角谷杏「西住ちゃーん、サンタクロースあてに手紙書いた?」西住みほ「はい?」 (106)

大洗女子学園 生徒会室

桃「これで完成だな」

柚子「お疲れさまー、桃ちゃん」

杏「12月だけど、サマーってことだねぇ。座布団いちまぁい」

桃「何も言っていません」

華「生徒会室がクリスマス仕様になりましたね」

杏「これだけは譲れないからなぁ」

沙織「広報としてクリスマスも何か活動したほうがいいですか?」

桃「今年までは会長……いや、元会長の杏に任せてあげてほしい」

杏「いやぁ、わるいねぇ」

沙織「いえいえ、そんな。もう好きにしちゃってください」

優花里「今年は何をするんですか?」

麻子「ケーキ食べたい」

杏「まぁまぁ、それはあとで、だ。それよりも、西住ちゃーん、サンタクロースあてに手紙書いた?」

みほ「はい? いえ、まだですけど」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1514108196

杏「ありゃ、そうなの。なら急いで書いてねぇ。締め切り迫ってるし」

みほ「えっと、書けばサンタクロースがプレゼントしてくれるんですか?」

杏「そだよ」

みほ「あ、角谷先輩がプレゼントを配るんですか?」

杏「ん? なんで私が?」

みほ「え?」

杏「プレゼントを配るのはサンタクロースじゃん」

みほ「ええと、そのサンタクロース役が誰かって――」

桃「柚子!!」

柚子「うんっ!」ダダッ

みほ「わぁ!?」ササッ

柚子「避けられた!? だれかー!!」

沙織「みぽりん!! ごめん!!」

華「そのお口を封じさせていただきます!!」

みほ「えぇー!? むぐぅ!?」

優花里「か、角谷殿! サンタクロースにはどんなお願い事をされたのですか?」

杏「それは内緒。サンタさんへの手紙は秘密にしないとダメだからなぁ」

優花里「あぁー、そうですよね。うっかりしていました」

杏「秋山ちゃんももらえなくなったら困るでしょ」

優花里「困りますねー」

麻子「……」


みほ「あ、あの、一体なにを……」

桃「西住。お前はサンタクロースの存在を信じていないのか」

みほ「はい? いないと思いますけど」

柚子「西住さんは信じていないんだね。でもね、いるの」

みほ「いないと思うんですけど……」

桃「お前だって朝起きたときに枕元にプレゼントがあったりしただろう」

みほ「いえ、一度もありませんでした」

沙織「うっ……みぽりん……」

華「お気の毒に……」

みほ「深夜にお母さんかお姉ちゃんがこっそり部屋に入ってきてプレゼントを置いていったことはありましたけど、気が付いたらそこにあったことはないです」

柚子「西住さん……」

桃「もういい、西住。ともかくだ、杏の中ではサンタクロースは存在していることになっている」

沙織「うんうん」

華「わたくしたちも去年の大洗クリスマスパーティー時に知ったのですが……」

みほ「学園のみんなが角谷先輩はサンタを信じていることを知ってるの?」

桃「当たり前だ。むしろ知っておいてもらわなくては困る」

沙織「この時期はみんなピリピリしてるもんね」

華「サンタクロースの存在について、角谷先輩の耳だけには入らないようにしなければなりませんから仕方ありませんわ」

みほ「た、大変なんだね」

桃「西住は転校生だから知らせるタイミングがなかったな」

柚子「うん。そういうわけだから、西住さん。協力して欲しいの。杏の純心を守るために」

みほ「わ、わかりました」


杏「サンタさん、いつごろくるかねぇ」

優花里「やっぱり深夜でしょうねー」

麻子「サンタさんか……」

杏「冷泉ちゃんも手紙書かないと、プレゼントもらえないよぉ」

麻子「私はいい。願っても、もう戻ってこない」

杏「うん?」

麻子「私が欲しいのは、戻ってこないものだ」

沙織「麻子っ」

麻子「すまん。この時期はつい言いたくなる」

沙織「分かってる。分かってるけど、言うのは私だけにしてっていつも言ってるでしょ」

麻子「……」

優花里「冷泉殿、思うところがあるんでしょうね」

華「事情が事情、ですから」

杏「サンタさんなら大抵のモノはプレゼントしてくれるはずだけど、冷泉ちゃんが欲しいモノはどうしても無理ってわけか」

麻子「無理だな」

杏「そっか……」

みほ「あのー、お手紙はどれに書けば……?」

杏「これだよー、西住ちゃん。ほい」

みほ「ありがとうございます」

杏「誰にも見られないように書かなきゃダメだからなぁ」

みほ「はい。注意します」

麻子「今日は、帰っていいか?」

沙織「私も一緒に帰るわよ。ごめん、みんな。また明日ね」

優花里「はいっ。お疲れさまでした」

華「ごきげんよう」

麻子「……すまん、沙織」

沙織「いいの。今日は、私の家にくる?」

麻子「……うん」

優花里「冷泉殿、少し心配ですね」

華「沙織さんがいるので大丈夫ですわ」

杏「……」

みほ「ええと……うーんと……やっぱり、ボコのクリスマス限定バージョンがほしい……です……っと」カキカキ

桃「書けたらこちらで預かる」

みほ「よろしくお願いします」

柚子「それじゃあ今日はもう終わりましょう」

華「はい。では、整理をしてから戸締りいたしますので、先輩方はお先にどうぞ」

桃「悪いな。では、行こう」

柚子「うん」

杏「んー」

柚子「杏ー、かえろー」

杏「ほーい。んじゃねぇ」

優花里「はい!!」

みほ「はぁ……。角谷先輩、サンタクロースのこと信じてるんだぁ。少し意外かも」

華「きっと大切に育てられてきたのでしょうね」

優花里「角谷殿のご両親がとても気になりますよねぇ」

みほ「でも、誰も教えなかったってありえるのかなぁ」

華「実家ではご両親が、学園艦内では小山先輩と河嶋先輩がサンタクロースについてはずっと秘匿されていたのではないでしょうか」

廊下

柚子「今年は新生徒会と旧生徒会、それから戦車道受講者メンバーとならクリスマス会できそうだね」

桃「ああ。予算的に大洗全域でのクリスマスパーティーはできないからな」

柚子「今年の予算、殆ど戦車道で使っちゃったもんねぇ」

杏「こやまぁ、かわしまぁ」

桃「はい」

柚子「なぁに?」

杏「ちょっと調べてほしいことがあるんだけど」

桃「なんでも言ってください」

杏「んじゃ、お願いしちゃおっかなぁ」

柚子「それで何を調べればいいの?」

杏「サンタクロースの存在を信じていない生徒が大洗に何人くらいいるのか」

桃「は……?」

柚子「それは……」

杏「よろしくぅ」

柚子「ちょっとまって、杏――」

桃「行ってしまった……」

柚子「桃ちゃん……どうしよう……」

桃「言われたからには調査するしかないが……」

柚子「けど、サンタクロースを信じさせ続けてほしいっていうのが杏のご両親から唯一お願いされていたことなのに」

桃「分かっている!!」

柚子「もし、サンタクロースはいないって結論に行き付いたら……」

桃「信じてきた年数が年数だからな。杏のショックは計り知れないぞ」

柚子「ど、どうするのぉ?」

桃「決まっている。アンケート時に元・会長直々のアンケートだと告げればいい。そうすれば多くの者は察するはずだ」

柚子「それって一種の情報操作じゃあ……」

桃「やるしかないだろ!」

柚子「うぅん……」

桃「私は寮に戻ってアンケート用紙を作成する」

柚子「私は生徒会のホームページにアンケートコーナーを作ろうかなぁ」

通学路

麻子「悪いな」

沙織「いいって」

麻子「……沙織は信じていたのか?」

沙織「まぁ、10歳ぐらいまではね」

麻子「そうか。どうして気が付いたんだ?」

沙織「うちのリビングでサンタクロースがお母さんと仲良くしているのをみちゃって」

麻子「そうか……」

沙織「うん……」

麻子「角谷さんにはサンタはいないと告げたほうがいいのかもしれないな」

沙織「よくないわよ!!」

麻子「大学生になっても社会人になってもサンタクロースの存在を信じ続けていれば、いつか悲しい目にあうと思うが」

沙織「そりゃあ、そうかもしれないけどさぁ」

麻子「夢を見続けるのも、辛いことだ」

沙織「麻子……。今日は麻子の好きな物つくってあげるっ。なんでもいってよ」

みほの部屋

みほ「サンタクロースかぁ……」

みほ「そもそも信じたことすらなかったから、角谷先輩の気持ちがよくわからないけど……」

ピロリンッ

みほ「メール……? 誰からだろう」ピッ

ケイ:イヤッホー!! ミホー!! 元気してるー? え? してるの!? それはよかったわ!!

みほ「ケイさんからだ」

ケイ:クリスマスイヴとクリスマス、私の家でホームパーティーしようと思ってるの! まあ、ホームパーティーは毎週してるんだけどね(スマイル)

ケイ:クリスマス、私の家にこない?

