五十嵐響子「ただいまを聞いて、おかえりを言いたい」 (57)



モバマスの五十嵐響子ちゃんのSSです。


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# ただいまが聞こえて


響子(私、五十嵐響子にはいつも楽しみにしているお仕事があります)

響子(アイドルの仕事か……って? ぶっぶーです♪ それは、事務所での決まりきったやり取りのことなんです)

響子(あっ! 足音が聞こえてきました、もうそろそろかな?)

P「ただいま戻りましたー」

響子「プロデューサーさん、おかえりなさいっ!」

P「あぁ、響子か。お仕事どうだった?」

響子「ばっちりです♪」

P「それは良かった、ついていけなくてごめんな」

響子「いえいえ、プロデューサーさんは忙しいからしょうがないですよ!」

P「それでもなぁ」



響子「そ、そんなことより。コーヒー淹れるので待っててください」

P「悪いな、ありがとう」

響子「ふんふーん、ふーん♪」

響子「あっ」

響子「プロデューサーさん、砂糖とミルク、どうしますか?」

P「んー、砂糖一杯、ミルクちょこっとで」

響子「はーいっ」



響子「プロデューサーさん、おまたせしました!」

P「あぁ、ありがとな」

P「ふぅー、やっと一息つけるよ」

響子「えへへ。そう言ってもらえるとお世話のかいがありますっ」

P「響子はきっといいお嫁さんになるなぁ」

響子「もうっ。プロデューサーさん、他のみんなにもそういう事言ってませんか?」

P「やばっ」

響子「こーら、ダメでしょっ? めっです!」

P「あははっ」

響子「ふふっ」



響子(『ただいま』と『おかえり』)

響子(このやり取りに何か意味があるわけではありません)

響子(褒めてもらえるわけでも、何かもらえるわけでもない)

響子(でも、このちょっとした時間を独り占めできる)

響子(そして、何より、おかえりって言ったときのプロデューサーさんのほっとした顔が私は大好きです)



# 誰かの帰る場所


悠貴「おはようございますっ」

響子「悠貴ちゃん、おはよっ」

智絵里「響子ちゃん、おはようございます」

響子「おはようございますっ」

かな子「響子ちゃん、いろんな人に挨拶してるけど、もしかして朝からいるの?」

響子「はいっ。家にいてもお掃除したり、お料理したり、なんだかんだ動いちゃうので」

悠貴「オフなのに、響子さんすごいですっ」



ほたる「ただいま戻りました……」

響子「あっ、ほたるちゃん、おかえりなさい!」

響子「プロデューサーさんが打ち合わせするからちょっと待っててって」

ほたる「はい、響子さんもお疲れ様です」

かな子「こうやって見てると、ここって人の出入りが激しいよね」

智絵里「みんな、レッスンやらお仕事やらで、いろんな時間に出たり入ったりですからね……」

悠貴「そうすると、響子さんがなんだかみんなをつないでるみたいですねっ」

かな子「どういうこと?」

悠貴「えっと、みんなの顔を見て、挨拶して、伝えたいことをつなげて……」

悠貴「こうやって出迎えてくれる響子さんがつながりを回してるのかなって」

智絵里「わぁっ……それって素敵ですね」



かな子「響子ちゃん、すごいなぁ。なんでそんなに頑張れるんだろう?」

智絵里「うーん?」

悠貴「あっ、もしかして、プロデューサーさんが帰ってくるのを待ってるとかっ」

P「ただいま帰りました」

響子「!」

響子「プロデューサーさん、おかえりなさい♪」

かな子(すごい嬉しそうな顔してる)

智絵里(すてきな笑顔だなぁ)

悠貴(今日1番の笑顔ですねっ)



