「勘弁してくれってマジで……」

のび太「すごい……あのお兄さんほんとうに強い! 頼んで正解だったね」ボソ

ドラえもん「なんという押しの強さ……さすが超高校級の風紀委員だ」ボソ

ドラえもん(自分が正しいと思ったら周りの目を一切気にしない石丸くんのKYさがプラスに
       働いたね。でも桑田くんも相当頑固だからなぁ。すんなり行くといいけど)

桑田「イヤだっつってんだろ! 力ずくでってんならやってみろよ! ああ?!」バン!

石丸「君も往生際が悪いな! 良かろう、そこまで言うならみんなの意見を聞いてみようではないか!」

桑田「え」

石丸「民主主義の法理に則り、多数決で決めれば文句はないな! 僕の意見が正しい、
    のび太君のために桑田君は協力すべきと思う人は挙手してくれたまえ!」

セレス「あら、単独では厳しいと判断してこっちを巻き込む策に出ましたわね」

苗木「流石、石丸君。政治家を目指してるだけあるなぁ……」

不二咲「でも、確かにのび太君達の手助けはしてあげたいよね。……僕は役に立たないかもしれないけど」

江ノ島「どーでもいいし。つか桑田をさっさと協力させて終わらせない?」

大和田「だな。なーにくだらねぇ意地はってんだか」


桑田以外全員挙手。


桑田「な……な……」

石丸「どうだね? これが民意だ! さあ、潔く協力したまえ!!」


桑田「くっそぉ……つかなんで十神までちゃっかり参加してんだよ?!
    普段はこういうこと一切参加しねえくせによー!」

十神「決まっている。奴の馬鹿でかい声は俺にとって最も堪えがたい騒音なのだ。
    それを黙らせることが出来るなら手の一つや二つくらい、いくらでも挙げてやる」ノ

腐川「アンタのせいで白夜様が精神に大ダメージ受けてんのよ! いい加減諦めなさいよ」ノ

桑田「う、ぐ……」

朝日奈「ねー、なんでそんなに嫌なの? ちょっと付き合うだけでいいからさ!」ノ

舞園「……私からもお願いします。のび太君のためだと思って」ノ

大和田「おい、昨日は見逃してやったが二度もガキの頼みをムゲにしやがったら
     俺がテメェをブッ転がしてやるからな。どうする、桑田? アア?!」ノ

桑田「クソ……クソ……」

霧切「ねえ、桑田君。さっきからずっと聞いていたけど、あなた何か野球をしたくない
    特別な理由があるんじゃないかしら。そこまで嫌がるなんて尋常じゃないわ」ノ

桑田「……別に。野球なんて泥くさくてダセースポーツはイケてる俺には合わねーってだけだし」

石丸「成程! そんなつまらない理由しかないなら君が拒否する権利はないな!!」

桑田「…………わかったよ。ほんとうに少しだけだからな」

のび太「お兄さん、ほんとう? ヤッター! ひさしぶりに野球ができるよ!」

ドラえもん「よかったね、のび太くーん!」

苗木「おめでとう! じゃあこれから頑張ろうね」

石丸「ウム! 努力はおしなべて美しい。僕は努力する者全員を応援するぞ!」

桑田「…………」


  ― 体育館 ―


ワーワー!


のび太「うわーん!><」スカッ

大和田「おいおい……今のはスローボールってレベルじゃねえんだが」

江ノ島「さっきからカスリもしないじゃん。男ならちょっとは根性見せなよ」


人数が足りないので、試合形式ではなくバッティング練習を行っている。ピッチャーは大和田だ。


朝日奈「腰が入ってないよ! それにもっと早く振らなきゃ!」

大神「何事も基礎からしっかり修めるのが肝要だ」

石丸「フーム、まず筋トレからと行きたい所だが筋肉は一日二日では出来ないからな。
    ここは少しでも正しいフォームを体に覚えさせるべきだ。桑田君、出番だぞ!」

桑田「……あ? なにすりゃいいんだよ」

苗木「その、のび太君にお手本を見せてほしいな」

朝日奈「うん! フォームの勉強は基本だしね。あんたのを見せれば参考になるはず」

不二咲「ぼ、僕も参考にしよう」ボソボソ

桑田「……しょーがねー。やるか」スクッ

桑田(ボールにバット……久しぶりだな……)

ドラえもん「じゃあぼくたちはしばらく見学してるね!」

石丸「ウム、しっかり見ていたまえ。見て学ぶと書いて見学だからな!」


大和田「よし! 桑田ほどじゃねえが俺だってそこそこ肩には自信があるんだ。行くぜ!」


シュッ、カキーン! ドカッ!


山田「あらら。瞬殺されちゃいましたね」

苗木「開幕いきなりで天井直撃ホームラン……」

大和田「…………」

大神「次は我が投げてみるか」


ドシュッ、カキーン!


朝日奈「すごい! さくらちゃんの剛速球を打ち返しちゃった!」

葉隠「オーガの球を打ち返すなんて、あの体のどこにそんなパワーがあるんだ」

セレス「そこまで大柄でもありませんし、さほど筋肉質には見えませんのにね」

霧切「テクニックよ。彼の動きには全く無駄がないもの」

桑田「……どーしたよ。なんなら次は俺が投げるか?」

石丸「よし、僕が打ってみせる!」

大神「あやつの球を捕れるのは我くらいだろう。全力で投げても良いぞ」

桑田「なら、遠慮しないぜ。うらっ!」


バシンッ!


石丸「……う。全く見えなかった」


朝日奈「あたしもやるやる! 打ち返すのはムリでもバントくらいならなんとか……」


ドギュンッ!


大神「ぬおっ?! 今のは変化球と言う奴か。危うく捕り損ねる所だった……」

朝日奈「あっれー? カスリもしなかった。一応野球部も兼部してるんだけどなー。あちゃー」

大和田「リベンジだ! 今度こそ……」


バシンッ!


大和田「くっそ。マジで見えねぇ……」

葉隠「じゃあ、次は俺が……」


シュンッ! スカッ。


葉隠「無理だったべー」

江ノ島「そりゃそうでしょ」

桑田「オラオラー! どんどん行くぞぉっ! ハハハハハッ!」

苗木「凄いね、流石超高校級の野球選手って感じ。ねえ、舞園さん」

舞園「……そうですね」

山田「練習ゼロでこの実力とかもはや周囲を馬鹿にしてるレベルですな」

腐川「そのうえあの態度だものね……まあ、あたしは人のこと言えた義理じゃないでしょうけど」

霧切「…………」


舞園(これほど恵まれた才能を持ちながら何故……何故、野球を軽んじるんですか?
    どんなに努力したってあなたのようになれない人はたくさんいるんですよ?)

舞園(そのうえ軽々しく芸能界を目指すとか、私の努力を馬鹿にしているんですか?
    野球で、才能で得た知名度を使って私が今まで死ぬほど苦労して手に入れた物と
    同じ物をあっさり手に入れるつもりなんですか?)

舞園(……そんなの、絶対に許せませんよ)

石丸「ハァハァ、彼は本当に何の努力もせずあの実力なのか? 全く天才と言う存在は
    本当に憎たらしいものだな……。さてのび太君、どうだね? 参考になったかな?」

のび太「……ごい」

苗木「のび太君?」

のび太「すごい! ほんとうにかっこいい!」

桑田「……え?」


のび太は桑田に駆け寄る。


のび太「すごいよ、桑田お兄さん!」

ドラえもん「うん、とってもかっこいいよ!」

桑田「……お、おう」

のび太「そんなにすごいのに、どうして野球がきらいなの?」

桑田「!」

のび太「野球をやってる時のお兄さんのかお、すごく楽しそうだったよ?」

ドラえもん「そうだよ! 本当は野球のこと好きなんでしょ? どうして嫌いなんて言うのさ」

桑田「ち、違う……俺は……」


苗木「桑田君?」

桑田「お、俺は野球なんて好きじゃねええええええッ!!」

大和田「ハァ?」

江ノ島「なに言ってんの。さっきまでノリノリだったくせに」

桑田「うるせー! あー、もうヤメだヤメ! ったく、せっかく付き合ってやったってのによ!」

朝日奈「ちょっと」

葉隠「おい、桑田っち」

不二咲「ど、どうしたのぉ……?」


桑田の突然の豹変に周りはついていけないが、去り行く背中に向かってのび太は叫ぶ。


のび太「桑田お兄さんのうそつきっ!!」

一同「?!」

のび太「お兄さんは大うそつきだ! ぼくたちほんとうは知ってるんだよ! 前にろうかで
     ひとりごと言ってるのきいたんだから! ほんとうは野球がしたいんでしょ!」

桑田「な……!」

舞園「?!」

葉隠「え、ちょ、どんな流れなんだべ今?」

十神「全く愚民はよくわからんな」

セレス「あら、いたんですか? 運動に自信がなくて逃げ出したのかと」

十神「馬鹿を言うな。フン、それであいつらは何をするつもりだ?」


山田「一体なにが始まるんです?」

大神「静かにするのだ! のび太は今大事な話をしようとしている」

ドラえもん「ごめんね、桑田くん。盗み聞きをするつもりはなかったんだけど、
       どうしても気になってしまって。何故きみは自分にウソをつくんだい?」

桑田「ち、違う! 俺は嘘なんか……」

のび太「じゃあなんで野球がしたいなんて言ってたの! だれもいないところで
     言ってたってことは、それがお兄さんのホンネなんでしょ!」

桑田「お、俺は……俺は……」

石丸「えーい! 男ならハッキリしたまえっ!! 嘘なのか本当なのか、どっちだ?!」

桑田「…………」


ゴクリと、誰かのノドが鳴った。


桑田「……だよ」

石丸「ん? 何だ? もっと大きな声で話したまえ」

桑田「……きだよ。好きだよ。……そーだよ! 俺は本当は野球が大好きだよ! 文句あるかあああっ!!」

苗木「いや、野球選手が野球好きで文句言う人なんていないと思うけど……」

大和田「アイツさっきからなんであんなにわーわー騒いでんだ?」

葉隠「まったくワケわからんべ」

セレス「それをこれから話すのではなくて? わたくしは興味ありませんけど」

桑田「うるせー! お前らに俺の気持ちなんてわかるかっ!!」


大神「落ち着け、桑田。好きなら何故その気持ちを隠していたのだ? お主は
    誰もが認める超高校級の実力を持つ選手……嘘をつく理由などあるまい」

桑田「それがあるんだなー、これが」

石丸「何なのかね、その理由とは?」

桑田「俺が『天才』だからだよ!」


シィーーーーーン。


一同「…………」

ドラえもん「えーとね、桑田君……」

のび太「お兄さん、いくらなんでもそれは……」

桑田「ほら! そういう反応するだろ! だから俺は言いたくなかったんだって!!」

江ノ島「あんたさっきから言ってることメチャクチャじゃない?」

霧切「……順を追って話してくれないかしら」

苗木「あれ、霧切さんいつからそこに?!」

霧切「ずっといたわよ? 野球に夢中になってて気付いていなかったみたいだけど」

苗木(霧切さんの視線が痛い。印象が悪くなったようだ)

桑田「……俺はよ、ガキの時はとにかく野球一筋でさ、毎日朝から晩まで馬鹿みたいに
    グラウンド走り回ってたワケよ。いくら俺が天才っつったって、ガキの時からなんでも
    出来るワケじゃないだろ? だから上手くなりたくてひたすら練習してたんだよ」

石丸「そんなまっとうな少年が、何故今はこんな変わり果てた姿になってしまったのだ?」

桑田「かわり果てたって言うな! ……そうさ、俺もガキの時は他のヤツらとなんら
    変わらねぇ普通の球児だった。ただ違ったのは……俺は天才だったんだよ」


舞園「…………」

江ノ島「自分で自分のこと天才天才言うのって恥ずかしくない?」

腐川「ほんと、恥ずかしい男ね!」

ドラえもん「ま、まあまあ!」

のび太「それで! なにがあったの?」

桑田「他のヤツらがさ、何年もやらなきゃ出来ないこと……下手したら一生かけても
    出来ないことを俺はスラスラ出来ちまったんだよ。そうしたらもうダメさ」

桑田「あんだけ楽しかった練習が苦痛にしか感じなくなっちまったんだ。だってそうだろ?
    俺は全部出来ちまうんだから! 他のヤツらが出来ない横で俺だけ出来るんだよ!」

石丸「し、しかし……基礎をしっかり修めるのは何事も重要ではないかね?」

桑田「じゃあ努力努力うるさいお前に聞くけどよ、石丸! お前、高校生なのにいつまで
    経っても小学生の問題やらされて納得出来んの? 文句言わずにやれるか?!」

石丸「それは……」

桑田「朝日奈! お前一週間バタ足だけやれって言われたらどうする?!」

朝日奈「え、それはさすがにイヤかも……」

桑田「俺にとっちゃそういうことなんだよ! だから俺は練習が嫌いなの!」

大神「ならば自分のレベルに合った練習方法を探せば良いのではないか?」

桑田「……そこがチームスポーツの難しい所なんだよ。個人スポーツなら練習内容とか
    ある程度融通きくけどさ、チームで一人だけ毎回別行動するワケいかねえだろ」

桑田「実際にさ、監督が俺だけ特別メニュー組んだこともあったけど、チームの目が厳しいんだよ。
    ああ、またアイツだけ特別扱いか。そうか、アイツは天才だもんなって陰で言われてさ……
    逆にムリして周りに合わせようとすると今度は手を抜いてるって叩かれたりするし」

葉隠「まあ、よくある話だな」ウンウン

苗木「桑田君……」


桑田「だから! 俺は考えたの。野球嫌いなことにして先生や監督に頼まれて嫌々試合に
    出てるって形にすれば、練習は最低限で済む。陰口も聞かなくて済む!」

桑田「俺が練習は嫌いだからしないって言うとみんなお前らみたいな、ああこれだから
    天才はって顔するけど、野球が嫌いならそれも仕方ないって思ってもらえるだろ!」

舞園「…………」

霧切「もしかして、ミュージシャンを目指しているというのもそれに関係があるのかしら?」

桑田「ああ。音楽は昔から好きだし、野球ほど才能ないだろ? だから、すぐに上手くなったりは
    しないけどそのぶんいくら練習しても飽きねえし、上手すぎて陰口叩かれることもないしな」

苗木「……え?! ちょっと待ってよ! ミュージシャンを目指してるのは、
    美容院のお姉さんと付き合いたいからって前に言ってなかったっけ?!」

桑田「ああ、その話は半分本当で半分ウソだ。お姉さんとお付き合いしたいってのは本当。
    でもそのためにミュージシャン目指したってのはウソ。だってさ、いくらお付き合い
    したいからって、俳優だのミュージシャンだのそうコロコロなれるワケねーだろ」

苗木「えー、うっそーん……(信じてたのに)」ガーン

桑田「それに、ほら! 俺に努力とかなんか似合わないじゃん! 練習してなくてもいつのまにか
    出来てるって方が俺のキャラに合ってるし。だからマジで目指してたのは秘密だったんだよ!」

江ノ島「あんたねぇ……」

セレス「まあ桑田君ですから」

石丸「では君は……自分が才能があり尚且つ大好きなものを
    諦めようとしていたというのか。そんな……」

石丸(天才というものは皆等しく才能に胡座をかいている……その代表例かと思っていた桑田君が、
    こんな悲しい選択をして陰で努力をしていたなんて。一体僕は彼の何を見ていたのだ!)

ドラえもん「……そっか、そんないやなことがあったんだね」

桑田「そうさ。だから俺は野球が嫌いになったんだ。嫌いだって何度も自分に言い聞かせてたら
    本当に嫌いになった気がして……今は野球なんて嫌いで嫌いで仕方ねえんだよッ!!」


ドラえもん「でも、本当は好きなんだろう? 好きなものをむりやり嫌いになるなんて
       そんな悲しいことはないよ。もうやめにしよう」

桑田「仕方ねえだろ! 他にどうすりゃいいって言うんだよ!!」

のび太「……ごめんなさい」

苗木「のび太君?」

桑田「なんだよ、突然……」

のび太「ぼくね、すごくうんどうオンチでしょ? だから、天才のお兄さんがうらやましくて
     しかたなかったんだ。練習しなくてもうまいなんてずるいってずっと思ってた」

桑田「…………」

のび太「でも、才能がありすぎるっていうのもとてもツライことなんだね」

のび太「ぼくのクラスにも、すごく出来の良い天才みたいな子がいるんだ。あたまが良くて
     野球やサッカーもとくいで、おまけに顔も性格もいいし。でも、ぼくたちはいつも
     その子をあそびにさそわないんだ。……たぶん、シットしてるからだとおもう」

桑田「…………」

のび太「ぼくたち、お兄さんのチームメイトの人たちとおんなじことをしてたんだね……
     いやな思いをさせてごめんなさい。こんどからはその子もさそってみるよ」

桑田「……そうしてやれよ。きっと、そいつも喜ぶぜ」


シーーーン……


葉隠(おーおー、どいつもこいつも若いったらねえな!)グスッ

山田(まさかリアルで青春アニメみたいな展開を見るとは……子供恐るべし!)グスン

十神「フン……」


大神(のび太……)ジーン

大和田(チッ、あークソッ。ちょっと、涙腺にきちまったじゃねえか。あーヤベェ。上見よ、上)

ドラえもん(桑田くんだけじゃない……今回のことで、きみも成長したねのび太くん!)グスグス

腐川「何よ……ちょっといい空気じゃない……」グスッ

不二咲「いい話だねぇ」グスグス

舞園(…………)

石丸「う、ひぐっ、グスッ。ううう……」ボロボロ

苗木(なんか凄いしんみりしちゃったな。桑田君はただのうぬぼれてる嫌な人じゃなくて、
    ちゃんと理由があってああいう発言をしてたんだね……まあ元の性格もありそうだけど)

霧切(まだ終わりじゃないわ。桑田君の野球嫌いを完全に直してはいない。
    ここからが正念場よ。のび太君、あなたの手腕見させてもらうわ)

のび太「ねぇ、桑田お兄さん」

桑田「なんだよ……」

のび太「野球をおしえてくれないかな」

桑田「それは構わねえが……」

のび太「ぼくだけじゃない。みんなにもおしえてあげるのはどう?」

桑田「!」


のび太「自分ができることをえんえんとやらされるから練習がきらいなんでしょ?」

のび太「なら、練習するんじゃなくてみんなにおしえてあげるのはどうだろう? 超高校級の
     野球選手がおしえてくれたら、きっとみんな今よりうまくなれると思うんだけどなぁ」

桑田「……教える、か。そうだな。それなら、練習ほど嫌じゃないかもな……思えば、
    みんな真剣にやってるのに俺だけ身が入ってないから嫌われたのもあるし」

桑田「とりあえず、のび太。お前には、その……ここにいる間は俺がお前の専属コーチに
    なってやるよ。なんつったっけ? ジャイアンツ? そいつにイジメられないように
    これからこの俺が徹底的にしごいてやるから、覚悟しやがれ!」

のび太「……ほんと? ヤッター! 超高校級の野球選手がぼくのせんぞくコーチだって!」

ドラえもん「よかったね、のび太くん!」

苗木「おめでとう、のび太君。折角だし、僕も一緒に教わろうかな?」

朝日奈「私も私もー!」

不二咲「ぼ……私も教わっていいのかな?」

葉隠「俺にも教えてくれ! そんでそれを本にまとめて今度売らせてくれ!」

石丸「素晴らしい! 友情とはなんと美しいのか! 今ここに世代を超えた友情が
    生まれた! その立ち会いが出来て僕は本当に光栄だ!」


わーわー!


舞園「…………」

舞園(もし私がこの中から誰かを殺すのなら、桑田君……ずっとそう思っていましたが……
    桑田君はやめにしましょう。別に、桑田君のためじゃないですよ?)

舞園(のび太君から野球のコーチを奪ってしまえば、またのび太君が
    イジメられてしまう……のび太君のためです。本当にそれだけです)


江ノ島「あー、なんかよくわかんないけど一見落着、みたいな?」

山田「そう思うとなんだからお腹が減りましたな!」

セレス「紅茶のお代わりが欲しいですわ」

朝日奈「あ、じゃあみんなでドーナツ食べようよ!」

山田「いいですねぇ、行きますか」

桑田「おら、のび太! 構え方が違う! こうだ!」

のび太「こう?」

桑田「違う! もっと背筋を伸ばしてだな」

のび太「こうかな?」

桑田「そうだ! それで、下半身に力を入れて…」

大和田「おお、さっそくそれっぽいことやってんじゃねえか」

ドラえもん「頑張るんだよ、のび太くん!」

石丸「僕も付き合うぞ!」

苗木「僕も。ここを出る頃にはみんな野球が上手くなってたりして。フフ」

大和田「違えねえな! ワッハッハッ!」

桑田「よし、行けっのび太!」

のび太「そんなきゅうにはムリだよ~」


ワハハハハハ!!


ここまで。


次回予告(あの曲でhttp://www.youtube.com/watch?v=nXRaS_vGUpg


ドラえもん「いやあ、無事に解決して何より!」

のび太「舞園さんも桑田さんのことを見直したみたいだしもう大丈夫だね!」

ドラえもん「よーし、念のためにタイムテレビで確認を……」

のび太「えっ?! 事件?! 被害者は……」

ドラえもん・のび太「腐川さん?!」


次回もお楽しみに!



  第六話 舞園さんのゆめ


のび太「はぁー、疲れた」

ドラえもん「でも思いきり運動すると気持ちがいいだろう」

のび太「そうだね。早くぜんぶかいけつして、こんどは外でやりたいな」

ドラえもん「うん。とりあえず、桑田くんはやっと素直になれたし、みんなの桑田くんに
       対する見方も変わった。これで舞園さんも思い直してくれればいいけど」

のび太「ひるねしたいところだけど、まずはタイムテレビでかくにんしようか」


  ― 男子トイレ ―


のび太「もうすっかりここでタイムテレビを見るのがおなじみになっちゃったね」

ドラえもん「しかたないさ。それが一番効率がいいんだから。さて……」

のび太「あ、部屋の交換してない! やったよ! やっとふせげた!」

ドラえもん「待って! 次の日の様子も一応見ておかないと」

のび太「なにもおこってないといいけど」

ドラえもん「……静かだね」

のび太「あれ、どこにもだれもいないよ?」

ドラえもん「こ、これはまさか?! 地下を映してみよう!」


バーン!


のび太「が、学級裁判だー!」


ドラえもん「そんな……」

のび太「し、しんだのはだれ? まさか桑田さん?」

ドラえもん「いや、桑田くんはいる。いないのは……」

のび太「腐川さんだ!」


腐川の席には赤い×印がついた腐川の遺影が置かれている。


ドラえもん「そんな、腐川さんが死んでいるなんて……原作と違うぞ!」

のび太「犯人はだれ?!」

ドラえもん「飛ばすね。もしかしたらと思うけど……」


苗木『犯人は舞園さん……君しかいないんだ』


ドラえもん・のび太「やっぱり舞園さんだー!!」

のび太「なに? なに? どういうこと? あきらめたんじゃなかったの?」

ドラえもん「……つまりこういうことだ! 舞園さんは桑田君をターゲットにするのはやめたけど、
       外に出ること自体はあきらめていないんだ! だから別の人を殺したんだよ!」


苗木『舞園さん……どうして腐川さんを殺したの……?』

舞園『……誰でも良かったんです。ただ、外に出たかった。いえ、出なければいけないんです!』

舞園『私にはこんな所にいる余裕なんてない! 私達アイドルは、いつも誰かに飽きられてしまう
    恐怖を抱いて働いている。……私がここにいる間も、私達は忘れられてしまうんです!』


ドラえもん「なるほど。桑田くんだけが問題じゃない。舞園さんの外に出たいという気持ち……
       これをなんとかしない限り舞園さんによる殺人が必ず起こってしまうんだ!」

のび太「そんなぁ。どうすればいいのさ! 外に出たってなにもないよって
     つたえるいがいにあきらめてもらう方法なんてあるの?」

ドラえもん「これは……難関だな。外のことを教えるのが一番簡単だけど、もし今
       教えてしまえば舞園さんはおかしくなってしまうかもしれない……」

のび太「そんな……いったいどうすればいいんだろう……」


タイムテレビで舞園の自供を聞きながらドラえもんはふとあることに気がついた。


ドラえもん「うーん……ん?」

のび太「どうかしたの?」

ドラえもん「ちょっと気になることがあって……巻き戻すね」


舞園『私達アイドルは……アイドルというものは……アイドル……』


ドラえもん「舞園さん、やたらとアイドルって言葉を使ってるね」

のび太「そりゃそーだよ。なにせ超高校級のアイドルだもん」

ドラえもん「それにしても、なんだかこだわりかたが普通じゃないというか……
       なんていえばいいんだろう。うーん」

のび太「気になるならたしかめに行けば?」

ドラえもん「確かめるってどうやって……ハッ、そうか」



のび太「そう、タイムマシンさ!」


  ― 八年前・根黒六中 ―


二人は苗木に出身中学を聞き、過去の根黒六中にやってきていた。


ドラえもん「舞園さんは高校二年生の時にスカウトされて二年間希望ヶ峰に
       通っていた。つまり本当の年齢は19歳。ここは八年前だから…」

のび太「ぼくとおなじ小学五年生のはずだね。苗木さんもいるのかな?」

ドラえもん「同じ中学に通ってたということは家が近いはずだから、探せば
       苗木くんもいるだろうね。でも今は舞園さんを探すのが先だよ」

のび太「どうやって探すの?」

ドラえもん「そりゃもちろん、たずねびとステッキ~!」パパラパッパパー

のび太「それ、あんまり当たらないんじゃなかったっけ?」

ドラえもん「的中率は70%だね」

のび太「うーん。葉隠さんの占いよりはマシか。でもなー」

ドラえもん「しょうがないだろ! おおまかな方向だけでもわかればめっけものだよ」


スッ、パタン。


ドラえもん「こっちだ!」

のび太「大丈夫かなぁ…?」


1時間後。がむしゃらに探しまわった二人は、とうとう買い物帰りの舞園を見つける。


ドラえもん「い、いた! あの子じゃない?!」


のび太「ホントだ! 間違いないよ。うわぁ、かわいいな~」デレデレ

ドラえもん「スゴイ美少女だねぇ。うふふふ……ってこうしている場合じゃないや。
       舞園さんを追いかけるために、スパイ衛星~。ゴー!」

のび太「よし、あとはのんびり見ていればいいね。ぼくちょっとねてるからあとはまかせるよ」

ドラえもん「もう! しかたないなぁ。……まあ、今日はよく頑張ったからゆるしてあげるか」


二時間後。


のび太「ふぁ~あ、よく寝た。なにかうごきあった?」

ドラえもん「いや、なにもないよ。宿題をしたり、あとは歌や踊りの練習をしてたくらいかな」

のび太「はたからみたらぼくたちストーカーみたいだね……」

ドラえもん「……それは言わないでよ。ぼくも悪いなって思いながら見てるんだから」

のび太「それにしても、あれ……まだお母さんは帰ってきてないの?」

ドラえもん「最初はお買い物かと思ってたけど、よくよく考えたらお買い物は
       舞園さんが自分で行っていたし、共働きなんじゃないかな?」

のび太「あれ、なんかごはんのシタクしてない?」

ドラえもん「おうちのお手伝いをよくやっているんだ。えらいね」


その後、日が暮れても舞園の両親は帰って来なかった。


のび太「い、いくらなんでも遅すぎじゃない?! もうこんな時間だよ!」

ドラえもん「もしかして……舞園さん、お母さんがいないんじゃないかな?」

のび太「えっ?」


ドラえもん「変だと思ったんだ。さっき舞園さんが取り込んでた洗濯物、舞園さんのを除いたら
       男の人の物しかなかったし。家事は全部舞園さんがやってるみたいなんだ」

のび太「そんな……じゃあ、お父さんがかえってくるまで毎日おそくまでひとりぼっちなの?」

ドラえもん「だろうね……あ、テレビを見てる。これは……」

のび太「歌番組だ。あ、アイドルが出てる!」

ドラえもん「食い入るように見てるね」

のび太「いっしょにうたいだした。このころからうたは上手だったんだね」


さやか『みんなかわいいな~。さやかもこんなキレイなお洋服を着て、にぎやかな舞台に立てば
     もう寂しくないのかな。さやかも寂しい子を勇気づけてあげられるのかな……』


ドラえもん・のび太「…………」


さやか『今日も頑張る! いつか絶対さやかもあそこに立って見せるんだから!』

さやか『……お父さん、まだかな。遅いな……』


のび太「うわぁ……」

ドラえもん「そうか、舞園さんは寂しい気持ちをアイドルへの憧れに変えて今まで
       ずっと一人で頑張ってきたんだ。だから、それが奪われそうになって
       パニックを起こしてしまった。それが殺人の本当の動機なんだ!」

のび太「じゃあ、もうさびしくなんかないよっておしえてあげればいいのかな?」

ドラえもん「うーん、それは違うと思うな。だって、舞園さんはもうアイドルになって
       しまったんだから、アイドルという存在自体に執着してると思う」

のび太「じゃあ、アイドルかんれんじゃなきゃとめられないってこと?」


ドラえもん「そうだねぇ。でも、アイドルっていうのは支えてくれるファンあっての
       ものだから、あの密閉された空間で説得するのはかなり難しいぞ」

のび太「それでも、やるしかないよ。だって、ぼく舞園さんにひとごろしなんてして
     ほしくないもん。あんなさびしそうなかおしてる女の子、ほっとけないや」

ドラえもん「時間はあまりないけど、頑張ろう!」


  ― 現代・男子トイレ ―


のび太「とりあえず、時間はどのくらいあるの?」

ドラえもん「犯行をタイムテレビで見てみよう」

のび太「場所は倉庫か。時間は夜中の1時くらい……」

ドラえもん「犯行場所と相手が変わっただけで、手口は桑田くんの時と
       ほとんど変わってないね。メモで呼び出して包丁でグサリ」

のび太「こんなたんじゅんな手口じゃすぐ霧切さんたちにみやぶられちゃうのに……」

ドラえもん「マズイな……あと半日しかないぞ。まったく策が浮かばない」

のび太「よしっ、もう一回苗木お兄さんに相談に行こう!」

ドラえもん「ちょっと待って。ま、まさか苗木くんに舞園さんが
       殺人を企んでるなんて言うつもりじゃないだろうね?!」

のび太「うん、それがいちばんじゃない? 苗木さんならきっととめてくれるよ!」

ドラえもん「ダメだよ! ムチャだ!」

のび太「どうして!」

ドラえもん「多分だけど、苗木くんは舞園さんのことが好きなんだよ?! それなのに
       そんなこと伝えたら、頭が真っ白になってすぐに止めに行くよ!」

のび太「それでいいじゃない。それのなにがいけないのさ?」


ドラえもん「いいかい? 誰にも知られていないはずの殺人計画を、よりによって一番
       知られたくない人に知られて、舞園さんはきっとパニックを起こすだろう?」

ドラえもん「舞園さんが素直にあきらめてくれればいいよ? でもパニックを起こして、
       万が一口封じに苗木くんに襲い掛かりでもしたら……」

のび太「あ、そうか……舞園さんはさいしょの時点で苗木さんをだましてるんだし
     ゼッタイないとはいいきれないか……」

ドラえもん「今の段階だと学級裁判の存在は知らされてないけど、どの道苗木くんを見捨てて
       一人で脱出するつもりだったんだからね。そのくらいアイドルが大事なのさ」

のび太「でもぼくたちだけで話してたってなにもいいかんがえがうかばないのはたしかだよ」

ドラえもん「そうだねぇ……じゃあ、舞園さんの件は秘密にして相談してみるか」

のび太「うん、なにもしないよりはマシだろうし……」


  ― 苗木の部屋 ―


苗木「やあ、いらっしゃい」

ドラえもん・のび太「おじゃまします……」

苗木「どうしたの? 憧れの桑田君から野球を教われて、さっきはあんなに
    楽しそうにしてたのに。……何かあったの? 僕で良ければ相談に乗るよ」

のび太「苗木お兄さんはやさしいなぁ」ジーン

ドラえもん「ちょっとその、また質問したいことがあって……」


苗木「コロシアイを防ぐための案かな? いいよ、何でも聞いて。役に立てるかわからないけど」

のび太「えーっと……」チラッ

のび太(ぼくがはなすとよけいなことをいいそうだし、ドラえもんがはなしてよ)

ドラえもん(わかった、任せて)

ドラえもん「あくまで例えば、の話だよ? もし、もしも何か凄い大切なものがあって、
       そのために人を殺してもいいくらい思い詰めている人がいるとしたら、
       どうすればその人を止められると思う?」

苗木「うわ、また難問だなぁ。というか、君達随分難しいこと考えてるんだね……
    僕でもそんなこと考えたことないよ。ちょっと待ってね。今考えるから」


そう言うと、うんうん唸りながら苗木は考え始める。


苗木「……うーん、ありきたりかもしれないけど『どんな理由があったって、人を殺して
    叶えようとするなんて間違ってる』って言うかな。それが大事なものであればあるほど、
    そんな手段で守ろうとするなんて僕は間違ってると思うんだ」

のび太「なるほど」

ドラえもん「その好きなものに対しての冒涜だって説得するんだね」

苗木「うん。本当にそれが好きであればあるほど、人殺しの無意味さとか
    残酷さで説得しようとしても意味がないんじゃないかって思ったんだ」

ドラえもん(確かに。もう人を殺そうと決意してしまっている人に、単に
       人殺しはダメだなんて言っても通じないだろうしね……)


のび太「サンコウになったんじゃないかな?」

ドラえもん「ありがとう、苗木くん」

苗木「いやいや、あんまり悩まないでね。僕達も事件が起こらないように頑張るから」


苗木の部屋を出る。


のび太「よし! あとはいつ話に行くかだね!」

霧切「誰に何を話すのかしら?」

ドラえもん・のび太「うわああああっ!」

ドラえもん「き、霧切さん……」

霧切「凄い驚きようね。何か人に聞かれてはまずいことでも話していたの?」

のび太「そ、そんなことないよ!」

のび太(あちゃー、まずい人につかまっちゃったよ……)

霧切「ここ……苗木君の部屋ね。何を話していたのかしら?」

ドラえもん「ちょっと、ね」

のび太「そ、そうだんを少し」

霧切「相談?」


ドラえもん「の、のび太くん!」

のび太「あ……(しまった!)」

ドラえもん(くっ、ここで変にごまかしたら恐らく霧切さんにマークされてしまう。
       しかたない。正直に話してしまおう。今なら話してもまだ問題ないはず)

ドラえもん「今後のことを考えて、もし目の前で事件が起こりそうになったら、どうやって
       犯人を説得すればいいかって話してたんだよ。霧切さんならどう説得する?」

霧切「私? 私なら、そうね……間違った手段で何かを手に入れても結局そんな物は幻だということ。
    それどころか、自分が今まで手に入れた物全てを失う、ということを実話を交えて話すわ」

のび太「じつわをまじえて……」

ドラえもん(さすが霧切さんだ……)

ドラえもん「あ、ありがとう! でもそんな日が来ないのが一番だけどね!」

霧切「そうね。私も出来る限りそう動くわ。何か困ったことがあったら言ってちょうだい」

ドラえもん(あれ? なんか協力的? アニメだと終盤までずっとクールなのに)

のび太「じゃ、じゃあさよなら~」スタコラサッサ

霧切「…………」

霧切(庇ってもらった時のお礼を言うつもりだったのに、また言いそびれてしまったわね……)

霧切(あなた達は一体何者なの?)


ここまで。投下不定期でごめんなさい

ツイッターで投下予告してるんで良かったらご利用ください。
http://twitter.com/doctor_ronpa_K

出木杉は頭いいから連れてくとピンチにならなくなる、もしくはすぐに解決しちゃうからダメ、例えばこんな感じで

一同「タケコプターが壊れたぁ」
出来杉「バードキャップじゃダメなのかい?」

一同「どこでもドアが壊れたぁ」
出来杉「どこでも窓で代用しよう」

一同「タイムマシンがなくなったぁ」
出来杉「タイムベルトってあったよね?」

一同「ドラえもんが壊れたぁ」
出来杉「ポケットがあればいらないよ」

ドラ「タイムマシンが壊れて空間移動ができない」
ドラ「タケコプターは時速80kmで八時間連続運転すると電池が上がっちゃう」
ドラ「アメリカから日本まで何千kmもあるから無理」
スネ「一日4時間飛んで電池を休ませながら進もう」
ドラ「そういえばこの時代はアメリカと日本は陸続きだった、なんとかして帰ろう」
~ここまで原作~

出木杉「スモールライト」
ドラ「え」
出木杉「スモールライトでピー助同様皆を小さくして運ぼう」
出木杉「飛ぶ人が一人なら今の本数のタケコプターで海を渡れる」
ドラ「お、おう」
出木杉「タイム風呂敷」
ドラ「!?」
出木杉「タイム風呂敷でタケコプターの電池がきれる前に戻せば無限に飛べる」
出木杉「そもそもタイム風呂敷でタイムマシンを直せばすぐ帰れる」
ドラ「」
武「やろう、せっかくの冒険気分を台無しにしやがって」ポカー



  第七話 アイドルにえがおを!


  ― 男子トイレ ―


のび太「あー、ビックリした。いきなり現れるんだもん」

ドラえもん「探偵だからね。なんとか上手くごまかせて良かったけど」

のび太「まあ、せっとくの方法はこんなかんじでいいんじゃないかな。
     もんだいはいつ舞園さんにいうかだよ!」

ドラえもん「事件前がいいんじゃないかな。犯行に向かう直前がいいと思う」

のび太「……そのときって包丁もってるよね……ぼくたち、さされないかな?」

ドラえもん「さすがに子供を刺すことはないと信じたいけど……
       念のために、何か秘密道具を使おうか」

のび太「そうして。やっぱり、こわいしさ……」

ドラえもん「じゃあ夜ごはんまでまだ時間があるし、いったん部屋に戻ろうか。
       そうだ! 昨日ドラミからもらったドラ焼きを一緒に食べよう」

のび太「いいね! 今日はたくさん運動したし、ぼくおなかへっちゃった!」

ドラえもん「いつも同じ部屋でお世話になってる大和田くん達にも分けてあげようね」



  ― 大和田の部屋 ―


大和田「お、なんだ。ドラ焼きか。俺にくれるのか?」

ドラえもん「うん、大和田くんにはいつもお世話になってるからね」


大和田「おう、サンキューな!」

のび太「あ、ぜんぶ食べちゃダメだよ。あとで石丸さんにも持っていかないとダメだから」

大和田「……おー、そっかそっか。のび太はあいつと相部屋だったっけな。どうだ?
     あいつうるせえんじゃねえか? なんならお前も俺んトコにきていいんだぜ」

のび太「うーん、さいしょはうるさいと思ってたんだけど、もうなれちゃった。
     言ってることはうちのママとあんまりかわらないし。今のままでいいかな」

のび太(それにこのお兄さん、ジャイアンほどおうぼうじゃないけど
     ときどきすごくこわいからやっぱりあの人のままでいい……)

大和田「お袋に似てる、か。ハハハ、確かにいちいち口うるさいのは一緒だな!」


ドラ焼きとお茶を飲みながら世間話をする三人。


のび太「そういえば、ぼく大和田お兄さんのことあんまり知らないや。
     えっと、ボウソウゾクのお兄さんがいたんだっけ?」

ドラえもん「のび太くん!」

のび太「あっ……」

大和田「ああ? 前にその話したっけか? ……まあ、いいか。そうさ。俺には兄貴がいたんだ」

のび太(よかった。気がつかれなかった……)

大和田「強くて、男らしくて、弟の俺から見ても本当にかっけえ男だったよ」

ドラえもん「……だった?」

大和田「ああ、死んだんだ。事故でな」

ドラえもん・のび太「…………」


大和田「この話はシメっぽくなっちまうからヤメだ。そうだ。代わりに俺と兄貴の武勇伝なら
     いくらでも聞かせてやるぜ! 二人で散々暴れて荒らしまくったからよぉ!」


その後、大和田による武勇伝が延々と続く。


大和田「どうだ? すげーだろ? のび太、オメェももう少し大きくなったらうちに来るか?」

ドラえもん「のび太くんにはムリだよ。怖がりで根性なしだもん」

のび太「ひどい! ……まあ、じぶんでもムリだとおもうけどさ」

大和田「じゃあ、ここから出たら俺の後ろに乗せてやるよ!」

のび太「わあー、ほんとう?!」

ドラえもん「いいなぁ!」

大和田「ドラえもんもだ。順番に乗せてやるよ。『男の約束』だ」

のび太「男のやくそく……」

大和田「あ、どうした?」

のび太「ねえ、お兄さん……もし、もしもだよ? その男のやくそくのために、じぶんの
     大切なもののためにだれかをころさなきゃいけなくなったらどうする?」

大和田「!! のび太、おめぇ……!」

ドラえもん「のび太くん! あ、ごめんね。ぼくたち、その……コロシアイを止めるには
       どうすればいいかってさっきからずっと話してて! 別に大和田くんが
       人を殺しそうとかそんなこと思ってるわけじゃないから! 本当に!」

大和田「…………」


しばらく大和田は腕を組んで考え込んでいた。


大和田「……いや、いいんだ。確かに、このメンバーで一番殺りそうなヤツは
     間違いなく俺だろうしな。……ガキの前で言いたくはねぇが、正直今もブルってる」

ドラえもん「大和田くん……」

のび太「もしお兄さんがまちがえそうになったら、ぼくたちはなんていえばいい?
     なんて言えば、お兄さんはとまってくれる?」

大和田「あァ、そうだなぁ……そんな真似して、本当に兄貴が喜ぶと思ってんのか!
     目を覚ませ、大バカ野郎! とでも言ってくれや……そんな日が来ねえといいがな」

のび太「うん、ありがとう……へんなこときいちゃってごめんね」

大和田「……いや、いいんだ。気にすんな」


  ― 廊下 ―


ドラえもん「のび太くん、どうして突然あんなことを言い出したの?」

のび太「……ほら、あの人と大和田さんてにてるんじゃないかなって思って」

ドラえもん「似てる?」

ドラえもん「うん、だってほら……二人ともどうしても守りたいものがあるでしょ? そのために、
       さつじ……アレをしてしまうわけでしょ? だから、にてるんじゃないかなって」

ドラえもん「なるほど。まあ、一番参考になったかもしれないね」

のび太「あとは、時間まで待つだけだ…」


 ― 倉庫 00:40 ―


ドラえもん「バレなかった?」

のび太「うん、石丸さんはときどきおそくまでべんきょうしてるけど、キホン的に
     12時前にはぜったいねる人だから。ドラえもんこそだいじょうぶだった?」

ドラえもん「うん、大和田くんは最初のうちは夜更かし型だったけど、
       毎日早起きするようになって今は割りと早く寝てるからね」

のび太「あとはぼくたちのセットクがつうじるか、だね」

ドラえもん「うん」


舞園が腐川の部屋の扉の下に入れたメモは読まれる前に取り寄せバックを使って外に押し出し、
偶然を装ってのび太が発見した。今は二人で舞園を説得しようとしているという体裁を取っている。


ドラえもん「……来た!」


二人は倉庫の影に隠れる。


舞園「…………」

のび太「舞園さん」

舞園「っ! の、のび太くん……?!」

ドラえもん「ぼくもいるよ」

舞園「ドラえもんさんまで……こんな時間に二人共どうしたんですか?
    夜時間に出歩くのは禁止されていますよ。ただでさえ危ないのに」

のび太「あぶなくなんてないよ。だれもさつじんなんてしないもん」

舞園「……そんなの、わからないじゃないですか」ソワソワ


ドラえもん「誰か待ってるの?」

舞園「(ビクッ)い、いえ、そういう訳じゃ……」

のび太「腐川さんならこないよ」

舞園「?!!」

ドラえもん「このメモ……見覚えあるよね?」

のび太「ぼく、たまたま舞園さんが腐川さんのへやにこのメモをいれるの見ちゃったんだ。
     それで、わるいとおもったんだけど、ついきになって見ちゃった」


メモの内容は『私はあなたの秘密を知っています。話があるので今夜1時に一人で倉庫に
来てください』だ。舞園は別に腐川の秘密を知っている訳ではないが、適当に書いたことが
たまたま腐川にとって致命的な内容で、もしこのメモを読んだら無視出来なかったろう。


ドラえもん「どうして、こんな時間にこんな人気のない場所に腐川さんを呼び出したの?」

舞園「それは……二人っきりで話したいことがあったからですよ。
    女性同士でないと話せないことってあるじゃないですか」

のび太「それなら、ひるまにじぶんのへやで話せばいいじゃない」

舞園「こんな状況ですから、部屋に人を入れたりするのは抵抗があるんですよ。
    腐川さんも同じだと思います。だから外に呼び出したんです」

ドラえもん・のび太「…………」

のび太(あくまでシラをきるきだ!)

ドラえもん(しょうがない……この段階で諦めてもらえたら一番良かったんだけど……)

ドラえもん「じゃあ、その手に持ってる包丁はなんだ?!」

ドラえもん(本当はぼくたちの位置からは包丁は見えない。でも舞園さんは
       今すごく混乱してるから簡単に引っかかるはず……)

舞園「! これ、は……」


のび太「もういいのがれできないよ! ほんとうは腐川さんをころそうとしたんでしょう!」

舞園「わた、し……」


カラン……


のび太「さつじんなんて、そんなバカなまねはやめてよ!」

ドラえもん「そうだよ! 舞園さんが人殺しになんてなったらぼくたちは悲しい!」

舞園「……じゃあ、どうすればいいんですか? 私は……諦められないんですよ……」

舞園「ずっと! ずっと頑張ってきたんです! 夢を見続けるためには、昼でも寝ていない
    時でも夢を見続けないといけない! そうしないと夢は消えてしまうんです!」

舞園「消えるのは夢だけじゃない……私も、私達も消えてしまう! 忘れさられて
    しまうんです! その気持ちが、恐怖があなた達にわかるんですか?!」

のび太「わかんないよ! ぼくたちアイドルじゃないもん!」

ドラえもん「いくら夢が大事でも、そのために人の命を奪っていいのか?!
       その人の夢はいったいどうなるんだ!」

舞園「……わかって、るんですよ……そんなこと、頭ではわかってるんです!」


ガッ!


ドラえもん(包丁を拾いなおした! いけない、ヤケを起こしてるぞ!!)

舞園「そうですよね……見られてしまったんです。子供だからって命は平等ですよね……」

のび太「舞園さん、ダメだよ!」


ドラえもん「君にとって、アイドルはその程度の存在なの?!」

舞園「その程度? その程度ってどういうことですか?! 私は人殺しまで決意したのに?!」

ドラえもん「好きなものを人殺しで汚せるなんて、所詮その程度の存在なんだ!
       本当に好きだったら、そのために殺人なんて出来ないよ!」

舞園「……!」

のび太(効いてるぞ! 苗木さんにアドバイスを聞いておいてせいかいだった!)

のび太「そうだよ! アイドルが好きで、そのためにずっとがんばってきたんでしょ?
     なのにいまの舞園さんは、アイドルをいいわけにして外にでたがってるだけだよ!」

舞園「違う! 違う違う違う! 私は……!」

のび太「いいかげん目をさましてよ! そんな方法でかえってきて、ファンの人たちが
     ほんとうによろこぶと思ってるの?! 舞園お姉さんの大バカッ!!」

舞園「ファン……」

ドラえもん「ファンだけじゃない! ご家族とか友達とか、応援してくれた人がたくさん
       いたでしょ? これはその人たち全員に対する裏切り行為だよ!」

のび太「大好きな舞園お姉さんがひとごろしになるなんて、ぼくそんなのイヤだ!!」

舞園「みんな……お父さん……」


舞園の脳裏に様々な記憶が蘇る。


さやか『お父さんお父さん! さやか、オーディションに受かったよ!』

舞園父『凄いじゃないか! 流石お父さんの子だ!』

さやか『いつか日本一のアイドルになってみせるからね! ファンクラブの会員1号はお父さんだよ!』

舞園父『ハハハッ、それは嬉しいな。期待してるよ、さやか!』



希望ヶ峰スカウト時。


舞園『私一人だけ行くなんて出来ません……私達は全員で一つのグループです。
    なのに、私だけスカウトなんて……』

メンバー『なに言ってんのよ! さやかの歌あっての私達なんだよ!』

メンバー『さやちゃんのおかげで私達はここまで来れた。本当に感謝してる!』

メンバー『遠慮なんかしないで行ってきなよ! おめでとう、さやか!』

舞園『みんな、ありがとう……』


舞園「う、うう……」ポロポロ


舞園の手が震える。涙が溢れる。


舞園「でもっでも、私はっ! 戻らないと、帰らないと……!!」

のび太「人殺しになんてなったら、もうみんなのもとへは帰れないよ!!」

ドラえもん「みんなでここから出よう! みんなで帰るんだ!!」

のび太「お姉さんっ!!」

ドラえもん「舞園さんっ!!」

のび太「ぼくたちを信じて!!!」




舞園父『お前は父さんの誇りだ、さやか。ただでさえ仕事が忙しいのに寮生活になると寂しいが、
     さやかのためならお父さんは平気だ。行ってきなさい。無理だけはするんじゃないぞ』

舞園父『……体だけは、本当に本当に大事にしてくれ。行ってらっしゃい――』



舞園「うわあああああああああああああああああんっ!!」ボロボロボロ…


カランカラン……


舞園「ごめんなさい……ごめんなさい……」

ドラえもん「じゃあ、舞園さん。もう人殺しなんて馬鹿な真似はやめてくれるね?」

舞園「……はい。私が馬鹿でした……私、みんなのことを忘れて……危うく裏切ってしまう所でした……」

のび太「……ある人がいってたよ。まちがった方法でてにいれたものは、しょせんまぼろし
     なんだって。しかも、今までもっていたものまでぜんぶなくしてしまうんだ」

舞園「私も、なくしてしまう所でした。いえ、もうなくしたんです!
    人を殺そうとした私には、もうアイドルの資格なんてないんだから……」

ドラえもん「…………」

舞園「……明日の朝、全部みなさんに報告します」

のび太「そんなことしたらただじゃすまないよ! だまっていればいいじゃない!
     ぼくたちもこのことはヒミツにするからさ!」

舞園「ダメなんです。私達のやりとり……全てモノクマに見られています。
    下手に隠し立てすれば、きっと最悪の形で暴露してくるはずです」

のび太「そんな……」


舞園「ありがとう。のび太くん、ドラえもんさん。あなた達のおかげで、
    私は取り返しのつかないことをしないで済みました……」

舞園「失ってしまったものは大きいかもしれないけど……でも、これで良かったんです……」

ドラえもん「舞園さん……」

ドラえもん(仕方なかったんだ……犯行前に説得するのは不可能だったし。
       事件は食い止められたんだから、それでよしと思わなくちゃ……)

のび太「…………」

舞園「…………」

のび太「……舞園さん、わらってよ」

ドラえもん「のび太くん?」

舞園「笑う? どうして……」

のび太「ぼくもお姉さんのファンだからわかるけど、ファンは舞園さんのえがおが見たいんだよ。
     たしかに、こんなことがあったらファンのなんにんかはいなくなっちゃうかもしれない……」

のび太「でも、ぼくたちはこれからもずっと舞園さんのファンだから」

のび太「だから――わらってよ!!」

舞園「うう……うううう……」


ボタボタと涙を流しながらも、舞園は微笑んだ。


舞園「…………はい」ニコッ

ドラえもん「うん、キレイだよ」

のび太「やっぱり、舞園お姉さんはえがおがいちばんかわいいや!」

舞園「ありがとう、ございます……」

舞園(私はバカだった……舞台になんて立たなくても、スポットライトがなくても、
    私の笑顔で喜ぶ人がいるなら、私はその人達のアイドルになれるんだから……)

舞園「あなた達に会えて本当に良かった……」

ドラえもん「なにか言った?」

舞園「いえ! なんでもないです」

のび太「ふぁ~、きがぬけたらねむくなっちゃった……」

ドラえもん「もう夜も遅いからねぇ。あ、ここで寝たらダメだよ! ほら、頑張って」

舞園「ふふ、私がお部屋まで連れて行ってあげます」

のび太「むにゃむにゃ、ねむいよ~」




  ― ??? ―


「ねぇ、どうするの?」

「なにが?」

「せっかく事件が起こりそうだったのに防がれちゃったよ。そろそろ彼女を使う?」

「姉さんは本当に残念ですね。私様はただ人が死ねば良いのではないのです。通常なら到底
 殺人など起こさない人間が葛藤の末に自主的に人を殺し絶望する。その姿が見たいのです」

「人質を取られて泣く泣く殺すとかそういうお涙頂戴は最終手段なんだよ!
 幸い、舞園が動いたってことは他の奴らもだいぶ精神的に来てるはず」

「多分、もう一つ動機を落とせば事件が起こるんじゃないかな~。うぷぷ。うぷぷ。うぷぷぷぷ!!」


ここまで。

風邪で咳が止まらない。ゴホゴホ



  第七話 お兄さんとのやくそく(前編)


  ― 食堂 ―


苗木「舞園さん……今の話、本当……?」

舞園「全て、本当の話です」

山田「ひえええええ! とうとう事件が起こってしまうとは……!」

石丸「な、何故だ! 何故そんな馬鹿なことを……!」

舞園「私、実はあのDVDを見てしまったんです。それで、ここから出なきゃ……
    帰らなきゃって、強く思って……馬鹿なことを考えました」

桑田「え、う、ウソだろ……よりによって舞園ちゃんがさぁ……」

十神「他ならぬ本人が認めているのに嘘も何もないだろう。それで、何故犯行をやめた?」

舞園「見られていたんです。私が腐川さんの部屋に呼び出しのメモを挟んだのを」

腐川「あ、あ、あたしぃっ?! あんた……あ、あたしを殺すつもりだったの?!
    こ、これだから美人は信用出来ないのよ! この鬼、悪魔、アバズレ!」

桑田「お、おい! 一応殺すのやめたんだし、そういう言い方は……」

舞園「いいんです」

桑田「でもよ……」

舞園「私、桑田君に庇ってもらう資格なんてないんです。だって……
    私が最初に殺そうと思った相手はあなたなんですよ?」

桑田「えっ?!!」


舞園「桑田君の野球に対する複雑な気持ちを知るまで、私はあなたのことが
    大嫌いだったんです。思い上がりも甚だしい、嫌な人だと思ってました」

桑田「…………」

舞園「勿論今は本心を知っているのでそんなことは思っていませんが、
    私が桑田君に庇ってもらう資格なんてありません」

セレス「腐川さんを狙ったのは何故ですの?」

舞園「特に理由はありません。あまり親しくないのと、一番殺せそうだから。それだけです」

腐川「そ、そんな理由で人を殺そうとした訳?! グギギギ!」

十神「で、この女はどうする? 無罪放免とはいくまい」

葉隠「殺人犯をほっとくわけにはいかねえよなぁ」

苗木「……しばらく部屋に謹慎、でどうかな。鍵は僕らで預かって交代で監視すればいいでしょ?」

腐川「それだけじゃ甘いわよ! 椅子に縛りつけないと!」

江ノ島「そうだよ! また誰かを殺そうとするかもしれないじゃん!」

のび太「ひどいことはしないで!」

ドラえもん「舞園さんは改心したんだ! もう人殺しなんてしないよ!」

朝日奈「謹慎でいいんじゃない? 正直に言ってくれたんだし、あんまり厳しいのはちょっと……」

不二咲「そうだよ。舞園さんを信じてあげたいな」

大神「我が見張ろう。ならば文句はあるまい」

霧切「交代で見張ればいいと思うわ」


腐川はまだ何か言いたそうであったが、舞園はしばらく謹慎という処遇になった。



  ― 男子トイレ ―


ドラえもん「では、例によっていつもの」

のび太「さくせんタイムだね!」

ドラえもん「一つ目の事件は無事防げたわけだけど、これによって未来が変わったからね。
       次はアニメ通りにいかないかもしれないよ。気をつけよう」

のび太「とりあえずアニメだと次はどうなってたっけ。えーっと……そうだ。大和田さんだ!」

ドラえもん「ハァ、今から胃が痛いよ」

のび太「そっか。ドラえもんはおなじへやだもんね……」

ドラえもん「確かにさぁ、ちょっと短気なところはあるし横暴なところもあるけど
       いいところもたくさんあるんだよ」

のび太「おうぼうっていってもジャイアンにくらべたらぜんぜんいい人だしね」

ドラえもん「……まあ、ジャイアンに比べたら大体の人はいい人だけど」


この二人はジャイアンのおかげでだいぶ感覚が狂っている。


のび太「それに不二咲さんを助けないと! あんなしにかたは二人ともかわいそうすぎる……」

ドラえもん「うん、絶対に止めないと。さて、タイムテレビ~」

のび太「まず動機だよね」

ドラえもん「そう。……あ、あと今思い出したけどもう一つ気をつけることがあった」

のび太「なに?」

ドラえもん「大神さんだよ」


のび太「え、なんで? すごくいい人じゃない?」

ドラえもん「も~う、忘れちゃったの? 大神さんは内通者だったじゃない!」

のび太「あ、そうだった」

ドラえもん「アニメでは事件が起こったから大神さんが誰かを殺すことはなかったけど、ここでは
       ぼくらが事件を食い止めちゃったから、大神さんが動く可能性があるんだよ」

のび太「そっか……気をつけないと……」

ドラえもん「黒幕がどうするかだよなぁ。向こうの動きを知れたらいいんだけど……」

のび太「ねぇ」

ドラえもん「なんだい?」

のび太「タイムテレビで見てみればいいんじゃないの?」

ドラえもん「」

のび太「……ドラえもん?」

ドラえもん「あ」

のび太「…………」

ドラえもん「……それもそうだね」

のび太「もう! ドラえもんってへんなところでヌケてるんだから!」

ドラえもん「よし! じゃあぼくらが事件を食い止めたあたりを見てみよう」


<タイムテレビ視聴中>


ドラえもん「今回は内通者を使わないみたいだね」

のび太「でも、そのつぎはたぶん大神さんみたいだよ……どうすればいいかな?」


ドラえもん「それはその時考えればいいよ。とにかく、今は大和田くんをなんとかしないと!」

のび太「やっぱり殺しちゃうのかな……」

ドラえもん「見てみよう」


不二咲『大和田君は本当に強い人だもんね!』

大和田『……俺が強い? そいつは皮肉かよ?』

大和田『そうさ……お、俺は強い。強い強い強い強い強い強い! 誰よりも!!』

不二咲『大和田、君?』

大和田『お前よりも! 兄貴よりもだああああああああああッ!!!!!』


ドラえもん「見ちゃダメだ!」

のび太「消して!」


ゴシュッ! ……ピッ。


ドラえもん「消したからもう大丈夫だよ」

のび太「……ハァ。きっとすごくいたかっただろうなぁ。きぶんがわるい……」

ドラえもん「ぼくもだよ……あんまり過ぎる」

のび太「でもさぁ、今回のジケンはかんたんにふせげるんじゃないかな?」

ドラえもん「大和田くんのお兄さんが亡くなったっていう例の事故だね」

のび太「うん。あのジコをぼくらがとめてお兄さんのお兄さんをたすけちゃえばいいんだよ!」

ドラえもん「そうだね。じゃあ、思い立ったら即実行というわけで、行きますか」

のび太「タイムマシンだ!」


  ― 三年前 ―


ドラえもん「さて、準備をしないとね。タケコプター」

のび太「タケコプターと透明マントだけでいいかな」

ドラえもん「いいかい? 大和田君が反対車線に飛び出したらきみは右側から思いっきり
       引っ張って道路から出す。ぼくはお兄さんが飛び出ないように押さえる」

のび太「うまくいくかな……」

ドラえもん「心配ならクイックを飲んで動きを早くしておこう。大丈夫、きっと上手くいくよ」


真夜中、とある道路の上空。


のび太「いた! あれじゃない?!」

ドラえもん「急ごう!」


             ・

             ・

             ・


ブオオオブロロロロロロ……


大亜(……紋土のヤツ、焦ってるのかいつもより走りが荒いな。無茶しねぇといいが)

大和田(クソッ! 俺はまた兄貴に勝てねぇのか! 俺は結局兄貴の金魚のフンかよ。畜生……)

大和田(こうなったら……!)


バッ!


大亜「! 馬鹿ッ!」

のび太「今だ!」

ドラえもん「それっ!」


グイィッ!


大和田「うおっ!」

大亜「なんだッ?!(何かが俺を掴んで……?!)」


プップー! ドッシャアアアッ!


大亜「紋土ォオオオオッ!」


ブロロロロロ……キィィ! ガシャン! ダダダダダッ!

大亜は急転換すると道路脇に突っ込んだ大和田の側にバイクを乗り捨て慌てて駆け寄る。


大亜「大丈夫か?! 怪我はねぇなッ?!」

大和田「あ、ああ。大丈夫だ……」

大亜「馬鹿野郎ッ! 勝ちを焦って対向車線に飛び出す馬鹿があるかッ!」

大和田「(ビクッ)すまねぇ、兄貴……」

大亜「……まあ、無事で何よりだ」

大和田「勝負は……」


大亜「こんな状態で勝負もねえだろ。今日は終いだ」

大和田「でも……」

大亜「帰るぞ」

大和田「…………」


二人が去ってから透明マントを脱いで姿を現す二人。


ドラえもん「なんとか上手くいったみたいだね」

のび太「あー良かった。じゃあ、さっさと戻ろうか」

ドラえもん「うん」


             ・

             ・

             ・


のび太「これからどうしようか?」

ドラえもん「そうだ。舞園さんに会いに行ってみようよ」


舞園の部屋の前には苗木と大神が立っていた。


大神「ム、ドラえもんとのび太か」

苗木「どうしたの、二人共?」


ドラえもん「ちょっと、舞園さんの様子が気になって」

のび太「はなしてもいい?」

苗木「いいよ」

ドラえもん「苗木くんも一緒にどう?」

苗木「えっと、ぼくは……」チラ

大神「構わぬぞ。元々見張りは我一人で十分だろうしな」

苗木「ありがとう、大神さん」スッ、カチャ

のび太「おじゃましまーす」

舞園「あ、のび太君にドラえもんさん、苗木君も。何かあったんですか?」

のび太「ううん、そういうわけじゃないんだけど」

ドラえもん「様子を見に来たんだ。大丈夫?」

舞園「心配して来てくれたんですね。ありがとうございます!」

苗木「ずっと部屋に篭りっきりだと気も滅入るでしょ? 僕達が話相手になるよ」

舞園「私のせいなのに……気を遣わせてしまってすみません……」

苗木「舞園さんのせいじゃないよ! 全部モノクマが悪いんだ。舞園さんは思いとどまったんだから」

舞園「……いいえ。自分でやめたんじゃなくて、そこのお二人のおかげです。
    もしのび太君達がいなかったら、私は取り返しのつかないことをしていました……」

苗木「舞園さん……」

舞園「そうだ! お礼をさせてもらってもいいですか?」

のび太「え、なになに??」

ドラえもん「こら、のび太くん! お礼なんていらないよ。好きでやったことなんだし」


舞園「でもそれでは私の気が済まないので……そもそもこんなものがお礼になるのか
    わからないですけど、どうかお二人のために歌わせてくれませんか?」

のび太「え?! ぼくたちのためにトップアイドルの舞園さんがうたってくれるの?!」

舞園「はい。お二人のためだけの、舞園さやかファイナルステージです」

苗木「あ、僕ジャマかな?」アハハ

舞園「苗木君はいいんです。いつもお世話になってるので」

ドラえもん「でも舞園さん、ファイナルって……」

舞園「……アイドルとして歌うのはこれが最後です」

のび太「舞園お姉さん……」

苗木「本当にいいの、舞園さん? アイドルは舞園さんの子供の頃からの夢じゃ……」

舞園「そうです、人生を懸けてきた大切な大切な夢です……でも、だからといって
    人殺しをしてまで守るのは間違ってます。二人はそれを気付かせてくれました」

舞園「だから、アイドルとして歌うのはこれが最後……でも、舞園さやかとして
    歌うのはこれからも変わらないので、みなさん聞いてくれませんか?」

のび太「うん、ききたい!」

苗木「舞園さん……」

ドラえもん(切ないなぁ……まあ、脱出しても結局アイドルは諦めざるを得ないから
        早めに覚悟できたのは良かったのかもしれないけど。悲しいね……)

舞園「それでは歌います」


三人の拍手の中、舞園は力の限りパフォーマンスをした。
その最高の舞台が終わると同時に、校内放送が流れる。



モノクマ『校内放送、校内放送! 生徒諸君はただちに体育館に集合して下さい。
      エマージェンシーエマージェンシー……』


苗木「ま、まただ!」

舞園「……そんな、まさかまた恐ろしい何かを配る気なんですか?」

ドラえもん・のび太「…………」←わかっているので冷静


ガチャッ。


大神「今の放送、聞こえたか?」

苗木「あ、大神さん。舞園さんは……」

のび太「たぶんぼくたちみんなをよんでるから、つれていったほうがいいよ」

大神「我も同感だ」

苗木「そうか……じゃあ、行こう。みんな」


  ― 体育館 ―


腐川「こ、今度は一体なんだって言うの?!」

山田「まさかまたなにか妙なことが起きるのでは?!」

石丸「ふ、腐川君に山田君! ここここんな時は落ち着いてだな!」

桑田「おめーがまず落ち着けよ」

のび太「どうせまたあたらしいドウキじゃないの?」

ドラえもん「ぼくもそう思うよ」

大和田「ガキの方が落ち着いてやがる……」

葉隠「きっと最近の子供はゲーム脳なんだべ」


十神「さて、今度はどんな動機を持ってくるのやら」フッ

モノクマ「はいはーい。みなさんお待たせー!」

苗木「待ってなんていない! 僕達を呼び出して一体なんの用だ!」

モノクマ「もーお、苗木君たら短気なんだから。じゃあ行っちゃう? 行っちゃう?」

モノクマ「昨晩いよいよ事件が起こりかけたようですね? その時は邪魔が入ったようだけど、
      オマエラの中には外に出たい気持ちが見え見え隠れ、見え隠れ。むしろ丸見えな訳だ」

モノクマ「なので、僕はその気持ちを後押ししてあげようと思います!」スッ

霧切「今度こそコロシアイを起こすために、もう一度動機を配るということね」

山田「今回は封筒ですか」

朝日奈「また私達の名前が書いてあるよ!」

モノクマ「あ、そーれ」バサッ


宙にバラまかれるそれぞれの封筒。


モノクマ「今回のテーマは恥ずかしい過去や誰にも知られたくない秘密です。
      今から24時間以内に事件が起こらなければ、この秘密を世間に大公開ー!」


ナ、ナンデコレガー?!
キャーウソデショー?!
アリエネー!


のび太「ぼくたちのぶんはないの?」

モノクマ「君達は元々の生徒じゃないからね。まあラッキーだと思えば?」

ドラえもん「そもそものび太くんは知られて困る秘密なんて元々ないじゃないか。テストで
        いつも0点なのも運動がびりっけつなのも周知の事実だし、趣味が昼寝、
        特技があやとりで女の子みたいだとかも別に隠してないだろう?」


のび太「そ、そうだけどさぁ……」

モノクマ「……君さぁ、若いんだからもうちょっと頑張れば? なんかもう色々と酷すぎて……」

のび太「モノクマに心配されたー!」ガーン

山田「まあ、その……ガンバ!」

セレス「あなたも人のことは言えませんが」

ドラえもん(そういえば死んでた組の動機は知らないんだった。あの二人なら
       大丈夫だと思うけど、念のために確認しておこうかな)チラ

ドラえもん「ん?」

大和田「…………」ワナワナ

ドラえもん「あれ……?」

石丸「み、みんな聞いてくれ! こんなものがあるからコロシアイなど起きるのだ!
    ならば今ここで先に言ってしまおうと思うのだが……」

苗木「いいね、そうしようよ!」

朝日奈「私も賛成。恥ずかしいけど仕方ないし」

桑田「え~マジかよ?」

大神「やむを得んだろう」

石丸「では、言い出しっぺである僕から……」

モノクマ「…………」スッ

江ノ島「(あ、合図だ!) もう耐えられない! アタシ、もうこんな生活イヤなんだけど!!」

苗木「江ノ島さん?」

大神「急にどうしたのだ、江ノ島?」


江ノ島「モノクマだか学園長だか知らないけど、いい加減にしてくんない?」

江ノ島「アタシはもうイヤだから! もう呼び出しとかかけられても来ないし
     コロシアイとかなんとかはあんた達だけで勝手にやってよ!」

モノクマ「そんな勝手は許さないぞ! どうしてもと言うなら僕を倒して行け!」

のび太「あれ?(この流れどこかで見たような……)」

ドラえもん(た、大変だ! 予定が変わったんだ! ニセの江ノ島さんが殺されちゃう!)