みほ「……」ピッ

みほ:すみません。クリスマスは大洗でもパーティーがあって、私はそれに参加しようと思っています。

ケイ:そっかー。それなら仕方ないわね。ソーリー、ミホー。また連絡するわ

みほ「悪いことしちゃったな……」

みほ「ケイさんってどんなパーティーするんだろう……ちょっと見てみたい気も……」

みほ「やっぱりアメリカっぽいのかな?」

翌日 大洗女子学園

みどり子「はい、これ」ペラッ

カエサル「これは……」

エルヴィン「元会長角谷杏発案、緊急アンケート。あなたはサンタクロースを信じていますか?」

おりょう「いきなりぜよ」

左衛門佐「ふむ。して、なんと答えるのが正解なんだ?」

みどり子「よく考えなさい。元・会長が発案しているんだから」

カエサル「それでは答えは決まっているようなものではないか」

エルヴィン「箝口令ということか」

おりょう「大洗の闇は深いぜよ」

左衛門佐「伊達家のようだ」

カエサル「中世ヨーロッパでは古代ローマの文化が著しく低下した暗黒時代というのもあったな。あれも闇が深い」

おりょう「闇の深さでいえば江藤新平」

エルヴィン「ふっ。闇の深さならば、ドイツ軍――」

左衛門佐・カエサル・おりょう「「やめろ!!」」

エルヴィン「最後まで言わせてくれてもいいだろう……」

カエサル「直接聞くに聞けなかったが、やはり会長がサンタを信仰しているのは事実なのか」

みどり子「そーよ。いつもこの時期はワクワクしてるわね」

おりょう「ほっこりするぜよ」

みどり子「傍から見ている分にはいいんだけど、近くにいる人ほど気が機じゃないんだから」

左衛門佐「確かに。何気ない一言で角谷先輩が落ち武者と化すこともあり得るわけか」

桂利奈「ねえねえ、優季ちゃんはサンタさんに何お願いするのー?」

優季「えぇ~? サンタクロースじゃなくてお父さんにお願いするけどぉ?」

桂利奈「え……」

優季「どうしたの、桂利奈ちゃぁん?」

桂利奈「……」

あゆみ「桂利奈?」

梓「まさか……桂利奈……」

あや「あーあ」

エルヴィン「なるほど、危険だな」

戦車倉庫内

桂利奈「あぁぁ……」

紗希「……」ナデナデ


沙織「桂利奈ちゃん、放心しちゃってるけど、どうしたの?」

優季「私がわるいんですぅ」

梓「桂利奈、サンタを信じていたんですけど優季の一言で……」

沙織「えぇ!?」

みほ「信じてた人が真実を知るとああなるんだ」

華「痛々しいですわ」

優花里「うぅ……まさか、ここで脱落者がでてしまうとは……」

麻子「ダメージが計り知れないな」

優季「どうしよぉ……」

あゆみ「桂利奈も大人になれたってことでいいんじゃない?」

優季「かりなちゃぁん、ごめんねぇ……」

みほ「気を付けないと」

ねこにゃー「アンケートにはなんて答えた?」

ももがー「信じてるにマルしておいたぞな」

ぴよたん「そのほうが無難だしぃ」

ねこにゃー「じゃあ、ボクも……」

ナカジマ「うーん。サンタクロースかぁ」

ホシノ「私はいると思ってる派」

スズキ「意外だなぁ。ホシノってそういうの信じるんだ」

ホシノ「否定するよりはいいかなって」

ツチヤ「確かにいてくれたら、いいよなぁ。それじゃあ私もいるにマルしとこっと」

ナカジマ「そういう意味で信じてるってのはいいかもねぇ」

スズキ「ホシノは宇宙人も信じてる派?」

ホシノ「宇宙人はいないんじゃない? あれは未来人だと思うけど」

お銀「サンタクロースぅ? ふん、愚問だ」

カトラス「信じてるの?」

お銀「いるに決まっている!! 大洗にきてからいつも枕元にプレゼントがあるからね!! 会ったことないけど」

モヨ子「船底ではクリスマスになるとよく生徒会の広報をみたと報告があったような」

希美「それね」

みどり子「河嶋さんは苦労してるのよね」

お銀「少なくとも大洗の学園艦にはサンタクロースは住んでいる」

みほ「そうですか」

優花里「河嶋殿、立派でありますな」

華「がんばってくださいね、沙織さん」

沙織「わたしがあの人たちにプレゼント配らないといけないのー!?」

麻子「サメさんチームの純心を守れ、沙織」

沙織「やだもー……」

お銀「去年はマフラーだったから、今年は手袋に期待したい」

沙織「分かりやすくていいけどさぁ」

桂利奈「サンタクロース……いるのかな……いないのかな……」

紗希「それは、自分次第」

桂利奈「どういう意味?」

華「戦車道受講者のみなさんは信じるにマルをつけたようですわ」

優花里「わざわざ真実を語るまでもありませんからね」

麻子「いいのか……」

沙織「いいんだって、これで」

麻子「まぁ、私は文句をいう立場でもないが」

みほ「学園の生徒も殆ど信じるにマルをつけてくれるよね、きっと」

華「角谷先輩の人望次第でしょうけど」

麻子「めちゃくちゃな人ではあるが、今でも人気があるし、その点の心配は必要ないだろうな」

みほ「そうだよね」

優花里「しかし、アンケートをとった意図がわかりませんよね」

みほ「麻子さんの発言で少しだけ疑ったのかな」

麻子「……私の所為か?」

沙織「けど、これで信じてる人が多数派ってことで解決するんじゃない」

華「ええ。そうなるでしょうね」

麻子「……」

生徒会室

華「では、結果発表をいたします」

杏「よっ。待ってましたぁ」

華「河嶋先輩、お願いいたします」

桃「ああ。サンタクロースの存在を信じている者、99%。分からないと回答した者が1%だけいました」

柚子「つまり……」

桃「サンタクロースはいる、それが世論の答えということになる」

柚子「やったね、杏!」

杏「……」

沙織「どうかしたんですか?」

杏「小山がつくった生徒会のホームページ上にあるアンケート結果も込み?」

柚子「もちろんっ」

杏「てことは、大洗の学園艦にだけいるってことになるね」

みほ「え?」

杏「河嶋と小山にはここでの調査を頼んだから、私は他の地域ではどうなのか調べてみたんだ」

柚子「ど、どうして!?」

杏「大洗とこの学園艦だけだと信憑性が得られないと思ったからねぇ」

桃「あぁ……もうおしまいだぁ……」

優花里「角谷殿は行動力ありますもんね」

麻子「負けたな」

みほ「どう調べたんですか」

杏「知り合いに電話をしただけー。ダージリン、ケイ、チョビ、カチューシャ、逸見ちゃん、西ちゃん、あとミカ」

みほ「な……」

沙織「そ、その人たちはなんて言ってたんですか?」

杏「ええと――」

ダージリン『サンタクロース? 生憎と見たことのない人物を信じる気にはなれないの。こんな格言を知ってる? 真実は特定の時などない。真実はどんな時代にも真実である』

ケイ『……いるわね。めちゃくちゃいるわよ』

アンチョビ『ハッハッハッハ!! 今年は私がサンタクロース役をすることになっている!!』

カチューシャ『はぁ? 居るに決まってるじゃない。バッカじゃないの?』

エリカ『いるわけないでしょ?』

絹代『さんたくろーすとはいかなる存在なのでしょうか!!』

ミカ『さぁて、どうだろうね。サンタクロースの存在なんて無価値なものだから、気にしてないかな』

杏「――ってところだ」

みほ「はい!」

桃「なんだ、西住」

みほ「サンダースとプラウダにはいるかもしれません」

杏「その可能性はあるなぁ」

みほ「だったら、いるってことでいいんじゃあ……」

杏「けど、三か所にだけサンタクロースがいるってのも、変な話じゃない? サンタは世界中を飛び回っているはずなのにさ」

みほ「うっ……」

優花里「はい!」

桃「秋山」

優花里「サンタクロースは良い子にしている場所にしか来ないといいます。つまり、ケイ殿とカチューシャ殿は良い子である証明になるのではないでしょうか!!」

杏「今はサンタクロースの存在についてが問題なんだよねぇ。ケイとカチューシャが良い子だってのは調べなくてもわかってるし」

優花里「ぐっ……」

麻子「はい」

桃「冷泉っ」

麻子「まあ、あれだ、私みたいな人間が他にもいたというだけだ」

杏「……」

麻子「うぅ……なんて悲しそうな目だ……」

沙織「はいはいはい!!」

桃「武部!!」

沙織「信じないとサンタクロースは来ないと思います!!」

杏「そうだな……」

沙織「あぁ……」

華「はい」

桃「五十鈴……頼むぞ……! 現生徒会長……!! 起死回生の一言を……!!」

華「――サンタクロースは、います。いるはずです。ですから、今年のクリスマス会はみなさんで徹夜をしましょう。夜通し起きていればサンタクロースも目撃できるはずです。だって、いるのですから」