# 甘えてもらいたい


P「ただいま戻りました」

響子「おかえりなさい、プロデューサーさん」

P「響子もお疲れ様、今日はレッスン?」

響子「はいっ! トレーナーさんにもばっちりだって褒められちゃいました」

P「それは順調だな、今度はちゃんと見に行くよ」

響子「ありがとうございますっ。あの、それで、ですね」

P「ん?」

響子「えっと、Pさん、今お疲れですか?」

P「そうだなぁ、ちょっと寝不足かも……これから仮眠しようかなって思ってたところ」



響子「それはナイスタイミングです!」

P「えっと?」

響子「今の私は、お姉ちゃんモードなんですっ」

P「お姉ちゃんモード」

響子「はいっ。プロデューサーさんにお世話を焼きたくなっちゃうんです」

P「……」

響子「……」

P「誰にそそのかされたの?」

響子「み……通りすがりの猫ちゃんからアドバイスされました」



P「みくか……あとでお魚送りつけるか」

響子「違います、名無しの猫ちゃんなんですっ」

P「冗談だよ。それで?」

響子「こちらのソファーにちょっと座ってください!」

P「はいはい」

響子「そうしたら、目をつぶって力を抜いて、リラックスしてください」

P「ふむふむ」

響子「えいっ……えいっ。なんでプロデューサーさん、目開けてるんですか!」

P「そりゃ急に引っ張られたら目も開けますよ」



響子「私は膝枕してあげたいんです!」

P「やだ」

響子「どうしてですかっ。きっとぐっすり寝れますよ♪」

P「恥ずかしいです」

響子「まぁ、まぁ。そんなこと言わずに」

P「絵面がダメすぎるから、ほんとダメだから」

響子「あっ、隙ありですっ」

P「おわっ」

響子「ふふっ。Pさん、いつもお仕事お疲れ様です」

P「女の子に甘えるなんて、そんな……あっ、力抜ける」

響子「もう逃げられませんよ~。ゆっくり目閉じてみてください」

P「き、きょう……こ……Zzz」

響子「おやすみなさい、Pさん」

響子「私にだって、Pさんから甘えてもらいたいときがあるんですよ?」



# 甘えたりもしたい


P「ただいま」

響子「おかえりなさいっ」

P「……?」

響子「……」うづうづ

P「どしたの、響子? なんか待ってる?」

卯月「それは、」

美穂「わたしたちが説明しますっ」

P「卯月と美穂か……響子に何を吹き込んだんだ?」

卯月「今の響子ちゃんは、妹モードなんです!」

美穂「私達があらかじめいっぱい甘やかしておきました」



P「甘やかしておいたって……で?」

美穂「なので今度はプロデューサーさんの番です」

卯月「さぁ、響子ちゃんをたくさん甘やかしてあげてください!」

響子「……」うづうづ

P「えっと、甘やかすって言ってもなぁ……」

響子「……」

P「……」ジーッ

響子「……」プイッ

P「あ、目逸らした」

P「これはこれで楽しいな」



P「うーん……」

響子「……うづうづ」

P「漏れてる、漏れてる」

P「こんなことしかできないけど」

響子「あっ」

P「いつもお疲れ様。響子がいてくれるだけで助かってるよ」

響子「え、えへへ、頭ぽんぽんされるの好きですっ!」

卯月「やりました♪」

美穂「作戦成功だね、卯月ちゃん!」



P「はい、これでおしまい」

響子「あっ。もっと、やっても……いえ、なんでもないですっ」

P「ふたりきりの時にしてくれ……俺も恥ずかしいよ」

響子「あ、はいっ。また、お願いしますねっ♪」

P「それで、なんで急に妹モードに?」

美穂「響子ちゃんがぼそっと」

卯月「プロデューサーさんにも甘えてみちゃおうかな……って呟いてたので」

響子「あーっ、それは内緒だって言ったじゃないですかっ」

卯月「あっ」

美穂「あっ」

P「詰めが甘いピンクチェックスクールでした」



# たまにはふざけてみても


P「ただいまー」

響子「旦那様、おかえりなさいませ」

P「……」

響子「あれっ、この格好似合ってない……ですか?」

P「……似合ってる」

響子「えへへ、嬉しいですっ」

P「それで、なんで執事服なんだ?」

響子「由里子さんにお借りしました!」

P「ゆりゆりぃ!!!」

由里子「ひえっ、良かれと思ったんだじぇ~」

P「いい仕事するじゃねぇか!!」

由里子「さっすがPさん、わかってるね!」



響子「ん~、こういう服も新鮮でいいですねっ。かっこいい系というか」

P「響子はかわいい系が基本線だからなぁ」

響子「そうですよね!」

P「でも表情だけなら結構いけると思ってた。かっこいい響子もありだな」

響子「ふふっ。大切な人には、ドキッとする味もお届けです♪」

P「これはご家庭にもオススメできるな、セクシー路線と違って」

響子「もうっ、もうっ。あれは心の準備がいるというか、あの夜だけですっ」



P「そんな響子さんに……新しいお仕事が」

響子「はいっ、なんでもいけちゃいますよ! 料理のレパートリーと一緒ですからね♪」

P「またセクシー系なんだけど」

響子「……」

P「……」

響子「旦那様、その衣装はわたくしには過ぎたお仕事にございます」

P「もういれちゃった」テヘペロ

響子「私のご家庭での安心感がぁ~」



# 支えて、支えられて


響子(弱いけど雨降ってきちゃったな……Pさん、傘持ってないだろうし……)

響子(拭く用のタオル用意しておこっと)