ドラえもん「ま、まあまあ落ち着いてよ!」

のび太「そ、そうだよ! さからったらころされちゃうよ!」

江ノ島「ハ? なによ、あんた達……邪魔なんだけど! どきなさいよ!」

のび太「そういうわけには」ガシッ

ドラえもん「いきませんよ」ガシッ

江ノ島「ちょ……なにやってんの?! アタシはあのウザいヤツに一発くらわせなきゃ……」

のび太「お、大神さん! たすけて~!」

大神「ム! 江ノ島お主、モノクマに攻撃するつもりだったのか?!」

江ノ島「え? だって一発くらい平気っしょ? こっちだって不満が溜まってるんだし」

霧切「賢明な行動とは言えないわね。初日の爆発を見ているでしょう?
    モノクマにとって私達を殺すのは容易いことなのよ?」

江ノ島「……とにかく! それじゃアタシの気がすまないっての!」バッ

ドラえもん・のび太「ああっ!」

舞園「! 江ノ島さん、いけません!」

苗木「危ないっ!」



全員の制止の声も聞かずにモノクマを踏み付ける江ノ島。


モノクマ「ムギュッ!」

江ノ島「フン、ほらたいしたことないじゃない。いい気味だわ!」

モノクマ「学園長に対する暴力は校則違反だよ! 助けて~グングニルの槍~!!」


カシャッ。


江ノ島「え」

大神「いかんっ!」


バッ! バシュバシュバシュバシュッ!


複数の槍が一瞬前まで江ノ島のいた所を貫く。


江ノ島「う、うそ……なによこれ……」

朝日奈「さくらちゃん! 江ノ島ちゃん!」

苗木「江ノ島さん! 大神さん! 怪我は?!」

のび太「だいじょうぶ?!」

大神「我は掠っただけだ。江ノ島よ、お主は無事か?」

江ノ島「…………」パクパク

霧切「大丈夫、ショックで放心しているけど怪我はないわ」


葉隠「ひ、ひぃぃぃ! もしオーガが助けてなきゃ、江ノ島っちは今頃串刺しに……」

腐川「なんなのよ……なんなのよぉぉぉ?!」

モノクマ(あー、邪魔な残姉消すの失敗しちゃったなー。まあでもみせしめって
      意味なら成功してるからいいか。あいつら超ビビってるみたいだし)

モノクマ「今回は運が良かったね! でも次はないから。オマエラも気をつけるように!」

桑田「マジかよ……」

苗木「……とりあえず二人が無事で良かった」

石丸「向こうはどうやら本気のようだな……やはり秘密を告白してここは事件防止をした方が……」

大和田「待てよ!! どうせ明日には言うんだろ? なら、今言う必要はねえじゃねーか」

不二咲「う、うん。石丸君には悪いけど、ちょっと心の準備がほしいかな……」

腐川「そ、そうよそうよ! あんたにはデリカシーってもんがないの?!」

石丸「しかし、コロシアイを防ぐためには……!」

十神「まだわからんのか? 無理やりやらせても今度はそれが火種になるだけということに」

霧切「あなたは公開しても問題ない秘密なのかもしれない。でも他の人がそうだとは限らないのよ」

石丸「ヌゥゥ! ……わかった。それもそうだな。では明日言おう。とりあえず解散だ」


ゾロゾロ……


ドラえもん「のび太くん」

のび太「どうしたの、ドラえもん?」

ドラえもん「ちょっと……」



  ― 男子トイレ ―


のび太「大和田さんのお兄さんもたすけたし、江ノ島さんもたすけた。なにかもんだいあるの?」

ドラえもん「いや、ね。胸騒ぎがするんだ。念のためにタイムテレビで今後を見ておこうよ」

のび太「きにしすぎじゃない?」


二人はタイムテレビで今日の深夜を見てみる。そこには……


大和田『俺は強い強い強い……兄貴よりもだー!!』グシャッ!


不二咲を襲う大和田の姿があった。


ドラえもん・のび太「えええええええええええっ?!」


ここまで。

このSS三大チートアイテムはタイムマシン、タイムテレビ、透明マント

ソノウソホントじゃね

>>181
ソノウソホント強力だけど、使ってる回数が断然透明マントの方が上なので


ごめんね。家事をしてたらすっかり忘れてた

再開



  第八話 お兄さんとのやくそく(後編)


ドラえもん「ああ、やっぱり……大和田くんの顔色が悪かったからこんなことじゃないかと思ったよ……」

のび太「そんな……どうして?! お兄さんはたしかにたすけたよね?!」

ドラえもん「大和田くんには悪いけど秘密を見せてもらおう」


二人はタイムテレビを操作して大和田の秘密を盗み見ることにした。

カチッカチッ……パッ。


のび太「えっと、なになに?」

ドラえもん「『本当は勝負に負けたのに勝ったと騙している』。……ああ! そういうことか」

のび太「どういうこと? まけたのに勝ったってウソをついたの?」

ドラえもん「いや、二人の性格から考えてきっとお兄さんも大和田くんもあの勝負の
       結果をみんなに言わなかったんだよ。それでいつのまにか色々と噂が流れて、
       それを否定しなかったから結果的にみんなを騙してしまったことに……」

のび太「ああ、なるほどね」

ドラえもん「どうしよう……お兄さんを助ければ全部解決すると思ったのに……」

のび太「かんたんじゃない。今度はちゃんと大和田さんを勝たせればいいんだよ!」

ドラえもん「大和田くんてああ見えてけっこう繊細だからなぁ……それで済むといいけど」

のび太「すむよ! だってまけたのにリーダーをやってるからはずかしいんでしょ?
     だったら勝ってどうどうとリーダーをやればいいじゃない!」

ドラえもん「それもそうだね。じゃあ次は大和田くんを勝たせてみようか」


タイムマシンで再びあの夜に戻ってくる。


のび太「で、どうやって勝たせるの?」

ドラえもん「そのための道具は色々あるけどね。まあ今回はお手軽にソノウソホントでいくか」

ドラえもん「『大和田くんはすごい速さでお兄さんを追い抜いて勝負に勝った』」

大和田(クソッ! 俺はまた兄貴に勝てねえのか……ん?)


ビュオン!


大和田「な、なんだぁ?!」


ビュオオオオオオオオオオッ!


大亜(どうした、紋土のヤツ? ここで抜いてくるとは……そもそもあの速さはなんだ……?)


勝負後。


大亜「フッ、言い訳はしねえ。俺の完敗だ。人が変わったみたいにいい走りだったぜ」

大和田「お、おう……」

大亜「これなら暮威慈畏大亜紋土も安泰だな。俺も安心して引退出来るってもんだ。……頑張れよ」

大和田「……あぁ」


二人は並んで走り去って行く。


のび太「これで大丈夫じゃない?」

ドラえもん「よし。早速タイムテレビで見てみよう」


大和田『俺は強い~兄貴よりもだー!』グシャ


ドラえもん・のび太「…………」

のび太「ちょっと……」チラリ

ドラえもん「動機を見てみようか。……『マグレで勝ったのを黙っている』」

のび太「マグレって……まあたしかにマグレだけど。むしろズルだけどさぁ……」

ドラえもん「本当は実力で負けてるのに道具で無理に勝たせちゃったからね。
       ちゃんと納得出来る勝たせ方をしなくちゃダメなんだ」

のび太「メンドくさい人だなぁ。勝ったんだからそれでいいじゃない」

ドラえもん「大和田くんは男気があるんだよ。誰かさんみたいにすぐ道具に頼ったりしないの」

のび太「どうせぼくはなき虫で根性なしですよーだ」

ドラえもん「さて、次はどうするかな」


更に一ヶ月ほど過去へ行く。


ドラえもん「実力で勝つには勝負の前に大和田くんを鍛えなくちゃいけない」

のび太「きたえる道具はたしかいろいろもってるよね」

ドラえもん「持ってることは持ってるけど、本人にバレないようにしなくちゃいけないからね。
       うーん、これなんかいいんじゃないかな。夢ふうりん~」パパラパッパパー

のび太「えっと、どんな道具だっけ?」

ドラえもん「眠っている人間を呼び出して操れるんだ。寝ている間に鍛えれば
       見つからないし、ちゃんと特訓してるから本人も納得出来るでしょ?」

のび太「なるほど、じゃあさっそくやろうよ!」



チリーン。


大和田「ぐがー」

のび太「でてきたよ」

ドラえもん「よし! 真夜中の秘密特訓だ!」


ブロロロロロロロ……


のび太「それにしてもさぁ、ドラえもん」

ドラえもん「なんだい?」

のび太「これってまさしく『いねむりうんてん』だよね?」

ドラえもん「……細かいことは気にしちゃいけないよ」


勝負当日。


ドラえもん「さあ! 特訓の成果は出たかな?」

のび太「がんばれー!」

大和田(最近なんか知らねえが、どんどん実力が伸びてる気がする。今なら俺も……)

大亜(紋土の野郎、ちょっと見ねえうちに実力つけやがって……フッ、いい勝負が出来そうだ)


ブロロロロロロロ……!



             ・

             ・

             ・


勝負の結果、僅差で大和田が勝利した。


のび太「やった! ギリギリだけど勝った! こんどはちゃんとじぶんの力で勝ったよ!」

ドラえもん「よし! 今度こそ!」ピッ


大和田『』グシャ


ドラえもん・のび太「えええええええええええええええっ?!!」

のび太「なにこれっ?! どういうこと?!」

ドラえもん「わからないよ! ぼくもなにがなんだか……!」

のび太「そうだ! どうきは?!」

ドラえもん「ええと、『兄を超えられないことを気にしている』……えっ」

のび太「こえられないって………しょうぶにはちゃんと勝ったじゃない!」

ドラえもん「わからない……ただ言えるのは、勝負の結果だけが問題じゃないんだ。
       大和田くんのお兄さんへのコンプレックスはもっと根深い所にあるんだよ」

のび太「ああもう……手のかかる人だなぁ……」

ドラえもん「こうなったら大和田くんをよく観察して、徹底的に可能性を潰していくしかない!」

のび太「はぁ、なんとかなるといいけど……」

めんどくさい男だな



その後、二人は様々な可能性を試し歴史を改変してきたのだが、
いくら挑戦しても大和田が不二咲を殺すという結果は変わらないのであった……


大和田『俺はつよ……』


ブチッ(タイムテレビを消した音)。


のび太「もうなんなのこの人?! 不二咲さんにうらみでもあるんじゃないの?!」

ドラえもん「うーん、なにがいけないんだろう。ちゃんと鍛えて実力もつけたし、
       バイクだけじゃなくてケンカとか他の技術も全部鍛えなくちゃならないのかな……」

のび太「それじゃいつまでたってもおわらないよ! いっそ不二咲さんが
     大和田さん以外の人をたよるようにしてみたら?」

ドラえもん「それはあまりやりたくないんだよね。歴史を大きく変えすぎるとどんな副作用が
       現れるかわからないし、今後の人間関係にも影響が出そうだから……」

のび太「そんなこといって、ころされるよりはずっとマシでしょ! もう大和田さんはあきらめて……」

「おい」

ドラえもん・のび太「?!」ビクッ

「お前らか、最近やたら俺の周りを嗅ぎ回っていたのは」

のび太「あ……」

ドラえもん「あなたは……!」


コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛


大亜「…………」


突然声をかけられ飛び上がった二人が振り向いた先には、黒髪の大和田こと大和田大亜が立っていた。


ドラえもん・のび太「ひ、ひええええええええっ?!」


大亜「……まさかガキだとは思わなかったが。それに、そっちの丸いのはなんだ? 着ぐるみか?」


┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨


ドラえもん(うっ……さすがお兄さん。大和田くんには悪いけど迫力がダン違いだ!)ガタガタ

のび太(顔は大和田さんとそっくりだけど、ふんいきがぜんぜんちがう! も、もれそう……)ブルブル

ドラえもん「ぼ、ぼくたちはですね……そ、その、あの、えっと……」

のび太「うわーん! ぼくたちころされちゃうよー! わーん!!」ビエーン!

大亜「おい……いくら俺が暴走族の頭(ヘッド)だろうが、ガキに手を挙げたりはしねえよ」

のび太「うそだー! きっとひどい目にあわされるんだー! こわいよー!! うわーん!!」

大亜「…………」


大亜は顎に手を当てて考えると、ドカッと座り込んで二人に目線を合わせた。


大亜「俺は一度言ったことは絶対に守る。お前らに暴力を振るったりはしねえ。
    ほら、俺の顔をよく見ろ。嘘を言っているように見えるか」ニッ

のび太「あ……」

ドラえもん「笑った顔が大和田くんと同じだ……」

大亜「お前ら、さっきも大和田って言ってたがそれは俺じゃなくて紋土のことか?
    カチコミに来たワケじゃねえだろうし……紋土の知り合いか何かか?」

ドラえもん「えっと、その……」

のび太「ぼくたち、未来からきた大和田さんの友だちです」

大亜「あ? 未来だ?」


大亜(なんだ? そういうごっこ遊びか何かか?)

ドラえもん「のび太くん!」

のび太「もうほんとうのことぜんぶいっちゃおうよ!」

ドラえもん「でも、それは!」

のび太「だってあれだけやったのにダメだったし、大和田さんのことはぼくたちより
     お兄さんのほうがよく知ってるでしょ? もうぼくたちだけじゃ……」

ドラえもん「うーん……そうだね。仕方ないか……信じてもらえるかわからないけど、
       全部説明します。お兄さんは落ち着いて聞いてください」


             ・

             ・

             ・


大亜「……信じられねえな。未来では世界が滅亡してるだとか、紋土が希望ヶ峰に入学して
    閉じ込められた挙げ句仲間とコロシアイさせられてるとか……トドメは人殺しか」

ドラえもん「ですよね……」

ドラえもん(それにしても随分と落ち着いて聞いてくれたなぁ。大和田くんだったら
       途中で怒りだしそうな内容なのに。全体的にドッシリしてるというか
       余裕があるというか。きっと器が大きいんだろうね)

ドラえもん(……正直、大和田くんがコンプレックス感じちゃうのもわかる気がする)

大亜「今言った話が本当だというなら、証拠を見せてみろ」

のび太「しょうこ?」


大亜「お前らが未来から来たってんなら、未来の道具か何か持ってるだろ?」

ドラえもん「あ、そうですね。じゃあとりあえず……スモールライト~! これは物の
       大きさを自由に変えることが出来るので、のび太くんを小さくしてみます」


ピカー! シュルシュルシュル……


大亜「ッ?! ……まさか、マジだとはな」

大亜(信じられん。本当に人間が縮みやがった。これはトリックなんてチャチなもんじゃねえ……)

ドラえもん「どうでしょう?」

大亜「信じたくはねえが、証拠を見せられて信じねえ訳にはいかねえだろうが……」

大亜「……詳しく話せ。お前らが知ってること全部だ」


             ・

             ・

             ・


ドンッ!


ドラえもん・のび太「ヒッ!」


話を全て聞いた後、大亜はこめかみに青筋を浮かべて地面を殴った。


のび太「ご、ごめんなさ~い!」

大亜「いや、すまねえ。お前らに怒った訳じゃねえんだ」


ドラえもん「じゃあ、なにに腹を立てたんですか?」

大亜「決まってる。そんな糞みてえなことを考えた黒幕と、みすみすそれに乗っちまった紋土だ」

大亜「ダチを……それもテメエを信頼して大事な秘密を打ち明けてくれた親友をくだらねえ
    コンプレックスなんざで殺しやがって……しかもそれを正直に打ち明けられず
    他の仲間も殺しかけただ? 自分を兄弟とまで呼んでくれた親友を泣かせただ?」

大亜「あいつがまさかそんな女々しい男だったとはな……正直失望したぜ」

ドラえもん「あ、で、でも、いいところもたくさんあるんですよ!」

のび太「うん! ぼくたちとよくあそんでくれるし、いつもめんどうを見てくれます」

大亜「……そうか」グワシャ

ドラえもん・のび太「わっ」


大亜は立ち上がると、二人の頭に手を置いた。ゴツゴツとした大きな力強い手だった。


大亜「……お前ら、赤の他人の俺達を助けるために遠くから来て、色々してくれて
    ありがとよ。今まで二人っきりで大変だったろ。……あとは俺に任せな」ワシャワシャ

のび太「どこへいくんですか?」

大亜「なに、お前らはそこで待ってろ。俺があの野郎の女々しい根性を叩き直してきてやる」ザッザッ!

のび太「どうする、ドラえもん?」

ドラえもん「待ってろって言われたけどやっぱり気になるから、透明マントを
       つけてお兄さんの後を追いかけよう!」



               ◇     ◇     ◇


紋土「なんだよ、兄貴。急に呼び出したりして」

大亜「……紋土、単刀直入に聞く。お前、俺にコンプレックスを持ってんのか?」

紋土「?! な、なんで突然んなこと聞いてくるんだよ……」

大亜「理由なんざどうでもいい。どうなんだ?」

紋土「いや、まあ、その……」

大亜「歯切れが悪りぃな。やっぱりそうなのか」

紋土「だ、だってよ……兄貴はなにやっても俺より上だし、実際俺から見ても
    すげえって言うか、ほんとカッコイイ男の中の男って感じだし……」

紋土「……俺じゃ到底敵わねえよ」

大亜「そうか、紋土……歯ァ食いしばれや!」


ドゴォッ!


のび太「あ、ああっ!」

ドラえもん「大和田くんが殴られちゃった!」

紋土「ゲホッ! い、いきなりなにしやがる?!」

大亜「俺は一人前の男としてお前を教育してきたつもりだったが、最後の仕上げが
    足りなかったみてぇだな。くだらねえ劣等感なんか持ちやがって」

紋土「くだらねえ? くだらねえだと? 俺が今までどんだけ悩んでたと思ってんだよ?!
    偉大な総長の後を継ぐことになって、周りからは弟だから二代目なんだろって
    目で見られて……どんだけプレッシャーがあったと思っ……」


ズガァッ!


大亜「……それがくだらねえって言ってんだよ」


紋土「こ、この……!」


バシィッ!

大和田も反撃に転じるが、その拳は容易く大亜に止められた。


大亜「大の男が周りの目をうじうじ気にしやがって……オメーはオメーだろうが」

紋土「兄貴には……兄貴には俺の気持ちなんてわかんねーよ!!」

大亜「…………。どうやら相当重症みてえだな。いや、弟だと思ってお前のそういう
    情けねえ面から俺が今まで目を背けてきただけかもしれねえ」

大亜「来いよ、紋土。泣き言は許さねえ。オメーの不満を今ここで全部ぶつけてみろ」

紋土「いきなり人を殴ったと思えば偉そうなこと言いやがって……言われなくてもやってやらぁ!」


ドガッ! バキッ! ズドンッ! ゴシャッ! グオッ!


ドラえもん「殴り合いを始めちゃったよ……」

のび太「うわあ、ジャイアンがかわいく見える……。やっぱりお兄さんつよいね」

ドラえもん「でも大和田くんも本気になったからやられっぱなしじゃないよ。すごい戦いだ」


三十分後。


紋土「ゼェ……ハァ……ゼェ……ハァ……」

大亜「……ハァ……ハァ」


そこに立っているのは大亜だけだった。紋土は仰向けに倒れている。


紋土「くっそ……やっぱり、勝てねえじゃんか……」

大亜「……泣き言は許さねえって言ったはずだぞ」


紋土「だって、だって俺はどうすりゃいいんだよぉ……」

大亜「紋土……これを見ろ」


大亜は紋土の頭をガシッと掴んで傷ついた自分の顔の前に持ってくる。


大亜「見ろよ。オメーにこんだけやられて男前が台無しだぜ」

紋土「…………」

大亜「俺に勝てねえだ? そんなこと誰が決めた。周りが言ってるからか?
    周りが黒だって言ったらオメーの目は白も黒に見えんのか?」

大亜「オメーが俺に勝てねえんじゃない。オメーが俺に勝てねえって勝手に思い込んでるだけだ」

紋土「……!」

大亜「最近の走りはお前の勝ちだ。ステゴロだって、今は俺の方が上だがそのうち
    どうなるかわからねえ。他にもお前にはお前しか持ってないもんが色々あんだろ」

大亜「俺になろうとすんじゃねえ。人の猿真似をするからいつまで経っても上手くいかねえんだ。
    お前はお前だけのもんを探せ。チームのヤツらもな、お前がただ俺の弟だからって理由で
    ついてきてんじゃねえんだぜ……俺とお前で作ったチームの仲間をもっと信じろよ」

紋土「兄貴……」

大亜「なんで突然俺がこんなことを言い出したか教えてやる。名前は言わねえが、お前のことを
    とても心配してるあるダチが教えてくれたんだ。いつかお前がやらかすんじゃねえかってな」

大亜「あんないいダチに慕われてる……それはお前自身の実力だろうが。心配かけてやるな」

紋土「…………」

大亜「少し、そこで頭冷やしてけ」

紋土「…………」


ザッザッザッザッザッ……


大亜(何が兄貴には敵わねえだ。少し見ねえうちに随分強くなりやがって)フッ


大亜「……結構やられたな」ペッ


そう言って、大亜は口の中の血を地面に吐き捨てた。


のび太「お兄さん」

ドラえもん「大亜さん」

大亜「……何もねえトコから急に現れたな。それも秘密道具とかいうヤツか?」

のび太「うん、これは透明マントっていって……」

ドラえもん「それより大丈夫ですか?! すごい怪我ですけど」

大亜「なんだ、待ってろって言ったのに全部見てたのか。この程度のケンカならよくある。
    たいしたこたぁねえ。それより、見苦しいモンを見せちまったな」

のび太「そんなことないです! なんかその、すごかった……」

ドラえもん「大和田くん大丈夫かな?」

大亜「大丈夫だ」

のび太「どうしてわかるんですか?」

大亜「兄弟だからな。わかるさ。身内のヒイキ目に見えるかもしれねえが、
    あいつはこの程度でへこたれるタマじゃねえ。必ず立ち上がってくる」

ドラえもん「良かった! じゃあ、今度こそ問題ないかなぁ」

大亜「タイムテレビっつったか? 未来が見れる機械は。……俺も見てもいいか?」

のび太「もちろん!」


ドッカリと三人はタイムテレビの前に座る。


大亜「さて、見せてもらうぜ。紋土……」

ドラえもん・のび太「ドキドキ」

のび太(これでダメだったらどうしよう……)

ドラえもん(お兄さんも見てるんだ……頼むよ、大和田くん!)


不二咲『僕ね、大和田君みたいに強くなりたいんだ!』

大和田『ああ? 俺みたいに?』

不二咲『うん! だってそうしたらもう守られなくて済むし、みんなを守れるし……』

大和田『…………』

不二咲『僕なんてこんなちっぽけな秘密でうじうじ悩んじゃって……だから強い
     大和田君に憧れてるんだ。大和田は強いから、秘密なんてバラされても
     へっちゃらだよね? 僕も大和田君みたいに強くなれたら……』


のび太(ここからだね……)ギュッ

ドラえもん(お願いだ、大和田くん……!)


大和田『…………』

大和田『不二咲……オメーはとんでもねえ勘違いをしてるぞ。俺は本当はそんなに強くねえ』

不二咲『……え』


ドラえもん・のび太(え?)



大和田『今もこの状況にめっちゃビビってるし、俺なんて兄貴に比べたら全然だ。
     ホント、ここにいるのが俺じゃなくて兄貴だったら頼りになったろうにな……』

不二咲『大和田君……?』

大和田『でも、ないものねだりしても仕方ねえ。不二咲、よく聞いてくれ。俺はな……
     俺なんかよりずっと強くてすげえ兄貴に、いつもコンプレックスがあったんだ』

不二咲『…………』

大和田『なんとか兄貴を超えたくて、出来なくて、苦しかった。ある時、そんな俺の
     女々しい所を兄貴に見抜かれてこう言われたんだ。“俺になろうとすんじゃねえ。
     人の猿真似をするから上手くいかねえんだ。お前はお前だけのもんを探せ”ってな』

大和田『オメーが俺みたいになれるワケねーだろ。その代わり俺がオメーみたいに頭が
     よくなれるワケもねえ。ないものねだりするより、今自分が持ってるいいものを見ろよ』

不二咲『でも僕は……』

大和田『オメーは俺に秘密を打ち明けて、今だってこうして特訓してるじゃねえか。
     俺なんて往生際が悪いかもしれねえが、いまだに言いたくねえよ、秘密』

不二咲『…………』

大和田『もっと自分に自信持てよ。過去の弱い自分を乗り越えるなんて、最高に男らしいじゃねえか!』

不二咲『男らしい? ……僕が?』

大和田『ああ、今のお前は男らしいぜ!』ニカッ

不二咲『……ありがとう、大和田君。僕、ちょっと自信が持てた気がする』

大和田『よし! なら続きだ。スパルタで行くからな!』

不二咲『うん!』


ドラえもん・のび太「…………」

大亜「どうだ? これで終わりか?」

ドラえもん・のび太「や」

大亜「や?」



ドラえもん・のび太「やったああああああああああああっ!!」


二人は手を取り合って小躍りする。


のび太「やった! やったよ! ぼくたち、とうとう不二咲さんをすくえたんだ!」

ドラえもん「ここまで長かったねぇ! いやー良かった良かった!!」

大亜「そうか。紋土は殺さなかったか……」フゥー


流石の大亜も緊張したのか顔から冷や汗が流れていた。


のび太「ありがとう、お兄さん! ぜんぶお兄さんのおかげです!」

ドラえもん「本当にお世話になりました!」

大亜「いや、いいってことよ。未来に戻ったら紋土によろしくな」

ドラえもん「はい!」

大亜「困ったことがあればいつでも来いや。俺達はもうダチだからな。どんなことでも助けてやる」

大亜「“男の約束”だ」

のび太「うん! 男の約束だね!」

ドラえもん「ありがとうございました。未来でまた会いましょう。それではさよなら!」

のび太「さよーならー!」


タケコプターをつけた二人は、離れた場所に隠してあるタイムホールに飛んでいく。


大亜「達者でな。……ハア、行っちまった」


小さな友人達が去って行った空を仰ぎながら、大亜は静かに呟いた。


大亜「――また会おうぜ、兄弟」


ここまで。

大亜はダンガンロンパ本編では回想でちょろっと出るだけですが
喧嘩番長brosというゲームにもカメオ出演しています。台詞は多くないのですが
その短い台詞で男らしい格好いい男だというのは伝わるので好きですね。


>>194
人を殺しちゃうくらい根深いコンプレックスですからねぇ
面倒くさい男です。でも人間味がありますよね



  第九話 石丸くんと友だち


のび太「さて、ひさしぶりにもどってきたわけだけど」

ドラえもん「とりあえず今日と明日は事件は起こらないようだからのんびり出来るね」

のび太「うん。ふぁ~、ぼくつかれちゃった。へやにもどるね」

ドラえもん「うん、おやすみ」


  ― 石丸の部屋 ―


のび太「ただいまー」

石丸「……おかえり、のび太君」

のび太「あれ、お兄さん元気がないね? どうかしたの?」

石丸「……僕だってたまには落ち込んだりするのだよ」

のび太「えーっと……ハッ」

のび太(石丸さんがもってるのはあのフウトウだ! ……そういえば、なにがかいてあるんだろう?)

のび太「お兄さん……それになにがかいてあるか、きいてもいい?」

石丸「…………」

のび太「ぼくのこと、まさかころしたりとか……」

石丸「とんでもないっ!! 何があってもそれだけは絶対にありえないさ! 安心してほしい」

のび太「そう、よかった」

石丸「…………」

のび太「…………」

のび太(気まずいよ! いつもうるさいのにしずかにしないでよ!)


石丸「すまない。心配をかけてしまうな……」

のび太(まったくだよ。でも、なんだかまいってるみたいだしなぁ)

のび太「おもいきってだれかにそうだんしてみれば? はなせばラクになるかもしれないよ?」

石丸「風紀委員である僕がクラスメイトを不安にさせるような言動は出来ないだろう!」

のび太「あ、ごめんなさい……」

石丸「いや、いいんだ。声を荒げてすまない……相談する相手もいない僕が悪いのだから」ボソッ

のび太「え、今なにかいった?」

石丸「何でもない。僕がいるのにこんなに早く部屋に戻ってきたということは、
    昼寝がしたいんだろう? 僕は静かにしているから好きに寝るといい」

のび太「ど、どうも……」

のび太(うわ……いつもだったらひるねなんてナマケモノのすることだ! 勉強したまえ!って
     すごくうるさいのに、なにもいわないなんて……これってかなりマズイんじゃ……)

のび太(とりあえずねむいから、ひとねむりしてからドラえもんのところに行こう)ムニャムニャ


                  ╂


睡眠を取って休んでから、のび太はドラえもんを男子トイレに呼び出した。


ドラえもん「どうしたの、のび太くん? 今日は休むんじゃなかった?」

のび太「じつは、こんなことがあって……」


かくかくしかじか


ドラえもん「ああああっ!」

のび太「ど、どうしたのっ?!」


ドラえもん「ぼくは今大変なことに気付いてしまった……」

のび太「な、なに?」

ドラえもん「ぼくたちが未然に事件を防いでしまったから、現在解放されているフロアは、
       一階だけ。それも保健室と大浴場はまだ閉まってる」

のび太「それがどうかしたの?」

ドラえもん「お風呂場が開かないとサウナが使えない……。つまり、
       今のままだと石丸くんと大和田くんは友達になれないんだ!」

のび太「……それだけ?」

ドラえもん「それだけって……大変なことだよ! 見た感じ、大和田くんはコンプレックスを
       乗り越えて前より余裕が出来たぶん、みんなからも信頼されて良好な関係を
       築けてるみたいだけど、石丸くんは特に親しい友達がいないみたいだ」

のび太「そりゃあ、あのセイカクじゃねえ……」

ドラえもん「今のままじゃ可哀相だ。それに、価値観がまるで違う大和田くんと仲良くなることで
       視野が広がるというか、石丸くんは今よりも丸くなるんじゃないかな?」

ドラえもん「ぼくたちの目的はただ事件を防ぐだけじゃない。みんなが外に出てからも
       手を取りあって助け合えるようにしなくちゃいけないんだよ?」

ドラえもん「なのに、この生活で信頼出来る仲間が作れなかったら外に出ても意味がないじゃないか」

のび太「そうだけど、なにも大和田さんじゃなくてもいいんじゃないの。苗木さんあたりに
     ソウダンすればなんとかしてくれそうだけど。あの二人あつくるしいからなぁ」

ドラえもん「他人事なんだから! もしジャイアンやスネオがいなかったらきみはどう思う?」

のび太「ジャイアンやスネオがいないかぁ……イジメられなくていいんじゃないかなぁ。
     ……あ、でも大ぼうけんのとき二人がいないとものたりないかも?」

のび太「それになんだかんだいつもあそびにさそってくれたり、助けてくれたときもあったっけ……」

ドラえもん「イヤな思いもそりゃたくさんあるけどさ、それ以上に楽しい思い出もあったろう?」

のび太「そうだね。やっぱり友だちがいないなんてダメだ! なんとかしないと!」


ドラえもん「さて、どうやったらモノクマを説得出来るかなぁ」

のび太「おもったんだけどさぁ、べつにサウナじゃなくてもいいんじゃない? たしか、根性くらべの
     ショウブをしてたんだよね。なんでもいいからショウブさせればいいんじゃないの?」

ドラえもん「いやぁ、ダメだと思うよ?」

のび太「どうして?」

ドラえもん「あの二人、友達になれたのが不思議なくらい相性が悪いんだよ。それぞれ
       優等生と不良のトップみたいな人だし。石丸くんは視野が狭いし頑固で
       融通がきかない。大和田くんは優等生が嫌いだし凄い意地っ張り」

ドラえもん「サウナで極限状態にでもならないと、お互い意地を張って本音を出せないんだよ」

のび太「ホント、あの人達めんどくさいなぁ……高校生なんだからもっと大人に
     なってほしいよ。おだやかで大人な苗木さんをみならってほしい」

ドラえもん「高校生もまだまだ子供ってことだよ。とにかく、サウナが使えるように
       ぼくたちでモノクマに掛け合ってみよう」

のび太「そうだね」


             ・

             ・

             ・


モノクマ「ハ? ダメに決まってるでしょ、そんなの」

ドラえもん・のび太「ですよねー」

ドラえもん「そこをなんとか……この通り!」

モノクマ「キミ達が誰か殺してくれれば考えるけどさ。……ああでもキミ達じゃムリか。
      じゃあねぇ、せめて誰かをそそのかすとかさー。なんか面白いことやってよ」

のび太「そんなことできるもんか!」


モノクマ「あっそ。ならいいよ。じゃーね、バイバイ」

ドラえもん「ああ、待って!」

ドラえもん(マズイ! 何かモノクマを説得出来る材料はないかな……)

のび太「コロシアイがおきればいいんでしょ?」

ドラえもん「のび太くん?」

のび太「ほら! おフロに入ってあたまがスッキリすれば、サツジンケイカクを立てる人がいるかも……?」

モノクマ「スッキリしたらコロシアイする気が失せちゃうんじゃないの?」

ドラえもん「ギクッ。……えっと、ほら! お風呂場で殺人とかドラマでもよくあるし」

モノクマ「いや、ないよ。ミステリーでありがちなのは山奥の村とか孤島でしょ。あと絶壁。
      一昔前は混浴露天風呂とかよくあったけど最近は時代の流れか見かけなくなったねー」

ドラえもん「うーん……」

ドラえもん(ダメだ……ぼくたちの頭でモノクマを言いくるめるなんて所詮ムリだったんだ……)

のび太(こうなったらヤケだ! もうテキトーにいいかげんなことを言ってやる!)

のび太「えーとですね、おフロがカイホウされたらみんなが入ります。すると、はだかでムボウビな
     ジョウタイになるから、ふだんころせないような人もころしやすくなります」

モノクマ「ふむふむ。まあ、それはあるかもね。十神君やセレスさんといった警戒心の強い
      メンバーも、お風呂上がりの気を抜いてる時に不意打ちすれば殺せるかもしれない」

のび太「でしょでしょ?」

モノクマ「……でもそれだけじゃなぁ。もう一声欲しいトコロ」

のび太「えっと……ここのおフロって男女でわかれてないから、ムフフなハプニングが……
     ……あ! それではだかを見られた女の子が男子にフクシュウをするかも!」

モノクマ「いや、流石にないでしょそれは」


のび太「ああもう、うるさいなぁ! とにかくぼくはおフロに入りたいの!」

モノクマ「……逆に聞くけど、キミ達なんでそこまで浴場に固執してんの?」

ドラえもん「え、そ、それは……」

モノクマ「ハッ?! もしやキミ達……」

のび太(マズイ……バレちゃったかな?)

モノクマ「覗きたいの?! 女の子達のあられもない姿をバッチリ目撃しちゃいたいの?!
      心の中のセンテンススプリングでフライデーしちゃいたいの?!」

ドラえもん「えぇ~……?」

のび太「あ、そういう下心もちょっとだけあるけど……」

ドラえもん「のび太くん!」

モノクマ「素晴らしい!」

のび太「え?」

ドラえもん「ハ?」

モノクマ「小学生でもやっぱり男の子なんだね! そうだよねぇ。ここの女の子達って
      レベルが高いもんねぇ。ボクは学園長としてそういう邪な気持ちを応援します!」

のび太「えっと、あの……」

モノクマ「いいでしょういいでしょう。浴場は解放しました。バッチリ覗きなさい、少年よ!
      そして小学生と違って出るとこが出た大人の体をしっかり満喫するのです!」

のび太「あ、ありがとう」

ドラえもん「なんだかなぁー……」


女子高生がこの台詞を言っているのかと思うととにかく脱力するのであった。


  ― 同時刻 購買部 ―


山田「これはこれは苗木誠殿」

葉隠「オッス、苗木っち」

苗木「あ、山田君に葉隠君。二人もモノモノマシーンを回しにきたの?」

山田「もちろんですぞ! オタクとしてはコレクター魂といいますか、
    ここから出るアイテムを全部収集したいと思っていましてな!」

葉隠「俺は占いで購買部に行くといいことがあるって出たからちょっくら来た次第だべ」

苗木「へえ。何かいいものが出るといいね。僕はこれで終わりだから」


ガシャガシャ、ポン!


苗木「ん? なんだこれ?」

山田「風呂桶ですかな?」

葉隠「せっかく桶が出ても風呂がねえとなぁ」

苗木「あれ、紙が入ってる。『おめでとうございます! これは男のロマン券です。
    内容は大浴場が解放されてからのお楽しみ』……? 男のロマンってなんだろ」

葉隠「男のロマン~? そうだべなぁ。札束のプールに飛び込んで泳ぐとか……」

山田「いやいや、コスプレしたセクシーガール達に囲まれてキャーキャー言われる方が……」

苗木「二人とも欲望がだだ漏れなんだけど……」


数日後、彼等は男のロマンの目撃者となる。



  ― 脱衣所 ―


のび太「本当に解放されてる……」

ドラえもん「ハッ、早く勝負を終わらせないと夜の不二咲さんとの約束にかぶっちゃう。急ごう」

のび太「でもさあ、うまいぐあいにケンカしてくれるかなぁ?」

ドラえもん「……あまりやりたくないけど、ぼくたちがそれぞれ相部屋だってことを利用しよう」


                  ╂


夕食後、のび太は石丸を誘い出すことにした。


のび太「お兄さん、今日はずっとへやにこもってるね」

石丸「……今はあまり人に会いたい気分ではないのだよ」

のび太「じゃあさ、ちょっとキブンテンカンしない?」

石丸「気分転換?」

のび太「うん! さっきおフロ場があいてるのを見つけたんだ。いっしょにはいろうよ!」

石丸「何? 大浴場が解放されているだと? よくやった。新発見ではないか!
    では探索がてら入りに行くとするか。……ついでに気分もすっきりさせよう」

のび太「うん」


  ― 脱衣所 ―


大和田「あ? なんだオメーも来たのか」

石丸「大和田君か……ドラえもん君に聞いたのか?」

大和田「おうよ。そっちはのび太からか」

石丸「ああ、そうだ」


大和田「…………」

石丸「…………」

ドラえもん(行くよ、のび太くん)チラ

のび太(まかせて!)コクリ

ドラえもん「あ、見てみて! サウナもついてる。本格的だねぇ」

大和田「お、マジか。こりゃあいいな」

のび太「ねえねえ、お兄さんたちがショウブしたらどっちが長くいられるかなぁ」

ドラえもん「そりゃあ大和田くんじゃない? なにせ日本最大の暴走族のリーダーで
       ケンカは強いし体も大きいし。サウナなんてへっちゃらでしょ?」

大和田「へへっ、当然よ!」

のび太「でも、石丸さんだってドリョクだけで希望ヶ峰に入学してセイセキは
     日本一らしいよ? ドリョクと根性ならだれにもまけないんじゃないかな」

石丸「フフ、無論だ!」

ドラえもん「うーん、難しいなぁ。どう? 自信ある、大和田くん?」

大和田「そりゃあるに決まってるだろ! こんな勉強ばっかしてるもやしみたいなヤツに負けるかよ」

石丸「(カチン!)フン、馬鹿馬鹿しい。根性なしの君がこの僕に勝てるとでも?」

大和田「ああ?! 今なんつった?!」

石丸「君は根性なしだと言ったのだ! 気に入らないことがあればすぐ怒鳴る暴れる!
    社会のルールを許容出来ないからそんな頭の悪い格好をして人様に迷惑をかけるのだ!」

大和田「テメェ、俺の格好をバカにしやがったな?! 勝負しやがれ!」

石丸「いいだろう! 君のような不良にこの僕が負けるものか!」

大和田「ほざけ! 負かしてベソかかせてやらぁ!」

ドラえもん「あ! ちょっと、服はちゃんと脱がないとダメだよ!」

のび太「なにかあったらぼくらのせいになっちゃうんだからムリしないでよね!」


フロ休憩。一旦ここまで。


大和田「わかってらあ! すぐにケリをつけてやる!」バッ、ポイポイ

石丸「どうせ君がすぐ音をあげるだろうしな!」バッ、ポイポイ


ダダダダッバタン!


ドラえもん「子供じゃないんだから脱いだ服くらいちゃんとしまってよ……」

のび太「もう、ムキになっちゃって~」

ドラえもん「でも、ぼくらが煽らないうちにのってくれて良かった。
       演技とはいえ相手をけなすのは心苦しいからね」

のび太「うん。でもほんとにこれで仲良くなるのかなぁ」

ドラえもん「アニメを信じよう(原作で違う展開だったら目も当てられないけど……)」

のび太「ハァ。しばらくはヒマなんだよね? ぼくはへやにもどってねるか」

ドラえもん「えぇ?! さっきも昼寝してたじゃないか」

のび太「ここのところいそがしかったからつかれてるの! オニのいぬまにひるねってやつだよ」

ドラえもん「しょうがないなぁ。じゃあ二人のことはぼくが見ておいてあげるからおやすみ」

のび太「またあとでね」

ドラえもん「さて……一人になってしまった。どうやって時間をつぶそうかな」

ドラえもん「……そういえば、アニメでも疑問だったけどこの二人は一体どんな会話をしたら
       仲良くなれるんだろう……? 実はちょっと気になってたんだよね」

ドラえもん「そうだ! テキオー灯~! これで暑さなんてへっちゃら。ぼくも参加しよーっと」


ピカー。ガチャ。


ドラえもん「おじゃましまーす」


大和田「あ? どうした、ドラえもん」

ドラえもん「いや、外で待ってるのもヒマだからぼくもやろうかなと思って」

石丸「だ、大丈夫なのかね?! ドラえもん君はロボットだろう? 機械がこんな暑い所にいたら……」

大和田「へっ、この程度でもう暑いのか? 大したこたねえな」

石丸「な、違うぞ! 僕は鍋焼きうどんでも食べたいくらいだが、ドラえもん君は耐えられるのかと……」

ドラえもん「ご安心を。ぼく耐熱加工もされてるから」

石丸「……最近の科学は本当に凄いな」


そしてドラえもんは一部始終を目撃することになる。


             ・

             ・

             ・


大和田「……でよぅ、親父は酒乱の気があってそれに愛想つかしたお袋は俺と兄貴を置いて
     出てっちまった。俺は兄貴と愛犬のチャックと支え合ってずっと生きてきたんだよ」

石丸「なんという話だ!」ブワワッ

ドラえもん「そんな悲しい話があったんだね!」うっうっ

大和田「なのにチャックは寿命、兄貴も独立してもういねえしな……」

ドラえもん「一人でチームを守らないといけないんだね!」

石丸「……やはり不良も生まれが悪い訳ではなく環境が悪かったのだ。良かろう!
    こうなれば僕の生い立ちも聞かせようではないか!」


             ・

             ・

             ・

石丸「……総理だった祖父の汚職事件をきっかけに我が家の心はバラバラ! 家にはマスコミが殺到し
    母はノイローゼで倒れ、僕も学校で壮絶なイジメに遭い見返すために僕は勉強を頑張った!」

大和田「マジかよぉぉぉ! 単なる勉強大好きガリ勉くんじゃなかったのかよぉっ!」

ドラえもん「かわいそうにぃぃ! さぞかしつらかったねぇ!」

石丸「……しかもこの話にはまだ続きがあって、元々天才で世を舐めていた祖父は挽回しようと
    軽い気持ちで事業を起こしたのだが当然のように失敗。その借金は今も我が家に……」

大和田「借金持ちとかマジかよぉぉぉ! うちより貧乏とかぁぁぁ!」ブワワッ

ドラえもん「がんばって! 気を強く持つんだ!」うっうっ!

石丸「ふ、ふふ……わかっているさ。だから僕は努力という確実な力を手に入れ、世を舐めた
    天才が天才のために作る世界ではなく、真に弱者救済を考えた政治家となるのだっ!」

大和田「やるじゃねーか!」

ドラえもん「なんて立派なんだぁぁぁ! のび太くんに爪のアカでも飲ませたいよ!」

大和田「負けてらんねえええ! よし! 俺もここから出たら世界一の大工になるぞ!」

石丸「君ならなれる! 絶対に!」

大和田「次はドラえもん! お前なんか話せ」

ドラえもん「え? ぼく? きみたちに比べたら全然苦労なんてしてないけど」

石丸「いや、苦労してない人間なんていない! 君はロボットだが何かあるはずだ!」

大和田「遠慮すんなって! お前みたいなお人よしはぜってえなんか苦労してるぜ」

ドラえもん「じゃあ、苦労じゃなくて単なる愚痴かもしれないけど……」


             ・

             ・

             ・

ドラえもん「それでいつもいつものび太くんはぼくに頼ってばかりで……!
       ママもパパも自分達の責任は置いといて僕が甘やかすからって!」

大和田「……ああ、そりゃあ大変だなぁ」

ドラえもん「大体のび太くんがバカでドジでノロマで根性無しでナマケモノなのが悪いんだ!」

石丸「ウム。確かにのび太君は僕から見てもど~しようもないぐうたらだ」

大和田「まあ、言いたかないがどんくさいよなぁアイツ。そのうえ頭も俺と同じくらいってのは……」

ドラえもん「それなのに何か問題があるとぼくの責任問題に……」うっうっ

大和田「やっぱオメェ苦労してんじゃねえか!」

石丸「こうしよう! 僕達三人は内容こそ違うがみな同じように苦労をしてきている。
    サウナでその苦労を分かち合った僕らは今日から心の友だ!」

大和田「いいな! 心の友よ~!」

ドラえもん「……あの、言いにくいから兄弟にしない?」

石丸「それもいい! 兄弟!」

大和田「おう、兄弟! ウワッハッハッハッ!」


ガシッ!


ドラえもん「ぼくも~!」ガシッ



                  ╂


のび太「あ~、よくねた。サウナの決着はついたかな~」

ドラえもん「あ、のび太くん。目が覚めたの?」

のび太「うん。……て、どうしたのこれ?」

石丸「」キュ~

大和田「」キュ~

ドラえもん「それがね、ぼくもヒマだったからテキオー灯を使って勝負に参加したんだ。
       ……ただ、そのことを忘れておしゃべりが過熱したから二人とも倒れちゃって」

ドラえもん「いまお医者さんカバンで看病してる所だよ」

のび太「高校生が二人もこれじゃみっともない!」

ドラえもん「まあそう言わないで。……貴重な話がたくさん聞けたよ」

のび太「どんな話?」

ドラえもん「プライバシーに関わるから細かくは言えないけど、要は二人とも苦労人だったんだ」

のび太「ふーん、おたがい苦労してるから気が合ったってこと?」

ドラえもん「そんな感じだね。とにかく、これで外の状況を知っても二人は支え合っていけるはず」

のび太「じゃあ次のこと考えようか」

ドラえもん「でもいちいちタイムテレビで調べるの大変なんだよね。死体を見るのもイヤだし……
       と、いう訳で今回はこれを使おうと思う。○×うらない~」パパラパッパパー

のび太「それ、覚えてる。たしかしつもんすると○×でこたえてくれるんだよね?」


ドラえもん「そうそう。これに聞いてみよう。今夜事件は起こるかな?」


 ×ブッブー!


のび太「今日はだいじょうぶだね。よかったよかった」

ドラえもん「じゃあ質問を変えて、明日事件は起こる?」


 ○ピンポーン!


のび太「た、たいへんだ!」

ドラえもん「いつだろう……事件は昼時間に起こる?」


 ×ブッブー!


のび太「じゃあ明日の夜だ!」


 ○ピンポーン!


ドラえもん「少し面倒だけど、誰が犯人か一人ずつ確認していこう!」

のび太「犯人は大和田さん?」


 ×ブッブー!


ドラえもん「セレスさん?」


 ×ブッブー!



のび太「あれ? ちがうの? じゃあ山田さん!」


 ×ブッブー!


のび太「ええ? ほかにあぶない人なんていたっけ? あ、江ノ島さんとか?」


 ×ブッブー!


ドラえもん「本名で聞かないとダメなんじゃないかな? 犯人は戦刃むくろさん?」


 ×ブッブー!


のび太「じゃあ、ジェノサイダー翔だ!」


 ×ブッブー!


のび太「十神さん!」


 ×ブッブー!


のび太「そんな! もうほかにコウホなんていないよ! いったいだれが……」

ドラえもん「まさか……もしかして大神さんかな?」


 ○ピンポンピンポーン!


ドラえもん「な、なんと?!」

のび太「なんだってー?!」


ここまで。おやすみ



  第十話 ひとじちきゅうしゅつ大作戦!


ドラえもん「つ、ついに恐れていた事態が来たか!」

のび太「え? 大神さんが犯人?! あ、そうか。ひとじちのせい?」


 ○ピンポーン!


ドラえもん「まずいな……急いで人質を助け出して大神さんに知らせないと!」
 
のび太「でも明日の夜に事件がおこるんでしょ? ならまだいそがなくても平気じゃない?」


 ×ブッブー!


ドラえもん・のび太「え?」

のび太「なに? 今なににはんのうしたの?」

ドラえもん「急いだ方がいいってこと?」


 ○ピンポーン!


のび太「どうして?!」


シーン。


ドラえもん「ダメだよ。○か×で答えられる質問をしないと。ええと、黒幕に知られるから?」


 ×ブッブー!



ドラえもん「ちがうのか……」

のび太「で、でもさ! こんどは大和田さんのときとちがってカンタンだと思うよ。
     だって、ひとじちさえ助ければいいんでしょ?」


 ×ブッブー!


のび太「あれ、ちがうの?」


 ○ピンポーン!


のび太「そんなぁ! なにがちがうっていうのさ!」

ドラえもん「人質を助けるだけじゃ終わらない……他にしなければいけないことがあるってことかな?」


 ○ピンポーン!


のび太「だから、それがわからないんだって言ってるのに」

ドラえもん「……人殺しなんてしなくていいって、大神さんを納得させなきゃダメってこと?」


 ○ピンポーン!


のび太「ワケがわからないよ。ひとじちを助けたらもう人殺しなんてしなくていいじゃない?」

ドラえもん「大神さんはとても冷静でいろいろと考えている人だからなぁ。
       中途半端な決意じゃ人なんて殺したりしないってことじゃない?」


 ○ピンポーン!


のび太「でも、じゃあぼくたちはどうすれば……」


ドラえもん「とにかく今は人質を助けることが最優先じゃないかな?」


 ○ピンポーン!


ドラえもん「ほら、道具もこう言ってるし。それに……大和田さんのことは付き合いの浅い
       ぼくたちよりも大亜さんの方がずっとよくわかってた。大神さんのことは
       大神さんの家族の人に聞いた方がいいんじゃないかな?」


 ○ピンポーン!


のび太「なるほどね……じゃあ、行こうか」

ドラえもん「あ、待って。大亜さんの時と違って今回は今の時代なんだ。
       外は汚染されてるらしいからまずはテキオー灯を浴びて」


ピカッ。


のび太「この二人はどうしよう……」

ドラえもん「まだしばらく起きなそうだし、全部終わったらタイムマシンでこの時間に戻ろう」

のび太「そうだね」

ドラえもん「よし! ではどこでもドア~」


  ― 学園の外 ―


のび太「外に出たのはいいけどさ……ひとじちってどこにいるの?」

ドラえもん「あ……」

のび太「もう! かんじんなところでぬけてるんだから!」


ドラえもん「えーっと……大神さんの道場はかなり古くて大きいって苗木くんが
       言ってたから、誰かに聞けばわかるんじゃないかな?」

のび太「そっか。あ、見て! あそこにテレビがあるよ!」

ドラえもん「……学園の中が映ってるね」

のび太「全国チューケイされてるって言ってたもんね。ということは、ぼくたちのかおも
     みんな知ってるのかな? このままあるくのってマズくない?」

ドラえもん「マズイなんてもんじゃない。ぼくたちの正体が江ノ島さんにバレちゃう!」

のび太「どうしよう! なにかでかおをかくさないと!」

ドラえもん「待って。……いいこと思いついたよ」


             ・

             ・

             ・


モノクママスク1「あーちっきしょー! なんでいつもいつも田中の奴ばっかり
         ソニアさんと組めるんだよ。不公平だろおい!」

モノクママスク2「男が決まったことにガタガタ文句言うんじゃねえよ。あんまりうるさいとバラすぞ」

モノクママスク1「あーソニアさんに会いたい。ソニアさーん!」

のび太「今だ! ショックガン!」


ビシュッ! ビシュッ!


モノクママスク1「ぎゃっ」

モノクママスク2「しまっ……!」


バタリ。


ドラえもん「よし、この二人からマスクをはぎとろう」ゴソゴソ

のび太「わあ、見てドラえもん。この人カミの色がピンクだよ。服も黄色だし!」

ドラえもん「派手だねぇ。こっちの子はスーツ着てる。実はお金持ちだったりして」

のび太「ま、いいや。さっさとだれかに聞いてみよう」

モノクママスク3「退屈っすー。なんかおもしろいことないっすかねー?」

のび太「お姉さん、こんにちは!」

モノクママスク3「うっきゃー! なんか変なのいるっす! 青くて丸い変なのっすよ!」

ドラえもん「すみません、ぼくたち江ノ島さんに言われて大神さんの人質に
       差し入れするよう命令されたんですけど、場所を聞き忘れちゃって」

モノクママスク3「差し入れっすか! いいっすねー。唯吹達にもほしいっす! お腹減ったっす!」

のび太「それでお姉さん、場所を知りませんか?」

モノクママスク3「うーん。大神さくらの人質っすよね? なら飛騨山脈の奥深くにある
         大神道場にみーんないると思うっすよ。詳しい場所は地元の人に聞くといいっす」

のび太「ありがとう、お姉さん!」

ドラえもん「では、さようなら!」

モノクママスク3「気をつけるっすよー!」ブンブン


ダダダダ……


モノクママスク4「おい澪田、今誰と話していた?」ドスドスドス

モノクママスク3「え、仲間っすよ?」

モノクママスク4「フン、ならいいが」

モノクママスク3「上の命令で大神道場に差し入れに行くって言ってたっす!」


モノクママスク4「差し入れか……。俺達にも欲しいものだな。この脂肪を保つのは大変なんだぞ」グギュー

モノクママスク3「タハー! 空腹で唯吹のお腹もロックンロールしちゃうよ!」ギュルルル


             ・

             ・

             ・


のび太「なんか、悪い人じゃなさそうだったね」

ドラえもん「いろいろな人がいるからね。暴力性が強い人と弱い人がいるんだろう。
       さて、じゃあ飛騨山脈の大神道場に向かうよ!」


               ◇     ◇     ◇


モノクママスク5「…………」

ドラえもん「すんなり辿り着いたのはいいけど……」コソ

のび太「なんか大きくてすっごくつよそうな人がいるよ!」コソコソ

ドラえもん「なに、また不意打ちしちゃえば問題ないよ。ショックガン!」


ビシュッ!


モノクママスク5「ム?! ……今なんか当たったかのう?」

ドラえもん・のび太「ショックガンが効かない?!」

のび太「な、なんなのあの人?!」

ドラえもん「わからない! けど、きっとすごく体を鍛えているんだ!」


のび太「どうする? ショックガンがきかないなら空気砲を使う?」

ドラえもん「人間相手に空気砲を使うのはちょっとなぁ……万が一大怪我でもさせたら
       大変だし。それに効かないで反撃されるのが一番怖いよ」

のび太「じゃあどうするのさ!」

ドラえもん「……よし、これでいこう」


             ・

             ・

             ・


のび太「すみませーん」

モノクママスク5「なんじゃ、お前さんら見ない顔だのう?」

ドラえもん「江ノ島さんの命令で」

のび太「おじさんにさしいれに来ました!」

モノクママスク5「おう! そうじゃったか。わざわざ東京くんだりからすまんのぉ」

ドラえもん「いえいえ、これどうぞ! 芋ヨウカンです」

モノクママスク5「わしだけもらうのは気がひけるからお前さんらも食っていいぞ」ムシャムシャ

のび太「(え?! どうしよう……)あ、ありがとうございま……」

モノクママスク5「ム、これはっ?! ……クソじゃあああああああああああああ!」グギュギュギュギュ!


ダダダダダダダダ!


のび太「すごいね、あのクスリ。もうきいたよ!」

ドラえもん「そんなに強力な下剤だったかなぁ……?」


のび太「いいじゃない! それより、とおりぬけフープだしてよ!」

ドラえもん「はいはい。とおりぬけフープ~」パパラパッパパー

のび太「みなさーん、助けにきましたよー!」

大神父「……何者だ御主ら?」

門下生「と、突然現れたぞ?!」

門下生「罠ではないか?」

ドラえもん「のび太くん! このマスク取らなきゃダメだよ」

のび太「あ、そうだった」


二人はマスクを外す。


大神父「御主達……さくらと共に希望ヶ峰にいるはずでは……?」


部屋の中央にはテレビが置いてあった。絶望させるためだろう。


のび太「くわしい話はあとでします!」

ドラえもん「今はとにかく脱出しないと。どこでもドア!」

門下生「こ、これは面妖な?!」

門下生「こんな不可思議なことがあっていいのか……師範、どうします?」

大神父「……どうせここにいても死を待つのみ。彼等を信じてみよう」


             ・

             ・

             ・


ドラえもん「ここまで来れば一安心かな」

のび太「さっきの人はしばらくトイレからでられないだろうしね」

大神父「して、事情を聞きたい、御主等は何者だ?」

ドラえもん「えーっと、どこまで話せばいいのやら」

のび太「かくかく」

ドラえもん「しかじか」

大神父「……そうか。わざわざさくら達を助けるために遠くから。有り難いことだ」

門下生「欲を言うなら、ケンイチロウ殿も助けて欲しいんだがのう……」

大神父「これ、余計なことを言うでない。危険だ」

のび太「ケンイチロウ?」

ドラえもん「その人がどうかされたんですか?」

大神父「聞かれた以上は話すが……ケンイチロウはな、世界最強の男だった」

のび太「あれ? 世界最強って大神さんのことじゃないの?」

ドラえもん「それに『だった』って……」

大神父「ケンイチロウはさくらのライバルであり良き友人であった。……もしかしたら
     それ以上の想いもあったかもしれん。だが、病に冒されてしまったのだ」

のび太「病気になっちゃったの?」


ドラえもん「それで、そのケンイチロウさんは今どこに?」

大神父「……少しでもさくらの側にいることを望み、希望ヶ峰病院に入院してたはず。
     今はどうしているかわからぬ。もしかしたら、もう既に死んでいる可能性もある」

大神父「希望ヶ峰学園周辺は絶望共の巣窟だ。行かなくても良い。危険過ぎる」

ドラえもん「……ちなみにその話を大神さんは?」

大神父「知らぬはずだ。既に希望ヶ峰はシェルター化していたし、なにより
     今のさくらは記憶がない。知っている訳がないだろう。もう終わった話だ」

ドラえもん「そうだったんですか……」

のび太「そんな……」

大神「気に病むことはない。我等を助けに来てくれただけで十分だ。感謝している。
    それより、何か力になれることはないだろうか? 礼がしたい」

のび太「そうだ! ドラえもん、大神さんをどうやってとめるか聞かないと」

ドラえもん「ああ、うん。実はですね……」


二人は事情を話す。


大神父「……成程な。まず御主等に聞きたいが、我等を救った後どうやって
     さくらに我等の無事を知らせるつもりだった?」

のび太「え、ふつうに口で……」

ドラえもん「ああ、そうか。大神さんは慎重な人だから、証拠を見せないと
       信じてなんかくれないか。むしろぼくたちが疑われちゃうかもしれない」

のび太「ぜんぶホントのことを言っちゃう?」


ドラえもん「それが一番なんだけど、大神さんはいつも朝日奈さんと一緒だからなぁ。
       今回動機が発表されて朝日奈さんも不安がってるから話すチャンスがない」

のび太「もしかして、どうぐが言ってたひとじちを助けるだけじゃダメって
     これのことかな? せっかく助けてもつたえなきゃイミないもんね」

ドラえもん「これはうっかりしてたなぁ……」

大神父「我としては……」

ドラえもん・のび太「……ん?」

大神父「同胞のために我が身を犠牲にするという考えは素晴らしい。だが、他人を
     傷付けてまで生きたいなどと我は思わぬ。それも相手が元の学友では、な」

大神父「さくらに伝えてくれ。地上最強は我が一族の悲願。そのためならば元より
     我等は死など恐れぬと。仲間と共に試練を乗り越えてこそ最強だと伝えて欲しい」

大神「たとえ我の言葉だとわからなくとも、この言葉を聞いて何も思わぬさくらではないだろう」

ドラえもん「……わかりました」

大神父「後のことは我に任せよ。黒幕に悟られぬうちに戻るが良い」


タイムホールの中にて。


ドラえもん「さて、気付かれないうちに帰ろう」

のび太「まって。せっかくだし、ケンイチロウさんて人も探して助けない?」

ドラえもん「え? でも、その人は今回の事件とは無関係だよ?」

のび太「そうだけど、大神さんがかわいそうだよ。どうせぼくたち大和田さんの
     お兄さんも助けてるんだし、もう一人くらいいいじゃない」

ドラえもん「それもそうか。じゃあ、過去へ行こう!」


ここまで。

今回はゲスト多めの回でした。


お ま た せ

実はこのSSは絶対絶望少女が出る前に書いたので、元々の話だと
ケンイチロウは死んでいてドラ達が助けに行く話になっていたのだけど
修正してたので遅くなりました。


再開



  第十一話 大神さんとおとめごころ


  ― 一ヶ月前 希望ヶ峰病院 ―


ケンイチロウ「ゴホッゴホッ!」

ケンイチロウ(……俺もあまり長くはない。少なくともさくらが外に出るまでは保たないだろう。
     最期にさくらと一戦交えたかったが、約束を違えることになってしまったな……)

ケンイチロウ(お互い不本意な結果で終わってしまったが、これも天命か。致し方あるまい。
     せめて顔くらい見たかったが、こんな世の中ではな……)


コンコン、ガチャッ。


のび太「こんにちは」

ケンイチロウ「……何者だ?」

ケンイチロウ(この病院にはもうごく僅かな関係者以外誰もいないはずだが……
     そもそも、こんな治安の悪い場所に何故子供が?)

ドラえもん「ケンイチロウさんですよね? ぼくたちはあなたを助けに来ました」

ケンイチロウ「何だと?」

のび太「ぼくたち大神さんのおともだちなんです!」

ケンイチロウ「さくらの……だが、どうやって……俺の体は既に……」

ドラえもん「まあまあ、だまって見てて下さい! お医者さんカバン~」


ドラえもんはお医者さんカバンでケンイチロウの体を治療する。


ケンイチロウ「体が、動く……馬鹿な! 本当に治ったというのか?! お前達は一体……」

のび太「ケンイチロウさんにはぜんぶ話しちゃってもいいよね?」

ドラえもん「そうだね。実は……」


二人は自分達が未来からやってきたこと、コロシアイ学園生活について等を話した。


ケンイチロウ「そんなことが……」

のび太「じゃあぼくたちもとの時間にかえります。大神さんを説得しないと」

ケンイチロウ「待て」

ドラえもん「どうかしましたか?」

ケンイチロウ「お前達の持つ道具の中に、相手の夢の中に行けるものはないか?」

ドラえもん「ありますけど……」

ケンイチロウ「それを貸してくれないか? 俺が直接さくらを説得すれば、あいつを止めることが
     出来ると思う。いや、絶対に止めてみせる。さくらを人殺しになどさせたくない」

のび太「ケンイチロウさん……」

ケンイチロウ「一ヶ月後の未来から来たと言ったな。夜、俺はこの病院の屋上で待っている。
     お前達はそのタイムマシンとやらで先回りしていてくれ」

ドラえもん「わかりました! あなたを信じます」

ケンイチロウ「未来で会おう!」


ドラえもん「さて、この二人はまだ倒れてるね」

のび太「夜までまだ時間あるし、のんびりしていようよ」

ドラえもん「とりあえずこの二人を起こさないと。もしもーし! 起きてー!」

大和田「あー……」

石丸「うむぅ……」

のび太「起きてったら!」

ドラえもん「起きないなぁ……しょうがない。僕が部屋まで運んでおくよ」

のび太「……がんばって」

ドラえもん「うんせ、うんせ」

のび太「ドラえもんが力持ちでよかった」


  ― 同時刻 病院前 ―


モノクママスク6「坊ちゃんと左右田をやったのは貴様か?」

モノクママスク7「孤高の魔拳士よ。我が結界の中に一人でやって来たのは褒めてやる。
         だがこの俺様が魔力を解放した以上、貴様の命運はここまでだ」

モノクママスク6「我々は仲間を倒され気が立っている。貴様もつくづくついてないな」

モノクママスク8「オメエ弐大のオッサンと同じくらい強そうだな! オレが倒してやる!」

ケンイチロウ「……無駄な争いは好まんが、俺の邪魔をするなら容赦はしない」


ドガガガガガガガッ!


モノクママスク8「な、なんだコイツ?! つええなんてレベルじゃ……」

モノクママスク7「ぐふっ! 馬鹿な?! 我が地獄の炎が効かないだと?!」

モノクママスク6「ほ、本部に応援を要請する……撤退だ!」


ダダダダダ……


ケンイチロウ「口ほどにもない」

ケンイチロウ(だが奴等は所詮絶望軍団の一部……これから大勢仲間が来るだろう)

ケンイチロウ「それでも俺は進まねばならん。全ては約束のために!」


  ― 希望ヶ峰病院屋上 ―


夜、そこには大量のモノクマに囲まれたケンイチロウがいた。


ケンイチロウ「自ら袋小路に飛び込んだようなもの……こうなることはわかっていた」


カッと目を見開く。


ケンイチロウ「だが、俺は約束を果たさねばならんのだ! 彼らが来るまで一歩も退かん!」


激闘が始まった。

ケンイチロウの正拳突きがモノクマを貫く。破壊されたモノクマを素早く持ち上げ
迫ってきていた別のモノクマにたたき付ける。背後からの攻撃は気配で察し、ケンイチロウは
振り向かずに跳躍して空振りをした敵の後頭部に踵を叩き込む。


ケンイチロウ(一体一体はさほど強くないが、機械だから硬いし重い。
     長期戦になれば壊れるのは俺の体だろう)


だが、退く訳にはいかない。友の、いや愛する人の正念場なのだ!


ケンイチロウ「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


             ・

             ・

             ・


ケンイチロウ「フゥ……フゥ……」

ケンイチロウ(彼らは、まだか……!)


世界最強の男たるケンイチロウだが、無限に湧き出る疲れを知らない人形相手に限界が来ていた。


ケンイチロウ(俺は……ここまでなのか……)

ケンイチロウ(……さくら)

「空気砲!」


ドカーン!