柚子「えぇ!?」

杏「やっぱりそれしかないよな。でも、夜更かししている子のところには絶対に来ないって言われて育ってきたからねぇ。それをしても目撃はできないんじゃない?」

華「角谷先輩へのプレゼントは諦めるとして、他の人宛のプレゼントを配る場面ならみることができるかもしれません」

杏「ああ、いいねぇ」

麻子「監視カメラで捉えることはできないのか」

沙織「サンタは鏡にもカメラにも絶対に映らないんだよ」

みほ「そんな設定あるんだ。吸血鬼みたい」

杏「んじゃ、徹夜でクリスマス会、やろっか」

華「はい!」

桃「で、プレゼントを受け取る者は誰にするつもりだ」

華「無論、純粋にサンタクロースを信じている人でなければいけません」

柚子「戦車道受講者の中に、いたかなぁ」

麻子「いるな。チーム単位で」

桃「誰だ?」

沙織「サメさんチームの人たちです」

桃「あいつらか……。よし、頼んでみよう」

みほ「いえ、頼む必要はありません。その日、早めに就寝してもらうだけでいいはずです」

桃「それもそうか。では、そのように事を運ぶか」

みほ「はい」

杏「なんの相談?」

優花里「いえ、配られる場面を見るためには誰か適任かと思いまして」

桃「サメさんチームの面々が最適かと」

杏「あと、冷泉ちゃんもアリじゃない?」

麻子「え……」

杏「にひぃ。何を驚いてるの?」

麻子「言ったはずだ。私の欲しいものはもう手に入らない」

杏「サンタクロースの存在は信じてる?」

麻子「……」

杏「冷泉ちゃんが書いたアンケートには信じるにマルがついてるけど」

みほ「麻子さんは……」

杏「西住ちゃんは黙ってて」

麻子「……信じている、一応」

杏「ならいいじゃん。当日、冷泉ちゃんとサメさんチームにプレゼントが配られる瞬間をこの目でみないとねぇ」

麻子「むぅ……」

杏「たのしみだねぇ」

みほ「よかったの、麻子さん?」

麻子「信じていないとはいえない」

沙織「そうだけどさ」

麻子「それに……」

みほ「はい?」

麻子「角谷さんが本当にサンタクロースを信じようとしているのかも、気になる」

優花里「まさか、実はもう存在については諦めているとか?」

華「それは悲しすぎます」

麻子「それか、元々信じてなんていなかったのか」

沙織「信じてなかったってことはないんじゃない? 河嶋先輩も小山先輩も必死に隠してきたところだし」

麻子「どうだろうな」

みほ「うーん……」

戦車倉庫内

ナカジマ「徹夜でクリスマスパーティーですか」

あや「たのしそー!!」

優季「わぁい、じょしかぁい」

桂利奈「でも、サンタさんはいない」

あゆみ「桂利奈、ちょっと休んでよう」ギュッ

桂利奈「うぅ……」

優季「ごめんねぇ……」

みほ「あの!! 桂利奈さん!!」

桂利奈「はぁい……?」

みほ「当日はサンタクロースをみるためのイベントでもあるの。桂利奈さんは見たいですか? それともプレゼントを受け取りたいですか?」

桂利奈「え……」

みほ「プレゼントを受け取るなら、サンタクロースを肉眼で確認することは叶いません。けれど、起きていれば見ることもできます」

みほ「サンタクロースはいますから」

お銀「サンタクロースを見たい? 酔狂なことをするみたいだねぇ。エドワード・ロー船長みたいじゃないか。ロー船長について詳しく調べたわけじゃないけどね」

カトラス「見ていいものじゃないはず」

ラム「親分、サンタを信じてないやつらのことなんてほっときましょうよぉ」

ムラカミ「ふん。罪深い女だ」

フリント「まっかなおっはなのぉ~トナカイさんはぁ~いっつもみんなのぉ~わらいものぉ~」

フリント「――今のあなたのように」

みほ「えぇ……」

お銀「まぁ、トナカイはその短所をサンタさんに長所だと褒められるわけだけどね。そんな聖人の仕事をのぞき見するなんて、アンタ、隊長の風上にも置けないね」

みほ「すみません……」

桃「お前たちは寝ていて構わない」

お銀「そうさせてもらいます。桃さん」

桃「阪口はどうする?」

桂利奈「……寝ます!!」

優季「いいのぉ?」

桂利奈「サンタさんをみるより、サンタさんからのプレゼントが何か楽しみだから」

優花里「ちゃんとサンタさんにお願いはしたの?」

桂利奈「しました! でも、それ以外でもいいんです!」

優花里「なんでもいいってこと?」

桂利奈「あいっ!!」

梓「桂利奈……」

優季「すごい罪悪感だよぉ……」

華「桂利奈さんの心も守りましょう」

麻子「プレゼントを置くだけで大丈夫そうだが」

みほ「麻子さん」

麻子「なんだ」

みほ「麻子さんも寝る側ですから、その……」

麻子「朝起きたときに枕元にプレゼントがあれば、サンタクロースはいる。そういうことか」

みほ「そうなります……」

麻子「これを渡しておこう」ペラッ

みほ「これは?」

麻子「サンタクロースへの手紙だ。一応、書いてみた。多分、叶うことのないプレゼントだろうがな」

沙織「ちょっと、麻子」

麻子「サンタクロースなら、プレゼントしてくれるはずだ」

沙織「いい加減に……」

みほ「沙織さん。いいから」

沙織「いや、けどさ、きっと書いたのは……その……」

みほ「家族……だったりするのかな……」

沙織「小学生のとき、ずっと言ってたの。今年こそはサンタクロースにお母さんとお父さんを連れてきてもらうんだって」

華「……」

優花里「それは……」

沙織「だから、麻子はここにいる誰よりもサンタクロースの存在は信じていないと思うし、むしろ嫌いなんじゃないかな」

みほ「そっか」

優花里「どうするでありますか」

みほ「……私、サンタクロースを信じたことがないから、信じている人の気持ちは絶対に分からない。けど、もう桂利奈さんみたいな犠牲者は出したくないから、がんばります」

梓「犠牲者扱いはやめてあげてください!」

あや「でも、まあ、犠牲者じゃん?」

生徒会室

優花里「クリスマス会当日に、何かを仕掛けるのですね」

みほ「それしかありせん。桂利奈さんとサメさんチームの皆さんはプレゼントさえあれば信じてくれると思います」

みほ「問題は麻子さんと配る瞬間を見る角谷先輩ということになります」

華「麻子さんはきっと夜通し起きていると思ったほうがよさそうですね」

沙織「そうだよねぇ。夜だけは強いから」

優花里「その日はたっぷりとお昼寝をしてきそうです」

みほ「それどころか、1800時に寝てしまう可能性もあります」

沙織「そんな中途半端な時間に寝たら……!!」

みほ「サメさんチームが就寝する前に起床する可能性もあります」

優花里「サメさんチームの人たちも18時に寝てくれないでしょうか」

沙織「どっちかというとすっごい夜型だと思うんだけど」

華「それにプレゼントは0時から4時の間に配られるという設定もあるみたいですわ」

みほ「そんな設定もあるの!?」

桃「おい!! 設定というのはいい加減やめろ!!」

柚子「サンタクロースの設定はいいとして」

桃「柚子までいうのか!?」

柚子「杏は今、半信半疑なのかどうなのかも気になるよね」

みほ「はい。私もそこが気になっています」

桃「何が問題なんだ?」

柚子「例えばサンタクロースの存在を完全に信じてない状態だとしたら、当日にプレゼントを配るシーンを見せても意味がないというか……」

みほ「むしろ、その場で取り押さえようとして大騒ぎなるかもしれません」

優花里「それはまずいです! サメさんチームがそこで目を覚ますようなことがあれば……!!」

華「最悪の展開ですね」

沙織「そこには桂利奈ちゃんだっているんだよぉ?」

柚子「トラウマ確定よねぇ」

桃「では、どうするんだ」

みほ「最良の手段は、サンタクロース役にその日、絶対に大洗にはいないであろう人物を用意する」

優花里「そのような人が存在するのですか」

みほ「心当たりは数名います」

みほ「――というわけなんだけど」

エリカ『それでわざわざ電話を? 久々に貴方からの着信があったと思えば……』

みほ「どう、かな?」

エリカ『そうね。では、答えを言うわ』

みほ「逸見さん……!」

エリカ『――ふざけないで!!! その日も練習があるのよ!! こっちは!!!』

ブツリッ

みほ「……」

優花里「ダメだったみたいですね」

華「確かに逸見さんならありえないですけど」

沙織「エリりんは無理だよねー」

みほ「はぁ……もう……手立てが……」

桃「それだけだったのか!! いつものように多種多用な戦術をみせてくれ!!」

みほ「でも、戦車道じゃないですし……」

桃「これでは杏は……杏はどうなるんだ……」

>>31
華「確かに逸見さんならありえないですけど」

華「確かに逸見さんならその日に大洗にいることはありえないですけど」

通学路

麻子(今頃、沙織たちは会議をしているのか……)