P「……」

響子「あっ、Pさん。おか……ってびしょ濡れじゃないですか!」

P「っ! ただ、いま……」

響子「!」

響子「とりあえずそれで頭拭いちゃってくださいっ。ちょっとだけ待っててくださいね!」

P「……響子?」



響子「はい、あったかいはちみつレモン作ってきました♪ あったまりますよ~」

P「あ、あぁ。ありがとう」

響子「Pさん、まだ髪濡れてるじゃないですか! 私が拭いてあげますねっ」

P「ち、ちょっと――」

響子「……」ギュッ

P「き、響子?」

響子「何かあったんですか? Pさん」

P「……なんでもないよ」

響子「落ち込んでるんですよね、私分かりますっ」

P「それは……」

響子「大丈夫ですよ、大丈夫……」

響子「誰も笑ったりしませんよ、だから思い切り泣いちゃってもいいんですよ」

P「……お、女の子に……なでられるなんてな……」

響子「男の人だから泣いちゃダメだなんて、そんなことありません」

響子「悲しいことは私とはんぶんこしましょう!」



P「……くっ……ううっ」

響子「いつも私達のために頑張ってくれて、ありがとうございます」

P「……せっかく上手くいきそうだった、みんなの仕事がさ……」

響子「うん、うん」

P「……どっかのだれかの……身勝手な都合でなくなっちまったんだ……」

響子「私、いつもPさんに支えてもらってます。でも、二人三脚で頑張ろうって言ってたじゃないですか」

P「あぁ……ぐすっ」

響子「私だってPさんのこと支えてあげたいんです!」

響子「頼りない女の子かもしれませんけどっ、それは譲れません」



P「ぐすっ……みっともないところを見せたな……」

響子「みっともないなんて思っちゃ、だーめーでーすっ! つらい時は誰だってつらいんですよ」

P「はい、響子先生のおっしゃる通りです」

響子「ふふっ。よろしい、ですっ♪」

P「しかし、よく分かったな」

響子「それは……」

P「それは?」

響子「……笑いませんか?」

P「今更笑うことなんてないよ」

響子「Pさんの『ただいま』が変な感じだったので……」

P「ははっ」

響子「あっ、笑いましたねっ!」

P「いや、その、なんか嬉しくてな」

響子「嬉しい、ですか?」

P「そんなことも分かるくらい、こんなやり取りをしてきたんだなぁって」

響子「えへへ、確かにそうですね♪」

P「よーし、響子に元気も貰ったし、諦めずに頑張るかー!」

響子「はいっ。いつものPさん、おかえりなさいっ!」



# 肉じゃがのひと手間


P「ただいま」

響子「Pさん、おかえりなさい。お昼、食べてきちゃいましたか?」

P「いや、まだだな。お腹ぺこぺこだよ」

響子「やった♪ お弁当作ってきたのでどうぞっ」

P「15歳の担当アイドルに手作り弁当を差し入れさせるなんてな……」

響子「もうっ。せっかく作ってきたのに、いらないんですか?」

P「いります」

響子「素直で良い子です♪」



P「それで響子お手製弁当には何が入ってるんだ?」

響子「からあげとかウィンナーとか、あと私自慢の肉じゃがが入ってます」

P「ほー。肉じゃがって弁当箱に入れるの大変じゃないか?」

響子「よくぞ、聞いてくれましたっ!」

P「ほうほう」

響子「作るときに片栗粉を混ぜてとろみをつけたり、かつお節を下に敷いて汁を吸ったりしてるんですよ」

P「ひと手間、必要なんだな。大変だなぁ」

響子「でも、大事で、愛情のこもったひと手間だと思います! 食べる人のことを想う、というか」

P「そんなものがいただけるなんて、感謝の極み」