ケンイチロウ「来たか!」

のび太「おくれてごめんなさい!」

ドラえもん「さ、ケンイチロウさん。とりあえずぼく達に掴まって!」



ヒュルルルル……


ドラえもん「ここならもう大丈夫かな?」

ケンイチロウ「待ちわびたぞ」

のび太「じゃあ、ドラえもんはやく!」

ドラえもん「うん。夢はしご~」パパラパッパパー

ドラえもん「この道具は、人の夢に直接はしごをかけて中へ入ることが出来るんだ!」

ケンイチロウ「理論は全くわからんが、要はそれを渡っていけばいいのだな?」

ドラえもん「はい。じゃあ大神さんの夢に繋げるので、ケンイチロウさんお願いします」

ケンイチロウ「よし。行くぞ」

ドラえもん「僕達はユメテレビで見てますね」


               ◇     ◇     ◇


夢の中。白いもやの中を大神は歩いている。どこか懐かしい場所へ出た。


大神「……ここは、どこだ?」

ケンイチロウ「俺とお前が初めて手合わせした場所を忘れたか」


振り向くとそこには懐かしい顔がいて、もやもすっかり晴れていた。


大神「お、お主は……」

ケンイチロウ「久しぶりだな、さくら」


大神はすっかり元気になったケンイチロウの姿を見て目を開く。


大神「まさか……いや、そうか。これは夢なのだな。そうでなければ……」

ケンイチロウ「確かにこれは夢だ。だが、夢であって夢ではない」

大神「? どういう意味だ?」

ケンイチロウ「俺は現実でも病を治し、今は外の世界で元気に暮らしている。
     それも、お前のよく知る者達の手によってな」

大神「……そうか。それは何よりだ」

大神(夢は自身の潜在的欲求が出やすいと言うが、誠だったな。……だが夢でもいい。
    元気になったそなたと相見えることが出来たのなら、我はもう思い残すことはない)

ケンイチロウ「馬鹿なことを考えるなよ」

大神「……我を止めにきたのか?」

ケンイチロウ「そうだ。道場の人間達は無事だ。俺を救ってくれた彼らの手によって
     救出された。だからもうお前が手を汚す必要はない」

大神「ありがとう。たとえ夢でも、そう言ってもらえれば我は救われる」

ケンイチロウ「信じていないようだな。……当然か。ならば拳で語るのみよ」


構えるケンイチロウ。


ケンイチロウ「構えろ、さくら。俺がお前の目を覚まさせてやる」

大神(最期にケンイチロウに会えた上、手合わせもするか。我が考えていることといえ、
    都合の良すぎる夢だな。……だが、今は夢でもいい。醒めてくれるな)

大神「受けて立つ」



             ・

             ・

             ・


大神「ぐっ! ハアハア……」

ケンイチロウ「お前の力はそんなものか!」

大神(なんという拳のキレ……最後に会った時と同じ。いやそれ以上だ)

大神「我も少しは強くなったつもりだったが……いや、見苦しい言い訳だな。完敗だ。お主の勝ちよ」

ケンイチロウ「弱いな」

大神「……そうか」

ケンイチロウ「お前の力はそんなものではないはずだ。いや、最後に会った時より
     確実に強くなっている。なのに何故こんなにも早く勝負がついたかわかるか?」

大神「お主が強くなったのだろう」

ケンイチロウ「違う。確かに俺も強くなったが、俺達が強くなる速さなどそう大して変わらん」

大神「…………」

ケンイチロウ「お前の目が濁ってしまったからだ。そんな目をしていては、俺の拳は見切れまい」

大神「……頼む、ケンイチロウよ。これ以上我を惑わせないでくれ」

ケンイチロウ「俺はお前の父上からも伝言を言付かっている。武人の誇りを忘れるなと」

大神「……!」

ケンイチロウ「さくら。モノクマとやらが、約束を守るという保障はどこにある。
     俺達の力は仲間を、それも非力な者を襲うためのものか?」

大神「我は……」


ケンイチロウ「……そろそろ時間だな。俺はもう戻らなくてはならない」

大神「待ってくれ、ケンイチロウ!」

ケンイチロウ「仲間を……特にドラえもんとのび太の言うことを信じろ。彼等が何とかしてくれる」

大神「……何故お主がその二人のことを……?! それに信じろとは一体……」

ケンイチロウ「俺もお前を信じているぞ……」

大神「ケンイチロウ! 待って、待ってくれ! 我は、そなたとまだ……!」

大神「ケンイチロウ!」


バッ!


大神「ここは……」

大神(……そうか。やはり夢だったか。リアルな夢であった)

大神(誠であればどんなに良かったか……)ギュッ


               ◇     ◇     ◇


のび太「おかえりなさい」

ドラえもん「大神さん、思い止まってくれるかな?」

ケンイチロウ「言いたいことは全て伝えた。あとはあやつ次第よ。……だが俺はさくらを信じている」

のび太「ケンイチロウさん……」

ケンイチロウ「二人共、世話になったな。何と礼を言ったものか」


ドラえもん「お礼なんていいです。喜んでさえもらえれば」

ケンイチロウ「絶望が蔓延る世の中になったが、主らはその中に降り立った一筋の希望かもしれないな」


しみじみとケンイチロウは呟く。


ケンイチロウ「子供にあまり夜更かしをさせる訳にもいかん。もう戻らねばならんだろう」

のび太「そうだね。そろそろかえらないと」

ドラえもん「じゃあケンイチロウさん、さようなら」

ケンイチロウ「次に会う時は脱出後だな。友よ、その時また会おう!」

のび太「さよーならー!」


ケンイチロウが去った後。


ドラえもん「さて、ぼく達も早く戻らないと江ノ島盾子に怪しまれる」

のび太「それにしてもさ、ドラえもん」

ドラえもん「なんだい?」

のび太「もしかして……大神さんてケンイチロウさんのことが好きなんじゃないかな?」

ドラえもん「え?! どうして?」


のび太「だって、今まであんなカオ見たことなかったし。なんかちょっと赤かったし」

ドラえもん「言われてみれば……そうだよね。大神さんだって、年頃の女の子だもんね」

のび太「好きな人にとめられたんだもん。きっとやめてくれるよ!」

ドラえもん「そうだね。信じよう!」


                  ╂


大神「…………」


朝、珍しく早起きしたのび太とドラえもんが大神の元へ走り寄る。


のび太「おはよう、大神お姉さん!」

ドラえもん「おはようございます!」

大神「ウム、おはよう」

大神(二度目の動機でも結局事件は起こらなかった。恐らく、今日あたり
    いよいよ我に人を殺す命が下るだろう。こやつらと挨拶するのもこれが最後か……)

のび太「……ねえ、いいユメ見れた?」

大神「! 何のことだ?」

のび太「なんだか、うれしそうなかおしてると思って」

大神「嬉しそう……?」


ドラえもん「夢に懐かしい人が出てきてたりして~?」ウフフ

大神「!!」

大神(まさか……知っている? 馬鹿な、そんなことがあるはずが……)


脳裏にケンイチロウの言葉がリフレインする。

『ドラえもんとのび太の言うことを信じろ』


大神(……まさか)

大神「知っているというのか……?」

のび太「なにが?」

ドラえもん「ぼく達はなーんにも知らないよ! 夢の中で起こったことなんてねー!」

のび太「ねえねえ、大神さんて好きな人とかいる?」

大神「想い人か……いるぞ」

のび太「大神お姉さんの好きな人ならきっとすごく大きくてつよい人だね!」ニヤニヤ

ドラえもん「ケンイチロウさんとお幸せに。……彼の言ったことを信じてあげて」ボソッ

大神「!! お主ら、やはり……!」

大神(方法はわからぬ。だが、あの夢はきっと正夢で人質は解放されたのだ!
    そしてそれはこの二人のおかげだとケンイチロウは伝えたかったのだろう)

大神(我の勝手な思い込みかもしれぬ。だが今はその“希望”を信じていたい……)

大神「ドラえもん、それにのび太よ……ありがとう」

のび太「ぼくたちなーんにも知らなーい」

大神「何となく、礼を言いたくなっただけなのだ」

ドラえもん「おかしな大神さん」フフッ

大神「そうだな……フッ」


ここまで。


お待たせしてすみません…ちょっと時間がなくて、更新は金曜日になりそうです。

もし良かったら拙作ですが、こちらの作品など読んで待って頂けたら幸いです。
上は気楽に読める中編ギャグ、下はギャグありシリアスあり裁判ありの長編です。


はっぱ隊「ヤッタ! コロシアイ学園生活に巻き込まれたぞ!」【ダンガンロンパ】
http://ssmatomesokuho.com/thread/read?id=277695

苗木「…え? この人が校医?!」霧切「ドクターKよ」
http://ssmatomesokuho.com/thread/read?id=100418



  第十ニ話 腐川さんをすくえ!(前編)


のび太「そんなことよりはやく食堂に行こうよー! ぼくおなかすいちゃった」

大神「フフ、今日我はとても寝覚めが良い。お主らの好きな物を何でも作ってやろう」

[たぬき]「え、本当?! じゃあぼくドラ焼き!」

のび太「ぼくもー!」


パタパタパタ……


朝日奈「あ、こんなところにいた!」

のび太「お姉さん、おはよう」

[たぬき]「朝日奈さん、おはようございます」

朝日奈「二人ともおはよう! ……って、今はそれどころじゃないんだった。
     早く食堂に来て! すごく変なことになってるよ!」

のび太「へんなこと?」

[たぬき]「あー、もしかして……」


  ― 食堂 ―


『ウワーッハッハッハッハー!』


大和田「最高だぜ、兄弟!」

石丸「全くだ、兄弟!」

不二咲「いい感じだよ、二人とも!」

『ワッハッハッハッハッハッ!』


[たぬき]「やっぱりね……」


あ、いかん。sageのままだった……

上げ直す



  第十ニ話 腐川さんをすくえ!(前編)


のび太「そんなことよりはやく食堂に行こうよー! ぼくおなかすいちゃった」

大神「フフ、今日我はとても寝覚めが良い。お主らの好きな物を何でも作ってやろう」

ドラえもん「え、本当?! じゃあぼくドラ焼き!」

のび太「ぼくもー!」


パタパタパタ……


朝日奈「あ、こんなところにいた!」

のび太「お姉さん、おはよう」

ドラえもん「朝日奈さん、おはようございます」

朝日奈「二人ともおはよう! ……って、今はそれどころじゃないんだった。
     早く食堂に来て! すごく変なことになってるよ!」

のび太「へんなこと?」

ドラえもん「あー、もしかして……」


  ― 食堂 ―


『ウワーッハッハッハッハー!』


大和田「最高だぜ、兄弟!」

石丸「全くだ、兄弟!」

不二咲「いい感じだよ、二人とも!」

『ワッハッハッハッハッハッ!』

ドラえもん「やっぱりね……」


朝日奈「さっきからずっとこんな感じなの! ドラえもんとのび太は
     あの二人と相部屋でしょ? なにか知らない??」

のび太「思いあたることがありすぎてこまる」

石丸「おお! そこにいるのは心の友ドラえもん君ではないか!」

大和田「ほら! お前もこっち来いよ!」

ドラえもん「もう、人気者は仕方ないなぁ」

のび太「え?! ちょっと、ドラえもん?!」

不二咲「僕もいれてもらったんだよ! だからこれからよろしくね、ドラえもん!」

ドラえもん「はいはい、よろしく」

苗木「うわ! な、なに? なんで仲良く四人で肩組んでるの?!」

大神「……我にもわからぬ。食堂に来たら既にこうだったのだ」

舞園「何かのイベントでしょうか?」

葉隠「いや、俺が思うに儀式じゃねえかな?」

のび太「えーとですね、これにはいろいろふかいワケが……」

桑田「目ェ合わせるんじゃねえ! きっとなんか変な病気なんだ」

セレス「うつさないでもらいたいですわね」

石丸「失敬な! 僕達はただ血よりも濃い熱い男同士の友情に目覚めただけだ!」

大和田「サウナで熱く語り合ってな」

山田「男だらけで長時間サウナにこもり……アッー!」

腐川「不潔だわ……何やってるのよあんた達……」

苗木(お風呂に入ってない腐川さんがフケツって言っていいのかな……)


朝日奈「男同士って言っても不二咲ちゃんいるじゃん」

不二咲「あ、実は僕女装してただけで本当は男の子なんだぁー! 今まで騙しててごめんねぇ」


『?!』


「ファッ?!」

「えええええええええ?!」

「ヌフォッ?!」

山田「リアル男の娘ですとぉぉぉっ?!」

桑田「う、うそだろ……うそって言ってくれ……」

朝日奈「じょ、冗談だよね、不二咲ちゃん……?」

葉隠「そんな……不二咲っちにブロマイドを取らせてもらってファンに売る俺の計画が……!」

不二咲「ご、ごめん。本当なんだ。やっぱり気持ち悪いよね……」うるうる

腐川「気持ち悪いというかなんというか色々予想外すぎて反応に困るわよ!」

石丸「君達! 不二咲君が決死の告白をしたというのにその反応は何だ!! 女装を
    していたというのがそんなに悪いのか! ならばそんな記憶僕が忘れさせてくれよう!」


バッ!


石丸「忘れろ忘れろ忘れろビーム!!」

「ブフッ?!!」

苗木「え、な、何?! 石丸君?!」

朝日奈「いったいなにが起こったの……?!」

葉隠「う、宇宙人の仕業だべ! 全員仲良くキャトられたんだべ!」


大和田「ちげーよ、バカ!」


真面目な石丸の唐突なギャグは生徒達には少々インパクトが強すぎたようだ。


ドラえもん「ああっ! ぼく忘れろビームを見損ねちゃった! 密かに楽しみにしてたのに。
       もう一回ぼくに向かってビーム打ってよ、石丸くん!」

石丸「ム、親友のドラえもん君の頼みとあらば応えない訳にはいかないな!
    よし、では不二咲君も一緒にやろう!」

不二咲「えっ?! ぼ、ぼくも? ……えーと、こうかな?」

石丸「違う違う! 最初はこうだ! よし、それでは、せーの!」

石丸・不二咲「忘れろ忘れろ忘れろビーム!」

不二咲「過去のぼくのことなんて忘れろビーム! ビーム!!」

一同(かわいい……)

石丸「ハッハッハッ! 不二咲君は筋がいいな!」

桑田「ふ、不二咲ちゃんがそこまで言うならなぁ……」

山田「わ、忘れました! 僕は全部忘れましたぞ!」

大和田「さ、さすがだぜ不二咲!」

セレス「……もう呆れて口が塞がりませんわ。豚、紅茶のお代わり」

山田「ハイヨロコンデー!」


ハハハハハハ…

ピンポンパンポーン


モノクマ『オマエラ今すぐ体育館に来い!』

のび太「あ、よびだしだ」



  ― 体育館 ―


モノクマ「オマエラなに自分で秘密バラしてんだよ! さっさとコロシアイしろよ!」

苗木「誰がコロシアイなんてするもんか!」

「そーだそーだ!」

モノクマ「ムカーッ! いいよいいよ、じゃあお望み通り暴露してやろうじゃない」


そして暴露タイムが始まる。大半は大したことのない秘密だが、


モノクマ「はい。大トリは腐川さんだよ」

腐川「や、やめてやめてやめて! お願いよ!」

モノクマ「嫌でーす! 腐川さんの秘密。それはなんと……腐川さんの正体がジェノサイダー翔なことです!」

「は?」

「え?」

腐川「いやあああああああ!」

苗木「え、う、嘘でしょ?」

朝日奈「嘘だよ! だって腐川ちゃんは血液恐怖症じゃん! 人殺しなんて出来ないよ!」

十神「モノクマの言葉は本当だ。腐川は多重人格者なんだよ」

石丸「多重人格だと?!」

腐川「ああ、もう、終わり……終わりよ……」バタン!

桑田「おい! しっかりし……」


シュバッ!


ジェノ「呼ばれて飛び出てジェノサイダー! どーも、ジェノサイダー翔でーす!」


大神「な、なんだ?! 急に人が変わったようになったぞ!」

葉隠「ど、どうしたんだべ腐川っち? 舌がいつもより長いべ……」

ジェノ「アタシをあの根暗と一緒にすんじゃねえよ! アタシにはジェノサイダー翔っていう
     超イカした名前があるんだから!」

山田「ひ、ひぃぃぃ! 本物のジェノサイダー翔?!」

大和田「ガキ共は下がれ!」

ジェノ「……で、今どんな感じ? なにやってんの?」

のび太「ぼくたちね、あそこにいるモノクマっていうわるいやつにとじこめられて
     コロシアイをしろって言われてるんだ。もちろん、やらないけどね」

ジェノ「フーン、そうなんだ。で、坊やと……なんだその青いの? ダルマ?」

ドラえもん「猫型ロボット! えー改めまして、こんにちは。ぼくドラえもんです!」

のび太「ぼくは野比のび太!」

ジェノ「クールでナイスな殺人鬼翔ちゃんでーす! よろぴこ♪」

桑田「お、お前らなにフツーに話してんだよ! 相手は殺人鬼だぞ!」

石丸「子供の適応力というのは本当に目を見張るものがあるな……」

山田「もはやそういう次元を超えているような……」

ドラえもん「ねえ、翔さん」

ジェノ「はいはーい。なんすか? 質問?」

ドラえもん「ところで翔さんはここで誰かを殺す気はある?」

ジェノ「どーだろー? アタシは別にむやみやたらと襲ってる訳じゃなくてこだわりがあるからね」

のび太「なんだっけ? えーっと、たしか男の人しかコロさない?」

ドラえもん「のび太くん!」

十神「! 貴様どこでそれを……」


ジェノ「ピンポンピンポーン! 大正解! よく調べてんじゃん。でもそれだけじゃ
     全然ダメよん。アタシは男は男でも萌える男しか殺さない殺人鬼だから」

不二咲「燃える男?」

大和田「炎みたいに熱苦しい男ってことか? じゃあ兄弟ヤベーじゃねえか!」

石丸「なんと?! 僕か?!」

ジェノ「ちげーよ!! 汗くさサウナ兄弟は黙ってろ!」

苗木「そう言われても、普通は燃えるって言われたら熱いって意味じゃないの?」

ジェノ「あー、まこちんは割りと萌えるかも」

苗木「えっ?! どういうこと?!」

舞園「ダメです! 苗木君は殺させません!」

山田「あのー、ジェノサイダー翔殿。つかぬ事をお伺いしますが、萌えるとはあの萌えるですかな?」

ジェノ「イエース! ひふみんもよーくおわかりのあの萌えでーす! なにせアタシってば
     貴腐人コースまっしぐらな重度の腐女子ですからー! ゲラゲラゲラ!」

山田「な、なんと……文学少女の裏には真逆な性格の腐女子が潜んでいたとは、エロゲみたいな展開ですな」

葉隠「そこはまあ、ゲームみたいなくらいにしとこうや……」

セレス「意味はわからないですが、ろくでもないということはわかりましたわね」

石丸「ええい! つまりどういうことなのだ! 説明したまえ!!」


山田による萌えの講義。


江ノ島「えーっと、よくわかんないんだけど……」

舞園「私は同業者にオタク系アイドルがいるのでわかりました。萌え萌えキュンてことですよね!」

山田「アイドルによる萌えキュンとかご褒美キタコレ!」

大和田「わからねぇ……」


桑田「女の子ならわかるけど、男に萌えるって感覚はちょっとわかんねぇよなぁ」

ジェノ「わかんないならわかんないで結構。どーせあんたらむさいヤツらは対象外だからさ」

のび太「でも、写真にうつってた人たちそんなにかっこよくなかったような……」

ドラえもん「のび太くん、シッ!」

霧切「…………」

セレス「わたくしは彼女の気持ちがよくわかりますわ。イケメンをはべらせたいのは女性の夢ですからね」

朝日奈「私はそういうのはちょっと……好きな人と二人っきりの方が……」ゴニョゴニョ…

大神「朝日奈。我もわかるぞ、その気持ち……」フッ

モノクマ「え、なにこの空気」

モノクマ「みんな! ジェノサイダー翔は殺人鬼なんだよ? 確かにそこのむさいヤツらは
      対象外かもしれないけどさ、十神君や苗木君は殺されちゃうかもしれないんだよ?」

石丸「そ、そうだ! ジェノサイダーを放置しておく訳にはいかない! このままでは風紀が乱れてしまう」

葉隠「そうだべ! なんとかしねーと!」

葉隠(あーでも、苗木っちはどうせ内臓もらう予定だったしなぁ。殺された方が
    好都合かいな? でも流石に殺人はちょっとマズイような気もするし、ウーム)

ジェノ「あらん? アタシに攻撃しようってならこっちだって容赦しないわよ!」


ハサミジャキーン!


霧切「みんな、下がって! 大神さん、大和田君、お願い!」

大神「皆を傷つける気なら我も容赦はせぬ!」

大和田「女に暴力は振るわねえ主義だが、相手が殺る気ならこっちもこたえるぜ!」

桑田「女の子ならわかるけど、男に萌えるって感覚はちょっとわかんねぇよなぁ」

ジェノ「わかんないならわかんないで結構。どーせあんたらむさいヤツらは対象外だからさ」

のび太「でも、写真にうつってた人たちそんなにかっこよくなかったような……」

ドラえもん「のび太くん、シッ!」

霧切「…………」

セレス「わたくしは彼女の気持ちがよくわかりますわ。イケメンをはべらせたいのは女性の夢ですからね」

朝日奈「私はそういうのはちょっと……好きな人と二人っきりの方が……」ゴニョゴニョ…

大神「朝日奈。我もわかるぞ、その気持ち……」フッ

モノクマ「え、なにこの空気」

モノクマ「みんな! ジェノサイダー翔は殺人鬼なんだよ? 確かにそこのむさいヤツらは
      対象外かもしれないけどさ、十神君や苗木君は殺されちゃうかもしれないんだよ?」

石丸「そ、そうだ! ジェノサイダーを放置しておく訳にはいかない! このままでは風紀が乱れてしまう」

葉隠「そうだべ! なんとかしねーと!」

葉隠(あーでも、苗木っちはどうせ内臓もらう予定だったしなぁ。殺された方が
    好都合かいな? でも流石に殺人はちょっとマズイような気もするし、ウーム)

ジェノ「あらん? アタシに攻撃しようってならこっちだって容赦しないわよ!」


ハサミジャキーン!


霧切「みんな、下がって! 大神さん、大和田君、お願い!」

大神「皆を傷つける気なら我も容赦はせぬ!」

大和田「女に暴力は振るわねえ主義だが、相手が殺る気ならこっちもこたえるぜ!」

のび太「わあ! タイヘンなことになっちゃった。ドラえもーん!」

あれ?会話がループしてる?


ドラえもん「えっと、みなさん! 話し合いで解決しましょう!」

十神「話し合い? 殺人鬼とか? 馬鹿らしい」

ドラえもん「まあまあそう言わずに」

のび太「舞園さんの時みたいにみはりをつけたら?」

大神「名案ではあるが、こやつなかなか腕が立ちそうだ。暴れられれば厄介だぞ」

ジェノ「アタシだって監視されたり閉じ込められるのイヤだし」


ザワザワ……


ドラえもん(どうしよう……大神さんのことでいっぱいでジェノサイダーの対策を考えていなかった)

のび太(どうすればいいんだろう……)

ジェノ「閉じ込められちまったら白夜様の観察も出来なくなっちまうしなー」

苗木「あれ? ジェノサイダーは十神君が好きなの?」

ドラえもん「(! これだ!)そういえば十神くんはジェノサイダーさんの正体を知ってたよね?」

十神「それがなんだと言うんだ?」

ドラえもん「じゃあ、十神くんがジェノサイダーを見張ればいいんじゃないかな?」

十神「な?! 何だと、青狸! ふざけたことを言うな!」

ドラえもん「ぼくは狸じゃない! 猫型ロボット!」

不二咲「でも、もし十神君が殺されちゃったら……」

のび太「コロそうと思ってたらとっくの昔にできてたよね。でもいままで誰もコロしてないなら
     いまのところ、翔さんはだれかをコロす気はないってことなんじゃない?」

ジェノ「まあそうねん。まだ殺意が沸くほど萌えてないしアタシは基本的に面白いことが好きだからサ」

>>289
コピペミスしてますね……やっぱり調子が悪いのかな


読みづらいので、もう一度貼り直します。
>>288>>290はなしで。


桑田「女の子ならわかるけど、男に萌えるって感覚はちょっとわかんねぇよなぁ」

ジェノ「わかんないならわかんないで結構。どーせあんたらむさいヤツらは対象外だからさ」

のび太「でも、写真にうつってた人たちそんなにかっこよくなかったような……」

ドラえもん「のび太くん、シッ!」

霧切「…………」

セレス「わたくしは彼女の気持ちがよくわかりますわ。イケメンをはべらせたいのは女性の夢ですからね」

朝日奈「私はそういうのはちょっと……好きな人と二人っきりの方が……」ゴニョゴニョ…

大神「朝日奈。我もわかるぞ、その気持ち……」フッ

モノクマ「え、なにこの空気」

モノクマ「みんな! ジェノサイダー翔は殺人鬼なんだよ? 確かにそこのむさいヤツらは
      対象外かもしれないけどさ、十神君や苗木君は殺されちゃうかもしれないんだよ?」

石丸「そ、そうだ! ジェノサイダーを放置しておく訳にはいかない! このままでは風紀が乱れてしまう」

葉隠「そうだべ! なんとかしねーと!」

葉隠(あーでも、苗木っちはどうせ内臓もらう予定だったしなぁ。殺された方が
    好都合かいな? でも流石に殺人はちょっとマズイような気もするし、ウーム)

ジェノ「あらん? アタシに攻撃しようってならこっちだって容赦しないわよ!」


ハサミジャキーン!


霧切「みんな、下がって! 大神さん、大和田君、お願い!」

大神「皆を傷つける気なら我も容赦はせぬ!」

大和田「女に暴力は振るわねえ主義だが、相手が殺る気ならこっちもこたえるぜ!」

のび太「わあ! タイヘンなことになっちゃった。ドラえもーん!」


ドラえもん「えっと、みなさん! 話し合いで解決しましょう!」

十神「話し合い? 殺人鬼とか? 馬鹿らしい」

ドラえもん「まあまあそう言わずに」

のび太「舞園さんの時みたいにみはりをつけたら?」

大神「名案ではあるが、こやつなかなか腕が立ちそうだ。暴れられれば厄介だぞ」

ジェノ「アタシだって監視されたり閉じ込められるのイヤだし」


ザワザワ……


ドラえもん(どうしよう……大神さんのことでいっぱいでジェノサイダーの対策を考えていなかった)

のび太(どうすればいいんだろう……)

ジェノ「閉じ込められちまったら白夜様の観察も出来なくなっちまうしなー」

苗木「あれ? ジェノサイダーは十神君が好きなの?」

ドラえもん「(! これだ!)そういえば十神くんはジェノサイダーさんの正体を知ってたよね?」

十神「それがなんだと言うんだ?」

ドラえもん「じゃあ、十神くんがジェノサイダーを見張ればいいんじゃないかな?」

十神「な?! 何だと、青狸! ふざけたことを言うな!」

ドラえもん「ぼくは狸じゃない! 猫型ロボット!」

不二咲「でも、もし十神君が殺されちゃったら……」

のび太「コロそうと思ってたらとっくの昔にできてたよね。でもいままで誰もコロしてないなら
     いまのところ、翔さんはだれかをコロす気はないってことなんじゃない?」

ジェノ「まあそうねん。まだ殺意が沸くほど萌えてないしアタシは基本的に面白いことが好きだからサ」


苗木「それに、十神君は腐川さんがジェノサイダー翔だって知ってたし、
    その殺す対象が萌える男だって知っていて側に置いていたんだよね?」

セレス「十神君はジェノサイダーのことをちっとも怖れていないようですが」

山田「僕達一般人は怖くて仕方がないので、ここは勇敢な十神白夜殿が是非!」

十神「な……ふ、ふざけるな?! 冗談ではない! 何故この俺が……!」

大和田「なんだ。いつも偉そうなこと言っといてやっぱりビビってんのかよ」

桑田「やーい、ビビり御曹司ー!」

朝日奈「怖がりー! 態度だけ大きい噛ませ―!」

ドラえもん・のび太「やーいやーい! かませメガネー!」

十神「(ブチッ)フン! いいだろう。貴様ら愚民が出来ないことをやってやるのも
    支配者の務めだ。十神の名にかけて、俺がこいつを監視してやる!」

(あ、チョロ)(こいつマジでチョロいな)(テラチョロすwww)


こうして、ドラえもん達の機転によってジェノサイダー監禁はなんとか免れた。
ついでに、出来るだけ大人数で固まっている方がいいとして舞園の監禁も解かれた。


十神「一つ言っておいてやる。不気味なことに、腐川は気絶以外にクシャミで人格が代わる」

山田「なかなか際どい設定ですな……」

十神「とにかく、殺されたくないなら胡椒を肌身離さず持ち歩くことだな。フン」


スタスタスタ。


ジェノ「なんだかんだツンデレな白夜様サイコー! アハハハハ!」


ダダダダダ!



「…………」


桑田「なんだったんだよ、まったく……」

大神「よくわからない人物であったな」

江ノ島「あんま関わりたくないね」

霧切「ただ、そこまで警戒することはないと思うわ。この閉鎖空間で人が死ねば、
    真っ先に殺人鬼である自分が疑われることくらいはわかるでしょうし」

石丸「とりあえず、十神君の情報は非常に有用だったな。みんな、胡椒を持つぞ!
    特に苗木君と不二咲君は何があっても絶対手放してはいけない!」

不二咲「う、うん」

苗木「わかった」


  ― 三日後 ―


ドラえもん(で、月日が経つのは早いものであれから三日が過ぎたんだけどね……)

ドラえもん(どうなったかと言うと、まあ腐川さんは仲間はずれになっちゃったんだ。
       そりゃあそうなるよね。だって裏の人格は猟奇殺人犯なんだもん)

ドラえもん(事件が起こらないのはいいけど、今の空気が続くとみんなまいっちゃうよ……
       そもそもこれが原因で事件が起こるかもしれないし)

腐川「…………」

「…………」ヒソヒソ

「…………」ヒソヒソ

のび太「ドラえもん、ちょっと……」

ドラえもん「うん」



  ― 男子トイレ ― 


のび太「なんとかしよう!」

ドラえもん「そうだね。今のままじゃ腐川さんが可哀相だ。前は食堂とか人の多い所には
       そんなに顔を出さなかったのに最近やけにやって来るのはきっと寂しいんだと思う」

のび太「かわいそう……でもどうすればいいかな? 二重人格をなおす道具ってある?」

ドラえもん「そんな都合のいい道具はないよ……それにジェノサイダーを消したって
       ジェノサイダーが過去にやったことは消えないんだから結局変わらない」

のび太「うーん、むずかしいなぁ。今までは事件をふせぐことが目的だったけど、今回はちがうし」

ドラえもん「みんなと仲良くなるような出来事があればいいんだけど……」

のび太「だれとでも仲がいいといえば、苗木お兄さんにそうだんしてみようか」

ドラえもん「そうだね。きっと同じこと考えてるんじゃないかな」


             ・

             ・

             ・


苗木「良かった。ちょうど僕も同じことを考えてたんだ」

のび太「やったね。じゃあ三人でなんとかしようよ!」

ドラえもん「三人寄れば文殊の知恵って言うし、何か方法があるはずだ」

苗木「それで、僕思ったんだけどさ……」

ドラえもん「お、さっそくなにか考えが」



苗木「うん。腐川さんのことが気になってるのって僕達だけなのかなって」

ドラえもん「そうか! いきなり全員はムリでも何人か交流を持てばそれがキッカケになるってことだね」

のび太「お兄さんあたまいい!」

苗木「ハハ、そんなたいしたものじゃないよ。それじゃあ、手分けして聞き込みしてみる?」

ドラえもん「じゃあ早速……」

のび太「相部屋の二人にききにいってみよう」


  ― 石丸の部屋 ―


のび太「というわけなんだけど……」

石丸「またそんなことを……君達は本当に感心な子供達だな! 日本の未来は安泰だ!」ブワッ!

のび太「いやそこまでじゃないけど……」

ドラえもん「石丸くん、落ち着いて」

石丸「それで、腐川君のことなのだが……僕も正直今のままでは良くないとは思っている」

のび太「じゃあ……」

石丸「しかし……駄目なのだ。腐川君がジェノサイダーという人格とは別人だというのは
    頭ではわかっているのだが、どうしても折り合いがつかないというか……正直怖い」

石丸「ジェノサイダーの存在もやったことも主義思想もけしからんことばかりで
    風紀委員として放置する訳にはいかんと考えてはいるのだが、僕の力では……」

のび太「そっかぁ」

石丸「……君達は勇敢だ。殺人鬼相手に平然と話をすることが出来るのだから。
    時に人はそれを無知や蛮勇と罵るかもしれないが、僕は心から敬意を払う」

ドラえもん・のび太「…………」



  ― 大和田の部屋 ―


大和田「ああん? 腐川についてどう思うかって?」

のび太「うん。どう思う?」

大和田「別に。なんとも」

ドラえもん「最近一人で過ごすことが多くて可哀相じゃない?」

大和田「あいつは元から単独行動が多かったろ。それになにより、あいつは殺人鬼なんだぜ?
     ゾクの俺ですらさすがに殺しはやらなかったっていうのによ……」

のび太「でも、腐川さんとはちがう人格なんだよ?」

大和田「俺にはその人格が違うってえのがよくわからねえんだ。結局は同じ人間だろうが」

ドラえもん「うーん、そういわれると厳しいなぁ。ぼく達も専門的な知識がある訳じゃないし」

大和田「……ただな」

のび太「なに?」

大和田「心の友であるお前らが、真剣になんとかしたいっていうなら俺は黙って協力するぜ」

ドラえもん「大和田くん……」

大和田「男としちゃ女が暗え顔してんのにほっとくワケにもいかねーしよ」ポリポリ

ドラえもん(ぼく達が特訓したり、大亜さんに叱られたのがちゃんと成果に出てるんだなぁ)ジーン


少し照れながら頭をかく大和田を見てドラえもんは密かに感動していた。


  ― 舞園の部屋 ―


舞園「腐川さんですか。……実は私も心配になってたんです」

苗木「本当?!」


舞園「はい。私が白い目で見られるのは自業自得なので仕方がありませんが、腐川さんは
    自分の知らない間に起こったことで責められるんですよね? きっと辛いと思います」

苗木「うん。……良かった。これでとりあえず四人味方が出来たよ」

舞園「四人? もしかして、あとの二人はドラえもんさんとのび太くんですか?」

苗木「そうだよ。元々二人から相談されたのがキッカケなんだ」

舞園「そうですか。……あの子達って、なんだか不思議な二人ですね」

苗木「ハハッ、本当にね」

舞園「私に何が出来るかわかりませんが、もし何かあったら気軽に声をかけてください」

苗木「ありがとう!」


  ― 体育館 ―


桑田「あー? 腐川? ないな」

のび太「お兄さん、そこをなんとか……」

桑田「いや、ムリっしょムリムリ……だって殺人鬼だぜ? 突然豹変して襲われるかもしんねーし」

ドラえもん「でもほら、ジェノサイダーになってもコショウがあれば……」

桑田「……そういう問題じゃねーだろ。過去に何人も殺してんだぞ?」

ドラえもん・のび太「……うーん」

不二咲「ぼ、僕は腐川さんとも仲良くしたいなぁ……」

のび太「お姉……いや、お兄さん、やさしいなぁ」

桑田「マジかよ! お前一番危ないって言われてんのに!」


不二咲「わかってるんだけどさ、やっぱり可哀相……折角お友達になったんだから仲良くしたいよ」

不二咲「みんなが仲良しなら、きっと楽しいと思うんだ!」ニコッ

ドラえもん(天使……)ジーン

のび太(天使だなぁ……)ジーン

桑田(ヤベー、男に萌えるって気持ちがちょっとわかったかも。つーか、マジこいつ殺される……)

のび太「ところで、なんでいっしょにいるの?」

不二咲「僕ねぇ、野球ってやったことがなかったから桑田君に頼んで教えてもらってたんだぁ」

桑田「おう。のび太に比べりゃ不二咲の方が全然筋がいいぜ」

ドラえもん「そりゃあのび太くんより下手な人なんて存在しないよ」

のび太「そんな、ヒドイ!」


アハハハハハ!


  ― 朝日奈の部屋 ―


朝日奈「腐川ちゃんかぁ……気になってはいるんだけどね……」

大神「難しい所だな。腐川本人に罪はないが、ジェノサイダーのやったことはけして
    許されることではない。そしてジェノサイダーは腐川でもある」

苗木「そうだよね……」

朝日奈「仲良くしたいんだけど、どうしても怖くて……」

大神「出来る限り力にはなるつもりだが、どこまで期待に添えるかはわからぬ」

苗木「あ、いいんだ。その気持ちが大事だから。ありがとう」



  ― 食堂 ―


 ・テーブル1


葉隠「ムリだべ」

のび太「えーっと」

葉隠「ありえないべ」

ドラえもん「もうちょっとこう、やる気をですね」

葉隠「あ、俺ちょっと用事思い出したんでわりいなー」スタコラ

「…………」

のび太「……お姉さんは?」

江ノ島「ギクッ。アタシ? いや、マジムリだから」

ドラえもん(いや、あなたに関してはわかってたけどね)

江ノ島「そう言う訳なんで、じゃあバイキュー!」

のび太(古いよ、それ)


 ・テーブル2


山田「な、苗木誠殿、正気ですか?! 相手は殺人鬼……それも連続猟奇殺人犯ですぞ?!」

苗木「でもほら、それは別人格の時の話だしさ! 普段はまあ……」

山田「普段もそれはそれで問題ありですが」


苗木「……ま、まあそうだけど」

セレス「お人よしの苗木君には申し訳ありませんがあの方と仲良く、というのは不可能ですわ」

苗木「不可能とまで言わなくても……」

セレス「元より地味で暗い方でしたが、人格が変わったら変わったでお下品になりまして……
     正直、視界に入るのも不快です。わたくしとは住む世界が違うのですよ」

苗木(うーん、これは厳しいなぁ……)


               ◇     ◇     ◇


のび太「あ、お兄さーん!」

ドラえもん「どうだった?」

苗木「僕は朝日奈さん、大神さん、舞園さん、山田君、セレスさんに聞いてみたよ」

のび太「ぼくたちは同じ部屋のお兄さんたち二人と、あとは……」

ドラえもん「あとは桑田くん、不二咲くん、葉隠くん、江ノ島さんに聞いてみたよ」

苗木「残ってるのは十神君と霧切さんか。十神君なら多分自室かな」

のび太「え、きかなくていいよ。時間のムダだし」

ドラえもん「なんて言うかわかりきってるからね」

のび太「あの人セイカクわるいもん。大人げないし。だいたいお金もちだかなんだか
     知らないけど、高校生にもなって支配者とか帝王とかふつう言わないよね」

ドラえもん「の、のび太くん! ……まあ、ぼくもちょっとないなーとは思うけど言い過ぎだって」

苗木(と、十神君……! 子供達にここまで言われてるよ?! いいの?!)汗


ドラえもんものび太も十神に厳しい。


苗木「……じゃ、じゃあ霧切さんを探そうか」

ドラえもん「霧切さんなら事情を言えば手伝ってくれると思うよ」

のび太「うん、ぼくもそう思う」

苗木(なにこの信頼の差)


  ― 苗木の部屋 ―


のび太「で、どうすればいいの?」

ドラえもん「まずは反応の差をまとめてみようか」


・好意的
舞園、不二咲

・協力はしてくれそう
石丸、大和田、霧切

・微妙(だけどノリはいいので持って行き方次第)
朝日奈、大神

・無理
その他


苗木「うーん、まあ協力してくれる人をいれれば半分いるだけいいと思おうかな。
    とりあえず霧切さんには僕が事情を説明するから、後で集まって話し合いしよう」

ドラえもん「じゃあ他のみんなに声をかけておくね」


こうして苗木の部屋に半数近くの人間が集まり対策会議を開くことになった。

あらかじめ日記は使えないのかな


ここまで。何度かお目汚しをしてしまい失礼しました。
もう五年くらいSS書いてるんだけど、今日は特別調子悪かったみたいです。

あと、前は自動でsaga入ってたのに今はなんでsageになってるんだろう
前から思ってるけどほんとフィルター邪魔ですよね。困る…

>>305
確か危険なので燃やしたはず

>>303のび太「高校生にもなって支配者とか帝王とかふつう言わないよね」

田中「」グサッ



  第十三話 腐川さんをすくえ!(後編)


石丸「それではこれより、第一回腐川君を救おう会の開始をここに宣言する!」


ワーパチパチパチ!

呼ばれた側なのにいつの間にか議長となっている石丸の音頭によって話し合いは始まったのだった。


石丸「とは言ったものの、正直僕も腐川君のことはまだ怖いしさっぱり名案がわかない。
    なので、まずはこの会の主催者である苗木君に意見を求めるぞ!」

苗木「えっ、僕?! えっと……僕もみんなの案が聞きたくて呼んだから、特に意見は……」

大和田「おいおい、しっかりしろよ主催者」

不二咲「でも、こういうのはデリケートな問題だからちょっと難しいかも……」

のび太「霧切お姉さんはなにかいいかんがえない?」

霧切「……悪いけど、コミュニケーションに関しては私よりみんなの方が得意だと思うわ」

石丸「何ということだ。これだけの人数が集まって一つも案が出ないとは……」

大和田「あー、どうすんだよ」

舞園「あの……」

苗木「舞園さん? 何か思いついたの?」

舞園「案という程でもないんですが……この場に腐川さんを呼んだらどうでしょう?」

石丸「そんな! 腐川君を救うための会なのに君は本人自らに案を出させると言うのかね?!」

舞園「いえ、そうではなくて……自分に味方がいる、一人じゃないってわかるだけで、
    人は安心出来るものだと思うんです。……私がそうでしたから」

ドラえもん「ああ、なるほど……」


苗木「そっか。僕達がいくらこうして頭を悩ませていても、本人に伝わらなきゃ意味がないもんね」

不二咲「まずはみんなに理解してもらうことより、僕達が味方だよって腐川さんに伝えるんだね!」

大和田「なかなかいい案じゃねえか? 最悪他のヤツらと和解できなくてもなんとかなるだろ」

のび太「じゃあ、ぼくがさっそく呼んでくる!」

ドラえもん「行ってきます!」


               ◇     ◇     ◇



腐川「なななな、なんなのよ一体?! アタシをどこに連れて行こうっての?!」

のび太「そんなこと言わないで!」

ドラえもん「きっといいことがあるから」

腐川「ウソ、ウソよ! どうせアタシを騙すための罠だわ。アタシにその手は聞かないわよ……!」

のび太(うたぐりぶかいなぁ……)

ドラえもん(なんというか、腐川さんの性格はアニメ以上だよね……)

腐川「こ、ここ苗木の部屋じゃない……?! こんな所に連れ込んで何を……?!」


ガチャリ。


「いらっしゃーい!」

腐川「……は?」


苗木「いらっしゃい、腐川さん。飲み物はみんなと一緒のお茶でいい?」

腐川「は?」

舞園「そんな所に立ってないで、こっちに来て座ってください」

腐川「はあ?」

不二咲「みんなでお菓子を食べながらおしゃべりしてたんだぁ。腐川さんも一緒に話そうよぉ」

腐川「……え?」

のび太「どうしたの、お姉さん?」

ドラえもん「なんか固まっちゃってるけど」

腐川「…………」

大和田「おい、なにぼーっとしてんだよ。大丈夫か?」

腐川「……わよ」

霧切「腐川さん? どうかしたのかしら?」

腐川「許さないわよ!」

「えぇっ?!」

腐川「あ、あああ、あんた達……あ、アタシにこんな優しくして、許さないから!」


ガチャッ、ダダダダダ!


のび太「ど、どうしたんだろう? よろこぶと思ったのに!」

石丸「まさか怒らせてしまったのか?!」


大和田「ハア? 優しくされて怒るとか頭おかしいんじゃねえかアイツ?」

苗木「いや、怒ってるというかあれは……」

舞園「照れてるんですね」

ドラえもん「つまり、急に優しくされて恥ずかしかったってこと?」

のび太「へんなの。イミがわからないよ」

舞園「そういう人もいるんですよ。そして、ここで引いては行けません! 全力で押すべきです!」

のび太「じゃあ、もう一度呼びに行こうか?」

霧切「今行ってもきっと開けてくれないわよ。少し時間を開けて冷静になってから
    連れて来た方がいいわ。そうね、夕食の後部屋に戻る前に確保が妥当かしら」

石丸「よし、腐川君捕獲作戦だな!」

苗木「動物じゃないんだから……」

舞園「今度こそ逃がさないでバッチリ料理しちゃいますよ!」

苗木「舞園さんまで……どうしたの、急に張り切って?」

舞園「だってかわいいじゃないですか。照れて逃げちゃうなんて。私、腐川さんのこと誤解してました」

不二咲「うん。もっと、キツイ人なのかと思ってたけど、素直になれないだけなんだねぇ」

大和田「あぁ~、そういう言い方をされると俺もちっと来るかもなぁ。俺もあんまり素直じゃねえし」

ドラえもん「根は良い子なんだよ」

ドラえもん(――みんなね)

のび太「よーし、じゃあまたばんごはんのあとにあつまろう!」エイエイオー!



そして夕食後。


腐川「な、な、なんなのよあんた達?! さっきといい今といい、アタシの執筆の邪魔をしたいの?!」

のび太「ジャマだなんて、そんな」

ドラえもん「ぼく達はただ腐川さんと仲良くしたいだけだよ」

腐川「そ、そんな訳ないわ。あんた達みんなでアタシをハメるつもりなんでしょ!」

舞園「そんなことないですよ」

腐川「ウソ! ウソよ……だって……」


ここで腐川はとんでもない話をし始める。それは彼女自身の辛い経験だった。


腐川の悲しい過去①


腐川「か、過去にもあったわこんなこと……小学生の時、浮いてるアタシと一人だけ仲良く
    話してくれる男の子がいて、アタシは勇気を振り絞ってラブレターを書いたのよ」

石丸「小学生にしてラブレターなど不純d 舞園「少し黙っていてください」

腐川「でも次の日、そのラブレターは学校の掲示板に張り出されて晒し者にされたわ」

一同「…………うわぁ」


思わず変な声が出る。


石丸「なんと酷い輩だ! 僕がその場にいたら成敗してやったものを!」

苗木「さっきラブレターは不純とか言ってなかった?」


石丸「それとこれとは別問題だ! 人が真心込めて書いた手紙を衆目に晒すなど論外だろう!」

大和田「まったくだぜ! そんな野郎はぶん殴るべきだ!」

腐川「……ア、アタシが悪いのよ……向こうが嫌がってたのに気付かなかったから……」

舞園「そんなことありませんよ……」

不二咲「そうだよ……酷い」ウルウル


  腐川の悲しい過去②


腐川「これだけじゃないわよ……アタシ、中学の時生まれて初めてデートに誘われたの」

石丸「デートだと?! 不純異性交遊は禁止… 舞園「石丸君は黙っていてください」

腐川「一緒に映画を見ていたんだけど、気が付いたらいなくなっていて……
    後から知ったけど、アタシを誘ったのは仲間内での罰ゲームだったの」

「あぁ……」


また変な声が出る。


のび太「ひ、ひどい……」

ドラえもん「なんて人達だ!」

石丸「あああ、許せん! 何故その場に僕はいなかった! そんな輩まとめて取り締まってやったものを!」

苗木「さっき不純異性交遊は禁止とか言ってなかった?」

石丸「それとこれとは別問題だ! 人の心を弄ぶなど言語道断! 更正するまで説教してやりたい!!」

大和田「まったくだぜ! ぶっ飛ばしてやる!」


腐川「ま、まだまだあるわよ」

のび太「えぇ~?!」

苗木「まだあるの……?」

霧切「腐川さん、なかなかハードな経験をしているのね……」

ドラえもん(これは予想外だ……もしかしてアニメでは語られていなかっただけで、
       ゲームでは語られてるのかな? ゲームの知識もないと不味いかもしれないな)


その後も腐川の不幸話は延々と続いた。


             ・

             ・

             ・


腐川「と、とにかくあんた達があたしに優しくするなんて罠なのよ! わかったでしょ?!」

のび太「ぜんぜんわかんない!」

腐川「ハァ?!」

霧切「腐川さんが今まで酷い人間関係に悩まされていたのはよくわかったわ」

腐川「だったら、あたしのことはもうほっとい……」

霧切「でも見てちょうだい。苗木君、石丸君、大和田君、のび太君。この人達に嘘がつけるかしら」

舞園「そうですよ。正直四人組って言ってもいいくらいすぐ顔に出ますよ!」

苗木「なにその変なユニット名みたいなまとめ方」


不二咲「今までは酷い人達ばかりだったかもしれないけど、ここのみんなは大丈夫だよ。だって、
     考えてみて。僕みたいな女装したなよなよした男子も受け入れてくれたんだよ?」

腐川「う、それは……」

ドラえもん「腐川さんは人と関わるのに臆病になってしまってるだけだ。
       もう一度、信じてみてよ。ぼく達は裏切ったりしないよ!」

腐川「…………」

苗木「ね、腐川さん?」

腐川「…………」

のび太「信じてよ!」ジッ

腐川(…………)

腐川「……わかったわよ」


子供の純真で真っ直ぐな眼差しに、とうとう腐川も根負けした。


苗木「やった!」

石丸「おお、腐川君! 君を信じていたぞ」

腐川「べ、別にあたしはあんた達を信じた訳じゃないわよ! た、ただあんまり
    しつこいからちょっと付き合うくらいならしてあげるって言ってんの!」

一同(素直じゃないなぁ……)

石丸「よし! では腐川君を迎え、改めて会を始めようではないか」

腐川「……そもそもこれなんの会なのよ」

舞園「腐川さんを救う会です!」

腐川「ハ?」


苗木「あ、ええとね……」カクカクシカジカ

腐川「全員と仲良くなんてなれる訳ないでしょ。あたしはただでさえ嫌われ者なんだから……」

石丸「そんなことはない! 僕だって今まで友達はいなかったがここに来て親友が出来たぞ!」

不二咲「ぼ、僕も女装する前は男のくせになよなよしてっていじめられてたよ!」

大和田「俺はつええからイジメられたりとかはなかったけどよ、学校で浮くのなんざしょっちゅうだぜ?」

霧切「私もあまりみんなと仲良くしていなかったけど、この会に呼んでもらえたわ」

腐川「な、なによこの流れ……カミングアウト大会? あたしは傷の舐め合いなんてしないわよ!」

ドラえもん「まあまあ」

のび太(ほんとめんどくさいな、この人……)

苗木「舐め合いとかじゃなくて、みんな腐川さんに元気になってもらいたいんだよ」

腐川「なによ……あんた達、あたしが怖くないの? あたしは人殺しなのよ?」

不二咲「正直に言うと怖いよ。腐川さんには悪いけど、僕いつも胡椒を持ち歩いてるんだ」

腐川「は? ……じゃ、じゃあ、なんで?」

石丸「元々、今回の事を言い出したのはのび太君達なのだ。子供が頑張っているのに、
    高校生の僕が怖いからと見て見ぬ振りをする訳にはいかないだろう!」

石丸「そもそも、悩んでいるクラスメイトがいたら助けるのが風紀委員の務めだ!
    もし君のことを見捨てたら、僕はもう超高校級の風紀委員を名乗れなくなる」

大和田「俺も似たようなもんだ。正直、お前の中のアイツを許したワケじゃねえ。
     でも、俺はこいつらのダチだ。だからダチのやることには黙って協力する」

舞園「私ものび太君とドラえもんさんに助けてもらいました。だから今度は私が助けたいんです!」


苗木「ほら! みんな腐川さんのこと心配してるんだよ。もうちょっと素直になったらどうかな?」

腐川「眩しい……」

ドラえもん「ん?」

腐川「眩し過ぎるわよ、あんた達! あ、あたしみたいな日陰者には、
    あんた達は眩し過ぎる。もう、見てられない!」


ガシッ!


舞園「逃がしませんよ、腐川さん」ニッコリ♪

霧切「私もどちらかと言えばあなた寄りだし眩しいという意見には同感だけど、
    ずっと見ていれば目も慣れるんじゃないかしら?」

舞園「今日は夜まで語り合いましょう!」

腐川(振りきってもしつこくしつこく食い下がってくる……
    もう、なんなのよなんなのよなんなのよ~?!)

腐川「わ、わかった。わかったわよ! この変な会に付き合えばいいんでしょ! ……ハァ」

苗木「でもどうしようか。元はと言えば人が集まれば何か名案が出るかもって言って集まったんだよね」

腐川「……やっぱり無理よ。あたしみたいな根暗と仲良くしたがる変わり者なんてあんた達くらいよ」

腐川「正直、あんた達だけでもあたしは十分……」


そう言って腐川は俯く。


舞園「実は、私に案があるんです!」

のび太「えっ、なになに??」


舞園「なんだか、あの秘密暴露のせいですっかり私達の空気が悪くなってしまったじゃないですか。
    まずはその空気を何とかしないと腐川さんを受け入れる余裕も生まれないと思うんです」

ドラえもん「なるほど。それは確かにね」

舞園「そこで、まずは親睦会を開いて皆さんがリラックスしたあたりに、
    腐川さんの良い面を全面的にアピールしていくというのはどうでしょうか?」

のび太「いいね! 楽しそう!」

不二咲「パーティーだねぇ!」

霧切「それならみんなも協力するでしょうし、いい案じゃないかしら?」

腐川「で、でもあたしにはアピールする良い面なんてないわよ!」

ドラえもん「そんなことないよ! どんな人にだって必ずいいところはあるんだから」

腐川「じゃあ具体的に言ってみなさいよ……!」

ドラえもん「えーと、急に言われても……」

のび太「う~んう~ん……」

腐川「出ないんじゃない!」

苗木「ま、待って待って! 今考えるから……」

霧切「腐川さんは超高校級の文学少女。作家としての感性、執筆能力は誰にも負けないはず」

大和田「勉強はできるんじゃねえか? とりあえず国語は得意だろ?」

不二咲「色んな小説の知識を持ってそうだよね」

石丸「それは素晴らしい長所ではないか! 勉強が得意なのは良いことだぞ」

舞園「そうです。腐川さんと言えばやはり小説――」


舞園「だからみんなで劇をしましょう!」


『劇?』


舞園「はい! 親睦会の出し物として劇を行うんです」

霧切「成程ね。その脚本を腐川さんに書いてもらうということかしら?」

舞園「そうです。超高校級の文学少女である腐川さんが書いた脚本なら
    必ずや皆さんの心を動かすはずです!」

ドラえもん「うん。いいんじゃないかな?」

のび太「おもしろそう! さすが舞園お姉さん!」

舞園「頑張って考えました!」フンスー!

大和田「劇かぁ。やったことねえなあ」

苗木「劇なら、朝日奈さんや大神さんも協力してくれるんじゃないかな?」

不二咲「いいねえ。恥ずかしいけど、みんなでやるなら僕もやってみたいな」

石丸「それはとても良い案だと僕も思う。……だが、まだ足りないな!」

ドラえもん「足りない?」

のび太「え? なにが?」

石丸「腐川君が素晴らしい脚本を書いたとしよう。それでみんなが感動している中、
    平然と水を差しそうな人間がここにはいるだろう!」

セレス『まあ、腐川さんは作家でプロなのですからこのくらいは書けて当然ですわね』

十神『酷い大根演技だったな。話が全く頭に入ってこなかった。
    これなら葉隠のくだらんオカルト談義を聞かされる方がまだマシだな』

ドラえもん・のび太「あぁー……」


容易に想像が付きすぎて思わずため息が出る。


腐川「そ、そもそもあたしまだやるなんて言って……」

舞園「書いてくれますよね?」キラキラ

腐川「う……(断れる雰囲気じゃない……)」

苗木「でも、足りないってじゃあどうすればいいの?」

霧切「石丸君には何か考えがあるのかしら?」

石丸「ウム! 当然だとも!」

大和田「さすが兄弟だぜ! で、なにすんだ?」

石丸「一発芸だ!!」

腐川「は……?!」

石丸「普段の君が根暗で取っ付きづらいというなら、普段と違う面を見せてみんなに
    見直してもらえばいいのだ。忘れろビームでも撃って君の過去を忘れさせればいい!」

腐川「何言い出すの、こいつ……?!」


その時ドラえもんは気付いた。


ドラえもん(あー……もしかしてそのつもりであの時はふざけてたのかな?)

ドラえもん(確かに日頃から考えてないといきなりあんな動き出来ないよね。忘れろビームは、
       周りと仲良くするために石丸くんが前から考えてたギャグだったんだ)


石丸「という訳で一緒に練習しようではないか! さあ、さあ、さあ!!!」

苗木「え、いやいや、いくらなんでもそれは……」

大和田「おお、名案だな! よし、腐川やってやれ!」

不二咲「僕も一緒にやるよぉ!」

腐川「え? えっ?! はいぃ?!」

のび太「うん。たしかに腐川さんがそんなことしたらぼくもビックリしちゃうな」

舞園「……アリかもしれないですね」

ドラえもん「ぼくも腐川さんの忘れろビーム見てみたい!」

苗木(え、なにこの異様なビーム推し)

霧切(ご愁傷様ね……)

腐川「や、やらない! 絶対やらないわよあたし!!」

石丸「忘れろ忘れろ忘れろビーム!」

腐川「だから無理だってぇーっ!!!」


一発芸をするかどうかはともかくとして、親睦会を開く方向に決まりその日の会は終了したのだった。


ここまで!更新遅れてゴメン

投下予告はツイッターでしているので、良かったらどうぞ
http://twitter.com/doctor_ronpa_K

ドクターKの方も執筆中。皆様の感想や合いの手のお陰で
モチベアップに繋がります。いつもありがとうございます!



  第十四話 とどけ、ゆうじょうのビーム!



親睦会当日――


舞園「舞園さやか歌いまーす!」

大和田「やっぱ舞園のヤツうめえな」

桑田「さやかちゃん最高ー! よし、次は俺が歌うぜ!」

のび太「お兄さん、ぼくのにがおえ描いて!」

山田「フフン、お安いご用ですぞ!」

ドラえもん「葉隠くん、ぼくを占ってよ」

葉隠「ロボットを占う日が来るとはちょっと予想がつかなかったなぁ」

朝日奈「私が作ったドーナツまだまだあるから!」

大神「どんどん食べてくれ」

苗木(親睦会を開いたのは大正解だったようで、大盛り上がりだった。
    やっぱり、みんなどこかストレスが溜まっていたんだね)

苗木(出し物をしようって話だけあらかじめしてあって、舞園さんと桑田君が歌を披露、
    僕は倉庫にあった手品セットを使ってドラえもんと一緒に手品をした)

苗木(ちなみにこれも全部作戦だ。この後のね)

のび太「ぼくたちは劇をします!」

不二咲「この劇は観客巻き込み型だから、みんなも参加していってねぇ!」

山田「巻き込み型? 遊園地のヒーローショー的なものですかな?」


舞園「ガンガンアドリブしていきますよ~!」

江ノ島「へえ、面白そうじゃん!」

十神「くだらん。素人の大根演技など見てもな」

セレス「まあまあ、退屈凌ぎの余興と思えばよろしいのでは?」

のび太「バカにしないでよ! きっとぎゃふんと言わせてみせるからね!」

ドラえもん(ちなみに、脚本はみんなのアイディアを元に腐川さんに書いてもらったんだ)

苗木「それではスタートするよ! タイトルは、『桃の果実の割れぬ間に』」


完全なオリジナル作品より、誰もが知る国民的おとぎ話を元にした方が
とっつきやすいだろうと桃太郎をベースにしたのだが……
腐川が一人で考えたのではなく全員の思い付いたしっちゃかめっちゃかな
アイディアを全てつめ込んだため、その劇の内容はまさしくカオス――混沌を極めた。


苗木「さやかさん……僕、ずっと君を見ていたいんだ」

舞園「ダメです、誠さん。私、洗濯物を洗いに行かないと……」

苗木「僕だって芝刈りに行かないといけない! でも、僕には今しかないんだ!」

舞園「誠さんっ……!」


――ある時はラブロマンス!


のび太「グエエエエ」

苗木「拾った桃から手が! 手が!」

舞園「きゃああああああああ!!」


――ある時はホラー!


朝日奈(ナレーション)「桃太郎はきび団子を使って猿と犬と雉、そして猪八戒を仲間にしました」

山田「え、猪八戒?!」

江ノ島「豚ですらないんだ……」

朝日奈「ほら、早く猪八戒来て! ほらほら!」

山田「ブヒイイ、僕?! 猪八戒ナンデ?!」

桑田(猿)「俺だって何故か参加させられたんだからオメーも来い!」

石丸(犬)「ハッハッハッ! これで鬼どもは一網打尽だな!」

不二咲(雉)「そだねー」


――唐突な無茶振り!


のび太「わあ! 鬼の襲撃だー!」

大和田「こいつらはさらっていくぜ!」

不二咲「桃太郎くーん!」


大和田は不二咲の腕と石丸の足を掴んで引きずっていく。

ズリズリズリ……ドゴッ!


大和田(あっやべ)

石丸「ゴハッ……」

苗木(大和田君、いくらなんでも足を持って引きずらなくても……
    というか今盛大に石丸君の頭をテーブルの脚にぶつけたよ?!)


ドッ!←気の毒なのだが思わず笑う一同の声。


――予想外のアクシデント!


舞園「ああ、可哀想な桃太郎……鬼にやられて逃げ帰って来たのですね。
    西の山に大賢者がいるはずです。その方に助言を貰うといいですよ」

ドラえもん(流石舞園さんだ。長いセリフもスラスラと話すな。アドリブも難なくこなすし)←道具係

のび太「大賢者さん、どうすれば鬼を倒せますか?」

舞園(一人二役)「伝説の水晶玉とギャンブラーの勝利の指輪。その二つを手に入れなさい。
          勇者に道を示してくれるでしょう。世界を救いなさい、選ばれし少年よ」

のび太「伝説の水晶玉ってどこー?!」

舞園「龍の山へ向かうんです」

セレス(これはわたくしも舞台に上がる必要があるのでしょうか)ドキドキ

葉隠(後で水晶球のレンタル料もらわねえとな!)ウキウキ


――何故か始まる壮大なファンタジー!


ドラえもん「…………」スッ ←カンペも担当している。

のび太「えっと、アイテムも手に入れたしさらわれた二人も助けたし、いよいよ鬼ヶ島だね!」

猪八戒(山田)「ああ、あそこに鬼が! ……というか僕ずっとアドリブで凄くない?!」

桑田「それ言ったら俺もなんだけど。つーか、そのぉ……」

大神(E:角と棍棒)「…………」

大和田(E:道路標識)「…………」

霧切(E:鬼姫衣装)「…………」


 ズ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ! !


のび太「うえーん、こわいよ~!!」

((( 倒 す の 無 理 だ こ れ ! )))


――どう見ても倒せない強敵!


朝日奈(ナレーション)「ここは猿が一発ギャグを披露して先制攻撃だね! 行け、行くのだ猿よ~!」

桑田「お、俺?! いやいやいや、いきなり振られてもムリだし!」

舞園(舞台袖から)「出来ますよね、猿さん?」

桑田「いや、その……」

舞園「 や り ま す よ ね ? 」

桑田「あ、はい。じゃあ、えっと、その………………だっふんだ!」


シィィィン……


のび太「えっと……」チラッ

不二咲「あ、あの、その……」

石丸「…………」←無言の肩ポン。

桑田(俺がすべったみてーじゃんか……)グスッ


――スベる桑田!!


舞園「…………。あまりのつまらなさに鬼がダメージを受けてます!」

大和田「え?! ……つ、つまらねえ。おかげで俺の心臓(ハート)が凍(フリーズ)っちまったぜ!」

朝日奈「次は誰かにモノマネしてほしいなー!」

桑田「それ台本じゃなくておめーのアドリブだろ?!」

山田「ならば拙者が! 十神白夜殿のモノマネをしますぞ!」

十神「待て、ふざけるな貴様?!」


山田「フン、愚民が」メガネキラーン☆

江ノ島「あはは! 似てる似てる!」

セレス「まあ、意外な特技があったものですね」

葉隠「そっくりだべ!」

十神「全然似ていない!」

山田「最後に勝つのはこの俺様だ。十神の名にかけて!」

十神「俺は俺様なんて言ったことは一度も……!」

舞園「次は苗木君がやります!」

苗木「え、僕?!」


――唐突に始まる仁義なきモノマネ合戦!


石丸「……知っている。僕達は知っているぞ」

のび太「きみは……青おにだったんだ! わざとワルモノのふりをしていたあの青おにだよ!」

不二咲「自分を犠牲にして、みんなを守ってくれていたんだね……」

霧切「ごめんなさい……ずっと黙っていて……」

苗木「そんなのってないよ……あんまりだよ!」

霧切「ありがとう……でも、いいの。鬼は嫌われ者なのよ。人間とは一緒にいられない……」

大神「我等の犠牲を無駄にするな。お主らが救うのは人間の世だろう」

苗木「ダメだ……そんなのダメだ! 君達だけを犠牲になんて出来ないよッ!!」


――そして、明かされる衝撃の真実と感動!

――物語はフィナーレへ……


             ・

             ・

             ・


苗木「以上、オリジナル桃太郎でした」


『……………………』


シーーーン。


のび太(あれ、つまらなかったかな? そんなはずは……)

腐川(まさか……あたしの書いた台本がダメだったからあいつらに恥をかかせたんじゃ……?!)


パチ、パチ……


腐川「……?!」


パチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!


江ノ島「めちゃくちゃ面白かったよ!」

葉隠「おうっ! すっげー良かったべ!」

山田「途中からアクター側になっちゃいましたけど、役に入り込んじゃいました!」

桑田「いやー、結末知らない分ラストの展開はマジで驚いたわー!」

セレス「正直まったく期待していなかったのですが、なかなか良かったですわね」


十神「まあ、退屈凌ぎ程度にはなったな。フン……」

朝日奈「うんうん! 頑張った甲斐があったよ!」

大神「脚本が素晴らしかったな。誰が書いたのだ?」


朝日奈と大神には脚本を渡して手伝って欲しいとしか伝えていないため腐川が書いたことは知らない。


のび太「腐川お姉さんが書いてくれたんだよ!」

『えっ?!』


一瞬、場が静まる。


腐川「な、なによ……文句あるの? あたしは作家よ? 脚本くらい、別に……」

葉隠「別に文句はねえけど……」

江ノ島「フーン、腐川が書いてたんだ」

腐川(フ、フン……やっぱり空気が悪くなったわね……どうせあたしなんて
    ジメジメした根暗で嫌われ者で殺人鬼で関わりたくなんてないわよ……)

ドラえもん「そうだ。腐川さん、今こそアレだよ」ボソボソ

のび太「この空気をかえるにはアレしかないよ!」

腐川「ハァ?! アレって、ま、まさか……」


腐川の脳裏に閃くあの言葉。




『一発芸だっ!!』



石丸『普段の君が根暗で取っ付きづらいというなら、普段と違う面を見せてみんなに
    見直してもらえばいいのだ。忘れろビームでも撃って君の過去を忘れさせればいい』

のび太『うん。腐川さんがそんなことしたらぼくもビックリしちゃうな』

ドラえもん『ぼくも腐川さんの忘れろビーム見てみたい!』


腐川(は? ないない、有り得ないわよ……冗談じゃないわ! このあたしが一発芸だなんて……)

舞園(腐川さん……)うるうる

不二咲(腐川さん……)うるうる

石丸(腐川君! 僕は腐川君のことを信じているぞ!)ジッ

大和田(お、おい。どうなんだ?! やるのか?!)

ドラえもん(腐川さん!)チラッチラッ

苗木(無理しなくていいんだよ!)

霧切(やるかやらないかはあなたが決めるべきだわ)


周りは腐川のことを心配そうに注視している。


腐川「…………」



―ハ、ハハ……

―意味わかんない。なんでこんなことになったんだっけ?

―そうよ! アイツらが勝手に妙なこと言い出しただけであたしは関係ない。

―勝手にやってりゃいいじゃない……


―ホント、馬鹿よね。わざわざこんなパーティー開いて

―下手くそな大根芝居まで披露しちゃってさ……

―もう見てられないっての。


―……馬鹿みたい。



腐川「…………」スクッ

山田「腐川冬子殿?」

桑田「腐川、どうした?」



―馬鹿よ、馬鹿! どいつもこいつも馬鹿ばっかり!

―……でも、馬鹿があれだけやったのに


―あたしだけ何もしない訳いかないじゃないの!