麻子「どうでもいいか」

杏「冷泉ちゃぁん」

麻子「角谷さん……? この通学路だったか?」

杏「いやぁ、冷泉ちゃんに会いたくてね」

麻子「何のつもりだ」

杏「とりあえず、干し芋でも食べる?」

麻子「用件を言って欲しい」

杏「クリスマス当日だけどさぁ、ちょっと協力してくれない?」

麻子「なに……」

杏「冷泉ちゃん、サンタクロースの存在は否定してるんでしょ?」

麻子「……まさか、貴方もなのか」

杏「私はまだ信じたい。今までのプレゼントが全部、親からのものだった、河嶋や小山からのものだったとは思いたくないからな。全部、サンタさんがくれたんだって信じたいんだ」

麻子「何をしたらいいんだ?」

杏「起きててほしい」

麻子「最初からそのつもりだ」

杏「あと、サンタが近くにきたら取り押さえて正体を暴いてみてよ」

麻子「……そこまでしようとは思ってなかったな」

杏「それぐらいやらないとねぇ」

麻子「しかし、本物のサンタクロースならその場に来ないはずだ。夜更かしする子にはプレゼントを渡さないみたいだからな」

杏「なるほどね。つまり、起きている冷泉ちゃんにプレゼント渡そうとした段階で、サンタクロースは偽物ってわけだ」

麻子「そういうことだな」

杏「頭いいねぇ、さっすが冷泉ちゃん」

麻子「褒めているのか」

杏「けど、それだけじゃ足りない」

麻子「は?」

杏「当日、冷泉ちゃんの傍にはサメさんチームも阪口ちゃんもいるんだから」

麻子「まさか……」

杏「偽物なら、きちんと教えてあげないといけないいけないからねぇ」

>>34
杏「偽物なら、きちんと教えてあげないといけないいけないからねぇ」

杏「偽物なら、きちんと教えてあげないといけないからねぇ」

当日 大洗女子学園 生徒会室

「「メリークリスマース!!!」」

ドォォォン!!!