響子「はいっ」

P「あの……響子?」

響子「なんでしょう?」

P「届かないんだけど……」

響子「あの、あーんってやってみたくてですね」

P「ここで!?」

響子「やっぱり、気持ちこもってるので、肉じゃがかな?」

P「聞いて!?」

響子「どーれに、しよっかな~♪」

P「ダメだ、このモードになった響子には勝てない」



響子「それで?」

P「……肉じゃがで」

響子「ふふっ。Pさんってちょっぴり子どもっぽかったりします?」

P「そうかも……なんかおべんとって嬉しくてさ」

響子「はい、あ~ん♪」

P「あーん…もご、むぐ」

響子「お味はいかがですか?」

P「恥ずかしくて分かりません」

響子「……Pさん?」

P「うそうそ、とっても美味しいです」

響子「えへへ、あー、良かったぁ」



# おかえりの少し前



響子(レッスンも終わったし、おっそうじ、おっそうじ~♪)

響子「あなたにTiny Tiny♪ ちっちゃなHeart、キュッと詰め込んで♪」

響子「あっ、Pさんまた書類散らかしてっ」サッ

響子「今日はとっておき、ミラクルレシピ~♪」クルッ

琴歌「響子さん、どうしてあんなにご機嫌なのでしょう?」

星花「ふふっ、もうすぐ分かりますわ」



響子(ええっと、Pさんのスケジュールは……)

響子(うん、15時に帰社予定で間違い無しっ)

響子「よしっ、綺麗になった!」

響子(箒は片付けちゃって。あっ、今日は寒かったから……よーしっ♪)

響子(お湯を沸かして、コーヒー2杯に砂糖が1杯、ミルクちょこっと)

響子「あなただけの、ミラクルレシピ~♪」

琴歌「なんというか……」

星花「新妻ってきっとこんな感じなのでしょうね……」



響子「もうすぐ15時っ」

響子(Pさんの机の上よし、玄関よし)

響子(あっ、私!)

響子(髪は大丈夫、服はちょっと整えて、ネックレスの位置は直して……)

響子(にこっ! 笑顔よしっ。かわいい、かわいい)

パタパタパタ

響子(お出迎え、お出迎えっ♪)

「ただいまー」

響子「Pさん、おかえりなさいっ」



# ただいまの少し前


P(ふーっ、しんどかった……)

P(でも時間通りにきっちり会議が終わってくれると助かる、助かる)

P(この後は帰社して、事務仕事かー)

P(アイドルのみんなは……外のお仕事は誰も入ってない)

P「よし、ちょっと一服してから帰るかなぁ」

P(ん?……そういえばレッスン組は、琴歌と星花と……響子か)

P(……)

P(……いやいやいや、別に期待してるわけじゃない、わけじゃないけど)

P「……やっぱり直帰しよ」



P(帰ると、響子が出迎えてくれるようになったのはいつからだろう)

P(もちろん響子にも俺にも仕事があるから、いつもってわけじゃないけど……)

P(それでも遭遇率というか、出迎えてくれることの方が多いような気がする)

P(もしかして待っててくれてんのかな)

P(それは流石に甘えすぎじゃないかな……でも言っても聞かないしなぁ)

P(私がやりたいからやってるんですって言われると勝てない……響子は意外と押しが強い



P(それになにより……)

P「いつのまにかこの時間が楽しみになってる……ってか」

P(ドアを開けるといつも誰かがいる)

P(前は気にしたことなんてなかったけど)

P(帰りを待っててくれる人がいるって、出迎えてもらえるってすごく嬉しいことだ)

P(今日はどんな格好で、どんな服装で、どんな笑顔で迎えてくれるんだろう)

P(そんなことを考えながら、今日もこのドアノブを回す)