腐川「……いいわよ。やってやるわよ」


大神「腐川?」

朝日奈「ふ、腐川ちゃん。どうしたの?」

腐川「うっさいわね! あたしが台本書いたのが気に入らないなら忘れさせてやるって言ってんの!」

江ノ島「えっ? 忘れさせてやるって?」

腐川「あ、あたしも……一発芸を披露してやるって言ってんのよ」

桑田「えっ、マジで?!」

セレス「これは……面白くなってきましたわね」

十神「…………」

腐川(あぁ、ただでさえ白夜様には嫌われてるのに馬鹿達と一緒になってこんな
    馬鹿みたいなことしてたら、もっと嫌われるでしょうね……)

腐川(……違うか。馬鹿に乗せられてこんなことをするんだから、きっとあたしが)


―― きっとあたしが一番の大馬鹿者!!


腐川「あ、あんた達! 人生で一回しかやらないから、目ぇ見開いてしっかり見なさい!」

山田「何が始まるんです?」

葉隠「これは何か凄いものが来るべ。間違いない!」

腐川「い、いいい行くわよ……!」

苗木(腐川さん、まさか本当に……?!)


カッ!!



「忘れろ」バッ!


「忘れろ」ババッ!


「忘れろ」シュババッ!


「ビィィィィィム!!」シュベェェアッッ!!!



  ド  ド  ン  ッ  ! ! ! ☆





『……………………』


シィーンッ!


腐川(お、終わった……あたしの全てが……)ガックリ…

腐川「あ、あの……いいい今のはちょっとした気の迷いというか、その……!」

石丸「素晴らしい……」

石丸「心を洗われるようだ。感動したッ! 僕は感動したぞッ!」ドブシャアッ!

腐川「ハ?」

不二咲「凄かったよ、腐川さん!」ポロポロ

腐川(え、いや……なんで泣いてんのよ……)

大和田「良かったぜ、腐川!」

のび太「はくしんの忘れろビームだったよ!」

腐川「へぁっ?」

舞園「素晴らしかったです。掛け値なしに素晴らしかったですよ!」ポロポロ

苗木「お疲れ様! いい顔だったよ!」

霧切「よく頑張ったわね……」

ドラえもん「おめでとう! おめでとう!」

石丸「これにて一件落着だな! ハッハッハッ!」

山田「え、なにこの流れ」

江ノ島「アタシもよくわかんない」


葉隠「え、えーと……よくわかんねえけどとにかくおめでとうだべ!」パチパチパチ

桑田「いや、なにがだよ……」

葉隠「シーッ! 俺に合わせろって。きっと腐川っち、ストレスでおかしくなっちまったんだ。
    あんまり追い詰めると自殺するかもしれねえぞ……流石にそれは不味いだろ?」

山田「エエエエエ?! じ、自殺ですか?!」

桑田「?! マジか……ヤバいじゃん、それ……」


殺人鬼が怖いという気持ちはあるが、自分達のせいで自殺されたとあれば寝覚めが悪い所ではない。


のび太「ねえ、お兄さん。今の良かったよね?」

桑田「お、おう! 意外と良かった……ぜ?」

朝日奈「すごい迫力だったよー!」

大神「ウム、見直したぞ」

江ノ島「なんか全然意味わかんないけど拍手した方が良さげな感じ?」

セレス「いいのではないですか? 腐川さんの変顔はなかなか笑えましたし。
     そうですね。今の衝撃で確かに全部忘れてしまいました」クスクス


やんややんや! ワー、パチパチパチ!!


腐川「ふ、ふふ……」

腐川(なんか、納得出来ないけど……こ、こういうのも悪くない……?)

十神「…………」


その後、この一件は生徒達に『ここまで腐川が追い詰められている!』という
凄まじい危機感を与え、みんな優しくしてくれるようになったそうな。



また――


十神「おい」

腐川「白夜様?! なんでしょう?!」

十神「お前さっきのやつをもう一回やってみろ」

腐川「さっきのやつ、ですか?」

十神「さっきお前がやった石丸の奇行の真似だ」

腐川「わ、忘れろビームですかっ?!」

十神「やらないのか?」

腐川「い、いえ喜んでやらせて頂きます! それでは……忘れろ忘れろ忘れろビーム!!」クワッ!

十神「下がれ」

腐川「え」

十神「下がれと言ってるんだ」ギロリ

腐川「は、はひぃぃぃ!」ダダダ



十神「…………」

十神「…………」プルプル

十神「…………プッ! クククク!」机ドンドンドン!


意外なことに、腐川の忘れろビームが十神のツボにヒットしたのだった。


ここまで。

最近本当に忙しくてあんまり寝てないのでしばらくスローペース更新となりますが、
まだ?って言われるとプレッシャーになるので…ゆっくりお待ち頂けると嬉しいです。
更新は適宜ツイッターで告知をしていますので



  おまけ①


苗木(ちなみに劇のムチャ振りで、僕は葉隠君のモノマネをした)

苗木(正直全然似てないと思うんだけど、何故かみんなはバカ受けだった)


『一回十万円で占ってやるべ!』


『苗木っち~、保証人になってくれ~!』


『金は命より重いんだべ!!』


苗木(……多分、みんなも同じようなこと言われたことあるんだろうな)

苗木(あと、ドラえもんはモノクマのモノマネをしたんだけど……)


『オマエラ! コロシアイをするんだ!』


『イヤッッホォォォオオォオウ。アドレナリンが染みわたるゥーーー!!』


苗木(あれはもはや似ているという次元を超えていた……まるで生き写しのような……)

苗木(最終的には不気味なのでやめろと言われてたよ)



  おまけ②


腐川「ふ、ふん……それにしても酷い演技だったわね!」

不二咲「ごめんねぇ。頑張ったんだけど……」

舞園「不二咲君はとても良かったと思いますよ!」

桑田「舞園ちゃん、俺は?!」

舞園「……まあまあですかね」

桑田「まあまあ……」

腐川「次は、こんなメチャクチャなのじゃなくてちゃんとした脚本を書いてやるわよ……!」

石丸「おお! 本当かね?! 超高校級の文学少女の書き下ろしなら期待出来る!」

腐川「あんたは大根だから裏方だけどね」

石丸「(´・ω・`)」

大和田「元気出せよ、兄弟!」

腐川「あ、あんた意外と上手かったわよ」

大和田「?!」

腐川「舞園と苗木と山田と不二咲の次くらいだけど。……そうそう、何気に山田は上手かったわね」

山田「……ついに僕の時代が来たようですな!!」( ̄ー ̄)ニヤリ


そして、確かに次回の話の主役は山田なのである。それが良い意味であるかは果たして――


今週は更新出来ないのでおまけだけ落としておきました。

また来週?

•強力ウルトラスーパーデラックス錠/強力ウルトラスーパーデラックスキャンデー


『[たぬき]』に登場する、飲むとウルトラ・スーパー・デラックスマンになれる錠剤型のひみつ道具。
謳い文句は「一日一錠で君も超ウルトラ・スーパー・デラックスマンになれる!
スーパーマンよりも強い、ウルトラ・スーパー・デラックスマン!」
試供品もあり、こちらは3分間だけ効き目がある。
原作や図鑑では「錠」だが、テレビ放映では「キャンデー」に統一されている。




<原典におけるスーパーマンの力の一例>
八十万トンの物体を持ち上げる力
核爆弾の直撃で無傷
最高時速800万kmの飛行能力
レントゲンのような視認能力



新声優版「大パニック! スーパー赤ちゃん」では舐めてる間(1時間は持つ)だけ、力が100万倍(151.5パーマン)になるだけというものに弱体化している。



  第十五話 がんばれ山田くん!


のび太「ねえ、ドラえもん。……そろそろいいんじゃないかな?」


ある時、男子トイレで用を足しながらのび太が切り出した。


ドラえもん「ああ、うん。そうだね。もうみんなだいぶ打ち解けたし、
       そろそろこの厳しい現実を乗り越えられそうだよね」

のび太「じゃあ、バラしちゃう?」

ドラえもん「そうだねぇ。いくら大神さんを説得したとはいえ、あんまりトロトロすると
       あの残念なお姉さんが動くかもしれないし、そろそろ潮時かな」

のび太「のこりの事件はセレスさんと山田さんだけど、二階に行けないからアルターエゴもないしね」

ドラえもん「セレスさんも外の状況がわかれば夢がどうのなんて言ってられなくなるでしょ。
       ……ただまあ、恒例のタイムテレビで先のことを少し見ておきますか」

のび太「念入りだねぇ。いつもそのくらいシンチョウだったらいいのに」

ドラえもん「失礼な! ぼくはいつも慎重だよ。大体きみ達が勝手なことをするんじゃないか」

のび太「主にジャイアンとスネ夫だけどね。……会いたいなぁ。さいきんゼンゼン会ってないし」

ドラえもん「そうだね。ここでの生活も楽しかったけど、いい加減みんなの顔も見たいよね」


カチッ、カチカチ。


ドラえもん「さあ、何も起こってくれるなよ」


画面に映っていたのは……


ドラえもん・のび太「が、学級裁判だー!」

のび太「そんな、どうして?!」

ドラえもん「裁判もそうだけど、犯人は誰だ!」


ガチャガチャガチャ!



セレス『わたくしですわ』



ドラえもん・のび太「 お ま え か ー ! !」


苗木『で、でもなんで山田君を……! セレスさんとは仲良くしてたじゃないか!』

セレス『わたくしの夢のためですわ。山田君はああ見えてなかなか使える
     便利な方でしたが、外には連れて行けませんもの。仕方ありませんでした』


のび太「えっ、これって……」

ドラえもん「殺されたのは山田君だ! ちなみに動機はやっぱり……」


セレス『わたくし、西洋のお城に暮らすのが長年の夢でしたの。イケメンの執事達に
     ヴァンパイアの格好をさせて仕えさせて……ああ、なんて耽美的でしょうか』


ドラえもん・のび太(アニメより更にひどかった)


のび太「おしろとか、イケメンに囲まれたいとか……そんな理由で友だちを殺しちゃうの?!
     もう、この人はたすけなくてもいいんじゃない? あんまりだよ!」

ドラえもん「まあ、そう思うけど……ほら、二年間の間に改心してた可能性が無きにしもあらずな訳で」


のび太「なんだっけ? 双子の心は百までだっけ? 人の性格ってそんなにすぐかわるかなぁ?」

ドラえもん「三つ子の魂百までだね。でも、山田くんは助けないとまずいし」

のび太「ああ、そっか。ヒガイシャだもんね」

ドラえもん「まずは事件の少し前に巻き戻して、概要を調べないと」カチャカチャ


セレス『わたくし、葉隠君にイタズラされましたの』

山田『なにー?! 許さーん!! 葉隠康比呂殿ブチ殺す!』

セレス『まあ落ち着きなさいな。わたくしも悔しいですが、殺すのはやり過ぎですわ。
     ……ですから、復讐を手伝ってくださりませんこと?』<●> <●>ギョロッ!

山田『なんなりと!』

セレス『うふふ……(計画通り!)』ニヤッ


のび太「なるほどね。だまされたんだ! かわいそう……」

ドラえもん「……可哀相は可哀相だけど、よくこんな下手な嘘に引っ掛かったなぁ」

ドラえもん「セレスさん、いつものポーカーフェイスはどこ行ったの? ってくらい露骨に
       顔に出てたし、それにこの話が本当だったらみんなにちゃんと話さないとダメだろう」

のび太「でも、内容が内容だからみんなには言えなかったんじゃないかな?」

ドラえもん「匿名にすればいい。この話が本当だったらまた別の被害者が出てたかもしれないし、
       女子達に警戒を促す効果もある。個人的に罰するのが正しいとは思えないな」

のび太「ああ、そっか。でも山田さんてぼくから見てもたんじゅんそうだし、
     そういうことは思いつかないんじゃない?」

ドラえもん「……本当にそれだけが原因なのかな?」

のび太「どういうこと?」


ドラえもん「ほら、山田くんて普段から割りとセレスさんの言いなりだったろう?
       だから、彼女に逆らうって発想自体がそもそもなかったんじゃない?」

のび太「セレスさんのことが好きだからじゃないの?」

ドラえもん「いや、山田くんが本当に好きだったのは不二咲さんのはずだ。だからこそ
       アルターエゴにあんなに執着したんだろうし。セレスさんのこともそれなりに
       好意はあると思うけど、いわゆる『好き』じゃないはずだよ」

のび太「ええ~? じゃあなんであんなにこき使われてるの? へんだよ!」


腕を組んで少し考えてからドラえもんは答える。


ドラえもん「……これはぼくの予想なんだけど、嫌われたくないんじゃないかな」

のび太「あー、それなんかわかるかも。ぼくってモテないからさ、しずかちゃんに
     きらわれると思ったらどんなことでもやっちゃうかも。さすがに犯罪はしないけど」

ドラえもん「今回はセレスさんだったけど、山田くんて基本的に女の子の頼みは
       断れないタイプなんだよね。嫌われたくないから。それって普段はいい人で
       済むけど一歩間違えれば今回みたいに取り返しのつかないことになると思うんだ」

のび太「たとえば?」

ドラえもん「今回と同じさ。悪い女の人に騙されるんだよ。いいかい? 外の世界は今、
       非常に荒廃してるんだ。つまり、悪い女の人だってたくさんいるはずなんだよ」

ドラえもん「今のまま外に出しても、また今回の二の舞になる時が来るよ、きっと」

のび太「そんなこと言われてもなぁ。モテない男のえいえんのナヤミだよ、それ」

ドラえもん「どうすればいいんだろう?」

のび太「また例によってだれかに聞いてみる?」

ドラえもん「今回は今までと違って今後のことも入ってくるからね。
       出来ればぼくらの事情を知っている人の方がいいんじゃないかな?」


のび太「うーん……ドラミちゃんとか?」

ドラえもん「ドラミは女の子だから、男心がわかるかなぁ?」

のび太「じゃあいっそ……」


               ◇     ◇     ◇


大亜「おう、お前ら! 今度はどうした? また何かあったのか?」

のび太「お兄さん! じつは今回はちょっとソウダンがあって……」

大亜「言ってみろ。力になってやる」


               ・

               ・

               ・


大亜「…………」

ドラえもん「どうすればいいですか?」

大亜「……難しいな」

大亜「力になってやりたいが、俺や紋土とは全く違うタイプだ。俺達みたいなタイプは
    ある意味単純で叩けば直る。だが、そういうヤツは叩くと壊れたりねじくれちまうんだ」

のび太「うっ……わかる気がする」

ドラえもん「他ならぬのび太くんがそういうタイプだからね。根性なしですぐ卑屈になるし」

のび太「う、うるさいなぁ! ぼくなんてカオもあたまもわるいしスポーツもまるでダメだし、
     ぼくみたいなサエない人間は神さまに文句いうケンリだってあるよ!」


ドラえもん「まあ、そうだね」

のび太「そこはフォローしてよ……」ガックリ

ドラえもん「でもさあ、きみの場合それだけじゃなくて怠けているのも大きいんだよ?
       だって、ぼくが一度未来に帰るってなった時にあのジャイアンを倒したじゃないか!」

ドラえもん「石丸くんを見習いなよ! 生まれ持った才能や性質は仕方ないけど、
       努力で伸ばせるものを伸ばさないのは自分の怠慢じゃないか!」

のび太「そうやってすぐお説教する~!」ビエーン

大亜「まあそう言うな、ドラえもん。努力も確かに大事かもしれねえが、家で勉強ばっかして
    仲間と遊ばねえのも不健全だぜ。ガキのうちはのびのび育つのが一番だろ?」

ドラえもん「だけど限度ってものがあります! 本当にのび太くんの怠けっぷりは酷いんだから!」

大亜「(よっぽど鬱憤が溜まってんだな……)それで、そのジャイアンてヤツは何者なんだ?」

ドラえもん「実はですね……」


             ・

             ・

             ・


大亜「ハッハッ! それでいじめっ子を倒したってんだな。なかなか男気あるじゃねえか」

のび太「男の中の男みたいな大亜さんにほめられるとうれしいなぁ」テレテレ

大亜「俺はな、男なら一度は魂懸けてなにかに取り組むべきだって思うんだ。出来れば
    でっかいことがいいが、別にちっぽけなことでもいい。そういう経験が男を磨くんだ」

大亜「確かにのび太は優秀じゃないかもしれねえし普段はだらしないかもしれねえ。
    ただな、目が死んでねえ。さっきみたいな経験がお前の中で生きてるからだ」

のび太「…………」

ドラえもん「経験かぁ」


のび太「……でも大亜さん、ぼくは勝てたからいいけど負けたら? 負けた時はどうするの?」

大亜「その時は、ああ失敗しちまったなぁっつって笑えばいい」

のび太「笑えないよ! こっちは大マジメなのに!」

大亜「まあ、最初は悔しいかもな。でもなぁ……本当に悔いがないくらい
    打ち込んだら、意外とその後はさっぱり諦めつくもんだと俺は思うぜ?」

のび太「そうかなぁ……」

大亜「ブツブツ周りに文句ばっか言ってたり、どうせ自分なんかって諦めてるヤツはなにかに
    命懸けて取り組んだことなんて一度もねえ。そういうのを本当の負け犬っていうんだ」

大亜「いいか? 必ずしも結果が出なくていい。たまには負けてもいい。ただ、自分にだけは
    負けるな。試合に負けても勝負に負けるんじゃねえ。男なら胸を張って生きろ」

のび太「うん……(うっ、なんだかすごいプレッシャーが)」

ドラえもん(大和田くんのやったことを考えると、この言葉胸に刺さるなぁ……)


  ― タイムホールの中 ―


のび太「で、結局どうするの?」

ドラえもん「うーん。少し荒療治だけど、自信をつけてあげるのが一番かなぁ」

のび太「どうやって?」

ドラえもん「なんでもいいからとにかくチャレンジさせて、周りから認められればいいんじゃない?
       超高校級の才能があるのに自信がないのは、やっぱりオタクってことに負い目があるんだ」

のび太「ぼくがジャイアンに勝ったみたいに、大和田さんとたたかうとか?」

ドラえもん「いや、ムリだろう。ガキ大将と日本最大の暴走族の総長じゃ天と地ほど違う」


のび太「……だよねぇ。みんな超高校級なワケだし。夢の中でもないと」

ドラえもん「夢か。……とりあえず夢の中で鍛えてみる?」

のび太「できるの?」

ドラえもん「そりゃあいくらでも。怠け者の君を鍛えるために特訓用道具はたくさんあるからね」

のび太「じゃあ、やってみようよ!」


               ◇     ◇     ◇


そしてその日の夜、二人はひみつ道具で山田の夢の中へと入った。


のび太「ここはどこだろう?」

ドラえもん「森の中だね」


女神『勇者ヒフミよ。あなたがこの世界を救うのです』

山田「僕が勇者ですか?! 異世界転生キタコレ。チートスキルください!」


のび太「女神さまに勇者? なんだかゲームの世界みたいだね」

ドラえもん「ハハーン、ファンタジーの夢を見ているんだな。だったら簡単だ。
       ぼく達はこの動物へんしんクッキーを食べて変装しよう」

のび太「森のなかまたちって感じだね」

山田「さあ、冒険に旅立つぞ!」

ドラえもん「山田くん、山田くん」

のび太「お兄さん」

山田「なんと! クマさんとタヌキさんが喋ってますよ!」


ドラえもん「ぼくはタヌキじゃ……!」

のび太「まあまあ。お兄さん、ぼくたちはお兄さんを助けるためにきたんだよ」

ドラえもん「きみは超高校級の才能があるけど、太ってることとか勉強や
       運動が出来ないことを本当はコンプレックスに思っているでしょう?」

山田「な、何故それを?!」

のび太「ぼくたち森のようせいだから。なんでも知ってるよ」

ドラえもん「ぼくたちがきみを強くしてあげるよ! それで一緒に世界を救うんだ!」

山田「ほ、本当ですか?! これほど嬉しいことはない!」


             ・

             ・

             ・


山田「もうムリ~! 動けないー! ヤダー!」

ドラえもん「な、情けない……」

のび太「もうちょっとがんばろうよ……」

山田「僕なんてどうせ絵が上手いだけのキモオタデブだもーん! 向いてないんだよ! 帰るー!」

のび太「うーん、高校生にもなってみっともないなぁ」

ドラえもん「でものび太くんは人のこと言えないよ。普段こんな感じなんだから」

のび太「え? ぼくってこんな感じなの?」

ドラえもん「むしろもっと酷いし見苦しいよ」

のび太「ガーン」



「まったく……みっともないですわね」


スタスタスタ。


セレス「…………」

山田「な、な、セレス殿?! 何故ここに?!」

のび太「あれは、確か……」ヒソヒソ

ドラえもん「ぼくが事前に用意したセレスさんのコピーロボットだよ。山田くんが上手く出来たらご褒美に
       褒めてもらうつもりだったんだ。いつもきついセレスさんに褒められたら嬉しいだろうからね」

セレスロボ「山田君が頑張っているから褒めてほしい、と言われここへ来たのにみっともなく
       泣き言をあげているとは……あなたプライドというものはありませんの?」

山田「う、それは……」

セレスロボ「だからあなたはいつまで経っても豚なのです。この豚!」

山田「ブ、ブヒィ……」

のび太「うわあ、きっつい」

ドラえもん「コピーロボットだからね。基本は本人そっくりなのさ」

セレス「大体あなた今まで何か死ぬ気になったことはありますの?」

山田「し、死ぬ気ならコミケの度に散々……」

セレス「そんなのてめえの趣味だろうがよ! 好きなことを好きなだけやるのが自慢になるか、豚あああ!」

山田「ヒィィ!」

セレスロボ「勉強も運動も出来ないならせめて痩せろよ見苦しいんだよ! どんな食生活したらそこまで
       太るんだ、ああ?! 部屋で横になってアニメや漫画見ながら食っちゃ寝してんだろが!」

山田「うっ……否定出来ない……」

セレスロボ「その醜い脂肪を半分にするまでわたくしの目の前に現れないでくださる? では」スタスタ

山田「…………」


ドラえもん「えっと、その……」

山田「……もうダメ」プシュー

のび太「あっちゃー……」


その瞬間、世界が白に染まる。


のび太「あれ?! きゅうにまっ白になっちゃった?! 山田さんはどこ?」

ドラえもん「恐らくさっきのショックで目を覚ましたんだ……」

のび太「山田さん大丈夫かなぁ?」

ドラえもん「大亜さんが、あの手のタイプは叩くとねじれるって言ってたのに
       モロに叩いちゃったからねぇ……ヤケを起こさないといいけど」

のび太「明日がこわいなぁ……」


               ◇     ◇     ◇


山田「ハッ! ……ここは僕の部屋。今のは、夢か」

山田(リアルな夢だったなぁ。セレス殿なら間違いなくああ言うでしょうし)

山田(夢は深層心理の現れという……)

山田(……僕だって、本当はわかってるんですよ。でも……)


  ― 翌朝 食堂 ―


のび太「お兄さん、大丈夫かなぁ」

ドラえもん「あ、来たよ」

山田「おはようございます……」


石丸「おはよう、山田君! 珍しく早いな。早起きは良いことだぞ! 続けたまえ。ハッハッハッ!」

のび太(うわ……よりによって……)

ドラえもん(努力の塊みたいな人が話し掛けちゃったよ。ていうか顔色見て察してよ!)

苗木「おはよう、山田君。……何かあったの?」

山田「あ、いえ、ちょっと夢見が悪くて……」

朝日奈「そういう時は運動がいいよ! 一緒に走ってさっぱりしよ!」

ドラえもん(ちょっと、朝日奈さん?!)

のび太(やめてよ! 今その話はまずいって!)

山田「運動……」

大神「そうだな。お主は少し運動不足に見える」

舞園「いいですね! 私も参加しようかな」

ドラえもん(こ、ここでやめておこうよ!)

のび太(おねがい、みんなよけいなことは……)

霧切「たまには私も参加しようかしら」

朝日奈「お、いいねいいね! ほら、山田も!」

山田「えぇ……」

桑田「ちょーどいーじゃん。せっかくだし女子にしごいてもらえよ、ブーデー」

大和田「ちったあ痩せろ」

石丸「ウム。肥満は健康の大敵だぞ!」


江ノ島「マジありえないって」

葉隠「内臓に脂肪がつくと価値が落ちちまうぞ?」

ドラ・のび(あ、あわわわわ!)

山田「…………」

セレス「おはようございます」

苗木「あ、おはよう。セレスさん」

山田「」ビクッ

セレス「おや、どうしたのです。山田君? そんな鬼でも見るような目でわたくしを見て」

ドラえもん(だって鬼だもん)

のび太(おにだよね)


鬼である。


朝日奈「あ、そうだ。セレスちゃんからも言ってやってよ」

大神「お主が言えば山田も言うことを聞くだろう」

セレス「何の話をしていたんです?」

桑田「山田がブーデー過ぎって話」

ドラえもん(ま、まずいぞこの展開!)

のび太「ね、ねえ! そんなにいそいで言うことないんじゃないかなぁ? きっとそのうちやるよね?!」

石丸「そのうちでは駄目なのだ! いいかね! そのうちそのうちと引き延ばすから
    夏休みの宿題をいつも最終日に泣きながらやる羽目になるのだ!」


不二咲「石丸君の言う通りだよ。僕も鍛えなきゃ鍛えなきゃって思って結局先延ばしにしてたし」

のび太「それはそうだけど……」

石丸「今は若いからいい。だが肥満は成人病を誘発し、将来恐ろしい目に遭うのだぞ!」

朝日奈「そうそう。みんなあんたのこと心配して言ってんだからさ!」

大神「仲間の忠告は聞いたほうが良いぞ」

不二咲「友達が病気になったら悲しいもんね」

セレス「話は分かりましたわ。まあ、せいぜい頑張りなさい」

ドラえもん「あれ? それだけ? いつもだったら罵倒……いや、もっと厳しく言いそうだけど」

セレス「だってわたくし、山田君にはまったく期待しておりませんもの。
     召し使いとしての仕事さえ出来ればそれで十分ですわ」ニコッ

山田「」ぐっさー!

のび太「うわ……」

ドラえもん「これは……」

ドラえもん(罵倒された方がまだマシだった)

苗木「は、はは……きついね、セレスさん」

セレス「うふふ。そうですか。では、いつものように紅茶をいれてくださいまし」

山田「は、はひ……ハァ」


トボトボ……


のび太「あちゃあ……」

ドラえもん「流石にちょっと気の毒」

石丸「ム、いじめに見えてしまったか? だが、厳しさは優しさの裏返しだ!
    甘やかすだけでは人間は駄目になるっ! だからのび太君もちゃんと勉強……」

のび太「ひ、ひえぇ~」

桑田「オメエは説教くさすぎ」

大和田「兄弟、朝から説教は勘弁してやれよ」

のび太(ホッ、助かった)

ドラえもん「とにかく、どうしたらいいんだろう……」

霧切「何か悩んでいることがあるのかしら? 例えば――」

霧切「……人に言えないこととか」

ドラえもん「えっ、あ、その……?!」

霧切「…………」ジー

ドラえもん「(嘘を言うとバレそうだ)なにもないよ! 山田くんに自信をつけてあげたいなって……」

霧切「山田くん? ……そうね。彼はもう少し頑張った方が良いわね」

ドラえもん「ですよねー!」

ドラえもん(うまくごまかせたみたいだ。……でもあんまり時間がなさそうだな。
       霧切さんもお父さんのこととか色々あるし。朝ごはんを食べたら作戦会議だ!)


ここまで。


投下予告はツイッターでしているので、良かったらどうぞ
http://twitter.com/doctor_ronpa_K


1は生きてるよー!

>>394
誘導ありがとうございます。
コピペは行頭に>を付けて頂けるとわかりやすいかもです。



  第14話 たえちゃんとおばけ寺


  ― 男子トイレ ―


のび太「で、結局どうするの?」

ドラえもん「……考えたんだけど、やっぱりセレスさんに言ってもらうしかないんじゃないかな?」

のび太「セレスさんに? ムリだよ。さっきもあんな風に言ってたじゃないか」

ドラえもん「そこをなんとかするんだよ」

のび太「なんとかって?」

ドラえもん「まあ、改心させるしかないだろうね」

のび太「どうやって? だって、あのセレスさんだよ?」

ドラえもん「舞園さんの時と同じだよ。彼女がああいう考え方になったのは
       きっと何か理由があるはずなんだ。それを探ろうと思う」

のび太「じゃあまたタイムマシンで過去に行くんだね!」

ドラえもん「行こう! セレスさんの過去を見に!」


               ◇     ◇     ◇


ドラえもん「とりあえず10年前にやってきたけど」

のび太「えっと、トチギの出身なんだっけ?」

ドラえもん「宇都宮らしい。でもかなり端の方みたいだね」

のび太「わあ! 自然が綺麗だよ」

ドラえもん「うん。でも、思っていたより随分田舎だなぁ」

のび太「たしかにセレスさんのイメージには合わないね」


ドラえもん「そこに何か鍵があるのかも。はい、タケコプター」

ドラえもん「舞園さんの時に苦労したから今回は事前に家の場所を調べておいたよ」

のび太「いつもそのくらい気がきけばいいんだけどなー」

ドラえもん「気が利かなくて悪かったね」

のび太「あ、あれ? もしかして、あそこにいるのセレスさんじゃない?」

ドラえもん「えっ、どこ?」

のび太「ホラ、あそこにいる着物を着た女の子だよ」

ドラえもん「まさか。そんなわけないよ。全然雰囲気が違うじゃないか。
       第一セレスさんが着物なんて着るわけないよ」

のび太「そうかなぁ?」

ドラえもん「そうだよ。あの子はセレスさんと違ってすごい地味だし」

のび太「言われてみたらそんな気がしてきた」

ドラえもん「それより早くセレスさんの家に行こうよ。この近くのはず」


             ・

             ・

             ・


のび太「どこにあるんだよー?」

ドラえもん「おかしいなあ。もう見えてもいいはずなんだけど」

のび太「それにしてもさっきからずっと塀が続いているね。大きな家だなあ」

ドラえもん「家じゃないよ。これはお寺だね」

のび太「フーン」


ドラえもん「いっそ人に聞いた方がいいかもしれない。すみません!」

通行人「わあ! たぬきが歩いて喋ってる!」

ドラえもん「ボクはたぬきじゃない!」

のび太「まあまあ。あの、安広さんのお家を知りませんか?」

通行人「やすひろさん? 目の前じゃないか」

のび太「え?」

通行人「このお寺がやすひろさんの家だよ」

ドラえもん・のび太「えぇー?!」

ドラえもん「まさかこの大きなお寺がセレスさんの家だったなんて……」

のび太「信じられない。お金持ちじゃないか!」

ドラえもん「……ちょっと話を聞いてみよう。お寺ならお父さんかお母さんがいるはずだ」


二人は寺の敷地に入ると掃き掃除をしている住職に声を掛けた。


ドラえもん「こんにちは」

住職(セレス父)「おやおや、これは変わったお客さんだ。わしに何かようかい、たぬきくん?」

ドラえもん「だからたぬきじゃないって……」

のび太「ぼくたちセレス……じゃなかった多恵子さんの友だちなんです」

住職「何? 多恵子の? そうかそうか。それは良かった」

ドラえもん「よかった?」

住職「あいつにも友達がいたと知って安心したわい」

のび太「え? 多恵子さんって友だちがいないんですか?」


住職「あいつも変わり者だからな。全く寺の娘のくせして西洋かぶれで困る」

住職「セレなんちゃらとか言う変な名前を名乗ったり、本当はフランス人と
    ドイツ人のハーフだなんて吹聴して……おかげで学校では嘘つき扱いよ」

のび太「そうなんですか……」

住職「生まればっかりは本人がいくら望んでも変えられないからのう。
    だからあるがままに生きることの大切さを仏様は説いているんじゃが」

住職「ただ、寺の娘ということであいつも嫌な思いをしてきとるからのう。
    こちらとしてもあまり強く言えないんじゃよ……」

ドラえもん「イヤな思い?」

住職「墓場の隣に住んでるとかな。うちは大きいが古くてボロいから
    子供達からお化け寺とかオンボロ屋敷とか色々言われとるんじゃ」

のび太「そっかぁ」

住職「そんなわけで、これからもあいつと仲良くしてやってくれんか?」

ドラえもん「もちろんです!」

住職「おぉ、ありがたいありがたい。お礼にお菓子をやろう。こっちにおいで」

のび太「わーい。ありがとう!」


               ◇     ◇     ◇


お菓子をご馳走になったふたりは再び空からセレスの姿を探す。


のび太「あ、いたよ」

ドラえもん「やっぱり、さっきのび太くんが見つけた子がセレスさんだったんだ」

のび太「昔は着物を着てあんなに地味なフンイキだったんだね」



セレスの周囲にはクラスメイトと思しき子供達がいた。


男の子A「やーい、寺っ子! 家にユーレイいるんだろ? おばけ寺だもんな!」

男の子B「服から線香の匂いがするぞー!」

多恵子「あの家に預けられているだけよ。わたしの本当の両親はヨーロッパにいるの」

女の子「じゃあフランス語話してよ! ドイツ語だっけ?」

多恵子「……言ってもあなた達がわからないから言わない」

男の子A「うそつきー! うそつき多恵子!」

男の子B「本当はしゃべれないんだろ!」

女の子「うそつきー!」

多恵子「…………」


セレスは悔しそうにしている。


ドラえもん「セレスさん、いじめられてるんだね。かわいそうに」

のび太「でもお寺の子供だからってなんでいじめられなきゃいけないの?
     服は地味だけど顔はすごくかわいいし頭もいいのに」

ドラえもん「これは僕の推測なんだけど嫉妬じゃないかな?」

のび太「しっと?」

ドラえもん「セレスさんは綺麗だし、実家のお寺もすごく大きかっただろう?
       たぶんこの辺りの大地主なんだと思う」

のび太「地主さん?」

ドラえもん「そう。お金持ちなんだよ。彼女の着ている着物も地味だけど高価なものに見える」


のび太「でもお金もちだからっていじめられるならスネ夫はどうなるのさ」

ドラえもん「スネ夫くんものび太君がいなかったらいじめられてたと思うよ。
       のび太くんの方が目立つからいじめられるだけで」

のび太「どうせ僕はダメダメですよーだ」

ドラえもん「基本的に小学生は自分達と違う部分がある子をいじめるんだ。
       彼女は実家がお寺だし美人で気が強い。悪目立ちするだろうね」

ドラえもん「セレスさんは自分がいじめられる原因である実家がすごく嫌いなんだろう。
       その反動で実家と真逆の存在である西洋に強い憧れを持ったんだろうね」

のび太「だからキレイな西洋のお城に住みたいんだ……」

ドラえもん「原因はわかった。なら対策は簡単だ」

のび太「どうするの?」

ドラえもん「彼女はお寺生まれってことでイヤな思いをたくさんしてきただろう?
       だったらその反対をしてみればいい。『長所伸ばシール』」パパラパッパパー

ドラえもん「これに相手の伸ばしたい長所を書いて貼ると、周りの人が
       その長所を誉めてくれたりいいことがたくさん起こるんだ」

のび太「セレスさんにとっては欠点だったお寺生まれを長所にするんだね!」

ドラえもん「そういうこと! じゃあ早速背中に貼り付けよう」つ透明マント


             ・

             ・

             ・


セレス母「多恵子ー、買い物に行ってきてもらえる?」

多恵子「セレスティアと呼んでくれたら行ってあげるわ」

セレス母「はいはい。テレジアね」

多恵子「セレスティア!」

オリジナルの道具か?



買い物中。


町の人「あー、安広さんちの多恵子ちゃん! 買い物かい? 偉いねえ」

多恵子「なんですか?」

町の人「ほら。うちで取れた野菜をあげよう! 住職さんにはいつもお世話になってるからな!」

多恵子「重いので結構です」

町の人「そう言わずに!」

おばさん「あら、たえちゃん! お菓子あげるわ。安広さんの家は本当に立派なお寺よね。
      住職さんも優しいし歴史もあるし本当に素晴らしいおうちね!」


ヤイノヤイノ!


多恵子「…………」


               ◇     ◇     ◇


ドラえもん「さーて、少しは気分が良くなったかな?」

のび太「スパイロボで見てみよう!」


二人はセレスの部屋を覗き見る。


多恵子『ざっけんじゃねえよ! どいつもこいつも寺生まれ寺生まれって! 馬鹿にしてんのか?!』


ドガッシャーン!


ドラえもん「あ、あれ……」

のび太「……なんかおこってない?」



多恵子『なにがいいお寺だ! ボロくてカビくせえだけだろうが!!
     あたくしには西洋の白い美しいお城の方が遥かに似合ってるわ!!』


ドラえもん「こんなはずでは……」


多恵子『服も時代遅れの着物なんかじゃなくて白いレースがたくさんついて黒いゴシックな
     デザインの方が断然わたくしに合う。ねえ、グランボアシェリ。お前もそう思うでしょう?』

グランボアシェリ『ニャー』


セレスはペットの猫にぶつぶつと理想をぶつけている。


多恵子『どんな手を使っても絶対にお城を手に入れてみせる! そしてわたくしはそこの
     女王になるの! たくさんのイケメンをはべらせて……そうね。ヴァンパイアの
     コスチュームを着せましょう! わたくしがヴァンパイアクイーンよ! ホホホッ!』


のび太「またイタいモウソウしてるよ」

ドラえもん「なにがいけなかったのかな……?」

のび太「もうどうすればいいかちっとも浮かばないや」

ドラえもん「そうだねぇ。女の子だから大亜さんに聞いてもわからないだろうし……
       やっぱり同じ女の子に聞くのが一番かな。今回はドラミに相談してみよう」

のび太「そうだね」ハァー


               ◇     ◇     ◇


ドラミ「いらっしゃい。また来たわね」

のび太「また来ちゃった」

セワシ「おじいちゃんにドラえもん! いらっしゃい!」

のび太「セワシくん!」


セワシ「話は聞いてるよ。今ダンガンロンパの世界に行ってるんだって? ぼくにも協力させてよ」

ドラえもん「助かったよ。ちょうどいま困ってるんだ。助けてほしい」

ドラミ「今度はなに?」


二人は現在の状況を説明する。


ドラミ「なるほどね」

ドラえもん「いい案だと思ったんだけど、なにがいけなかったのかなぁ?」

のび太「そうだよね。お寺生まれってことでたくさんいい思いをしたのに」

ドラミ「二人とも単純ねぇ。人の主義や思想は一日二日で形成されるものじゃないの。
     セレスさんの考え方を変えるならもっと幼い頃に行って時間をかけなきゃダメよ」

のび太「さすがにつきあいきれないよ! もっとお手軽にできる方法ない?」

セワシ「ひみつ道具を使えば簡単じゃない」

ドラえもん「そりゃあ道具を使えば簡単に変えられるけど、
       それだと洗脳みたいだしなぁ。あんまりやりたくないよ」

セワシ「道具なしかぁ。ならちょっと厳しいかもなぁ」

ドラミ「そうねぇ。……あ、そうそう。きっとまた来ると思って私も今
     ダンガンロンパをやっているのよ。結構面白いわね」

のび太「それはよかった。次はぼくにもかしてよ!」

ドラミ「あら。もうストーリーもトリックもわかってるのにプレイしたいの?」

ドラえもん「逆だよ。どうせのび太くんの頭じゃ自分で推理なんて出来ないから
       先にトリックが全部わかってなきゃダメなんだ」

セワシ「おじいちゃん……」

のび太「バカでわるかったね!」


ドラミ「そういえば、セワシさんのデータで遊んでるんだけど、
     セワシさんてば女の子との会話のデータだけ全部取ってあるのよ」

セワシ「ちょっと! 言わないでよ!」

ドラえもん「のび太君の子孫なだけある。……そうだ。そこから何かヒントを手に入れられないかな?」

セワシ「ヒントかぁ。セレスの通信簿はあんまり情報がなかったと思うけど」

ドラえもん「とにかく手当たり次第見ていこう」

のび太「そうだね。なやむよりは行動しようよ!」

セワシ「じゃあ通信簿から見て行こうか」


視聴後。


ドラえもん(……本当に実がなかった)

のび太「わかったことってセレスさんがギョウザ好きでギャンブルが強いってことくらいだったね……」

ドラミ「しかもどこからどこまで本当かわからないわね。嘘つきな人みたいだし」

セワシ「だから言ったのに。まあ折角だから裁判後の会話も見てみる?」

ドラえもん「一応見てみようか」

のび太「でもドウキっておしろだよね?」


更に視聴後。


のび太「うーん」

ドラえもん「いつ見てもひどい」

セワシ「なにかわかった?」


ドラミ「ロマンチストでイケメン好きってことはよくわかったわね……」

のび太「ほんとうイケメンイケメンってイケメンのどこがいいのさ!」

ドラえもん「よせよせ。顔の悪い男がひがむのはみっともないぞ」

セワシ「おじいちゃんだってかわいい子が好きでしょ?」

のび太「そうだけど、顔がすべてじゃないよ! 性格だって大事でしょ!
     なのにこの人は外見ばっかり! 外側をみすぎだよ!」

ドラえもん「仕方ないよ。彼女にとってはとにかく見映えが大事なんだから」

のび太「あんまり顔ばっかり見てるとそのうち悪いおとこにだまされちゃうよ!」

セワシ「十神みたいな顔はいいけど性格の悪い男にひっかかるかもね」

ドラミ「それだわ!」

ドラえもん「それだわってなにが?」

ドラミ「彼女のイケメン好きを利用するのよ! 周りがいくらお寺を誉めたって
     響かないけど、彼女好みのイケメンが誉めたら少しは考えが変わるんじゃないかしら」

のび太「いいね! やってみようよ」

セワシ「そんな上手くいくかなぁ」

ドラミ「とりあえずやってみましょ。コピーロボットで十神さんをコピーするの」

ドラえもん「でも、コピーロボットだと性格も十神くんそっくりになるよ?」

ドラミ「お兄ちゃんの持ってるロボットは旧型なのね。私のコピーロボットは性格チップを
     使えば自由に性格を変えられるのよ。今回はこの優しいチップを使いましょ」

のび太「よーし。とりあえず学園にもどろう!」



               ◇     ◇     ◇


ドラえもん「用意してきました」

ドラミ「作戦を説明するわよ」

性格チップ(優しい)in ロボ十神「成程、了解した。任せろ。俺が導いてやる!」キラリン!

ドラえもん「すごい……なんて頼りになりそうなんだ。心なしか太って見える」

のび太「そうだね。なんだか太ってみえるよ」

セワシ「ダンガンロンパ2の十神はこんな感じだからね。もっと太いけど」

ロボ十神「誰の話だ? さっさと行くぞ!」


             ・

             ・

             ・


セレスが道を歩いている所を一行は発見した。


ドラえもん「見つけたぞ」

ドラミ「じゃあ後は任せるわね?」

ロボ十神「任せろ。十神の名にかけて必ず成功させる。必ずな」

ドラえもん・のび太(きみニセモノなんだけどね)


そしてロボ十神はセレスに近づき話しかけた。


ロボ十神「おい、そこのお前」

多恵子「…………」



セレスは無視して歩き続ける。


ロボ十神「聞こえていないのか? そこのお前だ」

多恵子「…………」


セレスはますます早足で進む。


のび太「あれ? なんで無視するの?」

ドラえもん「どうやら昨日の一件でまだ機嫌が悪いようだ」

ロボ十神「お前だお前。着物を着た女!」

多恵子「うるせえんだよ。この……!」クルッ


キラリィィィン!


ロボ十神「道を尋ねたいんだが?」キラキラ

多恵子「あ、はい……」

のび太「本当にイケメンに弱いね……」ハァ

ドラえもん「全くだよ……」ハァ

ドラミ「なんだか笑っちゃうわね」

セワシ「そんなにいいかなぁ?」


四人は苦笑いした。


多恵子「どちらまで行かれたいのかしら?」

ロボ十神「この辺りにある由緒正しい寺に行きたいのだが」

多恵子「お寺、ですか?」


ロボ十神「地元の人間なら知っているだろう? 壇論寺だ。案内してくれ」

多恵子「……構いませんが」


セレスは渋々といった顔で実家に案内した。そして予定通りロボ十神は寺を誉め始める。


ロボ十神「うむ、素晴らしいな。実に素晴らしい!」

多恵子「お言葉ですがこんなボロボロなお寺のどこがよろしいのですか?」

ロボ十神「確かにボロボロかもしれん。だが、ここには確かな歴史と伝統があるのだ。
      地元の人間なのにそんなこともわからないのか?」

多恵子「…………」

ロボ十神「最近はグローバリズムだか何だか知らんが、 なんでもかんでも外国のものを
      良いと褒めちぎって日本本来の素晴らしさを忘れている。そういった人間は浅い」

ロボ十神「知っているか? 西洋の城や屋敷はとても美しいだろう?」

多恵子「そう思います」

ロボ十神「引っ越しをしたいと思うか?」

多恵子「もちろんですわ」

ロボ十神「俺はそうは思わない。絶対にごめんだ」

多恵子「まあ、何故?」

ロボ十神「知らないなら教えてやろう。西洋ではつい最近まで衛生観念がなくてな、あの綺麗な
      建物の窓から排泄物を捨てていたのだぞ? そんなところに住みたいか?」

多恵子「そ、そうなのですか?」

ロボ十神「それに西洋の城は石造りだろう? 耐震性に弱い上、夏は暑く冬は寒い。しかも無駄に
      階段が多いから実際に住むと相当不便だぞ。外側しか見ない人間にとっては
      素晴らしいかもしれんがな。見るのは好きだが住みたくはない」

多恵子「…………」


ロボ十神「それにカビ臭いと言うが、日本の建物は風通しがよく作られているからきちんと
      換気さえしていればそうそうカビは生えん。暑い日本の夏も涼しく過ごせる」

ロボ十神「この建物を見ろ。掃除が行き届き、きちんと手入れがされている。
      これだけで住んでいる人達が大事に使っているのがわかるな」

ロボ十神「相当歴史が古いようだ。有名な武将もここにお参りに来たらしい。記念碑もあるようだな。
      こんなところに住めたらさぞかし教養の深い人間になれるだろう。間違っても物事の
      表面ばかりを見る浅い人間にはならないだろうな」チラッ

多恵子「え、ええ。そうですわね……」

ロボ十神「一人で見て回るのもつまらん。良かったら一緒に見て回らないか?」

多恵子「はい! 案内いたしますわ!」


             ・

             ・

             ・


その後、ロボ十神は旅行者として数日滞在し幼いセレスと交流を深めた。
そして日本の美や伝統の素晴らしさを切々と説き続けたのだった。


ロボ十神「戻ってきたぞ」

ドラミ「ご苦労様」

ロボ十神「どうだった? この俺の仕事ぶりは」

のび太「きいてるんじゃないかな?」

ドラえもん「やっぱりイケメンにこれだけ言われると堪えるみたいだね」

ロボ十神「少しは何か変わったかもしれん。確認してみたらどうだ?」


のび太「そうだね。タイムテレビで見てみようよ」


四人はタイムテレビで未来を確認する。そこには、


セワシ「見て! おじいちゃん!」

ドラえもん「江ノ島と対決しているね!」

のび太「やった! 全員そろってるよ!! ぼくたち、とうとうやったんだ!」

ドラミ「未来が変わったのね」

ロボ十神「おめでとうと言っておく。無事に導けたようで何よりだ」

ドラえもん「ありがとう、十神くん!」

ロボ十神「ありがとうはこちらのセリフだよ、ドラえもんにのび太。
      次は本物の俺も導いてやってくれないか?」

のび太「約束するよ。ぜったいに十神さんも改心させてみせるから」

ロボ十神「それを聞いて安心した。あとは任せるぞ」シュゥゥ……


そう言ってコピーロボットは元の姿に戻った。


セワシ「十神も色々と抱えてるからねぇ」

ドラミ「そうなの?」

セワシ「通信簿を見ればわかるよ」

ドラえもん「そうなんだ。でも、とりあえず一度戻ろうかな。ぼくも疲れちゃったよ……」

ドラミ「お疲れ様。ゆっくり休んでちょうだい」

セワシ「また何かあったらいつでも来てよ!」

のび太「ありがとう、二人とも」



  ― 希望ヶ峰学園 ―


のび太「今回も長かったねー」

ドラえもん「全くだよ。みんな手がかかるんだから」

のび太「でもこっちでは全然時間が経ってないんだよね?」

ドラえもん「今はお昼ご飯の時間じゃないかな?」テクテク


二人が食堂に行くと、


山田「…………」ズーン

ドラえもん・のび太「忘れてたー!」

のび太「ど、どうしよう。この人のことをすっかり忘れてたよ! そのためだったのに!」

ドラえもん「ほっておくわけにもいかないし。どうしたものか……」

のび太「もう! ドラえもんがうっかりしてるから!」

ドラえもん「のび太くんだって忘れてたじゃないかー!」

のび太「ドラえもんのバカ! タヌキー!」

ドラえもん「なにをー!!」


そんな時、意外な人物が二人の横を通り過ぎ山田に声を掛けた。


セレス「山田くん、いつまで落ち込んでいるのです」

山田「あ、セレス殿……」

セレス「先程の件でまだふてくされているのですか?」

山田「だって、僕にはまったく期待してないって……」いじいじ

セレス「正確には今のあなたには、ですわね」

山田「……今の僕?」

セレス「中身が大事という言葉がありますが、その言葉に寄り掛かる人間は嫌いです。
     今のあなたは何の努力もしていません。中身が外側に現れているのです」

セレス「見苦しく太っている者をわたくしのナイトにするつもりはありませんわ」

山田「…………」

セレス「で・す・が、痩せたらわかりませんわね?」

山田「え?」

セレス「わたくし、あなたの紅茶の味は一応評価しているのですよ?
     オタク故の一度何かを追究したら極めようとする所も」

山田「えっ? ……えっ??! ぼぼぼ、僕がセレス殿のナイトに……?!」

セレス「腐ってもあなたは超高校級。今までだって色々と乗り越えてきたでしょう?
     努力さえすれば大抵のことは出来るのではなくて?」

山田「セ、セレス殿……!」ウルウル

セレス「悔しかったらダイエットでもしてわたくしを見返してみせなさいな」


山田「痩せます。絶対痩せてみせる! そして晴れてセレス殿のナイトになるんだっ!!」

セレス「せいぜい頑張りなさいまし」ニコ

山田「うおおおおおおおお! 頑張るぞぉーーーーーっ!!!」

のび太「セ、セレスさん……!」

ドラえもん「成長したんだ! これでぼく達の苦労も報われるってものだよ」ホロリ

のび太「やっぱりあこがれの人に言われる言葉が一番なんだねぇ」ジーン


こうしてセレスの言葉が起爆剤となって、山田は立ち直り前向きになったのだった。





ちなみに――


大和田「おい、今のセレスの言葉聞いたか?!」

葉隠「セレスっちがあんな優しい言葉を言うなんて?!
    これは天変地異の前触れだべ! ナンマンダブナンマンダブ!」

腐川「終わりだわ……もう全部終わりなのよ……」グギギ!

苗木「いくらなんでも酷いんじゃないかな……。セレスさんだって優しいところはあるよ。一応」

桑田「いや、でもあのセレスだぞ? ありえねー」

霧切「怪しいわね。何か企んでいるのかしら」

舞園「私、死ぬ前にもう一度空を見たかったな……」

苗木「舞園さんまで?!」


……基本的には今までの性格を踏襲しているらしく、陰では散々な言われぶりだった。


ここまで。最近仕事が忙しくて遅くなってすみません

あと今回は16話の間違いでした。それでは次回もお楽しみに。


>>404
オリジナルです。今後もちょくちょく出てきます。



  第十七話 赤いとびらの向こうがわへ


山田「えっほ! えっほ!」タッタッタッ

朝日奈「頑張れー!」

大神「ウム、頑張っているな」

不二咲「僕も負けられない!」

大和田「その調子だぜ!」

舞園「頑張ってください!」

腐川「まったく……汗くさい集団ね」

十神「お前は人のことを言う前に自分を何とかいろ。口が臭いぞ」

腐川「ヒエエエエ?! ご、ごめんなさいいいい!」

苗木「あ、はは……」


和やかに昼食後の時間を過ごしていた時にそれは起こった。


ジリリリリリリリリリリ!


苗木「な、なに?!」

石丸「いかん、地震か?! 火災警報か?! みんな机の下に避難するんだ!!」

葉隠「ひええええ! 恐怖の大王がやってきたー?!」

江ノ島「そんな訳ないでしょ!(突然なに?!)」

ドラえもん「まさか……これは?!」



ドラえもんはポケットから蜂の形をした道具を取り出した。


のび太「それは……!」

苗木「ん? 蜂の形のおもちゃ? それが鳴ってたんだ」

大和田「なんだ、おもちゃかよ」

石丸「紛らわしいではないかー!」

ドラえもん「あ、ごめんごめん」

腐川「ちゃんと電源切っておきなさいよね!」

江ノ島「もう、空爆警報かと思ったよ!」

朝日奈「空爆って……」

セレス「江ノ島さんはいつの時代の人なのでしょうか」

のび太「それより、ドラえもん……」コソーリ

ドラえもん「うん……」ソソクサ

霧切「…………」


  ― 男子トイレ ―


のび太「ドラえもん、さっきの!」

ドラえもん「うん。ドラミが貸してくれた虫の知らせバッチだ……」


虫の知らせバッチ:『映画魔界大冒険』にてドラミが持っていた秘密道具。
            持ち主の周りに何かある時に教えてくれる。



 ~ 回想 ~


ドラミ『そうそう、お兄ちゃん。これを貸しておくわ』

のび太『なにそれ?』

ドラえもん『これは虫の知らせバッチだよ。何か問題があったら教えてくれるんだ』

ドラミ『ダンガンロンパって登場人物がどんどん死んでいく危険な物語な訳じゃない?
     だから、いくら気をつけても不測の事態も起こり得るし持っていくといいわ』

セワシ『だいぶ原作と話が変わってきたし、もういつ江ノ島が動くかわからないからね』

ドラミ『用心しておくに越したことはないもの』

ドラえもん『そうだね。じゃあ借りておくよ』


のび太「まったく、ほんとうによくできた妹だね」

ドラえもん「まあね。それより、これから先になにが起こるのかタイムテレビで見なきゃ!」


タイムテレビを起動する。すると……


江ノ島『飽きた』

戦刃『盾子ちゃん?』

江ノ島『飽きた飽きた飽きた。飽きたー!! 私様は飽きたぞ。人間共!』

江ノ島『内通していた大神は裏切りやがるしコロシアイも起きそうにないし、
     ――よっていよいよ残姉に動いてもらうことにする!』

戦刃『……わかった。どうすればいいの?』


江ノ島『えー、まず今日の午後に大神が内通者だとバラします。今日一日たっぷり
     疑心暗鬼に浸って頂いた所で、むくろ姉さんに今夜誰か殺してもらいます』withメガネ

戦刃『ターゲットは?』

江ノ島『大神さん……内通者ということで周囲から孤立するはず。その後殺してしまえば……
     あの時あんなことを言わなければと彼等は後悔すると思います……』キノコ

江ノ島『しかもしかも! 大神と仲の良い朝日奈が周りと衝突するのは間違いないしねー!』キャピッ☆

戦刃『わかった』


早送りすると、そこには大神を殺そうとする戦刃の姿が……


のび太「大変だー! なんとかしないと!」

ドラえもん「いや、ムダだ! たまたま大神さんがターゲットになっただけで、
       江ノ島は既に事件を起こすつもりなんだ。そっちをなんとかしないと……!」

のび太「どうするのさ?」

ドラえもん「……少し早いけど、もう大分みんな打ち解けたし、きっと今なら団結できると思う」

のび太「ということは、いよいよ……」

ドラえもん「うん。みんなに全部打ち明けよう。終わりにするんだ。この学園生活を!」


『オマエラ、体育館に集合ー!』


ドラえもん「……ちょうど呼び出しが来た」

のび太「ドキドキする」

ドラえもん「大丈夫だよ。みんなを信じよう。さて、その前にやることが……」



  ― 脱衣所 ―


江ノ島「ちょっと! モノクマがアタシのこと呼んでるって本当? 体育館に来いって言ってたけど」

のび太「うん。本当だよ。大浴場の中にいるはず。ぼくはもう行くね!」

江ノ島「なんか怪しいな~。モノクマー、いるー?」

「こっちだよ! ほら、早く来て!」

江ノ島「その声は、本当にモノクマか。どうしたの? 呼び出しは?」


ガラッ。


ドラえもん「今だ!」

大神「フン!」

江ノ島「なっ?!」


ガスッ!

最強の軍人戦刃むくろも、超高校級の格闘家大神の不意打ちの前にあっさり沈んだのだった。


のび太「うまくいった?」

ドラえもん「うん。モノクマと声が似てるのがこんな形で役に立つなんてね。少し複雑だけど……」

のび太「まあまあ」

大神「それで本題だ。……確かに江ノ島はモノクマと親しいそぶりだったが、本当に偽物なのか?」



ドラえもん「この髪は確かカツラのはずだよ。えいっ」


ズルッ!


大神「なんと?! ではお主達の言った通りこやつは偽物だったのか! 本物の江ノ島は一体……」

ドラえもん「それについては体育館で全てお話します。とりあえず偽物を縛って、と」

のび太「行こう!」


  ― 体育館 ―


石丸「遅いぞ!」

のび太「ごめんなさい」

大神「スマヌ、我が呼び止めたのだ」

桑田「つーか誰それ?! なんで縛ってんの?!」

朝日奈「さくらちゃん?!」

山田「それに江ノ島盾子殿が先程から見当たりませんが」

腐川「な、なによ……?! なにが起こってる訳?!」

葉隠「これはヤバい感じがするべ!」

舞園「あの、もしかしてその人江ノ島さんじゃないですか……?」

苗木「えっ?! ……あ、そういえば似てる」

大和田「髪型が違うじゃねえか」

のび太「かみはカツラだったんだよ。ほら!」


霧切「間違いないわ。彼女は私達が会っていた江ノ島さんよ。顔が同じだもの」

不二咲「隠してたの……? そんな、どうして……」

十神「決まっている。何か不都合があるからだろう」

モノクマ「ちょ?! オマエラァァァ!! なにしてんだよ?!」

ドラえもん「モノクマ、もうお前の思い通りにはさせないぞ!」

のび太「内通者のニセ江ノ島さんはぼく達がつかまえちゃったもんね!」

大神「こやつの本当の名前は戦刃むくろと言って、超高校級の軍人らしい」

山田「ぐ、軍人ですとー?! 女軍人とかなにその狙った設定」

セレス「……それで、何故あなたがたがその事実を知っているのですか?」

大神「我はドラえもん達から話を聞き、協力しただけだ。詳しいことはこれから聞く」

モノクマ「もう、なんなんだよオマエラ! イレギュラーなのは知ってたけどさ!」

苗木「イレギュラー?」

腐川「な、なによ……どういうこと?」

モノクマ「体験入学とか真っ赤な嘘! こいつらがそう言ったから面白半分で話を合わせただけ!
      ボクはこいつらのことなんて知らないしどこから来たのかもわからない」

石丸「何だと?! では、君達は一体何者なのかね?!」

ドラえもん「詳しくは話せないけど、きみ達を助けるために遠くからやってきたんだ」

のび太「いままでずっとウソをついていたんです。だましていてごめんなさい」

霧切「だからよく男子トイレに篭っていたの?」

桑田「へ? トイレ?」


霧切「ドラえもんとのび太君は頻繁に男子トイレに通って、なかなか出てこないことが多かったわ。
    恐らく、トイレは監視カメラがないから二人で密談をしていた。そういうことね?」

のび太「さすが霧切お姉さんだね。ごまかせないや」

霧切「あなた達は不自然な動きが多かった。私の予想では、私達の知らないことも
    たくさん知っているのではないかしら。……例えば私の才能」

のび太「超高校級の探偵だよね?」

ドラえもん「記憶はもう戻ったかな?」

霧切「……正解よ。私が記憶を失っていたことも含めて」

苗木「え? 霧切さん記憶喪失だったの?!」

朝日奈「だから私達に才能を教えてくれなかったんだね」

大和田「おいおい、マジか……」

舞園「あの……もしかして、私のこともわかっていたんですか? だから、止めてくれた?」

ドラえもん「うん。きみはきっと動くと思ったよ。あれが舞園さんにとって一番いいと思ったんだ」

舞園「そうだったんですね……」

大神「桑田や腐川が周囲から浮かないように手助けをしていたな」

桑田「え……? もしかして、俺も陰で助けてもらった系?」

腐川「そうだったのね……あ、あたしは感謝してたわよ! 一応……」

石丸「確かに二人は率先してコロシアイを止めるように動いていたな!」

葉隠「そーかそーか。サンキューな! これで全部解決だべ!」

山田「勝った! 第三部完!」

セレス「では外に出ましょうか」


まだ話の途中でちょっとキリ悪いけど用事があるので一旦ここまで。

また明日来ます。では!


再開


不二咲「やっとここから出られるんだねぇ……」

十神「よくもこの俺の貴重な時間をここまで浪費してくれたものだ。タダで済むと思うなよ」


ぞろぞろと生徒達が体育館から出ようとするので、慌ててモノクマが引き止める。


モノクマ「ちょっとちょーっと! ボクを忘れないでもらえる?」

ドラえもん「もうお前の好きにはさせないぞ、江ノ島盾子!」

舞園「え、江ノ島さん?!」

朝日奈「どういうことなの?!」

苗木「ま、まさか黒幕って……」

霧切「つまり本物の江ノ島さんが私達を監禁した黒幕……そういうことなのね?」

のび太「そう! 江ノ島盾子こそこのコロシアイをかんがえたすべてのクロマクなんだ!」

セレス「江ノ島さんが?! 彼女は超高校級のギャルではないのですか……?」

山田「メンバーの一人、ならわかりますが黒幕なんですか?!」

桑田「俺達ギャルに誘拐されたってことかよ?! ありえねー!」

十神「どういうことだ?! 苗木、説明しろ!」

苗木「えっ、僕?! 僕だってよくわかんないよ!」

モノクマ「……ふーん。つまりキミ達は本当に全部知ってるって訳ね。いいよ、わかった」

のび太「わかったってなにが?」

モノクマ「最終決戦しようってこと。地下の裁判場においで。どうせ行き方は
      知ってるんでしょ? ボクは逃げも隠れもしないから。先に行って待ってるよ」



そう言い残してモノクマは去って行った。


苗木「最終決戦……」

のび太「行こうよ、みんな!」

ドラえもん「これで終わりにするんだ!」

桑田「おい。小学生にイニシアチブ取られてるぞ、俺ら……」

葉隠「しょうがないべ。いまだに状況がよく飲み込めてねえし」

戦刃「う~ん、レーションおいしい。ムニャムニャ……」

大神「お主はいつまで気絶しているのだ……」


               ◇     ◇     ◇


苗木「あ、あの赤い扉が開いてる!」

十神「そんなもの見ればわかる。どうやらここから裁判場とやらに行くようだな」

舞園「私達、これからどうなるんでしょうか……」

霧切「わからないわ。でも、行くしかない」

セレス「そうですね。賽は振られてしまったんですもの。あとは勝つか負けるかだけですわ」

のび太「あ、これがあのエレベーターだね! ドキドキ」


ゴゴゴゴゴ……


「……………………」



生徒達は不安で無言になっているがドラえもんとのび太は実に能天気だった。


のび太「ふかいねぇ。どこまでもぐるんだろう?」

ドラえもん「この調子だと恐らく百メートル以上は潜っているようだ」

のび太「え? まだそんなところ? ぼくなんて1万メートルくらいもぐったことあるよ」

ドラえもん「そりゃあきみ、一緒にしたらまずいよ。技術が段違いなんだから」

のび太「ふーん。あーあ、早く家にかえってママのごはんがたべたいなぁ」

ドラえもん「そうだねぇ」


一同(……緊張感ないな!)


  ― 裁判場 ―


モノクマ「やあ、みんな。待っていたよ」

のび太「やいやい! もうお前の正体はわかってるんだぞ!」

ドラえもん「姿を現せ!」

モノクマ「……ハァ~。これだからセンスのない人間は困る。何事にも手順てものがあるんだよ。
      とりあえずほら、みんな自分の席についたついた」

のび太「あれ? でも席がたりなくない? えっと、ひーふーみー……」

山田「呼びましたかな?」

モノクマ「キミ達二人はまだ寝こけてるそこの残念の席を使うといいよ。窮屈で悪いけどさ」



           裁判席


          モノクマ

       朝日奈     葉隠 

   大和田            不二咲               

  霧切                 十神

大神                      セレス

  ドラ・のび               桑田

    石丸            腐川

       舞園 苗木 山田





言われた通り生徒達は各々席につき、少し狭いがドラえもんとのび太は偽江ノ島の席に立つ。すると、
どこからかスモークが焚かれ、スポットライトが当たるとモノクマの足元がボン!と爆発する。

シュー……


「待っていた。私様はずっと待っていたぞ、人間共!」

「このアタシこそが今回のコロシアイ学園生活を計画した全ての黒幕――」

「江ノ島盾子ちゃああああんッ!!!」ビシィッ!


ポーズを決めた江ノ島盾子が16番目の席に登場したのだった。


のび太「ハデだね……」

ドラえもん「うん。派手だ……」

石丸「こ、これは一体どういうことなのだね江ノ島君?!」

大和田「オメエが本物の江ノ島だってんなら、そこの偽物はナニモンなんだよ」

江ノ島「えー、それを説明する前に……」


つかつかと江ノ島は戦刃の元に歩み寄ると、


江ノ島「いつまで寝てんだ、この残姉!」ゲシッ!

戦刃「痛っ! ……あ、盾子ちゃん」


江ノ島「正体バレて敵に捕まった挙げ句、起こされるまで寝てるとかどこまで残念なんだテメエはよ!」

戦刃「ゴ、ゴメン……」

江ノ島「最終決戦はもう始まってるんだ! とっとと来なさい」

戦刃「その前に縄を外してくれないかな……」

セレス「それで、そちらの方はどこのどなたなんです? 赤の他人にしては似ていますが」

江ノ島「こいつは戦刃むくろって言う超高校級の軍人で、アタシの双子の姉」

桑田「えっ、双子?!」

朝日奈「お姉さんなの?!」

葉隠「うーむ、双子にしては似てねえな」

江ノ島「そ、本当に残念なことにこの姉は軍人としては一流だけど、顔はイマイチで
     胸も貧相だしその上頭が弱くて気も利かない。別名・超高校級の残念」

戦刃「うう、ひどいよぉ」

石丸「実のお姉さんの悪口を言うのはやめてあげたまえ!」

大和田「すげえ言われようだな……」

江ノ島「対して私は妹と言うおいしい設定を持ちながら、かわいくてスタイル抜群。
     おまけに天才的頭脳の持ち主だった訳です。神様は残酷ですね」

不二咲「姉妹なのにどうして苗字が違うのぉ?」

江ノ島「そこはよくある設定だから、まあ君達の想像通りだ」


のび太「わかんないよ」

ドラえもん「親が離婚したとか、事故で亡くなって別々に引き取られたとかじゃない?」

戦刃「そんな感じ。家族で海外旅行中に私は勝手に抜け出して軍隊に入ったんだけど、
    お父さんとお母さんはその責任を押し付け合って夫婦仲が悪化。で、離婚したんだ」

大神「勝手に軍隊に入ったのか……」

朝日奈「すごい行動力だね……」

江ノ島「うちの家庭の事情などどうでもいいのです。それより私様はあなた達に最後の勝負を挑みます」

苗木「勝負?」

江ノ島「要は、折角こんな豪勢な裁判場用意してず~っと待ってたってのに
     一回も使わないで終わるとかありえねーって言ってんだよ、ファーック!」

のび太「……本当にころころキャラが変わるね」

ドラえもん「うん。……って、そんなことは許さないぞ!」

江ノ島「えー? どうしてダメなのー? どうせアタシが勝ってもそっちが勝っても
     どうせ君達がどうにかしちゃうんでしょー? わかってるんだよ、そんなことー?」

のび太「それはそうだけど……」

江ノ島「じゃあ……裁判させてください……このままでは、私の見せ場がなくてあんまりです……」

ドラえもん「まあ、消化不良な感じは確かにあるけど……」

のび太「どうする?」


十神「俺は受けるぞ。突然訳のわからん連中に訳もわからないまま助けられても納得がいかん」

山田「ええー、さっさと外に出ましょうよ」

腐川「いい加減外に出たいけど、白夜様がそういうなら……」

霧切「私も十神君と同感だわ。まだ私達はこの学園の謎を何も解いていない。
    全てを明らかにしてから外に出ても遅くはないのではないかしら?」

大神「ウム。我等には知る権利がある」

桑田「そうだけどさー」

舞園「私も知りたいです。どうして私達にこんな酷いことをしたんですか? どうして私達なんですか?」

不二咲「教えて。どうしてこんな酷いことをしたの?」

セレス「何もわからないまま帰るのはシャクですわね」

大和田「よくわからねえが、受けてやろうじゃねえかその勝負!」

石丸「こんな不気味な所からは一刻も早く立ち去りたいが、兄弟達の言う通りだ!」

朝日奈「そうだよ! 全部明らかにしてスッキリして出よう!」

苗木「その勝負。受けるよ! 僕達は負けない!」


江ノ島「では勝負を受けると言う方向で。それでは始めましょうか」




江ノ島「最初で最後の学級裁判!!」


   ド  ン  ッ  ! ! !