あや「きゃぁ!?」

優季「なになにぃ?」

沙織「なんで砲音が!?」

みほ「今、優花里さんがⅣ号で空砲を撃ったみたい。グラウンドにⅣ号が出てきてるよ」

みどり子「クラッカー代わりにしないでよ!?」

杏「いいじゃん、派手で」

みどり子「もう!!」

典子「私たちも負けていられないぞ!!」

あけび「ついにあの一発芸をみせるとき!!」

忍「スパイクで遠くにあるクラッカーにボールを当てて、見事鳴らせたら拍手を!」

妙子「では、いきます!! そーれっ」

みどり子「危ないからやめなさーい!!!」

お銀「随分と生温いことをやってるね、アヒルたちは」

典子「なに……!?」

お銀「祝い事はこうして酒瓶をもって、叩き付けるもんだろうに」

典子「そうなんですか!? オレンジジュースの瓶でもいいんでしょうか!?」

みほ「それは進水式の儀式じゃあ……」

優花里「みなさーん、先ほどの空砲、聞こえましたかー?」

あや「バッチリでーす!」

あゆみ「震えましたー!」

みどり子「ちょっと、秋山さん! 勝手なことしないで! いくらクリスマスパーティーだからって何でもしていいわけじゃないでしょ! 節度を守りなさい!!」

優花里「すみません! 角谷殿に是非と言われたもので……」

みどり子「むっ!」

杏「それじゃあ、かんぱーい!!」

「「かんぱーい!!」」

みどり子「元会長のくせにぃ……!!」

麻子「今は楽しめ、そど子」

カトラス「飲みたいものがあれば出すけど」

妙子「スポーツドリンクをください!」

梓「私はアップルジュース!」

桂利奈「パインジュース!」

紗希「玉露」

カトラス「……」

ラム「フフフ……」

ムラカミ「ハッ。ここは幼稚園か? そんなお子様が飲むようなもの置いてるわけ――」

カトラス「はい」

妙子「わーい、ありがとうございます」

梓「優季ー、アップルジュースもらったよー」

桂利奈「パインジュースだー!!」

紗希「玉露……」

カトラス「それはない。ごめん」

紗希「……」

ラム「ここではあたしたちのほうが肩身狭いな……」

ムラカミ「うん……。い、いや、まだだ。ここで怖気づけば船底組が舐められる」

フリント「あれをする気?」

ムラカミ「とーぜん」ポキポキ

桃「何をするつもりだ?」

ラム「桃さん、少しだけ余興をさせてもらいます」

桃「そんな話は聞いていないが」

ムラカミ「西住みほ!! こっちにこい!!」

みほ「え!? は、はい?」

ムラカミ「クリスマスパーティーの余興として、勝負しな」

みほ「しょ、勝負?」

ムラカミ「あのときのリベンジマッチだ」シュッシュッ

みほ「え……」

沙織「負けたこと気にしてたんだ」

麻子「西住さんに勝てるわけないだろうに」

みほ「あの、そんな、みんな怖がっちゃいますから……」

ムラカミ「問答無用だぁ!! おりゃぁぁぁ!!!」

みほ「ちょ……!?」サッ

ムラカミ「オラオラオラオラ!!!!」

みほ「あぶっ……ない、ですからぁ!!」ササッ

あや「おぉー! すっごいフットワーク!!」

あけび「華麗なステップです!」

典子「流石、西住隊長!」

カエサル「神の踊子だな」

ムラカミ「はぁ……はぁ……。ふっ。やはりあのときと同じことをしても無駄ってわけだ……」

みほ「あの、もっと別の方法で……」

ムラカミ「この日のために編み出した、必殺技を喰らいな……!! ひっさつ……」

みほ「あぅ……」

お銀「そこまでにしな。サンタさんがこなくなったらどう落とし前をつけるつもりだい?」

ムラカミ「はっ……!!」

柚子「それで止まるんだ……」

桃「悪い奴ではないからな」

ムラカミ「なら、この続きは正月だ」

みほ「あ、はい」

みどり子「なんでいきなり殴り合いを始めるのよ」

麻子「西住さんは殴ろうとしていないから殴り合いではないな」

お銀「悪いことをしたね」

みほ「いえ、大丈夫です」

お銀「郷に入っては郷に従いな。今日は荒事一切禁止だよ」

ラム・ムラカミ・フリント「「はいっ」」

お銀「よし」

杏「いやぁ、良い子ばっかりだねぇ。これでサンタクロースがこないなんて嘘だね」

華「そうですね」

優花里「絶対にきますよ!!」

忍「私も来ると思います」

麻子「……」

桂利奈「何時ぐらいに寝たらいいかなぁ?」

お銀「イヴはいつも20時ぐらいには床に就いているけどね」

沙織「無駄に良い子だぁ……」

お銀「なんだって?」

沙織「なんでもないです」

麻子「では、私もそれぐらいに寝るとするか。今日はお昼寝していないしな」

優花里「おぉー。やはり冷泉殿も今日と言う日が楽しみだったのですね」

麻子「まぁな」

沙織「(多分、嘘だと思う)」

華「(わたくしもこればかりは麻子さんを信じることができませんわ)」

みほ「(今日は授業なかったし、寝る時間はたくさんあったもんね)」

麻子「なんだ?」

沙織「な、なんでもないよー」

麻子「ふんっ……」

桃「それではメインイベントであるクリスマスプレゼント争奪、ビンゴゲームを始める!!」

「「おぉー!!」」パチパチパチ

桃「全員、手元にビンゴカードはあるか?」

「「はーい!!」」

桃「五位抜けまでには素晴らしいプレゼントが用意されている!! 心して参加するように!!」

柚子「ちなみに、五位は食券20枚、四位は大洗で使えるギフトカード5000円分、三位は西住さんから頂いた私物」

梓「西住先輩の私物……!!」ガタッ

優花里「西住殿の私物……!!」ガタッ

みほ「た、大したものじゃないんだけど……」

柚子「二位はBAR『どん底』で使える無料券50枚」

お銀「まさに大盤振る舞いだ」

カトラス「血涙を流すほどのサービス」

あや「行きたい?」

桂利奈「あんまり……」

優季「二位は五位でもよかったかもぉ」

柚子「そして一位はなんと……! 10万円相当の……」

「「おぉぉ!!」」

ナカジマ「また干し芋だったりして」

ホシノ「今度こそ現金じゃない?」

ねこにゃー「現金なら課金で一気にパワーアップできるぅ」

柚子「それはあとのお楽しみでーす」

杏「いぇーい」

桃「では、始めるぞ! 最初の番号は……」

麻子「……」

沙織「ねえ、麻子?」

麻子「なんだ」

沙織「やっぱり、今日は寝ないつもり?」

麻子「沙織だって本当にいるなら欲しいものぐらいあるだろう」

沙織「麻子……」

麻子「もう何年も待ったんだ。今日ぐらい、直接お願いしたっていいだろ」

桃「――次は、18!!」

みほ「あ、ビンゴ」

沙織「はやっ!? まだ8つ目だよ!?」

優花里「流石です西住殿!!」

華「綺麗に中央のラインが揃っていますね」

杏「流石だねぇ、西住ちゃぁん。それじゃあ、一位には十万円相当の……」

ツチヤ「なんだろう?」

典子「バレーボールかな?」

妙子「十万円分のバレーボールとなると……」

あけび「20球ぐらい?」

杏「高級干し芋!! やったね!!」

「「やっぱりぃ」」

みほ「あはは……」

杏「それが嫌なら、私からのハグ10万円分でもいいけど? どうする?」

みほ「えぇと……干し芋で……」

桃「――34!!」

梓「……」

あや「あれ? 梓、ビンゴじゃん」

梓「え? いや、してないしてない」

あや「してるって。ほら、ここ」

梓「してない!」

あや「梓、ビンゴでーす」

梓「あぁー!!」

お銀「おめでとう。ほら、無料券だ。いつでも待っている」

梓「あぁ……はい……ありがとうございます……」

お銀「有効期限は、卒業するまでだ。私たちがな」

あゆみ「五年ぐらい使えるってことですか」

ラム「10年は使える」

優季「えぇ……」

あや「そんなに使えたら逆に怖いんですけど」

桃「続いて、21!!」

優花里「き、きました……!! ダブルリーチですぅ!!」

沙織「うーん……リーチにすらならないんだけど……」

華「中々揃いませんねぇ……」

麻子「西住さんの私物って一体なんだ?」

みほ「ええと、一度だけ着た洋服なんだけど……。似合わなくて」

梓「服……!? 西住先輩の……服……!?」

カエサル「マニアにはたまらないな」

エルヴィン「これは高値で取引されるぞ」

おりょう「坂本龍馬が携帯していた銃ぐらいの価値ぜよ」

左衛門佐「織田信長が欲しがっていた平蜘蛛ぐらいか」

カエサル「それはもはやコロッセオにも匹敵するほどの歴史的価値があるものだな」

エルヴィン「だったらUボートと同価値といったところか」

おりょう・左衛門佐・カエサル「「それだぁ!!」」

みほ「比較対象が大きすぎます」

桃「19番!!」

杏「びんごぉ~」

優花里「あぁぁぁ……!!!」ガクッ

柚子「どうぞー」

杏「あんがとぉ。いや、サイズ全然違うけど、もらっとくよぉ、西住ちゃぁん」

みほ「はい。どうぞどうぞ」

梓「西住先輩の服……ほしかった……」

優花里「西住殿からのお下がり……手に入れたかった……」

典子「元気出してください」

妙子「私たちのユニホームで良ければ差し上げますよ」

忍「うん、いいかも」

あけび「バレー部が増えるよ! やったね!!」

おりょう「勝手に盛り上がってるぜよ」

桃「どんどんいくぞ!! 次は……55番!!」

麻子(時間が近づいているな……。ん? これで4列目のビンゴか)

学園 校門

エリカ「くしゅん!! うぅ……」

エリカ「ちょっと早かったわね……」

アンチョビ「メリークリスマス!!」

エリカ「きゃぁ!? な、なによ、いきなり!!」

アンチョビ「ほら、アンチョビサンタからのプレゼントだ」

エリカ「どうも……。って、アンチョビ缶じゃない」

アンチョビ「その恰好……。お前もサンタとして呼ばれたのか?」

エリカ「お前もって……」

ケイ「あっれー? エリカとチョビじゃない。どうしたの? イヴなのにパートナーいないの?」

エリカ「余計なお世話よ!! というか、あなたも一緒でしょ!!」

アンチョビ「ケイも呼ばれたのか」

ケイ「ええ。ミホにサンタクロースしてほしいってね。その場では断ったけど」

アンチョビ「何故?」

ケイ「こういうのはサプライズで登場したほうが盛り上がるじゃない!」

エリカ「捻くれてるわね」

ケイ「そう?」

アンチョビ「エリカは違うのか?」

エリカ「私は、たまたま練習が早く終わったから来ただけよ」

アンチョビ「ふぅん」

ケイ「練習がたまたま早く終わるってことある?」

アンチョビ「早く切り上げるときはあっても、偶然早く終わることはないな」

ケイ「そうよね」

エリカ「うるさいわね。文句あるの?」

ノンナ「カチューシャ、こちらのようです」

カチューシャ「うん……ぅん……」

ケイ「ヤッホー、ノンナ」

ノンナ「どうも」

アンチョビ「カチューシャたちまで呼ばれていたのか」

ノンナ「今日はここにサンタクロースが現れるとミホさんから聞いたもので」

エリカ「はぁ?」

ノンナ「……はい?」キリッ

エリカ「あ、あぁ……そういうことね……」

カチューシャ「のんなぁ……みほーしゃ……はぁ……?」

ノンナ「すみません、私たちを急ぎますので」

ケイ「早く行ってあげて。カチューシャ、限界みたいだし」

ノンナ「今日は朝から張り切っていましたからね」

カチューシャ「さんた……しゃん……どこぉ……」

ノンナ「すぐに会えますよ」

アンチョビ「大洗にもカチューシャのようにサンタを信じている者が数人いるらしいな」

ケイ「アンジーも信じてるみたいね」

エリカ「アンジーって、生徒会長の?」

アンチョビ「もう元会長、だけどな」

エリカ「意外ね。ああいう性格なら、とっくにサンタの正体を調べていると思うけど」

「こんな格言を知ってる? アダムはリンゴが欲しかったから食べたのではない。禁じられていたから食べたのだ」

ケイ「ダージリンっ」

ダージリン「みなさんお揃いで。メリークリスマス」

アンチョビ「隊長勢、そろい踏みだな」

ケイ「マホは?」

エリカ「海外よ。知ってるでしょ」

ケイ「そっか、そっか」

ダージリン「みなさんも今宵はサンタクロースとして振る舞うのね」

ケイ「オフコース!! ダージリンもサンタコス、似合ってるわよ」

ダージリン「ありがとう。しかし、ケイさんのコスチュームは少し露出が多すぎるわね」

ケイ「そうかしら?」

ダージリン「寒くないの?」

ケイ「サンタクロースはミニスカートでハイニーソックスが定番じゃない。寒いなんて言っていられないわ」

ダージリン「理解できないわね」ズズッ

エリカ「その紅茶、冷めてないの?」

アンチョビ「ところで本日の作戦については、皆頭に入っているのか」

ケイ「確か、0時になったら生徒会室の隣にある仮眠室に入って、寝ている子の枕元にプレゼントを置くんでしょ」

エリカ「私もそう聞いたわ。それでサンタを信じられるなんて、笑っちゃうわね」

ダージリン「……」

エリカ「なにか?」

ダージリン「いえ、何も。信じさせるためにここにいるのではないのかしら? なんて思ってないわ」

エリカ「くっ……」

アンチョビ「ノンナはどうなんだ?」

ケイ「カチューシャがいるんだし、参加するんじゃない?」

ダージリン「彼女はきっとサンタになるわね。去年もそうだったし」

アンチョビ「ノンナはカチューシャのサンタクロースってわけか」

ダージリン「ペパロニさんのサンタクロースは大丈夫かしら?」

アンチョビ「既に置いてきている。問題ない」

「どうやら、全員揃っているようね。では、新たな作戦を伝える」

ダージリン「え……」

エリカ「な……あ……!?」

生徒会室

杏「そろそろ9時かぁ」

お銀「桃さん!!」

桃「できたのか」

ラム「準備完了」

ムラカミ「いつでも寝ることが出来ます」

フリント「パジャマもきたし~歯もみがいた~」

カトラス「サンタが慌てん坊だと困るので、もう寝たい」

お銀「慌てん坊のサンタクロースはクリスマス前にやってくるけどね」

桃「阪口と冷泉は?」

桂利奈「完璧です!!」

麻子「いつでも寝られるぞ」

杏「それじゃあ、おやすみぃ。サンタからいいプレゼントがもらえるといいねぇ」

桂利奈「はい!! ワクワクしてます!! 興奮して眠れないかも!!!」

みほ「……」

優花里「ついに始まりますね」

華「人生で一番長いクリスマスになりそうです」

沙織「みぽりん、大丈夫かなぁ。連絡、まだないんでしょ?」

みほ「うん。安斎さんとダージリンさんは来ているはずなんだけど……」

柚子「もう一度だけ連絡をとってみたらどうかな」

みほ「そうですね……」

杏「なんの相談?」

桃「な、なんでも!!」

優花里「はい、ただの、戦車談義です!!」

杏「あ、そ」

桃「西住、分かっているだろうが、杏にはくれぐれも……」

みほ「はい。勿論です。サンタクロースはいるんです」

みほ「私たちの目の前に来てくれるはずです」

沙織「信じるしかないよね。こうなったら」

華「はい。成功、させましょう。必ず」

仮眠室

桂利奈「あー、なんだか目が冴えてきちゃいましたよー!」

お銀「それはまずい。子守歌のリクエストだ」パチンッ

フリント「ひとぉみとぉ~じぃて~みみをすませばぁ~きこえるぅ~」

桂利奈「ぐぅ……すぅ……」

お銀「すぅ……すぅ……」

麻子「えぇ……。早すぎないか?」

ムラカミ「ぐぅ……ぐぅ……」

カトラス「すぅ……すぅ……」

ラム「むにゃ……ぐぅ……」

フリント「おやすみ」

麻子「あ、ああ……」

フリント「すぅ……」

麻子「私も、これだけ寝つきがよければな」

麻子(まあ、今日に限って言えば自分が夜型であることに感謝しないといけないか)