P「ただいまー」

「Pさん、おかえりなさいっ」



# つめたいもの


P「ただいま」

響子「おかえり、なさい」

P「!」

P「……」

響子「Pさん、顔が怖いですよっ。どう、したんですか?」

P「……」

響子「ひゃあっ。ぴ、Pさん、顔ちかっ」

P「……あっつ。響子、熱出してるじゃないか!」



響子「えへへ、ちょっと調子悪いかなーって思ってたんですけど、みん――」

P「無理は良くないっていつも言ってるだろ!!!」

響子「で、でも、たぶん微熱ですし、」

P「体調をおしてまで、こんなことしてちゃダメだ!!」

響子「~っ!」

響子「こんなことなんかじゃありません!! 私にとっては、私にとっては……」

響子「ぐすっ……Pさんなんかもう知りませんっ!」

P「あっ……やっちまった……」

P「……」

P「美世……すまん、車出して響子を寮まで送ってやってくれないか」

美世「いいけど、いいの?」

P「……頭冷やしてからにするよ」

美世「はーい。じゃあ、Pさん、お疲れ様。ちゃんと仲直りしなきゃダメだよ!」



P「はぁ~……」

美玲「なにあれ?」

志希「心配するあまりつい強く言ってしまって崩れ落ちるプロデューサーの図~」

P「そこ、やかましい!」

志希「にゃはは~、でも今のは乙女心が分からないプロデューサーが悪いよ~」

P「うぐっ」

美玲「志希! トドメを刺してどうすんだよっ!!」

P「そうだよな、どうせ俺なんか……」



P(朝飲みかけたコーヒーが残ったままだ)

P(響子がいてくれたら、あったかいコーヒーいれてくれたのかな……)

P(いやいや、体調管理はアイドルの基本。ちょっとしたものでも無視するなんて……)

P(それよりも、誰かに会える嬉しさの方が強かったのかなぁ)