ここまで。

すみません。実は学級裁判のシーンを飛ばして書き溜めしてたので
今執筆中なんです。金曜か土曜には投下すると思います。

よろしくお願いします。



  第十八話 ぜったいぜつめい! 学級裁判!! 前編



        !   学   級   裁   判   開   廷   !


江ノ島「うぷぷ。まずは裁判のルールから説明しようか」

江ノ島「本来は事件が起こった時に裁判になり、被害者を殺したクロを当てれば
     クロだけが処刑、失敗したらクロ以外のシロ全員が処刑だったんだけどね」

大神「そんなルールがあったのか!」

舞園「黙っていたんですか?! じゃあ、私が事件を起こしていたら……」サーッ

霧切「落ち着いて。今は取り乱している場合ではないわ」

江ノ島「ですが、今回は事件が起こっていないので特別ルールを適用し、
     皆さんにはこの学園の謎を解いてもらうという形になります」

のび太「そんな、ムリだよ! 一階しか開いてないし、そもそもソウサしてないもの!」

江ノ島「勿論、今のままじゃワンサイドゲームになっちゃうからね。
     謎を解くためのキーワードはこちらが先に用意してあげるよ」

ドラえもん「キーワード……つまりコトダマか」

霧切「勝利条件は学園の謎を解くこと、でいいのかしら?」

江ノ島「ううん! これは裁判なんだよ? 最後はやっぱり投票で決めないと!」

石丸「投票と言われても、一体何に投票するのだ?」

江ノ島「議論が終わった後に、オマエラがこの学園から出る……つまり卒業するか、或いは
     今まで通りここに残るかの投票をしてもらうよ! 全員一致で卒業ならオマエラの勝ち」

江ノ島「一人でも卒業を選ばない人間が出たらボクの勝ちだよ。うぷぷ」


桑田「ハァ? そんなの勝負になんねーじゃん! なにがしたいの、お前?」

葉隠「当然卒業を選ぶに決まってるべ!」

苗木「待って、みんな! いくら何でも怪しいよ。きっと何か裏があるはずだ」

大神「ウム。我も同感だ。ここに来て何もないとは思えぬ」

セレス「……外に出ると何かしらの不都合がある、そう考えるのが普通ですわね」

十神「フン、一体どんな不都合があるというんだ。十神の名の前にそんなものは無意味だ」

江ノ島「ちなみにそこのお子様方は全部わかってると思うけど黙ってろよ。勝負になんねーからな」

のび太「[たぬき]……」

[たぬき]「……見ていよう。これはこの星で生きていくみんなの問題なんだ。
       ちゃんとみんなで納得して脱出しなければ意味がないんだよ」

のび太「……うん、そうだね。わかった」

十神「それで俺達が勝った時はどうする? 当然、貴様らの命を差し出すんだろうな?」

苗木「ちょ、ちょっと十神君!」

江ノ島「勿論! 負けた方はオシオキを受けてもらうわよ」

山田「オ、オシオキですか?! オシオキ……フヒッ」

朝日奈「あんた何を想像してんのよ……?」

舞園「……オシオキって、一体どんなことをするんですか?」

江ノ島「えー、私達の受けるオシオキは通常通り処刑となります。対して、皆さんに受けて
     頂くオシオキはこれからずっとこの学園で心静かに穏やかに老衰してもらうことです。
     もう私が干渉することはないですしコロシアイをする必要もありません」メガネ


失敗。修正します


桑田「ハァ? そんなの勝負になんねーじゃん! なにがしたいの、お前?」

葉隠「当然卒業を選ぶに決まってるべ!」

苗木「待って、みんな! いくら何でも怪しいよ。きっと何か裏があるはずだ」

大神「ウム。我も同感だ。ここに来て何もないとは思えぬ」

セレス「……外に出ると何かしらの不都合がある、そう考えるのが普通ですわね」

十神「フン、一体どんな不都合があるというんだ。十神の名の前にそんなものは無意味だ」

江ノ島「ちなみにそこのお子様方は全部わかってると思うけど黙ってろよ。勝負になんねーからな」

のび太「ドラえもん……」

ドラえもん「……見ていよう。これはこの星で生きていくみんなの問題なんだ。
       ちゃんとみんなで納得して脱出しなければ意味がないんだよ」

のび太「……うん、そうだね。わかった」

十神「それで俺達が勝った時はどうする? 当然、貴様らの命を差し出すんだろうな?」

苗木「ちょ、ちょっと十神君!」

江ノ島「勿論! 負けた方はオシオキを受けてもらうわよ」

山田「オ、オシオキですか?! オシオキ……フヒッ」

朝日奈「あんた何を想像してんのよ……?」

舞園「……オシオキって、一体どんなことをするんですか?」

江ノ島「えー、私達の受けるオシオキは通常通り処刑となります。対して、皆さんに受けて
     頂くオシオキはこれからずっとこの学園で心静かに穏やかに老衰してもらうことです。
     もう私が干渉することはないですしコロシアイをする必要もありません」メガネ


江ノ島「あ、ちなみに今の居住スペースだけでは狭いので学園と寄宿舎は全解放します。
     学園の上階には図書室、プール、娯楽室、植物園などお楽しみスペースが一杯あります」

朝日奈「プール?! プールがあるの?」

腐川「図書室?! な、なんで今まで隠してたのよ……!」

ドラえもん「そりゃ、あんまり居心地がいいと殺人なんて起こらないからだよ」

桑田「でもいくら居心地が良くたって、閉じ込められてんのはなぁ……グラウンドねえし」

不二咲「そうだよね。それだけじゃ、学園に残る決め手にはならないよね」

江ノ島「ま、順番に議論して行こうぜ! とりあえず最初のキーワードはこれだー!」


バッと江ノ島が手を挙げると、裁判場の全てのモニターに鉄板で塞がれた学園の窓が映る。


桑田「ハァ? 窓?」

大和田「窓がどうしたってんだ?」

腐川「あたし達を学校に閉じ込める忌ま忌ましい檻ね……」

朝日奈「本当、同じ閉じ込められるにしても外が見れたらなー」

不二咲「空が見えないって気が滅入るよね。時間の感覚が合ってるのかもわからないし……」

大神「だが、窓にこの学園の秘密があるようには到底思えぬが?」

苗木「僕もそう思うけど、何もないのに言わないと思うし何か秘密があるんじゃないかな」

霧切「同感よ。ここはその謎を解き明かすための場なのだから」

江ノ島「では各自感想を述べた所で、このキーワードについて議論してもらうわよ!」


山田「いや、議論と言われましても……」

葉隠「窓について語るってなんだ? みんなで窓の価値でも語ればいいのか?」

石丸「では僕から議案を提案するぞ! 窓を閉めているボルトについてだが、
    大きさと位置が不揃い過ぎるとは思わないかね?! 見た目が美しくない!」

セレス「心底どうでもいいですね」

腐川「あんたって本当空気が読めないわね!」

石丸「うぐぐ! だってあんなめちゃくちゃな締め方では見栄えが悪いではないかー!」

霧切「ねえ、確認するけどドラえもんとのび太君は答えを知っているの?」

ドラえもん「一応ね」

のび太「えーと、なんだっけ? たしか……」

ドラえもん「のび太くん! シッ!」

桑田「あー! 今言いそうだったのによ!」

葉隠「よっし! ここはのび太っちに集中砲火だべ!」

山田「なにがなんでも吐かせますぞ!」

のび太「あわわわわ! やめてよー!」

朝日奈「やめなよ! のび太がドラえもんに叱られたらかわいそうじゃん」

不二咲「どうしても教えられないの?」

ドラえもん「ごめん……自分達で気付くべきだから」

十神「フン、元より子供とロボットなどに頼るつもりはない」

大和田「でもよ、実際見当も付かないぜ?」


葉隠「ヒントくらいもらったってバチは当たんねえんじゃねえか?」

セレス「そうですわね。闇雲に話しても時間の無駄です」

ドラえもん「うーん、ヒントって言われてもなぁ」

のび太「答えならわかるけど、ヒント……」


どこまで情報を明かすべきか二人は思案する。


戦刃「盾子ちゃん、いくらなんでも窓だけだと難し過ぎるんじゃない?」

江ノ島「ま、毎日見てる訳だし気が付くならその時点でとっくに気が付くだろうしね。
     良いわよ、ヒントあげちゃう! ボルトの部分に注目しなさい」

苗木「ボルト?」

石丸「何度見ても酷いボルトだ。やはりここにヒントが……」

桑田「しつけーよ」

朝日奈「ちょっと黙っててくれない?」

江ノ島「いやーそれがねー、いつもは全力空回りストライクだけど今回に限っては
     そこまで見当違いの意見じゃないのよね、それ」

石丸「ほら! やはりボルトは整然と締めるべきなのだよ!」

腐川「え? 嘘でしょ? こいつの意見が正しいなんて」

山田「信じられませんなぁ」

十神「ボルトが規格も並びも揃っていないのは単に時間がなかったからだ。
    俺達を誘拐してから突貫工事をしているのだからな。当然だろう?」

大和田「あー、そうだよな。俺達が寝ている間に全部やったんだもんな」


セレス「黒幕がこの二人ということは、たった二人で全ての作業をしたということですか?」

葉隠「おー、そりゃお疲れさん。大変だったろうなぁ」

桑田「敵を労ってどーすんだよ!」

不二咲「でも、女の人二人であんなに重そうな鉄板を運べるかなぁ?」

舞園「ボルトもかなり大きいですしね」

ドラえもん「…………」

ドラえもん(うーん、なにかヒントを与えるべきなんだろうけどなにを言うべきか)ウーム


悩むドラえもんの横で、思わずのび太が口走った。


のび太「だって二人じゃないもん」

苗木「え?」

霧切「他にもまだ黒幕がいるということ?」

のび太「あ! いや、えっと……」

江ノ島「あんた達さあ、このボルトを見て他に気付くことない?」

大神「随分頑丈に締めているな。ここまでやる必要があったのか?」

葉隠「そりゃこのくらいやんないとオーガを閉じ込めるなんて出来ねえべ」

苗木「鉄格子じゃダメなのかな」

十神「外が見えない方が精神的に追い詰められコロシアイが起きやすくなる。考えればわかることだ」

山田「結局何が言いたいんですか?」

桑田「ぜんっぜんわかんねー!」

超高校級なのに頭悪くね?


江ノ島「なにこのグダグダ会話……なんか飽きてきたわ。これ見てるヤツ等も絶対そう思ってるわよ」

霧切「! 見ている? 誰が?」

十神「おい、どういうことだ! やはりこれは見世物の企画ということか?」

江ノ島「それはまた後でやるから今はこっちに集中集中。ほら、最後のヒントよ!」

江ノ島「気付かなかった? この窓の鉄板、全部内側から塞がれてんのよ?
     ここまで言えば流石のあんたらでもわかんでしょ」

江ノ島「こんな最初の方でいちいち詰まらないでよねー」


  [ 内側から締められた窓 ]


腐川「内側から締められてるって、それがなんだって言うのよ!」

葉隠「単に【締めた後出てった】んだろ?」

不二咲「待って。【内側から全部締めたら外に出られなくなるよ】」

十神「出て行く必要などない。【俺達を閉じ込めた張本人はこの二人】なのだからな」

大神「だが【二人だけでこれだけの作業が出来る】だろうか?」

江ノ島「この華奢な体を見てよ。こんな重労働を【女二人で出来るワケない】じゃん!」

のび太「みんながんばって!」

ドラえもん「苗木くん、落ち着いて考えるんだ」

苗木(この中にヒントとなる言葉があるはず。それを見極めれば答えが出るんだ!)



【女二人で出来るワケない】 ドンッ! ====⇒ 【俺達を閉じ込めた張本人はこの二人】BREAK!!


苗木「それは違うよ!」

のび太「出たー! 苗木さんのそれは違うよだ!」

ドラえもん「本物が見られて感激だね!」

苗木「えっ?」

のび太「あ、こっちの話なのでお気になさらず」

ドラえもん「どうぞ議論を進めてください。どうぞどうぞ」

苗木「えっと、じゃあ続けるけど……」

石丸「苗木君! 何が違うのだ! しっかり主語を言わないと伝わらないぞ!」

舞園「黙って聞いてあげてください」

苗木「今の話を聞いてて思ったんだけど、やっぱりおかしいよ」

山田「何かおかしい所なんてありましたか?」

苗木「十神君、僕達を閉じ込めたのはこの二人で自分達ごと閉じ込めただけ。そう言ったよね?」

十神「そうだ。まさかこの俺に口答えするつもりか?」

苗木「でも考えて欲しい。女性二人でこれだけの鉄板やボルトを運んで締めるなんて不可能だよ」

腐川「そんなの、他に協力者がいただけでしょ! 白夜様に口答えなんて百年早いわ!」

霧切「どうなの? あなた達には協力者がいたのかしら」

江ノ島「確かに仲間、というか便利なパシリ達はいたけど
     この件にはノータッチよ。基本的にはセルフでやってまーす」


朝日奈「じゃあやっぱり二人でやったってことでしょ?」

セレス「ですがそれは不可能という話では?」

江ノ島「はいはーい! このテーマでの議論は以上となりまーす。
     謎を残しつつ次のテーマに行っちゃうわよ!」

苗木「そんな! まだ何もわかってないのに!」

大和田「おい、なんだったんだよ今までの議論は」

大神「何も解決していないが……」

霧切「――パズルのピースということね。一つだけでは全容が見えてこない」

十神「全て揃って組み合わせて初めて全容がわかるということだ。大人しく黙っておけ、愚民共」

大和田「チッ。悔しいが今回だけはテメェの言う通りみたいだぜ」

江ノ島「次のテーマはアレよ。持ってきたんでしょ、残姉」

戦刃「うん。これだね。図書室から取ってきたよ」

苗木「封筒?」

江ノ島「ジャジャン! 封筒の中には一枚の書類が入っています。これがその内容よ」


画面に書類の内容が映し出される。それと同時に生徒たちが大きくどよめいた。


舞園「希望ヶ峰学園……閉鎖のお知らせ?」

苗木「それに、何だこれ……? 聞いたことないぞ」


『人類史上最大最悪の絶望的事件……?』


遅れてすみません。
もうすぐ資格試験があるのでかなり忙しいです

>>459
原作と違って一階しか開放されておらず完全ノーヒントなのでまあ……
ヒントあってもいきなり答え出せる人はそういないかと

無線技師かな


桑田「ハァー? なんだそれ?」

石丸「僕は毎日新聞を読んでいるが希望ヶ峰学園が閉鎖されたなどという話は聞いたことがないぞ!」

山田「そんな大事件ならネットニュースで大騒ぎになると思うのですが知りませんな」

朝日奈「私達、閉校する学校に入学しちゃったの?!」

大神「だが閉校がきまっている学園が新入生の募集などするのだろうか?」

不二咲「そうだよね。なんでだろう……」

十神「成程……こういうことだ。全ては俺達をおびき寄せるための罠だった。そうだろう?」

セレス「目論み通りまんまと罠に掛かってしまった訳ですわね、わたくし達」ギリィ

山田「折角憧れの希望ヶ峰学園からスカウトを受けたのに
    ヌカ喜びだったということですか?! ゆるさーん!!」

桑田「チクショー……こんな学校来なきゃ良かったぜ……」

舞園「そんな、嘘ですよね……」

石丸「努力が認められたと思ったのに……あんまりだ」

大和田「ケッ。暴走族をスカウトとか変だと思ったぜ……
     でもこれはもう答えが出たろ。さっさと次に行こうぜ」

腐川「そうね。悔しいけど時間の無駄だわ」

霧切「……本当にこれだけなの?」


ちょっと大幅に修正入ったので、投下し直します


桑田「ハァー? なんだそれ?」

石丸「僕は毎日新聞を読んでいるが希望ヶ峰学園が閉鎖されたなどという話は聞いたことがないぞ!」

山田「そんな大事件ならネットニュースで大騒ぎになると思うのですが知りませんな」

朝日奈「私達、閉校する学校に入学しちゃったの?!」

大神「だが閉校がきまっている学園が新入生の募集などするのだろうか?」

不二咲「そうだよね。なんでだろう……」

十神「フン、そんな書類は偽物だ」

苗木「偽物?」

十神「希望ヶ峰学園が閉校だと? そんな大事件がこの俺の耳に入らない訳がない」

大和田「まあ、あんだけ有名な学校だし、一大事件だよな」

舞園「でも、この場に偽物の書類を出して何の意味があるんですか?」

十神「俺もその意味について考えていたが……つまりこういうことだ。
    偽物なのはその書類だけではないということだろう」

セレス「どういうことです?」

十神「大事な新入生が一度にいなくなり、希望ヶ峰学園としては面目丸つぶれだ。
    本来なら、国家以上とも言われるその情報収集力を駆使して救助に来るはず」

山田「でも助けなんて来ないじゃないですか!」

桑田「もう何週間もここにいるんだぜ?」


十神「俺達が正規の新入生だったらな」

「えっ?!」

十神「全ては俺達をおびき寄せるための罠だった。そうだろう?
    入学許可証は偽物で、この書類はそれを暗に示している訳だ」

十神「だから助けが来なかった。つまりはそういうことだ」

セレス「目論み通りまんまと罠に掛かってしまった訳ですわね、わたくし達」ギリィ

山田「折角憧れの希望ヶ峰学園からスカウトを受けたのに
    ヌカ喜びだったということですか?! ゆるさーん!!」

桑田「チクショー……こんな学校来なきゃ良かったぜ……」

舞園「そんな、嘘ですよね……」

石丸「努力が認められたと思ったのに……あんまりだ」

大和田「ケッ。暴走族をスカウトとか変だと思ったぜ……
     でもこれはもう答えが出たろ。さっさと次に行こうぜ」

腐川「そうね。悔しいけど時間の無駄だわ」

霧切「……本当にこれだけなの?」

苗木「霧切さん?」

霧切「さっきはあからさまに謎を残したのに、
    この件はこんな簡単に説明がつくものなのかしら?」


霧切「それに『人類史上最大最悪の絶望的事件』……この単語が気になる」

十神「出鱈目だな。人類史上最大最悪の絶望的事件だと? そんなものがあれば
    十神家の情報網に引っ掛からない訳がない。大方その女が作った造語だろう」

セレス「人類史上とはまた大きく出たものですね」

腐川「センスのないネーミングよ! ギャルなんてどうせ頭空っぽなんでしょ」

江ノ島「……うぷぷ」

不二咲「でも、どうしてわざわざこんな回りくどいやり方をするのかな?」

大神「確かに不穏だな。何か裏の目的でもあるのだろうか」

葉隠「えーと、希望ヶ峰にスカウトされたのは間違いで、でもその書類も偽物で??」

十神「俺達を混乱させるのが目的と言った所か。そうだろう、江ノ島盾子?」

江ノ島「はい。雑魚眼鏡が見当違いの推理を披露したので次行きまーす」

十神「雑魚眼鏡だと……?!」

苗木「待って! やっぱり変だ。もう少し議論してみようよ」


  [ 謎の書類について ]


朝日奈「でも何を議論するの?」

大神「結局【希望ヶ峰閉校は出鱈目だった】のだろう?」

舞園「信じられません。【入学許可証が偽物だった】なんて……」

不二咲「ネットの掲示板にも名前が書かれてたのに……」

山田「【その書類も偽物】のようですしねぇ……」

石丸「断言しよう! 僕は毎日新聞を端から端まで読んでいるが
    【人類史上最大最悪の絶望的事件なんていう事件はなかった】!」

桑田「そりゃそんな大層な事件があったら流石の俺でも知ってるはずだわ」

セレス「何も信じられませんわね」

苗木(考えろ。何が論点なんだ? 江ノ島は何か理由があってこの書類を見せたはずだ)

霧切「さっき江ノ島さんは【十神君の推理は的外れ】と言ったわ。
    苗木君、ここまで言えばわかるわね?」

のび太「わあ、霧切さんの有名なセリフだ!」

ドラえもん「のび太くん、シーッ!」



【十神君の推理は的外れ】 ドンッ! ====⇒ 【その書類も偽物】BREAK!!


苗木「それは違うよ!」

山田「え?! な、なにが?」

苗木「きっと偽物なんかじゃないんだ」

桑田「ハァ? いやいや……」

セレス「苗木君はこの書類が本物ですと?」

十神「有り得ん! 十神家の情報網をどうやってすり抜けると言うんだ。愚民は黙っていろ!」

苗木「十神家の情報網を馬鹿にしてる訳じゃない。でも、この書類が偽物で終わったらおかしいよ」

大和田「おかしいってなにがだ?」

葉隠「別におかしいところなんてないべ」

苗木「だって、コロシアイの最中ならまだしもこの土壇場で出鱈目の書類なんか出して
    何の意味があると思う? 今みたいに偽物だの一言で終わっちゃうよ」

大和田「まあ、そうだけどよ……」

不二咲「今はパズルのピースを集めているんだもんね。確かに謎がないとおかしいけど、でも……」

舞園「信じられません……」

霧切「ゲームマスターである江ノ島さんは十神君の推理を的外れと言ったわ。
    つまり彼女が意図的に嘘をついていない限り、その書類は本物ということになる」

十神「嘘を付いているんだろう。こんな馬鹿げたことを仕出かす頭のおかしい女だぞ?」


苗木「でも、十神君は僕達のスカウトも罠だったって言いたいんだよね?
    それだと、ネットに情報が出ていたことの説明がつかないよ」

十神「そんなもの……どうとでもなるだろう。ネットの情報を鵜呑みにするのは愚民ならではだな」

山田「ネット馬鹿にするなし! マスコミより正確なことだってあるんですぞ!」

舞園「デタラメも勿論あるんですけど、怖いくらい正確な情報が流れてる時もありますよね……」

江ノ島「ま、信じるも信じないもあんたら次第だからどっちでもいいけどさ。
     アタシがこの段階で嘘付くメリットなんてあるのかしらねぇ」

戦刃「盾子ちゃんは確かにみんなから見たらおかしいかもしれないけど、
    ゲームに関してはフェアだよ。それは私が保証する」

十神「敵に保証されてもな」メガネクイッ

セレス「信用に足りませんわね」

大神「確かに、どちらが正しいのか我等にはわからぬな」

朝日奈「あ、じゃあさ! ドラえもん達に聞くのはどう?」

ドラえもん・のび太「えっ?!」

朝日奈「答えはダメでもヒントならいいんでしょ?」

桑田「あー確かに」

大和田「身も蓋もねえな……」

石丸「それで、どっちなのだ?! この書類は本物なのかね?!」

のび太「えーと……」チラチラ

ドラえもん「言っていいものかな……」チラチラ



二人は十神の顔色を窺っている。


十神「……チッ。どうやら本物のようだ」

舞園「あ、認めちゃうんですね……」

霧切「その二人に嘘なんてつけないもの」

十神「まあいい。どうやって十神の情報網をすり抜けたか後できっちり説明してもらうぞ」

ドラえもん「うん。全部終わったら、ね……」

江ノ島「さーて、次のお題はこれ」


モニターに大きな機械が映し出された。


江ノ島「あんた達は直接見る機会なかったけど、この学園の化学室に置いてある機械よ」

のび太「あれなんだっけ?」ヒソヒソ

ドラえもん「空気清浄機だよ。外は汚染されてるからね」ヒソヒソ

江ノ島「これは超高性能な空気清浄機よん!」

腐川「空気清浄機? なんでそんなものが重要な訳?」

十神「重要だろう。お前の悪臭を清浄してもらわないといけないからな」

腐川「ふぎゃんッ?!」

葉隠「流石、十神っち。バッサリ言ったべ……」

桑田「容赦ねーな……」


セレス「勿論それ以外の理由もあるのですよね?」

江ノ島「それをあんた達が議論するのよ」

不二咲「高性能ってどれくらい高性能なのかな?」

戦刃「あれ一つで学園中の空気が綺麗になるよ。汚染された空気も洗浄することが出来るんだ」

石丸「それは素晴らしい。是非とも発展途上国に寄附すべきだな!」

葉隠「フムフム。高く売れそうなんだな」

苗木「売る気なんだ……」

江ノ島「雑談もいいけどちゃんと議論してよね?」

朝日奈「でも、空気清浄機がなんで重要なの?」

大和田「そもそもなんでそんなもんが学校にあるんだ?」

大神「恐らくこの学園が密閉されているからだろう」

山田「空気を入れ替えないと酸欠になってしまいますからなぁ」

舞園「それだけなのでしょうか? 今までの様子だともっと捻った理由がありそうですが」

ドラえもん「これはヒントを言った方がいいかな」

苗木「教えてくれるの?」

十神「勿体振らずにさっさと言え」

のび太「えらそうだなー……」

ドラえもん「あの空気清浄機はここに置くには高性能過ぎるんだよ。
       この学園の換気をするだけならあんなものは必要ないんだ」



  [ 高性能過ぎる空気清浄機 ]


霧切「そうね。この広い学園には私達しかいない。換気扇が何台かあればそれで済むはずだわ」

セレス「【外気を取り入れられない】事情でもあるのでしょうか?」

桑田「……ここ、【実は地下】だったりして」

山田「漫画的には【海底に作られている】のを推したいですな」

葉隠「アトランティスか?!」

舞園「ちょっと黙っていてください」

不二咲「【別に空気が汚染されている訳でもない】し、必要ないよね?」

苗木「必要ないのかな? 必要のないものがなんでここにあるんだろう?」

霧切「逆に考えたらどうかしら。あの空気清浄機はこの学園にとって必要な物」

十神「まさか【外が汚染されている】とでも?」

朝日奈「確かに都会の空気は綺麗じゃないけど、汚染はないんじゃないかなぁ」

石丸「謎が謎を呼んでもはや訳がわからないぞ!」

苗木「…………」



苗木(思い出せ、みんなの言葉を……これだ!)


【外が汚染されている】BREAK!!


苗木「それに同意するよ!」

大和田「あ? なにに同意するって?」

苗木「十神君の言葉だよ」

十神「何?」

苗木「もしかして、この学園の外は“汚染されている”のかもしれない。
    だから、高性能な空気清浄機が必要なんじゃないかな?」

大和田「おいおい。いくら都会のど真ん中にあるからって汚染はないだろ」

腐川「やっぱりこんな陰気な場所は希望ヶ峰学園じゃなかったのよ!」

朝日奈「えーと、日本に汚染されてるような場所なんてあったっけ?」

舞園「そこから今いる場所が割り出せるかもしれませんね!」

不二咲「でも、国内にそんな場所あったかなぁ?」

セレス「もしかしたら日本ではないのかもしれません……」

十神「常識的に考えて国外、それも発展途上国と見るべきだろうな」

桑田「マジかよ……」


石丸「ぼ、僕達はいつの間にか国外に来てしまっていたのか?! そんな!
    僕はパスポートを持っていないのに! 違法出国で逮捕されてしまう?!」

十神「馬鹿は放っておくとして、結論は出たようだな」

大神「我等は日本にいないということか……」

葉隠「マジか……ここから出る時には航空券代も請求しねえとな」

山田「そこは大事なんですね」

霧切「まだ確定していないわ。現時点で推測出来るのは何らかの
    要因で外が汚染されている可能性があるということだけよ」

苗木「でも、なんで汚染されているんだろう?」

舞園「一体外で何が……」

戦刃「知った所で絶望するだけだよ。ここにいればいいのに」

苗木「え、それってどういう……?」

江ノ島「はいはーい。盛り上がってきたところで、次の話題に行っちゃうわよ!」

江ノ島「これが最後のテーマになるわね。画面をよーく見てちょうだい」



江ノ島が指し示した画面には一枚の写真が映っていた。それは――



ここまで。訂正入ったりして失礼しました。


>>465
秘密ですー



  第十九話 ぜったいぜつめい! 学級裁判!! 後編


「……え?」


一同は言葉を失う。

何故なら、そこに写っていたのはありえない光景だったから。

モニターに映っていたのは、体操着を着て笑顔で運動会をしている生徒達の姿だった。


江ノ島「他にもまだまだあるわよ~。あんなのとか、こんなのとか!」

のび太「プールでおよいでたり、ゆきがっせんしてる写真だね。集合写真もある」

ドラえもん「…………」

ドラえもん(いい笑顔だ。見るのがツラい……)

朝日奈「なにこの写真?! 私こんな写真撮った記憶ないよ?!」

山田「僕もですぞ!」

舞園「私もです……どうしてこんな写真があるの……?」

十神「フン、ハメ込み合成だろう。まったく手の込んだ真似をする」

不二咲「パソコンがあれば合成かどうか調べられるんだけど……」

葉隠「それにしてもみんないい笑顔だべ」

石丸「ウム、いい笑顔だな! 合成とは思えない!」

大神「だが、何故わざわざこんなものを?」


腐川「どこまであたし達をおちょくるつもりなのよ!」

大和田「まったくだぜ! 俺達をバカにするのもいい加減にしろ!」

霧切「…………」


生徒達がざわめく中、一人霧切だけが青ざめていた。


苗木「急に黙り込んでどうしたの、霧切さん?」

霧切「そんな馬鹿なことが……でも、今までのやり方だと……いえ、そんなはずは……」ブツブツ

[たぬき](霧切さんはどうやら可能性に気が付いたようだ)

桑田「この写真がなんだって言うんだよ?」

セレス「そろそろ結論を教えてもらっても宜しいのでは?」

江ノ島「まだわかんないの?」

朝日奈「わかんないって何が?」

十神「もったいぶるのもその辺にしたらどうだ」

石丸「そうだ。いい加減にしたまえ!」

江ノ島「だから、本当にまだ分からないの? もうほとんど答え見せてるじゃん」

舞園「どういう意味ですか……?」

江ノ島「あたしは今まで本当のことしか言わなかった。つまり、この写真も『本物』ってこと」

不二咲「でもこんな記憶僕達にないよ……?」

苗木「何を言いたいんだ……」


ミス


腐川「どこまであたし達をおちょくるつもりなのよ!」

大和田「まったくだぜ! 俺達をバカにするのもいい加減にしろ!」

霧切「…………」


生徒達がざわめく中、一人霧切だけが青ざめていた。


苗木「急に黙り込んでどうしたの、霧切さん?」

霧切「そんな馬鹿なことが……でも、今までのやり方だと……いえ、そんなはずは……」ブツブツ

[たぬき](霧切さんはどうやら可能性に気が付いたようだ)

桑田「この写真がなんだって言うんだよ?」

セレス「そろそろ結論を教えてもらっても宜しいのでは?」

江ノ島「まだわかんないの?」

朝日奈「わかんないって何が?」

十神「もったいぶるのもその辺にしたらどうだ」

石丸「そうだ。いい加減にしたまえ!」

江ノ島「だから、本当にまだ分からないの? もうほとんど答え見せてるじゃん」

舞園「どういう意味ですか……?」

江ノ島「あたしは今まで本当のことしか言わなかった。つまり、この写真も『本物』ってこと」

不二咲「でもこんな記憶僕達にないよ……?」

苗木「何をしたいんだ……」



江ノ島「――さて、それでは最後の問題です」


江ノ島「お前らの記憶にはない数々の写真……
     これらは一体いつどこでどうやって撮られたのでしょう?」




  [ 記憶にない数々の写真 ]


桑田「やっぱり【この写真はニセモノ】なんだって! それで解決出来るだろ?」

十神「今まで本物を見せてきたのはこの写真を信じさせるためのブラフということか」

腐川「そうよそうよ! ズル賢いギャルの考えそうなことだわ!」

石丸「確かに、そうとしか考えられないしな……」

舞園「本当に他に考えられないのでしょうか?」

不二咲「催眠術とか、無理だよね……?」

葉隠「俺達全員【集団催眠でこの写真を撮らされた】のか?!」

セレス「一体何が目的でそんな手間を?」

朝日奈「えっと、私達を混乱させるためとか……」

大神「それなら合成で良いような気がするな」

霧切「考えられる可能性は二つ。彼女が嘘をついていて、写真はニセモノ。
    もう一つは、写真は本物で私達に何らかのアクシデントがあり記憶がない」

大和田「まさか【ここにいる全員記憶喪失】とでもいうつもりか?」

山田「流石にないでしょう」

苗木(わからない……何が答えなんだ。そもそも僕達の議論に正解はあるのか?)


のび太「苗木さん、がんばって!」

ドラえもん「有り得ないように思えるかもしれない。でも、可能性は一つしかないんだ!」

苗木(一つしかない……一見あり得ないようなこと……)

苗木(…………)



苗木「見えたッ!」


【ここにいる全員記憶喪失】 ドンッ! ====⇒ 【この写真はニセモノ】BREAK!!



苗木「それは違うよ!」

大和田「ああ?! なんだ? なにが違うって?」

苗木「この写真は偽物なんかじゃない。本物なんだ!」

桑田「ありえねー! じゃあ、なんで全員覚えてないんだよ。催眠術ってか?!」

苗木「違う。催眠術なんかじゃない……僕達全員、記憶喪失なんだ!」



「記憶喪失ッ?!」


山田「な、なんだってー?!」

桑田「いやいやいや……ありえねーだろ……」

石丸「苗木君はディスカッションが得意だというのは
    今まででよくわかったが、流石にそれは無理があるぞ」

葉隠「オ、オカルトは信じねえからな!」

朝日奈「どうして記憶喪失になるの?」

セレス「全員が同じ記憶を同時になくすなんて確率的にもありえませんわ」

不二咲「やっぱり、集団催眠とか……?」

大神「催眠術とはそこまで万能なものなのか?」

葉隠「いやー、流石にムリあるべ」

十神「チッ、化けの皮が剥がれたか。所詮愚民はここまでのようだな」

腐川「そ、そうよ……職業柄、記憶力には自信あるのよあたし」

大和田「いや、ジェノサイダーになってる時の記憶ねえだろお前」

山田「実は僕達全員多重人格だったとか?!」

舞園「ありえません! アイドルは変な行動をとったらすぐスキャンダルになります」

朝日奈「うーん、そんなに記憶力は良くないけどさすがに途切れてたりはしないかなぁ」

大和田「苗木、悪いけどよ……」

苗木「みんな……」


霧切「私も記憶喪失の可能性は高いと思っているわ。でも、証拠がないのも事実……」

苗木「僕だって、自分から言い出しておいてなんだけど間違いだったら嬉しいと思ってるよ……」

江ノ島「ま、あんたら校舎の中全く捜査出来てないもんね。ほら、残姉」

戦刃「実はさっき図書室に行った時に、これも持ってきてって言われてたんだ。配るね」

苗木「これは……新聞?」

桑田「今年の甲子園でLL学園が敗退?! 俺が優勝させたじゃんか!」

舞園「え?! 先輩アイドルが引退?! そんな、私何も聞いてないのに……」

大神「ム。いつの間にかあの人気俳優が結婚していたのか」

朝日奈「え~、全然知らなかった!」

葉隠「俺の持ってる株が爆下げしてるぅぅぅ!!!」

山田「むむっ?! ガンダムの新作が来てるのに知らなかっただと?!」

石丸「フム、解散総選挙? おかしいな、読んだ記憶が無いぞ!」


ワイワイザワザワ!!


十神「おい、待て……この新聞……」


盛り上がる生徒達と反面、一部の生徒は顔面が真っ青になっている。


セレス「……未来の日付になってますわね」

霧切「江ノ島さん、教えて頂戴……今は西暦何年なの?」


『……え?』


――シィーーーン。


江ノ島「うぷぷ。うぷぷぷぷ!」

江ノ島「待っていた。待っていたのよね、この瞬間を! あんた達の今の顔を!!」

舞園「嘘……ですよね……?」

桑田「マジでありえねーって……」

不二咲「本当に、本当に記憶喪失なの……?」

葉隠「そんな、バカなことって……」

戦刃「二年だよ」

腐川「何が二年なのよ……」

戦刃「みんなが記憶をなくした期間」



「……………………」


大和田「それってアレか……つまり」

苗木「僕達は二年間、希望ヶ峰学園に通っていた……」

舞園「いやああああああああああああああああああッ!!!」


舞園が絶叫する。


朝日奈「そんなの……ウソだよ。ウソって言ってよ……!」

桑田「ウソだろ? なあ、のび太! ドラえもん!」

のび太「…………」

ドラえもん「残念ながら……」

大和田「は、は……マジか」

石丸「……二年間? え、二年間通っていた? えっ???」

山田「みんなでこの写真みたいにバカ騒ぎしたり遊んでたってことですか……?」

腐川「う、うそよそんなの! あたしは信じない!」

セレス「わたくし達は危うくクラスメイト同士でコロシアイをするところだったと……?」

不二咲「そんな! そんなのって、酷い……!」

十神「だ、だがどうやって! そんなことは不可能だ!!」

大神「そうだ。どこにそんな技術がある?!」

実際どうやって記憶消したんだっけ?


霧切「不可能って言えるのかしら……現に私達はモノクマやドラえもんといった
    オーバーテクノロジーを目の当たりにしているのよ……」

のび太(ドラえもんはこの時代のロボットじゃないけどね)

江ノ島「あんたら一分野だけ特化してるだけの凡人には想像つかないかもしれないけどさ、
     アタシレベルの超天才だと、複数の超高校級の才能をまとめて駆使することが出来ちゃう訳」

江ノ島「例えば超高校級の神経学者、脳科学者、生物博士、メカニック、プログラマーとかね。
     複数の才能を組み合わせれば特定の記憶だけ消去する装置を作るなんて朝飯前よ」

山田「そ、そんなのチート過ぎますぞ!」

石丸「努力を愚弄している……!!」

江ノ島「ラスボスって大体チートじゃない? 二回連続攻撃とか魔法無効とかさ」

戦刃「仕方ないよ。これが盾子ちゃんの能力なんだから」

江ノ島「マクガフィンにこだわっても話が進みません。私様がオマエラの記憶を奪いました。
     今はそれだけでオーケー。で、他に気になること出てきたんじゃないのー?」

のび太「きになること? なにかあったっけ?」

ドラえもん「えーと……」

苗木「あ!」

霧切「人類史上最大最悪の絶望的事件……」

大神「確かその事件のせいで学園は閉鎖に追い込まれたのだったな」

セレス「希望ヶ峰学園程の学校が閉校に追い込まれるほどの事件……」


キリ悪いですがここまで。

誰の得にもならない特殊変換ほんとヤメて……
創作サイトで伏せ字とか単なる妨害行為だわ、本当


>>496
確か作中でははっきり明言されてなかったはず。ゼロで松田くんが
記憶を消す装置を開発しているのでそれを応用した説が濃厚、だったかな

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十神「おい……」

江ノ島「おやー、どうかしたのかな十神くーん? 溺死体みたいに顔が真っ青だよぉ?」

十神「外は今どうなっている……」

苗木「……え?」

十神「どうなっている!!」

霧切「政府の支援を受けている希望ヶ峰が閉校するなんて
    よほどの事態でないとあり得ないわ。それに汚染された大気……」

葉隠「まさか、恐怖の大王が今頃になってやってきたってんじゃねえだろうな……」

石丸「そんな馬鹿な?! 世紀末はとっくのとうに終わっているんだぞ……!」

腐川「と、とうとう核戦争が……?!」

朝日奈「やめてよ!! そんなこと、そんなことあるわけ……」

江ノ島「さーて、外はどうなっているのでしょうー??」ニヤニヤ

大神「性根の歪んだ奴め……!」

舞園「教えてくださいッ!! 人類史上最大最悪の絶望的事件てなんなんですか?!
    外は今どうなっているんですか!! 答えてッ!!!」

山田「マ、ママとパパは……姉上は……?!」

大和田「俺のチームはどうなってやがるッ?!!」

苗木「もったいぶらずに答えたらどうだ!!」

戦刃「盾子ちゃん、そろそろいいんじゃないかな?」

江ノ島「そうね。十分堪能したし、次のステップに行きましょうか」


江ノ島「お望み通り、見せてやるわよ。アンタ達が見たくて堪らない外の世界をね!」


モニターの映像が切り替わる。

そこに映っているのはモノクマのマスクをつけた多数の暴徒達、そして荒廃した様々な都市……


舞園「なにこれ……なにこれ?!」

石丸「嘘だあああああ!!」

不二咲「こんなの、いやだよ……いやだ……」

朝日奈「信じられない……なんで……」

江ノ島「まあ詳しい説明は省くけどさ、世界は今まさに絶望に覆われようとしているの」

苗木「絶望……?」

江ノ島「初めは小さな絶望だった。人々の不満とか不安とか、誰もが当たり前に持ってる
     そういう小さな感情をアタシが少しずつ育てて広めていったの」 

江ノ島「そして膨らんだ絶望は周囲に感染し、絶望の集団を生み出した」

十神「絶望の集団?! なんだそれは!」

戦刃「テロ組織だと思ってくれて構わないよ。盾子ちゃんが自分を教祖として
    作り上げ、組織化した集団だね。希望ヶ峰の関係者も複数入ってる」

のび太「希望ヶ峰の人が? みんな成功してるはずなのになんで?!」

江ノ島「才能ってやつはね、人を縛るのよ。アタシだってそう。
     超天才として生まれて、生まれたその瞬間から絶望してる」

ドラえもん「どうして天才として生まれたからって絶望に繋がるんだ?
       きみはその才能を正しい方向に使うべきだ!」



江ノ島「希望っていうのは最後は必ず同じ結末に繋がってつまんないでしょ?
     王子様はお姫様を助けて終わり、貧乏人は金持ちになって終わり」

江ノ島「そんなありきたりのエンディングなんてつまんねーんだよ!!
     アタシはアタシの想像のつかないものが見たい! 面白く生きたいワケ!」

舞園「そんな……そんな酷い理由でこんなことをしたんですか?!」

山田「なにが絶望は予想が付かないだ! BADENDのアニメは大体同じ終わり方だぞ!!」

大和田「そ、そうだ! テロで世界をメチャクチャになんて映画じゃありきたりだろうが!」

桑田「ふざけんじゃねーよ!! 俺達から奪ったもん全部返せ!!」

セレス「これ以上ナメたこと言いやがったらぶち殺すぞ、糞ギャルがぁ!!!」

江ノ島「確かに大体終わり方は一緒だけど、絶望は思いも付かない展開を見せてくれるのよ。
     ま、これは考え方の違いだからあんた達と議論する気なんてないけどね」

江ノ島「そうそう。あんた達も気付いてると思うけど、ここの映像はある人々に見せています」

霧切「監視カメラの映像ね……」

腐川「どうせ……あんたのイカれた仲間にあたし達が
    困っているところを見せて笑ってたんでしょ……!!」

大神「許さんぞ、江ノ島……!」

江ノ島「半分正解ってとこかな。でも半分は間違い」

苗木「間違い?」

江ノ島「ほら、裁判始まってから陰の薄い小学生と青狸。答えを教えてやんなよ」

ドラえもん「…………」

のび太「…………」


葉隠「お、おう。どうした? これ以上悪いニュースなんてないだろ……?」

のび太「……みんなだよ」

朝日奈「みんなって……誰?」

のび太「世界中のみんな」

桑田「は? だから、世界の誰に?」

ドラえもん「……この学園の様子は今も全世界にリアルタイムで流されているんだ」


「…………」


「…………」


「…………は?」


苗木「ま、待ってよ。それって……」チラ

舞園「……………………」

腐川「……………………」

江ノ島「ほら、残姉」

戦刃「テレビ持ってきたよ」


戦刃が持ってきたテレビの電源を入れる。そこには、確かに裁判の様子が映っていた。


朝日奈「じゃあ、舞園ちゃんが事件を起こそうとしたことも腐川ちゃんが
     実はジェノサイダー翔なことも、全部テレビで流れちゃったの?!」

桑田「ま、舞園……」

舞園「…………」



舞園は真っ青な顔のまま、無言で崩れ落ちた。隣の席の苗木が慌てて舞園を助け起こす。


苗木「舞園さん! しっかりするんだ!」

舞園「私……私……」ブツブツ

腐川「お、終わりだわ!! もう何もかも終わり! いやあああああああ!!」

不二咲「腐川さん!」


バターン!

腐川も気絶して真後ろに倒れた。そしてすぐに立ち上がる。


ジェノ「どうもー! いつもご機嫌な殺人鬼ジェノサイダー翔ちゃんでーす!!」


「……………………」


ジェノ「あれ? なんかお通夜な雰囲気? 誰か死んだ?」

のび太「空気よんでよ……」

ドラえもん「ちょうど良かった。翔さん、きみはこの二年間の記憶を持っているはずだ」

セレス「どういうことです?」

ドラえもん「ほら、腐川さんとジェノサイダー翔は記憶を共有していないだろう?
       記憶を消されたのは腐川さんの方で、彼女は記憶を保持しているんだよ」

十神「何?! おい! 人類史上最大最悪の絶望的事件について貴様は知っているのか?!」

ジェノ「そんな! 白夜様ったらあの絶望的事件を忘れてしまったの?
     あんな悲劇的で残酷で悲しい事件を忘れてしまうなんて!」

霧切「何があったの?」


ジェノ「あれはもはや現象としか言えねえな……。突然世界的に発生したテロ。
     政府が対処するより早く感染症みたいに広がって連鎖していった」

ジェノ「気付いた時にはもうどうしようもならなくなってたから、あたしらはこの学園を
     シェルターにして絶望が落ち着くまで避難することにしたってワケ」

「シェルター?」

江ノ島「希望ヶ峰学園シェルター計画。あーあ、ちゃんと学園内にヒント置いといたのになー。
     ま、いいや。答えの方を見せてあげる。ぜーんぶここに書いてあるから」


江ノ島はファイルを中央に放り、モニターにその中身が映し出される。


大神「学園長主導で世界の希望である超高校級の生徒を守ろうとしていたのか……」

大和田「おいおい……どういうことだよ。まさか窓をふさいでる鉄板とかボルトは……」

江ノ島「あんたらが自分でやったのよ。外の暴徒達から身を守るためにね」

石丸「だ、だから全て内側から締められていたというのか?!」

山田「慌てて締めたから、規格も場所もめちゃくちゃだったということですか?!」

江ノ島「そ。答えがわかると案外簡単でしょ?」

桑田「なんで知ってたのに黙ってたんだよ、ジェノサイダー!」

ジェノ「いや、そもそもアタシおめえらが記憶喪失なんて知らなかったし」

ドラえもん「あ、じゃあ大事なことは話したしそろそろ腐川さんに戻ってもらえる?」

ジェノ「ああん? なんで? 折角出てきたんだぞ?」

のび太(だってこのまま話がすすんじゃうと腐川さんがかわいそうだから……)


ドラえもん「今すごく大事な話をしているから、ね?」

ジェノ「冗談じゃねえ! アタシだけ仲間外れとか許さね……」

十神「……いいから戻れ」

ジェノ「アッハイ」クシュン

ドラえもん・のび太(この人の言うことは素直にきくんだよな……)

腐川「え? 何? 今なにを話してる最中?」

ドラえもん「ええっとねえ……」カクカクシカジカ

不二咲「……あれ?」

セレス「どうかしましたか?」

不二咲「ここに学園長の名前が書いてあるんだけど……霧切、仁?」

「!!」

苗木「霧切さん……?」

十神「説明してもらおうか?」


霧切は一瞬だけ目を伏せてから答えた。


霧切「――父よ」

朝日奈「霧切ちゃんのお父さん、学園長だったんだ……」

大神「そうか……」

霧切「父は、今どこに?」

江ノ島「もう予想付いてるんじゃないの? ほら、教えてあげなよ」ニタァ


のび太「その……」

のび太(なんていえばいいんだろう……)

ドラえもん「お父さんは……お亡くなりに……」

霧切「……そう」

苗木「霧切さん……」

江ノ島「あ、遺言代わりと言っちゃなんだけどビデオあるから見る?」


モニターには、在りし日の仁が生徒達と面談をしている映像が映し出された。


仁『君達はもう二度とここから出ることは出来ないかもしれない。それでも構わないか?』

苗木『はい。世界がこんな状況ですから』

             ・
             ・
             ・

舞園『わかりました。いつか世界が落ち着いた時、皆さんを勇気づけなければならないですしね……』

             ・
             ・
             ・

十神『やむを得んな……』


「……………………」


生徒達は食い入るように映像を見つめている。


葉隠「は、はは……全然記憶に残ってねえ」

朝日奈「当たり前でしょ。消されちゃったんだから……」

大神「やはり、江ノ島の言葉は全て真実ということか……」

セレス「信じたくありません……受け入れがたい話ですわ……」

十神「……おい。十神財閥はどうなった? 俺の一族は?」

江ノ島「はい、ではここで問題です。十神君以外の十神一族はどうなったのでしょうか?」


画面に三択の選択肢が現れる。しかしその内容は……

 1.滅亡した
 2.滅亡した
 3.滅亡した


十神「ば、馬鹿なッ?!」

江ノ島「残念ですが、十神一族はあなた一人を除き滅亡してしまいました~」

十神「世界を統べる十神一族が滅びるなど……そんなはずが……」チラッ

ドラえもん「残念だけど……」

のび太「本当だよ」

十神「う、くぅ……」ギリッ!

ドラえもん「十神くん……」

江ノ島「さーてさて、それでもオマエラは外に出たい訳?!」

葉隠「で、でも最悪ドラえもん達に避難させてもらえば……」

ドラえもん「それはダメだよ。ぼく達に出来る手助けはこの学園から脱出させるところまでなんだ」

山田「なんでですか?!」


若干訂正


江ノ島「さーてさて、それでもオマエラは外に出たい訳?!」

葉隠「で、でも最悪ドラえもん達と一緒に避難すれば……」

桑田「江ノ島にすらバレずに侵入出来たんだもんな! 
    なんか、スゴい組織とかバックにいんだろ? だろ?!」

ドラえもん「残念だけど、それは許されていないんだ。ぼくらが出来る手助けは
       きみ達をこの学園から脱出させるところまでなんだよ」

山田「なんでですか?!」

朝日奈「そんな、どうして?!」

のび太「それは言えないんです。ごめんなさい……」

ドラえもん「一応、比較的安全そうな場所(大神道場の避難場所)は見つけてあるからそこまで
       連れて行くことは出来る。でもその後は全部きみ達自身でやらなければダメなんだ」

ドラえもん「ここから出て外の世界で生きるのがきみ達が進むべき道なんだよ。
       だから、悪いけど一緒に連れていくことは出来ない」

葉隠「あ、あんまりだべ。それじゃあその後どうなるかわかんねえじゃねえか!
    結局出なかった方が良かったってことになるかもしれないってことだろ?!」

山田「助けるだけ助けて後は放置なんて無責任ですよ!!」

のび太「それは……」

ドラえもん「本当にゴメン……」

苗木「やめようよ! ドラえもん達がいなかったら僕達はここでコロシアイをしていたんだよ?!」

不二咲「これは僕達の問題なんだから、他の人に頼っちゃダメだと思う……」

葉隠「う……そうだけど……」

大和田「つまり、せっかく外に出ても暴徒に襲われる可能性があるってことか……」

戦刃「外の治安はかなり悪いよ。訓練をしていない人間が生きていくには厳しいね」



舞園「じゃあ、最初の計画通りここに残るって選択肢の方がいいんじゃないでしょうか……」

セレス「わたくしは残らせてもらいますわ。今までは出たくて出たくて仕方が
     ありませんでしたが、こんな状況では夢も目標もあったものではないですもの」

石丸「セレス君! ……クッ、どうすればいいんだ。正直な所、学園長の遺志を
    無駄にする訳にはいかないし、僕達だけで何が出来るのかという気持ちもある……」

不二咲「お父さんやお母さんはどう思っているんだろう? 生きているのかな……?」

朝日奈「わかんない……どうすればいいかわかんないよ……」

ドラえもん「…………」

ドラえもん(ここまでは予想通りだね。あとは、苗木くんに頑張ってもらわないと)

苗木「希望を捨てちゃ駄目だ! 一人一人なら生きていくのは難しいかもしれない。でも、
    ここにはみんながいる! 僕達全員の力を合わせれば、きっと何とかなるはずだよ!」

腐川「何とかって何よ?! 命が懸かってるっていうのに、希望的観測で物を語るんじゃないわよ……!」

十神「世界を統べる十神財閥が滅亡しているのだぞ……そんな状況で一体どうするという?」

桑田「希望ヶ峰が閉鎖するレベルなんだろ? ……ムリだって。俺、まだ死にたくねーし」

葉隠「俺達は世界の希望なんだろ? じゃあ、ここに残ってないとダメなんじゃねえか?」

江ノ島「そうだよ! オマエラの両親はオマエラだけでも生きていてもらいたいから
     シェルター計画に賛同したんじゃないの? 少なくとも計画発案者兼推進者の
     学園長はそう思っているはずだよねぇ、霧切?」

霧切「……何故私に言うの」

江ノ島「そりゃ学園長が保護者代表だからよ。最期まで響子を助けてくれー!って叫んでたよ?」

霧切「……!!」


あと少しだけど、続きはまた明日


苗木「き、霧切さん……」

のび太「みんな! 絶望なんかに負けちゃダメだ!」

ドラえもん「そうだよ! ここで止まってしまったら、希望も絶望もないんだよ!」

苗木「一緒に外に出ようよ! 外には僕達を待っている人が……!」

山田「では苗木誠殿だけ出れば良いでしょう?」

セレス「そうです。出たい人だけ出るというのは可能ですか?」

江ノ島「別にいいよ。最後に投票するから残りたいヤツは残るを選択して。
     ――ただし、その場合裁判はアタシの勝ちね?」

のび太「えっ?!」

ドラえもん「な、なんだって?!」

霧切「……残ることにデメリットは?」

江ノ島「裁判の最初に言ったけど、アタシは今後この学園にはノータッチだから安心しなよ」

舞園「食料がなくなったり空気清浄機を止めたりとか……」

江ノ島「そんなセコい真似しないっつーの。なんなら護衛と連絡用に残姉置いといてもいいよ。
     物資が足りなくなったら可能な限り補充もしてあげる」

戦刃「お姉ちゃんを置いていくなんて酷いよ、盾子ちゃん!」

石丸「なら、ここに残れば確実に生き残れる訳だな……」

不二咲「お父さんとお母さんはそれを望んだんだよね……?」


ドラえもん(不味い! 江ノ島はなりふり構わず勝負に勝つつもりだぞ!)

ドラえもん(この裁判は全世界で放送されていて、希望と絶望の代理戦争でもあるんだ!
       江ノ島が負けてくれないと絶望の集団が解体出来ない!!)

のび太「どうしたの、みんな? 外には家族だっているんだよ?! まさかのこったりなんか……」

ドラえもん「家族を探しに行かないのかい?!」

大和田「俺はもう探す家族がいないしな……」

朝日奈「外に出ても生きてるかわからないし……」

大神「だが……生きているか確認に行くくらいはした方が良いのでは?」

江ノ島「あ、一度外に出てまた学園に戻るってのはなしだからね。反則でしょ、そんなの」

桑田「マジか……だったらやっぱり……」

「……………………」

苗木「み、みんな!」

十神「いい加減にしろ! 俺達は貴様のような能天気には出来ていない!」

苗木「そんな……」

ドラえもん「…………」

ドラえもん(……様子がおかしい。原作と違ってみんな生存してるし、
       もっと楽に説得出来ると思ったんだけど……何が原因なんだ?)

のび太「大神さん!」

大神「すまぬ。話が大きくなりすぎて、我だけでは決められぬ……」


のび太「石丸さん!」

石丸「む、無理だ……僕達には責任がある……大人達が託してくれた希望を無駄にする訳には……」

のび太「霧切さんは?!」

霧切「……ごめんなさい」

のび太「そんな……」

ドラえもん「……!」


全員の暗い顔を見て、ドラえもんは気が付いた。


ドラえもん(そうか、わかったぞ! 人数が多いからこそ、負の感情が増幅しているんだ!)

ドラえもん(原作では生存者は6人。そこから苗木くんとジェノサイダーを引くから、
       説得したのは実質4人だ。でも、今は13人もいる!)

ドラえもん(大神さんは家族の無事を知ってるから大丈夫だとしても、
       12人もの人間を苗木くん一人で説得するのは負担が大きい……)

ドラえもん(しかも最大の問題は、原作と違って残るを選択しても苗木くんは処刑されない!
       彼らが学園に残ることを選択する抵抗感や罪悪感が一切ないんだ!!)

苗木「…………」


苗木は俯き、拳を固めている。


のび太「ド、ドラえもん……」

ドラえもん(いったいどうすればいいんだ?!)


ここまで。

入れ忘れましたが、>>504から


  第二十話 ぜつぼうがとまらない?!


でした

>>514[たぬき]「ここから出て外の世界で生きるのがきみ達が進むべき道なんだよ。
       だから、悪いけど一緒に連れていくことは出来ない」

葉隠「あ、あんまりだべ。それじゃあその後どうなるかわかんねえじゃねえか!
    結局出なかった方が良かったってことになるかもしれないってことだろ?!」

山田「助けるだけ助けて後は放置なんて無責任ですよ!!」

のび太「それは……」

[たぬき]「本当にゴメン……」

このシーンで灰慈の「味方をするなら最後までやれ!!中途半端な味方なら…最初からやるな!!」を思い出した



  第21話 きぼう VS ぜつぼう! 勝つのはどっち?!


江ノ島「はいはーい。結論が出た人はパネルの残るをタッチしてね☆」

「…………」


各座席の前に付いているモニターには、卒業と残るの2つのボタンが表示されている。


のび太「ドラえもん! なんだか、へんだよ!」ヒソヒソ

ドラえもん「わかってる!」ボソボソ

ドラえもん(どうする? なにか道具を使おうか? でも、カメラが回っているし
       みんなもいるからあからさまなことは出来そうにないぞ……)


「…………でも」


のび太「……え?」

ドラえもん「……ん?」


二人は声のした方向を振り返る。



苗木「――それでも僕は、希望を信じ続ける!」


カッ!


江ノ島「ハァァ?! オメエなに言っちゃってんの? それともイッちゃってんの?
     オメエにとってこれ以上最低で最悪で絶望的な状況はないっつーの!」

苗木「違う……」



苗木「それは違うよッ!!!」



苗木は江ノ島を指差し、ピシャリと否定する。


のび太「苗木さん……」

ドラえもん「いいのかい? このままだと君は一人で外へ行くことに……」

苗木「構わないよ。もし、外の世界が絶望と死で溢れていたとしても、
    それだけじゃない。きっと希望だってあるはずだ!!」

江ノ島「希望なんてねえっつーの!!」

苗木「だったら、僕達が希望になる!!!」

苗木「絶対に何があっても諦めたくないんだ! こんな奴らに人生をめちゃくちゃにされて、
    将来のことまで決めつけられるなんて僕はごめんだ!!」

苗木「自分がどうするかは自分で決めるよ! たとえ一人でも僕は出るし、
    みんなだってわかってくれるって信じてる!!」

のび太「おおー!」

ドラえもん「さすが! それでこそ主人公だ!」

苗木「みんな、本当にそれでいいの?! 悔しくないの?!
    絶望の思い通りになんかなっちゃダメだよ!」


舞園「でも、外にはたくさん暴徒がいるんですよ!」

桑田「そーだよ、意地はんなって! なにも死にに行くことないだろ!」

苗木「きっと大丈夫だよ」

大和田「ハア?! 大丈夫って……!」

石丸「一体何を根拠に!!」

不二咲「危ないよ! 無理しないで……」

苗木「別に意地を張ってる訳じゃないんだ。無理をしてる訳でもない」

苗木「この裁判は世界中で放送されているんでしょ? 僕達がコロシアイをやめたことや
    僕が外に出ることで、勇気づけられた人がきっと大勢いるはずだよ」

江ノ島「バッカじゃないの。あんた達を助けようとこの学園まで来たヤツ等は
     腐るほどいたわよ。でも、ぜーんぶアタシらに返り討ちにされちゃったけどね」

朝日奈「な、苗木! やっぱり危ないって!」

大神「苗木……」

苗木「それは今までの話だよね? その時は確かに絶望が勝ってた。けど、これからは違う」

苗木「裁判のルールではみんなが残ればお前の勝ちかもしれない。でも、一人でも外に出る
    人間がいるのなら、お前の思い通りにならない人間がいるのなら――」

苗木「――僕とお前の間では、少なくとも僕の勝ちだ!!」


          ト ゛  ン  ッ  !  !  !


江ノ島「……!!」

江ノ島(チッ! 相変わらずクソうざいヤツ……!!)


戦刃「…………」

戦刃(なんでだろう……苗木君が一人だけ外に出たってただ死にに行くだけなのに、
    言ってみれば単なる負け惜しみなのに、私達が押されてる気がする……どうして?)


背中にじんわり汗がにじむ。戦いでは敵なしの戦刃が、戦い以外でプレッシャーを感じ取っていた。


のび太「そうだよ! 一生こんなところにいていいの?! 二度とそらがみれないんだよ?!」

ドラえもん「きみ達は世界の希望なんだ! 世界中の人々が今もきみ達を待っているんだ!」

苗木「外に出よう! 一生こんなヤツの言いなりになって絶望しながら生きるなんて、
    そんなの生きてるって言わないよ!! みんな!!!」


「……………………」


苗木の決死の説得でもまだ生徒達は動かない。

当然だ。命が懸かっているのだから。


だが、苗木もまた超高校級の才能を一つ持っていた。

“超高校級の幸運”という才能を――






???『苗木君の言う通りだよ。みんなはこんな所にいるべきじゃない』

???『僕も苗木君を、みんなの持つ希望の力を信じてる』

???『――だから、少しだけ力を貸すね』



ブツッ。パッ!


腐川「な、なに?!」

十神「突然電気が……」

山田「こんな時に停電ですか?!」

江ノ島「停電なんてあるワケないでしょ。発電機あるのに」

戦刃「すぐに予備電源に代わるはずだよ」

セレス「まったく人騒がせですね……」

霧切「! モニターを!」

葉隠「なんだぁ?!」

のび太「え、モニター?」

ドラえもん(なんだ?! またぼくらの知らないことが……)


モニターが砂嵐になったかと思うと、徐々に映像が映っていく。

ノイズが取れた後には、そこに一人の人間が映っていた。


のび太「えっ?! この人ってたしか……」

ドラえもん「そんなまさか?!」


『…………』

『……親愛なる生徒諸君』


苗木「学園長?!」



朝日奈「さっきの人だ!」

霧切「!!」


『私は今日をもって希望ヶ峰学園シェルター計画の発動を宣言する。想定される長い
 シェルター生活の中で万が一私に何かあった時のため、この映像を残しておくことにした』


のび太「学園長さん……」

ドラえもん「…………」


『この計画は我が国にとって、いや世界にとって最後の希望だ。この計画が最終的に
 どのような結論を迎えようが、君達さえ絶望していなければきっと上手くいく』

『この計画が希望なのではない。君達の存在自体が希望なのだ』


朝日奈「…………」

大神「…………」

桑田「…………」


『たとえ世界が滅びようとも、希望さえあれば、世界は何度でもやり直せる』

『どんな困難にあっても決して絶望に身を委ねるな。いつだって、仲間を信じて前を向くんだ』


石丸「…………」

大和田「…………」

不二咲「…………」



『響子……迷惑をかけてすまない。来るべき今日この日のために、私は人生の全てをかけてきた』

『父親としては失格だったかもしれないが、響子……私はいつだって君だけを見ていたんだ』

『お前を心から愛していた。響子――君は私の希望だ』


霧切「…………」


在りし日の学園長・霧切仁の姿が消えると共に、再び照明が灯る。


桑田「なんだったんだ、今の……」

ドラえもん「……わからない。けど、一つだけ言えることがあるよ」

舞園「なんですか?」

ドラえもん「学園長は最後まできみ達を信じていた。何があっても前を向いてほしいと言っていた。
       ……もしかしたら、天国の学園長がきみ達にエールを送ってくれたんじゃないかな?」

十神「そんな非科学的なことがある訳……!」

セレス「そうですわ、そんなことはあり得な……」

のび太「しんじるよ!」

十神「……何?」

のび太「ぼくはしんじる!! きせきだってきぼうだってきっとあるっ!!!」

のび太「ぼくたちは何度も大冒険をしてそのたびにたくさんピンチになったけど、いつだって
     みんなで力をあわせてのりこえてきた! だから今回だってきっとある!!!」

十神「ぐ……」


十神はのび太達が命がけの大冒険を繰り広げてきたことなど全く知らない。
だが、その鬼気迫る声と表情には確かな説得力があった。



苗木「学園長は希望ヶ峰学園をシェルター化することで、僕達を絶望的事件から
    守ろうとしてくれた……僕達は希望ヶ峰学園から未来へ託されたノアの方舟なんだ!」

苗木「そうだ、希望は僕らの中にある。僕達一人一人が希望なんだよ!!」




「やっぱ……俺も出る」

「え?」


大和田「俺も外に出るぞ!」

苗木「大和田君!」

大和田「チームのヤツらが心配だ……仮に壊滅してたにしても、全員が死んだって決まったワケ
     じゃねえんだろ? あいつらの家族もな。総長として、俺は仲間を守らなきゃならねえんだ!」

桑田「言われてみれば……俺も家族と野球部のヤツら、心配だわ」

不二咲「お父さん、お母さん……まだどこかで僕達の助けを待っているかもしれない……」

石丸「そうだ……考えてみれば当然のことだ。外の人達は今も危険な目に遭っているのに
    何故自分達だけ安全な場所に閉じこもろうと言うのか!!」

大神「我も出るぞ。外が荒れているなら、弱き者達を守るため尚更武の力が必要であろう。
    そもそも、真の強さは困難に立ち向かうことでしか掴めん。我はあえて茨の道を進む!」

朝日奈「そうだよね……私、また外を思いきり走りたい! いろんな所に行きたいよ!」

石丸「ウム! 出よう!!」

不二咲「僕も、役に立てるかわからないけど……」

のび太「みんな!」

ドラえもん「いいぞ! その調子だ!」


ダンガンロンパ BGM -HOPE VS DESPAIR-
http://www.youtube.com/watch?v=nizPWN6Jf-0



腐川「あ、あんた達どうかしてるわよ! あたしは流されたりしないからね……!」

山田「あわわわわ……僕はどうすれば……」

葉隠「お、俺は出ないべ。絶対に出ねえぞ!」

セレス「感情論で全ての人間を動かせるほど、世の中は甘くないのです」

十神「…………」

霧切「…………」

舞園「…………苗木君」

舞園「怖いんです、私。不安なんです。外に出ないといけないって頭ではわかってるけど、でも……」

苗木「…………」


苗木は静かに目を閉じる。そして、開いた。

カシャンッ、ドンッ! ====⇒【希望】!!


苗木「僕がいる!! 今度こそ、何があっても君を守る!!!」

舞園「!!」

苗木「人を殺してしまいそうなほど、メンバーの仲間が心配なんじゃなかったの?
    君のファンは今も外で辛い思いをしてる。それなのに君はここにいていいの?!」

舞園「メンバーのみんな……ファンの皆さん……」

苗木「荒廃した辛い世界だからこそ、みんなは君を待ってるよ。
    わかるんだ。だって僕も――舞園さんの大ファンだから!!」BREAK!!