杏「んー……」

典子「どうですか?」

杏「みんな、眠ったみたいだねぇ」

あけび「では、ここから作戦開始なんですね」

みどり子「でも、サンタは0時に配るんでしょ? まだ三時間近くあるじゃない」

モヨ子「それまでどうするの」

希美「宴会の続き?」

ナカジマ「それだと折角寝たのに起こしちゃうかもしれないよ?」

ツチヤ「寝付いたんだから、そっとしておくべきか」

ホシノ「赤ん坊のような扱いだ」

ノンナ「失礼します」

みほ「ノンナさん!?」

ノンナ「しーっ」

カチューシャ「すぅ……すぅ……」

杏「カチューシャ……。仮眠室に寝かせてあげて」

ノンナ「申し訳ありません、こんな時間に」

杏「全然いいよ」

みほ「……」

杏「で、どうしてここまで?」

ノンナ「カチューシャがどうしてもクリスマスは大洗のみなさんと過ごしたいと言っていたので」

ナカジマ「それはうれしいなぁ」

ねこにゃー「カっちゃん、可愛いところあるぅ」

ノンナ「カチューシャは常に可愛いです」

杏「確か、カチューシャはサンタクロースの存在を信じていたよね」

華「……」ピクッ

ノンナ「信じている……? おかしなことを言うのですね」

杏「どういうこと?」

ノンナ「サンタクロースは、存在しています。確実に」

杏「おぉ」

みほ(すごい気迫……! ノンナさん、カチューシャさんのためにここまで自分を偽れるなんて……)

杏「まぁ、あとちょっとでそれもわかるんだけどねぇ」

ノンナ「何かされるのですか」

杏「今日はサンタクロースをこの目で見ようって話しになって、それで全員で起きてるってわけだ」

ノンナ「なるほど……。今後、プレゼントをもらえなくなってもいい、ということですか」

杏「え?」

ノンナ「サンタクロースの正体を暴こうとする子の前には、二度とサンタクロースは姿を現しませんよ」

杏「……」

優花里(なんという圧力……。これがブリザードのノンナ殿……!)

カエサル(私でもサンタを信じてしまいそうになる)

杏「信じている子の前にも姿は現さないじゃん」

ノンナ「ぐっ……!」

沙織(角谷先輩の勝ちだ)

ノンナ「信じて寝ていれば、良い夢を見ることができるのに。手放すのですね」

杏「良い夢だと思っていたのが、悪夢だったら嫌だしな」

ノンナ「そうですか……。残念です」

みほ「ノンナさんが来てくれるとは思っていませんでした」

ノンナ「私もカチューシャが言い出さなければ来るつもりはありませんでした」

みほ「あの……今日、ノンナさんは……?」

ノンナ「私はサンタを守る側です」

みほ「つまり……」

ノンナ「既にサンタクロースは4人、確認しています」

優花里「4人、ですか?」

ノンナ「ええ」

みほ「だ、誰ですか?」

ノンナ「貴方が誘ったのでは?」

みほ「きちんと返事をもらえたのは安斎さんとダージリンさんだけなんですが」

ノンナ「なるほど……」

沙織「誰が一緒だったんですか?」

ノンナ「エリカさんとケイさんも一緒にいましたよ」

みほ「逸見さん……!!」

優花里「来てくれていたんですね、逸見殿」

みほ「うれしい……」

ノンナ「作戦は成功しそうですか」

みほ「4人もいるなら完璧です。分身作戦も使えますから」

ノンナ「分身?」

華「一人が目視されてももう一人が別の場所から現れたら、寝起きの人間にとっては分身したように錯覚するはずです」

ノンナ「ほう……。もし捕まっても更に三人目、四人目が撹乱させる、わけですか」

みほ「そうなります」

ノンナ「分かりました。詳しい戦術は後ほど聞きましょう」

みほ「ご協力感謝します」

桃「ノンナ。誠にすまないが、角谷杏にだけはサンタはいると信じさせてほしい」

柚子「お願いします」

ノンナ「その考えを捨ててください」

桃「なに?」

ノンナ「サンタはいる。私たちがそう思わなければ、誰も信じはしません」

典子「サンタはくるのか……」

妙子「気になって眠れませんねー」

忍「いたらどうしたらいいんでしょう」

杏「そんなの決まってる。捕まえるよ」

あけび「サンタさんをですか?」

杏「正体、みたくない?」

カエサル「まぁ、見たくないと言えば嘘になるが」

おりょう「いいぜよ?」

杏「不審者かもしれないからなぁ」

左衛門佐「それだと怖いな」

優季「えぇ、やだぁ」

あや「変質者なんてやばすぎぃ」

あゆみ「この時期はサンタのコスプレしていれば誰も怪しまないもんね」

梓「変な話はやめてよ」

杏「ただの変質者か、それとも本物の魔法使いか、興味あるねぇ」

ももがー「ガチサンタならどうするなり?」

ぴよたん「とりあえずインスタ映えする感じで一枚とればいいのかな」

ねこにゃー「いいねがいっぱいつくかもしれないぃ」

ナカジマ「ツチヤ、レオポンのエンジン温めておこうか」

ツチヤ「おっ。サンタをレオポンで追いかけるってこと? オッケー」

ホシノ「空を飛ばれたら終わりじゃない?」

スズキ「流石に戦車を飛ばすのはまだ無理だしね」

エルヴィン「いつかはできるのか?」


桃「随分と盛り上がっているな」

柚子「もう後には退けないね」

みほ「はい。突き進むだけです」

華「試合よりも緊張してきました」

ノンナ「上手くいきますよ。上手くいかなければ、ならないのですから」

沙織「カチューシャさんが加わったことで、何故か緊張感が増したような……」

ノンナ「はい? 何か問題でも?」

典子「……はっ!?」

妙子「キャプテン、眠たかったら寝ていてもいいですよ?」

典子「いや、サンタを見るまでは根性で起きておく!!」

あや「めがね……めがねぇ……」モミモミ

優季「もう……そこはだめぇ……」

あゆみ「すぅ……すぅ……」

梓「寝ちゃってるし……」

みどり子「ゴモヨもパゾ美も仲良く寝ちゃったわ」

みほ「時間が時間ですからね」

ノンナ「そろそろ来てもおかしくない時間ですね」

華「はい」

杏「まだ仮眠室に怪しい動きはないな」

沙織「0時まで残り10分……」

みほ(ダージリンさんたちを信じよう……作戦は伝えているんだし……)

杏「まだかなぁ」

優花里「カウントダウンを開始します。30秒前」

みほ「……っ」

沙織「ドキドキしてきちゃったぁ」

あけび「私たちのフットワークでどうにかなるかなぁ」

忍「完璧なブロックでサンタの動きを封じ込める」

優花里「20秒前……」

桃「ぐっ……」

柚子「桃ちゃん、落ち着いて」

桃「そんなの無理に決まっているだろう」

ナカジマ「どこからくるんだろう。煙突ないのに」

優花里「10秒前……9、8、7、6……」

華「手に力が入ってしまいます……」

杏「うっひょー。ワクワクするなぁ」

優花里「4……3……2……1……」

優花里「――ゼロっ」

仮眠室

麻子「……」

ゴソッ

麻子(誰かが……いる……。真っ暗でみえないが……)

麻子(狸寝入りにも気が付かないサンタは偽物だろうが、一応聞いておくか)

麻子「おま――」

「麻子?」ギュッ

麻子「え……」

「寂しかった?」

麻子「な……え……?」

「ごめんなさい。こういう形でしか、会いにくることができなくて」

麻子「だ、誰だ……おまえ……」

「許して……」

麻子(私は夢を見てるのか……そうか……そうなんだろうな……多分……)

麻子「お……母さん……なのか……?」

「よくがんばったわね」

麻子「別に……」

「辛いことも多かったでしょう」

麻子「そんなことはない。ないけど……」

麻子「一言……謝りたかった……お母さんに……」

麻子「どうしても言いたかった……ずっと……ずっと後悔していて……」

「大丈夫。貴方のことはよくわかっているつもりだから」

麻子「ごめ……んなさい……」

「私のほうこそ、一人にさせてごめんなさい」

麻子「きにしてない……」

「そう……」

麻子「……」ギュゥゥ

「眠れそう?」

麻子「眠りたくない……このままでいたい……」

「でも、いつかは眠ってしまう。夢はどこかで覚めてしまう」

生徒会室

柚子「杏? 仮眠室の中、見なくていいの?」

杏「ん? まだいいんじゃない?」

ノンナ「今、まさにサンタがいるかもしれませんよ」

杏「少し泳がすのもありかなーって」

みほ「……」

優花里「角谷殿がそういうなら」

杏「ふっふーん」

華「何か怪しくないですか?」

沙織「うん……」

みほ(なんだろう、この感じ……肌がピリピリする……)

バンッ!!