P「つめたいな……コーヒー」



# あったかいもの


P「……」

響子「……」

裕美「ふたりとも黙ったまま動かないけど……大丈夫かな?」

あずき「あれっ、あずきの仲直り大作戦がっ」

P「……」

響子「……」

ピィィィィィィ

P「……ちょっと行ってくる」

響子「……」



コトン

P「これ」

響子「……あっ、カフェオレ……」

P「その……ごめん。あったかいものでも飲んでさ、落ち着こうぜ」

響子「ふふっ、Pさんがそれを言うんですか?」

P「悪かった」

響子「えへへ、私、これで強がれなくなっちゃうなんて、安上がりですね」

響子「体調管理をちゃんとしてなくてごめんなさい」

P「響子の気持ちも考えずにきついこと言ってごめんなさい」

裕美「わぁっ」

あずき「作戦大成功だね!」



P「はぁー、良かった……響子に嫌われたら生きていけないところだった」

響子「もうっ。おおげさですよっ」

P「今度からはもうちょっと響子の気持ちも考えていくよ」

響子「ありがとうございます……あの、」

P「ん?」

響子「その、仲直りのしるしにやって欲しいことがあるんです」

P「なんでも言ってくれ、悪いことしたって思ってるからな」

響子「『ただいま』って言ってくれませんか」

響子「私にとっては、お節介かもしれないけど、大切にしたいことなんです」

P「それだけでいいのか?」

響子「はいっ。大事な大事な、おまじないみたいなものですっ」

P「……」

響子「……」

P「ただいま、響子」

響子「えへへ。Pさん、おかえりなさい!」



# わたしの仕事


P「ただいま-」

響子「おか――」

千佳「Pくん、おかえりっ」

舞「プロデューサーさん、おかえりなさい」

桃華「Pちゃま、おかえりなさいませ」

小春「Pさん、おかえりなさい~」

P「おうおう、ちびーず揃ってどうした、どうした?」

千佳「あのね、あのね――」

響子「……むぅ」



杏「五十嵐響子、ちびっ子に嫉妬するの巻」

響子「うわぁっ、杏ちゃん、どこにいたんですか! というか嫉妬なんてしてませんっ」

杏「え~、でも、今私のPさんを盗られた~って目だったよ」

響子「そんなこと、そんなこと……ない、ですっ」

杏「おかえり係は響子ちゃんの仕事だったしねー」

響子「なんですか、その係! それに私だっていつもやってるわけじゃ……」

杏「あんなにみんなの前でいちゃついておいて?」

響子「いちゃついてないです! 普通のやり取りです!!」

杏「でもちょっとくらいは?」

響子「……あります」



P「あっ、いたいた」

響子「Pさん……」

P「響子、ただいま」

響子「え、あっ、はい。おかえりなさいっ」

P「なんかいつもやってるから、響子に言われないと落ち着かなくてな」

杏「ほらぁ~」

P「なにがほら~なんだよ」

杏「響子ちゃんを見れば分かるでしょ」

響子「えへへ、えへへ。やっぱり私のお仕事なんですねっ」



# 新婚ごっこ


P「ただいまー」

響子「……」

P「響子?」

響子「あなた、おかえりなさいっ。ご飯にしますか、お風呂にしますか、それとも…あ、あた…」

P「あた?」

響子「や、やっぱり無理です~っ」

P「あっ、ち、ちょっと……逃げちゃった」

レナ「まだまだうぶね、響子ちゃん」

P「レナさんの仕業ですか……あんまり響子で遊ばないでくださいね?」

レナ「あら、亜里沙と清良も一枚噛んでるわよ。それにP君だってまんざらでもなかったでしょ?」

P「そりゃ、あんな可愛い子に言われたら嬉しいですよ」

響子「はうっ」

レナ「妬けちゃうわね、Pさんはもし私がやってもドキドキしてくれる?」

P「もちろんです!」

響子「むぅ……」



響子「ありさ先生~」

亜里沙「よしよし、響子ちゃん。ウサコちゃんも応援してますよ~。ガンバレ、ガンバロー!」

清良「プロデューサーも癖になっちゃうような処置だと思ったんですけど……あんまり効果なかったかな?」

P「亜里沙さんも清良さんもほどほどでお願いしますね」

亜里沙「Pくんがもっと響子ちゃんを気にかけてあげなきゃ」

清良「そうですよ、プロデューサー」

P「うーん、自分的には結構甘やかしてるつもりなんですが」

レナ「逆じゃないの?」

P「それは否定できませんね」



P「例えば、お疲れ様って頭をぽんぽんすると顔がふにゃってなって、サイドテールが尻尾みたいに揺れるんですよね」

響子「……Pさん?」

P「おっと」

P「最近は髪にもいじらせてくれる――」

響子「Pさん!」ポカポカ

P「はははは、どすこい、どすこい」

響子「あっ、Pさん。ネクタイが曲がっていますよ」

P「えっ。いつからだろう、恥ずかしっ。こうか?」

響子「違います、私が代わりにやりますよっ」

P「すまんなぁ」

響子「はいっ……うん、格好良くなりましたよ♪」

P「響子に褒められると調子に乗っちゃうからやめて」

響子「じゃあ、もっと褒めちゃいますからねっ」

レナ(夫婦なんだよなぁ)

亜里沙(夫婦なんだよなぁ)

清良(夫婦なんだよなぁ)



# みんながきっと想ってる


P「ただいま」

響子「おかえりなさいっ♪」

P「今日の打ち合わせはしんどかった……緊張すると肩がこるな」

響子「あっ。じゃあ、肩もみしましょうか?」

P「申し訳ないけど、お願いしてもいい?」

響子「いいですよ♪ ぐりっと」

P「響子、痛い、痛い!」

響子「変な姿勢で固まってるPさんが悪いんですよっ」

P「あ゛ー……あ゛ー」



こずえ「……」

忍「こずえちゃん、どうしたの?」

こずえ「ねぇ、しのぶー」

こずえ「きょうこは……ぷろでゅーさーのよめ、なのー?」

響子「えっ」グリッ

P「ぐぇっ」

忍「それは、えっと、アタシには分からないかなー。Pさん、パスっ」

P「こっちに投げられても!」



こずえ「ぷろでゅーさーは……しあわせものー」

響子「ですって、Pさん♪」

P「なんで響子もそっち側なんだよっ」

こずえ「みんな、そう、いってるー」

響子「 」

P「みんなに言われるくらいだったか……」

響子「あわわわ、私にそんなつもりは、ちょっとお世話を焼いてるくらいで」

こずえ「はやく、くっつけーって」

響子「あぅぅぅ」

P「こずえ、そのへんにしといてやってくれ! 響子がオーバーヒートするっ」

こずえ「ぷろでゅーさーも……まっかー」

P「はぅわっ」



# おかえりを言いたい  


P(今日の会議は長引いたな……さすがにもう誰もいな…あれ、電気がついてる)