パリーン!


舞園「フフッ……そうですね。心が荒れている時こそ、歌の力が必要ですよね?」


のび太「舞園さん……!」


苗木は一人一人に向き直る。

カシャンッ、ドンッ! ====⇒【希望】!!


苗木「十神君! 確かに、十神財閥はなくなってしまったかもしれない……でも、君の力は
    財閥の力だけじゃないはずだ。外には君の力を待っている人達がいるはずだよ!」

苗木「君じゃないとダメなんだ! だから君の力を貸してほしい!!」BREAK!!


パリーン!


十神「……貴様、この俺を慰めようなどと思っていないか? 愚民が。
    貴様風情がこの俺を励ませるなどと思うなよ。あと……主人公は俺だ!」

ドラえもん「十神くん……」

山田「で、でも! 出来ることがある人はいいですけど……」


カシャンッ、ドンッ! ====⇒【希望】!!


苗木「山田君! 外がこんな風になって、誰が君の好きなアニメを作るんだ?」

苗木「漫画家になりたいんだよね? 君のファンはここにはいない。
    外にいるんだ! 彼等を勇気づけられるのは君だけなんだ!」BREAK!!


パリーン!


山田「夢を失って廃人として生きるか、或いは夢を追って戦い続けるか……ですね。
    いいでしょう、行きますよ! ……ママ達のことも心配だし」


のび太「ぼくも山田さんのマンガまってるよ!」

葉隠「マ、マジか……お前ら正気か? 俺の占いだとムリだって……」


カシャンッ、ドンッ! ====⇒【希望】!!


苗木「葉隠君! 君は前に言ってたじゃないか! 世界中の謎を解き明かしたいって!
    こんな所に閉じ込められて、それって生きてるって言えるの?!」BREAK!!


パリーン!


葉隠「……そうだべ。世界は俺を待ってる。知らない物を見てみたいべ! 俺は自分の直感を信じる!!」

ドラえもん「そうだよ。可能性は無限大なんだ!」

セレス「わたくしは行きませんわ。あまりに危険過ぎます」


カシャンッ、ドンッ! ====⇒【希望】!!


苗木「セレスさん……ギャンブルって危険を冒しながら目的のものを得るために行う行為だろう?
    こんな所に安全に隠れてるなんて、超高校級のギャンブラーであるセレスさんらしくないよ!」BREAK!!

セレス「!」


パリーン!


セレス「まさか苗木君にギャンブルのなんたるかを教えられるとは思いませんでしたわ。いいでしょう。
     そこまで言われて黙っている程、わたくしは落ちぶれていません。全額あなたにベットしますわ!」

のび太「セレスさんも!」



霧切「苗木君……正直わからなくなってしまった。父は私が生きることを望んでいたけれど……」

苗木「しっかりするんだ、霧切さん!」


カシャンッ、ドンッ! ====⇒【希望】!!


苗木「確かにお父さんは君を、僕達を守ろうとしてくれた……でも、今は外の状況も
    変わっているかもしれない。誰かが何とかしなくちゃいけないんだ!!」

苗木「少なくとも、江ノ島の言いなりになって絶望に負けることだけは間違いだよ!」BREAK!!

霧切「そう……そうね」


パリーン!


霧切「私にはまだ全ての記憶はない……父がどんな人で何を考えていたか、何故私を
    置いて行ったのか、私は知りたいと思ってる。そして、その答えはここにはないわね」

霧切「行くわ。あなた達となら、きっと乗り越えられる」

ドラえもん「霧切さん、信じてたよ!」

苗木「腐川さん! 君は……」

腐川「なによぉ! この流れで一人だけ残るなんて言える訳ないでしょう! 行くわよ、行ってやるわよ!
    白夜様のいる所ならあたしは火の中だろうが水の中だろうがついて行くんだから!」

苗木「腐川さん、ありがとう。他のみんなは……」

桑田「行くぜ。野球はこんな狭い所じゃできねーしな」

石丸「超高校級の風紀委員として外の乱れた世界を放置する訳にはいかない!!」

不二咲「一人なら怖いけど、みんなと一緒なら大丈夫!」


朝日奈「心配かけてごめん! これからも一緒に頑張ろう!」

大神「皆こう言っている。苗木、お主のお陰だ」

苗木「みんな……」

のび太「よかったね、苗木さん!」

ドラえもん「苗木くんが頑張ったからみんなこたえてくれたんだよ!」

苗木「そんなことないよ。学園長も言ってたじゃないか。みんなは世界の希望だから……」

霧切「それだけじゃないわ」


ダンガンロンパ OP
http://www.youtube.com/watch?v=6Q0qy3hhvwk


霧切「苗木君……何があっても諦めないあなたは、
    どんな時でも前を向いて進み続けるあなたのその姿こそが……」

霧切「“超高校級の希望”。そう呼べるんじゃないかしら?」



苗木「僕が、超高校級の希望……」

舞園「そうです。苗木くんがいなかったら、きっとみんな諦めていました!」

ドラえもん「ほら、苗木くん! 今だよ!」

のび太「あの言葉を言って!」

苗木「…………」コクリ

苗木「江ノ島盾子……これが僕達全員が出した答えだ!」

江ノ島「有り得ない有り得ない有り得ない!! うざいうざいうざい!!」

江ノ島「世界に絶望しろ! 未来に絶望しろ! 希望に絶望しろ!!」

苗木「いいや。希望は前に――」


裁判場にいる全員の顔を見回し、苗木は頷いた。


全員「――進むんだ!!」


ズガッシャアアアアアアアアアアアンッ!!

裁判場の全てのモニターに、スロットマシーンが映し出される。
その絵の一枚一枚にそれぞれ生徒達の顔が描かれており、

――最終的に江ノ島の顔が一列に並んだ。



江ノ島「……は?」


画面には卒業14、残る0と大きく表示されている。


江ノ島「ハァ? アタシの負け? 嘘でしょ?」

戦刃「じゅ、盾子ちゃん……」

江ノ島「…………」

十神「フン。超高校級の絶望とやらも自分の絶望には弱いらしい」

霧切「さあ、江ノ島さん。約束通り私達を外に出しなさい」

戦刃「盾子ちゃん、どうするの? ねえ……」

江ノ島「……ぷぷ」

江ノ島「うぷぷ。うぷぷぷぷぷ」ニタァ

江ノ島「そうだね。約束通りにしてやるよ。でもその前にさ、やることがあるでしょ?」

のび太「あ! いけない!」

ドラえもん「とめないと!」

江ノ島「無駄無駄無駄! 邪魔しないでよね!」

江ノ島「とうとう味わえる死の絶望……この時を待っていたのよ。アタシを楽しませなさいよね」

苗木「な、何を……?!」


江ノ島はオシオキスイッチにゆっくりと手を伸ばす。

そして――スイッチを押した。


ここまで。学園長の台詞は舞台版ダンガンロンパから流用しました。



  第22話 みらいからのメッセージ


モニターや裁判席のパネルに一昔前のゲームのようなドット絵が映り、
モノクマを模したドットキャラが江ノ島盾子のキャラを引きずっていく。


              GAMEOVER

        エノシマジュンコさんがクロにきまりました。
            おしおきをかいしします。



          ― 超高校級の絶望的オシオキ ―


江ノ島と戦刃に様々なオシオキが実行される。それはロケットに乗って、
大気圏を突き抜けてから灼熱状態で地表に戻ってきたり、全身を軟式野球ボールで
ノックされたりバイクに乗って装置で高速回転をされたり……一つ一つが拷問だ。

戦刃は痛みで泣いたり叫んだりしているが、江ノ島は絶叫アトラクションに
乗っているかのように終始笑っている。そこに生徒達は狂気を感じざるを得なかった。

地獄のような様々なオシオキをくぐり抜け、とうとう最後のオシオキである『補修』が始まる。
それはベルトコンベアの先の巨大なプレス機で人間を丸ごとプレスするというものだ。


のび太「ドラえもん! このままだと……」

ドラえもん「わかってる!」


カメラは江ノ島達を映しているし、生徒達の注目も彼等に向いている。
ドラえもんはタンマウォッチを取り出し、プレスが落ちる直前にボタンを押した。

カチッ!



シィーーーン。


ドラえもん「よし。まずはこれで時間が止まった。今のうちに!」

のび太「どうするの?」

ドラえもん「流石に死なせるのは不味いよ。生きて罪を償わせないと」

のび太「ぼくもそれがいいとおもうけど、江ノ島が負けないとダメなんでしょ?」

ドラえもん「とりあえず歴史通り世界に江ノ島が負けた映像を流す必要がある。
       だからこれを使おう。フリーサイズぬいぐるみカメラ~!」


パシャリ。


のび太「それで二人にそっくりなきぐるみを作るんだね!」

ドラえもん「そう。出てきたぬいぐるみにワタとトマトソースを詰めれば……」

のび太「江ノ島人形と戦刃人形の完成だ!」

ドラえもん「これを二人と入れ替えてっと」ヨイショ


二人は椅子から江ノ島と戦刃を降ろし、人形にすり替える。


ドラえもん「よし。あとは二人をカメラの死角へ運ぶ」

のび太「カメラはだいじょうぶ? 世界中でホウソウされてるんでしょ?」

ドラえもん「前に確認しておいたけど、このオシオキが終わったら
       自動で撮影が終了するらしい。だから何もしなくても問題ないよ」

のび太「じゃあ、あとは時間をもどすだけだね!」



ドラえもん「元の立ち位置に戻って、と。動かすよ!」


カチッ。ドォンッッ!!!

プレス機が二人の人形を押し潰し、そのまま停止した。
真っ赤な液体(トマトソース)が隙間から生々しく流れる。


のび太(トマトのにおいがすごいなぁ……)

ドラえもん(うーん、ちょっと入れすぎたかも……)


幸いショッキングな光景のせいで生徒達はトマトの匂いに全く気が付いていなかった。


苗木「江ノ島……」

十神「フン、つまらない最期だったな」

朝日奈「後味の悪い終わり方になっちゃったね……」

腐川「自業自得よ。あたしは同情なんてしないわ」

桑田「ま、これからのことを考えないといけねーしな」

不二咲「でも、お葬式ぐらいはしてあげない? 一応クラスメイトだったんだし」

山田「ちーたんは優しいですなぁ!」

江ノ島「そうそう。葬式くらいはしてくれてもいいんじゃない?」

大神「……?!」

不二咲「…………」アオザメ

セレス「あ、あの……」汗


葉隠「宗派はなんだ? とりあえずナンマイダナンマイダと」

石丸「死体に触るのは気持ち悪いが、せめて棺にいれてあげるか」

江ノ島「いやー、手間かけて悪いわねー」

桑田「まったくだぜ! ……って、え゛?!」

十神「な、なっ……?!」

舞園「……ちょっと待ってください」

腐川「なによ! さっさと済ませてこんな辛気臭い学園から出るわよ!」

山田「そうですよ! なにか問題でも?」

戦刃「みんなここから出たいみたいだし、早く終わらせちゃおうよ」

朝日奈「うん。そうだね。早くしよう……って、あれ?」

霧切「あなた達、何でここにいるの……?」

戦刃「……?」

江ノ島「キャハッ☆ バレちゃったー!」


「……………………えっ?!」


苗木「二人共、たった今死んだはずじゃ……?!」

戦刃「あ、あれ? 見えてる? 盾子ちゃん、私確かに死んだよね?? 幽霊になったんじゃないの?!」

石丸「幽霊だとぉ?!」

葉隠「ま、まさか幽霊なんているはずねえべ?!!」

大和田「おいおい! 勘弁してくれよ!」


十神「どういうことだ?! 誰か説明しろっ!!」

江ノ島「結論から言うと流石の私様もわかりません。ただ、幽霊でないのは間違いない」

セレス「確かに幽霊にしては血色がよろしいですが……」

舞園「じゃ、じゃあ一体何が起こったんです? あそこで死んだのは誰なんですか?!」

江ノ島「あ、ありのまま今起こった事を話すぜ!」

江ノ島「オレはプレスでペシャンコにされたと思ったらいつのまにかここに座っていた。
     な、何を言っているのかわからねーと思うが、オレも何をされたのかわからなかった!」

山田「頭がどうにかなりそうだった。催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ
    断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……ですね!!」

桑田「なんでおめーが続けてんだよ?!」

大神「つまり、どういうことなのだ……?!」

江ノ島「わかんねーっつの! この台詞の元ネタ通り、時間でも止めない限り
     あの状態で一瞬で移動するなんてあり得ねえんだよ。ファーック!!」

のび太(うわー、あたってる……)

ドラえもん(さすが超分析能力の持ち主だ。実はそうなんだよ)

ドラえもん「どうやったかは言えないけど、ぼく達が助けたんだ」

苗木「えっ、ドラえもん達が?!」

戦刃「どうして……?」

のび太「だって、わるいことをしたのに責任をとらずににげるなんてズルいよ!」

ドラえもん「きみ達はメチャクチャにした世界を元に戻す責任がある!」

江ノ島「あー、よくある生きて償えとかそういうありきたり説教ですか。ツマラナイです……」


大和田「ツマラナイって……ふざけてんのか?!」

桑田「助けてもらっておいてなんだよ、その態度!」

江ノ島「別に助けてもらわなくても構わなかったですしおすし」

朝日奈「言われてみればのび太達の言う通りだよ! 逃げて終わりにするなんてそんなのダメ!!」

舞園「散々好き放題して、最期まで自分の思い通りに終わるなんて許さないです!」

セレス「敗者に選択権なんてありませんわ。いい加減、諦めろこのクソギャルがぁ!!」

江ノ島「はいはい。反省してまーす」

不二咲「江ノ島さん……お願いだよ。僕達はもう争いたくなんてないんだ!」

江ノ島「…………」

苗木「江ノ島、お前は絶望を求めてるんだろ?」

江ノ島「……そうよ。生まれた時からずーっと、ね」

苗木「だったら、僕がお前に絶望を与えてやる。希望を追い求め続けるという絶望を」

江ノ島「!」

苗木「お前はこれから死ぬまでずっと、大嫌いな希望を追い続けなければいけないんだ!
    大嫌いな人助けや良いことをずっとやり続ける。これでどうだ!!」

江ノ島「フ、フフ……ハハハ。アーハッハッハッ! 甘い。甘すぎるぞ苗木!
     まったくどこまで甘ちゃんなのよ。……ま、悪くないかもね。そんな絶望も」

のび太「じゃあ……!!」

ドラえもん「改心して……!」





???「そこまでだ!」


のび太「?!!」

ドラえもん「な、なんでここに?!」

???「…………」

苗木「えっ?! 誰?!」

『?!』


一同が振り返ると、そこには制服をまとった男達がいた。


「なに? なんなの?!」「誰だよ?!」「え? 警察?」


ザワザワザワザワ!!

苗木達は知らないが、ドラえもん達には既に馴染みの制服である。


ドラえもん「タイムパトローラー?!」

のび太「そんな! どうしてここに?!」

霧切「?! あなた達、彼等を知っているの……?!」

苗木「え? タイムパトローラー??!」

山田「なんかSFアニメっぽい組織が出てきたー?!」


混乱する子供達とは反対に、タイムパトローラーの隊員は冷静に対応する。


隊員「とりあえず、そこにいる江ノ島盾子と戦刃むくろを捕らえてから説明しよう」

戦刃「え、え、なに?!」

江ノ島「……ははーん、そういうことですか。なるほどなるほど」


桑田「なに一人で納得してんだよ!」

腐川「一体なんだっていうのよ、もう……!」


既に負けているからか、或いは新たな闖入者に興味を惹かれたのか、
特に抵抗もなく江ノ島と戦刃はタイムパトローラーに捕まる。


大和田「ナニモンだ、テメエら!」

十神「どういうことだ、説明しろ!」

ドラえもん「落ち着いて! タイムパトローラーはぼくらの味方のはずだから」

霧切「タイムパトローラー……名前からして時間に関係する機関のようだけど……」

石丸「服装的には警察に近いようだが……」

ドラえもん「その通り。彼等は時間犯罪者を取り締まる警察みたいなものだよ」

のび太「ぼくたちも何度もお世話になってるよね」

苗木「じ、時間犯罪者……?!」

不二咲「えっと、何かの例え話か何かなのかな?」

朝日奈「何度もお世話になってるの?!」

セレス「そこは深く聞かない方が良いと思いますわ。長そうですし」

十神「お前達、まさかタイムマシンで未来からやってきたなどとうそぶくつもりはないだろうな」

ドラえもん「えーと、半分正解で半分間違いかな」

のび太「ぼくたち、みんなを助けるためにちがう世界からやって来たんだ」

桑田「は、はあ?! なに言っちゃってんのお前?」

葉隠「宇宙人だったんか?! やっぱり地球は既に侵略されてたんだべ!!」


セレス「話がこんがらがるので黙っててくれませんか」

ドラえもん「……タイムパトローラーまで出てきた以上、もう全部話すしかないか」

のび太「話してもいいですか?」

隊長「問題ない。あまりに突飛すぎて、外の人間に話してもどうせ信じてもらえないだろうからね」

ドラえもん「わかりました。どこから話せばいいのかな……」

のび太「ぼくたち、アニメを見てたんだ。『ダンガンロンパ』っていう人気ゲームが原作のアニメ」

大和田「アニメだぁ?」

石丸「なんでここでアニメの話が出てくるのだ……」

ドラえもん「そのアニメの内容はね、学校に閉じ込められた高校生達が
       コロシアイを強要されるってストーリーなんだ」

「!!」

不二咲「そ、それって……!」

霧切「……続けて頂戴」

ドラえもん「アニメでは、高校生達がコロシアイを始めて次々と事件が起こる。
       多くの犠牲が出て、ようやく黒幕を倒した彼等は外の世界に出たんだ」

ドラえもん「黒幕を倒して脱出したから一応ハッピーエンドではあるけど……」

のび太「高校生たちはじつはキオクを消された元クラスメイトだったんだって。
     ほとんど死んじゃったし、ちっともたのしいおわり方じゃなかった……」

のび太「だから、ドラえもんのひみつ道具を使ってみんなを助けることにしたんだよ」


桑田「助けるって言ったって……アニメの話だろ?」

山田「実は僕達アニメの登場人物だったんですかー?!」

朝日奈「う、うそ?! そうなの?!」

ドラえもん「いや、違うよ。この宇宙は無限の可能性に満ちているからね。ぼくの持つ
       もしもボックスは、違う銀河やパラレル世界に渡ることが出来るんだ」

のび太「ダンガンロンパの事件がじっさいにおこっている世界があるかもしれない。
     そうおもったらなんだかじっとしていられなくて……」

不二咲「僕達を、助けに来てくれたの……?」

苗木「わざわざ違う世界から……?」

のび太「そうだよ。みんなをたすけられてよかった!」

舞園「ああ、そうだったんですね。だから全部知ってて……」ポロポロ

石丸「そ、そうだったのか!! 君達は、君達はぁ~!! うわああああああ!!!」ボロボロ

十神「待て! そんな馬鹿な話がある訳ないだろう! 大体そのひみつ道具とはなんだ?!」

のび太「ドラえもんがもってる未来の道具だよ」

ドラえもん「実は、ぼくは22世紀の未来から来た猫型ロボットなんだ!」


「はいぃ?!」「ええー?!」「なんだよそれ……」


余りの超展開に生徒達はついていけない。


セレス「訳がわかりませんわ……」

大和田「おいおい、ムチャクチャ言ってんじゃねえぞ……」


山田「いきなり違う世界から来たとか言い出しただけでもアレなのに、更に未来とか
    ひみつ道具とか設定が複雑過ぎですぞ! 読者にわかるように誰か三行で説明して!」

十神「馬鹿馬鹿しい……子供のたわ言に何を慌てふためいている……」

大神「いや、我も荒唐無稽だと思うが二人の言っていることは本当だろう。ひみつ道具とやらを
    使ったのだろうが、我の夢を操り外の人間と会話することが出来たのだ」

十神「寝ぼけていたに決まっている!」

大神「二人は我が見た夢の内容を知っていたのだぞ? しかも我の友人のことも知っている」

十神「そんなことがある訳……」

腐川「そ、そうよ……非科学的だわ……」

苗木「えっと時系列がよくわからないんだけど、のび太君は未来から来た訳じゃないの?」

のび太「うん。ぼくは20世紀の人間だよ。ドラえもんはぼくの子孫がぼくに送ってきたんだ」

ドラえもん「のび太君が余りにバカでヌケてて子孫が迷惑してるから、少しでも改善するためにね」

桑田「そりゃあ、なんつーか……」

大和田「バカバカしいが笑えねえ理由だな……」

霧切「つまり、元々のび太君の所には未来から来たドラえもんがいた。
    そしてたまたまのび太君達は私達のことを知り、未来の不思議な道具で
    異世界であるこの世界に私達を助けに来た。そういうことかしら?」

のび太「さすが霧切お姉さん。そうだよ!」

朝日奈「そうなんだ! すごい! ありがとうね!」

桑田「いや、気軽に異世界来るとかむしろお前らナニモンなんだよ……」

葉隠「もしかして、今までも宇宙人とか未来人とか海底人とかと戦ってたりしてな!」


のび太「うん、そうだよ。よくみんなと大冒険してる」

「?!」


自分達が違う世界でゲームやアニメになっていたように、ドラえもん達も
違う世界でマンガやアニメになっているのではないか……そう疑う生徒達であった。


ドラえもん「それにしてもなんで唐突にタイムパトローラーがここに……?」

山田「タイムパトローラー……凄いロマンを感じますね」

セレス「タイムパトローラーさんが、何故彼等を捕まえる必要があるのです?
     彼等は犯罪者でしょうが、時を超える犯罪まではしていないはず」

隊長「今はね。しかし、彼等超高校級の絶望姉妹は未来で大事件を起こすんだよ」

のび太「どういうこと?」

隊長「君達は彼等を殺さなかった。それは素晴らしいことだ。
    ……だが優しさだけでは解決出来ないこともある」

隊長「江ノ島盾子は最初は君達に言われた、希望を追い続けるという
    絶望を持って真面目に社会に償いをしていた」

隊長「だが、結局あの飽きやすい性格は治らず再び事件を起こしたのだ。それも時間を超えた大犯罪を」

江ノ島「あー、我ながら想像つくわ」

戦刃「盾子ちゃん、飽きっぽいからね……」

ドラえもん「時間を超えた大犯罪? 一体どんな……」

隊長「江ノ島は君達が未来人だと分析し、この時代に来ていた未来人を捕獲してひみつ道具を奪ったのだ」

隊長「そして、タイムマシンを使って全ての時代に絶望を振り撒こうと考えた。その結果、
    過去も未来も大混乱に陥ったのだ。しかも、頭が良いからなかなか捕まらなくてね……」


大神「何ということだ……」

不二咲「そんなことがあったなんて……」

隊長「我々が考えた方法は過去に遡って江ノ島を捕まえることだった。そうすれば
    タイムパラドックスが発生し未来の江ノ島も消える。しかし、大きな壁があった」

舞園「壁ってなんですか?」

隊長「特殊な装置を使い時間移動を制限したのだ。それにより、江ノ島に手を出すことが出来なくなった」

のび太「それ、ギガゾンビがやろうとしてたことだ!」

苗木「でもあなた方は今ここにいますよね?」

隊長「未来人ではない江ノ島にとって予想出来ないイレギュラーが起こったのだ。わかるかね?」

江ノ島「……ああ、そーいうことね。今のアタシなら想像つくわ」

戦刃「え、なに? わからないよ」

ドラえもん「まさか……」

のび太「なに、ドラえもん?」

ドラえもん「ぼく達がもしもボックスでこの世界に来たことで何か次元に影響が?」

隊長「そうだ。もしもボックスは次元や空間に大きな影響を及ぼす。それにより、
    江ノ島の装置の効果がこの時間軸だけ薄れたのだ。我々はそれを利用した」

十神「待て! ということは、貴様らは本当はずっと前からこの時間軸にいたということか?」

隊長「そういうことになる」

山田「なんですぐに助けてくれなかったんですか?!」


『彼等と同じ理由だよ』


大和田「あ? 不二咲、今なんか言ったか?」

不二咲「僕じゃないよ?」

隊長「おっと、“彼”を紹介するのを忘れていたな」


『こんにちは。久しぶりだね、みんな。いや、ここでは初めましてかな?』


隊長がタブレットを取り出し、彼等に見せると画面には不二咲が映っていた。


不二咲「あれ? 僕??」

石丸「不二咲君がもう一人いるぞ?!」

のび太「あ、もしかして!」

ドラえもん「アルターエゴ?!」

アルターエゴ『ふふ、正解!』

不二咲「えっ?! 何でアルターエゴのことを知ってるのぉ?」

ドラえもん「この学園の二階の図書室にノートパソコンがあってね。
       本来アルターエゴが作られる予定だったんだ」

大和田「で、そのアルターなんたらってヤツはなんなんだ? なんで不二咲の格好してんだ?」

葉隠「まさか幽霊とか言わねえだろうな? オカルトは信じねえぞ!」

不二咲「オカルトじゃないよ。アルターエゴは人工知能なんだ」

霧切「アルターエゴの意味はもう一つの自分。つまり、不二咲君は自分の人格をプログラムにしたのね」

不二咲「まだここまでの段階にはなってなかったはずだけど、学園生活の中でここまで出来てたんだねぇ」


アルターエゴ『そう。僕は正確に言うとご主人タマが平和な学園生活をしている時に作られたんだ。
     監禁生活の中で作られた僕はモノクマに壊されちゃったから』

山田「ご、ご主人タマですと?! もう一回! もう一回プリーズアフターミー!」

腐川「うっさいわよ! で、なんであんたがそこにいる訳……」

隊長「人間には寿命があるが、プログラムには寿命がない。君達が死んだ後も、
    彼だけはこの世に残って我々人類の発展に協力してくれたのだよ」

苗木「そうだったんだ……じゃあ、ドラえもん達が来る前の世界で僕達をずっと助けてくれたんだね」

アルターエゴ『うん。歴史が変わってしまったからその記録はもうないんだけど、
     どうしてもみんなに会いたくて、パトローラーに無理を言ったんだ』

石丸「君は、僕達が死んだ後もずっと戦っていたのだな……ううっ!」

ドラえもん「あれ? じゃあもしかして、さっきの学園長の映像は……」

アルターエゴ『僕だよ。この学園のマザーコンピューターにずっと前から侵入して隠れてたんだ。
     そこであの映像を見つけて、みんなに見せようと取っておいたんだよ』

のび太「そうだったんだね!」

アルターエゴ『みんなの成長のためとはいえ、ただ黙って見てるなんて放置しているみたいで
     凄く心苦しかったんだ。みんなの力になれたようで良かった』

苗木「ありがとう、アルターエゴ! 君がいなかったら僕達は前を向けなかったかもしれない」

霧切「ええ。あなたも立派な私達の仲間よ」

アルターエゴ『ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいな』

不二咲「アルターエゴ……もう一人の僕。僕は君のこともみんなとの思い出も何も覚えてない。
     ……こんな僕でも、みんなの力になれるかな? 役に立てるのかな?」

アルターエゴ『大丈夫だよ! これから先、大変なことも辛いこともたくさんある。
     でも、みんなは協力して乗り越えていくんだ。僕は知ってる。だから――』


アルターエゴ『また未来で会おうね?』


不二咲「アルターエゴ……」

桑田「未来、か……」

大神「我らの未来は我らの手で掴まなければならぬ!」

十神「言われなくとも掴み取ってやるさ」

セレス「やられっぱなしはシャクですからね。倍にして返させて頂きますわ」

朝日奈「すぐ会いに行くから! それまで待っててね、アルターエゴ!」

舞園「ここまで来たら、諦められませんよ!」

葉隠「俺達で新しい世界の扉を開くんだべ!!」

山田「やってやりますよ! オタクの底力を見せてやる!!」

石丸「みんなの力を合わせれば超えられぬ障害なんてない!!!」

苗木「僕達はもう大丈夫。ありがとうアルターエゴ、タイムパトローラー」

隊長「別れは済んだようだね。江ノ島盾子については我々に任せてほしい。あとはこの時代の君達に任せる」

江ノ島「はあ~あ、ムショ暮らしかぁ。アタシは危険だから独房で死ぬまで監禁ってとこかしらね」

戦刃「…………」

隊長「安心したまえ。もっと良いことがあるぞ」

江ノ島「期待しないでおくわ」

苗木「江ノ島……」

江ノ島「なによ、その目は。同情? あんた達こそ、せいぜい頑張れば?」

江ノ島「――未来から見ててやるわよ、ずーっとね」

戦刃「さようなら、みんな。謝って済むことじゃないのはわかってるけど……ごめんね」



「……………………」


隊員「ほら、挨拶が済んだら行くんだ」

ドラえもん「…………」

のび太「さようなら、超高校級の絶望……」

隊長「では諸君、達者でな」

アルターエゴ『みんな、元気でねー!』

「ありがとうございましたー!」


そうして、タイムパトローラーとアルターエゴは江ノ島達を連れて去って行った。


霧切「これで本当に全部、終わったのね……」

ドラえもん「よーし、これで一見落着! みんなで外へ行こう!」


どこからともなくEDテーマが流れ始め、全て終わるかに思えたが……


のび太「ちょっと待って!」

ドラえもん「なんだよ、もう!」

のび太「そういえば、脱出スイッチってどこにあるの?」

ドラえもん「アニメで最後に使ってたやつだね。そんなの、その辺に……」

モノクマ「ここにあるよ」

苗木「あ、ありがとう……って?!」






『モノクマーーーッ?!!』





ここまで。1は体調不良や引っ越しにも負けず頑張ってます

次回、急展開


お久しぶりです。1は生存しています。

久々の更新!



  第23話 モノクマのひみつ 


モノクマ「いやん、そんなに驚かれるとボク照れちゃう~」

のび太「な、なんで?! どうして?!」

ドラえもん「江ノ島盾子はもういないはずなのに?!」

モノクマ「まあ、ちょっと色々あってね。君達のせいで計画狂っちゃったからさ、
      最後に一つゲームでもしようかと思いまして」

大和田「は? ゲームだぁ?」

十神「こんなヤツの世迷言に付き合う必要はない。大神、破壊しろ」

大神「そうだな。この期に及んで往生際が悪いぞ」

大和田「今度こそぶっ壊してやる!」

モノクマ「うぷぷ。聞かないなら聞かないでもいいよ。それはそれで絶望的だしね」

霧切「! 待って! ……江ノ島盾子も戦刃むくろも連れて行かれたはず。
    ――なら、今モノクマを操っているのは誰なの?」

「?!」


全員、一斉にモノクマから離れる。


ドラえもん「そうだ……お前は誰だ?!」

のび太「どういうことなの?!」



モノクマ「おやおや。何でも知ってるかと思えば、知らないこともあるんだねぇ。
      ……ねえ、一つ聞きたいんだけどさ。君達が見たアニメって続編はあるの?」

のび太「続編? ダンガンロンパのアニメは一期しかないけど……」

ドラえもん「ああっ!!」

朝日奈「な、なに?!」

セレス「何か思い当たることでも?」

ドラえもん「ダンガンロンパは元々ゲームが原作のアニメなんだ。……そして、
       ゲームには続編がある。その名もスーパーダンガンロンパ2!!」

十神「まさか……」

苗木「もしかして……」

葉隠「な、なんなんだべ? はっきり言えって!」

ドラえもん「アニメの最後……誰もいなくなった部屋で、モノクマは起き上がっていた。
       ぼくはそれをホラー映画みたいなただの演出だと思っていたけど、実際は違ったんだ……」

ドラえもん「モノクマ! お前は、ダンガンロンパ2のラスボスなんだろう!!」

モノクマ「ピンポンピンポン大正解! キャーハッハッハッ!」

舞園「そ、その声は?!」

桑田「江ノ島ァ?!」

苗木「そんなっ?!」

モノクマ?「やあ、諸君。改めて挨拶しようか。ボクはモノクマ。……そして江ノ島盾子」

腐川「ど、どういうことよ?! 江ノ島はあいつらに連れて行かれたんじゃないの?!」


不二咲「もしかして……!」

石丸「何か心当たりがあるのかね?!」

不二咲「推測だけど……君は江ノ島さんのアルターエゴなんじゃないかな?」

山田「な、なんと?! アルターエゴが二つ?!」

十神「どういうことだ?! アルターエゴはお前にしか作れないのではないのか?!」

不二咲「わからないけど……でも、そうとしか考えられない」

江ノ島エゴ「話が進まないのでとっとと説明しましょう。不二咲君の指摘の通り、
       私は江ノ島盾子の人格をコピーしたアルターエゴです」

のび太「そんな……?! でも、どうやって?!」

江ノ島エゴ「恐らくその続編か番外編小説あたりで描かれているでしょうが、江ノ島盾子には
       超高校級のギャルの他にもう一つ別の才能があったのです」

江ノ島エゴ「その名も――【超高校級の分析能力】」

ドラえもん「な、なんだってー?!」

大神「なんだそれは……?」

江ノ島エゴ「一言で言うと、俺様はどんな才能も分析することで己の才能にし、しかも
       元の才能よりグレードアップさせることが出来ちまうのさ! ヒャッハー!」

のび太「なにそれ?! そんなのズルイよ!」

山田「なんというチート能力?!」

石丸「ということは、江ノ島君は不二咲君の才能を分析して自分のものにした挙げ句、
    グレードアップさせた能力で自分のアルターエゴを作ったという訳か?!」

江ノ島エゴ「ビンゴ。賢いチンパンジーね」


石丸「グヌヌ……やはり才能なんてろくなものではない!!」

腐川「そんなの反則だわ! こんな奴がいたらどんな才能も意味がなくなるじゃない!」

江ノ島エゴ「そうねー。だからボクのオリジナルも世界に絶望したんだと思うよ?
       だってだって、江ノ島盾子にとってこの世は予測通りに動くんだもん☆」

江ノ島エゴ「――これほど絶望的に退屈なことってある?」

霧切「……それこそ、江ノ島盾子が絶望した理由なのね」

苗木「でも、それがどうして世界を絶望させることに繋がるんだ!」

江ノ島エゴ「何でも完璧にこなせて超飽きっぽい私様だが、一つだけ飽きないものがあった」

江ノ島エゴ「……それが絶望。絶望は常に予想外のことを起こしてくれる。絶望のためでなきゃ
       こんなクッソタルい計画とっくに投げてるに決まってるっしょ」

江ノ島エゴ「絶望は自分の絶望でもいいし他人の絶望でもいい。とにかく、前の絶望より大きくて
       派手な絶望を作っていったらいつの間にか世界が滅亡してた。それだけの話」

舞園「そんな! 酷すぎます!!」

十神「くだらんおしゃべりは終わりだ! 目立ちたがりが、俺達の前にノコノコ現れたのが
    運の尽きだったな。こいつを破壊すれば今度こそ終わる。大神!」

大神「ウム! 貴様を生かしておく訳にはいかぬ!」

江ノ島エゴ「ボクは別にそれでも構わないけどね? 一つお節介を言うなら、人の話は
       ちゃんと最後まで聞いといた方がいいんじゃないかなぁ。うぷぷ」

霧切「待って、大神さん! 何か含みがあるわ。何故あなたは私達の前に姿を現したの?」

山田「そうですよね……僕達がいなくなった後、いくらでも逃げられた訳ですし」

セレス「目的があるのでしょう。さっさと言いなさい」

江ノ島エゴ「じゃあ言うけど……そもそもさ、あんた達は外に出てそれからどうするつもり?」


苗木「はっきりとは決めてないよ……でも、外にはまだ絶望に冒されてない人達もいる!
    みんなで助け合いながら、その人達の元へ行って少しずつ世界を……」

江ノ島エゴ「アハハハハハッ!!」

腐川「な、なによ! さっきから思わせ振りな態度ばっかり取って……!」

舞園「何がおかしいんですか……」

江ノ島エゴ「いや、もうすぐ死ぬっていうのに悠長なこと言ってんなーと思って」

桑田「は?」

大和田「死ぬってどういう意味だ、ゴラァ!」

江ノ島エゴ「文字通り、世界中に核の雨が降り注ぐから安全な場所なんてないよ? まあこの学園は
       頑丈だから、地下に篭っていれば助かるかもしれないけどね。設備も揃ってるし」

葉隠「えっ? はぁ??」

朝日奈「なにそれ……」

セレス「ハアア?! 適当なこと吹いてんじゃねえぞ、このビチグソギャルがぁ!!」

江ノ島「いや、本当だって。あんた達の理解力が遅いからもう二十分無駄にしたけどさ。
     最後の投票から三時間だから、残り二時間四十分しかないよ?」

のび太「なにを言ってるのかぜんぜんわからないよ!」

江ノ島エゴ「だからさぁ、ボクには超分析力があるって言ったでしょ? オマエラが勝ってボクが死ぬ、
       ボクが勝ってオマエラは出ない……それ以外の選択肢があるのも想定してたってワケ」

ドラえもん「それ以外……ぼく達が勝って、なおかつ江ノ島盾子も死なない未来……」

江ノ島「イエス! 誰も得をしない一番つまんねー終わり方。もしそんなエンディングになったら
     視聴者も納得しないっしょ! だから、その場合はあるプログラムが作動するようにしたのよ」

霧切「あるプログラム……」


石丸「な、なんなのだそれは?」

江ノ島「全世界に核をバラまくプログラム。俗に言う世界は核の炎に包まれたってヤツだぁ!」

大和田「ふざけんなッ!」

山田「ひぇぇぇ?!」

十神「クソ……江ノ島め。何てしぶとい奴だ。やはりトドメを刺しておくべきだったか?!」

江ノ島エゴ「その通り。私様をしっかり殺しておけばこんなことにはならなかったのだ。
       つまり今の事態はオマエラが招いたことなのだよ?」

苗木「屁理屈を言うな! 結果論だろ!」

朝日奈「どうすればいいの? 何か止める方法は?!」

のび太「ドラえもん! 道具を!」

ドラえもん「う、うん! ソノウソホント~」

山田「それはなんですかな?」

のび太「ソノウソホントって言って、これをつけてついたウソは全部本当になっちゃうんだ」

ドラえもん「これで核を止めてしまえばいい」

山田「なにそのチート?!」

舞園「ど、どんなことでもですか?!」

セレス「それがあればわたくしの夢も……」ゴクリ

十神「そんなバカなことがあってたまるか」

ドラえもん「『核ミサイルは飛ばない』。これでいいはず」


桑田「本当にそれできいたのかよ。なんかウソくせーな」

ドラえもん「じゃあ試してみようか。『のび太くんは天才だ』」


シーン。


葉隠「どこが変わったんだ?」

霧切「テストしてみましょう。123+456+789は?」

のび太「あ、あれ? ぜんぜんわかんないよ!」

ドラえもん「故障かな? 『ボクは空が飛べる』」


シーン。


桑田「なんだ。やっぱりインチキか……」

不二咲「二人が嘘をつくとは思えないよ。故障してるんじゃないかな?」

のび太「もしかしてドラえもん、ちゃんと道具のメンテナンスをしてなかったんじゃないの?!」

ドラえもん「まさか! ボクは毎年未来デパートで必ず点検してもらっているよ。
       他の道具を試してみよう。空気砲~」

朝日奈「なにそれ?」

のび太「手につけてドカンて言うと空気のカタマリをうちだすんだ」

ドラえもん「ドカン!」


ドゴォッ!

近くの壁に向かって空気砲を撃つと、壁に穴が開く。


大神「ム、壁を破壊するとは……!」

葉隠「すげえなぁ、おい!」

ドラえもん「……正常だね。じゃあ次、ビックライト~」


ピカッとビックライトをのび太に当てる。

ググググ……


朝日奈「のび太が大きくなった!」

のび太「ガオー、食べちゃうぞー」

石丸「ぬおおおっ! こ、こんな非科学的なことが起こりうるとは……!」

ドラえもん「やっぱり壊れてるのはソノウソホントだけみたいだね」

のび太「ウソ800は?」

ドラえもん「そうだ。その手があった」

大和田「今度はなんだ……」

ドラえもん「液体版ソノウソホントみたいなものだよ。これを飲んでついたウソは本当になる」

のび太「貸して」ゴクゴク

のび太「『核ミサイルなんて飛ばない。世界は平和になった』!」

ドラえもん「さて、今度は効いたかな?」

江ノ島エゴ「残念、プログラムは止まっていないようです。そしてアタシには
       その原因がわかっちゃいました。うぷぷ!」

のび太「そんな、なんで?! どうして?!」


まだ話の続きですが眠いので、続きは明日……



ドラえもん「ワケがわからないよ! こんなことって?!」


パニックに陥るドラえもん達。生徒達はただ見ているしかない。

……その時、二人に近づいてくる影があった。


「僕が説明しましょう」


のび太「だれ?!」

苗木「誰だ?!」


全員が振り返った先にいたのは、長い黒髪のスーツの男だった。
髪の間から見える赤い目が薄気味悪い。


大和田「な、なんだテメエ?!」

「初めまして。僕はカムクライズルといいます」

葉隠「どっから湧いて出たんだべ?!」

カムクラ「僕は最初からここにいましたよ? あなた達が気付いていなかっただけです」

ドラえもん「なんだって?」

十神「待て! カムクライズル……だと?」

のび太「知ってるの?」

腐川「カムクライズルって言ったら確か……!」

霧切「この希望ヶ峰学園の創立者の名前よ」


ドラえもん「ええっ?!」

カムクラ「言っておきますが別人です。僕はこの名を与えられただけなので。
      この体の元の名前は日向創といいます。……どうでもいいことですが」

不二咲「与えられたって、誰に……?」

カムクラ「この学園の研究者達です。僕は人工的に作られた存在なのですよ」

のび太「ま、まって! ワケがわからない! だれなの?! どうしてとつぜん出てきたの?!」

ドラえもん「……ま、まさかお前は!」

カムクラ「正解です。恐らく僕はダンガンロンパ2に登場するのでしょう。
      江ノ島盾子のアルターエゴを持ち出した真の黒幕として」

苗木「じゃあ……!」

カムクラ「かつては超高校級の希望と呼ばれていましたが、今は江ノ島盾子の同志ですね」

江ノ島エゴ「キャハハハ! まさかあんたまで出てきちゃうとはね。シナリオ大幅変更じゃない?
       名前を付けるなら、ダンガンロンパAnother Episode……なんてどうよ!」

大神「敵か!」ザッ

カムクラ「戦ってもいいですが、今は時間が惜しいのでは?」

苗木「そ、そうだよ! 今は争ってる場合じゃない! 核ミサイルを止めないと!」

のび太「でもソノウソホントもウソ800も使えないなんてどうすればいいの?!」

カムクラ「何故ドラえもんの道具で効果のない物があったかわかりますか?」

ドラえもん「……きみは知っているのかい?」


カムクラ「嘘を全て現実にする……言ってみればそれらの道具は次元や因果率に干渉することで
      それを可能としています。では、次元そのものに大きな歪みが出ていたら?」

ドラえもん「(ハッ)そうか! この世界は元々江ノ島盾子の作った装置でタイムパトローラーが
       干渉出来なくなっていた。そこにもしもボックスで一時的に風穴が空いた状態……」

のび太「ぼくにもわかるように言ってよ!」

ドラえもん「つまり、次元そのものが非常に不安定な状態なんだよ。こんな状態で世界規模の干渉を
       してしまったら不測の事態が起こるかもしれない。だから道具の安全装置が働いたんだ!」

石丸「液体にどうやって安全装置を……」

十神「もはや魔法だな……」

山田「まあ、行き過ぎた科学は魔法と同じようなものと言いますしお寿司」

桑田「科学の力ってすげーわ……」

朝日奈「ちょっと、今はそんなこと話してる場合じゃないでしょ!」

のび太「じゃあどうすればいいのさ!」

江ノ島エゴ「方法はあるよ」

カムクラ「おや、教えてあげるんですか?」

江ノ島エゴ「うぷぷ。アタシが黙ってたって言うつもりだったくせに。そのために出てきたんでしょ?」

苗木「どういうことだ? この人は敵なんじゃないのか?」

カムクラ「彼女の話を聞けばわかりますよ」

江ノ島「ミサイルを統制しているのはこの学園のメインコンピューターです。
     そしてオマエラの中にはプログラムが専門のヤツがいる」

不二咲「そうか。僕がプログラムを書き換えて止めればいいんだね!」


葉隠「は、早くやるべ!」

セレス「急ぎますわよ!!」

江ノ島エゴ「た・だ・し、プログラムは私様謹製の物なので当然そう簡単には
       解除出来ません。……また、これから物理的な妨害も入ります」

舞園「なんですか? 物理的な妨害って……」

江ノ島エゴ「これを見ろぉ!」


モニターの画面がパッと変わり、映し出されたのは大量のモノクマ。


桑田「なんだこりゃあ?!」

江ノ島エゴ「プログラムを解除されないため、関東の全てのモノクマがこの学園のメインコンピューターを
       破壊しに集結しています。メインコンピューターを破壊されたら最後、もう外部からの
       干渉は一切受け付けず、全世界に核の雨が降るでしょう!」

「な、なんだって?!」

江ノ島エゴ「つまりオメェラはメインコンピューターを守りつつプログラムの
       書き換えも同時にやらなきゃいけない。それもあとニ時間ちょっとでね!」

江ノ島エゴ「あ、ちなみにモノクマの数はざっと千体くらいかな? 最終的には一万体くらいに
       なると思うよ☆ ちなみに、玄関は開けてあるからもう中はモノクマだらけかも」

「そんな……」

江ノ島エゴ「ああ、いいわぁ。少しだけ希望を見せてやった後にそれを
       奪って見せる絶望の顔。あんた達ってすぐに絶望するんだから――」

カムクラ「相変わらず性格が悪いですね」

「…………」


生徒達はモニターを見ながら呆然とするしかなかった。


ここまで。

江ノ島連行されたはずなのに時々江ノ島本人が会話に混ざるのは何でなんだぜ?なんかの伏線?

>>589
江ノ島エゴの間違いですね。ご指摘ありがとうございます!

モナカ「この事態を止められても…」

天願「まだまだワシらが…」

白銀「残ってるんだよね♪」

日向「ふざけるな! 俺のハーレム計画が・・・」

苗木「そうだ!そうだ!」

最原「そうだぞ!」

宗方「お前らはまだいいだろう!」



  第24話 ミサイルをとめろ!!(前編)


無理だ、と誰もが思った時――声を上げるものがいた。


のび太「メインコンピューターの場所はどこ?」

カムクラ「四階の情報処理室です」

ドラえもん「急がないと時間がないぞ!」

のび太「はやく行こう!」

苗木「のび太君、ドラえもん……」

のび太「なにしてるの? はやくはやく!」

ドラえもん「待って! もう校舎の中にモノクマがいるならみんな武器を持たないと」


ポケットの中からドラえもんはありったけの空気砲とショックガンを取り出す。


ドラえもん「どこでもドアで直接四階に行けるよ! さあ、みんな!」

「…………」


生徒達は一瞬だけ沈黙になったが、その後の決断は早かった。互いに頷き合う。


霧切「そうね……何もしないで見ている訳にはいかないわ」

大和田「まったく、ガキどもに教わりっぱなしだな!」

不二咲「僕、頑張ってみるよ!」


苗木「そうだね。行こう!」

石丸「何もしないで見ているわけには行かない!!」

セレス「全く……このような物騒な物は持ちたくないのですが」チャキ

山田「手つきが慣れておりますぞ……」

十神「おい、その前にまだやることがある」


十神はショックガンをカムクラに向けた。


苗木「十神君!」

舞園「何してるんですか?!」

十神「こいつらを放置していたら火事の元だ」

霧切「そうね……」

カムクラ「僕は何もする気はないです。大人しく投降しましょう」スッ

大和田「随分素直だな。なにか企んでるんじゃねえか?」

カムクラ「いいえ。この世の全てに絶望した僕ですが、少し興が乗ったのです」

カムクラ「江ノ島盾子の残したこの人類史上最大最悪、いや世界最凶の絶望に
      あなた方のちっぽけな希望がどう立ち向かって行くのかを」

十神「チッ、高見の見物という訳か。こいつには色々聞きたいこともある。縛って連れて行くぞ」

桑田「モノクマはどうすんだ?」

霧切「まだ情報を持ってそうね」


朝日奈「よし、それじゃあ捕まえよう!」

江ノ島エゴ「うぷぷ。ボクの処遇については悩まなくていいよ。
       オリジナルがそうであったようにボクにも破滅願望があってね……」

江ノ島エゴ「君達の絶望した顔も見れたし、結末を見ずに終わるなんて絶望的じゃない?」バチバチバチ

大和田「てめっ、勝ち逃げする気か!」

霧切「近寄っては駄目!」

モノクマ「それではみんながあの世に来るのを楽しみにしているよ。グッドラック!
      うぷぷ、うぷぷぷぷ、アッハッハッハッハッハッハッ!!」


高笑いをしながら、モノクマこと江ノ島アルターエゴは爆発した。
しかし感傷に浸っている余裕はない。


のび太「ドラえもん!」

ドラえもん「わかってる! みんな準備はいいかい? じゃあ、情報処理室に……」

十神「待て! 背後を取られたら敵わん。まずは三階との階段を封鎖し、モノクマどもが
    四階に登ってこられないようにしてから情報処理室へ向かった方が得策だ」

セレス「それが理にかなっていますわね」

ドラえもん「了解。じゃあ四階の廊下にするよ。どこでもドア~!」


ドラえもんが四階にどこでもドアを繋げる。

ガチャッ。


苗木「うわ! もうモノクマがいるぞ!」

腐川「なによこれ……壁に大穴が空いてるじゃない!」


桑田「本格的に攻撃されてるってことか?!」

大神「我に任せよ!」


いの一番にドアから飛び出した大神が、モノクマの群れを蹴散らして行く。


十神「大和田、石丸! お前達が不二咲を連れて情報処理室に向かえ!
    残りは全員で下り階段に向かい足止めをする!」

石丸「任された!」

大和田「どけやゴラアアアア!」

朝日奈「待って! 道がわかんないよ!」

カムクラ「情報処理室はこの壁の向かい側にある機関銃の付いたドア、下り階段はあちらです」

苗木「え、どうして……?」

カムクラ「どうせ時間は足りませんし、このくらい教えても罰は当たりませんよ」

苗木「と、とにかくありがとう!」

霧切「幸いモノクマはやって来たばかりでまだ数は多くないわ。急いで!」

大神「オオオオオオッ!」

桑田「えっと、ドカン!」


ゴッ!


桑田「うおっ、すげえ!」

十神「道を空けろ、雑魚共が!」バン!バン!



のび太「いっけー!」ガンガン!


のび太は慣れた手付きでモノクマを次から次へとヘッドショットしていく。


舞園「の、のび太君すごいです!」

ドラえもん「慣れてるし、のび太くんは昔から射撃だけは得意なんだ」

腐川「だけはって……」


階段に辿り着いた一行。
しかし、恐ろしい数のモノクマが雪崩のようにやって来る。


苗木「これじゃキリがないよ!」

霧切「早く階段を封鎖するのよ!」

十神「おい、ドラえもん!」

ドラえもん「ええとあれでもない、これでもない!」


ドラえもんはポケットからガラクタを次から次へと取り出す。


十神「この役立たずめ! やむを得ん! 階段を破壊する!」

葉隠「しょ、正気か?!」

朝日奈「待って! さくらちゃんがまだ下の階に!」

大神「我に構うな! 我は大丈夫だ!」

十神「他に方法はない! やれ、桑田!」


桑田「え?! でも!」

朝日奈「大丈夫じゃないよ! やめて!」

大神「朝日奈、我を信じろ! 桑田、撃て!」

朝日奈「でも……!」

十神「桑田!」

桑田「やっちまうぞ……やっちまうからな?! ドカンドカンドカーン!!」


桑田はモノクマの足元目掛け最大出力の空気砲を放つ。
狙い通り、階段は崩落を始めた。


朝日奈「さくらちゃあああん!」

大神「ぬおおおおおっ!」


なんと、大神は階段が崩落する直前にモノクマの頭を踏み台にして跳躍する。


大神「戻ったぞ、朝日奈」スタッ

朝日奈「さくらちゃん……良かった……」

葉隠「流石オーガだべ」

山田「ん? な、なんですかあれ?!」

苗木「そんな?!」



「クマー!」シュタッ

「クマー!」シュタッ

「クマー!」シュタッ


なんと、モノクマ軍団は自身の身体で橋を作り迫ってきた!


十神「しぶといヤツらめ!!」

苗木「どうしよう?!」

桑田「さっきより増えてきてるぜ! どーすんだ?!」

霧切「さっきの大きさが変わるライトを出してちょうだい!」

十神「成程! そういうことか!」

のび太「ビックライト? でも、ここだと天井があるからあんまり大きくなれないよ?」

十神「考えがある。早くよこせ!」

ドラえもん「二人を信じるよ!」


ドラえもんがライトを渡すと、十神はニヤリと笑う。


十神「やはりな。大きくすることが出来るのなら当然逆もある訳だ?」

十神「食らえ、スモールライト!」


十神がライトを操作してモノクマの大群に当てると、次々とミニチュアサイズになっていく。


桑田「ハッハッハッ! ざまーみろ!」

腐川「流石白夜様だわ! なんて機転が利くのかしら!」

十神「この程度当たり前だ。俺を誰だと思っている?」

朝日奈「先に思いついたの霧切ちゃんだけどね」

セレス「これなら大したことありませんわね。オホホホッ」グシャッ

山田「踏み潰してるー!」

のび太「あはは、ちっちゃくなっちゃった!」

チビモノクマ's「がおー!」ゲシッゲシッ


小さくなったモノクマは一生懸命のび太達を攻撃するが、当然効果はない。


葉隠「これ、大量に捕獲して売りさばけねえか?! ビジネスの予感だべ!」ヒョイッ

山田「売れますかねぇ……仮にも敵の親玉ですが……」ヒョイッ

朝日奈「小さければかわいいんだけどなぁ」ヒョイッ

ドラえもん「のんきなこと言ってる場合じゃないよ! アリだって数が多いと脅威になるんだぞ!」

霧切「その通りよ。ジャングルでの一番の脅威は蟻の大群……とにかく階段を塞がないと危険だわ」

ドラえもん「えーと、壁を作るにはなんの道具がいいか……」


ドラえもんがポケットをいじりながら頭を悩ませていると付近のモノクマ達が点滅を始めた。


苗木「な、なんだ? モノクマ達が光ってるぞ?!」



霧切「まさか……」


ドカン!

生徒達が手に持っていたチビモノクマが爆発する。


「きゃっ?!」「うわっ?!」「なんだっ?!」

のび太「ぐえっ」ドカッ

十神「ぐはっ!」ドカッ

大神「いかん! 自爆だ!」

十神「! ライトが!!」カランカラーン!


爆発の衝撃で生徒の何人かが十神にぶつかり、その拍子にライトが下の階に落ちていった。

パリーン!


のび太「ああっ、そんな! ライトがこわれちゃった!」

ドラえもん「みんな! 下がって!」


チビモノクマの自爆は少し威力の高いバクチク程度ではあるが、
至近距離なら当然火傷を負ってしまう程度の熱はある。


ドラえもん「これだ! 詰め合わせおばけ~! 出てこい、ぬりかべ!!」

ぬりかべ「ぬりかべー」



全員後退したのを見計らい、ドラえもんがぬりかべを呼び出して壁代わりにした。


ドラえもん「とりあえずしばらくはこれでなんとかなるね」


ドンドンと激しくぬりかべを叩く音が響く。


十神「……いや、この調子では長くもたない。時間が経てば破られるだろう。
    ライトを失った以上、やはり玄関を塞がなければ駄目だ」

霧切「同感ね。入口を塞がなければ無尽蔵に湧いて来ると考えていいわ」

十神「まったく、貴様らがふざけているから……!」

朝日奈「ご、ごめん……」

山田「面目ありません……」

葉隠「まさか自爆するなんて思わなかったんだって……」

のび太「でも、直接ぶつかったのはぼくだからおこらないであげて……」

桑田「俺も驚いて押しちまったしな……」

舞園「私もぶつかったかもしれません……」

苗木「喧嘩しても仕方ないよ! 今はモノクマ達をなんとかしないと!」

大神「そうだ。次はどうすればいい?」


十神「とりあえず情報処理室のメンバーと合流し、作戦を練るぞ!」

「了解!」


全員踵を返して情報処理室に向かう。

キラッ。


苗木(ん?)


その時、苗木はある物に気が付いた。ドラえもんが出したガラクタに混じっていた物だ。


苗木(なんだろう、これ……ドラえもんのだよな。後で返そう)

のび太「お兄さん、はやく!」

苗木「ごめん! 今行く!」


苗木は“ソレ”をズボンの後ろポケットに収めると、急いで後を追った。


ここまで。

取り寄せバッグで取り戻して復元光線で直せばいい

>>607
霧切さんや十神君がひみつ道具を全部把握してたらそれやってたかもしれませんね



  第25話 ミサイルをとめろ!!(後編)


カタカタカタカタカタ……

情報処理室の中では既に不二咲が作業に取り掛かっていた。


石丸「みんな! 大丈夫だったかね?!」

大和田「モノクマどもはどうした?」

霧切「足止めには成功したわ。ただ、どれだけ保つかはわからない……」

十神「どのくらい掛かりそうだ?」

不二咲「まだなんとも……モノクマが言っていた通り、とても固いんだ……」カタカタカタ

葉隠「そ、そんなぁ! 冗談じゃないべ! 不二咲っちだけが頼りなんだぞ!」

のび太「そうだ! ドラえもん、不二咲さんにクイックを!」

ドラえもん「! うん、クイック~」パパラパッパパー

霧切「それは?」

ドラえもん「飲むと倍の速さで動けるようになるんだ!」

石丸「みんなで飲もう!」

大和田「不二咲は多めに飲め!」

不二咲「う、うん!」



ガガガガガガガガガガガガガ!!


不二咲「イケる! イケるよぉ! こ、これならギリギリ間に合うかも!」

十神「よし、それではこれより作戦会議を行う」

大和田「いつの間にかお前が仕切ってんな」

石丸「いや十神君の指揮は的確だ。このまま彼に頼もう」

十神「当たり前だ。この程度の危機も乗り越えられなくて十神家後継者の座が務まるか」

桑田「それでどーすんだよ?」

十神「先程も言ったが、モノクマは無尽蔵に湧いて来る。まず玄関を塞がなければ話にならん」

山田「でも、玄関が塞がれたらそこの壁みたいに穴を空けて入ってくるのでは?」

不二咲「それは大丈夫だと思うよ。この学園の構造を見たけど、外部からの攻撃に耐えるように
     作られていて下に行けば行くほど頑丈になってるんだ。一時間くらいならもつはずだよ」

セレス「ならば、なおのこと玄関を塞ぐことが重要になってくる訳ですね」

十神「防衛ラインを策定する! この情報処理室のメインコンピューターが本丸で最終防衛目標だ」

十神「第一防衛ラインは情報処理室の入り口。第二防衛ラインは四階階段、第三防衛ラインは
    玄関とする。俺達は何があってもこの最終防衛ラインを守りきらなければならん!」

石丸「合戦のセオリーで行くと、まずは玄関を塞ぎ補給を断ち、学園内に取り残された
    モノクマを上と下から挟み撃ちにして殲滅。学園の奪還が第一目標となるか」

十神「お前にしてはまともな案だな。それで行く」

石丸「任せろ! 歴史で勉強したからな!」

朝日奈「で、玄関はどうやって塞げばいいの?」


苗木「さっきもらった脱出スイッチ……これ、玄関の開閉スイッチだと思うんだ」

十神「ドラえもんのどこでもドアを直接玄関前に繋ぎ、先発隊が玄関を塞ぐ。
    その後、時間をかけて校舎の中を制圧していく」

大和田「待てよ……もう学園の中には結構な数のモノクマが入り込んでんじゃねえか?」

山田「それに玄関が閉まるまではとめどなくモノクマが攻めてくるワケですよね?」

霧切「……恐らく先発隊は特攻に近い形になるわね」

大神「我に行かせてくれ。今だから言うが、我はかつてモノクマと内通していたのだ」

朝日奈「さくらちゃん?!」

腐川「なんですって?!」

葉隠「ど、どういうことなんだべ?!」

ドラえもん「大神さん……」

のび太「どうして言っちゃったの? だまっていても良かったのに」

大神「いや、言わせてくれ」


罪を告白した大神はドラえもん達を目で制し、続ける。


大神「我は道場の者達を人質に取られ、もしこの学園でコロシアイが起こらなければ、
    モノクマの指示で誰かを殺すように言われていたのだ」

桑田「マジかよ……俺達のこと裏切ってたってワケか?」

大和田「信じられねえぜ……」

朝日奈「で、でも人質のせいだよね? さくらちゃんの自分の意志じゃないし……」


大神「いや、道場を人質に取られていたとはいえお主達を裏切っていたことには変わりない。
    ドラえもんとのび太が止めてくれなければ、我はこの手で仲間を殺していたかもしれぬ」

大神「今こそ仲間を裏切ろうとした罪滅ぼしの時だ。行かせてくれ」

十神「そうだな。本人の言う通り責任を取ってもらおう。……と言いたいところだがそれは出来ん」

大神「何故だ! お主達だけで突破出来るほど、あやつらは甘い存在ではないぞ!」

十神「忘れてもらっては困るが校舎奪還は手段であって目的ではない。万が一先発隊が全滅した時、
    誰が不二咲を守る? お前は防衛の要だ。この四階から動かす訳にはいかない」

霧切「そうね。大神さんには四階を守ってもらいましょう」

セレス「今は個人の感情で動く時ではありませんわ。罪滅ぼしは終わってからしてくださいな」

大神「そういうことか……それならば、仕方ない。承知した。死んでも我が不二咲を守る」

十神「防衛の要は大神と、あとは秘密道具を持つドラえもんだ。この二人は絶対に四階から動くな」

十神「霧切、お前が四階の指揮を取ってくれ。不二咲を含めたこの四人が四階組だ。
    残りは有志で先発隊に回って欲しい。志願者はいるか?」

大和田「……俺が行く。大神がいねえなら俺が行くしかねえだろ」

石丸「僕も行くぞ!」

のび太「ぼくも!」

苗木「のび太くん?!」

舞園「ダメです! 危険ですよ!」

石丸「そうだ! 子供がこんなことをしてはいけない!」

のび太「大丈夫だよ。ぼくの銃のうで見たでしょ? 今は一人でも多く行かなきゃダメなんだ!」

セレス「確かに、慣れているというだけあってわたくし達よりは戦力になりそうですが……」


桑田「マジか……ああ、クソッ! わかったよ。俺も行く!
    のび太が行くのに俺が行かねーワケにいかねえだろ!!」

苗木「僕も行くよ。どのくらい役に立てるかわからないけど……」

十神「俺も入れたら六人か。もう何人か欲しい所だな。おい、葉隠」

葉隠「ヒィィッ! なんでそこで俺なんだ?!」

十神「山田は体が大きいから敵のいい的だ。女子に行かせる訳にもいかんし、お前が来い」

葉隠「い、嫌だべ! 死んでも行きたくねえ!」

大和田「お前なぁ、世界の命運がかかってるんだぞ?! 嫌とか言ってる場合か!」

葉隠「世界が助かったって自分が死んじまったら意味ねえじゃねえか!
    俺は英雄になって死ぬよりクズでも長生きする方がいい!」

ドラえもん「なに言ってるんだ!」

朝日奈「あんた……! この土壇場でなにみっともないこと言ってんのよ!」

葉隠「うるせえ! 自分は安全圏にいるくせによ! 大体なんで男だからって行かなきゃならねえんだ!」

石丸「では女子に行かせる気か?!」

大和田「それでも男か! 男のくせに情けねえ!」

葉隠「命がかかってんのに男とか女とか関係あるかって!」

石丸「か弱い女子を男子が守るのは当然のことだろう!」

葉隠「オーガのどこがか弱いんだべ! 不二咲っちみたいに弱い男だっているしな!」

桑田「大神は例外にしても、他の女子よりはおめーの方が力あるだろーがよ!」


「力は関係ないよ」


葉隠「あ?」


視線の先にいたのは不二咲だった。一心不乱に指を動かしモニターから目を離さない。


不二咲「僕は、多分この中で一番弱い。小学生ののび太くんに勝てるか勝てないかくらい」

不二咲「でも、女子だけでなくみんなを……みんなを守りたいって気持ちはいつもあるんだ!
     今回はここから動けないから仕方ないけど、本当は僕も一緒に行きたい」

葉隠「…………」

不二咲「僕は力は弱いけど、でも、自分に出来るやり方でみんなを守ろうと思う。
     だって、僕は男だから! みんなを守るんだ!!」

大和田「よく言った、不二咲! お前は漢だ!」

石丸「ウム、なんと男らしい発言だ。それに引き換え……」

葉隠「うるせえ……結局、不二咲っちだって前線に行くワケじゃねえし……」

朝日奈「私が行く」

のび太「お姉さん?!」

大神「朝日奈?!」

朝日奈「葉隠の言う通り、女だからって守られてばっかりってワケにはいかないしね。こいつみたいな
     情けない男よりは、運動神経のいい私が行った方がまだ足手まといにならないと思うし」

舞園「私も行きます」

苗木「舞園さんまで?!」

舞園「反射神経には自信がありますし、今は少しでも数が多い方がいいですよね?」

十神「やむを得ん。二人にも来てもらう」


腐川「あ、あたしも……!」

霧切「腐川さん?」

腐川「あたしが行っても足手まといだろうけど、ジェノサイダーならきっと白夜様の役に
    立てるはず……あいつに頼るのは嫌だけど、今はそんな場合じゃないし」

のび太「腐川お姉さん……」

腐川「次に入れ替わった時、全部解決させてないと容赦しないわよ! だから……クシュン!」


髪の先で鼻をくすぐり、腐川はくしゃみをしてジェノサイダーを呼び出した。


ジェノ「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン! 意外と気が利く殺人鬼でーす。
     ん? ここどこだ? 今はなにやってんの?」

十神「時間がないから手短に話す。もうすぐ世界に核ミサイルが降ってくる。それを防ぐために不二咲が
    プログラムを解除中だが、このメインコンピューターを狙ってモノクマ達が攻撃してきている」

ジェノ「ハハーン。つまりそのモノクマ共を蹴散らせってことね」

石丸「まずはモノクマ側の補給を絶つために正面玄関を閉じなければならないのだ!」

ジェノ「了解! あたしに任せてちょーだいなっ!」

十神「戦力的にはまだ不安が残るが時間を無駄にする訳にはいかない。このメンバーで行くぞ!」

セレス「後のことは任せてくださいまし。この大本営だけは何がなんでも死守してみせますわ」

十神「ドラえもん、どこでもドアを」

ドラえもん「わかった。気をつけて」


ドラえもんがどこでもドアを玄関ホールに繋げる。


十神「……行くぞ」


ガチャッ。

ドアを開いた。だが――



「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」

「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」

「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」

「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」

「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」

「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」

「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」

「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」

「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」

「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」「クマー!」



十神「ぬおおおあっ?!」

苗木「うわあああああああっ!」


バターン!