桃「な……!? お、おい!! 何の悪戯だ!!」

ナカジマ「あっれー? 誰が照明おとしたんですかー?」

ツチヤ「真っ暗なんだけどー」

梓「きゃぁ!?」

みほ「澤さん!! どうかしましたか!?」

梓「い、いえ、誰かが私の目の前にいる気が……」

「ハーッハッハッハッハッハ!!! 良い子の諸君!! 今日が何の日か知っているか!!!」

優季「えぇー? なにぃ?」

あや「なにもみえなーい……めがね……めがね……」

「そうだ!! 今日はクリスマスだぁー!!! 良い子にしていたお前たちにクリスマスプレゼントをやろう!!!」

あゆみ「えぇ!? マジサンタ!? どこ? ここ?」ペタペタ

カエサル「それは私の胸だ!」

「さぁ、受け取れ!!」

あや「暗くてなにもみえないんですけどー!!」

優花里「待って!! サンタクロースは寝ている子のところにしか現れないはずです!!」

「何を言っている、秋山優花里!! サンタはこうしてここにいる!!」

優花里「しかし、姿がみえませんし……」

「信じられないというなら、そこまでだな。だが、プレゼントは渡すぞ!! ハーッハッハッハッハー!!」

桃「おい!! 気を付けろ!! 変質者の可能性もあるぞ!!」

「それは聞き捨てなならないわね」ズズッ

桃「ひぃ!?」

柚子「後ろ……!?」

「サンタクロースはね、瞬間移動ができるのよ。光の速さで動かないと、とてもじゃないけれど地球上全ての良い子にプレゼントを渡せないもの」

典子「サンタクロースが沢山いるぞー!?」

妙子「ちょっとまってください!! 今自分がどこにいるのかもわからなくて……!!」

あけび「妙子ちゃーん、こっちこっち!!」

ねこにゃー「サンタさん……マジサンタなの……?」

「オフコース!!」ガシッ

ねこにゃー「うあわぁああ!?」

「貴方はねこにゃーね。はいこれ。受け取って」

ねこにゃー「こ、これですか」

「そうそう。フォーユー」

ねこにゃー「あ、ありがとうございますぅ……」

沙織「ど、どうなってるのよー!!」

華「誰か!! 照明を!!」

ツチヤ「今探してるよー!!」

みほ「みなさん!! ケータイを!! ケータイの灯りで自分を照らしてくだ――」

「そこまでよ」グイッ

みほ「むぐっ……!?」

沙織「みぽりん!? どうしたの!?」

みほ「むぅ……ぐぅ……!!」

「貴方にはこれを渡すわ」

みほ(この手触りは……ボコ……!?)

「私たちは姿をさらすわけにはいかないの。分かっているわね?」

みほ「その声、エリ――」

「黙りなさい」グッ

みほ「むぐ……!?」

「勘のいい子にはプレゼントをあげないわよ」

仮眠室

ワー!! ワー!!

お銀「なんだ……外がさわがしいが……」

桂利奈「わぁあああ!!!」

ラム「なになに!?」

ムラカミ「ぐぅ……ぐぅ……」

カトラス「どうかした?」

桂利奈「プレゼントだー!!」

お銀「なに!? あぁ!! 私の枕元にもある!!」

「どうやら、時間のようね」

麻子「まて……」

「さようなら」

麻子「待ってくれ……」

「もう時間だから」

麻子「いくな!! いかないで!!」

杏「おっと」

「時間ね」

杏「みたいですね」

「それじゃあ」

杏「ありがとうございます」

麻子「まて!!」ギュッ

杏「冷泉ちゃん、どうかしたぁ?」

麻子「角谷さん……。今、誰かがここを通っただろ」

杏「さぁ、こんだけ暗いからわかんないねぇ」

麻子「あれは沙織でも五十鈴さんでもなかった……。かといってケイさんでもノンナさんでも……」

杏「誰にあったの?」

麻子「分からない。暗かったし……夢かと……」

杏「案外、サンタだったりして」

麻子「どこだ! どこにいったんだ!! 教えろ!!」

杏「だから、暗いからわかんないって」

左衛門佐「でんちゅうでござる!! でんちゅうでござるー!!」

おりょう「闇討ちぜよー!!!」

みどり子「なによ!! 何が起こってるのよ!!」

「そーどこ!」

みどり子「園、みどり子よ!!!」

「はい、プレゼント」

みどり子「あ、どうも」

「それじゃあ、バーイ」

みどり子「いや!! そうじゃなくて!! どこの誰なのよ!!」

「今更何をいっている!! 私たちはサンタクロースだ!!! ハッハッハッハッハー!!」

「それ以外の何者でもないわね」

沙織「いや、でも……」

柚子「ホントに誰なんですか?」

「サンタは姿を晒さない。そうでしょ?」

桃「ほ、本物なのか……? だが……」

バンッ!!

みほ「灯りが……」

桃「おい! 先ほどの連中を追いかけろ!!」

みどり子「了解!!」

典子「サンタさーん!!」

カエサル「逃がさないぞ!!」

みほ「あはは……びっくりしたぁ……」

優花里「西住殿!! ご無事ですか!?」

みほ「う、うん」

沙織「みぽりん、それ」

みほ「サンタさんにもらったみたい。ボコのぬいぐるみ」

華「よかったですね」

カチューシャ「ノンナー!!!」テテテッ

ノンナ「どうかしましたか?」

カチューシャ「プレゼントもらったわ!! サンタからよ、これ!!」キャッキャッ

お銀「全員、起きろ!!! サンタさんは既にプレゼントをくれているよ!!」

フリント「おぉぉ……!!」

ラム「今年もこんなあたしに……」

カトラス「良い子にしていてよかった」

ムラカミ「くっ……涙が……」

桂利奈「みんなー!!」

梓「桂利奈っ」

桂利奈「プレゼントもらったー!!」

あや「私たちもだよー」

桂利奈「おぉー!!」

優季「ほんとにサンタクロースだったのかなぁ?」

あゆみ「けど、ここまで勝手には入ってこれないだろうし、ここでパーティーしてることを知っている人って他にいないはずだし」

あや「マジサンタだったんだー!!」

桂利奈「やっぱりサンタさんはいるんだー!! ぃやったー!!」

優季「サンタさんっているんだぁ。信じなくてごめんなさぁい」

麻子「……」

沙織「麻子……」

麻子「誰だったんだ?」

みほ「はい?」

麻子「ケイさんなのか? ノンナさんなのか? 五十鈴さんか? 沙織か?」

みほ「あの……」

麻子「西住さんがケイさんたちに声をかけていることは知っている。誰が私のことを……その……抱きしめたんだ……」

ノンナ「残念ながら、私たちはケイさんたちの姿を確認できていません」

優花里「ダージリン殿も結局現れていませんし」

麻子「誰だ……あれは……誰だったんだ……」

桃「ダメだ。捜索班は完全にサンタを見失ったようだ」

柚子「そう……」

杏「あーあ、サンタがあんなにいたのに残念だねぇ」

麻子「くっ……!!」ダダダッ

みほ「麻子さん!?」

アンチョビ「メリークリスマース!!!」パァーン

麻子「どいてくれ!!」ダダダッ

アンチョビ「おぉ、どこにいくんだー?」

麻子「探しものだ!!」

アンチョビ「そうか」

ダージリン「忙しない方ね」

みほ「安斎さん、ダージリンさん」

ダージリン「少し遅れたみたいね」

アンチョビ「アンチョビだ。さぁ、プレゼントを配るぞ」

みほ「あのぉ……」

アンチョビ「どうした?」

みほ「先ほど、配ったんじゃあ……」

ダージリン「はい?」

アンチョビ「何を言っているんだ? 私たちは今からプレゼントを配るんだぞ」

みほ「……え?」

みほ「で、でも……」

ケイ「ミホ、ミホ」

みほ「ケイさん?」

ケイ「どこにターゲットがいるの?」

みほ「で、ですから……」

エリカ「来てあげたわよ」

みほ「エリ……逸見さんまで……」

エリカ「何よ。幽霊でもみたような顔して」

みほ「あの、今、みなさんは私たちにプレゼントを配りましたよね?」

ケイ「ホワット?」

エリカ「はぁ?」

みほ「え……え……?」

ケイ「ここにちゃんと用意してるわよ。ほら」

エリカ「その手にあるぬいぐるみは誰からもらったのよ」

みほ「あ……えと……サンタ……さん?」

エリカ「ふふ……。サンタさんって……。あんた、何歳よ?」

みほ「いえ、でも、確かに……」

ケイ「ごめんごめん。ミホってサンタのこと信じてたの?」

ダージリン「それは失礼を。みほさんの夢を壊してしまいましたか」

アンチョビ「いやいや、信じていればまたサンタはやってくるはずだ。ハッハッハッハッハ」

みほ「えぇー!?」

優花里「西住殿がかなり困惑されているようですね」

沙織「うん。あれってケイさんたちじゃなかったのかな」

華「どうなのでしょうか」

カチューシャ「みて、ノンナ! マフラーよ!! マフラー!!」

ノンナ「いいですね」

杏「おぉ、カチューシャぁ。いいのもらったねぇ」

カチューシャ「まぁ、サンタは結構いいセンスしてるからね。またこれで冬を越してあげるわ!」

ノンナ「お似合いですよ、カチューシャ?」

カチューシャ「あたりまえでしょ!」

学園 校門

麻子「はぁ……はぁ……」

麻子(誰だったんだ……。お母さんなわけがない……ないけど……)