P(もしかして……)

P「おーい……やっぱりか」

響子「あっ。Pさん、お疲れ様です!」

P「こんな遅くまで待ってなくていいんだぞ?」

響子「えへへ、その、もう習慣になっちゃってるので」

P「まったく……ありがとな」

響子「はいっ。その……ちょっとお話したくて、ですね」



P「じゃあ、カフェオレでもいれようか」

響子「あっ。準備してあります!」

P「もう手慣れてるな」

響子「いつものやり取りですからね」

P「ふーっ、響子が淹れてくれるとちょうどいいなって思うよ」

響子「Pさんの好みはばっちり、ですっ」

P「ははっ。俺、響子に甘えてばかりで何もしてあげられてないんじゃないか」

響子「そんなことないです! Pさんは、なんていうのかな……」

響子「たまにお姉ちゃんを、アイドルを、やめたくなるときに帰ってこられる場所なんです」

響子「甘やかしてくれて、お世話してくれたりするのはPさんだけですよっ」

P「それなら良かった……なんか、いつもと逆だな」



響子「逆、ですか?」

P「いつもは俺が帰ってきて、響子に出迎えてもらうだろ?」

響子「はいっ」

P「そう言われるとさ、お互いの心に帰ってきてるんだなって」

響子「えへへ、そう、そうですよね」

P「……」

響子「……」

響子「あの、聞きたいこと、というか、聞いてほしいことがあって」

P「……ん」

響子「その、Pさんは事務所のみんなが……くっつけーって言ってること、どう思ってます、か?」

P「それは……」



響子「私、Pさんにアイドルにしてもらって、とっても幸せです」

響子「だから、私の1番大切な人が誰なのか分かってもらえたらなって思って」

響子「そんな打算的な気持ちもちょっぴりあって、ずっとお世話を焼いちゃってたんです」

P「……うん」

響子「Pさんとただいま、おかえりってやり取りするの、すごくあったかくて優しくて」

響子「ケンカしちゃった日もありましたけど、たくさんの幸せの日がそれを忘れさせちゃうくらい」

P「そんなこともあったなぁ」

響子「はい。小さい頃から、私の将来の夢はお嫁さんになること、でした」

響子「でも、今はアイドルだから、Pさんのくれるお仕事に夢中だから」

P「……」

響子「本物のお嫁さんになれるのは、まだまだ先です、よね」

響子「今はこれからもPさんと一緒に、こんなやり取りができたらいいなって」

響子「私もいつだってPさんの帰ってこられる場所になりたいんです。おかえりなさいってあなたに言いたいんです」

P「……」

響子「どう、ですかっ?」



P「正直……好きだって、付き合ってくれって言われるかなって思ってた」

P「響子は、俺が思っているよりずっとずっと偉いな。こんな良い子にそんなこと言ってもらえるなんて」

響子「えへへ、でも……」

P「でも?」

響子「お仕事に夢中になりすぎて、いき遅れちゃったりしたら……責任取ってくれるんでしょうか?」

P「……」

響子「なぁんて♪ 困っちゃいますよね、」

ちゅっ

響子「あ、あれっ。い、今……」

P「今はほっぺたで我慢な」

響子「え、えっと、は、はいっ」

P「あれだけ一緒にいるとさ、惚れるよ、そりゃ」

響子「……」

P「今は、これからも一緒に、ってことしか誓えないけど……」

P「それでも自分のすべてをかけて誓うよ」

響子「えへへ、それで十分ですっ」



響子「はいっ」

P「その手は?」

響子「Pさんも、もう分かってるんじゃないですか?」

P「……そうだな、いつもどおりだな」

響子「はいっ、いつもどおりですよっ♪」

P「……」

響子「……えへへ」

P「ただいま」

響子「おかえりなさい、Pさんっ」



おしまい。
ただいま、おかえりの何気ない日常のやり取りが好きです。
響子ちゃんはかわええなぁ。


前に書いたの。
喜多見柚「アタシにとっての奇蹟」
喜多見柚「アタシにとっての奇蹟」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1514102608/)

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