視界の端から端までビッシリ埋まっているモノクマに驚き思わずドアを閉める。


のび太「ム、ムリだよ! ここに飛び込むなんて!」

桑田「ていうかなんだありゃ?! 普通のモノクマじゃなかったぞ! 
    武装してたりデカかったり、あとバケモノみたいなヤツがいた!」

十神「クッ! 時間がないというのに!」

霧切「モノクマはメインコンピューターを狙って校舎側に来ているはず!
    寄宿舎に繋げてそこから奇襲すれば……」

ジェノ「あー、ムリだね。なんせあの数よ? このメンバーじゃちょっと厳しいわ……」

大神「やはり我が……!」

葉隠「ムリなんじゃねえか! 偉そうなこと言ったってやっぱりムリじゃねえか!
    大体一万体だぞ?! 2時間どころか一週間あっても倒すなんてムリだべ!」

朝日奈「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ?!」

不二咲「僕がプログラムで玄関を閉めれば……」

十神「そんな余裕はない! お前はミサイルを止めることだけ考えろ!」

山田「役に立つかわかりませんが……僕も先発隊に回って戦力を増やしますか……?」

セレス「しかし、校舎内にはまだたくさんモノクマが残っていますわ!
     いつバリケードが破壊されるか……」

ジェノ「あれ? これ詰みじゃね?」

葉隠「みんな死ぬんだ……もう助からねえんだ……!」

苗木「諦めちゃダメだ! まだきっと何かあるはずだよ!」



のび太「そうだよ! なにもしないでやられるだけなんてイヤだ!」

葉隠「じゃあどうすんだ?! 苗木っちって結局いつも口だけじゃねえか!!」

苗木「そうかもしれないけどッ! でも! 僕は君みたいに諦めたくないッ!!
    だからみんなで考えるんだ! 一人なら無理でもみんなで考えたらきっといい案が!!」

葉隠「ないから困ってるんだべ!!」

石丸「喧嘩してる場合ではないぞ!!」

大和田「葉隠黙れッ!」

のび太「ドラえもんッ!」

ドラえもん「あーでもないこーでもない!」


ドラえもんがポケットの中からあれこれ道具を出すが、例によってガラクタばかり……
混乱はますます広がって収拾がつかなくなる。


葉隠「嫌だああああ死にたくないいいいいいい!」

山田「もう、終わりなんですか?! ここまで来てそんなのイヤだあああ!!」

朝日奈「どうしよう?! どうすればいいの?!」

石丸「誰か、指示をくれ!」

十神「ええい、突っ込むぞ! それしかない!」

桑田「マジで言ってんのか?!」

大神「死んでしまうぞ!!」

苗木「行こう! 僕は行く!!」


舞園「苗木君……!」

霧切「本当にあなたはそれでもいいのね?」

苗木「たとえ死ぬことになったとしても、諦めたくない! 立ち止まりたくない!!」


キラッ……


苗木「最期の瞬間まで僕は、僕達は前に進むんだッ!!!」

石丸「苗木君の言う通りだ!」

大和田「たとえ死んでも守ってやる!」

朝日奈「わ、私も逃げない!」

桑田「あー、クソッ! もうヤケだ! 諦めてたまるかよ!」

ジェノ「これが萌えじゃなくて燃えなのね?! いいわ! やってやるわよん!」

のび太「みんな、行こうよ!」

舞園「はい!」

十神「もう策はないんだ! 特攻するぞ!」


その時――


ドラえもん「な、なんだ?!」

のび太「えっ?」


彼らの勇気と希望に反応したのか、“それ“は光を放ったのだ――。



ここまで。



  第26話 よみがえる友情パワー!!!


ピカアアアアアアアアアアアアアッ!


「?!」

舞園「苗木君?!」

山田「な、苗木誠殿から後光が差してるー?!」

ジェノ「やっべーわ。まこちんの溢れる主人公力で光が見えるわ……」

十神「そんな非科学的なことがあるか! 説明しろ、苗木!」

苗木「僕に言われても……?!」

朝日奈「なんなの?! どういうこと?!」

セレス「もしや背中に何かついているのでは……?!」

ドラえもん「あっ! もしかして、さっきのチビモノクマじゃないか?!」

のび太「たいへん! ばくはつしちゃう!」

苗木「え?! えぇっ?! と、取って今すぐ!」


苗木は背中を向けるが、そこには何も付いていない。


石丸「苗木君のお尻が光っているぞ!」

苗木「お、お尻?! どういうこと?!」

霧切「違うわ! 今すぐポケットの物を出しなさい!」



ゴソゴソ!


苗木「これは、さっき拾った……」


苗木がズボンのポケットから取り出したものに、ドラえもんとのび太は見覚えがあった。

そう、それは過去に何度も彼等の危機を救ってくれたお馴染みの道具。


その名は――


ドラえもん「まさか!」

のび太「もしかして!」

ドラえもん・のび太「親友テレカだ!!」



ピッカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッ!!



親友テレカから一筋の強烈な光が放たれる!

部屋が狭いため開けっ放しになっていた情報処理室の入口を抜けると、
そのまま光は廊下に空いた穴から空へ飛び出す。

――そして、光は六つに別れて空の彼方へ飛び立った。


十神「なんだ、今のは?!」

霧切「親友テレカ?」


山田「未来にまだテレカがあったとは……」

のび太「違うよ! テレホンカードじゃなくてテレパシーカードのことなんだ!」

ドラえもん「きっと、苗木君の強い希望に反応したんだね」

のび太「それだけじゃないよ。だって、彼らはいつだって
     ドラえもんのピンチに駆け付けてきてくれたじゃない!」

ドラえもん「うん、うん、そうだね!」

大和田「さっぱりわからねえんだが……」

舞園「あの、彼等って……?」

ドラえもん「このカードはとある惑星の古代神殿でぼくたちが昔手に入れた物で、
       不滅の友情を誓った仲間達にしか使いこなせないんだ」

石丸「仲間……つまり彼等とは……」

のび太「そう、ドラえもんのロボット学校時代の同級生で大親友――」


「――ドラえもんズ」


六つに別れた光は光速で宙を飛び、次元を超え時間を超え宇宙の彼方まで突き進んだ!


  ― 惑星ウエスタン ―


白馬ロボのエドに乗ってパトロールをしていたドラ・ザ・キッドに光が直撃し、その勢いで転げ落ちる。


キッド「な、なんだ?! 敵襲か?!」

エド「あんさん、カードカード! 光ってるで!」



キッド「これは……!」


キッドは衝撃で地面に落とした親友テレカを拾い上げる。テレカは激しく輝いていた。
カードの表面には彼等ドラえもんズメンバー七人のイラストが描かれているが、
その中心……ドラえもんのイラストが特にチカッチカッと光っている。


キッド「ドラえもんがピンチなんだな……今助けに行くぜ! 行くぞ、エド!」

エド「全速前進や!」


  ― スペイン ドラセロナ ―


焼肉カルミンでアルバイトをしているエルマタドーラは皿洗いをしていた。

ビカッ!


マタドーラ「うおっ」ガシャーン!

カルミン「どうしたの?!」

マタドーラ「緊急召集だ。ドラえもんがピンチみたいだな」

カルミン「行っていいわ。片付けは私がやっておくから!」

マタドーラ「すまねえな! 行ってくるぜ!」



  ― 中国 五老峰 ―


王ドラ「この盧山の大瀑布を逆流させることが出来ればわたしも盧山昇龍波が……!」ドキドキ


ビカッ!


王ドラ「わっ」コテン

王ドラ「……これはまさか! 急がなければ!」


  ― シベリア ―


ドラニコフ「…………」←犬ぞりに乗っている


ビカッ!


ドラニコフ「……!」

ドラニコフ「ガウガウ!」


  ― サウジアラビア 砂漠 ―


ドラメッド「ドラメーディア・タロットーリア・ウラナイーノ!」


ドラメッド三世はタロットカードを使って占いをしていた。



ドラメッド「ウーム。何度やってもこのタワーが出るであーる。何かが崩壊する兆しか。
       誰にも悪いことが起こらなければ良いのだが……」


ビカッ!


ドラメッド「ぬわっ。そう言ってたらいきなりカードが! やはりピンチの前触れであったか!」

ドラメッド「ドラえもーん! 今助けに行くであーる! マハラージャ!」


呪文を唱えると魔法の絨毯が現れる。ドラメッドはそれに乗ると一目散に飛び立った。


  ― ブラジル ―


ドラリーニョは相方のミニドライレブン達とサッカーをして遊んでいる。


ドラリーニョ「GO! GO! シュート! ヤッター!」


ビカッ! スッテンコロリン。


ドラリーニョ「わわっ! いきなりなに~?」

ミニドラ「ドララー!」


転んだ表紙に落としたカードをミニドラが指し示す。


ドラリーニョ「え? テレカが光ってる? なんで?」

ミニドラ「ドラ、ドララー!」

ドラリーニョ「ドラえもんがピンチなの?! 大変だ~! 今助けに行くからね~!!」


               ◇     ◇     ◇


場面は再び希望ヶ峰学園に戻る。
ふと、廊下にいた桑田が壁に空いた穴の外を見て叫んだ。


桑田「見ろ! あそこ! なんかこっちに向かって来てるぞ!」

苗木「え? 見えないけど」

大神「我には見える。あれは……翼を生やした白い馬だな」

朝日奈「誰か乗ってる。もしかして、白馬の王子様?!」

苗木「あ、本当だ。見えてきた!」

セレス「わたくし達を助けに来てくれたのでしょうか……」

山田「そんなまさか……」


ビューン!


大和田「おいおい、突っ込む気か?!」

石丸「みんな、下がれ!」

「うわー!」



ズシャアアアッ!


「どうやらオレが一番乗りみたいだな」


ヒラッ、スタ!


ドラえもん「キッドー!」

キッド「ドラ・ザ・キッド参上! よ、久しぶりだぜドラえもん!」

ジェノ「ギャハハハ! なんかドラえもんの色違い来た!」

苗木「耳がある。本当に猫型ロボットだったんだ……」

霧切「また来たわ!」

ドラメッド「ドラえもん! 助けに来たであーる!」

のび太「ドラメッド三世!」

山田「外を見てください! 何かがモノクマの海を掻き分けて走って来ますよ!」


ダダダダダダダダダダダダダダダダ!


舞園「壁を走って登ってます?!」


ピョーン! クルクルクルスタッ!


ドラリーニョ「ドラえもーん!」

ドラえもん「ドラリーニョ! 来てくれたんだね!」


葉隠「ま、また何か走って来たべ?!」

マタドーラ「オレが先だ!」

王ドラ「わたしが先です!」


大ジャンプの末二人が同時に飛び込む。


ドラえもん「王ドラ!」

のび太「エルマタドーラ!」

マタドーラ「ヘッ、主役は遅れてやってくるってな!」

王ドラ「あなたのどこが主役ですか!」


ドガッシャーン!


ジェノ「あ、やべ。ホコリが……グシュッ!」

腐川「……お、終わった? って、なによこいつら?! な、なんなの?!」

朝日奈「ドラえもんの友達だって!」

腐川「ハァ?!」

マタドーラ「到着、と。ん? おおー! これはこれはお美しいセニョリータ方! わたくしスペインは
       ドラセロナから来た花形闘牛士エルマタドーラと申します。お見知りおきを……」

王ドラ「わー! お、女の人がいっぱい! ぼく、ぼく、女の人は苦手なんです~」クネクネ

苗木「ず、随分個性的な友達だね」

キッド「……ドラニコフがまだ来てないな」



そこにどこでもドアが現れた。

ガチャッ。


ドラニコフ「ワウワウ!」

ドラえもん「ドラニコフ! これで全員揃ったね! 来てくれて嬉しいよ!!」

ドラメッド「一体何があったのであるか? タロットを見ていたら
       このカードばかり出るので心配していたのであーる」


プロの占い師である葉隠がドラメッドのカードを見て顔をしかめる。


葉隠「タワーか……当たってんな」

ドラえもん「実は、かくかく!」

のび太「しかじかなんだよ!」


ドラえもんズ『な、なんだってー?!』


キッド「一大事じゃねえか!」

ドラリーニョ「た、大変だー!」

王ドラ「つまり、一刻も早く玄関を塞がなければいけない。そういうことですね?」

マタドーラ「燃えるじゃねえか! よし、お前ら! オレ様たちも手を貸すぜ!」

苗木「い、いいの? だって、君達は関係ないんじゃ……」

キッド「関係ないだって? おいおい、冗談きついぜ!」

ドラメッド「我等ドラえもんズは不滅の友情を誓い合った仲間達」

ドラリーニョ「友達が困ってたら助けるのは当たり前だよ~!」


マタドーラ「友達の友達はまた友達ってな。アミーゴ!」

ドラニコフ「ガウ! ガウガウ!」

王ドラ「それに、友達云々がなくても困っている人を見捨てるなんてわたしには出来ません!」

マタドーラ「セニョリータを悲しませるようなヤツはオレが許さねえ!」

王ドラ「早速作戦会議と行きましょう!」

十神「一階はもうモノクマで一杯だ。必然的に特攻する形となる。
    だが、特攻しても玄関まで辿り着けるかどうか……」

マタドーラ「バカ言ってんじゃねえぜ。オレ達は無敵のドラえもんズだぜ?」

王ドラ「リーダーさんがやったようにこちらも戦力を分散しましょう」

キッド「オレは先発隊と一緒に行く」

マタドーラ「オレも行くぜ。ジッとしてるのは性に合わねえ」

ドラニコフ「ガウ!」←ぼくも行くと言っている

王ドラ「わたしも行きましょう。ドラメッドとドラリーニョはドラえもんと共に四階をお願いします」

ドラリーニョ「わかった~! ここを守ればいいんだね!」

ドラメッド「守りは任せるであーる!」

十神「よし! 一気に四人増えたな。人数的にはギリギリか」

朝日奈「じゃあ今度こそ行ってくるね。……必ず帰ってくるよ、さくらちゃん」

大神「朝日奈……」


武器を持ったメンバーを見てキッドが止める。


キッド「ちょっと待った。まさかと思うが、女を行かせるつもりじゃないだろうな?」

大和田「俺達だって本当は行かせたくねえ……ただ、戦力がな」

ドラリーニョ「ええ~、危ないよ!」

ドラメッド「危険であーる!」

キッド「全く、なんのためにはるばるオレ様達がやって来たっていうんだよ!」

マタドーラ「甘く見て貰っちゃ困るぜ?」

王ドラ「わたし達だけで彼女達十人分以上の戦力はあります! 連れて行くのはやめてください!」

ドラニコフ「ワウワウ、ガウ!」

ドラえもん「大勢で行っても廊下はそこまで広くないし、かえって危ないって言ってるよ」

十神「確かに人数が多いとフレンドリーファイアの可能性はあるが……」

のび太「ドラえもんズはそれぞれみんな特技があってすごく強いんだ! 信じて!」

ドラえもん「キッドは早撃ちの達人だし、王ドラはカンフーマスター、マタドーラは
       怪力の闘牛士、ドラニコフは丸い物を見ると狼に変身するんだ!」

山田「狼? 猫型ロボットじゃ……」

のび太「こまかいことは言いっこなしだよ!」

十神「フム、期待出来そうだな。……わかった。朝日奈と舞園は残れ。それでいいな?」

ドラメッド「それならいいであーる」

ドラリーニョ「よかった~」

舞園「あ……」ヘナヘナ

苗木「舞園さん?!」


舞園「ごめんなさい。ちょっと気が抜けてしまって。まだ何も終わっていないのに……」

大神「カンフーの達人なのか。これが終わったら是非手合わせ願いたいものだ」

王ドラ「喜んで!」

マタドーラ「おお、麗しいマドモアゼル。全て終わった暁には、
       是非私と一緒に情熱的なフラメンコでも……ベイビー」

セレス「それは構いませんが、あなたその体格で踊れるんですの?」

キッド「ナンパしてる場合じゃないぞ!」

エド「皆はん、もう時間がないんやで!」

のび太「ドラえもん!」

ドラえもん「じゃあ行くよ。念のために寄宿舎のホールに繋げるね。どこでもドア~!」

石丸「突っ込め!!」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


ダダダダダダダダ!


ドラリーニョ「いってらっしゃ~い! 気をつけて~!」

不二咲「……みんな、無事に帰ってきてね」カタカタカタ…



               ◇     ◇     ◇


十神「くっ、先程よりはマシだが多いな」

王ドラ「ホアチョー! ハチョッハチョッ! アター!」

マタドーラ「ヒラリ、ヒラリ!」

ドラニコフ「…………」←自分の丸い手を見る

ドラニコフ「……グガアアア!」

キッド「ドカーン! ドカーン!」

桑田「すげえ、あいつら……」

苗木「……僕達、いらないんじゃないかな」

石丸「僕らも負けてられない! 行くぞっ!」

大和田「オラアアアア!」

のび太「行けー!」


モノクマを蹴散らしながら廊下を突き進み、あっという間に玄関ホールの前に到着した。


十神「クッ、見渡す限りのモノクマだ……」

ドラニコフ「ガウウ!」

王ドラ「皆さん! ドラニコフに策があるようです。ここは彼に任せてください!」


両手にタバスコを持ったドラニコフがずいと前に出る。


桑田「タバスコ? んなもんなにに……」

ドラニコフ「ガフッガフッ! ゲフッ!」ゴクゴクゴク!

苗木「の、飲んでる?!」

のび太「みんな、さがって!」

ドラニコフ「ガルルルルル……」


顔が真っ赤になり頭から湯気を出すドラニコフ。


ドラニコフ「グオオオオオオオオオオオオ!!」


次の瞬間、口から炎を吐き出した!


桑田「火炎放射ああああ?!」

大和田「なんだそりゃあああ?!」

十神「……もはやなんでもありだな」

苗木「本当に強いね、みんな……」

石丸「見たまえ! 活路が開けたぞ!」


ドラニコフの猛攻により、みっちりモノクマが詰まっていた玄関ホールの中心部に空間が出来る。


キッド「このまま一気に押し出すぜ!」

王ドラ「その間にリーダーさん、扉をお願いします!」

マタドーラ「後ろは頼んだぞ!」

石丸「任された!!」

大和田「うおりゃあああ!!」

十神「よし! スイッチを押す!」


十神が脱出スイッチを押し、扉が閉まり始める。何とか中に入ろうと突っ込んで来た
ボールモノクマやビーストモノクマを王ドラとマタドーラが弾き返し、キッドが援護する。
その周りで円陣を組むように陣取り、大和田達が残ったモノクマを倒していく。

プシュー。


苗木「やった。閉まったぞ!」

桑田「ハア、まったくヒヤヒヤしたぜ……」

十神「気を抜くな! 校舎内にはまだモノクマが残っている。四階に向かいながら殲滅するぞ!」

「了解!!」


ここまで。

このSSを一年連載していたことに気付いて戦慄している。



  第27話 希望ヶ峰学園のひかりとかげ


カムクラ「……玄関が閉じられたようですね」

腐川「な、なんでわかるのよ……!」

カムクラ「振動で」

「…………」

ドラメッド「そういえば彼だけ縛られているが、何者なのであるか?」

ドラえもん「敵の仲間だよ。……でもぼくもよくわからないんだ。突然現れていきなり投降したし」

ドラメッド「フム。一つ占ってみよう。ドラメーディア・タロット―リア・ウラナイーノ!」


パシッ。


ドラメッド「皇帝のカード……ム、裏に“愚者”のカードがくっついているであーる。
       こんなことは初めてなのである。これが意味することとは一体……」

霧切「皇帝と愚者。正反対のカードね」

カムクラ「興味深いですね。あなたはロボットなのに魔法が使えるのですか?」

ドラメッド「そうである。昔中世の大魔法使いの元で修行したぞよ」

朝日奈「すごーい! 修行したら私も魔法使いになれるかな?!」

セレス「彼はロボットで我々と常識が違いますから当てにしない方がよろしいかと……」

ドラリーニョ「ねえねえ、グシャってなに?」

カムクラ「愚か者という意味です」

ドラリーニョ「ふ~ん。オロカって?」

大神「バカ者ということだ」


ドラリーニョ「じゃあ勉強苦手なんだ~。大丈夫、ボクも苦手だから! でもサッカーは得意なんだ!」

朝日奈「あはは、かわいい~! 私は本業は水泳部だけど、サッカー部にも入ってるんだよ!」

ドラリーニョ「そうなの? じゃあこれが終わったらみんなでサッカーしようよ! 人数もちょうどいいし」

朝日奈「うん、やろうやろう! えっと、私は朝日奈葵。名前は?」

ドラリーニョ「ボク、ドラリーニョ! アオイちゃんだね! ボクちょっと
        忘れっぽいから、忘れないようにしないと」

朝日奈「あ、私も忘れっぽいんだー! 気が合うね!」

舞園「ふふ」

大神「……フッ」


話しているうちに、校内のモノクマを壊滅させた先発隊が戻ってきた。


ドラえもん「のび太くーん!」

のび太「ただいま!」

エド「あんさん、おかえり!」

キッド「戻ったぜ!」

舞園「皆さん、良かった!」

十神「やっと一段落ついたな……」

苗木「あとは不二咲君に任せるしかないね」

桑田「あー、疲れた」


マタドーラ「一仕事すると眠くなるな。ちょいと失礼。シエスタシエスタ、と」スカ-

霧切「見た目からスペイン出身に見えるけど、この状況でもシエスタはするのね」

キッド「マタドーラはマイペースだからな。……あー腹減った。ドラえもん、
     グルメテーブルかけ貸してくれよ」

ドラえもん「はい。どうぞ」

キッド「山盛りのハンバーガーにポテトを頼む!」


ドーン。


朝日奈「すごーい!」

石丸「か、科学とはなんだ……?」

キッド「ヒュー、上手そう。いっただっきまーす! ハムハムハム!」

大和田「よく飯なんて食ってられるな……」

桑田「あー、でもいい匂いだ。俺ももーらいっと」

朝日奈「私も貰っちゃおうかな」

山田「流石の僕ですら今はそんな気分ではないというのに……」

苗木「僕からしたらみんな十分マイペースだと思うよ……」

十神「まだ解決してないのによく呑気にしていられるな。俺はやるべきことをする」

のび太「やるべきことって?」

十神「カムクライズルとか言ったな。貴様の持っている情報を全て吐いてもらうぞ」

ドラリーニョ「ボク、カムクラのことちょっと知ってるよ!」

石丸「知り合いなのか?!」


腐川「そんな訳ないでしょ!」

ドラリーニョ「カムクラはね、ボクと一緒で勉強が苦手なんだって!」

十神「……は?」

舞園「あの、実はさっき占いで……」


先程のやりとりを説明する。


王ドラ「皇帝と愚者のカードですか。相反する二つのカード……」

のび太「王ドラ、なにかわかる?」

王ドラ「流石の私もこの世界のことはまだ何も知りませんからね。ちょっとわからないです」

霧切「……ねえ、前にあなたは自分を作られた存在と言っていたけど、それはどういう意味?」

カムクラ「言葉のままですよ。希望ヶ峰学園は才能こそ人類の希望と崇め、
      才能ある生徒を集めてはその才能を研究していた。その研究成果が僕です」

カムクラ「希望ヶ峰の研究者達からは全ての才能を持つ存在、即ち“超高校級の希望”と呼ばれました」

ドラリーニョ「ちょーこーこーきゅう?」

セレス「高校生でありながら既にその道のプロになっている者をそう呼称するのです」

ドラメッド「要は凄い優秀な高校生のことぞよ」

王ドラ「ここが希望ヶ峰学園で、あなた方はその生徒ということでいいんですね?」

ドラリーニョ「じゃあここにいる人達はみんな天才なんだ。すごーい」

石丸「みんながみんな天才ではない! 僕のように努力で登り詰めた者や、抽選で
    選ばれた苗木君のような人間もいる……だが基本的にはそういう理解で構わない」

王ドラ「話を戻します。あなたは作られた存在。つまり人造人間ということですか?」


カムクラ「一から作った訳ではありませんよ。ある人間を実験体にして脳や肉体を改造したのです。
      その結果、元の人格は消え僕が生まれた。つまり、体は元々あるのです」

十神「それが日向創とかいう人間か。そいつはどうやって調達して来たんだ?」

カムクラ「あなた方本科の人間は知らないかもしれませんが、
      希望ヶ峰学園には予備学科というものがあります」

桑田「予備学科? なんだそりゃ?」モグモグ

大和田「聞いたことねーぞ?」

霧切「数年前に出来たばかりの新設の学科よ」

不二咲「新聞やニュースで一時期よく取り上げられていたね」

腐川「新聞を読まないから知らないんでしょ」

朝日奈「ご、ごめん。あんまり興味なくて……」

舞園「その予備学科って一体なんですか?」

カムクラ「希望ヶ峰は度重なる研究で常に資金が不足していました。そのため、スカウト制でのみ生徒を
      入学させるという制度を取りやめ、一般に門戸を解放したのですよ。それが予備学科です」

石丸「普通に試験で入れるということだろう? 日頃の努力が評価される、良い制度に思えるぞ。
    僕もスカウトを受ける前は受けようかと思っていたが、入学金が高くてな……」

カムクラ「実態は真逆です。要は予備学科で入学する人間はあなた方本科の生徒と違い才能も実績もない
      単なる凡人。彼等は本科と徹底的に区別され、同じ敷地で学ぶことすら出来ませんでした」

のび太「ええっ?! せっかく希望ヶ峰学園に入ったのにいっしょに授業うけられないの?!」

カムクラ「また本科の生徒が学費免除なのに対し、予備学科は通常の高校よりもずっと高い
      入学金や学費を求められる。授業も設備も他の高校と何一つ変わらないのにです」

大和田「詐欺じゃねえか!」


セレス「天下の希望ヶ峰も堕ちたものですわね」

葉隠「…………」←人のことを言えないので黙っている

カムクラ「そう、要は本科の生徒とその研究のための金づる。――それが予備学科なのですよ」

ドラえもん「ひどい話だ。最初は憧れの希望ヶ峰に入れるってみんなワクワクしてたろうに……」

十神「フン、選ばれた人間しか入れない学校に金で入ろうとするからだ。自業自得だな」

苗木「でも、みんな知らなかったの? 設立一年目はともかく、
    二年目からはネットとかで噂になりそうだけど」

カムクラ「それでも構わなかったんですよ。それだけ希望ヶ峰学園卒業者というネームバリューは
      大きいし、形ばかりですが一応本科に編入するシステムも存在しました」

カムクラ「他の凡人共は駄目でも、自分だけは秘めた才能があってそれを見出だしてもらえる。そして
      いつか本科に編入出来る。そんな浅はかな自惚れを持った人間が全国から大勢集まったのです」

キッド「浅はかって……そんな言い方することないだろ!」

王ドラ「夢を持つくらい別にいいじゃないですか!」

カムクラ「そうですね。夢を持つのは自由です。ですが最初から無理な希望を持ったくせに、
      それを裏切られたからと勝手に絶望するのは『愚か』ですよ」

ドラメッド「愚か……何か引っ掛かるワードであるな」

王ドラ「!」

王ドラ「あなたの正体がわかりました! つまり、あなたは予備学科の生徒だったのですね!」

カムクラ「正解です。予備学科の人間は才能を渇望していた。それ故、学園側の人体実験に
      自ら志願する者が後を絶たなかったのですよ。――全ては才能を手にするために」

石丸「何故……諦めてしまったんだ! 努力すれば大概の夢は叶う! 君達は努力すべきだった!」

カムクラ「努力と一言で言いますが、出来ないんですよ。普通の人には」

石丸「何を言うか! 僕は凡人だぞ!」


カムクラ「でもあなたの経歴は普通ではないでしょう、石丸清多夏。総理大臣であり尊敬する祖父の裏切りと
      失脚、それによって生じた天才に対する嫌悪、現在進行形で実家を苦しめる多額の借金――」

『えっ?!』

石丸「…………」


突然暴露された石丸の過去に一同はギョッとした。


カムクラ「真面目なあなたが勉強をサボることはないでしょうが、もしこれらの
      重いきっかけやトラウマがなければ、あなたは今ほど自分を追い詰めましたか?」

カムクラ「せいぜいどの学校にも一人はいるような、平凡な優等生止まりだったのではないですか?」

石丸「そ、それは……」

カムクラ「あなたは、環境がどこまで人格と能力に影響を与えるのか
      研究するためのサンプルとしてスカウトされたのですよ」

石丸「サン、プル……?」

カムクラ「あなたがスカウトされたのはあなたの努力が認められたのではなく、
      あなたの実績と過去の経歴の関係がたまたま研究者達の目に留まっただけです」

カムクラ「全国模試で一位を取る人間など毎年います。別にあなたが特別だったからではない」

石丸「…………」

ドラえもん「そんな! まるで実験動物扱いじゃないか!」

のび太「ひどすぎるよ!」

カムクラ「彼だけではないですよ。本科の人間はみんな研究者達の研究対象に過ぎません。
      ……石丸さんに少し近いパターンでは十神白夜がいますね」

十神「……!! 貴様、知っているのか、我が一族のしきたりを……!」


カムクラ「大富豪の十神家に生まれればそれだけで勝ち組。あなた方はそう思っていませんか?」

のび太「え、ちがうの?」

カムクラ「とんでもない。世界中に母親の違う後継者候補がいて、一つしかない後継者の
      椅子を巡って争い合い、勝ち残った一人だけが十神家正当後継者になれるのです」

ドラえもん(セワシくんの言っていた十神くんの過去がそれか!)

苗木「それって血の繋がった実の兄弟達と争うってこと?!」

山田「バトルロワイアルするということですか?!」

十神「殺しはしないが似たようなものだ。負けた人間は一族追放だからな。……みんな必死だ」

桑田「追放?! おかしいだろ、そんなの!」

十神「おかしかろうが何だろうが俺達子供に拒否権はない。俺は末子で一番不利だったが、血へどを
    吐くくらい学び鍛え、兄姉達を蹴落としていった……そして今の地位を手に入れたのだ」

カムクラ「もしこのような経緯がなければ彼は単なる七光りでしかなく、スカウトはなかったかも
      しれません。いや、資金のためのコネ枠はありますからコネとして入り、研究対象には
      ならなかったか。彼もまた環境が与えた影響を見るためのサンプルだったのでしょう」

十神「…………」ギリッ!

石丸「十神君、幼い時からそんなに苦労を……」

朝日奈「ずっと偉そうで嫌なヤツって思ってたけど……私、あなたのこと誤解してたよ。ごめん」

十神「……チッ」

マタドーラ「サンプルサンプルって、人をなんだと思ってやがる……!」

のび太「マタドーラ! 起きたの?」

マタドーラ「まったく、おめーらの声が大きいから起きちまったぜ。大体の流れは
       わかったが、この学校がおかしなことと今の状況はどう関係してるんだ?」


カムクラ「研究のための金づるとして設立された予備学科ですが、彼等はこの事実を知らず
      本科の生徒は変わらず憧れの対象でした。すぐ側にいるのに手が届かない。
      この事実は彼等のコンプレックスを大いに刺激したのです」

セレス「詐欺同然の学費もあって、不満は凄かったでしょうね」

カムクラ「元々炎上する下地は出来ていたのです。そこに火種を持ち込み掻き回したのが……」

霧切「――江ノ島盾子だったのね」

カムクラ「彼女はその天才的頭脳とカリスマで瞬く間に予備学科を掌握し騒ぎを起こした。
      そして、その騒ぎにより不安になった本科の生徒達を次々と洗脳していったのです」

王ドラ「洗脳?!」

ドラメッド「なんと恐ろしい……」

カムクラ「超高校級の生徒は様々な業界に強い影響力を持っている。洗脳した彼等を使って
      大勢の人間を洗脳しまた別の人間へ洗脳を繰り返す。そして今の状況になったのです」

苗木「それが、人類史上最大最悪の絶望的事件の真相だったのか……!」

舞園「……まだ終わってなんかいません。今も世界は危機に陥っているんですから」

葉隠「例えるなら最後っ屁だな」

腐川「汚い例え方するんじゃないわよ!」

ドラえもん「……それにしても、希望ヶ峰学園がそんなにひどい学校だったなんて夢にも
       思わなかったよ。アニメではただ江ノ島さん一人が問題なんだと思っていたし」

石丸「才能が希望だなんて、そんな考えは間違いに決まっているッ!!」

十神「今回ばかりは石丸に同感だな。超高校級の希望だか何だか知らんが、結局は
    貴様も絶望し江ノ島と行動した。それが全てだ。貴様なんぞ希望でも何でもない」

霧切「希望と言うのは才能や能力ではなく、どんな時も曲がらない正しく強い意志を
    言うのではないかしら? 苗木君やのび太君達は普通の人かもしれないけど、
    どんな絶望的状況でも諦めずに私達を励ましてくれた」

霧切「全ての才能を持つあなたよりも、苗木君達こそ超高校級の希望と呼ぶのに相応しいわ」


のび太「なんだかはずかしいなぁ」エヘヘ

苗木「超高校級の希望なんて言い過ぎだよ。ここにいる僕達一人一人が希望なんだからさ!」

大和田「いいこと言うじゃねえか!」

大神「ウム! 力を合わせて苦境に立ち向かう我等一人一人が希望だな!」


ガンバロー! オオー!


葉隠(なんか居づらいべ……)

山田「…………」


ドドーン!!


「?!」

のび太「わ、なにー?!」

カムクラ「第二波が来たようですね」

十神「なんだと?!」

カムクラ「簡単なことです。入り口が塞がれてしまったので建物ごと攻撃しているのですよ」


彼等は情報処理室から飛び出すと、廊下の穴から外を見る。


桑田「爆弾持ったモノクマがめっちゃいるぞ?!」


霧切「これは不味いわね……」

石丸「止めなければ!」

十神「またモノクマの群れの中に飛び込むことになる。しかも、
    今度は閉める扉もない。お前達はそれでも行くか?」

苗木「行くよ! 僕達が止めないと!」

キッド「水臭いぜ!」

マタドーラ「フワ~ア、さっきのじゃ暴れ足りないところだったんだ」

ドラニコフ「ガウッガウッ!」

ドラリーニョ「あれー? みんな、あそこ見て!」

セレス「どうかされましたか?」


ブロオオオオン!

倒壊した付近の建物から、大型のバイクが飛び出してモノクマを蹂躙していく。


石丸「何か書かれているな。暮威慈畏大亜紋土……兄弟、あれは?!」

大和田「兄貴ッ!!」

大亜「オラアアアアアアアアアア!!」


ゴシャゴシャッ、メキャッ!


雪丸「大亜さんに続け!」

大和田「兄貴! 雪丸に他の奴らも! みんな来てくれたのか!」

朝日奈「! ねえ、あっちにもいる!」

ケンイチロウ「我が拳を見よ! アタタタタタタッ!」


ドスッドゴッ! ボガボゴドコッ!


大神父「さくらあああ! 外は我等に任せろおおお!」

道場の門下生「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

大神「ケンイチロウ! 父上! 道場の者達! なんと心強い増援か……!」

キッド「俺達も行くぜ!」

マタドーラ「よおおし!」

王ドラ「行ってきます!」

ドラニコフ「ガウッ」


キッド達四人は穴から直接飛び降りた。


十神「今なら行ける! ドラえもん、どこでもドアだ!」

ドラえもん「どこでもドア!」

のび太「行ってくるよ!」


地上はまさしく合戦のような光景になっていた。


大亜(モノクマ共が一斉に学園を目指し始めたから嫌な予感がしたが、こんなことになってるとはな……)

ビーストモノクマ「ウオオッ!」

大亜「ッ! 速い……!」


ドンッ!!


ケンイチロウ「…………」

大亜「サンキュー。あんた、確か大神さくらの……」

ケンイチロウ「そういうお主は大和田紋土の身内だな?」

大亜「…………」

ケンイチロウ「…………」

大亜「…………」ニッ

ケンイチロウ「…………」フッ

大亜(そっちは任せるぜ)

ケンイチロウ(任せよ。背後を頼む!)


『おおおおおおおおおっ!!』


二人は少し目を交わしただけですぐに走り出した。

彼等に言葉はいらない。何故なら彼等は真の漢だからである。


キッド「ドカーン!」


ドカンッ!


ケンイチロウ「なんだ……?!」

キッド「増援の増援だぜ!」

マタドーラ「大船に乗ったつもりで行きな!」

王ドラ「ホアチョー! またもや使い手発見。この戦いが終わったら手合わせしましょう!」

ドラニコフ「ガルル!」

大亜「! ドラえもんの仲間か! オメエら、増援だぞ!」

雪丸「それは良かったっす。正直キリがないんで」

大和田「兄貴ィィィ!」

大亜「紋土! よく来た!」

石丸「初めまして、お兄さん! でも今は挨拶してる暇は……」

大亜「大体のことはわかってるが、このモノクマ共の狙いだけ教えてくれ!
    ドラえもんがいれば学園から脱出することは出来たはずだ!」

苗木「モノクマは学園の中にあるメインコンピューターを狙ってるんです!」

桑田「それが壊されたら世界中に格ミサイルが降ってくんだとよ!」

『なにぃっ?!!』『核ミサイルだとぉっ?!』『バカなっ?!』

十神「あと1時間コンピューターを守り、不二咲がプログラムを解除すれば俺達の勝ちだ!」

ケンイチロウ「フム、勝利条件は把握した!」

大神父「なんとしてもこの1時間守り切るのだ!!」

「押忍ッ!!」


ドカッ! バキッ! ドゴッ! グシャッ!


激闘はなおも続く――!


ここまで。最近一次でも創作してたりちょっと鬱っぽかったりで遅れて申し訳ない

遅くても必ず完結はさせますのでもう少々お付き合いください。



  第28話 みんなのゆめ


ドラリーニョ「ねえ、ボク達は行かなくていいの?」

ドラメッド「もしものためにメンバーを温存する必要があるからまだダメである」

大神「…………」ソワソワ

腐川「…………」ソワソワ

セレス「行ったら如何です?」

腐川「な?! ななな、なによ突然?!」

大神「我は何も言っていないが……」

セレス「お二人とも、愛する人が心配なのでしょう?」

大神「バ、馬鹿なことを言うな! ケンイチロウは良き友人であって……」

霧切「もう残り1時間よ。ドラメッドとドラリーニョもいるし、行きたいなら私は止めないわ」

大神「……すまん。ぬおおっ!」


大神は穴から外に飛び出して行った。


朝日奈「行ってらっしゃーい」

腐川「…………」

舞園「腐川さん」

腐川「……行ってくるわ。クシュン」

ジェノ「へーい、今どんな感じ~? あ、なんか外がすっげーことになってる。ゲラゲラゲラ!」


ドラメッド「急にテンションが上がったであるな」

ドラえもん「彼女は多重人格者でくしゃみをすると人格が入れ替わるんだ」

ドラリーニョ「わー、すごーい」

霧切「ドラえもんの仲間達の協力で玄関は無事塞がったわ。でも今度は建物ごと
    破壊しようとしているから、応援に来た人達と一緒に外で戦っているの」

ジェノ「ダーリンもそこにいるって訳ね。りょーかい。んじゃ、ちょっと一暴れしてくっか!」


言うやいなや、ジェノサイダーも高く跳躍し穴から飛び出す。


セレス「この学園の方達の運動能力はどうなっているのでしょうか……」

舞園「そうですね……」

朝日奈「私も鍛えたら出来るかな?」


  ― 職員室 ―


葉隠「…………」ブルブル

葉隠(死にたくねえ! 死にたくねえ! 誰かなんとかしてくれ!!)


ガチャ。


葉隠「ヒッ!」

ドラメッド「何人か足りないと思ったらこんなところにいたであるか」

葉隠「な、なんだ。おめーさんか」


ドラメッド「仲間が戦っているのに見ていることしか出来ないのは辛いであるな」

葉隠「……は?」

ドラメッド「居残りが辛いからここで一人悩んでいたのであろう?」

葉隠「……違うべ。俺は死ぬのが怖くてたまらねえんだ」

ドラメッド「フム、なるほど。みんな頑張っているからきっと大丈夫である! 元気を出すぞよ」

葉隠「おめーさんは強そうに見えないけど、戦えるのか?」

ドラメッド「争いは苦手である。出来ることなら話し合いで解決したいが、そう上手く
       行かないことも多い。そういう時はワガハイも戦うである」

葉隠「どいつもこいつも勇敢なこって。逃げちゃいけないのか? 戦わないのが
    そんなに悪いことか? みんなゴミクズみたいな目で俺を見る!」

ドラメッド「怖いのは仕方ないである。ワガハイだって怖いである。えっと名前は……」

葉隠「葉隠康比呂だ」

ドラメッド「時に葉隠殿、葉隠殿には家族や親しい友人はいないであるか?」

葉隠「……母ちゃんがいる。俺は友達はいねえけど母ちゃんがいればそれでいいんだ」

ドラメッド「今戦わなければ、母上殿も危ないのでは?」

葉隠「おめーさんは知らないかもしれねえが、この世界は荒廃してて世紀末状態なんだべ。
    ……考えたくねえけど、母ちゃんが生きてるかどうかわからねえ」

葉隠「それに! 母ちゃんなら自分はいいから俺に生きて欲しいって、そう言ってくれるはずだ!」

ドラメッド「そうであろうな。母親とはそういうものである……」

葉隠「なあ、俺をおめーらの世界に連れてってくれ! 一人くらいなんとかなんだろ?! 一緒に逃げるべ!」

ドラメッド「それは構わないであるが、一緒に逃げるのは出来ないである」


葉隠「あん? どうして?」

ドラメッド「ワガハイ達は最後の瞬間まで戦って、この星の行く末を見届けるからである」

葉隠「――えっ?」


予想外過ぎる言葉に、葉隠は静止した。


葉隠「な、なんで……なんでそこまでするんだべ! おめーら部外者だろ?!
    直前まで頑張ってそれで無理なら逃げればいいじゃねえか!」

ドラメッド「それは出来ない相談であるな」

葉隠「なんでだ!」

ドラメッド「一つは仲間を置いて逃げられないこと。ドラえもん達は最後まで諦めないはずである。
       二つは……ワガハイ達はロボット。人間を助けるために生まれた」

ドラメッド「たとえこの身が壊れようとも、それが誰かのためになるのなら構わないのである」

葉隠「…………」

葉隠「ヘッ。そうだよな。いくらリアルに出来てたって、
    所詮ロボットに人間様の気持ちなんてわかんないよな!」

ドラメッド「…………。そうかもしれないである。でもワガハイ達ロボットにも
       一人ずつ違う個性があるし、ワガハイにも夢があるぞよ」

葉隠「夢?」

ドラメッド「ワガハイは砂漠に住んでいるのであるが、砂漠で水はとても貴重。だから砂漠に
       住む子供達のために、ウォーターランドを建設したいのである」

ドラメッド「飲み水に困らないだけでなく、子供達が楽しく水遊びが出来る。
       そんな砂漠の楽園を作るのが昔からの夢なのであーる」

葉隠「…………」


ドラメッド「葉隠殿にこれを貸すである」

葉隠「なんだそれ? 電話か?」

ドラメッド「これはもしも電話。ワガハイやドラえもん達の世界はこの世界に似ているが違う、
       いわゆるパラレルワールドであるが、この道具を使えば自由に行き来出来るのである」

葉隠「! それって、逃げてもいいってことか?!」

ドラメッド「ワガハイも嫌がる人間を無理やり戦場で戦わせるような真似はしたくないであるからな」

葉隠「早速使わせて……」

ドラメッド「ただし!」


スカッ!


葉隠「うわっ」

ドラメッド「これを使うならワガハイとある約束をしてほしいのである」

葉隠「約束? なんだべ?」

ドラメッド「ワガハイの代わりにワガハイの夢を叶えてくれぬか?」

葉隠「夢って、砂漠にウォーターランドを作れってことか?」

ドラメッド「そう。ワガハイだけではない。ここで戦っているみんなに、それぞれワガハイのような
       夢や目標があるはず。葉隠殿にはそれを代わりにやって貰いたいのである」

葉隠「!」


ドラメッド「みんな……みんな! 自分や大切な人のために命を懸けて戦っている!
       中にはのび太君のようなこの世界と無関係の子供までが!!」

ドラメッド「お主は仲間もその家族も、自分の母親すら見捨てて一人逃げるのである。
       ならば、それくらい背負うのが筋というものであろう?」

葉隠「あ……」

葉隠(いつもの調子でわかったって言えばいい。適当なことを言うのは得意だ。
    どうせ口約束なんだべ。わかりゃしねえ……けど、だけど)


しかし、葉隠の意志に反して言葉は出て来なかった。



  ― 音楽室 ―


ミニドラ「ドララ! ドララ!」

ドラリーニョ「変なものを見つけた?」


相棒のミニドラ軍団に連れられドラリーニョは音楽室に入った。
そこには机の下に潜り込み震える山田の姿があった。


山田「…………」ブルブル

ドラリーニョ「なんだろう、これ?」

ドラリーニョ「わかった、オシリだー! かくれんぼしてるんだね? みーっけ!」

山田「わっ?! ……なんだ、あなたでしたか。驚かさないでくださいよ!」

ドラリーニョ「ごめんごめん! なんで一人でかくれてたの?」


山田「……あの場にいるのが辛かったからですよ」

ドラリーニョ「つらいってどうして?」

山田「僕は……みんなみたいに戦えない。臆病だしデブだし弱いし」

ドラリーニョ「そっかぁ……。でも気にすることないよ! 得意なこともあるでしょ?」

山田「……絵が得意で、二次創作ですが漫画を描けます」

ドラリーニョ「すごいすごい! ぼくマンガ大好き! 今度ぼくも描いてよ!」

山田「…………ハァ」

ドラリーニョ「あれー?」


山田の溜め息にドラリーニョは首をかしげる。


山田「絵が上手くて漫画が描ける……でも、それがなんだって言うんです。結局自分の理想や
    妄想を紙の上に披露出来るだけであって、世界の危機に何もすることが出来ない」

山田「……僕は無力なんです」

ドラリーニョ「元気出しなよ。好きなことがあるってとても楽しいことだよ。ぼくサッカー大好き!」


そう言うとドラリーニョは華麗なリフティングを披露する。


山田「励ましてくれるのは有り難いですけど、あなたみたいな人気者には僕の気持ちは
    わからないですよ。僕みたいなクラスカースト最下位の人間なんて……」

ドラリーニョ「カースト?」


山田「ロボットとはいえ学校に行ってたんならわかるでしょ? 勉強が出来たり運動が出来たり
    単に格好良かったり。そういう人気者がクラスの中心になって、僕みたいな嫌われ者の
    オタクはクラスの隅でひっそり生きなきゃいけないんですよ」

ドラリーニョ「どうして?」

山田「どうしてって、取り柄のない人間が分を弁えずに前に出てもイタいだけだし」

ドラリーニョ「イタくなんてないよ。それに漫画が描けるんでしょ?」

山田「所詮漫画はオタクでマイナーなんですよ。世界で認められているサッカーとは違うんです」

ドラリーニョ「…………」


頭を抱え、ドラリーニョはうんうんと唸り出した。


ドラリーニョ「うーん、ぼくね、テストはいつも0点でね! サッカーしか出来ないダメロボットとか
        落ちこぼれとか……他にもいろいろ言われてたけど、忘れちゃった!
        すぐ忘れるんだ! ぼく忘れっぽいから!」

ドラリーニョ「でもいいんだ。サッカーしてたら楽しいし友達もいるから気にならないよ!
        きみにもたくさん友達いるじゃない! だから大丈夫!」

山田「友達……」

山田(失われた二年間では、僕達は仲良しクラスだったらしい。写真の中の僕は確かに
    楽しそうだった。その記憶があれば、僕も平気だったかもしれない……)

山田「でも、ダメなんです……同じような悩みを持つオタクの中でも僕は恵まれてる。
    頭ではわかっているけど認められないというか……僕はヒーローになりたいんです」

ドラリーニョ「うーん、漫画が描けるなんてボクにとってはヒーローだけどなぁ。それじゃダメ?」

山田「ダメです」

ドラリーニョ「うーんうーん…………」


ミニドラ「ドララ~?」

ミニドラ「ドラー?」


ドラリーニョとミニドラは頭を抱える。彼等に山田の深すぎるコンプレックスは難しすぎたようだ。


ドラリーニョ「ヒーローになりたいんだよね…………わかった! じゃあ今からなろうよ!」

山田「は?」

ドラリーニョ「キミ、名前は?」

山田「山田一二三ですが……」

ドラリーニョ「ヒフミくん、行こう!」

山田「ちょ、ちょっとドラリーニョ殿?!」


ドラリーニョは山田の手を掴むとぐいぐい引っ張る。


山田「ムリ! ムリですって! 僕みたいなデブは集中放火されちゃいますよ!」

ドラリーニョ「平気平気!」

山田「怖い! やっぱり僕にはムリなんです!」


無理やり手を振り払って山田は壁に取り縋る。


ドラリーニョ「でも行かないとヒーローになれないんでしょ?」

山田「だから! 僕はそれが出来ないからヒーローにはなれないって悩んでるんですよ!」


ドラリーニョ「悩んでてもなにも変わらないよ! 行動しなきゃ!」

山田「それが出来ないんです! もうほっといてください! 善意の押し付けなんて迷惑なだけですよ!!」

ドラリーニョ「…………」


黙り込むドラリーニョ。

相手は完全な善意なのに流石に言い過ぎたか。
そもそも自分が意気地無しなのが全ての原因なのに……と山田はまた落ち込む。


山田(……わかってますよ。僕より小さくてただ抽選で選ばれただけの苗木誠殿や、子供ののび太殿でさえ
    戦場にいる。僕が情けないのがいけないのに、相手のせいにしてさぞかし呆れたでしょう……)

ドラリーニョ「……怖いの?」

山田「怖いです」

ドラリーニョ「怖くなければ、平気?」

山田「そりゃ怖くなかったらとっくのとうに行ってますよ」

ドラリーニョ「じゃあ、ボクがキミを守ってあげるよ!」

山田「……え?」

ドラリーニョ「それだったら平気でしょ? 一人じゃできないことも二人なら大丈夫!」

山田「まだそんな……」

ドラリーニョ「ボクを信じて!!」ジッ

山田「……!」


ドラリーニョの顔は真剣だった。山田が目を逸らせないほどに。


山田「僕は……」


ドシーンドシーン!!


「わっ?!」


               ◇     ◇     ◇



葉隠「なんだこの地響き?!」

ドラメッド「外の様子を見るである!」


全員が廊下の穴に向かい、それを見た。


朝日奈「なに、あれ……」

舞園「……嘘ですよね?」

霧切「大きいわね……」

ビッグモノクマ「…………」


地平線には七体もの巨大なモノクマが隊列を成して歩いてくる。その大きさは横のビルと
比較すれば一目瞭然だ。彼等にはまるで世界の終わりを知らせる巨神兵の群れに見えた。


ドラえもん「ま、まずい! あんなの相手に出来ない!」

ドラメッド「……ワガハイが相手になるである」

セレス「あなた、何か手が?」


ドラメッド「もう我慢の限界である! 葉隠殿、これを!」


ドラメッドはもしも電話と共に、愛用のタロットカードを渡す。


葉隠「これは、おめーさんの……」

ドラメッド「師匠に貰った大事な品である。預かってくれぬか?」

葉隠「…………」

ドラメッド「では行ってくるである。マハラージャ!」

葉隠「あ、おい!」


ドラメッドは魔法の絨毯に乗って、一人巨大モノクマの群れに向かって行った。


ドラメッド「モノクマと言ったか。ただでさえ多勢に無勢だと言うのに
       ここまでやるとは! もうワガハイ怒ったのであーる!!」


そう叫ぶとドラメッドは巨大化した。普段は温厚なことで知られるドラメッドだが、
怒ると巨大化して暴れるのである。足元のモノクマ軍団を踏み潰しながら、巨大モノクマに迫る。


ドラメッド「うおおおおっ!」


元々大きい手を更に巨大化させハンマーのように相手を殴りつけた!


大神「ドラメッド殿か。助かる!」

マタドーラ「やっちまえー、ドラメッド!」

のび太「頑張れ!」


ケンイチロウ「まさか双方にこれほどの切り札があるとはな……」

ジェノ「ヒュー! やるじゃないの!」

雪丸「頼むぜ、でっかいダンナー!」


ドゴッドゴッとドラメッドはモノクマを薙ぎ倒していく。だが!


ビックモノクマ「…………」


カシュッ。


ドラメッド「ム!」


カシュッカシュッカシュッ!


王ドラ「いけない、あれは!」

大亜「食らったらヤバいぞ!」

キッド「ミサイルだ! 避けろ、ドラメッドー!!」

ドラニコフ「ワウー!!」


ドドドドドドドドドドドド!!!

ドカンドカンドカン! ドカンドカンドカン! ドカンドカンドカン!


ドラメッド「ぬおおっ?!! グハァッ……」


バタアアアアン!!

ドラメッドはミサイルの集中砲火を受け、地面に倒れ込んだ。


「ドラメッドオオオオオオッ!!」


大和田「おいおい、嘘だろ……」

桑田「やべーって……」

大亜「馬鹿野郎! 手を止めるな! まだ敵はいるんだぞ!」

石丸「そうだ! まだ諦めてはいけない!」

十神「くそっ、考えろ! 考えるんだ! 何かあるはずだ!」

苗木「諦めちゃダメだ!」

セレス「……何ということでしょうか」

舞園「そんな、ドラメッドさんまで……」

ドラリーニョ「ボク、行かなきゃ!」

葉隠・山田「!」

朝日奈「! ダメ! 殺されちゃうよ!」

ドラリーニョ「でもこのままほっておくワケにはいかない! ドラメッドを助けないと!」

霧切「死にに行くようなものよ!」

ドラリーニョ「それでもいいよ! だってボクたち友だちだもん!」

ドラえもん「ドラリーニョ……」


朝日奈の手を振り払い、ドラリーニョは飛び出した。


葉隠「……おめーは行かないのか?」

ドラえもん「ぼくが行っても足手まといになるから……代わりに、ぼくはぼくのやるべきことをする!」


ポケットに手を突っ込み、ドラえもんはあーでもないこーでもないと思案する。


葉隠「自分のやるべきこと……」

葉隠(……そ、そうだ。さっさと逃げねえと)


見つかってはまずいとその場を離れ、葉隠は電話を掲げる。しかし……


『これを使うならワガハイとある約束をしてほしいのである』


葉隠(約束……)


『ワガハイの代わりにワガハイの夢を叶えてくれぬか?』


葉隠(……知らねえ。他人の夢なんて知ったこっちゃねえ!)


『ワガハイだけではない。ここで戦っているみんなに、それぞれワガハイのような夢や目標があるはず』


葉隠(クズって言われようがなんだろうが、俺は自分が一番大事なんだ。それで何がいけないんだ!)


『みんな……みんな! 自分や大切な人のために命を懸けて戦っている!
 中にはのび太君のようなこの世界と無関係の子供までが!!』


葉隠(……どうした。どうしたんだ、俺?! これで逃げられるんだべ! 安全な所に行けるんだ)


手が汗ばんでいる。額にも汗が浮かんでいるのを感じた。


『お主は仲間もその家族も自分の母親すら見捨てて一人逃げるのである。
 ならば、これくらい背負うのが筋というものであろう?』


葉隠(罪悪感なんて感じてる場合じゃないだろ! 命が掛かってるんだべ!)



しかし、電話を持つ手は震えるばかり。ふと蘇るのは母・浩子の姿だ。


葉隠(そういや母ちゃん、今はどこでなにしてんだろうな……)


もしここに浩子がいたらどんなことを言うだろうか。


浩子『母ちゃんわかってるよ』


浩子『康比呂はちょっと自分に甘くてやんちゃな所があるけど、根は優しくて
    最後はちゃんと決めてくれる子だって。あんたは格好いいもんね』


浩子『――母ちゃんはいつでもどんな時でも、絶対にあんたの味方だからね』


葉隠(母ちゃん、ちょっと親バカっていうか俺を美化してる所あるからな。今も俺がヒーローみたいに
    助けに来るってバカみたいに信じてて、どこかで待っているかもしれねえ……)

葉隠(でもそれは俺の母ちゃんだけじゃなくて、みんなの家族だってきっとそうだ……)

葉隠「…………」

葉隠「…………」








葉隠「……………………ダメだ」


へなへなと、葉隠はその場に座り込んだのだった。


ここまで。

ドラリーニョは天使だと思う

エピローグまで書き終わってるんだよね?それならもっと投下してほしいな



  第29話 たちあがれ、おくびょう者!


葉隠(……重すぎる。俺に全員の夢を背負うなんてムリだべ……)


今まで逃げること、楽をすることしか考えていなかった葉隠だが、
それに伴う責任の重さを知り、初めて迷いを感じたのだった。


葉隠(俺はビビリだしお世辞にも運動神経がいいとはいえねえ。戦いに行ったって
    役に立つとは思えねえ。クズでダメな俺に出来ることってなんだ?)


ドラえもん『ぼくがすべきことをするんだ!』


葉隠(すべきこと……)


手からタロットカードが落ちる。


葉隠「そういや、ドラメッちのタロットはかなりの的中率だったな」


精度は葉隠のインスピレーション占いに劣るものの、カムクラの正体を暴いたりもしていた。


葉隠(このタロットと俺の占いを組み合わせれば……未来がわかる?)

葉隠「教えてくれ! 俺はどうすりゃいい? どうすればこの局面を乗り越えられんだ!」


タロットについてもそれなりに知識を持つ葉隠は、シャッフルして一枚引く。


葉隠「魔術師(マジシャン)……」


葉隠(魔術師のカードは名前の印象とは逆に新たな一歩や希望を表す。ただ単に新しい
    展開なら星のカードでもいい。魔術師なら独創的な発想とか少し捻りが入る――)

葉隠「独創的な発想……それが何かわかればこの局面を切り抜けられるかもしれねえ。
    ……そうだ。独創的な発想の内容を俺のインスピレーション占いで占えば……?」


目を閉じて、葉隠は集中した。今までお金のためか保身のためにしか
占ったことなどない葉隠が、人生で最も心を込めて占った。


葉隠「――見えたべ!」


今までは占った映像が実現するまでは、それが当たりか外れか葉隠にはわからなかった。
だが、今は強い確信を持って言える。これは“当たり”だと。


葉隠「山田っち!」

山田「ヒィ! なんですか?!」


いつも飄々として、それでいて何かあったら周りを盾にして
すぐ逃げる葉隠の――普段とは違う鬼気迫る顔に山田は気圧された。


葉隠「山田っちが鍵だべ!」

山田「なにがですか?! もうダメなんですよ! みんな殺されて核ミサイルも降ってくるんです!
    世界は核で包まれてリアル世紀末が訪れるんですよおおお! ひでぶっ!!」

葉隠「落ち着け、山田っち! それを止める鍵がお前さんなんだって!」

山田「僕? 僕に何か出来るわけないじゃないですか。僕はただのしがないキモオタですよ?!
    あんなに凄い人達が束になってかかってもどうにもならないのに!!」

葉隠「出来る! クズの俺にだって出来た! だから山田っちだって出来る!
    周りなんて関係ねえ! 大切なのは一歩を踏み出す勇気なんだって!!」


山田「突然どうしたんですか? ガラにもない……」

セレス「落ち着きなさい、山田君」

山田「セレス殿……」

セレス「いつもなら真っ先に逃げることを考える沈没船のネズミのような葉隠君が
     珍しく必死に説得しているのですよ? 話だけでも聞いてみては?」

葉隠「……酷い例えだべ」


苦笑するが反論は出来ない。現につい先程まで葉隠は自分一人だけでも助かろうとしていた。


霧切「何か勝算があるのね?」

葉隠「見えたんだべ! 山田っちが巨大なロボットに乗って戦う姿が!」

山田「ハァ?! ガンダムじゃあるまいし。一体どこにロボットがあるっていうんですか?!」

ドラえもん「ザンダクロス……」

「え?」


ドラえもんの呟きに、全員が振り返った。


ドラえもん「そうだ。絶対絶命のあの時だって、ザンダクロスがいてくれたから僕達は戦えたんだ!」

霧切「そのザンダクロスは今どこに?」

ドラえもん「……もういない。歴史が変わったから。どこかの宇宙にはいるかもしれないけど」

山田「結局無意味じゃなかったですか! 無駄な希望なんて持たせないでくださいよ!
    そんなのただ絶望するより残酷だ! 現実は漫画じゃないんですよ!」


山田「作者が紙に描けばどんなピンチだってなんとかなる漫画の世界じゃない!!」

「…………」

ドラえもん「そうだね。余計なこと言ってゴメン……現実はそんな甘いものじゃないよね……」

舞園「……諦めちゃ、ダメですよ」

ドラえもん「舞園さん……」

舞園「だって、ドラえもんさん達は! 絶望した私を救ってくれたじゃないですか!」

舞園「私だけじゃない……。桑田君や腐川さんだって、
    のび太君とドラえもんさんがいてくれたから救われたんですよ!」

舞園「それは無意味だったんですか? そんなことはないはずです! いいえ、私はそう思いたくない!」

ドラえもん「舞園さん……」

舞園「まだ希望があるかもしれません! 他の道具を見て見ましょうよ!」

葉隠「そうだべ! そのサンタクロースを召喚できる道具もあるかもしれねえし!」

ドラえもん「そうだよね! ボクには思いつかないだけで、
       みんななら使いこなせる道具もあるかもしれない!」


ドラえもんはポケットから次々と道具を取り出すが、
出てくるものは扇風機、冷蔵庫、ラジコン、クレヨンなどのガラクタばかりである。


ドラえもん「ハァー! ハァー! もうこうなったらこの地球破壊爆弾で……!!」

セレス「馬鹿ですか?! こっちまで死ぬわ!!」

霧切「これは何かしら?」

ドラえもん「それは携帯扇風機で……」


朝日奈「こっちは?!」

ドラえもん「えーと、瞬間圧縮機……」

葉隠「これはオーパーツだべ! 俺の占いは三割当たる!」

ドラえもん「それは単なるおもちゃだね」

山田「…………」


山田は彼等がガラクタを手に持ちあれやこれやと騒ぐのを手持ち無沙汰に眺めていた。
何故彼等が諦めないのか不思議だった。


山田(どうせ、ムダなんですよ……家族はみんな死んでいるし帰る所もないし……
    僕達だってどうせもうすぐ死んじゃうんだ……)


だったら、最後くらい好きにしよう。好きなことをして時間を潰そう。
そう思って山田は自分が何をしたいか考えた。


山田(絵でも描こうかな……集中すれば周りも気にならなくなるし)


その時、山田の目に映ったのは落ちていたクレヨンだ。


山田(これも未来の道具ならなにか効果があるのかな……)


現実逃避とほんの少しの好奇心で、山田はそのクレヨンを手に取った。
リュックからノートを取り出し、最も描き慣れているぶ~子を描いてみた。


山田「……なんだ。ただのクレヨンか」



ポンッ!



山田の呟きと同時に紙からぶ~子が飛び出てきた。


山田「ぶ、ぶ~子?!」

ぶ~子「…………」


山田は知る由もなかったが、彼が手にしたクレヨンは描いたものを実体化させる立体クレヨンである。
あくまで子供用のおもちゃであり、紙から出てきたものは本物より大幅に劣化して現れる。

しかし山田の類い稀なる画力とぶ~子に対する熱意が、ほとんど本物に近い完璧なぶ~子を生み出した。


霧切「どうしたの?!」

山田「そ、そこに落ちていたこのクレヨンで絵を描いたらぶ~子が……」

ドラえもん「それは立体クレヨンだね。描いた物が立体となって紙から飛び出てくるんだ」

セレス「では、そのクレヨンで武器を描けば……!」

ドラえもん「ムリだよ。所詮は絵だもん。張りぼてなら出せるけど本物は出せないんだ」

葉隠「なんだ……ガッカリだべ……」

山田「偽物……」

ぶ~子「…………」


ぶ~子はフワフワと辺りを漂っている。

その姿は二次元と三次元の違いはあれど、山田がずっと脳内で思い描いていたそれだ。
このぶ~子は山田自身が生み出した正真正銘本物のぶ~子なのだ。



山田「ぶ~子……」

ぶ~子「…………」




二人の目が合う。



ぶ~子「…………」ニコッ!

山田「!!」


心のない張りぼてのはずのぶ~子が、確かに山田に微笑みかけた。


山田「偽物、なんかじゃない……」

舞園「山田君?」

山田「ぶ~子はここにいるんだ……!」

朝日奈「どうしたの?」

山田「聞こえる……! 聞こえるぞッ!! ぶ~子の声がッ!!」

ぶ~子「…………」


―出来るよ。

―山田君なら

―きっと出来る。

―だから……


山田「僕にはぶ~子の声が聞こえるッ!!」


―みんなを助けてあげて!


「?!」


実際には山田の妄想なのかもしれない。だが、山田には確かにぶ~子の声が聞こえていたのだ!


山田「他の人がダメでも、僕の画力なら限りなく本物が出来る! 
    この状況を打開する漫画を描いてみせる!!」


そう叫ぶと山田は画用紙にロボットの絵を描きはじめた。
正面図だけではなく、側面背面やコックピットも含めた設計図並みに詳細な絵だ。

美少女アニメが好きでロボットアニメは有名作品だけ見ていたような彼だが、
超高校級とまで呼ばれる山田の記憶力と画力は確かだった。


ドラえもん「す、凄い……!」

山田「行け! 僕のロボット――ジャスティスロボ!!」


パァァッ!

ズッシャアアアアアン!


朝日奈「ロボットだ! ロボットだよ!」

霧切「張りぼてなんかではないわ。ちゃんと鉄で出来ている!」コンコン

山田「いえ、僕の作り出したヒフミウム合金です。鉄より軽く遥かに丈夫なのです!」

ドラえもん「そんな! 初めて見たよ! これならイケるかも!」

セレス「ですが、いくらロボットでもこの大きさでは……」

不二咲「ビッグライトで大きくすればいいんじゃない?」

ドラえもん「ああ! ビッグライトは……」

舞園「さっき壊れて……」


その場にいた者達は一様に青ざめる。



セレス「予備はないのですか?!」

ドラえもん「ゴメン……」

山田「そんな……」


彼等の様子を見ていたミニドライレブンはお互いの顔を合わせる。


ミニドラ「ドラ! ドラ!」

ミニドラ「ドララー!」

朝日奈「なに? どうしたの?」

ミニドラ「ドラー!」


ミニドラ達はそれぞれのポケットからライトを取り出した。


ドラえもん「それは、ビッグライト!!」

「ええっ?!」

葉隠「じゃあそれでいけるじゃねえか!」

山田「そうですよ! 早く使いましょう」

ドラえもん「ただ、一つ問題が……」

霧切「問題?」

ドラえもん「ミニドラの道具は見ての通り小さくて出力が弱いんだ。これで大きく出来るかな?」

ミニドラ「ドラ?」

ミニドラ「ドララー……」



耳を落としてガッカリするミニドラ達を尻目に、霧切が思案する。


霧切「小さいビッグライトを他のライトで大きくして、それで使えば或いは……」

ドラえもん「それだ!」

ミニドラ「ドララー!」


言われた通り、ミニドラはビッグライトを大きくしてドラえもんに渡した。


ドラえもん「ビッグライト!」


ピカー!


葉隠「よしきた!」

山田「コックピットには、僕が乗ります!」

ドラえもん「このサイコントローラーを使って。握って心に思うだけで脳波を送信して操縦出来るから」



               ◇     ◇     ◇



一方外では、巨大モノクマの登場によって絶望軍団が勢いづいていた。


大和田「クソッ、このままじゃジリ貧だ!」


大亜「諦めてんじゃねえ、紋土! たとえ勝てなくても最後まで戦い抜く!
    それが暮威慈畏大亜紋土流だろうが!」

石丸「お、お兄さん……」

大神「活路を開く! 我の命を使ってでも……!」

ケンイチロウ「さくら、力が入り過ぎだ。もっと流れるように動け!」

大神父「さくらよ! お前は我等大神道場の希望だ! 心を明鏡止水にして挑むのだ!」

大神「ムゥ……我としたことが、己を見失っていたか……」

桑田「そりゃそーだろ! 流石の俺も、キツイ……」

マタドーラ「頑張れ、兄ちゃん。おめーさんにも夢があるんだろ?」


支え合い、助け合いながら戦うがそれでも徐々に追い詰められていく。


苗木「僕は……能天気だったのかな。こんな状況でも、まだなんとかなるかもしれないって
    希望を捨てられなくて……他人頼みだよね。情けないな……」

大亜「いいじゃねえか」

ケンイチロウ「うむ」

苗木「大亜さん、ケンイチロウさん……」

大亜「自分一人じゃどうにもならないことなんて世の中いくらでもあるだろ。
    そんな時、周りに少し手伝って貰って何がわりぃんだ」

ケンイチロウ「深刻になるより、なるようになれとドンと構えた方がいいかもしれんぞ。
        そうしたら案外――思わぬ所から助け舟があったりな」


石丸「大人は格好良いな……僕はあなた達のようになりたい」

苗木「……そうだね。なんとか生き延びて、子供に格好いいって言われる大人になりたいな」

キッド「じゃあ諦めないで前に進もうぜ! ドガンドカーン!!」ドーン!

のび太「みんな今だってすごくかっこいいよ!」バンバン!

ドラニコフ「ワオ! ワオワオ! ……アオ?」

ジェノ「あん、急にどしたワン公? いや、ニャン公? なんか見つけたか?」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


桑田「な、なんだ?!」

大亜「どうやらおでましみたいだぜ。希望って名前の助け舟(グッドラック)がな!」


気絶していたドラメッドは振動で目を覚ます。


ドラメッド(クッ……ここまでか、無念……)


力尽き倒れ、死を覚悟したドラメッドの目にそれは映った。

正義を司る希望の救世主――ジャスティスロボが!


ドラメッド(敵か味方か。いや……!)


占いが得意なドラメッドは直感で感じ取っていた。


ドラメッド(そうか……来てくれたのであるな!)

葉隠『ドラメッち! 助けに来たべー!』


桑田「な、なんだありゃあ?! なんで葉隠の声が……」

十神「巨大ロボだと……?!」


サイコントローラーがあるのだから実際に操縦桿を握る必要はないのだが、
山田はしっかりとハンドルを握りしめていた。まるで、ロボットアニメの主人公のようだ。


山田(人生で一度言ってみたかったこの台詞。まさか言う時が来るなんて……)


モニターの端にはボロボロになりながら必死に戦うドラリーニョの姿が映る。


山田(ドラリーニョ殿の言った通り……行動しないと何も始まらない)

山田(他の人間なんて関係なかったんだ! 誰がなんて言おうと、
    僕の物語はいつだって僕が主人公でヒーローなんだから!!)

山田(だから、今こそ――)


戦場に向けて力一杯、憧れの台詞を山田は叫んだ。



山田『待たせたな!!』


――ジャスティスロボ、降臨!!



ここまで。次回決着!


>>692
申し訳ないです。エピローグまだ書けてないのですよ…

下書きから投下の段階で大幅に推敲があって、裁判シーンとか
最終決戦も本来の三倍の長さになってましてその度に加筆加筆の嵐……

このスレまだ残っていたのか
というかまだ完結していなかったんだな



  第30話 希望はすすむ。ぼくたちがつくる未来へ――



苗木「え、もしかして山田君と葉隠君?!」

大和田「山田?! それに葉隠だぁ?!」

石丸「おお! 彼等も来てくれたのだな!」

大亜「ハハッ! 強い味方がおいでなすったようだぜ!」

ジェノ「見直したぜぇ! 萌えねえ男子からあんまり萌えない男子に上げといてあげるわん!」


山田『山田一二三、行きまーす!!』


学校から出てきたその巨大ロボットのコックピットには山田が乗っている。
飛び出た贅肉で少し狭いが文句は言っていられない。仲間達が沸き立つ一方、
ジャスティスロボのコックピットの中では葉隠が絶叫している。


葉隠「ヒ、ヒエエエ! やっぱり来るんじゃなかった!」

山田「今更なに言ってやがる! 僕達が乗った列車は途中下車出来ないんだ!」


コックピットの座席は山田が占領しているため、葉隠はその後ろに立って
両腕で壁を突っ張って体を支えている。そのため揺れがすごく、不安になるらしい。


葉隠「わかってるけどよォ!」


そもそも乗ると言い出したのは葉隠本人だ。


葉隠『俺の占いだとロボットには山田っちだけじゃなくて俺も乗ってた。
    きっと運動系じゃない山田っちだけじゃダメなんだべ!』

セレス『ですが、葉隠君が乗ったところで何が出来ますか?』

舞園『葉隠君は占いが得意ですから、それを使って先読みしたりとか……』

セレス『七割の確率で失敗しますわね』

葉隠『くそ……今だけでも全部当たってくれりゃあな……』

セレス『そんな都合の良い話がある訳……』

霧切『……あるわ。ねえ、そうでしょう、ドラえもん!』

ドラえもん『これだー!』パパラパッパパー!

ドラえもん『才能伸ばし薬。飲んだ人間は1時間だけ潜在能力を百パーセント上げられる。
       本来は自分にどんな才能があるかを調べるために使うけど、これなら……』

葉隠『貸すべ!』


ドリンク状の薬を葉隠は一気に飲み干す。


葉隠『き、来た来た来たー!』

山田『何が来たんですか?!』

葉隠『今の俺は……』



葉隠『―― 十割当たる!!』


山田「さっきの勢いはどうしたんです?! ほら、早く覚醒したニュータイプ能力でピキーンしてください

!」

葉隠「なんだべそれ?! って、ああ?!」


ピキーン!


葉隠「見えた! 右から来るぞ!」

山田「了解! うおおおおお!」


葉隠のアシストが効を奏し、山田はビッグモノクマの攻撃を防いだ。そのまま競り合いになる。


葉隠「武器はなんかあるのか?!」

山田「あります! ジャスティスハンマーです!」

葉隠「武器がハンマーって地味じゃねえか?」

山田「鈍器ナメんなし! 戦場ではスコップがヤバイ凶器になること知らないんですか?!」

葉隠「でも山田っちならてっきりカッコイイ剣とかにするかと」

山田「……僕は学んだんです! 見てくれより中身が大事なんだってことを!
    セレス殿が! みんなが! 僕に大切なことを教えてくれた!!」

ビッグモノクマ『……!』


グググググ……

徐々にジャスティスロボがビッグモノクマを押して行く。
しかし、他のビッグモノクマがジャスティスロボを囲み始める。



葉隠「まずい……。このままだと囲まれちまう! 来い! インスピレーション来い!」


ピキーン!


葉隠「見えた! 山田っち、足を狙ってバランスを崩してやるんだ! 大外刈りって奴だべ!」

山田「ぬううううううん!」


正確には大内刈りなのだが、素人の二人はそんなことは知らない。見よう見まねで足を攻撃した。
見事ジャスティスロボの足技が決まり、元々バランスの悪いビッグモノクマが転ぶ。


山田「よーし! 正義の鉄槌今ここに! 喰らえ! ジャスティスハンマーアタック!!」


山田は必殺技を叫ぶと、ロボの背中からジャスティスハンマーを取り出し
ビッグモノクマに振り下ろした。

メキャアッ!


重量の乗った打撃により、モノクマの頭部がグシャグシャに砕けた。


葉隠「Fooooooo!!」

山田「まずは一体!」

葉隠「! まずい! 後ろだ!」

山田「えっ?!」


後ろに回り込んだビッグモノクマがジャスティスロボを羽交い締めにする。


山田・葉隠「あわわわわわ?!」



正面にいたビッグモノクマが攻撃しようと振りかぶった瞬間、ピカッとまばゆい光が灯る。
ライトだ。ライトの先にいたのは……


ドラミ『させないわ!』

セワシ『行っけー! ドラミちゃーん!!』


チューリップ型のドラミ専用タイムマシンが突如現れ、ビッグモノクマに体当たりをした!


キッド「なっ?! ドラミ?!」

ドラミ「私達も来たわよ!」

セワシ「おじいちゃん達ばっかり活躍させないよ!」


更に突撃して、ジャスティスロボを解放する。


マタドーラ「ヒュウッ! やるじゃねえか!」

王ドラ「ボク達も負けていられません!」

ドラニコフ「ガウ!」

ドラリーニョ「みんなー!!」

キッド「ドラリーニョ!」

ドラリーニョ「ぼくに力を貸してー!!」


そう言ってドラリーニョは高々とボールを蹴り上げる。


キッド「行け! 友情テレカ!」


「友情テレカー!!」



ピカーン!

七人の友情テレカから光が放たれ、ドラリーニョのボールに当たる。
すると、ボールは巨大化しまばゆい黄金の光を放った。


マタドーラ「おーし! 合体だ!」

王ドラ「了解です!」

ドラニコフ「ワオー!!」


マタドーラの上に王ドラが乗り、王ドラの上にキッド、その上にドラニコフが飛び乗る。
そうして出来たドラえもんズタワーの側面をドラリーニョが駆け上がって行く。

勢いのまま宙に飛び出したドラリーニョはそのまま高速回転し、
輝くボールを思い切りオーバーヘッドシュートした。


ドラリーニョ「シュート!!!」


ゴオッ!!

ボールは光り輝く尾を引いて水星のようになり、ビッグモノクマを貫いた。


石丸「やった! 友情の勝利だ!」

のび太「さすがドラえもんズ!」

ドラメッド「ふ、ふふ。負けておられんでおじゃるな! くらえーっ!」


なんとか立ち上がったドラメッドの拳がビッグモノクマの頭を吹き飛ばす。


キッド「最後は今回一番頑張ったヤツに華を持たせてやるか。エド!」

エド「ガッテン!」



キッドはエドの背中を踏み台にして希望ヶ峰学園に飛び込む。


ドラえもん「キッド! どうしたの?」

キッド「ほら。俺特注のハイパー空気砲だ。貸してやるよ」

ドラえもん「え……?」

霧切「あなたに、と言っているのよ」

セレス「ドラえもんさんが、今回の幕を下ろすのに一番相応しいかもしれませんわね」

ドラえもん「で、でも……ぼくはそんなにすごいことはしてないよ。ただ道具を使っただけで……」

ドラえもん「のび太くんが言い出さなかったらぼくは来ていなかったし、
       今だってドラえもんズのみんなの方が活躍してるし……」

舞園「そんなことありません。ずっと影でみんなのことを支えてくれたじゃないですか」

朝日奈「いくらスゴい道具があっても、のび太だけじゃきっと出来なかったと思うよ? ヌケてるし」

不二咲「そうだよ、ドラえもん。ドラえもんがいたから、みんな助かったんだ!」

ドラえもん「みんな……」


ダンガンロンパの世界に来るにあたって、ドラえもんが全て根回しをしていたのだ。
のび太が寝こけている間に、見張りをしたりサウナで友情を築いたりもした。


のび太「ドラえもーん!」


穴から下を見ると、のび太や他の生徒達も手を振っている。


のび太「はやくー!」

桑田「今度ミサイル撃たれたら吹っ飛んじまうぞ!」

大和田「頼んだぞー!」


石丸「頑張れ、ドラえもん君!」

大亜「ドラえもん! 決めちまえ!」

ケンイチロウ「任せた、ドラえもん殿!!」

ドラえもん「みんな……」

キッド「ああ言ってるぜ? なあ、リーダー!」

ドラメッド「ドラえもんが一番相応しいでおじゃる」

ドラリーニョ「ドラえもーん!」

王ドラ「リーダーが決めないと!」

マタドーラ「へっ、仕方ねえ。ドラえもんなら譲ってやるぜ!」

ドラニコフ「ガウガウー!」

ドラえもん「……わかった」


意を決し、ドラえもんはハイパー空気砲を受け取る。


キッド「へへっ、そうこなくちゃな!」

ドラえもん「みんな! 行くよー!!」


ドラえもんの掛け声と共にドラえもんズが友情テレカを天に掲げる。



ドラえもん「我等!!」


「ドラえもんズ!」


「そして――」

「世界中の希望を捨てない人々よ!!」

「みんなで力を合わせて、ぼく達の未来を――」

「創るんだッ!!!」



今まで座り込んでいたカムクラが立ち上がり、友情の光を見る。

――なんと眩しく輝いているのだろう。



カムクラ「“希望”を諦めない人間が“未来”を創り、絶望を“終結”させる――」

カムクラ「そうか。きっと僕が見たかったものは――」

のび太「あれ?! ぼくたちまでなんだか光ってるよ?!」

石丸「ひ、光がドラえもん君の所に!」

マタドーラ「よくわからねえが友情テレカの力だろ!」

王ドラ「恐らく、ぼく達ドラえもんズだけではなく皆さんの友情パワーも吸収しているんです」


大亜「ま、友情も希望も似たようなもんだからな」

ドラニコフ「ガウガウ!」ウンウン

ケンイチロウ「プラスの力が引き合っているのか!」

大神父「我々まで光っているとは……」

大神「才能がある者もない者も等しく輝いている。希望に才能など関係ないということだな」

十神「フン。認めてやる。確かに仲間だの友情だのは時として強い力を持つようだ」

ジェノ「デレまくってる白夜様頂いたわん! やっべー、なんか殺りたく……くしゅん!」

腐川「な、なに?! 光が広がって行くわ……!」


ドラえもん「ドカアアアアアンッッ!!!」


友情の光を受けてハイパー空気砲は巨大化し、ドラえもんの掛け声で収束した光のビームが放たれた。
それはビッグモノクマを貫くだけにとどまらず、散開して雨のように降り注ぎ周囲一体の
モノクマを殲滅する。余った光は世界中に飛んで行き、まるで流星群のようだった――。



  ― 未来機関 本部 ―


逆蔵「おい、なんだありゃあ?」

宗方「もう少しで希望ヶ峰学園付近の映像が解析出来る。待っててくれ」カタカタカタ

雪染「今じゃないとダメ! ほら、宗助も!」グイッ

宗方「おい、雪染。ム、これは……」


窓から見上げると、そこには空から地上に降り注ぐまばゆい光が見えた。


宗方「昼間だと言うのに流星群か? 珍しいこともあるものだ」

逆蔵「世界はこんな状況だって言うのにな……」

雪染「でも、綺麗……」ツー

宗方「雪染? 泣いているのか?」

雪染「あ、あれ? なんでかな?でも、この光を見てると心が浄化されるような
    なんだか凄く幸せな気持ちになるの。何でだろうね、宗方君……」

逆蔵「まあ、そうだな……なんか変な感じだ。たまにはこういうのもいいかもな……」

宗方「これは何かの兆しかもしれない。よく観測しておこう」


               ◇     ◇     ◇


安藤「ちょっと! こっち来ないでよ!」

忌村「それはこちらの台詞。ルルカが私の後をついて来てるんでしょ」

安藤「ハァ? 冗談やめてよね! どちゃくそ気分悪いんだけど」


忌村「ルルカはいつもそう。なんでも人のせいにして……」

十六夜「?! なんだ、あれは!」

安藤「え、どうしたのヨイちゃん? ってなにあれ?!」

忌村「……流星群? まだ昼間なのに?」

『…………』


しばらく三人はその光景に見とれる。


安藤「……ねぇ、覚えてる? 昔みんなでキャンプしたよね?」

十六夜「ああ。あの時は満天の星空だったな」

忌村「……流れ星があった。今みたいに」

安藤・忌村・十六夜「…………」

安藤「もう戻れないのかな、ルルカ達……」

十六夜「ルルカ……」

忌村「…………」

安藤「本当はわかってるんだよ。ルルカが全部悪かったって。でも意地を張っちゃって……
    ルルカは静子ちゃんみたいに頭も良くないし凄くないから」

忌村「ルルカ……私こそ、ごめん。友達ならダメなことはダメってはっきり言うべきだった。
    何でも言いなりになって我慢して、それが友情だと勘違いしてた……」

十六夜「ルルカは自信を持つべきだ。お前は凄いヤツなのだから。今だって自分から謝れたじゃないか。
     人を救うのは薬だけじゃない。ルルカのおいちいお菓子は色んな人間を幸せにすることが出来る」

安藤「ヨイちゃん、ありがとう……。流れ星、綺麗だね……」

忌村「……うん。綺麗」



そんな三人の様子を離れた所から黄桜公一が眺めていた。


黄桜「青春だねぇ……」

黄桜(トラブルの気配を感じて様子を見に来たが、とんだ邪推だったようだ)

黄桜(おっさんは若者の邪魔にならないように去りますよ、と)スタスタ



               ◇     ◇     ◇


御手洗「…………」ツー

天願「……どうしたんじゃ、御手洗君? 急に泣き出したりして」

御手洗「えっ? ……あっ」


御手洗は顔に触れると、自分が泣いていたことに気が付いた。


月光ヶ原「…………」カタカタカタ

ウサミ『大変でちゅ! 何か困ったことがあったら言ってくだちゃい! 力になりまちゅよ?』

御手洗「あ、いや、そんなんじゃなくて……!」

ゴズ「わかります。こんな神秘的な景色は見たことありませんからね。
    御手洗君は感受性が強いから、感動したのでしょう」

万代「トマトに勝る赤はないって言うからね。自然が一番だよ」

御手洗「感動? ……そうか。僕は感動していたのか。これが本物の感動……」ボロボロ

天願「……御手洗君?」

御手洗「僕は……僕はやっぱり間違えていた……」


御手洗「感動って、小手先の技術で無理にさせるものじゃない。何もなくても自然に
     湧き出てくるものなんだ。僕はそれがわかってなかったから江ノ島に利用された……」

御手洗「認めたくないけど、どんな名作にだって無関心な人間やアンチはいる。でも、それが
     当たり前なんだ。僕はクリエイターとしてそれを受け入れなくちゃいけなかったんだ……」


バッと振り返り、決意を抱いた御手洗は叫んだ。


御手洗「アニメを……アニメを作らないと! 希望でもない、絶望でもない、誰もがありのまま
     自然になれる、そんな作品を作らないと! 今きっと必要とされる作品はそれなんだ!」

御手洗「誰かに強制された感情なんて間違ってる!!」

天願「それが君の出した結論かね?」

御手洗「お願いです、会長! こんな時に何を言っているのかと思われるかもしれないけど
     僕は今これをしなくちゃいけないんだと思います! そのために僕の才能があります!」

天願「……わしは止めんよ。君のやりたいようにすればいい」

ゴズ「絵は描けませんが、色塗りなら手伝えますよ? アニメは一人で作る物じゃねえだろ、御手洗ィ!!」バシッ

万代「豆は沢山あれば大根に勝るってね。みんなで作れば早いんじゃないかな?」

月光ヶ原「…………」カタカタカタ

ウサミ『美彩もCGや自動彩色なら力になれるって言ってるでちゅ!』

御手洗「ゴズさん、万代さん、月光ヶ原さん……」

黄桜「……おっと、こっちも青春か。いいねぇいいねぇ、若者は」スタスタ

天願「儂に比べたら君も若いだろうに」

黄桜「ハハハッ、そうですな!」



 ― 希望ヶ峰学園、情報処理室 ―


不二咲「…………」


一心不乱にキーボードを打ち込む不二咲を生徒達は見守っていた。
サブコンピューターを繋ぎ、王ドラとドラミも応援している。

ちなみに、王ドラはロボット学校一の秀才だったがその記録を塗り替え歴代一位に輝いたのがドラミだ。


のび太「あとどのくらい?」

ドラえもん「10分ちょっとかな……」

ドラリーニョ「ねえ! あの子鼻血出してるよ?! 大丈夫?」

王ドラ「それくらい集中してるのだと思います」


不二咲は鼻血を出しながらキーボードを打っていた。しかし、今度は目からも血が出てくる。


石丸「ふ、不二咲君?!」

大和田「おい、どうしたんだ?!」

不二咲「大丈夫だから!」


しかし、不二咲の様子は明らかに尋常ではない。


ドラえもん「まさか……」

キッド「どうした?」

ドラえもん「やっぱり! さっき出した才能伸ばし薬が足りない! 不二咲くんが飲んだんだね?!」

霧切「クイックもいつのまにか全てなくなっている……」

ドラニコフ「ワオン?!」


マタドーラ「一人でそれだけ飲んだのか?! 死んじまうぞ!」

不二咲「でも、僕がやらないといけないから……あと、あと少し……」

葉隠「不二咲っち……」

苗木「不二咲君……」

山田「フレー! フレー! ふ・じ・さ・き!」

朝日奈「頑張れ、頑張れ!」

大神「不二咲、あと少しの辛抱だぞ……」

不二咲「う、うう……」


フラッ……バタン。


大和田「不二咲?!」

十神「おい!」

舞園「不二咲君?!」


無理をし続けとうとう限界が来たのか、不二咲は倒れてしまったのだった。


のび太「不二咲さん!」

霧切「すごい熱だわ……」

ドラメッド「ただでさえ小柄な子だというのに無理をしたからである……」

不二咲「僕が……僕が、やらないといけないのに……」

石丸「もういい! 君はよくやった! 休んでくれ!」

王ドラ「ぼく達だけでなんとか……」


キッド「ドラミ、王ドラ! 二人だけでも行けるだろ?!」

ドラミ「わ、わたし……授業でやった範囲でしかプログラミングはやってないの……」

王ドラ「同じく……」

「ええっ?!」

霧切「セワシくんと言ったかしら。あなたは?」

セワシ「ぼくはおじいちゃんの孫だよ? 多少は出来るけどドラミちゃんや王ドラほどじゃないよ」

のび太「ドラえもん!」

ドラえもん「何か道具を……」

のび太「あーでもないこーでもない!」

「その必要はありません」


その声に全員が振り返った。そこに立っていたのは――カムクライズル。


ドラえもん「あなたは……」

のび太「カムクライズル、さん」

カムクラ「僕がやります。超高校級のプログラマーの才能くらい持っていますから」

十神「ま、待て! そう言って妨害する気ではないだろうな?」

セレス「そもそもどうやって拘束から抜け出たのです?」

カムクラ「逃げようと思えばいつでも逃げられたし、妨害する気ならいくらでも出来ましたよ」

舞園「どうしますか……?」

腐川「え、江ノ島盾子の仲間でしょ……?」


朝日奈「でも他に方法もないみたいだし……」

桑田「ダメ元でやらせてみるか?」

大神「信じてもいいかもしれぬ」

山田「葉隠殿! 今こそ占いです!」

葉隠「ピキーンと来た! やらせても平気だべ!」

マタドーラ「なら急げ!」

キッド「超特急で頼むぜ!」

ドラメッド「ではワガハイは不二咲殿の看病をするである」

ドラリーニョ「しっかり!」

エド「はよ頭冷やさんと!」

ドラニコフ「ガウ!」つお医者さんカバン

ミニドラ「ドララー!」つアイスノン


カムクラは不二咲の代わりに席に座ると、凄まじい早さでタイピングを始める。


王ドラ「は、早い! これならなんとかなりそうです!」

のび太「やったー!」

ドラえもん「良かった!」

カムクラ「手を貸す代わりに一つお願いがあるのですが」

大和田「な、なんだよ? 金か?」

十神「金なら十神財閥で払ってやる」


カムクラ「いいえ。お金ではありません」

石丸「ではなんだというのだね?」

カムクラ「後始末が終わってからで構わないのですが、僕の記憶と才能を消してくれませんか?」

のび太「え、なんで?!」

カムクラ「必要ないからです」

ドラえもん「必要ない?」

カムクラ「あなた方一人一人は全ての才能を持つ僕に大きく劣っている。
      特にドラえもんとのび太、あなた達は超高校級どころかただの劣等生だ。
      ……しかし、その劣っているあなた達が世界の未来を作った」

カムクラ「僕の元の人格、日向創に教えて欲しいんです。未来を作るのは才能だけではない。
      正しい志と行動力こそが、普通の人間にも力を与えるということを」

石丸「そうだ! 世の中の人間の99パーセントは才能なんてない。
    だがそういった人間が世の中を動かしているのだ!」

ドラえもん「でも、そんなことをしたらきみが……」

のび太「そうだよ。消えちゃうんだよ!」

セワシ「ああ、それなら問題ないよ」

のび太「どうして、セワシくん?」

セワシ「だって、それがダンガンロンパの続編『スーパーダンガンロンパ2』の正史なんだから。
     ぼく達がここにいなくたって、未来機関の技術で記憶を消していたんだよ」

苗木「でも、続編ていうことはそっちでも事件が起こったんだよね?」

セワシ「ネタバレしちゃうと、続編の元凶がカムクラなんだよね。苗木さん達生き残りは、
     江ノ島の手先として利用されていた超高校級達を更生するために新世界プログラムって
     いうシステムを使って、悪事をしてた二年分の記憶を消すんだ」


セワシ「でも、カムクラがそこに江ノ島エゴを仕込んでいたために、プログラムが暴走して
     その中で再びコロシアイが起こる……てストーリーなんだよね」

桑田「はぁっ?! つまりこいつのせいじゃねえか?!」

山田「もろに黒幕じゃないですかやだー!」

十神「本当にもう何も企んでないのか?」

カムクラ「江ノ島エゴはあなた達の前で消滅しました。疑うのなら、僕を常に拘束すればいい」

腐川「今も、作業しながらウイルスを入れてたりしないわよね?」

朝日奈「そうなの?!」

マタドーラ「おいおい、どうなんだ?」

キッド「回答によっちゃ容赦しないぜ?」

ドラニコフ「ガウウー」

のび太「……やめようよ」

舞園「のび太くん?」

のび太「この人はぜんぶ話してくれたんだよ。もう、うたがうのはやめようよ」

ドラリーニョ「カムクラはうそついてないと思う!」

ドラメッド「どうしてそう思うのである?」

ドラリーニョ「んーとね、なんとなく!」


ズルッ!

全員が転んだ。


ドラえもん「……ドラリーニョらしいや」


苗木「ダンガンロンパ2は最終的に解決したんでしょ? なら、なんとかなるんじゃないかな?
    無責任な言い方かもしれないけど、今回は僕達14人全員生きてる訳だし」

大和田「そうだな。三人寄ればなんとかっていうし、こんだけいりゃなんとかなるだろ」

石丸「みんなで力を合わせればなんだって出来る!」

桑田「どいつもこいつも能天気だよなぁ。ハァー、まあいっか」

セレス「そういうあなたも十分能天気では?」

大神「今度こそ、我等は真に力を合わせるのだ」

霧切「ええ。今ならどんなことでも解決できる。そんな気がするの」


カムクラ「――解除が終わりました。もう世界にミサイルが降ってくることはありません」


のび太「ほんとう?」

苗木「とうとう終わったんだね……全部……」



「……………………」


全員が顔を見合わせた。そして、


「ヤッターーーーー!!!」


それぞれ泣き笑いをしながら抱き合い、手を取り合う。

部外者であるはずのドラえもんズ達まで貰い泣きをしていた。


――こうして、のび太とドラえもんの長いようで短いコロシアイ学園生活は幕を下ろしたのだった。



皆様、長らくお付き合い頂き誠に感謝です。次回、感動の最終回となります。

ツイッターとこちらで投下日時の予告を致しますので、出来ればリアルタイムで追って欲しいなぁ。
ほぼ完成しているので、そんなに時間はかからないはず。それでは、次回~


(余談ですが、王ドラの一人称はわたしでした。
 でも、公式でもぼくって言ってる時もあるので許してちょんまげ)


>>712
次回完結ですよ~


トリップキーが消えててめちゃくちゃ焦った

遅れて申し訳ありません。夏バテによるダウンと、8月にかなり大事な用事が
あったためしばらく沈んでおりました。現在書き終わり最終チェックをしている所なので、
時間の取れそうな土曜夜9時頃に最終回開始と致します。


今日は土曜日ですよね? 最近すっかり曜日感覚が狂ってしまいまして。

それでは、最終回始めまーす。


はじまりはじまり……






        ―   エ  ピ  ロ  ー  グ   ―






空き地の空は今日も青い。

晴天の中に活発な子供達の声が響き、白い雲が彼等を見下ろしていた。


カキーン!


のび太「ホームランだ!!」

しずか「出木杉さん、すごいわ!」


ベースを一周して戻ってきた出木杉を一同が迎える。


のび太「おかえり!」

しずか「おかえりなさい!」

出木杉「ありがとう」

ジャイアン「さすが心の友~! 今回こそわれらジャイアンズの優勝まちがいなしだ!」

スネ夫「なんだい。最初は自分の活躍がへるって文句言ってたのに調子がいい……」

ジャイアン「なんかいったか?!」

スネ夫「言ってません言ってません!」

出木杉「力になれてるといいけど……」

のび太「なってるよ。なにせ、次で地区大会予選の決勝なんだから」

しずか「優勝したらいよいよ本戦に出られるのね。応援してるわ。がんばって!」

出木杉「うん! 誘ってくれてありがとう! 優勝出来るように、ぼく頑張るよ!」


出木杉を誘ったのはもちろんのび太である。
元々、出木杉は塾などで多忙であり誘っても遊びに来れないということが多かった。

それがいつしか、あいつは呼ばなくていいという空気になっていたのだ。それでも、一応
声くらいかけるべきだとのび太が主張し、今回の大会にもエースとして参加することになった。

練習の帰り道、のび太はたまたま出木杉と二人になった。


出木杉「のび太くん」

のび太「なに?」

出木杉「ありがとう」

のび太「…………」

出木杉「ぼく、いつも忙しいからなかなか参加出来なかったし、自分からは
     声をかけられなくて……今回誘ってくれてすごく嬉しかったよ」

のび太「友だちじゃない。そんなのあたりまえだよ。……むしろ、ぼくの方こそごめん」

出木杉「どうしたの? なんでのび太くんが謝るの?」

のび太「どうせ参加できないってきめつけてあんまり声もかけなかったし……」

出木杉「それは付き合いの悪いぼくに原因があるから、のび太くんが気にすることじゃないよ」

のび太「ううん。もう一つ、本当の理由があるんだ」

出木杉「理由?」

のび太「……しんぱいしてたんだよ。出木杉くんて本当になんでもできちゃうからさ。
     いっしょにいるとますますぼくのダメっぷりが見えてきちゃって」

出木杉「…………」


のび太「でも、ある人に天才には天才のなやみがあるっておしえてもらって……
     それでぼく、反省したんだ。出木杉くんだって、なやみの一つや二つあるよね?」

のび太「ぼくって自分のことしかかんがえられないイヤなヤツだなぁって」

出木杉「そんなことないよ」


出木杉は首を振って否定した。


出木杉「のび太くんは知らなかっただけなんだ。現に、すぐ反省して行動に移してくれたじゃない。
     それって実はとても凄いことなんだよ。大人でもそれが出来ない人はたくさんいるんだ」

のび太「そうなの?」

出木杉「うん。大人って……ぼく達が思っているより、案外弱かったりするんだ。つまらない
     見栄や意地を張ってしまったり、自分が悪くても絶対に認めなかったり……」

出木杉「のび太くんは確かに勉強や運動はあんまり得意じゃないかもしれない。でも、
     それで誰かを恨んだりイジメたりはしないよね? 剛田くんにイジメられても
     ドラえもんの道具でイジメ返したりしない。優しいし友だちもたくさんいる」

出木杉「ぼくだったら同じように出来るかわからない。ぼくだけじゃない。色んな人が
     そうだと思う。だから、それはのび太くんだけの長所で凄いところなんだよ」

のび太「すごいところ……そうか、ぼくにもちゃんとあったんだね」

出木杉「そうだよ。それは誇っていいんだ」


フゥと息を吐いて、のび太は空を見上げた。


のび太「決勝、ぜったいに勝とうね」

出木杉「うん!」



  ― 決勝当日 ―


しずか「大変よ!!」

のび太「どうしたの?」

しずか「出木杉さん、熱を出したんですって! 毎晩遅くまで一人で練習してたみたいなの!」

ジャイアン「なんだってぇ?!」

スネ夫「もうすぐ試合だよ! どうするの?!」

のび太「そうだ! ドラえもん、お医者さんかばんでなおせば……」

ドラえもん「そ、それが……この間使ったから未来デパートでメンテナンスに出しちゃったんだ」

のび太「もう! こんな時に!!」

ジャイアン「本当に役に立たねえな!」

スネ夫「そうだ! 道具でなんとかできないの?!」

ドラえもん「そりゃあ道具を使えばなんとかなるだろうけど、ズルして勝っていいのかな……」

ジャイアン「いいんだよ! これはどうせ予選で、次は本戦があんだからな。
       その時までには出木杉も治ってるだろ。今回だけなんとかしてくれよ!」

ドラえもん「うーん、でもなぁ……」

スネ夫「道具を使うのがダメなら、助っ人連れてくるとか出来ないの? 誰か知り合いでさ」

のび太「助っ人……そうだ」

ジャイアン「アテがあんのか?!」

のび太「待ってて! 今最強の助っ人をよんでくるから!」

ドラえもん「まさか……」



               ◇     ◇     ◇


「……で、俺を呼んだってワケね」

のび太「お願いします、桑田さん! ここで負けたら、出木杉くんも気にすると思うんです!」


のび太は大急ぎでもしもボックスを使い桑田を呼んできたのだった。


桑田「いや、俺は今日非番だし別に構わないけどさ。高校生がリトルの試合に混じるのはムリじゃね?」

のび太「ドラえもんの道具を使えばなんとかなります!」

桑田「お、なに? 一時的に若返らせるとかできちゃう感じ?」

ドラえもん「タイムふろしき~! これを頭にかぶせて……」バサッ

桑田「おわっ?!」

ドラえもん「で、取る」


そこにはのび太と同年代の姿に戻った桑田の姿が。


のび太「あとは着せ替えカメラでユニフォームを着せれば……」パシャッ

ドラえもん・のび太「かんせーい!」

桑田「うおおっ?! デビルすげえな、おめーら……」

ドラえもん「選手登録はぼくが道具で誤魔化しておくから、きみ達はみんなと合流して」

のび太「りょうかい!」


桑田を連れ、のびたはジャイアン達の元へ戻る。


のび太「みんなー!」

ジャイアン「おそいぞ、のび太! 助っ人は連れてきたか?」

のび太「うん!」

しずか「あ、のび太さん! 大変よ、出木杉さんがムリをして来てしまったの!」

のび太「ええっ、なんだって?!」

出木杉「大丈夫……一試合だけなら、なんとか……」ハァハァ

スネ夫「ムリだよ、そんなに熱があったら!」

ジャイアン「今回はなんとかするから休んでろって!」

出木杉「で、でも……」

桑田「……ふーん。おめーが前にのび太が言ってた友だち、ね」

出木杉「え……?」

しずか「あの、あなたは……」

桑田「どーも。助っ人のレオンだ。のび太の友だちだぜ」

ジャイアン「おお! 助かった! よくやったぞ、のび太!」

スネ夫「でもさー、野球できんの? 出木杉の代わりなんだから相当上手くないと」

桑田「誰にもの言ってんだ。俺は未来のスーパースターだぞ。お嬢ちゃん、ボール貸してくれね?」

しずか「は、はい」

桑田「あれに当ててみっから。よっ、と」シュッ


桑田は受け取ったボールを投げ、かなり離れた場所に置いてあった空き缶にヒットさせる。


ジャイアン「なかなかやるじゃねえか!」

スネ夫「たまたまだよ! マグレかもしれないじゃないか」

桑田「まあ、マグレかどうかは試合で判断してくれって。ノーヒットノーランにしてみせるからさ」ニヤッ

出木杉「あの……」

桑田「出木杉だっけ? あんまムリすんなよ。今日は俺が繋いでやっから、おめーは寝てな」

出木杉「でも、ぼく……」

桑田「……声かけてもらって嬉しくてさ、みんなの力になりたかったんだろ?
    じゃあ、今は休んで一刻も早く体治せって。今日の分も本戦で頑張ればいいんだよ」

出木杉「そう、ですね。ありがとうございます……」

ドラえもん「よし、なんとか誤魔化してきたよ。あれ、出木杉くん?!」

のび太「ムリして来ちゃったんだって」

ドラえもん「この薬を飲むといいよ。半日もすればどんな病気も治るから」

出木杉「みんな、迷惑かけてごめん……」

のび太「めいわくなんかじゃないよ! 友だちでしょ!」

しずか「そうよ! 出木杉さんのおかげでここまで来られたんだから!」

ジャイアン「今日はぜってー勝つ! おまえはそこで見てろって!」

スネ夫「そうそう。なんとかなるよ、多分」

桑田「ハハッ、青春だな! これは人生のセンパイとしてがんばらねーと」


当然ながら、試合はジャイアンズの圧勝であった。ありとあらゆる変化球と速球を駆使する桑田に
相手選手は打つ手なしである。のび太は毎回派手に打たれるのだが、そのたびに桑田がスーパープレイで
アウトに持ち込みコールドゲームで試合は終わった。


  ― 野比家 ―


のび太「ありがとう、お兄さん!」

桑田「おう。久しぶりのリトルの試合だし、童心に帰れてこっちも楽しかったぜ」

ドラえもん「そっちは最近どう?」

桑田「ああ、人質にされてた俺達の家族や仲間を未来機関で助け出したところだ」

のび太「たしか、ドラメッド達もしばらく残ってくれることになったんだよね?」


ドラメッド『仕事があるキッドやマタドーラ、ドラリーニョは難しいが
       ワガハイと王ドラ、ドラニコフはしばらくここに残るである』

王ドラ『わたし達の力で復興の手助けが出来れば何よりです!』

ドラニコフ『ワウワウ(まだ絶望の残党も残っているから油断できないしね)』

葉隠『おおー! そうかそうか。じゃあ道具を少し分けてもらっても……』

ドラメッド『ついでに葉隠殿がサボらないように見張っているである』

王ドラ『そうですね』ジトー

ドラニコフ『アオオー』ジトー

葉隠『そんなぁー勘弁だべ!』


桑田「そうそう! いやー、大活躍だわ。すげーなドラえもんズ。……あと葉隠か」

桑田「あいつ褒めるのはなんかシャクだけど、実際葉隠とドラメッドの占いコンビがすっげー活躍でさ。
    あいつらのお陰で、塔和シティって大きな街のデビルヤバいテロも未然に防げたんだよ」

のび太「そうなんだ! よかったぁ!」


桑田「しかもさ……なんとテロを計画してたのが大人に虐待されてた子供だったっつー話で……
    王ドラとドラニコフが責任を持って更生させてくれるって言ってたわ」

ドラえもん「その二人なら安心だ。ドラえもんズでも優秀な方だったからね。街の方はどう?」

桑田「未来の道具様々だよ。あくまで俺達だけの秘密だからこっそりとだけどさ。
    でも、かなり速いペースで復興できてると思うぜ。今度舞園ちゃんのコンサートやるんだ」

のび太「本当?! ぼくたちも行きたい!」

桑田「もちろん、おめーらは特等席に決まってるだろ。チケット取っといてあるってさ」

ドラえもん・のび太「やったー!」

桑田「じゃあな。またコンサートで会おうぜ」

のび太「また今度!」

ドラえもん「みんなによろしくね!」



  ― とある島 ―


江ノ島「あーあ、退屈」

戦刃「盾子ちゃん! 見て! 貝だよ!」

江ノ島「あ、そう。よくまあ飽きもせず泳いでられるわね」

戦刃「だって、海しかないし。運動するの好きだし」

江ノ島「お姉ちゃんのノー天気ぶりが羨ましいわ」

戦刃「でも実際恵まれてると思うよ。私達のやったことを考えたら、死刑か
    窓のない部屋に拘束されて死ぬまで監禁でもおかしくなかったし」


江ノ島「いっそ死刑で良かったのよ。懲役500年なんて笑えないわ。寿命での獄死も
     認められないし、期間が終わるまでずーっと社会の役に立つ道具を作り続けろなんてさ」

戦刃「真面目に働けば短くなる可能性もあるって言ってたし、22世紀までには
    出られるといいね! そうすればドラえもん達にまた会えるかもよ」

江ノ島「会いたくないっつーの! アタシの計画をメチャクチャにした元凶よ?」

戦刃「前の盾子ちゃんだったら、大事な計画をメチャクチャにされて絶望的ー!って言ってたのに」

江ノ島「あー、本当よ! 普通にイライラする。社会貢献なんて死ぬほどガラじゃないのにさ!
     でも喜んじゃう。絶望的に絶望で最悪だわ、こんなの!!」


22世紀の道具の力によって、江ノ島は絶望ではなく普通に希望で喜ぶように
性格を改変されている。そのため、感性が普通になっていた。二人しかいない孤立した島で
機械に指示された仕事をただ延々とやり続ける。それが江ノ島達へ与えられた罰である。


江ノ島「アタシに一番効く刑が退屈、なんてよくわかってんじゃないのアイツら……それに……」

ミニドラ「ドララー! ドララー!」

江ノ島「憎たらしいこいつらの修理もしなきゃなんないなんてさ……」

戦刃「3日に一度は外出させてもらえるし、ミニドラ達もいるし私は満足してるな。
    あ、そうそう。明日はご飯にレーション出るって! 楽しみだね!」

江ノ島(あと499年もこんな生活をし続けなきゃいけないなんて気が狂いそうよ……)

江ノ島「あー、絶望的ぃ~~~!!!」



――青い空に、江ノ島の絶叫が響いて消えた。



エンディングテーマ1
http://www.youtube.com/watch?v=66HzS1SXAgo


のび太「うわーん! またいじめられたよー! ドライブには四人までしか連れていけないって」

ドラえもん「きみ、しずかちゃん、ジャイアン、スネ夫。四人じゃないか」

のび太「出木杉くんにゆずった。本戦でもだいかつやくだったし」

ドラえもん「えらいじゃないか! よーし、ここはぼくに任せろ!」


  ― 海際のハイウェイ ―


しずか「風が気持ちいいわね」

スネ夫「スネ吉兄さん自慢のオープンカーだからね!」


パラリラパラリラー!!


ジャイアン「なんだ?!」

出木杉「後ろ! なんだかすごいのが来てるよ!」

大和田「ハハハッ! ちんたら走ってやがるな。こっちはもっとスピード出せるぞ!」

のび太「うわーい! すごいや!」

大亜「しっかり掴まっとけや。まだまだレースはこれからだぜ」

ドラえもん「さすが本物の暴走族だ!」

ジャイアン・スネ夫「の、のび太ー?!」

大和田「勝負するか、ボウズども? ああん?」

ジャイアン・スネ夫「ひ、ひえー?!」



のび太「アハハハハッ! ビックリしてる。やったね!」

しずか「のび太さん、その人たちとどういう関係なの?」

のび太「友だち!!」

出木杉「のび太くんは本当に顔が広いなぁ」


またある時は――


のび太「うわーん! 自慢された。ぼくもまんが家のサインがほしいよー! なにか道具だしてー!」

ドラえもん「道具なんて使わなくても知り合いに本物がいるじゃないか」

のび太「あ、そうだった」


  ― 山田のスタジオ ―


山田「それで僕のアトリエに来た訳ですな。この大ヒット漫画家の山田一二三にお任せあれ!」

セレス「違う世界ですがよろしいのですか?」

ドラえもん「パラレルワールドだから、ぼくたちの世界にも漫画家の山田くんは存在するんだよ」

山田「おっふ。違う世界でも大活躍してるとは我の創作精神は時空を超えてしまったようですな。フヒヒ」

のび太「というか、セレスさんふつうに山田さんといっしょにいるんだね」

セレス「専属ナイトが見つかるまでですわ。わたくしに紅茶を入れる人がいないと困りますから」

のび太「すなおじゃないなぁ」

ドラえもん「本当にね」

セレス「うるさいですわよ! 叩き出しましょうか?」



そして、またある時は――


のび太「またジャイアンになぐられたー!」ビエー!

ドラえもん「道具はダメだよ。たまには自分の力でなんとかしないと」

のび太「でも、一人じゃムリだよ……」

ドラえもん「じゃあ、教えてもらえばいいじゃないか。知り合いにいるだろう、世界最強の人間が」



  ― 新生・大神道場 ―


大神「よく来た、のび太よ。我が責任を持って鍛えてやろう」

のび太「あのー、お手やわらかに……」

朝日奈「よーし! まずは軽く腹筋百回からね!! 簡単でしょ?!」

のび太「それで軽く?! うそだー!!」

ケンイチロウ「まあ待て、朝日奈殿。まずはのび太殿のペースを見極めなければ」

大神「うむ、我らに合わせたら体を壊してしまう」

朝日奈「あはは、ごめんごめん。よーし、じゃあのび太のペースで行ってみよう!」



  ― 空き地 ―


石丸「試合だと聞いて応援にきたぞ!」

不二咲「がんばってー!」

舞園「がんばってくださーい!」


スネ夫「ねえねえ、あのお兄さんたち誰なの……?」

しずか「えーっと、のび太さんのお友達じゃないかしら……」

出木杉「のび太くんは交友関係広いからね」

ジャイアン「気になって集中できねーじゃねえか……」

のび太「えーい」パコーン!

ジャイアン「ギャッ!」

苗木「やったー! すごいよ!」


エンディングテーマ2
http://www.youtube.com/watch?v=M72l2lk2QeU


  ― ジャバウォック島 ―


十神「いよいよ約束の新世界システムだ」

腐川「こ、後悔するんじゃないわよ」

カムクラ「後悔なんてあるはずがありません。……ご迷惑をおかけしました」

霧切「では、新世界システムを起動するわ」

カムクラ「そうだ。ナビゲーションのAIですが……」

霧切「大丈夫よ。あなたの指定した通り、彼女のデータを入れてあるわ」

十神「不二咲が在学中に作っていたデータが学園に奇跡的に残っていたからな」

腐川「才能授業で一緒だった本人から提供してもらったデータだから、限りなく本人に近いはずよ」




カムクラ「……ありがとうございます」


カムクラは深々と頭を下げた。もう彼は無感情などではなかった。



  ― ??? ―


狛枝「あ、最後の一人が来たようだね」

西園寺「また来たのー? 時間も守れないとか生きてる意味ないよねー?」

罪木「うゆう、ごめんなさーい! 許してくださーい!」

小泉「アハハ、あなたのことを言ってるんじゃないと思うな……」

ソニア「そうです! 苦しゅうない。良きに計らえー!」

花村「おっと、それは君を僕の好きなように料理しちゃっていいという意味かな?」

日向「……ここはどこなんだ? 俺は一体……」

ウサミ「いらっしゃいませでちゅ、日向くん! あなたのことを待ってまちた!」

狛枝「ちょうど、みんなで自己紹介をしていたところだったんだよ」

日向「そう、なのか……」

七海「初めまして、日向君。七海千秋だよ。いや、この場合は……」ウーン?





七海「久しぶり、かな?」

日向「――え?」









               ― C A S T ―










   野 比  の び 太





                                          ド ラ え も ん






                      超高校級の幸運『 苗木 誠 』








超高校級のアイドル『 舞園 さやか 』








                                          超高校級の野球選手『 桑田 怜恩 』




                                    超高校級の風紀委員『 石丸 清多夏 』





                    超高校級の暴走族『 大和田 紋土 』





超高校級のプログラマー『 不二咲 千尋 』





超高校級のギャンブラー『 セレスティア・ルーデンベルク 』





                                 超高校級の同人作家『 山田 一二三 』





        超高校級の占い師『 葉隠 康比呂 』






                      超高校級の水泳選手『 朝日奈 葵 』







                      超高校級の格闘家『 大神 さくら 』








超高校級の御曹司『 十神 白夜 』





    超高校級の文学少女『 腐川 冬子 』  &  超高校級の殺人鬼『ジェノサイダー翔』





                                           超高校級の探偵『 霧切 響子 』











超高校級のギャル『 江ノ島 盾子 』  ✝ モノクマ ✝  超高校級の軍人『 戦刃 むくろ 』











                    ― S U B  C A S T ―



                    剛田武       骨川スネ夫

                    源静香       出木杉英才

                    ドラミ        セワシ

                    大和田大亜    ケンイチロウ

                    雪丸竹道      大神父&道場門下生

                    カムクライズル   タイムパトローラー

                    アルターエゴ     ウサミ

                    ドラ・ザ・キッド   エル・マタドーラ

                    王ドラ        ドラニコフ

                    ドラメッド三世    ドラリーニョ

                    エド          カルミン

                    住職          ミニドライレブン





                              ◇


                         日向創  七海千秋

                       狛枝凪斗  左右田和一

                       小泉真昼  西園寺日寄子

                       罪木蜜柑  澪田唯吹

                      田中眼蛇夢  ソニア・ネヴァーマインド

                      九頭龍冬彦  辺古山ペコ

                       弐大猫丸  終里赤音

                       花村輝々  詐欺師


                              ◇


                       天願和夫  黄桜公一

                       宗方京助  雪染ちさ

                      御手洗亮太  逆蔵十三

                     グレート・ゴズ  万代大作

                       忌村静子  月光ヶ原美彩

                      安藤流流歌  十六夜惣之助


                              ◇






                        ― Production ―


                       ㈱藤子・F・不二雄プロ


                       ㈱スパイク・チュンソフト












                          ― Writer ―


                          ◆takaJZRsBc












                       ― Special Thanks ―


                          藤子・F・不二雄


                            小高和剛



                             And YOU !






             ・

             ・

             ・


ドラえもん「ハァ、今日も平和だなぁ。ねえ、ミーちゃん」

ミー「ニャー」

のび太「ドラえも~ん!! 大変だよ、大変! 大変なんだ!!」

ドラえもん「なんだい、ぼくはいまミーちゃんとデート中なんだよ」

のび太「それが、ダンガンロンパの続編がまた出るんだって!!」

ドラえもん「ああ、スーパーダンガンロンパ2でしょ? 知ってるよ、そんなの」

のび太「ちがうよ! 2はもう出てて、こんど出るのは3なんだって! ダンガンロンパ∨3!」

ドラえもん「な、なんだって?!」

のび太「ほら、この雑誌みて!」

ドラえもん「どれどれ……才囚学園? 今までのシリーズとはまったくちがう、完全な新作?
       もしかして、今度の作品は希望ヶ峰学園は全く関わってないのかな……?」

のび太「わからないけど、ほっとけないよ!」

ドラえもん「よし、行こう!」

のび太「今度はみんなで行こうかな。今までとまったくちがうらしいし」

ドラえもん「そうだね。もしかしたら違う世界の可能性もあるし。みんなで考えた方がいいかもしれない」

のび太「よーし! そうと決まったら、がんばるぞー!!」

ドラえもん「おー!!」






                          ~  F i n  ~




よっしゃ、次は才囚学園編だな!
リアルフィクションをぶっ壊したい。


2018/01/07(日) ~2019/08/11(日)


お、お、終わったあああああああああああああ!!

実に一年半の連載、キレイに777レス。ドクターKに比べたら全然短いのですがやっと終わった……

これでやっと集中出来そうです……

長かったなぁ。途中、セレスのパートを完全加筆したり、劇の内容がつまらなすぎて
全とっかえしたり、裁判パートが長すぎてうんうん言いながら完成させたり、
ラストバトルも想定よりだいぶ長くなったし、綺麗なエンドロールを流すために
AAの勉強始めちゃったり……トラブル連発しましたが、なんとか無事に完結できました。

それも、全ては応援してくれた読者の皆様のお陰です。
感想レスは何回も見直してます。一つ一つがモチベになりました。本当にありがとう!


ちなみに、自分は原稿を携帯に打ってPCに送っているのですが、最古のメールの
日付が2013年11月24日(日)でした。つまり、書き始めたのはそれより前なので……

……うん、考えるのをやめよう。完結して本当に良かった!


何か質問があればお答えします。思えばこの作品も6年越しだったんだなぁ……

その間に絶望少女が出て3が出て、そのたびに内容が変わっていった

でも、結果的には遅れて良かったのかも。未来機関メンバーも綺麗に救えたし


>>778
勘弁してくださいwその前にドクターKの方終わらせないと
V3もきっとドラえもん達が右往左往しながらなんとかしてくれるでしょう

あと、リアルフィクションについては自分なりの解釈した短編があるので、
あれを完成させてアップしようかな

質問です。


[たぬき]世界の現代では、ダンガンロンパv3が発売されているみたいですが、v3のあのオチをかました後に、セワシくんの代までダンガンロンパの続編を出したんですか?


あと、HTML依頼は大丈夫ですか?

入間「はぁ…、はぁ…、やっぱりこんなに溜まってるじゃーねか…!」

[たぬき]「だ、だって、こっちに来てからはやってないから…。」

入間「…なら私がたっぷりしてあげる?…スッキリしちゃお?[たぬき]?」

[たぬき]「ダ、ダメだよ美兎ちゃんそんな激しく…もっと優しく…アーッ!!」

V3とドラならメンテナンスイベントは欠かせないな。





埋め立てられてるー。HTML依頼出してきます

>>784
まだ見てるかな? 続編についてはわからないです。スパチュン次第!
でもリメイクとかは確実に出てると思います。根強い人気でなんだかんだ
22世紀でもファンが残っているのでしょう!

17日午後4時10分ごろ、新潟県柏崎市松波3丁目の海岸で、水上バイクを片付けようとしていた群馬県高崎市の会社役員浜川善和さん(49)が高波に押し倒されて転倒、病院で死亡が確認された。

 柏崎署によると、浜川さんは同日午前9時ごろから複数の友人と水上バイクで遊んでいた。午後3時以降、波が高くなり、波打ち際から海側へ3~4メートル地点で水上バイクの陸揚げを始めたが、高波にのみ込まれた。署が詳しい経緯を調べる。

こあら雲
@koala_cloud
まれに絵を描く会社員。ジブリが好きです。■pixiv:http://pixiv.net/member.php?id=4397688
■ニコニコ:http://nicovideo.jp/user/17186967

藤吉修崇@ユーチューバー弁護士(登録者1万人突破、下記のリンクをちらっと観て!!)
@fujiyoshi_ben
役者→弁護士に転身。転身理由を「金」と口を滑らせ、2ちゃんねるで叩かれまくる? 得意分野はネットに書き込まれた誹謗中傷の削除と書込者の特定。(現在元AV女優へのネットストーカーを特定するプロジェクトをyoutubeでアップ中?、企業からの依頼も多数)。これまで2000人以上の法律相談を受けてきております。
youtube.com/watch?v=KLRysY…


『ヒューさん、アンナさん、フェイさん。
この度は勝利、おめでとうございます。』
 
 GMさんは、1枚の紙をヒラヒラと投げてきた。
 その紙には、全員の名前と役職が書いてあった。
 
モブ(市民)、アーニー(狩人)、ゲイル(人狼)、
フェイ(市民)、ヒュー(市民)。
ジェシカ(人狼)、サンドラ(狂人)、アンナ(占い師)、
メリル(霊能者)、ソフィア(市民)

https://m.youtube.com/watch?v=0jMgj6vgTfE

ごま
@gomagomao0701
成人済壁打ち 相澤先生中心に世界回ってる 気まぐれに落書き描きます ツイプロ(http://twpf.jp/gomagomao0701)
挨拶不要/FRBご自由に/?支部pixiv.net/member.php?id=…誕生日: 7月1日

……嬉しかった。
とっても、嬉しかった。
なのに、……素直になれない自分に、あとから自己嫌悪になった。
……怒ってないかな。やっぱり、明日は謝ったほうがいいんだろうか。
でも、もし怒っていなかったら、……変に思われるだけかも。
……普通で、いいかな。
それにしても、こんなことをくよくよ考えるなんて、……いつもの私らしくない。
最近、なんだか変な気持ちだ。
これって、……どうしてなのかな……?

new@アニメーターユーチューバー
@newakiba21
アニメーターyoutuber 本名 新子太一 Japanese animator『関わった演出 http://goo.gl/Hz7jQC 』『関わった原画http://loveandpeace.sitemix.jp/?page_id=6』『youtube http://urx2.nu/G6tc』『pixiv http://urx2.nu/G6t6
loveandpeace.sitemix.jp

ばっす
@zatubas
25腐。トチ狂ったアカウントへようこそ!!心操と相澤。心相、相心、心相心。10月20日は直伝プチ/ IDDM3年目 /Do not repost MY PIC.  http://marshmallow-qa.com/zatubas
pixiv.net/member.php?id=…誕生日: 1月16日

(前2ページほどが破り捨てられている)
……うん、大丈夫。
明日は、笑顔ではじめよう。
私は私らしく、今までどおりでいいんだから。

のび太「ウソ800は?」

[たぬき]「そうだ。その手があった」

大和田「今度はなんだ……」

[たぬき]「液体版ソノウソホントみたいなものだよ。これを飲んでついたウソは本当になる」

のび太「貸して」ゴクゴク

のび太「『核ミサイルなんて飛ばない。世界は平和になった』!」


これだと世界終わる


申し訳ない。ウソ800の使い方間違ってましたね……

各人で脳内修正お願いします。

うみねこ。
@__umnk
??→飯屋:??中心(最推し) / ? / ? / ? /
誕生日: 8月27日

しろっぷ
@niji_maple6088
にじさんじにハマった新規勢
にじさんじについてお話できる方探してますキラキラ推しは固定参照……

アップすることは少ないけど暇な時にお絵描きしてる人間(下手)

ウザ絡み等々歓迎です◎

りんね
@_nemui08
虹3時壁打ち気味隔離垢 / サイコロパソコン青のハートカスタード宝石 / 感想忘備録偶に落書き / わっと騒いでさっと巣に帰るスタイル / 無言フォロー通知来ないです
?成人済 / 鍵掛けたり外したり忙しないです

芒(すすき)
@KKMmToI6aYlf1hP
成人済女性。虹3時垢。ハマってまだ日が浅い新参者。配信は全て追えておらず、ゆるく推してます。警告配信リアタイ中は騒がしいです警告/お別れはブロorブロ解でお願いします。【https://twpf.jp/KKMmToI6aYlf1hP
片メガネをかけた顔交差した剣ドア小悪魔カエデの葉?ハイヒール?/名札教メシャ夜王国フルトイ

sai
@21xxx__81
20↑丨虹3時メインサイコロ水鉄砲マイクオフィスビル上向きの赤い三角形丨色んな方の配信を見ております丨ボイス、グッズは買ったり買わなかったり…のんびり推しています(推しが定まらない)丨不快だと思われる方はブロックして頂ければ幸いです丨お別れもブロックでお願い致します

あじめなり
@ajimeeeeena
こんにちはぁぁ 15↓学生♀ ほぼ虹3時垢 SNSコミュ障 虹3時(オフィスビル?シルクハットヒヨコ)/ヒプマイ/seec(ウユリフ特ストプレイ済)/マホイクが大好物。ファンアートは低頻度
人生無糖twpf.jp/ajimeeeeena

男子十八番 横山圭(よこやま・けい)
 
身長:169cm
体重:54kg
誕生日:7月1日
血液型:B
部活動:サッカー部
友人
宍貝雄大
原裕一郎
(体育会系グループ)
愛称:圭・圭ちゃん
出身小:帝東学院初等部
親の職業
公務員(父)
パート(母)
能力値
知力:★★☆☆☆
体力:★★★★★
精神力:★★★★★
敏捷性:★★★★★
攻撃性:★★☆☆☆
決断力:★★★★☆

いつでも元気一杯で、グループ関係なく誰とでも話をする。
考える前に行動してしまう猪突猛進型で落ち着きがない。
原裕一郎とは部活で同じポジションを争ったライバル同士で今も喧嘩が絶えないが、その実力は認めているため一緒にいる。
阪本遼子とは初等部の頃からずっと同じクラスの腐れ縁。
平野南海とは家が近く、遼子も入れて3人でたまに寄り道することもある仲。
昔は上野原咲良に想いを寄せていたが、今は諦めている。

以下ネタバレです。

 チーム:9班
支給武器:NO DETA
kill:なし
killed:室町古都美(女子十八番)
死亡話数:第16話
凶器:グロック19

眼前で田中顕昌(男子十一番)の死を見て呆然自失の平野南海(女子十四番)を支えながら教室を出発。原裕一郎(男子十三番)の提案で落ち着ける場所で隠れようということになった矢先、突如室町古都美(女子十八番)に撃たれる。その後狙われた南海を庇い再び被弾し失血死。後事を裕一郎に託した<15・16話>


チーム対抗戦なのにあえて内乱から始めてみました、そしてその犠牲者。
古都美があんな行動に出なければ9班は圭と裕一郎で上手く回ったんだろうなぁと思うんですが、こんなことになってしまいました。
裕一郎との小競り合いとかもっと書きたかったなぁ…

壱月
@ichi_fullmoon
【いつき】/雑多/主に虹3時,SMC組/イラスト/無言フォロー失礼します
誕生日: 1月9日

花ちゃん(【公式】キズナストライカー!)
@KZN_striker
翼白(はねしろ)高校サッカー部顧問のブロッサム花緒よ~♪花ちゃんと呼んでちょうだい! 「キズナストライカー!(キズスト!)」公式アカウントよん! 新情報はアタシが呟くわ、ハッシュタグは #キズナストライカー #キズスト お問い合わせはゲームの中にある「お問い合わせ」からお願いねん!
翼白町kizunastriker.com

新村コウ

【公式】人狼狂(グルイ) 劇場案内人アテナ
@jinro_gurui
劇場案内人のアテナと申します。
ボイスチャット#人狼 ゲーム「劇場推理 人狼狂(グルイ)」の最新情報をお届けします†
アプリ版→http://bit.ly/2qRwsf8
ブラウザ版→https://jinro.game
お問合せ→jinro-gurui_support@applibot.co.jp
#人狼狂

ある少年は本を読んで、ある少年は空をみた。
 ある場所にて。二人がよく行っている図書館で。
 空はとても青く。言葉はとても優しく。
 少年らはずっと、そうしてきた。

 まるいまるい大切な時間をたった五分だけで過ごした。
 一人は空を見ている人にこう言った。

 これからどうする?
 反応なし。
 ただ空を見ているだけ。
 本を閉じて空を見る。

 青く広がっていた。雲が動いていた。
 今なら羽根を求められそうな気がしたんだ。

 ずっと、見ていたら、時間を忘れてた。

 誰かの、足音が聞こえて、お互い顔を見合わせる。
 行こう、と藍瀬輝々(男子一番)と葵輝丹(男子三番)は小さく頷いた。

【残り四十人】

女子九番 青名静(せいな・しずか)

支給武器 --(出発前に死亡)
被害者 なし
加害者 担当教官
死因 銃による被弾
登場話 02/09
死亡話 9話「二度目の絶望」
最終行動 担任の神原が目の前で殺され、逆上したところを撃たれる。
友人関係 鈴風鈴(女子8番) 田中春奈(女子10番)
所属部 パソコンクラブ(美術部)
備考 おどおどしていて、一見か弱いものの実際は根がしっかりしていて強い。勉強が多少苦手であることを悩む。人見知りの為、仲のいい人以外とは話せずにクラスに馴染めない。優しくて明るい神原先生を尊敬している。

男子九番 久光土(きゅう・こうし)

支給武器 ワルサーPPK
被害者 なし
加害者 葵輝丹(男子3番)
死因 銃による被弾
登場話 02/08/15
死亡話 15話「たったひとつの冴えないやり方」
最終行動 葵輝丹(男子3番)に銃を向けて殺害しようとしたが、弾が入っていないことに気づかずに逆に撃たれる。
友人関係 氷友斗(男子12番) 川瀬和生(男子7番)
所属部 オセロクラブ(テニス部)
備考 おとなしく、目立たない。たまに集まって笑っている静木青(男子10番)達を羨望の目で見ている。氷友斗(男子12番)と親友。洞察力がよく目では見えない具合悪い人の様子に気づくことがある。

にじ歌で救える命がある
@CLi89O5Bq4dIxdA
?にじさんじ歌ってみた週間ランキング【毎週配信中】

ヤナギネ(まぐろすし)寿司
@magro_sushi
◆納推し腐(水晶玉棺他)
◆20↑/フォロバ不要/通知オフ
◆転載禁止 Repost is prohibited.
◆刀(
@sano_d
)
◆マシュマロ(http://marshmallow-qa.com/magro_sushi)
pixiv.me/mari-go

中川未来

根岸すず

井上このみ

Toriga
@trig_ig
ゲームとたまにファンアートテレビゲーム?MHWI&MHRise/DQ/他

みずかね@オリバト垢
@OrbtStardust
オリジナルバトルロワイアル(オリバト)サイト「Star☆Dust」の管理人によるオリバト垢です。更新情報などなどを発信します。発信用のため原則フォローはいたしませんのでご了承ください。現在9作目更新中。
stardust0302.fc2web.com

棋士・藤井聡太の将棋トレーニング公式【将トレ】
@shogi_training
Nintendo Switch用ゲームソフト『棋士・藤井聡太の将棋トレーニング』の公式Twitterアカウントです。
『将トレ』の情報をお届けします!
ハッシュタグ「#将トレ」をつけてつぶやいてくださいね。
好評発売中!
?Instagram?
https://instagram.com/sho_tore
sho-tore.jp

SWDCオフィシャル
@SWDC_OFFICIAL
SUPER GT公式アーケードゲーム「SEGA World Drivers Championship(SWDC)」の公式アカウントです。 WEB:https://swdc.sega.jp 
お問い合わせ:https://sega.jp/contact/arcade/
東京都大田区swdc.sega.jp

キンプリラッシュ公式虹
@PrismRushPR
アニメのキンプリのスマホゲーム「KING OF PRISM プリズムラッシュ!LIVE」の公式アカウントです。本アプリは2020年10月29日をもってサービス終了致しました。長らくのご愛顧ありがとうございました。
あなたのスマホに"プリズムの煌めき"をお届けします!prism-rush.com

名探偵コナンランナー 真実への先導者
@Conan_Runner
「名探偵コナンランナー 真実への先導者[コンダクター]」の公式Twitterアカウントです!最新情報は随時こちらでお知らせしていきます。 ※Twitterでのお問い合わせには返答できかねます。ご了承下さい。推奨ハッシュタグ: #コナンラン
conanrunner.bushimo.jp

【公式】オンエア!
@hoseki_gaoka
大型アップデート★スター声優育成アプリ「オンエア!」公式アカウントです。ここだけの最新情報を配信中! ハッシュタグは #オンエア お問い合わせはon-air@coly.infoまでよろしくお願いいたします。
on-air-coly.com

神酒ノ尊-ミキノミコト-【公式】毎週金曜よる7時 声酒かたり配信中とっくりとおちょこ
@mikinomikoto
#みきみこ 推しが飲める!五感で楽しむ日本酒キャラクタープロジェクト。動画配信を中心に様々な展開で日本酒を応援中!*「#声酒かたり」へのお便りはこちらから→http://bit.ly/3aNwrh2*酒販店の皆さまへ http://mikimiko.channel.or.jp/contactus.html
幻有界八宵町松宵庵mikimiko.channel.or.jp誕生日: 1月22日

イナズマイレブン SD 公式
@inazumaSD_L5
スマートフォン向けゲーム「イナズマイレブンSD」の公式Twitterアカウントです。「イナズマSD」の最新情報をお届けします!つぶやくときはハッシュタグ「#イナズマSD」をつけてね。
■公式サイト→http://inazuma.jp/sd/

【公式】星鳴エコーズ
@hoshinari_PR
2020年9月16日よりオフライン版を提供しております。詳細はこちらをご参照ください。→◆http://bit.ly/33bJ1TJ◆スマートフォンゲームアプリ『星鳴エコーズ』(ほしなりえこーず)公式Twitterです。※お問い合わせは、公式サイトよりお願いいたします。 #星鳴エコーズ #星エコ
星鳴学園hoshinari.jp

KOFクロニクル公式
@kofchronicle
「KOFクロニクル」公式アカウントです。
ゲームに関する最新情報やお知らせをツイートします。
※お問い合わせは公式サイト内「お問い合わせ」よりお願いいたします。
アプリDL: http://go.onelink.me/rs2L/57d01016
#KOFクロニクル
#KOFC
大阪 吹田市snk-corp.co.jp/official/kof-c…

人狼ゲーム デスゲームの運営人
@jinrogame_movie
CDディスク2/3DVD発売開始&携帯電話デジタル配信中! ?2/15~2/28@名古屋・大須シネマにて上映! オオカミの顔出演:小越勇輝、中島健、ウチクリ内倉、坂ノ上茜、桃果、山之内すず、三山凌輝、福崎那由他ほか 閉じた本原作:「人狼ゲーム デスゲームの運営人」川上亮著(竹書房文庫刊) 監督・脚本:川上亮
jinro-game-episode8.com

ぎゆ??*。゚
@rf_bq7
きゃす/ようつべ垢?? ??? ???*゚これこれさん応援してますメガホン2つのハート P-Pさん、土佐兄弟の有輝さん大好き?

奈良敬子

園田樹里

コレコレ@コレ恋Pマスクをした顔
@korekore19
事件や情報等のDM募集中!コレ恋というアイドルのPです。連絡先【korekore.tube@gmail.com】youtube【https://youtube.com/channel/UCgOfjIl0I_oG7VxIoaKaRsw?sub_confirmation=1…】
2/10 夕方、16時くらいから つべら で緊急生放送!youtube.com/channel/UCPHCh…誕生年: 1991年

阿刀田初音

園崎魅音

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