麻子「……」

麻子「もう、いいか」

麻子「……ありがとう」

「どういたしまして」

麻子「……!」

麻子「……」

典子「冷泉さーん!!!」

ねこにゃー「サンタさん、いた?」

麻子「いた」

エルヴィン「どこにだ!?」

左衛門佐「一言礼を言いたいんだが!!」

麻子「また来年、会えるんじゃないか?」

生徒会室

忍「あのフットワークは本物のサンタだったのかもしれない」

あけび「前にいると思ったら後ろから声がしたしね」

妙子「二人いたんじゃない?」

ももがー「手袋なり」

ぴよたん「帽子だ」

杏「うんうん。みんなサンタからプレゼントもらったみたいだねぇ」

桃「杏は?」

杏「もらったよぉ。ちゃんとね」

柚子「何ももってないみたいだけど?」

杏「手紙に書いたものはちゃーんと貰ったからなぁ」

桃「柚子、内容は?」

柚子「私は今回、見てないけど……」

桃「なに?」

柚子「あれ? 桃ちゃん、見てなかったの? 私、てっきり桃ちゃんが確認してくれてると思って……」

ケイ「はーい、プレゼントよー。欲しい子はこっちにカモーン」

桂利奈「わーいっ」

カチューシャ「わーいっ」

ノンナ「カチューシャ……ふふ……」

みほ「……」

優花里「気になりますか?」

みほ「うん」

沙織「サンタクロースってことでいいんじゃない?」

みほ「……そうだけど、何か引っかかるの」

華「何がでしょうか?」

みほ「あのとき、感じた……肌が焼けるような感覚……」

麻子「つかれた」

沙織「麻子、おかえりっ」

麻子「ただいま。サンタは見つけられなかった」

沙織「プレゼントはもらったの?」

麻子「もらったと言えば、貰った気もする」

華「何をもらえたのですか?」

麻子「……お母さん」

沙織「え……」

麻子「誰かが、優しく私のことを抱きしめてくれた」

沙織「……」

麻子「お母さんじゃないことは分かっている。あれは偽物だ。でも……」

麻子「言えなかったことが、言えた」

沙織「そっか」

みほ「お……かあさん……?」

優花里「西住殿?」

みほ「そんな……けど……」

麻子「どうかしたか?」

みほ「ちょっと行ってくる!!」

沙織「今度はみぽりんがいっちゃうの!?」



しほ「冷えるわね……」

ピリリ……

しほ「もしもし?」

杏『いま、そっちにみほさんが向かったみたいですよー』

しほ「そう。わかったわ」

杏『無理をいって、どうもすみませんでした』

しほ「いいのよ。できるかどうかは分からなかったけれど」

杏『案外、みほさんに対しての台詞もあったとか?』

しほ「切るわね」

杏『おやすみなさーい』

しほ「はぁ……」

しほ「そうね……。みほに対して言えなかった言葉だったのかもしれないわね」

しほ「……」

しほ「みほ……」

みほ「はぁ……はぁ……」

みほ「もう……いない……?」

みほ「電話……してみようかな……」

エリカ「みほ」

みほ「エリカ……さん……」

エリカ「戻りましょう。サンタクロースなんて、この世にはいないわ」

みほ「……そうですね」

エリカ「ええ」

みほ「エリカさんは、サンタクロースのこと何歳まで信じてた?」

エリカ「はぁ? そうね。6歳ぐらいじゃないかしら」

みほ「どうして信じられなくなったの?」

エリカ「そんなの忘れたわよ」

みほ「私、信じたことがなかったけど、初めて信じることができたかも」

エリカ「ふんっ。子どもね」

みほ「そうだね」

生徒会室

アンチョビ「アンチョビ缶をくばるぞー!!」

あや「もっといいものくださーい!!」

優季「セール品だぁ、これぇ」

アンチョビ「うるさいぞ!!」

ダージリン「あら、お帰りなさい」

みほ「ただいま戻りました」

杏「見つかった?」

みほ「いえ」

杏「そっか」

みほ「角谷先輩。少し、いいですか?」

杏「いいよ」

優花里「西住殿?」

沙織「戻ってきたばかりなのに、出て行っちゃったよ、もー」

華「……」

廊下

杏「何か用事?」

みほ「……いつまで、サンタクロースを信じていましたか?」

杏「覚えてないかなぁ」

みほ「そうですか」

杏「気づいたらサンタなんていないって、理解してた」

杏「でも、両親も河嶋も小山も、必死にサンタクロースはいるって言ってくるから、信じないわけにはいかなくてねぇ」

みほ「それでいままで……」

杏「信じてるフリをしてた。まぁ、楽しかったけどね」

みほ「今日は、どうしてこんなことを?」

杏「冷泉ちゃんの願い、どうにか形にできないかなぁーって」

みほ「それで私のお母さんに?」

杏「なんのこと?」

みほ「いえ、なんでもありません」

杏「私はただ手紙を書いただけだからねぇ。サンタクロースあてに」

みほ「その手紙、今からちゃんと書いてもいいですか?」

杏「いいよ。まだ間に合うんじゃない?」

みほ「ありがとうございます」

杏「はい、これね」

みほ「んー……」

杏「なんて書くの?」

みほ「教えたら叶わなくなるんですよね」

杏「そうだった」

みほ「ふふっ」

杏「いやぁー。今年のクリスマスは今までで一番楽しかったなぁ」

みほ「それはよかったです」

杏「ありがとねっ。西住ちゃん」

みほ「いえ。あ、書けました」

杏「出しといてあげるよ」

みほ「お願いします。無事、サンタクロースに届きますように」

生徒会室

アンチョビ「で、みほはサンタの存在を信じてくれたのか?」

エリカ「間違いなく」

ダージリン「ふふっ。罪な人たち」

ケイ「ダージリンも同罪でしょ」

ノンナ「ふっ……」

優花里「なんとなくですけど、角谷殿が……」

華「優花里さん。それは口にしないほうがいいかと」

優花里「あぅ。すみません」

沙織「サンタはいた。で、いいのかな」

華「いいと思います」

麻子「来年も来たら信じてやろう」

沙織「なんで上から目線なのよぉ」

麻子「別に頼んでないからな」

沙織「手紙に書いたんでしょ」

麻子「これか?」

沙織「出してなかったの!?」

麻子「ほい」ペラッ

沙織「見てもいいの?」

麻子「クリスマスプレゼントは貰ったからな」

沙織「ええと……」


―サンタクロースを信じていない奴らをどうにかして信じさせてみろ―


沙織「な……」

優花里「こんな願いだったとは……」

麻子「ま、大成功みたいだがな」

華「ですね」


ツチヤ「みてみて、サンタからもらった手袋!」

ホシノ「こっちはセーターだっ」

ナカジマ「サンタさん、良い物くれるなぁ」

お銀「サンタクロースさんに感謝をこめて!!」

フリント「一曲。めりめりくりすまぁ~す、あっはっぴぃにゅ~やぁ~」

ケイ「いいわよー!!」

ダージリン「そろそろ帰りたかったのだけれど」

みほ「もう少しいてください」

ケイ「そーよ、ダージリン。夜なこれからよー!! ヤッホー!!」

ダージリン「酔ってらっしゃいます?」

桂利奈「あれ、サンタさんじゃないかな!?」

おりょう「流れ星ぜよ」

モヨ子「流れ星にみえるのがサンタクロースの可能性は?」

エルヴィン・カエサル・おりょう・左衛門佐「「ある!!」」

杏「いぇーい! 朝までさわぐぞー!!」

沙織「おぉー!!」

優花里「いやっほぉー!!!」

みほ「おー」

数日後 西住家

しほ「これは……」ペラッ

しほ「……」


サンタクロースさんへ

わざわざ来てくれたのに何も言えずにごめんなさい。
お正月にサンタクロースさんへ会いに行こうと思います。

そのときにまたお話をしたいです。色々と。

みほより


しほ「……」

しほ「はぁ……。仕方ないわ」

しほ「部屋の片づけをしておきましょうか」

しほ「この家に二人がいないのには慣れたけれど……」

しほ「やはり、嬉しいのね……」

しほ「まだまだね、私も」

大洗女子学園 戦車倉庫

優花里「帰省されるのですか」

みほ「うん」

沙織「そっか」

華「よかったです」

みほ「お姉ちゃんもいないし、お母さんのこと気になるから」

麻子「西住さん」

みほ「なにかな?」

麻子「ありがとうと伝えておいてくれ」

みほ「え……」

麻子「間違えていたら、すまないが」

みほ「うん、伝えるよ。麻子さん」

麻子「悪いな」

みほ「大丈夫。あの手紙はちゃんとサンタクロースさんに届いているはずだから」


おしまい。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom